【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-1 開幕を示す悲劇の狼煙

掴みどころがないというのは、複雑な気分となってしまいます。

あるのはわかる。
でも、それをどうすればいいのかがわからない。

この街の魔法少女にはともかく、静香さんやカレンさんのような遠い場所から来た魔法少女へ何もわかりませんというのは、とても申し訳ない気持ちになります。

一番関係がありそうなういも、クレメルも自動浄化システムがどこにあるのかが分からない状態です。

今日は神浜マギアユニオンとしての集まりがあり、みんなの事情を考慮して午後に集まることとなりました。

明日香さんにお願いして、午後に道場を開けてもらうことができたので明日香さんの実家が運営している道場で会議を行う予定となっています。

今回の会議にはななかさんも参加するとのことなので、情報交換が捗りそうです。

前もってSNSでみんなから神浜にしかないものについて情報交換がされていたのでその整理からですね。

あとは、数日前に久々にまどかちゃんとメールをやり取りして、見滝原のみんなは神浜マギアユニオンには参加せず、神浜の外だからこそわかる情報を伝えるという方針になったと伝えられました。

私も神浜で起こった事はまどかちゃんに伝えるようにすると返信しました。

SNSに参加できるかはサーバー管理している灯花ちゃんの返事待ちとなっています。

ようやく前に進め出せそうな気がしていました。

会議にはやちよさんとさなちゃんとういが参加して、鶴乃ちゃんとフェリシアちゃんは万々歳のお手伝いに行っています

東側からは十七夜さんが、南と中央区の代表としてひなのさんが参加してくれます。

道場へ着くと明日香さんがお出迎えしてくれて、中にはすでにひなのさんとエミリーさん、れんさんに梨花さんもいました。

「人数が多くてすまないな。道中でバッタリと会ってしまってな」

「まあまあ、そもそもうちらを呼んだのあすきゅんだし。折角だからってみゃこ先輩についてきた感じよ」

「そうなんですか、明日香さん」

「はい、エミリーさんの何気ない発想で今までに何度も窮地を脱した事がありますからね。行き詰まりが生じた場合は、是非エミリーさんから何かご教授いただけたらと思ったのです」

エミリーさんはお悩み相談所でいろんな人と話してはアドバイスを与えてくれると神浜の魔法少女の間では人気となっています。

「それじゃあ、何か悩んだらお願いしちゃおうかな」

「おう!ろっはー任せなさいって」

「あたしらも、それなりに情報持ってるからちゃんと共有するね」

「ありがとうございます」

「ふむ、今日は随分と賑やかだな」

十七夜さんと一緒にななかさんも道場へ到着しました。

「あらためまして、組織に組していないのに参加させていただき、ありがとうございます」

「いえ、わたしもななかさんたちから見た考えを知りたいなと思っていたので」

「そこでだ環くん、今日の話す内容についてなのだが、まずは神浜の外から来た魔法少女について情報交換したいと思う」

「神浜の外から来た魔法少女、ですか」

「はい、わたしがこの会議へ参加したいと考えたのもお伝えしなければいけない事があるからです。できるのならば、早急に」

当初の予定とは変わりましたが、神浜マギアユニオンとしての会議は神浜の外から来た魔法少女についての話し合いから始まりました。

「私達はすでに神浜の外から来た魔法少女に会っていますね。会った人たちは、みんなはそろってキュゥべぇからこの街に自動浄化システムがある事を聞いて訪れたと言っていました」

「やはりそうですか」

「東側で会った魔法少女も同じことを言っていた。その内容については少々複雑なこととなっているがな」

「わたしも、会いました。自動浄化システムが、手に入るって、聞きました。はい」

神浜の東西南北、どの場所でも神浜の外から来た魔法少女は自動浄化システムが手に取れるものだと伝えられて来ていると再確認できました。

「この事態、わたしは非常によろしくない事態だと考えています。外から来た魔法少女と争いごとのきっかけになってしまうのではないかと考えています」

「しかし事実だ。手に取れるようなものではないと伝えるしかあるまい」

「その伝え方について、考えの共有が必要だと思います。それぞれの見解で伝えてしまうと、誤解を招く結果となります」

「実はすでに外から来た子に説明をしたのですが、わたしは説明するときにちょっと回答を濁らせてしまいました」

「それで相手は納得してくれたのか」

「はい、調査中なら協力もするって言ってくれました」

今回のわたしのように曖昧な回答だったら納得してくれない子が出てくるかもしれない。でも、どう伝えればいいんだろう。

「そんな難しく考えないでさ、ガツンと事実伝えてあとは相手に任せればいいっしょ」

「私も、嘘を伝えられるのは嫌かな。わからないならわからないって言って欲しいな」

「そうですね、素直に事実を伝えることにしましょう」

「伝えたうえで襲われたりした場合は1人で相手しないようにする、という決まりも必要そうね。みたまの調整を受けているからそう簡単にやられる子はいないと思うけど」

「うむ、わかった」

「これで一つの議題は解決ですね。引き続き私から一つよろしいでしょうか」

ななかさんが主催のようになっていますが、特に気にしていませんでした。ななかさんが来てくれる機会は多くはないので、聞けるうちに聞いておこうと思っていたのです。

やちよさんから、ななかさんは頼れる人だ、というのは十分に聞いて言いたので。

「みなさんは電気を操る、または糸を操る外から来た魔法少女をご存知でしょうか」

私たちが会っているのは静香さん達とカレンさんだけです。戦っている姿はカレンさんしか見ていませんが、どういう力を使うかまでは知りませんでした。

「すみません、私達は話をしただけだったのでどういう力を使うかまではわからないです」

「私は外から来た魔法少女の集団に会ってはいるが、ツノがあったり暑苦しかったりと特徴に合う魔法少女はいなかったな」

「わたしは糸を使う魔法少女については知っている。しつこく勧誘してくるマギウスの残党へきつくお灸を添えたらしくてな、ちょうどその現場に居合わせていた」

「その話、詳しく聞かせてもらえますか」

十七夜さんによると、東側ではマギウスの残党が集まって何かを企てている動きがあったようです。そこへ糸を使う魔法少女が勧誘されたらしいのですが、怒った勢いでそのまま解散させてしまうくらいの迫力で襲いかかっていたとのことです。

