【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-2-10 偽りの神様

ある日、やちよさんはさつきさんへ3人の子達が学校へ行っていない理由を聞きました。

「事情があるのよ。

もしよければあなたがあの子たちに教えてあげてもいいわよ。

かつては家庭教師が来ていたのだけど、わたしたちだけになってからは誰も教える人がいなかったから」

そう、この神社にはお参りしに来る人と謎のスーツの集団以外全く来ないのです。

3人の子へ勉強を教える人もおらず、さつきさんやキクさんの両親もいません。

きっと踏み込んではいけない事情があるのでしょう。

やちよさんが暇をしている3人へ勉強をしたいか聞くと、ちかちゃんが真っ先に答えました。

「私は嫌かな。あまり勉強得意じゃないし」

他の二人はダンマリでした。

私は二人が言い出せない事情があるのかと思い、ちかちゃんを外へ連れ出すことにしました。

「じゃ、じゃあちかちゃん、ちょっと私に教えて欲しいことがあるんだけど」

「なになに?」

ちかちゃんを私が外へ連れ出した後、その後に残った二人は。

「私は勉強教えて欲しいかな」

「私も・・・」

「最初聞いた時は黙っていたわね。あの子の前では言い出しにくいことなのかしら」

「そうだね。

ちかの前では、“勉強”ってこと自体を話題にするのはよくない」

私はちかちゃんに畑の野菜について聞いていました。

そして聞いてみたのです。

「ねぇ、勉強は嫌いなの?」

そう聞かれると手を動かしながらいつもの元気そうな顔で話はじめました。

「私は勉強ができないからって家を追い出されたの。何が起きたかわからず彷徨っていたところをさつきさんに助けてもらったんだ!

拾ってもらった後も勉強を何度か誘われたんだけど、何をやっても覚えるところか嫌な気持ちになるだけだった。

だからこうやって体動かす方が好き!」

「・・・ごめんね、話しづらいことだったのに」

「いいよ、お姉ちゃんに知って欲しいと思ったから」

この子は拾われた子だった。

このような子へは勉強を強制できない、ではどうやって知識を広げてもらった方がいいのか。

これは魔法少女だけで生きていく上でも大事なことだと思う。

「私、勉強しないから悪い子だと思う?」

「そんなことないよ。こうやって野菜に詳しいでしょ?
それで十分に偉いよ」

「えへへ」

子どもは憎めない。

こんな無邪気な子達が大人になるとああなってしまうのは、そしてこの子のような子どもが増えてしまうのはなぜなのか。

カレンさんが主張していた人間社会の破壊。

それが為されれば、変わるのだろうか。

やちよさんから勉強の話題が終わったという合図が来るまでちかちゃんと外で過ごしました。

その日の夜、やちよさんから勉強を教えた二人について教えてもらいました。

「あの子達、どうやら親に暴力を受けていたみたいで、隙を見て家出したところをさつきさんに拾われたらしいの。

そのせいで人間不信になっているみたいで。

今はさつきさんしか信用していないらしいの」

「そんな辛い事情を話してくれたんですね」

「ええ。少しは心を開いてくれたってことなのかしらね」

あの3人と仲良くなるのはさつきさんを神浜へ連れて行くための過程でしかありません。

3人みんなが魔法少女になってくれればういを助けた後も仲良くできるかもしれない。

私達は後どれほどここに居続けないといけないのだろう。

 

3人が部屋に戻り、環さんと七海さんも部屋へ戻ったことを確認した後、本殿にいるさつきのもとを訪れた。

さつきは札を作る手を止めて窓から外を見ていた。

「また物思いに更けていたのか」

さつきは私の目を見て話しはじめました。

「キク…。

あなたは環さん達をどう思う?」

「あの3人が心を開くくらいいい奴らだし、魔女との戦いも問題ない。

私が言える立場じゃないが、いい加減ここのしがらみから解放される時なんじゃないか」

私と目を合わせながら話していたさつきは、再び窓の外へ向き直ってしまった。

「確かにキクが言えたことじゃないわね。

知ってるでしょ、私は父と母が亡くなった時に約束したのよ。私がここを守っていくって」

「・・・あの二人をここに縛っておく気か」

「仕方がないでしょう?

私はここから離れるわけにはいかないんだから」

何が仕方がないんだか。

さつきのこだわりはわかるが、今私の中では二人への申し訳なさが優っている。

段取りを組んで外に連れ出すしかないか。

「じゃあ、私は勝手にさせてもらうよ」

本殿を出ようとするとさつきは私の左手を掴んできた。

そんなさつきの目には涙が溜まっていた。

「勝手にどっかに行かないでよね・・・。

あなたなしだと、私・・・」

「今後のさつきの態度次第かな」

私はさつきの手を優しく放して本殿を出て行った。

 

「私、どうしたらいいのよ。

教えてよ、お父さん、お母さん…」

 

いつも通りの朝を迎えたかと思いましたが、朝食の席にさつきさんの姿がありませんでした。

「さつき、寝坊かな」

「私起こしてくるね!」

「ああ。いつもの裏口から行くんだぞ」

一人がさつきさんを呼びに行っている間、私達は先に朝食を済ませてしまうことになりました。

「珍しいですね、さつきさんが朝遅いのって」

「誰だってミスはあるさ。疲れてたんだろう」

結局さつきさんとは顔を合わせることなく、私とやちよさん、キクさんで魔女退治に行くことになりました。

ここの魔女は弱く、苦戦することは滅多にありません。

簡単に遭遇した魔女を倒した後、キクさんは真剣な顔で話しかけてきました。

「環、七海少しいいか」

キクさんに呼ばれて私とやちよさんは、キクさんと一緒に人が登れないような建物の屋上へ行きました。

「信頼にあたると思い、あなた達に私とさつきのことを教えてあげる」

===

わたしとさつきはもともと幼馴染の縁で一緒に魔法少女として活動していた。

さつきの魔法少女としての才能はとてつもないものだった。
この町に現れる魔女は相手になんてならず、彼女に刃を向けてきた魔法少女は皆彼女の力でねじ伏せられた。私だって到底かなわない。
だから、この町の魔法少女達はさつきへ大きな信頼を寄せていた。

さつきはあの神社で巫女として育てられてきた。巫女である特権として義務教育を受けることを免除されていて、普通に学校へ行っていた私は少しうらやましく思う時もあった。

だからさつきは同年代のやつと会う機会が少なかったんだが、頻繁に神社へ訪れる男子生徒がいてな。男子生徒が神社へ訪れていた理由は神社に祀られている神様に興味を持ったかららしい。

最初はその男子生徒をさつきは邪険にあしらっていたんだが、なんだかんだ仲良くなってしまってな。
隙があればあの男子生徒のことをわたしへ楽しそうに教えてきた。

「あいつ学校で流行ってるからと言って訳の分からない本を持ってきてね。
絵ばっかりで情報量が全然ない中身でびっくりしたよ」

「それはマンガってやつじゃないのか。
文字で伝えていた情報を絵にかき起こすことでキャラクターの心情を察しさせたりと新しい表現ができるんだ」

「そうなんだ。あいつ、あの本について私と語り合いでもしたかったのかな」

「あいつに興味があるなら、あいつの好きなものから好きになってやったらどうだ」

「ちょっとキク!私はあいつのことどうも思っちゃいないんだから!

でも、ちょっとは興味持ってやるんだから」

「はいはい」

男子生徒は私と同じ学校へ通っていて、周りに誤解されないようさつきをどう思っているか聞いたこともあった。

「さつきのことはどうも思っていないさ。
ただ、一緒にいる時間がもう少しあったらなって思う時がある」

「さつきが学校に来て欲しいってことか?」

「巫女の仕事があるから仕方がないっていうのは知ってる。
ただ、俺が大人になったらあの子をあの神社から連れ出したいとは思ってる。あの神社に祭られている神様ってのは少しうさんくさい気がするんだ。

それに、何かに縛られながら生きるってのはさつきだって望んじゃいないだろ」

「アンタが何か企てるんだっていうなら、私が手伝ってもいいよ」

「その時はお願い、キク」

ただ、あの楽しい日々にも終わりを迎える時が来た。

ある日、学校が丸ごと魔女の結界に飲み込まれるとんでもない事件が起きた。それが起こる前触れはいくらでもあった。

学校周辺で謎の殺人失踪事件が続いていて、その集大成だったのだろう。

たくさんの人々が使い魔の餌食になって次第に狂った人同士で殺し合いが始まった。

その殺し合いに、あの男子生徒も巻き込まれていた。

彼は最後まで冷静だったが、狂った生徒達を止めようとして、その後生徒達に八つ裂きにされた。

その状況を目にしてしまったさつきは、初めて魔法少女として人を殺した。

あの状況ならば、狂った人々を殺すしか手段はなかった。でも、初めて人を殺すという感触に私たちはショックを覚えるほかなかった。

そしてあの男子生徒を助けられなかったさつきに、とどめを刺すような出来事が起きたんだ。

一緒に魔女討伐をしていた魔法少女のうち一人が、目の前で魔女化したんだ。今まで自分が討伐してきた魔女が、元は魔法少女だったことを知ったさつきの精神は限界だった。

さつきはこの町で一番強い。でもメンタルはそうじゃなかった。

彼女は発狂してしまい、相手が元魔法少女だってことから魔女へ手を出せなくなった。

学校を結界に閉じ込めた魔女は強かったが、他の魔法少女達の活躍もあって私がとどめを刺して倒すことができた。

そしてさつきが魔女化しそうな時に私はグリーフシードを押し付けた。

「負けるんじゃない!戻ってこい、さつき!」

さつきは魔女にならずに済んだ。
だがこの件でこの町の魔法少女はさつきに対する信用を失った。

あの時魔法少女が魔女化した個体はあの戦いの中どこかに消えてしまって始末できずにいた。

そいつが数日後、皮肉にも私の家族を皆殺しにした。

私も多少は心にダメージを負っていたのだろう。私は怒り狂った。

そして自我が消えそうな時に、目の前にはグリーフシードを私のソウルジェムに押し付けるさつきの姿があった。

「負けるなって言ったのはあんたじゃん!

私を、ひとりにしないで。あの時助けた責任とってよ!」

行き場を失った私はさつきの神社へと引き取られ、その後間もなくさつきの両親は病でいなくなってしまった。

で、今日の今までここにいる。

===

過酷な経験をしたことを明かされて私はすぐに何と切り出せばいいかわかりませんでした。

「さつきはいなくなった両親の遺言を今も大事にしていて、神社を離れる気はないんだ。

だから、本当は神浜へ行く気なんてなかったんだ」

「そんな。じゃあ、私たちがいくら頑張っても神浜に来てくれない」

私が悩んでいるとやちよさんがキクさんへ尋ねました。

「キクさんの家族を襲ったという魔女、退治はされたのかしら」

「いや、その場を収めるためにさつきが札へ魔女を封印して、今もどこかにいるはずだ」

「その場所って、神社の裏にある」

「環、あの神社に魔女がいると知っているのか」

私はキクさんが魔女を倒さずに放置していることに驚きました。

「え、知ってるならなぜ倒さないんですか」

「あの神社に引き取られてからすぐわかったさ。あそこにいる魔女こそ、さつきが封印した、そして私の家族を奪った魔女だ。

でも何度始末しようとしてもさつきに止められたんだ。
”神様に手を上げるんじゃない”だってさ」

「さつきさん、おかしくないですか」

「ああ、あいつは両親を失ってから明らかにおかしくなってる。でも私はどうしてやればいいかわからないんだ。あのさつきに牙を向けられたら、勝ち目はない」

キクさん達が倒せなかった魔女が、あの神社にいる。

その魔女を、今もさつきさんは封印し続けている。

さつきさんが魔女を倒せないのはわかったけど、さつきさんには何があったのだろう。

私が悩んでいると、やちよさんが話を切り出しました。

「キクさん、少し協力してもらえますか」

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-2-9 巫女と4人の少女達

神浜市を出てからはキュゥべえに導かれるがままに目的の魔法少女のもとへと進んでいました。

ういをもとにもどすための能力を持った魔法少女に協力を申し出て、神浜市へ連れていく。

それが今の旅の目的です。

お金をあまり使用しないよう移動には公共交通機関を使用せず、山道を中心に移動を行いました。魔法少女ではあっても睡魔には襲われてしまうので、寝る時は荷物として持ってきていた寝袋を森の中に広げて過ごしていました。

