【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-1 結んで、ひらいて

黒いオーラの魔法少女というドッペルに続く出会ったことのない魔法少女の形。

少なくとも神浜に近づかなければ出会うことはないとのことですが神浜にいけなければれば鹿目さんがいつ魔女化するかわからない日々が続くだけで心が休まる隙がない。

私たちはあの日以来、巴さんから神浜には近づかないようキツく言われています。

命の危険があるのもそうですが、いちばんの理由は人殺しをさせたくないからという理由。

黒いオーラの魔法少女を止めるためには殺す以外に方法がありません。

神浜にいれば安全かと思われたこの世界線に現れた新たなる危険分子。

私は二度と巡り会えないであろうこの時間を守るためにも、黒いオーラの魔法少女になった場合の安全な対処法を探しに時々神浜へ訪れていました。

神浜へ通うことで知ることができたのは、黒いオーラの魔法少女を助けることができる人は確かにいるということ、そして日継カレン、紗良シオリという魔法少女が何か知っているのではないかという情報が手に入りました。

魔法少女のSNSでも情報は流れてくるのですが、現場で聞くほうが信憑性がありました。

しかし神浜にいる魔法少女に揃って言われるのが、紗良シオリ達には手を出さないほうがいいという話。

噂によれば、彼女達と会ってしまうと黒いオーラの魔法少女にされてしまうとのこと。

黒さんとも情報交換を行っていたのですが、どうやら元マギウスの翼のメンバーで黒いオーラを纏った状態から助けられた魔法少女が多くいるという情報を入手しています。

今日はこの情報をある魔法少女へ伝えるために神浜へきています。

神浜へ調査に来ているうちに神浜では会ったことがない魔法少女によく出会うようになりました。

初めて会った時は神浜の魔法少女なのかと注意深く聞かれましたが、違うとわかってもらえると気軽に話すようになりました。

名前は大庭樹里さん。

お姉さんと妹さんがいる三姉妹らしく、神浜から遠く離れた場所からきたとのことです。

樹里さん達は紗良シオリさん達を探しているようで、シオリさん達を見つけたら教えるという約束をしてよく情報交換するようになりました。

今日は樹里さんと出会う約束をしているのですが、指定の場所へ行くと少し騒がしい雰囲気でした。

「おい!いい加減正気に戻れよ!」

「聞く耳持たずって感じねぇ。それに体とつながっている魔女みたいな生物、さくやが言っていたドッペルという現象ね」

「冷静に分析してる場合じゃないぞ長女さんさ!」

樹里さんと他大勢の魔法少女達は黒いオーラの魔法少女と対峙していました。

話を聞いている限り、どうやら黒いオーラの魔法少女は仲間の魔法少女のようです。

黒いオーラの魔法少女は背中からカカシのようなドッペルを出していて、カラスの姿をした使い魔を飛ばして攻撃していました。

加勢しようにも、わたしにはこの状況を穏便に治める方法を持ち合わせていません。

誰かが殺されそうな状態になったら、その時は最悪の手段を取ることにします。

いつでも動けるよう構えていると樹里さん達に動きがありました。

「わたしが殺すわ。このままでは救いようがない」

「・・・いいのか、あいつは虎屋町の、長女さんとこの仲間じゃないか」

「だからこそよ。貴方達に仲間殺しは、もうさせたくないのよ」

長女と呼ばれる魔法少女はその場から動こうとしない黒いオーラの魔法少女へ瞬時に近づき、大きな金棒でソウルジェムを砕きました。

周囲を飛んでた使い魔は次々に灰へ変わっていき、魔法少女だったものが倒れていました。

樹里さんはその場に膝をついて地面を殴りました。

「畜生、ドッペルってやつを出せば魔女化しないって聞いていたのになんだこれは」

黒いオーラの魔法少女が神浜に最近現れるようになったって話は聞いていたけど、こういうことだったのね。これは早急にことを済ませないといけないわね」

一旦戦いは終わったようなので私は樹里さん達の前に姿を見せました。

「ん、誰っすか」

「ああほむらか。さっきの戦い、見ていたのか」

「・・・ええ」

「貴方が次女に協力してくれてる暁美ほむらさんね。私はプロミスドブラッドの長女、紅晴結菜よぉ。さっきの状況を静観していたということは、貴方もあの状況を打破する方法を知らないのね」

「はい、すみません」

「なんだよ、収穫なしってことかよ」

「でも、黒いオーラを纏った後に助けられた人の居場所を掴むことはできています」

「え、それってあの状態になっても助かる見込みがあるってこと?

