罰の園 1-3 昼夜

この学校の屋上には一度行ったことがある。

しかしあの時の場所とは離れていて、屋上菜園がある場所のさらに隣に離れた屋上がある。
三分割された学校、そういう仕組みらしい。三分割されたうちの真ん中がこの菜園状態になっている屋上。

次の目的地は屋上の端にある床板を外さないといけない。

その前に食料の件を解決しておくか。

 

屋上には4エリアほどレンガで囲われた畑があり、屋上中央には鳥が飛び立つ様子を表したようなオブジェクトがあった。

そのオブジェクトには屋根がついていて、その足元には広げられた扇一つと花が置いてあった。

畑の一つにはタクヤが屈んでいた。
タクヤに近づくと向こうから気づいて不貞腐れた顔でこっちを見てきた。

「遅いぞ。全部俺が掘るのかと思ったよ」

「それでもいいけど」

「ふざけんな、お前も掘れ!」

タクヤがいる場所は既に芋がいくつか掘り出されており、私は二つ奥の葉が枯れた場所を掘ることにした。

黙々と掘っていると芋が数珠繋ぎに出てきた。芋は薄茶色で丸めの形で、芽が少なかった。そして驚いたのは畑に深さがあることだった。

私は収穫を続けるタクヤへ話しかけた。

「この区画全部取るの?」

「ん、いや、葉が青いのは置いとく」

「そう・・・」

私は屋上中央にあるオブジェクトを見ながら呟いた。

「あれはなんなの」

「あん?」

タクヤは私の目線先にあるオブジェクトを見てあれかって顔をしながら教えてくれた。

「あれはウズメ様の祭壇だよ」

「ウズメ様?」

「おいおい、ウズメ様知らないってどんな田舎にいたんだよ。
ウズメ様はこの世界の神様で、この世界の安寧をもたらしてくれていたんだ。
でもある日から消えちまって、入れ替わるようにその辺へ化物が出てきたんだ」

「神様がこの世界から消えたのに、あのオブジェクトが残ってるのはなんで?」

「それは俺もしらね。

大人たちがいつか戻ってくるからって言いながらあのオブジェクトに供物してるんだ。
ただでさえ食料が少ないのに、大人の考えがわからないよ。

お前だってそう思うだろ?」

この世界には神様がいない。

それが事実なのかはわからない。

もし神様がいなくても、この世界があり続けているならば神様がいなくても世界というものは存在できるということになる。

安寧をもたらしてたっていうけど、本当にそうなのだろうか。

私はオブジェクトを見ながらそう考えていた。

「そうだね、よくわからないね」

「そう思うよな!

あーあ、神様どうこう言う前にやることあるよなー」

大人達が神様へ固執する気持ちは何故かわかる。

きっとどうしようもないから縋りたいのだろう。

何故こんな考えが出てくるのかは、私にも理屈では説明できなかった。

そう思えてしまうのだ。

「んじゃ、俺下に運ぶからついてこいよ」

そう言ってタクヤは収穫した芋の一部を持って下へ降りて行った。

私は隙ができたと思い、屋上の端のタイルを調べることにした。

4角全てを調べたが、どこも剥がれる様子がなかった。

映し出された光景と話が違う。

周囲を見渡すと、壊れて破れた柵の先にあるまだ踏み入れたことがない屋上の端のタイルが浮いているのを目撃した。

あっちか。

そう思った頃に後ろからタクヤに呼ばれた。

「来いって言ったろ!そこの収穫した芋をかごごと持ってこいよ!」

仕方がなく私は収穫物を下に持っていくことにした。

また隙をついて屋上に行くか。

収穫物を届けた後、報酬として私には小皿に入ったポテトサラダが渡された。
見た目は黄色一色だが暖かく、バターを混ぜてほぐされている。

「こんな報酬で悪いね。

夕飯の時間になったらちゃんと葉物も出すから」

厨房にいるタケヤの母親にそう言われた。

食べようかという気持ちになったら、食べるための道具がないことに気が付いた。スプーンがないか聞こうか。

・・・

まあいいやと思い私は素手で食べた。別に火傷をすることはなかったし。
手づかみで食べることに抵抗はなかった。食べるための道具を使用したほうがいいという思いはあったけど。

私はポテトサラダを食べた後、食器を洗って乾かす場所であろう網のところへ立てかけた。

そういえば、この世界に昼夜の概念はあるのだろうか。ここにきてずっと外の様子は昼のまま。

気になり、紫髪の女へこの世界に昼夜の概念があるか聞いた。

「一応ありますが、あなたの場合はベッドを仲介する必要があります」

「え、なんで、自然経過とか」

「それは、どうでしょうね。根気よく待ってみても良いかもしれませんよ」

「なにそれ」

私は視界に入った時計を見た。

時計の針は9時を指していた。外は明るい。
今まで過ごしてきた時間はそれなりにあったが、それでも9時?

