【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-10 五十歩百歩で蓄積難題

ひなのさんが大怪我を負うという事件から1週間が経過しました。

わたしは一度、入院中のひなのさんの元を訪れていたのですが、会話はできても体は満足に動かせないという状況でした。

病院の人には秘密で治癒の魔法を使って身体中の傷や折れていた骨の大部分は治せたものの、右目だけは回復できませんでした。

というのも、爆発に巻き込まれた際、眼球が完全に潰れてしまったらしく、腐ってしまっては困るので取り除かれてしまったとのことです。

ひなのさん自身はというと治癒の魔法を使った際に笑顔を見せてくれたものの、部屋に入った瞬間、出ようとする瞬間は暗い顔をしていました。

そんな中聞いた、カレンさんたちの活動目的。

ひなのさんはシオリという魔法少女から彼女たちの活動目的を聞いていました。
その内容は、

“あいつらは、あるものを利用して魔法少女の素質を持つ少女を誕生させ、自動浄化システムが世界に広がるよう願わせるとのことだ。
でも、あるものというやつを使用すると膨大な呪いが発生するんだが、それを一般人に押し付けようと考えている”

ゴールを目指すだけなら一番の近道かもしれない。でも、一般の人たちを犠牲にしてはいけない。
考え方はかつてのマギウスのような、またはそれ以上の危険なものを感じました。

どんな方法かはわからないものの、その溢れる呪いというものの対処法を提案すれば、協力関係になれるのではないか。

とはいえ、他の問題が山のように降りかかってきたので、まずは今後どうしようか私の中で考えて、整理しないといけない。

さて、あれからカレンさんたちの目撃情報はなく、いきなり姿をくらましてしまったことに違和感を感じています。

そしてみたまさんですが、今だに調子は良くありません。

みたまさんのところへはももこさんたちが顔を出していたのですが、2日前から顔を出さなくなったとのことです。

実は3人ともに学校をお休みしている状態で、家にも帰ってきていないそうです。

実は魔法少女が失踪するという話がここ1週間の間で東西ともに出てきているのです。

中には行方不明となった魔法少女が遺体となって見つかっていて、これはもう緊急事態としかいえません。

わたしは緊急で会議を行うことにし、みんなへ声をかけた結果、ななかさんが再び参加してくれると通知がきました。

どうやらひなのさん不在の間、中央区、南凪区の様子を見て回ってくれていたようです。

わたしも見て回っていましたが、会うことはなかったです。

そして、今回の会議から静香さんたちが参加する他、明日香さんと仲良くなった魔法少女が新たに参加するとのことです

今回の会議はわたしとやちよさんだけで参加しようとしたのですが、ういがどうしても参加したいというのでういも一緒です。

でも、なんで参加したいと強く言ってきたのだろう。

3人で竜真館へ着くと中には明日香さん、ささらさん、ななかさんに見たことがない人がいました。

「こんにちは、今回もありがとうございます、明日香さん」

「いえいえ、お気になさらず。そしてこちらの方が神浜の外から来た命の恩人です!」

「もう、それはいいですって」

「確か調整を受けない状態で神浜の魔女を倒した」

「保別ピリカです。よろしくお願いします」

ピリカさんのことは事前に学校でささらさんから聞いていて、とても強い方だと伺っています。

「ななかさん、今回も参加してもらえて嬉しいです」

「いえ、今回も伝えるべきことがあったので参加したまでです」

少しして十七夜さんも到着し、会議を始める時間ギリギリに静香さんたちが到着しました。

「すみません、遅れてしまって」

「いえ、まだ始まっていないので大丈夫ですよ」

「都会のバスって、行き先が同じなのにルートが全然違うのよね」

「遠回りなのに乗っちゃったね。今度から気をつけないと」

「見慣れない顔が多いが、君たちが環くんと仲が良くなったという」

「あ、自己紹介が遅れました。わたしは時女静香です。この子が土岐すなお、そしてその隣の子が広江ちはる。私たちは時女一族として日の本の為に活動しているのですが、皆さんも同じですかね」

