【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-3-12 自由に錬金術を行える場所

ディアのクローン体がある部屋へ入るとすでにディアは目を覚ましていた。

そんなディアへカルラは話しかけた。

「日本ほど距離が開いた場所で2体を動かしても制御には問題なかったようだな。

だが、体を取り替えたのか。どこに影響があった」

ディアは少し不機嫌そうにカルラへ答えた。

「目が覚めるととても気持ち悪くなってさ。

急に鼻血も出始めたからこりゃダメだって別の体に変えたよ」

「そうか。

脳へかかる負荷が体の限界を超えたのかもしれない。

そろそろ人体での運用には限界があるのではないか。脳内の電気信号ではなく魔法石を介した処理負担の軽減をいい加減に行った方がいい」

それを人体に組み込めないか今新しい素体へ試している最中だよ。

それよりも」

ディアは素体が成長中の一つのカプセルを指差した。

「私が眠っている間に一体持ち出したでしょ!」

「何も言わなかったのは悪かった。

ちょうど良いものだったからついな」

ディアはカルラからキュウべぇに視線を移した。

「私の体に入っているお前は誰だ」

「ぼくだよ、キュウべぇだよ」

その話を聞いてディアは驚きもしなかった。

「ああ、インキュベーターを捕まえてそれをどうするかの結果か。

わざわざ人型じゃなくてもって言ったのに」

「体の形状も影響するかもしれないだろ」

「ならこうもう少し耳を獣っぽくしたり尻尾生やしたりさ」

「ディア、私たちはインキュベーターを使役するわけじゃない。

ただの実験材料だ」

「んで、インキュベーターの魂をそこに入れただけ?

まだそこらへんで捕まえられる?」

ここでキュウべぇが話に割り込んできた。

「いや、この体に意思が固定されたことで今までの体は使えなくなってしまったんだ。

そういうわけで今君の目の前にいる僕しか人と接触する術はない」

「は?なにそれ面白すぎなんだけど。

でもそこに意思が固定されただけってこともあるのか。

ねぇ、自分で死のうとは思わないの?死んだら元の体に戻れるかもよ」

その話を聞いてキュウべぇは横に首を振った。

「悪いが命を自ら断つという行為自体が理解できないんだ。

自殺という考えを持っているのは君たち人間だけだ」

「じゃあ今教えてあげる」

ディアは腰につけた拳銃をすぐに撃てる状態にしてキュウべぇへ渡した。

「銃口はわかるでしょ?

それを自分の頭に向けて引き金を引くだけ。

簡単でしょ?」

キュウべぇは拳銃を手に取ろうとはしなかった。

「どうしたのよ、まさか命が惜しいわけ?」

「そうだね。

今この体を失うと二度と人類と接触できなくなるかもしれない。

そんなリスクを抱えたまま試そうとは思えないよ。

僕たちも目的があってこの星にいるわけだし」

私たちにとっては死んでいなくなってくれた方が有益だと思うけど

ずっとディアとキュウべぇのやり取りを見ていたカルラは話し始めた。

「ディア、せめてインキュベーターの本体へアクセスできるまでは待ってくれ

こいつらの知識は人智を超えたものというのは確かだからね」

ディアはむくれた顔をカルラに見せてから拳銃をしまい、プンプンしながら伝えた。

「じゃあ殺さない程度にインキュベーターで実験させてよ。

勝手にクローン体を使ったことまだ怒ってるんだから」

「構わないさ。死なない程度にね」

キュウべぇはカルラの返事を聞いてなんと驚いた顔をカルラへ向けた。

それを見たディアは珍しく驚いた。

「あんたそんな顔できたんだ」

「少しだけ感情の実験を進めたからね。

ほら、いくぞインキュベーター」

「待ってくれ、僕の了承なしで話を進めないでくれないかい?」

キュウべぇはカルラに連れられるように部屋を出て行った。

静かになった部屋の中、ディアは成長中のクローンを見ながら考えに耽った。

そういえば私以外の意思が入ったクローン体と会話するのはいつぶりだろうか。

 

私の家は魔女裁判を逃げ延びた錬金術師の家系で、という話は父側のじいちゃんから聞いた話で両親は錬金術についてはからっきしだった。

私も最初から錬金術に興味を持ったわけではない。

小学にあがる前から生物に興味を持った私は、よく生き物の部位を傷つけたり引きちぎったりしていた。

触覚を失った虫はまっすぐ歩けるのか、骨格だけになった鳥は走ることを覚えるのか、虫の羽は再生するのか。

人の感情を理解するのも周りの子より遅かったようで、小学校の頃はよく他の子へ暴力を振るって泣かせていた。

それはただのいじめではなく、痛みで笑顔になるのかという純粋な疑問であった。

ここまでの行為が探究心のみの行動であることは誰にも理解されず、サイコパスと判断されて普通の学校には通えなくなった。

それから私は学校という場所には行かなくなり、色々教えてくれる父側のじいちゃんのところへ行っていた。

そこでは普通の勉強の他に、錬金術に触れさせてくれる機会があった。

この時に私には錬金術の素質があることを知った。

そんな知識欲を満たす日々は長くは続かなかった。

父側のじいちゃんは老衰で死んでしまった。

じいちゃんが死ぬ間際に私へ秘密の言葉と呼ばれるものを教えてくれた。

その言葉をじいちゃんの部屋の至る所で唱え続けると本棚が反応して扉が出現した。

そこには錬金術の道具や本がたくさん詰まっていた。

しかしばあちゃんも後を追うようにすぐに死んでしまったため、じいちゃんの家は取り壊されてしまった。

無事に持ち出せたのはほんの一部で、その持ち出しに気づいた両親は私にひどく怒った。

「錬金術なんてものには興味を持つな」

そう言われてから私は両親には関心が向かなくなった。じいちゃんが教えてくれた素晴らしいものを「あんなもの」としか言えないのが親だったなんて。

もう、こいつらはどうでもいい。
そう思いつつも生きるためには食べなければいけなく、そのためには金も必要だったので仕方がなく親の前では「いい子」を演じ続けた。

ある日、両親に連れられて何かの社交会へ行くことがあった。

それがなんの目的だったかわからなかったし、すぐに帰りたいという思いが強かった。

好きでもないドレスを着せられて、私は嫌になってテラスに出て星を見て気を紛らわしていた。

そんな私に声をかけてきた女性がいた。

「ずいぶんと退屈そうじゃないか?」

私は他人と話すことが久しぶりで、なんて返せばいいのかわからず再び空に目線を戻した。

すると女性が私の隣に来て1人で話し始めた。

「星の力を利用するというのは物の例えで、肝心なのは夜であることというだけだ。

北極星を指すと言われるこの道具だって、実は北極点あたりを指すことと起動するのが夜限定というだけで、今考えれば夜間限定のコンパスというしょうもない物だ」

天球型の物体が女性の手の上で浮き上がり、天球の周囲についている輪っかの特に尖った部分が、北と思われる方向を指していた。

私は思わずそれに注目してしまった。

ここに集まる物たちもかつては貴族や高位の錬金術師と呼ばれた物たちの末裔で、昔は討論会や技術の披露宴などそれっぽさはあった。今となってはただの人間のパーティというしょうもない物だ」

女性はある石を私に向けながらこう言った。

「君はしょうもない人間か?」

私は少しイラっときて話し始めてしまった。

「両親はしょうもない人間よ。でも私は違うわ。
命について錬金術で試したいのよ。あなたはなんなのよ!」

すると女性が持っている石が青く輝き出した。

「そうか、君はまだ情熱を忘れない錬金術師だったか。

ならば行ってみないと思わないか?