…この世界は普通ではないようだ。

「ベッドで寝れば昼夜を変えられるでいいのよね」

「そうですよ」

何か行き詰まったら昼夜を変えることも選択肢に入れておこう。

私は再度屋上へ行った。

隣の屋上の端が怪しいので、行く方法を探すことにした。

屋上を囲っている網に破れている部分があるため、そこへ橋になるものをかければ移動できそうだ。

橋になりそうなものを周囲で探したが、すぐに手に取れるものでそれっぽいものは見当たらなかった。

そんな中、屋上にあるオブジェクトの裏側にちょうど良い長さのトタン板があった。しかしくたびれて見える。

その近くのオブジェクトを囲む壁の木板が外れかけていて、それも橋としてちょうどよさそうだ。

私はすぐに持ち出せそうなトタン板へ手を伸ばすと私の頭の中に光景が広がった。

そこにはトタン板を橋がわりに使用して渡ろうとする私が第三者視点で見えた。

橋の真ん中ぐらいまで進むとトタン板はバキッという音を立てて折れ、私は地面まで落下し、地面へ叩きつけられて即死した。

現実の光景へ戻ってくると何を見せられたのかはすぐに把握した。そして思わずため息が出た。

私はこんな2択も外すのか。

私は呆れを力に変えるように外れかけの木板を思いっきり剥がした。

こんなオブジェクトにはなにも思うことはないため躊躇もなかった。
木板は少し重く、橋として架けるには苦労した。

途中で折れないか恐る恐る渡った。

木板は途中で折れることなく、隣の屋上へ移動することができた。

屋上にある階段へ繋がるであろう扉には鍵がかけられていた。下へ降りるには予定通り端のタイルを外していくしかないようだ。

目的の端にある外れかけのタイルを除けると、誰かが意図的に開けたような穴があり、躊躇わず私はそこを降りた。

降りた先は廊下で、足元には化物の足跡がついていた。そして廊下の先から声が聞こえた。

「ダレカイル、ダレガイル」

声は人間に似ているが、どこか声帯を頑張って再現しているかのような人外の片言の雰囲気に似ていた。

どこかに隠れようとしたが、隠れ場所はなく、開かない屋上へ繋がる扉まで下がるしかなかった。

化物の足音は近づいてきて、ついに化物が視界に入ってしまった。

「ヨコセ!」

そう言って化物は私の頭を強く掴んだ。

頭を潰される時の痛さ。

頭痛のような内部での激しい痛さとは違い、外から加わる圧力で、神経がどうしようもないのに痛い痛いと警告を脳内へ伝えてくる。

なかなか死なせてもらえず、私はこの世界に来て初めて肉体的な苦痛を味わっている。
苦痛から逃れるために私は頭をつぶそうとする化物の腕をはがそうと掴んで力を入れても、びくともしなかった。

「カタイナ…」

そう聞こえた後、私は階段に叩きつけられるところまでは覚えていた。

 

私は紫髪の女の前で立っていた。

私は思わず頭を触って頭蓋骨が砕けていないか確認した。

私は再び死んでしまったようだ。

屋上へ行くと隣の屋上へ板が渡されていなかった。しかし屋上で芋が回収された後ではあるようだ。

状況をおおよそ把握し、再度オブジェクト付近から木板を回収して隣の屋上まで再度移動した。

今度は化物が出てきた方向へ駆け抜けてみるか。

下へ降りて急いでその階にある部屋へ向かった。手前の部屋には化物がいると思い、一つ奥の部屋へ入った。

しかしそこには化物が二匹いて、こちらを向いてすぐ首を掴まれた。

その後は首をぽっきり折られ、再度紫髪の女の前にいた。

きっと今の状態で向かってもすぐに化物に見つかってしまうだろう。

状況を変える方法としては、昼夜の変更だろうか。

私は視界に入ったタクヤの母親へ寝ることができる場所はどこか尋ねた。

芋を運び込んだ部屋、そこは調理室と呼ばれているようで、そこを出て右へ進んだ先にある左右にベッドが並べられている部屋がある。廊下を向いて左側にある教室内に空いているベッドがあるからそこを使うといいと伝えられた。

