【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-4-9 舞台装置が正位置となる時

ドッペル対策で用意された刀をカレンに奪われ、キアラはアンチマギア製の刀を右手で握り、どう取り戻そうかと考えていた。

しかしカレンの周囲では魔力の籠った鉄パイプが3本も浮いていて、自分の対処できる許容範囲を超えていることを理解はできた。

やりようがなく動けない中、イザベラのいる方向から魔法少女の悲鳴が聞こえた。

カレンとキアラは驚いてその方向を向くとイザベラの周囲には魔法少女達が倒れており、ジーナの利き腕を握りつぶそうとしているイザベラがいた。

「ジーナ!」

「キアラは何やってるんだ!」

そう言ってイザベラはジーナの裾を掴んでカレンへ放り投げた。

カレンはジーナを受け止めるのではなく避けてジーナとイザベラの間へ立つように刀でガードの態勢に入った。

イザベラはサブマシンガンの銃口をカレンへ向けていて、引き金を引き続けながらキアラの方向へ歩いて行った。

カレンはジーナを庇うように刀で銃弾を防ぎ、防ぎ切れない分は周囲に浮かんでいた鉄パイプで防いでいた。

イザベラはカレンの前に立ち、カレンへ銃口を向けながらキアラへ話しかけた。

「さっさと立て、それでも私の従者か」

キアラは気が緩んでしまったのか、思わず弱音を吐いてしまった。

「あれは他と違う。目の前に1人だけのはずなのにわたしの四方を囲うような気配に包まれている感じがした。

あの中に何人いるんだ」

「弱音を吐くなと言いたいところだが、あいつ相手は荷が重すぎると認めるよ」

そう言ってイザベラはカレン目掛けて突撃した。

カレンはただ棒立ちするようにし、イザベラの突進後のアクションに備えた。

イザベラはサブマシンガンからカチッという音を鳴らした後に魔法少女達が倒れている方向へ投げた。

その後イザベラの右袖からは鉄製の鞭がニュルリと姿を見せた。

「ジーナからがめったか!」

イザベラは表情変えず鞭を操り、カレンを拘束しようとした。

しかしその先端はカレンが刀を持つ方向を向いていて、刀をどうにかしたいことは感づけた。

カレンは試しに刀で鞭を切り落とそうとするが、鞭と接触して火花をあげるだけで切り落とすことはできなかった。

「どんだけ鈍なんだよこれ!」

「斬る相手が違うんだよ!」

イザベラは左手にナイフを持ってさらにカレンを壁へ追いやろうとした。

それでもカレンの腕力が強めなのか、刀の威力に押されてイザベラの思う方向へカレンは誘導されずにいた。

テレパシーが使えない中、浮いている鉄パイプがカレンの背中を3回叩いた。

シオリが伝えたいことはわかった。

3歩ならまだ余裕はあるな。その前にやれることはあるだろう。

浮いている一つの鉄パイプがイザベラの投げた銃の方へ飛んでいき、銃の引き金部分を破壊した。

「ドローンみたいな付属品が厄介だね」

イザベラがそう言った後、別の鉄パイプはイザベラの背後に回って首を殴ろうとした

イザベラは急にその場で回り始め、勢いに任せて背後にある鉄パイプを左手のナイフで叩き落とした。

アンチマギア製のナイフであったため鉄パイプは制御を失ってそのまま転がってしまった。

鞭はイザベラを囲うような挙動をした後、イザベラは回転をやめて鞭を地面へ叩きつけた。
その後、鞭は地を這う大蛇のようにカレンの左足を狙った。

「まさか魔力を!」

「誰が魔力なんて使うか!」

刀でその鞭を防ぐと、目の前にはアンチマギア製のグレネードが飛んできた。

カレンが焦った顔をしていると周囲に飛んでいた鉄パイプがそのグレネードを打ち返そうとした。

しかし接触式だったのか鉄パイプが触れた瞬間にその場で爆発し、残り一本の浮かんでいた鉄パイプがカレンの前で回転したことで破片がカレンへ当たることはなかった。

アンチマギアの霧でイザベラが見えない中、アンチマギアの影響を受けて魔力で浮いていた鉄パイプが地面へ落ちると、その音を合図にアンチマギアの霧の中からイザベラが飛び出してきた。

「こいつ!」

イザベラは目から血を流しながら右腕に持つ鞭で薙ぎ払うと、それをカレンは刀で防いだ。
イザベラは間髪入れずに右手に持つアンチマギア製のナイフでカレンの左腕を突き刺した。

左腕に激痛が走って苦しみながらも、カレンはイザベラへ問いかけた。

「お前もアンチマギアの影響を受けるだろうに!」

「それがどうした。

全て魔力で動かしているお前達と比べたら軽傷だよ」

そう言いながらイザベラはナイフを下側へ移動した。そのままだと左腕ごと引きちぎられそうな勢いだった。

「返してもらうぞ!」

そう言って腕力を失った左手からイザベラは刀を奪い返した。

「そしてその命も奪わせてもらう!」

そう言ってイザベラがナイフをカレンの左手の甲にある宝石目掛けて振り下ろした。

「したっけ勝てるかい!」

そう言うとなんとカレンの左腕が動き、イザベラの右腕を掴んだ。

骨を砕かれると思ったイザベラは急いで右腕の鞭を手放し、ナイフでカレンの左腕を追い払った。

カレンにナイフが当たることはなく、カレンはゆっくりと鞭を拾い上げた。

イザベラは後ろに下がりながらカレンへ話しかけた。

「何故だ、アンチマギア製のナイフで神経まで到達したはず」

「腕の動かし方にも色々あるってことだ」

イザベラは、微かにカレンの左腕に糸のようなものが見えた。

「なるほど、できるじゃないか」

イザベラはキアラの前に奪い返した刀を突き刺し、キアラからアンチマギア製の刀を奪った。

「あいつを殺すまでだ。あまり気にするな」

そう言ってイザベラはアンチマギア製の刀の柄部分にアンチマギア製のナイフを包帯で巻きつけた。

イザベラは刀を持った状態でカレンへ再度突撃した。

止血のために左腕の根本を糸で縛り付けていたカレンは急いでその場から離れた。

イザベラはそのままの勢いで倒れているジーナへ斬りかかろうとした。

「そうやって!」

カレンは糸を出してジーナや他の倒れている魔法少女達を巻き取り、キアラの近くへ飛ばした。

そしてカレンは鞭でキアラを叩きつけようとした。

キアラは対ドッペル用の刀を引き抜く勢いで鞭を打ち返した。

さらにカレンが鞭で攻撃を加えようとすると、後ろからイザベラが迫ってきた

カレンが鞭で対抗しようとしたものの、鞭をアンチマギア製の刀があっさりと斬り落としてしまった。

「切れ味が違いすぎる」

「適材適所ってやつさ!」

刀を振り上げたイザベラはそのまま柄の部分に縛られたナイフでカレンを突き刺した。

カレンは躊躇なく左腕で受け止め、勢いで床に倒れてしまった。

そのままイザベラに体を踏みつけられてしまい、カレンはイザベラの足をどかそうとするものの何故かイザベラはびくともしなかった。

「なっ!」

「しまいだ!」

頭上では対魔法少女用の刀が、イザベラによって振り上げられていた。

[まさか、殺されるのか]

カレンは心の中でそう思った。

イザベラが刀を振り下ろそうとした時に大広間を閉じていたシャッターが大きく歪み、声が響き渡った。

「アェヤム!」

イザベラの目の前には、歪んだシャッターを突き破って雷の槍が五月雨に飛んできた。
イザベラは命の危険を感じ、カレンへとどめを刺さずにカレンから離れた。

シャッターを吹き飛ばした存在は飛び上がり、カレンとイザベラの間に着地した。

そして立ち上がりながらカレンへ話しかけた。

「まったく、カレンはちょっとでも自分で対処してよね」

「ピリカか!」

[2人共に無事ですか]

使用できないはずのテレパシーが聞こえてきてカレン達は驚いた。

[夏目かこ、何故テレパシーが使える]

[ほんとだ使える!

カレンとコミュニケーション取れなくてヒヤヒヤしたよ]

[随分とボロボロにされたみたいだね]

様子を伺っていたイザベラは口で会話しようとしないカレン達を見て不思議に思っていた。

「増援が来たところで変わらない。

だがその妙な沈黙は、テレパシーが使えるのか」

「さあどうでしょうね」

ピリカがそう言うと、外から不気味な笑い声が小さな衝撃波と共に聞こえてきた。

「今度はなんだ!」

「この声、ワルプルギスの夜…」

ワルプルギスの夜というワードにイザベラは反応した。

「ワルプルギスの夜だと?魔法少女達で消したのではないのか。だとしたらこれは」

[速報速報!ワルプルガが無事に願いを叶えて魔女化することは無くなったよ!

みんな頑張ってね!]

突然聞きなれないテレパシーが聞こえて皆困惑していた。

「使えるようになったのか。ドッペルが」

「いったい何が起きているっていうんだ」

神浜では願いを叶えたワルプルガが魔法少女姿になっており、下半身部分はドッペルに変化していて舞台装置の魔女が頭を上にした状態で不気味な笑い声を世界中に発していた。

その近くでは魔法少女となった佐鳥かごめがアルちゃんを空に掲げ、世界中にドッペルが使えるようになったことを伝えていた。

ワルプルガの様子を見てヨーロッパの魔法少女達は唖然とすることしかできていなかった。

「ワルプルギスの夜ってこんなでかいやつだったのか」

「いや普通じゃない。普通は頭が下のはずだ。

たしか伝承では通常は逆位置状態で、正位置になった時に文明がひっくり返ると言われている」

「じゃあ、まさに今にぴったりじゃないか!」

ワルプルガを見ているほむらは別の感情を抱いていた。

何度も倒そうと試みてきたワルプルギスの夜が、今度は助ける側に回るだなんて。

この時間軸はおかしすぎる。

[でもこの世界ならまどかと自然と仲良く過ごせるようになるのね。

この答えに至ったあなたが羨ましいわ]

ほむらの中にいる謎の存在がほむらへそう語りかけてきた。

「そうね。このまま無事に全てが終われば」

 

二木市の魔法少女達が対抗している通路ではディア達が道を再度塞いだ中、衝撃砲が発射されていた。
わずかな隙間をぬって残ったメンバーは回避した。

十七夜は床にへばりつくことで回避したが、格闘形態に入ったディアによって顔を蹴り飛ばされてしまった。

「神浜の!」

ヨーロッパの魔法少女が十七夜へ声をかけると十七夜は受け身をとって少し体をふらつかせた。

蹴られた左目からは血が出ていた。

「右ではないから問題ない」

「しかしこれどうすれば」

そんな時にこちら側にも例のテレパシーが聞こえてきた。

[速報速報!ワルプルガが無事に願いを叶えて魔女化することは無くなったよ!

みんな頑張ってね!]

「今の聞こえたか!」

「ならば試すしかあるまい」

そう言って十七夜は穢れが溜まりそうな記憶を思い起こし、一気にソウルジェムに穢れを満たした。

その後右目から青い炎が出始め、十七夜の上半身は4本の剣を持ったドッペルへ変化した。

十七夜はシールドを構えた2人のディアの間をかき分けるように剣を差し込んだ。

後ろにいるディアのうち1人が衝撃砲を発するものの、ドッペルの腕が一つ吹っ飛ぶくらいで十七夜は動きを止めなかった

シールド持ちを掻き分けてディア達の中心へ到達した十七夜は剣を振り回した。

その剣を避けるためにディア達は離れたが、シールド持ちの一体を結奈のドッペルが掴み上げた。

「なnドでもにg Iりツブす!」

神浜で戦ったディアと違って周囲に展開できるシールドを持ち合わせていないため、握られたディアはシールドがびくともしない中身体は簡単に潰され、床には大量の血が散らばった。

「限界だったんだ。全部受け取りやがれ!」

そう言って樹里もドッペルを出し、樹里のドッペルがディア達を指さすと口から炎を吐き出し、十七夜を巻き込みながらディア達を燃やし始めた。

爆弾を持っているヨーロッパの魔法少女は暴れるドッペル達を見て驚いていた。

「これが魔女化しない代わりに出るドッペルか。

第三者から見ると恐ろしいことに変わりはないな」

残り5体となったディアはやられるだけではなく。ドッペル用に用意していた銃弾へ換装したガトリングを背負っているコンテナから取り出した。
そして十七夜へ銃口を向けて銃弾を浴びせた。

防御を考えていない十七夜のドッペルは無力に弾痕をつけられて剣は次々と折れていった。

ついに本体も銃弾が貫いていき、後方でディアをさらに握りつぶそうとしていた結奈の腕と体も貫いた。

「まだあんなものを!」

爆弾を持つ魔法少女は接触起爆式の手榴弾をガトリングを持っているディアのいる天井へ投げ、爆発した後破片がディア達に降り注いだ。

これでガトリングを持つディアを含めて2人が死んでしまい、ガトリングは破損して銃口が赤いまま床に落ちた。

ガトリングをモロに受けた十七夜は無事なはずがなく、ドッペルが消えると身体中に穴が空いてかつ右目をソウルジェムと共に破壊されて倒れていた。

結奈はソウルジェムの破壊は免れたものの、ガトリングを防ごうと動いたことで負荷が強かったのかソウルジェムへヒビが入った状態で倒れていた。

そんな間に樹里はドッペルで炎を吐き続けていた。

周囲の壁はアンチマギア製であったがドッペルの魔力には未対応だったのか、熱によって変形が始まっていた。

炎をモノともしないディア達が壁から何かを取り出そうとしても、ハッチになっていると思われる場所が溶接されたように溶けて開かなかった。

ディアはフラフラしながら背負っているコンテナからアサルトライフルを取り出した。

そこに銃弾が飛んできてディアの1人が頭を撃ち抜かれて倒れてしまった。

爆弾を持つ魔法少女が急いで銃弾が飛んできた方向を見ると、そこには三重崎の魔法少女達がいた。

「サバゲ部か!」

「しっちゃかめっちゃかではあるが絶望的ではないようだな」

「手伝え、後一押しだ」

やっと樹里のドッペルがおさまり、ディア達は炎にさらされることは無くなったが、肌が焦げている上に動きがぎこちなかった。

「おかしい、からだがいうことをキカない…」

そう呟きながらコンテナから銃を取り出してもうまく銃を持てず落としてしまったり、コンテナから伸びたアームが変な方向へ向き始めていた。

ライフルを持ったツバキは容赦なくぎこちない動きをするディア達を撃ち抜き、動けるディアはいなくなってしまった。

「あっさり終わってしまったが、何があったんだ」

「私が知るか。

なんであれ道が開けたんだ。本部へ行くぞ」

「おい起きろよ!」

突然の叫び声にびっくりして爆弾を持つ魔法少女達は声を発した樹里のところへ集まった。

樹里はソウルジェムへヒビが入った結奈の体を揺さぶっていた。

博が樹里の腕を掴んで動かせないようにした。

「落ち着け、揺らすと余計割れやすくなる」

「どうすればいいんだよ、樹里さまを1人にするんじゃねぇよ」

「樹里さん・・・」

博は樹里以外の魔法少女達へテレパシーを送った。

[こいつは私が見ておく。3人は本部へ向かってくれ]

[テレパシー使えたのか!

って、別に残らなくてもいいだろ]

[こいつは癇癪持ちと聞いている。

放っておくと何するかわからない。ヒビが入っているこいつも助かる可能性を潰されるかもしれない]

[…勝手にしろ。罠がまだ作動するかもしれないし早めにここからは離れろよ]

[咲、ツバキ、そいつについていけ。

ここは気にするな]

「わかったよ」

3人は本部へ向けて走っていき、博はその場に胡座をかいた。

樹里は泣くだけで特に何かをするわけでもなかった。

生き残った二木市の魔法少女達も、ただその様子を見ることしかできなかった。

 

ケンタッキー州でもワルプルギスの夜の笑い声は響き渡っており、かごめによるアナウンスも広がっていた。

マッケンジー達は不気味な笑い声に警戒していた。

「なんだこれは、魔女によるものか」

ベチャッ

マッケンジーの近くへ強酸性の吐瀉物が飛んできた。

飛ばしてきた方向には魔法少女から魔女のような見た目をしたカバが毒々しい液体を垂らしながらこちらを見ていた。

「結界が展開されない。魔女とは違うのか」

近くの隊員がマッケンジーへ近づいて話しかけた。

「マッケンジー、レディが言っていた魔法少女のまま魔女を出す現象じゃないか」

「もしかしたらがあると言っていたが、本当に起こるとは」

「隊長!他のメンバーからも魔法少女から魔女のようなものを出す現場に遭遇しています。

中には死亡者も発生しています」

マッケンジーは米軍が使用している回線へ繋ぐとそこでは悲惨なやり取りしか聞こえてこなかった。

[魔女の結界が解けた跡から化け物が飛び出している!]

[撤退命令を!結界を展開しない魔女なんて聞いていない!]

[助けてくれ!(骨が砕けるような音)]

「すでに手遅れか」

そう思った時、サピエンスのメンバーたちにイザベラから通信が入った。

「サピエンスのメンバーへ。

裏切者はどの組織にだっているものだ。
これは予定していた通りだ。予定通り奇跡は再び人類を裏切った。

わかっただろう、奇跡はこの程度だ!

だからこそ奇跡に挑戦してやろうではないか。

人類をなめるなと!

人類は醜く多くを自分勝手に犠牲にしてきた。その軌跡の先に私たちがいる。

だからこそ無駄にするな!
人類の底力を、人類の軌跡を誇り、目の前のやつらを進化の糧にしてやろうじゃないか。

醜く抗え、これこそが人間だと。

そうだろう!」

 

ウォーーーーーーーーー!

 

マッケンジー達が歓声をいきなり上げて、周囲の魔法少女達は驚いた。

イザベラの通信が切れた後、マッケンジーはインカムでメンバー全員に伝えた。

「全員私を中心に集結せよ!

集結までは抵抗しようとせずその場を離れることに専念せよ!」

メンバー達が移動を開始すると、魔法少女レーダーを見た隊員が何かに気づいた。

「あいつら俺たちしか眼中にないのか一緒になって集まっている」

「それでいい。

銃は魔女用と魔法少女用両方持った状態にしておけ」

カバの姿をしたドッペルは毒を撒き散らしながらマッケンジー達へ突進した。

マッケンジー達は対魔女用の銃弾で抵抗するが、弾痕をつけるだけで魔女を相手にしているほどのダメージは与えられていなかった。

隊員達はドッペルの突進を避けて魔法少女本体を狙おうとしてもどこにいるのかが特定できなかった。

「本当にこいつ魔女じゃないのか」

サピエンスの隊員達は次々とマッケンジーを中心に集結し、周囲に集まってくる魔法少女へ銃弾をばら撒き続けた。

中には銃弾を受けて倒れる魔法少女もいたが、ドッペルについては全く有効打を与えられていなかった。

マッケンジー達が銃弾をばら撒いている間に衝撃砲を持つメンバーが到着し、衝撃砲がカバの姿をしたドッペルへ直撃した。

衝撃はドッペルの顔左側半分を吹き飛ばし、ドッペルは液状になってその場から消えた。

ドッペルを出していた魔法少女は生きていて、全力疾走をした後かのようにその場で座り込んで深く呼吸をしていた。

他にもドッペルを出している魔法少女達がサピエンスの部隊を取り囲み、攻撃を加えていた。

中には米軍兵士の遺体を引きずりながら近づいてくるドッペルもいた。

「マッケンジー、集まってどうする気ですか!」

「全員撃つのをやめろ!」

マッケンジーがそういうと隊員達は驚いた表情で引き金を引くのをやめた。

魔法少女達も攻撃を止めた。

魔法少女達はサピエンスが攻撃を加えてこないと知ると、武器は構えているものの攻撃は加えてこなかった。

その間に次々とドッペルは消えていった。

マッケンジーは正面の魔法少女達へ大声で語りかけた。

「言葉はわかるか!

お前達の目的は武装集団の殲滅か!」

魔法少女達が顔を合わせてオドオドしている中、マッケンジーの前へ翼を持つ魔法少女が降りて話しかけた。

「貴様のいうとおり我々はサピエンスを中心とした魔法少女を攻撃しようとする連中の殲滅を念頭に置いている。

攻撃しようと考えてもいない民間人を虐殺しようなんてことはしない」

「それは事実か」

「アメリカ大陸では少なくともそうだ。他の場所は知らない。殲滅規模はお任せなのでね」

「判断の難しい回答だな。では今ここから逃げ出した奴の背中は撃たないのか?」

「逃げ出すといいさ。

我々は復讐などという私念に該当するものは無駄だと知っている。

再度銃を向ける時があれば、その時に始末するまでだ」

「そうか。

全員聞いたか!尻尾を巻いて逃げれば見逃してくれるらしい。

逃げたい奴はすぐに逃げろ!」

そう言われて隊員達はその場を動こうとせず、銃のリロードや衝撃砲のチャージを行っていた。

1人の若い隊員がマッケンジーへ話しかけた。

「マッケンジー、これが答えだよ。

覚悟できてるって言ったじゃないか」

マッケンジーは翼の生えた魔法少女へ答えた。

このとおり、この場にいるのは魔法少女を殺したくて仕方がないバカの集まりだ。

主となる者からの激励もあったんだ、なおさらだ」

マッケンジーは背負っていた大剣の先を翼の生えた魔法少女へ向けて、柄のボタンを押すと大剣が中央から割れて銃口が顕になった。

そしてなんの声かけもなく大剣から7.62mmの弾丸が連射された。

魔法少女達は一斉に散った。

サピエンスの隊員達はマッケンジーの攻撃を合図に魔法少女達へ攻撃を開始した。

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-4-8 鶴と亀がすべった。後ろの正面だぁれ?