道中、魔女を倒してグリーフシードの補充を行ったりお店で食料の調達をしたりといった日々を送っているうちに想像よりも早く目的地へと辿り着いていました。

その目的地は町はずれの山にあり、長い階段が目の前にありました。

「やっと着いたわね」

「素直に公共交通機関使った方が楽だったかもしれませんね」

「チケットを買うときに年齢確認される可能性があったし、仕方がないわよ」

「キュゥべえ、この階段の上に目的の魔法少女がいるの?」

「そうだ。名前は真境名(まきな)さつき。
彼女は相手の心へ潜入できる能力で巫女としてこの先にある神社で生活しているよ」

「改めて聞くと、とんでもない能力ね」

私達は階段を登っていき、鳥居を3つほどくぐった途端に魔力反応を感じました。

神社の前には巫女服を着てホウキで掃除をしている方がいました。

その方は私たちの方をずっと見ていました。

「魔法少女の方達ですか。

ここらあたりでは見ない顔ですが、ここへ何の御用でしょうか」

早速私は目的を伝えることにしました。

「私は環いろはと言います。
真境名さつきさん、心に潜れるあなたにお願いがあってきました」

「…確かに私は真境名さつきですが、まあいいでしょう」

険しい顔でこちらを見るようになったさつきさんは、キュゥべえが目に入った途端にため息をつきました。

「あなたはまた魔法少女をここへ導いたのですか、キュゥべえ」

「魔法少女をどんどん招き入れているのはキミの方じゃないか。
行き場を失った魔法少女達を保護したいと言い出したのは君の方じゃないか。
嫌なら断ればいい」

なにやら事情があるようです。

「えっと、妹の心に魔女がいるみたいで、さつきさんの能力で心へ潜入してその魔女を倒したいんです」

「その妹さんは?
一緒じゃないの?」

「今は神浜市にいて」

さつきさんはホウキをくるっと回してホウキの柄の部分を地面に力強くつけました。

「私の能力目的だってことは把握したわ。
でも軽く引き受けられるほど簡単な話じゃないわ」

「お願いします!妹を助けたいんです!」

「だったら本気度を示してちょうだい。この神社にはすでに4人の少女をかくまってるの。

彼女達のためにしばらくここに滞在してもらえるかしら。

その日々を観察したのちに協力するか判断させてもらうわ」

私は深呼吸して気持ちを冷静にさせ、やちよさんを見ました。

「ここに少しの間滞在して、いいですかね」

「私は構わないわ」

私はさつきさんの方へ一歩踏み出して伝えました。

「では、しばらくここへ滞在させてもらいます」

「そう。いいわ、じゃあここでしばらくの間生活を共にしてもらうわ。今後何をして欲しいかは、あっちの宿舎に行ってから伝えるわ」

私達は神社の裏側にある二階建ての大きな建物へ案内されました。

そこは民宿と言ってもおかしくないような内装をしていて1階の広間へ移動しました。

そこには3人の少女がいて部屋の掃除をしている最中でした。

「あれ、さつきさん。お客さんですか?」

「そうよ、しばらくの間みんなと暮らすことになる人たちよ」

3人のうち一人が私たちの方に近づいてきました。

「はじめまして。ちかです!よろしくお願いします!」

「うん、よろしくね」

見た目はういくらいで、同い年か下の年齢かもしれません。

他の二人は警戒するような眼差しでこちらを見つめていました。

「え、えーっと」

「なんだ、また新しいやつらを拾ったのか」

振り向くとそこには私たちと同い年くらいの少女が立っていました。そして魔力も感じられました。

「魔法、少女なのね」

「拾ったんじゃないわ。彼女達からここに滞在したいと言い出したのよ」

そうじゃないんだけどなぁ。

魔法少女は私とやちよさんの顔をそれぞれ見た後。

「まあいいや」

「キク、彼女達に個々のルールを教えてあげて。後はソウルジェムの集め方とか」

「なんで、それはさつきの役目だろ」

「わたしはー、まだ外の掃除が終わってないし、お守り作成だってあるしー。
もう少ししたら面会の予約があるし」

「最後のは私も必要だろ・・・。

いいよ、やっておく」

「ありがとー。さすがキク」

私たちに見せてきた怖い顔は何処に行ったのか、キクと呼ばれる魔法少女に向ける顔は自然と出る笑顔で溢れていました。かなり信用し合った仲なのだということが分かりました。

キクさんは私たちの方へ向かい直しました。

「じゃあ、ここの決まりを案内してあげる」

キクさんから受けた説明はこうでした。

料理は当番制。さつきさん以外の人が変わりばんこで担当するものの買い出しは3人の子達が手分けして実施する。

掃除も3人の子達が担当するが、しばらくは私とやちよさんも参加する。

小規模な畑があって季節に合わせて様々な植物を育てている。
時々でいいから世話をして欲しい。

グリーフシード集めは周囲の魔法少女と取り合いになる可能性が高いため、この神社を取り囲むようにある森の内側だけで実施すること。

助けを求められた時に限って外側の魔女退治はしてもいい。

そして私たちには2階の部屋を与えられて予想もしていなかった生活が始まったのです。

早速晩御飯を一緒にすることにしました。

料理は3人で行ったようですが、下処理が少し雑なのか火が通っていない部分があったり魚に内臓が少し残ってて汁が苦くなっていました。

ここで生活するなら、彼女達に料理の仕方を教えたほうがいいかもしれない。
3人は人間とはいえまだ子ども。忌み嫌う必要性はありません。

その日の夜は何も起こることもなく、次の日になりました。

私は顔を洗うために一階へ降りるとキッチンにはキクさんがいて朝食の準備をしていました。

「おはようございます」

「おはよう。あんたも連れと同様起きるのが早いんだな」

「それってやちよさんのことですか」

「そうさ。あいつ料理の仕方であれこれ突っ込んできたんだ。あんなにうるさいなら、料理当番について少し見直したくなるよ」

きっと料理の仕方で指摘したくなっちゃったのでしょう。やちよさんらしいです。

少しリビングを探索しているとやちよさんが玄関からリビングへ入ってきました。

「おはようございます、やちよさん」

「おはよう、いろは」

「あの、何をしていたんですか?」

「外を散策していたのよ。まだこの建物の勝手を知らないし」

「確かに。まだ知らない建物も多いですし」

「いろは、ちょっと」

やちよさんに連れられてついた場所は、表の神社の後側にある建物でした。そこに着くと、私はやちよさんが伝えたいことがすぐにわかりました。

「魔女の気配が微かにしますね」

「そう。きっとこの中にいるんでしょうけど、私たちが立ち入ると何を言われるかわからないわ」

「さりげなく聞くとか」

「向こうから手を出してこない限りは様子を見ましょう。まずはさつきさん達から信用を得ないといけないんだから」

「そうですね」

私達はその場を後にし、住居へと戻りました。

朝食の時には全員が揃ってリビングに揃っていました。そこでさつきさんが食事中に私たちへ話しかけてきました

「今日は二人にも働いてもらうよ」

「働くって、何をすれば良いのでしょう」

「実はこの家と神社の裏には大きい畑があるのだけど」

「朝見てきました。水田もあるのは驚きです」

「そうでしょう?
大昔にここら辺で災害があった時にこの神社へ避難した人たちが生き残るために整備した名残らしいよ。
で、やってもらいたいのはその畑での仕事」

「私たちがやり方を教えるよ!」

小さい子の一人が、確か最初に自分の名前がちかだと自己紹介してきた子です。元気そうに会話へ入り込んできました。

「じゃあ、この朝食に使用されているお野菜は」

「ほとんどがここで取れたものだ。
だが肉や魚、果物、日常品といったものは買わないとどうしようもない。
そのうち買い出しもお願いするかもしれない」

「はい」

買い物か。魔法少女だけになっても、お金は必要になっちゃうのかな。それとも。

食事が終わり、洗い物は私が担当しました。

洗い物をしている最中、一人がずっと私の方を見つめていました。

最後の皿を洗い終わり、手をタオルで拭き終わった後にやっとずっと見ていた少女へ話しかけました。

「何か、気になることでもあった?」

「畑の説明してって、頼まれたから」

そう言って少女は玄関まで小走りで移動して、扉前まで行くと私の方を向いて待っていました。

私はそのまま少女について行って畑へ辿り着きました。

その畑は私が知らない場所にあり、真っ赤になったミニトマトとまだ小さいきゅうり、そして芋の芽と思われるものなどたくさん植えられていました。

「こんなにたくさん」

私は少女からどこに何が植えられているのかを聞き、田んぼの場所まで行くとやちよさんとちかちゃんが既にいました。

「やちよさんも説明を受けていたんですね」

「ええ。でもすごいわね、田植えまで本格的に行っているなんて」

「さあ!まずは雑草取りからやろう!」

畑仕事というのは思った以上に大変でした。

説明を受けながら作業をしているうちにもう日が落ちるような時間になっていたのです。

「もうこんな時間」

「よし、帰ろうか!」

3人目の子は買い物に行っていたらしく、冷蔵庫にはすでに食材が入れられていました。

今晩のご飯を作るのは私が担当でした。

私が料理をするついでに3人へ野菜の切り方など料理の基本となる部分を教えました。

そうやってキッチンが賑わっているとさつきさんとキクさんもキッチンへきました。

「何か賑わってるな。何やってるんだ」

「料理について教えていたんです」

「あらぁ、キクも説明受けたらいいんじゃない?」

「馬鹿にしてるのか!」

「いろはお姉ちゃんいろんなこと知ってるよ!知らないこといっぱい!」

料理中も好評だったようですが、出来上がった料理でもみんなが驚いていました。

「すごく美味しい!」

「料理上手なのね。もう毎日お願いしちゃおうかしら」

「私は構わないですが」

さつきさんも私をほめてくれました。しかし、これは認めてくれたとは違うと思っています。

それから数日間さつきさん達との共同生活が続きます。

畑仕事が中心ではありますが時々は買い物に、時々は魔女退治に行くこともありました。

魔女退治の時は私達は強い方だとキクさんが感心していました。

ここの人たちとの距離は縮まっている感じはします。

しかし今だに神浜へ来てくれる様子はありません。どうすれば来てくれるのだろうか。

 

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-2-8 奇跡を拒絶する紫色の霧

米国大統領によって「アンチマギアプログラム」と呼ばれるものが発表された。その様子を見ていた魔法少女達は自分達が危険な立場にいることを理解したのか、神浜の周囲警戒が強化された。

もとから欄さん含めた一部の魔法少女が行っていた周囲警戒だが、最近はあまり戦闘を好まない魔法少女達も参加するようになっている。

また、怪我人が出た時はどこに運べばいいのかを検討し出したり戦いの訓練を行う魔法少女がいたりと戦いに備えた動きも活発になってきた

そんな状況で戦いはいきなり発生した。

周囲警戒中の魔法少女にどこから飛んできたのかわからない銃弾が命中した。

「このみさん?!」

迂闊に近付いてしまった一緒にいた二人の魔法少女も銃弾に当たってしまい、動かなくなってしまった。

異常が発生したと他の魔法少女が気付いたのは少し時間が経過してこのみたちから定期連絡がないと思った頃だった。

「十七夜さん、このみさん達と連絡が取れません!」

「そうか。他のメンツに何か起きていないか確認をとってくれ」

[都、そっちは無事か]

[十七夜か、こっちでは謎の武装集団と会って交戦中だという知らせがいくつも届いている。

そっちもか]

[こちらは連絡がこない魔法少女が出ている。

ここからは連絡を密に取り合うぞ]

[ああ、危ない状況になっt]

突然、都からのテレパシーが聞こえなくなってしまった。

無事だといいが。

「十七夜さん!

みふゆさん達が攻撃を受けているようです!」

「わかった。今から現場に向かう」

 

鏡屋敷付近に拠点を構える傭兵グループ達にも異変は起きていた。

メンバーの一人がいきなりが意識を失ったかのように動かなくなった。

「おいどうした?!」

「迂闊だ!」

もう一人が様子を確認しようとしたため私はそいつの襟を引っ張って物陰に隠れさせた。

物陰へ引き込んだ瞬間に音速ほどのスピードで弾丸のようなものが飛んでいったように見えた。

「銃弾?!でもあの方向って」

銃弾らしきものが飛んできたのは鏡屋敷と呼ばれる人気のないはずの場所だ。

仲間のうち一人のセルディが持つ透視能力で様子を伺ってもらうと、なんと次々に武装集団が鏡から出てきているという。

「うそだろ、あそこから人間が出てくるなんてあるのかよ」

私は戦場で戦った経験をもとにテレパシーでセルディへ伝えた。

[お前なら透視で敵のいる場所を避けながら移動できるはずだ。

前に私たちと対話してくれた夏目という魔法少女へ状況を伝えて増援を呼んでくれ!]

[でも、レイラ達は]

[誰かが抑えないといけないだろう]

そう会話していると私たちがいる場所へ紫色の煙が溢れるグレネードが投げ込まれた。

地面へ設置した瞬間にグレネードから周囲に紫色の粉末が散布された。

[急げ!]

セルディはどこか納得いかない顔をしながらその場を離れた。

謎の紫色の粉末から逃れるために私たちも急いでその場から離れた

移動した際に起きた風で粉末が不自然な動きをしたのを敵は見逃さず、わたしたちの移動先にも紫色の煙が溢れるグレネードを投げ込んできた。

私たちはその粉末を吸い込んでしまい、どんどん動きが鈍くなっていく感じがした。

「実弾なら死んでいたかも、なのに、奴らは一体…」

 

神浜各地で銃声が聞こえ始めた頃、私のもとに1人の魔法少女が血相を変えて走ってきました。

[あ、あんた夏目ってやつだろ]

[あなたは]

[レイラと一緒にいるやつだと言ってくれればわかるか]

この言葉でレイラさんの仲間の一人だとわかりました。

[急いでついてきてくれ!レイラ達が危ないんだ!]

[武装集団にでも襲われましたか]

[そ、そうだ!しかも鏡から出てきたんだ]

まさか、ミラーズを通って敵が出てきたというの?

外側からだけではなく内側からも来るなんて。

[立ち向かえる人数を揃えます。助けに行くのは少し後になります]

[なるべく急いでくれ!]

私は欄さん、あやめちゃん達へ情報を共有し、神浜市外周で戦っている魔法少女達をサポートしながらも鏡屋敷からも武装した兵士たちが出てきていることを伝えてまわりました。

武装した集団は謎の紫色の物質を放つ道具を使用してわたしたちの動きを鈍らせてくるとのこと。

移動中に私とレイラさんの仲間の1人は武装した兵士に遭遇し、兵士たちが売ってきた銃弾を避けて近接攻撃をしかけました。
その攻撃を防ごうと大楯を持った兵士が前へ出て私の攻撃を受け止めました。
すると武器は盾にあたった部分からどんどん分解されていき、危ないと思って手放した武器は粉々になって消滅してしまいました。

何が起きたのかわからなかった私はその場から逃げるために近くにあった鉄塊を盾に投げつけました。盾に当たった鉄塊は分解されず、盾へ傷をつけていました。

[まさか、魔法にだけ反応するの?!]

[はやく!ここから逃げますよ]

戦ってみてわかりました。きっと神浜へ入り込んだ敵は魔法へ対抗するために特化しているのだろうと。わたしはあやめちゃんたちに合流し、魔法が通じない武器を使用してきたことを伝えました。

「そんなヤバいものを持ち込んでいるのか」

「早くみんなに伝えて回らないとやられちゃうわよ」

レイラさんの仲間の1人は、今すぐにでも鏡屋敷へ向かってほしそうでした。

「私はとにかく鏡屋敷へ向かいます」

そう言って私がその場を離れると、私の後を追ってあやめちゃんが、そしてあやめちゃんを追うようにこのはさんと葉月さんがついてきました。

私たちが移動する道中で出会った魔法少女には魔法が通じない敵がいることを伝えて回り、その情報は次々とテレパシーによって他の魔法少女へと伝わっていきました。

そして、鏡屋敷へ到着してみると、鏡屋敷は紫色の物質で覆われていました。

[レイラ!みんな!]

