【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-3-10 神浜鎮圧作戦・その6

水名区北側、ここではディアが謎の船から発射された10発のミサイルを眺めていました。

「まさか試験艦がこうもあっさり沈むなんてね」

海を眺めてみると巡洋艦を蹂躙していたはずの首長竜が消えていることに気付いた。

「なんだ?海はもういいってか。

じゃあ次の標的はこっちか」

そう思いながら各ミサイルを目で追っていると、魔法少女の集団がディアへ近づいてきた。

その集団はディアに気づかれないよう周囲を囲み、殺意を向けていた。

ディアは特に気にせず盾役のディアの盾に仕組まれた棒を取り出した。

それを手に持って、腕部分に装備している装置に組み込まれたライト部分が黄緑色に光ると、折りたたまれていた部分が開いて螺旋模様を描いた。

棒の先端にはピコピコハンマーのようなものが膨らみ、ディアはその先端を魔法少女がいるであろう場所へ向けた。

手元から螺旋状の部分を黄緑色の光が登っていき、それが先端に到達しようという時に魔法少女達は慌てはじめて右側からは魔法で生成された騎士の集団が迫ってきた。

その方向へは盾持ちのディアが立ちはだかり、螺旋状の武器は先端方向へジェット機が横切ったのかと思えるほど素早い衝撃を放った。

衝撃波が通った跡は地面がえぐられ、逃げ遅れた1人の魔法少女は衝撃波に触れただけで体がバラバラになってしまった。

衝撃波は100mほど先まで伸びて道中巻き込んだものは100m先の廃墟に全て打ち付けられた。

「いい威力だけど即効性に欠けるか」

そう分析している間に盾役の方では魔法製の騎士の攻撃を受け止めていた。

「それじゃあ次はこっちだ」

魔法少女達が一斉に襲いかかってきたところにディアは飛び上がり一本角が生えた魔法少女へ螺旋状の棒を向けると瞬時に先端から衝撃波が前方に発せられた。

一本角が生えた魔法少女は反応できるはずもなく衝撃波を受けて地面に打ち付けられてしまった。

「結奈さん!」

そう呼んで騎士の格好をした魔法少女が結奈と呼ばれる魔法少女へ駆け寄り、ディアにはやけに足が速い魔法少女が斬り込んできた。

その魔法少女へは盾役が反応し、攻撃を受け止めるとディアは足が速い魔法少女へ武器を向けた。

盾役が避けたと同時に衝撃波が出たがとっくに魔法少女はいなかった。

そりゃあ間に合わないか。

そう思ったディアは螺旋状の武器を盾役の背中にしまった。

それと同時に背中に背負っているコンテナが開いてそこからアームが伸びてきて拳銃サイズの銃剣が2丁ディアの両手へ運ばれた。

銃剣はサブマシンガンタイプの連射が効くもので刃は持ち手部分まで広がっていて容易に持ち手部分を切りつけるのは叶わない。

銃剣を両手に持ったディアはコンテナを背負っているとは思えないほど軽やかに走りながら結奈に向かって銃弾を放った。

連射された銃弾は立ち上がれない結奈と介抱している騎士の魔法少女めがけて飛んでいった。

そんな2人を庇って3人の魔法少女が射線に立ちはだかり、3人ともに銃弾で倒れてしまった。

銃弾をばら撒くディアの横からは涙を流しながら青色の魔法少女が斧を振り下ろしてきた。

それを軽やかに避けたディアは青い魔法少女を見てニヤリと笑った

「そうか、あんたそんな度胸があったか」

「三女、てめぇなんで出てきやがった!」

火炎放射器を持つ魔法少女は三女と呼ばれる魔法少女へ怒鳴った。

すると三女は啜り泣きながら斧を構え直した。

「どうせ死ぬなら、悔い残したくない!」

そう言って三女に続いて他のSGボムをつけられた二木市の魔法少女達がディアへ襲いかかった。

火炎放射器の魔法少女へかかりっきりの盾役に構わず、ディアは二木市の魔法少女へ引金を引き続けた。

弾切れする頃にはサブアームがコンテナからマガジンが取り出され、2丁の銃剣からマガジンが自重で抜け落ちるとサブアームがマガジンを装填してディアはさらに撃ち続けた。

何人かSGボムがつけられた魔法少女が銃弾で倒れ、それでも弾幕を潜り抜けてくる者はいた。

そんな魔法少女達へディアは銃剣についた刃部分で殴り付けていた

その刃はもちろんアンチマギアが塗り込まれたものであるため刃に接触した魔法少女の武器は手応えなく消滅してなすすべなくディアにソウルジェムを破壊されていった。

周囲の魔法少女は作戦変更のためか瓦礫の後ろへ姿を隠していった

「学ぶ脳みそがないのかい?」

そう言いながらディアは銃剣をサブアームへ預けて盾役の背中から螺旋状の武器を再度取り出した。

そして結奈が隠れた瓦礫目掛けて長めに溜めた衝撃波を放った。

しかし瓦礫の後ろに肉片は確認できず、疑問を抱いた頃には脇腹部分へいつの間にか魔法少女が刃を突き立てていた。

ディアの命の危機を感じる脳波を感じ取り、脇腹部分には小さなアンチマギア製のシールドが発生して刃が肉体に刺さることはなかった。

その魔法少女は驚いて凄まじいスピードで姿を隠してしまった。

「咄嗟の発動はもう問題なさそうだな。いやぁほんとに助かるよ」

魔法少女からの反応は無かった。

「まだまだ付き合ってもらうよ。

試したいものは山ほどあるんだから」

そう言ってもう一度螺旋状の武器を充填し始めると火炎放射器を持つ魔法少女が飛び出してきて炎を放った。

それには盾役が反応したが斧を持った魔法少女が突っ込んできたためそれについてはサブアームが銃剣を撃って対応した。

そこへ畳み掛けるように高速で瓦礫が飛んできてそれは螺旋状の武器を壊してしまった。

ディアは腕のウェポンからアンチマギアを含んだグレネードを2発瓦礫が飛んできた方向へ撃ち込み、後ろへ下がると左右から挟み込むように結奈と騎士の格好をした魔法少女が武器を振るってきた。

