【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-2-4 鏡の向こうは疑わしき事実

いろはさん達が神浜を発ってから1週間程度が過ぎようとしています。

神浜周辺では私たちが中心となってあらゆる人間が侵入しないよう神浜の周囲を偵察して回っています。
もし内部へ来るようなそぶりがあれば、容赦なく危害を加える。
そうして、神浜内に人間が入り込まないように努めてきました。

しかし神浜内部はというと。

1週間でういちゃんの側にいるワルプルガさんを狙った戦いが何度も発生しました。

いろはさん達が神浜を発った後、真っ先にワルプルガさんを連れ去ろうとしたのは二木市の魔法少女達でした。

ういちゃんの周囲には誰かしらういちゃんを守るよう他の魔法少女が待機していたようで、ういちゃんがすぐに連れていかれると言ったことはありませんでしたが争いの規模は大きなものでした。

ういちゃんとワルプルガさんが滞在していたみかづき荘へ二木市の魔法少女が奇襲し、2人を瞬時に連れ去ろうとしました。

しかし、見張っていた魔法少女に見つかって互いに実力行使に移り始めました。

「あなた達、どうしてそこまで強硬手段に出るのよ!」

「神浜のお前たちに怒りをぶつけないと気が済まないんだよ!」

「お前たち意味わからないよ、まじで!」

 

遠くから戦況を眺めていると、ういちゃんとワルプルガさんを連れ去るという目的はどこに行ってしまったのか。

二木市の魔法少女達は戦いを楽しんでいました。

それに釣られるように、護衛でいた魔法少女達も戦うことに夢中になっていました。

ういちゃん達を連れ去ることが口実となって争うきっかけが作られては戦い合うといった行為が続くばかり。

この戦いに無関係で好戦的な魔法少女も混ざるようになってきました。その中には、見知らぬ魔法少女も数人。

幸いにもいまだに死者はいません。戦うよりも優先すべきことはあるというのに、みんな何をやっているのか。

ういちゃん達にはひなのさん達がなんとか説得して、元里美メディカルセンターの地下に滞在してもらうことになりました。

ういちゃん達に危害が加わることは無くなったと思いますが、二木市の魔法少女を中心とした不毛な争いは続きそうです。彼女たちについては、本当に何とかしなければ。

それとは別に気になることが。

 

「果てなしのミラーズから見知らぬ魔法少女が?」

「実際に見に行ってみたけど、最近目にしてきた魔法少女とは全く別だった。

結界内のコピーが外に出てきた、なんて考えたくはないけど」

「調べる必要はありそうよ」

見知らぬ魔法少女が増えてその調査をしていると、ミラーズから出てきていることが判明しました。
もちろん直接神浜の外からやってきた魔法少女もいますが、葉月さんがミラーズから出てくる魔法少女を目撃したのです。

私はミラーズで何が起きているのか把握するために葉月さん、このはさん、あやめちゃんと一緒にミラーズから出てきた魔法少女を訪ねることにしました。

訪ねる対象の魔法少女は5人組で、私達を見つけると彼女達は武器を構えてこちらを警戒していました

「戦う気はありません。
あなた達がどこからきたか教えてもらえませんか」

相手は難しそうな顔をして答えてくれませんでした。

相手の顔立ちは中東の番組で見たことがある外人。

もしかしてと思い、テレパシーで再度呼びかけました。

[あなた達がどこからきたか教えてもらえませんか]

[うわ!て、テレパシーで話しかけてきた。その手があったか]

相手は言葉が通じる方法を目の当たりにして勝手に盛り上がっていました。

[あのう]

[ああ、どこからきたかでしたっけ。

私達はアフガニスタンから来ていて、安全な地を求めていたらここが良いと聞いたので]

[聞いたって、誰からですか]

[具体的な組織名はないようですが、ミアラという人物を中心とする魔法少女の集まりに属する方でした

あいつらがいないととっくに私達傭兵として使い潰されていたよ]

[傭兵…]

もっと話を聞いてみると、彼女達は中東の争いの中で傭兵として戦わせるため、人間に無理やり魔法少女になるよう強いられた方々でした。

戦争地域では珍しいことではなく、たくさんの魔法少女が傭兵に紛れて紛争に参加していたようです。

家族が殺されて行き場を失い、生きる希望を失いかけている中、見知らぬ魔法少女達に助けてもらったから今生きているとのこと。

そして安全な場所を求めると、とある廃墟に現れた鏡をくぐるといいと伝えられたと同時に。

「そこでは魔女化せずに生きられる。今よりは平和に暮らせるだろう」

「魔女にならない?!そんな夢みたいなエデンが存在するのか!」

「もう私達、怯えて暮らさなくていいのね!」

そして鏡をくぐり、今に至るとのことです。

突如現れた鏡…

[よければでいいのですが、通ってきた鏡がどこにあるか教えてもらえますか?]

[いいけど、向こうには行かない方がいいよ。まあ、そんなに行きたいってんなら案内はしてやるよ]

[ありがとうございます。では、お互いを知るために1人でもいいので名前を教えてくれませんか。
私は夏目かこと言います]

[レイラだ。みんなをまとめている立場だ。案内する代わりに食料を分けてくれないか。

誰かに話しかけようとしてもみんな怖がって話も聞いてくれないんだ]

私達は2日間、レイラさん達へ渡す食料調達に専念しました。

とはいえ拾えるのはコンビニやスーパー跡地に散乱したものくらいで、魔法少女による自給自足はいまだにできていません。

そんな食料調達中にも見慣れない魔法少女がミラーズから出てくることがあり、調査を急がなければいけない状況でした。

レイラさん達に十分な食料を渡したことで交渉が成立し、私達はレイラさんに連れられてレイラさん達が使用したという鏡の場所まで進みました。

果てなしのミラーズを10階層ほど進み、コピー達の群れを過ぎると2枚ほど鏡が案内された場所にありました。

[もう一枚?!来た時は1枚だけだったのに]

[あの、使用した鏡が残っているということは、この先にはレイラさん達がいた場所に繋がっているということですよね]

[出発する前にも言ったけど、行かない方がいいよ]

そうは言われましたが、私は鏡の中へ脚を踏み入れました。

「かこ?!」

「ちょっと、何やってるの!」

あやめちゃん達の静止しようとする声を顧みず鏡の先へと進むと、そこはたくさんの鏡が並んでいる暗い空間でした。

周囲にはわかる範囲で20枚以上の鏡が並んでいました。

私が周囲を見渡すためにその場でじっとしているとこのはさんたちも鏡から出てきました。

[ここ、私たちが入ってきた場所と違う]

「freeze!」

声のした方向を向くとそこには見慣れない少女が3人いて1人は銃をむけていました。

私達は武器を構えて相手の様子を伺いました。

3人は顔を見合わせて何かを話し合った後、テレパシーで語りかけてきました。

[お前達、私の言葉は理解できるか。
理解できるならば武器をしまってこちらに来い]

[武器をしまうことはできません。あなた達が私達を殺さないとは限りません]

[・・・そうか。ならばついてくるだけでいい。

ついてくることさえ拒むならば今ここでお前達を殺すしかなくなる

そう言われて私達は彼女達について行くことにしました。

見知らぬ魔法少女、それに海外の子。

周囲からはたくさんの魔法少女の反応があり、ここは魔法少女が集まる何かの施設である可能性がある。

私達は意識せず空港にあるような金属探知を行うゲートを潜りましたが、特に何があるわけでもありませんでした。

[ふぅ、どうやら生粋の魔法少女だったようだね。

もしかして、神浜から来たって子いる?]

[私達が、そうですが]

[そうか!ならばこっちに来てくれ。

会わせたい人がいるんだ]

話を聞くと、どうやらあのゲートはコピー体だったら警報が鳴る仕組みだったようです。コピーかどうかを識別できるなんて。

[あの鏡の部屋が何なのかって?
世界中で突然出現したという謎の鏡を回収しているうちにあんなに集まったんだ]

[あんなに、ミラーズの鏡が。しかも世界中にだなんて]

[そのミラーズとやらは神浜の魔法少女が詳しいんだろ?

カレンに聞いても神浜の魔法少女に聞いた方が早いっていうから全然進展がなかったんだよ]

[…そのカレンさんですが]

「あら、ここに来るのがあなただったとは、

夏目かこさん」

聞き覚えのある方を向くと、そこには行方不明になっていたはずのカレンさんがいました。

「どうして、生きているの」

しばらくその場が沈黙した後、カレンさんが話し始めました。

実はこの後に控えている作戦に神浜とつながる鏡を利用したいんだ

[そこで、ミラーズの情報を集めようと鏡を見つけた頃から研究が進められてきたんだが、コピーと本物を見破る技術ばかりしか進展しなくてさ。あたしらは困り果てていたんだ]

突然話に入り込んできた魔法少女は左目にモノクルをつけていました。

[割り込むなミシェル、話の途中だ]

変に騒ぎを起こさないために、私はこのはさん達に意識共有を図りました。

[…穏便に対処しましょう。ここは私たちにとってアウェーです]

[そうね。今は相手の話に合わせましょう]

「気になることはたくさんあるけど、貴方達、技術力が高そうだし直接結界に入って調査したりしないの?」

「ん?特定の少人数で結界内部の調査を行っている。とはいえ、無闇に結界内へ侵入した調査は控えている」

「なぜ?」

「鏡を破壊されると詰むからだ。

神浜の魔法少女は大元と言える大きな鏡を通して内部と行き来しているが、我々は小さな、しかもいつ消えるかわからない出入り口を使用しないといけない。

消えるものなのかどうかも含めて、私たちには情報が少ない。知っていることをミシェル達に教えてくれないか」

このはさん達はミシェルさんへミラーズについての説明を、レイラさんは知らない間に地元の人を見つけて地元トークをしていました。

そして私は、カレンさんにここがどこなのか話を聞いていました。

「ここは人類に反抗する魔法少女の溜まり場だ」

「人類に反抗?」

「お前達神浜の魔法少女ならば、人類の愚かさを理解しているだろう」

「貴方達のせいですけどね」

「あれは必要なことだった。近々人類を平気に手をかけられるようになっていなければ、

魔法少女が人類に支配されるような事態が起こる」

「なんですかそれ、誰かの予言ですか」

「いや事実だ」

そんなことがあるのだろうか。

嘘か真かどっちが実現したら大きな被害が被られるかを考えると、信じた方がいいかもしれない。

「わかりました。その話、信じてみます」

「理解が早くて助かるよ。

日本にいる魔法少女は皆神浜へ集めておけ。数日後それがなぜかわかる」

「詳しくは教えてくれないんですね。

私達は何か協力できないでしょうか」

「そうだね。

北と南にある米軍の駐屯地をとあるタイミングで無力化してくれれば嬉しいかな。

でも実行にはまだ早い。その時になったら合図を送るから、その時まで情報収集に努めてくれ」

「あなたが出てきたら騒ぎになりますよ」

「そんなのわかってる。別の魔法少女さ」

「かこ〜、まだ話してるの?」

どうやらあやめちゃん達の方の話が終わったようで、私達は神浜へ戻ることにしました。

[いいかい、君たち神浜の魔法少女は魔法少女だけで生きていく点では初心者だ

生き残ることに専念しなよ]

そう施設にいる魔法少女から忠告を受けて、来た時と同じメンバーで神浜へ戻りました。

ミラーズから出た後、私はみなさんへ今日あった出来事は信頼できる人以外には他言無用であることを伝えました。

[私は仲間に秘密にしておくよ。おしゃべりな奴がいてね、すぐにペラペラ話しそうだ]

[そうですか。レイラさん、今回はありがとうございました]

[あんた達の助けになったなら嬉しいよ。後、時々食料分けてもらえるとありがたいよ]

「その一言なければいい人なのに」

カレンさんが生きていたこと、そしてあの施設で見聞きしたことは欄さんにのみ共有しました。

今後起きようとしていること、人類が魔法少女を支配しようとしているとはどういうことなのか。

私達は思った以上に早くその言葉の意味を知ることになったのです

 

back:2-2-3

レコードを撒き戻す:top page

Next:2-2-5

 

【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-2-3 全員が納得いく答えなんて話し合っても出るわけないだろ!

ういがおかしくなったのは、魔女によるものだというのは、感じ取った魔力で考えた推測でしかありませんでした。

でも、クレメルが出した答えによってういを助ける方法について一歩前進しました。

次に考えるべきは、他人のソウルジェム、魂に侵入する術が存在するのかということ。

調整屋さんの調整する力はソウルジェムに干渉していたけど、他人も干渉させることができなければ意味がないと思う。

だから私は、魔法少女を一番知っているであろう存在に助けを求めることにしました。

その存在は。

「魂に干渉できる魔法少女か。心当たりがないわけでは無い」

「ほんとう!?」

「でも神浜からは離れた場所にいる存在だ。なんなら、僕が直接彼女の元へ案内してもいいだろう」

協力に申し出たキュウべぇに対してやちよさんは疑念を持っていました。

「やけに協力的ね。何か企んでいるの?」

「事情が変わってきていてね、ぼくたちは君たち魔法少女に協力的な姿勢を取ることにした」

「いったい何があったのやら」

「じゃあ、後日案内をお願いできる?
案内してほしいときに声をかけるから」

「わかった」

まさかキュウべぇから協力するという発言が出るとは思いませんでした。

私たちの知らないところで何かが起こっているようですが、うい助け出せると約束できるところには到達できそうです。

あとは、神浜にいるみんなに説明を行うだけ。

神浜の全体に放送を行う機能は失われており、神浜の魔法少女達にお願いをして口伝えで翌朝に電波塔があった場所で今後の方針を話すと伝えていきました。

肝心のpromisdbloodのメンバーへは私が直接伝えにいきました。

歓迎はされなかったものの、説明には顔を出してくれると約束してくれました。

 

夜が明け、電波塔跡地には見慣れた魔法少女から見慣れない魔法少女までたくさん集まっていました。

「こんなにたくさんいたなんて」

「いろはさん、緊張、してますよね」

していないと言えば嘘になるけど、深呼吸をして私は気持ちを整えました。

「ううん、大丈夫」

私はみんなの前に出て今後の活動について話を始めました。

その内容を要約すると以下のような内容となります。

現在魔法少女が魔女化しないシステム、自動浄化システムは環ういが自動浄化システムを拡げる鍵であるワルプルガさんを拘束中のため、すぐに世界中へ自動浄化システムを広げられません。

環ういは魔女に取り憑かれている状態で、正気に戻すためには魔女を討伐しなければなりません。

しかしその魔女は環ういのソウルジェム内に潜んでいます。

ういのソウルジェムへ干渉し、魔女を倒すために私はソウルジェムへ干渉することを可能にしてくれる魔法少女を連れてきます。

少し時間はかかってしまいますが、少しの辛抱を皆さんにお願いしたいのです。

自動浄化システム以外にも、私達には人間に頼らない魔法少女だけの生活を模索していかなくてはなりません。

外部の人間へ助けを求めても、私たちを助けてくれることはないでしょう。

魔法少女だけで生きていくための方法を、みんなと考えていきたいと思います。

私はリーダーを務めることができる器は持っていません。

だからみなさん私を手伝ってください。私に協力してください!

どうか、お願いします。

話したいことを話し終えると、神浜では見たことがない魔法少女が話し始めました。

「気に入らないな、あんたの意見」

「あなたは」

やちよさんの問いに答えた彼女は、三重崎のツバキだと答えました。

「私の意見に反論があるのはかまいません。

でも、ういを傷つけるような反論であれば私は許しません」

「変に先読みするんじゃないよ。自動浄化システムの事情には概ね理解したし、あんたらに任せるよ。

それとは別に、なんだよリーダーにふさわしくないって。
リーダー面して語っておいてそんなこと言いだすんじゃねぇ!

