【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-1-4 魔法少女狩り、進捗は良くなく

世界中で魔法少女狩りが開始されたが、世界全ての魔法少女が狩れたわけではなかった。

魔法少女狩りが行われた後の世界情勢はこんな感じである。

まず順調に作戦を完了させたのはアフリカ大陸、中央アジア、西アジア、南アジアに中央アジア。
捕らえた魔法少女達には宝石へ細工を行い、ボタン一つで宝石が爆散するようにしている。そんな彼女たちは隔離地域と呼ばれる場所で暮らすように指示している。
隔離地域は小さな町となっていて衣食住が十分に行える程度の設備は整っている。
隔離地域へと収容する理由としては対処済かそうではないかを見分ける方法がいまだにないからだ。

それに、直ぐに実験用として呼び出しやすい。

東南アジアの魔法少女は一部オーストラリア大陸へ逃げ延び、オーストラリア大陸には捕獲漏れの疑いがある。
オーストラリア大陸は無駄に面積があり、捕獲漏れがあるかどうかの結果が出るには時間がかかるだろう。

次は北中南米全域。

サピエンスの本拠地がある米国であるにもかかわらず、いまだに魔法少女反応が残っていて全員の捕獲に至っていない。

原因としては魔法少女を追っても、不特定な場所で突然反応が消えてしまうため。

神浜市と繋がったようなゲートがあるのではと探したが、見つけるには至っていない。

実は中華民国もロシアも同じような理由で全ての魔法少女を捕獲できていない。

他にもヨーロッパ地域と日本も完全制圧できていないのだが、この2国は抵抗が激しかったため特殊部隊の敗北で終わっている。

ヨーロッパ地域ではなぜか最初から魔法少女達によるアンチマギア対策が徹底されていて初期生産型の武器や兵器では太刀打ちすることができなかった。

そんなヨーロッパ地域で優位に立つためにサピエンスは多くの試作品をヨーロッパ地域へ提供したが、魔法少女達による武器庫襲撃によって全てが吹き飛んでしまった。
そのため、ヨーロッパ地域は劣勢である。

日本はというと、神浜市へとつながるゲートからの奇襲とアンチマギアの使用で優位に立つことができた。

しかし、ゲートのことを知っていた彼女達はゲートを封鎖し、アンチマギアが届かないところから抵抗されて特殊部隊は全滅した

あの後、ゲートを再度開こうと試みたものの、米国に潜んでいた魔法少女によってゲートが破壊されてしまった。

ちなみに神浜市襲撃時に使用されたゲートは鏡が大量に存在している迷路のような場所で、探索時に多くの行方不明者を出している。新しいゲートを見つけるためにあの鏡の空間へ入るのはいたずらに戦力を削るだけだろう。

魔法少女狩りの進捗がよくない原因として、人間側の状況に詳しい一部の魔法少女が世界中の魔法少女へ事前に注意喚起を行っていたことが考えられる。

特にヨーロッパ地域はアンチマギアが生まれる前から警戒していたのではないかというくらいアンチマギア対策が徹底していた。

とはいえ裏組織のアンチマギア実用実験時に軽くあしらった魔法少女がいたという報告を受けていたので、おそらくその魔法少女が起点だろう。
そういうわけで魔法少女が使用している情報網の集結先を探っているのだが、どの魔法少女も口を割ろうとしない。

有象無象の集団かと思った魔法少女だが、組織的な動きをする脳くらいはあったようだ。

各国のアンチマギアへの対抗姿勢を分析して、日本はアンチマギアの存在を知らなかったのではないかという結果となった。おそらく十分な対策もまだできていないだろう。

侵攻作戦を再度仕掛けるべきは日本だろう。

 

イザベラは日本へ再度侵攻するために軍関係者のメンバーを作戦室に集めていた。

「レディ、あなたの気になっていた情報ですが、どうやら日本は魔法少女を若干擁護する動きを見せているようです
降伏してきた魔法少女へ未だに宝石への細工も行っていないとのこと」

「それはいけないね。国連で決まったことに反するとはいい度胸だ」

しかし大統領から人間同士の大戦にはしないようにとのお達しが出ている。仮にそうでもなったら、あなたの首は無事ではないですよ」

「そんなのわかっているわ。あの国は経済制裁を加えたらぽっくり行く国よ。戦う力なんて、はなからないわ」

イザベラが資料へ指さすと、作戦室にいるメンバーが皆揃って資料へ目を落とした。

「それでこの作戦ですか。主力は我が軍ですが、経済制裁を武器に日本軍を強制参加とはいささか権力の暴力ではないですかな」

「私たちは負けられない戦いをしているんだ。容赦なんてしたらこちらがやられるだけだ」

「しかし、降伏した魔法少女達はうまく動いてくれるんですかね」

「戦力に不安があるなら、私を入れてくれないか?」

急に作戦室へ入ってきたディアに全員が驚いた。

「何しにきた?今は作戦会議中だ」

「作戦も何も、いつもの意見の押し付けだろう?よければ私を作戦へ参加させてくれないか?
参加したらついでに作戦責任者へ宝石への細工を強要するよう仕向けることも可能だ」

私は腰に差した刀に手をつけながらディアに話しかける。

「その自信、実験がうまくいったようだな」

「ああそうさ。日本くらいの距離でも通用する仕上がりだ。どうだ?」

イザベラは深くため息をついた。

「デュラン大佐、試作艦が日本領海に到着するまでの時間は」

「まだハワイ港にいますので、10日以上はかかります」

「そう。ディア、8日以内に日本へ入国しなさい。それが可能なら作戦へ参加しなさい」

「お安い御用さ。感謝するよ、イザベラ」

そう言うとディアは優しく扉を閉めて出ていった。

「全く、狙ったように作戦会議中にきて」

「抑えなさいキアラ。
さて、特に反対意見がないようであれば作戦行動へと移ろうと思うのですが、他に意見はありますか?」

「では最後に一つだけ。
レディは世界を巻き込んでまで、なぜ魔法少女を支配下に置きたいのですか」

「奴らは最終的に人類の敵になると既に予見しているからさ。こうしている今も、奴らは人類の上に立つ準備を進めている。
わかりあうなんて生易しい理想は、人間社会には通用しないでしょう?」

「それは、別の機会にじっくり聞きたいものですな」

「ふんっ、反対意見がないようであれば作戦に移ってちょうだい。試験艦の移動は速やかに」

「イェッサー」

軍関係者が会議室から皆出て、部屋にはイザベラと私だけが残った。

「神浜を標的にしたのはキュウベェの助言が気っ掛けだろう?」

「魔法少女が魔女化せず、理性を持って魔女のように振る舞える魔法少女が力尽きないシステム。

そんなものがあって、なおかつそれが世界中に広がる可能性があるなんて言われたら後回しにはできない」

魔法少女狩り時の奇襲では事前情報がないような振る舞いがありつつ、特殊部隊は敗退した。

アンチマギアを知った彼女たちの実力は未知数だ。試験艦と魔法少女の盾で勝ちへと運ぶものか?」

「魔法少女同士での潰し合いは効果があるとキアラも知ってるでしょ?
それに試験艦は魔法少女対策を万全にさせたものだ。随伴艦がいる中で簡単に沈んでは困る」

「まだ詰めが甘い気がする」

降伏した魔法少女の中には国に忠実な人物がたくさんいるらしい。華々しく散ってもらおうじゃないか、お国のためにね」

私はため息をついた。

「イザベラもディアとあまり変わらないな」

「なっ!一緒にするな!」

私たちは一緒に会議室を出てそのまま拠点の玄関まで移動を始めた。

次の予定は魔法少女ではない異なった魔力を纏った少女との面会です」

「あの魔力が解明できないと彼女に予防注射もできないのよね。
あの謎の魔力、彼女を守るように注射器等の機器を破壊して来るけど脱走させようとしないのが謎よ」

「本人が望んでいないからじゃないか?」

ならば神浜と魔法少女について知っていることを素直に話してほしいのに」

あんな演説を見てしまったらこちらに不信感を抱くに決まってる。辛抱強く相手と向き合うのが交渉のコツだろう?」

「わかってるわ。

“サトリカゴメ“、今日は話してくれるかしら」

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-1-5 同じでは、ないです

2人は車に乗ってホワイトハウスへと向かった。ホワイトハウスの一室には神浜で保護された少女がいる。

その少女はどうやら魔法少女について調査していた人物と面識があるらしく、私たちの知らない魔法少女事情を知っているかもしれない。

本来であれば自白剤等の強引な方法をとっているが彼女に付き纏う謎の力によって一切手出しが行えない。

謎の力は魔力を帯びているというのは確かだが、魔法少女とは違った性質で未だに対策が行えていない。

そう、彼女が口を開いてくれるのを待つだけしかないのが現状だ。

ホワイトハウスへ到着したイザベラは少女がいる部屋の扉をノックした。

中にはホワイトハウスから提供された服に身を包んでお気に入りの人形を持っている少女が窓から外を眺めていた。

「かごめさん、調子はどうですか?」

「体調は、問題ないです」

「それは良かった。
それで、今回来たのはですね」

「…すみません、ひとつお願いがあるのです」

「私の言うことは聞かずにそちらがお願いして来るとは、随分と勝負に出たことをしますね」

イザベラは意識していないがイザベラの発言は他人から見たら不思議と威圧が含まれていて心を強く持つものでなければすぐに怯んでしまう。

かごめさんはイザベラの言葉を聞いて強張った顔をして壁際まで逃げてしまった。

「イザベラ、逆効果だ」

「ふんっ、つまらないお願いじゃなければ聞いてあげましょう」

”かごめちゃん、ほら勇気を出して“

「う、うん」

腹話術なのか知らないが、あの人形はよく喋る。どういう仕組みなのだろうか。

「キアラさんと、お話しさせてください」

「私とですか?」

「はい」

私はイザベラの方を見た。

イザベラは私とかごめさんを二回ほど交互に見てそのあと。

「立ち話で済む程度ならどうぞ」

「ありがとうございます」

「それで、私に話したいこととは?」

「キアラさんは、日本が好きですか?」

そういえば初対面の時、何も考えず同じ日本出身だと話していたか。

この質問は軽く答えてはいけない。ただ疑問に思ったからということだけなのかもしれないが、回答次第ではイザベラの機嫌を損ねる。

だからと言ってイザベラに配慮した回答をしてしまえばかごめさんはさらに心を閉ざしてしまうかもしれない。

意図を確認しよう。

「どうして、そのような質問を私に?」

「キアラさんは日本の人だから。出身の国がひどいことになっているのに、どうして平気なんだろうって思ったからです」

「私は人間側の存在です。魔法少女関連の問題が解決したら日本だっていつも通りです」

「同じ女の子が何もしていないのに、ひどいことをされているのに」

かごめさんはどんどん声が小さくなっていきました。

「同じでは、ないです」

しばらく部屋の中が静かになった後、イザベラが話し始めた。

「はいおしまい。キアラに同情してもらおうって思っても無駄よ。さて、今度はこちらのお願いを聞いてもらおうかしら」

かごめさんが身構えた時、持っている魔力センサーが反応して音が部屋中に鳴り響いた。

「こんなところに、どこから!」

かごめさんが何故かその場にしゃがむと窓の外から勢いのついた鉄塊が飛んできて窓際には大きな穴が空き、部屋の壁は貫通はしなかったものの大きく破壊されてしまった。

衝撃からイザベラを守るためにイザベラの上に覆い被さっていた私の腕には破片が刺さっていた。

「キアラ!」

「大丈夫です、これくらい」

土埃が晴れた先には窓際でかごめさんを抱える謎の人物がいた。

私は謎の人物を見ながら立ち上がった。

「魔法少女がよくここまで潜入できたな」

「お初にお目にかかります、真の大統領。いや、サピエンスの責任者様」

「何のことかしらね。それよりも、ここからタダで逃げられると思っているの?」

「アペ、刃となって!」

そう言って魔法少女はかごめさんを抱えながら炎の剣で切りかかってきた。

私が刀で応戦すると、触れた炎の剣は形を保てなくなって消えてしまった。
魔法少女はすぐに一歩引いた。

「なるほど、アンチマギアと同じか」

「あなた、魂を3つとは変わった体をしてるわね。そのうち誰かしら」

「イザベラ?」

「人間なのに、それとも、もうやめているのかねぇ」

「今すぐここで投降し、仲間と共に人類側へ膝をついて平和的に争いを終わらせようとは思わない?」

「残念だが話し合いで解決すると思うほど我々の考えは甘くない。人間と魔法少女。価値観、倫理観、社会体制すら相容れない存在同士が和解できる可能性など、とっくにこの世界では死んでいる」

「知ってたさ。一応紳士的態度を取ったまでのこと。私もこれっぽっちも和解できるなんて思ってないさ!」

少女は腕から糸を出すと勢いをつけて窓の外へと逃げ出した。

「逃がすな!」

外に待機していた警備隊が魔法少女へ発砲するも、謎の力で持ち上げられた車が警備隊を襲った。

魔法少女は魔力反応を感知させることなく近くの川へと向かっていたが、イザベラが放った一射が魔法少女の足を止めさせた。

「動くんじゃないよ、私はそこら辺の一般人と比べてお前たちを捕えやすい。魔法の反応だってすぐに感知できるから小細工しようとしたらすぐわかるわ。
無駄に動かずこちらにソウルジェムを渡しなさい」

「知ったことか!」

魔法少女は魔力で鉄塊をこちらに飛ばしてきた。

イザベラは鉄塊を避けて魔法少女に向けて発砲した。

「バカ、やめろ!」

かごめさんに当たるリスクを考えろ!

