【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-1-5 同じでは、ないです

2人は車に乗ってホワイトハウスへと向かった。ホワイトハウスの一室には神浜で保護された少女がいる。

その少女はどうやら魔法少女について調査していた人物と面識があるらしく、私たちの知らない魔法少女事情を知っているかもしれない。

本来であれば自白剤等の強引な方法をとっているが彼女に付き纏う謎の力によって一切手出しが行えない。

謎の力は魔力を帯びているというのは確かだが、魔法少女とは違った性質で未だに対策が行えていない。

そう、彼女が口を開いてくれるのを待つだけしかないのが現状だ。

ホワイトハウスへ到着したイザベラは少女がいる部屋の扉をノックした。

中にはホワイトハウスから提供された服に身を包んでお気に入りの人形を持っている少女が窓から外を眺めていた。

「かごめさん、調子はどうですか?」

「体調は、問題ないです」

「それは良かった。
それで、今回来たのはですね」

「…すみません、ひとつお願いがあるのです」

「私の言うことは聞かずにそちらがお願いして来るとは、随分と勝負に出たことをしますね」

イザベラは意識していないがイザベラの発言は他人から見たら不思議と威圧が含まれていて心を強く持つものでなければすぐに怯んでしまう。

かごめさんはイザベラの言葉を聞いて強張った顔をして壁際まで逃げてしまった。

「イザベラ、逆効果だ」

「ふんっ、つまらないお願いじゃなければ聞いてあげましょう」

”かごめちゃん、ほら勇気を出して“

「う、うん」

腹話術なのか知らないが、あの人形はよく喋る。どういう仕組みなのだろうか。

「キアラさんと、お話しさせてください」

「私とですか?」

「はい」

私はイザベラの方を見た。

イザベラは私とかごめさんを二回ほど交互に見てそのあと。

「立ち話で済む程度ならどうぞ」

「ありがとうございます」

「それで、私に話したいこととは?」

「キアラさんは、日本が好きですか?」

そういえば初対面の時、何も考えず同じ日本出身だと話していたか。

この質問は軽く答えてはいけない。ただ疑問に思ったからということだけなのかもしれないが、回答次第ではイザベラの機嫌を損ねる。

だからと言ってイザベラに配慮した回答をしてしまえばかごめさんはさらに心を閉ざしてしまうかもしれない。

意図を確認しよう。

「どうして、そのような質問を私に?」

「キアラさんは日本の人だから。出身の国がひどいことになっているのに、どうして平気なんだろうって思ったからです」

「私は人間側の存在です。魔法少女関連の問題が解決したら日本だっていつも通りです」

「同じ女の子が何もしていないのに、ひどいことをされているのに」

かごめさんはどんどん声が小さくなっていきました。

「同じでは、ないです」

しばらく部屋の中が静かになった後、イザベラが話し始めた。

「はいおしまい。キアラに同情してもらおうって思っても無駄よ。さて、今度はこちらのお願いを聞いてもらおうかしら」

かごめさんが身構えた時、持っている魔力センサーが反応して音が部屋中に鳴り響いた。

「こんなところに、どこから!」

かごめさんが何故かその場にしゃがむと窓の外から勢いのついた鉄塊が飛んできて窓際には大きな穴が空き、部屋の壁は貫通はしなかったものの大きく破壊されてしまった。

衝撃からイザベラを守るためにイザベラの上に覆い被さっていた私の腕には破片が刺さっていた。

「キアラ!」

「大丈夫です、これくらい」

土埃が晴れた先には窓際でかごめさんを抱える謎の人物がいた。

私は謎の人物を見ながら立ち上がった。

「魔法少女がよくここまで潜入できたな」

「お初にお目にかかります、真の大統領。いや、サピエンスの責任者様」

「何のことかしらね。それよりも、ここからタダで逃げられると思っているの?」

「アペ、刃となって!」

そう言って魔法少女はかごめさんを抱えながら炎の剣で切りかかってきた。

私が刀で応戦すると、触れた炎の剣は形を保てなくなって消えてしまった。
魔法少女はすぐに一歩引いた。

「なるほど、アンチマギアと同じか」

「あなた、魂を3つとは変わった体をしてるわね。そのうち誰かしら」

「イザベラ?」

「人間なのに、それとも、もうやめているのかねぇ」

「今すぐここで投降し、仲間と共に人類側へ膝をついて平和的に争いを終わらせようとは思わない?」

「残念だが話し合いで解決すると思うほど我々の考えは甘くない。人間と魔法少女。価値観、倫理観、社会体制すら相容れない存在同士が和解できる可能性など、とっくにこの世界では死んでいる」

「知ってたさ。一応紳士的態度を取ったまでのこと。私もこれっぽっちも和解できるなんて思ってないさ!」

少女は腕から糸を出すと勢いをつけて窓の外へと逃げ出した。

「逃がすな!」

外に待機していた警備隊が魔法少女へ発砲するも、謎の力で持ち上げられた車が警備隊を襲った。

魔法少女は魔力反応を感知させることなく近くの川へと向かっていたが、イザベラが放った一射が魔法少女の足を止めさせた。

「動くんじゃないよ、私はそこら辺の一般人と比べてお前たちを捕えやすい。魔法の反応だってすぐに感知できるから小細工しようとしたらすぐわかるわ。
無駄に動かずこちらにソウルジェムを渡しなさい」

「知ったことか!」

魔法少女は魔力で鉄塊をこちらに飛ばしてきた。

イザベラは鉄塊を避けて魔法少女に向けて発砲した。

「バカ、やめろ!」

かごめさんに当たるリスクを考えろ!

発砲すると予想したのか、魔法少女はかごめさんを前に出した。
すると不思議な力によって銃弾はかごめさんの前で勢いを失ってそのまま地面へと落ちた。

「悪いねイザベラさん、決着がつくときにまた会おう」

そう言って魔法少女はかごめさんを抱えながら川に飛び込んだ。

「魔力反応が検知しずらい。でも河口付近で待てばいい。
各自河口付近で張りなさい。偵察ヘリは川底で動く影を追い続けるように」

「再度魔力反応を検知できました。でもこれは」

上空のヘリから映された映像には川の奥深くを泳ぐ首長竜の影が見えた。

「魔法少女の能力は一つから派生したものしか扱えないと聞くが、体感した限りだと4つでもすまないぞ。何だあいつ」

しばらく川を下っている様子を見ていると、急に眩い光が周囲を包んで、消えた頃には首長竜も、魔力反応も跡形もなく消えていた。

「そんな、どこにもいない!」

「思い出したわ、あいつはヨーロッパで報告があった魔力を感知されない魔法少女だろう」

「それって、聖女ワルプルガの遺体を持ち去ったという」

「突然消えた原理はわからないけど。

う、少し気分が悪くなったわ」

「私も少し、気分が悪い」

私とイザベラは駆けつけた救護班の手を借りながら被害の受けていないホワイトハウスの部屋へ移動した。

何故いきなり具合が悪くなったのかわからないが、心の中に黒い何かが流し込まれたかのような感覚だったのは確かだ
後から知らされたが、川周辺にいた人たちは私たち同様に急に気分が悪くなるという症状があったらしい。

部屋で横になっているイザベラは、ホワイトハウスへ襲撃してきた魔法少女の言葉を振り返っていた。

“人間と魔法少女。価値観、倫理観、社会体制すら相容れない存在同士が和解できる可能性など、とっくにこの世界では死んでいる”

「ふっ、そうだな。大昔から、とっくに和解関係なんて死んでいたさ。

面白い奴がいるじゃないか、魔法少女にもさ」

イザベラは自分の過去を振り返りながら悲しみを含めた笑みを浮かべていた。

 

 

私を連れた魔法少女はヨーロッパのある場所へとワープしていた。
魔法少女は慌ててグリーフシードを取り出し、ソウルジェムを浄化した。

「いやぁよかった、ポンベツカムイと一緒に拠点に現れるかと思っていたよ」

「お望みならすぐここをぶっ壊してもいいよ」

「怖いこというなよカレン。でもすごいね、地球を一周するような距離をフィラデルフィアのコイルで移動できちゃうなんて」

「この聖遺物の燃費が悪いのは知っていたからな、穢れを周囲の人間に流し込めたからこそ無事だった。普通の魔法少女が使うとフィラデルフィア事件の二の舞だ」

私は何を言っているのかわからなかった。でもカレンと呼ばれる人のことは知っていた。
自動浄化システムを世界に広めるために動いていた三人組のうち一人。

「その子が魔法少女について調査していたという少女かい?」

もう1人私たちがいる部屋へ入ってきた。

「そうさ、案外あっさり連れ出せたよ」

「この子が抱えるウワサにこちらの状況を実況されたらたまったものじゃない。助かったよカレン」

「いいってことさ。私はこの後予定通りオーストラリアに行くよ」

「悪いね、でもあれはカレンたちがいないと動かせないものだから」

「わかってるさ。移動のためにフィラデルフィアのコイルはこのまま借りていくよ」

「ええ、全部終わったら返してね」

「はいよ」

そう言ってカレンさんはその場から姿を消してしまった。
この空間にいる2人はグリーフシードを取り出してソウルジェムを浄化していた。
もしかしてここにいる人たちみんな、魔法少女なの?

先ほど部屋に入ってきた魔法少女は私の前に膝をついて目線を合わせてきた。

「あなたがかごめさんだね、カレンから話は聞いているよ。
私はここを取りまとめるミアラという者よ。安心して、ここには魔法少女しかいないから」

「えっと、どうも」

「あなたをしばらく保護させてもらうわ。最終的にどう扱うかは、あなたが魔法少女になるかどうかで決めさせてもらうわ」

魔法少女にならなかったら、何をされるの?

「あなたたちは、一体」

「私たちは人間の軌跡を破壊し、魔法少女が中心の軌跡を産もうと考えている者たちの集まり。
簡単にいうと、人間が生み出したものをすべて終わらせる存在よ」

 

back:2-1-4

レコードを撒き戻す:top page

Next:2-1-6

 

【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-1-3 ほんと、おぞましいものだ

米国 大統領による演説当日

 

米国内は新たな大統領選が始まるのかというくらいの認識で大勢が演説会場へ集まっていた。

テロリスト対策に配置された数十人の兵士に囲まれながらも、民衆は演説台に上がった大統領を見て歓声を上げた。

大統領は歓声を止める合図とも言える右手をあげて民衆を見渡した

歓声が鳴り止むと、演説が始まった。

そして演説が始まると同時に世界各国、あらゆる放送電波が何者かにジャックされ、全てが米国大統領の演説に切り替わった。

”私は、世界を揺るがす事実を伝えると同時に、国連へ新たな提案を行うために今皆様へお話ししています。

皆さん、この世に魔法と呼ぶものがあると思いますか?

アニメや漫画といったフィクションにしかないと思う方も、オカルトだと思う方、そもそも存在しないと思う方もいるでしょう。

私は断言します。

この世に魔法は存在すると!“

演説台を取り囲む民衆は突然魔法という言葉を使い始めた大統領を目の前にしてざわつきを抑えきれなかった。

そんな中演説会場に用意されたモニター、そして世界中のあらゆるテレビやモニターには神浜で起きた惨劇の映像が流れた。

”実は我々の身近には既に魔法が存在していたのです!

これは私の気が狂ったわけではありません。

今みなさんにご覧いただいている映像は日本 カミハマシティにて発生した化け物の大量発生した様子を我が国の兵士が持ち帰ったものです。

見れば見るほど現実とは思わず、作り物だと思い込んでしまうでしょう。

否!これはフィクションではなくノンフィクション!

私自身もこの化け物と対峙し、その存在を認識しました。

その存在は、身近ところに潜んでいるというのが事実なのです!“

ざわつく演説会場で突然二つの叫び声が聞こえ、その叫び声を上げた少女達からは化け物が飛び出し、演説会場は二つの魔女の空間が混ざった状態で包まれた。

民衆達が逃げ惑っている中、大統領は演説を続けた。

“なんてことだ!こんな大事な時に目の前で発生してしまうなんて!

実はこの化け物に対して魔法少女と呼ばれる存在が日々、排除活動を行なっているのですが、果たして助けに来てくれるのだろうか。

護衛にいた兵士たちの銃弾では歯が立たない!

どうすればいい?!”