もう一つの通路側では唯一立っている状態の結奈がディア達へ棍棒を持って殴りかかった。

後ろに控えていたアサルトライフルを持ったディア2人が結奈へ向けて発砲したが、結奈は棍棒で身を守りながらディア達に突進した。

結奈が持っている棍棒はヨーロッパの魔法少女達が用意していたアンチマギアへ対抗するための武器の一つで、弾幕を受けても壊れないよう頑丈に作られている。

突進した結奈はシールドを持ったディアに激突するとその奥へ手榴弾を5個も投げ入れた。

結奈が急いでその場を去った後、後ろに控えていた盾持ちのディアも含めて4人が手榴弾にシールドを向け、他のディアは盾持ちの後ろへ回った。

手榴弾が炸裂した頃には、盾を踏み台にして弾倉交換中のディアへ結奈が棍棒で殴った

殴られたディアはコンテナに付属するアームを起動させ、剣を取り出して防御をしたが棍棒で簡単に振り払われて頭が吹っ飛んでしまった。

「もう一つ!」

結奈がもう1人を殴ろうとするとチャージが浅い衝撃砲が発射されて結奈へ直撃した。

盾持ちのディアは吹っ飛ぶ結奈を避けるように移動し、結奈は床を転がる程度で済んだ。
しかし装填が終わったアサルトライフルが結奈をとらえていた。

「結奈さん!」

ひかるが体の感覚を消して結奈とディア達の間に立ちはだかった。

そのままひかるはひかる軍団を呼び出してアサルトライフルを持ったディア達へ襲い掛からせた。

ひかる軍団はあっさりと撃ち落とされていき、ひかるにも銃弾が当たっていった。

「ひかる、やめなさい!」

「だったらテメェがまともに動いてやれよ!」

そう言って樹里も痛覚を消してディア達の方向へ火炎放射を放っていた。

炎は壁は愚かシールドで消滅してしまってディア達には届いていなかった。

しかし熱は伝わるようで、銃を持つディアは撃つことをやめて下がっていた。

銃撃がおさまるとひかる軍団は消え、全身で銃弾を受け止めたひかるはその場に倒れてしまった。

「ひかる!」

「バカ!そいつはもうダメだ」

そう言って樹里は結奈を後ろへ引きずっていった。

「離しなさい。グリーフシードがあるし、まだ」

「ユナサンハ…マモル…」

そうひかるから声が聞こえた後、ひかるを中心にして周囲へ衝撃が伝わった。

そして周囲には結界が広がって、シャッターで阻まれていた十七夜達も結界に飲み込まれてシャッターの先で何が起こったのかを見ることができるようになった。

「魔女の結界、誰かが魔女化したのか」

銃を持ったディア達が弾倉交換を行っている間にひかる軍団へ手足が生えたかのような使い魔達が現れ、周囲の生き物へ無差別に攻撃を開始した。

そんな中、使い魔に引っ張られる形で大昔のローマで使われたとされる戦車 メルカバの姿をした魔女が現れた。

魔女は結奈とディア達の間に配置され、そこから動こうとしなかった。

「こいつ、魔女になっても長女を守ろうってか」

「ひかる…」

「まさか、魔女になったのってひかるさん」

「せっかく広くなったんだから動けお前達!」

ヨーロッパの魔法少女は盾持ちのディアの後ろへ爆発物を積極的に投げ込んだ。

投げ込まれた爆発物は銃や衝撃砲で撃ち返されていたが、そのおかげで魔法少女達へ攻撃されることはなかった。

「使い魔は厄介だが、治療するなら今だ」

「治療できるやつはもう逝ったよ」

樹里はそう言い、結奈は十七夜達と一緒にいた二木市の魔法少女に抱えられていた。

「もう1人で動くのもやっとなんですから引きましょうよ」

「引くってどこによ。

ひかるが体を張っているんだからやるしかないでしょ」

「そんな状態で何ができる。ここではドッペルを出せんぞ」

そう言って十七夜は背負っていた槍を手に持ってヨーロッパの魔法少女に混じってディアへの攻撃を開始した。

十七夜が盾持ちのディアを槍で貫こうとすると、急に集結していたディア達が散開し始めた。

十七夜には格闘の姿勢になった1人のディアがナックルを装備して十七夜へ殴りかかった

槍のリーチでは対応が難しく、十七夜は少しでも距離おおくことに専念した。

そうしている間に残り6人のディアは皆銃を持っていて、魔女を囲うように移動して魔女へと攻撃を開始した。

普通の魔女よりは堅かったものの、ダメージは入っているようで弾痕がどんどんついていった。

結奈は立ちあがろうとしても転がった際にアンチマギアに触れてしまったのか足が動こうとしなかった。

「情けないわね全く…」

「ほんとだよ!」

樹里やヨーロッパの魔法少女、生き残った二木市の魔法少女が散ったディア達へ攻撃を開始した。

ディア達は十七夜に対抗しているディアの後ろへ再度集結した。

その頃には魔女はボロボロとなっていて、横へ倒れた後に結界と共に消えてしまった。

結奈の前にはゆっくりと魔女のグリーフシードが出現した。

ディア達は再度シールドと衝撃砲を持ち出して道の封鎖に専念した

爆弾を扱うヨーロッパの魔法少女がつぶやいた。
「結界に紛れて突破できると思ったがそうはいかないか。
あっちの方が地獄かと思ったが、こっちも変わらず地獄。私たちはサピエンスを少々なめ過ぎていたのかもしれない」

 

ケンタッキー州では魔女になる魔法少女が出現している中、翼を持った魔法少女とマッケンジーが対峙していた。

「神浜で見たやつか。ここまで来るとは」

「ゆっくり話す必要はない。失せろ」

そう言ってマッケンジーは手榴弾を魔法少女近くへ投げた。

それは空中でネズミ花火のようにクルクルと回り始め、周囲に火花が散り始めた。

マッケンジーはもう一個投げ込み、手榴弾の間に飛ぶ翼を持つ魔法少女へサブマシンガンを放った。

回避し切れないと判断した翼を持つ魔法少女は急降下し、瓦礫に隠れた。

マッケンジーは腕装備に付属している魔力レーダーで翼を持つ魔法少女の居場所をサーチしたが何故か引っ掛からなかった。

「どういうことだ」

マッケンジーがそう呟くと隣のサピエンス隊員がしゃがむようハンドサインを出し、しゃがんだ2人は会話を始めた。

他の隊員からも魔力レーダーが使えないという報告が出ている。

中には魔女の結界へ入られて追跡不能になるものもあるようだが、結界の外でも感知できていないと」

イザベラから魔力検知ができない魔法少女がいるとは聞いている。
だがその概要は1人しかいないと聞いていないが。

周囲の状況は」

把握できる中で最初は魔法少女達を米軍と挟み込む陣形だったが撃ち落とした船から脱出した魔法少女や結界を移動して迂回した魔法少女もいるため陣形は意味をなしちゃいない」

マッケンジーは通信を繋げて隊員全員へ伝えた。

我々の目的は魔女化を促す他にペンタゴンへ他の魔法少女を近づけさせないことだ。

米軍の開けた穴は埋めるよう動け」

その後マッケンジーはチャンネルをダリウス将軍オンリーに切り替えた。

「将軍、米軍が開けた穴は現地では把握できない。指示を頼む」

「マッケンジー、米軍は船の撃墜のために動いていた。その後は発生した魔女退治と民間人の避難所への誘導だ。
ペンタゴンは飛んできた船のミサイルで外の警備は役に立たなくなっている。
予定通り把握できる限りの魔法少女排除と魔女化に優先しろ」

「全く役に立っていないのか。抜けられたらすぐ地下に到達されるが」

「出来るならやってみせろ。魔力レーダーが役に立たないのだろ?」

「・・・将軍、作戦説明時も伝えたが、勝つ気があるのか?
フィラデルフィアでの出来事以来お前を信用してはいないが、開き直りか?」

「どうとでも思え。
だが今大事なのは何をもって勝ちと判断するかだ。
不利だと判断できる状態になれば全員連れて離脱し、民間人の護衛に専念しろ

バレたら私が責任を取ってやる」

「どういうつもりだ」

「昔の教訓だ。お前なら私の罪を十分に理解できるだろう?
イザベラに賛同して終わりない戦いを行いたいなら止めはしないが、お前がそう判断するとは思えないな」

そう言ってダリウス将軍は通信を切ってしまった。

しばらく動きを止めていたマッケンジーを見て隊員が声をかけた。

「マッケンジー、どうした」

「いや、気にするな」

マッケンジーは全隊員へ回線を繋いだ。

「全員へ。魔法少女のサーチアンドキルに変わりはない。

ただしここからは前言撤回だ。
命は大事にしろ。
無理な進軍は不要。

もう時期状況が変わるだろう・・・

もう一度言う。命を第一に行動せよ」

 

翼を持つ魔法少女は近くに発生した魔女の結界へと逃げていた。
その中で魔女を退治する兵士から身を隠していると、別の魔法少女と出会した。

「おお、ちゃんと生きていたか」

「なんとかね。だがマギアネットワークどころかテレパシーすら使えない状態では、ここで行動する意味もわからん」

「まあ陽動だからね。それにテレパシーが使えない状況なんて何度もシミュレーションされたことじゃないか」

「まあそうだが。

神浜のやつがピリカをしっかりカレンのところへ連れて行ってるといいが」

「なんかサピエンスのやつらからあまりやる気を感じないし、大丈夫だろう」

「消極的すぎるのも何かやってきそうで怖いんだけどな」

結界の中心では魔女が大声で泣き叫び始めた。

「魔女が限界だ。移動しようか」

2人の魔法少女はマッケンジーがいた場所とは反対方向へ向けて結界を出ていった。

他の北アメリカ大陸にいる魔法少女達はサピエンスの部隊をペンタゴンへ向かわせないための陽動に努めていた。

民間人へ攻撃を行おうとする魔法少女達はおらず、逆に魔女が民間人へ手を出そうとすると率先して魔女退治を行っていた。
そんな行動に米軍は少し困惑していた。

「どういうことだ、真っ直ぐペンタゴンへ向かうと思っていたが」

「民間人への攻撃するどころか守ってくれているみたいだし。

一部はペンタゴンへ戻ったほうがいいんじゃないか?」

「俺たちが魔法少女にどう対抗するってんだ。

まだ湧き出るであろう魔女に対抗していればいいんだよ」

「サピエンスがいないと手も足も出せないってか。全く」

米軍の司令部はサピエンス本部とは別に設けられており、前線の状況確認よりもペンタゴン周辺の被害状況確認で忙しくしていた。

ペンタゴン周辺の商業施設は爆風や飛んできた残骸で被害を被っており、住宅地にも一部被害が出ていた。

避難用シェルターへの誘導指示は事前に出てはいたが、避難が完了していなかったため少数だが死者が出ている。

空きのあるシェルター情報のやり取りで精一杯であった。

この避難シェルターへの誘導は世界中でも実施が指示されていた。

アンチマギア生産工場の残党処理をサピエンスへ引き継ぎ終わったフランスの軍隊は避難シェルターへの民間人誘導に専念していた。

「魔法少女がこんなところまで襲ってくるのか?」

「事が起きてからじゃ遅いだろ?後で文句言われるよりはいいじゃないか」

「だとしても世界中って。

世界中に魔女が溢れるわけでもあるまいし」

「黙示録が訪れるかもしれないぞ?」

「もし本当に訪れたら俺は宗教派側に寝返るよ」

そんな雑談ができるほど周囲に危機はなく、劣勢な国へ救援に向かう案が検討され始めている頃だった。

 

アンチマギア生産工場跡地ではサピエンスの部隊が残党探しを開始していた。

「気は抜くな!あの爆風でも生きている可能性があることは忘れるな!」

瓦礫を漁っていた隊員の1人が体の焦げた遺体を発見した。

恐る恐る銃剣で遺体を転がしながらソウルジェムが残っていないか探った。

すると左手だけが何故か焦げておらず、黒くなり掛けの宝石が腕輪についていた。

隊員は急いでソウルジェムを撃って破壊した。

「銃声どうした!」

近くにいる隊員が驚いて近づいてくると銃を撃った隊員が大丈夫だというアクションをした。

「本当に生き残ってるやつがいて驚いたよ…」

「しっかり探しておかないと痛い目見そうだな」

「早く地下通路を探せ!ネズミのように地下で増えられてはたまらん」

各国のアンチマギア生産工場の地下にいた魔法少女達については、中華民国やロシアで行動している魔法少女の一部が地下から地上に出ようとしていた。

「ヨーロッパの魔法少女なんて信じるんじゃなかった。

さっさと地上に出て不利な状態から建て直さないと」

そんな中、一部の魔法少女は地上へ出ようとしなかった。

「やめようよ、出たって撃たれて終わるだけだって。

待っていたらもしかしたら解決手段が出てくるかもしれないし」

「待っていてどんなものが来るっていうんだ。

要のマギアネットワークもこの様だ。人間社会を壊すというから乗ったのに」

そう言って懐疑的になった魔法少女達は地上を目指してしまった。

1人が皆を止めようと声をかけようとしても、もう1人の魔法少女が行かないよう指示した。

「テレパシーが使えない今何を言っても無駄だ。

あいつらのせいで地下の道が見つかるだろうし、なるべく深いところへ行こう。

幸いグリーフシードはあるが、解決してくれる時間はどれほどかかるか」

ヨーロッパで魔法少女の拠点となっている場所ではほとんどがサピエンス本部やアンチマギア生産工場の破壊へ向かったため、マギアネットワークを管理する魔法少女と少数のゲートを護衛する魔法少女しかいなかった。

いまだにミアラは目を覚まさず、回復魔法で目覚めるのを待っているところだった。

そんな中、一枚の鏡が光だしてゲートの防衛を行っていた魔法少女達がその鏡へ銃を向けた。

そこから出てきたのはアメリカにいた魔法少女達だった。そのメンバーはマーニャのところにいたメンバーであったため銃を向けていた魔法少女達はすぐに銃を下ろした。

「お前達、マーニャから捕まったと聞いたが」

「事情は後で話すから、急いで教えて!こいつを神浜に連れて行きたいの。

神浜に通じるゲートはどこ!」

「待て何を言ってるんだ。こいつって誰だよ」

アメリカの魔法少女が指さす先には、白髪のツインテールで目が赤い少女がいた。

「こいつを連れて行ってなんになるんだ」

白髪のツインテール少女が喋り始めた。

「やれやれ、テレパシーが使えなくなるだけで説明が必要になるだなんてね。今だけは声帯のある体であることに感謝しないとね。

神浜にいるワルプルガの願いを叶えてあげないといけないんだ。

そのためには僕が必要。魔法少女ならわかるだろう?」

「まさか、お前!」

ゲートを守っていた魔法少女は、急いで神浜に通じるゲートへ魔法少女達を案内した。

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-4-7 立ちはだかる人間らしさ

二木市のグループは地下10階へつながる階段への直線通路に差し掛かっていた。

「気をつけろ、ここには異様に非常シャッターが多かった。

閉じ込められたらそこで終わりだろう」

「だったらさっさと作動させちまえばいいんだよ」

そう言って樹里が列の先頭まで走り、通路の先へ火炎放射を放った。

炎はまっすぐ進み、通路の半分行ったあたりでシールドが発生して通路内には警報が鳴ると共にアナウンスが流れた。

「異常量の魔力を検知、3秒後強制的に区画が区切られます」

「気が早すぎるんだよ!」

そう言ってヨーロッパの魔法少女が2人前へ走り込み、2人の二木市の魔法少女がつられて前に出た。

「なんで前に出る!シャッターから離れろ!」

十七夜がそう言うと皆シャッターが降りる場所から離れた。
その後すぐにシャッターが勢いよく降りた。その勢いは間に人がいれば簡単に潰されてしまうほどの勢いだった

魔法少女達は4区画に隔離されてしまい、先行した4人の後に3人の二木市の魔法少女達、次に結奈、樹里、ひかると1人の二木市の魔法少女達、十七夜とヨーロッパの魔法少女1人、残りの二木市の魔法少女達と分けられた。

先行したヨーロッパの魔法少女がシャッターを壊そうとハンマーを取り出してシャッターを殴ると、少しだけ歪んだ。

しかし一番引っかかったのは、魔法製の武器で殴ってもダメージが入ったことだった。

「アンチマギア製じゃないだと」

最後尾にいるヨーロッパの魔法少女は先頭へテレパシーを行おうとすると何故か返事がなかった。

「おかしい、前のやつから反応がない」

その反応を見て十七夜もテレパシーを試した。

[テレパシーが伝わらないだと?]

隣のヨーロッパの魔法少女へ伝えたはずなのになんの反応も見せなかった。

「セレシア、今テレパシーを送ったのだが何も聞こえなかったのか?」

十七夜からそう言われて初めてヨーロッパの魔法少女の1人であるセレシアはテレパシーが送られていたという事実を知った。

「え、何も聞こえなかった。そんな、どうなっているの」

先頭から次の区画に閉じ込められた魔法少女達はなんとか出ようとシャッターを攻撃していた。

そうしていると天井でカチッと言う音が鳴って煙が出てきた。それは見覚えがある紫色のものだった。

「そんな、無理だよ…」

結奈達のところではカチッという音の後に紫色の液体が天井の消化用放水機から噴出した。

ひかるが潜入用に持ち込んでいたレジャーシートを全員の頭にかけたことで全身にかかることはないものの、かけられるまで少し頭にあたり、足元は液状アンチマギアが溜まり始めていた。

「備えて靴は履いてきたけど、問題は部屋いっぱいになるまでこれが出続けるかね」

「このシャッター案外脆いし殴っていれば壊れそうなのによ」

「樹里さんダメですよ、アンチマギアがあたっちゃいます」

「止まるのを待つしかないわね」

先頭の方ではシールドが発生したあたりで横の壁が開き、そこから盾を持ったディアの顔をした存在が2人出てきた。

さらに後ろには6人のディアが現れた。

「同じ顔が8人?!」

「あの顔、結奈さん達が殺したはず!」

皆が驚いている中、無慈悲にも魔法少女達には充填された衝撃砲が4つ向けられた。

「そんな」

衝撃砲が放たれたと同時に粉上アンチマギアが展開された区画に続くシャッターが衝撃で壊されてしまった。

粉状アンチマギアが舞う中、衝撃砲充填中に魔法少女がいる場所へはガトリング砲が撃ち込まれた。

動くものが何もいなくなった中、衝撃砲が二つ発射され、結奈達を閉じ込めていたシャッターが破壊された。

シャッターが壊れた方を見ると結奈達は言葉を失った。

充填された衝撃砲が二つこっちを向いていて、床は液状アンチマギアと血肉が混ざり合い、前方にいたはずの魔法少女達が原型がないほどの肉になってしまっていた。

そして衝撃砲を向ける人物の姿を見て結奈には怒りが込み上げてきた。

「こんな偶然もあるんだね」

ディアがそう言うと2つの衝撃砲が放たれた。

衝撃砲には結奈以外の魔法少女が巻き込まれ、皆シャッターに叩きつけられて体から血が出た。

1人の魔法少女は衝撃でソウルジェムが壊れて即死してしまった。

ひかると樹里はかろうじて動けるものの激痛でスムーズには動けなかった。

「何故なの、何故またあなたなの!」

「好んで来たわけじゃなかったのかい?
でもこれが結果だよ、鬼の魔法少女」

 

ケンタッキー州では船護衛に動いていた魔法少女達がペンタゴンに向けて動き出していた。

そこをマッケンジー率いるサピエンス部隊が対抗していた。

その戦場でも異変が起きていた。

「おかしい、全然情報が入ってこない」

ミアラに問題があったとしてもテレパシーが全然通じないなんてあるのか?!」

ある場所でははぐれた魔法少女が泣きながら助けを求めていた。

「誰か答えて!

グリーフシードが足りないの!だれか!」

その声に応えたのはサピエンスの兵士で、無慈悲にもその魔法少女はライフルでソウルジェムを撃ち抜かれてしまった。

グリーフシード不足は他の場所でも起きていて、グリーフシードを分け合うためか魔法少女同士が集まる場面が増えた。

その様子はサピエンス本部でも確認できていた。

「無慈悲だが、人類に歯向かう方が悪いんだ」

そう言ってダリウス将軍は近くにあるマップに映し出された魔法少女の密集地をタップしてSGボムの起爆コードを押した。

グリーフシードの交換を行っていた魔法少女の中にソウルジェムが赤く光る魔法少女がいた。

「お前まさか!」

皆急いで周囲に散り、ソウルジェムが光った魔法少女は爆発してしまった。

気づかない集団もあったようで、爆発に巻き込まれた者や目の前で爆発する様を目撃してしまったものもいた。

いやああああああ!

