【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-4-3 終に向かい始める世界

日本から11隻の船が出航してから1日経過した頃の夜、突然世界中で敵襲のアラームが鳴り響いた。

そのアラームは魔法少女にもそうだが、テロリスト対策用のアラームも同時に鳴った。

その余りもの多さに監視部署は混乱してしまった。

「こんな一斉になんておかしいだろ!」

「誤報ではないのか?」

「すべて正常な動作です!

アンチマギア生産施設の有無問わずテロが発生しています」

ペンタゴンの監視部署ではマニュアルにもない非常事態でただ慌てるしかなかった。

サピエンス本部の司令室にも世界中でアラームが上がっている情報が入っていた。ダリウス将軍とその部下達はいつかは起こることを知っていたかのように冷静であった。

「情報収集に専念しろ。人間が混ざっているならどこの奴らなのかもわかるようにな。

一応聞いておくが、日本以外に落ち着いている土地はあるか」

「南極基地には出現していないようです。

あとはなぜかニュージーランドが安全地帯となっているようで」

「ニュージーランド?

魔法少女がいないだけかもしれないが、オーストラリアにはしっかり調査するよう伝えろ」

「了解!」

「将軍!米国とヨーロッパではキリスト教信者もサピエンス反対を掲げて攻撃活動に参加しているとの報告です」

「結局はイザベラの思い通りか。

米国内は一般人の避難を急げ!

特に敵とここを直線で繋げたライン上の住人は速やかにだ!」

「我々の兵は出しますか?」

「イザベラの話を聞いていないのか。

我々は最後まで兵は出さない。地元の兵士たちで回してもらう。

我々は情報収集に努めよ」

「了解!」

「将軍!」

「今度はなんだ」

「敵の狙いは海岸線と空港のようです」

「空港?日本のやり方で味を占めたか」

世界中の空港がテロリストや魔法少女達によって攻撃を受けていた

中でもハワイや米国のカリフォルニア沖は沿岸部分も攻撃され、事前に用意さていた対艦ミサイルシステムが次々と破壊されていた

「船の航行に妨げとなるものは全て排除しろ!
ここハワイは外部との動線を全て潰せ!」

指示をしている魔法少女に対してハワイにいる米国兵は銃を放つ。

魔法少女はすぐに反応して空気中の水分を凍らせて鋭い刃となったものが五月雨に兵士たちへ降り注ぐ。

そんな魔法少女達の攻撃に米国兵士たちは何もできなかった。

「魔法少女がまだ島にいるなんて聞いていないぞ!」

「サピエンスめ、とり逃しやがっていたな。

応援もよこさないし何やってるんだ!」

 

