【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-3-13 最後の手引き先

神浜には久々に雨が降っていました。

神浜に撒かれたアンチマギアは雨に流されてやがて海に消えていくでしょう。

そんな神浜は怪我人の看病と死体整理に追われていました。

今までに死体処理については色々試されていたようで、最終的には火葬で灰にすることでおさまったようです。

焼く場所は限られていて、焼き場になっている水名区の城跡地にはまだ焼き切れていない死体がありました。

いい加減腐敗臭もするようになっていて、炎を扱える魔法少女達が手伝ってくれていたのですが、雨の日なので炉に投入できるようになるまで死体は置いたままです。

そのまま埋めてしまいたいですが、最近の死体は肉がついたまま埋めてしまうと土がダメになるとも聞きましたし、置いたままです。

この作業を神浜の方は淡々とやっていたのでしょうか。

ここにいることは今の世界事情を考えると安全であることは間違いはないですが、ここの価値観に慣れること自体は怖く、難しいことでしょう。

今は露の温度が上がりきるまで見ているだけ。死体の投入をやる気はないから、心はまだ大丈夫。

大丈夫、私はまだ大丈夫・・・。

燃えている炉の前で立ったままのさつきのところへ、傘を持った1人の魔法少女が入ってきました。

「ここでは死体を燃やしているのですね」

みたことがない魔法少女と思われる人物へさつきは恐る恐る話しかけます。

「見かけない方ですね。どこからきたのですか?」

「港に停泊している船からですよ。

ちなみに燃やした後の骨はどうしてるのですか?」

「・・・炉の中に残したままと聞いています」

「それは勿体無いですね。

人の骨とはいえ、粉々の粉末状にして畑に撒けば十分に肥料として役立ちますよ。

死んでしまった方達も土に帰れて、かつ植物の成長にも貢献できるし、良いことではないですか?」

「そうなのですね。ご希望で土に撒く方はいらっしゃいましたが、肥料として使ってもいいかもしれませんね。

でもあの船って外国から来たのですよね。

外国の方が火葬について詳しいなんて」

「いえ、私は日本に滞在した時期がありまして日本の文化は知っているのですよ。

外国でも火葬をする場合もありますけどね」

悪い人ではないと思ったさつきは船のことについて聞こうと思いました。

「あの、よければ色々教えてくれませんか。

今起きていることがさっぱりで」

「ならば後でいろはさんに聞いてください。

ではこれで」

そう言って魔法少女は玄関へと向かっていきました。

炉が設置された施設の玄関で、みかづき荘のメンバーが玄関から出ようとする魔法少女と鉢合わせました。

そしていろはがこう言いました。

「カレンさん、どうして生きているのですか」

「お久しぶりですね、いろはさん。

腕は大丈夫ですか?」

いろはは包帯が巻かれた左肩を少し触った後、カレンへ話しかけます。

「あなたは死んだものだと思っていました」

「私も潔く死のうと思ったんだけどさ、運悪くこうして生きているわけさ。

環いろは、神浜の皆へ今世界で何が起きているのか知りたい者は港に停泊されている船へ明日来るよう伝えてくれ」

カレンに対してやちよが話しかけます。

「状況を知りたいのは確かよ。

でもあなたが生きていると知ったらどれほどの子たちが船に殺到するか」

「私が生きていることを伝えるかどうかはお任せします。

その場合は、今は魔法少女同士で戦いあっている場合じゃないことは知らせておいてくださいね」

そう言ってカレンは傘をさして南凪区へ歩いていきました。

話している内容が気になったのか、玄関にさつきさんが来ていました。

「いろはさん達、あの方をご存知なのですか。

なんか死んだとか物騒な話を聞きましたが」

いろは達は炉から離れた机を囲むように人数分の椅子で囲んでさつきへ事情を説明しました。

「そう、あの方がこの神浜を変えた張本人なのですか。

初対面だと全然そういうことをする人だとは。

あとは魔力反応がないのは、そういった術をご存知の方だからだったのですね」

「隠すのが上手なのよ。

他にいた2人にもうまく立ち回られて私たちでは何もできなかったわ」

さつきは情報整理のためか黙り込んでしまいました。

するとフェリシアが話し始めます。

「なあ、そういえばなんでここまで来たんだっけ」

その問いには鶴乃が答えます。

「栄区へ行くついでに寄ろうって話になったでしょ?