そのせいで穢れが限界に達した魔法少女が魔女になってしまっていた。

マッケンジーは魔女が現れたことを確認すると近くの米軍へ依頼を出した。

「籠の鳥プログラムは変異の段階に入った。予定通り処理を優先で頼む」

「アルファ了解」

前線に残っていた米軍は魔女が発生した場所へ移動を開始し、その穴を埋めるようにサピエンス部隊が展開を開始した。

その様子を遠くからかこは見ていた。

テレパシーが使えないとピリカさんとコミュニケーションさえできないなんて」

「夏目!見つけたぞ!」

そう言って近づいてきたのは三重崎の魔法少女達だった。

「無事でしたか。でも全員ではないですね」

「そんなうまく集合はできないさ」

「トランシーバー持ってるし少しは離れてもやり取りできるよ!」

「なんで持ってるんですか」

「私たちはテレパシーに頼らない日々を送ってきたから。その結果だよ」

「ピリカってやつををカレンの場所へ連れて行く必要があるんだろ?手伝ってやるよ」

「それはありがたいのですが、どうして」

かこに返事をすることなく博は遠くにいる三重崎の魔法少女へトランシーバーで指示を出すと2つビルを挟んだ先でオレンジ色の信号弾が打ち上げられた。

「あれで少しは敵の思考を混乱できるだろうさ。

さて、私たちは足を手に入れるか」

「そう、ですね」

理由を聞く間がないまま、かこたちはペンタゴンへ向けて動き出した。

 

ロシアや中華民国、フランスでは魔法少女達がアンチマギア工場の内部まで入ることができていて、生産装置の破壊まで完了していた。

しかし外でサピエンス部隊が待ち構えている上に、テレパシーが使えない状態になってしまったことで内部から動けずにいた。

「ミアラの奴め、テレパシーが使えなくなるなんて聞いていない」

やっぱりテレパシーが使えないと周囲の情報を共有するのは難しいです。無理して出ようとしてやられた奴もいるって話です」

「これじゃはめられたみたいじゃないか」

外では戦車がアンチマギア工場に集まり、照準を工場に合わせていた。

「…撃て」

指示のままに各車両から砲弾やミサイルが工場へ向かい、工場は爆発に巻き込まれた。

その爆発は工場の機関部にも直撃し、工場は大爆発を起こした。

「目標に到達した。これより残党処理に移る」

他のアンチマギア工場でも同様の結果となった。

 

テレパシーが使えなくなった後の世界の映像を、カレン達は見せられている。カレン達はテレパシーを試したが、繋がることがなかった。

「テレパシーを封じるなんて、魔法だったとしても世界規模でなんてできるはずが」

「魔法少女の得意技はテレパシーによる意識や情報の共有だ。それさえなくなってしまえば身体能力が高い人間と変わりない
少しせこい手は使わせてもらったが、これでも君たち魔法少女達は抗うか?」

イザベラがそう言いながらカレンへ銃口を向けたところで、カレンが反論した

「人類は拒絶するものを生み出すのだけは得意なようだな」

「人類は知恵を得た時から拒絶が得意なことに変わりない。だからこそここまで個性豊かな個体が増えたと言えるが、愚かなのは事実だ。否定はしない」

「イザベラ、あんたは」

セシルがそういうとイザベラはなぜか銃を下ろした。

「さっさと私に手を出したらどうだ?それともテレパシーを使えずおじけづいたか?」

「言わせておけば!」

ニードルガンを持つ魔法少女はイザベラへ向けてニードルガンを放った。

 

研究室ではデコーダに繋がって別の装置が動いていた。

テレパシー遮断波はデコーダの助けを受けて問題なく世界中へ行き渡っています。

しかしインターネットとつなげたままにしていることが原因なのか、インターネット上で誤動作が多発中。インターネットが行き届いていない地域にはテレパシー遮断波の効果が出ていない状態となっています」

報告を受けたカルラは冷静だった。

「予定通りだ。大事なのはアンチマギア工場がある場所らしいからな。

神浜にあいつが侵入したと同時に止めることを忘れるな」

「でもやっぱりこれただの利敵ですよ。無事に人類が勝てば間違いなく」

「いいのさ、人類も多少は試す必要がある。人類が勝つことがあれば潔く殺されるさ」

「そ、そうですか」

「降りたい者は今からシェルターに入っておけ、気にしないものはそのままデータ収集と解析に努めろ」

「その、なんでシェルターに誘導するのですか」

「人類が追い詰められた結末はある程度見当がついている。お前たちなら理解できるだろう」

「まあ、降りる気ないから関係ないですけど」

その言葉を聞いて部屋の中の研究員たちは軽く笑い、その後すぐに画面へ向かってデーター収集を再開した。

「まったく、忠告はしたからな。
こんなはずじゃなかったなんて思ってくれるなよ」

 

イザベラのところではニードルガンを持つ魔法少女がイザベラに向けてニードルガンを乱射していた。

しかしそれは全てキアラに防がれてしまった。

「邪魔すんな!アバも見たままじゃなくて手伝えよ!」

「落ち着きなよ、怒ったってなんも変わんないって」

「我慢の限界なんだよ。

カレンもさっさとそいつ殺せよ!モニターの向こうで仲間が殺されてんだぞ!」

そう言いながらイザベラに向けてニードルガンを持つ魔法少女は走り出した。

「ミア!」

そう言ってアバはキアラとミアの間に割って入るように武器を向けた。

キアラが武器を構えるとイザベラが指示を出した。

「キアラ、stay。手出し無用だ」

ミアと呼ばれるニードルガンを持つ魔法少女はイザベラの左脇腹へニードルガンを突き刺そうとすると、イザベラは左の袖に隠していたナイフを持ってニードルガンを切った。

そのナイフはアンチマギア製であったためニードルガンは粉上になって跡形もなく消えてしまった。

ミアは左手で実体剣の直剣を持っていてそれでイザベラの首を切り落とそうと剣を振った。

それはイザベラが右手に持っていたサブマシンガンに付属している曲剣によって防がれてしまった。

そこからミアが力ずくで押し切ろうとしても何故か腕力で負けているのか押し返されてしまった。

その間、イザベラの左手は暇そうにナイフを袖に戻していた。

押し切られたミアは後ろにのけぞり、そこへイザベラはサブマシンガンを放った。

ミアは勢いにまかせてバク転で回避した。

イザベラが引き金を引き続けていると、サブマシンガンからは弾切れのカチッと言う音がして弾が出なくなった。

ミアは隙だと思い、走ってイザベラの腹へ直剣を差し込もうとした。

しかしイザベラはサブマシンガンを下ろそうとせず少し険しい顔をした。

「ミア迂闊だ!」

そう言ってアバがミアを急いで横から突き飛ばした。

その後すぐにイザベラが持つサブマシンガンから一発の弾丸が飛び出し、それがアバに命中してアバはそのまま倒れてしまった。

「アバ!」

「少しは利口な奴がいたようだね。弾切れを装ったことによく気づけたな」

そう言ってイザベラはアバに向けて4回引き金を引くとそれとともに単発で4発の弾丸がアバに命中した。

それらはアバの服にある宝石へ的確に命中しており、その一つがソウルジェムであったためアバはそのまま死んでしまった。

「き、貴様!」

ミアは怒り狂ってイザベラへ襲いかかった。

ミアやめろ、穢れの分配が間に合わない。

カレンはそう心の中で思ったがテレパシーが遮断されているためミアには届かなかった。

他の仲間達はキアラがいるため動けない状態となり、見つめることしかできなかった。

ミアの出鱈目な直剣の動きをイザベラは表情変えず回避しながら次々とミアの四股へサブマシンガンの弾を撃ち込んでいった。

ミアが走れない状態となった時、ミアのソウルジェムに穢れが満ちてミアを中心として部屋に衝撃が広がった。

皆が衝撃に争っている中、ミアのソウルジェムからはロングバスほどの大きさのあるムカデが出現した。

その後周囲は魔女の結界に包まれて使い魔として曲剣を足につけたトンボがたくさんイザベラへ飛んでいった。

「ただの魔女か。つまらない結果を見せやがって。

キアラ!すぐ処分だ」

「内心で結果はわかっていたくせに」

キアラは今まで持っていた刀を腰に刺し、背負っていた別の刀を抜いた。そして牽制していた魔法少女達へ背を向ける形で魔女へと迫った。

魔女は使い魔よりも早くイザベラへ突撃した。

イザベラは避けて弾倉を外すとそれを服の中へしまい、新たに二つの弾倉をサブマシンガンへ取り付けた。

その後カチッと音が鳴ってサブマシンガンは再度連射されるようになった。

群れで迫ってくる使い魔へはイザベラが対応して走り回る魔女へはキアラが対応していた。

キアラが魔女の前へ立ちはだかると、魔女は口についた牙をカチカチと鳴らしてキアラへと突進した。

キアラは横へ避けた後に尻尾部分を切り落とした。

尻尾部分は緑色の血を流しながら地面に落ちると、ニードルガンのような弾が撃ち出された。

その射線にいた魔法少女達は急いで結界内の障害物へ隠れ、放たれた弾は障害物や壁に刺さった。

魔女は怒り狂ってキアラへと突撃するだけだった。

「行動パターンは魔女になっても変わらないか」

そう言ってキアラは尻尾に近い胴体を一振りで切り落とした。

さらに体が短くなった魔女は逃げることなくキアラを追いかけ回した。

キアラは魔女の正面へ立ち、魔女の顔へ刀を振り下ろした。

刀は魔女の装甲を割っただけで肉には届かず、キアラは刀を持ったまま魔女の背中を転がるように移動した。

魔女がキアラを探す動きをしていると使い魔処理が終わったイザベラが魔女の頭へ銃を撃ち込んだ。

装甲がなくなっていたため銃弾はそのまま肉を貫いて尾の部分まで銃弾が貫通した。

連射されたことで体に穴ができた魔女は動きを止めてその場で倒れ、腐ったように体が崩れ落ちると結界が解除された。

出現したグリーフシードはキアラがすぐに刀で叩き切って壊してしまった。

その瞬間にキアラへはカレンが迫っていた。

カレンは糸を束ねた剣で戦いを挑んでいて、キアラが刀で糸を跳ね除けてもアンチマギアのようにすぐに形が崩れ落ちることがなかった。

アンチマギア製ほど切れ味がないことに気づいたキアラは少し焦り始め、刀を持ち替える隙をうかがった。

イザベラ側にはキアラに止められていた魔法少女達が迫り、人数の差をものともせず跳ね除けていた。

その中でキアラの様子がおかしいことに気づいた。

「まさか切れないのか」

ゆっくりと周囲を確認する暇はなく、ジーナがイザベラの動きを止めようと鞭を生きているかのように動かした。

「カレン以外が雑魚だと思うなよ」

「あんたあの時忠告してきたやつか」

「覚えていたか。今回はしっかり殺してやるよ」

キアラの方はカレンの攻撃を振り払うことができず、攻撃を受け流すことしかできなかった。

カレンはというと密かにキアラへ糸を伸ばして縛り上げようとしていたが、キアラの防具にアンチマギアが使用されており、さらには関節部分にはシールドが貼られる物のようで、魔法製の糸では傷をつけられないことに気づいた。

カレンは持ってきていた鉄パイプに持ち替え、キアラを殴打する方向へ切り替えた。

鉄パイプではキアラの腕を狙い、シオリの魔法で浮かんだ鉄パイプでは足を殴打した。

キアラは攻撃を受け止めると脱臼するしかないことを承知で左腕に刀を持って攻撃を受け止めた。

少しだけ体を浮かすことで刀1本で2本の鉄パイプを受け止め、衝撃で吹き飛ばされはしたものの体幹を崩すことなく着地した。

床を少しだけ後ろ方向へ滑った後に止まることはできたが左腕は少し痺れていた。

そんな中カレンは間髪入れず追撃を入れてきた。

キアラは右腕に刀を持ち替えてそれを床に突き刺した。

突き刺した場所はちょうどカレンとシオリが鉄パイプを振るった軌道上にあり、両方を刀が受け止めた。

それで刺さった刀はびくともしなかった。

キアラはやっと腰に差していたアンチマギア製の刀を抜く隙を手に入れ、右腕で抜いた後、目の前のカレンへ振り下ろした。

カレンはキアラの右腕側に回り込んだ。

キアラは勢いに任せて右側へ振り払おうとしたが、左側に回り込んでいたシオリの操る鉄パイプに気づいた時には手遅れだった。

鉄パイプは勢いよくキアラの左腕を殴った。

慣性までは防具で無効化できず、キアラの左腕はあっさり骨が折れてしまった。

挟み込まれてしまったことでキアラは後ろに下がることができず、痛みを紛らわすためにその場で深呼吸した。

床に刺さったままになってしまった刀はカレンが手に入れてしまった。

「こんな重たいものを振るっていたのか」

カレンがそう雑談を交えてもキアラが答えることはなかった。

「ピリカほどではないが、お前はどこまで耐えられる?」

そう言ってカレンはキアラへ奪ったドッペル向けの刀を向けた。

「どこまでも耐えてみせる。それがイザベラの従者となった私の意地だ!」

「したっけかかってこい。人間としての希望を輝かせて見せろ!」

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-4-6 本命がエサとなりえるか

ペンタゴンへ突撃した魔法少女の船は機能を停止させ、船から出てきた30人の魔法少女達は穴が開いた地下7階へ侵入していた。

セシルが通路に異常がないことを確認した後につぶやいた。

「随分と簡単に深く潜り込めたもんだ。5階から激戦を予想していたが肩透かしだ」

その呟きにカレンが反応した。

「ソフィーが逃げずに照準を合わせ続けた結果だろ?」

「死ぬ必要はなかったと思うけどな」

「ここは敵地よ。おしゃべりの暇なんてないわよ」

そう言って結奈が率いる神浜からの参加組がずんずんと施設の奥地へと向かっていった。

神浜から参加したメンバーは二木市のメンバーが主流となっており、そこに十七夜とヨーロッパから参加した3名が混ざっている。

カレンを中心としたヨーロッパ組にはカレン含めた9名に神浜へ避難していた中東のメンバー6人が混ざったグループで構成されている。

神浜に設置された転送装置で可能になった神浜メンバーのペンタゴン奇襲への参加によって、ヨーロッパ組の一部は陽動用の船団に人員を割くことができた。陽動用の船団には夏目かこと三重崎のメンバーも参加しているため、ピリカのソウルジェムの安全性も問題ないレベルとなった。

ペンタゴンへ潜入したメンバーはすでにミアラからの応答がない状態であることは知っていて、予定通り2グループに分かれてサピエンス本部へ侵攻し、魔力消費を考えてテレパシーの使用は控えることにした。

二木市のメンバーの姿が見えなくなるとカレン達も行動を開始した

「さて、どっちに本命がぶち当たるだろうね」

イザベラってやつと顔合わせたことがあるのはカレンとセシルくらいだろ」

「私はこんなビッグになる前のイザベラへ忠告した程度だ。

一番最近接触したのはカレンくらいだし、好かれてたらこっちにくるんじゃないか?」

「そう知ってて付いてくる死にたがりはお前らだろ?」

実物のアサルトライフルをリロードしながら中東から参加した1人が話し始めた。

「本命を殺せるチャンスだ。乗り掛かるしかないじゃないか」

「まったく。

したっけ向かおうじゃないか」

ペンタゴン地下7階には特に罠は用意されておらず、兵士たちの待機部屋として使用されている階だった。

本来であれば5、6階には液状アンチマギアが消火装置にセットされて通路を通ろうとすれば確実に脱落者が出る作りとなっていた。

そこから先、8、9階には銃器を携えたドローンが粉状アンチマギアを振り撒ける状態で待機している。

そしてサピエンス本部は地下10階に存在していて研究施設は地下11、12階に存在している。

ここまでペンタゴンの詳細を魔法少女が知っている理由としてはマーニャがカルラから受け取った見取り図によって明らかになったものだった。

さらにはミアラが抜き取ったペンタゴンの罠を配置する指示の内容とも一致していたため、魔法少女達は見取り図を信じて進んでいた。

2グループに分かれている理由も見取り図を参考にした結果であり、本部へ通じる通路は二つあり、片方にイザベラが出てももう片方が本部を潰せるからである。

地下8階を進んでいた二木市のグループは何の問題もなくドローンを排除して先へ進めていた。

そんな状態に思わず結奈は呟いてしまった。

「妙ね…」

「何がっすか」

「ミアラさんからイザベラは狡猾と聞いていたのだけど、ここまで見取り図通りなのは素直すぎて」

「いいじゃねぇか、素直なのは嫌いじゃねぇ」

二木市のメンバーの会話に十七夜が割り込んでくる。

「紅晴の言う通りだ。

突然壁から銃が飛び出してくるかもしれないぞ」

「水さすんじゃねえよ。
そんなことされたら壁ごとぶっ壊してやる」

「でもここの壁って」

そう言って二木市の魔法少女の1人が壁に向かって魔法製のハンマーを叩きつけると魔法製のハンマーは光の粒になって消えてしまった。

その様子を見て樹里は驚いた。

「おいおい、触れたらやばい壁だったのかよ」

「見取り図やミアラさんの情報にはなかった。

もうすでに未知の対策をされ始めているってことよ」

「全然気づかなかった。

もしかしたらもうすでに未知のトラップを踏んでるかもしれないってことか」

ヨーロッパから参加した魔法少女も会話に参加してきた。

「そうだろうさ。

本来であればシールドに電力を取られてここの通路は予備電源で暗いライトしかついていないはずだ。

それがこんなに白々しく明るい。

ほんとに壁から銃が出てくるかもしれないな」

「マジかよ」

一方のカレンのグループでも壁の異変に気付きつつ10階に続く階段に通じる通路途中にある大広間に到達していた。

その大広間は直径50mほどある半球体の空間だった。

しかしそこはカレン達にとって予想外の場所であった。

「なんだこれ、まっすぐな通路が階段に続くだけじゃないのか」

「入ってしまってなんだが引き返した方が」

ニードルガンを持つ魔法少女がそう言うとカレン達が通ってきた通路へ急速にシャッターが降りて道が塞がれてしまった。

「おい!これで液体流し込まれたら終わるぞ!」

「いや、近づいてくる魔力で何も起こらないことはわかるよ」

カレンがそう言うと本部へつながる通路から銃弾が飛んできた。

魔法少女達は急いで避けて通路の先から来る存在に備えて武器を構えていた。

「籠の鳥は30ってか。その程度で超えられると思ったのか」

そう言いながら暗い通路の先から現れたのは、いつもの服装で小型のコンテナを背負ったイザベラとコートタイプの軽装と脛当てを装備したキアラが現れた。

姿が見えてすぐに中東の魔法少女達はアサルトライフルを放った。

イザベラとキアラは左右に素早く避け、イザベラは走りながらサブマシンガンで魔法少女達へ反撃した。

キアラは弾を避けながら魔法少女達の背後へ素早く回った。

他の魔法少女達も攻撃へ参加し、イザベラには近接の、キアラには遠距離タイプの魔法少女が対面する形になった。

「動きがいい。でも!」

キアラがそう言うと白い筒がついたクナイを遠距離の魔法少女達が集まる場所へ投げた。

それをレイラが撃ち落とすとクナイについた白い筒が弾けて周囲は白い光に包まれた。

それに反応するようにイザベラは閃光弾を取り出して足元に投げつけた。

魔法少女達は背中を取られないよう集まる中、カレンは魔力反応がする方向から飛んできたフックに引っ掛けられて引き抜かれてしまった。

周囲の視界が戻ると、イザベラにカレンのみが対面する状態になり、その2人に背を向けるようにキアラが、キアラの目線の先に14人の魔法少女達が集まっている状況になっていた。

「なんのつもりだ」

カレンがそう言うとイザベラは銃口を向けながら返事をした。

「首長竜使い、お前と少し話がしたくてね。

キアラ!他の有象無象は任せた」

「了解」

そのやり取りを見たニードルガンを持つ魔法少女が怒り出した。

「なめんじゃねぇ!」

ニードルガンを連射されるとキアラは避けるのではなく刀で切り落としていった。

アンチマギア製の刀を使っているようで魔法で生成された弾丸は斬られた後に消し去られてしまった。

ニードルガンを持つ魔法少女に対してアバが話しかけた。

「やめなって、あいつマーニャ達を1人でやったやつだよ」

「なんだって?」

別の魔法少女もニードルガンを持つ魔法少女へ冷静になるよう伝えた。

「アバの言うとおりだ。下手に行動すると一瞬でやってくるぞ。

名前はキアラ。イザベラの懐刀で人間なのに魔法少女以上の身体能力を持っている

「対抗方法ぐらい話し合っただろ」

「それは相手がやる気になればの話だ」

話しかけていた魔法少女が後ろで戦っているイザベラへサブマシンガンを放とうとすると、キアラはそれを斬ろうと動き出した。

「単純だからいいがな!」

中東の魔法少女達が一斉にイザベラ目掛けて銃を放とうとすると、キアラは足元に円盤状の物体を投げつけた。

そこからは赤紫色の半透明な壁が出現し、銃弾はその壁で防がれた。

その光景に目を向けていた魔法少女達は、目の前でキアラが銃器を切り落としにかかっていることに気付けなかった。

キアラを止めるために近接魔法少女達が前に出て手足を狙おうとするものの、わずかな股下のスペースへ滑り込み、立ち上がる勢いに回転を混ぜて中東の魔法少女達へ刀を振るった。

中東の魔法少女達は急いで銃器を投げて自分たちの手と銃器を守った。

キアラは刀ではなかなか行われない刺突を1人の魔法少女へ行うと、その間の一瞬で、1人のソウルジェムを破壊されてしまった。

そのまま切り上げて左側にいる魔法少女へ振り下ろすと体と共にソウルジェムを叩き切った。

そこから流れるように周囲を薙ぎ払った。

その動きを見てセシルは思わず呟いた。

「やばいとは思っていたが、本当に人間か?」

 

カレンと対面しているイザベラは話を始めるわけではなくいきなりサブマシンガンの引き金を引いた。

カレンもイザベラを殺すために実体のある鉄パイプを持ち出してイザベラへ殴りかかった。

飛んでくる銃弾は避けつつシオリが操る鉄塊で防がれていた。
シオリとテレパシーでのやり取りが行われない中でも、二人の動きは互いを邪魔していなかった。

先端が鋭利となったパイプで突こうとするとサブマシンガンについた短剣で防がれ、イザベラの右手に持っているナイフが迫ってきて咄嗟に糸を束ねた剣で防ぐと、消滅させられるのではなく防げてしまった。

アンチマギア製じゃない?