ヨーロッパにある空港では滑走路が攻撃されて飛行機が飛べない状態になったあと、魔法少女達は垂直離着陸機へ攻撃を開始した。

地元の兵士たちが迎撃に出たことで魔法少女には被害がない中、魔法少女に加担しているテロリストと兵士には死人が出始めるようになった。

一般兵には魔女対策用のアンチマギア装備以外は支給されていないため、魔法少女には蹂躙される形でやられていった。

ダリウス将軍が世界の様子をモニタリングしているとイザベラとキアラが司令室へ入ってきた。

「ハワイにも出たってどういうことよ。あそこの魔法少女勢力は一掃していたはずよ」

イザベラの問いには同じ指令室にいるオペレーターが答えた。

「地元情報によると水中から現れたとの報告です!」

「もうなんでもありね。国内はどうなっているの」

「各地の主要な空港が攻撃を受けています。

地方にある小さな場所はまだ生きていますが、いつまで無事でいられるか」

「我が国の軍は動いてるんでしょ。たまにはしっかり働かせないと」

「だがこれだけは伝えないといけないな」

そう言ってダリウス将軍がメインモニターの画像を切り替えると、そこにはテロリストを指揮しながらペンタゴンに迫るロバート達の姿が映し出された。

「ロバート達、なんで」

「あらあら、彼らは信頼できると言ったのは誰だったかしらね」

キアラが画面を見て固まっている中、イザベラがキアラの肩を叩いた。

ビクッとしたキアラの耳元でイザベラは呟いた。

「さあ、日本人であるあなたならどう落とし前をつけるか知っているでしょう。

まさかこの後に及んでまだ彼らを擁護するなんてこと、ないわよね」

周囲の空気は凍りついていた。

それはイザベラのキアラに対する態度だけではなく、イザベラの左手にナイフが見えていたからだ。

キアラは暫く目を瞑って、目を開けてから答えた。

「わかっている。

わかっているさ」

「そう?それなら頼んだわよ。あなたならあれくらいどうってことないだろうし」

キアラは悔しそうな顔をしながら司令室を出て行った。

ダリウス将軍はため息をひとつついた後にイザベラへ話しかけた。

「たった1人でいいのか。

責任を取らせるたって流石に1人は」

「いいえ十分よ。

何人を相手にしようと、勝って終わるようじゃないと私の従者は務まっていないわ。

ああそうそう、キアラを運ぶための自動運転設定した装甲車は一台用意してあげてね」

「無茶がすぎる」

「見ていればわかるわ。

ほら、世界のモニタリングを続けなさい。どのタイミングでアンチマギア生産施設が狙われるのかはわからないのだから」

ロバートなどの裏世界の住人達は魔法少女とともにペンタゴンへ向かうための活路を開いていた。

FBIも装甲車を出して動きを止めようとするものの、魔法製の武器や魔法によってあっさりと突破されてしまった。

「歯応えのない奴らばかりだな。まともな戦車くらい出てこないのか」

別の場所では爆発が起きて夜空が赤く照らされていた。

「おやっさん、早く前に進んで終わらせましょうよ」

「バカ言ってんじゃねぇ。俺たちはここで暴れればいいんだよ。

大事なのは他の奴らがやってんだからな」

「ロバート!ペンタゴンから来る車両ひとつ!」

「さあ、誰が乗っている」

車がロバート達の目の前を通り過ぎると同時に1人車両から飛び出してきた。

飛び出してきたのは戦闘服に着替えたキアラだった。

車はキアラを下ろした後に急いでその場を離れようとしたものの、スナイパーライフルで燃料タンクを撃ち抜かれて爆発してしまった

キアラの目の前に立っているのはロバートにマーニャ、5人の男達と3人の魔法少女だった。

他にも建物内に銃を持って数人は潜んでいる状況だった。

「たった1人でか。俺たちも舐められたものだな」

「…どうしてですか」

「ああん?」

「なぜこんなテロじみたようなことをしたのですか!