彼女の問いに応えるものはありませんでした。

[そ、そんな]

[今まで殺された魔法少女はいなかったわ。

囚われていると思って、今は敵を追い払うことに専念しましょう]

「でもあれに魔法通じないんでしょ」

あやめちゃんがそういうと葉月さんが近くにある鋭利な鉄屑を持ち出しました。

「葉月?」

「魔法で生成したものじゃなければいいなら!」

そう言って葉月さんは大楯を持った兵士めがけて鉄屑を投げつけました。

投げつけられた鉄屑は盾ではじかれ、鏡屋敷の床へ突き刺さったようです。

「らちがあかないわね。敵が出現してくるようになってしまったのならば、あの鏡を壊すしかない」

「ちょっと、あれ壊していいものなの?!」

「仕方ないでしょ。
あそこから敵が湧いてくるなら、壊してしまわないと」

建物の中で何かが蠢いたかと思うと遠くから銃弾のようなものが飛んできて一つの蠢くものが動きを止めました。

「あれ、なにが」

[援護するよ、夏目の一派達!]

テレパシーが聞こえた先には三重崎から来たという魔法少女達がいました。

「武装した集団とはあなた達の方が扱いがなれていましたね」

「そこのはぐれものも傭兵なんだろ。わたしたちに協力するよう伝えてくれ。

それと、あんた達は他の魔法少女と協力して壁を大きくひらかせろ!射線が奥まで通らないんだ」

「あら、でもそうしたら敵からもまる見えになるんじゃ」

三重崎の魔法少女は何を言っているんだという目を向けてきながらも遠方から飛んでくる銃弾は止むことがなく一定のリズムで撃ち込まれていた。

私はレイラさんの仲間に問いかけました。

[あなた、名前と何ができるか教えてください]

[…セルディよ。透視ができる]

あの人達にテレパシーで敵兵士の居場所を教えてあげてくれませんか。

彼女たちは銃撃戦に慣れています]

そうテレパシーで会話している間にも建物から数人の敵が出てきました。

[お願いします]

[わかったよ、レイラたちがいると思われるのはあそこだ、あそこだけは狙うなよ]

[わかりました]

私たちは次々と周囲の瓦礫を手に取っては勢いよく鏡屋敷の壁へと投げつけました。

やがて壁には大きな穴が開き、そこから敵が銃を撃ってくることになりましたがこちらも遠距離を行えるようになりました。

「近距離しかできない私たちじゃ手も足も出ないね」

「あの紫色の霧を払わないことには始まらないわ」

外周の戦いにひと段落したみふゆさんたちも合流しましたが皆魔法を使用する武器であるが故に手出しができませんでした。

みふゆさんは手に持った武器で風を起こして紫の霧を払おうとしますが、すぐに紫色の物質が展開され、徐々にその範囲は広げられています。

「この程度の風ではだめですか」

月夜さんと月咲さんが鏡屋敷の中にいる兵士たちを気絶させようと笛を吹き始めますが、その音は魔力がこもっているためか紫色の霧の部分で無効化されてしまいました。

「わたくしたちの力も、及ばずでありますか」

「こんなの、大爆発でも起こさない限り」

そう葉月さんがつぶやくと、鏡屋敷周辺に突然多くの赤い傘が登場し、たくさんの魔法弾が撃ち込まれていきました。

ほとんどの魔法弾は紫色の霧で打ち消されましたが地面に当たった爆風で巻き上げられてはまた新たな爆風で巻き上げられるが続いているうちに鏡屋敷は外観が見えないほど爆風に包まれていきました

こちらには暴風と言えるくらいの風が襲いかかってきて物に捕まっていないと吹き飛ばされてしまいそうでした。

爆風でできた穴に魔法の紙が滑り込み、風を発生させてさらに紫色の霧は離散していって遂には紫色の霧は目に見えないくらい周囲に散ってしまいました。

「全く、ちょっと考えればこうしちゃえばいいってわかるはずなのににゃぁ

「とても非効率であり戦いが長引くのは敵の思う壺である。早期解決が一番だ」

そう言いながら現れたのは里見灯花と柊ねむでした。

「灯花!」

「みふゆはもう少しお勉強が必要かもね~」

セルディさんは灯花ちゃん達へ何か怒鳴るように声をかけていました。

そう、下手したらレイラさん達も吹き飛ばされかねない。

鏡屋敷及び周辺は木材が燃え上がって瓦礫はさらに粉々となって建物内では魔法弾が命中した兵士がいたのか数人の体が吹き飛んで血だらけになっていました。

ミラーズへの出入り口になっていた鏡はというと、割れずに鏡を床にむけて倒れていました。

「でも今です。畳みかけます!」

私達は破壊された鏡屋敷へ走り込み、武装集団を無力化するために動き出しました。

兵士たちは混乱状態なのか照準をうまく合わせられないようで次々と魔法少女に殺されていきました。
大楯を持った兵士も後ろの守りがなくなり、あっけなく背後から刺されてやられていきました。

「割り込ませてもらう!」

「欄さん?!」

外周の敵へ対処していたはずの欄さんが鏡屋敷にいて驚きました。
外周の敵は既に対処がされたのでしょうか。

「作戦中止!外部への避難を最優先で」

司令官と思われる女性を見つけた欄さんは鎖で司令官を拘束し、紫色の物質がこもったグレネードを持ち出そうとする腕を鎌で切り飛ばしてしまいました。

そして鎌を司令官の首元に当てて問いかけました。

「誰の命令だ。米国大統領か、それとも別の何かか」

「誰が、答えるか」

欄さんは司令官の左手に熱の籠った刃を突き刺して今度は司令官が欄さんへ問いかけた。

「お前達こそ、なぜ抗う。

世界にとってどっちの行いが誤っているのか少し考えればわかるはずだ!」

「その『世界』とは、誰目線で言っている?」

しばらく二人が睨み合った後、欄さんは司令官の首をはねてしまいました。

「そもそもの話す土俵が違うってか。話し合う余地なんてありゃしないな」

「欄さん、外周はもういいのですか」

「少なくとも私が担当しているとこはそうだね。時女の一族が引き継いでくれたよ」

今までほとんど動きがなかった時女一族の方々、彼女たちとは交流ができる状況になったのでしょうか。

周囲から人の気配がなくなったころ、みふゆさんが私に尋ねました。

「かこさん、十七夜さんがどこにいるかわかりますか?」

 

私は、生きていく自信が持てる状況ではなかった。

「ももこ、どうしてそうなるまで…」

一度は調整の要領でソウルジェムに干渉できないか考えた。でも一瞬触れてわかった。少しでも変化があると、その魂が壊れてしまいそうなことに。

「ねぇ、もう一度私の名前を呼んでよ。

もう一度、私を抱きしめてよ」

建物の外から人が入ってきた気配がした。

顔を上げると4人の兵士が銃口を向けてきていました。

「大人しく投降すれば痛い思いをせずに済む」

痛い思い?

あなた達に何がわかるの?

私は、もう。

私は知らぬ間にドッペルを出していてそれに驚いた兵士が紫の霧を発生させたり銃弾を撃ち込んできましたが全てドッペルが払い退けてしまいました。

「もう、うんざりなのよ!こんな世界!」

私は世界を壊したいという欲求のままに怒りを周囲にぶつけ、それに呼応するようにドッペルは建物を破壊していきました。

その破壊がガスボンベに直撃したのか、建物は大きな爆発に包まれたのでした。

 

調整屋の方角から爆発する光景が見えたため持ち場を離れて東側から西側まで駆け抜けた。

到着したころには数人の魔法少女が調整屋だった建物を囲んでいた。

皆が調整屋を捜索していると、瓦礫の下からはソウルジェムが割れた八雲と十咎、水波、秋野の遺体が発見された。

一緒に武装した兵士たちの遺体もあったので、争った結果なのだろう。

わたしは他の皆を守るという考えでいっぱいで、八雲の保護まで手が回らなかった。東西の問題を産んでいた人間たちがいなくなって、これからだという時だったのに。

「済まなかったな、八雲。ゆっくり休んでくれ」

神浜は魔法少女達によって人間の進行を退けたが、失ったものも大きかった。

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-2-7 事前準備、全ては後のために

神浜市内は環ういとワルプルガを求めて無用な争いが続いていた。

その様子にうんざりした里見灯花がシェルター内に用意した部屋へ環うい、ワルプルガを密かに隠した。

隠された直後は既に誰かが連れ去ったと騒動になったが、里見灯花が放った言葉で争いは急激に減った。

「あなた達が争いばかりしかしないから、うい達はうんざりしてどっかに行っちゃったよ?

さっさとやめなよ、そんな非生産的な行為」

そんな発言があったすぐの頃は激昂して里見灯花を殺そうと動いた魔法少女もいたが、時間が経つにつれてそんな考えを持つ魔法少女の数は減ってようやくまともに生活できる環境作りの動きが増えてきた。

神浜市内の動きが変わっていく中、私はかこさんから鏡屋敷に突然現れた人物達の話を聞かされた。

日継カレンが生きていたこと

人類に反抗しようとする魔法少女の集団

いずれ魔法少女にとって不利益な出来事が起こること

驚くことばかりで私には情報を整理する必要があった。この話を他の人に話してはいけないと釘は刺されたが、とても1人で抱えきれる話じゃない。こんな話を聞かされて、私には何も。

そう悩んでいる時、ふと黒がある話題を出した。

「魔法少女だけで生活していくっていっても、外の様子知りたいよね」

「そうだよね、外から来た人はみんな殺しては死体を埋めるの繰り返しだし、外が今どう神浜市を見ているかは気になるかも」

外の様子を知ること。

そういえばかこさんからはいずれ神浜の外へ出てやるべきことができるかもしれないと言っていた。

今後のことを考えると、みんなに手伝ってもらった方がいい。

そう思い立ってルームシェアしているみんなにかこさんから聞いた話を聞かせた。

みんなキョトンとした顔をしていた中でカオリが意見を出してきた

「あの、外の様子を知る必要があるならまず電波を拾えるようにしませんか

SNSを使えた方がいいですし、テレビとか見れたらいいなって」

「電力関係は今でも問題だな。生きているアンテナ局や電力に強い魔法少女といえば、思い当たるのが1人しかいないな」

「いろはさんは今不在ですし、誰に頼んだらいいんでしょう」

「・・・悩んで動かないよりは思いつく限り行動した方がいい。まずはみふゆさんにアタックしてみよう」

行動方針が決まったところでカオリには3人連れて神浜市周辺のパトロールを任せ、私含めた4人でみふゆさんに会いにいくことになった。

みふゆさんの行方を聞いて回っているとみふゆさんは竜真館でひなのさんと話をしていた。

竜真館は修復作業がされていると聞いてはいたが、見事に修復がされていた。

私は2人に会いにくるとは意外だと驚かれながらも気にせず里見灯花へ電力や電波について相談したいと話した。

灯花であれば里見グループが使用していた予備電力用の発電機がある場所を知っているはずですが、電波については難しいと思いますよ」

「ああいうのは大きな会社が管理している物で、大規模にSNSを使用するレベルだとサーバーの問題でも難しいんじゃないか?」

「あの子ならすぐ解決できるでしょうが、素直に話を聞いてくれるかどうか」

「みふゆさんの話でも聞いてくれないのですか」

「聞いてくれていたら、ワルプルギスの夜を呼び寄せようとしていたあの事件は起きていませんでしたよ。

まあ、話はしてみましょうか。なぜ必要なのかは、欄さんからお話をお願いできますか」

「わかりました」

みふゆさんとの話がひと段落するとひなのさんが話しかけてきました。

「おまえ最近は夏目かこと一緒に行動しているみたいだが、他人についていくなんて珍しいじゃないか」

「どうでしょうかね。
一緒にいれば有益な存在だとわかったからついていっているだけですよ」

「おまえは忙しいことを嫌うやつじゃなかったか?」

「今だってそうですよ。今後忙しくならないために、今忙しくしているだけです」

私達はみふゆさんと里見灯花がいるという電波望遠鏡跡地に来ました。

電波望遠鏡跡地には里見灯花に柊ねむ、そして意外にも宮尾とはぐむが一緒にいた。

「灯花、少しお話があるのですがいいですか?」

「なに?今忙しいんだからくだらない話だったら許さないんだから」

私は里見灯花へ要件を説明した。

「実は神浜市内でかつてのようにSNSで情報のやり取りをできるようにしたいと言うのと、いろんな場所でテレビを見ることができるように電力の安定化をしたいのです。

なのでまずは発電機がある場所を教えてもらえないでしょうか」

「発電機?それは各地にあるシェルターに生きている発電機をそっちでかき集めれば解決するでしょ?

それに外部の電波を拾って情報を入手するのは今私達が現在進行形で進めている最中だよ」

「それ、みんなが扱えるようにってことですか?」

「そんなわけないじゃん。私達のためだよ」

まあ知っていた。環姉妹以外にはなんの配慮も考えていないのは。

「宮尾達はなぜここにいる?」

「ぼくは罪滅ぼしのため。ぼくのせいでここを壊しちゃったみたいだし。
それに、簡単な機械の修理ならできるから灯花様の手伝いをしている」

「わ、わたしはただの付き添いで」

なるほどな。修理だけならば宮尾に任せる方法もあるか。

さて、里見灯花の方だが。

情報収集できる環境を作っている最中だと言うのはわかりましたが、私たちに共有はしてくれませんか?

2人で考えるよりはみんなで考える方がいいと思いますよ」

「・・・何か情報共有しないといけない理由があるの?
専用のSNS作ったところでメンテナンスするのは私でしょ?いやだよ」

あの話をすれば考え直してくれるだろうか。

今は即答できないな。

わたしはみふゆさんにテレパシーで伝えた。

[出直させてください。ちょっと情報を集める必要が出ました]

[わかりました]

「邪魔してすみません。出直させてもらいます」

「じゃあ暇ならそっちで発電機の問題を解決しておいて?
解決したら教えてよ」

「暇があったらですけどね」

「みふゆはいつだって暇でしょ」

「あのですね・・・」

私は別れ際にみふゆさんに質問をされました。

「最近、鏡屋敷の近くで見知らぬ人物を目撃するようになった話をご存知ですか」

「話には聞いています」

あなた達は独自の動きをしていることを私はすでに知っています。何か判明した話があったら教えてください」

「はい」

知っている事実は確かにある。だがそれは話しちゃいけないことだ。

私はかこさんを見つけ出して仲間に事実を伝えたことを除いて今日起きたことを説明した。

「彼女達に協力してもらえるよう、事実を伝えないか?
彼女達の協力を受けるのとそうではないのとでは状況が大きく変わる」

確かに外部の電波を拾うというのは彼女達に頼んだ方が話は早そうですが。

・・・カレンさんに聞いてみます。少し時間をください」

そういわれてから2日後、魔法少女の溜まり場になりつつある竜真館に突然小型テレビが用意されてそのテレビでは普通に画面へいろんな番組が映るようになったと報告を受けた。

突然テレビが使えるようになったことに多くの魔法少女は驚いていましたが、私はすぐにかこさんへ何があったのかを聞きに行った。

かこさんにそう聞くと

「ちょっと失礼します」

そう言われると突然映像が目の前で映ったかのような感覚に襲われた。そして映し出された映像は日継カレンと対面しているかのような映像だった。

[あの3人組のうちの1人か。それは私自ら会いに行った方が早いかもな]

[カレンさん自らがですか。
ややこしい事態にならなければいいのですが。でも一体どうやって]

[おや、珍しい顔と喋っているじゃないか]

[ミアラが来るとは珍しいじゃないか。今日はどうした]

ここで場面が変わり、ミアラという人物はいなくなっていた。

[したっけいくとするか]

そういうと日継カレンはかこさんの腕を掴んだかと思うとあっという間に中央区の電波塔跡地にいた。

[い、いったいどうやって]

[種明かしは別の機会だ。まずは天才のいる場所へ案内してくれないか]

場面が変わり、里見灯花と日継カレンとで口論が起きていた。

[あなたのせいでういが変わっちゃったんでしょ?!ちゃんと責任取ってよ!]

