【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 1-12 突然の別れはいきなり

神浜の街を巡り、私の意思は固まった。

あとはシオリとピリカが戻ってくるのを待つだけだが、それぞれ違った日に違ったタイミングで探索に向かったためみんなが集まるというのは夜のほんの一瞬だけ。

シオリには宣戦布告役として駆り出されたりと面倒なことをやらされはしたが、この緑髪の魔法少女の事について情報を得られたのはありがたい。

マギウスについて聞いていたシオリは、マギウスの一人であるアリナ・グレイが今だに行方不明であるという情報を手に入れていた。

アリナという魔法少女はこの街を破壊しようとした前科持ちらしく、探し回っている魔法少女もいるという。

そのアリナという魔法少女の特徴と、いま目の前で眠り続けている魔法少女の特徴が合致しているため、こいつがアリナ・グレイで間違いないだろう。

彼女を話題に出さなかったのは正解だったようだ。

と、シオリからの情報はここで時々聞かされていたから分かるのだが、ピリカは見滝原とその周辺を見に行っているためしばらくは戻ってきていない。

出発して1週間は経つ。

グリーフシードを持っているとはいえ、寝る事にこだわる彼女はどう夜を過ごしたのやら。

「戻ったよー」

そう考えていたらピリカが戻ってきたようだ。

「おかえり。随分な長旅だったじゃないか」

「本当はもう少し早く戻ってくるはずだったんだけどね。道に迷ってしまったので」

「そういえばなぜか都会の方が迷うよなピリカは」

「目印にしていた建物が何軒もあるとか、通れると思った道が通れなかったりとか、自動歩道に巻き込まれたりとか」

「何やってるんだか」

でもキュゥべぇとも会ってきて貴重な情報は手に入れてきたんだから」

見滝原の魔法少女については、ワルプルギスの夜と戦う運命にあったということもあってその強さと能力については入念に調べる必要があった。

ピリカはカムイにお願いし、力の強い魔法少女に当たりをつけてもらっていたらしいのだが、二人の魔法少女に注目したという。

「鹿目まどかと暁美ほむら。その二人が特に力が強かったってことか」

「キュゥべぇに確認をとると、ほむらさんは魔法少女なんだけど、契約した記憶がないんだって。理由はわからないけど、時間を止めることができるらしいよ」

時間を止めるだけなら過去に戦ったことがある魔法少女にいた。

しかし、契約した覚えがないというのは妙だ。記憶操作という事もあるが、大それた理由として思いつくことはあるが私と同じ境遇が他にいるとは思えない。

「あと、アペにまどかさんを見てもらったんだけどワルプルギスの夜を倒す可能性を秘めているみたいだよ」

「ほう、それは随分と因果量が高そうと考えられる情報だね」

「候補の一人には十分なるんじゃないかな」

また、ピリカから神浜には私たちが出会った以外の調整屋がいるという情報を手に入れていた。

神浜とその周辺の地域にはすでに知れ渡っているらしく、多くの魔法少女が調整を施されているのだろう。

調整屋については私が尋ねてみる事にした。

ピリカからは安易に殺さないよう釘を打たれたが、調整屋という存在自体は今はいてはいけない存在だ。少なくとも、神浜にしか自動浄化システムがある間は。

「あら、二人とも戻ってきていたんだ」

シオリも戻ってきたようで、私たちは各々が集めた情報の整理を始めた。

全員一致で自動浄化システムが何物なのかを神浜の魔法少女から聞き出すことはできなかった。それは同時にこのままでは自動浄化システムが世界に広がることなど叶うはずがないことを意味していた。

神浜の魔法少女は外へ目を向けようという考えがほとんどないらしく、一部の者しか気にしていない有様なので外から来た魔法少女はそれはそれは居心地が悪い思いをするだろうという印象も受けていた

神浜の外にいる魔法少女は用がなければ神浜へはいかないらしく、それを彼女たちは何も気にしていない様子だったという。

不安を抱えつつも神浜には留まらない、というよりは留まれないのだろう。

人間関係や学校やバイトなど、理由は様々だがその理由のほとんどは魔法少女の世界から見ればこの先役立つとは思えないことばかり。
人間社会というものはそんなものだ。

神浜の魔法少女へ宣戦布告した話をピリカにするとそれはもう怒りどころか呆れられてしまった。

「何で敵増やすようなことするのよ。折角初対面で何の思い込みもなく情報交換できるチャンスをなくすようなものでしょ」

「あてになる情報なんてなさそうだって判断したからさ。人間社会に精一杯な奴らと話したところでいい情報なんて手に入らないだろうからさ。
あぁあ、この町のすごいがわからなくなっちゃったよ」

ピリカはムッとした顔でシオリを見続けていた。

「ま、それでもカレンへ宣戦布告してもらったグループのメンバーは洞察力と分析に長けていたよ」

「それって、過去に計画を妨害されたグループと同じ特徴」

私たちのやろうとしている事は受け入れてもらえるような方法ではない。協力関係になれたところで、あの時みたいに邪魔をされて無駄になるか遠回りする結果となる。
だから関係を険悪にしておいたのさ」

「変に注目されちゃうかもしれないよ」

「それはその時だ。忠告はもう伝えてあるからね」

「忠告を律儀に守ってくれればいいんだけど」

「なに、関わりすぎるなら潰されるくらいあの魔法少女たちなら理解できてるだろうさ」

「やめてよね」

一通り話を終えたあと、今後の行動についての話を始めた。

「さて、しばらくは神浜の状況観察を行いたいと思う。魔女化しない代わりに出るドッペルという存在をよく知る必要があるからね」

「ドッペルは出した後に疲労感しか感じないらしいけど、中には体の一部が動かなくなったりと体に不都合が出る子もいたらしいの」

「ドッペルってやつの代償をよく知らないといけないよね。でも、この街でそう頻繁にドッペルって出るものなの?見滝原や宝崎ではみんな神浜でもドッペルは出さないようにしてるって聞いたよ」

ドッペルを出す機会に出会える確率も、ドッペルを何十回と出し続ける現場も何十年とかけて観察したところでわかるはずがないだろう。

それでも、ドッペルの代償については知っておかないといけない。

そのためならば。

「ピリカ、突然なんだが、伝えたい事があるんだ」

「なに?」

「お前との関係はここまでだ」

「…え?」

 

第一章:スゴィガ ワカ ラナイ 完

 

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