音が届かない、夕日もほとんど差し込まない路地裏には4人の魔法
「そこの倒れているのはチヒロじゃないか。かこ、
「ちひろさん、路地裏でこのヒト達に暴行を受けていたんですよ。
誰がどんな顔をしていたのか判断ができないほど肉塊が広がるだけの酷い光景でした。
これを、貴女がやったというのですか。
「どういうことですか、ヒトに手を下すなど、
「かこちゃん!何があったのか教えてよ!」
「私はもうななかさんたちの元へ戻れません。
ちひろさんを血溜まりから離れた場所へ寝かせた後、
「どうしてついてくるんですか」
「私達は貴女の仲間です。当然のことですよ。
まずは何があったのか話していただけますか」
「話したところで面白い話ではないですよ。
私は何か言い出そうとしたあきらさんを止め、
「お父さんとお母さんに見られちゃったんですよ、
そして使い魔を倒して帰ったら、いつも名前で呼んでくれていた2
それで私の前に私がもう1人現れたんですけど、
そして真っ暗な中を進んで扉があったので開いたら、
それからたくさんのヒトを見て、呪いの源を断って、断って、
そうしていると、もうヒトなんて救う必要ないんだって」
語るかこさんの目はももこさん達のように光のない目になっていま
いえ、それよりももっと目の奥に闇が見えました。
そしてその顔は不気味な笑みを浮かべていて、
ソウルジェムは、
“あたしはあんたの反対側にいるんだよ。
でもね・・・いずれこっちに来る”
予言だったというのですか、
“あんたの反対側にいるんだ いずれこっちに“
私は魔法少女姿となって抜刀し、刃をかこさんへ向けます。
「ななか?!」
「かこさん、あなたを反対側に、“あちら側”に行かせるわけには
必ず呼び戻します」
「ななか」
「あきらさん、美雨さん。今すぐここから立ち去ってください。
そう言ったにもかかわらず、
「何をしているのですか。生きて帰れる保証はないですよ!」
「何言ってるんだななか。
それに、今のかこちゃんの姿をみんなに見せるわけにはいかないでしょ」
「ワタシは仲間を見捨てない。残るのは当然ネ」
2人ともに3対1という状況ができるにもかかわらず覚悟を決めた
なぜでしょう、
戦わずとも既に知っていますが、“あちら側”のまま放っておくわ
「暖簾の先に進む覚悟がお有りなら、
「当然!」
「わたしの前から消えてって言ってるのに!」
かこさんも魔法少女姿となり、
長柄の武器は突きよりもなぎ払う行動が多く、
そう、この行動原理は美雨さんのもの。
あきらさんと美雨さんの間髪ない攻撃の中、
これはあきらさんの固有能力の応用。
かこさんは2人に構わずわたしにばかり積極的に攻撃を仕掛けてき
あきらさんと美雨さんがカバーに入ってくださるので猛攻を耐えて
そう、かこさんは私たちの行動を後ろから今まで観察し、
つまり、私たちの行動原理はお見通しなのです。
しかし一緒にいた私たちも同じ条件。
そのはずなのですが。
わたしはかこさんに飛び上がりを強要させるよう一閃を加え、
どんな身体能力を持っていようとこの世界の原理、
その隙が生まれる着地の瞬間を狩るのが美雨さん。
しかし、かこさんは石突きを地面に打ち付け、
「やはり、容赦はないようですね」
受けるはずの重力が右手に集中するその行動によってかこさんの右
やれると思ってもやらない戦法。
それはヒトとしての行動理念に反すること、
これらに該当する戦い方は勝てる場面でも使わないことが当然でし
ヒトデハナイ
そう吹っ切れた方が相手だと、立ち回りにくいものですね。
戦況はお互い譲らずと言った状況でした。
私たちは擦り傷程度の損害に対してかこさんは切り傷や殴打による
ここまで戦って不思議なのは、
「まだ構うんですか」
「当たり前です。あなたをこちら側に呼び戻すまでは引きません。
「それにそろそろドッペルを抑えるのも限界なはずだよ」
「ドッペル、ですか。
そうですね、そんなに殺されたいナラ、切りキザマreちゃえばい
かこさんの足元から周囲に赤いリボンが巻きついた鉄柵、
「まさかこれ、魔女の結界」
「だめ、引き返せなくなります!」
わたしはかこさんのソウルジェム目掛けて駆け寄ろうとしますが、
「ちょっとこれどういうこと?!