するとディアは両腕のウェポンを2人に向けるとそこから生成されたシールドで攻撃を受け止めてしまった。

そのシールドは魔法製を模倣した科学で生み出されたシールドであった。

「こうもいい結果が続くとアドレナリンが止まらないなぁ!」

ウェポンの横側から排熱が行われるとディアの腕はシールドで覆われて騎士の魔法少女へ殴りかかった。

それはカンガルーに殴られる以上の衝撃で、避けきれずパンチを受け止めた魔法少女の右腕はぐにゃりと曲がってしまった

骨が折れる音と共に叫び声が聞こえ、後ろからは殺意がこもった棍棒が迫ってきた。

それもシールドで受け止めてしまい、ディアはとてもご満悦だった。

そうしている間、盾役に阻まれていた火炎放射器を持つ魔法少女は斧を持つ魔法少女に助けられてやっとディアに向けて殴り込んできた。

「出鱈目なものばかり出してきやがって!」

「あんたらよりは真っ当だよ!」

ディアと火炎放射器の魔法少女は拳をぶつけ合い、共に力が拮抗していた。

ディアは一歩引いて、盾役の方を見ると斧を持った魔法少女にかかりきりであることを認識した。

「もういらないや」

そう言ってディアは大きなボタンがついたタブレットを取り出して数字を入力し出した。

「あれよ、さくや!」

結奈がそう言うとさくやと呼ばれる魔法少女が突っ込んできた。

さくやと呼ばれるその魔法少女に対してディアは脳内で想像しただけでコンテナが反応し、コンテナ内の別のサブアームが直剣を取り出してさくやに対して振り下ろした。

それをさくやは無理な姿勢で回避して地面を痛々しく転がっていった。

そうしている間にディアにはクレーンゲームのアームのようなものが迫っていた。

それに対してはサブアームの銃剣が対応して銃弾を受けたクレーンゲームのアームは消えてしまった。

「あんたらは何もできないさ」

そう言ってディアは数字を入力した後ボタンを押した。

するとアオを含めた蛇の宮の魔法少女のソウルジェムが光り始めた

「い、いやだ!死にたくない!」

「助けて!」

蛇の宮の魔法少女はその場でオドオドするしか無かった。

他の二木市の魔法少女もどうしたらいいのかわからなかった。

アオもとうとう盾役に敵わなくてその場に座り込んでしまった。

そして何もすることができず、光ったソウルジェムが一斉に爆発した。

爆発した位置によるが、体の部位も吹き飛んで中には頭が粉々になる者、上半身が吹っ飛ぶものなど、爆発は肉体が残る程度の小さなものだった。

皆が唖然とする中、結奈はディアに向けて金棒を振り下ろした。

しかしそれは盾役に防がれて魔法でできた金棒は消え去ってしまった。

「貴様は!」

怒り狂った結奈は金棒を再度生成してその場で振りかざした。

「対象…変更!」

地面を叩いた衝撃はそのまま地面へは伝わらず、対象変更の魔法を受けてディアの脳天へ衝撃が伝わるはずだった。

しかしディアの服は特殊部隊同様に魔法の影響を受けないようになっているため頭部であっても無意味だった。