その教室内は廊下で見かけなかった老人や赤子を抱えている女性がいたりした。

各ベッドの上や周りには私物が転がっていて、ベッドしかない窓際にある一箇所がよく目立った。

私はそこへ横になった。

 

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罰の園 1-2 乖離

階段で1階まで降りると窓があった場所はスクラップで防がれていて、左右に伸びる廊下は階段を降りて踊り場ほどのスペースしかないようにバリケードで防がれていた。

さて、どっちのバリケードを超える必要があるか。見た光景では方向がなく、バリケードの先ということしかわからない。

廊下の様子についての情報もなかったし、2択になってしまった。

どっちが正しいのか悩んでいると、なぜか左という気持ちになった。

右に行くと、何かに押しつぶされると思った。

なぜかはわからない。

左右のバリケードは上部分に少し隙間があり、私の体であれば通り抜けられる。

右側の隙間から見えるバリケードの先の天井を見ても、何も仕掛けられていないただの天井だった。

左側も同じだ。

「勘を頼るか」

私は左側のバリケードを乗り越えることにした。バリケードをよじ登り、上の隙間を通り抜けてバリケードの反対側へ辿り着いた。

その後は何も起こらなかった。

バリケードの反対側は長い間使用されていないのか、床は綺麗にホコリを被っていた。

窓には板が打ち付けられていて、その隙間から光が差し込むくらいしか光源がなく、奥が見えなかった。

明かりがないと進むには危険だ。

「どうしようかな」

いっその事板を剥がしてみようか。

そう思って、手軽に剥がせそうな板を一枚剥がした。

板を剥がすと光は差し込んだが、窓の先にいた化物と目が合ってしまった。

あ…。

そう思った頃には化物が窓を割って入ってきた。

私にはその時に飛び散ったガラスが刺さり、その後は頭を掴まれて床に叩きつけられた。

気がつくと紫髪の女が目の前にいる状況に戻っていた。
なんとなく何が起きたかわかった。

私は紫髪の女に聞いた。

「今はどこまで進んだ状況?」

この問いには紫髪の女の隣にいる短髪の男の子?が答えた。

「下の階のバリケードを越えられていないところだよ」

「そう…」

私は死んだらここに戻っていたようだ。

バリケード前の見覚えがある光景は、このせいだったか。

 

バリケードを越えたところまで戻ってきた。

外に化物がいるのはわかったから、室内の光源を頼るしかない。

廊下を見上げると蛍光灯はあるものの、それをつけるためのスイッチは視界に見当たらなかった。

廊下も頼ることができなかった。

左側には部屋があり、少しだけ板から漏れる光で室内を覗くことができた。

引き戸を開けると、何かが入った箱はあるものの、ぱっと見で光源になりそうなものは見当たらなかった。

もう燃やすでもいいから光源が欲しい。

箱の中を漁ることにした。

紙とは少し違った材質で、釘の跡もないのに正方形を保っている箱の蓋を開けると、そこには布しか入っていなかった。

火口には使えるだろうか。

次に見つけた箱を開けると、どんぐりより一回り小さいガラス製品とコイルのような金属部品が入っていた。

ジャンク品と呼べるものだろう。その中に蛍光灯のような明るく光るようなものはなかった。

さらにもう一個の箱は、ガムテープで蓋が塞がっていた。

爪で剥がそうとしても全く剥がれる様子がなかった。

…さっきのジャンクで切れるものあるかな。

比較的鋭利なジャンクを見つけ、持つ部分には見つけた布を巻き、蓋の溝に沿って切れ目を入れていった。

まるで缶切りで缶を開けるようにいちいち力を入れないと溝に沿った切り口をつけられなかった。

そんな厳重に閉じられた蓋がやっと取れ、中には棒のように細長い長方形の物体が入っていた。

その長方形は先端部分を見ると軸のようなものがあり、回転させるギミックがあるようだ。

回してみると、外装の長方形部分の一部が動き、軸の発光している部分が顕になった。軸は発色に発光していて、周りがよく見える。

すごい魔法道具みたい。

・・・魔法?