自由に錬金術を行える場所へ」

「ほんとうか?

そんな場所に連れて行ってくれるのか!

行けるならば連れて行ってくれ!」

「OK。私はカルラだ。

君は?」

「ディアだ。さあ早く!」

カルラとの出会いはそんな感じ。

それからはカルラが社交界での出来事をでっち上げて、両親へ私をカルラが預かる理由を作り上げて私を両親から引き離した。

両親のことなんてもうどうでも良かったから都合が良かった。

でも大学への特別入学という結果を残さないといけないらしく、久々に勉強らしい勉強をカルラに叩き込まれた。

私が勉強に疲れた様子を見抜いては合間に錬金術も教えてくれて、じいちゃんといた時間以来に充実した日々を送った。

そして初めて生み出した生命体は、見事に失敗した。

この時は正当な成長過程を経ずに肉体を直接作り上げる禁忌の人体錬成を行った。

作り上げられた化け物は鼓膜を貫く奇声を上げて、そのせいで私の耳は使い物にならなくなった。

そんな部屋へカルラが入り込んできてヘッドフォンのようなものをした状態で刃が青白く輝く槍を持ち出して、奇声を上げる化け物を頭から真っ二つにした。

化け物は臭い液体になって原型はその場から消えた。

カルラから何かを言われても聞くことができなくなった私は、ジェスチャーで耳が聞こえないと伝えるしかなかった。

カルラは部屋を出ていき、しばらくすると野球帽をなぜか持ってきて私に被せた。

その後にカルラが話すと、なんと会話内容が脳で理解できた。

「私の考えが伝わるか?」

[すごい。わかる!カルラの伝えたいことがわかる!]

「これで禁忌と言われる理由がわかっただろ?

体が吹っ飛ばなかっただけ幸運だ」

[…私を止めなかった理由はあるの?]

「ディア、実験はやって初めて空論から確かな結果に変わる。

危険だと伝えて真に何が危険かを理解できるものはいない。

だが今把握できたじゃないか。

人なんてこんな過程では生成できず、自分の身が危うくなるだけだから禁忌なんだ」

[ええ、身に染みて理解したわ。

人体錬成の前に耳を使い物にできるものを用意しないと。

大学入試試験も近づいているし]

「わかってる。ささっと作ってくるよ」

その後私は見事に大学へ合格し、カルラが入っている研究室で一緒に研究を行うことになった。

天才児と騒がれたこともあったけど、サイコパスを前面に出した途端にみんな私から離れて行った。

そして私は研究と錬金術の経験から、人の寿命はどうあがいても限られているため長寿を目指すのは現実的ではないという結論に至った。

そこで私はクローンを生成して脳内情報はそのままで体だけ取り替えて擬似的に不死を実現させるという目標を見出した。

大きなカプセル内で正当な成長過程を踏んで私と同じ年齢くらいの姿形をしたクローン体第一号が完成した。

クローンは目を開けて周囲を見渡し、しばらくすると泣き出してしまった。

それもそのはず。この過程を踏むと脳は赤子と同然。

何者かわからずクローン体は泣き出してしまったのだ。

そんなのは想定済みで、カルラの協力もあって学習装置が用意してあった。それをクローン体に被せてしばらくするとしっかり喋りだして自らの意思で行動を開始した。

この成功をカルラへ伝えると、カルラは少し険しい顔をした。

「ディア、絶対外に出すなよ」

そう言われた理由はすぐにわかった。

クローンは私のクローンであることを認めず、1人の人間だとしてクローンを閉じ込めていた家から出ようと行動し始めた。

家の中はカルラが用意した結界のような物で破壊は行えないようになっていて、それでもクローンは破壊しようと壁や床を何度も叩きつけた。

そしてついには私にも襲いかかってきた。

私は処分するかと思い当たると、昔から自分に行いたかった実験をこのクローン体へ試すことにした。

脳を外付けにしても人は動けるのか、心臓は体が無くても動き続けるのか、どれくらいの温度の環境にいたら寿命が伸びるのか。

実際に行えたのは最後の寿命関係のものだけで、クローン体は凍死する最後まで私を恨んだ顔をしていた。

最初のクローン体の結末を知ったカルラと教授は驚くのではなく呆れた反応をした。

「カルラ、こいつはやばいと思ったがここまでとは思わなかったぞ」

「まあ、やりすぎだというのは承知ですがこういう人材が案外新発見するものですよ」

「やれやれ、しっかりこいつを責任もって見張るのだよ。

そのうち我々を実験道具にしかねない」

「もちろんですよ」

このクローンの生み出し方は失敗だった。

確かにクローンを生み出せたが、実現したいのは自分の体をただの入れ物として複製すること。

カルラに助言を求めると少し考えただけですぐに答えを出してきた

「真っ当な生物の誕生の段階を踏んでしまっているがために、体に命が宿ってしまうのが原因だ。

命が宿らない入れ物にしないといけないならば命の在処を理解しないといけない」

これが非常に面倒なものだった。

赤子は胎内でも命を持った状態なのかから始まって、魂は抜き出せるのかと実験しながら模索した。

そんな中、カルラから自我の複製実験に協力されてクローンに何度か自我を複製できないか試した。

その結果、クローンの種である頃から自我の複製情報を送信しておくとそのクローン体には自我が複製されたことが判明した。

何度目かのクローン体取り出しの際、私の脳内には自分と対面しているクローン両方の情報が入り込んできた。

服を着ているはずなのにクローン体の裸な感覚が伝わってきたり足が何故か裸足っぽい感覚がしたりとカオスな状態だった。

気づけば私は情報量に耐えきれず気絶してしまった。

とはいえ今では余計な魂が宿らないよう私の自我が常にアップデートされる専用カプセルを開発できたり、今では魔法少女の技術を使って地球どこでもクローン体を制御できるようになった。
そして魔法石というものを知って、最初の頃よりも増しに情報制御が行えて気絶する機会も減った。

