次元縁書ソラノメモリー 1-10 わたしだって考えなしってわけじゃない

ファミニアにソラたちが戻ってきた。

一時はどうなるのかと思ったけど、再び3人の顔を見ることができてよかった。

あれ?3人?

そうか、ソラがまた別世界で人を拾ってきたんだっけ。その連れてきた子の紹介は、3人が落ち着いてから行われた。

「紹介するね。この子はブリンク、次元漂流していたところを助けたんだ」

「よろしくお願いします」

場に流されるがままに挨拶してしまったのかちょっとおどおどしている感じはある。仕方がないよね。

「ようこそブリンクちゃん、私はカナデ。ブリンクちゃんと一緒にいたそこの2人は一緒にいるとなかなか疲れるから気をつけたほうがいいよ」

「んな失礼な」

つづりさんの反応が早い。

「ぼくはアル。こっちでみんなのサポートをしているよ。よろしくね」

一通り挨拶が済んだところでソラがやりたいことを話し始めた。

「実は今回の件なんだけど、実は相当やばい事態になってるみたいなんだよ」

「まあ、通信が繋がらなくなること自体がありえないことだからね、事の重大さはわかってるつもり」

「そんな中、向こうの世界の住人から世界の記憶が詰まっているっていう脳みそを受け取ってさ」

「「は?脳みそ?!」」

ぼくとカナデさんは声を揃えて言ってしまった。

「何をどうやったら脳みそなんてもらえる流れになるのさ。まさか、もらうとか言っておいて剥ぎ取ったんじゃないでしょうね」

「そんな訳ないでしょ、逆に私たちが脳みそえぐられるところだったんだから!」

カナデさんとつづりさんが言葉のキャッチボールを始めてしまった

「今までのその世界からそんなことは想像できないけど」

「いやいや、ブリンクが一瞬だけ隙を作ってくれなかったら私たちここにいないから」

「ふーん」

「それでソラさん、その脳みそはどこに?」

カナデさんが話を切り替えた。

「今はバッグにしまってるんだけど、調査のための干渉液が欲しくてね。その調達をアルとブリンクにお願いしたいな」

特殊なバックじゃなければ普通に腐ってると思うんだけど、まあいいか。

「ぼくは問題ないけど、ブリンク、ちゃんでいいのかな?」

「ブリンクでいいよ。じっとここにいてもあれだし、私も行こうかな」

この後の会話でカナデさんは音声データの確認、ソラとつづりさんは別の用事があるらしい。

「色々詰まってて疲れちゃったよ。つづりん、散歩行こうよ!ブリンクもさ!」

そう言ってカナデさんはつづりさんとブリンクを連れて散歩に行ってしまった。

家に残ったソラとは2人でしか話せないことを話した。

「今回の件、CPUが黙っているはずがないんだけど動きはあった感じ?」

「通信が繋がらなくなってからカナデさんと外を駆け回っていたけど、夢の噂くらいしか話題になっていなかったかな。あとはいつもどおりって感じ」

CPUはファミニアの中心地に位置する天を超えるほどの高さがあるとされている軌道エレベーター。
その先にあるのがファミニアを見守るCPUと呼ばれる組織であり、ファミニアで起きた多くの事件をなかったことにしてきた恐ろしい存在でもある。

何かが起これば必ずCPUに動きがあるのだけれど、今回は静観している様子。

「まあ、CPUはファミニア内で何か起きない限り動かないだろうけど、今回に関してはファミニアで何か起こってからは手遅れだろうしCPUはあてにならないだろうね」

ソラがCPUを気にするのは、過去にCPUにいたというのが関係しているらしい。
らしいというのは、実際にいたという事実を確認できないからなんだけど、CPUの動向に詳しいこともあって本当にいたのではと感じてしまう。
過去にあったかもしれない出来事をなかったことにしているという事実は、ソラの記録がなかったことになった過去を残し続けている活動から判明した。

他人から見たら創作物にしか見えない記録だけれど、あったかもしれない出来事となる瞬間を目にした時、ぼくはCPUという組織に恐れを感じるようになった。

このような経緯もあり、CPUの動向には常に気を配っている。

CPUに動きがないことよりも、今は気になることがある。

「ソラ、別次元から人を連れてきたらどうなるか、わかった上で連れてきたの?」

次元ごとには決まったルールが存在する。それが他次元と共通している場合があれば、全く違った解釈、存在しないルールもある。

いないはずの存在がその次元に現れればその次元のルールが異常を起こし、その次元自体が不安定になってしまう。

実はこのファミニアに別次元の存在は数多く存在する。それでもこの次元にい続けられるのは、類似するルールの次元から来ているから。

でも今回は。

「アル、わたしだって考えなしってわけじゃない。この件についてはわたしとつづりんで解決するから」

「当てはあるの?」

「あるけど時間はかかるかな。大丈夫だって、ファミニアだって、ブリンクも丈夫なんだから。次元改変に巻き込まれたりはしないよ」

「そう」

次元改変

本来あるはずのものがない、本来死んでいるべき人物が生きていたりと定められた次元の流れに異物や不備が生じると、次元は不安定になる。

この不安定な状態を安定させようと各次元は自己修復を実施する。

この時に起こるのが次元改変。

次元改変の際にその次元はエネルギーを消費する。そのエネルギー消費の際に波動を発する。

この波動のせいで連鎖的な次元改変が起きることもよくある。

ファミニアが次元改変をなかなか起こさないことから次元改変へ耐性がある可能性はすでにわかっている。

問題はブリンクに何か起きていないかという事。

そう、ブリンクには代謝という概念があるからだ。

 

1-9←Back page

list:お話一覧

Next page→ 1-11

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です