そう話した後、魔女の結界へアンチマギアを武装した集団が侵入し、使い魔と魔女へ攻撃をはじめた。

その攻撃は勿論効果があり、兵士たちは民衆の保護を始めた。

“あれは我が国の兵士。私がこの事態を予想して準備してきた武装を彼らは用意してくれたのです。”

2体の魔女はあっさりと倒され、周囲は普通の風景へ戻った。

“急な出来事で民衆へ被害が出てしまいましたが、もう安心してください。

このような事態へならないよう、私は化け物へ対抗するための案を用意しています。

それは、「アンチマギアプログラム」です。

アンチマギアプログラムでは先程の化物へ対抗できる武装の開発と量産を行う許可を下す法案と、その量産体制を整える権利を各国へ与えるものです。

もう一つは、化け物の発生原因である魔法少女という存在の捕獲、そしてその魔法少女という存在をこれ以上増やさない計画の実行許可です。

みなさんの身近に、非現実だと思われた存在が現実に存在したということは認識してもらえたでしょうか。

もし、アンチマギアプログラムが世界で実施されるようになりましたら、世界中の皆様も、どうか協力をお願いします。“

 

米国大統領の演説を、サピエンスのメンバーは4人揃って眺めていた。

テレビに映る様子を見ていた中の1人が話し始めた。

「とんだ茶番劇だね、こりゃ」

「ディア、あれは国連の頭が固い連中を説得する上で最適な方法なんだよ。
人には被害が出たが、かえって現実味が伝わったでしょ」

「頭の固いやつは見るだけじゃ意見変えないって。そんなことより私は実験に使えたはずの二名が魔女化して普通に処理されたことが気に食わないの」

「あら、あの時は渋々OKを出したじゃない」

「まあ、そうなんだけどさ。やられ方が普通過ぎる。
なんかこう、新たな倒すための手段がひらめくような状況になればと思ってたけど。普通過ぎる」

「あなたにとっては普通でも、このパフォーマンスによって世界は魔女を脅威と錯覚してくれるはずよ。魔法少女については、少し印象が薄いかしら」

「カルラ、キチンと魔法少女を魔女にしたじゃないの」

「あれが魔法少女だって認識がみんなできていたらの話よ。

まあいいわ。魔法少女は歴史を改変するって点はおいおい印象付けるとしましょう」

「ええ、電波ジャックの件は助かったわ」

 

世界には強引にも魔法少女の存在が知れ渡り、わたしの理想が叶うところまできた。

米国大統領の演説が終わった後、国連ではアンチマギアプログラムの議案が提出され、あっさりと可決された。

世界は魔法という概念が実在するという認識が半信半疑で広がっていき、女の子、と呼ぶくらいの女性達は化け物へと変わってしまう魔法少女ではないかという疑心暗鬼も広まっていった。

見た目で魔法少女かどうかなんて判断できない。

そんな中でアンチマギアプログラムには魔法についての予防接種を受ける義務を与える内容も含まれている。

予防接種を受けると首元にバーコードが刻まれ、予防接種を受けた者はキュゥべえや魔法少女が使用しているテレパシーを受信できなくなる。

魔法少女かどうかの疑心暗鬼はこの予防接種を受けたというバーコードで解消されていくだろう。

では、既に魔法少女となっている者達はどのような処置が行われるのか。

アンチマギアプログラムが国連にて可決されてから3日後、各地に散った工作員達へ指示を与えるために私はペンタゴンの地下にあるサピエンス用の施設へ来ていた。

そこで無線を使用して工作員達へ指示を出した。

「もうじき作戦時間だ。これより、魔法少女掃討作戦、作戦名「魔法少女狩り」を開始する。

いいか、これは虐殺するための作戦ではない。

担当区画の魔法少女達を拘束し、決められた保護施設へ収容するのが目的である。相手から降伏を申し出てきた場合は丁重にもてなして拘束せよ。

また、ヨーロッパにはアンチマギアをかいくぐる存在がいると確認されている。

見た目は少女だと油断せず、魔法少女を逃さず拘束せよ。

以上!作戦開始!」

私の合図で世界各地で魔法少女狩りが実施された。

工作員達は手渡された魔力探知機を使用して魔法少女の居場所を突き止め、家族が一緒にいた場合は国連命令として拘束した。

抵抗する者には武器の使用が許可されており、無理やり拘束を行った。

拘束された魔法少女達はソウルジェムへ細工が施され、ボタン一つでソウルジェムが破壊されるようになってしまう。

しかし、下手に抵抗しなければ管理区画内に限って人並みの生活を送ることができる。

拘束される際に抵抗が激しかったり、かつて国へ大損害を与えた魔法少女については…。

こうして魔法少女狩りが実施されて3カ月が経過した今、魔法少女狩りの進捗は芳しくなかった。
演説が行われたころから国内のほとんどの魔法少女が国外へ逃げ、ヨーロッパの一部とカミハマシティは予想外に魔法少女の捕獲が失敗という結果になった。潜入した工作員が誰一人帰ってこなかったのである。

他の国でも魔法少女の捕獲は成功したものの全員ではなくどこに潜伏したのか行方知らずの魔法少女が多い。

そんな中、魔法少女によるヨーロッパの武器庫破壊が発生した。

 

計画がうまくいかない中、サピエンスの実験施設には武器庫破壊のリーダー格である魔法少女が放り出されていた。
放り出されている空間は真っ白な鉄壁に囲われていて、高いところには内部をモニタリングするための部屋が用意されている。
見た目は真っ白な部屋だが、ここでは何人もの魔法少女が実験のために殺されてきた。

「あんた達の中心人物について教えてくれれば、あんたの部下の命が犠牲にならずに済んだのにさ。
部下よりも自分の命が大事かい?」

「捕まった時点で死んだも同然さ。それにしったところであんた達がドウコウできる問題じゃない!」

尋問していた研究員が銃弾を一発、魔法少女の左足へ撃ち込んだ。

魔法少女は痛む様子がなく、血が流れ続ける左足を見て困惑していた。

「アンチマギアの濃度を上げた弾薬だ。

肉体の感覚と魔力が遮断されるまでの間隔が短すぎて痛覚も機能しなかっただろう?

気づかずに死んでいたっていうのは、ちょっと優しすぎるかな?」

尋問する研究員は魔法少女の周りを歩き出した。

「武器庫破壊が行われた際、他各所でもアンチマギアが納められている施設が襲撃されて大打撃を受けたって聞いてるんだけどさ。

それって、世界に顔がきく魔法少女界のドンが存在して、みんなに指示を出してるってことだよね。

そいつらのせいか、魔法少女狩りも進行度的によろしくないのよね。

仮に教えてくれなくても、少しは抵抗してくれないかな?

これ一応実験中なんだけど」

「何度聞いても同じだ。わたしは知らないし、一思いに殺してくれても構わない。

抵抗するのがお前の望み通りになるのであれば、わたしは抵抗もしない」

「つまらないねぇ」

研究員は躊躇なく魔法少女の頭を一発撃ち抜いた。

撃たれた魔法少女は糸が切れた人形のように力なく横たわり、ソウルジェムに穢れが溜まっていった。

研究員が魔法少女のソウルジェムを回収するために魔法少女の手首へ手を伸ばした。

するといきなりソウルジェムからアンカーが飛び出してきた。

ソウルジェムから伸びる鎖に繋がったアンカーは研究員の腕輪が光った後に出た赤紫色の結界を破壊し、そのまま真っ白な実験部屋の壁へ研究員を叩きつけた。

研究員の腹部はえぐられ、周囲には血が飛び散っていた。

アンカーを持った魔法少女はソウルジェムを濁らせながら糸で操られた人形のように壁を破壊し出した。

実験部屋の外では研究責任者が殺されたと慌てふためく研究員達がいた。

そんな中、実験部屋で暴れる魔法少女を見ても、殺された研究責任者を見ても落ち着いて様子を観察していたもう1人の研究員がいた。

「毎度のように慌てるんじゃありません。わたしが対処するのでみなさんはデータ整理をお願いします」

「わ、わかりましたカルラさん」

カルラと呼ばれる研究員は実験部屋の扉へパスワードを入力して扉を開いた。

カルラはすぐに砲身が細長い銃をアンカーを持つ魔法少女へ撃ち込んだ。

物理的な弾ではなく、レーザーのような単発銃はアンカーを持つ魔法少女へ弾を秒間1発の間隔で命中させた。

銃撃を受けたアンカーを持つ魔法少女は再び動かなくなった。

カルラは針が4本内側についた球体を取り出し、アンカーを持つ魔法少女のソウルジェムを球体の中に入れて閉じた

4本の針はソウルジェムへピッタリとくっつき、微弱な電波のようなものを発していた。

ソウルジェムが球体に入れられた後、アンカーを持つ魔法少女は完全に動かなくなった。

「実験中断。研究員各位はクローン体を介した遠隔操作、痛覚麻痺弾薬、及びシールド技術の実験データの整理と解析を行ってください。

ソウルジェム隔離実験はディアの代わりにわたしが引き受けます。

掃除班への連絡も忘れないように。

以上。各位次のステップへ移ってください」

指示を出し終えたカルラは実験室を出てある部屋へと向かった。

部屋へと向かう道中、カルラはそこらへんで売っていそうなタバコに火をつけて少しだけ気分を落ち着かせた。

カルラが向かった部屋にはガラスケースのような蓋がついたベッドに横たわる実験室で死んだはずの研究責任者が眠っていた。

カルラはベッドの装置へパスワードを入力するとガラスケースが上方向に開き、内部の冷気が周りに溢れた。

中にいた研究責任者は少ししてから目を開いてむくりと起き上がった。

「視覚的観測だが、魔法少女が魔力を放出してからシールドが発動するまでにラグがあった。

シールドの強度以前に発動が遅れてシールドが発生し切る前に殺されていた。

とはいえ、クローン体も労ったらどうだ、ディア」

「何をいってるのさカルラ。クローンを遠隔操作できただけで十分な実績じゃないの。死んだ時の感覚は若干残ってるけど、まあ想定よりも痛くなかったし」

「相変わらず倫理観皆無な考えで安心したよ。そのクレイジーはあまり周りに醸し出すんじゃないよ、クローン体だって知っていても慣れない研究員は大勢いる。
それに、私個人としてはディアは死んでも大丈夫な存在だとあまり思われてほしくない」

「なんと言われようとわたしは変わらないよ。
さて、私はイザベラに会ってくるよ」

「なんだ?殴られにでも行くのか」

「んなわけあるか!」

ディアが部屋を出て行った後、私は部屋を見渡した。

ここにくる前からディアはクローン技術について優秀ではあったが、行き過ぎたクローン技術は恐ろしさしか感じない」

ディアが寝ていた部屋の壁には培養槽が敷き詰められていた。

培養槽には成長しきったディアのクローンからまだ胚のクローンの姿があった。18個あるうちの17体が生体となっていて目を閉じて水の中であるにもかかわらず呼吸している。

「ほんと、おぞましいものだ」

カルラはポケットにしまっていたソウルジェムを閉じ込めた球体に異常がないか確認した後、クローン部屋を後にした。

 

back:2-1-2

レコードを撒き戻す:top page

Next:

 

【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-1-2 さあ、これがあなたたちがフィクションだと嘲笑ったものですよ

神浜にて魔法少女が魔女のような姿になって街の人間を全て殺戮するという事件が起きた。

この出来事は日本からSNSにて世界に発信された。

世界では何が起きたのか分からずに面白がる人間しか出なかったが、これを機会に動き出そうとしている組織がいた。

神浜での異変が起きるまでに魔法少女について様々な報告を国連へ密かに行っていた組織の名前はサピエンス。

サピエンスは魔法少女を人間が管理し、その力を人間の未来に役立てるという名目のもとで動いている組織である。

そんなサピエンスの中心人物であるイザベラは国連の秘密部屋で国のトップたちを集めてある提案を行っていた。

「レディ、君たちには今までに起きた不可解な事件のレポートをもらっているが、こんな非科学的な事に付き合わせる我々の身にもなってくれないか

「あら?日本の神浜市という場所で起きた異変について世界中で騒がれているにもかかわらず、ロシアのお偉い様はあれもフィクションだと思っているのですか」

魔法などというアニメや漫画でしか存在しないものを現実に持ち出されてもねぇ。神浜という場所で起きた事件は、里見という人物が密かに行っていた実験が原因だとも噂されている。
神浜にあった実験室が原因で起きたバイオハザードが原因だと言った方が民衆は納得いく」

「では、我々の兵士たちが命懸けで持ち帰った現場の映像を見ても、神浜にて起きた異変がフィクションだと言えるでしょうか」

イザベラはモニターの電源を入れて用意していた映像を再生した。

その内容は、異変が起きている最中に生存者を保護するために立ち入った兵士が残した映像だった。

映像は激しく揺れながらも、人のような人物から出ている大きな化け物が人々を喰らっている様子が映っていた。

中にはアニメのような魔法によって燃やされる兵士もいて、撃った銃弾は化け物を傷つけてもあまり効果がない様子が目にとれた。

しかし。

「よくできたCG映像ですが、これのどこがノンフィクションだと?」

イザベラはため息をついた後、集まっている5ケ国の代表者たちの顔色を伺いました。

米国大統領以外、イザベラの目を見るものはいませんでした。

「そうですか。

まあ、聞くより見る方が早いとも言いますし、実際に体験してもらいましょうか」

そうイザベラが言うと、イザベラはポケットから穢れが満ちそうなグリーフシードを取り出します。

「なんだねそれは」

「これはグリーフシードという、先ほど映像で見てもらった化け物が生まれる卵です」

「そんなものがあるはずが」

イザベラはロシア代表の声を聞くことなくグリーフシードを卓に力強く突き刺した。

その途端に、周囲には魔女空間が広がっていき、5カ国の代表者もそこに巻き込まれます。

「何が起きているの?」

「それに、何か動くものがいないか?」

それは勿論、魔女の使い魔です。

「イザベラ!危険な場所に連れてくるとはどういう気だ!」

「安心してくださいジェームズさん、彼らが認識してくれればすぐ対処しますよ」

「何かあってからじゃ遅いんだよ!」

「まあまあ、誰も死なせる気はありませんよ。四股が十分に残っているかは別ですが」

そう言ってイザベラは困惑している4カ国の代表者たちに話しかけます。

「さあ、これがあなたたちがフィクションだと嘲笑ったものですよ。フィクションだとしたら、なんの害もないはずですよね?」

「何を企んでいるんだレディ!早く私たちを解放しろ!これ以上の愚弄は国際会議に」

そう言いかけた中華民国の代表者の目の前には小さなタコのような生物が現れます。
その生物は可愛い目を中華民国の代表者へ向けて口を大きく開き、中華民国の代表者の親指を食べてしまったのです。

周囲には叫び声が響きわたります。

「おかしいですね?フィクションなら怪我をするはずがないのに。

これがフィクションではなく、ノンフィクションだとお気づきになりましたか?

