【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-3-4 神浜鎮圧作戦・下ごしらえ

キュウべえが姿を消したと知ってから数日が経過

日が沈み、夜と呼べる頃になった時間帯の出来事でした。

北の方角から以前に神浜を奇襲した武装集団とは別の集団が迫ってきていました。

灯花ちゃん達がいるコンピュータ室でその武装集団の姿を捉えた時、兵士と随伴する車両に記載されていた文字は。

「自衛隊?!」

神浜の境に入るあたりで自衛隊は歩みを止め、スピーカー越しにこちらへ語りかけてきました。

「神浜市に籠城する魔法少女達に伝える。

無駄な抵抗はせず、投降しなさい。

そうすれば、互いに辛く、痛い思いもせず穏便に事が済む。

君たちと殺し合いは行いたくない。

どうか、人と共に歩むという選択をしてくれないだろうか」

神浜にいる魔法少女達は自衛隊の呼びかけを聞いて直ぐには動き出せずにいました。

それは、私たちも同じです。

「投降って、でも、今捕らわれるなんてことになったら」

間違いなくアンチマギアプログラムに従って人としては扱われない

「投降したからって、過去と同じ生活には戻れないってのはみんなわかっているはず」

「とは言え判断するのは個々人の自由だと思います」

「いろは?」

私は知りたかった。

ただ周りに合わせているだけで、実は人間と一緒にいたいと思う子達がこの神浜にいるのではないか。

神浜中を歩いて分かったけど、決してここでの生活は快適なものではない。

ここでの生活を望まない子がいるなら、これはいい機会かもしれない。

そう思いを巡らせていると、灯花ちゃんが何かをしようとキーボードに手を伸ばそうとしていました。

「待って!」

「…お姉さま?」

「もうちょっとだけ、様子を見させて」

灯花ちゃんは呆れた顔でキーボードから手を離します。

「しょうがないにゃぁ」

他の魔法少女達がどう出るか伺っていると、誰も自衛隊の方へ行こうとする子は出てきませんでした。

15分近くは状況が変わらずにいました。

しかしついに自衛隊が動き出しました。

「回答がないならば、保護を目的に立ち入らせてもらう」

自衛隊が用意した照明が神浜を照らし、自衛隊はゆっくりと中央区に向けて進軍を開始しました。

「あいつら入ってくるよ!」

「抵抗していいのか、どうなんだ!」

神浜の魔法少女は誰かの指示がないと動き出せないのか次の行動に出れずにいました。

「自衛隊が動き出したのに、みんな動こうとしない?」

「人間社会のあり方が刻まれていれば、指導者の指示を待つのは当然だろう」

ねむちゃんがそう言い出すと、マイクがある方向に指を刺しました。

神浜マギアユニオンという組織を作ってしまったのはおねえさんだ
お姉さんの言葉ひとつでみんなは動き出してくれるだろう」

「でも、私はみんなに戦ってなんて言えない。戦いたくない子だって、いるだろうに」

みんなが何も言わない中、声をかけてきたのはワルプルガさんでした。

「ならば思いを伝えるだけでいいんじゃないかな」

「思いを?」

「スピーカーなんて使わなくても、あなた達にはもっと便利な情報伝達手段があるでしょう?」

テレパシー

確かに思いは届けやすいけど、そんなに遠くまで、しかも複数人に届ける方法なんて。

「でも、どうやって複数の子達に」

「くふふ、あの人たちはすごいにゃぁ、こうなることを予期していたんだから」

そう言って灯花ちゃんは引き出しから小さな機械がついたインカムを取り出しました。

「これをつけてテレパシーを使うと、余裕で神浜中の魔法少女に思いを届けられるよ」

「あなたそんなものまで作れたの?!」

やちよさんの驚きはもっともです。

いつの間にこんなものを。

「天才を侮らないでほしいな。

ほら、みんなを指示待ち人間から解放してあげて」

私はインカムを受け取り、装着してみんなにテレパシーで伝えました。

「それじゃあ、やってみるね」

私は神浜にいる魔法少女全員に伝えることを意識しながら想いを伝えます。

“みなさん、これからどう行動に出るかは個々人にお任せします。

戦おうと、逃げようと、投降しようと。

抗いたいという人は、私に力を貸してください!”