疑問に思ったカレンはイザベラへテレパシーで伝えようとした。

[なぜアンチマギア製のものを持ち出していない]

しかしテレパシーが来ていることも知らないかのようにイザベラはマグナムを放ち始めた。

楽しそうにマグナムを放つイザベラを見てカレンは苦笑いした。

[話し合う気があるとは思えないな]

マグナムを撃ち終えるとそれはイザベラが背中に背負うコンテナへ格納され、イザベラは右手のナイフをしまって両手にサブマシンガンがアームによって手渡された。

最初よりも密度が高い弾幕が飛んできた。

カレンがキアラの真後ろまで移動するとキアラと対面していた魔法少女達が驚いた。

「カレン?!」

するとイザベラは容赦なくカレンの方へ銃を放った。

キアラも少し驚いた顔をして皆射線上から逃げた。

カレンはそこで紛れて仲間と合流しようとしたが、イザベラが放ったフックが左腕に絡みついて動けなかった。

「逃すわけないだろ、首長竜使い」

フックをすぐに切り落としても、すでに仲間との間にはキアラが割って入っていて合流はできそうになかった。

キアラがカレンを見ながら攻撃をしてこないためカレンはキアラへ問いかけた。

「どうした、自分から仕掛けはしないのか」

「その必要はない。時間をかける方がこちらの得になる」

「どういうことだ」

「こういうことさ」

そう言ってイザベラがポケットから端末を取り出して何かを押すと、半球体の天井には映像が映し出された。

そこには各地の戦場の様子が映し出されていた。

中には別ルートで行った二木市のグループも映し出されていた。

「なんのつもりだ」

「まあみんな手を止めてゆっくり鑑賞してみようじゃないか。
勘が良ければすぐにわかるさ」

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-4-5 籠の鳥プログラム

衝撃砲が配布された米軍でも船団を抑えられない中、ついに魔法少女達の船団がレミングの射程内に入った。

「レミング、射程に入りました!」

「チャージ始め。

周囲の僚軍にはレミングを死守するよう伝えろ」

SGボムをつけた魔法少女は各国で魔法少女達に溶け込めたようです。

ヨーロッパではすでに処理され始めているのか数が減っています」

「奴らに情報が筒抜けなのは承知の上だ。レミングを放てるかどうかが勝敗を分ける。死んでも守れ!」

ダリウス将軍が指示を出している中、イザベラはカルラへ回線を繋いだ。

「カルラ、ぶっつけ本番になるけど用意はできている?」

「大丈夫だよ。あとは合図待ちだ」

「OK。

さて、お前達はどこまで勘付けるかな?
魔法少女諸君」

大通りにキャタピラで移動してきたレミングは前後左右の四方に設置された足を地面に突き刺して車体を固定した。

そして砲身となる筒部分の周りを螺旋状の部品が包んでいき、先端にはパラボラ状のものが展開され、エネルギーチャージが開始された。

砲身の形状を見て何かを察したのか地上の魔法少女達、および船団がレミングに向けて攻撃を開始した。

レミング周辺には試作品の実弾を防げるバリアが用意されており、爆風のない武器は防げていた。

しかしイージス艦から放たれる主砲や魚雷を受けると地面ごと抉られてしまうため次々とシールドが脱落していった。

「守るだけではだめだな。ドローンを惜しみなく投入しろ!

戦闘車両は孤立せずライン陣形を維持。脱出する際は自爆処置を怠るな」

なんとかイージス艦の関心を逸らそうと、米軍は空中へたくさんのドローンを放った。蝗害で作物に群がる虫の如く各船をドローンが取り囲んだ。

「まだこんなにドローンを持っているのか!」

甲板にいる魔法少女達はドローンの排除で一生懸命な様子。

地上では砲身がついた戦車が並べられていて、魔法少女がいると思われる場所へ容赦なく徹甲弾が撃ち込まれはじめた。周囲のビルはレミングの方向へ倒れないよう破壊され、その瓦礫が魔法少女達の行手を阻む。

「チャージは!」

「60%到達!」

「100にならないとダメだ!踏ん張り続けろ!」

瓦礫を乗り越えてきた魔法少女達によって戦車が破壊され始めた。中には動けなくなった戦車を持ち上げ、レミングへ叩きつけてくる魔法少女もいた。

レミングの砲身に当たることはなかったものの、左前側の足が破壊されたことでレミングの照準が左前側へ傾くことになった。

レミング操舵手が残った3本の足を打ち込む深さについて調整を開始し、照準のブレが発生しないようにしていく。

破壊された戦車では自爆装置が発動してそれに巻き込まれる魔法少女が現れ始めた。自爆装置が不発し、使用不可能のまま残ってしまった車両は米軍がロケットランチャーで利用される前に破壊するようにもしていた。

レミングを守るシールドが剥がれ始めた頃、充填率は90%に達していた。

レミングは照準の調整を続けていたが、なかなか船団の母艦をロックできずにいた。

「照準がブレてとらえられない!」

「自動照準に頼るな。

マニュアルで合わせるんだ、訓練で使っていたエイブラムスと同じだ」

「長さも何もかも違うのに何を言ってるんだ。

うわ!」

魔法少女達がレミングのある地面を削り始め、バランスを崩すのは時間の問題であった。

「レディ!レミングの防衛、100%まで耐えられません!」

「情けないな。まあ米軍にしては耐えた方と思っておくか。

マッケンジー!予定より早いが地上を手伝ってやれ。その後は予定通り進んだあとだ」

イザベラがマッケンジーに対して指示を出すと、ちょうどレミングを囲もうとしている魔法少女達の後ろ側にある地下鉄出入口から、液状のアンチマギアが地上へ放水され始めた。

「なんだ?!」

魔法少女達が驚いている中、地下からは液状アンチマギアを振り撒くドローンが展開され、レミングを取り囲むように液状アンチマギアが散布された。

「アンチマギア?!サピエンスか」

今度は道路の真ん中にあるマンホールが吹き飛び、地面を抉るように円柱が地下から飛び出した。その円柱に埋め込まれたアンチマギアを含んだ弾丸が周囲へばら撒かれ始めた。

魔法少女達は弾丸に当たらないよう瓦礫に隠れるように逃げた。

その隠れた先に試作品の光学迷彩でサピエンスの兵士たちが潜伏していた。兵士たちは迷彩を解いて逃げ込んできたソウルジェムめがけてハンマーを振り下ろした。

「遠慮はいらない。砕け」

魔法少女のソウルジェムが割れる音が響く中、ようやくレミングの充填率が100%に達した。

そして照準も定まった。

「いけます!」

「全員耳を塞いで口を開けろ!」

レミング周囲の兵士には自己防衛指示が出された。

「放て!」

ダリウス将軍の指示を合図にレミングは発射された。

サピエンスの兵士たちはマッケンジーの指示で衝撃に備える動きが優先された。

レミングの発射に備えられなかった周囲の魔法少女達は発生した衝撃によって生まれた音で耳が破壊されてしまった。

目に見えない衝撃が魔法少女の船へ到達する前に船から魔法少女達は飛び降りていき、ほぼ無人となった船団の中央にある船には見えない衝撃が命中した。

船は正面から押し潰されたかのように圧縮され、破片を撒き散らしながら海めがけて飛んでいった。

「やったぞ!」

レミング周辺の米兵は目標の撃破に喜んでいた。

しかし周囲にある10隻のイージス艦はまだ浮いた状態だった。

10隻のイージス艦にはスクリュー部分に何かが点火し、加速をかけ始め、全てがミサイルほどのスピードとなってある一箇所に向かって進み出した。

「残りの船が特攻を仕掛けてきます!」

「目的地はどこだ!」

「ペンタゴンのシールド展開!安全が確保されるまで電源は全てシールドに回せ!

全員!衝撃に備えろ!」

10秒もしない間にイザベラがそう指示を出すとペンタゴンにはレミングに使用されていたものよりも強度が高いシールドが地上および地下にある施設を囲うように展開された。

勢いよく特攻してくるイージス艦を止められるものはなく、すべてが五月雨にペンタゴンへ突撃した。

その一つ一つが爆薬を積んでいたのか大きな爆発を起こし、ペンタゴン内は地下の施設にいても立っていられないほどの衝撃が襲った。

立ったままであったイザベラは揺れに耐えられず倒れそうになったが、キアラがイザベラを抱きかかえてイザベラが直接床に倒れないよう守った。

座っているサピエンスの司令部にいるメンバーには強い揺れで椅子から転げ落ちてしまう者もいた。

同時に街中では衝撃砲の反動に耐えられなかったレミングが爆発し、魔法少女の船から脱出した魔法少女達が着陸していた。

皆が大きな爆発が発生したペンタゴンの方を見ていた。

サピエンス本部は揺れが収まって数秒は真っ暗だったものの、予備電源が起動して薄暗く赤いランプが室内を照らし出した。

ほとんどのメンバーが床に倒れている中、いち早く態勢を整えたのはダリウス将軍だった。

「ダメージレポート、急げ!」

急いでオペレーターたちが席につくと、画面が荒い中でペンタゴン周辺の損傷状況を調べ出した。

イザベラは近くにいたキアラに起こされる形で立ち上がった。

次々とメンバーが起き上がっていく中、オペレーターが報告を始めた。

「報告します。

ペンタゴンの施設自体はシールドにより無傷。

全ての電力がシールドに消費され、一瞬の許容量を超えたため主電源はオーバーヒートを起こして停止。そのため現在はシールドが消滅しています。

施設内は全て予備電源で動いています。

ペンタゴン周辺は大きく吹き飛び、ひどいところは地下3階まで地面がえぐれているようです。

他は監視カメラが死んでいて状況つかめません」

「施設を無傷で守れたならば上出来じゃないか」

司令室内が安堵の空気になる中、アラームが鳴り響く。

「魔力反応だと、どこだ!」

「大西洋側で、レミングで吹き飛ばしたものと同型である船の反応です!」

大西洋側のペンタゴン近くに姿を消していた船は透明化を解き、同時に消えていた影も出現した。

「やはりきていたか」

「シールドは現在使えません!」

「この段取り、全てこのためか」

空飛ぶ魔法少女の船は主砲をペンタゴンへ向けていた。

「カルラ、アンテナが破壊される前に籠の鳥プログラムを進めなさい!

「了解」

カルラは通信を切った後に同じ部屋にいる研究員へ指示を出した。

「籠の鳥の指示が出た。籠の中にいる鳥の感覚を消しにかかる。デコーダ起動!」

「了解。デコーダのネットワークへの接続開始。

全ての掌握まで30秒」

その間に主砲が発射され、それは地下三階付近の地面へ直撃した。

カルラ達がいる場所は地下10階のため衝撃が伝わってくる程度だった。

「デコーダOKです」

「悪く思うなよ、これも試練だと思え。

デコーダ発動!情報の覗き魔へお仕置きをしてやれ」

デコーダと呼ばれるヒューズのような見た目をした手のひらほどのサイズがある装置は内部の芯が発光し、一時的に世界中のネットワークがダウンした。

この事態に驚いたのはヨーロッパにいるミアラ達であった。

「ミアラ!世界中のネットワークが」

「悪影響は相手側にもあるはず。どういうつもりだ」

ミアラが不思議に思っていると、一瞬の間にミアラには世界中のデータ量が5倍に増幅された情報量が流れ込んできた。

固有魔法としてあらゆる情報を収集する能力を持つミアラは立ち話だけではなく、ネットワーク上の情報も隅々まで収集してしまう。

普段は魔法少女達の隠れ家にある情報処理装置の補助があって問題は出ていなかったが、大量のデータが流れ込んだことで補助装置も破壊されてしまった。

装置をいじっていた魔法少女は突然端末から火花が飛んでその場に倒れてしまった。

「一体何?」

装置から火が出てしばらくするとミアラは耳から血を出して倒れてしまった。

「ミアラ?!」

「ミアラしっかりしてよ!」

「どうしよう、マギアネットワークも機能しなくなっちゃったよ」

「ミアラ起きて!私をひとりにしないでよ、ミアラ!」

魔法少女達はミアラの能力を経由したテレパシーを世界中で共有できるマギアネットワークという通信機構を用意していた。

これによって世界中の統制をとっていたが、ミアラが倒れたことでマギアネットワークが機能しなくなってしまった。

それは戦場ですぐに影響が出た。

「なんだ、情報が流れてこなくなったぞ」

「カレン達はうまくいったのか!」

デコーダがうまく稼働したことを魔法少女達の反応で察したカルラは研究員たちへ次の指示を出した。

「デコーダとのつながりを持たせたままネットワークの再起動を開始しなさい」

「でもよいのですか、テレパシー遮断を止める予定で通常ネットワークとつなげたままって」

「かまわないさ、最悪の状態になったときのための保険だ。
気にするな。すべての責任は私が負うさ」

「わかりました。予定通り進めます」

通常のネットワークが再稼働した後、カルラはイザベラへ通信を行った。

「籠の鳥プログラム、鳥たちから感覚を奪い去る事に成功。
通常のネットワークは正常に再稼働された状態になったことも確認。
次の段階へ移ることができる」

「了解。

籠の鳥プログラムはへんげの段階へ移行しなさい!

全員、戦場に出てすべてを魔女化させなさい」

それを合図にアンチマギア製造施設がある各国では魔法少女達の背後をとる形でサピエンス所属の兵士たちが魔法少女を奇襲した。

「なに!一体どうなってるの?!」

「こんなの聞いていないわ。アメリカではどうなっているの!」

ロシアに現れたサピエンス部隊は魔法少女達へ液状のアンチマギアを放水し、銃ではなく液状のアンチマギアを浴びせて動きを止める作戦を実行していた。

退路を塞がれる形でサピエンス部隊が出現したため、魔法少女は逃げ場がなくわずかな安全地帯を探すために走り回った。

施設の外に出れば合図と共に地上へ出現したサピエンス部隊の銃弾が待っており、アンチマギアの銃によって魔法少女達は倒れていった。

生き残っていた一般兵にはサピエンスの兵士たちからアンチマギアが練り込まれた武器が手渡された。

「待たせたな。反撃といこうじゃないか」

「ほんとに遅いぜ。でもありがたい!」

世界中でサピエンス部隊が動き出した頃、大西洋側に現れた船はペンタゴンの地下を掘るように主砲を放ち続けていた。

魔法少女の船はペンタゴンの壁ではなくただひたすらに地面へ主砲を撃ち込み、空いた穴へ追い打ちで魚雷を8発撃ち込んだ。

さらには船首部分へ魔法で生成されたドリルが出現し、地下7階まで穴を開けた。魔法少女の船が地面へ突き刺さる状態のまま、船はなぜか突然に機能を停止した。船の中にいた魔法少女は全員外へ出て、地下7階に当たる場所へ爆弾のようなもので穴をあけてペンタゴン内部へなだれ込んだ。

サピエンス本部では地下7階で魔法少女の反応があったことを確認していた。

「随分とショートカットしてくれたじゃないか」

「イザベラ、そろそろ」

「そうだね」

イザベラはディアに対して回線を繋いだ。

「準備しなさい。ほぼ無傷でくるわよ」

「了解」

無機質な返事を聞いた後に通信を切り、イザベラはダリウス将軍へ指示を出した。

「将軍、ここから各部隊への指示はあなたに一任します。私がいなくなった後にみんなで逃げ出してしまってもいいですよ」

「ふん、そこまで無駄口を叩けるならかえって安心する。

安心しろ、最後までこの国のために尽くすさ」

「臆病な方が長生きしやすいですよ」

「十分憶病に生きてきた人生だ。私だけでも最後まで抗うさ。
過去のように魔法少女の前から逃げ出すようなことはもうしない」

「ではフィラデルフィアのコイルを盗まれたときの教訓、今一度しっかり見せてくださいね。

キアラ、行くよ!」

「了解」

イザベラはキアラと共に侵入してきた魔法少女を迎え撃つために司令室を出た。

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-4-4 魔法少女がもたらすハルマゲドン

世界の空路が破壊されて15日が経過した。

その間に世界中の港も攻撃され、ハワイに関しては戦える軍人は残っていなかった。

世界には避難勧告が出され、多くの人々は10日以上も避難所暮らしする者もいる。

中には志願して非正規兵になる者も現れ、もはやテロではなく戦争と言える規模となっていた。

中東では政府が魔法少女に便乗した武装集団によって破壊され、無政府状態になった後に指導者になろうとするイスラム教徒とそれを阻止しようとする元政府支持派で争いが続いていた。

難民となった一般人を匿ってくれる場所はなく、中東と区分される地域はもはや国と呼べるものがなくなっていた。

ロシアでは空港が破壊されてしまったものの、アンチマギア生産施設は死守できていた。

そこへ通ずる市街地は戦場になっているものの、空港や港、アンチマギア生産施設とは離れている都市は戦場にはなっていなかった。

避難所では不条理な出来事に嘆く者がいれば、自分の子どもが魔法少女であり、世界の敵になったと知って悲しむ者もいた。

ロシアとヨーロッパで共同管理されている黒海は以前から魔法少女の行き来にも欠かせない場所となっていて、軍艦のありかは魔法少女にもよく知られていた。

魔法少女達はその軍艦を強奪しようと動き、黒海周辺はアンチマギア生産施設側よりも激しい戦いが行われていた。

ヨーロッパはもっと酷く、アンチマギア生産施設は陥落寸前だった。

施設入り口まで詰められており、内部に入られて生産装置が破壊されるのは時間の問題だった。

施設を防衛する一般兵士たちはアンチマギア装備を使用してはいるものの、アンチマギアに慣れてしまったヨーロッパの魔法少女相手には足止めにもならなかった。
魔法少女達は魔法ではない実体のある武器を持ち出しており、粉末状アンチマギアは吹き飛ばされて意味がなかった。
一般兵が牽制に用いることができたのは銃だけで、それもなぜかアンチマギアで無効化できないバリアで弾かれてしまっていた。

アフリカやブラジルでも空港が攻撃されたものの、市街地には特に被害が出ていなかった。そのため避難勧告とはいえ都市部にいる住民は外出禁止という処置がとられていた。

アフリカの魔法少女達が特に群がったのは宝石が採掘できる鉱山で、そこで働いていた鉱山夫達は皆逃げ出してしまった。

中華民国は国連指揮下ということもあり多国籍軍状態で魔法少女達に対抗していた。
空港や港は一般人が使える状態ではなくなり、アンチマギア生産施設も攻撃を受けていた。

指揮は中華民国の兵士が実施しているものの、多国籍軍の統率はとれているとは言えないものだった。各々が思い通りに動いた結果、偶然魔法少女達を抑えられているという状態だ。

そんな中で中華民国にとって特に厄介なのはインドから流れてくるサピエンス反対派だった。

人口総人数第一位になっているインドでは、仏教を侮辱しているとしてサピエンス反対派が魔法少女達と協力してサピエンス本部へつながる同線を作ろうとしていた。

インドの空港は魔法少女達を運ぶためとして破壊よりも占領が優先され、同時進行で中華民国へと攻め込んでいた。中華民国へ不満を持っていた周辺国はこれに便乗して戦いに参加している場所もあった。
インド政府はこれらの動きを黙認し、この戦いが終わった後のことしか考えていなかった。

