【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-4-6 本命がエサとなりえるか

ペンタゴンへ突撃した魔法少女の船は機能を停止させ、船から出てきた30人の魔法少女達は穴が開いた地下7階へ侵入していた。

セシルが通路に異常がないことを確認した後につぶやいた。

「随分と簡単に深く潜り込めたもんだ。5階から激戦を予想していたが肩透かしだ」

その呟きにカレンが反応した。

「ソフィーが逃げずに照準を合わせ続けた結果だろ?」

「死ぬ必要はなかったと思うけどな」

「ここは敵地よ。おしゃべりの暇なんてないわよ」

そう言って結奈が率いる神浜からの参加組がずんずんと施設の奥地へと向かっていった。

神浜から参加したメンバーは二木市のメンバーが主流となっており、そこに十七夜とヨーロッパから参加した3名が混ざっている。

カレンを中心としたヨーロッパ組にはカレン含めた9名に神浜へ避難していた中東のメンバー6人が混ざったグループで構成されている。

神浜に設置された転送装置で可能になった神浜メンバーのペンタゴン奇襲への参加によって、ヨーロッパ組の一部は陽動用の船団に人員を割くことができた。陽動用の船団には夏目かこと三重崎のメンバーも参加しているため、ピリカのソウルジェムの安全性も問題ないレベルとなった。

ペンタゴンへ潜入したメンバーはすでにミアラからの応答がない状態であることは知っていて、予定通り2グループに分かれてサピエンス本部へ侵攻し、魔力消費を考えてテレパシーの使用は控えることにした。