「どうやって助けてもらったかは、話を聞いてみないとわからないです」

「ならさっさと行こうぜ。絶対に助ける方法を聞き出してやる」

「でも少し確認させてください。みなさん、マギウスの翼という言葉に聞き覚えはありますか」

「マギウスの翼だと、二木市から魔女を奪った奴らじゃないか。まさか今回の件も奴らの仕業なのか」

変に深読みされてしまうのは予想の範囲内でした。

マギウスの翼を話題に出したのは、樹里さん達が妙に神浜の魔法少女へ妬みを持っているからです。神浜の魔法少女が他の街から妬まれる理由は魔女を集めていたこと魔女にならないシステムを独占している事くらいしか思いつきません。

私は樹里さん達へ場所を案内するためにはマギウスの翼のメンバーへ危害を加えない、脅迫しないという条件を出しました。

これも黒さん達へ迷惑をかけないためです。

しかし結菜さんと樹里さんは条件を守れないと断ってきました。

憎むべき相手と争うなというのは無理な話だとのこと。

いまはそう言っている場合ではないというのに。

しかし一人だけ条件を守っても良いという魔法少女がいました。

名前は笠音アオさん。

他のメンバーも首を横にしか振らなかったため、アオさんと一緒に黒さんの元へ向かうことにしました。

しかしこのまま別れても跡をついてくるのは容易に思いつきます。

「アオさん、少し手を繋いでいてもらえますか」

「え、いいけど」

私はアオさんの手を掴み、一定時間の間、時間を止めました。

「うそ、周りの時間が止まってる」

「手を離さないでついてきてください。離してしまうとアオさんの時間も止まってしまうので」

そう言って樹里さん達がいた場所から離れた後、歩きながら私はアオさんへプロミスドブラッドの目的を聞きました

プロミスドブラッドの目的は神浜市にいるという自動浄化システムの広げ方を知っている日継カレンと戦い、勝った暁には広がった自動浄化システムの所有権を譲ってもらうということ。

そして神浜の魔法少女へ利用料を支払わせるという目論見があると教えてもらいました。

なぜ、と問いかけると私たちと同じ苦しみを味合わせるためと言う回答が返ってきました。

二木市がどんな状況であったのかは分かりません。なので、否定するのもおかしなことでしょう。

しかし、考え方が間違っているというのは確かです。

黒いオーラの魔法少女もそうですが、二木市の魔法少女にも注意した方が良さそうです。

口を開かず移動する時間が長い中、私たちは黒さんが待っている大東区の廃墟へとやってきました。

「黒さん、欄さんお待たせしました」

「やあ、ほむらさんと、どちら様かな?」

「ちょっとそこで知り合った者でーす」

欄さんにはアオさんのことを神浜の外からきた魔法少女とだけ説明し、本題について早速話してもらいました。

今日呼んだのは黒いオーラの魔法少女について私たちなりに調べがついたからなんだ」

「え、でも神浜マギアユニオンのSNSでそんな話はなかったですよ」

私たちには元マギウスの翼で繋がった別の情報ルートがあるんだけど、そこでやりとりをしていたんだ。

そんな中で被害者となった彼女達が黒いオーラの呪縛から解かれたって話を聞いて、調べがついたってわけ」

「彼女達っていったい」

「私たちのことなの」

物陰からいきなり現れたのは、マギウスの翼のローブに似た服装をした魔法少女数人と緑と赤色の魔法少女でした。

緑色の魔法少女は宮尾時雨さん、赤色の魔法少女は安積はぐむさんです。

彼女達はマギウスの再興と魔法少女主義を謳うネオマギウスという組織を作る予定の魔法少女達でした。

しかしその勧誘中、糸を使う魔法少女の機嫌を損ねてしまい、痛手を追ってしまったとのこと。

その後日、数人のメンバーが黒いオーラに包まれて暴走したものの、ある騒動の中で黒いオーラが取れたというのです。

「ボクたちは暴れていた時の記憶は微かにある。でも、どうやって助けられたかはわからない」

「ただ一つ言えるのは、助けてくれた人はドッペル5体の攻撃を防げるくらい凄い人ってだけなの」

「他に特徴はなかったわけ?姿とか、魔力反応とか」

「実は助けられた時のパターンが2種類あるんだ。ひとつはなんの痕跡も残さず助けられているパターン。

もう一つは、助けられた時に集団の魔法少女が目の前にいるパターンだ」

欄さんがいうには、はぐむさん達が遭遇した助けられたパターンよりも、集団の魔法少女が目の前にいるパターンの方が痕跡を辿りやすいとのことです。

なんでも、突然現れて突然助かっていたパターンは、魔力反応が一切なかったとのことです。

神浜には既に助ける方法が2パターン存在する。でもその方法が広く知れ渡っていないのはなぜ?