「許さなイ、お前を叩きツブス!」

そう言うと結奈はドッペルを出してディアに向かって襲いかかった

「結奈さん…」

周りの魔法少女がショックで動けないでいる中ディアはドッペルと対面して喜んでいた。

「これが魔法少女のまま出せる魔女ってやつか!」

サブアームの銃剣が銃弾を放つもののドッペルにはあまり効いていないようだった。

「そうかい、なら!」

4本目にあたるサブアームがコンテナから伸びてきて銃剣とは別のサブマシンガンをディアの手元まで運んだ。

そしてそのサブマシンガンをドッペルに向けて放つとドッペルは怯んだ。

「なーんだ、案外単純じゃないか!その魔力は魔女に似てるだけってかい?!」

ドッペルが腕を伸ばしてくるとディアはサブマシンガンを撃ちながら後方へ下がった。

火炎放射器を持つ魔法少女は追撃しにこようとするが再度盾役が目の前に立ちはだかった。

「うぜぇんだよ!おまえ!」

盾役へのイライラが増える一方の中、クレーンゲームのアームが盾役にちょっかいを出して注意を逸らし始めた。

「樹里、いけ!」

コントローラーを持った魔法少女がそう言うと礼を言うことなく樹里はディア目掛けて直行した。

樹里は銃弾を避けながらディアのコンテナに乗っかるとディアの首を強く締めた。

ディアははじめて慌てる表情を見せてコンテナからアンチマギアが付与されていない直剣を持ったサブアームが飛び出してきて樹里の背中へ突き立てた。

それでも樹里は離そうとせず、銃剣を持つサブアームが動かなくなり、意識がもうろうとなり始めたディアは持っているサブマシンガンを落としてしまった。

邪魔が入らなくなった結奈のドッペルは両手でディアを鷲掴みにしようとした。

それに対してディアの物理シールドが反射的に反応してすぐに握り潰されはしないものの、シールド内部に樹里がいたままで引き続き首を締め続けた。

「うぐぐぐぐぐ・・・」

苦しそうにうなりながら10秒ほどは耐えられたものの、ついにディアの首の骨が折れてしまい、それと同時に物理シールドも消えてあっさりとディアはドッペルに握りつぶされてしまった。

血と肉が混じったものが周囲に飛び散る中、樹里はドッペルの腕に倒れかかった後、背中を上にして地面に倒れ込んだ。

樹里の背中には4本の直剣が刺さったままだった。

盾役はディアが潰されたと同時に糸が切れたかのようにその場へ倒れ込み、持っていた盾と背負っていた螺旋状の武器はその場で爆発した。

樹里のもとへはコントローラーを持った魔法少女と竜ヶ崎の魔法少女が集まった。

「樹里!生きてるなら返事しろ!」

「樹里さん!」

樹里が呼びかけに答えない中、ドッペルがおさまった結奈の側へは騎士の格好をした魔法少女とさくやが近寄った。

「結奈さん、大丈夫っすか」

結奈はその場に膝をついた状態で涙を流しながら地面へ叫んだ。

「助けられなかった、また助けられなかった!

