【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-2-9 巫女と4人の少女達

神浜市を出てからはキュゥべえに導かれるがままに目的の魔法少女のもとへと進んでいました。

ういをもとにもどすための能力を持った魔法少女に協力を申し出て、神浜市へ連れていく。

それが今の旅の目的です。

お金をあまり使用しないよう移動には公共交通機関を使用せず、山道を中心に移動を行いました。魔法少女ではあっても睡魔には襲われてしまうので、寝る時は荷物として持ってきていた寝袋を森の中に広げて過ごしていました。

道中、魔女を倒してグリーフシードの補充を行ったりお店で食料の調達をしたりといった日々を送っているうちに想像よりも早く目的地へと辿り着いていました。

その目的地は町はずれの山にあり、長い階段が目の前にありました。

「やっと着いたわね」

「素直に公共交通機関使った方が楽だったかもしれませんね」

「チケットを買うときに年齢確認される可能性があったし、仕方がないわよ」

「キュゥべえ、この階段の上に目的の魔法少女がいるの?」

「そうだ。名前は真境名(まきな)さつき。
彼女は相手の心へ潜入できる能力で巫女としてこの先にある神社で生活しているよ」

「改めて聞くと、とんでもない能力ね」

私達は階段を登っていき、鳥居を3つほどくぐった途端に魔力反応を感じました。

神社の前には巫女服を着てホウキで掃除をしている方がいました。

その方は私たちの方をずっと見ていました。

「魔法少女の方達ですか。

ここらあたりでは見ない顔ですが、ここへ何の御用でしょうか」

早速私は目的を伝えることにしました。

「私は環いろはと言います。
真境名さつきさん、心に潜れるあなたにお願いがあってきました」

「…確かに私は真境名さつきですが、まあいいでしょう」

険しい顔でこちらを見るようになったさつきさんは、キュゥべえが目に入った途端にため息をつきました。

「あなたはまた魔法少女をここへ導いたのですか、キュゥべえ」

「魔法少女をどんどん招き入れているのはキミの方じゃないか。
行き場を失った魔法少女達を保護したいと言い出したのは君の方じゃないか。
嫌なら断ればいい」

なにやら事情があるようです。

「えっと、妹の心に魔女がいるみたいで、さつきさんの能力で心へ潜入してその魔女を倒したいんです」

「その妹さんは?
一緒じゃないの?」

「今は神浜市にいて」

さつきさんはホウキをくるっと回してホウキの柄の部分を地面に力強くつけました。

「私の能力目的だってことは把握したわ。
でも軽く引き受けられるほど簡単な話じゃないわ」

「お願いします!妹を助けたいんです!」

「だったら本気度を示してちょうだい。この神社にはすでに4人の少女をかくまってるの。

彼女達のためにしばらくここに滞在してもらえるかしら。

その日々を観察したのちに協力するか判断させてもらうわ」

私は深呼吸して気持ちを冷静にさせ、やちよさんを見ました。

「ここに少しの間滞在して、いいですかね」

「私は構わないわ」

私はさつきさんの方へ一歩踏み出して伝えました。

「では、しばらくここへ滞在させてもらいます」

「そう。いいわ、じゃあここでしばらくの間生活を共にしてもらうわ。今後何をして欲しいかは、あっちの宿舎に行ってから伝えるわ」

私達は神社の裏側にある二階建ての大きな建物へ案内されました。

そこは民宿と言ってもおかしくないような内装をしていて1階の広間へ移動しました。

そこには3人の少女がいて部屋の掃除をしている最中でした。

「あれ、さつきさん。お客さんですか?」

「そうよ、しばらくの間みんなと暮らすことになる人たちよ」

3人のうち一人が私たちの方に近づいてきました。

「はじめまして。ちかです!よろしくお願いします!」

「うん、よろしくね」

見た目はういくらいで、同い年か下の年齢かもしれません。

他の二人は警戒するような眼差しでこちらを見つめていました。

「え、えーっと」

「なんだ、また新しいやつらを拾ったのか」

振り向くとそこには私たちと同い年くらいの少女が立っていました。そして魔力も感じられました。

「魔法、少女なのね」

「拾ったんじゃないわ。彼女達からここに滞在したいと言い出したのよ」

そうじゃないんだけどなぁ。

魔法少女は私とやちよさんの顔をそれぞれ見た後。

「まあいいや」

「キク、彼女達に個々のルールを教えてあげて。後はソウルジェムの集め方とか」

「なんで、それはさつきの役目だろ」

「わたしはー、まだ外の掃除が終わってないし、お守り作成だってあるしー。
もう少ししたら面会の予約があるし」

「最後のは私も必要だろ・・・。

いいよ、やっておく」

「ありがとー。さすがキク」

私たちに見せてきた怖い顔は何処に行ったのか、キクと呼ばれる魔法少女に向ける顔は自然と出る笑顔で溢れていました。かなり信用し合った仲なのだということが分かりました。