「複数人に助けられた場合には、決まって南凪区の施設で目を覚ましたって話を聞いているよ。でも看病してくれたのは名も知れない一般人みたいでね、誰がどう助けたまでは私たちでは知ることができなかったよ」

「でもね、助けられた人の中に神浜マギアユニオンのリーダーと親しい人がいたみたいでね、近々やる大きな会議の中でいろいろ報告してくれるみたいなんだ。

何でも、一部の人達が紗良シオリっていう日継カレンの仲間を瀕死に追い込んだ結果報告もされるとか」

「あの魔法少女を、瀕死に?!」

アオさんはポーカーフェイスで話を聞いている中、紗良シオリという魔法少女の話が出た瞬間、表情を変えました。

「やっと違う表情をしてくれましたね。アオさん、知ってることを教えてもらえないでしょうか」

欄さんが問いかけますが、アオさんは黙ったままでした。

「貴方の都合は聞きませんが、今は手を取り合うべきです。紗良シオリと日継カレン、彼女達を野放しにしておくと、誰のためにもならないと思うんです。

もちろん、貴方の仲間も」

「どうして彼女達ばかりを敵視するの?」

「黒いオーラの魔法少女になったメンバーと時期、その中心にある事象、それは

“日継カレン達と接触していること”

今私たちの見解としては、彼女達によって黒いオーラの魔法少女が誕生してしまったと考えています。

これで理解できましたか」

「…少しね」

「協力してもらえるのであれば、会議の開催場所を伝えます。ほむらさんには後で送っておきますね」

「はい、ありがとうございます」

欄さんは冷静に話を進めてくれました。

マギウスの翼の白羽根として活動していた彼女は、元から戦う素質があって、影ながら多くの人に慕われていたのです。

そんな彼女がマギウスの翼に参加していた理由は、魔女化しない世界にするためにでした。
あそこまで冷静に行動ができるなら、神浜マギアユニオンでも活躍できそうなのに。

私は建物を出た後、アオさんに問いかけました。

「会議に参加すれば多くの情報が手に入るかもしれません。それなのに、まだ納得できないんですか」

「私の中では納得してる。でも姉さん達を納得させることはできない。欲しいと思う情報も不確かで、参加すれば必ず私たちの目的を果たせるとも限らない。
そんな賭け、誰も乗らないよ」