あれはおまえ達が私たちを消したいという私念を消しきれなかった結果だ。
まさかおまえ達には解決できないとでも言いたいのか]

[あなたね!]

[やめましょう!今日はケンカするためにあったのではないんですから]

再び場面が変わり、かこさん達がいる部屋のモニターには少し前の場面にいたミアラという人物が映っていた。

[大体事情は把握したよ。

電波を拾ってテレビを見られる環境を作るのはいいけど、SNSの作成は嫌だからね。

お姉様に頼まれない限りあんな面倒なものの管理はごめんだよ]

[やれやれ。今回通信用に渡したその魔法道具は好きに解析してもらって構わない。
その方が新しい発見がありそうだからね]

[くふふ。思いっきり驚かせてあげるんだから]

[これでいいだろう、夏目かこ]

そこで映像は終わった。

どうやら何分もみていたような映像は現実では数秒の出来事になるくらいの体験だったらしい。

「いまのはいったい」

「頭痛とかしないですか?

実はイメージの共有というものを教わっていて、言葉よりも今のようにイメージを伝えた方が早い場合に便利だと聞いて試したのですが」

なんてとんでもないことを。

便利なのはわかるが、いや、私も覚えた方が今後楽なのか?

「かこさん、この技って」

そう話している時、黒からテレパシーが飛んできた。

[欄さん!急いで竜真館へ来てください!

テレビで魔法少女の話が!]

そう聞いて私はかこさんと一緒に竜真館へと急いだ。

たくさんの魔法少女が取り囲む中、テレビでは神浜の皆がドッペルを出して暴れている様子や、今後魔法少女を拘束する、生み出させないとする政策が世界中で実施される話がされていた。

「なるほど、これが人へ抵抗する理由ですか」

世界が魔法少女にとって生きづらい世界となってしまうことを日継カレン達は知っていた。

そんな話を聞かされて事前に行動したからこそ、この情報は多くの魔法少女の目に止めることができた。

きっといつも以上に神浜周辺を警戒する必要は出てくるだろうが、神浜マギアユニオンのメンバーも、神浜市にいる魔法少女達も疑問なく参加してくれるようになるだろう。

そう考えると、今後起こるであろう忙しさは軽減できた結果じゃないだろうか。

「もっと大変なことになるんだろうな、やれやれ」

 

 

これはついでだが、いずれやろうとしていたことだ。

米軍基地への攻撃合図

これを伝える適役は、神浜にいる魔法少女でなければ誰でもいいのだが、ちょうどよく気になっていた人物がいる。

宝崎市と呼ばれる神浜市の隣町。

ここには魔法少女を世間に広めようとした人間が住んでいた家がある。そこには今、2人の魔法少女しか住んでいないという。

どこに住んでいるのか探していると夜になってしまったが、かつて出会った時の魔力を頼りについに辿り着くことができた。

「里見・・・か。なんでまた天才と同じ苗字の家に」

そう呟いていると、家の中から慌ただしく出てきた魔法少女と、その行動を必死に止めようとする魔法少女が出てきた。

「那由多様、あなたの性格は十分に知っていますが今神浜へ行ったところで」

「ええ、神浜市が大災害に見舞われた後に神浜市へ行きましたが、パパはまだ生きているかもしれません!

だから…ってどうしましたのラビさん」

「あなた、なぜここに」

ラビと呼ばれる魔法少女と那由多という魔法少女はそれぞれ違った表情で私の方を見た。

那由多はキョトンとした顔を向けていて、ラビの方は敵を見つけたかのような顔をしていた。

「取り込み中だったかな?ちょっと用があるんだが」

「・・・那由多様、家の中で待っていてもらえますか」

「えっ!あ・・・はい」

那由多に聞き耳を立てられていると知っている状況で、私とラビは家から少し離れた人気のない場所で話し始めた。

「あの時以来でしょうか。ピュエラケアのメンバーと、私の仲間を殺した、あの時」

「黙ってみていればいいだけだった話だ。変に庇うから2人も仲間を失った」

「いずれ死ぬ運命とはいえ、あの別れ方は望んだ物ではない。
なぜ今になって現れたの」

「確認のためさ。

まだお前は、魔法少女は救われないと諦め続けているのか」

「・・・魔法少女がいくら争ったところで、見えない力でどうせ失敗する。

そう宇宙の法則が決まっているのだから」

氷室ラビ

一度は魔法少女と人が共存することを目指したものの、謎の力でどんな行動も裏目に出て魔法少女を排除する動きを活発化させる結果を作った。

その過程や結果を経て氷室ラビとその仲間は魔法少女の未来に諦めを覚えた。

でもどこかで「もしかしたら」という諦めきれない気持ちもある。

失礼だが、中途半端という言葉が当てはまるか。

「その謎の力へ抗えるよう、動く気はないか?」

「今更何をするというの。

神浜市から人が消えたところで、世界的に注目されればすぐに潰されてしまうでしょう」

「人類に魔法少女が争い、人類中心の世界を破壊する。

その前段階としてお前には情報伝達役を担って欲しい」

「断るわ。私は傍観することしか」

私はラビがつけている指輪に向けて刃を向けた。

「そんなに希望を抱けないというならば、今ここでお前の希望を終わらせてやる!」

「そこまでですわ!」

ずっと立ち聞きしていた那由多が魔法少女姿で私に武器を向けて現れた。

「こいつはあらゆることを諦めかけている。そしていずれ魔法少女が存在すること自体も。

それを知って出てきたのか」

「私は何も知りませんわ。

ただ知っているのは、ラビさんが大事な家族だということだけ。

家族を傷つけられようとする現場を黙ってみているわけにはいきませんわ!」

「では、私がこいつに頼もうとしたことを里見那由多、お前が引き受けるというならば私は危害を加えない。

引き受けないならば、大事な家族とはさよならだ」

「いいでしょう!私が引き受けます」

「ちょっと那由多様!」

私は刃をしまって那由多の方へ向き直った。

「ではまずは住処を神浜市へ移動してくれないか。そして夏目かこ、欄という人物のことを知るんだ」

「もともと神浜市へは行こうとしてはいましたが、そのお二人のことを知ることだけですか?」

「いや、時期が来たらこの魔法石から出る指示に従って夏目かこ、欄へ情報を伝えるんだ」

そう言って私は通信用の魔法石を那由多へと渡した。

「そいつはこちらから一方的にしか通信できないものだ。こちらを呼び出したり魔力の逆探知はできないから気をつけろよ」

「他に気をつけるべきことはありますか」

「そうだな。死ぬんじゃないってことかな。
時期が来るまでに死んでもらうと頼んだ意味がないからね」

「それだけ、ですか」

「したっけ、頼んだよ」

私は立ち去る前に氷室ラビの方を見た。彼女はうつむいたままで顔を上げる様子がなかった。

「一人で勝手に諦めるのはいいが、お前を大事に思ってくれる希望を持った奴がいる。
そいつを置いていくような行為が正しいのかは、認識を改めた方がいい」

さて、せっかく日本の土地まで来ているんだ。

戻るのはオーストラリアの隠れ家でいいか。

私はフィラデルフィアのコイルを使用してその場を後にした。

 

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-2-6 かつて助けようとした人を倒すように

イメージとして流れた光景の場所に行くと、確かに魔法少女が囚われていました。

囚われた魔法少女たちの体は傷がついていたもののピクリとも動きはせず、近くには謎のアタッシュケースが置いてありました。

そんな囚われた魔法少女を守るように二人の兵士が2人姿勢を低くして、銃を構えながら待機していました。少し離れた場所に1人いることも確認できました。

「どういうことなの」

「助けるんだろ、何があってああなったか知らないけどさ。
あいつらはヤバい奴らだってことは見りゃわかる」

「さてどうやって助けようかしら」

「相手が魔女の時のように、やればいいと思いますよ。
私たちには幸、躊躇する気持ちがないですから」

ほむらちゃんが大きめの銃を構えると、遠くにいる兵士たちになぜか私たちは発見されてしまいました。

兵士たちは落ち着いた様子で、紫色の煙を放つ筒を銃器でこちらに撃ち込んできました。

「私が突破口を開きます!その間に救出を!」

そういうと少し時が止まった感覚の後に、こちらに撃ち込まれた紫色の煙を放つ筒は進行経路からかけ離れた方向へ銃弾によって弾き飛ばされ、囚われた魔法少女の近くにいた兵士は銃弾で死んでしまっていました。

「みんな、今よ!」

マミさんの声を合図に私達は急いで囚われた魔法少女たちの元へと向かいました。

「近づかせるかよ!」

そう言って物陰にいた兵士がこちらへ発砲してきました。

マミさんは銃で、さやかちゃんは剣で銃弾を跳ね返そうとしますが、そのどちらも兵士が撃った銃弾に打ち負けて危うく2人に銃弾が当たってしまうところでした。

「な、なんで?!」

「っ?!相手にせず救助優先にしましょう!」

「っていっても」

どこからともなく増援に来た兵士たちはこちらを蜂の巣にしようとする勢いで銃弾をばら撒いてきました。

ほむらちゃんは兵士たちを倒そうとしてくれてはいますが、兵士たちはほむらちゃんの射線に入らない位置でこちらに銃口を向けてきます。

私達は一旦、瓦礫に身を潜めるしかありませんでした。

「こんなの魔女より厳しいよ」

兵士たちは隙が無いよう順番にリロードを行い、私たちには手出しするタイミングが見つかりませんでした。

「ならこれで!」

マミさんはリボンで相手を拘束しようとしますが、銃弾で撃ち抜かれたリボンは力無く崩れていきました。

「まさか、魔法が効かない?!」

「打つ手なしかよ!」

ほむらちゃんが撃てる場所へ移動を開始した頃、私は瓦礫から飛び出しました。

「鹿目さん?!」

私は弓矢を空に放ち、兵士が数人集まっている場所に魔法の矢が降り注ぎました。

兵士たちが戸惑い始めたらすぐにほむらちゃんが銃で他のところにいた兵士たちを倒して行きました。

「無茶するじゃないの」

「まったく、でも助かったわ。早く救出を」

私は殺気を感じました。

その方向を振り向くと生きていた兵士が銃口を向けて引き金を弾こうとしているところでした。

まどか!

ほむらちゃんの私の名前を叫ぶ声が聞こえたかと思ったら、その兵士の腕が何かによって切り裂かれ、その後は鎖で頭が貫かれて絶命しました。

「詰めが甘い。魔女相手でもそうなのか?」

声がした方向へ向くと、そこには初めて黒いオーラを纏った魔法少女と遭遇した時に一緒だった魔法少女と他魔法少女数人がいました。

「確か欄さんと、黒さん?」

「久しいね、見滝原の魔法少女。

話している暇が惜しい。そこの動かない魔法少女たちの体とソウルジェムを持って中央区に行ってくれ。

そこが一応の避難所になっているようだ」

「わ、わかったわ。ありがとう」

「暁美さん、またあとでね」

「え、ええ・・」

ほむらちゃんに挨拶を済ませた黒さんは、嵐のように去っていった欄さんたちの方へ去って行ってしまいました。

「・・・さあみんな、急ぎましょう」

魔法少女の近くにあったアタッシュケースを開くと、そこには謎の紫色の液体に漬けられたソウルジェムが入っていました。その数は、近くにいた魔法少女たちの体の数と一緒でした。

「このアタッシュケース、どうやらこの人達のソウルジェムを入れていたようです。でもこの液体って」

「考えるのは後よ。みんなを連れて中央区へ行きましょ」

私達はソウルジェムが収められたアタッシュケースと魔法少女たちの体を背負って中央区へと向かいました。

私達が元電波塔があった付近に到着するとそこにはたくさんの魔法少女たちがいました。

負傷した魔法少女からまったく意識がない魔法少女、手当てをする魔法少女に忙しなく外に気を向ける魔法少女。

そんな中に私達は侵入したのです。

「あなた達、その意識がない3人を助け出してくれたの?」

「え、ええ」

「このみにつむぎ!よかった、無事だったんだ。助けてくれてありがとう!」

周囲には寝たままの魔法少女と怪我を負って治療を受けている魔法少女がたくさんいました。

「あなた達、まだ動けそうよね。
周囲に潜伏している敵がいないか調べて回ってくれないかしら」

急に話が進み、私達は状況を理解できていませんでした。

「あの、まずは神浜市に何が起こったか説明してもらえるかしら」

「私たちにとっても急な出来事なんだ。

神浜市の周辺地域と果てなしのミラーズから、少人数だけど武装した人たちが侵入してきたのよ。

その人達は魔法少女の動きを止める紫色の物質を使って私たちを殺すのではなく捕獲を開始した。

あなた達が助けてくれた子達は、奇襲を受けて囚われた子達だったのよ」

「あの米国大統領の演説がきっかけかしら」

「きっかけなんてどうでもいいよ。
今わかっているのは抵抗しないとみんな捕まっちゃうってこと。

周囲警戒、お願いできないかしら」

「あっそうだ。これ、その魔法少女達のソウルジェムが入っているアタッシュケースです」

「なにそれ、そんなことされちゃってたのこの子達」

アタッシュケースの中身を見て、助けた魔法少女の仲間と思える子たちは困惑した様子でした。

「この紫色の液体、もしかすると、だよね」

「そうだね、取り出すときは触れないよう気を付けないと。このみ達、目を覚ましてくれるかな」

「あの紫色の液体や粉末って一体何なんでしょう」

「近づかない、触れないほうがいいのは確かよ。あれに触れるとほとんどの魔法少女は動けなくなるか意識を失っちゃうみたいだし」

 