私は、どうすればよかったのよ。

みんな、みんな…」

ここまでの様子をミサイルから飛び出した魔法少女のうちの1人が見ていた。

特に手出しすることなく静観することにした彼女は仲間にテレパシーで伝えた。

[二木市だっけ、その連中は一応大丈夫だったよ。

そっちはどうだい、カレン]

 

 

静香とちはるはドッペルが出たまま戦いを続けていました。

静香側の時女一族は何度打ち倒されても起き上がり続けました。

その様子を見て涼子は言葉を漏らしてしまいます。

「お前ら、なんでそんなになるまで必死に人間側につくんだよ」

この問いに対して静香側の時女一族の1人が答えます。

「どんな状態になろうとこの国を守るための存在が時女一族。

たとえ一部の人間に巫が道具のように思われていようと、この国が存続するためならば、

喜んでこの身を捧げます」

そこへちかが会話に割り込んできます。

「あなた達もこの国の現状を見せられたはずです。
どんなに私たちが頑張ろうとこの国はもう」

「だとしてもこの国には日の本の象徴と呼べる方達がおります。

あの方達が居られる限り、この国は不滅です!

だから私たちはこの国を守るために、こうして、目的を誤っているあなた達に立ち向かっているのです!」

「そこまで話を広げやがるか」

膝をついた状態だった静香側の時女一族の1人が立ち上がって再び武器を構えます。

「国は民あってこそ。

そんな日本国民の生活を脅かすあなた達は、日の本を脅かす“敵”です!

そんな物に、私たちは負けられないんです!」

すなおがそう語る魔法少女のソウルジェムを確認すると、黒く濁り切ろうとしていました。

そして全員に伝えました。

「皆さん下がってください!

彼女達はドッペルを出す気です!」

そう言われると皆、静香側の時女一族から離れます。

その後静香側の時女一族は次々とドッペルを出して襲いかかってきました。

花のようなドッペルがたくさん出現し、各々は鋭利な花びらを神浜側の時女一族へ飛ばしました。

それらは花吹雪となって襲い掛かり、神浜側の時女一族を傷つけていきました。

これによってすなおはちはるたちの様子を確認できなくなりました

「ちゃる、静香!」

一方、ちはるがドッペルへ指示を出すと静香のドッペルを囲うように鉤爪が出現して一斉に静香のドッペルを地面へ引き摺り込もうとします

これに対して静香のドッペルは鉤爪の数だけ腕を出現させてドッペルの台座へ触れさせないように鉤爪を掴みました。

そこからはドッペルの力合わせでした。

「シズカチャンヲヒキズリコムマデハ!」

「アナタタチヲワカラセルンダカラ!」

理性を失いかけている2人はドッペルのぶつかり合いをやめさせようとはしません。

鉤爪でボロボロになった腕の代わりに別の腕が押さえ込んだり、握りつぶされてボロボロになった鉤爪が消えたら新たな一本が現れてと拮抗状態でした。

そんな中、ちはるにはかすかにテレパシーが届きました。

「タス、ケテ…」

ちはるはそのテレパシーでハッと我に返りますがドッペルが力負けして静香のドッペルに吹っ飛ばされてしまいます。

地面を転がったちはるがテレパシーを送ってきた方向を見ると、そこには花吹雪で傷付き続けている神浜側の時女一族が目に映りました。
花吹雪によって身が切り裂かれ、巻き込まれている皆が血を流していました。

ちはるは絶望したような表情をして、おさまったはずのドッペルを再度出現させました。

「みんな!間に合って!」

そう言って花吹雪の中、7本の鉤爪が地面から出現して次々と神浜側の時女一族を花吹雪の射程から外して行きました。

一人一人と射程外へ連れ出されますが皆肌にはたくさんの切り傷がついていて中には目が花びらによって抉られた子もいました。

ちはるが必死に仲間の救出を行っている中、遠くからは旭が花吹雪を発生させているドッペル達へ銃撃を行っていました。

ソウルジェムを避けて胴体や四肢、果てには頭を撃ち抜き続けていますが誰もドッペルをおさめる様子がありません。

「これでは過去に起きた暴走する魔法少女と同じでありますよ。

最後の手段となるではありますが…」

旭が花吹雪を発生させているドッペルのうち1人のソウルジェムへ狙いをつけようとしていると、何者かが近づいているところを目撃します。

「あれは?」

一方、静香はドッペルを出したままちはるの背後へ近づきます。

「アナタタチヘオシエコンデアゲル」

ドッペルは腕を出現させてちはるめがけて振り下ろしました。

振り下ろそうとする瞬間に背後に気がついたため、ちはるは避けることが出来ません。

しかし、振り下ろされようとする腕はなぜか動きを止めました。

潰されなかったことに疑問を持ったちはるは静香を見るとドッペルが糸のような物に縛られて身動きが取れなくなっていました。

花吹雪を発生させているドッペル達にも糸が縛り付けられ、遠くへと次々に投げ飛ばされます。

これで神浜側の時女一族で花吹雪にさらされるものはいなくなりましたが、皆切り傷と血だらけで動ける状態ではありませんでした。

「みんな…」

ちはるのドッペルはおさまり、ドッペルが投げ飛ばされた方向で唸り声が聞こえたのでみてみるといまだにドッペルを出したままの時女一族とみたことがある背中を見せる魔法少女がいました。