まさかカレンに会うなんて思わなかったけど」

「でもさつきさんがここにいるのは意外でした。

巫女さんをやっていたとは聞きましたが、死体処理まで経験したこともあるのですか」

さながさつきへ聞くとさつきは我に帰ったかのような反応をしました。

「死体処理に直接かかわったかといえば、依頼で土に撒くことになったときくらいですね。

困っていると聞いてここまで来たのですが、まさか死体処理のお手伝いまでさせられるなんて」

「で、頼んだ子はどこへ?」

「アンチマギアで眠ったままだった友人が目を覚ましたと聞いて、どこかへ行ってしまいました」

「ええ?!

それはすみませんでした」

「いろはさんが謝ることではないですよ。

ここの担当なんて、誰もやりたくないのはわかっていますから。

誰かはやらないと」

「私たちがやっておきますから、さつきさんはキクさん達のところへ戻って大丈夫ですよ」

「そうですか。でも私もやりますよ。

流石に死体の投入はやりたくないですが、炉の温度を上げるまでは」

神浜ではどの作業を誰がやるという明確な役割分担はありません。

今となっては戦った後の後片付けに協力してくれる方は多いですが、多くの人は参加したがりません。

避難所である栄区や元鏡屋敷付近に溜まっている場合が多いです。

命令する権力や、やらないといけない義務といったものも存在しないため、誰もやりたがらないことはほっとかれがちです。

なので今回のように少々押し付けられたようなケースは、

「そのまま放っておこうよ」

というのが適切な状態になっています。

そんなほっとかれているであろうからこそ私たちは寄ったのですが

この状況を解決しようとは思っていません。
しようとすると、「強制」と「支配」が必須になるので。

私たちは炉での作業を終えると、栄区へと向かいました。

さすがに死体の投入段階に入る時にはさつきさんに先に帰ってよいと伝えて、さつきさんは既に栄区へ戻っていました。

栄区には無事か軽傷の魔法少女が滞在していて、重症か意識不明の魔法少女は里見グループが用意していたというシェルターの一つへ収容されています。

私達は栄区にいる子達へカレンさんから聞いたことをそのまま伝えてまわりました。

もちろんカレンさんの存在は隠してです。

聞きに行きたいという子は想像以上に多く、負傷中である結奈さんやちはるちゃんも参加すると言っていました

他には鏡を通ってきた魔法少女達、三重崎の魔法少女達、ひなのさん、そして十七夜さんもです。

ひなのさんはさらに気になることも言っていました。

「港なんだが、衣美里から今日の間に3隻も軍艦が来たと聞いている。

乗っていたのは魔法少女だというのだが、軍艦なんか持ち出して何を始める気なんだ。

まずはそれを聞きに行かねばならん」

軍艦が港にいることは初めて知りました。

雨で見通しが悪いせいか気づけませんでした。

この話を灯花ちゃんに話すと、なんと驚きの返事が返ってきました。

「その話は海外の魔法少女からすでに聞いているよ」

「え?!一体いつの間に」

だってお姉様が神浜から離れた頃からずっとやりとりしていたもの

船での話し合いももちろん聞いているよ。私もねむも参加する予定なんだ。

お姉様とういも来る?」

「わたしは参加するけど、ういはどうする?」

「わたしも、事情は知りたいかな」

ういがワルプルガさんの方を向くとワルプルガさんはうなづきました。

「お母さんが行くなら私も行く」

「ワルプルガさんも来るの?」

「願うという意思をさらに固めることになるだろうから。
逆効果、なんてことはないはず。カレンが絡んでいることでしょ?