オーストラリアでは魔法少女達が使っていた造船所を調査されていたものの、施設に踏み入れようとした瞬間に施設は自爆してしまった。

そんな経緯があり、もう魔法少女はいないと思われた中で魔法少女達はシドニーに現れた。

しかし人員が少ないのかまだ無事な空港は存在した。

空港は使えるもののオーストラリア側の難民受け入れ体制が整っておらず、オーストラリアに入ってくる航空機はない。

そんな世界中が混乱している中、カリフォルニア沖では神浜から出発した船団を目視できていた。

サピエンス本部では海岸線がすでに魔法少女に占領されていた様子を嘆いていた。

「ほんと結果を見ると情けないわね。対抗策は用意できるのにあっさり制圧されるなんて」

「テロリストの首領を討てば少しは変わると思ったが、びくともしないか」

私たちが魔法少女を利用するのと同じことをあいつらもやったってことよ。

来てしまうのは仕方がないわ。

大型波動砲「レミング」を前進させておきなさい」

「レディ、再確認を実施しましたが海岸線に移動に使用すると思われる車両が見当たりません」

「あいつら、地上は歩きで移動する気か」

イザベラは魔法少女達が使う船のデータを思い出していた。

その中でも大波の中その船だけびくともしなかったというデータを思い出した時に閃いた。

「まさか…」

「どうしたイザベラ」

イザベラの変化に気づいたキアラが声をかけた。

イザベラはキアラの反応を気にすることなく米軍司令部に通信を繋げた。

「カリフォルニア州に出せる対空ドローンはある?」

米軍司令部は突然通信が繋がって驚いていた。

「対空だと?対地ではなくか」

「対空だと言ってるでしょ!出せるなら出しなさい!あいつらを無傷で通すことになるわよ!」

そんなやりとりをしていると魔法少女の船団は勢いを落とすことなく進み続け、そして陸が目の前に迫ると船全ての船体が浮かび上がって空を航行し始めた。

その様子を見た米軍の兵は驚くしかなかった。

「なん、だと」

「レディが何を危惧したかわかった。まったく、出鱈目がすぎるぞ!」

米軍は半信半疑だった対空ドローンの用意を急いだ。

サピエンス本部では皆冷静に次のための備えに動いていた。

あんなことされたら次は地中からドリルでこられても驚きもしないが」

「地中では何も起きていないことは確認できているからいいのよ。地下道を掘られていたらいやでも振動計器が反応するはずよ。

問題は大西洋側。

奴らが大きな物体を浮かべる技術を身につけているならば」

「反対側でもやられておかしくないか。

だが不審な影も白波も確認できない。空を飛んできていた場合でも流石に対処のしようがない」

「いい状況ではないわね。

レミングは中心にいる船に照準を当てたまま前進。護衛には死んでも波動砲は守りなさいと伝えなさい」

魔法少女達の船団は飛んでくるドローンを対空砲や甲板にいる魔法少女、そして地上にいる魔法少女達が対応して、無傷でサピエンス本部へと近づいていった。

米軍がやっと増援の対空砲やPACシリーズのミサイル装置を用意して迎撃を行っても、魔法少女の船は一緒にいるイージス艦含めてシールドを張っており、それらを受け付けなかった。
魔法少女の船は魚雷を地上へ撃ち込み、米軍は一方的にやられていた。

「流石に弱すぎないかしら、人類」

イザベラの発言にダリウス将軍が反応した。

「イザベラがいなきゃ人類はこの程度だってことだ。数年じゃ対策なんてしようがないさ。

まだ動かさないのか」

「早すぎるわ。少なくとも悠々と飛んでいるあれを事前に落としてくれないと」

「とはいえこの様子だとコロラドまでは難なく素通りしてくるだろうな」

ダリウス将軍とイザベラが話しているとオペレーターが声をかけてきた。

「レディ、米軍司令部が話し合いを求めています」

「全部却下よ。好きなようにしていなさいと伝えなさい」

「りょ、了解」

「しつこく通知を送ってきても無視しておきなさい」

「やれやれ可哀想に」

「世界最強を目指した国が呆れるわ。私が伝えたことも半信半疑になってすぐ言うこと聞かないし。

自分たちだけで魔法少女くらい止めてみなさいよ」

魔法少女の船団がコロラド州に入り始めた頃、米軍は市街地に戦車を並べて兵士の一部には衝撃砲が配られていた。

その部隊へ地上を移動している魔法少女達が攻撃を加えはじめた。

人の大きさを相手するのに戦車は不向きで、魔法少女の集団へ一発撃ち込むと魔法少女に詰め寄られて主砲どころか車体もすぐに破壊されてしまった。

随伴歩兵は獣の姿をした魔法少女集団に次々と切り裂かれており、戦車を守れる状態ではなかった。

「調子に乗るんじゃない!」

そう言って衝撃砲が1発放たれてやっと魔法少女達に被害が出た。

猫のような姿をした魔法少女の1人が衝撃砲に巻き込まれて建物に叩きつけられ、建物の壁には叩きつけられた魔法少女を中心に放射状の血の跡がついた。

「よし、効いてる!」

「もう一発どうだ!」

そう言ってもう1人が建物へ叩きつけられた魔法少女へ衝撃砲を放つと魔法少女の体は圧力で潰れてその場には肉片と血が飛び散った。

「効果ありです!」

「連射はできない。敵の動揺を突いてやれ!」

銃での追撃では魔法少女を倒せなかったものの、魔法少女達は瓦礫に身を潜めて前に出てこなくなった。

しかしその上空を魔法少女達の船団は通り抜けていく。

サピエンス本部には前線で少しは成果があったことが報告された。

「やっと敵が乱れ出したか。

魔法少女の捕虜達を解き放ちなさい。予定通りカンザスあたりでいい感じに混ざってくれるはずよ」

「気乗りはしないがな」

「内部で暴れられるよりはマシよ」

「レディ、前線で魔女が大量発生中との報告!一部は民間人の避難地近くへ向かっています」

「魔女化には早いわ。奴らが解き放ったやつでしょうけどサピエンスの兵士たちは予定タイミングまで動かさないで。

魔法少女狩りの名残で魔女対策の武器くらいなら一般兵には配られてる。米軍司令部へはお前達で対処しろと伝えなさい」

そんなサピエンスの判断を受けて米軍司令部は激怒していた。

「あいつら!この国を守る気あるのか!」

「今のところ何もしていないですよ」

「レディめ、この国が滅ぶまで静観する気じゃないだろうな。

仕方がない!我々は魔法少女よりも魔女へ対処する。前線へそう伝えろ!」

指示を受けた軍人達はマガジンを魔女用に切り替えて魔女の結界へ突入していった。

そうすると前線に穴が開くのは当然で、魔法少女達の船団はその場を通り過ぎていった。

カンザス州も通り過ぎようという頃、ヨーロッパから連絡が入った。その内容をオペレーターが報告した。

「レディ!フランスのアンチマギア生産施設が破壊されました」

「ことごとく信用を落としていく地域ね全く。

防衛目標がなくなっても潜伏した部隊は合図があれば襲撃してもらうからね」

「それなら何を目的に戦うことになるんだ」

「事前会議で伝えた通りよ。奴らを追い込むことに意味がある」

世界中で戦いが始まって1日が経過した。

中東で政府や秩序は失われ、ブラジルやアフリカでは軍事施設も破壊されたものの、市街地は無事なままだった。

他の主要な国も襲われているのは軍事関係の施設であって、魔法少女達は一般人に被害を出そうとはしていなかった。

しかし魔法少女に便乗した武装集団の中には、特定の人種の虐待行為を開始するものも現れており、魔法少女以外の武装集団へ対策しなければいけないことには変わりなかった。むしろ一般兵は魔法少女よりも人間の武装集団を鎮圧するために人員が回されるようになっていて、魔法少女を相手にする軍人は少なくなっていた。

短期間で魔法少女の思い通りになっている世界の様子を見てダリウス将軍は嘆いた。

「こうも簡単に世界はめちゃくちゃにされるものなのだな」

その呟きにハリーと呼ばれる観測士が答えた。

「それにしても魔法少女達は統率が取られすぎている気がします。こちらの情報が筒抜けというのも事実かのようにものとしませんし

そのためにイザベラが通信装置を使わず下準備を進めているんだ。

直近だとレミングが要だ。レミングはどこまで動かせた」

「現在バージニアをでてケンタッキーを移動中です。

まだ射程には捉えられません」

「バージニアを抜けられたのであれば十分だ。

確実に中央の船を狙え。何発も撃てるものではないからな」

一方、キアラは部屋の中で落ち込んでいた。その部屋へイザベラが入るとキアラはなんでもなかったかのように出迎えた。

「どうした、司令室にいなくていいのか」

「将軍がいるし、しばらくは大丈夫よ。

それにしても日本人の悪い癖ね。言いたいことがあればはっきり言いなさい」

「…別に何もないさ」

「まだロバート達のことを引きずっているの?彼らは人類を守ろうと行動している我々への反逆よ。

いかなる理由があろうと政府に対するテロ行為は罰しなければならない。

それが武力を持つ我々ができる守という行為よ」

「ロバート達を言葉で説得することはできなかったのだろうか」

「仲良くしようと説得しても相手が殺してやるとしか言わなかったら、会話にすらならないじゃない?

そんな奴らに説得なんて必要かしら?」

「わかってはいるさ。何を言おうと平和的に生きられない奴らがいることなんて。

そんな現状を変えることはできないのか」

「無理ね。

人類から感情を消そうと、欲を取り払おうと、相手の気持ちを完璧に理解することが不可能な人間にとって争いない世界の実現は無理な話。

今あなたとこうして言い争いが発生してしまっているようにね」

「・・・イザベラは人類を戦わせ続ける選択を取ったのか」

「私は父ほど優秀ではないわ。

だからこんな役割しか果たせない。ロバート達だって、考えた結果あの結末しか迎えられなかったのよ。

あなたがあそこで裏切ったとしても、私が殺していたでしょうし結末は変わらなかったわ」

キアラは何も答えなかった。

「キアラ、間違いなく魔法少女達はここに攻め込んでくるわ。そいつらを私は正面から迎え撃つ。
あなたはそんな覚悟で、正面から魔法少女達を切ることができるの?」

「余計な心配をさせてしまったようだね。
何の躊躇もなく敵を切り倒せる覚悟はできている」

「そう」

「それに簡単に死ぬわけにはいかないさ。どうせあれの準備を進めているのだろう?」

「・・・脅しじゃないけど、あなたがいなくなったら私の行動は早いわよ」

「十分脅しじゃないか。

まあわかっているさ。私はイザベラが危なっかしいからこうしてボディーガードをしているんだ

でもイザベラの命に変えても守るよ。それもボディーガードの務めだからね」

「キアラが死んだら意味がないじゃないの」

イザベラが部屋から出ていった後、キアラは施設の地下へと向かった。

地下の研究室にいるカルラをキアラは訪ねた。

カルラはディアのメンテナンスを行っていて、脳波検査をしていた。

キアラが来たことに気づいてカルラが話しかけてきた。

「ボディーガードナーが主人のそばを離れてはダメじゃないか」

「カルラ、聞きたいことがある」

「取り込み中だ。手短に済むなら構わん」

「魔法少女の奇跡は人為的に起こせるものなのか」

カルラはディアに被せていた装置を外した。そして測定結果と思われる画面に映った波形を見ながらカルラは語り出した。

「一つ実例があるから教えてあげよう。

とあるバカな錬金術師が自分を犠牲に奇跡を起こそうとした。でもその結果はお前達が探って回ったイタリアの猛毒地域を見た通りだ。
あそこは魔法少女の奇跡を人為的に起こそうとした成れの果てだ。

つまりそういうことだ。奇跡なんて狙って起こせるものではない」

「その錬金術師は、どんな奇跡を起こそうとしたんだ」

「知らないな。

私が受け取ったのは奴の遺書だけだ。だから奴が死んだということしか知らない」

「そうか。

変なことを聞きに来て悪かったね」

「別に変ではない。疑問を得て解消しようという動きは良いことだ。

今の状況ならそんな疑問を抱きたい気持ちもわかる」

「そう、ありがとう。おかげで覚悟が確実なものになったよ」

そう言ってキアラは部屋から出ていった。

キアラの足跡が聞こえなくなった頃、黙っていたディアがカルラへ話しかけた。

「らしくない回答だね。キアラが勘違いしちゃったじゃないか」

「らしくないっていうのはどういうことだ」

「バカな錬金術師というのがどんな奴だったのかは私は知らない。でも少なくとも私が知っているカルラは結果だけで失敗か否かを判断するやつではない。

その錬金術師は確かに死んだかもしれないが、それは過程で実は望んだ結論が導かれていたかもしれないんじゃないの?

なぜキアラに嘘をついた」

ディアは珍しく鋭い目つきでカルラをにらみつけた。

カルラは感情のない顔でディアの顔を見つめた後に話した。

あのバカが証明したかったことがなんなのかがはっきりしないというのは事実さ。
あいつは遠回しなやり方でもやることはいつでも正しかった。きっと死んだことに意味がある結論が出た結果なのだろうと思いたい私がいることも確かだ。

それに、真実をそのまま伝えて良いことと悪いことがある。

特に希望というものには期待を込めてはいけない。

キアラには最後まで従順な従者として生きてほしいからね、彼女の思い込んだ結果は私には望ましい結果だ」

「ひどいねカルラは」

「それよりも脳内情報のバックアップだが、やはり実施は無理なレベルだ。

記録をとった時の脳波情報は保存できても、それは一時的で断片的な記録だ。

今の技術レベルではディアの脳内情報や思考が全てコピーできるようなものではないようだ」

「うーん、そうなると脳みそだけ培養液の中に浮かべるしか方法はないか」

「感心しない結論だ。

身体の替が効いても脳本体の電源が切られたら全てが終わることに変わりはない」

「分身全てが私となることは未だに成功できていない。そうできればいいのに、本体となる体が必ず一つ必要なのが現状の問題でしょ」

「今回は8体同時だからな、情報過多で本体がイカれることは否定できない。でもやる気なのだろう?」

「もう時間がないし、仕方がないさ。強化した本体が耐えてくれることを願うよ」

そう言った後、ディアはカルラの手を握ってきた。

「カルラ、カルラはバカな錬金術師のように自分を犠牲にして仮説を証明したりしないよね?」

「そうだな。サピエンスが私だけになって責任とって首を切ることになれば死んで人類の負けを証明しないといけないかもね」

「ふざけたことを言うんじゃない。裏切るんだったら私にもちゃんと教えてよね」

「まあ・・・私はできる限り、人類を信じるさ。

今の人類に勝ち目なんてないとわかっていてもね」

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-4-3 終に向かい始める世界

日本から11隻の船が出航してから1日経過した頃の夜、突然世界中で敵襲のアラームが鳴り響いた。

そのアラームは魔法少女にもそうだが、テロリスト対策用のアラームも同時に鳴った。

その余りもの多さに監視部署は混乱してしまった。

「こんな一斉になんておかしいだろ!」

「誤報ではないのか?」

「すべて正常な動作です!

アンチマギア生産施設の有無問わずテロが発生しています」

ペンタゴンの監視部署ではマニュアルにもない非常事態でただ慌てるしかなかった。

サピエンス本部の司令室にも世界中でアラームが上がっている情報が入っていた。ダリウス将軍とその部下達はいつかは起こることを知っていたかのように冷静であった。

「情報収集に専念しろ。人間が混ざっているならどこの奴らなのかもわかるようにな。

一応聞いておくが、日本以外に落ち着いている土地はあるか」

「南極基地には出現していないようです。

あとはなぜかニュージーランドが安全地帯となっているようで」

「ニュージーランド?

魔法少女がいないだけかもしれないが、オーストラリアにはしっかり調査するよう伝えろ」

「了解!」

「将軍!米国とヨーロッパではキリスト教信者もサピエンス反対を掲げて攻撃活動に参加しているとの報告です」

「結局はイザベラの思い通りか。

米国内は一般人の避難を急げ!

特に敵とここを直線で繋げたライン上の住人は速やかにだ!」

「我々の兵は出しますか?」

「イザベラの話を聞いていないのか。

我々は最後まで兵は出さない。地元の兵士たちで回してもらう。

我々は情報収集に努めよ」

「了解!」

「将軍!」

「今度はなんだ」

「敵の狙いは海岸線と空港のようです」

「空港?日本のやり方で味を占めたか」

世界中の空港がテロリストや魔法少女達によって攻撃を受けていた

中でもハワイや米国のカリフォルニア沖は沿岸部分も攻撃され、事前に用意さていた対艦ミサイルシステムが次々と破壊されていた

「船の航行に妨げとなるものは全て排除しろ!
ここハワイは外部との動線を全て潰せ!」

指示をしている魔法少女に対してハワイにいる米国兵は銃を放つ。

魔法少女はすぐに反応して空気中の水分を凍らせて鋭い刃となったものが五月雨に兵士たちへ降り注ぐ。

そんな魔法少女達の攻撃に米国兵士たちは何もできなかった。

「魔法少女がまだ島にいるなんて聞いていないぞ!」

「サピエンスめ、とり逃しやがっていたな。

応援もよこさないし何やってるんだ!」

 

ヨーロッパにある空港では滑走路が攻撃されて飛行機が飛べない状態になったあと、魔法少女達は垂直離着陸機へ攻撃を開始した。

地元の兵士たちが迎撃に出たことで魔法少女には被害がない中、魔法少女に加担しているテロリストと兵士には死人が出始めるようになった。

一般兵には魔女対策用のアンチマギア装備以外は支給されていないため、魔法少女には蹂躙される形でやられていった。

ダリウス将軍が世界の様子をモニタリングしているとイザベラとキアラが司令室へ入ってきた。

「ハワイにも出たってどういうことよ。あそこの魔法少女勢力は一掃していたはずよ」

イザベラの問いには同じ指令室にいるオペレーターが答えた。

「地元情報によると水中から現れたとの報告です!」

「もうなんでもありね。国内はどうなっているの」

「各地の主要な空港が攻撃を受けています。

地方にある小さな場所はまだ生きていますが、いつまで無事でいられるか」

「我が国の軍は動いてるんでしょ。たまにはしっかり働かせないと」

「だがこれだけは伝えないといけないな」

そう言ってダリウス将軍がメインモニターの画像を切り替えると、そこにはテロリストを指揮しながらペンタゴンに迫るロバート達の姿が映し出された。

「ロバート達、なんで」

「あらあら、彼らは信頼できると言ったのは誰だったかしらね」

キアラが画面を見て固まっている中、イザベラがキアラの肩を叩いた。

ビクッとしたキアラの耳元でイザベラは呟いた。

「さあ、日本人であるあなたならどう落とし前をつけるか知っているでしょう。

まさかこの後に及んでまだ彼らを擁護するなんてこと、ないわよね」

周囲の空気は凍りついていた。

それはイザベラのキアラに対する態度だけではなく、イザベラの左手にナイフが見えていたからだ。

キアラは暫く目を瞑って、目を開けてから答えた。

「わかっている。

わかっているさ」

「そう?それなら頼んだわよ。あなたならあれくらいどうってことないだろうし」

キアラは悔しそうな顔をしながら司令室を出て行った。

ダリウス将軍はため息をひとつついた後にイザベラへ話しかけた。

「たった1人でいいのか。

責任を取らせるたって流石に1人は」

「いいえ十分よ。

何人を相手にしようと、勝って終わるようじゃないと私の従者は務まっていないわ。

ああそうそう、キアラを運ぶための自動運転設定した装甲車は一台用意してあげてね」

「無茶がすぎる」

「見ていればわかるわ。

ほら、世界のモニタリングを続けなさい。どのタイミングでアンチマギア生産施設が狙われるのかはわからないのだから」

ロバートなどの裏世界の住人達は魔法少女とともにペンタゴンへ向かうための活路を開いていた。

FBIも装甲車を出して動きを止めようとするものの、魔法製の武器や魔法によってあっさりと突破されてしまった。

「歯応えのない奴らばかりだな。まともな戦車くらい出てこないのか」

別の場所では爆発が起きて夜空が赤く照らされていた。

「おやっさん、早く前に進んで終わらせましょうよ」

「バカ言ってんじゃねぇ。俺たちはここで暴れればいいんだよ。

大事なのは他の奴らがやってんだからな」

「ロバート!ペンタゴンから来る車両ひとつ!」

「さあ、誰が乗っている」

車がロバート達の目の前を通り過ぎると同時に1人車両から飛び出してきた。

飛び出してきたのは戦闘服に着替えたキアラだった。

車はキアラを下ろした後に急いでその場を離れようとしたものの、スナイパーライフルで燃料タンクを撃ち抜かれて爆発してしまった

キアラの目の前に立っているのはロバートにマーニャ、5人の男達と3人の魔法少女だった。

他にも建物内に銃を持って数人は潜んでいる状況だった。

「たった1人でか。俺たちも舐められたものだな」

「…どうしてですか」

「ああん?」

「なぜこんなテロじみたようなことをしたのですか!