もし理解してくれたのであれば、私に泣いて懇願してください。助けてあげますから」

「なんて奴だ」

「どうやら私たちの認識が甘かったようですね」

「ふざけた真似を!私は認めないぞ、こんなこと!」

「キアラ、彼らに銃を渡してあげて」

私はバッグに入っていた4つの拳銃を4カ国の代表者へ地面を滑らすように渡した。

「状況を理解して私側につくという方は銃を取らずに私の方へ、私をこの行いを機に死刑にしたいと思っている方はその拳銃を握って自力で脱出してください」

フランス、英国、米国の代表者はイザベラの方へ向かい、中華民国とロシアの代表者は拳銃を手に取ります。

「ふん、お前たちの力がなくたって」

2人の代表者は使い魔へ向かって発砲しながら出口を探し始めます。
しかし銃弾では使い魔を怯ませることしかできていませんでした。

我々が普段使用している薬莢に火薬を含んだだけの弾丸では化物へ有効打を与えることができません」

イザベラの方へ向かってきた使い魔たちへ私はバッグの中にあるm16a1を出して使い魔たちに弾丸を放ちます。

その銃弾を受けた使い魔達は生き絶えて消えていきました。

「でも、我々サピエンスは化け物に対する特攻兵器の開発に成功しています

私はイザベラへ銃とカートリッジを渡し、リュックを背負った後に対魔女用の剣を抜刀します。

「さて、わからずや達を助けてさっさと脱出しましょう」

3カ国の代表者はイザベラへついていくしかありませんでした。

自分で抵抗しようとしていた2カ国の代表者は弾薬が切れて、使い魔から逃げるという手段しか取れていませんでした。所々かじられて血が出てもいます。

使い魔達は群がって2人の代表者を捕食しようとしていたところ、イザベラの銃弾が使い魔達を貫きます。

「な、なぜ奴らに攻撃が効いている?!」

「サピエンスが開発した対化物兵器ですよ」

私は近づいてくる使い魔を剣で斬りつけながら代表者達を守っていました。
イザベラは、最初は付いてこなかった代表者二人に手を伸ばします。

「さあ立ってください。さっさとここから出ますよ」

座り込んでいた2人の代表者は渋々イザベラの手を取って立ち上がります。

イザベラ達はセンサーを元に魔女へと続く扉を探していき、2階層ほど進んだ先で雰囲気が変わりました。

そこにいたのはマンタのような姿をした魔女でした。

「レディ、あれを倒せばここから出ることができるのですか?」

「そうですよ。まあ私たちに任せておいてください。
キアラ、彼らの護衛はよろしく」

「了解」

イザベラは魔女の方へ走っていき、魔女の周りを走りながら閃光弾を撃つための銃へ特殊な弾丸を込めて魔女へ向かって放っていきました。

特殊な弾丸は魔女へ当たる前に爆発して、周囲には赤紫色の粉が撒き散らされます。

イザベラは手に持った銃で使い魔を追い払いながら合計4発の特殊な弾を放っていました。

4発撃ち終わった頃には魔女の動きが鈍くなって、使い魔ともに地面へ降りた状態となっていました。

「化物の動きが鈍くなっている?」

「あれはアンチマギアという成分を周囲へ振り撒いた結果です。サピエンスが発見した対化物兵器の一つで、化物の動きを鈍らせることができます」

そう話しながら私は剣で元気な使い魔達の相手をしていました。

「では、その剣も?」

「ええ。アンチマギアが練り込まれた金属で鍛えられた剣です。イザベラがあれを倒すまで、私が必ずあなた達をお守りします」

イザベラの方はというと、魔女へ銃弾を浴びせながら致命傷となる場所を探していました。

粉を浴びた使い魔はついに動かなくなったものの、魔女はマンタの目となる場所から伸びた触手へエネルギーを溜めてイザベラへビームを放ちます。

イザベラは素早くかわし、魔女の背後まで円を描くように走り抜けました。

イザベラがビームを放った触手へ銃弾を当てると魔女は苦しみ出します。

「なるほどね」

イザベラはカートリッジを入れ替えて魔女の腹部分で無数に垂れている触手へ銃弾を浴びせました。

「your only place is hell!(お前の居場所は地獄だけだ)」

触手が破裂するほど魔女は苦しんでいき、全ての触手が破裂した頃には魔女が粒子となって消えていき、魔女空間は空間を歪ませながら消えていきました。

私たちが戻ってきたのは、机が真っ二つに割れた状態の今までいた会議室でした。

「キアラ、応急処置を」

私がバッグを下ろして2人の代表者へ応急処置を行う時間は、各代表者達の思考を整理する時間でもありました。

応急処置が終わった頃にイザベラが話し出します。

「今みなさんに体験してもらったのは、私が資料で報告していた化物がノンフィクションだという事実、そして対抗手段はサピエンスしか持っていないというもう一つの事実です。

ここまで見聞きしたことを踏まえて、まだ我々が虚言や戯言を言っていると思う方はいますか?」

5人の代表者は皆揃って首を横に振りました。

「ではやっと本題です」

イザベラはバッグ内に潜めていた小さなアタッシュケースを開くと、そこには小さな試験管に赤紫色の液体が入ったもの4本と分厚い4冊の書類が入っていました。

「ここには化物へ有効打を与える成分「アンチマギア」のサンプルとアンチマギアについての説明、加工方法を記した資料があります。

これらを無償で提供します」

「でもそれは、あくまでサンプル。量産のためにはそのサンプルを、もしくはその原料を手に入れる必要があるかと思いますが」

「そこで取引です。実は量産のための培養槽を既に用意していて、培養方法はお渡しする資料へ記載してあります。

培養槽とある程度の素材をお渡しするのは、我々が兼ねてから計画している「魔法少女狩り」の全国実施許可と民衆への魔法少女予防薬の摂取義務化の議決を可決させることが条件です」

「それで常任理事国である我々を呼んだわけか。それで、そのアンチマギアとやらはビジネスになる話なのか?」

「それは勿論。魔法少女狩りの実施が可能となったら、我々はアンチマギアが含まれた武器を常任理事国ではない各国へ一式をおよそ50万ドルで提供しようと思っています」

「少々良心的ではありますな」

「各国に渡ってほしいという考えも少しはありますから。

その基準価値を参考に、各国は素材量、培養槽増産や研究費といったものを見積もって経済を動かしてもらえればと。

それに、少し大ごとになれば武器生産も回りますから」

「それもそうだな」

「魔法少女は先程の化物と違って知恵があります。
早めに議決に向けた動きをとっていただければ、魔法少女狩りに向けた準備期間もふんだんにとれるでしょう」

「して、君たちの行いたい魔法少女狩りと予防薬摂取にはなんの狙いが?」

「魔法少女は将来、あの化物となります。

今のうちに化物となる前の魔法少女を全員確保し、化物となった際の被害を最小限にするため。

そして、そんな魔法少女になる前に、魔法少女にさせない対策を行うことでこれ以上の化物の発生を防ぐという狙いがあります

それに、人類史をなかったことにされる可能性も減らせます」

「では、そのアンチマギアという物質のビジネス効果は一時的だな」

「案外長引いてしまうかもしれないですよ。

世界からテロリストを完全殲滅できないくらいくらいにね」

この後、中華民国とロシアの代表者が傷を負って会議室から出てきたことが国連内で少し騒動になったが、2カ国の代表者が騒ぎ立てないでほしいと説明したことで表沙汰になることはなかった。

こうして魔法少女狩り、魔法少女予防薬摂取の義務化という話は裏で各国へ糸が引かれていき、2ヶ月後に行われる米国大統領の演説が行われるとともに議会に提案、そのまま議決までのシナリオが決定した。

この2ヶ月の間に4カ国へアンチマギアの培養槽が提供され、専用の兵器ラインの開拓と戦車や戦艦といった大型兵器の転用実験が裏で行われるようになった。

これが世界が変わる引き金となる、魔法少女狩りがおこなわれるまでに起きていた裏の出来事である。

 

back:2-1-1

レコードを撒き戻す:top page

Next:

 

【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-1-1 もうおしまいだ、何もかも

人類史って、どんな道のりであったかご存知だろうか?

人類が知恵を持ち、組織で活動するようになってから同種同士の争いは今に至るまで終幕を迎えない。

そんな歴史の中で滅びもせず、種の存続が絶えず行えているのは争うのはいつも一部の人間だけだからだ。

争う理由はいくらでもあろう。

そんな争いも時代が進むごとに殺傷速度も、範囲も拡大していき、今となっては地球規模の破壊を行える兵器まで存在している。

それが抑止力となることで大規模な戦争は起きていない。

しかしそれはただの口上でしかなく、やろうと思えば指先一つで地球は滅びる。

 

これは人類の進化した結果として正解なのだろうか?

 

間違いであるならば修正するしかない。

たとえ歴史を覆す力が、魔法少女という化け物由来の力であったとしても。

 

ヨーロッパ 某所

 

「集団の魔力反応を確認。3日前に武器庫を襲撃した魔法少女たちだと考えられます」

「大人しく管理下に入ればよかったものを。何が彼女たちを反抗させるのやら」

「アンチマギア、準備が完了しました」

「よし、鎮圧マニュアルを実行しろ。いいか、できるだけ殺すんじゃないぞ」

森林の廃墟を取り囲むように軍人たちが侵攻を開始する。

その手には特殊な銃と特殊な粉末が含まれたRPGがある。

歩くたびに出てしまう草を踏んだ音、枝を擦る音を魔法少女たちが聞き逃すはずもなく、一瞬のうちに周囲の音が消えてしまった。

消えた音は空気の振動による音だけでなく、電波を伝ってくる音と呼べるもの全てがその場から失ってしまった

異常事態にもかかわらず軍人たちは慌てることなくハンドサインでこの後の行動を共有していく。

1人のRPGを持った軍人が廃墟の上空目掛けてRPGの引き金を引く。

音が無いまま上空で爆散した弾頭は周囲に特殊な粉を撒き散らす。

すると、消えていたはずの音が元に戻った。

”なにgaza tあの、みんp、裏!-て!“

「ノイズがひどい。だが奴らは裏口から逃げるつもりだ。S班、洞窟を張れ」

現地にいる部隊長の指示に従ってS班は獣道が残る洞窟の前で待機した

「N班、E班は引き続き鎮圧マニュアルに従って進軍せよ。N班は作った穴の監視も怠るな」

廃墟を取り囲む軍人たちは廃墟へ取り付き、内部にいる魔法少女の捕獲を開始する。

内部にいた1人の魔法少女は侵入してきた軍人へ小さな錨のアンカーを投げつけてきて軍人は脇腹を貫かれた。

「ここから先は通すものか!」

軍人たちは魔法少女へ銃口を向け、部隊長は魔法少女の前に出た。

「武器を下ろせ、下手な行動を起こせば後の扱いが酷くなるだけだ」

「ふん、あたしたちにとっちゃ保護された時点で死ぬと一緒なのさ」

部隊長がアンカーを持つ魔法少女へ一歩近づく。

「もう一度言おう。武器をおろして降伏しろ」

「…断る」

「そうか、残念だ」

部隊長は建物の中へグレネードを投げ入れた。

内部に残っていた魔法少女たちはグレネードを目にして建物の奥へと逃げ始める。

グレネードが破裂すると破片と共にRPGにも含まれていた謎の粉塵が周囲に拡散された。

粉塵に触れた魔法少女は皆動きが鈍くなり、アンカーを持っていた魔法少女も立っているのがやっとの状態だった。

「なんだこれ、意識が遠く」

軍人たちは内部へ一気に突入し、動きが鈍くなった魔法少女たちのソウルジェムへ銃を押し付けていく。

「まさかアンチマギアか!
なぜだ、武器倉庫は破壊したはず」

そして部隊長がアンカーを持つ魔法少女のソウルジェムへ銃を押し付けながら話し始めた。

我々がサピエンスから与えられた、人ならざる君達へ対抗するために用意してくれたものの一部さ。君たちも知らない一部だよ」

「サピエンス…そうか、あいつが言っていた人間を敵たらしめる存在か」

「裏口から逃げようとした魔法少女、素質のある少女たちを裏口で捉えた。
悪いが仲間揃って身柄を拘束させてもらう。あとは君の言うアイツについて詳しく聞かせてもらおう」

