次元縁書ソラノメモリー 1-6 まったく、お前はどこからきたんだ?

CPU計画』

原子と分子の衝突エネルギーが利用され始めてかなりの時が過ぎ、技術の発展は飛躍し続けた。しかし、肝心の保有者が飛躍せずに技術だけが先に行き過ぎた。

それがこの世界の惨状だ。

この計画は逃げる行為に値する。

隠密行動でしか行動が行えないため、参加者はこの世界にはいない存在として今までの全てを捨ててもらう。

各々の存続のため、この代償を容認できるものは国連重要管理区「日本」へ集まるように。

 

別次元から来た死体が所有していたものの1つだ。この世界の人と思われる単語がいくつも見て取れたけど、「日本」という単語はこの世界に存在しないし私も知らない。

次にソラさんはカバンから本のようなものを取り出した。

ソラさんの左隣から覗き込むと、どうやらこの死体の日記のようだ。

計画参加はいいものの、到着先の実験でよくわからない場所へ来てしまった。

ここは今までいた場所とは違うようだが一体何が起きたんだか

外の様子から察するにここは今までいた世界とは別の世界ということだ。

詰んだ

日記を書く気力があるだけまだいい。食料はかろうじてもといた世界と似ていた。ほぼ同じといって間違いない。

それにしても外の光景、まるで今までいた世界の末路のようだ

最悪だ。外の白いものは雪じゃなく灰のようだ。これは触れるとヤバイとわかる

あの地獄の光景を思い出してしまい、最悪だ。

人を確認したが、いや人ではないな

あの生命体は灰で狂ったやつだ

生き残れてもああフラフラするならアンデットと変わりない。やはりあの計画自体は間違ってなどいなかった。

せめて、実験の過程でこうなって欲しくはなかったが

銃声がした

どうやらキチガイが今までこの建物にいたようだ

だいぶ下だがいずれ見つかるだろう

逃げ道はない

今まで身につけてきたゲリラ的戦い方で通用するか?

日に日に迫る銃声

音はハンドガンだが玉数に制限がなく感じる。

この世界の銃はどういう仕組みなんだ

薬莢が出る様子もない

下から逃げてきた人と出会った

犯人は殺すことを楽しんでいるらしい

極限状態だと人も獣へと戻るのか

逃げてきた人と距離をおき、1人で行動している。逃げてきた人物ほど怖いものはない。それで親友を失っているからね

彼女には悪いが

犯行人物がこの階にきた

気づかずに去っていったが、今度は降りてくる。もう銃声は聞こえないだろうから常に気を配らなければ

 

日記はこのページで終わっていた。日記のページ数を見るに10間はまともに生きていた様子がうかがえる。

この日以降の日記は記載されていないけど、死体の腐敗度からしてかなり時間が経過している。

そう考えを巡らせているとソラさんは日記と紙切れを持ったまま死体の前でしゃがみこんだ。

「まったく、お前はどこからきたんだ?」

私にはわかる。この人とこの次元のつながりは全くない。さらにいうとこれと別世界とのつながりも感じられない。因果から外されてしまったかのようだ。

各建物で日記のような惨状が続いていたのであれば、この灰に囲まれた世界にもう生物はいないだろう。

この終わった世界はそのうち静かに消滅して行くのだろう。ここまできたら今まで積み上げられたものもただの塵芥に過ぎない

でもこの人は記録してしまうのだろう。ソラさんはそんな人だ。

消えそうな世界も見捨てず記録として残す。それがこの活動の目的だからね。

「つづりん、これのつながりは見える?」

ソラさんが手前に突き出してきたものはCPU計画と書かれた紙切れだった。

「どうもこれが臭いと思うんだよね」

「焦げ臭いのはそこらへんのせいでは?」

「そうきたか」

乗ってみたがイマイチだったか。

「なんであなたたち余裕なのよ」

ブリンクは苦笑いしていた。声のトーンから察するに、だいぶ心の余裕はできたってとこかな。

「まあこの計画が書かれた紙からは因果の糸がいくつか見えるよ」

この資料をもとに様々な次元を訪れればもとのありかがわかるかも

「この書物の処遇は後回しにしようかな」

そう言ってソラさんは資料をカバンにしまった。

ファミニアで使用されているバッグは腰に固定する手のひらサイズであり、軽い。

でもしまうことができる量はサイズに見合わないほど多く収納できる。

製作者たちによると、4畳分の高さ2メートルある部屋に収まるくらいの大きさと量であればいくらでも仕舞い込めるらしい。

やったことないからわからないけど。

頭で思い浮かべればしまったものをすぐに取り出せるので構わず仕舞い込んでもまったく問題がない。

「さて、ここでは調べないといけないことがありそうだね」

「と言うと?」

私が問いかけるとソラさんはしばらく外を見た。

そして、外を見ながら答えた。

「この灰についてと、灰の中生きてた生命体についてね」

外を見ると、そこから見えたのは灰を踏み潰した複数の足跡だった。

 

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