私達は武装した兵士が攻撃を仕掛けてこないか監視を行うことになりました。

マミさんは周囲の監視を行うとともに避難所になっている場所を観察していました。

粗末な布ではありますが、人が4人ほど寝られるスペースのあるテントを4カ所も設置していて、瓦礫等で外部から直接監視が行えないようバリケードが張られています。

「すごいわね、こちらが襲われるなんて想像もできなかったはずなのにここまで準備が行えているなんて」

「そうですよね。
まさか、こうなることを知っていた魔法少女がいたりして」

「さやか、んなわけないだろ」

雑談ができるほど周囲は静かで、時々果てなしのミラーズがある東側で爆発音が鳴り響くだけでした。

しばらくすると西側で大きな爆発音が鳴り、一部の魔法少女達が慌ただしく西側に移動していきました。

「何かあったのかな」

「あそこって、調整屋さんがあった場所じゃ」

「・・・気にはなるけどあとで知ってる人に話を聞きましょ」

それから何が起こることもなく日が沈む頃、神浜内の戦いは落ち着いていました。

「兵士の人達、みんな帰っちゃったのかな」

「どうでしょうね」

後で聞いた話ですが、西側で大きな爆発音があった場所へ向かった魔法少女によると調整屋さんの建物は破壊され、そこから調整屋さんの遺体が発見されたそうです。

神浜にいた魔法少女で連れ去られる魔法少女はいなかったものの、死亡者は出てしまいました。

謎の武装した兵士たちが突然襲撃してきたこの出来事を経験し、私達は今後人と争わないといけないのだということ、今後死んでしまう魔法少女が出てしまうことを考えると、悲しい気持ちになってしまうのでした。

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-2-4 鏡の向こうは疑わしき事実

いろはさん達が神浜を発ってから1週間程度が過ぎようとしています。

神浜周辺では私たちが中心となってあらゆる人間が侵入しないよう神浜の周囲を偵察して回っています。
もし内部へ来るようなそぶりがあれば、容赦なく危害を加える。
そうして、神浜内に人間が入り込まないように努めてきました。

しかし神浜内部はというと。

1週間でういちゃんの側にいるワルプルガさんを狙った戦いが何度も発生しました。

いろはさん達が神浜を発った後、真っ先にワルプルガさんを連れ去ろうとしたのは二木市の魔法少女達でした。

ういちゃんの周囲には誰かしらういちゃんを守るよう他の魔法少女が待機していたようで、ういちゃんがすぐに連れていかれると言ったことはありませんでしたが争いの規模は大きなものでした。

ういちゃんとワルプルガさんが滞在していたみかづき荘へ二木市の魔法少女が奇襲し、2人を瞬時に連れ去ろうとしました。

しかし、見張っていた魔法少女に見つかって互いに実力行使に移り始めました。

「あなた達、どうしてそこまで強硬手段に出るのよ!」

「神浜のお前たちに怒りをぶつけないと気が済まないんだよ!」

「お前たち意味わからないよ、まじで!」

 

遠くから戦況を眺めていると、ういちゃんとワルプルガさんを連れ去るという目的はどこに行ってしまったのか。

二木市の魔法少女達は戦いを楽しんでいました。

それに釣られるように、護衛でいた魔法少女達も戦うことに夢中になっていました。

ういちゃん達を連れ去ることが口実となって争うきっかけが作られては戦い合うといった行為が続くばかり。

この戦いに無関係で好戦的な魔法少女も混ざるようになってきました。その中には、見知らぬ魔法少女も数人。

幸いにもいまだに死者はいません。戦うよりも優先すべきことはあるというのに、みんな何をやっているのか。

ういちゃん達にはひなのさん達がなんとか説得して、元里美メディカルセンターの地下に滞在してもらうことになりました。

ういちゃん達に危害が加わることは無くなったと思いますが、二木市の魔法少女を中心とした不毛な争いは続きそうです。彼女たちについては、本当に何とかしなければ。

それとは別に気になることが。

 

「果てなしのミラーズから見知らぬ魔法少女が?」

「実際に見に行ってみたけど、最近目にしてきた魔法少女とは全く別だった。

結界内のコピーが外に出てきた、なんて考えたくはないけど」

「調べる必要はありそうよ」

見知らぬ魔法少女が増えてその調査をしていると、ミラーズから出てきていることが判明しました。
もちろん直接神浜の外からやってきた魔法少女もいますが、葉月さんがミラーズから出てくる魔法少女を目撃したのです。

私はミラーズで何が起きているのか把握するために葉月さん、このはさん、あやめちゃんと一緒にミラーズから出てきた魔法少女を訪ねることにしました。

訪ねる対象の魔法少女は5人組で、私達を見つけると彼女達は武器を構えてこちらを警戒していました

「戦う気はありません。
あなた達がどこからきたか教えてもらえませんか」

相手は難しそうな顔をして答えてくれませんでした。

相手の顔立ちは中東の番組で見たことがある外人。

もしかしてと思い、テレパシーで再度呼びかけました。

[あなた達がどこからきたか教えてもらえませんか]

[うわ!て、テレパシーで話しかけてきた。その手があったか]

相手は言葉が通じる方法を目の当たりにして勝手に盛り上がっていました。

[あのう]

[ああ、どこからきたかでしたっけ。

私達はアフガニスタンから来ていて、安全な地を求めていたらここが良いと聞いたので]

[聞いたって、誰からですか]

[具体的な組織名はないようですが、ミアラという人物を中心とする魔法少女の集まりに属する方でした

あいつらがいないととっくに私達傭兵として使い潰されていたよ]

[傭兵…]

もっと話を聞いてみると、彼女達は中東の争いの中で傭兵として戦わせるため、人間に無理やり魔法少女になるよう強いられた方々でした。

戦争地域では珍しいことではなく、たくさんの魔法少女が傭兵に紛れて紛争に参加していたようです。

家族が殺されて行き場を失い、生きる希望を失いかけている中、見知らぬ魔法少女達に助けてもらったから今生きているとのこと。

そして安全な場所を求めると、とある廃墟に現れた鏡をくぐるといいと伝えられたと同時に。

「そこでは魔女化せずに生きられる。今よりは平和に暮らせるだろう」

「魔女にならない?!そんな夢みたいなエデンが存在するのか!」

「もう私達、怯えて暮らさなくていいのね!」

そして鏡をくぐり、今に至るとのことです。

突如現れた鏡…

[よければでいいのですが、通ってきた鏡がどこにあるか教えてもらえますか?]

[いいけど、向こうには行かない方がいいよ。まあ、そんなに行きたいってんなら案内はしてやるよ]

[ありがとうございます。では、お互いを知るために1人でもいいので名前を教えてくれませんか。
私は夏目かこと言います]

[レイラだ。みんなをまとめている立場だ。案内する代わりに食料を分けてくれないか。

誰かに話しかけようとしてもみんな怖がって話も聞いてくれないんだ]

私達は2日間、レイラさん達へ渡す食料調達に専念しました。

とはいえ拾えるのはコンビニやスーパー跡地に散乱したものくらいで、魔法少女による自給自足はいまだにできていません。

そんな食料調達中にも見慣れない魔法少女がミラーズから出てくることがあり、調査を急がなければいけない状況でした。

レイラさん達に十分な食料を渡したことで交渉が成立し、私達はレイラさんに連れられてレイラさん達が使用したという鏡の場所まで進みました。

果てなしのミラーズを10階層ほど進み、コピー達の群れを過ぎると2枚ほど鏡が案内された場所にありました。

[もう一枚?!来た時は1枚だけだったのに]

[あの、使用した鏡が残っているということは、この先にはレイラさん達がいた場所に繋がっているということですよね]

[出発する前にも言ったけど、行かない方がいいよ]

そうは言われましたが、私は鏡の中へ脚を踏み入れました。

「かこ?!」

「ちょっと、何やってるの!」

あやめちゃん達の静止しようとする声を顧みず鏡の先へと進むと、そこはたくさんの鏡が並んでいる暗い空間でした。

周囲にはわかる範囲で20枚以上の鏡が並んでいました。

私が周囲を見渡すためにその場でじっとしているとこのはさんたちも鏡から出てきました。

[ここ、私たちが入ってきた場所と違う]

「freeze!」

声のした方向を向くとそこには見慣れない少女が3人いて1人は銃をむけていました。

私達は武器を構えて相手の様子を伺いました。

3人は顔を見合わせて何かを話し合った後、テレパシーで語りかけてきました。

[お前達、私の言葉は理解できるか。
理解できるならば武器をしまってこちらに来い]

[武器をしまうことはできません。あなた達が私達を殺さないとは限りません]

[・・・そうか。ならばついてくるだけでいい。

ついてくることさえ拒むならば今ここでお前達を殺すしかなくなる

そう言われて私達は彼女達について行くことにしました。

見知らぬ魔法少女、それに海外の子。

周囲からはたくさんの魔法少女の反応があり、ここは魔法少女が集まる何かの施設である可能性がある。

私達は意識せず空港にあるような金属探知を行うゲートを潜りましたが、特に何があるわけでもありませんでした。

[ふぅ、どうやら生粋の魔法少女だったようだね。

もしかして、神浜から来たって子いる?]

[私達が、そうですが]

[そうか!ならばこっちに来てくれ。

会わせたい人がいるんだ]

話を聞くと、どうやらあのゲートはコピー体だったら警報が鳴る仕組みだったようです。コピーかどうかを識別できるなんて。

[あの鏡の部屋が何なのかって?
世界中で突然出現したという謎の鏡を回収しているうちにあんなに集まったんだ]

[あんなに、ミラーズの鏡が。しかも世界中にだなんて]

[そのミラーズとやらは神浜の魔法少女が詳しいんだろ?

カレンに聞いても神浜の魔法少女に聞いた方が早いっていうから全然進展がなかったんだよ]

[…そのカレンさんですが]

「あら、ここに来るのがあなただったとは、

夏目かこさん」

聞き覚えのある方を向くと、そこには行方不明になっていたはずのカレンさんがいました。

「どうして、生きているの」

しばらくその場が沈黙した後、カレンさんが話し始めました。

実はこの後に控えている作戦に神浜とつながる鏡を利用したいんだ

[そこで、ミラーズの情報を集めようと鏡を見つけた頃から研究が進められてきたんだが、コピーと本物を見破る技術ばかりしか進展しなくてさ。あたしらは困り果てていたんだ]

突然話に入り込んできた魔法少女は左目にモノクルをつけていました。

[割り込むなミシェル、話の途中だ]

変に騒ぎを起こさないために、私はこのはさん達に意識共有を図りました。

[…穏便に対処しましょう。ここは私たちにとってアウェーです]

[そうね。今は相手の話に合わせましょう]

「気になることはたくさんあるけど、貴方達、技術力が高そうだし直接結界に入って調査したりしないの?」

「ん?特定の少人数で結界内部の調査を行っている。とはいえ、無闇に結界内へ侵入した調査は控えている」

「なぜ?」

「鏡を破壊されると詰むからだ。

神浜の魔法少女は大元と言える大きな鏡を通して内部と行き来しているが、我々は小さな、しかもいつ消えるかわからない出入り口を使用しないといけない。

消えるものなのかどうかも含めて、私たちには情報が少ない。知っていることをミシェル達に教えてくれないか」

このはさん達はミシェルさんへミラーズについての説明を、レイラさんは知らない間に地元の人を見つけて地元トークをしていました。

そして私は、カレンさんにここがどこなのか話を聞いていました。

「ここは人類に反抗する魔法少女の溜まり場だ」

「人類に反抗?」

「お前達神浜の魔法少女ならば、人類の愚かさを理解しているだろう」

「貴方達のせいですけどね」

「あれは必要なことだった。近々人類を平気に手をかけられるようになっていなければ、

魔法少女が人類に支配されるような事態が起こる」

「なんですかそれ、誰かの予言ですか」

「いや事実だ」

そんなことがあるのだろうか。

嘘か真かどっちが実現したら大きな被害が被られるかを考えると、信じた方がいいかもしれない。

「わかりました。その話、信じてみます」

「理解が早くて助かるよ。

日本にいる魔法少女は皆神浜へ集めておけ。数日後それがなぜかわかる」

「詳しくは教えてくれないんですね。

私達は何か協力できないでしょうか」

「そうだね。

北と南にある米軍の駐屯地をとあるタイミングで無力化してくれれば嬉しいかな。

でも実行にはまだ早い。その時になったら合図を送るから、その時まで情報収集に努めてくれ」

「あなたが出てきたら騒ぎになりますよ」

「そんなのわかってる。別の魔法少女さ」

「かこ〜、まだ話してるの?」

どうやらあやめちゃん達の方の話が終わったようで、私達は神浜へ戻ることにしました。

[いいかい、君たち神浜の魔法少女は魔法少女だけで生きていく点では初心者だ

生き残ることに専念しなよ]

そう施設にいる魔法少女から忠告を受けて、来た時と同じメンバーで神浜へ戻りました。

ミラーズから出た後、私はみなさんへ今日あった出来事は信頼できる人以外には他言無用であることを伝えました。

[私は仲間に秘密にしておくよ。おしゃべりな奴がいてね、すぐにペラペラ話しそうだ]

[そうですか。レイラさん、今回はありがとうございました]

[あんた達の助けになったなら嬉しいよ。後、時々食料分けてもらえるとありがたいよ]

「その一言なければいい人なのに」

カレンさんが生きていたこと、そしてあの施設で見聞きしたことは欄さんにのみ共有しました。

今後起きようとしていること、人類が魔法少女を支配しようとしているとはどういうことなのか。

私達は思った以上に早くその言葉の意味を知ることになったのです

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-2-3 全員が納得いく答えなんて話し合っても出るわけないだろ!