そんなことを言うってんなら、リーダーらしい奴がちゃんとリーダーにつくべきじゃねぇか」

「それは私も同意ね」

ツバキさんの話に結菜さんが乗り掛かってきました。

大勢の千差万別の意見をまとめ上げて最善の答えを出すためにはそれを担うリーダーが必要不可欠。

リーダーなき組織はただただ統率の取れていない有象無象になりかけかねないわ」

結菜さんは話の途中で棍棒を取り出し、地面に棍棒の先を力強く突き刺しました。

皆がびっくりする中、結菜さんは話を続けます。

「環いろは、前に伝えたわよね?

皆を率いていくことができないなら私が代わりに引き受けると。

なんなら今あなたをここで倒してあげようか?」

「お、リーダー決定戦でもやるのか?

なら私にも参加させてくれよ」

「ちょっとあんた達、そう言う話になってなかったでしょ!」

荒らそうとして騒ごうとする者、そんな者達を止めようと怒鳴り立てる者達。

私は周囲の声が聞こえなくなるほどに意識が闇に沈んでいき、ドッペルを着込んで荒らそうとする者達を包帯で拘束しました。

その様子を見て、周囲が一時的に鎮まりかえります。

「なんだ、この力は」

「そうやって争おうとするからリーダーを決めたくないんですよ。

人間はリーダーになることを目的として、本当はリーダーになってまで何をしたいのかを忘れてただ争いに勝つことを優先していました。

リーダーが決まれば気に食わないと言って、自分がリーダーにふさわしいとまた争いを始める。

そんな争いの素になるなら、リーダーなんて決めないのが正しいんですよ。

誰がリーダーになったって、みんな不満は絶対持つでしょう?

それを押し殺して従っていくなんて人間臭い思考、もうやめませんか?

わかりませんか?

だからみんなに協力をお願いしているんですよ。

みんなで納得できる形にするために」

結菜さんでもツバキさんでもない他の拘束された魔法少女が叫ぶように話し出しました。

「全員が納得いく答えなんて話し合っても出るわけないだろ!

何も手伝わない奴が食い物とグリーフシードだけは寄越せという一点張りの意見しか無かったら、そいつには与えるだけで他の奴がそいつのためにせっせと動かないといけないのか。

そんな状態に不満を持たない奴なんていないだろ!

あんたの話すことは理想だけで現実に合ってないんだよ!」

「何も手伝わないという人、本当に心から思ってそういうのでしょうか」

「そうに決まってんだろ!世間見りゃあそうだろ」

私はその魔法少女をキツく締め付けて私の目の前まで寄せ付けました。

そして相手の目を見ながら言いつけました。

「なんで決めつけるんです?なんで相手に寄り添ってあげないのですか?

あなたがそういう目に会ってきたというなら、そういうことがなくなるようにみんなと頑張ってみませんか?

みんな、あなたが思い込んでいるより優しいですよ」

相手の魔法少女は絶句して何も言いだしませんでした。

私は拘束していた全員を解放し、着込んだドッペルを解除しました。

「私からの話は以上です。

2日後に神浜を出発しようと思うので、用がある方はその間に声をかけてください。

では、よろしくお願いします」

しばらくみんなはその場から動きませんでしたが、次々と自分達の行動を再開しました。

「あの、道場を修復したいのですがエミリーさん達も手伝ってくれませんか?」

「もちいいけど、あそこまだ使う気?」

「私にとって思い入れのある場所です。だから直したいんです」

みんなが今後の話を進めていく中、私は十七夜さんとひなのさんに声をかけました。

そして、不在の間は神浜をお願いしたいと伝えました。

「皆の状況を見守るのは今までと変わらない。喜んで承ろう」

神浜から人は消えて西と東という区別は不要になったと思います。

それでも西、南、東と管轄を分けますか?」

「確かにもう関係はない。だが東側は私たちにとって思い入れのある場所だ。

私は東側を優先に管理したい」

「なら、私は西と南を見て回るとするか。やちよさんだけじゃ目が行き届かないだろ」

「そのことなんだけど」

やちよさんは申し訳なさそうな表情をして続きをなかなか話出しませんでした。

「七海、環くんの言う通りもう西と東を隔てる理由はない。居てくれた方がありがたいが、私は神浜全体を見守るつもりだ。

七海のやりたいようにすればいい」

「あなた、そんな柔軟な考えができたのね」

「長い付き合いで何を今更」

「なら、私はいろはについていくわ。

十七夜にひなのさん、留守の間はお願いします」

神浜に何かがあった時の舵取り役については話がつき、次に話さなければいけない相手は、結菜さん達でした。

しかし、結菜さん達の姿がありませんでした。

いったいどこに行ってしまったの。

私は結菜さん達がいたであろう場所の近くにいた魔法少女へ二木市の魔法少女達がどこへ向かったのか尋ねました。

「どこへ行ったかはわからないけど、ここから駅のあった場所へ向かったのは確かよ」

「そう、ありがとうございます」

あの人と分かりあうのは、ういの問題が解決した後になりそうだ。

私は再度十七夜さんとひなのさんに会って、ういを見守る人を必ずつけてほしいと伝えました。

あの人はきっと私がいない間もうい狙ってくる。そんな気がしました。

そういえば、静香ちゃん達は来ていたのだろうか。

「やちよさん、私は静香ちゃん達のところへ行こうと思います」

「そう。じゃあ私も」

やちよさんが話そうとした途中でみふゆさんが近づいてきました。

「やっちゃん、ちょっと相談したいことがあって。

これからのことについてやっちゃんの意見を聞きたくて」

「…わかったわ。ごめんなさい、いろは。ついていけなくて」

「いいえ、大丈夫ですよ」

私は静香ちゃん達の動きが気になったので時女一族が拠点にしているという水徳寺へと向かいました。

水徳寺へと向かう階段まで着いたところで見慣れない魔法少女が声をかけてきました。

「いろは殿、本家に用でありますか?」

「…すみません、どこかでお会いしたでしょうか」

「これは失礼。我は三浦旭というであります。

いろは殿のことについては時女本家から伺っているであります」

「あっ、時女一族の方でしたか。

ちょっと静香ちゃん達に今後どうして行きたいのか聞きたくてきたのですか」

「そうでありましたか。

今は本家が混乱状態でありまして、静香殿をはじめ、複数の一族のメンバーが人間嫌いになるような記録を認めんと必死で」

「そう、ですか」

「なので申し訳ないでありますが、引き返してほしいであります」

静香ちゃん達時女一族は日の本のために活動しているって言っていたし、行動目的を全否定するような記録を目の当たりにして、抗っているのだろう。

「わかりました」

私はそのまま回れ右をして無意識にみかづき荘への帰路につきました。

とはいえみかづき荘にはういとワルプルガさんがいて、私達は帰られない状態ですが。

そういえば、灯花ちゃんの具合はどうなったのだろう。

私は調整屋へ戻る道へと変更しました。

調整屋さんへと向かう道中を眺めていましたが、中央区から離れた場所は建物の損壊はそれほど激しくはなく、少し手入れをすれば再利用が可能なくらいでした。

住むところはともかく、ライフラインはどうすればいいだろう。この辺りはもっと詳しい人に聞かないとわからない。

課題はとても多い。でも頑張らないと。

調整屋に着くと灯花ちゃんは上半身を起こして元気そうにねむちゃんと話していました。

「灯花ちゃん、もう起きて大丈夫なの?」

「ダメージの回復はまだだけど、魔力が使えるようになってからは痛みの遮断が容易になったからね

寝たままなんてつまーんないし」

「無理しちゃダメだよ…」

「そうそう、私達がしばらくどこで生活しようかって話なんだけど、非常用に用意されていたシェルターで生活するのはどうかにゃ?」

「シェルター?

神浜市にそんなものあったんだ」

「実はたっくさんあったんだけど、みんながドッペル出しながら暴れた際に逃げ込んだ人もろとも破壊されてほとんど残っていないんだよ」

どうやら里見グループが用意していたシェルターがいくつかあるらしくてね。みかづき荘へはういの件でしばらく戻れないだろうし、しばらくは拠点兼住居としてシェルターを使っていこうと灯花と話し合っていたところなんだ」

灯花ちゃんとねむちゃんに促されるがままに、私達はシェルターがあるとされる場所へと来ました。

シェルターへ灯花ちゃんも同行しようとしてきたので安静にするよう伝えたのですが、そのシェルターは灯花ちゃんがいないと開かないとのこと。

灯花ちゃんは私がおんぶして行くことになり、みんなでシェルターの入り口に到着しました。

シェルターは予備電源があるようで停電はしておらず、しっかりと灯花ちゃんの指紋、眼球、そして暗証番号と厳重なセキュリティシステムを解除していき、やっと扉が開きました。

シェルターの中にはたくさんの部屋がある他、お風呂やリビング、そして壁一面に画面が広がるコンピュータルームがありました。

「さすが、お金持ちが用意したシェルターは規模が違うわね」

この広さならみんなとここに集まって会議を行ってもいいかも」

「ダメだよお姉さま、ここは私達が安心するための場所なんだから余計な人は呼び込まないでよね!」

「余計な人って…」

「さて、私はお姉さまが神浜を経つまでに用意しないといけないものがあるから。ねむも手伝ってくれる?」

「ぼくは構わないよ」

「その前に、みかづき荘のみんなが自由にここへ出入りできるようにしてくれる?」

灯花ちゃんにセキュリティを書き換えてもらい、私達は自由に出入りできるようにしてもらいました。

拠点ができたとはいえ、解決しなければいけないことは山ほどあります。

それをこの二日間でどこまで解決していけるか。

 

back:2-2-2

レコードを撒き戻す:top page

Next:2-2-4

 

【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-2-2 人間臭いやり方を魔法少女も続けるっていうんですか

灯花ちゃんを安静にして治療を行うため、私達は調整屋さんに来ました。

調整屋さんはカレンさんが襲撃してきた後そのままで、以前のような落ち着ける場所ではありませんでした。

でも、何かあれば調整屋という癖が残っていて自然とここに来てしまうのです。

中に入ると、そこには十七夜さんがいました。

「七海か、ういくんの所に行ったはずでは」

私が背負っている灯花ちゃんを見て十七夜さんは何かを察したようで奥の部屋に行くよう促しました。

いつも誘導されるはずのソファーでは、誰かが寝ていてその人へみたまさんはうなだれた状態でした。

みたまさんが目に入った後、調整屋の奥の部屋にはすでに数人の先客が傷を癒している状況で驚きました。

「これはいったい」

神浜の外から来た魔法少女が貴方の情報を聞き出すついでにここにいる子達を痛みつけて回ったって話よ」

「あなたは」

「あなたに名乗るほどではないわ。

十七夜さん、これで全員のはずよ」

「ああ、助かった」

名前を教えてくれなかった魔法少女は、そのまま調整屋を出ていってしまいました。

 

私達は灯花ちゃんを治療しながら、ここに来るまでに起こったことを十七夜さんに説明しました。

「そうか、ではせいか君達に傷をつけて回った連中も、そのpromisdbloodという連中で間違いなさそうだな」

「話が通じなさそうな感じがしました。あの人たち、また襲ってきそうで怖いです」

「警戒するようには伝えて回った方がいいだろう。そこのおガキ様のように、変に煽って痛い目に遭うかもしれないからな」

私は治療がひと段落した後、みたまさんのことが気になったので表に出ました。

ソファーに寝ていた謎の人物ですが、よく見てみるとももこさんでした。

他二つのソファーにはレナちゃんとかえでちゃんもいました。

私は何があったのか聞くために駆け寄ろうとしましたが、十七夜さんが右肩を掴んで私を止めました。

「今はそっとしておいてやってくれ。事情は話そう」

十七夜さんから聞いた話はこうでした。

みんなが正気に戻った後、状況確認を行っていた十七夜さんは血だらけのももこさんたちとその場に立っていたままのみたまさんを目撃しました。

状況を理解できずに混乱しているみたまさんの代わりに、十七夜さんは周囲にいる魔法少女に呼びかけて3人を調整屋まで運びました。

魔法少女の力で治療を試みて、傷は癒せたものの意識が戻らない状態になっているとのことです。

みたまさんは調整の要領で3人の状況を確認しようとしたそうですが、ももこさんのソウルジェムに触れた瞬間、みたまさんはなぜか調整を中止してその場で震え出しました。

その時から、みたまさんは誰が話しかけても反応を示さず、ももこさんのそばから離れなくなってしまったそうです。

「十七夜にも反応してくれないの?」

「いや、口は開いてくれたが今は誰とも話したくないとしか言ってくれなかった。十咎くんのソウルジェムに何かあったのか」

ももこさん達のソウルジェムですが、見た目は輝きがほぼなく、ただの透明な水晶に淡くそれぞれの光が残っているような状況でした。

「一体電波塔の上で何があったかは知らんが、十咎達がああなってしまったのはその影響もあるんだろうな。環くんは確か電波塔の上で日継カレン達と対峙していたな。何か知っているか」

私が知っているのは、致命傷のダメージと引き換えに3人はやっとピリカさんを倒し、崩れる電波塔と一緒に落ちていってしまったこと。

でも、それが直接的な原因ではないかもしれない。

「ももこさん達、執拗にカレンさん達を追い回してたみたいなんです。

その過程でなにがあったかまでは」

「追いまわしていたという話は知っている。私にも日継カレンの居場所を聞きに来たからな。

あの時の顔は、らしくはなかった」

「最期は、命と引き換えみたいな方法でピリカさんを倒したんです。

ドッペルを何回も連続で使って」

「そうか。日継カレンを倒そうと魂に負担をかける行為を積み重ねた結果、ああなってしまったということか」

みんなで悩んでいるとねむちゃんが話に入ってきました。

「きっと魂が傷つきすぎたか、大きな傷を負ったことで体自体を動かせない程に魔力が弱体化してしまったのだろう」

「柊、歩けたのか」

「灯花に魔力で動かしてるんだからと言われてね。

車椅子よりは動きやすいから魔力に頼って歩いているよ」

「いや、私が気にしているのはそういうことではないが」

ねむちゃんはももこさん達のソウルジェムを確認してまわりましたが、首を横に振って対処のしようがないという意思を示しました。

私たちは奥の部屋へ戻り、立ったままういについてどう対処するべきかの話をはじめました。

「話は山積みかもしれませんが、現状を少しでも良い方向へ持っていくのはういを元に戻すことだと思います」

「promisdbloodというグループの紅晴結菜は、神浜の長となってワルプルガへ無理やり願いを叶えさせようと考えているみたいよ」

「ふむ、あまり穏やかではない考えだな。だが今の神浜の現状、皆を率いる長となる存在が必要なのは確かだ」

「私は、リーダーとかみんなの代わりに決定する立場の人っていうのは無くしていきたいんです」

「環くん、その根拠は?」

「リーダーが決まれば、その人にみんな従うことになるでしょう。その人はみんなのためにいろんなことを決める人かもしれません。
でも、リーダーとは違った考えを持つ人達がいたら、その人達は少なからず不満を抱えます。
そして自分の考えを貫くために、リーダーになろうと行動し、いずれリーダーという立場の取り合いで争いが生まれます。
それが嫌なんです」