本体の脳が破壊されない限り、いつまでも生きられる状態になったと言えるだろう。

ちなみに魔法少女と錬金術師は近しい存在だというのは、サピエンスに参加してからカルラに教えてもらった。

キュウべぇは私に目はつけていたものの、何をされるかわからないという理由で近づかなかったらしい。

思ったよりも臆病なやつだったよ。

そんなクローン技術がある中、カルラは体がある程度出来上がったクローンへキュウべぇの意思をいとも簡単に移植してみせた。

私の自我を常に送りながらクローンは育っていたはずなのに、横入りする形で別の意思を移植する技術がカルラにはあった。
もしかしたら、生きている人間へ直接別人の意思を移植するなんていうヤバいこともやろうと思えばカルラにはできてしまうのかもしれない。

まだ技術についてはカルラには敵わない。

カルラを越えようとは思わないけど、いつかはギャフンと言わせたいとは思っている。

「次にお前たちを動かしたら、いよいよ死ぬかもな」

次にクローン体を動かす時はここにいる奴らを全部動かす時。

強度を上げた体が間に合わなければ、いや、間に合ったとしても私は死ぬかもしれない。

せめて脳に流れる情報を大幅カットするくらいが精一杯か。

そう思いながらも今はキュウべぇを実験したいという思いが強かったのでクローン体が並ぶ部屋を後にした。

 

back:2-3-11

レコードを撒き戻す:top page

Next:2-3-13

【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-3-11 神浜鎮圧作戦・本命

謎の船が現れて試験艦が破壊され、さらには日本の北と南の航空基地が攻撃されたと連絡を受けたサピエンスは終始冷静だった。

ミサイルから魔法少女が飛び出してくる様子も観察を行なっていて、そんな中で一つの報告が行われた。

「謎の船の出発点特定しました!

場所はオーストラリア クイーンランド州北、一番南側に窪んでいる土地で僅かに船のような影、船が通った後の白波が海上で確認できます!」

そう説明しながら司令部の大画面の片隅に説明された映像が張り出された。

その報告を受けてイザベラは指示を出した。

「通信部、オーストラリアの大臣へさっきの場所を調べさせるよう伝えなさい

「了解!」

その後イザベラは愚痴をこぼした。

「どうしてこの程度の変化が報告されなかった。ずっと監視はさせているはずだ」

その愚痴に対して隣にいるダリウス将軍が答えた。

ダリウス将軍はサピエンスの特殊部隊を束ねる立場にあり、サピエンス関連の作戦には彼がいつも携わっている。

「レディ、我々が24時間監視しているのはアメリカ領の海域付近のみだ。

他国の海の監視もしていたら皆倒れてしまう」

「だとしてもオーストラリアの怠慢でしょ?まったく」

「いいじゃないか、こうして特定できたんだ。

奴らが造船施設を持ったままというのは脅威でしかない」

イザベラはため息をひとつつくと別の話題に切り替えた。

「国連の方はどうかしら」

この問いかけにはオペレーターが答えた。

「はい、まもなく目的の地点まで話が進みます」

「ではそろそろ仕掛けましょうか」

イザベラは近くの通信機を操作して中華民国の劉総書記へ繋げた。

アポは取られていないが、数秒後にテレビ電話がつながりそのには劉総書記の姿が映っていた

「おやおやレディ、大切な作戦中になんのご用かな?」

「とぼけないでください。

作戦実行中の領海へ侵入するなと再三伝えているはずです。

まさかご存知ないわけがないですよね?」

「何をおっしゃっている。

おかしいのは貴方達ではないか?

我らは我らの移動可能な範囲内で訓練を行っているだけだ」

「領海という概念をご存知ないのか?」

「我々は正しい行動をしている。

侵入してはいけない範囲を勝手に決めつけているは君たちだ。

全く困ったものだ。

君の持ち前の交渉術でこの辺を整理してもらいたいのだけどね」

「劉総書記、アンチマギアプログラムが実行されている間は他国への侵略、挑発行為は禁じられている。

これを犯すものは国連の決定次第では国連の手でその国を罰さなければならない。

これはアンチマギアについて国連で取り決められた条約であることもご存知のはず。

覚悟があるという認識で良いか?」

「ふん、君たちの言い分が通るはずがないだろう。

用がそれだけならば通信は終わらせてもらうよ」

そう言って総書記の方から回線を切ってしまった。

その頃国連では中華民国の挑発的な行為を理由に罰を与えるべきかの協議結果が出ようとしていた。

これまでに国連での話し合いの結果は常任理事国が1国でも拒否権を行使した時点で否決された。

しかしこの考えはアンチマギアプログラム発令のための法改正の際に見直された。

常任理事国が罰せられる対象となった場合、その当事国が拒否権を行使した時点で法的に罰することが叶わないという、常任理事国から被害を受けた国々からしてみれば理不尽極まりないことであることは散々指摘されてきたことだ。

その意見が汲み取られ、たった1国の常任理事国が拒否権を出してもそれは否決扱いにはされなくなり、2国以上の常任理事国が拒否権を行使した際に否決となる仕組みへと変えられた。

今回の中華民国に対する罰を与えるべきかの協議にはこの決まりが当てはめられた。

非常任理事国からは罰を与えるべきという意見が多数の中、常任理事国の協議結果は中華民国のみが拒否権を出すという結果になった。

この結果に中華民国の代表者は怒りをあらわにしながらロシアの代表者を睨んだ。

「なぜだ、ありえん!

サピエンス、やつらが我らを潰そうと企てたのだろう。

今すぐこの結果を取り消せ!」

「この場での決定は絶対である。

この結果に不服があるならばしっかり議題としてあらためて提起していただきたい」

協議をしきる長が中華民国の代表者へ伝えると、その代表者はお付きの者からスマホを奪い取りながらその部屋を後にした。

「急いで書記長へ伝えなければ!」

代表者は急いで用意された車へ乗り込んでその中で劉総書記の秘書へ電話を繋いだ。

「急いで総書記へ国連が裏切ったと伝えろ。

そして総書記を安全な場所へ避難させるんだ!」

そう一方的に伝えた後、代表者は運転手へ怒鳴りつけた。

「早く空港へ向かいたまえ!

