【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-7 黒いオーラの魔法少女

見滝原で出会った元黒羽根の子 黒さんに連れられて私と巴さん、なぎさちゃんは神浜への電車に乗っていました。

「なぎさちゃん、魔法少女だったんですね」

「この指輪に気づかないなんて、黒は魔法少女なりたてなのですか?」

「うぐっ」

「黒さん、緊急事態の詳細を教えてくれるかしら」

黒さんから伝えられたのは、シェアハウスしている友達が、黒い何者かに襲われてしまったとのことです。その友達を今はこれまた一緒にシェアハウスしている元白羽根の人が守りながら逃げている状況で、電話をかけてきた時も逃げている最中だったとのことです。

とっさに電話できたのが黒さんだけだったらしく、応援を呼んでほしいと伝えられ、今に至ります。

「電話が通じてるってことは、少なくとも使い魔や魔女ではないようね」

「なんでですか?」

「魔女の結界の中では電波が通じないのよ。結界を持たない魔女なんてワルプルギスの夜以外あり得ないでしょうし」

「じゃあ、襲ってくる黒い存在って」

「神浜の外から来た魔法少女、かもしれないわね」

「あのSNSで話題に上がった、外から来た魔法少女、なのかな」

鹿目さんがいろはさんへ連絡したときには特にそんな話題はなかったはずだけど。

やっぱり、今のままじゃ神浜の最新状況を知ることが出来ない。

急ぎたい気持ちとは違い、決まったレールを決まった時間で走り続ける電車に揺られ、神浜の西側にある駅で私たちは降りました。

駅のホームを出て10分ほど北側に進んだ裏路地に黒さんのお友達と思われる魔法少女が2人いました。

「欄さん!大丈夫ですか!」

「黒、来てくれたんだね。それに、巴マミと暁美ほむら!?」

「事情は後で話すわ。状況を教えてもらえるかしら」

欄と呼ばれている魔法少女の腕の中には、傷だらけになった1人の魔法少女がいました。呼吸はしていましたが、苦しそうに不規則なリズムで空気を吸ったり吐いたりしています。