十七夜さんは少し考えた後、意見を伝えてきました。

「確かにリーダーという席をめぐって争いは起こるだろう。争いの種になるとはいえ、意見をまとめる者がいなければ決断しなければいけないことが起こっても皆がバラバラのままで何も決まらん」

「だから、人間臭いやり方を魔法少女も続けるっていうんですか」

「いろは、それは言い過ぎよ」

「私たち魔法少女ならば、誰かがリーダーにならなくても最善の結果を導き出せるはずです。十七夜さんだって、みんなが平等な立場で意見を出し合える世界がいいと思わないんですか」

十七夜さんは何かを言いたげに口を開こうとしましたが、うつむいて拳を強く握ってしまいました。

「いろはちゃん、おちついて」

「環くんは、魔法少女は、人間と同じような社会体制ではなく皆が平等に意見を出し合っても皆が納得できる新しい体制でやっていける。そういいたいのだな」

「・・・はい」

十七夜さんは握った左拳をこちらに振り上げ、掌を広げた後に私の右肩をつかみました。
周りのみんなは、十七夜さんが私に殴りかかろうとしたかと思って少し身構えていました。

「君がそんな世の中を実現しようと動きたいのならば、私は指示しよう」

「十七夜さん・・・」

「だが、常識から外れた考えを皆に納得させることは尋常ではないほど苦労する。東側の認識を、西側に改めさせる以上にな」

「わかっています。私ならばみんななら、魔法少女ならできると信じてますから」

「そうか。いいだろう」

十七夜さんは満足げな顔をして近くにある椅子へと腰掛けました。

「今後の神浜の方針はそれでいいとして、ういちゃんの件はどうしましょうか」

「なら、すこし僕の考えを聞いてほしい」

ねむちゃんが言うには、ういの現状に疑問があるというのです。

ういのソウルジェム周辺に微量ではあるが魔女に似た魔力がある。

あの反応はうい本人の問題以外も絡んでいるかもね」

「本人の意思ではなく、何者かの影響であるならそれに対処しちゃえばすぐ解決だね!」

「でもどうやるんだよ、ういをぶん殴るわけにもいかないだろ」

「それだと結菜さんと同じ方法ですよ」

魔女がういを操っているならば、直接倒せばいいのだけど、残念ながら魔女がういのどこにいるのかがわからない。

遠くから操っているのか、それとも。

「ねえ、ねむちゃん。どこから操っているのかがすぐにわかる方法はあるかな」

「その問いに答えるのは灯花が適任だと思うけど、ぼくの意見でいいのであれば考えがないわけでは無い」

ねむちゃんの考えを簡潔にまとめるとこうなる。

他人が誰かを真似る時、真似ている人物にしか知り得ないことまでは真似ることができない

魔女が、ういはワルプルガ以外を嫌う人物だと仕立て上げようとしていた場合、灯花ちゃんを庇った行為は真似ている魔女ではなくうい本人が出した魔女にとって想定外の行動であるだろうとのこと。

みんなが嫌いならば、守ろうという動きは咄嗟に出るはずがないから。

もっとういにわたしたちにしか知らないことをぶつけ、その反応を見て魔女の居場所を暴く。

それにうってつけなのが。

「クレメルの言葉がういには少しわかるから、なんて言っているのかそっけなく聞けばいいんだね」

「そうね。クレメルがすぐ近くにいてくれてよかったわ」

モッキュ!

気が付いたら調整屋の前に小さなキュウべえこと、クレメルがちょこんと座っていたのです。いったい今までどこにいたんだろう、姿も見せずに。

でも、これで確かめられる。

 

私達はういのもとに向かい、ういにクレメルを対面させました。

「今度は何をしにきたの」

モキュ、モキュモキュモッキュ!キュウ!

「…」

ういはしばらく黙ってしまいました。

そんな中、ワルプルガさんがういの近くへ来ました。

「この生き物、キュウべえって生き物に似てる。けど小さいね」

「あまり近づいちゃダメだよ、何されるか分からないから」

モキュゥ…

「うい、本当にクレメルがなんて言っているのかわからないの?」

しばらく沈黙が続き、クレメルとういがほぼ同時に何かにびっくりしたような反応を見せました。

そして、ういはクレメルに攻撃を仕掛けたのです。

「うい?!」

「帰って、もうみんなどっかいって!」

ういが無差別に周囲へ攻撃をはじめてしまったため、私達は急いでその場を離れました。

調整屋にいた鶴乃ちゃん、フェリシアちゃん、さなちゃんへ連絡し、私達はもと中央塔があった場所に集まりました。

「んでどうだったんだ」

「収穫はあったよ。クレメルが何かに気づいてくれたんだけど、それをどう聞き出そうかが問題で」

「クレメルは、ういちゃんを操る魔女がどこにいるかわかったの?」

モッキュ!

「この反応を見るに、どこにいるのかはわかったみたいだけど」

ねむちゃんは急に地面に落ちている瓦礫を円状に並べました。

「君はぼく達の言葉を理解できる。ならば問いに対して行動してくれるかい?

魔女がういの外なら円の外、ういの中なら、円の中へ」

そうねむちゃんが言うと、クレメルは円の中に入って座りました。

モッキュ!

「これで結論が出た。

ういを操る魔女は、ういの内側、ソウルジェムにいる」

 

back:2-2-1

レコードを撒き戻す:top page

Next:2-2-3

 

【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-2-1 なんで、魔法少女が、争うの

神浜から人が消えて3日ほど経過しました。

神浜にいた魔法少女達は皆、カレンさん達が実施したワルプルガさんを復活させる儀式の副作用として、人間嫌いになってしまうような情報が脳内に共有されました。

これによって人の死を悲しむ魔法少女は少なくなりました。
一部を除いて。

「私がお父さんと、お母さんを・・・そんな」

「どうしてよ!どうしてあなたたちは親を殺しておいて平気でいられるの!」

「あなたも見たでしょ!人と生活していたって幸せなんてないじゃない!」

「わたしたち、これからどうしていけばいいの・・・」

カレンさんの生死が確認できない状態で神浜にいる魔法少女達は、ただただ混乱していました。

みんながどうしようか途方に暮れている中、私にも大きな出来事が起きました。

「うい、どうしてお姉ちゃんから離れようとするの?」

「お姉ちゃんは人をたくさん殺した。いっぱい殺した。あの人たちは何もしていないのに!

人を平気に殺せるお姉ちゃんなんて嫌い!」

ういが私に対して怖い顔を向けるようになり、拒絶するようになってしまいました。

私以外の他の魔法少女との関わりも強く拒絶し、ういを母親だと思ってしまっているワルプルガさんだけには普通に接していました。

「うい、どうしちゃったの」

どうにかなってしまったのは私たちの方かもしれない。

しかし私はういの隣にいるワルプルガさんに用があるのです。

「ねえワルプルガさん、自動浄化システムのことについて覚えていることを教えてくれない?」

「自動ジョウカ、システム…

カミハマにあるみんなにとってとても大切なもの。

それをワタシが何かしないといけなかった気がする。けどわからない」

「あのね、ワルプルガさん、じつは」

話の途中でういの魔力を感じ、私は素早くその場を離れました。

なんと私にういが攻撃してきたのです。

「お姉ちゃん、ワルプルガちゃんを無理矢理魔法少女にさせようとしているよね。

そんなことさせないよ」

「うい、違うよ!私はただ」

「いろは、今は何を言っても通じないと思うわ。それに、今のういちゃんには別の魔力を感じるわ」

「やちよさん、それはそうですけど」

「あら、何をもめているのかしら」

聞き覚えのない声の先へ振り向くと、そこにはツノが生えた和風な雰囲気の魔法少女を先頭に数人の魔法少女がいました。

ツノが生えた魔法少女へやちよさんが問いかけます。

「首長竜を相手している時に見かけた気がするわ。あなた達何者?」

「私達はプロミスドブラッド。二木市から来た魔法少女よ。

私は紅晴結菜。あなたは環いろはに、隣が七海やちよかしら」

「私達になんの用?今は取り込み中よ」

この人、なんで私たちのこと知ってるんだろう。

「本当はあなた達にも用があるのだけど、今の本命はワルプルガよ」

「ワルプルガさんに用って、ワルプルガさんの存在をいったいどこで」

「神浜へ来る前に日継カレン達から直接聞いたわ。まあここにいることは他の子達から聞いたけど」

結菜さんはワルプルガさんの方へ向き直り、ワルプルガさんに近づいていきました。

貴方には自動浄化システムとやらを広げてもらわなくちゃ困るのよ

ほら、早くキュゥべえへ願いに行きましょう」

結菜さんがワルプルガさんに手を伸ばそうとするとういが結菜さんへ攻撃してしまいました。

「結菜さん大丈夫っすか!」

「あなたも、ワルプルガちゃんを無理矢理魔法少女にさせようとするの?」

「こいつ、魔女化しない場所にいるからって!」

「やめなさい。

・・・そう、取り込んでいたのはこんなことになっていたからなのね」

結菜さんは棍棒のような武器を取り出し、ういに向かって歩いて行きました。

私はその様子を見て結菜さんとういの間に入り、両手を横に大きく広げて立ちはだかりました。

「お願いです。

自動浄化システムはちゃんと世界に広げますから、今は、今はまだ待ってください!」

「いつまで待てっていうの。

私達は貴方達神浜の魔法少女が呑気に生活している中、魔女不足のせいで殺し合いをしていたのよ。

それが誰のせいだと思って!」

「この騒ぎはなんなのかにゃあ」

灯花ちゃんの声がした方を向くと一緒にねむちゃんもいました。

「灯花ちゃん、今来ちゃ」

「灯花?

もしかして貴方、マギウスの1人」

「うん?そうだけど何か用?

誰かは知らないけど、私はういの状況を見に来ただけだよ」

結菜さんは鬼の形相で灯花ちゃんに殴りかかりそうな勢いでしたが、二木市の魔法少女の1人が結菜さんの腕を掴んで静止を促しました。

「結菜、目的を忘れないで。

気持ちはわかるけど今じゃない」

「さくや…」

灯花ちゃんとねむちゃんはういに近づいていきましたが、ういはワルプルガちゃんを庇いながら2人を警戒していました。

「うい、別人みたいに変わっちゃったね」

「君はそんな顔をしない子のはずだ。
目的はいったいなんなのだい?」

「2人も、ワルプルガちゃんを無理矢理魔法少女にさせようとするの?」

「ふむ、なるほど」

ねむちゃんが何かに気づいたようですが、結菜さんが武器を地面に叩きつけました。

「そこをどきなさぁい。

ワルプルガが願ってしまえばみんな魔女化しなくて済むようになるのよ。

何をもたもたしているの」

「焦る気持ちは分かるが、魔法少女の願いは直接願った内容、因果量の他にも願った際の精神状態が願った結果に影響を及ぼす可能性がある。

ワルプルガを見てみなよ。とても怯えている。

君たちはワルプルガに魔法少女に対する恐怖を植え付けてまで自分の幸福を優先してしまう愚かな存在なのかい?」

「そんな正論、十二分に承知しているわよ。

でもね、限界が近いのよ。死んでいった仲間達の声がね、頭に響き続けているのよ。

これ以上、みんなを苦しみで縛りつけたくないのよ!」

結菜さんはその場で大きく棍棒を振り上げました。

「対象、変更!」

「結菜!」

棍棒が地面に叩きつけられた衝撃はその場に発生せず、灯花ちゃんの腹部に衝撃が発生しました。

灯花ちゃんは血を吐きながら吹き飛ばされ、その方向に火炎放射器を持った魔法少女が炎を放ちました。

「悪いな、私ももう限界なんだ。ウェルダンになっちまいな、マギウス!」

「灯花ちゃん!」

「樹里!早まるんじゃない!」

炎は灯花ちゃんを包み込みましたが、炎自体はういが出した凧で防がれ、灯花ちゃんには当たっていませんでした。

「うい…」

「2人ともいい加減にして!
マギウスの1人も言っていたでしょ。ここでいくら争ったって、ワルプルガが怯えるだけだよ」

さくやさんと呼ばれる人が結菜さんを説得している中、ワルプルガさんの方を見ると涙を流しながらぷるぷると体を震わせていました。

「なんで、魔法少女が、争うの」

結菜さんはワルプルガさんの顔を見て少し冷静になったようで、私に話しかけてきました。

「環いろは、あなたあんなに妹さんへ攻撃しないよう言ってきたけど、ちゃんと考えはあるのかしら」

「まだわからない。けど、必ずういを元に戻す方法を見つけ出して、自動浄化システムを広げてみせます」

「具体案はないってことね。

でも私がこの街の指導者になれば、あなたよりは早く自動浄化システムを広げられるわ」

でもその方法は、きっとみんなが幸せになる方法じゃない。

だめ、この人達の考えていること、抱えていることを知らないとどうしてこんなに怒っているかもわからない。

「そうね、手始めに貴方の妹さんを殺そうかしら」

結菜さんの言葉を聞いて、私は目を見開きましたが沸き上がってきたのは怒りではなく悲しみでした。

「おまえいい加減にしろよ!ういを殺したってどうもなんねぇってわかるだろ!

どうして、結菜さんは簡単に殺すとか言えてしまうのだろう。私達は、魔法少女同士なのに。

「フェリシア落ち着きなさい」

結菜さんは私の目をじっと見つめていましたが、結菜さんの方から目を逸らしました。

「2日待ってあげる。

その間に見つけた自動浄化システムを広げる方法を私達に、いや、神浜に集まった魔法少女達に説明しなさい。

それができたら私達は静観しておいてあげる」

「結菜さん」

「おい結菜!話が違うぞ!」

「さぁ、みんな戻るわよ」

二木市の魔法少女たちが去っていった後、私達は灯花ちゃんの治療のために一旦その場を離れて調整屋さんへ向かいました。

 

 

「結菜さん、環いろはに判断を委ねたみたいっすけど、急にどうしたんすか」

結菜さんは足を止め、少し黙った後、空を見上げながら話し出した。

「彼女を煽った結果次第で委ねようとは思っていたわ。

煽っても彼女は怒りを示さなかった。彼女には冷静に物事を見れる感情が残っていた。

もしかしたら、環いろはは私が失ったものを持っているもかもしれない。だから、どんな考えを出すか気になったのよ」

「全く、あそこで乱闘になった方が樹里様的には満足できたのに。

方針変更した分、樹里様に付き合ってもらうぞ、姉さん」

「みんなに無理させる選択をしたのは私だし、付き合ってあげるわ」

環いろは。

あなたの甘い考えがどこまで利口か確かめさせてもらうわ。

でもまずは、これからのために情報整理をしないとね。

これからは、人間の手を借りずに生きていかないといけないのだから。

 

back:2-1-13

レコードを撒き戻す:top page

Next:2-2-2

【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-1-13 1か0しか選べないならば、1を手にするために私は足掻くわ

魔法少女狩りをしようと思いついて3年経過していまに至る。

3年もかかった、と言うべきかそれともたった3年でと言うべきか

イザベラは魔法少女狩りを実現させてしまった。本人はそれで終わるとは当然思っていなかったらしく、その後のことも考えていた。

魔法少女はグリーフシードがなければ生きてはいけない。だから魔法少女狩りの一貫として普通の兵士でも魔女を倒せるよう対魔女用の兵器開発も完了させて、グリーフシードを人間が管理できるようにした。