このままではきっと私も」

そう言っている間に代表者が乗った車へ一台の車が突っ込み、大きくその場でスピンした後にエンジンに火がついて代表者が乗った車は爆発してしまった。

劉総書記へは国連の結果が伝えられ、劉総書記は驚いた顔を見せた。

「ありえん、ロシアが裏切ったというのか。

まずは逃げるぞ」

劉総書記がいる部屋にはノックをして1人の軍人が入ってきた。

「おう、張か。驚かせるな。

事情はすでに把握しているのではないか?早く安全な場所まで案内しろ」

張と呼ばれる軍人は扉を閉じて動こうとしなかった。

「どうしたんだ、早く安全な場所へ連れて行け!」

「すみませんね、もう、私はあっち側なんですよ」

そう言いながら張はサプレッサー付きのピストルを取り出して劉総書記とその秘書へ心臓、頭部に数発の銃弾を撃ち込んだ。

張はドアを3回ノックすると扉が開かれて遺体処理班とカメラを持った者が部屋へ入ってきた。

そして世界へアンチマギアプログラムの規定を破ったとして、劉総書記の遺体を見せながら中華民国は国連の指揮下に入ったことが報道された。

これを見て悲しむ国民がいれば喜ぶ国民もいた。

そんな反応の違いで中華民国内では争いも起き始め、国連指揮下に入った中華民国の突撃軍が鎮圧に動き始めた。

サピエンスはこの様子を平然と眺めていた。

「これで本来の目的は達成か」

キアラはイザベラに向けて聞いた。

「そうね。これで人類にとっての不安分子は一つ取り除けた。

神浜の様子は?」

「はい、鎮圧作戦に向かったメンバーはN班とS班以外は全滅。

海に展開された勢力も観測用潜水艦除いて全滅しています」

「ディアの反応はまだある。

でも作戦継続は無理だろう」

観測用潜水艦は試験艦の船団を背後からついて行き、観測ドローンを通してサピエンス本部へ神浜の様子を伝えるための存在である。

特殊部隊の現状やSGボムをつけた魔法少女の位置まで全てがこの潜水艦を通してサピエンスへ筒抜けとなっている。

「この状態でもSGボムが全て弾けていないということは、自衛隊はやっぱり覚悟が足りなかったということか」

「一部の魔法少女については起爆が行われたようだ。

残りも作動させる必要性は感じないが、させる気なのだろう?」

カルラがイザベラへ尋ねると顔色ひとつ変えずに返事をした。

「当たり前よ。

しっかり働かなかった罰は与えないと。

お偉い様はしっかり理解しているはずよ」

「イザベラ、また何か釘を刺したのか」

キアラが呆れた顔でイザベラへ聞いた。

「ええ、向こうでディアが作戦会議を行うよりも前にね」

その頃、自衛隊の司令室には防衛大臣が入り込んできた。

「防衛大臣、どのようなご用でこのような場所へ。まだ作戦継続中ですよ」

高田1佐がそう伝えると防衛大臣は不機嫌そうに返事をした。

「なんの用だと?

米国との取り決めで決めたことを貴様ができていないから来たのではないか」

「確かに我々は神浜鎮圧作戦を継続できない状態になりました。

しかしこれは予想外の乱入があって」

「そうではない!

貴様が持っているSGボムの起爆装置。それをなぜ持たされているのか聞いていなかったのか!」

高田1佐は近くにある司令室の机上に置いたままの起爆装置をチラリと見た後に防衛大臣へ弁明します。

「魔法少女も役割を果たした結果です。

あれを使うほどではないのではないでしょうか」

防衛大臣は何も言わずに起爆装置を奪い取ってしまい、起爆のためのコードを打ち込み始めます。

そんな防衛大臣の腕を掴みながら高田1佐が訴えかけます。

「考え直してください!

彼女達は魔法少女ですが、人の子です!

こんな道具みたいな使い捨て方はあんまりです!」

「なんであろうとこれは国交にかかわることなのだよ!」

防衛大臣は気にもとめず起爆スイッチを押してしまいます。

それからSGボムを仕掛けられた魔法少女達のソウルジェムが一斉に光だします。

「静香ちゃん、ソウルジェムが」

静香はソウルジェムが光っている理由が理解できませんでした。

「なに、何なのよこれ」

その様子を見てカレンは急いでちはるを静香から引き離します。

「カレンさん、静香ちゃんどうしちゃったの!」

「時女静香はもう助からない。諦めろ」

カレンとちはるが見ている前で静香のソウルジェムが爆発し、静香の体は丸ごと爆発に巻き込まれて周囲には爆風が広がった。

その時に血飛沫も周囲に飛んでその一部がちはるの体にかかった。

降りかかる値を避けようとせず、爆発する瞬間も目をそらさず見てしまったちはるは目を丸くして何が起きたのか理解できずにいた。

カレンがちはるの手を離すとちはるはその場へ座り込み、静香がいた場所を見つめ続けた。

「あ…ああ…」

言葉にならない様な音を喉から出しながら、ちはるは涙を流した。

東側の魔法少女達がSGボムをつけられた魔法少女達を栄区へ連れている最中、SGボムをつけられた魔法少女達のソウルジェムが一斉に光出した。

その様子を見て十七夜達はソウルジェムが光った魔法少女達から離れた。

ソウルジェムが光った魔法少女達は怯えながら十七夜達へ縋りつこうとした。

「いやだ、死にたくない!」

縋りつかれてどうすればわからず身動きができない魔法少女もいた

「じゅ、潤!この子達に掴まれて動けない!」

「あんまこんなことやりたくないんだけどな!」

潤と呼ばれる魔法少女は助けを求めた黄色い姿をした魔法少女につかまる魔法少女達を武器で払い落としていった。

他の場所でもソウルジェムが光る魔法少女を神浜の魔法少女が引きはがしていた。

「みとから、はなれなさい!」

「乱暴したくないから言うことを聞いて!」

そうしている間に光っていたソウルジェムが次々と爆発していった

爆発の規模は均一ではなく、中には掴まれたまま巻き込まれた魔法少女も出てしまった。

周囲は魔法少女だったり肉が散乱し、その様子を理解するのに数秒時間がかかった魔法少女達は次々と恐怖の表情へと変わっていって泣き出すものやその場に腰を抜かすものが出た。

「みと!意識を保って!

だめ、血が止まらないよ」

「だれか!この子爆発に巻き込まれて!」

その様子を見て十七夜はすぐにはその場を動き出せなかった。

「こんなこと、魔女よりも残忍ではないか。これをこの国の人間がやったというのか」

十七夜が動けない間、令は何度も十七夜のことを呼んでいた。

しかし十七夜はその声が聞こえないのか反応を示さなかった。

痺れを切らした令は冷静に周囲へ指示を出していき、ゆっくりではあるものの栄区への移動を再開した。

北養区の森の中では、銃撃を受けた魔法少女達から文句を言いながら銃弾を取り出しているニードルガンを扱う魔法少女がいた。

そんな魔法少女をサポートするアバと呼ばれる魔法少女は、倒れた魔法少女達を2か所に集めていきました。

そんな2人の魔法少女をみふゆ達は見ることしかできなかった

「やっちゃんにテレパシーで声をかけたのですが、怪我人を運ぶとのことでこちらには来てくれない様です」

「お姉様は無事なの?」

「やっちゃんとは一緒にいるようですよ」

「お姉様が無事ならわたくしはなんだっていいよ」

みふゆはその怪我人がいろはであることを言わなかった。

灯花がまた何かをしでかしてしまうのではと思ったからである。

アバはみふゆ達の方を見てしばらくじっと見つめていた。

アバは背負っていた死体をその場に投げてテレパシーでみふゆ達に話しかけてきた。

[ねえ、そこで何もしないなら少しは情報頂戴よ。

誰がSGボムをつけられた子?]

