【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-2-1 なんで、魔法少女が、争うの

神浜から人が消えて3日ほど経過しました。

神浜にいた魔法少女達は皆、カレンさん達が実施したワルプルガさんを復活させる儀式の副作用として、人間嫌いになってしまうような情報が脳内に共有されました。

これによって人の死を悲しむ魔法少女は少なくなりました。
一部を除いて。

「私がお父さんと、お母さんを・・・そんな」

「どうしてよ!どうしてあなたたちは親を殺しておいて平気でいられるの!」

「あなたも見たでしょ!人と生活していたって幸せなんてないじゃない!」

「わたしたち、これからどうしていけばいいの・・・」

カレンさんの生死が確認できない状態で神浜にいる魔法少女達は、ただただ混乱していました。

みんながどうしようか途方に暮れている中、私にも大きな出来事が起きました。

「うい、どうしてお姉ちゃんから離れようとするの?」

「お姉ちゃんは人をたくさん殺した。いっぱい殺した。あの人たちは何もしていないのに!

人を平気に殺せるお姉ちゃんなんて嫌い!」

ういが私に対して怖い顔を向けるようになり、拒絶するようになってしまいました。

私以外の他の魔法少女との関わりも強く拒絶し、ういを母親だと思ってしまっているワルプルガさんだけには普通に接していました。

「うい、どうしちゃったの」

どうにかなってしまったのは私たちの方かもしれない。

しかし私はういの隣にいるワルプルガさんに用があるのです。

「ねえワルプルガさん、自動浄化システムのことについて覚えていることを教えてくれない?」

「自動ジョウカ、システム…

カミハマにあるみんなにとってとても大切なもの。

それをワタシが何かしないといけなかった気がする。けどわからない」

「あのね、ワルプルガさん、じつは」

話の途中でういの魔力を感じ、私は素早くその場を離れました。

なんと私にういが攻撃してきたのです。

「お姉ちゃん、ワルプルガちゃんを無理矢理魔法少女にさせようとしているよね。

そんなことさせないよ」

「うい、違うよ!私はただ」

「いろは、今は何を言っても通じないと思うわ。それに、今のういちゃんには別の魔力を感じるわ」

「やちよさん、それはそうですけど」

「あら、何をもめているのかしら」

聞き覚えのない声の先へ振り向くと、そこにはツノが生えた和風な雰囲気の魔法少女を先頭に数人の魔法少女がいました。

ツノが生えた魔法少女へやちよさんが問いかけます。

「首長竜を相手している時に見かけた気がするわ。あなた達何者?」

「私達はプロミスドブラッド。二木市から来た魔法少女よ。

私は紅晴結菜。あなたは環いろはに、隣が七海やちよかしら」

「私達になんの用?今は取り込み中よ」

この人、なんで私たちのこと知ってるんだろう。

「本当はあなた達にも用があるのだけど、今の本命はワルプルガよ」

「ワルプルガさんに用って、ワルプルガさんの存在をいったいどこで」

「神浜へ来る前に日継カレン達から直接聞いたわ。まあここにいることは他の子達から聞いたけど」

結菜さんはワルプルガさんの方へ向き直り、ワルプルガさんに近づいていきました。

貴方には自動浄化システムとやらを広げてもらわなくちゃ困るのよ

ほら、早くキュゥべえへ願いに行きましょう」

結菜さんがワルプルガさんに手を伸ばそうとするとういが結菜さんへ攻撃してしまいました。

「結菜さん大丈夫っすか!」

「あなたも、ワルプルガちゃんを無理矢理魔法少女にさせようとするの?」

「こいつ、魔女化しない場所にいるからって!」

「やめなさい。

・・・そう、取り込んでいたのはこんなことになっていたからなのね」

結菜さんは棍棒のような武器を取り出し、ういに向かって歩いて行きました。

私はその様子を見て結菜さんとういの間に入り、両手を横に大きく広げて立ちはだかりました。

「お願いです。

自動浄化システムはちゃんと世界に広げますから、今は、今はまだ待ってください!」

「いつまで待てっていうの。

私達は貴方達神浜の魔法少女が呑気に生活している中、魔女不足のせいで殺し合いをしていたのよ。

それが誰のせいだと思って!」

「この騒ぎはなんなのかにゃあ」

灯花ちゃんの声がした方を向くと一緒にねむちゃんもいました。

「灯花ちゃん、今来ちゃ」

「灯花?

もしかして貴方、マギウスの1人」

「うん?そうだけど何か用?