そうすれば、魔法少女が人に降伏するのは時間の問題にできると、負ける要素なんてないと考えていた。

しかし、佐鳥かごめという少女が残していったノートによって今までの計画を一部変更せざるを得なくなった。
そのノートには魔法少女が魔女化しないというイレギュラーな土地があると記載があり、その真意を確かめる必要があった。その記載があった土地、神浜は魔法少女が魔女化する資料として利用していたがあの映像に映っていたのは魔女化した結果ではなく「ドッペル」という謎の現象で生まれた魔女もどきらしい。
魔法少女が魔女化しない空間とその恩恵、そして魔法少女の願いがどれほど世界に影響を及ぼせるか知っているからイザベラは焦っていた。

本来はヨーロッパにあるであろう魔法少女達の本拠地を制圧するための戦力を、魔女化しない仕組みのある場所へ送り、その土地の管理権限を人間が掴む必要があると考えた。

早急に、そう、早急にだ。

その土地を早めに人間の手中に収められるかどうかで形勢が逆転してしまう。

時間の問題で解決できず、武力という一番無謀な方法で解決せざるを得なくなる。

魔法少女が魔女化しない土地、神浜へは特殊部隊を一度送り込んでいるがそのほとんどが帰らぬ人となったという誤算が生まれた。

敗因として既にその土地へ日本中の魔法少女がヨーロッパのように集結して組織めいた動きをしていたのだと予想していた。

それでもイザベラは米国の軍しか動かさず、周囲の国へ協力要請を出していない。

その理由は、ヨーロッパの動きを警戒していたからだ。

どうやらイザベラはヨーロッパでの武器庫爆破の一件があってから再度各国の魔法少女状況を調査させたという。

その結果は、まだ多くの魔法少女が動いているというものだった。

敵の急所となるであろう神浜に全力を投じれば簡単に管理下に置けるだろう。

とはいえ、アンチマギアの量産体制は各国あまりよろしくない。まともに使える量は大隊規模1つ分のみだという。

それはそうだ、魔法少女狩りを行ったのも実験のために量産された分を使い回しただけで量産はこれからだという段階だ。

各国、扱いにまだ慣れていないのだ。

そんな状況で神浜に全力投球なんてしたら神浜は取れても他の地域が狙われて魔法少女に優位を与えてしまう。

そうなってしまって魔女化しない仕組みを願いによって世界中に広げられたら自分たちで傷口を広げただけの結果となる。

イザベラが悩んでいるのは、魔女化しない仕組みは手に取って消せるものなのか、それとも手の届かない概念なのか。

そしてイザベラはもっと気にしていることがある。

イザベラはカルラの研究室へ訪れていた。

「じゃあ、ハッキングではないがこちらの電波を傍受した形跡があったということか」

「そうだね。でもそれはおよそ人間が自由に扱おうとすることができる波を使用していない。

魔法の類、またはキュゥべえ達が使用するテレパシーの波に近い。

これを事前に防ぐには、キュゥべえ達が使用する波を含めた全く新しい波を操る方法を手に入れないといけなくなる」

「観測できたのなら、対策できるはずよ」

「もちろん試作はしている。

同調できる目処はついたが実用化には時間がかかる」

試作品をぶち込んで魔法少女に対策されていると悟られるほうが問題だし、しっかり完成まで持っていってちょうだい。

暗号は適宜変えているけど、私たちの情報は奴らに筒抜けだと思っておくわ」

「まあ書面のやりとりという古典的なやり方もあるが、即効性がなくなるからやろうだなんて考えは択にないだろう。だからだイザベラ、全て米国で解決しないといけない状況が続く。

日本の件も、もしかしたら奴らは対策済みだ」

イザベラは、何か危ないことを考えている顔をしていた。

「変なことは考えるんじゃない。まずは日本へ向かったディア達を信じてやれ。

思わぬ伏兵も参加するのだろう?」

「魔法少女なんて、戦力だなんて考えていないわよ」

イザベラはそう言い捨てて部屋を出て行ってしまった。

私は急いでイザベラの後をついて行った。

イザベラは難しい顔をしていて歩きながらずっと無口だった。そんな状況が続く中、私は施設にあるお祈りをするための部屋の前でイザベラを呼び止めた。

「イザベラ、この中で少し話をしないか」

部屋の中にはキリストの像があり、燭台と8人分の椅子とひざまづくための絨毯が敷かれている。

そこで私は、神についてイザベラへ聞いた。

「イザベラ、君は神という存在を信じているか。

人は絶体絶命になった時、神に祈りを捧げるというが」

「それ、キュゥべえに助けを求めて魔法少女になった子達と同じ思考をしてるかって聞こえるけど」

「あいもかわらず、ひねくれ者だね。

とはいえ、神浜市の存在があるせいで人と魔法少女の争いは泥沼化していくことは明確だ。

イザベラ、これ以上互いに犠牲の出ない方法で争いをしめた方がいいんじゃないか」

「キアラ、奴らはあなたが思っている以上に人間に勝とうと本気なのよ。

話し合いで終わらそうとしても、きっと奴らは納得しない。佐鳥かごめをさらった魔法少女も言っていたでしょ?」

私はホワイトハウスに突然現れた魔法少女のことを思い出した。

“残念だが話し合いで解決すると思うほど我々の考えは甘くない。人間と魔法少女。価値観、倫理観、社会体制すら相容れない存在同士が和解できる可能性など、とっくにこの世界では死んでいる”

「奴らの目的は人類よりも上の立場になること。

私が魔法少女狩りを行おうがそうでなかったとしても、奴らは人類の軌跡を破壊し、人類を屈服させに来ていたでしょう。

もう、何もかも手遅れなのよ」

「イザベラ…」

「1か0しか選べないならば、1を手にするために私は足掻くわ。

人類の軌跡を消させはしない。

神なんていないのよ。

いたとしてこんな事態になっているならば、その神は人間の不幸を見て楽しむただのクズよ」

魔法少女達は、どちらにしても私達を消しにかかってきていた。

イザベラが対抗しようと思ったから、今こうして抗えている。

こんなことになる前に打てた手なんてあっただろうか。

きっと、魔法少女という存在を一般人がほとんど把握できないという仕組みだった時点でこうなるべくしてなったのだろう。

「さて、作戦室に行くわよ。作戦開始時間が迫っているわ」

私にはどうすることもできない。

ただできることといえば、イザベラの動向を支えるだけだ。

「了解」

もしもの時も考えて、カルラさんには相談しておこう。

イザベラが、最悪の手段に手を出した時のことを考えて。

 

私とイザベラは指令室に入り、イザベラは日本の自衛隊へ回線をつないだ。

「責任者につないで頂戴」

作戦室にある一つの画面には日本自衛隊の責任者が映し出された。後ろで兵隊たちがあわただしく右往左往している中、責任者の顔は暗かった。

「・・・なんでしょうか」

「今回の作戦、協力してくれている魔法少女達へ装着したSGボムの発動タイミングはあなたにゆだねています。
もし魔法少女が裏切るようなことがあれば、爆発させれば決定打を与えられそうなタイミングで作動させてくれることを祈っています」

「それは、わかっています」

「いいですね?
今回の作戦への協力具合によって政治等への我が国が貴国へ支援する程度にも影響が出ることをお忘れなく」

「・・・はい」

相手の声からもわかる。魔法少女のソウルジェムを爆破させる役を任されて気乗りしないなんて当然のことだ。
はたして日本の自衛隊はどんな判断を下すのか。

日本の北と南にある米国の駐屯地へは数日前からエアメールを通じて今回の作戦について通知されている。回線をつないで会話すれば済む話ではあるが、イザベラは何を考えてエアメールで通知をしたのか。

「全艦、間もなく予定位置です」

 

「では作戦を開始しよう。我々は戦況のモニタリングに専念する。
現場での指揮は試作艦艦長のデュラン大佐に一任し、日本の自衛隊の動向も見張ってもらいたい。

今回の作戦でけりがつくよう、諸君の奮闘に期待する。以上だ」

 

1章 この時間軸にしか存在しない抵抗者(サピエンス)

 

back:2-1-12

レコードを撒き戻す:top page

Next:2-2-1

 

【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-1-12 お前は永遠に魔法少女と人を戦わせたいのか

レベッカが私に追突した後、結界内からイザベラと刀の女の姿は消えていた。

「逃げられたのか」

「そうね、逃げる術を持っているとは想定以上の存在よ、彼女」

「イザベラもそうだが刀の女も相当だ。
魔法少女でもないのにあいつに力で負けている感覚だった。それに刀を放り投げるなんて行為」

「あれは偶然ね。狙ってもやれるようなことではない。

彼女達の思考は逃げるのが優先だった。もし殺しに来ていたら、ここにいる私達みんな死んでたかもね」

「物騒なこと言うなよ。

んなことより、レベッカはいつまで目を回してんだ!」

「太ももが柔らかくてつい」

私たちが変身を解いて拠点に戻ろうとすると何者かが話しかけてきた。

「あれが話にあった魔法を使う人間ですか」

声が聞こえた方を向くとそこにはピリカがいた。魔女化しない方法を探していたはずでは。

「あんた、カレンと一緒に行動しているはずじゃ」

「ミアラさんが不在だというので、向かったと聞いた場所へと来てみたのです。ミアラさん、戦えないのに何で戦闘の場に出てきたんですか」

「なんで見たままだった。参戦してくれたら仕留められたのに」

「すみません、事情を把握していなかったので静観の択を取りました」

「ピリカの判断は正しかった。理由は戻ってから話そう」

この後イザベラ達が逃げ込んだ場所を襲撃しなかったのは、人間に目立たないため。

まだ私たち魔法少女は、人間に公な存在になってはいけないという方針がある。

だから私達は、大人しく拠点に帰るしかなかった。

 

聖遺物争奪戦とバチカンでの悲劇が終息して数年後、キュゥべえからある話を聞いた。

「魔法少女に対抗しようとする人間?」

「人類がどうなろうがぼくには関係ないが、彼女達は人間が魔法少女を管理しようと企んでいるようだ」

「それ事実なの?」

人類の上に立とうと考えている君たちには重要な情報だと思うけど

「そいつらの中に、魔法を使える人間はいるか?」

「いるよ。もしかしてもう知っていたのかい?」

「マーニャが報告してきたあの話か。確か今はヨーロッパにいるらしいな」

「ならばすぐに消そう。生かしとくと私たちには不利益にしかならないだろ」

「消すかどうかはさておき、私も同行しよう」

「ミアラさん、戦えないあなたは行かないほうがいいと思うが」

「直接会ってみたいのよ、魔法を使う人間にね」

そして私はイザベラという人物に会い、彼女を取り巻く環境がどんなものかを知った。彼女は十分私たちの脅威になることはわかった。

「いいんですかミアラさん、あいつら生きて帰しちゃって」

見逃せば今以上に魔法少女にとってきつい世の中にはなるでしょうね。

でも、待っていれば向こうから宣戦布告してくれるのよ?

私達は正当防衛という流れで人間社会を破壊することができる」

「正当防衛なんて人間社会だけで通じる話でしょ」

「まあ状況は把握した。したっけ、私達は魔女化しない方法探しに戻るよ」

「カレン、イザベラという人物についての情報は集めておいてくれないか。私たちの情報収集能力にも限度がある」

「わかったよミアラ。シオリとピリカにも伝えておく」

私達魔法少女は、人類が作った本来の自分を押しつぶすことでしか幸せになれない人間社会や常識を壊して魔法少女中心の世界を作らないといけない。

今は息を潜めて力を蓄える必要がある。

イザベラという人物が何かやらかしてくれるまで、私達は静かに暮らそう。

なに、まだ時間はあるさ。

 

 

突然襲ってきた激痛は体を焼かれるような痛さで、その後は麻酔を撃たれたのか完全に意識が戻ったら見慣れない天井が見えていた。

周囲を見渡すとどこかの病室のようで、ベッドの隣には椅子に座ってうたた寝しているイザベラがいた。

こんなに不用心なイザベラを見るのは初めてだった。だから、彼女が自分で起きるまではそっとしておくことにした。

ほんの少しではあるがイザベラの寝顔を拝んだ後、目覚めて私が起きていると知ったイザベラは少し照れた表情をしていた。

「寝てしまっていたのか。情けないな、睡眠もコントロールできないなんて」

「無意識に寝てしまえるのは心が安心しきっている証拠さ。いいことじゃないか」

「・・・なんであんな無茶をした。下手したらキアラは死んでいた」

「私はイザベラのボディーガードだ。身を挺して守るのは当然だ」

「自分の命ぐらい大事にしなさいよ、馬鹿」

それからイザベラに私が気を失っている間に何があったのか聞くと、私が気絶してから2日経過していることを知った。

私の手術が終わり、命に別状がないと知ったイザベラは大統領向けに特殊対策課 「サピエンス」の設立依頼書を作成していた。

魔法少女対策を行うという内容を隠し、国を脅かす組織に対抗するための特殊部隊的立場になるような内容にしたという。PMCのような民間軍事企業としてではなく、米国政府公認である軍事組織の一部という位置づけだという。

そしてディアとカルラが滞在できる場所を米国に用意し終え、私とイザベラ以外は既に米国へ移動してしまったという。

私が退院した後、私達はすぐに米国へと移動した。
不思議と、裏路地で襲撃してきた魔法少女達は手を出しては来なかった。

魔法対策としてアンチマギアが作成されたものの、それが魔法少女に有効なのかは実証されていない。

合理的に魔法少女対策用の兵器を開発するために、イザベラはかつてお世話になった非正規のテロリスト達のところを訪れていた。

「その試作品を使って、魔法少女と戦ってくれと。

そして、その魔法少女をなるべく生捕しろってか」

貴女達が魔法少女に関わる依頼をこなせることは十分に知っている。報酬はこれくらいを目安に出すつもりよ」

「・・・なるほど、額は悪くない。

だが、俺たちは政府の犬として活動する気はさらさらない。

試作品とやらのテストをする依頼は他に魔法少女に関わる依頼があったときについでで受けさせてもらう」

「構わないわ」

「それにしてもこれ、魔法少女に害がある成分が入ってるんですね。

私のような魔法少女が扱っても大丈夫なんですか?」

はじめてあった時からいる魔法少女、まだ生き残っていたのか。

「一般人がグレネードぶん投げて、それが足元に転がって自爆するのと一緒だ。

扱いを間違えなきゃ害はないさ」

「なるほど・・・」

「マーニャはドジだし、やりかねないかもな」

「バカにしないでください!他の子たちよりは長生きしてるんですから!」

「バカ騒ぎはよそでやれ。イザベラ、依頼はあんたとの信頼関係があるからこそ受けただけだ。あんたがやろうとしていることはまだ詳しく説明されちゃいない。もし二度目を依頼するんなら、ちゃんと説明の場は設けてもらえるんだろうな」

「ええ。深く尋ねずに聞き入れてくれたこと、感謝します」

こうして裏組織の協力もあり、対魔法少女用の兵器開発と共に捕らわれた魔法少女を使って薬剤の研究も進んだ。

研究員も増え、イザベラの根回しによって武装集団の所持も許可された。

着々と組織化の動きが進んでいった。

対魔法少女兵器の開発以外にも、ディアはとんでもない実験を進めていた事をカルラから聞いた。

「クローン体を遠隔操作するための実験?」

「そうだ。あいつは元々人という貧弱な体を何百年も生きられる形にすることを目的に研究者となった。

いろんな動物を使って実験してきたみたいだが、どうやら代謝を持つ生物はどんなに手を施しても常に激しい動きをしつつ何百年も生きるのは不可能だという結論に至ったらしい。