「伝えてみたらどうですか、自分の意思を」

「無理だよ。私は三女、末っ子で一番弱い。姉さん達に押し切られて終わりだよ」

年上や実力が上の人に意見を言うのはかなりの勇気が必要。私も巴さんへ何か意見を言うのは躊躇していた。

でも、実際は巴さんも求めていた。遠慮のない私たちの意見を。

そのおかげで巴さんは立ち直れて、今ではみんなで魔法少女の宿命に立ち向かえている。

偶然かもしれないけれど、過去に繰り返した世界に比べたら、少しわがままに立ち回ったからここまで来れたのかもしれない。

アオさんも、伝えなきゃ間違った方向に。

「少しはわがままな態度を見せてもいいかもしれませんよ」

アオさんは何も話してくれませんでした。

「私、近くの駅で待っていますね。1時間くらい待つので、その気があれば、駅まで聞きにきてもらえますか」

アオさんはしばらく私の目を見た後、話しはじめました。

「来てよ、次女と対等に話せたんでしょ。うちの場合、長女さんよりも次女さんの圧で押し切られるんだよね。
フォローしてよ」

「アオさんが、参加を心から望んでいるならフォローしますよ」

そう言って結局私は二木市の魔法少女達のアジトまでついて行きました。

入り口の扉を開くと、そこには樹里さん達が立って待っていました。

「ったく、遅いぞ」

「でも驚いたわ、ここまで暁美さんを連れてくるとは思わなかったわ」

「アオさん、これはどういうことですか」

少し周りがざわついた後、アオさんが一歩踏み出して話を聞きに行った結果を話しはじめます

神浜の魔法少女は紗良シオリ達を討伐することに専念していること。彼女達の行いが他の魔法少女にどのように影響していくのか。

そして、情報共有を行う会議に参加しないことがどのような意味を持つのか

アオさんは聞いた結果をねじ曲げることなく素直に話しました。そして。

「私は会議に参加した方がいいと思う。神浜の魔法少女の方が彼女達のことをよく知っているみたいだし、それに他の地域からきた魔法少女も招待しているみたいなの。

神浜に協力するかは別として、情報収集って意味で参加した方がいいんじゃないかな」

「ほう、それが実際に見聞きしてきた答えか。神浜の奴らに何か吹き込まれたんじゃないよな」

「そんな事はないよ」

「本当か?ドッペルってのは奴らが考えたシステムから生まれるやつだ。それを利用して混乱させてるだけじゃないのか」

「アオさんがしっかり説明したはずです。神浜の魔法少女にも被害が出ているって事、そして被害にあった人は揃って日継カレンと出会っていると」

「お前に言われなくてもわかってるっての!」

「ならば!」

「やめなさい、次女が癇癪起こす理由は大体わかるわ。それが本当ならば私たちはいつでもああなってしまう可能性を孕んでいることになるからね」

樹里さんと調査をしている時に聞いた日継カレンと戦った事。

大勢で挑んでも歯が立たず、今回はそのリベンジに来たという話も。

「そんな状況下で神浜の魔法少女と争うのは、タイミングが違うと思うんです。そうじゃないと、日継カレンを倒す前に貴方達が折れちゃいます」

樹里さんはその場にいじけて座り込んでしまいました。

「貴方に言われなくても私たちは理解しているわ。日継カレン達を倒すのが最優先事項だという事はね」

「じゃあ!」

「私たちプロミスドブラッドもその会議に参加するわぁ。異論がある子はいるかしら」

「奴らの下につくってわけじゃ、ないんですよね」

「もちろんよぉ。神浜の魔法少女が持っている情報を根こそぎ聞いて私たちは独自の行動をとる予定よ。
次女もいいわね」

「・・・いいさ。なんか余計なことしてきたら我慢はできないがな」

「次女さんは我慢をもう少し覚えた方がいいんじゃない?」

「うるせーよ、らんかは」

「はいはい」

二木市の魔法少女も参加してくれるとのことなので会議の開催場所をスマホの画面で教えました。

場所は鏡屋敷の大広間。
果てなしのミラーズがある場所で、日継カレン達が近づかない場所だとされているからです。

開催は明日。
とても急ですが、それでも鏡屋敷に入りきらないくらいの魔法少女が集まると予想されているらしく、まともに進行できるのか不安なところもあります。

情報を伝え終わると結菜さんに話しかけられました。

「暁美さん、次女と対等と話せるなんて、強い心を持ってるのね」

「最初は怖い人かと思ったんですけど、接しているうちにお話ししやすい方だと感じてきましたので」

「次女さんからは暁美さんは強いって聞いたんすけど、本当っすか?」

「えっと」

一気に周りから問いかけが飛んできました。話してみると神浜の方達と何も変わらない同じ魔法少女だと感じました。

少々戦いを好む方もいますが、ただ魔法少女を殺すことが目的ではないのだなと分かりました。

しかし、神浜の魔法少女は許せないという意思は貫いていて、今後仲良くして行くには難しそうだと思いました。

私は皆さんと別れて見滝原の帰路についていました。

もう夕方近くだけど、会議の話はみんなにしておかないといけない。

どうやってみんなに伝えようかと悩みながら改札を出ると、腕を組んで待っている巴さんがいました。

「用事があるって言っていたけど、この時間に着いた電車は確か神浜から来る電車よね」

完全に待ち伏せされていました。

「神浜へいま行くのは危ないって伝えているのに、ホント暁美さんは話を聞いてくれないんだから」

「すみません、でもどうしてもみんなに伝えたい話があるんです」

「私は反省してくださいって話をしてるの」

「はい、ごめんなさい」

「全く。それで、言いつけを破ってまで欲しかった情報はなんだったのかしら」

この後、巴さんに神浜で行われる会議の話をすると、みんなで行くことを条件に参加することとなりました。

鹿目さんや美樹さん、佐倉さんも参加することとなり、私たちは揃って神浜へ行くことになりました。

私たちがあまり拘らなくなってから大きく変わってしまった神浜の事情。

この時間軸を守るためにも、私は彼女達を止めないといけない。

それが、鹿目さんを守ることになるから。

 

 

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