日本から11隻の船が出航してから1日経過した頃の夜、
そのアラームは魔法少女にもそうだが、
その余りもの多さに監視部署は混乱してしまった。
「こんな一斉になんておかしいだろ!」
「誤報ではないのか?」
「すべて正常な動作です!
アンチマギア生産施設の有無問わずテロが発生しています」
ペンタゴンの監視部署ではマニュアルにもない非常事態でただ慌てるしかなかった。
サピエンス本部の司令室にも世界中でアラームが上がっている情報が入っていた。ダリウス将軍とその部
「情報収集に専念しろ。人間が混ざっているならどこの奴らなのかもわかるようにな。
一応聞いておくが、
「南極基地には出現していないようです。
あとはなぜかニュージーランドが安全地帯となっているようで」
「ニュージーランド?
魔法少女がいないだけかもしれないが、
「了解!」
「将軍!
「結局はイザベラの思い通りか。
米国内は一般人の避難を急げ!
特に敵とここを直線で繋げたライン上の住人は速やかにだ!」
「我々の兵は出しますか?」
「イザベラの話を聞いていないのか。
我々は最後まで兵は出さない。地元の兵士たちで回してもらう。
我々は情報収集に努めよ」
「了解!」
「将軍!」
「今度はなんだ」
「敵の狙いは海岸線と空港のようです」
「空港?日本のやり方で味を占めたか」
世界中の空港がテロリストや魔法少女達によって攻撃を受けていた
中でもハワイや米国のカリフォルニア沖は沿岸部分も攻撃され、
「船の航行に妨げとなるものは全て排除しろ!
ここハワイは外部との動線を全て潰せ!」
指示をしている魔法少女に対してハワイにいる米国兵は銃を放つ。
魔法少女はすぐに反応して空気中の水分を凍らせて鋭い刃とな
そんな魔法少女達の攻撃に米国兵士たちは何もできなかった。
「魔法少女がまだ島にいるなんて聞いていないぞ!」
「サピエンスめ、とり逃しやがっていたな。
応援もよこさないし何やってるんだ!」
ヨーロッパにある空港では滑走路が攻撃されて飛行機が飛べない状
地元の兵士たちが迎撃に出たことで魔法少女には被害がない中、魔法少女に加担しているテロリストと兵士には死人が出始めるようになった。
一般兵には魔女対策用のアンチマギア装備以外は支給されていないため、魔法少女には蹂躙される形
ダリウス将軍が世界の様子をモニタリングしているとイザベラとキ
「ハワイにも出たってどういうことよ。あそこの魔法少女勢力は一掃していたはずよ」
イザベラの問いには同じ指令室にいるオペレーターが答えた。
「地元情報によると水中から現れたとの報告です!」
「もうなんでもありね。国内はどうなっているの」
「各地の主要な空港が攻撃を受けています。
地方にある小さな場所はまだ生きていますが、いつまで無事でいられ
「我が国の軍は動いてるんでしょ。
「だがこれだけは伝えないといけないな」
そう言ってダリウス将軍がメインモニターの画像を切り替えると、
「ロバート達、なんで」
「あらあら、彼らは信頼できると言ったのは誰だったかしらね」
キアラが画面を見て固まっている中、
ビクッとしたキアラの耳元でイザベラは呟いた。
「さあ、
まさかこの後に及んでまだ彼らを擁護するなんてこと、
周囲の空気は凍りついていた。
それはイザベラのキアラに対する態度だけではなく、
キアラは暫く目を瞑って、目を開けてから答えた。
「わかっている。
わかっているさ」
「そう?それなら頼んだわよ。あなたならあれくらいどうってことないだろうし」
キアラは悔しそうな顔をしながら司令室を出て行った。
ダリウス将軍はため息をひとつついた後にイザベラへ話しかけた。
「たった1人でいいのか。
責任を取らせるたって流石に1人は」
「いいえ十分よ。
何人を相手にしようと、
ああそうそう、キアラを運ぶための自動運転設定した装甲車は一台用意してあげてね」
「無茶がすぎる」
「見ていればわかるわ。
ほら、世界のモニタリングを続けなさい。
ロバートなどの裏世界の住人達は魔法少女とともにペンタゴンへ向
FBIも装甲車を出して動きを止めようとするものの、
「歯応えのない奴らばかりだな。
別の場所では爆発が起きて夜空が赤く照らされていた。
「おやっさん、早く前に進んで終わらせましょうよ」
「バカ言ってんじゃねぇ。俺たちはここで暴れればいいんだよ。
大事なのは他の奴らがやってんだからな」
「ロバート!ペンタゴンから来る車両ひとつ!」
「さあ、誰が乗っている」
車がロバート達の目の前を通り過ぎると同時に1人車両から飛び出
飛び出してきたのは戦闘服に着替えたキアラだった。
車はキアラを下ろした後に急いでその場を離れようとしたものの、
キアラの目の前に立っているのはロバートにマーニャ、5人の男達
他にも建物内に銃を持って数人は潜んでいる状況だった。
「たった1人でか。俺たちも舐められたものだな」
「…どうしてですか」
「ああん?」
「なぜこんなテロじみたようなことをしたのですか!