そこで、体を使い回すことで擬似的に長生きできるクローンに手を出した」

でもクローンを作る技術は人の体を複製できるほど発展していないはず」

「あの子ならできてしまうのさ。

まあ、少しは錬金術を絡めているが」

倫理観がぶっ飛んでいる。ディアは元々倫理観がない人間だというのは理解しているが、超えてはいけない一線をどんどん超えていくな。

「遠隔操作と言っていたな。まさかロボット的なものなのか」

「いや、魔法少女やキュゥべえが使用するテレパシーを模倣した波を使って本体の脳から直接伝達して遠くからでも体を操作できるようにしている」

「何でキュゥべえが実験体になっているんだ」

「とらえた魔法少女をいじっている間に彼女たちしか使用できない特殊な波があることを知ってね。それを解析してみると奴らを認識できるようになった。
そしてキュゥべえとっ捕まえて徹底的に解剖したよ」

「そんなことまでできてしまうのか、あんたたちは」

さらっとカルラはとんでもないことを言った。

キュウべえを生捕?そんなことをしようとも、できるとも思わなかった。
やっぱり天才の考えることはどこかズレていて、ぶっ飛んでいる。

「奴らの本体を逆探知はできなかったものの、おかげで波と複製体のデータがたくさん取れたんだ。

良くも悪くも、クローン技術は実用レベルにまで至ってしまった」

「表社会には発表しないようにしてくださいよ」

「当たり前だ。ディアが出そうとしても私が止める。

そうだ、今夜イザベラを借りる代わりに、ディアの監視を任せていいか?」

「はい、いいですが」

 

 

カルラから食事に誘われた。

珍しくキアラは用事があるらしく、今は私の近くにいない。

一般人には少し高めのレストランの中に、カルラはいた。カルラは個室を予約していて、私達は個室で食事をした。

「それで、食事に誘った理由でもあるの?」

「行動一つ一つに理由がないと気が済まないのか?気まぐれだよ。

とはいえ、相談したいことはある」

「相談?」

「お前の計画している魔法少女狩りというもの、いったいどれだけの規模を考えている」

「規模?それは世界中よ。世界中の魔法少女を人間の管理下に置かないと何されるかわからないじゃない」

「テロリストだって根絶できない世の中だ。全ての魔法少女を管理するなど不可能に近い。

お前は永遠に魔法少女と人を戦わせたいのか」

「そうなるわね。

まあ魔法少女にさせない薬もあるし、自然と数は減るでしょ」

「仮に魔法少女に人類が負けることがあったら、お前はどうする?

「負けさせないし、魔法少女に主導権を握らせるくらいなら全てを終わらせるわ」

「なるほど。

では忠告しとこう。決して地球を死の灰と焦土で覆うようなことは考えるな」

「そんなこと、しないわ」

「・・・そうか。
では話題を変えよう。食事をするのだから、明るい話にしないとな」

序盤の話以外はディアや研究について、そして日常的な話をして食事は終わった。

ディアのクローン研究は興味深く、カルラの統一言語を実現させる技術も気になる。

今度視察にでもいってみようか。

 

 

back:2-1-11

レコードを撒き戻す:top page

Next:2-1-13

 

【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-1-11 魔法少女はもう人ではない。人でなしに情けはいらない

“原子時計

それはグリニッジ標準時に変わる正確な時刻を示す標準となるもの
世の中はもっと正確な時間をと追求し、原子核まで手を伸ばそうとしている。

原子時計の時点で時刻のずれはほとんど出ないはずだが、実は2度に渡って分単位でのズレが国ごとに存在した時期があった。

1度目のズレが確認された際は大騒ぎとなったらしく、標準時としているグリニッジでの時刻で世界中の時計が調整された

混乱を避けるために秒単位での調整が行われたと報道されたが、わかる人間には分単位のずれがあるとすぐに見抜き、原子時計を基準とする考えの見直しが検討された。

そんな大事になるズレが2度この世界では起きている。

1万年以上も経過しなければズレるはずがない原子時計がこうも簡単に何度もずれるのは何故か。

天変地異が知らぬ間に起きていたのか、はたまた時間が一部地域で止まったからか。

人智を超えたことをできるのは、魔法少女しかいないだろう。

そして世界的に2度も時間調整を余儀なくされたということは、少なくとも2度、魔法少女によって人間の軌跡が踏みにじられたことと同じ。

とはいえ、こんな報告をはいそうですかと飲み込める人間はほとんどいないだろう。

でも、この旅で得た情報と合わせれば。あとは・・・”

 

私は旅の結果をまとめてそのまま米国へ帰国するかと思った。しかしイザベラは私とディア、カルラの前でとんでもないことを言い出した。

「魔法少女を人間の手で管理できるようにしましょう」

「人間の手で管理?」

「そういう考えに至った説明からしてもらえないか」

これまでに行ってきた調査の中で、魔法少女は願いの結果、手に入れた能力によって歴史を変えられることが明確となった。

そして聖遺物を調べているうちに人類史に出てくる偉人達の多くが魔法少女である、またはその助力を受けた結果だということもわかった。

このことから、人類の歴史は人類の力だけではなく魔法少女の力があったからこそ現代まで続いたということになっていることがわかった。

「魔法少女がいたからこそあるような歴史、でもそれは魔法少女の願いでそうであるかのように歴史改変がされた結果だからよ!

魔法で忘れ去られた謎の都市バチカン、あそこにはラテラノ条約という人類史に存在しないはずの資料がたくさんあったわ。

それに、私の父親も魔法少女の力で歴史から消された。

魔法少女の願いによって人類史が踏みににじられているという事実を知って、放って置けるわけないわ。

早く手を打たないと、人類史がないことにされかねないわ」

「それで、イザベラはどうしていきたいわけ?」

イザベラの考えを要約するとこうだ。

“人類史を変える願いをさせないために素質がある少女がキュゥべえと接触できないようにする必要がある。

そのために、キュゥべえのテレパシーが通じなくなるよう、世界中の女性にワクチンのようなものを投与する義務を世界に出す必要がある。

前準備として人類に魔法少女の存在を知らしめること、キュゥべえのテレパシーを遮断するワクチン開発が必要。

魔法少女の存在を知らしめると魔法少女を利用しようとする存在、魔法少女による反乱が起こる可能性がある。

だから存在する魔法少女を全員捉え、人類が管理する必要がある。

何か危ないことに手を貸している、反抗しようとしたらソウルジェムをすぐに破壊できるように細工できるようにする必要がある。

そして人類のみで魔女と魔法に対抗できるよう、アンチマギアを使用した兵器開発も進める必要がある。

こんなことを4人でできるはずがないから組織を結成する必要がある。”

「できるわけないだろ、と言いたいが実際に大統領にしちゃうくらいの実力を見せられてるからなぁ」

「おもしろそうだし、研究は協力してもいいけどさ。サンプルの確保はしてくれるんだろうね?」

「まさか、魔法少女を捕らえろって言ってるのか」

「当たり前でしょ?被験体なしで正確な結果を得られるわけないでしょ」

「おいディア、魔法少女は元人間だということを忘れるんじゃない。
倫理観を捨てるな」

「キアラ、魔法少女はもう人ではない。人でなしに情けはいらない」

「イザベラ?!」

これはよろしくない。いくら魔法少女が人類史を脅かしかねない存在だと知ったところで人でなしは解釈の方向性がよろしくない。
これでは魔法少女を管理するといったところで、魔法少女達の人権が保証されるはずがない。

「イザベラ、魔法少女を捕らえて人手なしの扱いをする予定ならば、私はイザベラの計画を止めなきゃならない」

「なに、魔法少女の肩を持つの?」

「違うさ。

私は遠くから見守っていたが、明確に人間へ悪意を持つ魔法少女なんて一握りだったじゃないか。

純粋な気持ちで魔法少女になってしまった子も人でなし扱いにするほど、イザベラはろくでなしなのか?」

「いい?キアラ。

あなたのように、周りから理解を得られて周りが合わせてくれた状態で生きていけるのは稀なのよ。幸運なことなのよ。

たいていは自分がいくら周りと違って苦しい場合でも周りに合わせないと生きていけない時だってあるのよ!

人間社会ってそういうものよ!日本ほどじゃないにしろ、どの国も周りに合わせないと生きていけないの。

そんな合わせるのが嫌だからとか自分に気に食わないからって理由で、周りのことも考えず奇跡なんてもので自分の都合の良い結果にしようとするのはね、心が弱いだけの愚か者よ!」

「そこまで言わなくていいだろ!みんながみんなイザベラのように察しがよくも頭も良くないんだよ!」

「それが人間社会よ。

無垢だからとかまだ子どもだからなんて言葉で人間社会踏み躙る奇跡を容認できるわけないでしょ!」

「イザベラの父親は、そうやって大人の意見を子どもに押し付けるような人だったのか!

イザベラは近くにあった机を強く左の拳で殴り、しばらく私を睨んでいた。

気に食わないことがあるだけで拗ねるような性格はしていないはずだが、なにをそんなに睨んでくる。

「2人ともそこまでだ。これ以上やるなら外でやれ」

「気分が悪くなったわ。ちょっと外に出てくるわ」

そう言ってイザベラが乱暴に部屋の扉を閉めて出て行った後、ディアは研究室に戻り、カルラはタバコに火をつけて私へ話しかけてきた。

「お互い大変だね」

「お互いって?」

「本人に言ったら怒られるかもしれないけど、イザベラってディア並にクレイジーな思考を持ってるじゃない?

あなた、ストッパー係でしょ」

まあ彼女についてきた一番の理由が何をやらかすかわからないからだし」

「しっかり見守ってあげなよ。早く外に様子を見にいかないと、彼女また何かしでかすかもよ」

たしかに。

まあ私も言い過ぎたところはあったかもしれない。改めて冷静に話し合わなければ。

気になった私は建物の外に出てイザベラを探した。

すると路地裏で数人の少女と対峙しているイザベラを見つけた。

イザベラと対峙している1人、アンカーを持った魔法少女がイザベラに話しかけていた。

「あなた、魔法少女に紛れて何を企んでいるわけ?バチカンにも入り込めたらしいじゃない?」

バチカンのことを知っている。もしかして真実を知る魔法少女?

「私は何もしていない。あなたたちにも被害を出していない。

勝手に疑って排除しようって、ヨーロッパの魔法少女は野蛮な奴しかいないの?」

長髪の魔法少女が話を続ける。

「イザベラという少女、貴女は以前忠告を受けたはずだ。

それなのにまだこの土地に滞在している。命を狙われてまで聖遺物とバチカンを調べるということは、

死にたいらしいな?」

「へぇ、そんなに関わられたくない事なんだ。今気分が悪いのよ。

消えてくれない?」

「貴女が何かを企んでいるという話も入ってきている。悪いが、消えるのは君だ」

私は危険を察知してイザベラの前へ出ようと動いたのと同時にアンカーを持った魔法少女がイザベラにアンカーを投げてきた。

私は持っていた刀でアンカーを弾き、イザベラの手を引いて表へ出ようとした。

すると表へ出ようとした私の前に短剣を両手に持つ魔法少女が現れて短剣を投げてきた。

私はそれらを避けて短剣を持つ魔法少女の横を通り抜けようとした

案の定、短剣を持つ魔法少女は短剣を出現させて後ろのイザベラを切り裂こうとした。

私は壁にイザベラを押し付け、刀で短剣を受け流した。

短剣の刃を向けるために無理な姿勢となっていたので短剣を持った魔法少女は簡単に姿勢を崩した。

表へ出ようとしたが周囲の雰囲気が変わり、いくら進んでも表へ出られる様子がなかった。

「結界か…」

イザベラがそう呟くと4人の魔法少女達が迫ってきた。

「長い間人間にバレないよう立ち回ってきたんだよ?人払いは当然できちゃうんだからね」

いきなり姿を見せた4人目の魔法少女は水晶を手に持っていて裏通りにいた時にはなかった水色の輝きを放っていた。

周囲は水色がかった状態になり、人気はなかった。

私とイザベラは背中合わせになって敵の攻撃に備えた。

“結界を破れるか試みるわ。時間稼ぎよろしく”

テレパシーで聞こえてきたのはイザベラの声だった。

私は小さくうなづき、敵の方を再度見た。

アンカーを両手で持つ魔法少女はこちらにアンカーを振りかぶってきた。

私はアンカーを受け流すことに専念し、イザベラと距離が開かないよう立ち振る舞った。

アンカーを持つ魔法少女は攻撃を一度やめ、私と見合った状態となった。

「あんた何者だ。あいつに雇われた魔法少女か」

「魔法少女だと思ったなら、あんたの魔力感知能力はイザベラ以下だ」

イザベラはと言うといつのまにかイザベラの正面にいた短剣を持つ魔法少女と護身用ナイフ、拳銃を使って追い払っていた。

イザベラの身体は魔力で強化されているため魔法少女と武器が鍔ぜりあっても平気でいられる。一般人が受け止めると一撃受けただけで脱臼してしまうだろう。

イザベラの拳銃を身のこなしと短剣で避けた短剣を持つ魔法少女はイザベラの隙を探るためか暗闇に消えた。

「キアラ!」

イザベラの声を合図に私は敵の注意を逸らす為に刀を宙に放り投げた。

「何を!」

アンカーを持った魔法少女は刀に注意を惹かれ、私は所持していたフラッシュグレネードを作動させて地面へ叩きつけた。

強い光が放つ中、私はイザベラのもとへ急ぎ、刀は地面に突き刺さった。

そんな中で短剣を持つ魔法少女が光をものともせずイザベラへ突っ込んでいった。

イザベラは短剣を持った魔法少女が突き出した右手を掴み、他の魔法少女達がいる方向へ放り投げた。

短剣を持った魔法少女が投げられた方向には刃が短剣を持った魔法少女の方向を向いた刀が待っていた。

そんなの構う気もなかったのか、彼女は短剣を2本イザベラの方向へ投げてきた。

「「いけない!」」

長髪の魔法少女と私の声は同じ内容を同時に発した。

その後秒間で私が敵の攻撃を庇って2本の短剣をまともに背中で受けたことと、アンカーを持った魔法少女が刀をアンカーで薙ぎ払い、短剣を持った魔法少女をその身で受け止めて後ろに倒れ込んだことが起きていた。

イザベラは珍しく驚いた顔を見せ、すぐに結界の外側を向いて何をしたのかまではわからないが結界に穴が空いてそこから私達は人気のある表へ出ることができた。

表へ出るとそこには数人の一般人がいて、路地裏へ振り返ると魔法少女達からの追撃はなかった。

一般人を巻き込まない理性はあったみたいだ。

「君達!その大怪我、通り魔か」

「ええそうよ!どいて、応急処置が必要なのよ」

私の体から2本の短剣が引き抜かれるまでは覚えていたが、そこから先は気を失って覚えていない。

突然の激痛が体に訪れるまでは。

 

 

back:2-1-10

レコードを撒き戻す:top page

Next:2-1-12

 

【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-1-10 これは貴方が求めていたものに値するかい?

