【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 4-10 魔法少女狩り前夜

「さて、これは誰の物語なのだろうね」

「急にどうしたんですかキュゥべぇさん」

北陽区にある高い丘の上から神浜の外を見つめていると、となりへいきなりキュゥべえさんが現れました。

これまでに起きた出来事は明らかに日継カレン達を中心に動いていた。これから起こる出来事は彼女達がいない中、誰が主役となるのだろうね」

「仮に誰かの物語だとして、キュゥべえさんは最後まで見守っていてくれるんですか」

「それは無理だ。ぼくはワルプルガが契約さえしてくれればこの星から離れてしまうからね」

「まあ、予想していた答え通りでした」

「しかし思わぬ延長戦だよ。まさか環ういがワルプルガを誰にも渡さないなんて言い出すなんて。
ぼくがワルプルガへ話しかけたとき、攻撃してきたことはこれまでの環ういの行動パターンからは想像できないことだったよ」

希望の光線と穢れの塊がぶつかったあの後、日継カレンさん、紗良シオリさんが行方不明となりました。

保和ピリカさん含めて死体が残っておらず、死んでしまったという確証がない状態です。

穢れの塊が里見メディカルセンターを葬った瞬間に、神浜の魔法少女達は里見メディカルセンターにいた人たちの叫び声が頭に響いて正気を取り戻しました。
日継カレン達を倒したという喜びとヒトを無意識に殺してしまったという後悔が心の中に広がりました。

中には何とも思わない方もいたようですが、日継カレンさん達を殺したいという私念は自動浄化システムを広げるタイミングを延期させるきっかけとなったのです。

自動浄化システムを広げられない原因は、ういちゃんが凶変し、鋭い目つきでワルプルガさんを渡さないと言いはじめたからです。

ワルプルガさん自身もなぜかういちゃんを母親だと思い込んでいるようで、第三者の意見を受け入れてくれません。

力づくでういちゃんからワルプルガさんを奪おうとする魔法少女も現れはじめたため、現在神浜ではういちゃんを守る派とワルプルガを奪う派で勢力が分かれている状況です。

一難去ってまた一難

魔法少女同士の争いが落ち着かない状態が続きますが、現状は魔法少女同士で争っている場合ではないのです。

「ーーーーーーー」

「そう、ありがとう」

いろはさんの行動を偵察していた使い魔から探していた魔法少女を見つけたという知らせが入りました。

もうじき神浜での不毛な争いは終わるでしょう。

しかし、まだ戦わなければいけない相手がいるのです。

「かこちゃん、果てなしのミラーズからまた数人の侵入者が確認されたよ。また土地の主導権を奪おうとする連中で、みんな苦戦しているよ」

「わかりました。私も向かいます」

私に状況を教えてくれたのは欄さんでした。海外から逃げこんできた魔法少女グループが、再び神浜の主導権を主張しているようです。

「キュゥべぇさん、この世界の物語はヒトの数だけ存在すると考えています。

そんなこの世界に、今は魔法少女の数だけ物語が紡がれていっています。

この世界が誰の物語かと問われれば、魔法少女みんなの物語と答えましょう」

私はキュゥべぇさんの答えを聞かず、欄さんと共に丘を降りていきました。

「…日継カレン、これは君が望んだ結果なのかい?」

 

 

神浜から海を越えて大きな大陸にある暗い部屋。

ガラス張りにされている壁へ手をつけている少女へ女兵士が話しかけます。

「レディ、日の本で起きた出来事の証拠映像を押さえました。

あと、ご依頼にありました魔法少女を調査している男の確保ですが、失敗に終わりました。

しかし」

「しかし何?殺されたというの?あなた達には魔女を倒せるほどの兵装をさせたはずよ?
そんな失態をして魔法少女と戦っていけると思っているの?」

「も、申し訳ありません!」

「イザベラ、話は最後まで聞かないと」

「…悪かったわ。続けなさい」

「はい…。男と共に魔法少女について調べていた少女を確保しました」

「魔法少女ではないのよね」

「はい、確認済です」

「十分な戦果よ。焦ってしまって申し訳なかったわ。今後の活躍を期待するわ」

「ありがとうございます!」

女兵士が部屋を出た後、刀を持った少女がイザベラと呼ばれる少女へ話しかけました。

「他人に当たるのは良くないよイザベラ。
ヨーロッパの兵器格納庫を襲撃されてすべて使い物にならなくなったことでイラついているのはよくわかるけどね」

「わかってるわよ、悪かったわね」

イザベラは机の上に置かれたタッチパネルを操作し、女兵士が集めてきた情報を閲覧します。

その情報を一緒に見ていた刀を持った女性が話し出しました。

「なるほどね。魔法少女が魔女とならない現象、魔女とならずに寿命を持たない彼女達が牙を剥く時期は間違いなく来る確証となるでしょうね」

「これくらい予想していたじゃないのキアラ。何のために調査と実験を繰り返してきたと思っているの」

「大国を背負う人間がやるようなことではないけどね」

「これも人間存続のための大切な贄よ」

イザベラは再びガラス張りの部屋を見つめました。

「人の道を外れた化け物どもめ、あなた達の思い通りにはさせないわ。
この星の支配者は、人間様なのだから」

ガラス張りの壁のその先には、銃弾やら刃物によって肉塊にされた、宝石が割れた後の魔法少女だったものが広い部屋にたくさん広がっていたのでした。

 

4章 シネントァ リシェ イデハ アラガエヌァイ ヨクボウ テキホンンォウ

 

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To be continue