アンカーを持つ魔法少女は驚いた顔をした後、部隊長の足を掴んだ。

「お願いだ、裏口から逃げようとしたやつの中に、グリーフシードが必要な奴がいるんだ。
そいつだけは、見逃してくれないか」

「身の程をわきまえろ。警告を無視したんだ、要求には答えられない」

アンカーを持つ魔法少女は部隊長の足を離し、何も話さずにうなだれていた。

部隊長は状況確認のために各部隊へ連絡を取っていると周囲が禍々しい空間へと変わっていった。

「隊長!S班から拘束した魔法少女が魔女になったという報告が」

「各位、鎮圧マニュアルから対魔女マニュアルに変更。
S班、E班は魔女討伐を実施せよ。N班は私とここで待機だ。
なお、くれぐれも逃亡者が出ないよう見張りも並行して実施すること」

指示を出した部隊長はその場で銃のカートリッジを変更した。

「無駄なことを。人間が魔女に敵うわけがないだろう」

「少し前までではな。人間を甘く見るんじゃない」

そう言った後、部隊長はカートリッジを変え終わった拳銃を一発発砲し、目の前に現れた使い魔を倒してしまった。

「普通の銃弾が使い魔を」

「我々にはすでに争う力がある。お前たち魔法少女に頼らずとも、戦う力がな」

話をしているうちに、禍々しい結界は消えて周囲は元の廃墟へと風景が戻った。

「現状報告。
…あー。わかった。全員を拠点へ搬送しろ」

無線を切って部隊長はアンカーを持つ魔法少女を抱え上げた。

「こちら実行部隊、これから本部へターゲットを搬送する。受け入れ準備を頼む」

「もうおしまいだ、何もかも。
すまないなカレン、あんたの目指す世界に、私は入れそうになさそうだ」

ヨーロッパのかつては中立国を主張していた国だが、今は対魔法少女用の拠点が構えられている。

これは国連が魔法少女は人類の敵であると宣言したためである。

その拠点へターゲットである魔法少女を捕獲したという情報が入った。

「レディ、例の武器倉庫襲撃犯たちを捕らえたとのことです」

「そう、輸送を完了させるまで気を緩ませないでね」

「了解」

携帯での会話が終わったところを見計らい、一緒に歩いているボディーガードの少女がレディと呼ばれている少女へ話しかけた。

「武器庫破壊がわかったから彼女たちの存在に気づけたものの、知らぬ間にかなりの損害が出ていたようね」

「ヨーロッパ地域とアフリカ地域、さらにはロシア領の半分に及ぶ地域に存在した裏組織の対魔法少女兵器が跡形もなく破壊されていた。

そして、武器庫破壊時点で戦車や戦闘機といった大型兵器への転用実験がデータごと吹き飛んだ。

秘密裏に破壊工作や情報収集を行っていたにしても手際が良すぎる」

「魔法少女にも頭がキレる奴がいるってことよ。そう考えると随分と呆気なく終わったなぁ。ちょっと期待はずれ」

2人の少女は建物内へ入り、エレベーターを使って3階の司令室へと移動していた。

そして、エレベーターの中で会話を続けた。

「残ってるのが軍艦への搭載実験だけど、作戦にすぐ使えそうなのは1隻だけなのよね」

「相手は魔法少女。海上からの援護砲撃ができれば十分じゃないの?」

「キアラ、魔法少女にも船乗りがいるかもしれないじゃない。
予備がないっていうのは怖いことよ」

「しばらくは白兵戦しかできないのね」

エレベーターの扉が開き、司令室ですれ違った兵士たちはほとんどがイザベラへ敬礼を行っていた。

敬礼を行わなかった兵士は、近くにいた友人の兵士へ話しかけた。

「あの人たち誰だ?」

「サピエンス責任者のイザベラ様とそのパートナーのキアラ様だぞ。お前こんなことも知らなかったのか」

「俺はアンチマギアとは無縁の部隊だからね。あの二人とサピエンスってそんなにすごいのか?」

「サピエンスは魔法少女と魔女へ特攻を持った成分であるアンチマギアを生み出した、魔法少女を狩るスペシャリストが集まる組織だ。

イザベラ様とキアラ様はその中でもトップクラスに魔法少女と魔女を狩ってきた数が多い方たちだ。もちろん、俺達一般兵が束になって挑んでもかなわないさ」

「ふーん、今の世界情勢だからこそ敬われてるってわけか」

「言葉を慎んどけ。聞かれたら殺されるぞ」

 

イザベラは指令室へ入ると周囲の兵士へ敬礼を返し、ヨーロッパ地域の司令官へ話しかけた。

「提供した武器で事足りたかしら?」

「レディ、武器の供給は感謝する。しかし前回のような大掛かりな実験は魔法少女の標的になると考えるとリスクしかない」

「あら?そんなことを言うならロシアか中華民国へ実験場を移すけどいいのかしら」

「我々が求めているのは人類の安全だ。
レディたちのように魔法少女キラーとして名をあげることに連合のトップたちは賛同していないのだ」

実験場として使っても良いと真っ先に名乗りをあげたのはあなたたちじゃないの。何を今更」

司令官は返事をすることはなかった。

「まあいいわ。国連の宣言に従える最低限のものは提供したから、あとは好きにしなさい」

イザベラは司令室を出ようとしたら足を止めて司令官へ向き直った

「そうそう、もし魔法少女の取り締まりを怠ってヨーロッパが魔法少女の巣窟になりでもしたら、その時はヨーロッパが赤く燃えてしまうということはお忘れなく」

「わかっているさ」

イザベラとキアラが司令室から出ていくのを確認したあと、司令官は愚痴をこぼした。

「少女たちを拘束、殺害する狂った方針をなぜ国連が宣言してしまったんだ。
私は、あの演説を見聞きした後でも理解に苦しむよ」

「魔法少女は願いによって人類史を捻じ曲げてきたとありましたが、それが事実だとするとそこまで必死になるのも致し方ないのでは」

「だから芽が出る前に掘りつくし、出た花は手折るというのか。
監視だけでいいのではないか」

「しかし、今回のように明確に人類へ反抗する者達もいます。
躊躇していたらこちらがやられますよ。
司令官殿には、娘さんがいるのは知っていますが今は耐えるときですよ」

「ふぅ、そうだな。この躊躇は娘が魔法少女だったから、かもしれんな」

 

イザベラとキアラは司令部近くに停められているごく一般的な乗用車のもとへと向かった。

4人乗りの乗用車には1人の運転手が待機していて、2人の姿を見ると車のエンジンを起動した。

イザベラとキアラは後部座席に座り、ドアが閉められたのを確認すると運転手は何も言わずにアクセルを踏んで車は前進を始めた。

「はぁ、司令部で話し込むと思って遅めの飛行機を予約したのにこれじゃあ結構時間が余っちゃうわね」

「それなら折角だ。この国の日常が変わったか見てまわるのも良いんじゃないか?」

アポなしで行けるところなんて広場くらいしか思いつかないんだけど」

「広場で何の問題がある?
どんな身分の人でも立ち寄れる場所が一番欲しい情報を得られると思うが」

「ま、別にいいわ。運転手さん、シャンドマルス公園へ向かって頂戴」

「はいわかりました」

車内から街並みを眺めているけど特に何か変わったこともないいつも通りの日常が広がっていた。

時間帯で言えばお昼過ぎ。

広場には親子連れの姿がたくさんあった。

イザベラとキアラは車を降りて広場から見えるエッフェル塔を見ていた。

あれだけの発表があったのに世の中ってそれほど変わらないものなのね」

「そういうものさ。人って簡単には変われないっていうじゃない?

「魔法少女に対する認識が変わっていればいいのさ、私はね」

そう話していると、広場で遊んでいた男の子がキアラにぶつかってきた。

男の子はぶつかった後尻餅をついてしまい、手に持っていた飛行機の模型は男の子の体重によって壊れてしまった。

「ルイくん大丈夫?」

「ちょっと、よその人に迷惑かけちゃダメでしょ」

男の子が走ってきた方向からは女の子と母親と思われる人物が近づいてきた。

男の子は壊れた模型を見ると泣き出してしまった。

そんな男の子を見てキアラは男の子の前に正座をして男の子の頭を撫でた。

「男子たるもの、すぐに泣き出したらカッコ悪いぞ。
それ、大切なもの?」

男の子はキアラの顔を見て「うん」とうなづいた。

「それじゃあお姉さんに任せてもらえるかな?すぐに直してあげる」

「…本当?」

そんなキアラを見てイザベラが母親と思われる女性に話しかけた。

「いいですかね、彼女が治しても」

「え、ええ」

イザベラ達はベンチのある場所へ移動し、キアラは男の子と女の子が両サイドで見守っている中でバッグから包帯に割り箸、サジカルテープと化粧セットを取り出した。

割り箸は適度な長さで割り、包帯と合わせて折れた翼を補強した。

サジカルテープでは包帯の端を止めるだけではなく、細々とした部品の接着、割り箸のささくれ立った部分を覆うのに使われた。

補強が完了すると、化粧セットを開いてキアラはブラシを男の子に渡した。

「好きな色に塗ってあげて」

男の子は塗り絵をするように包帯やテープの白い部分へ色をつけていった。

そんな様子を見ていたイザベラは女の子の首元へバーコードが付いているのを目にした。

「奥さん、あの2人は奥さんのお子様?」

「そうよ。すみませんね、勝手にぶつかったのにここまでしていただいて」

「いえいえ。それよりもお嬢さんの首元にあるバーコードはいったい?」

「あれですか。最近国連から発表された魔法少女検査を受けた痕です。

バーコードリーダーのようなものを首元に当てて検査を行ったのですが、魔法少女の資格有りと判断されてそのまま注射のようなものも刺されていましたね」

「すげー!前よりかっこよくなった!」

「君がデザインしたんだから当然じゃないか」

「お姉さんすごーい!」

「お姉さん、むこうで一緒に遊ぼう!」

「いいよ。広げた道具を片付けてからね」

キアラはおもちゃを治してすっかり子どもたちに懐かれてしまったようだ。

「あらあら」

「あの子、魔法少女の資格があったんですね」

「私も驚きました。普通に育てたはずのあの子が、まさか魔法少女になれる可能性があったなんて。
でも、予防注射を受けると魔法少女にはなれなくなると伺いました」

「奥さんとしてはどう感じました?」

あのアメリカ大統領の演説時の画像にあった化け物にならなくて良かったと考えると、検査に行ってよかったと思っています」

「そうですか」

イザベラは遊んでいる子どもたちの方へと向かい、女の子へ話しかけた。

「お嬢ちゃん、最近検査を受けたみたいだね。首元のやつ、痛くなかった?」

「最初は怖かったけど、少しチクってした後は何もなかったよ。それに泣かなかった!」

「そうか、強いね。お嬢ちゃん」

「ぼ、ぼくだって強いんだから!」

「模型壊した時に泣いてたじゃない」

「う、うるさい!」

「こら、喧嘩しちゃダメだぞ」

子どもたちの世話はキアラに任せてイザベラは母親と再び会話を始めた。

「検査を受けにきていた人は多かったですか?」

「多かったですよ。なにせ必ず受診してくださいって言われていますからね。
ご近所の方たちも検査に行っていましたね」

「多くの人が、国連からの発表の影響を受けているんですね」

「世の中もっと物騒になった気がします。こうして安全に外で遊べているのは、国連の兵士さんたちが脅威を排除してくれたからなんです」

「おや、発表があっても何気ない日常を送っていたのかとつい思ってしまいましたが」

「いえいえ、危ないので外になんて出る人はいませんでしたよ。でも国連の兵士さんたちが外を見回って脅威を排除してくれたんです。
こうしてたくさんの人が外にいるのは、そういった経緯があったからなんです」