私たちが応接室に入ると、そこには1人の女性と不貞腐れている少女がいた。

「どうぞ、お座りください」

「えっと、不機嫌そうですね」

「気にしないでもらいたい」

「では、今回訪れた理由となる資料をお渡しします。まずはそれに目を通してみてから感想を聞かせてもらえますか」

不貞腐れている少女に渡したのは魔法と魔法少女についての調査内容を記載した資料だ。

その資料を不貞腐れた少女を中心として教授と付き添いの女性も読んでいた。

その資料を読んだ後の最初に話し始めたのは教授だった。

「イザベラさん、我々はオカルト研究ではなく生物学についての研究を専攻していまして、ここに書かれている内容はいささかファンタジーが過ぎるのではないでしょうか」

「そのファンタジー、現代技術でどうにか立証及び実現できないでしょうか」

「ですから、ファンタジーな時点で」

「面白い内容じゃない?」

「ディア?」

不貞腐れた少女はディアという名前らしく、興味津々に資料を眺めていた。

「この魂を石に変換するってところ面白いわ。これを科学技術に転用できれば私のクローン研究が大きく進展するわ」

「ディア、お前の提唱するクローン技術は過激だと言っている。出した論文もマイルドな部分のみで報告したのもそのためだと伝えたはずだ」

あんな実現したところでどうだっていい内容になったから見向きする人が現れなかったのですよ。

イザベラだっけ?魔法についての調査、請け負ってもいいわよ」

「あら本当?」

「こら、私の許可なく話を進めるな。そもそもお前には私が出している課題があるだろう」

「あんな課題もう提出する準備ができていますよ。その後は好きにさせてもらいますから」

「ディア、おまえは!」

「では雇うという形でディアさんをお借りします。それ相応のお金は前払いさせてもらいますよ」

「そ、そうか。ならば好きにしろ」

俗物め。

「じゃあカルラも一緒でお願い。私、カルラと一緒じゃないと嫌だから」

「私からもお願いしたい。私なしだとディアはすぐに暴走してしまうからな」

「あなたは、カルラさんというのですね」

「脳波の研究を専攻している。きっと役に立つだろう」

こうしてイザベラは変わり者な2人の研究者を雇った。

 

2人にはイタリアにあるシェルターを貸し与え、そこで魔力でできた霧を突破する方法を研究してもらうと伝えた。

部屋の準備が整うと、ディアはさっそくイザベラへ頼みごとをしてきた。

「さて、早速だけどあなたの血を採取させてもらえないかしら」

「私の血を?」

「ええ。何の媒体も使用せずに魔法が使えると言うのであれば、体組織に魔力の類のものが溶け込んでいたっておかしくないわ。
だから資料として頂戴」

「いいわよ。でも、常識の範囲内の量でお願いね」

「吸血鬼じゃないんだし、心配しないで」

そうは言っていたがイザベラの血液は献血並みに抜き取られた。

その後の血液の使われ方を聞いたら絶句した。

火で炙ってなかなか固まらなかったり蒸発しないことに興奮して、溶解した鉄の液体に血を垂らして血液の性質を保てるか実験したという。

致死量の毒を血に混ぜると驚きのスピードで解毒したという。

冷凍庫に保存しても暖かさを保って腐りもしなかったという。

調べる角度はなかなかクレイジーだが、魔力が籠った血は生命力を高める効果があるというのは立証された

「すごいよ!イザベラの血液だけでこの世では出ないはずの結果がたくさん出て驚いたよ!
できれば銃で撃たれた後の傷口が塞がるスピードも調べさせてもらいたい」

「調子に乗るな」

「それで、魔力の霧を突破する方法は分かりそうなの?」

「それについては魔力についてのサンプルがもう少し欲しい。

見せてくれた資料によると聖遺物と呼ばれるものには魔力がこもっているらしいじゃないの。

いくつか持ってきてくれない?」

なにが聖遺物に該当するのかというのははっきりしていない。

それに、この聖遺物について魔法少女の間では争奪戦が行われたことで人間が所持している聖遺物は数少ない。

イザベラは一度ヨーロッパ地方にいる魔法少女へ聖遺物について聞いてみた。

「あんた、まさかこの辺りの事情に疎い?」

「えっと、そう」

「あまり聖遺物の話題を出さない方がいいよ。昔ほどじゃないけど、聖遺物のやりとりはよく争いが起きるんだから」

「そうなんだ」

「変な争いは避けたいでしょ、グリーフシードは有限なんだから」

「そうね。教えてくれてありがとう、気をつけるわ」

ヨーロッパ地方での聖遺物事情を知り、私達はインド周辺や中東で聖遺物探しを行った。

しかし、ここら辺の地域でも魔法少女達は聖遺物については敏感に反応して、危うく殺されかける時もあった。

研究材料となる聖遺物が確保できず、しばらくの間目的が果たせずにいた。

そんな中ディアは。

「じゃあ魔法少女を直接生捕にしてきてよ。その子をそのまま実験材料にするからさ」

「あんた、生き物の命を何だと思ってるんだ!」

「キアラさん、ディアはこういうやつだ。慣れては欲しくないが、いちいち気にしてると精神がもたないよ」

「・・・カルラさん、よく一緒の研究室でやっていけましたね」

カルラさんは私に後ろから覆いかぶさるように右手を私の右肩にかけ、私の左耳にささやいてきた。

「普段他人には見せない一面が好きだからさ。あなた達も長い付き合いになったら見ることができるんじゃないかな」

「想像もできない」

もちろん魔法少女の生捕なんてやらずに最適な素材がないか考えた

そしてイザベラは大きな決断をした。

「両親の形見であるそのペンダントを材料にしてしまうのか!」

「これしかもう方法がない。

たくさんの魔法少女に目をつけられて行動しづらくなるよりは、これを使うしかない」

「でも、大事なものを失った後イザベラはイザベラでいられるのか」

「どういうこと?」

「経験したことがあるかわからないが、大切なものを失うと人が変わる場合がある。

中には全く別人に変わってしまう人もいる。それがイザベラに訪れないか不安なんだ」

「キアラ、私の精神力を甘く見過ぎじゃない?
大丈夫よ、私は私のままでいられるわ」

そうしてイザベラは首からかけていたペンダントをディアに渡し、ディアはペンダントを調べると言ってからしばらく研究室から出てこなかった。

ディアが研究室に閉じこもっている間、私たちには大きな出来事が起きていた。

ヨーロッパ地方の魔法少女に目をつけられてしまったのだ。

ドイツで魔女狩りをしていた際にイザベラは魔法少女からこう質問された。

「ねぇ、今ここで魔法少女姿を解いてみてちょうだい?」

「必要性を感じないのだけど、どうして?

私を襲う気?」

「まあ当然の反応よね。じゃあソウルジェムをいつもの持ち運べる形に変えてくれない?」

「意味がわからない。おちょくってるだけなら帰らせてもらうわ」

「あなたが魔法少女に化けた何者かじゃないかって、噂になっているのよ」

イザベラは瞳孔が開くぐらいの衝撃を受けてゆっくりと魔法少女の顔を見た。

魔法少女は意地悪そうな笑みを浮かべていた。

「今ここで変身を解いたり、ソウルジェムの形状変化を見せてくれれば当たり前に魔法少女だよねって私は理解できる。

でもここでそんなこともできず怒って逃げ出しちゃったら、魔法少女に化けたやばいやつってみんなに伝えるしかないんだよねぇ」

イザベラは癖である何かやばいことを考えている時の顔になっていた。

私は遠くから静観してるよう言われてきたが、流石に今回は手出しのために現場へ駆け寄って行った。

「あなたを今消せば、誰にも伝わらないわよね?」

イザベラがそう言った瞬間、魔法少女は武器である鞭を取り出してイザベラへ攻撃を行った。

鞭は常識で言う通りの鞭の動きをせず、蛇のように重力を無視してイザベラを追い回した。

イザベラが銃と剣で対抗しても追い払うことができず、鞭の先端がイザベラの心臓を捉えた。

「何してるんだイザベラ!」

私は刀で鞭を打ち払い、魔法少女は攻撃の手を止めた。

「いい従者を連れているのね」

「何故出てきたキアラ!」

「私がいないと死んでただろ!しかも、もう隠す必要もないでしょ」

「そうよ。あなたはもうすでに魔法少女と共闘するには怪しすぎる危険人物として認定されているわ。

何を企んでいるか知らないけど、これ以上魔法少女を危険に晒さないでくれるかしら。

貴方がいると、また大きな争いが起きそうで怖いのよ」

「知ったことか」

「逃げるための時間もあるだろうし、今日は生きて返してあげる。

次に会ったら消すから」

イザベラは何も言わずその場から去ったため、私もイザベラの後をつけるようにその場を去った。

そんなことがあり、私たちは魔法少女の前に姿を晒すことが叶わなくなった。今までのように魔法少女について調査して回ることも、もう出来ないだろう。

そんな出来事があった後、ディアが研究室から飛び出してきた。

「イザベラ、いいものが出来たぞ!早速試してくれ!」

そう言ってディアは怪しげな紫色の液体が入った小さな試験管をイザベラに渡してきた。

イザベラはこれをどうしろと、という顔をしたがディアは飲み物を飲むようなジェスチャーを返してきた。

「この紫色に光るやばい液体を飲めと?」

「そうよ!これを飲んだ貴方の体内から魔力反応が消えたら魔法を打ち消す薬が完成したことになるわ!

あ、貴方の血液で魔力反応を消せたことまではテスト済みだからきっとうまくいくはずよ」

「イザベラ、やめといた方が」

「いいえ、この体から魔力が消えるのであれば好都合よ」

そう言ってイザベラは試験管に入った紫色の液体を一気に飲み干した。

イザベラは試験管を手から離し、床に落ちた試験管は割れてしまった。

そのガラスの破片が散らばる場所にイザベラは膝をつき、体が小刻みに震えて涙を出しながらその場に吐いてしまった。

「イザベラ!」

その後イザベラの体は痙攣を始め、目の瞳孔は開きっぱなしだった。

もうこれは毒を盛られたとしか思えなかった。

私は殺意を込めてディアへ刀を突き立てた。刀の勢いが強すぎたのか、その刀はディア左肩を貫通していた。

「キアラ、やめろ!」

「すごいね…貴方そんな強い殺意を持っていたんだ」

「このままイザベラが死んでみろ!お前も後を追わせてやる!」

「できるかな?」

「2人ともそこまでにしろ!

まずはイザベラの看病が先だ。顔を下にしてあげないと吐いたもので窒息死してしまう」

カルラの冷静な判断を見て私も冷静さを取り戻した。

私達はイザベラをベッドに連れて行って容態が落ちつくまで見守った。

 

夜になってようやくイザベラが目を覚ました。

「私はいったい。すごく頭が痛い」

私は歓喜した。イザベラが正気に戻ってくれただけで安心した。

「起きた?じゃあ早速血液取らせて?」

「いい加減にしろディア!」

イザベラの体力が戻った後にイザベラは血液検査を受けた。その結果、イザベラの体から魔力は消えていないことがわかった。

しかし紫色の液体に魔力を消す力があるのは本当らしく、イザベラが魔力を込めた物体に紫色の液体をかけるとその物体から魔力反応が消えたという。

そもそも魔力反応があるかないかなんてイザベラなしでどう判断していたんだ」

魔力が籠ったイザベラの血液は炎で炙っても固形化しない特徴があると以前伝えたでしょ?

それで判断したのよ」

「それだけでか」

「結局、この紫色の液体は何なのかしら」

「イザベラからもらったペンダントを液状化させて、そこに貴方の血液を混ぜた結果生まれたものよ。

面白いのよこの液体、乾かせば粉末にできるし、ここに鉄分を混ぜればいくらでも培養できるのよ!

量産だって可能よ!」

「なんか本当に魔法みたいな方法だ」

「魔法と似ているかもしれないが、錬金術と呼ばれる方法を参考にしているのさ」

「錬金術?」

「現代では化学と呼ばれるようになったものの原点だ。私たちの生物学は、錬金術を織り交ぜている」

「貴方達、もしかして錬金術師と呼ばれる存在なの?」

「ディアと縁があるのはそういうことだ。
私たちの先祖は錬金術師として縁があった。そして祖先の末端である私たちもほんの少しだがその血を引いている。

少々化学では説明しきれないことも出来てしまうのは許してほしい

「そうだったのか」

「さあイザベラ、これは貴方が求めていたものに値するかい?」

ディアがそうイザベラに問いかけるとイザベラは笑顔で答えた。

「ええそうよ、想像より効果は薄いけど私が追い求めていたものはこれよ!

魔法を打ち消せるこの物質、名前はアンチマギアと名付けるわ!」

「よし、じゃあこれからこの新物質はアンチマギアだ!」

こういう経緯でこの世界にアンチマギアは誕生した。

そして私達は無断でアンチマギアを織り交ぜた防護服で魔力の霧に覆われた立ち入り禁止区域に潜入した。

防護服は魔力を完全に遮断し、安全に霧の中を探索することができた。

しかし空気の浄化までは出来ないので、酸素ボンベの酸素が切れるまでが探索のリミットではある。

霧の中を歩いていると、私達は祈りを捧げるようなポーズを取った何かの亡骸に辿り着いた

「何だこれ。銅像でもないけど、もし500年以上ここにある物だとしても原型を保っているなんてことがあるのか」

そして私はある看板を発見した。

そこに記されていたのは見たことがない地名だった。

「バチカン?ここの地名?」

「聞いたことがない。でも、当たり前のようにそこらじゅうにバチカンと一緒に周りの地名が記載されてる」

「キアラ、このバチカンという街は魔法によって歴史から消されたんじゃないかしら」

「そうだとしか思えないけど、どうやって魔法のせいだと証明させる?」

「この霧が答えじゃないの。魔法の霧で隠すような場所、魔法の影響を受けていないわけがないわ」

「アンチマギアがあるからこそ、証明できるってことか」

「それにこの旅で確信したわ。
魔法少女は、人類にとって悪となる存在だということを」

 

 

何を根拠に言い出すのかと尋ねる者は多いだろうが、これまでの事例を振り返るとどうだろう。

魔法少女になる時の願い、そして願った後の能力によってこの世界の人間の軌跡はいとも簡単に破壊されてしまうということを目の当たりにしてきた。

“人間の軌跡が存在ごと消される”

インターネットや機械技術、金を使用した物々交換や一般常識がすべてなかったことにされてファンタジーだと思っていたことが当たり前の世界になるかもしれない。

人間の軌跡が消されて悪いことがあるのか?
一部の人物しか幸せになれないこの世の中なんて、消えてしまったほうが好都合だ。そう考える人も少なくはないだろう。

でも何億人もいる人間が浮かべる幸せな世界の事例なんてみんなが納得できる内容になるわけがない。一部の人にとっては他人を傷つけ、もだえ苦しむ無様な姿を見て愉悦に浸ることが幸せ、愉悦感に浸れない世の中は消えてしまった方が都合がいいと考える人がいないとは言えない。

みんなの幸せとは、誰基準で考えた幸せだ?