「あれって」

その見慣れた魔法少女は糸状の剣を出現させます。

「まさか普通にドッペルがおさまらない現象が起こるなんてね」

そう言って糸を使う魔法少女はドッペルを出す時女一族を静香を残して全員ソウルジェムを砕いてしまいました。

もちろんドッペルはおさまり、魔法少女だった肉体が転がりました。

その糸を使う魔法少女は糸の剣をおさめてちはるに近づきました。

「あなたは無事でしたか、ちはるさん」

「日継、カレン」

「まあ、今の体だとそう思われても仕方がないですね。

さて」

ちはるの頭に疑問符が残ったまま、ピリカは縛られてもがく静香に近づきました。

「まさか貴方がこんな状態になってしまうなんて。

何をやっても、貴方は人間を諦めきれなかったのですね。

カンナ、貫け!」

ピリカが雷の槍を生成させるとそれを静香のドッペルへと突き刺しました。

突き刺されたドッペルには電撃が走り、静香は叫び声を上げます。

そして静香がおとなしくなった頃にはドッペルは消えて静香はその場に倒れ込みます。

「静香ちゃん!」

そう言って静香に近寄ろうとするちはるをピリカは遮りました。

「まだだめです。正気に戻ったかわかりません」

そう言われてそのまま静香の様子を伺っていると、静香は苦しそうに起き上がりました。

そして顔を上げると驚いた顔でカレンを見ました。

「あなた、なんでここにいるの」

「正気には戻ったようですね、静香さん」

静香はそのまま戦いに移ろうとしたのか武器を取り出しますが、腕に力が入らないのかそのまま武器を落としてしまいました。

「静香ちゃん、もうやめようよ!

もう戦える子なんていないよ」

ちはるにそう言われてはじめて静香は周囲の状況を把握しました。

ソウルジェムを割られた仲間、切り傷だらけでボロボロな時女一族。

そんな周りの様子を見て静香は泣き出してしまいました。

「こんなこと望んでなかった。

ここまで傷つけあってまで戦おうだなんて、そんなことは最初は思ってもいなかったのに。

こんなはずじゃ、なかった」

そんな静香をちはるは頭を撫でながら慰めることしかできませんでした。

「私は、どうすればよかったの?」

そんな様子を眺めるだけだったカレンの近くには旭が近づいてきました。

「カレン殿、礼は言っておくであります。

あのままだと共倒れしたのは確かでありますから」

カレンは少し困った後、旭に向き直って伝えました。

早めに手当てをしないと体の維持で傷ついた子達がいたずらに穢れを溜めるだけです。

ここら辺りで治療を行う場所は決まっていますか」

「今は栄区に魔法少女が集まっているはずであります。

そこへ伝えれば助けは来てくれるはずでありますよ」

「ならば呼びに行ってもらえますか?

ほら、私たちが行ったら別の混乱が起こるでしょうし」

「それは、そうでありますな」

旭はちはるの方を向いて尋ねました。

「今の話は聞いてたでありますな、ちはる殿」

ちはるは小さく頷きました。

「我は助けを呼んでくるであります。

何かあればカレン殿に伝えるであります。

今ここで動けるのは、彼女だけでありますから」

「うん、お願い」

旭は栄区に向けて走って行きました。

カレンには仲間からテレパシーが飛んできていました。

[二木市だっけ、一応大丈夫だったよ。

そっちはどうだい、カレン]

[こっちは酷い有様だ。

まともに動ける魔法少女がほとんどいなかった。

サピエンスも自衛隊もいないのにこんなことになるなんて]

[そうか。

私たちは気にせず逃げたサピエンスを追うが、予定通りでいいんだな?]

[構わないさ。

神浜の後処理は神浜の魔法少女へ任せればいい]

テレパシーのやり取りが終わっても、静香はそれからしばらく泣き続けていました。

 

 

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