そう聞かれると燦がすぐに答えた。

[貴方が何したいかは大体わかる。

今から指を刺していくからその対象を処理してくれ]

[ふーん、じゃああんたはあまり近寄らないでよ。

巻き込まれたくないし]

燦は次々とソウルジェムが無事な魔法少女達を指差して行った。

その魔法少女達は、魔法少女だった死体の方へと放り投げられていった。

「え、何をしてるのですか」

みふゆはその行いに驚いた。

はぐむと時雨も驚いている中、呆れた顔で灯花が説明しはじめた。

「SGボムって爆弾だよ?

そんないつ爆発するかわからない物と助ける者を分けるのは当然でしょ?」

「でもわざわざ死体の方に移動しなくても」

「爆発したら綺麗に吹き飛ばせるじゃん」

「灯花…」

まだSGボムが施された魔法少女とそうではない魔法少女が混ざった状態の中、SGボムが施された魔法少女のソウルジェムが光りはじめた。

「気づかれたか…」

そう言って燦は死体の山の方へと向かった。

「そんな、まさか」

燦は特に何も言わず目を閉じてその時を待った。

そしてSGボムは一斉に爆発し、死体の山は次々と爆発に巻き込まれていった。

綺麗には爆発に巻き込まれなかったようで、死体の山があった場所には血肉が残ることとなった。

助けられる魔法少女の中にもSGボムが施された魔法少女がいたことで爆発に巻き込まれてソウルジェムが割れる魔法少女が出ていた。

「ちっ汚ねえな」

SGボムが弾けても依然として行動しようとしないみふゆ達を見てニードルガンを持つ魔法少女はついにキレてしまった。

[いい加減助けを連れてくるか何か行動してくれねぇかな!

仲間が巻き込まれたくせにボソッとしやがって]

その魔法少女はさらにみふゆ達にニードルガンを向けた。

[さっさと動けよ。

じゃないと撃つぞ!]

3人がオドオドとしている中、灯花はゆっくりとその場を後にしていった。

「おい天才、おめぇは何処に行くんだよ」

「わたくしのシェルターに戻るんだよ。

倒れた子達のことはよろしくねー」

みふゆ達はニードルガンに撃たれるのは嫌だったので、背負える無事な魔法少女は背負って栄区へと向かうことにした

勝手にその場を後にした灯花に対してニードルガンを持つ魔法少女は舌打ちをするだけで特に何をするわけでもなかった。

 

SGボムが作動したことを確認できた自衛隊本部では防衛大臣以外の人々が皆引いた顔をしていた。

SGボムが無事に作動したことを確認した後、防衛大臣は高田1佐の隣の人物へ話しかけた。

「張替一佐、お前を臨時指揮官とする。

そしてこの反逆者を捕えろ」

「防衛大臣!何を言い出すのですか!」

張替一佐の話を聞くことなく防衛大臣は淡々と話しを続ける。

「高田1佐、君は今回の件でこの国と魔法少女、どちらを助けたかったのかね?」

「彼女達も、日本国民ではないのですか!