キクさんは私たちの方へ向かい直しました。

「じゃあ、ここの決まりを案内してあげる」

キクさんから受けた説明はこうでした。

料理は当番制。さつきさん以外の人が変わりばんこで担当するものの買い出しは3人の子達が手分けして実施する。

掃除も3人の子達が担当するが、しばらくは私とやちよさんも参加する。

小規模な畑があって季節に合わせて様々な植物を育てている。
時々でいいから世話をして欲しい。

グリーフシード集めは周囲の魔法少女と取り合いになる可能性が高いため、この神社を取り囲むようにある森の内側だけで実施すること。

助けを求められた時に限って外側の魔女退治はしてもいい。

そして私たちには2階の部屋を与えられて予想もしていなかった生活が始まったのです。

早速晩御飯を一緒にすることにしました。

料理は3人で行ったようですが、下処理が少し雑なのか火が通っていない部分があったり魚に内臓が少し残ってて汁が苦くなっていました。

ここで生活するなら、彼女達に料理の仕方を教えたほうがいいかもしれない。
3人は人間とはいえまだ子ども。忌み嫌う必要性はありません。

その日の夜は何も起こることもなく、次の日になりました。

私は顔を洗うために一階へ降りるとキッチンにはキクさんがいて朝食の準備をしていました。

「おはようございます」

「おはよう。あんたも連れと同様起きるのが早いんだな」

「それってやちよさんのことですか」

「そうさ。あいつ料理の仕方であれこれ突っ込んできたんだ。あんなにうるさいなら、料理当番について少し見直したくなるよ」

きっと料理の仕方で指摘したくなっちゃったのでしょう。やちよさんらしいです。

少しリビングを探索しているとやちよさんが玄関からリビングへ入ってきました。

「おはようございます、やちよさん」

「おはよう、いろは」

「あの、何をしていたんですか?」

「外を散策していたのよ。まだこの建物の勝手を知らないし」

「確かに。まだ知らない建物も多いですし」

「いろは、ちょっと」

やちよさんに連れられてついた場所は、表の神社の後側にある建物でした。そこに着くと、私はやちよさんが伝えたいことがすぐにわかりました。

「魔女の気配が微かにしますね」

「そう。きっとこの中にいるんでしょうけど、私たちが立ち入ると何を言われるかわからないわ」

「さりげなく聞くとか」

「向こうから手を出してこない限りは様子を見ましょう。まずはさつきさん達から信用を得ないといけないんだから」

「そうですね」

私達はその場を後にし、住居へと戻りました。

朝食の時には全員が揃ってリビングに揃っていました。そこでさつきさんが食事中に私たちへ話しかけてきました

「今日は二人にも働いてもらうよ」

「働くって、何をすれば良いのでしょう」

「実はこの家と神社の裏には大きい畑があるのだけど」

「朝見てきました。水田もあるのは驚きです」

「そうでしょう?
大昔にここら辺で災害があった時にこの神社へ避難した人たちが生き残るために整備した名残らしいよ。
で、やってもらいたいのはその畑での仕事」

「私たちがやり方を教えるよ!」

小さい子の一人が、確か最初に自分の名前がちかだと自己紹介してきた子です。元気そうに会話へ入り込んできました。

「じゃあ、この朝食に使用されているお野菜は」

「ほとんどがここで取れたものだ。
だが肉や魚、果物、日常品といったものは買わないとどうしようもない。
そのうち買い出しもお願いするかもしれない」

「はい」

買い物か。魔法少女だけになっても、お金は必要になっちゃうのかな。それとも。

食事が終わり、洗い物は私が担当しました。

洗い物をしている最中、一人がずっと私の方を見つめていました。

最後の皿を洗い終わり、手をタオルで拭き終わった後にやっとずっと見ていた少女へ話しかけました。

「何か、気になることでもあった?」

「畑の説明してって、頼まれたから」

そう言って少女は玄関まで小走りで移動して、扉前まで行くと私の方を向いて待っていました。

私はそのまま少女について行って畑へ辿り着きました。

その畑は私が知らない場所にあり、真っ赤になったミニトマトとまだ小さいきゅうり、そして芋の芽と思われるものなどたくさん植えられていました。

「こんなにたくさん」

私は少女からどこに何が植えられているのかを聞き、田んぼの場所まで行くとやちよさんとちかちゃんが既にいました。

「やちよさんも説明を受けていたんですね」

「ええ。でもすごいわね、田植えまで本格的に行っているなんて」

「さあ!まずは雑草取りからやろう!」

畑仕事というのは思った以上に大変でした。

説明を受けながら作業をしているうちにもう日が落ちるような時間になっていたのです。

「もうこんな時間」

「よし、帰ろうか!」

3人目の子は買い物に行っていたらしく、冷蔵庫にはすでに食材が入れられていました。

今晩のご飯を作るのは私が担当でした。

私が料理をするついでに3人へ野菜の切り方など料理の基本となる部分を教えました。

そうやってキッチンが賑わっているとさつきさんとキクさんもキッチンへきました。

「何か賑わってるな。何やってるんだ」

「料理について教えていたんです」

「あらぁ、キクも説明受けたらいいんじゃない?」

「馬鹿にしてるのか!」

「いろはお姉ちゃんいろんなこと知ってるよ!知らないこといっぱい!」

料理中も好評だったようですが、出来上がった料理でもみんなが驚いていました。

「すごく美味しい!」

「料理上手なのね。もう毎日お願いしちゃおうかしら」

「私は構わないですが」

さつきさんも私をほめてくれました。しかし、これは認めてくれたとは違うと思っています。

それから数日間さつきさん達との共同生活が続きます。

畑仕事が中心ではありますが時々は買い物に、時々は魔女退治に行くこともありました。

魔女退治の時は私達は強い方だとキクさんが感心していました。

ここの人たちとの距離は縮まっている感じはします。

しかし今だに神浜へ来てくれる様子はありません。どうすれば来てくれるのだろうか。

 

 

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