ういがおかしくなったのは、魔女によるものだというのは、感じ取った魔力で考えた推測でしかありませんでした。

でも、クレメルが出した答えによってういを助ける方法について一歩前進しました。

次に考えるべきは、他人のソウルジェム、魂に侵入する術が存在するのかということ。

調整屋さんの調整する力はソウルジェムに干渉していたけど、他人も干渉させることができなければ意味がないと思う。

だから私は、魔法少女を一番知っているであろう存在に助けを求めることにしました。

その存在は。

「魂に干渉できる魔法少女か。心当たりがないわけでは無い」

「ほんとう!?」

「でも神浜からは離れた場所にいる存在だ。なんなら、僕が直接彼女の元へ案内してもいいだろう」

協力に申し出たキュウべぇに対してやちよさんは疑念を持っていました。

「やけに協力的ね。何か企んでいるの?」

「事情が変わってきていてね、ぼくたちは君たち魔法少女に協力的な姿勢を取ることにした」

「いったい何があったのやら」

「じゃあ、後日案内をお願いできる?
案内してほしいときに声をかけるから」

「わかった」

まさかキュウべぇから協力するという発言が出るとは思いませんでした。

私たちの知らないところで何かが起こっているようですが、うい助け出せると約束できるところには到達できそうです。

あとは、神浜にいるみんなに説明を行うだけ。

神浜の全体に放送を行う機能は失われており、神浜の魔法少女達にお願いをして口伝えで翌朝に電波塔があった場所で今後の方針を話すと伝えていきました。

肝心のpromisdbloodのメンバーへは私が直接伝えにいきました。

歓迎はされなかったものの、説明には顔を出してくれると約束してくれました。

 

夜が明け、電波塔跡地には見慣れた魔法少女から見慣れない魔法少女までたくさん集まっていました。

「こんなにたくさんいたなんて」

「いろはさん、緊張、してますよね」

していないと言えば嘘になるけど、深呼吸をして私は気持ちを整えました。

「ううん、大丈夫」

私はみんなの前に出て今後の活動について話を始めました。

その内容を要約すると以下のような内容となります。

現在魔法少女が魔女化しないシステム、自動浄化システムは環ういが自動浄化システムを拡げる鍵であるワルプルガさんを拘束中のため、すぐに世界中へ自動浄化システムを広げられません。

環ういは魔女に取り憑かれている状態で、正気に戻すためには魔女を討伐しなければなりません。

しかしその魔女は環ういのソウルジェム内に潜んでいます。

ういのソウルジェムへ干渉し、魔女を倒すために私はソウルジェムへ干渉することを可能にしてくれる魔法少女を連れてきます。

少し時間はかかってしまいますが、少しの辛抱を皆さんにお願いしたいのです。

自動浄化システム以外にも、私達には人間に頼らない魔法少女だけの生活を模索していかなくてはなりません。

外部の人間へ助けを求めても、私たちを助けてくれることはないでしょう。

魔法少女だけで生きていくための方法を、みんなと考えていきたいと思います。

私はリーダーを務めることができる器は持っていません。

だからみなさん私を手伝ってください。私に協力してください!

どうか、お願いします。

話したいことを話し終えると、神浜では見たことがない魔法少女が話し始めました。

「気に入らないな、あんたの意見」

「あなたは」

やちよさんの問いに答えた彼女は、三重崎のツバキだと答えました。

「私の意見に反論があるのはかまいません。

でも、ういを傷つけるような反論であれば私は許しません」

「変に先読みするんじゃないよ。自動浄化システムの事情には概ね理解したし、あんたらに任せるよ。

それとは別に、なんだよリーダーにふさわしくないって。
リーダー面して語っておいてそんなこと言いだすんじゃねぇ!

そんなことを言うってんなら、リーダーらしい奴がちゃんとリーダーにつくべきじゃねぇか」

「それは私も同意ね」

ツバキさんの話に結菜さんが乗り掛かってきました。

大勢の千差万別の意見をまとめ上げて最善の答えを出すためにはそれを担うリーダーが必要不可欠。

リーダーなき組織はただただ統率の取れていない有象無象になりかけかねないわ」

結菜さんは話の途中で棍棒を取り出し、地面に棍棒の先を力強く突き刺しました。

皆がびっくりする中、結菜さんは話を続けます。

「環いろは、前に伝えたわよね?

皆を率いていくことができないなら私が代わりに引き受けると。

なんなら今あなたをここで倒してあげようか?」

「お、リーダー決定戦でもやるのか?

なら私にも参加させてくれよ」

「ちょっとあんた達、そう言う話になってなかったでしょ!」

荒らそうとして騒ごうとする者、そんな者達を止めようと怒鳴り立てる者達。

私は周囲の声が聞こえなくなるほどに意識が闇に沈んでいき、ドッペルを着込んで荒らそうとする者達を包帯で拘束しました。

その様子を見て、周囲が一時的に鎮まりかえります。

「なんだ、この力は」

「そうやって争おうとするからリーダーを決めたくないんですよ。

人間はリーダーになることを目的として、本当はリーダーになってまで何をしたいのかを忘れてただ争いに勝つことを優先していました。

リーダーが決まれば気に食わないと言って、自分がリーダーにふさわしいとまた争いを始める。

そんな争いの素になるなら、リーダーなんて決めないのが正しいんですよ。

誰がリーダーになったって、みんな不満は絶対持つでしょう?

それを押し殺して従っていくなんて人間臭い思考、もうやめませんか?

わかりませんか?

だからみんなに協力をお願いしているんですよ。

みんなで納得できる形にするために」

結菜さんでもツバキさんでもない他の拘束された魔法少女が叫ぶように話し出しました。

「全員が納得いく答えなんて話し合っても出るわけないだろ!

何も手伝わない奴が食い物とグリーフシードだけは寄越せという一点張りの意見しか無かったら、そいつには与えるだけで他の奴がそいつのためにせっせと動かないといけないのか。

そんな状態に不満を持たない奴なんていないだろ!

あんたの話すことは理想だけで現実に合ってないんだよ!」

「何も手伝わないという人、本当に心から思ってそういうのでしょうか」

「そうに決まってんだろ!世間見りゃあそうだろ」

私はその魔法少女をキツく締め付けて私の目の前まで寄せ付けました。

そして相手の目を見ながら言いつけました。

「なんで決めつけるんです?なんで相手に寄り添ってあげないのですか?

あなたがそういう目に会ってきたというなら、そういうことがなくなるようにみんなと頑張ってみませんか?

みんな、あなたが思い込んでいるより優しいですよ」

相手の魔法少女は絶句して何も言いだしませんでした。

私は拘束していた全員を解放し、着込んだドッペルを解除しました。

「私からの話は以上です。

2日後に神浜を出発しようと思うので、用がある方はその間に声をかけてください。

では、よろしくお願いします」

しばらくみんなはその場から動きませんでしたが、次々と自分達の行動を再開しました。

「あの、道場を修復したいのですがエミリーさん達も手伝ってくれませんか?」

「もちいいけど、あそこまだ使う気?」

「私にとって思い入れのある場所です。だから直したいんです」

みんなが今後の話を進めていく中、私は十七夜さんとひなのさんに声をかけました。

そして、不在の間は神浜をお願いしたいと伝えました。

「皆の状況を見守るのは今までと変わらない。喜んで承ろう」

神浜から人は消えて西と東という区別は不要になったと思います。

それでも西、南、東と管轄を分けますか?」

「確かにもう関係はない。だが東側は私たちにとって思い入れのある場所だ。

私は東側を優先に管理したい」

「なら、私は西と南を見て回るとするか。やちよさんだけじゃ目が行き届かないだろ」

「そのことなんだけど」

やちよさんは申し訳なさそうな表情をして続きをなかなか話出しませんでした。

「七海、環くんの言う通りもう西と東を隔てる理由はない。居てくれた方がありがたいが、私は神浜全体を見守るつもりだ。

七海のやりたいようにすればいい」

「あなた、そんな柔軟な考えができたのね」

「長い付き合いで何を今更」

「なら、私はいろはについていくわ。

十七夜にひなのさん、留守の間はお願いします」

神浜に何かがあった時の舵取り役については話がつき、次に話さなければいけない相手は、結菜さん達でした。

しかし、結菜さん達の姿がありませんでした。

いったいどこに行ってしまったの。

私は結菜さん達がいたであろう場所の近くにいた魔法少女へ二木市の魔法少女達がどこへ向かったのか尋ねました。

「どこへ行ったかはわからないけど、ここから駅のあった場所へ向かったのは確かよ」

「そう、ありがとうございます」

あの人と分かりあうのは、ういの問題が解決した後になりそうだ。

私は再度十七夜さんとひなのさんに会って、ういを見守る人を必ずつけてほしいと伝えました。

あの人はきっと私がいない間もうい狙ってくる。そんな気がしました。

そういえば、静香ちゃん達は来ていたのだろうか。

「やちよさん、私は静香ちゃん達のところへ行こうと思います」

「そう。じゃあ私も」

やちよさんが話そうとした途中でみふゆさんが近づいてきました。

「やっちゃん、ちょっと相談したいことがあって。

これからのことについてやっちゃんの意見を聞きたくて」

「…わかったわ。ごめんなさい、いろは。ついていけなくて」

「いいえ、大丈夫ですよ」

私は静香ちゃん達の動きが気になったので時女一族が拠点にしているという水徳寺へと向かいました。

水徳寺へと向かう階段まで着いたところで見慣れない魔法少女が声をかけてきました。

「いろは殿、本家に用でありますか?」

「…すみません、どこかでお会いしたでしょうか」

「これは失礼。我は三浦旭というであります。

いろは殿のことについては時女本家から伺っているであります」

「あっ、時女一族の方でしたか。

ちょっと静香ちゃん達に今後どうして行きたいのか聞きたくてきたのですか」

「そうでありましたか。

今は本家が混乱状態でありまして、静香殿をはじめ、複数の一族のメンバーが人間嫌いになるような記録を認めんと必死で」

「そう、ですか」

「なので申し訳ないでありますが、引き返してほしいであります」

静香ちゃん達時女一族は日の本のために活動しているって言っていたし、行動目的を全否定するような記録を目の当たりにして、抗っているのだろう。

「わかりました」

私はそのまま回れ右をして無意識にみかづき荘への帰路につきました。

とはいえみかづき荘にはういとワルプルガさんがいて、私達は帰られない状態ですが。

そういえば、灯花ちゃんの具合はどうなったのだろう。

私は調整屋へ戻る道へと変更しました。

調整屋さんへと向かう道中を眺めていましたが、中央区から離れた場所は建物の損壊はそれほど激しくはなく、少し手入れをすれば再利用が可能なくらいでした。

住むところはともかく、ライフラインはどうすればいいだろう。この辺りはもっと詳しい人に聞かないとわからない。

課題はとても多い。でも頑張らないと。

調整屋に着くと灯花ちゃんは上半身を起こして元気そうにねむちゃんと話していました。

「灯花ちゃん、もう起きて大丈夫なの?」

「ダメージの回復はまだだけど、魔力が使えるようになってからは痛みの遮断が容易になったからね

寝たままなんてつまーんないし」

「無理しちゃダメだよ…」

「そうそう、私達がしばらくどこで生活しようかって話なんだけど、非常用に用意されていたシェルターで生活するのはどうかにゃ?」

「シェルター?

神浜市にそんなものあったんだ」

「実はたっくさんあったんだけど、みんながドッペル出しながら暴れた際に逃げ込んだ人もろとも破壊されてほとんど残っていないんだよ」

どうやら里見グループが用意していたシェルターがいくつかあるらしくてね。みかづき荘へはういの件でしばらく戻れないだろうし、しばらくは拠点兼住居としてシェルターを使っていこうと灯花と話し合っていたところなんだ」

灯花ちゃんとねむちゃんに促されるがままに、私達はシェルターがあるとされる場所へと来ました。

シェルターへ灯花ちゃんも同行しようとしてきたので安静にするよう伝えたのですが、そのシェルターは灯花ちゃんがいないと開かないとのこと。

灯花ちゃんは私がおんぶして行くことになり、みんなでシェルターの入り口に到着しました。

シェルターは予備電源があるようで停電はしておらず、しっかりと灯花ちゃんの指紋、眼球、そして暗証番号と厳重なセキュリティシステムを解除していき、やっと扉が開きました。

シェルターの中にはたくさんの部屋がある他、お風呂やリビング、そして壁一面に画面が広がるコンピュータルームがありました。

「さすが、お金持ちが用意したシェルターは規模が違うわね」

この広さならみんなとここに集まって会議を行ってもいいかも」

「ダメだよお姉さま、ここは私達が安心するための場所なんだから余計な人は呼び込まないでよね!」

「余計な人って…」

「さて、私はお姉さまが神浜を経つまでに用意しないといけないものがあるから。ねむも手伝ってくれる?」

「ぼくは構わないよ」

「その前に、みかづき荘のみんなが自由にここへ出入りできるようにしてくれる?」

灯花ちゃんにセキュリティを書き換えてもらい、私達は自由に出入りできるようにしてもらいました。

拠点ができたとはいえ、解決しなければいけないことは山ほどあります。

それをこの二日間でどこまで解決していけるか。

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-2-2 人間臭いやり方を魔法少女も続けるっていうんですか

灯花ちゃんを安静にして治療を行うため、私達は調整屋さんに来ました。

調整屋さんはカレンさんが襲撃してきた後そのままで、以前のような落ち着ける場所ではありませんでした。

でも、何かあれば調整屋という癖が残っていて自然とここに来てしまうのです。

中に入ると、そこには十七夜さんがいました。

「七海か、ういくんの所に行ったはずでは」

私が背負っている灯花ちゃんを見て十七夜さんは何かを察したようで奥の部屋に行くよう促しました。

いつも誘導されるはずのソファーでは、誰かが寝ていてその人へみたまさんはうなだれた状態でした。

みたまさんが目に入った後、調整屋の奥の部屋にはすでに数人の先客が傷を癒している状況で驚きました。

「これはいったい」

神浜の外から来た魔法少女が貴方の情報を聞き出すついでにここにいる子達を痛みつけて回ったって話よ」

「あなたは」

「あなたに名乗るほどではないわ。

十七夜さん、これで全員のはずよ」

「ああ、助かった」

名前を教えてくれなかった魔法少女は、そのまま調整屋を出ていってしまいました。

 