「そこまで大きな目的では動いていないが。わたしは和泉十七夜だ。神浜の東を預かっている魔法少女だ。よろしく頼む」

「はい、よろしくお願いします」

静香さんは少し十七夜さんの圧に押されている様子でした。その後もピリカさんの自己紹介も終わり、魔法少女が失踪するという現状について話を展開していきました。

「東ではマギウスの残党を中心に行方不明となっているらしく、最近遺体で見つかった魔法少女も東出身だ」

「そう、でしたか」

「ななかさん?」

「そういえばももこさんたちも行方不明になっているよね」

「八雲によれば、日継カレンと接触しようと企てていたらしい。もしかしたら、彼女たちと関わったのが原因かもしれん」

「日継カレンって、私たちと会った人だよね」

「会っただと、それはどこでだ」

「い、一週間くらい前の調整屋さん前でです!悪意を感じなかったので悪い人だとは思わなかったです」

「悪意だと?」

十七夜さんへちはるちゃんの能力について説明し、その結果についても説明したのですが、あまり納得してもらえませんでした。

「こうなった手前、お話ししづらいのですが単刀直入にいうと、遺体となって見つかった魔法少女を殺したのはわたしです」

「え!」

「理由はあります。彼女は黒いオーラを纏った状態で、何度もドッペルを出し続けながら襲いかかってきました。あのままでは見滝原の方達も危険だったので止む追えず手にかけてしまいました」

「見滝原、巴さんたちかしら」

「5人揃っていましたね。他にも元マギウスの方達もいて、足止めのしようもありませんでした」

「状況は理解した。だが、命を奪う以外に方法はなかったのか」

「気絶とかはしなかったのかな」

「気絶は愚か、危険を察知して逃げることもありませんでした。明らかに目の前の生きるもの全てを殺す勢いでした」

ドッペルを出し続けて襲いかかってくるというのが不思議でなりませんでした。

ドッペルを出し続けるということは、浄化されずに呪いが溜まり続けていることになるので。

「ドッペルってなんだっけ」

「ほら、涼子さんが言っていた魔法少女から出てくるお化けのことじゃない?」

「そういえばそんなことも言っていたわね」

「ドッペルについて知っていたのね、静香さんたち」

「いえ、詳しくは知りませんが」

「…時女くんたちは魔法少女の宿命と言うとピンとくるものがあるか」

「魔法少女は、魔女になるということでしょうか」

「ならば話は早い。魔女となる代わりに出るのがドッペルだ。出す場所を間違わなければ害はない」

「それが、神浜市限定で起こる現象ですか」

「ピリカさんも大丈夫かしら」

「はい、魔女になるってことはすでに知っているので」

魔法少女の宿命を知っている人ばかりが神浜に集まっている。もしかして、キュゥべえって魔法少女の宿命を知っている子限定で声をかけて回っているってことかな。考え過ぎかな。

「話を戻しますが、黒いオーラを纏った魔法少女について里見さんたちは何か知っているでしょうか」

「灯花ちゃんたちは知らないと思います。カレンさんたちのこともあって、お姉ちゃんから外出を控えるように言われてそれを守ってますので

「では、彼女たちのせいで起きていないと、確信を持っていえますか、環さん」

「言えます。灯花ちゃんたちはそんなことしません」

「しかしミラーズでの実験の件もある。そこまで言い張るというのであれば定期報告が欲しいくらいだ。何をやっているのかわかったものではない」

「ならわたしが灯花ちゃん、ねむちゃんと会って何をしていたか報告します!」

「じゃあうい、お願いできるかな」

「うん!」

その後再びななかさんからの報告が続き、ドッペルを出し続ける魔法少女にあった際の対処法についての話になりました。

「気絶しない、ソウルジェムを離してもソウルジェム自体からドッペルが出続ける可能性がある。そして逃げもしない。
ソウルジェムを壊す以外の手段がないわけね」

「これは誰かの仕業なのか、それともドッペルを出し続けた副作用なのかが判断できないのも現状です。そういった意味も込めて知っているのか聞きたかったのですが、どうやら知らないようですね」

