わたしは意識がぼんやりとした状態である親子の前に立っていた。
親子の姿は水色の粒子が集まったかのような見た目だった。
その親子の会話をわたしはただ見つめているだけだった。
「______、少しお父さんの話を聞いてくれないか」
「いいよ!______に教えて!」
「お父さんは人を不幸にする仕事をしているんだ。
「なんで違うの?」
「お父さんは人の命を奪って、
「えっと、イノチヲウバウって人を殺しちゃうって事?」
「おいおい、そんな解釈どこで覚えたんだ?」
「お母さんが教えてくれたよ!
「あいつは全く・・・」
「えへへぇ」
この会話、
まだ、親子の会話は続いていた。
「______、人の命ってどこにあると思う?」
「どこだろう、カラダの中かな?」
「なるほど。
実は正解はないんだよ」
「ええ!真面目に考えたのに!」
「ごめんごめん。でも、答えがないのは確かだよ」
「それって、お父さんが人を不幸にするっていう話?」
「そう、お父さんはたくさんの人の命を奪っているんだ」
「人の物をとっちゃうって事でしょ?それは悪い事だよ!」
「ああ、そうだよ。悪い人だ」
「でも、
「え?」
「奪うって、とっちゃうって事でしょ?
しばらく静寂が続いた。
「はは、参っちゃうな全く」
「?」
「そうさ、お父さんは持ち続けてるのさ、奪ってしまった物をね」
「それならちゃんと返しに行かなきゃダメだね!」
「そうだな、とっちゃったものは、返さないといけないよな」
「でもでも!______
「え」
「だって、お父さんはお母さんのヒーローなんだもの!
「ありがとう、______」
「だから!お父さんはとっちゃったものなくしちゃダメなんだよ!
「ああ、無くさないよ。絶対にね」
ふと気づくと親子の姿は見えなくなっていて、
男は少し前へ歩いて再び振り返ってこちらを見つめていた。
ついて来い、そう言いたい気がしていた。
わたしは男の後ろをついて行って、ひたすら前へ歩いていた。
あるところで男が立ち止まると前の方を指差した。
わたしは驚き戸惑っていると、
男はそのままわたしの方を向いて花の束を差し出してきた。
「わたしに?」
笑みを浮かべた男は静かに頷いた。
そして、懐かしい声で話しかけてきた。
「胸の想いを信じ続けなさい。そしてこれは、
わたしは不審に思わず、すんなりと受け取ってしまった。
受け取ったわたしの目からは不思議と涙が溢れてきて、
胸の奥が熱くなって、
「お父さん」
ふと気づくと心配そうに見つめるアルの姿があった。
「良かった!気がついたんだね」
「わたし、確かアルと一緒に森の中へ入ったはず」
そう、
「僕も少し前に気づいたんだけど、
「そう」
わたしは手元を見ると、青白く輝く花束を持っていた。
「あれ、これって」
「その花、僕も夢の中で誰かにもらったんだ。
「わたしは大事な人からもらった。そしてこの花って、
「多分そうだろうから、しっかりと袋に入れておこう」
「うん、わかった」
わたしは胸に押し当てていた花を、アルに渡した。
ドコサーという花に間違いがないかハッカの元へ尋ねたときに知った
この世界で飲まず食わずのまま3度の夜を迎えるというのは感情エ
ハッカからはとにかく何か食べてと食べられる花をもらった。
しかし私たちには1、2時間経過したという実感しかなく、
ドコサーという花であることを確認した私たちはキエノラの元へ戻
キエノラにも酷く心配されたが、
「いや悪いね、予想外の出来事を聞いて笑ってしまったよ」
「
「いや、本来ならば教える必要がないんだ。
「どういうこと?」
キエノラによると、ディモノスリンにはこんな話があったという。
ある人物がは連れと一緒にディモノスリンにある光る苔について調
倒れている間にその人物は生き別れた母親と会ったという。
しばらく過去の情景が流れた後、
その後を追っていると、
その先で光る花を見つけ、
ふと気がつき、目覚めると森の入りに寝ていたらしく、
日光に当たると萎れてしまうと知って、
しかし花について詳しいハッカでもその花については初めて知った
ハッカは知人に花の調査を依頼し、
なにを間違えてか、
花の名前はハッカが名付け、
これがドコサーを発見し、
「えっと、キエノラの昔話にしか聞こえなかったんだけど」
「いいじゃない、
ドコサーを初めて見つけた人物というのは、
異世界に詳しい人物がその人物を訪ねてみようと試みたようだが、
実はこの記録自体はこの世界自体からは消えている。
「実は私自身もディモノスリンに入ってみたんだが、
私とアルは話を聞いて唖然としていた。
「もう言いたいことはわかるだろ。君たちは、
「まさか、
「そうさ。ファミニアにはない概念を君たちは持っている。
そう、
アルの話からだいぶ察してはいたが、アルもまた、
「さて、ここで君たちに聞きたいことがある」
「な、なんでしょう」
「魂の在処はどこなのだろうか」
アルはこの言葉を聞いて、少し驚いた後私の方を見た。
「私が干渉液に執着しているのは、
ファミニアには私たちのような異世界から来てしまった人たちは多
でも、
「
キエノラは、静かに私を指差した。
「君はどう思う?魂は何処にあるんだろうか」
一呼吸おいて、私は答える。
「魂っていうのは必ずここにある、てものではないと思う」
「ほう」
「私だって、
魂っていうのは体に縛られるものじゃない。
「ブリンク」
「ならブリンクちゃん、
「そんな深いことはわからない。ただ、
キエノラは少し残念そうな顔をして立ち上がった。
「そうか、
でも、私は考えを改める気はない。
そう言いながらキエノラは保存してあった干渉液をたくさん持って
「話を聞かせてくれてありがとう。約束通り干渉液を渡そう」
「ありがとうございます」
アルは干渉液を受け取り、一礼した。
「そして、君たちへのちょっとしたお礼だ」
キエノラは暖炉の上にあった鉱石のうち一つを持ってきた。
「え、貴重そうな鉱石だけど良いの?」
「ああいいさ。持っていきなさい」
私はキエノラから渡された鉱石を受けとった。
「あ、そういえば名前を聞いていなかったね」
「ぼくはアル、隣がブリンクです」
「そうか、
この瞬間、私の頭ではハッカから聞いた話がこだました。
“ただ、あんまりあいつのお気に入りになるんじゃないよ。
「し、失礼しましたあ!」
そう言って私はキエノラの店を飛び出してしまった。
「やっぱり芸術家は苦手だ!」
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