もっと奥の路地裏でカオリが真っ黒な存在にサンドバックにされているのを目撃したのよ。ソウルジェムが壊されていないのが奇跡だった」

「その黒い存在って、何」

話していると急激に魔力の反応が二つ迫ってきました。二つの反応は私たちの前を横切り、私たちが入ってきた路地裏の入り口側に立ちはだかりました。

その魔力の反応は、まさしく

「出た。右側のやつが襲ってきたやつだよ。まさかもう一体連れてくるなんて」

「でもこの反応って」

「魔法少女」

見た目は黒いオーラを纏った感じで、オーラの端に行くほど赤色が目立っていました。

顔はとても苦しそうで、ソウルジェムと思われる宝石部分は真っ黒でした。

左側の1人が左手を高々と上げると腕はみるみるうちに大きくなり、泥のような見た目となった後、掌には一つの目玉が見開きました。

目を開くと同時に周囲には大きな衝撃が走りました。

「何よあれ」

「この魔力の迫力、まさかドッペル」

腕が伸びてきて、その腕は変身した黒さんを叩き潰してしまいます。

「黒さん!」

黒さんは苦しそうにしていましたが、再び立ち上がりました。

「この、返してよ!」

そういきなり黒さんが言うと、見覚えのある黒羽根が使用していた鎖を手のドッペルへと放ちました。

その先にあったのは黒さんがアラカル亭で買ったお菓子の袋でした

「黒さん迂闊よ!」

手のドッペルはそのまま鎖を掴んで黒さんを放り投げようとしました。

「黒!鎖を切れ!」

黒さんは欄さんの指示通りに鎖を手放したことで地面に叩きつけられることはありませんでした。

隣のもう1人の黒い魔法少女はと言うと頭を抱えながら苦しみ、その後はライオンのような外見になって襲いかかってきました。

私はとっさに時間停止を行いましたが、二体ともにドッペルを出しているだけでただの魔法少女。

足止めを考慮して足を不自由にさせるよう拳銃を撃ち込み、時間が動き出しました。

狙い通りに2発の弾丸は2人それぞれの太ももを貫通しました。2人はその場でもがき続けていました。

その瞬間に巴さんがリボンで拘束しようとしますが、手のドッペルを出している魔法少女が腕だけで前進してきてリボンの拘束を避け、欄さん目掛けて腕を伸ばしていきました。

「欄さん!」

「見つけたぞ食い物泥棒!」

見慣れた赤い鎖連なる矢先が手のドッペルを貫きました。

声のする方向を見ると、そこには佐倉さんがいてその後ろから美樹さんと、鹿目さんが追いかけてきました。

「マミさんにほむら?!こんなとこで何を。それにこの状況は一体」

「私だって聞きたいわよ。こっちは拘束するのに手一杯だけど、そっちの子はドッペルが治まったかしら」

「気をつけて!こいつらは何度もドッペルを出すよ!」

そう欄さんが言っていると、苦しそうに傷ついた左手を掴んでいた黒い魔法少女が再びドッペルを出しました。

「そういうことか。どうりで攻撃加えてもきりがねぇわけだ」

「鹿目さん、いったい何があったの」

「私たちは、神浜で買い物をしていただけなんだけど、いきなりあの黒い魔法少女が杏子ちゃんが買ったお菓子を奪っちゃってね。その後追いかけてきたの」

人様の食いもん奪っといてドッペルのせいだろうが容赦しねぇぞ」

「人のこと言えないと思うんですけど」

「うるさい!とにかく大人しくしやがれ!」

杏子さんは激しく槍で突き刺したり、多節棍の仕組みを駆使して打撃を与えていきますが、その攻撃のどれもがドッペルにしか当たらないようにしていました

激しく攻撃はしているものの、魔法少女自体への攻撃は避けているようでした。

相手が再びドッペルを引っ込める頃には二つの足で立ち上がっていました。

両腿にはしっかりと銃弾の跡が残っているのに、立ち上がっていたのです。

そして再び、ドッペルを出します。

「きりがない。もう、ソウルジェム自体を壊すしか」

「だめよ!殺してしまうのは一番だめよ!」

「んじゃどうすればいいんですか!こいつ、道中で一般人にも被害出してるんですよ。私やまどかで足や腕を不自由にするくらい攻撃してきましたけど、こうやって痛みを感じないみたいに何度も立ち上がってくるんですよ!」

ドッペルを出し続ける上に傷による痛みを顧みずに襲いかかってくる黒い魔法少女。

そんな正常じゃない状態を目前にして、私たちはどうしようもありませんでした。

「ならば私が動きを止めます」

そう言って黒さんは白羽根が使用していた光る長剣を手のドッペルを出している魔法少女の足へ突き刺し、その勢いで本体を鎖でグルグル巻きにして身動きを取れないようにしました。