「カレンさんは…その」

「生きてたでしょ?知ってるよ?」

「え、ええ?!」

「ごめんねお姉さん、カレンが生きているという事実は神浜の魔法少女にとってはよくない情報だ。
割り切れた子もいるだろうが、諦めきれずに躍起となる子が出ても迷惑なだけだからね。伏せておくに越したことはない。

わかってくれるかい?」

「それはそうだけど。

じゃあ他にもなんか情報のやり取りをしていたの?」

「私も詳しくは聞けていないんだ。

でも技術共有だけは行ったよ。その成果であるテレポーターがあの船にはあるし」

「えっと、驚くことしかできない」

「お姉ちゃん、驚きすぎて顔が疲れちゃってるよ」

 

翌日、話を聞きたいという魔法少女が港に集まりました。

そこで驚いたのは、港に1隻の変わった船と5隻のイージス艦が停泊していたことです。

各船には魔法少女達がいて、変わった船の前には見慣れた顔がありました。

「かこちゃんと欄さん、でしたっけ」

2人は私の方を向いて、欄さんが話し始めました。

「環いろはか。久々に顔を見たな。

確か最後に見たのはあんたが神浜を発つ前だったかな」

その次にかこちゃんが話し始めます。

「お久しぶりですねいろはさん。

ういちゃんの件はとっくに解決した後でしたかね」

「うん、ういはもう大丈夫。

でも自動浄化システムについてなんだけど」

「知ってます。

キュウべぇが行方不明なんですよね。すでに別の方から聞いています」

「その別の方っていうのは」

そう尋ねるとタイミングを見計らったかのように変わった船からカレンさんが降りてきました。

カレンさんを見て、事情を知らない他の子達がざわつき始めます。
その中でも三重崎の魔法少女が真っ先にカレンさんへ投げかけます

「てめぇ!なんで生きてる!」

「私も死ぬ予定だったんだけどね、この通りさ」

「お前が生きているなんて、この船の数もお前の差金か?」

ひなのさんがそう聞くとその様子を見て船から1人魔法少女が降りてきました。

「何々?あんたここでも嫌われてるの?」

そう言いながら船から降りてきた魔法少女は腰に鞭を下げていて、カレンさんに寄りかかりました。

「ジーナ、私たちのやり方を知ってるならある程度予想できただろ?」

「あんたヨーロッパだけでも目の敵にされてんのに懲りないねぇ」

「ヨーロッパでもって、どういうことですか」

「気にするな。

今回船に呼んだのはこんな立ち話のためじゃない。
まずは中に入れ。一応全員入れるはずだ」

カレンさんに促されて船の中には20人以上が入り、その中にある大広間では狭いと感じることはない空間でそこには大きなモニターが設置されていました。

全員が部屋に入ると扉は閉じられて部屋は少し暗くなりました。

その後にモニターがつくとそこには1人の魔法少女が映し出されました。

そのモニターに対してカレンさんが話しかけます。

「ミアラ、しっかり集めたから説明よろしく」

その言葉を合図にミアラという魔法少女が話し始めます。

「わかった。

まずは神浜の魔法少女達、君たちは今我々がやろうとしていることが何なのか知りたいから集まったという考えで良いのかな」

「そうだよ。だから素直に教えてよ」

灯花ちゃんがなぜかフレンドリーに話しかけていました。

「灯花には世話になったな。さっそくそうさせてもらうよ。

我々は人間社会の破壊を目的にサピエンスを葬るため準備を進めている。

今世界中ではアンチマギア生産施設の破壊と撹乱のため世界中の魔法少女達が動き出している。

神浜がいち早く戦場になることは認識した上で、我々は神浜を避難所として扱うこととした。

すでに戦いを終えて分かったと思うが、今日本にはサピエンスの兵士や兵器は存在しない。

逃げた奴らは日本から脱出したようだからな。

自衛隊本部についてはミア達によって抑えてもらえたようだし、現状魔法少女にとって世界で一番安全なのは神浜だ。

神浜には戦いに参加したくない、できない魔法少女を集める。

