罰の園 1-4 惨状 ※グロ注意

そういえば横になって、どうすれば寝たと言えるのだろう。

寝るとはどのような感覚になるのだろうか。

とりあえず寝ている者は皆揃って目を閉じていたので、私も目を閉じてみた。

その後、周囲の雰囲気が変わった。

人間の気配と呼べるものが周囲から一気に減ったため、私は急いで目を開けた。

外は暗く、星が見えていた。

そして部屋は前よりも明らかに暗い。廊下から微かに光が漏れているくらいしか光源がない。

こんな一瞬で昼夜が変わるものなのか。

全く寝るという感覚がわからなかったが、目的を果たすために屋上へ向かうことにした。

廊下は昼間と違ってほとんど人がいなかった。きっと多くの人は今は寝ているのだろう。

廊下にはいつもの2人と階段のそばに座り込む老人、そしてバリケードを守る男がいた。

バリケードを守る男は夜に歩き回る私を見つけると不審だと思い、声をかけてくるだろう。そうなっては面倒だ。

私はバリケードを守る男に気をつけて階段を登ろうとした。

そう思った時、急に頭の中へ階段を登り始めた頃にバリケードを守る男がこっちに気付き、捕まった私が部屋に戻される情景が浮かんだ。

戻された後は夜の間部屋から出してもらえず、夜の間は寝る部屋から出られなくなる。

夜の行動が不可能になり、次に進めなくなる。

ふと気づくと、頭の中の光景ではなく目の前の光景に戻ってきたようだ。
こうもいきなり空想の情景と現実の光景が切り替えられると、どっちが正しく目に映る光景なのかわからなくなる。

とはいえさっきの光景はきっと、過去に挑んだ私の末路の一部かもしれない。ああならないためにも、一度身を隠す必要がある。

咄嗟に隠れられる場所は階段近くで俯いている老人しかなかった。

バリケードを守る男から見えないよう、私は老人の陰に隠れた。

バリケードを守る男はこっちに目線を向けるが、特に気にすることなくバリケードの方に向き直った。

その間は老人から鼓動は感じられたものの、臭いはなく、動きもせず、代謝を持たない人形のように動かなかった。

私は気に留めず屋上へ登った。

屋上に灯りはなく、月から反射してくる光がかろうじて光源になっている。

板を置いただけの橋を通り、昼までは死以外の答えが見えなかった通路へ辿り着いた。

通路に気配はなく、試しに持ってきていたライトをつけてみた。
通路には乾いた血のようなものが所々にあるものの、化物の姿はなかった。

行けるか?