一般人は、関係ないのに」
キアラの問いにロバートとは違う男が答えた。
「前にも話しただろう。
俺たちはイザベラの、サピエンスのやり方が気に入らないんだ」
「テメェらを潰せるなら俺たちはマーニャに協力するし、
「キアラ、
マーニャにもそう言われ、
「ええ。彼女のやり方は間違いなく不幸になる人々が増える。
だが、
「動かなきゃ世の中変わらないんだよ。
特に俺たちのような社会的弱者はこうやって派手に、
「そうですか。
・・・
お覚悟を!」
目にとらえられないような速さでキアラはロバートへ切りかかった
周囲から銃弾が飛んでくる中、
そのまま建物へ侵入し、
ロバートは建物内部へ入ろうとする傭兵達を止め、
建物の3階からは正面から叩き切られた死体が両断された銃ととも
「
「キアラの腕力がおかしいだけでしょ」
「お前さては刀をよく知らないな?」
建物内には魔法少女もいたものの、
4階の窓から反対の建物にはグレネードが投げ込まれ、
その飛び移る間に銃弾は飛んだものの服を貫通するだけでキアラ本
決して傭兵達の射撃は下手ではなかったが、
飛び移った先の建物内にいた傭兵達はサブマシンガンで対抗したも
建物内に生存者はいないと判断したロバートは背負っていたガトリ
上から下まで撃ち込まれ、
それでもいくつかの破片はロバート達の方にも飛んできて、
銃口が赤くなったガトリングが止まって辺りが土埃に包まれている
魔法少女はなんとか反応できて脇腹を通ろうとする刀を弾いていた
「ロバートこれじゃ逆効果だよ!」
マーニャにそう言われたロバートは斧を振り上げた。
「ごちゃごちゃうるさいんだよ!」
ロバートが斧を地面に叩きつけるとハンマーを打ちつけたのではな
姿をあらわにしたキアラは傭兵の心臓を貫いているところだった。
心臓から刀を引き抜いて血を振り払った後にキアラは刀を一度鞘に
少しだけ動きを止めた後にキアラは背負っていたもう一本の刀を素
しかし装甲を破った後にゼリーの感触が伝わったらと思うと刀を動
そんな焦ったキアラにロバートは斧の柄部分で殴ってきたがキアラ
「いったい何」
「教えるわけねぇだろ。
地獄で会うことがあればその時に教えてやるよ」
ロバートの後ろから傭兵達は銃を放ち始め、
キアラは再度腰の刀を取り出して弾を避けながら魔法少女の攻撃を
ロバートは脇に刀が刺さったまま斧をキアラに振りかぶってきた。
キアラはその衝撃で飛んできたコンクリートの破片で顔に切り傷が
キアラは一度瓦礫に隠れ、
「ちくしょう、ちょこまかと」
あたりが再度静まり返ると突然闇から刀が飛んできて、
その隙にキアラがマーニャへ突撃してクナイを2本両肩に突き刺し
それでもマーニャの腕は動いてキアラは振り払われた。
その勢いでキアラはロバートへ突撃し、糸で繋がっているのか、
キアラはロバートの左肩に体重をかけて飛び上がり、
ロバートはぎこちなくなった動きでキアラを掴もうとするが、
その様子を見て固まっていた傭兵を容赦なくキアラは首を切り落と
「キアラ!」
マーニャは警棒のようなものの先端に電撃を発しながらキアラに殴
しかし周囲では生き残りの傭兵と魔法少女がキアラの動きが止まる
キアラは刀を空中に放り投げ、
そして抜けかけになっていたロバートの脇へ刺さっていた刀を回収
もはや銃では動きを止めることはできず、
キアラが投げた刀が地面に突き刺さる頃には20人近くいた傭兵や
「キアラは強いと思っていたけれど、敵わないねぇ」
「逃げずに挑んだことは評価します。
それが逃す理由にはなりません。
実験台にはされないようしっかり殺させてもらいます」
「気遣いのようでなっていない言い方だね。まあタダで死ぬ気はないよ。
クナイをアンチマギアにしなかったこと後悔しな!」
マーニャが三角形の石を使用したタリスマンを取り出すと、
「すぐには解けないはずさ!」
動けないキアラに対してマーニャは紫色の汁が滴るナイフを突き刺
それはキアラの体の軸をとらえていてどう動こうとその刃が身体に
キアラは刀でマーニャのナイフを受け止めてしまった。
キアラはまだ動かすことができる左手に刀を持ってマーニャめがけ
それはマーニャのソウルジェムを両断し、
ナイフの毒が体に行き渡り始めたのかキアラは意識が朦朧となり出
そんな中ナイフを抜き、
それでも意識は回復せず、
この注射は種類がある中でも解毒剤にあたるもので、
呼吸が苦しくなる中、
そしてやっと周囲を見渡す余裕が出た頃にイザベラから通信が入っ
「その周辺のテロリストは掃討できたみたいね。
お疲れ様。
迎えをよこすから少しだけ待っていてちょうだい」
そう言って通信は切れてしまった。