一般人は、関係ないのに」

キアラの問いにロバートとは違う男が答えた。

「前にも話しただろう。

俺たちはイザベラの、サピエンスのやり方が気に入らないんだ」

「テメェらを潰せるなら俺たちはマーニャに協力するし、見て見ぬ振りをする奴らや分らず屋にも、俺たちは喜んで銃を向けるのさ」

「キアラ、あなただってイザベラのやり方が間違っているくらいわかるでしょ

マーニャにもそう言われ、キアラは歯を食いしばりながら腰の刀に手を伸ばす。

「ええ。彼女のやり方は間違いなく不幸になる人々が増える。

だが、こうして一般人を巻き込むテロを行っているあなた達よりは良心的だ!」

「動かなきゃ世の中変わらないんだよ。

特に俺たちのような社会的弱者はこうやって派手に、そしてきにくわネェ奴をぶっ飛ばすしか変える方法がないんだよ」

「そうですか。

・・・

お覚悟を!」

目にとらえられないような速さでキアラはロバートへ切りかかったものの、ロバートが持っていた斧ですぐに防がれてしまった。

周囲から銃弾が飛んでくる中、右側建物付近にいる傭兵にキアラは接近して銃ごと右手を切り落としてしまった。

そのまま建物へ侵入し、建物内部に潜んでいた傭兵達を次々と斬っていった。

ロバートは建物内部へ入ろうとする傭兵達を止め、出入り口と上空を警戒するよう指示を出した。

建物の3階からは正面から叩き切られた死体が両断された銃とともに落ちてきた。

魔法少女対策がされているとはいえ鉄を容易く切れるなんて恐ろしいな、刀ってやつは」

「キアラの腕力がおかしいだけでしょ」

「お前さては刀をよく知らないな?」

建物内には魔法少女もいたものの、争う音はすぐに止んでしまった。

4階の窓から反対の建物にはグレネードが投げ込まれ、グレネードが弾けたと同時にキアラが反対の建物へ飛んで移った。

その飛び移る間に銃弾は飛んだものの服を貫通するだけでキアラ本体には当たらなかった。

決して傭兵達の射撃は下手ではなかったが、キアラが少し体を捻りながら飛び移ったためか体の軸を狙った弾は的を外していた。

飛び移った先の建物内にいた傭兵達はサブマシンガンで対抗したものの、刀で銃弾を防がれながらクナイで喉を貫かれていった。

建物内に生存者はいないと判断したロバートは背負っていたガトリングを取り出してキアラがいる建物に満遍なく撃ち込んだ。

上から下まで撃ち込まれ、強度を失った建物は隣の建物に寄りかかりながらロバート達とは反対側に崩れていった。

それでもいくつかの破片はロバート達の方にも飛んできて、ロバート以外はその場から逃げて距離を取った。

銃口が赤くなったガトリングが止まって辺りが土埃に包まれている中、周囲では何者かに次々と後退した傭兵達が殺されていった。

魔法少女はなんとか反応できて脇腹を通ろうとする刀を弾いていた

「ロバートこれじゃ逆効果だよ!」

マーニャにそう言われたロバートは斧を振り上げた。

「ごちゃごちゃうるさいんだよ!」

ロバートが斧を地面に叩きつけるとハンマーを打ちつけたのではないかと思うほどの衝撃波が発生して周囲の土埃は周囲から消えてしまった。

姿をあらわにしたキアラは傭兵の心臓を貫いているところだった。

心臓から刀を引き抜いて血を振り払った後にキアラは刀を一度鞘に納めた。

少しだけ動きを止めた後にキアラは背負っていたもう一本の刀を素早く抜いてロバートの脇をたたきつけた。

しかし装甲を破った後にゼリーの感触が伝わったらと思うと刀を動かせなくなった。

そんな焦ったキアラにロバートは斧の柄部分で殴ってきたがキアラは刀から手を離してその場から離れた。

「いったい何」

「教えるわけねぇだろ。

地獄で会うことがあればその時に教えてやるよ」

ロバートの後ろから傭兵達は銃を放ち始め、弾道を縫うように魔法少女達も迫ってきた。

キアラは再度腰の刀を取り出して弾を避けながら魔法少女の攻撃を弾いていった。

ロバートは脇に刀が刺さったまま斧をキアラに振りかぶってきた。

キアラはその衝撃で飛んできたコンクリートの破片で顔に切り傷がついてしまった。

キアラは一度瓦礫に隠れ、大回りでロバート達の後ろ側に回り込んでクナイで2人の喉を貫いた。

「ちくしょう、ちょこまかと」

あたりが再度静まり返ると突然闇から刀が飛んできて、そこにほとんどの人々が注目していた。

その隙にキアラがマーニャへ突撃してクナイを2本両肩に突き刺した。

それでもマーニャの腕は動いてキアラは振り払われた。

その勢いでキアラはロバートへ突撃し、糸で繋がっているのか、投げた刀は引き摺られてキアラに近付いていった。

キアラはロバートの左肩に体重をかけて飛び上がり、手元に戻ってきた刀で左側広頸筋あたりから心臓目掛けて突き刺した。