彼女達は不思議な力を持っても人間には変わりないはずです!」

では米国に逆らってこの国への支援が途切れて国民が飢える結果になっても国を守ったと言えるのか」

高田1佐はその話を聞いて言い返せなくなった。

「この行為はこの国を守るために大事なことなのだよ。

君は勝手な判断でこの国を危機的状況に追い込もうとした。

違うか?」

高田1佐は最後の抵抗として言っては行けないことを言ってしまいます。

「他国の言いなりになるのが、この国のためだというのですか」

「高田1佐、君は現時点で除名処分だ。

独房でしっかり反省したまえ」

「防衛大臣!」

「やめろ、張替」

防衛大臣へ抗議する張替一佐に対して高田1佐が止めるよう言った。

「なぜですか、こんなのおかしいですよ」

「いいんだ、しっかり指示に従うんだ。

責任を負うのは私だけでいい」

張替一佐はやるせない気持ちを拳でどこかにぶつけてしまいそうになりますが、必死に堪えて周囲に指示を出した。

「申し訳ありません。

高田1佐を独房へ連れて行け!」

近くにいた2人の隊員が高田1佐を掴んだ状態で、高田1佐は作戦司令室から連れ出されてしまった。

高田1佐が出て行った後に防衛大臣が張替一佐へさらに指示を出た。

「我々にはサピエンスの部隊を逃すという任務も残っている。

気を抜くんじゃないぞ。

君たちはこの国を守るための存在なのだからな」

防衛大臣は表情一つ変えず作戦司令室を後にした。

高田1佐が連行されている道中、作戦司令室へ殴り込みに行く勢いの時女一族の母親2人がいた

高田1佐の顔を見て時女静香の母親は素早く駆け寄って高田1佐へ問いかけた。

「高田さん、娘は無事なのか!」

「…申し訳ありません。娘さん達を守れませんでした」

「なん、だって。静香はどうしたんだ」

「くれぐれも出過ぎた行為はしないようにしてください」

「すみません。失礼します」

連れている2人のうち1人がそう言って高田1佐は連れて行かれてしまった。

ちはるの母親はその場で泣き崩れ、静香の母親は壁を殴って悔しがるしかできなかった。

そんなことが日本で起きている間にサピエンスではSGボムが無事に作動したことを確認できていた。

「SGボムを施された魔法少女の生存数は0、すべて作動されたか死亡したようです」

その報告を聞いてキアラはイザベラへ話しかけた。

「これで捕まったらSGボムで殺されると印象付けてしまったがいいのか」

「いいのよ、その方がしっかり仕掛けてきてくれるじゃないの」

「平和的に解決させる気ゼロだな」

ホワイトハウスを襲撃したあの魔法少女の言葉を覚えているでしょう?」

「みんながみんなあの考えだとは思わないけど」

そう話している間に神浜を観測していた潜水艦が魚雷接近のアラームをあげた。

それから潜水艦はあり得ない挙動をする魚雷が3発動力炉付近に直撃して破壊されてしまった。

「潜水艦の反応ロスト、神浜の観測がリアルタイムに行えなくなりました」

「気づくのが早いな。

さて、あとは生き残りがしっかり逃げてくれればこの作戦は一区切りですかね」

ダリウス将軍がイザベラへそう聞くとイザベラは肯定した。

「そうね。

奴らが船を使うことがわかったし、海軍にはしっかり伝えておいてね」

「はい、滞りなく」

ひと段落したと判断したカルラは立ち上がってイザベラへ話しかけた。

終わったのならば見てもらいたいものがあるからついてきてくれないか」

「なによ、つまらない物だったら怒るわよ」

「おもしろいかどうかはイザベラ次第だろうさ」

イザベラ、キアラ、カルラは司令室を後にして地下の研究所へと向かった。

ほぼいつも通りのルートで、見下ろし型の実践試験場の観察室に3人は入った。

そこには研究員はおらず白髪のツインテールの髪型になったディアがいた。

その姿を見てイザベラ少し残念そうな顔をした。

「ディア、貴方いつからツインテールなんて試すようになったのよ」

ディアの姿をした者は首を傾げてカルラへと話した。

「カルラ、僕のことを説明していないのかい?」

あえて日本語で会話がされ、一人称の違いに疑問を持ったのはキアラだった。

「あれ、いまぼくって」

「そうだよ。日本語で話しかけた方が面白い反応をされるだろうって言われたからね。

住む地域によって人間は一人称の扱いに幅があるのだろう?

英語だとIやMEで終わってしまうんだっけ?」

確かに声はディアのものだった。

何かに気づいた2人はマジマジと白髪の少女を眺めた。

そんな2人を見てカルラは思わず表情が緩くなってしまった。

「こうして会わせてみると2人ともおもしろい反応をするね。

まだわからないのか、それとも信じられないのか」

イザベラは少し不機嫌な顔になってカルラへ話した。

「いい加減何が成功したのか教えなさい。

ただのコスプレなんて言ったら許さないんだから」

「もういいよ、いつも通りで」

カルラがそう伝えると白髪の少女は口を開かずに会話をはじめた。

「こんな姿になってしまったけど、ぼくはぼくだ。

キュウべぇだ」

種明かしをされて2人は驚いた顔をした。

イザベラについてはそのあとににやけ顔になってキュウべぇの顔に近づいた。

「何あんた、人間の殻に入れられたの?

カルラすごいじゃない、もしかして人間の体のまま増殖しちゃうわけ?」

「いや、インキュベーターの意思はこの体に固定されてさらに増殖もできないようになっている。

つまりは世界にキュゥべえはここの一体しか存在していないことになる」

イザベラはその話を聞いて笑いながらキュウべぇに銃を向けた。

「ならこいつ殺せば全部解決するか!」

銃を向けられたキュウべぇは怯えたような動きをし、キアラはイザベラを止めに入った。

「やめろイザベラ、すぐ殺すのは早計過ぎる」

「どきなさいキアラ、そいつを殺せないわ」

その様子を見ていたカルラは話し始めた。

確かにこいつを殺せばインキュベーターは人間との接触は叶わなくなるかもしれない。

しかしこの体を失った時点で今までの体が再インストールされて再び神出鬼没になってしまう危険もある。

そうなればここに縛り付けておいた場合以上に、余計な願いを叶えられる可能性も出てくる。

君ならどっちが現状有益かわかると思うが」

イザベラはカルラに向けていた目を一度キュウべえへ向けてカルラへ視線を戻した後に銃をしまった。

「まあいいわ。ここにいる限り願いによる妨害はないってことだし。

でもしっかり監視しておきなさいよ。逃したら流石にカルラでも銃殺だからね」

「わかってるさ。今はキュウべぇを使った感情の実験を進めているし、私にも逃げられては困る」

「へぇ、感情の実験ってどんな」

カルラは後ろの机の上にあるレポートの一部をイザベラへ渡した。

「後でしっかりさせたものを渡すが、インキュベーターには現在感情が芽生える前兆が見られる。

無感情の生物に人間のような感情を覚醒させることはできるのかという問いに、前向きな結果が導き出される可能性がある」

イザベラがレポートを読む中、キアラは横からこっそりとレポートの中身を見た。

その中には痛みに関わる項目が多く、銃に撃たれるだけではなく爪を剥がされたり氷水につけられたりと言った内容が見えた。

後半には食について味覚をどう捉えるかの実験も書かれていた。

「カルラ、拷問の報告書にしか見えないんだけど」

キアラは思わずカルラにそう伝えてしまった。

「そう思ってしまうのも仕方がない。

マイナスの感情は動物ならば誰でも持っている可能性があるものだ

人間のようなプラスな感情を持つのは稀だ。

それを試すのはマイナスの感情を表に出せるようになってからだ」

そう聞いてもキアラは難しい顔のままだった。

「わかるようなわからないような」

イザベラは一通り目を通したようで報告書の一部を表紙へ捲り直した。

「まあ恐怖で表情が変わり始めているのはいい傾向よ。

さっき銃を向けた時もいい反応していたし」

キュウべえは少し呆れた時にするような表情をしていた。

イザベラは報告書の一部を近くの机に置いてキアラに向けて笑顔で話し始めた。

「気分がいいわ、キアラ、ディナー行くわよ。

最近話題になっている、高級料理を格安の限界にチャレンジしているレストランが気になっているのよ」

「なんだその矛盾なコンセプト。

いやそれよりも明日は中華民国の今後についての会議にむけて、叔父さんと話し合いするんじゃなかったのか」

「大丈夫よ。明日の午前中をすっぽかしても十分に間に合うから」

「わかったよ。まったく、気まぐれに巻き込まれたケーネス叔父さんが可哀想だよ」

2人が部屋を出ようとすると、イザベラが扉の前で立ち止まってカルラに振り返って忠告した。

「カルラ、そいつを絶対外に出すんじゃないよ」

「わかっているさ」

2人は部屋を出ていき、カルラとキュウべえだけが部屋にいる状態になった。

「さて、ディアにも言っておかないとな。

インキュベーター、ついてこい」

キュウべぇは何も言わずにカルラへついて行った。

 