ふとこの世界にはない概念の話が頭によぎったことを不思議に思った。

何はともあれ光源が見つかったので暗い部分も歩ける。

箱の中にまだ何本か合ったが、手に取った1本だけを持っていくことにした。

廊下へ戻って再度目標を整理した。

青い光を探すために、この階にあるはずのボールがたくさんある部屋を見つける必要がある。

ボールがたくさんある部屋にピンと来なかったので、とりあえず各部屋を探すことにした。

ボールがたくさんある部屋にはどのような役割があったのだろう。

ボールには浮かばせて道の妨害に使ったり、相手にぶつけたりということくらいしか思いつかないけど。

そう考えていると黄色い球が目の前に現れて光ったかと思うと何かの光景が脳内に映し出された。

その光景の中には2グループに分かれた人々が礼をしたあと、笛を合図に中央に置かれた茶色のボールを取り合った。

ボールは持って運ぶのではなくいちいち地面にバウンドしながら敵陣地へ切り込んでいき、敵陣地奥の高いところにある網へ茶色のボールを投げ込んだ。

そこへ入っただけで周囲は熱狂している様子だった。

「なんだこれ…何かの模擬戦?」

「これはスポーツだよ」

「え、誰だ」

「君はこの世界の考えには疎いから、私があなたにこの世界の知識を補足してあげる。

この世界にあるスポーツというのは、戦争に使うのではなく、戦争とは縁遠い国で行われる娯楽だよ。

元ネタは戦争が元になっているけど、相手を殺さない争い事として考えだされたのがスポーツだよ」

「戦争する理由をなくなっても争いにこだわるとは」

「…そのスポーツにボールが使われることが多いから、体育館というワードの近くにある部屋を探した方が良いよ」

「ねえ、あなた明るいんだから光源代わりになってよ」

「ダメだよ、この世界にあるもので解決していかないと。
それに私の役割は導きだし。じゃあ頑張ってね」

景色は暗い廊下に戻っていた。

なんなの、私何かに試されてるの?
あの光り、導きという癖に目的地を明確に示さないし。

それにしても、自分の考え方がこの世界と一致しない。

私はもともとこの世界にいなかったということ?だとするとどこからどうやってこの世界に来たのだろう。

そう考えていると、どこからか化物と思われる雄叫びが聞こえた。

…考えことは安全な場所ですべきだ。まずは体育館の目印を探そう。

部屋ではなく今度は体育館の場所を示す看板を探すことにした。

廊下を歩いていると、左右に引き戸になってる大きな扉がある場所が終点となっていた。その扉の上には体育館とはっきり書かれていた。

体育館の入り口と思われる扉には鉄板が打ち付けられていて中へ入ることはできない。扉の隙間からは血が滲み出ていて、扉の向こう側で何が起こったのか想像できてしまう。

匂いは…嗅ぐ気にはなれなかった。

ずっと埃に塗れた空間にいるし、あまりこの辺の空気は長く吸いたくない。無意識に息も浅くなってしまう。長時間いると酸欠になってしまいそうだ。

この付近に目的の部屋があるはず。

体育館に向かって左側の部屋につながるドアを開けると、ボールが沢山あった。

「ここかな」

そんなに広くない部屋で、一番奥にあるボール入れの中から青色の光が淡く見えた。

光に至るためにはボールが邪魔だったのでいくつか外に出し、やっと青い光を見つけた。

青い光は自由になると浮き上がり、私の中へ入ってきた。

その後、再び私の中にこの世界ではない光景が映った。

====

前に見た光景で出ていた人物が玉座に座る存在へ話しかけていた。

「・・・様、クゥドルが落ちました。

ゴンドワがこちら側についてくれたことによる勝利と言えるでしょう」

「そのような戦果報告は魔王へ伝えるだけで十分なはずだ。何か気になることでも?」

「…ゴンドワはクゥドルの中にいたまま魔族となり、我らへ貢献しました。