ケガ人はたくさん出ましたが、みんなソウルジェムは無事だったとのことです。

ちなみにそのマギウスの残党の数というのが。

「30人いたのに1人で倒しちゃったの!?」

「この目で見ていたから間違いない。それに彼女は傷一つつかずにその場を収めていたからな。外から来た魔法少女にしてはあまりにも強すぎると思っていた」

「巴さんでもかなり強かったのに、巴さん以上の魔法少女がいるなんて」

しかし過去を遡ればななかくんたちを振り回したという魔法少女もいたからな。この国だけでも強い魔法少女はまだまだいるだろう」

「ちなみに名前は聞いたんですか」

「うむ。彼女は日継カレンという名前だったな」

「「カレンさん」ですか」

あ・・・。

ななかさんと被ってしまいましたが、カレンさんの名前を聞いて思わず声に出てしまいました。

「ソウルジェムの反応を検知できないと思ったら、そんな実力者だったようね」

どうやらわたしが訪ねた人物とひなのさんたち以外は面識があるようですね」

「中央と南で見かけなかったという事は、わざわざ外側を見て回っているのかそいつは」

ななかさんはしばらく考えたあと、十七夜さんへ訪ねました。

「十七夜さん、確認ですがカレンさんの心は読みましたか」

「その事なのだが、彼女の心をのぞかせてもらったがなぜか数十人の思考が右往左往している奇妙な状況だった。あれは魔女の心を読むとは別の意味で気分が悪くなってしまった」

「数十人の思考が1人の中でなんてそんな事があるのか」

「いや、あり得ん事だな。人1人に一つの心と考えたらなおさらだ

私たちが出会ったカレンさんは色々悩みを聞いてくれた上に助言をしてくれたいい人だと思っていましたが、実態は奇妙なとても強い人だったようです。

「では、その魔法少女について知っていることをお話しします。
わたしはつい数日前、カレンさんに宣戦布告を受けました」

「え!」

「不穏な流れだな。何かしたのか」

「私達は直接何かをしたわけではありません。しかし彼女たちには危険な存在だと認識されてしまったようで、今後は神浜に対しても敵対する意思でいるようです」

「カレンさん、なんでそんなことを考えているんでしょう」

「実はカレンさんは知っているらしいのです。自動浄化システムを世界に広げる方法を」

「そんな、灯花ちゃん達でも苦労して探っている最中なのに」

「事実かはわかりません。しかしあの揺るぎない自信と実力を考えると本当なのかもしれないですね」

手詰まりかと思われた状況の中、まさかの解決方法を知っているという魔法少女がいるという衝撃の事実にどう対応していいかわからなくなっていました。

ななかさんによれば、変に探ろうとしてしまうと敵対していると判断されてしまうらしく、話し合いは慎重に行わなければいけない事がわかりました。

それにしても、カレンさんと会ったのは数日前でその時は神浜に来たばかりと言っていました。

まさかあの時から全てわかっていたのかもしれない。

そう考えると、カレンさんがだんだんと怖い人に思えてきました。

自動浄化システムの広げ方を知っているというのであれば近いうちに何か動きはあるだろう。今は様子を見て、神浜へ被害が出るようであれば対抗するしかあるまい」

「でも、30人の魔法少女と平気に渡り合う相手にどう対抗するんだ。下手したら最盛期のマギウスよりも厄介だぞ。ちなみにだが、電気を使う魔法少女というのはどうだったんだ」

「少なくとも、私たちのチームでは歯が立ちませんでした。あの方は電気とはいえ知識を利用して応用力で勝負を仕掛けて来ました。
戦闘能力はカレンさんと同じ程度と思った方が良いでしょう」

「それ、どうしようもないんじゃ」

「おガキ様のように過激な方向へ進まないことを祈るばかりだな。
む、十咎くんから電話か。少し失礼する」

「なんかあたし達、今結構やばい状況にいるんじゃないの」

「今はこれ以上敵対的な魔法少女が増えないよう、事実を伝えていくしかないようね」

「なに!八雲が襲われただと!」

ももこさんから来た電話は、みたまさんが見知らぬ魔法少女に襲われたという電話でした。

十七夜さんは急いでみたまさんの元へ向かい、私たちも状況把握のために調整屋さんへ向かうことにしました。

そのまま会議は中断となり、残った議題は引き続きSNSの方で会話していくことにしました。

「おねえちゃん、私も行くよ」

「ういはみかづき荘に戻ってて。もしかしたら襲った人がまだ居るかもしれないし」

「私だって、力になりたいんだもの。お願い、連れて行って!」

「今回はダメ。さなちゃんと一緒に先に戻って待ってて。お願い」

「…うん」

返事をしたういは、どこか悲しげな表情をして、そのままみかづき荘へと戻って行きました。

「えっと、ごめんねさなちゃん。ういをお願い」

「はい、わかりました。ういちゃんと一緒にみかづき荘で待ってますね」

私はさなちゃんへ頷いた後、やちよさんと一緒に調整屋へと向かいました。

 

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