「そうでしたか」

アメリカ同様、あの演説が行われた後はどの国も外出禁止になっていたようだ。

そして、国連の兵士というのはおそらく。

「あなたたちは海外から?」

「はい、父親の仕事にくっついてきてちょっとした旅行気分でいました。
アメリカから来たんですが、実は今日帰国するんです」

「そうでしたか。飛行機の時間、大丈夫ですか?」

時計を見たら1時間半ほど前だった。

「1時間半前か…」

「なんだって?!
ごめん君たち。お姉さんは飛行機に乗って帰らないといけないんだ。ここら辺で失礼するよ」

キアラは急いで私の腕を掴み、奥さんたちへ一言挨拶した後車へと急いだ。

「なんで早く伝えなかったんだ!」

「子どもたちと楽しそうにしていたからさ、45分前までいいかなって」

「入場受付に時間かかるの忘れてない?!これだからファーストクラスに慣れたお嬢様は!」

「そこまで言わなくてもいいでしょ」

私たちは急いで車に乗り、そのまま空港へ向かって無事に飛行機へ乗ることができた。

私は車の中で、キアラにこう伝えた。

「あんた、将来いい母親になるよ」

「おちょくってるのかイザベラは」

アメリカ以外の街並みに触れて分かったが、どの国も最初は慎重に動くようになっていつもの日常なんてなかった。

そんな中、表では脅威排除と呼んでいる「魔女狩り」が行われたおかげで今回のような、なんの変哲もない日常が訪れたのだと思うと迅速な魔女狩り実施は成功だったのだろう。

残念なことは、野良魔法少女は大方捕らえられたものの、組織的な魔法少女のリーダー格を捉えられていないこと。

例の神浜の守りも強固だし、人類の平和が訪れるのはまだ先になりそうだ。

 

 

レコードを撒き戻す:top page

Next:2-1-2

【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 下の録 (完結済)

「軌跡を壊し、奇跡を創る そんな私たちが奇跡を創る」

 

願いを叶え、奇跡を得た少女は「魔法少女」と呼ばれる。

そんな魔法少女が生き続けた先に待ち受けるものは何なのか。

マギアレコードのパラレルディスク、ここから聞こえてくるのは人類史を守ろうと足掻く人類と魔法少女の世界を求める少女達との衝突による炸裂音であった。
人類史へ疑いを抱く魔法少女達と人類史の危機に気付いた人類が動き出した時、世界は一つの終わりを迎える。

この物語では「魔法少女と人間が敵対したら」が実現してしまった世界を描いている。

 

この作品は「マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝」の二次創作です。

マギアレコードのパラレルワールドで展開される話であるため、実際のストーリーとは大きな違いが生じます。
人間の否定、キャラの扱い等で過激な表現が出る箇所がたくさん山ほどあります。耐性のない方は閲覧にご注意ください。

 

 

このページは魔叙事詩カグラ・マギカ 下の録 のトップページです。

上の録はこちらをどうぞ。

1章 この時間軸にしか存在しない抵抗者(サピエンス)

1-1 もうおしましだ、何もかも
1-2 さあ、これがあなたたちがフィクションだと嘲笑ったものですよ
1-3 ほんと、おぞましいものだ
1-4 魔法少女狩り、進捗は良くなく
1-5 同じでは、ないです
1-6 イザベラなら大丈夫だよね?
1-7 どうですか、私は役に立ちますよ
1-8 お安い御用と言ったでしょ
1-9 軌跡が変えられた痕跡を求めて
1-10 これは貴方が求めていたものに値するかい?
1-11 魔法少女はもう人ではない。人でなしに情けはいらない
1-12 お前は永遠に魔法少女と人を戦わせたいのか
1-13 1か0しか選べないならば、1を手にするために私は足掻くわ

 

2章 神浜にて紡ぎ出され始める交響曲(シンフォニー)

2-1 なんで、魔法少女が、争うの
2-2 人間臭いやり方を魔法少女も続けるっていうんですか
2-3 全員が納得いく答えなんて話し合っても出るわけないだろ!
2-4 鏡の向こうは疑わしき事実
2-5 変わってしまった身近だった世界
2-6 かつて助けようとした人を倒すように
2-7 事前準備、全ては後のために
2-8 奇跡を拒絶する紫色の霧
2-9 巫女と4人の少女達
2-10 偽りの神様
2-11 再起の巫女
2-12 慈悲が過ぎる行為
2-13 過去と未来、大事なものは?
2-14 国を守る 国の何を守る?
2-15 決意の朝
2-16 のちに響く計略
2-17 憂いの思いは過去の私念から
2-18 人と同じ道を歩まぬためには
2-19 手を伸ばした先にある結果は

 

3章 激闘と見せかけた神浜鎮圧作戦(ミスディレクション) 

3-1 人になった者と人でなし
3-2 偉そうな研究者
3-3 今はただ、間章に浸るだけ
3-4 神浜鎮圧作戦・下ごしらえ
3-5 神浜鎮圧作戦・その1
3-6 神浜鎮圧作戦・その2
3-7 神浜鎮圧作戦・その3
3-8 神浜鎮圧作戦・その4
3-9 神浜鎮圧作戦・その5
3-10 神浜鎮圧作戦・その6
3-11 神浜鎮圧作戦・本命
3-12 自由に錬金術を行える場所
3-13 最後の手引き先
3-14 個人が尊重されるということ
3-15 どの時間軸にもない澄んだ空

 

最終章 新時代へ導く神楽舞(カグラマギカ)

4-1 団結できるという創作のまやかし
4-2 ずっと続くはずがない「いつもの」
4-3 終に向かい始める世界
4-4 魔法少女がもたらすハルマゲドン
4-5 籠の鳥プログラム
4-6 本命がエサとなりえるか
4-7 立ちはだかる人間らしさ
4-8 鶴と亀がすべった。後ろの正面だぁれ?
4-9 舞台装置が正位置となる時
4-10 終の引き金
4-11 軌跡と奇跡の破壊方法
4-12 カグラマギカ
4-13 奇跡が創る世界

エピローグ

 

【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 4-  エピローグ

死んでしまったら真っ暗な中を彷徨うだけだと思っていた。

何も見えない、触れない、聞こえない、見えない、感じない無のような空間を意識だけ持ちながら永遠に彷徨うだけだと思っていた。

しかし私の目の前には田舎で見るような綺麗な夜空が映っている。

それに身体中が痛い。

そして風は冷たい。

もしかして、まだ生きている?!

私は急に上半身を起き上がらせて生きていることを再確認した。

両手のグローブにはまった宝石は輝いていて、胸元のソウルジェムも健在。

おかしい

あれほどの穢れの塊を受けて生きていられるはずがない。

「お目覚めですか」

聞き慣れない声の方向を向くと、白い服を身にまとった紫髪の女が立っていた。

しかし因果の線を見てすぐに理解した。

「あんた、私と同じく、別世界の人間なのか」

「どうやら因果を目視できるというのは本当のようですね。
潜在的に持っていたとは聞いていないので、契約で手に入れましたか」

何かを知っているようだが、まず聞かないといけないことがあった。

「なぜ私は生きている?あんたは知っているのか?」

「大変だったんですよ、肉体がボロボロになる前に救出するのは。

でも穢れを受けたのは事実で、腐りかけだった体が綺麗に自己修復されたようでよかったです」

「・・・何故助けた」

「あなたは次元改変に巻き込まれたんです」

「答えになっていないぞ」

「巻き込まれたままであればあなたは被害者だった。でも、あなたはこの世界の次元を改変させるようなことを行う加害者になってしまった」

「・・・」

「あなたを放っておけば、この世界はいずれ、次元改変に飲み込まれて世界ごと消滅してしまうでしょう」

「それと私に何が関係ある」

「次元改変を止める方法として、加害者に元に戻してもらう方法があります。

狂わせた分を帳消ししてもらうということです。

もう一つの方法は」

女は槍をどこからともなく呼び出し、抵抗する隙もないまま私の喉元へ刃を突き立てた。

「加害者を殺すことです」

「今の私を殺したところでこの後の軌跡に変わりは出ない。殺すことは無意味だ」

「誰が“この時間のあなた”を殺すと言いましたか?

はじまる前に終わらせるだけです」

どうやらこの女はとんでもない存在なのかもしれない。

過去へ行ける、下手したら未来へも干渉するようなやばい存在なのかもしれない。

「ならばその次元改変とやらに巻き込まれる前に私と、妹を助けることもできるのか」

女は目を閉じて、静かに首を横に振った。

「そうかい。私がここまでやってきたのは、妹と元いた世界と再び出会えないと知って自暴自棄になった結果だ

「では、この後はどうしますか?」

「自暴自棄で爆発した熱意も、勢いももはや残ってなどいない。
根本から刈り取ってもらっても構わないさ」

「あら、見知らぬ世界に飛ばされた後、魔女化という制約がありながら何十年も生き続けた魔法少女とは思えない言葉ですね。

師匠という方に触発されて生きてきたのでは?」

「どうして師匠とのことを知っているのかは気になるが、もうこの後の計画を進める原動力がない。

シオリも、ピリカも死んでしまった。

私が殺したんだ。

人間社会を滅ぼすなんて考えも師匠の受け売りで私自身には何もなかったんだ。
だから、もういいんだよ」

「穢れにでも負けましたか。

あなたが弱気に出るのは想定外ですが、死ぬべきかどうかはこれを見てから考えてください」

紫髪の女は古そうな絵巻を私に渡してきた。

「何だこの古い紙は」

「あら、あの世界では上質な紙なんですよ。慎重に取り扱ってくださいね」

絵巻を結んでいた紐をほどき、中身を見た瞬間、私は目を疑った。

そこに書かれていたのは、見覚えのある文字だった。

”お姉ちゃんへ

私はお姉ちゃんとはぐれた後、見覚えのない世界で目覚めたの。

その世界には怖い化け物がいて、最初は逃げて回っていたんだけど、助けてもらったお姉さんがきっかけで、私、化け物と戦うことになっただよ。

最初は怖かったけど、戦いの中でお姉ちゃんと練習していたカグラが使えるってわかって、どんどん色んな人を助けられるようになったんだよ!

最終的には悪い邪神を私の踊りでやっつけちゃった。

カグラってすごかったんだね!

今はこの世界を安定させるために、一緒に戦ったお姫様のお城に滞在しているの。

そしたら突然つづりさんと出会ってね、お姉ちゃんが生きているって教えてもらったの!

私はお姉ちゃんに会いたいって伝えたんだけど、今はできないって断られちゃった。

でも、この世界が安定したらいつかお姉ちゃんと会わせてくれるって言ってたよ!

私頑張って、お姉ちゃんに会いに行くから!

この手紙はつづりさんに無理を言って渡してもらう予定なんだ。

お姉ちゃんも別世界で頑張って生きてるって聞いてるよ。世界を変えちゃうくらいすごいことだって聞いてるよ!

私も頑張って追いつくから、お姉ちゃんも頑張ってね!

自慢のお姉ちゃんへ

カガリより“

目頭が熱い。

50年近く前に諦めていた、妹のカガリとの繋がりが今手元にある。

間違いない。この字は間違いなくカガリの癖字だ。

私は久しぶりに涙を流しながらしばらくすすり泣いた。大声で泣くことなんてしない。

私はそうやって育てられたんだから。

私は心が落ち着いた頃、目に溜まった涙を拭いて前を向いた。

「あんたは一体何者なんだ?」

「私のことはつづりと呼んでください。多次元を渡り、次元改変を未然に防ぐ者です」

「カガリは、生きているんだな?」

「はい。彼女もあなたほどではないですが世界を変えるほどのことをやらかしていますからね。いまは帳消しの為に世界の監視役をお願いしています」

「監視?」

「自分で作り替えてしまった世界を、責任を持って見守る。

何者かに導かれるはずだった世界を変えてしまった分、代わりに導いてもらっているんです」

「なるほど、カガリと同じことを私にもやれと言いたいんだな」

「察しが早いですね。やってくれますか」

「こんな希望を手渡してくれたんだ。死ぬにも死にきれなくなった」

変に頭に取り憑いていた弱気にさせる何かはとうに消え失せていた

今の私には、生きる以外の選択肢がない。

「それは良かった。それでは、まずはこちらをお渡しします」

そう言ってつづりが手渡してきたものを見て驚いた。

「これは、ピリカのソウルジェム?!」

「体は手遅れでしたが、ソウルジェムは無事だったのでお返しします」

ソウルジェムを受け取ると、聞き慣れた声が頭に聞こえてきた。

[ふふっ、カレンが泣く姿なんて、あの人と別れる時以来かしら]

[見ていたのか。

・・・守ってやれなくて、すまなかった]

[ううん、あれは私のミスだもの。
もう自分で動くことはできないけど、魔力で守ってあげられるよ]

「まったく」

思わず口に出してしまった。

「実はシオリさんもソウルジェムだけは助けているのですが、こちらの都合であなたの活動に進展があったらそのご褒美としてお渡しに行きます」

「シオリも助かっているのか。ほんと、私らの覚悟が馬鹿みたいじゃないか」

「自殺めいた覚悟で誇ろうとしないでください」

「やれやれ、あの状況下で生きているとはね。日継カレン」

声の方向を向くとそこにはキュゥべぇの姿があった。

「何だ?ワルプルガと契約してとっくに姿を消していたと思ったが」

「残念ながら今はワルプルガと契約できるような状況ではない」

「環ういの“異変”のせいでだろ?」

「そこまで理解しているなら、何でこんな回りくどい方法をとったんだい?