そして日本から船を拝借してその船と共に太平洋を突っ切ってサピエンス本部であるペンタゴンを落としてもらう。

あとはヨーロッパから出る別働隊も必要だ。そっちは本命な上に生きて帰る保証はないという物だ。

荒くて簡潔だが我々の計画はこんなものだ。

参加しろとは言わないが、志願者がいるなら名乗り出てくれ」

しばらくの沈黙の後、十七夜さんが話し始めます。

「聞いている限りお前が指揮しているよう聞こえたが、我々は従わされる側となるのか?」

「言っておくがこれは組織的な計画ではない。

我々がやりたいと言って賛同してついてきたものが多いだけだ。もちろん賛同せず勝手に動く奴らもいる。

だが情報が命なことは魔法少女でも変わらない。

我々が情報収集に長けているということもあって付いてくるものが多いだけだ」

すると三重崎の魔法少女が話に入ってきました。

「あんたらにはしっかり強みがあるわけだ。

情報収集能力はどの程度だ?」

「サピエンス本部のやり取り、インターネットを使用した機密情報も筒抜けだ」

「なんだそれ、出鱈目すぎるだろ」

現状世界中でアンチマギアは神の声も聞けなくなるというデマが意図的に流されている。

これもサピエンス本部しか知り得ない事実だ」

「なにそれ、宗教戦争でも始めるわけ?」

「我々はそれも利用する。

たとえそれが奴らの罠だとしても」

話がおさまったのを見計らって私はミアラさんに聞きます。

「仮に協力する場合、私たちには何ができますか?」

「神浜の魔法少女にとって協力といっても2種類ある。

一つは戦えない魔法少女の保護と魔法少女のみで生きていくための仕組みの模索、あとはそこにある船に乗って、またはカレンについて行ってサピエンス本部を目指して戦ってもらうことだ」

神浜ではすでに魔法少女だけで生きていけるように動いてはいる。

避難してきた奴らがどこまで協力的になってくれるか次第だが」

「安心しろ、我々はお前達以上に魔法少女のみで生きていく術を習得している。

きっと合流するのは良い刺激を与えることになるだろう」

「戦いに行く奴らってのは、死ぬ覚悟が必要だよな?」

三重崎の魔法少女の問いかけに対してジーナさんが答えます。

「この前の神浜の戦いはまだ甘い方だ。

奴らにとってはただの実験や実践訓練程度しか力を発揮していない

「あそこまでの被害で手を抜いていたっていうの?」

「だから奴らも予想以上に被害が出たんだろうがな。

あたしらの知らない衝撃波を発生させるやつやAKなんかじゃない新型のアサルトライフルやシールドも持ち込まれていた。

わかるやつはわかったと思うが、あいつらは魔法少女保護が念頭にあったからソウルジェムをあえて避けていた。

あえて避けられるってことはだ、サピエンス本部襲撃の際は容赦なくソウルジェムを狙われるってことだ。特殊部隊上がりもアメリカ軍も容赦なく攻撃してくるだろう。

戦いに行くなら死ぬ覚悟で参加しろ」

周囲は少しざわつき、その場で参加すると言い出したのは三重崎の魔法少女と外人の魔法少女でした。

外人の魔法少女はカレンさんと目配せをして、納得した表情を見せた後にテレパシーが飛んできました。

[私達は参加させてもらうよ。

一度避難してきた身だが、今回で戦場の方が居心地がいいのがわかってしまったからね]

次は三重崎の魔法少女です。

「私達も参加させてもらおう。

サピエンスを潰せば落ち着いた生活をできるっているなら喜んで参加させてもらおう」

他に名乗り出るものはいませんでした。

その様子を見てミアラさんが話し始めます。

「まあ今すぐに決めろとは言わない。

だが長く待つ猶予はない。明日までに結果を出してくれ。

とりあえず今回は終いだ。カレン、全員を連れ出してくれ」

そう言われたカレンさんは私たちを船の外へ追いやりました。

全員が船から降りたことを確認すると、船に通じる通路が閉じられてしまいました。

私は戦いに行こうとは思わないけど、他の子はどうなのだろうか。

 