発砲すると予想したのか、魔法少女はかごめさんを前に出した。
すると不思議な力によって銃弾はかごめさんの前で勢いを失ってそのまま地面へと落ちた。

「悪いねイザベラさん、決着がつくときにまた会おう」

そう言って魔法少女はかごめさんを抱えながら川に飛び込んだ。

「魔力反応が検知しずらい。でも河口付近で待てばいい。
各自河口付近で張りなさい。偵察ヘリは川底で動く影を追い続けるように」

「再度魔力反応を検知できました。でもこれは」

上空のヘリから映された映像には川の奥深くを泳ぐ首長竜の影が見えた。

「魔法少女の能力は一つから派生したものしか扱えないと聞くが、体感した限りだと4つでもすまないぞ。何だあいつ」

しばらく川を下っている様子を見ていると、急に眩い光が周囲を包んで、消えた頃には首長竜も、魔力反応も跡形もなく消えていた。

「そんな、どこにもいない!」

「思い出したわ、あいつはヨーロッパで報告があった魔力を感知されない魔法少女だろう」

「それって、聖女ワルプルガの遺体を持ち去ったという」

「突然消えた原理はわからないけど。

う、少し気分が悪くなったわ」

「私も少し、気分が悪い」

私とイザベラは駆けつけた救護班の手を借りながら被害の受けていないホワイトハウスの部屋へ移動した。

何故いきなり具合が悪くなったのかわからないが、心の中に黒い何かが流し込まれたかのような感覚だったのは確かだ
後から知らされたが、川周辺にいた人たちは私たち同様に急に気分が悪くなるという症状があったらしい。

部屋で横になっているイザベラは、ホワイトハウスへ襲撃してきた魔法少女の言葉を振り返っていた。

“人間と魔法少女。価値観、倫理観、社会体制すら相容れない存在同士が和解できる可能性など、とっくにこの世界では死んでいる”

「ふっ、そうだな。大昔から、とっくに和解関係なんて死んでいたさ。

面白い奴がいるじゃないか、魔法少女にもさ」

イザベラは自分の過去を振り返りながら悲しみを含めた笑みを浮かべていた。

 

 

私を連れた魔法少女はヨーロッパのある場所へとワープしていた。
魔法少女は慌ててグリーフシードを取り出し、ソウルジェムを浄化した。

「いやぁよかった、ポンベツカムイと一緒に拠点に現れるかと思っていたよ」

「お望みならすぐここをぶっ壊してもいいよ」

「怖いこというなよカレン。でもすごいね、地球を一周するような距離をフィラデルフィアのコイルで移動できちゃうなんて」

「この聖遺物の燃費が悪いのは知っていたからな、穢れを周囲の人間に流し込めたからこそ無事だった。普通の魔法少女が使うとフィラデルフィア事件の二の舞だ」

私は何を言っているのかわからなかった。でもカレンと呼ばれる人のことは知っていた。
自動浄化システムを世界に広めるために動いていた三人組のうち一人。

「その子が魔法少女について調査していたという少女かい?」

もう1人私たちがいる部屋へ入ってきた。

「そうさ、案外あっさり連れ出せたよ」

「この子が抱えるウワサにこちらの状況を実況されたらたまったものじゃない。助かったよカレン」

「いいってことさ。私はこの後予定通りオーストラリアに行くよ」

「悪いね、でもあれはカレンたちがいないと動かせないものだから」

「わかってるさ。移動のためにフィラデルフィアのコイルはこのまま借りていくよ」

「ええ、全部終わったら返してね」

「はいよ」

そう言ってカレンさんはその場から姿を消してしまった。
この空間にいる2人はグリーフシードを取り出してソウルジェムを浄化していた。
もしかしてここにいる人たちみんな、魔法少女なの?

先ほど部屋に入ってきた魔法少女は私の前に膝をついて目線を合わせてきた。

「あなたがかごめさんだね、カレンから話は聞いているよ。
私はここを取りまとめるミアラという者よ。安心して、ここには魔法少女しかいないから」

「えっと、どうも」

「あなたをしばらく保護させてもらうわ。最終的にどう扱うかは、あなたが魔法少女になるかどうかで決めさせてもらうわ」

魔法少女にならなかったら、何をされるの?

「あなたたちは、一体」

「私たちは人間の軌跡を破壊し、魔法少女が中心の軌跡を産もうと考えている者たちの集まり。
簡単にいうと、人間が生み出したものをすべて終わらせる存在よ」

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-1-3 ほんと、おぞましいものだ

米国 大統領による演説当日

 

米国内は新たな大統領選が始まるのかというくらいの認識で大勢が演説会場へ集まっていた。

テロリスト対策に配置された数十人の兵士に囲まれながらも、民衆は演説台に上がった大統領を見て歓声を上げた。

大統領は歓声を止める合図とも言える右手をあげて民衆を見渡した

歓声が鳴り止むと、演説が始まった。

そして演説が始まると同時に世界各国、あらゆる放送電波が何者かにジャックされ、全てが米国大統領の演説に切り替わった。

”私は、世界を揺るがす事実を伝えると同時に、国連へ新たな提案を行うために今皆様へお話ししています。

皆さん、この世に魔法と呼ぶものがあると思いますか?

アニメや漫画といったフィクションにしかないと思う方も、オカルトだと思う方、そもそも存在しないと思う方もいるでしょう。

私は断言します。

この世に魔法は存在すると!“

演説台を取り囲む民衆は突然魔法という言葉を使い始めた大統領を目の前にしてざわつきを抑えきれなかった。

そんな中演説会場に用意されたモニター、そして世界中のあらゆるテレビやモニターには神浜で起きた惨劇の映像が流れた。

”実は我々の身近には既に魔法が存在していたのです!

これは私の気が狂ったわけではありません。

今みなさんにご覧いただいている映像は日本 カミハマシティにて発生した化け物の大量発生した様子を我が国の兵士が持ち帰ったものです。

見れば見るほど現実とは思わず、作り物だと思い込んでしまうでしょう。

否!これはフィクションではなくノンフィクション!

私自身もこの化け物と対峙し、その存在を認識しました。

その存在は、身近ところに潜んでいるというのが事実なのです!“

ざわつく演説会場で突然二つの叫び声が聞こえ、その叫び声を上げた少女達からは化け物が飛び出し、演説会場は二つの魔女の空間が混ざった状態で包まれた。

民衆達が逃げ惑っている中、大統領は演説を続けた。

“なんてことだ!こんな大事な時に目の前で発生してしまうなんて!

実はこの化け物に対して魔法少女と呼ばれる存在が日々、排除活動を行なっているのですが、果たして助けに来てくれるのだろうか。

護衛にいた兵士たちの銃弾では歯が立たない!

どうすればいい?!”

そう話した後、魔女の結界へアンチマギアを武装した集団が侵入し、使い魔と魔女へ攻撃をはじめた。

その攻撃は勿論効果があり、兵士たちは民衆の保護を始めた。

“あれは我が国の兵士。私がこの事態を予想して準備してきた武装を彼らは用意してくれたのです。”

2体の魔女はあっさりと倒され、周囲は普通の風景へ戻った。

“急な出来事で民衆へ被害が出てしまいましたが、もう安心してください。

このような事態へならないよう、私は化け物へ対抗するための案を用意しています。

それは、「アンチマギアプログラム」です。

アンチマギアプログラムでは先程の化物へ対抗できる武装の開発と量産を行う許可を下す法案と、その量産体制を整える権利を各国へ与えるものです。

もう一つは、化け物の発生原因である魔法少女という存在の捕獲、そしてその魔法少女という存在をこれ以上増やさない計画の実行許可です。

みなさんの身近に、非現実だと思われた存在が現実に存在したということは認識してもらえたでしょうか。

もし、アンチマギアプログラムが世界で実施されるようになりましたら、世界中の皆様も、どうか協力をお願いします。“

 

米国大統領の演説を、サピエンスのメンバーは4人揃って眺めていた。

テレビに映る様子を見ていた中の1人が話し始めた。

「とんだ茶番劇だね、こりゃ」

「ディア、あれは国連の頭が固い連中を説得する上で最適な方法なんだよ。
人には被害が出たが、かえって現実味が伝わったでしょ」

「頭の固いやつは見るだけじゃ意見変えないって。そんなことより私は実験に使えたはずの二名が魔女化して普通に処理されたことが気に食わないの」

「あら、あの時は渋々OKを出したじゃない」

「まあ、そうなんだけどさ。やられ方が普通過ぎる。
なんかこう、新たな倒すための手段がひらめくような状況になればと思ってたけど。普通過ぎる」

「あなたにとっては普通でも、このパフォーマンスによって世界は魔女を脅威と錯覚してくれるはずよ。魔法少女については、少し印象が薄いかしら」

「カルラ、キチンと魔法少女を魔女にしたじゃないの」

「あれが魔法少女だって認識がみんなできていたらの話よ。

まあいいわ。魔法少女は歴史を改変するって点はおいおい印象付けるとしましょう」

「ええ、電波ジャックの件は助かったわ」

 

世界には強引にも魔法少女の存在が知れ渡り、わたしの理想が叶うところまできた。

米国大統領の演説が終わった後、国連ではアンチマギアプログラムの議案が提出され、あっさりと可決された。

世界は魔法という概念が実在するという認識が半信半疑で広がっていき、女の子、と呼ぶくらいの女性達は化け物へと変わってしまう魔法少女ではないかという疑心暗鬼も広まっていった。

見た目で魔法少女かどうかなんて判断できない。

そんな中でアンチマギアプログラムには魔法についての予防接種を受ける義務を与える内容も含まれている。

予防接種を受けると首元にバーコードが刻まれ、予防接種を受けた者はキュゥべえや魔法少女が使用しているテレパシーを受信できなくなる。

魔法少女かどうかの疑心暗鬼はこの予防接種を受けたというバーコードで解消されていくだろう。

では、既に魔法少女となっている者達はどのような処置が行われるのか。

アンチマギアプログラムが国連にて可決されてから3日後、各地に散った工作員達へ指示を与えるために私はペンタゴンの地下にあるサピエンス用の施設へ来ていた。

そこで無線を使用して工作員達へ指示を出した。

「もうじき作戦時間だ。これより、魔法少女掃討作戦、作戦名「魔法少女狩り」を開始する。

いいか、これは虐殺するための作戦ではない。

担当区画の魔法少女達を拘束し、決められた保護施設へ収容するのが目的である。相手から降伏を申し出てきた場合は丁重にもてなして拘束せよ。

また、ヨーロッパにはアンチマギアをかいくぐる存在がいると確認されている。

見た目は少女だと油断せず、魔法少女を逃さず拘束せよ。

以上!作戦開始!」

私の合図で世界各地で魔法少女狩りが実施された。

工作員達は手渡された魔力探知機を使用して魔法少女の居場所を突き止め、家族が一緒にいた場合は国連命令として拘束した。

抵抗する者には武器の使用が許可されており、無理やり拘束を行った。

拘束された魔法少女達はソウルジェムへ細工が施され、ボタン一つでソウルジェムが破壊されるようになってしまう。

しかし、下手に抵抗しなければ管理区画内に限って人並みの生活を送ることができる。

拘束される際に抵抗が激しかったり、かつて国へ大損害を与えた魔法少女については…。

こうして魔法少女狩りが実施されて3カ月が経過した今、魔法少女狩りの進捗は芳しくなかった。
演説が行われたころから国内のほとんどの魔法少女が国外へ逃げ、ヨーロッパの一部とカミハマシティは予想外に魔法少女の捕獲が失敗という結果になった。潜入した工作員が誰一人帰ってこなかったのである。

他の国でも魔法少女の捕獲は成功したものの全員ではなくどこに潜伏したのか行方知らずの魔法少女が多い。

そんな中、魔法少女によるヨーロッパの武器庫破壊が発生した。

 

計画がうまくいかない中、サピエンスの実験施設には武器庫破壊のリーダー格である魔法少女が放り出されていた。
放り出されている空間は真っ白な鉄壁に囲われていて、高いところには内部をモニタリングするための部屋が用意されている。
見た目は真っ白な部屋だが、ここでは何人もの魔法少女が実験のために殺されてきた。

「あんた達の中心人物について教えてくれれば、あんたの部下の命が犠牲にならずに済んだのにさ。
部下よりも自分の命が大事かい?」

「捕まった時点で死んだも同然さ。それにしったところであんた達がドウコウできる問題じゃない!」

尋問していた研究員が銃弾を一発、魔法少女の左足へ撃ち込んだ。

魔法少女は痛む様子がなく、血が流れ続ける左足を見て困惑していた。

「アンチマギアの濃度を上げた弾薬だ。

肉体の感覚と魔力が遮断されるまでの間隔が短すぎて痛覚も機能しなかっただろう?

気づかずに死んでいたっていうのは、ちょっと優しすぎるかな?」

尋問する研究員は魔法少女の周りを歩き出した。

「武器庫破壊が行われた際、他各所でもアンチマギアが納められている施設が襲撃されて大打撃を受けたって聞いてるんだけどさ。

それって、世界に顔がきく魔法少女界のドンが存在して、みんなに指示を出してるってことだよね。

そいつらのせいか、魔法少女狩りも進行度的によろしくないのよね。

仮に教えてくれなくても、少しは抵抗してくれないかな?

