【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-11 欲望に、忠実に、手を伸ばす

ただアリナ先輩を助けたいだけだった。

何の手掛かりもない中で、カレンさんたちに出会えたことは一筋の光だった。
私は自分のワガママに任せて、神浜マギアユニオンが敵対視しているカレンさんたちに協力した。

その結果がこれ。

アリナ先輩は確かに助かったの。でも、その代わりでいろはさんが捕らえられて、アリナ先輩はあの人たちの言うことを聞かないといけなくなっちゃった。

私が人質になっちゃったから。

アリナ先輩は目覚めた後、私を襲おうとしたドッペルを出したいろはさんをキューブで捕らえたの。

でもその後も私が人質になっていたからアリナ先輩は神浜に張られている被膜ってやつを解除することになった。

やる事はやったのに私達はいまだに捕らえられたまま。でもいつでも逃げようと思えば逃げられるの。

「逃げるってどこに?アリナは家に戻れるけどフールガールはどう思うワケ?」

「逃げるって、それはお家になの」

「聞きたいのはそうじゃないんですケド。ゴーホームではなく、エスケープをチョイスした理由を知りたいだけ」

「今ってあの人たちに監視されてる状態だから、逃げるが正しいの!」

「こーんなフリーハンドな状態で放置するとか、好きなタイミングで帰っていいよって言ってるようなものだよね。

なのにエスケープしないといけないワケ?」

「言いたい事がわからないの」

なんか引っかかる事があるからエスケープしようとしてるんじゃないの?フールガール」

引っかかることは、なくはない。

目の前でキューブに捕らえられて禍々しいオーラを放ったまま動かないいろはさんを巻き込んでしまった事。

でも、それについては後悔していない。

こうしないと、アリナ先輩を助けられなかったんだから。

「環いろは。このまま放置した結果は面白いことになりそうだけど、あいつらの思う通りに事が運ぶのは癪だヨネ」

「どういう事なの?」

「みかづき荘に顔出して、ここに環いろはがいることを伝えるの。そうすれば環いろはは不完全な状態で目覚めて、もしかしたらあいつらの目指す完全体になるのを邪魔できるヨネ。

この状態の環いろはを見たみかづき荘のメンバーの反応も最高そうだし」

「アリナ先輩!」

アリナ先輩はとても楽しそうな顔をして話していた。

でも、こんなの楽しくなれるわけないの。そんなアリナ先輩に、思わず大きな声を出してしまった。

「このままじゃいけないの、わかってる。でもみかづき荘に顔を出したところで、みんな信じてくれるか」

私が答えを出せずにいると、アリナ先輩は勢いよく立ち上がり、座り込んだ私の胸ぐらをつかんで私の目を見つめたの。

「イチゴ牛乳がないから思わず手が出ちゃったヨネ。
いい加減物事はっきりと判断できるようになったらどう?見てるこっちがイライラするんですケド!」

「アリナ、先輩。離して」

「アンタがあの漫画の怪盗みたいになりたいってんなら、まずその優柔不断さをなくしなさいよ。
ほら、何をどうしたいか教えてよ、フールガーーール!!」

目を背けたいけどどこを見ようとしてもアリナ先輩の目が視界から離れない。
ずっと見つめていたら私は恐怖のせいか意識がぼやけてきた。

視界が真っ暗になった中、頭の中に私ではないワタシの声が聞こえてきたの。

[欲望に忠実になればいいのよ。ほしいものは盗み取り、手放したくないものは絶対譲らない]

「そんな欲張りなこと、人として良くないの!」

[そんなきれいごとばかり考えているから、アリナ先輩も遠くへ行っちゃったんじゃない?
他人のことなんて考えず、自分の思うがままで生きればいいんだよ。そうすれば物事はっきりするさ]

「わからない、私にはわからない」

[そう、じゃあ私が欲しい、あんたの体を盗んじゃうね]

こころの中であるはずのワタシが鎌を構えると、私も無意識に魔法少女姿となって鎌で応戦していたの。

[なぜ抗うの?ワタシがアンタと入れ替われば、物事はっきりとさせてほしいものをすべて手中に収めてあげるのに]

きっとここで狩られると死んでしまう。私は。

「死にたくない!」

[その執着、何が原因?優柔不断なあなたにはっきりとわかる?]

「死んじゃいそうだからわかる。私はアリナ先輩が欲しい!
やさしくて、時には厳しくて、何を考えているかわからないけど、大切なことをいろいろ教えてくれる。
そんなアリナ先輩が、マジカルきりんくらいに、好きだから!」

[だからどうした?そんな一方通行な想いでは奪い取ることはできないぞ!]

もう迷わない、そのためには。

「最低限の理性だけ残して、あとは、ワガママになればいいんだぁ!」

そう言って私はワタシを真っ二つに刈り上げていた。

[イキナサイ。欲望に、忠実に]

ワタシが消えた後、私は真っ暗な闇の中、左手を前に出して何かをつかんだ。

つかんだとたんに周囲は真っ暗ではなくなり、目の前には胸ぐらをつかまれているアリナ先輩がいた。

「ドッペル出したと思ったら次は何?!」

「みかづき荘に行くの。そのあとはアリナ先輩の好きなように振る舞うといいの。
でももう、手放さないから!」

私はアリナ先輩の答えを聞く前に手を掴み、アリナ先輩と廃墟の外へ出た。

そして私はアリナ先輩を鎌の後ろに乗せてそのままみかづき荘へ向ったの。

空は夕日でオレンジ色になっていてまだ明るい頃、SNSに出ていた廃墟に向かうっていう時間までには間に合うと思う。

「そう、じゃあ好きにさせてもらおうかな。エスコートは任せたから

御園かりん」

 

 

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