クゥドルは黒魔法の素質を検知次第直ちに追い出すという白魔法主義が行き過ぎた都市。
そんな場所に魔物が入り込めばすぐに追い出されるはず。

しかしゴンドワはクゥドルの城内で暴れるまでは黒魔法の検知が一切されなかったと言います。

…様、ゴンドワと接触しましたね?」

「なんだい、私が外を出歩こうが自由じゃないか」

「やはりですか。魔力の隠蔽はあなたの得意技ですものね。神格であるあなたはここにいてもらわなければ皆が心配します」

「ここに座っているだけではつまらないんだよ。ここにいたところで皆に何かできるわけでもないのに。

それなら外へ出て自ら強そうな奴を堕とすほうが楽しいに決まっているじゃないか」

「人間達に見つかった時のことも考えて行動してください」

「生じた混乱は魔王の方に処理してもらうさ」

「まったく、魔王 デルトロク様に怒られても知りませんよ」

「ふんっ、リースウェルに変わってこの世界の神となるためにも下界の出来事を見聞きすることは重要なんだ。

下界からの報告を聞くだけならリースウェルと変わらん。聞くだけで何がわかるというんだ」

「それはごもっともですが」

「今に見ていなさい、私がリースウェルを討ったあとは神あり方も変えてやるから」

私は何を見せられてるんだ。

分からない地名、分からない人名。

何も分からないこの光景を見せて私に何をさせたいんだ。

「この光景は回想の主人公にとって大事な行動理念が映し出された一幕だよ」

声の方向には黄色い光が浮いていた。

「導きの光か。回想の主人公にとって大事だったとして、それが私に見せられているのはなぜなの。私があれになれとでも言いたいの?」

「さあ。すべての光がそろえばわかるかもね」

====

回想はここで終わった。

この回想の主人公・・・まさか私なの?

いや、だとしたらなぜその頃の記憶を何も思い出せないの。

そう考えていると黄色の球が体から出てきて、目の前で光ったかと思うとどこかの光景が映し出された。

屋上の端っこにある床板を外した先。

化物も歩くくらい通路を進んで行った先にモニターがたくさんある部屋がある。

次の目標はそこのようだ。

黄色い光が体に引っ込んだ後、灯りをつけながら来た道を戻った。最初は埃しかなかった道には私の足跡がついていた。他に足跡はなく、化物が知らないうちに入り込んだというのもなさそうだ。

バリケードの反対側へ戻った時だった。

「お前、何やってんだ」

階段の上には腕を組んだタケヤがいた。

出てはいけないとこへ出ていってしまったことが知られてしまった。目的を話すわけにはいかないし、変に大人達へ知らされても困る。

答えに困っていると、右手に持っていたライトをタケヤへ見せた。

「灯りを、探していたの。バリケードの先にあったよ」

タケヤは階段を降りてきて、私が持っていたライトを奪った。

タケヤはライトを回すと蓋がされて消灯する仕組みに驚きながらも、見つけてきたライトを珍しそうに見回していた。

「これ、まだあったか?」

急に聞いてきたので私は無意識にうなづいてしまった。

そう言うとタケヤはニヤリと笑って奪ったライトを返してきた。

「俺にいい考えがある。

任せろって、チクるわけじゃないから」

そう言ってタケヤが上に戻った後、武器を持った大人2人と一緒に降りてきた。

「全く、タケヤと同じワンパクだったとはな」

1人の大人がこっちをみながらそう呟き、タケヤと一緒にバリケードの向こう側へと移動していった。

そのあとは私の持っているライトと同じものが10本程度、そして電子部品と呼ばれるものとボトルに入った数本の水が見つかったという。

「バリケードの向こう側へ勝手に行ったのはいただけないが、これは嬢ちゃんの手柄だな。助かったぜ」

見つかった物資に群がる男の1人がそう言った。

タケヤが近づいてきて私に話しかけた。

「外の探検に興味があるならそう言ってくれよ!一緒にやろうぜ!