「はい、そうみたいです」

「じゃあ、その黒いオーラを纏った魔法少女は殺すしか救いがないってことですか」

「今のところは、です」

再び対処方法がわからない問題が発生してしまいました。ドッペルが出るあたり、自動浄化システムは機能しているようですが、ドッペルが出た後に浄化されないというのが問題でした。

「グリーフシードを使ってみたらどうでしょう」

「やる価値はあるかと思いますが、ドッペルが出続けるという現象を考えると望み薄ではないかと思います」

「やる価値はあるな。動きを止め、グリーフシードを使ってみるよう対処することにしないか」

「やるとしても、複数人いる状態で試してください。もし無理であれば、その場から逃げるようにしましょう」

「実は野放しにするのはあまりよろしくないと思います」

「え?」

「一般人も襲うのです。彼女たちは」

「そんな」

「身を守る為にその場を去っても、被害が拡大するだけということか」

「それじゃあ、もう」

だめ、このままじゃ魔女になってしまう魔法少女の宿命と変わらない。

でも、どうしたらいいのかもわからない。

「幸い、目撃情報は私たちが接触した以外は聞きません。同じ事態が広まる前に、里見さんたちに対処法を見出してもらうしかないですね」

「わかりました。伝えておきます」

他の行方不明の魔法少女については最悪な結果を考えつつ捜索を続けることとなりました。

今回話し合うべきことは全て終わり、解散しようかというところで十七夜さんが切り出しました。

「実は気になっていたのだが、保別くん、もしかすると魔力を検知できないようにしていないか」

「え?」

「確かに魔力は検知できないけど。十七夜、何を考えているの」

最近神浜へ騒ぎを持ち込んでくる魔法少女が皆揃って魔力を検知できないようにしているのでな、まさかとは思うが、奴らと繋がっているのか」

「十七夜さん、落ち着いてください!」

十七夜さんはピリカさんへ迫りながら魔法少女の姿となりました。

「十七夜!」

「すまんが君の心、読ませてもらう」

「い、いや…」

「十七夜さん!」

十七夜さんの右目が光ったかと思うと、眩い光が竜真館を包みました。

潰れそうな目に視界が戻っていくと、十七夜さんはその場に倒れ込んでいました。

「十七夜、どうしたのよ」

「どういうことだ、いきなり頭に大量の情報量が流れ込んできたぞ」

苦しそうな十七夜さんの対面にいるピリカさんはもっとひどい状況でした。

「ピリカさん!しっかりしてください!」

ピリカさんは耳と目から血を出していて、意識がありませんでした。

「ど、どうすればいいんだろう」

「十七夜さん、これはどういうことですか。ピリカさんへ何をしたんですか」

「心を、覗こうとしただけだ。他に何をしようともしていない」

「それだけでこんな状態になりますか!」

「時女さんたち、手を貸してください。調整屋へと運びます」

「わかりました」

ピリカさんは静香さんたちに運ばれて行きました。ななかさんもその場を後にしようとしますが、こちらへ向き直しました。

「彼女を疑う気持ちはお察しします。しかし、ことを急ぐと足元を掬われるだけです。混沌の魔法少女で、痛感しているはずです。気をつけてください」

そういうと、ななかさんは去って行きました。

「混沌の魔法少女って」

いろはが神浜に来る前から神浜で騒ぎを起こしていた魔法少女よ。私たちは翻弄されて、最終的には真実を話すことなく自決してしまったわ」

「わたしは失礼する」

「十七夜さん」

「外から来た魔法少女へ不信感を覚えさせてしまって、すまなかったな」

魔法少女姿を解き、去っていく十七夜さんへ何も声をかけることができませんでした。

きっとどんな言葉をかけても、迷惑になるだけだろうから。

「えっと、このまま灯花ちゃんたちのところに行きましょうか」

「そうね」

私たちは明日香さんたちへ声をかけた後、灯花ちゃんたちの元へと向かいました。

ドッペルが出続けるという現象

これが自動浄化システムの不具合だとしたら、私たちはこのシステムに頼れなくなってしまいます。

そんな希望をなくす結果には、したくない。

 

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