ロバートはぎこちなくなった動きでキアラを掴もうとするが、キアラはするりと突き刺した刀を抜いてロバートから離れた。

その様子を見て固まっていた傭兵を容赦なくキアラは首を切り落としてしまった。

「キアラ!」

マーニャは警棒のようなものの先端に電撃を発しながらキアラに殴りかかった。

しかし周囲では生き残りの傭兵と魔法少女がキアラの動きが止まるのを待っていた。

キアラは刀を空中に放り投げ、マーニャの攻撃を避けた後にロバートの遺体へと走った。

そして抜けかけになっていたロバートの脇へ刺さっていた刀を回収してマーニャ以外の魔法少女と傭兵へ切り掛かった。

もはや銃では動きを止めることはできず、引き金を引く手を切られた後に心臓を貫かれる、目を刀で斬られた後に正面から思い切り斬られたりとキアラのやりたい放題だった。

キアラが投げた刀が地面に突き刺さる頃には20人近くいた傭兵や魔法少女はマーニャしか生きていない状態となった。

「キアラは強いと思っていたけれど、敵わないねぇ」

「逃げずに挑んだことは評価します。

それが逃す理由にはなりません。

実験台にはされないようしっかり殺させてもらいます」

「気遣いのようでなっていない言い方だね。まあタダで死ぬ気はないよ。

クナイをアンチマギアにしなかったこと後悔しな!」

マーニャが三角形の石を使用したタリスマンを取り出すと、キアラの足が瞬時に岩で固められてしまった。

「すぐには解けないはずさ!」

動けないキアラに対してマーニャは紫色の汁が滴るナイフを突き刺そうとしてきた。

それはキアラの体の軸をとらえていてどう動こうとその刃が身体に刺さってしまう。

キアラは刀でマーニャのナイフを受け止めてしまった。一般人に魔法少女の腕力が受け止め切れるはずもなく、急所は避けられたものの右肩にナイフが刺さってしまった。

キアラはまだ動かすことができる左手に刀を持ってマーニャめがけて切りあげた。

それはマーニャのソウルジェムを両断し、マーニャは胸部分から血を出しながら倒れた。

ナイフの毒が体に行き渡り始めたのかキアラは意識が朦朧となり出した。

そんな中ナイフを抜き、地面に突き立ったアンチマギア製の刀を抜いて傷口に突き刺した。

それでも意識は回復せず、アンチマギア製の刀を刺したまま腰にかけていた応急処置用の注射を左腕に突き刺して注入した。

この注射は種類がある中でも解毒剤にあたるもので、毒ガスを吸ってしまった時等に対応できるよう用意されていた。

呼吸が苦しくなる中、注射を打ったことでやっと意識も呼吸も落ち着いてきた。

そしてやっと周囲を見渡す余裕が出た頃にイザベラから通信が入った。

「その周辺のテロリストは掃討できたみたいね。

お疲れ様。

迎えをよこすから少しだけ待っていてちょうだい」

そう言って通信は切れてしまった。

キアラは周囲を見渡すと見慣れた顔の死体が血を流して転がっていた。

「あなた達が、悪いんですからね・・・」

キアラは迎えが来るまでにその場で涙を流した。

キアラの戦いぶりを見ていたダリウス将軍はイザベラに話しかけた

「全滅させてしまったのは驚きだが、傷を負ったところを見ると少し無理をさせすぎたんじゃないか」

「無理も承知よ。こんないらない結果を招いたのはキアラが彼らを甘く見た結果よ」

「自業自得ってか。従者には優しくしてやれよ」

「うるさいわね。他の情けない結果をフォローすることに専念しなさい」

同時に世界中で発生していた空港や施設の襲撃は人間側は惨敗状態だった。

ほとんどの空港は使い物にならなくなり、小さな国は政治家が殺され始めていた。

「やはり一般兵器では歯が立たない。

衝撃砲くらいは軍へ提供してやったほうがいいんじゃないか。

これじゃ本命すら止められないぞ」

「情けないわね、手持ち用のものなら余裕があるかしら。
ちょっと生産工場がオーバーワークになるかもしれないけど」

そう言いながらモニターをいじってイザベラは衝撃砲の生産状況を確認した。

「やっぱり余分な数は生産できていないわね。

ハリー、奴らの船団はどの程度でカリフォルニア沖に来るかしら」

「現在の速度ですと、およそ17日と10時間ほどでカリフォルニア沖に姿を見せます」

「そう、一応猶予はあるわね」

そう言ってイザベラは衝撃砲の発注を32本分行った。

その様子を見ていたダリウス将軍はイザベラに尋ねた。

「あれには魔法石が必要じゃなかったか。

そんなに調達できるのか」

「カルラ達に任せるわ。

もともとあれは彼女達が自前で用意しているし」

「だったらカルラ達にも」

「伝えるわよ。確か今は中庭にいたかしら」

 