私達は灯花ちゃんを治療しながら、ここに来るまでに起こったことを十七夜さんに説明しました。

「そうか、ではせいか君達に傷をつけて回った連中も、そのpromisdbloodという連中で間違いなさそうだな」

「話が通じなさそうな感じがしました。あの人たち、また襲ってきそうで怖いです」

「警戒するようには伝えて回った方がいいだろう。そこのおガキ様のように、変に煽って痛い目に遭うかもしれないからな」

私は治療がひと段落した後、みたまさんのことが気になったので表に出ました。

ソファーに寝ていた謎の人物ですが、よく見てみるとももこさんでした。

他二つのソファーにはレナちゃんとかえでちゃんもいました。

私は何があったのか聞くために駆け寄ろうとしましたが、十七夜さんが右肩を掴んで私を止めました。

「今はそっとしておいてやってくれ。事情は話そう」

十七夜さんから聞いた話はこうでした。

みんなが正気に戻った後、状況確認を行っていた十七夜さんは血だらけのももこさんたちとその場に立っていたままのみたまさんを目撃しました。

状況を理解できずに混乱しているみたまさんの代わりに、十七夜さんは周囲にいる魔法少女に呼びかけて3人を調整屋まで運びました。

魔法少女の力で治療を試みて、傷は癒せたものの意識が戻らない状態になっているとのことです。

みたまさんは調整の要領で3人の状況を確認しようとしたそうですが、ももこさんのソウルジェムに触れた瞬間、みたまさんはなぜか調整を中止してその場で震え出しました。

その時から、みたまさんは誰が話しかけても反応を示さず、ももこさんのそばから離れなくなってしまったそうです。

「十七夜にも反応してくれないの?」

「いや、口は開いてくれたが今は誰とも話したくないとしか言ってくれなかった。十咎くんのソウルジェムに何かあったのか」

ももこさん達のソウルジェムですが、見た目は輝きがほぼなく、ただの透明な水晶に淡くそれぞれの光が残っているような状況でした。

「一体電波塔の上で何があったかは知らんが、十咎達がああなってしまったのはその影響もあるんだろうな。環くんは確か電波塔の上で日継カレン達と対峙していたな。何か知っているか」

私が知っているのは、致命傷のダメージと引き換えに3人はやっとピリカさんを倒し、崩れる電波塔と一緒に落ちていってしまったこと。

でも、それが直接的な原因ではないかもしれない。

「ももこさん達、執拗にカレンさん達を追い回してたみたいなんです。

その過程でなにがあったかまでは」

「追いまわしていたという話は知っている。私にも日継カレンの居場所を聞きに来たからな。

あの時の顔は、らしくはなかった」

「最期は、命と引き換えみたいな方法でピリカさんを倒したんです。

ドッペルを何回も連続で使って」

「そうか。日継カレンを倒そうと魂に負担をかける行為を積み重ねた結果、ああなってしまったということか」

みんなで悩んでいるとねむちゃんが話に入ってきました。

「きっと魂が傷つきすぎたか、大きな傷を負ったことで体自体を動かせない程に魔力が弱体化してしまったのだろう」

「柊、歩けたのか」

「灯花に魔力で動かしてるんだからと言われてね。

車椅子よりは動きやすいから魔力に頼って歩いているよ」

「いや、私が気にしているのはそういうことではないが」

ねむちゃんはももこさん達のソウルジェムを確認してまわりましたが、首を横に振って対処のしようがないという意思を示しました。

私たちは奥の部屋へ戻り、立ったままういについてどう対処するべきかの話をはじめました。

「話は山積みかもしれませんが、現状を少しでも良い方向へ持っていくのはういを元に戻すことだと思います」

「promisdbloodというグループの紅晴結菜は、神浜の長となってワルプルガへ無理やり願いを叶えさせようと考えているみたいよ」

「ふむ、あまり穏やかではない考えだな。だが今の神浜の現状、皆を率いる長となる存在が必要なのは確かだ」

「私は、リーダーとかみんなの代わりに決定する立場の人っていうのは無くしていきたいんです」

「環くん、その根拠は?」

「リーダーが決まれば、その人にみんな従うことになるでしょう。その人はみんなのためにいろんなことを決める人かもしれません。
でも、リーダーとは違った考えを持つ人達がいたら、その人達は少なからず不満を抱えます。
そして自分の考えを貫くために、リーダーになろうと行動し、いずれリーダーという立場の取り合いで争いが生まれます。
それが嫌なんです」

十七夜さんは少し考えた後、意見を伝えてきました。

「確かにリーダーという席をめぐって争いは起こるだろう。争いの種になるとはいえ、意見をまとめる者がいなければ決断しなければいけないことが起こっても皆がバラバラのままで何も決まらん」

「だから、人間臭いやり方を魔法少女も続けるっていうんですか」

「いろは、それは言い過ぎよ」

「私たち魔法少女ならば、誰かがリーダーにならなくても最善の結果を導き出せるはずです。十七夜さんだって、みんなが平等な立場で意見を出し合える世界がいいと思わないんですか」

十七夜さんは何かを言いたげに口を開こうとしましたが、うつむいて拳を強く握ってしまいました。

「いろはちゃん、おちついて」

「環くんは、魔法少女は、人間と同じような社会体制ではなく皆が平等に意見を出し合っても皆が納得できる新しい体制でやっていける。そういいたいのだな」

「・・・はい」

十七夜さんは握った左拳をこちらに振り上げ、掌を広げた後に私の右肩をつかみました。
周りのみんなは、十七夜さんが私に殴りかかろうとしたかと思って少し身構えていました。

「君がそんな世の中を実現しようと動きたいのならば、私は指示しよう」

「十七夜さん・・・」

「だが、常識から外れた考えを皆に納得させることは尋常ではないほど苦労する。東側の認識を、西側に改めさせる以上にな」

「わかっています。私ならばみんななら、魔法少女ならできると信じてますから」

「そうか。いいだろう」

十七夜さんは満足げな顔をして近くにある椅子へと腰掛けました。

「今後の神浜の方針はそれでいいとして、ういちゃんの件はどうしましょうか」

「なら、すこし僕の考えを聞いてほしい」

ねむちゃんが言うには、ういの現状に疑問があるというのです。

ういのソウルジェム周辺に微量ではあるが魔女に似た魔力がある。

あの反応はうい本人の問題以外も絡んでいるかもね」

「本人の意思ではなく、何者かの影響であるならそれに対処しちゃえばすぐ解決だね!」

「でもどうやるんだよ、ういをぶん殴るわけにもいかないだろ」

「それだと結菜さんと同じ方法ですよ」

魔女がういを操っているならば、直接倒せばいいのだけど、残念ながら魔女がういのどこにいるのかがわからない。

遠くから操っているのか、それとも。

「ねえ、ねむちゃん。どこから操っているのかがすぐにわかる方法はあるかな」

「その問いに答えるのは灯花が適任だと思うけど、ぼくの意見でいいのであれば考えがないわけでは無い」

ねむちゃんの考えを簡潔にまとめるとこうなる。

他人が誰かを真似る時、真似ている人物にしか知り得ないことまでは真似ることができない

魔女が、ういはワルプルガ以外を嫌う人物だと仕立て上げようとしていた場合、灯花ちゃんを庇った行為は真似ている魔女ではなくうい本人が出した魔女にとって想定外の行動であるだろうとのこと。

みんなが嫌いならば、守ろうという動きは咄嗟に出るはずがないから。

もっとういにわたしたちにしか知らないことをぶつけ、その反応を見て魔女の居場所を暴く。

それにうってつけなのが。

「クレメルの言葉がういには少しわかるから、なんて言っているのかそっけなく聞けばいいんだね」

「そうね。クレメルがすぐ近くにいてくれてよかったわ」

モッキュ!

気が付いたら調整屋の前に小さなキュウべえこと、クレメルがちょこんと座っていたのです。いったい今までどこにいたんだろう、姿も見せずに。

でも、これで確かめられる。

 

私達はういのもとに向かい、ういにクレメルを対面させました。

「今度は何をしにきたの」

モキュ、モキュモキュモッキュ!キュウ!

「…」

ういはしばらく黙ってしまいました。

そんな中、ワルプルガさんがういの近くへ来ました。

「この生き物、キュウべえって生き物に似てる。けど小さいね」

「あまり近づいちゃダメだよ、何されるか分からないから」

モキュゥ…

「うい、本当にクレメルがなんて言っているのかわからないの?」

しばらく沈黙が続き、クレメルとういがほぼ同時に何かにびっくりしたような反応を見せました。

そして、ういはクレメルに攻撃を仕掛けたのです。

「うい?!」

「帰って、もうみんなどっかいって!」

ういが無差別に周囲へ攻撃をはじめてしまったため、私達は急いでその場を離れました。

調整屋にいた鶴乃ちゃん、フェリシアちゃん、さなちゃんへ連絡し、私達はもと中央塔があった場所に集まりました。

「んでどうだったんだ」

「収穫はあったよ。クレメルが何かに気づいてくれたんだけど、それをどう聞き出そうかが問題で」

「クレメルは、ういちゃんを操る魔女がどこにいるかわかったの?」

モッキュ!

「この反応を見るに、どこにいるのかはわかったみたいだけど」

ねむちゃんは急に地面に落ちている瓦礫を円状に並べました。

「君はぼく達の言葉を理解できる。ならば問いに対して行動してくれるかい?

魔女がういの外なら円の外、ういの中なら、円の中へ」

そうねむちゃんが言うと、クレメルは円の中に入って座りました。

モッキュ!

「これで結論が出た。

ういを操る魔女は、ういの内側、ソウルジェムにいる」

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-2-1 なんで、魔法少女が、争うの

神浜から人が消えて3日ほど経過しました。

神浜にいた魔法少女達は皆、カレンさん達が実施したワルプルガさんを復活させる儀式の副作用として、人間嫌いになってしまうような情報が脳内に共有されました。

これによって人の死を悲しむ魔法少女は少なくなりました。
一部を除いて。

「私がお父さんと、お母さんを・・・そんな」

「どうしてよ!どうしてあなたたちは親を殺しておいて平気でいられるの!」

「あなたも見たでしょ!人と生活していたって幸せなんてないじゃない!」

「わたしたち、これからどうしていけばいいの・・・」

カレンさんの生死が確認できない状態で神浜にいる魔法少女達は、ただただ混乱していました。

みんながどうしようか途方に暮れている中、私にも大きな出来事が起きました。

「うい、どうしてお姉ちゃんから離れようとするの?」

「お姉ちゃんは人をたくさん殺した。いっぱい殺した。あの人たちは何もしていないのに!

人を平気に殺せるお姉ちゃんなんて嫌い!」

ういが私に対して怖い顔を向けるようになり、拒絶するようになってしまいました。

私以外の他の魔法少女との関わりも強く拒絶し、ういを母親だと思ってしまっているワルプルガさんだけには普通に接していました。

「うい、どうしちゃったの」

どうにかなってしまったのは私たちの方かもしれない。

しかし私はういの隣にいるワルプルガさんに用があるのです。

「ねえワルプルガさん、自動浄化システムのことについて覚えていることを教えてくれない?」

「自動ジョウカ、システム…

カミハマにあるみんなにとってとても大切なもの。

それをワタシが何かしないといけなかった気がする。けどわからない」

「あのね、ワルプルガさん、じつは」

話の途中でういの魔力を感じ、私は素早くその場を離れました。

なんと私にういが攻撃してきたのです。

「お姉ちゃん、ワルプルガちゃんを無理矢理魔法少女にさせようとしているよね。

そんなことさせないよ」

「うい、違うよ!私はただ」

「いろは、今は何を言っても通じないと思うわ。それに、今のういちゃんには別の魔力を感じるわ」

「やちよさん、それはそうですけど」

「あら、何をもめているのかしら」

聞き覚えのない声の先へ振り向くと、そこにはツノが生えた和風な雰囲気の魔法少女を先頭に数人の魔法少女がいました。

ツノが生えた魔法少女へやちよさんが問いかけます。

「首長竜を相手している時に見かけた気がするわ。あなた達何者?」

「私達はプロミスドブラッド。二木市から来た魔法少女よ。

私は紅晴結菜。あなたは環いろはに、隣が七海やちよかしら」

「私達になんの用?今は取り込み中よ」

この人、なんで私たちのこと知ってるんだろう。

「本当はあなた達にも用があるのだけど、今の本命はワルプルガよ」

「ワルプルガさんに用って、ワルプルガさんの存在をいったいどこで」

「神浜へ来る前に日継カレン達から直接聞いたわ。まあここにいることは他の子達から聞いたけど」

結菜さんはワルプルガさんの方へ向き直り、ワルプルガさんに近づいていきました。

貴方には自動浄化システムとやらを広げてもらわなくちゃ困るのよ

ほら、早くキュゥべえへ願いに行きましょう」

結菜さんがワルプルガさんに手を伸ばそうとするとういが結菜さんへ攻撃してしまいました。

「結菜さん大丈夫っすか!」

「あなたも、ワルプルガちゃんを無理矢理魔法少女にさせようとするの?」

「こいつ、魔女化しない場所にいるからって!」

「やめなさい。

・・・そう、取り込んでいたのはこんなことになっていたからなのね」

結菜さんは棍棒のような武器を取り出し、ういに向かって歩いて行きました。

私はその様子を見て結菜さんとういの間に入り、両手を横に大きく広げて立ちはだかりました。

「お願いです。

自動浄化システムはちゃんと世界に広げますから、今は、今はまだ待ってください!」

「いつまで待てっていうの。

私達は貴方達神浜の魔法少女が呑気に生活している中、魔女不足のせいで殺し合いをしていたのよ。

それが誰のせいだと思って!」

「この騒ぎはなんなのかにゃあ」

灯花ちゃんの声がした方を向くと一緒にねむちゃんもいました。

「灯花ちゃん、今来ちゃ」

「灯花?

もしかして貴方、マギウスの1人」

「うん?そうだけど何か用?