君たちにとってはすぐにでも魔女化しない世界を手に入れたいはずじゃないか」

「さぁてね。あんたには理解できないことさ」

キュゥべぇの方を見ながら話した後に顔を上げると、知らぬ間に彼女の姿はなかった。

眼下に広がる街を見ているが、人気は全くなかった。

私達という神浜に集まった多くの魔法少女にとっての共通の敵がいなくなった後、魔法少女だけで生きていく目標は見出せるのか。

今回の騒動は、私たちが残した魔法少女にとっての最後の課題を提起した。

本当はこの世界の存在だけで好きにやってくれという感覚だったが、彼女の話を聞く限り放置するのはまずいらしい。

カガリと再開する為だ。

魔法少女の本当の敵を消して、この世界を安定させる手助けをしようじゃないか。

この世界に起きている異変はすでに顔を出している。

しばらくはその異変を消していく活動になりそうだ。

 

レコードを巻き戻す:top page

【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 4-10 魔法少女狩り前夜

「さて、これは誰の物語なのだろうね」

「急にどうしたんですかキュゥべぇさん」

北陽区にある高い丘の上から神浜の外を見つめていると、となりへいきなりキュゥべえさんが現れました。

これまでに起きた出来事は明らかに日継カレン達を中心に動いていた。これから起こる出来事は彼女達がいない中、誰が主役となるのだろうね」

「仮に誰かの物語だとして、キュゥべえさんは最後まで見守っていてくれるんですか」

「それは無理だ。ぼくはワルプルガが契約さえしてくれればこの星から離れてしまうからね」

「まあ、予想していた答え通りでした」

「しかし思わぬ延長戦だよ。まさか環ういがワルプルガを誰にも渡さないなんて言い出すなんて。
ぼくがワルプルガへ話しかけたとき、攻撃してきたことはこれまでの環ういの行動パターンからは想像できないことだったよ」

希望の光線と穢れの塊がぶつかったあの後、日継カレンさん、紗良シオリさんが行方不明となりました。

保和ピリカさん含めて死体が残っておらず、死んでしまったという確証がない状態です。

穢れの塊が里見メディカルセンターを葬った瞬間に、神浜の魔法少女達は里見メディカルセンターにいた人たちの叫び声が頭に響いて正気を取り戻しました。
日継カレン達を倒したという喜びとヒトを無意識に殺してしまったという後悔が心の中に広がりました。

中には何とも思わない方もいたようですが、日継カレンさん達を殺したいという私念は自動浄化システムを広げるタイミングを延期させるきっかけとなったのです。

自動浄化システムを広げられない原因は、ういちゃんが凶変し、鋭い目つきでワルプルガさんを渡さないと言いはじめたからです。

ワルプルガさん自身もなぜかういちゃんを母親だと思い込んでいるようで、第三者の意見を受け入れてくれません。

力づくでういちゃんからワルプルガさんを奪おうとする魔法少女も現れはじめたため、現在神浜ではういちゃんを守る派とワルプルガを奪う派で勢力が分かれている状況です。

一難去ってまた一難

魔法少女同士の争いが落ち着かない状態が続きますが、現状は魔法少女同士で争っている場合ではないのです。

「ーーーーーーー」

「そう、ありがとう」

いろはさんの行動を偵察していた使い魔から探していた魔法少女を見つけたという知らせが入りました。

もうじき神浜での不毛な争いは終わるでしょう。

しかし、まだ戦わなければいけない相手がいるのです。

「かこちゃん、果てなしのミラーズからまた数人の侵入者が確認されたよ。また土地の主導権を奪おうとする連中で、みんな苦戦しているよ」

「わかりました。私も向かいます」

私に状況を教えてくれたのは欄さんでした。海外から逃げこんできた魔法少女グループが、再び神浜の主導権を主張しているようです。

「キュゥべぇさん、この世界の物語はヒトの数だけ存在すると考えています。

そんなこの世界に、今は魔法少女の数だけ物語が紡がれていっています。

この世界が誰の物語かと問われれば、魔法少女みんなの物語と答えましょう」

私はキュゥべぇさんの答えを聞かず、欄さんと共に丘を降りていきました。

「…日継カレン、これは君が望んだ結果なのかい?」

 

 

神浜から海を越えて大きな大陸にある暗い部屋。

ガラス張りにされている壁へ手をつけている少女へ女兵士が話しかけます。

「レディ、日の本で起きた出来事の証拠映像を押さえました。

あと、ご依頼にありました魔法少女を調査している男の確保ですが、失敗に終わりました。

しかし」

「しかし何?殺されたというの?あなた達には魔女を倒せるほどの兵装をさせたはずよ?
そんな失態をして魔法少女と戦っていけると思っているの?」

「も、申し訳ありません!」

「イザベラ、話は最後まで聞かないと」

「…悪かったわ。続けなさい」

「はい…。男と共に魔法少女について調べていた少女を確保しました」

「魔法少女ではないのよね」

「はい、確認済です」

「十分な戦果よ。焦ってしまって申し訳なかったわ。今後の活躍を期待するわ」

「ありがとうございます!」

女兵士が部屋を出た後、刀を持った少女がイザベラと呼ばれる少女へ話しかけました。

「他人に当たるのは良くないよイザベラ。
ヨーロッパの兵器格納庫を襲撃されてすべて使い物にならなくなったことでイラついているのはよくわかるけどね」

「わかってるわよ、悪かったわね」

イザベラは机の上に置かれたタッチパネルを操作し、女兵士が集めてきた情報を閲覧します。

その情報を一緒に見ていた刀を持った女性が話し出しました。

「なるほどね。魔法少女が魔女とならない現象、魔女とならずに寿命を持たない彼女達が牙を剥く時期は間違いなく来る確証となるでしょうね」

「これくらい予想していたじゃないのキアラ。何のために調査と実験を繰り返してきたと思っているの」

「大国を背負う人間がやるようなことではないけどね」

「これも人間存続のための大切な贄よ」

イザベラは再びガラス張りの部屋を見つめました。

「人の道を外れた化け物どもめ、あなた達の思い通りにはさせないわ。
この星の支配者は、人間様なのだから」

ガラス張りの壁のその先には、銃弾やら刃物によって肉塊にされた、宝石が割れた後の魔法少女だったものが広い部屋にたくさん広がっていたのでした。

 

4章 シネントァ リシェ イデハ アラガエヌァイ ヨクボウ テキホンンォウ

 

4-9:BACK
レコードを巻き戻す:top page

 

To be continue

【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 4-9 その一矢に私念を込めて

このはさんに助けられて地へ足をつけた頃、目の前には葉月さんとあやめちゃんがいました。

その2人の体には、返り血が目立つように付着していました。

「その姿は」

「ヒトがいたから斬っただけだよ。かこちゃんはかなり変わったね」

「変わってない魔法少女なんて、神浜にはもういないですよ」

「かこ、あの塔の上で何があったのか説明してくれない?」

「わかりました。でも、行きたい場所があるのでそこへ向かいながら話しましょう」

私はあやめちゃん達にワルプルガが復活したこと、紗良シオリさん達の過去と彼女達が人間嫌いとなった理由について話しました。

「争いが絶えないのは過去から積もった私念が原因。ヒトは過去を尊ぶため私念からは逃れられない。だから人間社会を滅ぼす、か」

「はっきりと口では言いませんでしたが、彼女達の過去に出てきた師匠が今の彼女達を大きく突き動かしているようです」

自動浄化システムを広げた後は人間社会崩壊のための活動が待っているのね。
話を聞く限り、彼女達の仲間になる気はないけど、対立する理由もないわね」

「かこはどうするの?」

「私は彼女達を償わせるだけです。いやでも生き続けてもらい、こんな世界にしたことを償ってもらいます」

「それは、ななかを殺されたからこその覚悟?」

「私はななかさん達が死んでしまう原因を作ってしまった。

カレンさん達を償わせることが、私の償いでもあるんです」

「そう…」

私たちが向かった場所は、ももこさん達が塔の上から落下した場所でした。

3人は魔法少女であることが幸いしたのか体の形は保たれていましたが、体内の血が全て飛び出てしまったくらいの量の血が周囲に飛び散っていました。

「酷い有り様ね」

「3人ともにソウルジェムは無事のようですが、助けても心身ともに長くは保たなさそうです」

「魔力反応が極端に薄い。それに、体とのリンクも不安定になっている感じがする。

ももこさん、あんたをそうさせるほどのものはなんだったんだ」

葉月さんがももこさんへそう囁くと、ももこさんの指がピクッと動きました。

私は驚きました。もう目を開かないと思っていたので。

私が少しだけ回復魔法を使用すると、ももこさんは半目だけ開けた状態で葉月さんを見ました。

「よう、こんなザマのあたしに何の様だ」

「…さっき話したこと、聞いてたかい?」

ももこさんは苦しそうに一呼吸置いて話し始めました。

私は少しでも長く会話できるよう、ささやかな回復をももこさんへ行いました。

「あたしが黒いオーラを纏って暴れてる時にさ、初恋のアイツをぶっ殺しちまったんだよ。あの時はヒトとしての考えが残っていたのか、深く後悔したよ。

あれが最初に、あいつらをぶっ倒そうと思ったキッカケだった。

でもその次に調整屋の調子を狂わせにきたと聞いて、あたしはヒトよりもあいつらを殺さないといけないって思ったのさ

その後何度挑んでも勝てない。

でももう引けなかったんだよ。時々見に行った調整屋の様子を見るたびに殺意を抑えられなくなっていた。

もうあいつらを殺す以外、元に戻る方法が思いつかなくなっていた。

それで、今に至るのさ」

中央塔の近くで大きな爆発音が聞こえてきました。

歩いている途中でも聞こえていたので、中央塔付近でカレンさん達が戦い続けているのでしょう。

「ねえ、まだ殺すために戦いたいの?」

あやめちゃんがももこさんへそう尋ねました。

「疲れたよ。お願いだから、放っておいてくれ」

私は回復の手を止め、立ち上がりました。

「では、失礼します」

私がその場を去ると、何も言わずにこのはさんたちも私の後をついて来ました。

「かこ、これからどうするの?」

「カレンさん達の様子を見守ります。

殺されることはないと思いますが、殺されそうになった時は加勢します」

「仇を守るって、変わっているね」

「死ぬよりも生きるほうが辛いからこそですよ」

・・・!

いきなり頭が割れるように痛くなり、負の感情が増大していきました。

そしてソウルジェムが急激に濁ってドッペルが発動しそうになりました。

私はドッペルが発動する前に身に纏って意識を保ちましたが、あやめちゃん達はドッペルを出してその場で頭を抱えたままでした

ドッペルは中央塔を向いたまま動かず、ドッペルから伸びる穢れの煙が周囲からどんどん中央区へ集まっていました。

一体何が起こったの?

何かの力で穢れを増大させられながら中央塔付近へ来ると、穢れの集結先はいろはさん、まどかさん、そして黒い羽を広げたほむらさんへ集まっていました。

頭が痛む中、私はカレンさんへ話しかけました。

「これはどういうことですか!」

「おっと、シオリのドッペルが放つ洗脳波形を受けても正気でいられるとは思わなかったよ」

「洗脳波形?これ以上何をしようと」

「人間性からの卒業をさせるのさ。

夏目かこ、あんたは既に卒業しているから見逃してあげるよ」

カチャリと音が左から聞こえたので振り向くと、いろはさんとまどかさんが合体させた大きな弓をこちらに向けていました。

「いろはさん、まどかさん!武器をおろしてください!」

「聞かないさ。彼女達には暁美ほむらの外界からもたらされた力を通して私念に支配されている」

「洗脳で私念を呼び起こしているとでもいうのですか」

「みんなまだまだ魔法少女とヒトの中間にいるような状態だ。私念があれば怒り、悲しみ、憎しみの感情が嫌でも溢れ出てくる。

ちょっと脳みそいじって煽っただけでこれだけシオリ達に殺意が向くくらいだ。

私念を根こそぎ潰さないとねぇ!」

シオリさんの周りに砂鉄が漂い始め、大量の砂鉄が上空に飛び上がったかと思うと一本の棒状になって塔へ一閃を放ちます。

塔の一番上部分が落ちて来て、シオリさんの頭の上すぐのところで浮遊し始めました。

円錐形の部品はゆっくりと回転を始め、回転が加速するほど電気を帯びていきました。

その反対側にいるまどかさん達は弓矢へ負の感情を集めるようにチャージをはじめていました。

カレンさんは電波塔の方を振り向き、塔の後ろ側へ走って移動しました。

移動した先には穢れが溢れ出て動けない魔法少女が数人いました。

そんな魔法少女達へカレンさんは糸を放ち、絡め取るとまどかさん達の斜線上から離すように放り投げていきました。

射線上に他の魔法少女がいないことを確認すると、カレンさんがテレパシーで私に語りかけて来ました。

この時、私は既に頭痛から解放されていたことを知りました。

[ここから離れろ。お前も巻き込まれるぞ]

[死のうとしているあなた達を放っておくわけないじゃないですか!
お二人こそそこから離れてください]

[ここまでの段取りでわかるだろう?人間性からの卒業、私念の排除には憎き私たちを殺した悦びと共に後悔の意識を知らしめる必要がある。

喜びと同時に後悔の思いが襲った時、はじめて私念を捨てる選択肢が生まれる]

[そんな不確定な方法のために、死ぬ必要は]

[私たちが死ななければ彼女達はこれから戦うべき存在に集中できない。これは必要なことだ]

[でも、それでも!]