これ一応実験中なんだけど」

「何度聞いても同じだ。わたしは知らないし、一思いに殺してくれても構わない。

抵抗するのがお前の望み通りになるのであれば、わたしは抵抗もしない」

「つまらないねぇ」

研究員は躊躇なく魔法少女の頭を一発撃ち抜いた。

撃たれた魔法少女は糸が切れた人形のように力なく横たわり、ソウルジェムに穢れが溜まっていった。

研究員が魔法少女のソウルジェムを回収するために魔法少女の手首へ手を伸ばした。

するといきなりソウルジェムからアンカーが飛び出してきた。

ソウルジェムから伸びる鎖に繋がったアンカーは研究員の腕輪が光った後に出た赤紫色の結界を破壊し、そのまま真っ白な実験部屋の壁へ研究員を叩きつけた。

研究員の腹部はえぐられ、周囲には血が飛び散っていた。

アンカーを持った魔法少女はソウルジェムを濁らせながら糸で操られた人形のように壁を破壊し出した。

実験部屋の外では研究責任者が殺されたと慌てふためく研究員達がいた。

そんな中、実験部屋で暴れる魔法少女を見ても、殺された研究責任者を見ても落ち着いて様子を観察していたもう1人の研究員がいた。

「毎度のように慌てるんじゃありません。わたしが対処するのでみなさんはデータ整理をお願いします」

「わ、わかりましたカルラさん」

カルラと呼ばれる研究員は実験部屋の扉へパスワードを入力して扉を開いた。

カルラはすぐに砲身が細長い銃をアンカーを持つ魔法少女へ撃ち込んだ。

物理的な弾ではなく、レーザーのような単発銃はアンカーを持つ魔法少女へ弾を秒間1発の間隔で命中させた。

銃撃を受けたアンカーを持つ魔法少女は再び動かなくなった。

カルラは針が4本内側についた球体を取り出し、アンカーを持つ魔法少女のソウルジェムを球体の中に入れて閉じた

4本の針はソウルジェムへピッタリとくっつき、微弱な電波のようなものを発していた。

ソウルジェムが球体に入れられた後、アンカーを持つ魔法少女は完全に動かなくなった。

「実験中断。研究員各位はクローン体を介した遠隔操作、痛覚麻痺弾薬、及びシールド技術の実験データの整理と解析を行ってください。

ソウルジェム隔離実験はディアの代わりにわたしが引き受けます。

掃除班への連絡も忘れないように。

以上。各位次のステップへ移ってください」

指示を出し終えたカルラは実験室を出てある部屋へと向かった。

部屋へと向かう道中、カルラはそこらへんで売っていそうなタバコに火をつけて少しだけ気分を落ち着かせた。

カルラが向かった部屋にはガラスケースのような蓋がついたベッドに横たわる実験室で死んだはずの研究責任者が眠っていた。

カルラはベッドの装置へパスワードを入力するとガラスケースが上方向に開き、内部の冷気が周りに溢れた。

中にいた研究責任者は少ししてから目を開いてむくりと起き上がった。

「視覚的観測だが、魔法少女が魔力を放出してからシールドが発動するまでにラグがあった。

シールドの強度以前に発動が遅れてシールドが発生し切る前に殺されていた。

とはいえ、クローン体も労ったらどうだ、ディア」

「何をいってるのさカルラ。クローンを遠隔操作できただけで十分な実績じゃないの。死んだ時の感覚は若干残ってるけど、まあ想定よりも痛くなかったし」

「相変わらず倫理観皆無な考えで安心したよ。そのクレイジーはあまり周りに醸し出すんじゃないよ、クローン体だって知っていても慣れない研究員は大勢いる。
それに、私個人としてはディアは死んでも大丈夫な存在だとあまり思われてほしくない」

「なんと言われようとわたしは変わらないよ。
さて、私はイザベラに会ってくるよ」

「なんだ?殴られにでも行くのか」

「んなわけあるか!」

ディアが部屋を出て行った後、私は部屋を見渡した。

ここにくる前からディアはクローン技術について優秀ではあったが、行き過ぎたクローン技術は恐ろしさしか感じない」

ディアが寝ていた部屋の壁には培養槽が敷き詰められていた。

培養槽には成長しきったディアのクローンからまだ胚のクローンの姿があった。18個あるうちの17体が生体となっていて目を閉じて水の中であるにもかかわらず呼吸している。

「ほんと、おぞましいものだ」

カルラはポケットにしまっていたソウルジェムを閉じ込めた球体に異常がないか確認した後、クローン部屋を後にした。

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-1-2 さあ、これがあなたたちがフィクションだと嘲笑ったものですよ

神浜にて魔法少女が魔女のような姿になって街の人間を全て殺戮するという事件が起きた。

この出来事は日本からSNSにて世界に発信された。

世界では何が起きたのか分からずに面白がる人間しか出なかったが、これを機会に動き出そうとしている組織がいた。

神浜での異変が起きるまでに魔法少女について様々な報告を国連へ密かに行っていた組織の名前はサピエンス。

サピエンスは魔法少女を人間が管理し、その力を人間の未来に役立てるという名目のもとで動いている組織である。

そんなサピエンスの中心人物であるイザベラは国連の秘密部屋で国のトップたちを集めてある提案を行っていた。

「レディ、君たちには今までに起きた不可解な事件のレポートをもらっているが、こんな非科学的な事に付き合わせる我々の身にもなってくれないか

「あら?日本の神浜市という場所で起きた異変について世界中で騒がれているにもかかわらず、ロシアのお偉い様はあれもフィクションだと思っているのですか」

魔法などというアニメや漫画でしか存在しないものを現実に持ち出されてもねぇ。神浜という場所で起きた事件は、里見という人物が密かに行っていた実験が原因だとも噂されている。
神浜にあった実験室が原因で起きたバイオハザードが原因だと言った方が民衆は納得いく」

「では、我々の兵士たちが命懸けで持ち帰った現場の映像を見ても、神浜にて起きた異変がフィクションだと言えるでしょうか」

イザベラはモニターの電源を入れて用意していた映像を再生した。

その内容は、異変が起きている最中に生存者を保護するために立ち入った兵士が残した映像だった。

映像は激しく揺れながらも、人のような人物から出ている大きな化け物が人々を喰らっている様子が映っていた。

中にはアニメのような魔法によって燃やされる兵士もいて、撃った銃弾は化け物を傷つけてもあまり効果がない様子が目にとれた。

しかし。

「よくできたCG映像ですが、これのどこがノンフィクションだと?」

イザベラはため息をついた後、集まっている5ケ国の代表者たちの顔色を伺いました。

米国大統領以外、イザベラの目を見るものはいませんでした。

「そうですか。

まあ、聞くより見る方が早いとも言いますし、実際に体験してもらいましょうか」

そうイザベラが言うと、イザベラはポケットから穢れが満ちそうなグリーフシードを取り出します。

「なんだねそれは」

「これはグリーフシードという、先ほど映像で見てもらった化け物が生まれる卵です」

「そんなものがあるはずが」

イザベラはロシア代表の声を聞くことなくグリーフシードを卓に力強く突き刺した。

その途端に、周囲には魔女空間が広がっていき、5カ国の代表者もそこに巻き込まれます。

「何が起きているの?」

「それに、何か動くものがいないか?」

それは勿論、魔女の使い魔です。

「イザベラ!危険な場所に連れてくるとはどういう気だ!」

「安心してくださいジェームズさん、彼らが認識してくれればすぐ対処しますよ」

「何かあってからじゃ遅いんだよ!」

「まあまあ、誰も死なせる気はありませんよ。四股が十分に残っているかは別ですが」

そう言ってイザベラは困惑している4カ国の代表者たちに話しかけます。

「さあ、これがあなたたちがフィクションだと嘲笑ったものですよ。フィクションだとしたら、なんの害もないはずですよね?」

「何を企んでいるんだレディ!早く私たちを解放しろ!これ以上の愚弄は国際会議に」

そう言いかけた中華民国の代表者の目の前には小さなタコのような生物が現れます。
その生物は可愛い目を中華民国の代表者へ向けて口を大きく開き、中華民国の代表者の親指を食べてしまったのです。

周囲には叫び声が響きわたります。

「おかしいですね?フィクションなら怪我をするはずがないのに。

これがフィクションではなく、ノンフィクションだとお気づきになりましたか?

もし理解してくれたのであれば、私に泣いて懇願してください。助けてあげますから」

「なんて奴だ」

「どうやら私たちの認識が甘かったようですね」

「ふざけた真似を!私は認めないぞ、こんなこと!」

「キアラ、彼らに銃を渡してあげて」

私はバッグに入っていた4つの拳銃を4カ国の代表者へ地面を滑らすように渡した。

「状況を理解して私側につくという方は銃を取らずに私の方へ、私をこの行いを機に死刑にしたいと思っている方はその拳銃を握って自力で脱出してください」

フランス、英国、米国の代表者はイザベラの方へ向かい、中華民国とロシアの代表者は拳銃を手に取ります。

「ふん、お前たちの力がなくたって」

2人の代表者は使い魔へ向かって発砲しながら出口を探し始めます。
しかし銃弾では使い魔を怯ませることしかできていませんでした。

我々が普段使用している薬莢に火薬を含んだだけの弾丸では化物へ有効打を与えることができません」

イザベラの方へ向かってきた使い魔たちへ私はバッグの中にあるm16a1を出して使い魔たちに弾丸を放ちます。

その銃弾を受けた使い魔達は生き絶えて消えていきました。

「でも、我々サピエンスは化け物に対する特攻兵器の開発に成功しています

私はイザベラへ銃とカートリッジを渡し、リュックを背負った後に対魔女用の剣を抜刀します。

「さて、わからずや達を助けてさっさと脱出しましょう」

3カ国の代表者はイザベラへついていくしかありませんでした。

自分で抵抗しようとしていた2カ国の代表者は弾薬が切れて、使い魔から逃げるという手段しか取れていませんでした。所々かじられて血が出てもいます。

使い魔達は群がって2人の代表者を捕食しようとしていたところ、イザベラの銃弾が使い魔達を貫きます。

「な、なぜ奴らに攻撃が効いている?!」

「サピエンスが開発した対化物兵器ですよ」

私は近づいてくる使い魔を剣で斬りつけながら代表者達を守っていました。
イザベラは、最初は付いてこなかった代表者二人に手を伸ばします。

「さあ立ってください。さっさとここから出ますよ」

座り込んでいた2人の代表者は渋々イザベラの手を取って立ち上がります。

イザベラ達はセンサーを元に魔女へと続く扉を探していき、2階層ほど進んだ先で雰囲気が変わりました。

そこにいたのはマンタのような姿をした魔女でした。

「レディ、あれを倒せばここから出ることができるのですか?」

「そうですよ。まあ私たちに任せておいてください。
キアラ、彼らの護衛はよろしく」

「了解」

イザベラは魔女の方へ走っていき、魔女の周りを走りながら閃光弾を撃つための銃へ特殊な弾丸を込めて魔女へ向かって放っていきました。

特殊な弾丸は魔女へ当たる前に爆発して、周囲には赤紫色の粉が撒き散らされます。

イザベラは手に持った銃で使い魔を追い払いながら合計4発の特殊な弾を放っていました。

4発撃ち終わった頃には魔女の動きが鈍くなって、使い魔ともに地面へ降りた状態となっていました。

「化物の動きが鈍くなっている?」

「あれはアンチマギアという成分を周囲へ振り撒いた結果です。サピエンスが発見した対化物兵器の一つで、化物の動きを鈍らせることができます」

そう話しながら私は剣で元気な使い魔達の相手をしていました。

「では、その剣も?」

「ええ。アンチマギアが練り込まれた金属で鍛えられた剣です。イザベラがあれを倒すまで、私が必ずあなた達をお守りします」

イザベラの方はというと、魔女へ銃弾を浴びせながら致命傷となる場所を探していました。

粉を浴びた使い魔はついに動かなくなったものの、魔女はマンタの目となる場所から伸びた触手へエネルギーを溜めてイザベラへビームを放ちます。

イザベラは素早くかわし、魔女の背後まで円を描くように走り抜けました。

イザベラがビームを放った触手へ銃弾を当てると魔女は苦しみ出します。

「なるほどね」

イザベラはカートリッジを入れ替えて魔女の腹部分で無数に垂れている触手へ銃弾を浴びせました。

「your only place is hell!(お前の居場所は地獄だけだ)」

触手が破裂するほど魔女は苦しんでいき、全ての触手が破裂した頃には魔女が粒子となって消えていき、魔女空間は空間を歪ませながら消えていきました。

私たちが戻ってきたのは、机が真っ二つに割れた状態の今までいた会議室でした。

「キアラ、応急処置を」

私がバッグを下ろして2人の代表者へ応急処置を行う時間は、各代表者達の思考を整理する時間でもありました。

応急処置が終わった頃にイザベラが話し出します。

「今みなさんに体験してもらったのは、私が資料で報告していた化物がノンフィクションだという事実、そして対抗手段はサピエンスしか持っていないというもう一つの事実です。

ここまで見聞きしたことを踏まえて、まだ我々が虚言や戯言を言っていると思う方はいますか?」

5人の代表者は皆揃って首を横に振りました。

「ではやっと本題です」

イザベラはバッグ内に潜めていた小さなアタッシュケースを開くと、そこには小さな試験管に赤紫色の液体が入ったもの4本と分厚い4冊の書類が入っていました。

「ここには化物へ有効打を与える成分「アンチマギア」のサンプルとアンチマギアについての説明、加工方法を記した資料があります。

これらを無償で提供します」

「でもそれは、あくまでサンプル。量産のためにはそのサンプルを、もしくはその原料を手に入れる必要があるかと思いますが」

「そこで取引です。実は量産のための培養槽を既に用意していて、培養方法はお渡しする資料へ記載してあります。

培養槽とある程度の素材をお渡しするのは、我々が兼ねてから計画している「魔法少女狩り」の全国実施許可と民衆への魔法少女予防薬の摂取義務化の議決を可決させることが条件です」

「それで常任理事国である我々を呼んだわけか。それで、そのアンチマギアとやらはビジネスになる話なのか?」

「それは勿論。魔法少女狩りの実施が可能となったら、我々はアンチマギアが含まれた武器を常任理事国ではない各国へ一式をおよそ50万ドルで提供しようと思っています」

「少々良心的ではありますな」

「各国に渡ってほしいという考えも少しはありますから。

その基準価値を参考に、各国は素材量、培養槽増産や研究費といったものを見積もって経済を動かしてもらえればと。

それに、少し大ごとになれば武器生産も回りますから」

「それもそうだな」

「魔法少女は先程の化物と違って知恵があります。
早めに議決に向けた動きをとっていただければ、魔法少女狩りに向けた準備期間もふんだんにとれるでしょう」

「して、君たちの行いたい魔法少女狩りと予防薬摂取にはなんの狙いが?」

「魔法少女は将来、あの化物となります。

今のうちに化物となる前の魔法少女を全員確保し、化物となった際の被害を最小限にするため。

そして、そんな魔法少女になる前に、魔法少女にさせない対策を行うことでこれ以上の化物の発生を防ぐという狙いがあります

それに、人類史をなかったことにされる可能性も減らせます」

「では、そのアンチマギアという物質のビジネス効果は一時的だな」

「案外長引いてしまうかもしれないですよ。

世界からテロリストを完全殲滅できないくらいくらいにね」

この後、中華民国とロシアの代表者が傷を負って会議室から出てきたことが国連内で少し騒動になったが、2カ国の代表者が騒ぎ立てないでほしいと説明したことで表沙汰になることはなかった。

こうして魔法少女狩り、魔法少女予防薬摂取の義務化という話は裏で各国へ糸が引かれていき、2ヶ月後に行われる米国大統領の演説が行われるとともに議会に提案、そのまま議決までのシナリオが決定した。

この2ヶ月の間に4カ国へアンチマギアの培養槽が提供され、専用の兵器ラインの開拓と戦車や戦艦といった大型兵器の転用実験が裏で行われるようになった。

これが世界が変わる引き金となる、魔法少女狩りがおこなわれるまでに起きていた裏の出来事である。

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-1-1 もうおしまいだ、何もかも

人類史って、どんな道のりであったかご存知だろうか?