「よし!」

しかし左手がフリーになっていた黒い魔法少女はドッペルを出して黒さんの目の前で目を血走らせながら大きく手を開いていました。

「黒!」

「黒さん!」

黒さんはとっさの出来事で身動きができていませんでした。

「ばっっかやっっろう!!!!」

赤い槍は伸びてドッペルを貫くと同時に胸元で黒く輝いていたソウルジェムも砕いてしまいました。

そのまま黒い魔法少女の変身は解け、口や目やらいたるところから血を流した少女だったものへと変わりました。

「なによ、これ」

巴さんが怯むとリボンの拘束が緩んで拘束していた獣の姿をした魔法少女が巴さんを引き裂こうとしました。

「マミさん!」

すると、遠くから緑色の光線が飛んできて黒い魔法少女は壁へ打ち付けられました。

「巴さん!すぐ拘束を行ってください!」

声の通りに巴さんは再び黒い魔法少女を拘束しました。

声の主人はかつて巴さんを調整屋へ運ぶ際に一緒だった魔法少女と、1人、2人、そして会ったことがある美雨さんがいました。

「まどかさん?!こんなとこで会うなんて」

「かこちゃん!?どうしてここに」

「私、チームで行動していただけですよ」

「ほむら、久しいナ。元気にしてたカ?」

「はい、美雨さんも元気そうで何よりです」

「あら、面識のある方が多いようですね。それよりも」

拘束された黒い魔法少女はなおも暴れていて、リボンがちぎれないのが不思議なくらいでした。

「常盤さん、これはどういうことですか。魔法少女がドッペルを出し続けるなんて。明らかにおかしいですよ」

「ええ、おかしいことです。私たちもついさっき目撃しましたから」

常盤さんが振り向いた先には魔法少女だったものがいました。

「あなたが、彼女を?」

「だったらなんだ、ああしなきゃこのちっこい黒いのが握りつぶされてた」

黒さんは腰を抜かして座り込んでいました。

「いいえ、正しい判断だったと思います。むしろ決断できたことに驚いています」

「ふんっ」

「ななか、この暴れてる子はどうする」

「気絶も苦痛も、説得も聞かないのであればソウルジェムを引き離すしか」

そう言って常盤さんが黒い魔法少女のソウルジェムへ手を伸ばしますが、触れた瞬間にソウルジェムが強い光を発しました。

常盤さんは慌てて手を引っ込めてしまいました。

「ななかさん!」

「大丈夫です。少し激痛が走っただけです」

常盤さんは一息つくと刀を抜きました。

「ななかさん?!」

「お覚悟を」

そう言うと、常盤さんは黒い魔法少女のソウルジェムを砕いてしまいました。

魔法少女姿が解けた後の少女の姿に、私たちはさらなる衝撃を受けます。

「このローブって、マギウスの翼」

「どういうこと、まさかまたマギウスが何かやり始めたんじゃ」

「あのガキどもが何かやり出したってか」

「杏子ちゃん、マミさん、決めつけは良くないよ」

「その通りです。現在マギウスの翼も、その残党も解散状態となっています。それに灯花さんとねむさんは定期的に環さん達と会っているので何かを企てるといったことはできないでしょう」

「それじゃあ、この黒い魔法少女はいったい」

「なにも分からずです。皆さんは黒い魔法少女を見かけたら関わらずに逃げてください」

「こいつらみたいのが、人を襲っていたらどうするのさ」

「その時は、人気のない場所へ誘導して逃げるのが無難です」

「それが無理なら」

「無理でもやってください。それとも、魔法少女を殺す覚悟でもお有りですか?」

美樹さんは黙ってしまいました。

黒い魔法少女を止めることは、ソウルジェムを壊すことだけ。

原因も、誰の仕業なのかもはっきりしません。

「私はこの件を神浜マギアユニオンへ持ち帰ります。私たちだけでは手に負えません。
私が魔法少女を殺したことについてはどうとも伝えていいですが、杏子さんについてはこの場だけの秘密としておきます」

「別に気にしちゃいねぇよ」

「では私たちは行きます。死体はそのままで構いません」

「まどかさん、また」

「うん…」

常盤さんたちはこの場を去っていきました。

私たちは場所を移動して、黒さんたちは家へと戻るとのことです。

私は黒さんへ自分の分のチョコレートを手渡しました。

「ほむら、これはあなたのでしょ」

「黒さんのお菓子取られちゃったし、友達に食べさせたかったんでしょ。受け取って欲しいな」

恐る恐る、黒さんは私の手からチョコレートを受け取りました。

「ありがとう、ほむら。またどこかで会おうね!」

そう挨拶を交わすと黒さんは欄さんと一緒に傷ついた仲間を抱えて家へと戻っていきました。

「さて、私は気分を晴らすために食い物屋にでも行こうかな」

「ならなぎさも一緒するのです」

「なんだ、お前もついてきてたのか」

「最初からいたのです」

「それじゃあ、佐倉さんおすすめの美味しいラーメン屋さんにみんなで行かない?

「「サンセー!」」

「うぉい勝手に決めるなよ」

「いいじゃんいいじゃん!杏子の分は私が出してあげるからさ」

「ち、なら仕方ねぇ」

「ちょろいのです」

「んあ??」

そう佐倉さんとなぎさちゃんが口喧嘩をしながら私たちは風見野へと向かいました。

今回体験した黒い魔法少女との遭遇今まで巡ってきたどの時間軸でも体験したことがない対処が難しい自体です。

殺すのは簡単。

でも、本当にそんな方法でいいのかが、私の倫理観が邪魔をしてしまい、どうすればよかったのかと悩み続けることとなります。

しかし、一つだけ確かなことは言えます。

鹿目さんを襲うというのであれば、

容赦はしない。

 

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