back:2-3-10

レコードを撒き戻す:top page

Next:2-3-12

【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-3-10 神浜鎮圧作戦・その6

水名区北側、ここではディアが謎の船から発射された10発のミサイルを眺めていました。

「まさか試験艦がこうもあっさり沈むなんてね」

海を眺めてみると巡洋艦を蹂躙していたはずの首長竜が消えていることに気付いた。

「なんだ?海はもういいってか。

じゃあ次の標的はこっちか」

そう思いながら各ミサイルを目で追っていると、魔法少女の集団がディアへ近づいてきた。

その集団はディアに気づかれないよう周囲を囲み、殺意を向けていた。

ディアは特に気にせず盾役のディアの盾に仕組まれた棒を取り出した。

それを手に持って、腕部分に装備している装置に組み込まれたライト部分が黄緑色に光ると、折りたたまれていた部分が開いて螺旋模様を描いた。

棒の先端にはピコピコハンマーのようなものが膨らみ、ディアはその先端を魔法少女がいるであろう場所へ向けた。

手元から螺旋状の部分を黄緑色の光が登っていき、それが先端に到達しようという時に魔法少女達は慌てはじめて右側からは魔法で生成された騎士の集団が迫ってきた。

その方向へは盾持ちのディアが立ちはだかり、螺旋状の武器は先端方向へジェット機が横切ったのかと思えるほど素早い衝撃を放った。

衝撃波が通った跡は地面がえぐられ、逃げ遅れた1人の魔法少女は衝撃波に触れただけで体がバラバラになってしまった。

衝撃波は100mほど先まで伸びて道中巻き込んだものは100m先の廃墟に全て打ち付けられた。

「いい威力だけど即効性に欠けるか」

そう分析している間に盾役の方では魔法製の騎士の攻撃を受け止めていた。

「それじゃあ次はこっちだ」

魔法少女達が一斉に襲いかかってきたところにディアは飛び上がり一本角が生えた魔法少女へ螺旋状の棒を向けると瞬時に先端から衝撃波が前方に発せられた。

一本角が生えた魔法少女は反応できるはずもなく衝撃波を受けて地面に打ち付けられてしまった。

「結奈さん!」

そう呼んで騎士の格好をした魔法少女が結奈と呼ばれる魔法少女へ駆け寄り、ディアにはやけに足が速い魔法少女が斬り込んできた。

その魔法少女へは盾役が反応し、攻撃を受け止めるとディアは足が速い魔法少女へ武器を向けた。

盾役が避けたと同時に衝撃波が出たがとっくに魔法少女はいなかった。

そりゃあ間に合わないか。

そう思ったディアは螺旋状の武器を盾役の背中にしまった。

それと同時に背中に背負っているコンテナが開いてそこからアームが伸びてきて拳銃サイズの銃剣が2丁ディアの両手へ運ばれた。

銃剣はサブマシンガンタイプの連射が効くもので刃は持ち手部分まで広がっていて容易に持ち手部分を切りつけるのは叶わない。

銃剣を両手に持ったディアはコンテナを背負っているとは思えないほど軽やかに走りながら結奈に向かって銃弾を放った。

連射された銃弾は立ち上がれない結奈と介抱している騎士の魔法少女めがけて飛んでいった。

そんな2人を庇って3人の魔法少女が射線に立ちはだかり、3人ともに銃弾で倒れてしまった。

銃弾をばら撒くディアの横からは涙を流しながら青色の魔法少女が斧を振り下ろしてきた。

それを軽やかに避けたディアは青い魔法少女を見てニヤリと笑った

「そうか、あんたそんな度胸があったか」

「三女、てめぇなんで出てきやがった!」

火炎放射器を持つ魔法少女は三女と呼ばれる魔法少女へ怒鳴った。

すると三女は啜り泣きながら斧を構え直した。

「どうせ死ぬなら、悔い残したくない!」

そう言って三女に続いて他のSGボムをつけられた二木市の魔法少女達がディアへ襲いかかった。

火炎放射器の魔法少女へかかりっきりの盾役に構わず、ディアは二木市の魔法少女へ引金を引き続けた。

弾切れする頃にはサブアームがコンテナからマガジンが取り出され、2丁の銃剣からマガジンが自重で抜け落ちるとサブアームがマガジンを装填してディアはさらに撃ち続けた。

何人かSGボムがつけられた魔法少女が銃弾で倒れ、それでも弾幕を潜り抜けてくる者はいた。

そんな魔法少女達へディアは銃剣についた刃部分で殴り付けていた

その刃はもちろんアンチマギアが塗り込まれたものであるため刃に接触した魔法少女の武器は手応えなく消滅してなすすべなくディアにソウルジェムを破壊されていった。

周囲の魔法少女は作戦変更のためか瓦礫の後ろへ姿を隠していった

「学ぶ脳みそがないのかい?」

そう言いながらディアは銃剣をサブアームへ預けて盾役の背中から螺旋状の武器を再度取り出した。

そして結奈が隠れた瓦礫目掛けて長めに溜めた衝撃波を放った。

しかし瓦礫の後ろに肉片は確認できず、疑問を抱いた頃には脇腹部分へいつの間にか魔法少女が刃を突き立てていた。

ディアの命の危機を感じる脳波を感じ取り、脇腹部分には小さなアンチマギア製のシールドが発生して刃が肉体に刺さることはなかった。

その魔法少女は驚いて凄まじいスピードで姿を隠してしまった。

「咄嗟の発動はもう問題なさそうだな。いやぁほんとに助かるよ」

魔法少女からの反応は無かった。

「まだまだ付き合ってもらうよ。

試したいものは山ほどあるんだから」

そう言ってもう一度螺旋状の武器を充填し始めると火炎放射器を持つ魔法少女が飛び出してきて炎を放った。

それには盾役が反応したが斧を持った魔法少女が突っ込んできたためそれについてはサブアームが銃剣を撃って対応した。

そこへ畳み掛けるように高速で瓦礫が飛んできてそれは螺旋状の武器を壊してしまった。

ディアは腕のウェポンからアンチマギアを含んだグレネードを2発瓦礫が飛んできた方向へ撃ち込み、後ろへ下がると左右から挟み込むように結奈と騎士の格好をした魔法少女が武器を振るってきた。