かこさんのソウルジェムから出てきた呪いの色をしたリボンがかこさんを
スカート部分は本に何本もの栞が刺さった見た目をしていて上着部
そしてかこさんの目には光がない代わりに、
そしてソウルジェムの中から取り出したのは身の丈ほどあるオオバ
「ドッペルを着込んだというのですか」
かこさんはオオバサミを持ったまま素早くあきらさんへ詰め寄り、
「いきなりか!」
しなやかにあきらさんは避け、
「もうなんでもありカ」
使い魔たちの数が増え始め、
使い魔を振り払っているとかこさんのスカートにある栞が飛び出し
そしてきっと魔力を吸い出したのでしょう、
私たち3人は少々意識が朦朧としてしまい、
そしてかこさんはあきらさんのソウルジェムがある側の腕を、
「アアアアアアアッ」
「あきらさん!」
かこさんはその後いつも使っている武器を生成してあきらさんの右
「かこ!」
美雨さんの突き出した拳はかこさんの左腕に突き刺さり、
視界が開けた頃にはかこさんはオオバサミの片方を大剣のように振
聞くことがないと思っていた美雨さんの叫び声が響き、
かこさんはわたしに振り返り、
そうです、そのままくるのです。
貴方にはまだ、
わたしは無抵抗のまま心臓部分をオオバサミに貫かれました。
痛みに耐えながらわたしはかこさんを掴み、
薄い意識の中、伝えるべきことを伝えるために声を絞り出します。
「かこさん、聞こえますか」
「ななか、さん」
「手短に話します。
貴女のヒトを嫌いになってしまう思考は、
「わたし、わたしは」
かこさんの手は震えていて、
「しかし、闇に呑まれて全てを否定してはいけません。
「わからない、わからないですよ私らしさなんて!
「何を、おっしゃっていますか。
「え?」
人嫌いならば、
しかし殺そうとしなかったことで確信したのです。
呪いが満ちた状態を途切れさせるためにはグリーフシードで呪いを
うまくいって良かったです。
8割呪いを吸い取ったグリーフシードを投げ捨て、
「ここからは貴女の心に従ってください。大丈夫です、
「ななかさん」
ぼやける視界には路地の片隅に立つ見慣れたシルエット。
「あのとき巻き込んでしまったことを後悔しそうでしたが、
このどうしようもない状況を、打破出来る。
だから、わたしはかこさんを!」
最後の力を振り絞ってかこさんを横に突き飛ばし、
ただの路地裏となった場所に3つの宝石が砕ける音が響きました。
ソウルジェムがあった場所まで伸びている糸の根本を見ると、
ななかさんたちはヒトだった姿になっていました。
わたしの頭にはある場所の映像が流れてきました。
ここは、中央区の電波塔?
「自動浄化システム、広げたいと思うならそこに来い。夏目かこ、
協力的であることを祈っているよ」
そう言ってカレンさんは去りました。
死んじゃった。わたしのせいで、ななかさん、あきらさん、
わたしはこれからどうすれば。
そう思っていると、わたしの中である確信が芽生えます。
倒すべき存在は、日継カレン。
いえ、復讐すべき存在。
私の肩には、ななかさんの手があったような気がしました。
やるべきことが見えました。
わたしは、いえ、“私たち”は自動浄化システムを世界に広めた後
もちろん、生きてもらいながら。
路地裏には、1人しかいないはずの魔法少女の気配が、なぜか4つあったのでした。
この日の夜になる頃には、各地で大きな動きがありました。
どれも日継カレンたちの思惑通り。
ニュースに流れたことも含めて魔法少女たちの衝撃だけには止まら
神浜市にいると化け物に襲われて殺される。
もはやウワサの域を出て、
わからない。
日継カレン、紗良シオリ、
全ての魔法少女の怒りと嫌悪の矛先は3人の魔法少女に集中してい
負の感情だけが漂う神浜市ではもっと大きな災厄が訪れそうで、
「アルちゃん、この事を記録しても意味があるのかな」
“あるんじゃないかな。何が起きたか知ってもらって、理解する。