キアラは周囲を見渡すと見慣れた顔の死体が血を流して転がってい
「あなた達が、悪いんですからね・・・」
キアラは迎えが来るまでにその場で涙を流した。
キアラの戦いぶりを見ていたダリウス将軍はイザベラに話しかけた
「全滅させてしまったのは驚きだが、
「無理も承知よ。
「自業自得ってか。従者には優しくしてやれよ」
「うるさいわね。
同時に世界中で発生していた空港や施設の襲撃は人間側は惨敗状態
ほとんどの空港は使い物にならなくなり、
「やはり一般兵器では歯が立たない。
衝撃砲くらいは軍へ提供してやったほうがいいんじゃないか。
これじゃ本命すら止められないぞ」
「情けないわね、手持ち用のものなら余裕があるかしら。
ちょっと生産工場がオーバーワークになるかもしれないけど」
そう言いながらモニターをいじってイザベラは衝撃砲の生産状況を
「やっぱり余分な数は生産できていないわね。
ハリー、奴らの船団はどの程度でカリフォルニア沖に来るかしら」
「現在の速度ですと、およそ17日と10時間ほどでカリフォルニア
「そう、一応猶予はあるわね」
そう言ってイザベラは衝撃砲の発注を32本分行った。
その様子を見ていたダリウス将軍はイザベラに尋ねた。
「あれには魔法石が必要じゃなかったか。
そんなに調達できるのか」
「カルラ達に任せるわ。
もともとあれは彼女達が自前で用意しているし」
「だったらカルラ達にも」
「伝えるわよ。確か今は中庭にいたかしら」
現在ペンタゴンの中庭だった場所には高いアンテナが建設最中であ
そんな建設最中のアンテナタワーを見上げながらカルラはタバコを
カルラの隣には研究員がいて資料片手にアンテナを見ていた。
「カルラ、いまいい?」
私がそう声をかけるとカルラは研究員へ私が来た方とは反対側へ行
その後カルラはこっちを向いた。
「なんだ、アラームの件は落ち着いたのか」
「私がいようがいまいが変わらない状況にはなったわね。
んでお願いしたいことがあってきたのよ」
「願いね。
無茶振りには対応できないよ」
「衝撃砲を一般兵にも配りたいのよ。
32本分用意をお願い」
「…猶予は」
「12日よ。残り3日で本体と接続と動作テストしてそのまま現場
カルラはタバコを一度蒸すとアンテナを見上げながらイザベラと話
「イザベラ、
「何よいきなり。
日照権の問題でしょ。
「建設承認関係で伝えたと思うが、
このタワーにはテレパシー受信および発信用の魔法石も使用されて
「それはわかっているわよ」
「何を言いたいのかというと使いたい魔法石、
今から純度の高いものを用意するとなると、
最悪アフリカのダイアモンド鉱山に赴く必要もあるかもしれない」
「もうアメリカにある宝石では純度が悪いって言いたいの?」
「
内包している魔力量がアメリカにあるものは少ないのだよ。
今まではその中でもましなものを使ったまでさ」
「純度が悪いと変わるのは威力と電力貯蔵量かしら」
「発射にかかる充填速度にも関わる」
「理論はいいからできるかどうかを伝えなさいよ」
「ではお前の願いを叶えるために私からも要望を出させてもらう。
エメラルドかダイヤモンドの原石でもいい。
削った結果イザベラの親指程度の大きさの結晶になるものをお前が
「いいわ。5日で用意してあげる」
「助かるよ。こっちは製錬の準備を進めておくよ」
「言っておくけど原石でいいのよね!」
「別にいいが間に合うか怪しいな」
「わかったわよ削って渡せばいいんでしょ!」
イザベラは怒って建物の中に戻った。
中庭でそんなイザベラを見て笑顔だったのはカルラだけだった。
その様子を見ていた建設員達が言葉を交わした。
「レディと言い合える上に言いくるめるなんて」
「カルラさんも怖いよな」
「いやサピエンスのトップはみんなやばいし人外だって」
「あれらに歯向かう奴らは考え直したほうがいいぜまったく」
イザベラが室内に戻った頃、
「将軍、状況はどう?」
「空路はもう諦めるしかないレベルでやられているよ」
「一箇所10人も魔法少女はいないはずでしょ?」
「君の目線で考えるな。
銃があっても人間には反応速度の限界がある。
「ちなみに一般人は」
「夜行便に乗っていた一般人が巻き込まれて全滅している。
空港勤務の従業員やパイロットも生存は絶望的だろう。
政府は行方不明者リストを作るのに一生懸命だ」
「無駄なことを」
「言ってやるな。
「希望ねぇ」
そう話しているとオペレーターから報告が上がってきました。
「レディ、キアラの収容完了。1時間後には本部に戻る予定です」
「わかったわ。
迎えの車を付け狙う者がいないかは見張っておきなさい」
「了解」
夜明け頃、