そう思いを伝えると、自衛隊の1人が何者かに頭を撃ち抜かれていました。

自衛隊は一斉に抗戦する体制に入り、戦車が前へと出ます。

銃弾を放ったのは、三重崎の魔法少女でした。

「勝手にしろっていうんだ、好きにやらせてもらう」

「久々に殺し合いができるんだ、楽しまないとなぁ!」

その後次々と射撃が得意な魔法少女が戦車に対して発砲を行い、前線を作っていきました。

「やれやれ、血気盛んな奴が随分といるじゃないか」

「勝手にしろというのだもの、私たちも勝手にさせてもらうわよぉ。

紫色の霧には警戒して戦車に近づくわよ。

目眩し用の照明弾は持ってきているわね?」

「もちろんっす!」

「じゃあ、敵の目を潰してとっとと片付けるわ」

「はい!!」

二木市の魔法少女達も動き出し、戦いが次々に始まっていきました。

「私達は戦わない子達の保護にまわりましょう」

「そうですね!」

私たちが部屋から出ようとする時、わたしはういのほうを見ましたが、特に動き出そうとはしていませんでした。

「私はここに残るよ、ワルプルガちゃんもいるし」

「うん、わかったよ、うい」

部屋にはうい、灯花ちゃん、ねむちゃん、ワルプルガさんが残って他のみんなは戦わない子達の保護に出ました。

自衛隊と交戦を始めた魔法少女たちは自衛隊をどんどん押し込みます。

しかしその戦いの様子を見て灯花ちゃんは疑問を抱いていました。

「なんでアンチマギアが使われていないのだろう」

「確かに、夜闇では視認が難しいのにわざわざアンチマギアを持ち出さないなんて」

「彼ら、本気で制圧する気ないんじゃないの」

「だったら何で」

ただ追い返すことだけを考えている前線の魔法少女たちは自衛隊への攻撃をやめません。

「神浜の範囲外へ追い出すだけでいいから。

無茶はしないでよ!」

「神浜から出ていって!」

魔力による遠距離攻撃に対応できるはずがなく、非常識に遮蔽物をえぐる攻撃に自衛隊は対応できていませんでした

非常識な結果に怯えて逃げる者、負傷した兵士を引き摺り、牽制しながら後退する者。

戦車も兵士たちの盾になるだけで主砲を撃ってこようとしません。

その様子に三重崎の魔法少女達は疑問に思っていました。

「主砲を使わないなんてナメてるとしか言えない」

「魔法少女を撃つことを躊躇しているというの?

国防の要のくせして!」

「…なんだあれ」

狙撃手であるツバキさんが真っ暗闇の空を見て何かに気づきます。

ツバキさんが狙撃銃のスコープで目にとらえた物体を観察すると、そこには滞空するドローンがありました。

「あんなの気付けるはずがない。

でも、これはまずい!」

何かに気づいたツバキさんはテレパシーで博さんへ報告します。

博さんは驚き、すぐにテレパシーで魔法少女達に伝えました。

[奴らの目標は偵察だ!

上空のドローンを落とさないと何もかも把握されるぞ!]

みんなが一斉に上空を見る様になり、射撃系の武器を持つ魔法少女達はドローンを見つけると次々と落としていきました。

しかしこの行動も自衛隊の思う壺だったのです。

 

 