人類が知恵を持ち、組織で活動するようになってから同種同士の争いは今に至るまで終幕を迎えない。

そんな歴史の中で滅びもせず、種の存続が絶えず行えているのは争うのはいつも一部の人間だけだからだ。

争う理由はいくらでもあろう。

そんな争いも時代が進むごとに殺傷速度も、範囲も拡大していき、今となっては地球規模の破壊を行える兵器まで存在している。

それが抑止力となることで大規模な戦争は起きていない。

しかしそれはただの口上でしかなく、やろうと思えば指先一つで地球は滅びる。

 

これは人類の進化した結果として正解なのだろうか?

 

間違いであるならば修正するしかない。

たとえ歴史を覆す力が、魔法少女という化け物由来の力であったとしても。

 

ヨーロッパ 某所

 

「集団の魔力反応を確認。3日前に武器庫を襲撃した魔法少女たちだと考えられます」

「大人しく管理下に入ればよかったものを。何が彼女たちを反抗させるのやら」

「アンチマギア、準備が完了しました」

「よし、鎮圧マニュアルを実行しろ。いいか、できるだけ殺すんじゃないぞ」

森林の廃墟を取り囲むように軍人たちが侵攻を開始する。

その手には特殊な銃と特殊な粉末が含まれたRPGがある。

歩くたびに出てしまう草を踏んだ音、枝を擦る音を魔法少女たちが聞き逃すはずもなく、一瞬のうちに周囲の音が消えてしまった。

消えた音は空気の振動による音だけでなく、電波を伝ってくる音と呼べるもの全てがその場から失ってしまった

異常事態にもかかわらず軍人たちは慌てることなくハンドサインでこの後の行動を共有していく。

1人のRPGを持った軍人が廃墟の上空目掛けてRPGの引き金を引く。

音が無いまま上空で爆散した弾頭は周囲に特殊な粉を撒き散らす。

すると、消えていたはずの音が元に戻った。

”なにgaza tあの、みんp、裏!-て!“

「ノイズがひどい。だが奴らは裏口から逃げるつもりだ。S班、洞窟を張れ」

現地にいる部隊長の指示に従ってS班は獣道が残る洞窟の前で待機した

「N班、E班は引き続き鎮圧マニュアルに従って進軍せよ。N班は作った穴の監視も怠るな」

廃墟を取り囲む軍人たちは廃墟へ取り付き、内部にいる魔法少女の捕獲を開始する。

内部にいた1人の魔法少女は侵入してきた軍人へ小さな錨のアンカーを投げつけてきて軍人は脇腹を貫かれた。

「ここから先は通すものか!」

軍人たちは魔法少女へ銃口を向け、部隊長は魔法少女の前に出た。

「武器を下ろせ、下手な行動を起こせば後の扱いが酷くなるだけだ」

「ふん、あたしたちにとっちゃ保護された時点で死ぬと一緒なのさ」

部隊長がアンカーを持つ魔法少女へ一歩近づく。

「もう一度言おう。武器をおろして降伏しろ」

「…断る」

「そうか、残念だ」

部隊長は建物の中へグレネードを投げ入れた。

内部に残っていた魔法少女たちはグレネードを目にして建物の奥へと逃げ始める。

グレネードが破裂すると破片と共にRPGにも含まれていた謎の粉塵が周囲に拡散された。

粉塵に触れた魔法少女は皆動きが鈍くなり、アンカーを持っていた魔法少女も立っているのがやっとの状態だった。

「なんだこれ、意識が遠く」

軍人たちは内部へ一気に突入し、動きが鈍くなった魔法少女たちのソウルジェムへ銃を押し付けていく。

「まさかアンチマギアか!
なぜだ、武器倉庫は破壊したはず」

そして部隊長がアンカーを持つ魔法少女のソウルジェムへ銃を押し付けながら話し始めた。

我々がサピエンスから与えられた、人ならざる君達へ対抗するために用意してくれたものの一部さ。君たちも知らない一部だよ」

「サピエンス…そうか、あいつが言っていた人間を敵たらしめる存在か」

「裏口から逃げようとした魔法少女、素質のある少女たちを裏口で捉えた。
悪いが仲間揃って身柄を拘束させてもらう。あとは君の言うアイツについて詳しく聞かせてもらおう」

アンカーを持つ魔法少女は驚いた顔をした後、部隊長の足を掴んだ。

「お願いだ、裏口から逃げようとしたやつの中に、グリーフシードが必要な奴がいるんだ。
そいつだけは、見逃してくれないか」

「身の程をわきまえろ。警告を無視したんだ、要求には答えられない」

アンカーを持つ魔法少女は部隊長の足を離し、何も話さずにうなだれていた。

部隊長は状況確認のために各部隊へ連絡を取っていると周囲が禍々しい空間へと変わっていった。

「隊長!S班から拘束した魔法少女が魔女になったという報告が」

「各位、鎮圧マニュアルから対魔女マニュアルに変更。
S班、E班は魔女討伐を実施せよ。N班は私とここで待機だ。
なお、くれぐれも逃亡者が出ないよう見張りも並行して実施すること」

指示を出した部隊長はその場で銃のカートリッジを変更した。

「無駄なことを。人間が魔女に敵うわけがないだろう」

「少し前までではな。人間を甘く見るんじゃない」

そう言った後、部隊長はカートリッジを変え終わった拳銃を一発発砲し、目の前に現れた使い魔を倒してしまった。

「普通の銃弾が使い魔を」

「我々にはすでに争う力がある。お前たち魔法少女に頼らずとも、戦う力がな」

話をしているうちに、禍々しい結界は消えて周囲は元の廃墟へと風景が戻った。

「現状報告。
…あー。わかった。全員を拠点へ搬送しろ」

無線を切って部隊長はアンカーを持つ魔法少女を抱え上げた。

「こちら実行部隊、これから本部へターゲットを搬送する。受け入れ準備を頼む」

「もうおしまいだ、何もかも。
すまないなカレン、あんたの目指す世界に、私は入れそうになさそうだ」

ヨーロッパのかつては中立国を主張していた国だが、今は対魔法少女用の拠点が構えられている。

これは国連が魔法少女は人類の敵であると宣言したためである。

その拠点へターゲットである魔法少女を捕獲したという情報が入った。

「レディ、例の武器倉庫襲撃犯たちを捕らえたとのことです」

「そう、輸送を完了させるまで気を緩ませないでね」

「了解」

携帯での会話が終わったところを見計らい、一緒に歩いているボディーガードの少女がレディと呼ばれている少女へ話しかけた。

「武器庫破壊がわかったから彼女たちの存在に気づけたものの、知らぬ間にかなりの損害が出ていたようね」

「ヨーロッパ地域とアフリカ地域、さらにはロシア領の半分に及ぶ地域に存在した裏組織の対魔法少女兵器が跡形もなく破壊されていた。

そして、武器庫破壊時点で戦車や戦闘機といった大型兵器への転用実験がデータごと吹き飛んだ。

秘密裏に破壊工作や情報収集を行っていたにしても手際が良すぎる」

「魔法少女にも頭がキレる奴がいるってことよ。そう考えると随分と呆気なく終わったなぁ。ちょっと期待はずれ」

2人の少女は建物内へ入り、エレベーターを使って3階の司令室へと移動していた。

そして、エレベーターの中で会話を続けた。

「残ってるのが軍艦への搭載実験だけど、作戦にすぐ使えそうなのは1隻だけなのよね」

「相手は魔法少女。海上からの援護砲撃ができれば十分じゃないの?」

「キアラ、魔法少女にも船乗りがいるかもしれないじゃない。
予備がないっていうのは怖いことよ」

「しばらくは白兵戦しかできないのね」

エレベーターの扉が開き、司令室ですれ違った兵士たちはほとんどがイザベラへ敬礼を行っていた。

敬礼を行わなかった兵士は、近くにいた友人の兵士へ話しかけた。

「あの人たち誰だ?」

「サピエンス責任者のイザベラ様とそのパートナーのキアラ様だぞ。お前こんなことも知らなかったのか」

「俺はアンチマギアとは無縁の部隊だからね。あの二人とサピエンスってそんなにすごいのか?」

「サピエンスは魔法少女と魔女へ特攻を持った成分であるアンチマギアを生み出した、魔法少女を狩るスペシャリストが集まる組織だ。

イザベラ様とキアラ様はその中でもトップクラスに魔法少女と魔女を狩ってきた数が多い方たちだ。もちろん、俺達一般兵が束になって挑んでもかなわないさ」

「ふーん、今の世界情勢だからこそ敬われてるってわけか」

「言葉を慎んどけ。聞かれたら殺されるぞ」

 

イザベラは指令室へ入ると周囲の兵士へ敬礼を返し、ヨーロッパ地域の司令官へ話しかけた。

「提供した武器で事足りたかしら?」

「レディ、武器の供給は感謝する。しかし前回のような大掛かりな実験は魔法少女の標的になると考えるとリスクしかない」

「あら?そんなことを言うならロシアか中華民国へ実験場を移すけどいいのかしら」

「我々が求めているのは人類の安全だ。
レディたちのように魔法少女キラーとして名をあげることに連合のトップたちは賛同していないのだ」

実験場として使っても良いと真っ先に名乗りをあげたのはあなたたちじゃないの。何を今更」

司令官は返事をすることはなかった。

「まあいいわ。国連の宣言に従える最低限のものは提供したから、あとは好きにしなさい」

イザベラは司令室を出ようとしたら足を止めて司令官へ向き直った

「そうそう、もし魔法少女の取り締まりを怠ってヨーロッパが魔法少女の巣窟になりでもしたら、その時はヨーロッパが赤く燃えてしまうということはお忘れなく」

「わかっているさ」

イザベラとキアラが司令室から出ていくのを確認したあと、司令官は愚痴をこぼした。

「少女たちを拘束、殺害する狂った方針をなぜ国連が宣言してしまったんだ。
私は、あの演説を見聞きした後でも理解に苦しむよ」

「魔法少女は願いによって人類史を捻じ曲げてきたとありましたが、それが事実だとするとそこまで必死になるのも致し方ないのでは」

「だから芽が出る前に掘りつくし、出た花は手折るというのか。
監視だけでいいのではないか」

「しかし、今回のように明確に人類へ反抗する者達もいます。
躊躇していたらこちらがやられますよ。
司令官殿には、娘さんがいるのは知っていますが今は耐えるときですよ」

「ふぅ、そうだな。この躊躇は娘が魔法少女だったから、かもしれんな」

 

イザベラとキアラは司令部近くに停められているごく一般的な乗用車のもとへと向かった。

4人乗りの乗用車には1人の運転手が待機していて、2人の姿を見ると車のエンジンを起動した。

イザベラとキアラは後部座席に座り、ドアが閉められたのを確認すると運転手は何も言わずにアクセルを踏んで車は前進を始めた。

「はぁ、司令部で話し込むと思って遅めの飛行機を予約したのにこれじゃあ結構時間が余っちゃうわね」

「それなら折角だ。この国の日常が変わったか見てまわるのも良いんじゃないか?」

アポなしで行けるところなんて広場くらいしか思いつかないんだけど」

「広場で何の問題がある?
どんな身分の人でも立ち寄れる場所が一番欲しい情報を得られると思うが」

「ま、別にいいわ。運転手さん、シャンドマルス公園へ向かって頂戴」

「はいわかりました」

車内から街並みを眺めているけど特に何か変わったこともないいつも通りの日常が広がっていた。

時間帯で言えばお昼過ぎ。

広場には親子連れの姿がたくさんあった。

イザベラとキアラは車を降りて広場から見えるエッフェル塔を見ていた。

あれだけの発表があったのに世の中ってそれほど変わらないものなのね」

「そういうものさ。人って簡単には変われないっていうじゃない?

