【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-1-13 1か0しか選べないならば、1を手にするために私は足掻くわ

魔法少女狩りをしようと思いついて3年経過していまに至る。

3年もかかった、と言うべきかそれともたった3年でと言うべきか

イザベラは魔法少女狩りを実現させてしまった。本人はそれで終わるとは当然思っていなかったらしく、その後のことも考えていた。

魔法少女はグリーフシードがなければ生きてはいけない。だから魔法少女狩りの一貫として普通の兵士でも魔女を倒せるよう対魔女用の兵器開発も完了させて、グリーフシードを人間が管理できるようにした。

そうすれば、魔法少女が人に降伏するのは時間の問題にできると、負ける要素なんてないと考えていた。

しかし、佐鳥かごめという少女が残していったノートによって今までの計画を一部変更せざるを得なくなった。
そのノートには魔法少女が魔女化しないというイレギュラーな土地があると記載があり、その真意を確かめる必要があった。その記載があった土地、神浜は魔法少女が魔女化する資料として利用していたがあの映像に映っていたのは魔女化した結果ではなく「ドッペル」という謎の現象で生まれた魔女もどきらしい。
魔法少女が魔女化しない空間とその恩恵、そして魔法少女の願いがどれほど世界に影響を及ぼせるか知っているからイザベラは焦っていた。

本来はヨーロッパにあるであろう魔法少女達の本拠地を制圧するための戦力を、魔女化しない仕組みのある場所へ送り、その土地の管理権限を人間が掴む必要があると考えた。

早急に、そう、早急にだ。

その土地を早めに人間の手中に収められるかどうかで形勢が逆転してしまう。

時間の問題で解決できず、武力という一番無謀な方法で解決せざるを得なくなる。

魔法少女が魔女化しない土地、神浜へは特殊部隊を一度送り込んでいるがそのほとんどが帰らぬ人となったという誤算が生まれた。

敗因として既にその土地へ日本中の魔法少女がヨーロッパのように集結して組織めいた動きをしていたのだと予想していた。

それでもイザベラは米国の軍しか動かさず、周囲の国へ協力要請を出していない。

その理由は、ヨーロッパの動きを警戒していたからだ。

どうやらイザベラはヨーロッパでの武器庫爆破の一件があってから再度各国の魔法少女状況を調査させたという。

その結果は、まだ多くの魔法少女が動いているというものだった。

敵の急所となるであろう神浜に全力を投じれば簡単に管理下に置けるだろう。

とはいえ、アンチマギアの量産体制は各国あまりよろしくない。まともに使える量は大隊規模1つ分のみだという。

それはそうだ、魔法少女狩りを行ったのも実験のために量産された分を使い回しただけで量産はこれからだという段階だ。

各国、扱いにまだ慣れていないのだ。

そんな状況で神浜に全力投球なんてしたら神浜は取れても他の地域が狙われて魔法少女に優位を与えてしまう。

そうなってしまって魔女化しない仕組みを願いによって世界中に広げられたら自分たちで傷口を広げただけの結果となる。

イザベラが悩んでいるのは、魔女化しない仕組みは手に取って消せるものなのか、それとも手の届かない概念なのか。

そしてイザベラはもっと気にしていることがある。

イザベラはカルラの研究室へ訪れていた。

「じゃあ、ハッキングではないがこちらの電波を傍受した形跡があったということか」

「そうだね。でもそれはおよそ人間が自由に扱おうとすることができる波を使用していない。

魔法の類、またはキュゥべえ達が使用するテレパシーの波に近い。

これを事前に防ぐには、キュゥべえ達が使用する波を含めた全く新しい波を操る方法を手に入れないといけなくなる」

「観測できたのなら、対策できるはずよ」

「もちろん試作はしている。

同調できる目処はついたが実用化には時間がかかる」

試作品をぶち込んで魔法少女に対策されていると悟られるほうが問題だし、しっかり完成まで持っていってちょうだい。

暗号は適宜変えているけど、私たちの情報は奴らに筒抜けだと思っておくわ」

「まあ書面のやりとりという古典的なやり方もあるが、即効性がなくなるからやろうだなんて考えは択にないだろう。だからだイザベラ、全て米国で解決しないといけない状況が続く。