シオリさんが操る電柱は電気エネルギーが高速で回転し、魔力ではないレーザーを形成しようとしていました。

対面のまどかさん達にはほむらさんが加わり、禍々しい弓矢には紫色の翼が大きく広がりました。

「実験は成功だ。疑似的に一つの思念体となったこの事例は貴重!

私念の塊となったあんたたちにはわかるだろう?!」

双方のエネルギー量は凄まじく、周囲には音を消し去りそうな暴風が発生していました。

立ち続けることは可能な程度ですが、油断すると倒れてしまいそうです。

「憎いだろう、殺したいだろう!

さああんた達、私念を吐き捨てて見せな!

だが、その先には後悔があることを知るが良いさ!

その矢を射るのは洗脳されたからじゃない。統合私念によって露わになった、ヒトが誕生から抗えない本能の叫びだ!」

洗脳が解かれているはずなのに穢れが晴れる様子はありません。

そんな中でシオリさんは死ぬかもしれないのに、笑っていました。

[夏目かこ、離れろ!]

[離れません!]

私はカレンさんを連れ去るために手を伸ばしますが、手が届く前に糸で絡め取られてしまいました。

[私たちの分も、魔法少女達を見守ってくれよ]

その言葉を聞いた頃、私は遠くまで飛ばされていました。

「ダメェェエエエエエエエ!!」

カレンさん達がいた左右には糸の壁が張られ、まどかさん達の矢とシオリさんのレーザー砲が同時に放たれました

 

 

 

「うい、起きて、うい!」

私は聞いたことがある声に反応して目を開けました。

目の前には灯花ちゃんとねむちゃんが見下ろしていました。

「よかった、目を覚ました!」

体を起こそうとすると何かが乗っかっている感じがしてお腹の部分を見ると白いローブを着た女の子が寝ていました。

「聖女ワルプルガを奪おうという行いには驚いたよ。自動浄化システムを広げる鍵を手に入れたことは功績だけど、ういらしくない無茶だったね」

あの混乱した中で、私は何故かワルプルガさんを手に入れないといけないと考えていたのです

何故かは、私にも分かりません。

「うん、わたしもあんな無茶ができちゃったことに驚いてる」

「まあ、ういが無事でよかったよ。何か撃ち込まれた時が一番びっくりしたんだから」

「うん、心配させちゃってごめんね」

話していると電波塔あたりから沢山の穢れが感じられました。

「なに、あれ」

しばらくしないうちに私達には頭に激痛が走り、穢れが溢れて来ました。

「だめ、意識が保てない」

私は再び気を失ってしまいました。

どれほど時間が経ったか分からない頃、誰かに服を引っ張られる感触がしたことで意識を取り戻しました。

目を開けると正座をしたワルプルガさんが目を開けてこちらを見ていました。

「ワルプルガ、さん?」

「お母さん、起きたの?」

え、もしかして私に言っているの?

試しに私に指を差しって問いかけてみました。

「私が?」

ワルプルガさんはペコリとうなづきました。

どうしよう、とても大変な誤解をされている。

灯花ちゃんとねむちゃんに意見を求めようと周りを見ると2人はドッペルを出し、穢れが溢れたまま動いていませんでした。

「2人とも、どうしちゃったの」

ゴォオン!!

いきなり中央塔あたりから轟音と共に太陽くらいに明るい光が溢れて来ました。

塔から放たれた眩しい光は穢れが固められたような塊を押し返そうとしていましたが、穢れの塊から翼が生えて不気味な笑い声が響きました。

穢れの塊は眩しい光線をどんどん飲み込んでいき、ついに中央塔を貫きました。

穢れの塊は矢の形を保ったまま直進していき、ある場所に直撃すると大きな爆発を引き起こしました。

そのある場所というのは、私達には馴染み深い里見メディカルセンターでした。

神浜の人たちが魔法少女に殺されている中、里見メディカルセンターは唯一残された避難所として多くの人が避難していました。

そこへ穢れの塊が直撃したのです。

私には漂っていた穢れにのって里見メディカルセンターにいた人たちの悲鳴が聞こえて来ました。

みんなを守っていた兵士さんからお医者さん、子どもからおじいちゃんおばあちゃんまで、多くの人たちが穢れに飲まれて骨まで溶かされていく様子が頭の中に投影されました。

私はその光景を見ていると胸の辺りで何かが弾けた感覚を覚えた後、出したこともない大きな叫び声をあげて再び意識が途切れたのです

 

 

 

4-8:BACK
レコードを巻き戻す:top page
NEXT:4-10

【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 4-8 良い人って、なんだろう

私は日継カレンさん達に捕まってから生まれ変わったように、別人のように考え方が変わってしまった。

ヒトは守るほどの存在じゃない

むしろ殺してしまった方が良い

そんな考えに至らせたものは、眠っている間にあったかもしれない未来を見せられ続けたから。

 

お父さんとお母さん

 

海外出張に出ている2人は、出張先で楽しいことばかりではなく悩んだり、苦しいことを経験する。

その原因はいつだってヒト。

お父さんやお母さん自身も「仕事のため」と言って他のヒトを悲しませている。2人にそんな気がなくても、結果は悲しませている。

それは人間社会で“しょうがないこと”として容認されてる。

ヒトを傷つけてはいけないと、小学校の道徳の時間にそう教わった覚えがある。

この矛盾はなんなのだろう?

お父さんもお母さんも、他人の「その気がない」行為で心が傷ついている。

人間社会って、他人を傷つけないと維持できないものだったのかな?

わたしは、お父さんとお母さんがその気がない非道を行った先にいるヒトたちの末路を目にして、涙した。

 

学校の友達

 

転校前もその後も、表面上の友達はいた。

でも、いつも一緒にいたいと思える友達なんていなかった。

わたしの知らない話で盛り上がっていて、ついていけないっていうのもあったけど、わたし自身、仲良くなろうって思う気がなかったのかもしれない。

魔法少女の子達とは積極的に接しようと思えるのに、この差はなんなのだろう。

いじめや先生との意見の食い違い、そんな場面はたくさん見てきたけれども、そのどれもが魔女の仕業ではなく、そのヒト達自身が原因で生まれた負の感情だった。

悪意は魔女がいるから芽生えるものではない、ヒトが生み出していたんだ。

どうしてヒトは、負の感情を生み出して、他人へぶつけてしまうのだろう。

負の感情を他人へぶつけて楽しむ学校の子達を見続けて、わたしは胸が苦しくなった。

 

ういについて

 

ういは自分が死んでしまうかもしれない状況でも、諦めずに笑顔で生きてきた。

生きる未来を手に入れたういは中学校に上がると、いじめられている子を目にして止めに入るんだけど、逆に標的にされていじめられる未来を見た。

どうしていじめをするの?

大抵の理由はなく、行き場のない負の感情をぶつけて、優越感に浸るのが目的だった。

そんないじめっ子も説得させようとするうい。

見かねた先生がいじめっ子へ注意していじめがなくなったとしても、ういといじめっ子の溝が埋まることはなかった。

どうしたらみんなと仲良くできるのか、そんなことを考えてしまうういが陰で泣いている未来を見て、わたしも泣きそうになった。

そしてういが大人の世界に入った時、他人を傷つけなければ生きていけない世の中を目にして毎日悩むういの姿があった。

わたしが間違いなの?みんなが幸せにならないのが普通なの?

大人にういは「考えが甘い」と言われ続けた。

次第にういの目から光は消えていった。

ういはそんな未来に生きて幸せ?

私はういが大人に近づくに連れて傷つけられていく未来を見て、ヒトが嫌いになった。

「いいヒトだっているかもしれないよ?」

そんな言葉が頭に過った。

いいヒトって、誰だろう?

人間社会でのいいヒトは思いつくけど、みんなを幸せにできるいいヒトなんて思いつかなかった。

じゃあ、もういいよね?

ういを傷つけるヒトという存在は、いなくてもいいよね?

 

 

ういを追いかけようと思ったけど、タイミングを失ってそのまま降りちゃった。

灯花ちゃんとねむちゃんが向かったし、無事だと思うけど。

「いろは!」

後ろを振り向くとやちよさん達がいましたが、すぐに近くには寄って来ませんでした。

「私たちのことがわかる?いろは」

「はい、わかります。ご心配おかけしました」

「よかったよぉいろはちゃん!ちゃんと正気に戻ったんだね!」

そう言って鶴乃ちゃんが私に抱きついてきました。

「正気かは謎だけど、もう無闇に暴れたりしないよ」

「それで、あいつらはどうしたんだよ」

「カレンさんは」

「やっと降りてきたわね日継カレン!」

怒鳴り声に驚いて後ろの方を向くと電波塔を背にして立っているカレンさんとシオリさんの姿がありました。

あとは見覚えのない魔法少女の姿が。怒鳴ったのは大きな棍棒を持った魔法少女でした。

「どうした、二木市と三重崎の魔法少女。まだやるべきことは終わっていないぞ」

ワルプルガという少女を神浜の魔法少女が奪って行ったというのは既に知っているのよ。

あとは自動浄化システムが世界に広がるよう願わせればあなた達の役目も終わりでしょう?

ならば、ここで処しても変わらないわよね!」

棍棒を振り下ろしながら口調を強めに魔法少女は話した。

カレンさんは服についた埃を払いながら気だるそうに答えた。

「フライング気味だよ、紅晴結菜。

種は確かに飛んだ。でも花を開くまでの水と肥料が私たちなしでは間違いなく粗悪品で終わり、結果は悲惨となるだろう。

ここで私たちになり変われるほどの思考があるっていうなら、かかってきても構わないさ」

「うるせぇ!さっさとくたばれ!」

そう言って銃を持った魔法少女3人がカレンさん目掛けて発砲しました。

「長女さんさ、樹里さまも我慢できねぇんだわ。

ヤッていいか?」

「…許可するわ」

「待ってました!」

そう言ってカレンさんには火炎放射も降りかかりました。

悲惨な状況の中、炎と銃弾の雨の中から鉄塊がいくつか飛び出してきて、銃を持っている魔法少女と火炎放射器を持っている魔法少女の右腕に直撃しました。

カレンさん達に降り掛かる攻撃は止み、無傷のカレンさん達がその場にいました。

「私念たっぷりだねぇ。そんなんじゃ、極上なタネも腐っちゃうよ」

「この前のようにはいかないぞ!」

そう言って二木市の魔法少女と思われる集団がシオリさんへ襲いかかりました。

「したっけ倒せるかい!」

シオリさんは周囲に電気を走らせ、地面に足をつけた魔法少女は痺れていました。しかし足を止めることはなく、そのまま刃物を手にして前へ進みました。

「ふっ、感覚が鈍くなったからむしろ戦いやすいまであるね」

シオリさんは背中の帯を操り、襲いかかる魔法少女に応戦していました。

帯はしなやかに動きながらも先端は鋭利な刃物のようであり、ソウルジェムがある場所以外は容赦なく叩き、突き刺していきました。

カレンさんの方を向くと既に戦っているようであり、その相手は五十鈴れんさんでした。

「悪意の根源を絶てる。それは五十鈴れんにとって望ましいことではないのか?」

「あなた達は梨花ちゃんを悲しませた。だから私は、戦います…!

れんさんがカレンさんから離れると、後ろからビーム光線と薬品が飛んできてカレンさんは爆発に包まれました。

カレンさんの周囲は繭のように包まれていて花が開くように繭が消えていきました。

「察しが良いあなたならば理解できるはずだ。これは無意味な争いであると」

「そうだな。でも確認しなければいけないことがある」

ひなのさんの周りには梨花さん、れんさん、エミリーさんだけではなく令さんもいました。

「どうしてお前達はヒトの殲滅にこだわるんだ。中には良いヒトもいるかもしれないじゃないか。

そんな奴らも殺してしまうのか?」

シオリさんの方から飛んできた銃弾を扇で弾いたカレンさんが話し始めます。

「良いヒトとは、誰にとっての良いヒトなんだ?

ヒトか?お前にとってか?それとも魔法少女にとってか?