「魔法少女に対する認識が変わっていればいいのさ、私はね」

そう話していると、広場で遊んでいた男の子がキアラにぶつかってきた。

男の子はぶつかった後尻餅をついてしまい、手に持っていた飛行機の模型は男の子の体重によって壊れてしまった。

「ルイくん大丈夫?」

「ちょっと、よその人に迷惑かけちゃダメでしょ」

男の子が走ってきた方向からは女の子と母親と思われる人物が近づいてきた。

男の子は壊れた模型を見ると泣き出してしまった。

そんな男の子を見てキアラは男の子の前に正座をして男の子の頭を撫でた。

「男子たるもの、すぐに泣き出したらカッコ悪いぞ。
それ、大切なもの?」

男の子はキアラの顔を見て「うん」とうなづいた。

「それじゃあお姉さんに任せてもらえるかな?すぐに直してあげる」

「…本当?」

そんなキアラを見てイザベラが母親と思われる女性に話しかけた。

「いいですかね、彼女が治しても」

「え、ええ」

イザベラ達はベンチのある場所へ移動し、キアラは男の子と女の子が両サイドで見守っている中でバッグから包帯に割り箸、サジカルテープと化粧セットを取り出した。

割り箸は適度な長さで割り、包帯と合わせて折れた翼を補強した。

サジカルテープでは包帯の端を止めるだけではなく、細々とした部品の接着、割り箸のささくれ立った部分を覆うのに使われた。

補強が完了すると、化粧セットを開いてキアラはブラシを男の子に渡した。

「好きな色に塗ってあげて」

男の子は塗り絵をするように包帯やテープの白い部分へ色をつけていった。

そんな様子を見ていたイザベラは女の子の首元へバーコードが付いているのを目にした。

「奥さん、あの2人は奥さんのお子様?」

「そうよ。すみませんね、勝手にぶつかったのにここまでしていただいて」

「いえいえ。それよりもお嬢さんの首元にあるバーコードはいったい?」

「あれですか。最近国連から発表された魔法少女検査を受けた痕です。

バーコードリーダーのようなものを首元に当てて検査を行ったのですが、魔法少女の資格有りと判断されてそのまま注射のようなものも刺されていましたね」

「すげー!前よりかっこよくなった!」

「君がデザインしたんだから当然じゃないか」

「お姉さんすごーい!」

「お姉さん、むこうで一緒に遊ぼう!」

「いいよ。広げた道具を片付けてからね」

キアラはおもちゃを治してすっかり子どもたちに懐かれてしまったようだ。

「あらあら」

「あの子、魔法少女の資格があったんですね」

「私も驚きました。普通に育てたはずのあの子が、まさか魔法少女になれる可能性があったなんて。
でも、予防注射を受けると魔法少女にはなれなくなると伺いました」

「奥さんとしてはどう感じました?」

あのアメリカ大統領の演説時の画像にあった化け物にならなくて良かったと考えると、検査に行ってよかったと思っています」

「そうですか」

イザベラは遊んでいる子どもたちの方へと向かい、女の子へ話しかけた。

「お嬢ちゃん、最近検査を受けたみたいだね。首元のやつ、痛くなかった?」

「最初は怖かったけど、少しチクってした後は何もなかったよ。それに泣かなかった!」

「そうか、強いね。お嬢ちゃん」

「ぼ、ぼくだって強いんだから!」

「模型壊した時に泣いてたじゃない」

「う、うるさい!」

「こら、喧嘩しちゃダメだぞ」

子どもたちの世話はキアラに任せてイザベラは母親と再び会話を始めた。

「検査を受けにきていた人は多かったですか?」

「多かったですよ。なにせ必ず受診してくださいって言われていますからね。
ご近所の方たちも検査に行っていましたね」

「多くの人が、国連からの発表の影響を受けているんですね」

「世の中もっと物騒になった気がします。こうして安全に外で遊べているのは、国連の兵士さんたちが脅威を排除してくれたからなんです」

「おや、発表があっても何気ない日常を送っていたのかとつい思ってしまいましたが」

「いえいえ、危ないので外になんて出る人はいませんでしたよ。でも国連の兵士さんたちが外を見回って脅威を排除してくれたんです。
こうしてたくさんの人が外にいるのは、そういった経緯があったからなんです」

「そうでしたか」

アメリカ同様、あの演説が行われた後はどの国も外出禁止になっていたようだ。

そして、国連の兵士というのはおそらく。

「あなたたちは海外から?」

「はい、父親の仕事にくっついてきてちょっとした旅行気分でいました。
アメリカから来たんですが、実は今日帰国するんです」

「そうでしたか。飛行機の時間、大丈夫ですか?」

時計を見たら1時間半ほど前だった。

「1時間半前か…」

「なんだって?!
ごめん君たち。お姉さんは飛行機に乗って帰らないといけないんだ。ここら辺で失礼するよ」

キアラは急いで私の腕を掴み、奥さんたちへ一言挨拶した後車へと急いだ。

「なんで早く伝えなかったんだ!」

「子どもたちと楽しそうにしていたからさ、45分前までいいかなって」

「入場受付に時間かかるの忘れてない?!これだからファーストクラスに慣れたお嬢様は!」

「そこまで言わなくてもいいでしょ」

私たちは急いで車に乗り、そのまま空港へ向かって無事に飛行機へ乗ることができた。

私は車の中で、キアラにこう伝えた。

「あんた、将来いい母親になるよ」

「おちょくってるのかイザベラは」

アメリカ以外の街並みに触れて分かったが、どの国も最初は慎重に動くようになっていつもの日常なんてなかった。

そんな中、表では脅威排除と呼んでいる「魔女狩り」が行われたおかげで今回のような、なんの変哲もない日常が訪れたのだと思うと迅速な魔女狩り実施は成功だったのだろう。

残念なことは、野良魔法少女は大方捕らえられたものの、組織的な魔法少女のリーダー格を捉えられていないこと。

例の神浜の守りも強固だし、人類の平和が訪れるのはまだ先になりそうだ。

 

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 下の録

「軌跡を壊し、奇跡を創る そんな私たちが奇跡を創る」

 

願いを叶え、奇跡を得た少女は「魔法少女」と呼ばれる。

そんな魔法少女が生き続けた先に待ち受けるものは何なのか。

マギアレコードのパラレルディスク、ここから聞こえてくるのは人類史を守ろうと足掻く人類と魔法少女の世界を求める少女達との衝突による炸裂音であった。
人類史へ疑いを抱く魔法少女達と人類史の危機に気付いた人類が動き出した時、世界は一つの終わりを迎える。

 

この作品は「マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝」の二次創作です。

マギアレコードのパラレルワールドで展開される話であるため、実際のストーリーとは大きな違いが生じます。
人間の否定、キャラの扱い等で過激な表現が出る箇所がたくさん山ほどあります。耐性のない方は閲覧にご注意ください。

 

 

このページは魔叙事詩カグラ・マギカ 下の録 のトップページです。

上の録はこちらをどうぞ。

1章 この時間軸にしか存在しない抵抗者(サピエンス)

1-1 もうおしましだ、何もかも
1-2 さあ、これがあなたたちがフィクションだと嘲笑ったものですよ
1-3 ほんと、おぞましいものだ
1-4 魔法少女狩り、進捗は良くなく
1-5 同じでは、ないです
1-6 イザベラなら大丈夫だよね?
1-7 どうですか、私は役に立ちますよ
1-8 お安い御用と言ったでしょ
1-9 軌跡が変えられた痕跡を求めて
1-10 これは貴方が求めていたものに値するかい?
1-11 魔法少女はもう人ではない。人でなしに情けはいらない
1-12 お前は永遠に魔法少女と人を戦わせたいのか
1-13 1か0しか選べないならば、1を手にするために私は足掻くわ

 

2章 神浜にて紡ぎ出され始める交響曲(シンフォニー)

2-1 なんで、魔法少女が、争うの
2-2 人間臭いやり方を魔法少女も続けるっていうんですか
2-3 全員が納得いく答えなんて話し合っても出るわけないだろ!
2-4 鏡の向こうは疑わしき事実
2-5 変わってしまった身近だった世界
2-6 かつて助けようとした人を倒すように
2-7 事前準備、全ては後のために
2-8 奇跡を拒絶する紫色の霧
2-9 巫女と4人の少女達
2-10 偽りの神様
2-11 再起の巫女
2-12 慈悲が過ぎる行為
2-13 過去と未来、大事なものは?
2-14 国を守る 国の何を守る?
2-15 決意の朝
2-16 のちに響く計略
2-17 憂いの思いは過去の私念から
2-18 人と同じ道を歩まぬためには
2-19 手を伸ばした先にある結果は

 

3章 激闘と見せかけた神浜鎮圧作戦(ミスディレクション) 

3-1 人になった者と人でなし
3-2 偉そうな研究者
3-3 今はただ、間章に浸るだけ
3-4 神浜鎮圧作戦・下ごしらえ
3-5 神浜鎮圧作戦・その1
3-6 神浜鎮圧作戦・その2
3-7 神浜鎮圧作戦・その3
3-8 神浜鎮圧作戦・その4
3-9 神浜鎮圧作戦・その5
3-10 神浜鎮圧作戦・その6
3-11 神浜鎮圧作戦・本命
3-12 自由に錬金術を行える場所
3-13 最後の手引き先
3-14 個人が尊重されるということ
3-15 どの時間軸にもない澄んだ空

 

最終章 

4-1 団結できるという創作のまやかし
4-2 ずっと続くはずがない「いつもの」
4-3 終に向かい始める世界
4-4 魔法少女がもたらすハルマゲドン
4-5 籠の鳥プログラム
4-6 本命がエサとなりえるか
4-7 立ちはだかる人間らしさ

 

【VOICEROID実況】今までに投稿してきた動画まとめ

イランカラッテ

このページでは今までに投稿してきた動画をまとめていきます。

 

注意

作成した動画はVOICEROIDを使用したオリジナルキャラで実況を行っています

 

使用ゲーム:Minecraft


シリーズ名 カテゴリークラフトリベンジ 【完結済】

このシリーズはカテゴリークラフトという初めてボイスロイド実況を始めたときに達成できなかったことに対してリベンジしようという企画です。
カテゴリークラフトというタイトルで上げた動画はリアル環境の変化や作ってる側の意欲喪失が原因で3回ほど挫折しています。
挫折した理由としては当時承認意欲が強かったので再生数が全く伸びなくて同時期に動画を上げ始めた人の再生数がどんどん伸びていく劣等感にやられて何度も動画シリーズを挫折しています。
そんな中今回のシリーズは動画作成の際に一番邪魔していた承認意欲を捨て、動画作成の時間がかかる原因になっていた立ち絵をなくすことで「作る側が満足できる動画」としてやり直し、何度も挫折してきた自分とお別れするために創った動画シリーズでした。

元々カテゴリークラフトはエメラルドの獲得数によって自作実績を解放していくというスタイルで進めていて、そんな中で結月ゆかり亜種を調査するというコンセプトで進めてきました。

その名残で本シリーズの目標はエメラルドを2020個集めることとしたのです。
そして目標を達成し、シリーズを完結することができたので見事にリベンジを果たすことができました。正直作ってて楽しかったです。

これを機に、動画作成は自分が満足できればいいなってものだと確信しました。

 

使用ゲーム:7 days to die


シリーズ名 Melt World生存日誌 【打ち切り】

誰もやっていない死んだら最初からやり直しというルールの下で7日生き残ることを目標に始めたシリーズです。
元々は7 days to dieの仕様を理解するために始めたシリーズで、ついでにいろんな実験も同時に行っていこうということで秘かに色んな試みを行ってみました。

まずは動画タイトルを統一させずに動画内で思ったことをそのままタイトルにするという試みです。
これを行うことでこの動画内容は何をやる内容なのか分かりやすくなるのだろうかという興味本位でしたが、結果はタイトル統一化した場合と変わらなかったです。
そもそもいちいちタイトルを変えるのが面倒だなと感じてしまったので止めました。

次の試みは、録画時のプレイ音声と、編集時の語りを分けた編集を行ってみるという試みです。
これはプレイ時の自分を実況することで「実況動画詐欺」を避けられるかという考えからやってみようと思いました。
結果は会話がプツンプツンとキレて作り終わった後に何度見ても違和感しかなかったので止めました。

そして7日生き延びるという目標自体は、既存建築物に籠ればどんな難易度でもとりあえず生き延びることができるということが発覚してしまったのと、いくら時間をかけて拠点を建築しても壊されるわ突然現れるホードで即死からの最初からやり直しになるわで精神が疲弊したので止めました。

 

 


シリーズ名 こうして私は世紀末な世界で建築を始めた 【打ち切り】

このシリーズは7 days to dieから大規模襲撃の要素をなくし、気楽に建築を楽しむという動画シリーズです。
広めの移住者たちが移り住む安全地帯をのんびりと作りたいという欲求があったのではじめてみました。

 

 

使用ゲーム:Absented Age


シリーズ名 記憶を失った少女が英霊となるまでのローグライクアクション 【完結】

記憶を失った少女 カレンが記憶を取り戻しつつ、過去の自分を見つめ直していく物語です。
動画では主に戦闘や着せ替え要素を扱います。ストーリーはこのページでまとめています。
https://wp.me/paDc6H-1ao
次の章が公開されたら別動画シリーズで再び触れようと思います。いやーほんとに楽しかった。

ストーリーのまとめはこちら
心を奪われた少女 カレンが心を取り戻すために奮闘する物語【ストーリー解説】

使用ゲーム:satisfactory


シリーズ名 こうして私は生まれ変わった惑星で工場建築をはじめた 【完結】

version4となったsatisfactoryをのんびりとプレイしていきます。
ガチな工場建築は、たぶんしない。

 

使用ゲーム:Minecraft


シリーズ名 こうして私は創掘世界でエメラルドを1000個集めることになった 【継続中】

このシリーズは過去にやったエメラルドを集める企画を1.17の変更点を楽しむために簡易的な内容にして始めたシリーズです。

飽きたらさっさと1000個集めて終わります

 