誰かは知らないけど、私はういの状況を見に来ただけだよ」

結菜さんは鬼の形相で灯花ちゃんに殴りかかりそうな勢いでしたが、二木市の魔法少女の1人が結菜さんの腕を掴んで静止を促しました。

「結菜、目的を忘れないで。

気持ちはわかるけど今じゃない」

「さくや…」

灯花ちゃんとねむちゃんはういに近づいていきましたが、ういはワルプルガちゃんを庇いながら2人を警戒していました。

「うい、別人みたいに変わっちゃったね」

「君はそんな顔をしない子のはずだ。
目的はいったいなんなのだい?」

「2人も、ワルプルガちゃんを無理矢理魔法少女にさせようとするの?」

「ふむ、なるほど」

ねむちゃんが何かに気づいたようですが、結菜さんが武器を地面に叩きつけました。

「そこをどきなさぁい。

ワルプルガが願ってしまえばみんな魔女化しなくて済むようになるのよ。

何をもたもたしているの」

「焦る気持ちは分かるが、魔法少女の願いは直接願った内容、因果量の他にも願った際の精神状態が願った結果に影響を及ぼす可能性がある。

ワルプルガを見てみなよ。とても怯えている。

君たちはワルプルガに魔法少女に対する恐怖を植え付けてまで自分の幸福を優先してしまう愚かな存在なのかい?」

「そんな正論、十二分に承知しているわよ。

でもね、限界が近いのよ。死んでいった仲間達の声がね、頭に響き続けているのよ。

これ以上、みんなを苦しみで縛りつけたくないのよ!」

結菜さんはその場で大きく棍棒を振り上げました。

「対象、変更!」

「結菜!」

棍棒が地面に叩きつけられた衝撃はその場に発生せず、灯花ちゃんの腹部に衝撃が発生しました。

灯花ちゃんは血を吐きながら吹き飛ばされ、その方向に火炎放射器を持った魔法少女が炎を放ちました。

「悪いな、私ももう限界なんだ。ウェルダンになっちまいな、マギウス!」

「灯花ちゃん!」

「樹里!早まるんじゃない!」

炎は灯花ちゃんを包み込みましたが、炎自体はういが出した凧で防がれ、灯花ちゃんには当たっていませんでした。

「うい…」

「2人ともいい加減にして!
マギウスの1人も言っていたでしょ。ここでいくら争ったって、ワルプルガが怯えるだけだよ」

さくやさんと呼ばれる人が結菜さんを説得している中、ワルプルガさんの方を見ると涙を流しながらぷるぷると体を震わせていました。

「なんで、魔法少女が、争うの」

結菜さんはワルプルガさんの顔を見て少し冷静になったようで、私に話しかけてきました。

「環いろは、あなたあんなに妹さんへ攻撃しないよう言ってきたけど、ちゃんと考えはあるのかしら」

「まだわからない。けど、必ずういを元に戻す方法を見つけ出して、自動浄化システムを広げてみせます」

「具体案はないってことね。

でも私がこの街の指導者になれば、あなたよりは早く自動浄化システムを広げられるわ」

でもその方法は、きっとみんなが幸せになる方法じゃない。

だめ、この人達の考えていること、抱えていることを知らないとどうしてこんなに怒っているかもわからない。

「そうね、手始めに貴方の妹さんを殺そうかしら」

結菜さんの言葉を聞いて、私は目を見開きましたが沸き上がってきたのは怒りではなく悲しみでした。

「おまえいい加減にしろよ!ういを殺したってどうもなんねぇってわかるだろ!

どうして、結菜さんは簡単に殺すとか言えてしまうのだろう。私達は、魔法少女同士なのに。

「フェリシア落ち着きなさい」

結菜さんは私の目をじっと見つめていましたが、結菜さんの方から目を逸らしました。

「2日待ってあげる。

その間に見つけた自動浄化システムを広げる方法を私達に、いや、神浜に集まった魔法少女達に説明しなさい。

それができたら私達は静観しておいてあげる」

「結菜さん」

「おい結菜!話が違うぞ!」

「さぁ、みんな戻るわよ」

二木市の魔法少女たちが去っていった後、私達は灯花ちゃんの治療のために一旦その場を離れて調整屋さんへ向かいました。

 

 

「結菜さん、環いろはに判断を委ねたみたいっすけど、急にどうしたんすか」

結菜さんは足を止め、少し黙った後、空を見上げながら話し出した。

「彼女を煽った結果次第で委ねようとは思っていたわ。

煽っても彼女は怒りを示さなかった。彼女には冷静に物事を見れる感情が残っていた。

もしかしたら、環いろはは私が失ったものを持っているもかもしれない。だから、どんな考えを出すか気になったのよ」

「全く、あそこで乱闘になった方が樹里様的には満足できたのに。

方針変更した分、樹里様に付き合ってもらうぞ、姉さん」

「みんなに無理させる選択をしたのは私だし、付き合ってあげるわ」

環いろは。

あなたの甘い考えがどこまで利口か確かめさせてもらうわ。

でもまずは、これからのために情報整理をしないとね。

これからは、人間の手を借りずに生きていかないといけないのだから。

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-1-12 お前は永遠に魔法少女と人を戦わせたいのか

レベッカが私に追突した後、結界内からイザベラと刀の女の姿は消えていた。

「逃げられたのか」

「そうね、逃げる術を持っているとは想定以上の存在よ、彼女」

「イザベラもそうだが刀の女も相当だ。
魔法少女でもないのにあいつに力で負けている感覚だった。それに刀を放り投げるなんて行為」

「あれは偶然ね。狙ってもやれるようなことではない。

彼女達の思考は逃げるのが優先だった。もし殺しに来ていたら、ここにいる私達みんな死んでたかもね」

「物騒なこと言うなよ。

んなことより、レベッカはいつまで目を回してんだ!」

「太ももが柔らかくてつい」

私たちが変身を解いて拠点に戻ろうとすると何者かが話しかけてきた。

「あれが話にあった魔法を使う人間ですか」

声が聞こえた方を向くとそこにはピリカがいた。魔女化しない方法を探していたはずでは。

「あんた、カレンと一緒に行動しているはずじゃ」

「ミアラさんが不在だというので、向かったと聞いた場所へと来てみたのです。ミアラさん、戦えないのに何で戦闘の場に出てきたんですか」

「なんで見たままだった。参戦してくれたら仕留められたのに」

「すみません、事情を把握していなかったので静観の択を取りました」

「ピリカの判断は正しかった。理由は戻ってから話そう」

この後イザベラ達が逃げ込んだ場所を襲撃しなかったのは、人間に目立たないため。

まだ私たち魔法少女は、人間に公な存在になってはいけないという方針がある。

だから私達は、大人しく拠点に帰るしかなかった。

 

聖遺物争奪戦とバチカンでの悲劇が終息して数年後、キュゥべえからある話を聞いた。

「魔法少女に対抗しようとする人間?」

「人類がどうなろうがぼくには関係ないが、彼女達は人間が魔法少女を管理しようと企んでいるようだ」

「それ事実なの?」

人類の上に立とうと考えている君たちには重要な情報だと思うけど

「そいつらの中に、魔法を使える人間はいるか?」

「いるよ。もしかしてもう知っていたのかい?」

「マーニャが報告してきたあの話か。確か今はヨーロッパにいるらしいな」

「ならばすぐに消そう。生かしとくと私たちには不利益にしかならないだろ」

「消すかどうかはさておき、私も同行しよう」

「ミアラさん、戦えないあなたは行かないほうがいいと思うが」

「直接会ってみたいのよ、魔法を使う人間にね」

そして私はイザベラという人物に会い、彼女を取り巻く環境がどんなものかを知った。彼女は十分私たちの脅威になることはわかった。

「いいんですかミアラさん、あいつら生きて帰しちゃって」

見逃せば今以上に魔法少女にとってきつい世の中にはなるでしょうね。

でも、待っていれば向こうから宣戦布告してくれるのよ?

私達は正当防衛という流れで人間社会を破壊することができる」

「正当防衛なんて人間社会だけで通じる話でしょ」

「まあ状況は把握した。したっけ、私達は魔女化しない方法探しに戻るよ」

「カレン、イザベラという人物についての情報は集めておいてくれないか。私たちの情報収集能力にも限度がある」

「わかったよミアラ。シオリとピリカにも伝えておく」

私達魔法少女は、人類が作った本来の自分を押しつぶすことでしか幸せになれない人間社会や常識を壊して魔法少女中心の世界を作らないといけない。

今は息を潜めて力を蓄える必要がある。

イザベラという人物が何かやらかしてくれるまで、私達は静かに暮らそう。

なに、まだ時間はあるさ。

 

 

突然襲ってきた激痛は体を焼かれるような痛さで、その後は麻酔を撃たれたのか完全に意識が戻ったら見慣れない天井が見えていた。

周囲を見渡すとどこかの病室のようで、ベッドの隣には椅子に座ってうたた寝しているイザベラがいた。

こんなに不用心なイザベラを見るのは初めてだった。だから、彼女が自分で起きるまではそっとしておくことにした。

ほんの少しではあるがイザベラの寝顔を拝んだ後、目覚めて私が起きていると知ったイザベラは少し照れた表情をしていた。

「寝てしまっていたのか。情けないな、睡眠もコントロールできないなんて」

「無意識に寝てしまえるのは心が安心しきっている証拠さ。いいことじゃないか」

「・・・なんであんな無茶をした。下手したらキアラは死んでいた」

「私はイザベラのボディーガードだ。身を挺して守るのは当然だ」

「自分の命ぐらい大事にしなさいよ、馬鹿」

それからイザベラに私が気を失っている間に何があったのか聞くと、私が気絶してから2日経過していることを知った。

私の手術が終わり、命に別状がないと知ったイザベラは大統領向けに特殊対策課 「サピエンス」の設立依頼書を作成していた。

魔法少女対策を行うという内容を隠し、国を脅かす組織に対抗するための特殊部隊的立場になるような内容にしたという。PMCのような民間軍事企業としてではなく、米国政府公認である軍事組織の一部という位置づけだという。

そしてディアとカルラが滞在できる場所を米国に用意し終え、私とイザベラ以外は既に米国へ移動してしまったという。

私が退院した後、私達はすぐに米国へと移動した。
不思議と、裏路地で襲撃してきた魔法少女達は手を出しては来なかった。

魔法対策としてアンチマギアが作成されたものの、それが魔法少女に有効なのかは実証されていない。

合理的に魔法少女対策用の兵器を開発するために、イザベラはかつてお世話になった非正規のテロリスト達のところを訪れていた。

「その試作品を使って、魔法少女と戦ってくれと。

そして、その魔法少女をなるべく生捕しろってか」

貴女達が魔法少女に関わる依頼をこなせることは十分に知っている。報酬はこれくらいを目安に出すつもりよ」

「・・・なるほど、額は悪くない。

だが、俺たちは政府の犬として活動する気はさらさらない。

試作品とやらのテストをする依頼は他に魔法少女に関わる依頼があったときについでで受けさせてもらう」

「構わないわ」

「それにしてもこれ、魔法少女に害がある成分が入ってるんですね。

私のような魔法少女が扱っても大丈夫なんですか?」

はじめてあった時からいる魔法少女、まだ生き残っていたのか。

「一般人がグレネードぶん投げて、それが足元に転がって自爆するのと一緒だ。

扱いを間違えなきゃ害はないさ」

「なるほど・・・」

「マーニャはドジだし、やりかねないかもな」

「バカにしないでください!他の子たちよりは長生きしてるんですから!」

「バカ騒ぎはよそでやれ。イザベラ、依頼はあんたとの信頼関係があるからこそ受けただけだ。あんたがやろうとしていることはまだ詳しく説明されちゃいない。もし二度目を依頼するんなら、ちゃんと説明の場は設けてもらえるんだろうな」

「ええ。深く尋ねずに聞き入れてくれたこと、感謝します」

こうして裏組織の協力もあり、対魔法少女用の兵器開発と共に捕らわれた魔法少女を使って薬剤の研究も進んだ。

研究員も増え、イザベラの根回しによって武装集団の所持も許可された。

着々と組織化の動きが進んでいった。

対魔法少女兵器の開発以外にも、ディアはとんでもない実験を進めていた事をカルラから聞いた。

「クローン体を遠隔操作するための実験?」

「そうだ。あいつは元々人という貧弱な体を何百年も生きられる形にすることを目的に研究者となった。

いろんな動物を使って実験してきたみたいだが、どうやら代謝を持つ生物はどんなに手を施しても常に激しい動きをしつつ何百年も生きるのは不可能だという結論に至ったらしい。

そこで、体を使い回すことで擬似的に長生きできるクローンに手を出した」

でもクローンを作る技術は人の体を複製できるほど発展していないはず」

「あの子ならできてしまうのさ。

まあ、少しは錬金術を絡めているが」

倫理観がぶっ飛んでいる。ディアは元々倫理観がない人間だというのは理解しているが、超えてはいけない一線をどんどん超えていくな。

「遠隔操作と言っていたな。まさかロボット的なものなのか」

「いや、魔法少女やキュゥべえが使用するテレパシーを模倣した波を使って本体の脳から直接伝達して遠くからでも体を操作できるようにしている」

「何でキュゥべえが実験体になっているんだ」

「とらえた魔法少女をいじっている間に彼女たちしか使用できない特殊な波があることを知ってね。それを解析してみると奴らを認識できるようになった。
そしてキュゥべえとっ捕まえて徹底的に解剖したよ」

「そんなことまでできてしまうのか、あんたたちは」

さらっとカルラはとんでもないことを言った。

キュウべえを生捕?そんなことをしようとも、できるとも思わなかった。
やっぱり天才の考えることはどこかズレていて、ぶっ飛んでいる。

「奴らの本体を逆探知はできなかったものの、おかげで波と複製体のデータがたくさん取れたんだ。

良くも悪くも、クローン技術は実用レベルにまで至ってしまった」

「表社会には発表しないようにしてくださいよ」

「当たり前だ。ディアが出そうとしても私が止める。

そうだ、今夜イザベラを借りる代わりに、ディアの監視を任せていいか?」

「はい、いいですが」

 

 

カルラから食事に誘われた。

珍しくキアラは用事があるらしく、今は私の近くにいない。

一般人には少し高めのレストランの中に、カルラはいた。カルラは個室を予約していて、私達は個室で食事をした。

「それで、食事に誘った理由でもあるの?」

「行動一つ一つに理由がないと気が済まないのか?気まぐれだよ。

とはいえ、相談したいことはある」

「相談?」

「お前の計画している魔法少女狩りというもの、いったいどれだけの規模を考えている」

「規模?それは世界中よ。世界中の魔法少女を人間の管理下に置かないと何されるかわからないじゃない」

「テロリストだって根絶できない世の中だ。全ての魔法少女を管理するなど不可能に近い。

お前は永遠に魔法少女と人を戦わせたいのか」

「そうなるわね。

まあ魔法少女にさせない薬もあるし、自然と数は減るでしょ」

「仮に魔法少女に人類が負けることがあったら、お前はどうする?

「負けさせないし、魔法少女に主導権を握らせるくらいなら全てを終わらせるわ」

「なるほど。

では忠告しとこう。決して地球を死の灰と焦土で覆うようなことは考えるな」

「そんなこと、しないわ」

「・・・そうか。
では話題を変えよう。食事をするのだから、明るい話にしないとな」

序盤の話以外はディアや研究について、そして日常的な話をして食事は終わった。

ディアのクローン研究は興味深く、カルラの統一言語を実現させる技術も気になる。

今度視察にでもいってみようか。

 

 

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