あるヒトにとっては良いヒトかもしれないが、第三者にとっては害を成す存在となっている場合がある。

その基準は誰の基準なのだろうな」

「お前にとって良いヒトはいなかったのか」

「1人だけいた。私たちにとっては師匠のような存在で、師匠は私にとって最初で最後の良いヒトであった。

そして師匠は一般人からは悪人として扱われていた。

まだ納得できないことはあるか?」

「そうか。価値観の違いは誰しも起こりうるものだろう。

だが価値観の違いは魔法少女同士でも存在する。それでもヒトよりも良い世界を作れると本気で思っているのか」

「できるさ。少なくともヒトよりまともなね」

ひなのさんとカレンさんの会話を聞いていると後ろからフェリシアちゃんにつつかれました。

「なあいろは、オレ達参加しなくて良いのかよ。あいつらに酷いことされたんだろ?

ぶっ飛ばさねーのかよ」

「確かに酷いことはたくさんされた。でも戦う理由が見つからなくなっちゃったの」

「なんだよそれ」

「そういえば、ういちゃんはどうしたんですか?」

「ういはワルプルガさんを捕まえて、今は灯花ちゃん、ねむちゃんと一緒にいるよ」

「ワルプルガ、その子が彼女たちの言っていた自動浄化システムを世界に広げる鍵なのね。

それならば、今までやられたことの仕返し以外に戦う理由はないわね」

「やちよも戦わないって意見なの?」

やちよさんが周囲を見渡し始めたので私も周りを見てみると、神浜の魔法少女達がカレンさん達を囲うように集まってきていました。

「みんな、カレンさん達を恨んでいるんだ。ヒト嫌いにさせられて、大切なヒトを殺してしまった元凶だから」

「彼女達を擁護する気はないわ。神浜の子達が危ない状態になったら私は動くわ。

あなた達が戦いたいのであれば止めはしないわ」

冷静になればなるほど、私たちにはカレンさん達と戦う理由はすでになくなっていた。

神浜のヒトへ酷いことをしたから

今までの私たちであればそんな理由で戦っていたのかもしれない。

でも今の私たちは、守るべきものがヒトではなくなってしまっている。

自動浄化システムを広げる手筈をとってくれたカレンさん達を倒さないといけない理由はどこにもない。

それでもカレンさん達へ襲いかかる魔法少女がいる。

そんなみんなは、ボロボロになって倒れたり、膝をついたりしていた。

「どうした、軽く30人は同時に襲いかかってきたはずだ。

それでもシオリ達を倒せないなんて、まだまだ戦い方の鍛錬が足りないんじゃないの?」

シオリさんの言葉に応える魔法少女はいなかった。

まあそんな中途半端な覚悟じゃ今後もやっていくの難しそうだし、

卒業式を行おうか。ヒトからの卒業式をさ」

 

 

4-7:BACK
レコードを巻き戻す:top page
NEXT:4-9

【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 4-7 イレギュラーリジェネイト

「下でいくら騒ごうが、ここへ至る術は見出せないようだね。
ま、シオリ達の立場でもお手上げな状態だから仕方がないよね」

塔の麓の騒ぎはどんどん静かになりつつある。

しかし同時に気になっているのはピリカが魔力の使いすぎによる疲れを覚え始めているからだ。

本来であれば何度も魔女化するほどの魔力を無制限に使用しているのだから無理もない。

ワルプルガの復活は近いが、その前にやっておくことが残っている。

「夏目かこ、お前が2人の過去を覗き見たことを許したわけではない。潔いなら前へ出ろ、争うなら武器を構えろ。

さあ、アクションを起こせ!」

「どうしてもあなた達から手を出そうとはしないのですね。お二人の過去を見たことが気に食わないのであれば私念を込めて攻撃してきたら良いものの」

「目的なしに感情のまま力を振るうのはヒトのやることだ。

獣から進化してもなお本能から消えなかった負の遺産。

そんなものを持っているから行き違いや無意味な殺生が横行して、戦いが目的なんて世の中になるのさ」

「あなた達の人類史を終わらせるという考えは、私念からきているのではないですか?!」

「暁美ほむら、私たちがやろうとしているのはヒトを殺したいという私念が集まってできた結果ではない。

世界の魔法少女を見てきて、やらなければいけないと見出した目的だ。

今目の前で起きている出来事も手段に過ぎない。目的の結果はまだ目に見えてなどいない。

だが私念というのは今すぐ目の前で結果を得たいがために行われる愚かな行為ではないか。違うか?」

「私にはただの言葉遊びにしか聞こえないけど、あなた達はこのあと何をしようとしているの?」

「答えが知りたければ目的の軌跡を辿ればいい」

「あなた達が私念で動かないというのであれば、わたしはエゴで動かせてもらいます」

夏目かこは武器を取り出し、魔力を込めて石突きを地面へ力強くつけた。

すると周囲に強いリジェネ効果が発動し、塔上の瓦礫上にいる全ての魔法少女が動けるほど回復した。

「ういさん、行ってください!

あなたにはやりたいことがあるのでしょう!」

「は、はい!」

環ういは凧を呼び出してその場から飛び上がった。

「上空、まさかワルプルガをそのまま連れ去る気か!」

「無邪気ってのは怖いな!」

シオリがレールガンで環ういの行手を阻もうとすると、回復した見滝原組がシオリへ襲いかかってきた。

暁美ほむらに関しては不気味な黒い羽を広げていた。

わたしの前には環いろは、里見灯花、柊ねむが立ちはだかっていた。

「これ以上ピリカに負担をかけるわけには」

左側から数本の槍が飛んできた。

十咎ももこ達も回復の対象に入っていたか。

「こっちはわたしが止める」

「ピリカ!無茶だ!」

シオリの方からは爆風が伝わってきて、超電導で振動するシールドで見滝原の魔法少女の行手を阻んでいた

「飛べばいいってもんじゃないぞ」

シオリは一門のレールガンの弾丸を鉄塊からカースシードへと変えて鉄塊のレールガンと共に環ういへ放った。

環ういは先行して放たれた鉄塊の弾丸を2発避けたものの、3発目に放たれたカースシードを避けることはできなかった。

カースシードは環ういのソウルジェムには命中しなかったものの比較的近い場所へ当たり、肉体を貫通することなく体内へ止まった。

命中した際の衝撃で環ういは大きく背後にのけぞった。

「うい!」

環いろはがそう叫んだ後、環ういは器用に凧の上で踏み止まり、胸元を押さえながらワルプルガ目掛けて突撃した。

「負けるものかぁあああ!」

ワルプルガを囲う結界へぶつかる前に環ういは正面に4体の凧を呼び出して4体の凧は結界へ穴を開けるように合わさって回転し始めた。

結界には容易にヒビが広がっていき、環ういが結界へ接触して5秒後には結界が砕けた。

白衣のローブに包まれて髪も結われていないワルプルガは環ういが抱き抱え、そのまま意識がなくなったのか凧が粒子となって消えながら地面へ落下していった。

「みんな、ういの元へ連れて行って」

「うい!!」

柊ねむはウワサと共に、里見灯花は器用に傘をロケット状にして環ういの元へと急いだ。

ワルプルガが奪われたのは大事件だ。

しかし同時に起きた悲劇がわたしにとっては大きな衝撃だった。

 

 

十咎ももこ達の対応にあたったピリカは最初に秋野かえでを標的にした。

秋野かえでは魔法の力で蔦を召喚してピリカを縛り上げようとしてくる。

イペタムはピリカの拘束を許さず、蔦を薙ぎ払ってピリカは秋野かえでを斬り上げようとした。

そこへ水波レナが間へ入り、槍でピリカの攻撃を受け止めた。

ピリカがイペタムから手を離すとイペタムはそのまま水波レナと鍔迫り合いの状態となり、フリーハンドなピリカは秋野かえでの溝落ちを殴った後回し蹴りを喰らわせた。

反応できなかった秋野は武器を地面に落とし、地面を滑るように吹き飛ばされて動かなくなった。

イペタムは元々1人でに動き出す妖刀であり、必ず誰かが持っていなくてはいけないものではない。

しかし魔力または生命力を供給しなければイペタムは1人で行動できない。

今回のように少しだけ手放す場合はピリカと分かれて行動することができる。

そんな1人でに動く刀を目にして驚いた水波レナの隙をついてイペタムは鍔迫り合いをやめて柄の頭を水波レナに打ちつけた。

それは格闘家に殴られたほどの衝撃であり、水波レナは怯んだ。

そして再びピリカがイペタムを手を取り、力のこもった斬撃を繰り出した。

よろけた水波レナは槍で斬撃を防いだものの、衝撃に身を任せるかのように吹き飛ばされて瓦礫に打ち付けられて動かなくなってしまった。

「オラァ!」

十咎ももこが高く飛び上がって大剣をピリカへ振り下ろしたがピリカは受け止めることなく避けた。

「出鱈目が過ぎるぞ、あんた!」

本来の目的を見失って戦いが目的となったあなた達の行いが理解に苦しみます」

「全部、おまえたちのせいだろうがああ!」

そう言って十咎ももこは大剣をピリカへ投げた。。

しかしその大剣はピリカにあたることはなかった。ピリカはそのまま十咎ももこの動きを止めにかかる。

イペタムは剣先を十咎ももこに向けてそのまま前進し、それは十咎ももこの腹部へ深く突き刺さった。

これは丁度環ういへカースシードが撃ち込まれたタイミングと同じ

避けようとしなかった十咎ももこに驚き、ピリカは剣を引き抜こうとするが既に遅かった。

十咎ももこは力強くピリカを押さえ込み、さらにはドッペルを出してそのドッペルでもピリカを抑えた。

「構わずやれ、かえでぇ!!!」

ピリカは後ろを向き、背後に近づいてきていたのは十咎ももこが投げた大剣を地面に引きずりながら走ってくる秋野かえでの姿だった。

「ウワァアァアアア!!」

秋野かえでは大きく大剣を振り上げ、重力に任せるがままにピリカの背中を斬りつけた。

必死にピリカはもがいたが、いよいよ振りほどくことは叶わなかった。

十咎ももこの大剣は先端が出っ張っている鉈のような形をしていてそんな形状のためか秋野かえでの一撃はピリカの背中を大きく抉った。

脊髄にまでダメージが入ったであろう一撃を受けたにも関わらず、ピリカはその場で踏ん張り、突き刺さったイペタムをそのまま一回転させて十咎ももこの体を真っ二つにするように斬り上げた。

イペタムは十咎ももこの左肩を通って自由の身となった。

地面がピリカと十咎ももこの血で池が形成された状況の中、ピリカはゾンビのようにうなだれたままその場から動いていなかった秋野かえでの右手を斬り落とした。

十咎ももこは声を上げることなくドッペルが消えると同時に背中から血の池へ倒れ、秋野かえでは斬り落とされた腕を見ながら二、三歩後退りしてその場にペタリと座り込んだ。

そんな光景を見て、動けない状態だった水波レナは大きな叫び声をあげた。

この声を聞いて初めて環ういが落下していく様子に夢中となっていた各魔法少女達が悲劇の現場を目にした。

水波レナは7枚ほどの鏡を呼び出してそこから五月雨に槍がピリカへ降りかかった。

ピリカは背中と口から血を流しながらも糸で操られた人形のようにイペタムを振るって降りかかる槍を弾いていた。

1本もピリカへ槍が突き刺さらない中、水波レナはドッペルを出し、鏡から出た大きな足はピリカへ向かってかかと落としをした。

ピリカは踵の下敷きにはならなかったものの、踵落としの衝撃でその場の地面が崩れ、衝撃と共に地面へ落下して行った。

[2人とも、ごめんね]

そう頭にピリカの声が響いた。

「ピリカ!」

わたしがそう叫ぶといきなり空中の足場が不安定となり、電波塔上空の足場は重力に従うがままに地上へ落下して行った。

見滝原のメンバーは鹿目まどかを翼が出現している暁美ほむらが助け、美樹さやか、佐倉杏子は巴マミのリボンで集められ、小さな魔法少女のドッペルにつかまってゆっくりと地面へ落下していた。

環いろはは自分のドッペルでパラシュートを広げたようにゆっくり落下し、夏目かこはどこからともなく現れた他の魔法少女のドッペルに助けられていた。

「このはさん?!」

「来るのが遅れてごめんなさい。下で葉月とあやめが待っているから状況を説明してもらえるかしら

「…はい」

地上ではポンベツカムイが悲しげな雄叫びを挙げながら粒子となって消えて行った。

そして地上の魔法少女達は瓦礫から逃げるのに大忙しだった。

「みんな早く逃げて!」

逃げ遅れた魔法少女が数人いる中、上空に浮いていた瓦礫は全て地上へ落下した。

私とシオリは糸で落下速度を軽減させながら降りたので無事だったが、共有していたピリカの魔力がけは感じ取ることができなかった。

「ポンベツカムイも消えて。ピリカ、まさか本当に」

信じられなかった。

今までに人としては死んでいたであろう場面でも魔力反応が途絶えたなんてことはなかった。

ここで、私はピリカという仲間を失ってしまったんだ。

 

 

4-6:BACK
レコードを巻き戻す:top page
NEXT:4-8