二木市のメンバーの姿が見えなくなるとカレン達も行動を開始した

「さて、どっちに本命がぶち当たるだろうね」

イザベラってやつと顔合わせたことがあるのはカレンとセシルくらいだろ」

「私はこんなビッグになる前のイザベラへ忠告した程度だ。

一番最近接触したのはカレンくらいだし、好かれてたらこっちにくるんじゃないか?」

「そう知ってて付いてくる死にたがりはお前らだろ?」

実物のアサルトライフルをリロードしながら中東から参加した1人が話し始めた。

「本命を殺せるチャンスだ。乗り掛かるしかないじゃないか」

「まったく。

したっけ向かおうじゃないか」

ペンタゴン地下7階には特に罠は用意されておらず、兵士たちの待機部屋として使用されている階だった。

本来であれば5、6階には液状アンチマギアが消火装置にセットされて通路を通ろうとすれば確実に脱落者が出る作りとなっていた。

そこから先、8、9階には銃器を携えたドローンが粉状アンチマギアを振り撒ける状態で待機している。

そしてサピエンス本部は地下10階に存在していて研究施設は地下11、12階に存在している。

ここまでペンタゴンの詳細を魔法少女が知っている理由としてはマーニャがカルラから受け取った見取り図によって明らかになったものだった。

さらにはミアラが抜き取ったペンタゴンの罠を配置する指示の内容とも一致していたため、魔法少女達は見取り図を信じて進んでいた。

2グループに分かれている理由も見取り図を参考にした結果であり、本部へ通じる通路は二つあり、片方にイザベラが出てももう片方が本部を潰せるからである。

地下8階を進んでいた二木市のグループは何の問題もなくドローンを排除して先へ進めていた。

そんな状態に思わず結奈は呟いてしまった。

「妙ね…」

「何がっすか」

「ミアラさんからイザベラは狡猾と聞いていたのだけど、ここまで見取り図通りなのは素直すぎて」

「いいじゃねぇか、素直なのは嫌いじゃねぇ」

二木市のメンバーの会話に十七夜が割り込んでくる。

「紅晴の言う通りだ。

突然壁から銃が飛び出してくるかもしれないぞ」

「水さすんじゃねえよ。
そんなことされたら壁ごとぶっ壊してやる」

「でもここの壁って」

そう言って二木市の魔法少女の1人が壁に向かって魔法製のハンマーを叩きつけると魔法製のハンマーは光の粒になって消えてしまった。

その様子を見て樹里は驚いた。

「おいおい、触れたらやばい壁だったのかよ」

「見取り図やミアラさんの情報にはなかった。

もうすでに未知の対策をされ始めているってことよ」

「全然気づかなかった。

もしかしたらもうすでに未知のトラップを踏んでるかもしれないってことか」

ヨーロッパから参加した魔法少女も会話に参加してきた。

「そうだろうさ。

本来であればシールドに電力を取られてここの通路は予備電源で暗いライトしかついていないはずだ。

それがこんなに白々しく明るい。

ほんとに壁から銃が出てくるかもしれないな」

「マジかよ」

一方のカレンのグループでも壁の異変に気付きつつ10階に続く階段に通じる通路途中にある大広間に到達していた。

その大広間は直径50mほどある半球体の空間だった。

しかしそこはカレン達にとって予想外の場所であった。

「なんだこれ、まっすぐな通路が階段に続くだけじゃないのか」

「入ってしまってなんだが引き返した方が」

ニードルガンを持つ魔法少女がそう言うとカレン達が通ってきた通路へ急速にシャッターが降りて道が塞がれてしまった。

「おい!これで液体流し込まれたら終わるぞ!」

「いや、近づいてくる魔力で何も起こらないことはわかるよ」

カレンがそう言うと本部へつながる通路から銃弾が飛んできた。

魔法少女達は急いで避けて通路の先から来る存在に備えて武器を構えていた。

「籠の鳥は30ってか。その程度で超えられると思ったのか」

そう言いながら暗い通路の先から現れたのは、いつもの服装で小型のコンテナを背負ったイザベラとコートタイプの軽装と脛当てを装備したキアラが現れた。

姿が見えてすぐに中東の魔法少女達はアサルトライフルを放った。

イザベラとキアラは左右に素早く避け、イザベラは走りながらサブマシンガンで魔法少女達へ反撃した。

キアラは弾を避けながら魔法少女達の背後へ素早く回った。

他の魔法少女達も攻撃へ参加し、イザベラには近接の、キアラには遠距離タイプの魔法少女が対面する形になった。

「動きがいい。でも!」

キアラがそう言うと白い筒がついたクナイを遠距離の魔法少女達が集まる場所へ投げた。

それをレイラが撃ち落とすとクナイについた白い筒が弾けて周囲は白い光に包まれた。

それに反応するようにイザベラは閃光弾を取り出して足元に投げつけた。

魔法少女達は背中を取られないよう集まる中、カレンは魔力反応がする方向から飛んできたフックに引っ掛けられて引き抜かれてしまった。

周囲の視界が戻ると、イザベラにカレンのみが対面する状態になり、その2人に背を向けるようにキアラが、キアラの目線の先に14人の魔法少女達が集まっている状況になっていた。