【DQX】version5が終結しても残されたままの謎

5000年以上の歴史があるとされるアストルティアの世界ですが、version5まで続いたことで初期から存在した謎の遺跡や、空白の歴史が明らかとされてきました。

そんな多くの謎が明かされたアストルティアですが、いまだに謎のままとなっている遺跡や設定が残されています。

今回はversion5が終結しても、なお残り続けている謎を整理し、後に登場するversion6へ備えていきましょう。

 

 

・キュララナ海岸から見える謎の遺跡

キュララナ海岸はイベントやメインストーリーの通り道としてスルーされがちですが、ふと海岸を見渡してみると大きな遺跡があります。

同型の塔が3カ所あるので、ジュレイダ連塔遺跡の上部分ではないかという話もありますが、ジュレイダ連塔遺跡はそれほど大きくない遺跡で、3つの像から延びる3カ所の空間と繋がっているにしては3つの塔同士が離れすぎています。
あまり信用ならないかとおもいますが、ジュレイダ連塔遺跡のあるとされる場所へジュレ―下層の地図を重ねてみても、出入り口が実際の場所と一致しませんでした。

↑上層の地図に下層の地図をかぶせてみた

これらのことから、キュララナ海岸から見える遺跡はジュレイダ連塔遺跡とは違った別物の遺跡だと考えられます。
果たしてこの遺跡の謎が解かれる時は来るのか。

 

・ジュレイダ連塔遺跡

この遺跡も謎が多く、かつては牢獄としての役割を持っていたようですがラーディス王が音叉開発のための拠点として使用してから時々調査員が訪れるだけの場所となっていたようです。

いったいどこの誰が牢獄として使用し、その後遺跡となるまで打ち捨てられたのか。
ウェナ諸島の中でも闇の深そうな遺跡となっています。
この遺跡が存在した、本来の目的が明らかとなる時は来るのか。

 

 

・チョッピ荒野

チョッピ荒野には初期から存在しているにもかかわらず触れられていないものがたくさんあります。

まずはアラモンド鉱山です。封鎖中のまま一切触れられることがない謎の鉱山です。
荒野の休憩所が鉱山労働者の宿泊所だったという情報くらいしかこの鉱山に関わるようなものはありません。

次は荒野に放置された墓の跡地です。いったい誰が葬られた墓なのか自体が謎ではありますが、近くに鉱山があるので鉱山労働者関係の墓だったと考えられます。
とはいえ、真実を知る方法はありません。

そして崩れ行く廃墟という名前の付いた廃墟群がチョッピ荒野の奥地にあるのですが、名もなき廃墟群はアストルティアにたくさんあります。
そんな中崩れ行く廃墟と名が付いてるからには、何か重要な場所ではないかと思ってしまいますがversion5までに触れられたことはありません。

これらは雰囲気作りのためだけに作られた場所とは考えられますが今後も放置されたまま終わってしまうのか。

 

 

・サーマリ高原にある調査中から進展しない転送装置と沈んだ遺跡

初期の頃から存在しているこのサーマリ高原にある転送装置のようなものと水没した遺跡はガテリア皇国やウルベア地下帝国について明かされていく中でも一切触れられることがなかった謎多き場所となっています。

位置的にはウルベア地下帝国に近い場所ではありますが、過去へ移動した際はウルベア地下帝国の天井はかなり高い位置に存在していました。

仮に地脈エネルギーの減少が原因で地盤沈下が発生して帝国が水の中へ沈んだとしても、サーマリ高原からみられるほど浅い場所まで住宅地は存在しません。ましてや沈んでいる遺跡はウルベア地下遺跡のような独特な模様を有していません。

見た目が似ている建物はありますが、よく見ると柱が無かったり模様が無かったりと別物のように見えます。
見覚えのない建物もあったりするのでウルベア地下帝国とは異なる遺跡だと考えられます。

 

・エグゼリア王国

500年前に起こった厄災時にグレン城を占領していた人間たちがグレン城解放後、建国したのがエグゼリア王国です。
この名前は災厄の王に関わる神話篇でしか取り上げられておらず、エグゼリア王国は大打撃を受けていてどうやら国として機能していないのが現状のようです。

王族であるコゼットが帰還することで再興される未来があるようですが、訪れることができないうえに地図上にも表示されないため、謎多き国となっています。

 

 

・ファルエンデ王国

ファルエンデ王国という名前はアルヴァンとの許嫁として登場したヴィスタリア姫の出身国として初めて出てきます。
ファルエンデ王国はリャナ荒涼地帯にあったとされる国で、鉱脈から取れる鉱石によって栄えた国のようですが、現代では国があったとされる痕跡は残っていません。
というのも、ファルエンデ王国の王位継承者であったヴィスタリア姫の兄は、オルセコ闘技場で行われた親善試合でカミルによって殺されています。
そして残ったヴィスタリア姫はアルヴァンとは結婚することができず、元から好きだった一般男性と結婚するような話がありました。

グランゼドーラ王国のように、男女問わず跡継ぎができれば国は滅びないという例があるため王家の血筋ではない男性が王となっただけで国が亡ぶとは考えられません。

滅んだ原因として考えられるのは、国の資金源であった鉱脈から良質な鉱石が取れなくなって財政の維持ができなくなったこと。
ヴィスタリア姫に跡継ぎが生まれたのかということも定かではないので、滅んだ原因はいまだに謎です。

リャナ荒涼地帯に国の後はありませんが、ソーラリア峡谷には古き神の遺跡へつながる道中に大きな遺跡が存在します。
その遺跡群がファルエンデ王国であった可能性はあります。

とはいえファルエンデ王国という国が存在したという記録が残されておらず、いつから存在していつどのような原因で存在が消えてしまったのかを知る人はいません。

 

 

 

放置されても影響がない遺跡や設定がほとんどですが、天使にかかわりがあった神話篇や破界編の設定はversion6に出てくるかもしれません。

みなさんもこの機会に、アストルティアに残っている謎を整理してみてはどうでしょうか。

 

【AbsentedAge】心を奪われた少女 カレンが心を取り戻すために奮闘する物語【ストーリー解説】

このページでは、AbsentedAge -幽玄の章-のストーリーについて解説していきます。

 

AbsentedAgeとは

Absented Ageは日本語にすると「欠けた時代」
物語の中では茶道バンド部のバンド名として使用されています。
AbsentedAgeの物語は幽玄の章だけではわかりにくいかもしれませんが、今後のアップデートでハヤトやスズも禁域で活動する様子があることから、カレンだけではなく茶道バンド部の物語として展開されていきそうです。

 

主人公であるカレンは何者か

主人公の名前は朝比奈カレン
雨降り橋高校の2年生で茶道バンド部に所属している。
特技はトランペット演奏。中学の頃にコンクールで優勝した実績がある。
記憶を失って霊体となった後、不思議な力を持っていてゲンガーを倒せる重要な人物だと発覚する。

現状判明している記憶を失うまでのカレンの記憶

-ここから前の記憶は公開されていない、または失われている-

・雨降り橋高校に入学したカレンは吹奏楽部へ入部する。

・吹奏楽部へ入部したカレンは吹奏楽部のメンバーとかみ合わず、居心地の悪い場所となっていった。

・カレンは吹奏楽部に所属していたハヤトと共に吹奏楽部をやめる。

・吹奏楽部をやめたカレンは校庭でトランペットの練習をするようになったが、学校の教頭等に迷惑がられ、どんどんトランペットが扱える場所がなくなっていく。
トランペットを演奏できる場所がなくなっていく中、カレンは自分の居場所がなくなっていく感じ、トランペットを演奏しているときじゃないと自分らしくいられないと強く感じるようになってしまう。

・教頭の策略によって茶道部が廃部となる。

・茶道部が廃止になった話を聞き、茶道部の顧問であったミナミ先生へハヤトが声をかけ、茶道バンド部の結成に向けて動き始める。

・廃部となった茶道部の部室を使ってハヤトとカレンは後輩のスズへ演奏を聴かせる。そこに教頭が乱入して演奏をやめるよう伝えてくるが、そこへミナミ先生も加わって茶道部の部室は茶道バンド部のものだと主張する。

-この間の記憶はまだない-

・茶道バンド部は「超楽祭」という音楽フェスに参加することとなる。この頃はまだ茶道バンド部が認められて間もなく、存在を認めようとしない人もいた。

-この間の記憶はまだない-

・新学期が始まった4月頃、カレンは行方不明となる。

-この間の記憶はまだない-

・7月頃、カレンは謎の禁域で記憶を失った状態で目覚める。

 

Absented Ageに登場する人物

・タルト(精霊)

エリシオ教会に所属している精霊。特に大きな力はもっていなくて他の精霊に下等精霊扱いされている。
カレンと出会ったことで精霊としての真価を発揮できるようになったが、同時にエリシオ教会に追われる身となってしまう。
禁域に存在する心のカケラを使用して物体を生成することができる。生成できるものと質は心のカケラに含まれた記憶に依存する。
水が苦手。

 

・ミカ(人間)

カレンが行方不明になってから、タルトへカレンの捜索をお願いした存在。カレンが見つかってからは自分の部屋に住まわせ、カレンの探索のサポート役という立場にいる。
ミカ自身には両親がいなくて児童施設で育ってきた。その児童施設というのは、エリシオ教会のことである。
6月頃、ミカはゲンガーに襲われて記憶喪失状態でエリシオ教会に保護される。その後はエリシオ教会の協力のもと、部屋を借りて一人で暮らすようにしている。カレンが来てからはカレンと一緒に暮らしている。
学校で何かあったらしく、親しい人間以外には人見知りが激しい。
両親がいないのは、ゲンガーに襲われたのが原因と思われる。ちなみに行方不明のカレンが禁域にいると知っていた理由は謎である。

 

・ハヤト(人間)

茶道バンド部のメンバーでキーボード担当兼部長。
カレン同様に1年生の頃は吹奏楽部に所属していたがカレンと共にやめている。
自分がおかしいと思ったことにはとことんつっかかる性格をしていて、カレンが行方不明になった後も10年前に起きた飛行機事故でカレンが死んだことになっていて違和感を持っていた。
カレンが行方不明ではないと最後まで信じてくれた1人である。

 

・スズ(人間)

茶道バンド部に所属しているカレンがいた中学校の後輩。
高校入学後、カレンがいる茶道バンド部に入部している。
ハヤト同様、カレンが行方不明ではないと最後まで信じてくれた1人である。
機械に強いらしいが、幽玄の章ではそのようなシーンが出てはこない。

 

・ヤヨイ(精霊使い)

 

フープのパートナーである精霊使い。
エリシオ教会に所属していて最初の頃は教会の言うことを忠実に守っていた。
カレンと出会ってからは考え方を改めるようになって、カレンへ協力するようになる。
そんなヤヨイも、ゲンガーに何かされた過去があるらしい。

 

・フープ(精霊)

エリシオ教会に所属するヤヨイのパートナーである上級精霊。
なにかとタルトへつっかかるが、精霊が扱える術についてはタルトよりも圧倒的に知識が豊富である。
一応エリシオ教会のおきてには忠実だが、隠れてヤヨイと共にカレンへ協力している。

 

 

Absented Ageに登場する重要な要素

・禁域

多くの心のカケラで形作られた世界。
この空間では創造性やイメージ力があるほど強力な存在となる。特別な力が働かない限り、現世と相まみえることはない。
禁域へ侵入できるのはその禁域にある心のカケラにゆかりの持つ人物か、精霊くらいである。

 

・ゲンガー

禁域に出没するようになったタルトたち精霊にとっての外敵。
正体は解明されておらず、禁域内の心のカケラを食い散らかしては禁域を崩壊させてしまう存在。また、ゲンガーは精霊も食べてしまう。
禁域内の心のカケラを吸収して吸収した心のカケラの持ち主になり替わろうとする個体もいた。
ゲンガーは他人の心のカケラを食らい、心のカケラに記録された記憶に映る人物へ擬態することができる。大きな力を持っていれば、生きている人間の心のカケラも奪って食べることができる。
そしてゲンガーに死の概念はない。しかしなぜかカレンには討伐されてしまう。

 

・エリシオ教会

「異常存在の徹底排除」を掲げて禁域と現世どちらも見守る組織。この組織に精霊と精霊使いが所属している。
エリシオ教会は自立型のユニットを作る技術があり、エリシオクローンやエリシオゴーレムといった存在を生み出して禁域に解き放っている。
禁域に現れるようになったゲンガーは禁域を乱す異常な存在のはずが、そんなゲンガーを倒せるカレンを教会は異常な存在とみなして教会のメンバーへカレンとパートナーのタルトを捕獲するよう命令を出している。

 

・エリシオ教会での精霊の決まり

エリシオ教会に所属する精霊は「禁域の怪異から現世を守る」という考えで動いている。
精霊だけでは禁域の怪異へ立ち向かうことが難しく、現世から精霊使いの才能がある人間を引き抜き、精霊使いとして精霊のパートナーを探すことを推奨している。

精霊使いと精霊のコンビで活動している例としてフープとヤヨイがいる。

 

・カレンの心にいる謎の花

ゲンガーにも奪うことができないカレンの心の中核に滞在する謎の花はカレンへ様々な精霊術を教え、助言をしてくれる。
カレンにとても協力的だが、正体は心の持ち主であるカレン自身も知らない。

 

 

記憶を失った後の物語 -幽玄の章-

記憶を失ったカレンは禁域と呼ばれる魔物が現れる場所に倒れていた。
その禁域で出会ったタルトと一緒に禁域を脱出しようとする。禁域の道中、カレンはカレンの心のカケラを発見する。
心のカケラとは、人が何かを忘れたときに記憶が剥がれ落ちたものとされている。
タルトの話の通り、カレンは心のカケラを手に入れたことで過去の記憶を少し取り戻す。現実世界へ戻った後に友人のハヤトとスズを見つけて声をかけようとするが気付いてもらえることができなかった。なぜかというと、カレンは現実世界では行方不明者扱いで、自身の体が霊体となっていたから。