タケヤの後ろに1人の女性が立ち、軽くタケヤの頭にゲンコツを入れた。

「何言ってるんだい。あんたの悪ふざけに別の子を巻き込むんじゃないよ」

「母ちゃん、友達できたんだからいいじゃん」

「やっていいことと悪いことがあるって言ってんの」

どうやらあの女性はタケヤの母親っぽい。

私は親というのを知らないけど、いたらあのようなやりとりもあったのだろうか。

2人の話を聞いていると、私の腹の虫が鳴いた。この世界で初めて空腹を感じた瞬間だった。

「なんだい、腹が減ってるのかい。

悪いけど今は食料の在庫が乏しいんだ、2人で上の畑で芋を回収してきてくれないか」

「え〜なんで俺も」

「取らないと今日の夜は飯抜きだよ」

「そりゃないよ」

そう言いながらタケヤは上に続く階段を登っていった。

私はタケヤの母親へ食料事情を聞いた。

「食料が足りないって話、本当?」

「ん?残念ながら本当の話さ。

節約してきた非常食はほとんどなくなって、屋上菜園が頼みの綱になっている状況さ。

外と連絡が取れないと、冬を越せる気がしないね」

外との連絡

この世界でここ以外に住んでいる人間はいるのだろうか。この世界で暮らすしかなくなるなら、少しは気にしたほうがいいかもしれない。

そう考えながら私は紫髪の女性のところへ向かっていた。

「どうしたの、探し物で困ったことがあった?」

紫髪の女性の隣にいる少年?が話しかけてきた。

「いや、あなた達に話しかけたほうがいいと思っただけ」

「そう。その考えは正しいから、探し物が見つかるたびに話しかけにきたほうがいいよ」

「わかった」

そうしないと死んだ時に困る、そんな気がした。

さて…

私は屋上へ向かった。

 

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【自作小説】罰の園(R-18G)

「私は何者に生み出された?何のために存在している?」

 

かつて神がいた世界。
その世界では原因不明の現象で神が消え、代わりに異世界の化物が世界を蹂躙する終末世界となっていた。

そんな世界で目を覚ました、自分が何者なのかが分からない少女。

その少女は各種の光の玉を集めることで、自分の謎を知ることになる。

 

この作品にはグロ要素、そして一部の話では性的表現が出てくるR-18Gな作品となっています。
該当する話の横には「グロ注意」や「R-18」といった表記はしますが、全体的に未成年には不向きな内容となっているため閲覧は十分にご注意ください。

 

 

1-1 遭遇

1-2 乖離

1-3 昼夜

1-4 惨状 ※グロ注意

 

 

罰の園 1-1 遭遇

グチャリ

カチッ ピッチュチュクリ

消えようとする意識の中でかろうじて聞こえてしまった謎の音。
その正体は第三者視点でしか確かめようはないが、きっと何かを貪る音なのだろうというのは、生前直前に起きた様子から想像は出来た。

私の直前の死因は、化物に頭がい骨を砕かれたからだ。

 

突然の出来事だった。

逃げ場もない部屋に、いきなりあんなものが入ってくるなんて…

 

 

薄暗い部屋

ここは少し埃っぽく、日の光はほとんど入ってこない場所のようだ。

私はこの部屋で目覚めた時、少々汚れたベッドに寝ていた。

ここはどこなのだろう

なぜこんな場所で寝ているのか、私にはわからなかった。

でもこの部屋でこれから起こるであろうことはなぜか察していた。

体を起こすとしっかりと手足はあり、自らの意思で動かせる体であることを確認した。
無意識に頭を触り、頭がい骨が割られて既に脳みそが見えてしまっているような状態ではないかを確認してしまった。

しっかり頭がい骨は脳みそを保護している。髪の上からしっかり確認できた。

夢…だったのか?