日本の件も、もしかしたら奴らは対策済みだ」

イザベラは、何か危ないことを考えている顔をしていた。

「変なことは考えるんじゃない。まずは日本へ向かったディア達を信じてやれ。

思わぬ伏兵も参加するのだろう?」

「魔法少女なんて、戦力だなんて考えていないわよ」

イザベラはそう言い捨てて部屋を出て行ってしまった。

私は急いでイザベラの後をついて行った。

イザベラは難しい顔をしていて歩きながらずっと無口だった。そんな状況が続く中、私は施設にあるお祈りをするための部屋の前でイザベラを呼び止めた。

「イザベラ、この中で少し話をしないか」

部屋の中にはキリストの像があり、燭台と8人分の椅子とひざまづくための絨毯が敷かれている。

そこで私は、神についてイザベラへ聞いた。

「イザベラ、君は神という存在を信じているか。

人は絶体絶命になった時、神に祈りを捧げるというが」

「それ、キュゥべえに助けを求めて魔法少女になった子達と同じ思考をしてるかって聞こえるけど」

「あいもかわらず、ひねくれ者だね。

とはいえ、神浜市の存在があるせいで人と魔法少女の争いは泥沼化していくことは明確だ。

イザベラ、これ以上互いに犠牲の出ない方法で争いをしめた方がいいんじゃないか」

「キアラ、奴らはあなたが思っている以上に人間に勝とうと本気なのよ。

話し合いで終わらそうとしても、きっと奴らは納得しない。佐鳥かごめをさらった魔法少女も言っていたでしょ?」

私はホワイトハウスに突然現れた魔法少女のことを思い出した。

“残念だが話し合いで解決すると思うほど我々の考えは甘くない。人間と魔法少女。価値観、倫理観、社会体制すら相容れない存在同士が和解できる可能性など、とっくにこの世界では死んでいる”

「奴らの目的は人類よりも上の立場になること。

私が魔法少女狩りを行おうがそうでなかったとしても、奴らは人類の軌跡を破壊し、人類を屈服させに来ていたでしょう。

もう、何もかも手遅れなのよ」

「イザベラ…」

「1か0しか選べないならば、1を手にするために私は足掻くわ。

人類の軌跡を消させはしない。

神なんていないのよ。

いたとしてこんな事態になっているならば、その神は人間の不幸を見て楽しむただのクズよ」

魔法少女達は、どちらにしても私達を消しにかかってきていた。

イザベラが対抗しようと思ったから、今こうして抗えている。

こんなことになる前に打てた手なんてあっただろうか。

きっと、魔法少女という存在を一般人がほとんど把握できないという仕組みだった時点でこうなるべくしてなったのだろう。

「さて、作戦室に行くわよ。作戦開始時間が迫っているわ」

私にはどうすることもできない。

ただできることといえば、イザベラの動向を支えるだけだ。

「了解」

もしもの時も考えて、カルラさんには相談しておこう。

イザベラが、最悪の手段に手を出した時のことを考えて。

 

私とイザベラは指令室に入り、イザベラは日本の自衛隊へ回線をつないだ。

「責任者につないで頂戴」

作戦室にある一つの画面には日本自衛隊の責任者が映し出された。後ろで兵隊たちがあわただしく右往左往している中、責任者の顔は暗かった。

「・・・なんでしょうか」

「今回の作戦、協力してくれている魔法少女達へ装着したSGボムの発動タイミングはあなたにゆだねています。
もし魔法少女が裏切るようなことがあれば、爆発させれば決定打を与えられそうなタイミングで作動させてくれることを祈っています」

「それは、わかっています」

「いいですね?
今回の作戦への協力具合によって政治等への我が国が貴国へ支援する程度にも影響が出ることをお忘れなく」

「・・・はい」

相手の声からもわかる。魔法少女のソウルジェムを爆破させる役を任されて気乗りしないなんて当然のことだ。
はたして日本の自衛隊はどんな判断を下すのか。

日本の北と南にある米国の駐屯地へは数日前からエアメールを通じて今回の作戦について通知されている。回線をつないで会話すれば済む話ではあるが、イザベラは何を考えてエアメールで通知をしたのか。

「全艦、間もなく予定位置です」

 

「では作戦を開始しよう。我々は戦況のモニタリングに専念する。
現場での指揮は試作艦艦長のデュラン大佐に一任し、日本の自衛隊の動向も見張ってもらいたい。

今回の作戦でけりがつくよう、諸君の奮闘に期待する。以上だ」

 

1章 この時間軸にしか存在しない抵抗者(サピエンス)

 

back:2-1-12

レコードを撒き戻す:top page

Next:2-2-1