カレンは現実世界では特定の場所でしか実体を表すことができない。その場所とは、ミカの部屋だけ。なぜかカレンはミカの部屋か禁域の中でのみ実体を見せることができる。

カレンは霊体となっているためタルトに死んだ人間だと誤解されたが、抱き着いた際の心音、ミカの部屋では実体を表すことができるという点から死んではいないが霊体になってしまった可能性があるとして、カレンにタルトが付いてくるようになる。そしてカレンは失った記憶を取り戻すために心のカケラを集めるようになる。

カレンは心のカケラを取り戻すためにカレンの心のカケラを狙うゲンガーを倒す必要がある。カレンの心のカケラに引き寄せられたゲンガーは本来倒せない存在だが、カレンはいともたやすく倒せてしまう。

このゲンガーを倒して回るというカレンとタルトの行いが禁域を管理するエリシオ教会には都合が悪いらしく、カレンとタルトを捕えるよう教会に所属する精霊、精霊使いへ命令を出している。
カレンとタルトへエリシオ教会は敵対したため、教会で生産されているエリシオクローン、エリシオゴーレムといった存在が禁域で襲い掛かってくる。

順調に心のカケラを取り戻していく中、「カレン」という大事な部分を含めた心のカケラをゲンガーに奪われてしまう。これが原因でカレンの体を心のカケラが受け付けなくなっていく。

カレンはゲンガーと再び現世で対峙した。その際、カレンは禁域以上の力を発揮してゲンガーを追い払った。それは一時的なことで、ゲンガーを追い払った後は使用できなくなってしまった。しかし、今以上の力をカレンは発揮できるということをタルトと現場に居合わせたフープとヤヨイは察した。

「カレン」という大事な部分を含めた心のカケラを失いながらもカレンは行方不明だと思い込んでいるハヤトとスズへ自分の無事を伝えようと考える。
ミカの協力を得てカレンはハヤトとスズに再会する。カレンの無事を知った二人だったが、超楽祭の予告編にカレンが姿を現さなければ茶道バンド部の讃歌が取り消されてしまうという事実をカレンへ教える。

事実を知ったフープはカレンたちへ一時的に現世へ実体を表すことができる降霊術の存在を教える。カレンたちは降霊術を教えてもらう代わりにカレンの心のカケラを奪ったゲンガーを確実に倒すよう伝えられる。

カレンは自分の心のカケラを奪ったゲンガーを追っているとゲンガーの罠にはまって自分の心を壊すと同時に今まで集めた心のカケラも奪われそうになってしまう。
心のカケラを奪ったゲンガーの目的は、カレンになり替わることだった。
そんなゲンガーにすべてを奪われる寸前まで追い込まれてしまうが、カレンの心の中核「謎の花がいる空間」は無事であった。
謎の花は自暴自棄になったカレンを励まし、カレンは再起する。
自分を見捨てなかった人たちのことを思い出し、自分は勝ちのない存在ではないと認識するようになる。
新たな決意と共に、カレンはゲンガーと戦うことになる。
ゲンガーはカレンの力を使って襲い掛かってくるが、カレン自身は禁域探索で手に入れた力とヤヨイたちの援護を得てゲンガーを追い詰める。

しかし再びゲンガーの策にはまってしまい、カレンの今まで集めた心のカケラはゲンガーに奪われてしまう。
力を得たゲンガーは現世へ手を出しはじめる。ゲンガーは現世を禁域と混ざった存在にしようとした。これが原因でカレンの心の中核が力を解放し、現世で見せた大きな力をカレンは振るえるようになった。

カレンはゲンガーを圧倒した。ゲンガーを倒し、心のカケラは全てカレンのもとへ戻り、現世と禁域の境界も元に戻った。
カレンの心を狙うのを諦めたゲンガーはタルトの質問に答えた。カレンが行方不明となる前にカレンの記憶と実体を奪ってはいない。事故で死んだなんて歴史に改変することもできないと。
カレンはゲンガーの願いもあって、心を奪ったゲンガーを倒した。

ゲンガーを倒したカレンは約束通りヤヨイたちから降霊術を教えてもらった。やり方は教えてもらったものの、自分の意思が弱いため実体化は困難を極めた。

超楽祭 選抜会当日
カレンの讃歌は絶望的かと思われた中、茶道バンド部の紹介が行われようとしたときに会場へカレンが実体を表した。

選抜会はうまく成功し、超楽祭へ茶道バンド部は参加できるようになった。
こうしてカレンの物語は一区切りだが、いまだに謎が多い。

 

ではここからはAbsentedAgeのストーリー解説と、残った謎についてみていきます。

〇本当は一般人かそれ以下並みに心が弱いカレン

主人公であるカレンの心はとても弱いです。霊体となる前から自分の居場所に悩み、本当の自分とは何者なのか悩んでいました。
そんな弱い心を付け狙われ、カレンは心のカケラが奪われたり、ゲンガーの罠へハマったりしました。
この心の弱さは誰でも経験することです。特に中学校から高校にかけては思春期真っ盛りで人の心の汚いところも見えやすくなるころです。人によってはハヤトのように、高校の頃には十分に免疫が付いた人もいるでしょう。

しかしカレンは中学校の頃は優秀なトランペット演奏者として周りから慕われていて、人の黒い部分を見る機会がなかったようです。高校に入ってから初めて自分とは何者かを向き合うようになったようで、霊体になった後も自分とは何者かを悩むことになります。

そんな悩みは幽玄の章内では明確な回答が出ていません。

自分を支えてくれた人がいたから、見捨てる人なんていなかったから、自分には価値があると、自分は存在していていいんだという認識しか得られていません。
今のカレンでは、カレンとは何者かという質問に対してまだ自信を持った返事を用意できないでしょう。

とはいえ、誰もが自分とは何者かという問いかけに対して明確な回答を用意するのは容易ではありません。

カレンは幽玄の章で、存在価値はあるという生きる自信を手に入れました。

今後追加されるストーリーで自分とは何者かを見つけることができるのかに注目していきたいところです。

 

〇みんなのつけているネックレスは、チームの証

ストーリーでは語られていない部分ですが、私服のカレン、ミカ、ハヤトはおそろいのアクセサリーを身につけています。

流行りものでひし形三つのアクセについての話は出ていないので、おそらくこのアクセはAbsentedAgeのトレードマークとなっているのでしょう。
今後追加されるストーリーで、このアクセを活用した展開があると存在感を主張できそうです。
スズも一応メンバーだけど、見えないところでつけているんだよね?

 

〇そもそもカレンやミカの記憶を奪った存在は誰なのか

今のところ真犯人はわかっておらず、記憶はおろか、霊体にしてしまうことはゲンガーができる芸当ではないことは明らかとなっています。
物語で強調されるのはカレンが記憶をなくしたことですが、実はミカも原因が不明の記憶喪失となっています。
ミカは実体はもっているものの過去の記憶を失い、自分を知る人物は誰もいなくなってしまうというカレンとは別の意味で重傷でした。

今は二人しか被害に遭っていませんが、今後は他にも被害を被る人が発覚していきそうです。

 

〇エリシオ教会は善なのか、悪なのか

未だに謎が多いエリシオ教会は禁域を破壊してしまうゲンガーよりもカレンの捕獲を命令します。ゲンガーよりもカレンを危険視する理由は最もで、カレンはゲンガーを倒せるだけではなく禁域でも、現世でも普通の人には扱えない大きな力を持っています。
そんな力が誰かに悪用されたら、ましてやゲンガーに悪用されたらそれこそ現世と禁域のバランスが保てなくなることから、誰にも狙われないようエリシオ教会は手元に置いておきたいのでしょう。

果たして本当に保護だけが目的なのか。

ゲンガー討伐のために、ゲンガーを倒せる力を持つカレンに協力を申し出て危険分子と判断したゲンガーを一緒に倒すのが穏便な方法ではないのか。
今までもゲンガーの監視だけでゲンガー討伐ができずに放置してきたエリシオ教会よりもカレンの働きの方が断然禁域の安全を確保できます。

ゲンガー討伐に乗り出さず、放置してカレン捕獲を優先するエリシオ教会は、何か大きな事実を隠しているのかもしれません。

今までは禁域と現世を見守ってきた存在かもしれませんが、今のエリシオ教会の行いはカレンたちにとって悪なのかもしれません。

 

〇カレンの心の中核に居座る花は何者か

カレンの心の中にいて精霊術を授けていった謎の花はカレン以上にカレンのことを知っています。
そんな心の中核は現世で使える強大な力 ヤヨイいわく「魔女の力」は謎の花が原因だと考えられます。
「魔女の力」は禁域ではなく現世にいるとき限定に発動できる強大な力です。この力はカレンの中に心のカケラがない状態でも使用できました。心のカケラがない中、カレンの中に残るのは心の中核だけです。そんな心の中核には謎の花がいる。

今まで現世にいたカレンは不思議な力なんて使用できませんでした。
不思議な力を使えるようになったのは、霊体になり、心の中核にカレンが接触できるようになってからです。

カレンの心の中核にいる花は、魔女の力の持ち主なのでしょう。しかしカレンの心の中核に居座る理由は何なのかは現状で知る手立てがありません。

 

まとめ

現状、AbsentedAgeには多くの謎が残っています。
とはいえ、幽玄の章だけでカレンがどんな存在なのかは記憶を失ったカレン同様に大雑把にわかる内容となっていました。そのため、主人公の目線で物語を進めていくことが容易でした。
描かれていた現世は頼れる友人がいる中、汚い人間社会が描かれていたりと中々考えさせられる内容でした。
何事も美化せずに描かれていた幽玄の章は個人的に好みです。

続編が作られることも決まっているため、無事にこの世界の物語が完結できることを祈ります。

下記にAbsentedAgeの販売サイトへのリンクを張りますので、ぜひプレイしてみてください。

steam
https://store.steampowered.com/app/1387580/AbsentedAge_SRPG/

 

dlsite
https://www.dlsite.com/home/work/=/product_id/RJ290851.html

 

あなたは自分がどんな存在か、自信を持って言える?

※このページは、Absented Ageの要素を扱っています

【原神(genshinimpact)】実はヤバイ原神の世界 神なき繁栄は許されないディストピアだった【考察】

原神はversion1.5の時点で7国あるうちの2国しか解放されておらず、ストーリー的に半分も進んでいない状態です。
しかし、3国目となる稲妻はこのゲームが1周年を迎えるころにならないと実装されないのではという雰囲気が漂い始めたため、version1.5時点で原神の世界はどんな世界なのかを振り返り、今後のストーリー展開がどうなっていくのかを考察していきます。

情報整理、考察を行うにあたって使用する情報はゲーム内に出てきた内容のみとします。公式サイトにある漫画や公式PV、MIHOYOの他作品にのみ公開されている情報は使用しませんのでご了承ください。

 

-原神の世界「テイワット」を支配する要素-

テイワットは主に元素力に支配されていて、他には陰ながら世界に影響を及ぼしている地底の力、星空の力という要素があります。

元素力は7種類存在します。
炎、水、氷、草、雷、岩、風と分類されて常人には行使できない力です。とはいえ、この元素力にテイワットは支配されていて無意識にではありますが常人も元素力を使用しています。

炎:料理に使う火、光源、熱源、鉱石加工のための火

水:料理、飲料水、洗濯、掃除、農業、漁業

氷:食料保存、料理や飲み物を冷やす氷

草:火の燃料、料理の食材、薬

雷:なし

岩:鉱石加工

風:なし

上記のように、常人でも無意識に元素力を扱っています。
ではだれでも将来は元素力を行使できるようになるのかというとそうではありません。元素力を操れるのは神の目、邪眼を持つ者、元素生物、アビス関係者、魔神であり、それぞれ使用できる元素力の種類は限られています。

神の目は神から認められなければ手にすることができないものです。神の目を持っていれば神の目で指定された元素に限って自由に行使でき、元素視覚で元素の痕跡を探知することができるようになります。
この元素視覚を使えるかどうかで研究者の実績には雲泥の差が出てしまうようです。また、軍隊に所属している場合は元素力を行使できるかできないかで戦力差が出てしまったりと神の目を持っているかどうかで人間社会での立場にも差が出ています。

邪眼は主にスネージヤナにて開発された人工の神の目です。神の目同様に元素を自由に行使できるようにはなりますが、元素視覚を使用できるかは明らかとなっていません。ファデュイが主に所持しています。
ファデュイは邪眼以外にも元素生物等を利用して元素兵器を開発しています。

元素生物にはスライムや精霊、ドラゴンといった生物が該当します。生まれながらに一種類の元素を使うことができて、社会を形成することなく自由に生活を送っています。
そんな元素生物ですが、数が増えすぎたり、成長しすぎたり、元素反応を起こしてしまった場合は災害の発生源となってしまう場合があります。とはいえ、災害扱いするのは人間だけでしょう。
精霊については人間社会でも存在していておかしくないという認識で、パイモンやオズ、グゥオパァーを見ても「謎の生物」と認識して誰も驚き戸惑うことはありません。
テイワットで元素生物は存在して当たり前という認識となっているのです。

魔神も元素生物同様に生まれながらに一種類の元素を行使する力を持って生まれています。とはいえ扱える力の規模はその辺の元素生物とは比べ物にならないほど大きく、国を一つ簡単に滅ぼせるほどの力を持っています。
2000年前に神に認められた俗世の七執政と呼ばれる七神はほとんどが魔神です。ウェンティに限っては精霊から神に昇格した異例の存在です。