誰かは知らないけど、私はういの状況を見に来ただけだよ」

結菜さんは鬼の形相で灯花ちゃんに殴りかかりそうな勢いでしたが、二木市の魔法少女の1人が結菜さんの腕を掴んで静止を促しました。

「結菜、目的を忘れないで。

気持ちはわかるけど今じゃない」

「さくや…」

灯花ちゃんとねむちゃんはういに近づいていきましたが、ういはワルプルガちゃんを庇いながら2人を警戒していました。

「うい、別人みたいに変わっちゃったね」

「君はそんな顔をしない子のはずだ。
目的はいったいなんなのだい?」

「2人も、ワルプルガちゃんを無理矢理魔法少女にさせようとするの?」

「ふむ、なるほど」

ねむちゃんが何かに気づいたようですが、結菜さんが武器を地面に叩きつけました。

「そこをどきなさぁい。

ワルプルガが願ってしまえばみんな魔女化しなくて済むようになるのよ。

何をもたもたしているの」

「焦る気持ちは分かるが、魔法少女の願いは直接願った内容、因果量の他にも願った際の精神状態が願った結果に影響を及ぼす可能性がある。

ワルプルガを見てみなよ。とても怯えている。

君たちはワルプルガに魔法少女に対する恐怖を植え付けてまで自分の幸福を優先してしまう愚かな存在なのかい?」

「そんな正論、十二分に承知しているわよ。

でもね、限界が近いのよ。死んでいった仲間達の声がね、頭に響き続けているのよ。

これ以上、みんなを苦しみで縛りつけたくないのよ!」

結菜さんはその場で大きく棍棒を振り上げました。

「対象、変更!」

「結菜!」

棍棒が地面に叩きつけられた衝撃はその場に発生せず、灯花ちゃんの腹部に衝撃が発生しました。

灯花ちゃんは血を吐きながら吹き飛ばされ、その方向に火炎放射器を持った魔法少女が炎を放ちました。

「悪いな、私ももう限界なんだ。ウェルダンになっちまいな、マギウス!」

「灯花ちゃん!」

「樹里!早まるんじゃない!」

炎は灯花ちゃんを包み込みましたが、炎自体はういが出した凧で防がれ、灯花ちゃんには当たっていませんでした。

「うい…」

「2人ともいい加減にして!
マギウスの1人も言っていたでしょ。ここでいくら争ったって、ワルプルガが怯えるだけだよ」

さくやさんと呼ばれる人が結菜さんを説得している中、ワルプルガさんの方を見ると涙を流しながらぷるぷると体を震わせていました。

「なんで、魔法少女が、争うの」

結菜さんはワルプルガさんの顔を見て少し冷静になったようで、私に話しかけてきました。

「環いろは、あなたあんなに妹さんへ攻撃しないよう言ってきたけど、ちゃんと考えはあるのかしら」

「まだわからない。けど、必ずういを元に戻す方法を見つけ出して、自動浄化システムを広げてみせます」

「具体案はないってことね。

でも私がこの街の指導者になれば、あなたよりは早く自動浄化システムを広げられるわ」

でもその方法は、きっとみんなが幸せになる方法じゃない。

だめ、この人達の考えていること、抱えていることを知らないとどうしてこんなに怒っているかもわからない。

「そうね、手始めに貴方の妹さんを殺そうかしら」

結菜さんの言葉を聞いて、私は目を見開きましたが沸き上がってきたのは怒りではなく悲しみでした。

「おまえいい加減にしろよ!ういを殺したってどうもなんねぇってわかるだろ!

どうして、結菜さんは簡単に殺すとか言えてしまうのだろう。私達は、魔法少女同士なのに。

「フェリシア落ち着きなさい」

結菜さんは私の目をじっと見つめていましたが、結菜さんの方から目を逸らしました。

「2日待ってあげる。

その間に見つけた自動浄化システムを広げる方法を私達に、いや、神浜に集まった魔法少女達に説明しなさい。

それができたら私達は静観しておいてあげる」

「結菜さん」

「おい結菜!話が違うぞ!」

「さぁ、みんな戻るわよ」

二木市の魔法少女たちが去っていった後、私達は灯花ちゃんの治療のために一旦その場を離れて調整屋さんへ向かいました。

 

 

「結菜さん、環いろはに判断を委ねたみたいっすけど、急にどうしたんすか」

結菜さんは足を止め、少し黙った後、空を見上げながら話し出した。

「彼女を煽った結果次第で委ねようとは思っていたわ。

煽っても彼女は怒りを示さなかった。彼女には冷静に物事を見れる感情が残っていた。

もしかしたら、環いろはは私が失ったものを持っているもかもしれない。だから、どんな考えを出すか気になったのよ」

「全く、あそこで乱闘になった方が樹里様的には満足できたのに。

方針変更した分、樹里様に付き合ってもらうぞ、姉さん」

「みんなに無理させる選択をしたのは私だし、付き合ってあげるわ」

環いろは。

あなたの甘い考えがどこまで利口か確かめさせてもらうわ。

でもまずは、これからのために情報整理をしないとね。

これからは、人間の手を借りずに生きていかないといけないのだから。

 

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