確か次はモニターが沢山ある部屋が目的地だ。

周囲を確認したが、この場所について地図は無いようだ。

部屋を手当たり次第に探す必要がありそうだ。

階段近くの部屋へ入るとそこは調理室以上に広く、机が多い。机の上には山積みであったであろう資料が散らばっている。

目的の部屋とは見た目が異なるため、その部屋はすぐに出た。

隣の部屋へ入ろうとしたが、鍵がかかっていて入ることができなかった。

さらに隣の部屋も鍵がかかっている。

この階で自由に入れるのは最初の部屋だけのようだった。

下の階へ降りようと思ったが、頭の中に降りたら化け物に襲われる光景がよぎったので止めることにした。

改めて各部屋がどんな名前の部屋か、入り口付近にある札を見た。

最初の部屋は職員室、隣が校長室、そのさらに隣が警備室だった。

それぞれがどんな用途で使用されていたのか、私では見当がつかなかったためまずは開かない部屋の鍵を探すことにした。

現在入ることができる職員室にあれば良いのだが。

職員室の窓はカーテンが閉められていて、布が厚いのか、月灯りは遮断されている。

そんなカーテンに触ったことでこの世界の新たな異常さに気がつかされた。

カーテンを動かせない

触ったら布の感触はするものの、コンクリートのように今見えている形状からびくともしなかった。

どうなっているんだ。

思い立って床に散らばる紙を蹴り飛ばそうとした。

しかし紙は床にへばりついたように動かない。

机の上にある紙の束を払い飛ばそうとすると、コンクリートを殴った時のような衝撃が手に伝わってその場で手を押さえ、うずくまってしまった。

もしかして、この空間は時間凍結でもされているのか。

私がなぜそんな考えに至れたのか。しかしなぜか過去にこのような状況を経験した、そう思い当たることはあった。

いつからこの空間の時間は止まったままなのか。

それは黒板とホワイトボードの内容を見てなんとなくだがわかった

“化物への対策→自衛隊へ救援要請が先

住民の受け入れ→手遅れ。安全圏確保のためにバリケードの設置は優先。体育館は諦める

食料の確保

本校へ駆けつけた自衛隊の分を含めても今の人数だと2週間が限度

・屋上の菜園化

住民の要望

・神様を返して

そんな内容が書かれていた。

きっとここも以前は人がいた場所なのだろう。

しかし昼間の化け物が蔓延る様子を見るに…。

人間がいなくなった後にこの空間が時間凍結されたのだろう。そんなことをできる人物がこの世界にいるのか?

黒板にはこんな内容もあった。

“鍵は校長室に繋がる扉の隣。持ち出すときは自分の氏名を名簿に書き、元の場所に戻すのも忘れないように!”

求めていた情報だった。

書かれている通り隣の部屋に繋がる扉の隣に白い箱があった。

その中にはじゃらじゃらとたくさんの鍵が下げられていた。

その中に校長室の鍵はなく、警備室のタグがつけられた鍵はあった。

警備室の鍵を持ち出し、警備室の鍵を解除して中へ入った。

ライトをつけて中を見渡すと、次の目的地であるモニターがたくさんある部屋と様子が一致していた。

しかし光る玉はない。

ただの似ている場所かな。

そう思っていると突然全てのモニターに灯りがついた。

そしてモニターには何か映像が流れていた。

映像は荒いが、2人の女性が正装のようなものを着て舞を踊っていた。
これは誤用ではない、映像のテロップにそう書いていたのだ。世界によって文字の使い方も違うというものだろう。
映像を見ると、2人が儀式としてではなく楽しく舞っていた。

その様子は舞を踊るという表現が相応しいだろう。

映像には文字で、“神楽舞、初の姉妹で披露”と書かれており、少し経つと神々しい存在が姉妹の舞に合わせて楽しく舞いながら現れた。

そんな映像を見ていると、私の頭には衝撃と共に頭痛が襲いかかってきた。

私はあの姉妹のうち片方を知っている。

あれは、確か。

今度は私の頭の中に映像が流れた。

映像の中の私は、水晶に映る1人の少女を見ていた。その見た目は先ほどモニターに写っていた姉妹のうちの1人だった

少女を見て、私はニヤついていたのだろう。

毎度映像に出てくる側近と思われる人物が話しかけてきた。

「随分とご機嫌の様子ですね。良いものでも見つけましたか」

「そうさ、とても良いものを見つけたよ。もしかしたらこの世界を変えられるかもしれない逸材さ」

「ほう、それは見慣れない舞で戦う少女のことですか?」

「わかっているじゃないか。

見た瞬間にピンときたよ。あれはこの世界のものではない。

欲しいなあ、あの力」

「今彼女は白魔法側についています。

引き込む当てはあるのです?」

「あれは白魔法の信者ではないが、魔法の素質はあるしやりようはあるだろうさ。

あれはリースウェルが持つには勿体無い逸材だよ。

何としても手に入れる!」

回想はここで終わった。

目の前には黒い光が漂っていて、私の中に入ってきた。すると次の目的地が映し出された。

校長室に開けられた穴を降りて一階部分のハジの部屋、そこに通信機器が映し出され、こちらに化物が叫ぶ様子が映し出されて終わった。

次の目的地は化物が当たり前のように歩き回る場所か。

夜のままが良いか?