アビス関係者とは、カーンルイアで謎の力によって容姿が変貌してしまった者たちのことです。もとはどういった存在であったかは不明ですが、地底の力を借りて元素を行使できるのは確かです。いまだに元素を行使する存在として謎が多い状態です。

 

元素の話はこれくらいにしておいて次は地底の力についてです。
地底の力とは、主に地脈、石化古樹を通して使用できる力のことです。地脈では元素力が世界を循環していてこのおかげで世界は元素力で支配されています。
この地脈に流れる元素力は時々元素生物へ影響を及ぼし、凶暴化させてしまう事例が存在します。

地脈へ意図的に接触できる方法はほとんど存在しません。数少ない接触方法として地脈の花に触れること、石化古樹に接触することです。
地脈の花は地脈での元素の循環が生き詰まって穢れが積もって地表に現れたものです。接触のためには天然樹脂と呼ばれるものが必要で、接触すると成長に必要なものを得ることができます。

石化古樹は大昔からテイワットに存在していた地底まで伸びる巨大な木が石化したものです。石化してもその木には生命力が満ち溢れていて枝を伸ばしています。
テイワットにはそんな石化古樹を通して地底の力へと接触できる人たちが存在しました。地底の力へ接触できると知恵を授かることができ、地底の力へ接触できる者がいる国は大きく発展したとされています。

また、アビスが元素力を行使できるのは石化古樹などの地脈へ接触できる方法を知っているがためでしょう。接触する仕組みはいまだに謎のままです。

 

最後に星空の力についてです。
星空の力とは、主に命の星座のことを指します。命の星座は神の目を持つ人それぞれに定められた運命そのものとされています。
神の目を持つ者には命の星座が必ずと言っていいほど存在し、その命の星座には過去から未来にわたるすべての運命が内包されています。

とはいえ、占星術というものが存在し、天体観測によって人々の運命を占うことは元々可能ではあります。そんな占星術を行う上でも強力な力を持っている星の並びが、命の星座なのです。
どうやら神の目を授けられた者であれば死後も星空に残り続けるようで、かつてファデュイが星空の力を利用した実験の際には2000年前の人物の命の星座が現代の人々へ悪影響を及ぼしたという事例が存在します。

そのため、星空には神の目を与えられた人物たちの運命が残り続け、それはやがて歴史へと変わります。その歴史の中身は、神が認めた者の旅路であり、そのすべては神が存在を保証した歴史だけが残されるという意味でもあります。
そんな命の星座には、俗世の七執政も含まれているようです。

 

以上の3点がテイワットを支配している要素です。

では、3点の要素を把握したうえでテイワットの歴史と今後の展開について考察していきます。

 

-テイワットでは地底の力 vs 星空の力が続いている-

テイワットには大昔から人間は空からの啓示を聞くことはでき、さらなる知恵を求めて地底の力へ手を出すと、地底の力を借りた文明ごと抹殺されるというサイクルが続いていました。
そのサイクルは祭りの冠シリーズからも読み取ることができます。


凍り付いた大地に住む人々は、神の使者が未開の地へ炎をもたらしてくれたことですべての繁栄を天空にいる神の啓示に任せるようになります。
人々は安定した生活を送っていましたが、この生活にもいずれ終わりが来るんだろうという未来に不安を持ち、未来への不安を天空へ問いましたが答えてはくれません。
未来への不安を持った人々は、知恵が眠るという地底へと答えを求めるようになります。

神の使者は炎の次に水をもたらします。水は大地を育て、神の啓示通りに豊作が訪れて人々は引き続き神の啓示に運命を任せていました。世界の人々は神の啓示に任せていたため、世界中の元素力は秩序をもって安定していました。
しかし未来への不安を抱く人々は絶えず、知恵だけではなく運命までも地底へ答えを求める人々が出始めました。

地上の人々は地底から持ち帰られた運命、知恵を知って神には頼らない発展をはじめます。神から与えられた以上の知恵を身につけた地上の人々は神の啓示を軽視するようになり、ついには天上の神へ抗う度胸を手に入れます。
地上の様子を知った天上の神は地上へ雷を落とし、地上へ神の怒りをあらわにします。

地上の人々は神の怒りを鎮めるために地底へ問いかけます。
その答えは、築いた文明ごと地底深くへ沈んでしまうこと。
こうして地底の力で発展した人々の文明は知恵をすべて地底へ戻し、地上は神の雷によって万物の気配が弱まる結果となりました。

そして、地上の世界は凍り付いた大地に包まれたのです。

これは存在したのかも定かではない人類が築いた文明の末路です。
この内容からだけでも、テイワットの神は地底の力へ頼って自分の言うことを聞かなくなった人々は抹殺するという傾向が見受けられます。

ただのおとぎ話ではないかと言いたくなりますが、上記のような流れで滅んだ文明が二つ存在します。

=シャール・フィンドニール=

シャール・フィンドニールはモンドが氷に包まれていた時代に、ある一族が安置を見つけて発展した都です。その都には天上の使者がかつて訪れたことがあり、シャール・フィンドニールの人々を助けた過去があるようです。

記載内容
“FIDELES ANGELI IUVANT(忠実な天使たちが助けた)”

そんなシャール・フィンドニールは神の啓示以外に、地底の声を聞ける者が存在し、シャール・フィンドニールは神だけではなく地底の力も借りて発展をつづけました。

記載内容意訳
“つべこべ言わず探求を続けろ”

そんなシャール・フィンドニールに天井から寒天の釘と呼ばれるものが飛来し、シャール・フィンドニールは吹雪に包まれてしまいます。
シャール・フィンドニールはなすすべもなく文明ごと滅んでしまいます。

 

=カーンルイア=

未だに謎の多いカーンルイアも神に頼らず発展した文明の一つです。
歴史上、シャール・フィンドニールに次ぐ神に頼らない国ということで神を信じない多くの人々がカーンルイアへ集まります。
カーンルイアは元素力以外に科学という力を使って今は遺跡守衛と呼ばれている”耕運機”などの機械人形を生み出します。
そんなカーンルイアは天上の神打倒を掲げていたようで、シャール・フィンドニールへ偵察に行った機械守衛たちは揃えて

“国家のために、我々はこの天空の力を諦められない”
※外国の方が解読した遺跡守衛が放つ謎のコード解読結果より

と語っています。
そんなカーンルイアは錬金術という力も活用するようになります。
元素力に頼らずとも生きていけるような知恵を得た人々を神が許すはずもなく、500年前についに神はカーンルイアを滅ぼしてしまいます。

神は文明を滅ぼすだけにとどまらず、文明を発展させたカーンルイア人を怪物へと姿を変えて知恵を失わせようと試みます。
一部の人々からは知恵を失わせることに成功しましたが、中には”アビスの怪物”へと姿が変わっただけで知恵が残る者もいました。
ちなみに知恵を失わせる施策は、シャール・フィンドニールへ神が裁きを与えた際にも行われた可能性があります。それは、生物誌のヒルチャールについての説明文に1000年前から存在が確認されているという内容から見て取れます。
知恵が残る者がいたのは500年前が初めてです。
ここから、少なからず地底の力も天空の神へ抗う姿勢があると見受けられます。

 

このように、おとぎ話だけではなく有史の中でも地底の力に頼った文明を、神は容赦なく抹殺するという傾向があるとわかります。

こういった神の行いによって地上から神に頼った文明の記録はすべて奪われ、地上に残る歴史は神が存在を許した国のもの、そして星空に残る神が認めた人物の命の星座だけとなります。
つまり、今のテイワットは”神が存在を認めた存在”しか残らないディストピアだったのです。
神に許された範囲の知恵しか扱うことができず、滅びを迎えるようなことがあればそれは運命だと受け入れて滅ぶしかない。

地上の人が滅ぶ機会を、そして地底の力へ耳を傾けないようにする対策として大きな元素力を持った存在を俗世の七執政として任命し、多くの国を神の統率下へと置く対策も行っています。

なぜそこまでして神が地底の力による文明の発展を嫌うのかというと、地脈の元素力が乱れることを恐れているからです。

神が地上の人々へ啓示をもたらしていた際に重視されていた点は、知恵の発展ではなく、元素力の秩序を保つことでした。地上の人々は元素力の秩序を保つための道具にすぎず、元素力によってもたらされる災害は運命として受け入れるよう、人々へ対策法を享受することもありませんでした。
元素力によって起こる災害はテイワットの元素力の秩序を保つため。

大きすぎる火の元素は必要以上の草木を死滅させ、多くの生命が死滅してしまう。炎の元素を弱めるために大きな水元素をぶつける洪水や嵐といった災害がもたらされる。

大きすぎる水元素は生命をすべて溺れさせて死滅させてしまう。
水の元素を弱めるために大寒波を引き起こし、必要以上の水が大地を侵食しないよう封じ込める。

大きすぎる氷の元素は、多くの生命から体温と命を奪って死滅させてしまう。
氷の元素を弱めるために四季がある。

残念ながらテイワットに流れる元素力は秩序を保とうという法則が存在せず、秩序を保つために対策を実行できるのは神だけなのです。
もし元素力の秩序が乱れ、特定の元素力だけが強くなりすぎた場合は最終的にテイワットの生命が死滅する結果となります。

テイワットから生命が失われないために、神は元素力の秩序を乱す存在を抹殺してきたのです。

 

では地脈の秩序を乱してしまうほどの地底の力とは何なのか。
実は地脈には元素以外にも記憶が循環しているとされています。この記憶が、地底の力に影響しているのでしょう。
地脈に流れる記憶は”知恵”として地上の人々へ影響を与えます。
この記憶について天上の神のように制御する者が存在するのかというと、実は明らかにされていません。
500年前に神が知恵を失わせる施策から逃れた存在は、アビスと呼ばれています。
アビス自体も謎に包まれていますが、活動目的は「神の打倒」です。
この神を打倒しようとする意志は知恵を制御する者が存在する故に起きた結果なのか。

残念ながら、今はアビスという存在を生み出した神に匹敵する黒幕が存在するのかは定かではありません。
しかし、少なくとも地底の力とはテイワットという大地で積み上げられてきた記憶そのものであることは確かです。

 

-今後の展開 七神とアビスが神へ反逆する-

今後に展開されるストーリー予想をします。

最初に結果だけを伝えると、

アビスが七国に脅威をもたらしながらも氷神は神の心の徴収を完了させ、天上の神へ反逆しようとしてもアビスに行く手を阻まれる。
アビス教団と反逆しようとしている氷神が統治するスネージヤナをまとめて抹殺しようと天上の神が現れた時、双子が天上の神と戦ってテイワットの神が統治する歴史は終わる

今のストーリーでは氷神が他の俗世の七執政から神の心を徴収して回っています。また、同時進行でアビスが神に抗う力を手に入れようとしている最中です。

氷神が神の心を徴収して回ることをたくらみだしたのはおそらくカーンルイア滅亡がきっかけです。
ウェンティによると500年前の氷神から、今の氷神は思考が変わっているらしくウェンティ自身も神の心を徴収して回っていることを知りませんでした。
しかし鍾離は氷神と直接交渉を行い、七神の座を降りる終わりの契約を結んでいます。鍾離は神の心を渡すほどの代償が何なのかを知ってはいますが、誰にも明かしてくれません。
そんな氷神が統治するスネージヤナには神の目を持たなくても元素を扱うための技術、遺跡守衛を調査できるほどの技術力があります。

おそらく氷神は、神へ反逆しようと計画しています。
神へ反逆しようと思ったきっかけは、カーンルイア滅亡です。氷神は人類が自ら発展を遂げたという偉業を神が己の勝手によって滅ぼしたという結果を目の当たりにして神の存在に疑問を抱いたのでしょう。
氷神が神へ反逆する理由は、人類の自由な文明の発展だと考えることができます。
実はこの理由が、鍾離が氷神へ神の心を渡した理由にもなります。
鍾離は3700年近く人々に寄り添って璃月を統治してきました。そんな中、璃月の民が神に頼らず人の力で発展しようとしている光景を目の当たりにします。
鍾離はこれをよい傾向だと判断し、璃月の発展を神の統治という力が妨げてしまうだろうと考え、鍾離は神の座を降りる契約を交わしたのです。
もちろんその代わりに氷神が受ける代償は、スネージヤナの滅亡です。
しかしスネージヤナは滅亡させないと、氷神は抗っている最中です。

今後は各国の俗世の七執政から氷神の考える思想に対する感想を聞くことができるでしょう。しかしどの神も氷神へ抵抗して天上の神の方へ着くことはないでしょう。

なぜなら俗世の七執政は、人々を愛しているから

 

アビスの方はというと、双子の片割れが実行部隊であるアビス教団の長として動いている最中です。その計画は、俗世の七執政を滅ぼして天理に挑むという流れです。
スネージヤナの計画を知っていれば共闘できそうではありますが、「神」という存在自体を許さないアビスにとって七神との共闘という道はないのでしょう。
アビスの目的は神ではなく人が統治する世界にすることです。

人によっては神に監視されたディストピアが理想郷でもよいと思う人もいるでしょう。
しかし文明の発展を拒まれるというのは発展した世の中を知る者にとってとても不幸なことだということがわかるはずです。

不要な物質を変換させて有用な物質を形成する。
瞬時に移動できるワープゲートを人工的に作れるようにする。
記録を残すために写真撮影をする。

これらが度を越えると、存在ごと抹殺されてしまうのです。
そんな神に見守られるのは幸せでしょうか?

今後の原神のストーリーは神を信じるものと、そうではないもので見方が変わってくるでしょう。

 

-まとめ-
“原神の世界「テイワット」は天上の神が元素力の秩序を守りたいがために、
人類の力で発展した文明は抹殺されるディストピアだった”

 

あなたは七神とアビス、どちらにつきますか?

※このページは原神の要素を扱っています