次元縁書ソラノメモリー 1-11 しないよ、今回に限っては

家の中は少し重い空気が漂っていました。

それはブリンクがこの世界に滞在する間に起きるであろう現象について、アルが懸念していたからです。

それは、概念の違いからくる次元錯誤と呼んでいる現象のことです。
次元錯誤でよくあることは、退社という概念がある生き物は代謝という概念がない世界に行くと今まで行ってきた老廃物を外部に出すということ自体ができなくなり、やがて衰弱して死んでしまうという例があります。

別には魔力があるのが当たり前な世界へ魔力という概念がない人物が紛れ込むと、体内から魔力が沸き上がって暴走して魔物と呼ばれる存在になるという話もあります。

このような話が前提にあり、アルが気にしているのは前者の次元錯誤の現象でしょう。

「ソラ、つづりさんが別世界から猫ちゃんを連れて帰ってきたことあるでしょ」

今から3回ほど前の次元を調査していた時、つづりんは可愛い猫をお忍びで連れてきてしまった時がありました

「この世界じゃ猫はいないからってつづりさん気に入っちゃってさ、ファミニア中連れまわしたってこともあったよね」

「毎日猫のことしか考えていないくらいキラキラした感じだったね。あの猫もずっとつづりんにくっついてたっけ」

「しばらくは気づかなかったけど、あの猫ちゃん、どんどん衰弱していって最終的には動かなくなったよね」

「そうだね、あれは死んだという判断さえできない状態だった」

猫が衰弱してしまった理由は水を飲まなかったとかご飯を食べなかった、病気にかかっていたというわけではありませんでした。

「あの猫は、代謝の行き場がなくなって動かなくなってしまった」

先ほどから死んだと判断できないという話が出ているのは、そもそもファミニアに死という概念がないからです。

近頃、ファミニアでは生命機能が停止してしまう人が時々現れますがその度にCPUの構成員が生命活動が停止したモノをCPU本部まで運んでしまうため、動かなくなったモノの行方は不明でした。

そう、近頃は。

あとは代謝という概念もファミニアにはありません。

つまり、代謝という概念があった世界から来た生き物はこの世界で老廃物の排出が行えません。
では老廃物はどこでとどまっていたのか。
ネコの見た目が肥大化したりとか、表面に見えるグロテスクな変化は全く起きていなかったのも衰弱に気づくのが遅れた原因でした。

猫を調べてわかったことですが、代謝で生じた老廃物は体内にたまり続けていたのです。

つづりんの提案で、せめて元いた世界で弔おうということでその猫を元いた世界に連れて行きました。

すると猫だったものの中から老廃物が一気に吹き出し、大惨事となったことを覚えています。
あれ以来、次元錯誤には常に気を配っていて、別の次元へ行く場合のリスクを知る良いきっかけともなりました。
そんなきっかけがありながら、知りながらも次元錯誤が起きてしまう人物を連れてきてしまった。それがアルは許せなかったのでしょう。

猫が動かなくなったのは老廃物蓄積によるエネルギー変換の停止。あれからいくら考えても答えが出ていないじゃん!」

世界を渡っている間にうやむやとなってしまった問題が再び呼び起こされました。

「さっき言ったように当てはある。でも、解決に手間がかかる」

「ソラ、言っておくけど猫ちゃんが衰弱し始めたのは時間がある世界でいうと1ヶ月後の話。この期間を目安として対処法を探さないと」

ファミニアには時間という概念が存在しますが、昼間は夜間の時間の3倍の長さがあり、1日24時間ではないのです。
そして次元移動した先の世界と時間の同期は行っていないので、単純にこの世界で1か月と言っても別の世界では1年という場合があったり、1週間の時間しか流れないということもあるのです。

いまあてのある世界は、時間の流れがここよりも短い世界です。つまり、1か月よりは長い期間対策に充てることができます。その世界にある概念は、対策の理論にはもってこいです。代謝という概念をブリンクから取り去る方法が。

しかしそれを具現化させるにはこの世界の能力だけでは補いきれないほど複雑です。

そんな複雑な仕組みをいつも形にしてくれるのが。

「できるんだね」

アルはしばらく怖い顔をしたまま私を見続けていました。

「できるよ。でも、悪いけどアル、今回もたくさん頼りたいな」

アルは一度目をそらし、そして深いため息をつきました。

「まあ、ぼくはブリンクを見捨てる気もないし、元から手伝う気ではいるよ。だから、変な寄り道は絶対しないでよね」

わたしは1つの次元でいろんな無茶な寄り道をしてきました。おそらくそれを懸念しているのでしょう。

「しないよ、今回に限っては」

私は真剣な顔でアルを見続けていました。

するとあるが少し笑って答えました。

「わかった。それじゃああてのある次元とやらを教えてよ」

「ありがとう」

私は笑顔でそう伝えるとアルへ探して欲しい次元について教えました。

別次元へ移動する際、最初のうちはデタラメにつづりんがつなげた世界へ行ってみるということを何度も行いました。

その中でも面白そうな世界を選んで、調査を行ってきました。

いろんな次元に行けば、次元にも決まった法則というものが見つかるものです。

その法則はマクリワと呼んでいるものです。

マクリワはどの次元にも存在し、この次元にも存在します。

この世界のマクリワは『センフ』、能力を意味します。

これはこの次元では生まれながらに能力を得る概念があるという事になります。

次元によってはマクリワが2つ以上存在する次元が存在します。

そんな中で今回アルにお願いしたのは。

「マギアとノンリッシュの次元?」

「魔法が存在し、代謝がない、またはなくなる方法がある概念の次元を調べれば、実現させる方法が見つかるはず」

「いったい何を狙っているの?」

「魂を抜き出して、代謝の概念から切り離す」

この方法は代謝の概念から切り離すにはちょうど良い方法ですが、ブリンクが魂のありかにこだわるかどうかが、問題でした。

 

1-10←Back page

list:お話一覧

Next page→ 1-12

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です