そう思いながら警備室を出て職員室を素通りしようとすると

「鍵を返さないの?」

そう子どもの声が語りかけてきた。

私が無視して階段へ向かうと

「いーけないんだいけないんだ、せーんせいにいってやろ!」

そう子どもの合唱が聞こえ、周囲は黒い子どもの亡霊に囲まれていた。

体は金縛りにあったように動かない。

そして周囲の子供の見た目は化物に変わり、私に飛びついて体についた肉を奪い合うように貪った。

激痛が走っても喉元に嚙みつかれていることで叫び声も上げられない。できるのは逃げようと手を天井に延ばすだけ。

そんな手も引きちぎられたころには化物たちの牙は肺を破り、内臓に手も出されていた。

ついに肉が引き裂かれる痛みが脳の許容量を超えた後、気がついたら職員室の横にいた。

私は思わず体中を調べたが、全身貪られた様子はない健康体のままだった。

まさか、前にここで死んだのか?

過去にあれが起きたのならと思い、私は警備室の鍵を鍵が入った箱に戻した。

名簿には、私の名前がわからないので書かなかった。

鍵の箱を閉じようとすると、周囲の雰囲気が変わった。

部屋の時間が再び動き出し、カーテンは風に揺らされるのではなく水色の粒子が飛んでいくとボロボロになった。

そして部屋の中の様子は、人間だったものが何かに肉や皮を引きちぎられて貪られた後に変貌した。

床は血が固まって黒に近い色になっていて、遺体には蛆虫が湧いているものもある。

一気に悪臭が鼻に襲いかかり、吐き気に襲われた。私は驚いて鼻を押さえながら後ろによろめいた。

その時の勢いで鍵箱を落としてしまい、勢いで屋上というタグがついた鍵が目の前に転がった。

「いーけないんだいけないんだ、せーんせいにいってやろ!」

子どもの合唱が聞こえる。

早く逃げないと!

私は屋上の鍵を掻っ攫って階段へ急いだ。

焦りながらも屋上の鍵を開錠し、扉を閉めた後にそのまま急いで木の板を渡ろうとした。

すると柵の一部が服に引っかかり、無理に前へ進むこともできなくなった。

階段の扉はガタガタと揺れている。

なんとか解こうともがいていると、何者かに足を掴まれた。

「アケタラトジルモデキナイノ?」

そう言って化物が私を無理やり引き上げた。

服がちぎれて半裸となった状態で化物数匹に囲まれた。

「ワルイコハオシオキ」

そう言って化物は私を床に叩きつけた。

次に私の首を掴み、

「ワルイコ!ワルイコ!」

と言いながら髪を引っ張った。

「ワルイコノアタマノナカワドウナッテイルノ?」

髪を引っ張られ、髪の毛と共に顔の皮膚も引き剥がされる感覚が襲いかかった後、私は再び職員室の横にいた。

手には警備室の鍵があった。

次こそは上手くやる。

そう思い、部屋の様子が元に戻るところまで進め、今度は部屋の変化に動揺はしなかったが、勝手に鍵の箱が落ちた。これは私の不注意関係なく、この部屋が起こしてくるお決まりの現象なのだろうと察した。

急いで鍵を掻っ攫って屋上の鍵を開錠し、今度は扉を閉じるだけではなく鍵もかけた。

扉はドンドンと叩かれてはいたものの、扉を引っ掻く音がするだけでこちらに来れる様子はなかった。

私は落ち着いて木の板を渡り、万が一を考えて木の板は外してこちら側の屋上に立てかけておいた

これでひと段落か。

目的地に到達するたびに不可思議な出来事が増えていっている。

最終目的地に到達する頃にはどうなっているのか。

そう思いながら私は階段を降りた。

 

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