既に靴を履いている足を床に下ろし、ベッドに座る形でドアの方を見た。

ミシッ

この部屋で聞こえた環境音。

外では何か重々しい人ではない足音が聞こえた。

隠れなきゃ

私はその場で立ち上がり、周囲を見渡すと隠れられそうな場所は二箇所あった。

「ロッカー」と「ベッドの下」

私はベッドの下へ隠れた。

なるべく壁側まで体を寄せようとモゾモゾしていると、それは器用にドアノブの扉を開いて入ってきた。

足の形状は見ることはでき、爬虫類のように鱗状で爪は鋭い。そして二足歩行。

そんな化物はロッカーを乱暴に開けた。

その瞬間に私の脳内には、ロッカーに逃げてしまった場合の結末が再生された。

化物はトカゲのような顔をしていて、私の首へ掴み掛かる。

その後私を持ち上げてもう片方の手で頭をつかみ、人外な腕力で頭がい骨を割られてしまった。

なんてなっていたんだろうな。

化物は力強くロッカーを閉じ、ゆっくりと部屋を出ていった。

物音がしなくなるまで私はベットの下にいて、周囲が静寂した頃にベッドの下から出た。

「あれはなんなの」

私は部屋を出て廊下と思われる場所に出た。

廊下は窓が並べられており、ところどころのガラスが割れて床にガラス片が散らばっていた。

それとともに赤黒い液体だった跡も床には残っていた。

窓の外には明るいにもかかわらず、暗い雰囲気の光景が広がっていた。

見える町からは煙が数本伸びており、中には崩れた家も見えた。屋根の上にはさっきの化物みたいなやつが登っている場所もあった。

どうすればいいんだろう

そんな考えは浮かばず、私は何かに吸い寄せられるように廊下を歩いていった。

すぐに見えた階段をどんどん登っていき、あの化物にも出会うことなく屋上へ出ることができた。

屋上は風がなく、誰もいなかったが広い空間に白く光る球が浮いていた。

一体何なのかと近づくと、白く光る球の方から私に近づいてきた。

近づいてきたと気づいた頃には白く光る球は私の体に吸い込まれていた。

脳内にはいきなりどこかの光景が浮かび上がった。

今登ってきた階段を2階まで降り、右側へ進んでいくとバリケードがある。その隣の部屋には広い空間があって人がそれなりにいた。

ここまで見えて脳内の光景は消えてしまった。

「行くあてもないし、そこまで行ってみるか」

次は見えた光景の場所まで行くべきだ。私の頭はすっとそうすべきだと理解していた。それに疑問を抱くことはなかった。

私は2階まで階段を降りた。

道中であの化物を見ることはなかった。しかし襲われたあとであろう血痕や肉片が落ちていた。

そんなものを顧みずにバリケードの前までたどり着いた。

バリケードは何者かに引っ搔き回された跡があったものの、奥から鉄板を何重も重ね合わせているのか、奥は見えなかった。

バリケードの奥からは人の声が聞こえた。何か情報を手に入れたいけど。

「ここからどうしようか」

「あれ?誰かいるのか?」

右の部屋からそう聞こえた。

そこには同じ背丈ほどの男の子がいた。

左手には包帯が巻かれていて、額右側には大きめの絆創膏が貼られている。しかし服はそこまでボロボロではなく、整えられたTシャツを着ていて短パンを履いている。

「もしかして街から逃げてきたのか!」

「いや、気づいたらこの建物にいた」

「え?そんなことあるか?

まあいいや、外部の人間なんて久々だよ!」

喜んでいる男の子に対してバリケードの奥から低い男の声が聞こえてきた。

「タクヤ、外で騒ぐな!

あいつらが寄ってくるから中入れ!」

「わかったよ!

ほら、お前も来いよ」

そう言ってタクヤは私の手を引いて部屋の中へ連れて行った。

部屋の中にある本棚は引き摺った跡があり、タクヤはその本棚を横にずらし始めた。

本棚の後ろには人が通れるほどの穴が空いていた。

「ここを通っていくんだ」

そう言ってタクヤは穴の奥へ入って行った。

私もそのあとを追ってバリケードの奥へ入ることができた。

バリケード側の壁にはハンドルがあり、それをタクヤが回すと、本棚は元の位置へ戻って穴を塞いだ。

そうしている間に1人の見たことがないものを持った男が近づいてきた。持っている者は剣よりは長く槍よりは短い。
しかし先は鋭くなく、なぜか細い筒が付いている。よく見ると引き金が付いている。この世界特有の武器なのだろうか。
そう考えていると男がタクヤへ話しかけていた。

「タクヤ、生存者がいたのか!」

「そうなんだけどさ、こいつ気づいたらこの学校にいただってさ」

「そうか…」

男は私の目線へ合わせるようにしゃがんで話しかけてきた。

「ここへ辿り着くまで辛い思いをしただろう。

思い起こさなくていい、今はここで落ち着いて行ってほしい。

私たちは君を歓迎するよ」

「はい…」

「俺がここ案内してやるよ!