自衛隊から出された前日奇襲の提案。

「魔法少女が危険な存在だと認識させるだって」

この国には魔法少女が危険な存在ではないはずと信じるものが多い
本土上空で航空機の使用許可が出されないのもそのためです」

「イザベラとの交渉でも航空機の使用は禁じていたわね」

「確実性を持たせたいというならば、今からいう作戦を本作戦前日の夜に実行させてください」

私はマッケンジーに目を向け、マッケンジーはこちらの目を見た後に首を縦に振った。

「で、その作戦というのは?」

「魔法少女達の攻撃を誘い、彼女達に撮影ドローンを撃ち落としてもらいます」

「ほう、それが恐怖心を煽ることになると?」

「国防の要である自衛隊が容赦なく追い込まれる、そんな様子を撮影ドローンで中継します。

魔法少女達がそのドローンをどう捉えるかまでは予想できませんが、戦況がのぞき見られていると勘付いて破壊してくるでしょう。

その破壊してくる様子も実況すれば、国のお偉いさん達も恐怖を感じて航空機の使用許可を出してくれるでしょう」

「なるほど、いいんじゃないかしら。

でも自衛隊には被害が出るわよ」

「…苦肉の判断ですよ」

そんなわけで前日の夜に実行された作戦は見事成功し、実況するキャスターは絶句している様子だった。

さすがと言わざるを得ないのは現地での自衛隊の対応だ。

死者は出ているが動きが早い日本の戦車らしく兵士への射線を車体で塞ぎ、後退の手助けをしている。

やられた車両は乗り捨て、そのまま盾にして撤退。

信号弾も出さずにドローンがやられたとわかれば素早く全員後退。元から撤退する前提だとしてもよく指示が行き届いている。

それに、撮影用に偵察用ドローンを紛れ込ませてこちらが試験艦で撃ち込むミサイルの標的はどこが最適かまで調べてくれた。

気が引けた状態とはいえここまでお膳立てしてくれたのは感謝しかない。

それに、現に航空機の使用許可が降りている。

条約違反だと罵られる覚悟で持ってきたヘリ達が気兼ねなく飛ぶことができるんだ。

本当に感謝しかない。

携帯端末で中継が行われている映像を流しながら、私はSGボムが装着された魔法少女達の様子を見てまわっていた。

A,B,C,Dの4班に分けていて、D班には最近神浜市から亡命してきた魔法少女が集まっている。

そこまで戦果は期待していないが、面白いデータがとれたらいいな程度には思っている。

こちらを睨む魔法少女達に対して、私は忠告の意味で話しかけた。

「変に戦場で逃げようとか、説得されて寝返ろうなんて思うんじゃないよ。

ソウルジェムにつけたやつが爆発しちゃうからさ、死ぬ気で同胞と殺し合えよ?」

その後誰も声を出そうとせず、面白くないと思ったところで1人の魔法少女が話しかけてきた。

「魔法少女が捕まったら、みんなこうなるんですか」

「動物園の猛獣の様に檻で管理するのも難しいからね。

思考力が高い相手には、命の危険で脅すしか方法がないのさ。

だって、人間って弱いし」

「だからって、爆弾をつけられるだなんて、酷すぎです」

「あんたの母親もそう言ってたねぇ。危うく叩き切られかけたけど」

私は話しかけてきた時女とかいう魔法少女のところまで近づいた。

「口で襲わないって言ったところでよ、守れないのが人間なんだ。
せいぜい口だけになるんじゃないよ。

しっかり神浜市にいる仲間とやらにもわからせてやれ。
そうすれば、少しは人間らしい生活に戻れるだろうさ。

私は保証しないがな!」

時女の殺意は感じられた。

背中を向けた瞬間切ってくると思い、去りながらSGボムのスイッチをちらつかせると、こちらには殺気を送る目線しか感じられなくなった。

ああいうのがある間は、SGボムの装着は必須だろうな。

さて、もう1人の私を起こしに行かないと。

そう思って控え室に行こうとするとマッケンジーが壁に寄りかかって考え事をしているのを目撃した。

そんなマッケンジーへ声をかけた。

「よう、あんた漫画やアニメは見るか?」

「…どうした急に。そんな暇はない」

「そうか。だが、今回はいつも以上に非常識なことが降り注ぐ戦場になる。
少しは見といたほうがいいぞ?

あれらにはたくさんの非常識がつまっていてためになる」

「もうすぐに配置につく時間だ。

そんなことできるか。

だが、常識を捨てる覚悟はできている」

「ほう?それはいい心がけだ。それではまた戦場で」

そう言ってその場を立ち去ろうとすると、マッケンジーは話しかけてきた。

「あんたは知ってるのか。

この戦いが本気じゃないってこと」

「そんなわけあるか。ここを手に入れないと後々困るってのはイザベラだって知ってることだ」

「ならばなぜ本人達が来ない。

イザベラとキアラが居るだけで俺たちの何十倍も戦力になる。

誰だってわかることだ」

私はマッケンジーへ振り返って指をさしながらこう言った。

「だったら死ぬんじゃねぇぞ〜。

ただ言えることは、この戦いはただのデコイだ。あたしらは捨て駒なのさ」

「お前、それって!」

「せいぜい背中には気をつけろよ。下手に言いふらしたら殺すから」

マッケンジーは何も言わなくなった。

そう、ここまで大規模に作戦をこしらえておきながらイザベラの本命は別にある。

ここにいる私も、あいつにとっちゃ捨て駒ってことだ。

全貌を知ったこっちにとっちゃ、イザベラはマジで頭がおかしい。

だってこのままじゃ・・・。

ほんとやべーよ、あいつ。
このままじゃ世界は魔法少女ではなくて、イザベラに滅ぼされるんじゃないかね。

 

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