過去の人間の軌跡を振り返って及第点の幸せを指導者が実現し、なるべく多くの労働者に還元する。それが私の信じる人間社会原理だ。

その「幸せの基準」の決定権を魔法少女という人間社会をまともに知らないであろう存在たちが握っている現状が恐ろしくないのかと。

だから制御してやらないといけないんだ。

魔法少女が幸せになって、人間が不幸になる軌跡が当たり前とならないために。

 

back:2-1-9

レコードを撒き戻す:top page

Next:2-1-11

 

【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-1-9 軌跡が変えられた痕跡を求めて

ロシア地域にある何の変哲もない街、チェルノブイリ。

歴史を振り返れば悲惨なこと続きなこの街だが、政府から気に留められることがなくなったことをいいことに、土壌改善を含めた農業開発が粛々と進められた。

その結果、ロシアの中でも大事な農業地帯に成り上がり、自然が豊かということで定住する人も、移住してくる人も増えていった。
また、土壌改善に成功した珍しい例としても注目されてその改善技術は他の土地でも使用されて世に大きな貢献を残した。

これが今残るチェルノブイリの歴史。

でも。

政府が押し進めようとした燃料開発プロジェクトで原発の建設予定がチェルノブイリにはあった。
そこまでは記録に残っているが、ある日突然その話題がパッタリと消えた」

「この事実を教えてくれた人のところを訪れて、何故急にプロジェクトが雲隠れしたのか調べるわ」

「歴史が変わったが故に生まれたと思われる違和感、果たして魔法少女は関係あるのかな」

私はプロジェクトの関係者と接触して話を聞いた。

プロジェクト資料を手に持っていたその人は、その資料をどこで手に入れたのかを覚えていないらしい。その資料は同じプロジェクトに参加していたメンバーならばみんな持っていたはず、彼はそう語っていた。

他の人達と違った立ち回りをしていなかったか聞いてみると、父親の病気が悪化したことで仕事かばんを持ったまま仕事場を離れてしまったことがあったらしい。
その次の日、プロジェクトはなかったことになってプロジェクト内容が建設場所を検討するための評価実験になっていたとのこと。

原発の開発は度重なる評価実験の末、海辺に開発されたが世界のエネルギー開発競争の中でロシアは遅れをとることになった。

彼はこう言った。

この資料の作成日から原発開発が進んでいたら、この国はもっとマシな順位を手に入れていただろう。

彼以外の関係者で、プロジェクト資料を所持している存在はいない。

紛失してしまったという可能性を考えても、たった一つしか残っていないなんてことがあるのか。

「さて、ここから魔法少女に繋がるなんてことあるか?」

「なぁに、魔法少女の専門家に聞けばいいだけの話さ」

私達はキュゥべえへこの周辺で一番長生きしている魔法少女について聞いた。

「この辺りで一番長生きしていると言えばイリーナだろう。
とはいえ7年程度で君達が求めている年代から生きていた子はもういない」

「ありがとう、それで十分よ」

私は魔法少女を疑われないよう宝石を用意し、そこに魔力を込めて魔法少女と偽ってイリーナと呼ばれる存在へ接触した。

「20年前にこの町で何かなかったかだって?」

「そんな昔のことを知って、何をしたいの」

「長生きしている魔法少女に会いたいの。魔法少女の宿命の中、どうやってそこまで長く生き続けることができるのか」

イリーナの取り巻きがあーだこーだと話しかけてくる中、イリーナが話し始めた。

「私の先輩から聞いたことがある。

もともとこの街には原発が作られていて、そのおかげでこの街は生計を立てれていたとか。でも、原発は事故を起こしてこの街は死に溢れかえった。
そんな現実を見て、1人の少女が願ったらしいの。

“事故が起こる原因となった原発開発を無かったことにして”

そして今のチェルノブイリがある。

先輩から聞いた話よ」

「そんなことがこの街に」

「事実かどうか知る方法は?」

「あるわけないでしょ。当時のことを知る先輩たちは、死んだり魔女になったりしたわ。
先輩から話を聞いてなきゃ、誰もそんな事実知らない」

一呼吸した後、イリーナは話をつづけた。

「でも、どうやら原発計画を無くすよう願った子は10年以上生き続けたらしいわ。最後は、私の先輩の先輩をかばって死んだらしい。
いつも笑顔で、希望に満ち溢れていたような子だったって先輩は聞かされていたみたい。
魔法少女で長生きする秘訣は、とにかく明るい希望を持ち続けることじゃないかしら」

「そう、ありがとう」

 

私は十分に情報を集められたと判断し、次の場所へ移動する準備を始めた。

「あの話が事実だとして、おそらく誰も信じないだろう」

「ええ、人は自分の体験したことしか信じない。

または周りが信じるから事実だろうという同調圧力による信じ込ませでしか事実だと認めてくれない」

「チェルノブイリ、歴史が変わった場所として覚えておきましょう」

 

次に向かったのは朝鮮半島。

ここには朝鮮と呼ばれる朝鮮半島丸々一つを国土とする国だ。

大昔は北と南で分断されていたらしいが、第二次世界大戦後を境に南北が統一されたという。

しかしこの朝鮮の歴史、なぜ北と南で領土が分断されたのか、どういう経緯で統一されたのかが曖昧となっている。

再びキュゥべえにこの土地の魔法少女について聞いていたのだが。

「仮に願いで歴史を変えようと願っても、願った少女の背負う因果量によっては歴史が中途半端に変わるというのはよくあることだよ」

「じゃあ歴史を変えた前例を全て教えてくれないかしら」

「それは無理だ。

ボクも歴史改変に飲み込まれているだろうからね、どう歴史が変わったかなんて全ては把握できないよ。

チェルノブイリのことについても、ボクは願った子のことさえ覚えていない」

「知っているだけ教えてくれないかしら」

こうやってキュゥべえに情報提供を求めた結果、朝鮮半島で歴史を変えるような願いを行った少女がいたという。

だがどう願ってどういう結果になったかは覚えていないという。

「朝鮮半島の歴史、学校ではあっさりした内容だから気にもならなかった」

「簡略化されているからこそ気づかない違和感ね。どう統一されたのか、現地の人たちにも聞いてみましょうか」

こうして南側と北側に住む人たちへ話を聞いてみると、第二次世界大戦後に日本から解放された朝鮮半島は復刻を掲げて朝鮮として再び動き出した。

皆こう答えてくる。

「でもおかしいわね、朝鮮半島については米国とソ連で領土分配の話し合いが行われていたという話があったはず」

「それがなかったことになった…

あれ、この展開って」

「外部から何かチカラが加わったのか、それとも史実と受け取って良いのか。

切り込み口は見つかったけど、後は願いで変わったという証拠があればいいんだけど」

チェルノブイリの時同様、イザベラは魔法少女のフリをして魔法少女たちへ聞き込みを行なった。
私は遠くから見守っていたが、チェルノブイリの時と違ってイザベラが危険な目にあう場面が多発した。魔女を相手にして危険な目にあうのではなく、魔法少女同士の争いで危なくなる場面が多かった。
何故魔法少女同士の争いが多いのか。魔女と戦わずにほかの魔法少女からグリーフシードを奪うという考えが日常化していたからだ。
何故そんな考えが日常化してしまったのか。

イザベラが聞き込みを行っていると、気になる情報が飛び込んできた。

「え、もともと北側と南側で魔法少女のテリトリーが分かれてたって?」

「国同士がそうだったからね、魔法少女の間でも自然とそうなっていった」

「まて、国が分かれてたってどういうこと?」

「なんだ、あんたも影響を受けた腹か。やっぱりあいつのそばにいた私しか、真実を知らないんだな」

「真実?」

「悪いな、あいつの頼みで真実を教えるつもりはない。知りたきゃ自力で探し出してみな。私から力づくで聞こうとしても無駄だよ、無関係な奴に絶対に話す気はないからね。

まあ、北側を探せば何かあるかもな」

言われた通り北側を探索していたが、イザベラはテリトリーにうるさい魔法少女と出会ってしまった。

「逃げるな!無断でテリトリーに入ったんだから許さねーぞ!」

「ここもうそのテリトリーの外だと思うんだけどなぁ。めんどくさい」

「助太刀しようか」

「いや、私が魔法少女じゃないとバレる方がまずい。いざとなったらでよろしく」

仕方がないから相手が見失うまで逃げていると、足元がコンクリートの謎な場所にいた。

「何だここ、少しだが魔力を感じる」

周りを調べていると重厚なハッチを見つけた。どう壊そうか悩んでいると、後ろから追ってきていた魔法少女たちに追いつかれた。

「見つけた、覚悟しやがれ!」

魔法少女は魔法で生成した爆弾を取り出して私に投げつけてきた。イザベラは避けたが、ちょうどよくハッチが壊されて中に入れる状態になった。

「ありがとね」

イザベラはハッチの下にある空間へ飛び込んだが、思ったよりも深い空間だった。

降り立った場所は、鉄製の通路のようで周りが暗くて状況を掴めない。

イザベラがライトを取り出して周囲を確認すると、驚くべきものが目に入った。

ライトをつけた後、追いかけてきていた魔法少女たちはハッチの中までやってきた。

「チクショウ、お前いい加減に!」

「まて、ここで争うのは禁止だ」

「はぁ?何を言って」

イザベラはライトを当てている先を指差し、魔法少女たちもそこをみた。

ライトが当たっている場所には、核を表すマークがあった。

そしてライトで上から下まで照らしてみると、明らかにミサイルが目の前にあることがわかった。

「核、ミサイル、だと」

これはとんでもないものを見つけてしまったのかもしれない。

そして周りをよく観察すると、見たことがない国名が目に入ってきた。

「北朝鮮?何だこれ、秘密組織の名前か何かか?」

「あら、まさかこんなものが消えず残ってたなんてね。核を隠すくらいしか因果量が足りなかったってことかな」

聞き覚えの声がする方を振り返ると、真実を知っているらしい魔法少女がいた。

「お前はシェンヤン!何でここにいる!」

「そこにいる異国の魔法少女を追ってきたのさ。それにしてもあいつ、歴史変えてもこれ残っちゃダメだろ」

「歴史を、変える?」

「ああ、あいつが変えたんだ。米国とソ連のせいで生まれてしまった南北問題を無かったことにしたいと願って」

「真実にたどり着いたから教えてくれるのか?」

「まさか、詳しくは教えない。

でも、あいつのおかげで朝鮮半島から無駄な争いが消えたという事実を多くの人には覚えてもらいたい。

まあ、ただの気まぐれさ」

北朝鮮、きっと願いによって消えてしまった国なのだろう。

「歴史が変えられていなかったら、どうなっていたんだ」

「そうだねぇ、北の人は貧困に苦しみ、南北同士で殺し合いになっていたかもしれない。

さらに言うとこのミサイルだ。

朝鮮半島だけでなく、世界が不幸になっていただろう」

「そいつのおかげで、朝鮮の私達はまともに暮らせてるって言いたいのか?」

「そうね、少なくとも私はあいつが願ったのは間違いないと思っている」

核ミサイルを作れるほどの国が生まれた歴史。

きっとその結果は人類にとっても不幸な結果なのかもしれない。

願いによって平和な方向へ動いた結果になったところで、

人類の軌跡が踏み躙られたことに変わりはない。

「ところで、なんでシャンヤンは歴史が変わったと覚えている?」

「何故だろうね。願った瞬間、目の前にいたからかな」

私達は施設内の資料を集めていたのだが、施設内を歩き回るシャンヤンにイザベラがある質問をした。

「ねえシャンヤン、なんで朝鮮の魔法少女は魔法少女同士で争うようになってしまったの」

「あんたの地元のことは知らないけど、朝鮮には魔女が少ないんだ。
その割には魔法少女の数が多くて、それ故にグリーフシードの奪い合いが多発した。
それと、聖遺物の争奪戦なんかも発生した時期もあって魔法少女同士が争い合うのが当たり前になったんだ」

「聖遺物の争奪戦・・・。
中華民国へ遠征したりしないのか」

「まさか。
あっちのやつらに侵入がばれたらそれこそ魔法少女同士の争いが激化してしまう。
いいか、世界中を旅するのはいいが郷に入っては郷に従えともいう。その土地の決まりや考え方は理解したうえで行動したほうがいい。じゃないと早死にするよ」

「警告どうも」

あの施設についてはその場にいた者達の秘密にしようと言う結果で収まった。

そして新たに聞いた聖遺物争奪戦という話。そういえばロバートも聖遺物について言っていた気がする。
魔法少女のことを知るためには聖遺物についても調査してみるといいかもしれない。

「決定的な証拠だと思うけど、北朝鮮、大韓民国なんて国があったという歴史がない以上、信じる人は少ないかも」

「そうね。まだこれくらいじゃ足りないけど、魔法少女に対する評価は概ね決まりそうよ」

今までは歴史が変わったという疑いしかない土地しか回ってこなかったが、次のポイントは違う。

歴史を振り返っても、明らかに歴史が何者かによって変えられたという痕跡が残る場所だ。何者かというのは言わずもがな、魔法少女だ。

そうして私たちが来たのはイタリアという謎の有毒な地底から噴き出るガス地帯を領土内に持つ国である。

ガス地帯を中心とした半径5キロメートルは侵入禁止地帯となっていて一部の許可が得られたものにしか侵入が許されない。

しかし、今私達はガスに触れないギリギリの距離まで移動してきている。

入るまでにいろいろごたついたが、政府の権限というのは便利ながらなかなかにずるいものだと実感した。

「地下からガスが噴き出たというのは第一次世界大戦よりも前で、ジャンヌ・ダルクが奇跡を見せた時代よりも後らしい。
約500年の間にここら一帯は謎の有毒ガスによって人が住めるような土地ではなくなったらしい。

でも現地に来てわかった。あの有毒ガスには魔力がこもっている」

「その有毒ガスだが、調査した研究者たち曰く、現代技術で作り上げられるどの防護服でもあのガスに触れると死んでしまったらしい。

死因は穴という穴から血が噴き出たことによる出血死。

そんな危険地帯にどう足を踏み入れるんだ」

「そうだねぇ」

イザベラはその辺を歩いていた猫を捕まえて、何か魔力をかけていた。

そしてその猫を毒ガス方面へ放った。

「イザベラ、何をして」

猫はガスに触れてもまだ生きていた。イザベラの様子を見ると、魔力を猫へ送り続けている様子だった。

2分しないうちにイザベラはへとへとになり、魔力供給が終わるとガスに触れていた猫は血を噴き出して死んでしまった。

「イザベラ、一度道徳を学び直したほうがいいんじゃないか。実験動物でもないものを実験に使うのはよろしくないと思うよ」

「別に気にすることでもないわ。おかげで魔力を防ぐバリアを周囲に張ればあのガス地帯でも動けると確認できた」

でも2分ももたなかった。これではまともに調査する時間がない。

「それがわかったところでまともに調査はできない」

「なぁに、すでに実現できそうな人材に目星はつけている」

イザベラはある資料を私に渡してきた。
そこにはテロメアに関する論文と、その論文を書いた人たちのリストがあった。

「この論文を書いた人がいる、大学にある生物学科に行こうっていうのか。
なんでこうも先のことを考えてこんな的確な資料を狙い撃ちで手に入れられるのか。私は魔力を持っていることよりもその才能に疑問を持つよ」

「偶然よ。もともとこの霧を乗り越えるために調べた結果で見つけたわけじゃないし」

「そうかい」

とある大学の生物学科には奇才と呼ばれる研究生がいるらしい。

その学生は生物の進化をテーマに研究をしているらしいが、噂によると自分の体に別の動物の血を混ぜようとしたり、動物たちを争わせて生き残った個体の生存能力が向上していないか調べたり、死体安置所で実験したりとかなりクレイジーな性格をしているとのこと。

しかし成果は出していて、最近ではテロメアを延ばせる可能性についての論文を出していた。

生物学の先端を歩む存在ではあると思うが、大丈夫なのだろうか。

大学に到着し、目当ての研究員について聞いて回っているとある研究者が声をかけてきた。

「おや、もしかしてディアを尋ねにきた方ですかな」

「あなたは?」

「電話でお話ししましたディア達を雇っている者です」

「教授でしたか。気付けず申し訳ありません」

「いえいえ、お気になさらず。ささ、彼女達がいる部屋へ案内します」

 