「なんのつもりだ」

カレンがそう言うとイザベラは銃口を向けながら返事をした。

「首長竜使い、お前と少し話がしたくてね。

キアラ!他の有象無象は任せた」

「了解」

そのやり取りを見たニードルガンを持つ魔法少女が怒り出した。

「なめんじゃねぇ!」

ニードルガンを連射されるとキアラは避けるのではなく刀で切り落としていった。

アンチマギア製の刀を使っているようで魔法で生成された弾丸は斬られた後に消し去られてしまった。

ニードルガンを持つ魔法少女に対してアバが話しかけた。

「やめなって、あいつマーニャ達を1人でやったやつだよ」

「なんだって?」

別の魔法少女もニードルガンを持つ魔法少女へ冷静になるよう伝えた。

「アバの言うとおりだ。下手に行動すると一瞬でやってくるぞ。

名前はキアラ。イザベラの懐刀で人間なのに魔法少女以上の身体能力を持っている

「対抗方法ぐらい話し合っただろ」

「それは相手がやる気になればの話だ」

話しかけていた魔法少女が後ろで戦っているイザベラへサブマシンガンを放とうとすると、キアラはそれを斬ろうと動き出した。

「単純だからいいがな!」

中東の魔法少女達が一斉にイザベラ目掛けて銃を放とうとすると、キアラは足元に円盤状の物体を投げつけた。

そこからは赤紫色の半透明な壁が出現し、銃弾はその壁で防がれた。

その光景に目を向けていた魔法少女達は、目の前でキアラが銃器を切り落としにかかっていることに気付けなかった。

キアラを止めるために近接魔法少女達が前に出て手足を狙おうとするものの、わずかな股下のスペースへ滑り込み、立ち上がる勢いに回転を混ぜて中東の魔法少女達へ刀を振るった。

中東の魔法少女達は急いで銃器を投げて自分たちの手と銃器を守った。

キアラは刀ではなかなか行われない刺突を1人の魔法少女へ行うと、その間の一瞬で、1人のソウルジェムを破壊されてしまった。

そのまま切り上げて左側にいる魔法少女へ振り下ろすと体と共にソウルジェムを叩き切った。

そこから流れるように周囲を薙ぎ払った。

その動きを見てセシルは思わず呟いた。

「やばいとは思っていたが、本当に人間か?」

 

カレンと対面しているイザベラは話を始めるわけではなくいきなりサブマシンガンの引き金を引いた。

カレンもイザベラを殺すために実体のある鉄パイプを持ち出してイザベラへ殴りかかった。

飛んでくる銃弾は避けつつシオリが操る鉄塊で防がれていた。
シオリとテレパシーでのやり取りが行われない中でも、二人の動きは互いを邪魔していなかった。

先端が鋭利となったパイプで突こうとするとサブマシンガンについた短剣で防がれ、イザベラの右手に持っているナイフが迫ってきて咄嗟に糸を束ねた剣で防ぐと、消滅させられるのではなく防げてしまった。

アンチマギア製じゃない?

疑問に思ったカレンはイザベラへテレパシーで伝えようとした。

[なぜアンチマギア製のものを持ち出していない]

しかしテレパシーが来ていることも知らないかのようにイザベラはマグナムを放ち始めた。

楽しそうにマグナムを放つイザベラを見てカレンは苦笑いした。

[話し合う気があるとは思えないな]

マグナムを撃ち終えるとそれはイザベラが背中に背負うコンテナへ格納され、イザベラは右手のナイフをしまって両手にサブマシンガンがアームによって手渡された。

最初よりも密度が高い弾幕が飛んできた。

カレンがキアラの真後ろまで移動するとキアラと対面していた魔法少女達が驚いた。

「カレン?!」

するとイザベラは容赦なくカレンの方へ銃を放った。

キアラも少し驚いた顔をして皆射線上から逃げた。

カレンはそこで紛れて仲間と合流しようとしたが、イザベラが放ったフックが左腕に絡みついて動けなかった。

「逃すわけないだろ、首長竜使い」

フックをすぐに切り落としても、すでに仲間との間にはキアラが割って入っていて合流はできそうになかった。

キアラがカレンを見ながら攻撃をしてこないためカレンはキアラへ問いかけた。

「どうした、自分から仕掛けはしないのか」

「その必要はない。時間をかける方がこちらの得になる」

「どういうことだ」

「こういうことさ」

そう言ってイザベラがポケットから端末を取り出して何かを押すと、半球体の天井には映像が映し出された。

そこには各地の戦場の様子が映し出されていた。

中には別ルートで行った二木市のグループも映し出されていた。

「なんのつもりだ」

「まあみんな手を止めてゆっくり鑑賞してみようじゃないか。
勘が良ければすぐにわかるさ」

 

back:2-4-5

レコードを撒き戻す:top page

Next:2-4-7