一般人は、関係ないのに」

キアラの問いにロバートとは違う男が答えた。

「前にも話しただろう。

俺たちはイザベラの、サピエンスのやり方が気に入らないんだ」

「テメェらを潰せるなら俺たちはマーニャに協力するし、見て見ぬ振りをする奴らや分らず屋にも、俺たちは喜んで銃を向けるのさ」

「キアラ、あなただってイザベラのやり方が間違っているくらいわかるでしょ

マーニャにもそう言われ、キアラは歯を食いしばりながら腰の刀に手を伸ばす。

「ええ。彼女のやり方は間違いなく不幸になる人々が増える。

だが、こうして一般人を巻き込むテロを行っているあなた達よりは良心的だ!」

「動かなきゃ世の中変わらないんだよ。

特に俺たちのような社会的弱者はこうやって派手に、そしてきにくわネェ奴をぶっ飛ばすしか変える方法がないんだよ」

「そうですか。

・・・

お覚悟を!」

目にとらえられないような速さでキアラはロバートへ切りかかったものの、ロバートが持っていた斧ですぐに防がれてしまった。

周囲から銃弾が飛んでくる中、右側建物付近にいる傭兵にキアラは接近して銃ごと右手を切り落としてしまった。

そのまま建物へ侵入し、建物内部に潜んでいた傭兵達を次々と斬っていった。

ロバートは建物内部へ入ろうとする傭兵達を止め、出入り口と上空を警戒するよう指示を出した。

建物の3階からは正面から叩き切られた死体が両断された銃とともに落ちてきた。

魔法少女対策がされているとはいえ鉄を容易く切れるなんて恐ろしいな、刀ってやつは」

「キアラの腕力がおかしいだけでしょ」

「お前さては刀をよく知らないな?」

建物内には魔法少女もいたものの、争う音はすぐに止んでしまった。

4階の窓から反対の建物にはグレネードが投げ込まれ、グレネードが弾けたと同時にキアラが反対の建物へ飛んで移った。

その飛び移る間に銃弾は飛んだものの服を貫通するだけでキアラ本体には当たらなかった。

決して傭兵達の射撃は下手ではなかったが、キアラが少し体を捻りながら飛び移ったためか体の軸を狙った弾は的を外していた。

飛び移った先の建物内にいた傭兵達はサブマシンガンで対抗したものの、刀で銃弾を防がれながらクナイで喉を貫かれていった。

建物内に生存者はいないと判断したロバートは背負っていたガトリングを取り出してキアラがいる建物に満遍なく撃ち込んだ。

上から下まで撃ち込まれ、強度を失った建物は隣の建物に寄りかかりながらロバート達とは反対側に崩れていった。

それでもいくつかの破片はロバート達の方にも飛んできて、ロバート以外はその場から逃げて距離を取った。

銃口が赤くなったガトリングが止まって辺りが土埃に包まれている中、周囲では何者かに次々と後退した傭兵達が殺されていった。

魔法少女はなんとか反応できて脇腹を通ろうとする刀を弾いていた

「ロバートこれじゃ逆効果だよ!」

マーニャにそう言われたロバートは斧を振り上げた。

「ごちゃごちゃうるさいんだよ!」

ロバートが斧を地面に叩きつけるとハンマーを打ちつけたのではないかと思うほどの衝撃波が発生して周囲の土埃は周囲から消えてしまった。

姿をあらわにしたキアラは傭兵の心臓を貫いているところだった。

心臓から刀を引き抜いて血を振り払った後にキアラは刀を一度鞘に納めた。

少しだけ動きを止めた後にキアラは背負っていたもう一本の刀を素早く抜いてロバートの脇をたたきつけた。

しかし装甲を破った後にゼリーの感触が伝わったらと思うと刀を動かせなくなった。

そんな焦ったキアラにロバートは斧の柄部分で殴ってきたがキアラは刀から手を離してその場から離れた。

「いったい何」

「教えるわけねぇだろ。

地獄で会うことがあればその時に教えてやるよ」

ロバートの後ろから傭兵達は銃を放ち始め、弾道を縫うように魔法少女達も迫ってきた。

キアラは再度腰の刀を取り出して弾を避けながら魔法少女の攻撃を弾いていった。

ロバートは脇に刀が刺さったまま斧をキアラに振りかぶってきた。

キアラはその衝撃で飛んできたコンクリートの破片で顔に切り傷がついてしまった。

キアラは一度瓦礫に隠れ、大回りでロバート達の後ろ側に回り込んでクナイで2人の喉を貫いた。

「ちくしょう、ちょこまかと」

あたりが再度静まり返ると突然闇から刀が飛んできて、そこにほとんどの人々が注目していた。

その隙にキアラがマーニャへ突撃してクナイを2本両肩に突き刺した。

それでもマーニャの腕は動いてキアラは振り払われた。

その勢いでキアラはロバートへ突撃し、糸で繋がっているのか、投げた刀は引き摺られてキアラに近付いていった。

キアラはロバートの左肩に体重をかけて飛び上がり、手元に戻ってきた刀で左側広頸筋あたりから心臓目掛けて突き刺した。

ロバートはぎこちなくなった動きでキアラを掴もうとするが、キアラはするりと突き刺した刀を抜いてロバートから離れた。

その様子を見て固まっていた傭兵を容赦なくキアラは首を切り落としてしまった。

「キアラ!」

マーニャは警棒のようなものの先端に電撃を発しながらキアラに殴りかかった。

しかし周囲では生き残りの傭兵と魔法少女がキアラの動きが止まるのを待っていた。

キアラは刀を空中に放り投げ、マーニャの攻撃を避けた後にロバートの遺体へと走った。

そして抜けかけになっていたロバートの脇へ刺さっていた刀を回収してマーニャ以外の魔法少女と傭兵へ切り掛かった。

もはや銃では動きを止めることはできず、引き金を引く手を切られた後に心臓を貫かれる、目を刀で斬られた後に正面から思い切り斬られたりとキアラのやりたい放題だった。

キアラが投げた刀が地面に突き刺さる頃には20人近くいた傭兵や魔法少女はマーニャしか生きていない状態となった。

「キアラは強いと思っていたけれど、敵わないねぇ」

「逃げずに挑んだことは評価します。

それが逃す理由にはなりません。

実験台にはされないようしっかり殺させてもらいます」

「気遣いのようでなっていない言い方だね。まあタダで死ぬ気はないよ。

クナイをアンチマギアにしなかったこと後悔しな!」

マーニャが三角形の石を使用したタリスマンを取り出すと、キアラの足が瞬時に岩で固められてしまった。

「すぐには解けないはずさ!」

動けないキアラに対してマーニャは紫色の汁が滴るナイフを突き刺そうとしてきた。

それはキアラの体の軸をとらえていてどう動こうとその刃が身体に刺さってしまう。

キアラは刀でマーニャのナイフを受け止めてしまった。一般人に魔法少女の腕力が受け止め切れるはずもなく、急所は避けられたものの右肩にナイフが刺さってしまった。

キアラはまだ動かすことができる左手に刀を持ってマーニャめがけて切りあげた。

それはマーニャのソウルジェムを両断し、マーニャは胸部分から血を出しながら倒れた。

ナイフの毒が体に行き渡り始めたのかキアラは意識が朦朧となり出した。

そんな中ナイフを抜き、地面に突き立ったアンチマギア製の刀を抜いて傷口に突き刺した。

それでも意識は回復せず、アンチマギア製の刀を刺したまま腰にかけていた応急処置用の注射を左腕に突き刺して注入した。

この注射は種類がある中でも解毒剤にあたるもので、毒ガスを吸ってしまった時等に対応できるよう用意されていた。

呼吸が苦しくなる中、注射を打ったことでやっと意識も呼吸も落ち着いてきた。

そしてやっと周囲を見渡す余裕が出た頃にイザベラから通信が入った。

「その周辺のテロリストは掃討できたみたいね。

お疲れ様。

迎えをよこすから少しだけ待っていてちょうだい」

そう言って通信は切れてしまった。

キアラは周囲を見渡すと見慣れた顔の死体が血を流して転がっていた。

「あなた達が、悪いんですからね・・・」

キアラは迎えが来るまでにその場で涙を流した。

キアラの戦いぶりを見ていたダリウス将軍はイザベラに話しかけた

「全滅させてしまったのは驚きだが、傷を負ったところを見ると少し無理をさせすぎたんじゃないか」

「無理も承知よ。こんないらない結果を招いたのはキアラが彼らを甘く見た結果よ」

「自業自得ってか。従者には優しくしてやれよ」

「うるさいわね。他の情けない結果をフォローすることに専念しなさい」

同時に世界中で発生していた空港や施設の襲撃は人間側は惨敗状態だった。

ほとんどの空港は使い物にならなくなり、小さな国は政治家が殺され始めていた。

「やはり一般兵器では歯が立たない。

衝撃砲くらいは軍へ提供してやったほうがいいんじゃないか。

これじゃ本命すら止められないぞ」

「情けないわね、手持ち用のものなら余裕があるかしら。
ちょっと生産工場がオーバーワークになるかもしれないけど」

そう言いながらモニターをいじってイザベラは衝撃砲の生産状況を確認した。

「やっぱり余分な数は生産できていないわね。

ハリー、奴らの船団はどの程度でカリフォルニア沖に来るかしら」

「現在の速度ですと、およそ17日と10時間ほどでカリフォルニア沖に姿を見せます」

「そう、一応猶予はあるわね」

そう言ってイザベラは衝撃砲の発注を32本分行った。

その様子を見ていたダリウス将軍はイザベラに尋ねた。

「あれには魔法石が必要じゃなかったか。

そんなに調達できるのか」

「カルラ達に任せるわ。

もともとあれは彼女達が自前で用意しているし」

「だったらカルラ達にも」

「伝えるわよ。確か今は中庭にいたかしら」

 

現在ペンタゴンの中庭だった場所には高いアンテナが建設最中である。

そんな建設最中のアンテナタワーを見上げながらカルラはタバコを吸っていた。

カルラの隣には研究員がいて資料片手にアンテナを見ていた。

「カルラ、いまいい?」

私がそう声をかけるとカルラは研究員へ私が来た方とは反対側へ行くよう指示し、研究員はその場からさった。

その後カルラはこっちを向いた。

「なんだ、アラームの件は落ち着いたのか」

「私がいようがいまいが変わらない状況にはなったわね。

んでお願いしたいことがあってきたのよ」

「願いね。

無茶振りには対応できないよ」

「衝撃砲を一般兵にも配りたいのよ。

32本分用意をお願い」

「…猶予は」

「12日よ。残り3日で本体と接続と動作テストしてそのまま現場へ直送って流れよ」

カルラはタバコを一度蒸すとアンテナを見上げながらイザベラと話を続けた。

「イザベラ、このアンテナをパラポラにしなかった理由はわかるか」

「何よいきなり。

日照権の問題でしょ。じゃないとこんな古典的な鉄骨を繋ぎ合わせたようなスカスカなツリー型になならないわよ」

「建設承認関係で伝えたと思うが、こいつは通常の電波以外にも魔法少女が使用しているテレパシーにも関与するため、しかも盗聴している輩に対抗するために必要と伝えた。

このタワーにはテレパシー受信および発信用の魔法石も使用されている」

「それはわかっているわよ」

「何を言いたいのかというと使いたい魔法石、つまり純度の高い魔法石は今目の前のタワーに使用した。

今から純度の高いものを用意するとなると、このアメリカ大陸に現存しているのかも怪しいため12日は確約できない。

最悪アフリカのダイアモンド鉱山に赴く必要もあるかもしれない」

「もうアメリカにある宝石では純度が悪いって言いたいの?」

お前なら持てばわかると思うが、一般人の純度がいいと魔法を感知できる人物の純度がいいは訳が違う。

内包している魔力量がアメリカにあるものは少ないのだよ。

今まではその中でもましなものを使ったまでさ」

「純度が悪いと変わるのは威力と電力貯蔵量かしら」

「発射にかかる充填速度にも関わる」

「理論はいいからできるかどうかを伝えなさいよ」

「ではお前の願いを叶えるために私からも要望を出させてもらう。

エメラルドかダイヤモンドの原石でもいい。

削った結果イザベラの親指程度の大きさの結晶になるものをお前が欲しがっていた要求数の4倍、128個を用意出来たらイザベラの要望を達成させると保証しよう」

「いいわ。5日で用意してあげる」

「助かるよ。こっちは製錬の準備を進めておくよ」

「言っておくけど原石でいいのよね!」

「別にいいが間に合うか怪しいな」

「わかったわよ削って渡せばいいんでしょ!」

イザベラは怒って建物の中に戻った。

中庭でそんなイザベラを見て笑顔だったのはカルラだけだった。

その様子を見ていた建設員達が言葉を交わした。

「レディと言い合える上に言いくるめるなんて」

「カルラさんも怖いよな」

「いやサピエンスのトップはみんなやばいし人外だって」

「あれらに歯向かう奴らは考え直したほうがいいぜまったく」

 

イザベラが室内に戻った頃、各国の空港は魔法少女に占領されつつあった。

「将軍、状況はどう?」

「空路はもう諦めるしかないレベルでやられているよ」

「一箇所10人も魔法少女はいないはずでしょ?」

「君の目線で考えるな。

銃があっても人間には反応速度の限界がある。マッケンジー達のように鍛えられた先鋭くらいじゃないと一対一でさえ務まらないさ」

「ちなみに一般人は」

「夜行便に乗っていた一般人が巻き込まれて全滅している。

空港勤務の従業員やパイロットも生存は絶望的だろう。

政府は行方不明者リストを作るのに一生懸命だ」

「無駄なことを」

「言ってやるな。わずかな希望に縋りたいものもいるが故の対応だ」

「希望ねぇ」

そう話しているとオペレーターから報告が上がってきました。

「レディ、キアラの収容完了。1時間後には本部に戻る予定です」

「わかったわ。

迎えの車を付け狙う者がいないかは見張っておきなさい」

「了解」

夜明け頃、世界の空路は壊滅して次は海路が狙われようとしていた。

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-4-2 ずっと続くはずがない「いつもの」

朝日が頭を出した頃に資料の整理が終わり、整理した結果を簡潔な内容にして叔父の机の上へ置いて私達はサピエンス本部へと向かった。

サピエンス本部へ辿り着くとキアラが大きなあくびをした。

「徹夜だったものね。少し休んできたら?」

「いや、イザベラを守らないといけないし」

私達は地下の実戦観察室の前まで移動してそこで改めてキアラへ伝えた。

「ここにはカルラもディアもいるわ。心配せず休んでちょうだい」

「・・・それなら少し休ませてもらうよ」

そう言ってキアラは近くの仮眠室へ眠そうに歩いて行った。

私が実戦観察室へ入るとカルラとディア、研究員2名が頼みものを囲んで談話していた。

「予定通り完成したかしら」

「レディ、通常のアンチマギアよりも簡単に魔女を切れることまでは確認できています」

「でもやっぱこれの類似品量産は難しいわよ。

通常のアンチマギアを使った剣やナイフで十分な上にそれを洗練させたとなると倍どころじゃない。

完全にキアラ専用になるわ」

「ディア、別に構わないわ。

で、これはドッペルには有効なんでしょうね」

私が退治した際に奴らのドッペルはアンチマギアのシールドを貫通した上に銃弾も怯む程度だった。

単純に魔女と一緒ではないというのはわかったけど、ドッペルではなく魔女でしか判断できない今はなんとも言えないわ」

「何よ、全然検証できていないじゃないの」

ドッペルとの遭遇は神浜でしかできないことはわかっているだろう

試した際はディアが手に入れた魔力パターンを似せたシールドを切ったにすぎない。

品質にケチをつけたい気持ちもわかるが、魔力パターンはしっかり再現したつもりだ」

私は不機嫌な顔をカルラへ向けた。そんな私の顔を見てカルラは呆れた顔で言ってきた。

「奴らが何かしらの手でドッペルを出すことの警戒だろうが、ドッペルは魔法少女の本体さえどうにかしてしまえばいいことは、魔法少女同士の衝突時に観測できた結果だ。

牽制できるレベルなら十分じゃないか」

「キアラにはしっかり叩き切ってもらわないと困るわ。

それに、ドッペルの攻撃は一般人では耐えられないわ」

「あとはキアラがどこまでの装備を許容してくれるかだが」

「鎧武者になるのは、おそらく嫌がるでしょうね」

アンチマギアを染み込ませた軽装と洗脳防止用インカムで大丈夫でしょ。

いつもクノイチみたいに薄着だし」

「どうしても刀といえばサムライのスタイルに近くになるのだな」

「だって刀といえばそうでしょ」

3人の会話を2人の研究員は苦笑いしながら聞いていた。

カルラはしばらく私を見た後に話しかけてきた。

「そんなに不安ならば魔法石を使用した法衣を使ってみないか」

「何よそれ」

「一部の錬金術師しか知らない、魔法少女の真似事ができる装備品だよ。
体の周囲に魔力を纏って魔法少女と同じように武器を具現化させて魔女へ対抗していた。もちろん身体能力も底上げできる」

「何よそれ、私そんなの知らないんだけど」

「ディアにはいらないだろ。それに魔法少女の真似事で勝ってうれしいか?」

「いやまあつまんないけど」

「だからだよ。それで、イザベラはどうする」

「今の話聞いて魅力的だと思うわけがないでしょ。
魔法少女にヒトとして勝つからこそ意味があるのよ。魔法少女へ勝つために自分が魔法少女になっては意味がないわ。
法衣ってやつは却下よ」

「そうか、その返事を聞けて私はうれしいよ」

そういったカルラは少しご機嫌な表情をしていた。

「なによ、気持ち悪いわね」

そのあとはキュゥべえの状況を聞いたりしているとキアラが部屋に入ってきた。

「しっかり休んだか?」

「意識だけははっきりするようになったよ」

「体力もあるならこれを試してみなさい。

以前話していた新しい刀よ」

先ほどまで話題の中心にあった刀は赤紫色と青紫の光沢が混じっていて明らかに二つの成分が混ざっている見た目をしている。

「思ったよりも長いな。

帯刀程度を想像していたけど」

「距離感も大事だと言うことで通常サイズだ」

「確かドッペル特化だったか。

魔法少女とも魔女とも違った特性をしているんだっけ。

それにしてもやたらと重いな」

それにはアンチマギアを結晶化させたものもそうだが魔女特化の魔法石を練り込んだ層も打ち付けられている。

それらは反発しあって効果が薄れてしまうため絶縁材料として純粋な銑鉄だけの素材を挟んだ層も打ち込まれている。

だから嫌でも重くなってしまったらしい」

「とはいえ重心は前気味なのか。

切れ味ではなく重さで叩き切る印象か」

「まあまずは試してくれ。部屋にはダミーを置いてある」

実戦観察室からはたくさんの魔法少女が使われる実験を眺めてきた

見下ろし方で実践室をみられるこの部屋から、キアラの試し切りを観察していた。

ダミーにはドッペルに似せた魔力パターンでシールドを張ったものがあったようでシールドの破損具合を計測していた。

キアラが振り下ろすとシールドは切り裂かれるという表現より叩き割るという表現が正しいエフェクトを発した。
刀はそのまま床にたたきつけられ、その床はへこむだけだった。