お前、名前は?」

名前

そう聞かれて思い当たる単語は思い浮かばなかった。

まず自分が何者であるのかも知らない。

私は思わず尋ねてしまった。

「ナマエって、なに?」

「は?普通父ちゃん母ちゃんにつけてもらうだろ」

「そうなの?全然思い当たらない」

「んじゃなんて呼べばいいんだよ」

「さっき『お前』って言ってたでしょ?そうやって呼びやすい言い方でいいよ」

「ええ…いいならそうするぞ」

そう言ってタクヤは階段を登って行ってしまった。
近くにいた男は、再びバリケード近くの監視に戻ったようだ。

バリケードの内側を見渡すと人がそれなりにいた。

上下階段近くで座って俯いている老人

廊下で立ち話する女性2人

近くの部屋で食料を管理している男3人

そして周りと雰囲気が違う2人

ここに来たところで私はどうしたら良いかわからない。屋上にあった白く光る球に導かれるようにここへ来た。

そんな中で私は周りと雰囲気が違う2人へ近づいて行った。

紫髪の女の前で、私には白く光る球と似た何かを感じた。

女の隣で男の子?と思われる人物が紫髪の女の袖を引っ張っていた。

しかし紫髪の女は特に反応を示さなかった。

何か言いたげな男の子?はこっちを困った顔で見ていた。

こんな状況、気になって仕方がない。

私は紫髪の女へ話しかけた。

「あなた、光る玉を持ってる?」

「今回は少しもたつきましたね」

そう言って紫髪の女は槍を出現させて石突を床についた。

その後、周囲の時間が止まった。

これに似たものになぜか覚えがあった。そのためあまり驚くことはなかった。しかし聞かざるを得なかった。

「いったい何をしたの」

「怪しまれないよう細工をしました。

手短に話しましょう。

私はあなたが言う光の玉を持っています」

紫髪の女は袖から黄色に光る玉を取り出した。

その光の球は浮かび上がり、私の体に吸い込まれて行った。

その後、知らない光景が脳に浮かび上がった。

====

城の中にいるようで、目線の先には玉座があった。その王座には長髪の角が生えた人ではない存在が座っていた。

紫色の装飾が多い中、青白い光が部屋を照らしている。

玉座に座った存在についての情報が、脳内に流れてくる。

-私は生まれた時からここにいた。

-通常の生物学でいう成長の過程を経た記憶がなく、いつの間にかそこにいた。

-しかし生まれたての赤子と違って自分が何者かということはわかっていて、生きる目的も設定されている。

-何者かに作られ、設置された存在。

-そんな違和感に、この世界の者は誰も追及しようとしない。

「—様、いかがなさいましたか」

玉座の存在の前には、自分より背が低い青肌の男が立っていた。

あれ…なぜ今話しかけられた存在が『自分』だと認識した?

この光景が、自分の見ている、または見た光景だとなぜ思えた?

見える光景は自分の意思に関わらず進んでいく。

私はああいう高いところから指示を出すだけというのは性に合わない。周りの奴らがそうしてほしいと言うからやっているが、私は直接強い奴と会いたいのだよ」

「魔族にとってあなたは希望です。

そう簡単に前線へ出られて傷を負うものなら皆が心配してしまいます」

「人間の神でさえ玉座に座らないと言うのに。

まああいつは上から見ているだけの臆病者だからなおのこと鬱陶しいが」

「象徴という役割も大事ですよ。

強そうなものはしっかりここへ誘導差し上げますから」

「それだけでは足りないな。

しっかり黒魔法に染まって白魔法を裏切ってもらわないと。

私はそのためにいるのだから」

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この後、元の世界の光景に戻り、今いる場所を1階まで階段で降りて、バリケードの先にあるボールがたくさんある部屋に青色の光が見えた。

気がつくと紫髪の女が目の前にいる状況に戻っていた。

「なんなの、見えた情報が多すぎる」

「まずは見つけるべきと思うものを探してみては?

見た光景の続きが見えるかもしれませんよ?」

紫髪の女は何を知っている?

「あなたは何を知っているの?」

あなたが見つけるべきものをある程度見つけれたら教えてあげます

早く教えても無意味になりますし」

「なんなの…」

紫髪の女が持っている槍の石突を床につけたことで再度周囲の時間が動き始めた。

時間が動き始めたと同時に、紫髪の女は槍を隠したのか持ってはいなかった。

「時間が戻ったの?」

そうとしか思えなかったので、紫髪の女にそう聞いてしまった。

「どうでしょうね」

とりあえず動こう。
動かず時間が過ぎるだけでは朽ちる以外に未来が無い。動いて私が何者か、何をすべきなのかを見つけないと。

とりあえずあの青い光を探すことにしよう。あれを見つけることが、現状を打開する最短の存在なのだろうから。

 

 

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