その頃、研究室では。

広めのケージに入っている2匹のモルモットを注目する少女がいた

その研究室へ、1人の背が高めな女性が入ってきた。

「ディア、もうすぐ来客の時間だ。応接室へ行くよ」

「待って、今いいとこなんだ。

本体とクローンが対面した時の反応を観察している最中で」

話を遮るかのように女性はディアを左脇に抱え上げて無理やり部屋から出そうとした。

「離せカルラ!今いいとこなんだ!」

「無礼は私だけにしておけ。せめて来賓する客に無礼を働くな」

「そんなの知るか!離せ、離せー!」

そんなことがあり、応接室に2人は向かった。

 

 

back:2-1-8

レコードを撒き戻す:top page

Next:2-1-10

 

 

【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-1-8 お安い御用と言ったでしょ

早朝に叔父の家へ戻ったが、想像通り私達は叔父に強く叱られた。
朝にはキアラの両親も顔を出し、キアラはそのまま帰ってしまうかと思った。

でもキアラの両親はキアラへ甘かった。

キアラのやりたいようにすればいいと言い残し、キアラの退学処理もやってくれるとのこと。

キアラは私の部屋の隣にある空き部屋に滞在することになったけど、私はだからこそ軽率に聞いてしまったのかもしれない。

「キアラの両親、少し考えが甘すぎない?まさか、政治家に近い存在になれておこぼれもらえるって期待してるんじゃ

「いや、今はあれが普通だよ、違ったのは小学校の前半まで。
理由は河原で話したときの通りだよ」

「そうか」

私達はキアラの家へと移動し、キアラの部屋へと入った。

「今は父親の都合で米国で暮らすことになったけど、剣道が習える学校に転入できたのは父親のおかげかもしれない」

部屋にあった竹刀に触れながらキアラはそう喋った。

キアラは持ち出す荷物を整理するとのことなので、私は一階にいる父親へキアラの過去について聞いた。

「自分の夢を息子に押し付けるんじゃないと、私の師となる人に怒られてね。

妻の父親にもこっぴどく怒られた。怒られた後しばらくは納得いかなかったが、目覚めずに痩せていく我が子の姿を見続け、これが私が夢を強要した結果なのかと後悔するようになった。

そして私は妻が大きなショックを受けておかしくなってしまっていたことにも気づけなかった。気づいた頃には、もう手遅れだった。

私は目覚めるよう毎日キアラの手を握りながら願った。
悪かった、私を1人にしないでくれと。

そうやって数ヶ月後、やっとキアラが目覚めたんだ。

あれからキアラのわがままは可能な限り聞いてやろうと決めた。すべては私の認識が悪かったせいで招いたことばかりだったからな。

イザベラさん、彼女のこと、よろしく頼むよ」

「お任せください。というより私がキアラに助けられちゃうかもしれませんが」

この会話を隠れてキアラが聞いていたのは知らなかった。

でも、叔父様の屋敷へ戻る際に少しソワソワしていたのはそのせいだったかもしれない。

性別による育てられ方の違いは当たり前にあることだ。

とはいえ、入れ物と精神で性別が違う状態で生き続けるというのは死んでしまいたいと思うほど苦痛なことなのだろうか。

きっと苦痛だろうな。私だって耐え切れないだろう。

人間社会の見直しには、こういった点にも気にかけるべきなのだろうな。

叔父様の屋敷へ着き、荷物を置いたキアラは私の部屋にいた。

「それで、今後あなたはどんな活動をしていきたいわけ?」

「まずは魔法少女について見極めたい。私の知っている魔法少女は母親とあの畜生だけ。

これらの情報だけで判断するのは早計だ」

「見極めるったって、魔法少女を探してインタビューでもしていくのか?」

「いや、世界中を回って魔法少女が遺した痕跡を探す」

「世界ときたか。世界中旅する資金なんて何処から調達する気だ」

私は静かに地面を指さした。

「はっきり言ってくれないか、私はイザベラほど頭が良くない」

キアラったら、謙遜しちゃって。

「叔父からもらうわ」

いくらイザベラの父親がお世話になったからと言って子どもへ簡単に資金援助とするわけないでしょ。しかもそれが旅のためだと知ったら尚更だ」

「まあ、勝算はある」

 

次の日、私は叔父へ資金援助と旅へ出る許可をお願いしたが、あっさりと断られてしまった。

しかし普通ならばとても難しい難題をクリアした場合に限り承諾してもいいという。その内容は。

「おじさんを、大統領にしたらか。なかなか冗談がきつい」

「いえ、叔父様に父親と同じ方法で支持者を増やしてもらえば解決よ」

そんな簡単に大統領になれる方法があるなら誰でも飛びついて内容を聞きに来るよ」

「まあ最終的には叔父様の頑張り次第でしょうね。

私達は目立たないところで叔父様のサポートを行うわ。父親を殺した魔法少女へ指示を出したのは政治家かもしれないし」

「なるほど、事実だとしたらあまりよろしくない事態だね」

私は叔父へこのような提案を行った。

叔父の元へ届いた資料、及び会議に必要な資料は私が対処する。

叔父は米国各地を自分の足で見て周り、国民がどんな人たちなのかをしっかり理解して時には手助けしてあげること。

「そのやり方は、あいつと同じ」

「叔父様には、父親と同じ道を歩んでもらいます。どれほど効果があったかは、記憶が残っている叔父様ならよくわかるはずです」

叔父は了承し、次の日から実行に移された。

届く資料は文字が多いだけで要点はそれほどでもないものばかり。行われた会議の議事録を見ても何も決まらない会議ばかりで無駄が多かった。

そんな中、怪しげな行動をする政治家を見つけ出すことができたためキアラと共に調査を行った。

「金で物事をねじ伏せる政治家はいると思ったが、まさかテロリストを利用する輩がいるとは」

「権力を手に入れるためにはなりふり構わないさ。そんなテロリストも魔法少女を利用していると分かって、正直この世界終わってると思ったわ」

「しかし、雇われる魔法少女のふりをして潜入できるのか?」

「キアラは気付かれないように隠れていなさい。私が危なくなったらその時はよろしく」

「了解」

「でも悪いわね。まともな武器が拳銃しか支給できなくて。
キアラにぴったりな武器を用意してもらってるから少しの間辛抱してね」

「いや、ガードマンとして認めてもらえただけで十分だけど」

私はキアラと別れ、誰も尾行してきていないことを確認して夜のビル街 路地裏へと入った。

路地裏にはマスクとフードを身につけた二人組がいた。

「アンタが雇ってほしいと言う魔法少女か」

「魔法少女を何処で知ったかは知らないけど、金のためなら仕事を受けるわ」

「いいだろう」

フードの2人は誰かと無線で連絡しているような素振りを見せた後、私に端末を渡してきた。

「開いてすぐ表示される人物を人気のないところで始末しろ」

記載されていた人物は財務長官だった。

確か裏金関連の政策実現に向けて動いていて、目をつけていた奴は批判的な態度を取っていたわね。

「いいわ。報酬はいつ?」

「始末を確認したらその端末へ場所を送る。そこでそれなりの金額を渡そう」

私は端末をそっと床に置き、素早く2人の首を絞めた。

2人は銃器を携帯していたが突然襲い掛かられ、正常な判断ができず抜けずにいた。

すると物陰から1人の少女が出てきて私にナイフを向けてきた。

だが、隠れていたキアラがやってきて現れた少女の身柄をあっさりと拘束した。
もしかしてキアラ、武器なんていらないんじゃないのか。

「魔力を感じる。計器もなしに魔法少女か判断できるのかと思ったけど、判断するための存在を連れていたか」

酸素不足で動きが鈍くなっていた2人を気絶させ、私は少女に問いかけた。

「あなたの雇い主は何処にいるの?」

「教えるわけないでしょ」

「雇われないと生きていけないって、あなた達普通に生活することできないの?」

「仕事はやっていたさ。だが、魔女退治をしないといけない都合上、まともにバイトや8時間勤務なんてできないんだ。社会はそれを認めてくれない。

だから私達は普通に働けない。

あなたも魔法少女ならわかるでしょ!」

「魔女、休みの日に狩ればいいだけでしょ?」

「そんな都合よく見つかるわけないだろ。見つけた時に倒さないと、手持ちのグリーフシードが無くなる」

グリーフシード、キュウべえが言っていたやつか。

「分かったらこいつに離すよう指示して!アンタの連れなんでしょ!」

私が魔法少女について詳しく聞こうとすると路地裏の奥から数人の気配がした。

「ただ金目当てで釣れたやつかと思ったが、とんでもない大物だったみたいだな」

「ボス…」

少女の反応を見るに、私に話しかけてきた男が政治家と繋がるテロリストの頭らしい。

「アンタ、政治家とつながってるようだけど何が目的?」

「それは俺も知りたいな。一体誰の依頼で俺たちをかぎまわっている?」

「これは独断よ。肉親が政治家なだけで私が気になったから動いているだけ」

「それにしては知り過ぎている。もし独断でここまでやれるなら素晴らしい才能だ。
どうだ、少し話をしないか?」

「ボロノスさん、何を」

私に興味を持ってきた。力づくで情報を聞き出そうと思ったけど、穏便に聞き出せるなら越したことはない。

叔父には書き置きをしてあるし、1日くらいなら大丈夫よね。

「ありがとう、私もあなた達について気になっていたの。色々教えてほしいわ。
キアラ、その子を解放して」

キアラは少女を解放して私の後ろまで戻った。

「じゃあついてこい」

私とキアラは男達が乗ってきた車に乗せられてとある酒場へと着いた。

お酒しかない店だったため、私には水が用意されて男の前に座った。

「さて、アンタは米国のやり方をどう思う?」

「そうね、今も昔も米国は何処から生まれたか知らない強大な権力で世界を牽引してるわ。少し気に食わないけどね」

「ほう、たとえば?」

男はタバコに火をつけて私の回答を待っていた。

こいつらは狂信者か?それともただのごろつきの集まりか。

「慢心しているからよ。

自分たちがいつまでもトップだと周りに思い込ませて、更なる上を目指すものを出さないようにしている。

このままだと衰退するだけだから、気に食わないのよ」

「そうか。

一度俺たちの仕事を手伝ってみろ。その働きっぷりを見てお前を判断してやる」

「あら、聞くのはこの程度でいいの?なら私からいろいろ聞いてもいいかしら」

「ほう、聞かせてやってもいいが、俺がおまえを認めてやった後に聞いたほうがいいと思うぞ」

殺意の視線を感じる。今はこいつの仕事を手伝うと答える以外選択肢はないようだ。

「いいわ、手伝ってあげる」

「明日、俺たちが出会った場所と時間で打ち合おう。
さ、帰ってもらって構わない」

私とキアラはチップ程度の金を置いて店を去った。

男たちから監視されている気配がなくなった場所でキアラが私に話しかけてきた。

「正気か!テロリストの仕事を手伝うなんて米国政府を敵に回すことになるかもしてないのに」

「あの様子、まだテロリストかどうかを判断しきれない」

「どういうことだ?テロリストだと目をつけて行動してたんじゃないのか」

噂と見た目で判断なんてできないのはどれも一緒だ。
一緒の空間に留まってみて分かったが、彼らは思考を止めた野蛮人ではない。

次の日、私達は中東で活発に動き続けている狂信者たちが集まる拠点近くにいた。

「こんなところに奴らが潜伏していたなんて」

「意外だろう。入国審査をしっかり行っているこの国でも資料と見た目だけで判断して、本当に狂っている奴らも平気に入国させてしまう」

同行している男がその場を離れようとしたから私は話しかけた。

「あなた達は宗教を信じているの?」

男は少しキョトンとした顔をした後、何かを堪えるかのように顔へ手を当てていた。

「やめてくれ、敵陣の真っただ中で笑い殺す気か。

神はほどほどに信じている。だが神が全てこの世界を救ってくれるだなんてメンバーは誰も思っていない」

「そう、それがわかればいい。

キアラ、行くよ」

私達は狂信者達へ圧倒的な力の差を見せつけてリーダーと思われる存在以外は皆殺しにした。

そして狂信者たちが崇めていたキリストの像を破壊した。これも何故か任務だった。

狂信者を怒り狂わせたかったのか。

「なんだ、仕事が早いじゃないか」

テロリストのリーダーが声をかけてきた。

「お安い御用と言ったでしょ。

どうかしら、私は宗教なんて信じてないって分かってもらえたかしら」

「そう捉えたか。

俺たちは神へ縋ったりしない。狂った奴らを始末する裏仕事をするのが俺たちの仕事さ」

内情を教えてくれた。警戒心を示す方が失礼か。

「私はイザベラよ。あなたたちに協力するわ」

「俺はロバートだ。俺はお前が気に入った。
これからもよろしく頼むぜ、イザベラ。
そうだお前の知りたいと思っていることも可能な限り教えてやる」

「ありがたいわ」

彼らに魔法少女という存在をどこで知ったのか聞いた。話によると彼らの組織の起源はヨーロッパにあるらしく、ヨーロッパで活動しているときは聖遺物と呼ばれる不思議な力がこもったアイテムを集めて金にしていたらしい。
その時に偶然魔法少女と呼ばれる集団が聖遺物の争奪戦をしていると知り、それを機会に魔法少女を利用した活動を始めていったという。

あっさりと認められてしまったが、どうやら彼らは裏仕事に特化しているようだ。もし政治家から仕事を受けて政治潰しなんて考え出したら奴らを潰すしかなくなる。

今は監視状態でいいだろう、選挙戦も大詰めだ。叔父の様子を観察しておこう。

叔父は米国中を歩き回り、国民の声を直に聞いたことで顔が広い存在となった。
今の税で苦しむ人々のラインはどの程度なのか、今流行りの物事は何なのか、国全体での幸福度はどれくらいなのか。
これらのことなんて、部屋に籠って資料を処理しているだけでは正しい判断ができない。

叔父は考え方を少し変えたようで、政策の内容は国民に見合うような内容となっていった。

選挙当日、叔父の支持率は他の政治家を大きく突き放していた。

そして叔父は、見事に大統領の座を射止めた。

「おめでとうございます、叔父様」

「イザベラ、君のおかげでここにくることができた。

以前の私ならここで満足してあとは惰性で続けていたかもしれないが、ここからが大事だと強く実感できるようになった。

ありがとう」

「それはよかった」

「そうだキアラ、イザベラから頼まれていた君専用の武器が完成しているから渡しておこう」

そう言ってキアラに渡されたのは刀だった。

「これって」

「ずっと竹刀で戦わせるわけにはいかないと言われてね、ボディーガードをしてもらうわけだし日本の刀職人に作ってもらった。
拳銃もそうだが、国の法律には気を付けて持ち歩くんだよ」

「あ、ありがとうございます!」

キアラは今までに見せたことがない笑顔をしていた。
竹刀の状態でも強かったのに、刀なんて手にしたらどんな強さを見せてくれるのか。

こうして私は魔法少女調査のための資金援助を受けることができるようになった。

 

そして私は今空港にいる。

叔父からの資金援助が約束された今、魔法少女について知るための旅を心置きなく行えるようになった。

それと一緒にロバートの手伝いもさせられることになったが、なんの差し支えもない。

「資金援助だけでいいのに、ファーストクラスを使うのはやりすぎじゃないか?」

「時間に縛られなくていいじゃない。旅は追われる中やるものじゃないでしょ」

「まあいいさ。最初はロシア地域だっけ?」

「そう、まずは何の変哲もない街

チェルノブイリから行きましょうか」

 

back:2-1-7

レコードを撒き戻す:top page

Next:2-1-9