現在ペンタゴンの中庭だった場所には高いアンテナが建設最中である。

そんな建設最中のアンテナタワーを見上げながらカルラはタバコを吸っていた。

カルラの隣には研究員がいて資料片手にアンテナを見ていた。

「カルラ、いまいい?」

私がそう声をかけるとカルラは研究員へ私が来た方とは反対側へ行くよう指示し、研究員はその場からさった。

その後カルラはこっちを向いた。

「なんだ、アラームの件は落ち着いたのか」

「私がいようがいまいが変わらない状況にはなったわね。

んでお願いしたいことがあってきたのよ」

「願いね。

無茶振りには対応できないよ」

「衝撃砲を一般兵にも配りたいのよ。

32本分用意をお願い」

「…猶予は」

「12日よ。残り3日で本体と接続と動作テストしてそのまま現場へ直送って流れよ」

カルラはタバコを一度蒸すとアンテナを見上げながらイザベラと話を続けた。

「イザベラ、このアンテナをパラポラにしなかった理由はわかるか」

「何よいきなり。

日照権の問題でしょ。じゃないとこんな古典的な鉄骨を繋ぎ合わせたようなスカスカなツリー型になならないわよ」

「建設承認関係で伝えたと思うが、こいつは通常の電波以外にも魔法少女が使用しているテレパシーにも関与するため、しかも盗聴している輩に対抗するために必要と伝えた。

このタワーにはテレパシー受信および発信用の魔法石も使用されている」

「それはわかっているわよ」

「何を言いたいのかというと使いたい魔法石、つまり純度の高い魔法石は今目の前のタワーに使用した。

今から純度の高いものを用意するとなると、このアメリカ大陸に現存しているのかも怪しいため12日は確約できない。

最悪アフリカのダイアモンド鉱山に赴く必要もあるかもしれない」

「もうアメリカにある宝石では純度が悪いって言いたいの?」

お前なら持てばわかると思うが、一般人の純度がいいと魔法を感知できる人物の純度がいいは訳が違う。

内包している魔力量がアメリカにあるものは少ないのだよ。

今まではその中でもましなものを使ったまでさ」

「純度が悪いと変わるのは威力と電力貯蔵量かしら」

「発射にかかる充填速度にも関わる」

「理論はいいからできるかどうかを伝えなさいよ」

「ではお前の願いを叶えるために私からも要望を出させてもらう。

エメラルドかダイヤモンドの原石でもいい。

削った結果イザベラの親指程度の大きさの結晶になるものをお前が欲しがっていた要求数の4倍、128個を用意出来たらイザベラの要望を達成させると保証しよう」

「いいわ。5日で用意してあげる」

「助かるよ。こっちは製錬の準備を進めておくよ」

「言っておくけど原石でいいのよね!」

「別にいいが間に合うか怪しいな」

「わかったわよ削って渡せばいいんでしょ!」

イザベラは怒って建物の中に戻った。

中庭でそんなイザベラを見て笑顔だったのはカルラだけだった。

その様子を見ていた建設員達が言葉を交わした。

「レディと言い合える上に言いくるめるなんて」

「カルラさんも怖いよな」

「いやサピエンスのトップはみんなやばいし人外だって」

「あれらに歯向かう奴らは考え直したほうがいいぜまったく」

 

イザベラが室内に戻った頃、各国の空港は魔法少女に占領されつつあった。

「将軍、状況はどう?」

「空路はもう諦めるしかないレベルでやられているよ」

「一箇所10人も魔法少女はいないはずでしょ?」

「君の目線で考えるな。

銃があっても人間には反応速度の限界がある。マッケンジー達のように鍛えられた先鋭くらいじゃないと一対一でさえ務まらないさ」

「ちなみに一般人は」

「夜行便に乗っていた一般人が巻き込まれて全滅している。

空港勤務の従業員やパイロットも生存は絶望的だろう。

政府は行方不明者リストを作るのに一生懸命だ」

「無駄なことを」

「言ってやるな。わずかな希望に縋りたいものもいるが故の対応だ」

「希望ねぇ」

そう話しているとオペレーターから報告が上がってきました。

「レディ、キアラの収容完了。1時間後には本部に戻る予定です」

「わかったわ。

迎えの車を付け狙う者がいないかは見張っておきなさい」

「了解」

夜明け頃、世界の空路は壊滅して次は海路が狙われようとしていた。

 

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