「前回実験時よりも破られる速度が速いです。

同じ刀を使ったのに」

使い方を知っているものとそうではないものでは結果の質も違うってことさ」

「これならドッペルも大丈夫でしょ」

私は床がへこむだけの結果に少し違和感を覚えた。

「ちょっと、あれ刃物というより鈍器じゃない?」

「その表現が正しいかもしれないな」

「不安しか残らない言い方やめてよね。ドッペルじゃないものに対してはどうなのよ」

「まさに鈍器さ。刀と言えるほどの切れ味はなく、質量で切り裂く。
鋼鉄は打ち破れたが、その後は潰してできた穴という感じだったよ」

「作り直させたいわね。イメージと全然違うわ」

「ならばもっとデータが必要だ。ドッペルと何体も戦うようになるような規模のね」

「もうそんな機会はないわよ。
神浜以外でドッペルが扱えない、そんな状態から変わらなければいいけど」

私は部屋を出て実践室前にある準備室でカラーガンと木刀を持ってダミーが倒れてスッキリした実践室へ入った。

「イザベラ、いきなり入ってきてどうした」

私はキアラに木刀を投げてキアラは反射的に木刀を受け取った。

「私の鬱憤晴らしに付き合いなさい。

久々に模擬戦しましょう?」

「まったく、上でなにがあったんだ」

キアラが新しい刀を納刀すると私はカラーガンでキアラの足を狙った。

キアラはローリングで避けて走って距離を詰めてきた。

キアラが足をつけるであろう場所へ撃ち込んでもキアラはすぐにコースを変えて距離を詰めてくる。

ついにキアラは木刀で私の脇腹を狙ったが私はカラーガンについた湾曲ナイフで防いだ。

サピエンスが使用する拳銃、サブマシンガンには標準でトリガー部分を囲うように、そして銃口の下側から突き出るように刃物が設置されている。

練習用は切れ味が存在しないが、実践用は軍用繊維ならば貫通できる切れ味がある。

キアラはつばぜり合うことなくするりと木刀を滑らせて、前のめりになって左手で私が銃を持つ左手を掴み、全体重をかけてきた。

するとキアラは勢いに任せて体を浮かび上がらせ、私の右肩と首の間へ木刀を差し込もうとした。

私は右袖に隠し持っていた練習用ナイフを取り出してキアラめがけて差し込んだ。

キアラも予想はしていたようで木刀でナイフを弾くとそのまま地面へ降りた。

降りた瞬間に私はカラーガンを撃ち込んだが射線に木刀を添えて飛び出た弾薬を弾きながらこちらの隙を狙っていた。

弾が切れる頃、右手のナイフを投げて腰につけていたもう一つのカラーガンを取り出してキアラに対して弾幕を張った。

撃ち切った左手のカラーガンはリロードせず腰にかけた。

キアラは弾道が見えているのかというレベルで移動先を変更し、時々弾丸を弾きながら距離を詰めてきた。

右側のカラーガンも弾が切れるとキアラは私にめがけて木刀を投げてきた。

私がそれを避けた方向にキアラはクナイを模したナイフを投げ込んできた。

私はカラーガンでそれらを弾くと右足首目掛けてキアラは蹴り込んできた。

いよいよ私は対応できず足払いされた状態となってその場に倒れ込んだ。

するとナイフで首元を狙ってきたが、左の袖に潜めていたナイフで逆にキアラの首元を狙うとキアラはすぐにローリングで避けた。

キアラが避けた方向には投げた木刀が転がっていて、キアラは流れで回収した

私が体制を整えると左手にもカラーガンを持ってカラーガンのナイフ部分でキアラに斬りかかった。

両手から刺し攻撃が飛んできて、キアラは弾くことなく避けるしかなかった。

私がクロスを描くように切り下ろし、さらに切り上げるとキアラは勢いで少し後ろに飛ばされた。

着地した頃に左のカラーガンをキアラに突き刺すと、キアラはナイフ部分を防ごうとする動きしかしなかった。

私は勝ちを確信し、右側のトリガーを引いた。

私がカラーガンを2丁しか持っていないとは言っていない。

私が左に持ち直したのは3丁目。

キアラは何もできず体でカラー弾丸を受け止めるしかなかった。

キアラの服は赤紫色で染まっていき、力が抜けたかのように座り込んでしまった。

そんな様子を見ていた研究員たちがこんな言葉をこぼした。

「あの2人の戦いは人の域を超えていますよ」

「片方は純粋な人間だけどな」

「絶対普通じゃないですって」

そこにカルラが会話に入った。

「キアラだって最初から銃に慣れていたわけではない。

訓練を重ねた結果であれだ。

動体視力が良いという下積みは影響しているだろうが成長の結果だ

そんなキアラさんに対応できて勝ってしまうイザベラさんはもっと怖いですよ」

「あいつはずる賢いだけだ。

全く同じ条件下ならば少し強いくらいで対抗はできる」

「本当ですか?」

そう話している中、私とキアラは実践室を出た。

これらは何気ない日常の一幕。

叔父の資料処理を手伝い、サピエンスに関わる仕事を処理する。

こんな特別変わったことをしているわけでもない日々に魔法少女たちの襲撃の日が迫っているのは確か。

 

そんな私を叔父は久々にディナーを共にしないかと言ってきた。

いつもは家族一緒だったはず。

ディナーは叔父が最近見つけたという店で個室で2人きりの食事になると言う。

時々給仕が入ってくる程度で外部へ情報を漏らさないとお墨付きらしい。

正直不安しかない。

そんな中食事が始まり、最初は他愛もない会話であった。

政治的な会話もなしに、世界情勢の愚痴を一方的に叔父から聞くこととなった。

その後に叔父の家族の話になったのだが。

「イザベラ、実は私に息子と娘が産まれそうなんだ」

「性違いの双子ですか。それはおめでとうございます」

「嫁が苦労しないように少し早めに仕事を切り上げるか、出勤できない日が発生するのは許してほしい」

「構いませんよ。家族第一と言ったのは私ですから」

「イザベラ、君も一般的な幸せを満喫してみないか」

私は手の動きを止めて叔父を見た。

「君はまだ若い。素敵なフィアンセを見つけて共に幸せな生活を送るようにしてもいいんじゃないか」

「いいですか叔父様、私の普通の生活は父親が消された瞬間から崩壊しました。

父親が生きている世界でならば普通の生活を送ろうとしたでしょう

でも今は全くそんな気は起きませんね」

「…

イザベラ、君はこの世界を今後どうしたいのだ」

「どうというのは」

「戦いを絶やさないようにすると言ったが、君が生きている限りずっと続ける気か?」

「そういえば私が死んだあとはどうしましょうかね。

サピエンス残党ってことでカルラにやってもらおうかしら」

「死ぬまでやることに変わりはないのか」

「言ったじゃないですか、人類は争わなければ衰退するだけです。

争いの手を止めないために私は必要悪になるというのですよ」

「くどいかもしれないが、考え直してくれないか」

出された皿の食事を終え、口元を拭いたイザベラは叔父の顔を見て答えた。

「ないですよ。考え直すなんて。

でも叔父様のお子様には被害が及ばないようしっかり配慮しますよ

仮に政治家にならなかった場合は、保証できないかもですが」

叔父は何も言えなかった。

「お仕事のお話はまた明日で。

ブラジル訪問の事後処理などありますから。

お代はここから出してください」

イザベラは札束を置いてその場を後にした。

「あれでは誰が言っても止まらないのだろうな。やはり依存した私のミスだったのか」

 

しばらく日々が経過し、その日は突然訪れた。

「日本から艦隊が出発しました!」

「今度は艦影が見えるでしょうね」

「はい。魔法少女産の船の両脇に5隻ずつのイージス艦 計11隻です」

衛生写真を見てダリウス将軍が呟いた。

「こんなに堂々としているとは、ここにくるまでにいくつか策がありそうだ」

「当然よ。

マッケンジー達にはしっかり待機場所へ行くように伝えておきなさい」

「了解」

「さて、今度はどう動いてくれるかしら」

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-4-1 団結できるという創作のまやかし

中華民国が支配者を失ってしばらく日付が経過した。

中華民国の政府が主張していた社会主義という考えは速やかに捨てられ、資本主義国として常任理事国の監視下で経済を回すようになった。
中華民国は常任理事国から外され、その空いた枠に別の国が入ることはなかった。
入ろうと目論む国はあるものの、空いた枠にどの国も入ることができない理由があった。

世界中では政府が推奨する少女へ行うキュゥべえを認知させないためのワクチン接種に対して、そのワクチンを打ってしまうとその少女は神や仏の声を聞けなくなるという噂が広まっていた。

その噂を耳にしたサピエンスはワクチン接種を妨害する組織は、反社会的組織として取り締まるとした。いくら名の知れた組織であったとしても。

これに黙っていられなかったのが宗教にお熱な集団だった。

イスラム教どころかキリスト教、仏教まで騒ぎ出した。

しかしそれは予定通り。

きっかけを作ることに成功した事で、サピエンスは宗教関係の組織排除も実施することとなった。

サピエンスは「宗教は魔法少女の妄言から始まった」とそれらしい理由をつけてあらゆる教会や寺院の破壊を独断で開始した。
サピエンスの隊員は躊躇すること無く行動に移してくれた。

これによって宗教に浸かった汚職議員が釣り上げられて次々とそんな議員をスキャンダルや暗殺で退場させていった。

もちろんここまで荒事をすれば大統領とサピエンスの独裁だと騒ぎ出す者も出てくる。

今は人間の間でも宗教派とサピエンス派で別れようとしている。
宗教派は魔法少女の脅威を思い知った者から見てみると「魔法少女に操られる哀れな者」と呼ばれ、神や仏を信じて現実を考慮しない者達はサピエンス派を「神を信じれぬ異端者」と罵り合う。
国連はアンチマギアの取引やそれにかかる条例改正によってほぼサピエンスの息がかかった集団と化していて、宗教にお熱な国は常任理事国へ選ばれるはずがなかった。

さて、果たしてこんなことになってしまう人類を救いたいと思える者はいるだろうか?
「だとしても」と人類を救おうと思える者は、事実を直視できていない愚か者か脳死の自称ヒーローくらいだろう。

そんな話を、私は目の前にいる叔父へ話した。

叔父はアメリカ合衆国内で破壊された教会の数についての報告書を見下ろしながら頭を抱えていた。

「イザベラ、この結果になるのは君の狙い通りなのか」

「私達は噂を流した程度です。

神や仏なんて見えなければ聞こえるものでもない。

信じるか信じないか。

元はそれだけだったものが無意味な噂だけでここまでになってしまうのです。

虚しいと思いませんか?」

「いいかイザベラ。

世の中には心の拠り所として宗教を活用するもの達がいる。

その多くは死後の心配や今体験している罪の心配だ。

現世で苦しいのは試練で、キリストの教えを守り、祈り続ければ必ず救われると。

そういうものがなければ心が潰れてしまうのだよ」

「父にもよく言われましたよ」

「ならわかるだろう?」

「わかりません」

「なぜだ。私はキリシタンだが今は中立的な意見を君に伝えたんだ。

宗教を扱って争いを起こそうなんて間違っている!どれだけの人々が苦しむと思っている」

「いいですか叔父様。

我々人間は争い続けなければ気が済まない生物なのです。

何事にも悪者を作って、それを退治するような動きを作らなければ人類史は衰退する一方なのですよ。

楽園実験というものをご存知ですか?

あれでもそう言った結果が証明されています」

「だからと言ってわざわざ宗教を引き合いに出す必要はないだろ」

「必要なことです。

今こうしている間に魔法少女達は隙だと察知して準備を早めているはず」

「・・・イザベラ、私には君が何をしたいのかがわからない」

殺意むき出しの魔法少女を目の前に宗教派はどういった行動をするのでしょうね。

人間側、魔法少女側どっちにつくのか」

「イザベラ、そういう考えはやめなさい」

「目を逸らさずちゃんと直視してください。人間はそんなものですよ」

イザベラは叔父の後ろに移動して話を続けた。

「今の私の行いを見たら、父は当然怒りをあらわにするでしょうね。
でも私は父が目指した場所とは逆の道を歩むことにしました。

父が歩もうとした道は叔父様が歩んでください。

私が、サピエンスが人類の憎まれ役となって人類の進化を躍進させましょう。

でもそれは魔法少女達を黙らせた後の話。

それまでは協力していきましょうね」

「・・・イザベラは映画を見ることはないか。
宇宙人のような地球外から来た脅威へ人類が団結して立ち向かうという物語を見たことはないか。
ああならないだろうかと希望を抱いてはくれないのか」

「無理ですね。宗教を禁止しようとしているだけで人類が分裂するなんて、その結果のどこに希望を見つけられますか。

人類の団結というのは創作のまやかしです。
結局は目先の利益ありきなんですよ。

故に私は人類になんて期待はしていません。叔父様とご家族は例外ですよ」

叔父は何も言わず黙り込んでしまった。

「では私は失礼します」

イザベラが部屋を出て行った後、ケーネスは首にかけているネックレスをつかみながらつぶやいた。

「チャールズ、シャル、君たちの娘は人類に絶望してしまったようだ。

私が彼女に頼らず人類の希望を見せられたら少しは変わったのだろうか。

いや、無理だ。誰も彼女には敵わない。

どうかこんな結果にしてしまったことを許してほしい。

私には、見守ることしかできない」

 

次の日、イザベラはグリーンベレーも使用している訓練所にいるマッケンジーのところへ向かった。

キアラがマッケンジーのいる場所を受付へ聞き、トレーニング室にいると教えてもらって2人はトレーニング室へと入った。

空気清浄が行われているトレーニング室でマッケンジーは上半身裸で筋肉を鍛えていた。

周囲には誰もいなかった。

せっかくの休暇なんだからこんなところに来てまで筋トレしなくてもいいのに」

マッケンジーはおもりを持ち上げて体をプルプルさせながら答えた。

「話があると呼びつけたのはお前だろ。

自宅になんて来てほしくないしな」

「そうかい」

マッケンジーはおもりを下ろして立ち上がった。

「待ってろ、少しシャワーを浴びてくる」

シャワーを浴びてしっかり上着を着たマッケンジーは机が一緒にある椅子へ座った。

「神浜では予想以上の被害が出たが、お前は神浜の連中以外も参入すると考えていなかったのか」

「考えてはいたわ。そのための外側に向けた自衛隊の配置よ。

でも海からミサイルに乗ってヨーロッパの魔法少女が乱入してくるなんて、普通の頭じゃ考えもつかないわ。

まあ、中華民国も協力的だったらもっとましな結果だったかもしれないわね」

「・・・E班には魔法少女との実戦経験のある者もいたのだがな。

ダリウスから事前にヨーロッパにいる魔法少女はヤバいとは聞いていたが、魔法少女をよく知る軍人上がりでも簡単に死んでしまうほどの相手だったとはな。

そんな連中がいても俺たちは帰ってこれたのだから、生き残った俺たちは十分に幸運だったのだろうな」

「自衛隊の協力もあったけどね。

脱出の段取りとしては十分だったでしょう?」

「そうだな。

元から脱出させる予定だったように周到だったがな。

どこまでがイザベラの思い通りだ」

「さあ、なんのことやら」

「・・・まあいい。

それで本題はなんだ。今更反省会だけの用ではないだろ」

「そうね。今後の活動について簡単に伝えに来たわ。いきなり伝えるよりは理解が早まるでしょ」

そう言ったあとイザベラはキアラに合図を出して、キアラは持ち歩いていたアタッシュケースから3枚程度のまとめられた資料をマッケンジーへ出した。

「サピエンス直属の部隊は本部を除いた3ヶ所のアンチマギア生産工場と米国前線の護衛に努めてもらうわ。

でも条件があって、指示があるまで息を潜めておくこと。何があってもね」

「狙いはなんだ」

「率直にいうと不意打ちね。

奴らと正面から戦ってボロボロになってもらうのは地元の一般軍人達。

多くの死者は出るでしょうね。

最悪は施設が破壊されて奴らが余韻に浸ったところを、襲撃して全滅してもらうのがサピエンス部隊の目的」

「犠牲ありきとはいつもの酷い作戦だ。

息を潜めるというのは方法はあるのか」

各施設近くには関係者を避難させるためのシェルターを建設したのだけれど、表向きには別業務優先のため建設計画中断としているわ。これは情報が魔法少女に筒抜けである事実を考慮した結果よ。

そこに潜んでちょうだい。

もちろん米国全線へ通じる地下通路も用意している。前線担当はそこに潜むことになるわ」

「奴らも使いそうだがな」

「だから隠れ方も気をつけてもらいたいわ。

区画地図にない部屋を各地に一箇所ずつ用意しているから、そこに隠れていれば見つかる確率は減るはずよ」

マッケンジーは話を聞きながら軽く資料を見てイザベラへ返事をした。

「お前らしい残酷な作戦だ。
一般軍人はただの時間稼ぎの役。
サピエンス部隊は絶望させるためのトリガー。
そして、いったいどれほどの魔法少女が…。

だがいつまで待つことになるんだ」

「いま神浜では日本の軍艦を集める動きがあるわ。その船団がペンタゴンへ辿り着くかその付近まで来たら合図でしょうね。

奴らは個々の力はあっても数は人類が圧倒的よ。

それを承知で奴らはちまちまとした方法よりもガツンとくる一撃にかけるはず。

最悪は核施設が狙われることも考えないといけないわ」

「奴らにそこまでの度胸があるかだが。

気は進まないが人類の未来がかかっているんだ。今回も前向きに参加するとしよう」

「助かるわ」

「部下達への褒美はしっかり用意しておけよ」

「もちろんよ。

そのおかげでこの休暇中に嫁や子どもとバカンスに行った奴もいるって話じゃない?」

「あああのバカか。

まあアイツらしいがな」

「2日後には業務再開だからそれまではしっかり休んでちょうだいね。

では失礼するわ」

 

私達はトレーニング施設を後にしてホワイトハウスへと向かった。

ホワイトハウスには住民との交流を終えた叔父が疲れた表情で椅子に座っていた。

その目の前にはたくさんの資料が積まれていた。

「今日も案件が多いようですね」

「ああまったくだ。街はキリスト教が禁止されてしまうのかと不安な声を出す住民が多かったよ」

「この国はキリシタンが多いですからね、無理もない話です。

それで、そんなキリシタンのために私を公の場に引き摺り出しますか?」

「冗談でもそんなことは言うんじゃない」

「でも国民からの信頼は命ですからね。

切り捨てるなら消す覚悟がいいですよ。絶対他の奴らが権利欲しさに宗教保守とかほざきますからね」

「人間の醜いところがよくわかるな。だが消せるわけがないだろ」

「ならば堅実に支持を集めましょう。

今度のブラジル訪問時にブラジルをもっと褒めて南米の指導者として後世に自信を持ってもらわないといけませんから」

「2日後だったか。

これまでのブラジルの成果は及第点ではあるが、まだマフィアには甘いようだ」

「マフィアに甘いだけまだいいですよ。そんなマフィア達には合法覚醒剤さえ作れればいくらでもキメていいことにして大金渡してるんですから」

「おかげで愉快犯達の割り出しはできたからいいがな。

やっぱり覚醒剤は」

禁止しても言うこと聞かないんですからビジネスにしてもらったほうが得ですよ。

今までの治安の悪さはなんでも覚醒剤でしたから」

「まったく。

ブラジルがやる気になっているのはとてもよいことだが、覚せい剤の合法化以外に黒人迫害の謝罪を白人が行うという取引材料もあったからじゃないかと思って悲しくなってしまうよ」

「謝罪以外もありますよ。

差別行為は犯罪になるようにして、過去の奴隷の印象を一切無くして同じ人間だという扱いになるよう取り決めることの約束も重要です。

中にはいきすぎた黒人優遇もありますからね。
まあ、全ては今までの白人たちがひどすぎたことが元凶ですが」

「まったく。ブラジルがうまく行ったら次はアフリカだな」

「いい発想力ですね。もちろんですよ」

そう話していると私と叔父の間へキアラが資料の山を持ってきた。

「とりあえず目についた急ぎの案件の資料をまとめてきました。

イザベラ、まだ山のようにあるから期日が近いものから渡していくよ」

「外部向きの案件をさらに優先して。

国内は後回しで」

「わかったよ」

私は目の前に積まれた資料に一つ一つ目を通して急ぎや不要な案件とわかるものは横にはじいて行った。

その中にはブラジル訪問に先駆ける案件も含まれていた。

「なんだこれ、ブルガリア産のコーヒー豆を米国優遇で取引できるよう根回しなんて。

こんなバカな話をする奴がまだいるのですか」

「誰だ、見せてくれ」

叔父が資料に目を通すと近くのコーヒーメーカーに目を移した後に答えた。

「こいつは普段は行儀はいいが、安くて上手いが売りなマウンテンネクストのCEOと繋がりがある奴だ。

ブラジル監視下になったブルガリア経済は南米だけのための資金となるが、以前まではマウンテンネクストに一部横流しされていた。

それがバレるのはやばいからやめて、その横流ししていた分を取引額減少で誤魔化したいのだろう」

「そんなの許可してはダメですよ。

南米の稼ぎは全て南米で消費してもらわないといけないです。

南米の稼ぎを別国が、ましてや米国が搾取してしまうのはもってのほかです」

「わかってるよ。

だがマウンテンネクストは米国内の経済を大きく回してくれる会社だ。

金の周りは悪くなるかもしれない」

「汚い金の根回しで生まれた流れなんていらないです。

潔く切り落として、失業者を見越し、土木建築に熱を入れておくべきです。

保留していた補修工事があったはず」

「日雇いか。

その場しのぎではあるが」

「失業するにはわけがあります。

何でもかんでも国が補助をすることはできないですよ。やりすぎると働く方が損になりますから」

「そうだな。

それは日本を見て思い知っているよ」

「ではこれはきっぱり断りを入れさせてもらいます」

このようにして私達は山のような資料を捌いて行ったが、叔父には途中で席を外して夕飯と就寝をとるよう伝えた。

そして深夜近くまで私とキアラで資料を捌いて行った。

これはよくある対応だ。

叔父には健康体で家族にも力を入れてもらわなければならない。くだらない資料に時間を使うのは私たちだけでいい。

叔父に見てもらわないといけないものがあったとしても私たちが処理してしまう。

ほとんどがそうしてしまっても問題ないものだ。

「イザベラ、本当にペーパーレスにしなくてよかったのか。

これらは突き返した後にシュレッダーにかけられるのだろう?