がらんとした空間にわたしとジーナ、そしてモニターの先にいるミアラだけになった。

「言語はしっかり聞き取れたか?」

「日本語は大丈夫だと思ったがやはり怪しい。

カレンとも日本語が基本だが少々翻訳用イヤホンは当てにならない

「したっけテレパシーを送ると同時に喋る技は必須だな。

神浜の連中にもしっかり伝えるようにしてくれ」

「それにしても今回の申し入れをするのは神浜が最後か。
ワルプルギスの夜の件もあって日本に関わる気はなかったが、計画の大事な場所が最後に申し入れを行う場所になるとはね」

「仕方がないさ。日本は聖遺物争奪の際にかかわりがなかったからね」

そこにジーナがいきなり話に割り込む。

「あの参加を申し出てきた奴らは連れてっていいのか?

足手纏いがこられても困るんだけど」

「あいつらは問題ない。

銃撃戦を十分に経験しているうえにアンチマギアも理解しているようだし、何もできない奴らじゃない」

「ならいいけど」

「…ソフィーの様子を見てくる」

「おう」

私は司令室まで登って中に入ると眼鏡をかけてセーラー服を着ているソフィーが指示を出している場面に直面した。

「全艦砲塔右向け!」

そう指示するとアイリス号といつの間にか名付けられているこの船の砲塔と共に盗んできたイージス艦の砲塔も指示した方向へ向いた

「2、5番艦は左向け!」

目に見える限りでは1隻しか左を向いていないようだがどうやら成功はしていたらしい。

「舵右、左、もう一回右!」

そう指示すると操舵にいる魔道人形が指示通りに舵輪を回していた

そんな指示の練習をしているソフィーへ私は話しかけた。

「魔導人形の調子はどうだ」

「あ?ああ。

指示はしっかり伝わるし配置も問題なさそうだ」

「でもこの船まで魔導人形にまかせるのか?」

「万が一のためにだ。本番はちゃんと他の子が担当するさ」

「それにしても、こんな頼りない小さな魔導人形でよかったのか?

脚力と腕力はあるようだが」

「製作者の趣味だ。それに可愛いだろ?」

私はやれやれと思って何も言えなかった。

「シオリ、魔力の消費量はどんな感じだ?」

すると船のスピーカーからシオリの声が聞こえてきた。

「そうだねぇ、一体あたり魔法少女1人の平均消費量の30%程度かな。待機中は全く消費していないっていいほど使わないね」

「そうか。

11隻分となるとあまり褒められた量ではないな」

そこにソフィーが話に入ってきた。

「これでもミアラからうるさく言われて製作者が削減した結果だ」

「最終的には灯花に助言を求めたってやつか。天才を交えてもその程度か」

「シオリが最終確認した方が良かったんじゃないの?」

「それなら灯花同様にまず体がいらないって言い出すじゃないか!

「ソフィー、見た目が優先されたせいなのか?」

「ええ。そこは制作者と共に譲らなかったよ!」

ソフィーは自慢げな顔をしているが、消費する側の身にはなってほしい。

そして突然ソフィーは何かを思い出したかのように手を合わせた。

「ああそうだ。

テレポーターは港に設置するらしい。灯花の指示らしいな」

「そうか。設置場所が決まったならテストもしないとな」

「そう言えば結局アイリス号の動力には誰がなるんだ?」

「ピリカで変わりはない。そういう話にはなっているからね」

「ならピリカは神浜の用事を済ませてきてよ。

今回シオリが動力になったのはそれが理由でしょ?」

それを聞いて私の体はピリカに主導権が回った。

「そうだった。まだやらないといけないことあるんだよ。

ごめんねシオリ、もう少し待っててもらえる?」

「なら明日がいいんじゃない?

今日はあいつら情報整理で忙しいでしょ?」

「うーん、遠くから様子を見て良さそうなら今日でも用事を済ませちゃおうかな」

「わかったよ。

出発するまでに変わってくれればいいからしっかりやること片付けてきなよ」

「うん!」

そう言って私の体はブリッジを出た。

 

 

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