記録に残るようデジタルでも」

「キアラ、デジタルも便利だしこの程度の内容だけならそれでも問題ないわ。

でも中には2日後のブラジル訪問のような大統領の動向を察することができるものもある。

そういったものをデジタルの海に放り込むと何かの拍子にのぞき見られてロクな結果にならないこともある。

資料がある場所でしかわからないことができるから実物でのやり取りが大事なのよ」

「そんな単純な話かな」

「それに、デジタルにあるだけの情報はその保存先であるサーバが吹っ飛んだだけで復元不能になって消失するリスクがあるわ。
バックアップのためのバックアップとサーバを増やすだけでも大金がかかるだけ。

証拠品ありきの政治世界ではペーパーレスは難しいことなのよ」

「こんなにごみを出す結果も、あとのことを考えれば安いものとみえるか、か」

「ほら、終わらせないと睡眠時間がなくなるわよ」

私たちはせっせと中身を見て、そのほとんどをゴミ箱へ投げるという作業を続けた。

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-3-15 どの時間軸にもない澄んだ空

「リーダーを辞めるってどういうことですか!」

そう魔法少女達に言い詰められていたのは十七夜さんでした。

「そのままの意味だ。

魔法少女の間にリーダーという存在は不要な動きにある。いつまでも私が皆を仕切るというのは周囲に比べて不公正ではないか?」

「そうじゃないですよ、急になんでそんなことを言い出したんですかってことですよ」

「ふむ、ならば最初からそう言え。

私はサピエンス本部へ戦いに向かう。そのためだ」

「全然答えになっていないですよ。まさか1人だけで参加する気ですか」

「何を言っている?和泉十七夜は1人だけだ。それにリーダーはやめると言った。

私が決めたことだが、何か問題があるか?」

「えっと、もう少し周りの人が困っちゃうってこととかあると思うのですよ。

だって、行ったら生きて帰れないんですよね?」

十七夜さんは黙ってしまい、みんなに背を向けました。

「すまん、しばらく1人にしてくれ」

そう言って十七夜さんは港に向かって歩き始めました。

「十七夜さん!」

十七夜さんを追いかけようとした魔法少女へ飾利潤さんが止めに入ります。

「十七夜だって心の整理が必要だろうさ。1人にしてやれ」

そう言われて十七夜さんを追いかける魔法少女はいませんでした。

十七夜さんは夕陽が見える中、港の倉庫へ運び込まれるテレポーターを見ていました。

すると急にひなのさんが声をかけてきました。

「人も転送できるテレポーターだってさ。すごい奴らだよな」

十七夜さんが声がする方向を見るとそこにはひなのさんの他に令さんと郁美さんがいました。

「都、キミはサピエンス本部へ向かうのか?」

「ん?何言ってんだ行くわけないだろ。

先の戦いで大いに実感したからな。あたしじゃ足手纏いだよ。

それに、逝っちまうと悲しむ奴らが多くなっちまったからな。

それが理由だ」

「悲しむ者か。都にはそんな仲間がいるのだな」

「何言ってるんですか。あなたがいなくなって悲しむ人は大勢いるんですよ」

令さんがそう言った後、令さんは自身を指差しました。

「まずはここにね」

「クミもだよ」

「あたしだってお前がいなくなったら悲しいさ」

「お前達」

「・・・十七夜、なんで戦いに行こうと思ったのか教えてくれないか。お前のことだ、何か思うことがあったんだろう」

十七夜さんは少し考え、夕日に染まった空を見ながら話し始めます。

先の戦いで私は見慣れぬ魔法少女のソウルジェムが爆散する様を目の当たりにした。

その爆発に巻き込まれた者もいる。

あんな非人道なことを行えてしまうサピエンスを放っておくと、いつか我々もあれらと同じ道を辿ることになる。

あんな特攻兵のような扱いをする奴らを許すわけにはいかん。

戦いに赴き今後の脅威を排除する。

だからだ」

「そうか。目の前で爆発されたんだったな」

「みふゆさんはそれで参って寝込んじゃっていたね」

「お前の意思決定を否定する気はないが、これだけははっきり言っておく」

「・・・」

「十七夜、生きて帰る気がないなら行くな」

「それを判断するのは」

「難しいっていうなら行くな。魔法少女達が安全に暮らせる未来に自分を含めないのはなぜだ。

皆のためとか言っておいて自殺願望を満たすために行くだけならばただの迷惑だ。

やめろ」

「言わせておけば私を自殺志願者のように」

「ならなぜ言えない。

ただの強がりでも『生きて帰ってくる』となぜ口に出せないんだ」

十七夜さんは何も言えなくなり、黙ってしまいました。

「十七夜、私だって十七夜と親しくやってこれたかは自信がない。

でもだ、今は私たちしかいないんだ。

今なら心の内を打ち明けてくれてもいいんじゃないか?

そんなに私たちが信用できないか?」

十七夜さんは一度変身しようか悩みましたが、思いとどまって少しだけ泣きそうな顔になってひなのさん達に話しかけます。

「私は生きる意味を失ったような状態なのだよ。

かつては東側の扱いが西側と平等になるよう行動し続けた。その点では八雲とは最も意気投合していたといえよう。

だが、日継カレンが現れたことで東西の偏見という概念自体がねじ伏せられ、さらには八雲を追いやられてしまった。

この時点で私は生きる原動力となる動機を失っていた。

今まで生きているのは皆に頼られてしまっているという惰性からだ

日継カレンは私にとっては許し難い相手だ。

だがそれ以上に、サピエンスが人間と魔法少女の扱いを不平等にしようとしている。

ならば公平な関係の頃に戻るよう、サピエンスを倒すために行動を起こそうとするだろう。

しかしだ。

元々人間と魔法少女は公平であったか?

日継カレンたち海外の魔法少女達は人間社会崩壊を狙っている。

それも人間と魔法少女を不公平にする行為ではないか?

今まで公平さを重視してきた私の中に魔法少女優遇な世が望ましいと思う私がいるのだ。

都、観鳥、牧野、私はどう判断すべきなのだ」

ひなのさんは背伸びをして十七夜さんの右肩をポンポンと叩きました。

「よく話してくれたな。

一言言わせてもらうと、その公平さの考えは無視してみてもいいんじゃないか?」

「なんだと」

令さんは写真を一枚撮った後に十七夜さんへ話しかけます。

「十七夜さん、あなたには硬く考えてしまう癖がある。

だから自分のルールから外れることも許せないんだろうね。

でもね、私達は感情を持つ生き物だ。

たまには今見せてくれている表情のように、直感に従って行動してみたらどうですか?」

そう言って令さんはカメラで撮った画像を十七夜さんに見せます。

すると十七夜さんは軽く笑いました。

「私がこんな情けない顔をするなんてな」

十七夜さんが見ていたカメラを郁美さんが取り上げます。

「まあまあ、感情を持った生き物ならそういうことはありますって。

だから十七夜さん、今のお気持ちをどうぞ!」

十七夜さんは少し嬉しそうな顔をして答えました。

「私はサピエンスが許せん。

サピエンスを倒し、魔法少女の安寧を最優先としたい。

もちろんその中には私も含めてな」

「言えたじゃないか。

それなら私は何も言わん。しっかり倒して帰ってこいよ」

ひなのさんに続くように令さんと郁美さんも笑顔を見せます。

「3人ともに、感謝する」

十七夜さんは、最初の頃よりも覚悟を決めてサピエンス本部へ向かうことを決めました。

 

船で連れてきた他の地域の魔法少女達の受け入れが落ち着いた頃、私達もサピエンス本部へ向かうのか考えることにしました。

その話題を出すと欄さんは即答しました。

「あたしはパスだ。

もうサピエンスの件は大詰めなんだろ?あいつらだけでなんとかなるだろうし、面倒なだけだろうし降りさせてもらうよ」

すると近くにいた黒さんが口を挟みます。

「そう言ってマギウスの翼から速攻抜けてましたよね」

「あれはやばそうだからってのもあったけど、今回はただただ面倒そうだからだ」

「欄さん絶対活躍できるのに」

「そんなに行きたいなら黒がみんな連れて行けよ」

「なんでそうなるんですか!」

「まあ大人しく待っておこうや。

というわけだ、いいな夏目」

「はい。反論はありません。

無理なことでもいままで賛同してついてきてくれたことに感謝しています。ありがとうございました」

あんたについて行けばここで腐ってるよりは刺激を得られると思ってついて行っただけさ。

思った通り刺激的で楽しかったよ。

じゃあな、生きて帰ってきたらちゃんと土産話聞かせろよ」

「はい」

欄さん達を見送った後に次に話を聞いたのは氷室さんと那由多さんです。
お二人に話を聞くと先に口を開いたのは那由多さんでした。

「私は嫌ですよ。

北海道に連れて行かれた時も美味しいものが食べられると思ったのに、そんな暇なく殺し合いに巻き込まれるのですもの。

あんなものに参加するのはごめんですわ」

「私は那由多様についていくだけですので、私も不参加です」

「あら、私に合わせなくてもいいのですよ?」

「別にあなたに合わせなくても行く気はなかったですよ。

私は元々傍観者。主戦場に参加する気はないですよ」

「そ、そうですの」

「久しいですな、ラビ殿…」

声がした方には時女一族の子がいました。

「あなたは時女一族の」

「旭、新たな居場所を見つけられたようで何より」

「えっと、目的から外れて行動してしまい申し訳ない。

2人についても」

「いや、あの場にいないことは正解だった。

調整屋を庇わなかったとしても、その仲間として日継カレン達に蹂躙されただけだったでしょう。

あの場で生き残ってしまった私こそが罪ですよ」

「ラビさん、あの大怪我で帰ってきた日にそんなことがあったのですの?」

「那由多様はしばらく黙っててください」

「うぐっ」

「旭、湯国の出身者で集まる必要はもうないわ。

世界はすでに大きく動き出して最悪なシナリオを歩みながらも魔法少女だけで生きていける世の中へ動き出している。

私達はそれが【意思】によって邪魔されるか否かを見守るだけよ」

「そうでありますか」

「旭はどうするの?」

「時女一族が不安なので残るでありますよ。しばらくはちはる殿ひとりぼっちでありますからな。

皆が回復した後も共に歩もうと思うであります」

「そう、それはよかった」

「ラビ殿も居場所は見つけられているようでありますな」

「私が?どこに」

隣で那由多さんが胸を張っていました。

「ラビさんのそばには私がいますわ。悩んだらなんでも言ってください」

「那由多様に相談しても謎が深まるだけだと思います」

「そ、そんなことないですわ!」

「ありますよ。ふふっ」

「冗談を言い合える仲なら十分でありますな」

私はその場を後にして北海道から持ってきた軍艦の甲板にいるあやめちゃん達に話を聞きに行きました。

質問に答えたのは葉月さんでした。

「私たちの中で相談したんだけどね、悪いけど不参加ってことで」

「はい、全然問題ないですよ」

「かこは行くの?」

「私は行きますよ。結末をしっかり見届けないといけないから」

「なら、ならさ!」

このはさんがあやめちゃんを止めに入ります。

「あやめ、何があっても連れて行かないって言ったでしょ?

今まだでだって十分危なかったけど、次は海外だし生きて帰られる保証もないなんてところへは連れて行けません」

「うう、わかってるよ」

「絶対帰ってくるから、フェリシアちゃんと一緒に待ってて」

「おう、あいつにも久々に会わないとね」

葉月さんが少し真剣な顔で話しかけてきました。

「かこちゃん、日継カレンにこだわり続けるのはいいけどかこちゃん自身はそのままでいいの?」

「特に」

「かこちゃんがななか達を殺す原因を作ったことは、今後も背負っていくべき罪であることはわかっているよ。

でも今のかこちゃんは前とは違って倒すべき相手ばかり見つめている気がするんだ。

あの人のようにね」

「…否定はできないです」

「かこちゃんの人生はかこちゃんのものだと思うんだ。

自分が今後どうしていきたいかは、しっかり持っておいたほうがいいよ。

そうしないと、命が軽くなっちゃうからね」

「わかりました。忠告ありがとうございます。

自分のやりたいことをしっかり持っておきます。

あやめちゃん、フェリシアちゃんと3人でまた遊べるようにちゃんと帰ってくるからね」

「おうよ!絶対だよ!」

私がその場をさった後にこのはさん達が話を始めます。

「葉月、なんであんなことをわざわざ言ったの?」

「いやね、ななかも危なっかしさがあったから。

彼女の背中を参考に行動しているかこちゃんにも同じ危うさを感じられたのさ。

だからかな」

「まったく、お節介さんね」

 

次の日、港はテレポーターの起動する様子を見ようと多くの魔法少女が押しかけていました。

テレポーターは倉庫の外に出された状態でたくさんの線が倉庫内に伸びていました。

私とやちよさん、ういに灯花ちゃんにねむちゃん、ワルプルガさんとさつきさんが揃ってテレポーターを見にきていました。

「あのテレポーターに灯花ちゃんも関わったんだっけ?」

「そうだよ。魔法石の魔力制御と座標指定でちょっと助言をしてあげたんだ」

「すごいね!海外の子も助けちゃうなんて」

「天才だから当然だよ!」

「あの輪っかから人が出てくるんだよね?」

「そうだね。別のテレポーターと座標が共有されて空間がつながった状態になる

その境目となるあの輪の歪みで問題が発生しないかが注目すべきところだ」

テレポーターをいじっていた技術者さんが装置へ魔法石をはめるとテレポーターの輪っかは青白く光だし、輪っかの中にはブラックホールのような渦の模様が現れました。

「よし、あとはヨーロッパにつながるかだ」

「通過したら体が粒子になって消え去るかもね」

「こ、これからくぐる奴が目の前にいるのに不安になること言うなよ」

「えへへ、悪かったね」

技術者さん同士で冗談を言い合った後、その中の1人が覚悟を決めてテレポーターをくぐりました。

姿は消えてしまい、私達は無事に転送されたのかどうかわかりませんでした。

みんなが見守る中で灯花ちゃんはテレポーターに近づいていきました。

「ちょっと灯花ちゃん!」

灯花ちゃんはテレポーターの近くにあるモニターを見ていました。

「これなら大丈夫かな」

灯花ちゃんがそう言うとテレポーターからさっきの技術者さんが出てきました。

「よし、成功だ!」

周囲からは歓声が上がりました。

そしてすぐにテレポーターの向こう側から次々と魔法少女が出てきました。

私達はテレポーターから出てきた魔法少女達へテレパシーで話しかけました。

[神浜へようこそ!

徒歩での移動になりますが、魔法少女が集まって生活している場所があるのでそちらへ案内しますね]

「oh,Japanese magical girl using telepathy!」

「You too have to tell her by telepathy」

「oh! Sorry」

[ごめんごめん。神浜の皆さん、ちゃんと伝わったよ。

じゃあ日本の魔法少女さん、この後もたくさん来るから順次案内よろしく!]

海外の魔法少女達の案内は、協力してくれると申し出てくれた魔法少女達が受け持ってくれています。

「えっとまさら、テレパシーじゃないと通じないんだっけ」

「そう。でもいつも通りよ」

[はいはーい、皆さんしっかりついてきてくださいね!]

[持ちきれないほどの荷物がある方はいますか?

あるなら持つの手伝いますよ]

「この阿見莉愛が皆様をしっかりエスコートして差し上げるわ!」

「先輩、テレパシーじゃないと伝わらないですよ」

次々とテレポーターから魔法少女が出てくる中、魔力反応が少し違う子が混ざっていました。

「魔法少女ではない反応ね。何者かしら」

その反応が気になったのかさつきさんと、なぜかねむちゃんが変わった魔力反応がすると言ってその子の場所へと向かいました。

変わった反応を見せていた子は手には人形を持っていて、少し大きめなリュックを背負っていました。

「ちょっとあなたいいですか?」

「は、はい!」

「え?!日本人?!」

「わ、わたしはえっと」

私達は何かがあったと思ってさつきさん達のところへと向かいました。

「まあ日本語がわかる子が混じっていても不思議なことではない。

率直に聞かせてもらうよ。

君は“風の伝道師のウワサ”を連れているね?」

「それって、フゥちゃんのこと?」

[フゥちゃんとは偶然出会って、それから魔法少女の情報を集めてくれているよ]

「あれ?

いまあなたが話しました?」

[違うよ、これは腹話術。

直接話すのが苦手なかごめちゃんはこうやって私を通して話すことがあることが多いんだ]

「人形にしゃべってもらっている感じですか」

「ここで立ち話をするのは少し迷惑よ。落ち着いて話ができる場所へ移動しましょう」

やちよさんの提案で私達は南凪の公園で座って話を続けました。

「事情はだいたい把握した。

君が魔法少女達の声を受け取れるのは風の伝道師のウワサが拾っているからだろう。

その情報を集めて何に活用しているんだい?」

「魔法少女のことを多くの人に知って欲しいから、というのが目的で。

でも今は純粋に記録を残したいってだけ、です」

「あの米国大統領の演説とは関係がないのね?」

「関係ないですよ!あの時は私神浜市にいましたし」

「神浜で酷い状況を見た後に助けてもらったと思ったら、ホワイトハウスに監禁。

そこから攫われたかと思ったら保護されていた。

大変な日々だったね」

「そう、ですね。

大変でした」

「魔法少女の記録をしている子が来ていると聞いたのですが」

そう言って近づいてきたのはかこちゃんでした。

「いつのまに」

「記録はどこに残しているのですか?本に残しているのですか!」

「ファ、ファイルにまとめていて今は10冊に至りそうな勢いで」

「すごい数ね」

「その内容、見せてもらっていいですか!」

かこちゃんは久しく無邪気な顔を見せていました。いともはどこか恐ろしい表情をしているので。

「え、ええ?!」

困惑しているかごめちゃんの前にさつきさんが割って入ります。

「ダメです。まずはこの子が落ち着ける場所へ連れていくのが第一です」

「そうでしたね。すみません取り乱しました」

その後かこちゃんは港の方をしばらく見た後にかごめちゃんへ話しかけます。

「全てが落ち着いたらまた伺おうと思います。その時にはゆっくり記録を見せてくださいね」

「は、はい」

かこちゃんは港へと向かっていきました。

「そうか、いつ見てもらってもいいように整理しておかないとなぁ」

かごめちゃんはそうつぶやきました。

まあ今後のことはさつきさんが言った通り落ち着ける場所を確保してからだよ。

とはいえしばらくはテント暮らしだろうけど」

「そうですか」

私が周囲を見渡すと灯花ちゃんがいないことに気づきました。

「あれ、灯花ちゃんは?」

「話に飽きちゃったって言って港の方に行っちゃったよ」

「ええ、見てきた方がいいかな」

「きっとテレポーターを見に行ったんでしょ。他の魔法少女もいるし大丈夫よ」

私達はそのまま居住区となっている栄区へと向かいました。

 

港ではヨーロッパからテレポーターで来る魔法少女が落ち着いた後に、サピエンス本部へ向かうと手を挙げた魔法少女を試すための決闘がはじまっていました。

決闘中は魔法を使うことが可能で、その様子を船の甲板からカレンさんとジーナさんが眺めていました。

「あんな魔法使える状況で見定めて意味あんのか?」

あたし達では魔法を打ち消すシールドくらいしか用意できないし、守るばっかじゃつまらないってあいつが言って聞かなかった結果さ

「まあ最悪肉壁にはなるだろうけど」

「最悪な妥協案だな」

「あたしらですら生きて帰られるかわからないんだ。

イザベラと対峙した事はあったが、今じゃどんな化け物になっているのか」

「問題は従者の方もそうだろ?」

マーニャによると人間なのに魔法少女に楽に勝つヤバいやつって話だっけ。

なんだよ英雄クラスかよ」

「魔法少女に負けず劣らずの人間は過去にもいたし、おかしい話ではない」

「ぬわぁ?!」

目の前で繰り広げられていた決闘が終わった。

「また神浜側の負けか。

本当に大丈夫か?」

戦った者同士が少しだけ討論をした後、ヨーロッパの魔法少女は戦った神浜側の魔法少女を船へ招き入れた

「あれ、全員乗せちゃった」

「誰も止めないならキレやすいあいつらが妥協できたってことだ。気にする必要はないさ」

少ししてからジーナさんがカレンさんへ問いかけます。

「今回の戦い、バチカンの時以上になると思うか」

「人類が最終手段としてあれを持ち出すならば必然的にそうなるだろうさ」

「あの時お前たちは人類が終わるような状況に奇跡を見せた。だからミアラや私たちはお前たちの師匠が言った言葉を信じてここまでついてきた」

「『やっと見つけた奇跡の体現者。私の目に狂いはなかった。どうかこの世界を救ってくれ』だったか」

「そう言ってお前たちの師匠は死んでいった。
人類があれを使ったらバチカンで起こした奇跡以上の負担がお前たちにかかるんだろう?あのときだってソウルジェムにヒビが入るまでの負担だったのに」

「らしくないな。心配してくれるのか」

「お前を殺すことを生きがいにしてるやつらが困るって言いたいんだよ。
ちゃんと責任もって生きてくれよ」

「今は生きる理由があるんだ。簡単に死ぬ気はないよ」

「・・・前から行っている見つけた生きる理由ってなんだよ」

「誰が教えるかよ」

そう言ってカレンさんは空を眺めてこう言いました。

「あれから随分と遠いところまで来たものだ」

 

これからしばらくして、世界を巻きこむ魔法少女VS人類の大戦が始まる。

 

第三章:激闘と見せかけた神浜鎮圧作戦(ミスディレクション) 完

 

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