するとディアは両腕のウェポンを2人に向けるとそこから生成されたシールドで攻撃を受け止めてしまった。

そのシールドは魔法製を模倣した科学で生み出されたシールドであった。

「こうもいい結果が続くとアドレナリンが止まらないなぁ!」

ウェポンの横側から排熱が行われるとディアの腕はシールドで覆われて騎士の魔法少女へ殴りかかった。

それはカンガルーに殴られる以上の衝撃で、避けきれずパンチを受け止めた魔法少女の右腕はぐにゃりと曲がってしまった

骨が折れる音と共に叫び声が聞こえ、後ろからは殺意がこもった棍棒が迫ってきた。

それもシールドで受け止めてしまい、ディアはとてもご満悦だった。

そうしている間、盾役に阻まれていた火炎放射器を持つ魔法少女は斧を持つ魔法少女に助けられてやっとディアに向けて殴り込んできた。

「出鱈目なものばかり出してきやがって!」

「あんたらよりは真っ当だよ!」

ディアと火炎放射器の魔法少女は拳をぶつけ合い、共に力が拮抗していた。

ディアは一歩引いて、盾役の方を見ると斧を持った魔法少女にかかりきりであることを認識した。

「もういらないや」

そう言ってディアは大きなボタンがついたタブレットを取り出して数字を入力し出した。

「あれよ、さくや!」

結奈がそう言うとさくやと呼ばれる魔法少女が突っ込んできた。

さくやと呼ばれるその魔法少女に対してディアは脳内で想像しただけでコンテナが反応し、コンテナ内の別のサブアームが直剣を取り出してさくやに対して振り下ろした。

それをさくやは無理な姿勢で回避して地面を痛々しく転がっていった。

そうしている間にディアにはクレーンゲームのアームのようなものが迫っていた。

それに対してはサブアームの銃剣が対応して銃弾を受けたクレーンゲームのアームは消えてしまった。

「あんたらは何もできないさ」

そう言ってディアは数字を入力した後ボタンを押した。

するとアオを含めた蛇の宮の魔法少女のソウルジェムが光り始めた

「い、いやだ!死にたくない!」

「助けて!」

蛇の宮の魔法少女はその場でオドオドするしか無かった。

他の二木市の魔法少女もどうしたらいいのかわからなかった。

アオもとうとう盾役に敵わなくてその場に座り込んでしまった。

そして何もすることができず、光ったソウルジェムが一斉に爆発した。

爆発した位置によるが、体の部位も吹き飛んで中には頭が粉々になる者、上半身が吹っ飛ぶものなど、爆発は肉体が残る程度の小さなものだった。

皆が唖然とする中、結奈はディアに向けて金棒を振り下ろした。

しかしそれは盾役に防がれて魔法でできた金棒は消え去ってしまった。

「貴様は!」

怒り狂った結奈は金棒を再度生成してその場で振りかざした。

「対象…変更!」

地面を叩いた衝撃はそのまま地面へは伝わらず、対象変更の魔法を受けてディアの脳天へ衝撃が伝わるはずだった。

しかしディアの服は特殊部隊同様に魔法の影響を受けないようになっているため頭部であっても無意味だった。

「許さなイ、お前を叩きツブス!」

そう言うと結奈はドッペルを出してディアに向かって襲いかかった

「結奈さん…」

周りの魔法少女がショックで動けないでいる中ディアはドッペルと対面して喜んでいた。

「これが魔法少女のまま出せる魔女ってやつか!」

サブアームの銃剣が銃弾を放つもののドッペルにはあまり効いていないようだった。

「そうかい、なら!」

4本目にあたるサブアームがコンテナから伸びてきて銃剣とは別のサブマシンガンをディアの手元まで運んだ。

そしてそのサブマシンガンをドッペルに向けて放つとドッペルは怯んだ。

「なーんだ、案外単純じゃないか!その魔力は魔女に似てるだけってかい?!」

ドッペルが腕を伸ばしてくるとディアはサブマシンガンを撃ちながら後方へ下がった。

火炎放射器を持つ魔法少女は追撃しにこようとするが再度盾役が目の前に立ちはだかった。

「うぜぇんだよ!おまえ!」

盾役へのイライラが増える一方の中、クレーンゲームのアームが盾役にちょっかいを出して注意を逸らし始めた。

「樹里、いけ!」

コントローラーを持った魔法少女がそう言うと礼を言うことなく樹里はディア目掛けて直行した。

樹里は銃弾を避けながらディアのコンテナに乗っかるとディアの首を強く締めた。

ディアははじめて慌てる表情を見せてコンテナからアンチマギアが付与されていない直剣を持ったサブアームが飛び出してきて樹里の背中へ突き立てた。

それでも樹里は離そうとせず、銃剣を持つサブアームが動かなくなり、意識がもうろうとなり始めたディアは持っているサブマシンガンを落としてしまった。

邪魔が入らなくなった結奈のドッペルは両手でディアを鷲掴みにしようとした。

それに対してディアの物理シールドが反射的に反応してすぐに握り潰されはしないものの、シールド内部に樹里がいたままで引き続き首を締め続けた。

「うぐぐぐぐぐ・・・」

苦しそうにうなりながら10秒ほどは耐えられたものの、ついにディアの首の骨が折れてしまい、それと同時に物理シールドも消えてあっさりとディアはドッペルに握りつぶされてしまった。

血と肉が混じったものが周囲に飛び散る中、樹里はドッペルの腕に倒れかかった後、背中を上にして地面に倒れ込んだ。

樹里の背中には4本の直剣が刺さったままだった。

盾役はディアが潰されたと同時に糸が切れたかのようにその場へ倒れ込み、持っていた盾と背負っていた螺旋状の武器はその場で爆発した。

樹里のもとへはコントローラーを持った魔法少女と竜ヶ崎の魔法少女が集まった。

「樹里!生きてるなら返事しろ!」

「樹里さん!」

樹里が呼びかけに答えない中、ドッペルがおさまった結奈の側へは騎士の格好をした魔法少女とさくやが近寄った。

「結奈さん、大丈夫っすか」

結奈はその場に膝をついた状態で涙を流しながら地面へ叫んだ。

「助けられなかった、また助けられなかった!

私は、どうすればよかったのよ。

みんな、みんな…」

ここまでの様子をミサイルから飛び出した魔法少女のうちの1人が見ていた。

特に手出しすることなく静観することにした彼女は仲間にテレパシーで伝えた。

[二木市だっけ、その連中は一応大丈夫だったよ。

そっちはどうだい、カレン]

 

 

静香とちはるはドッペルが出たまま戦いを続けていました。

静香側の時女一族は何度打ち倒されても起き上がり続けました。

その様子を見て涼子は言葉を漏らしてしまいます。

「お前ら、なんでそんなになるまで必死に人間側につくんだよ」

この問いに対して静香側の時女一族の1人が答えます。

「どんな状態になろうとこの国を守るための存在が時女一族。

たとえ一部の人間に巫が道具のように思われていようと、この国が存続するためならば、

喜んでこの身を捧げます」

そこへちかが会話に割り込んできます。

「あなた達もこの国の現状を見せられたはずです。
どんなに私たちが頑張ろうとこの国はもう」

「だとしてもこの国には日の本の象徴と呼べる方達がおります。

あの方達が居られる限り、この国は不滅です!

だから私たちはこの国を守るために、こうして、目的を誤っているあなた達に立ち向かっているのです!」

「そこまで話を広げやがるか」

膝をついた状態だった静香側の時女一族の1人が立ち上がって再び武器を構えます。

「国は民あってこそ。

そんな日本国民の生活を脅かすあなた達は、日の本を脅かす“敵”です!

そんな物に、私たちは負けられないんです!」

すなおがそう語る魔法少女のソウルジェムを確認すると、黒く濁り切ろうとしていました。

そして全員に伝えました。

「皆さん下がってください!

彼女達はドッペルを出す気です!」

そう言われると皆、静香側の時女一族から離れます。

その後静香側の時女一族は次々とドッペルを出して襲いかかってきました。

花のようなドッペルがたくさん出現し、各々は鋭利な花びらを神浜側の時女一族へ飛ばしました。

それらは花吹雪となって襲い掛かり、神浜側の時女一族を傷つけていきました。

これによってすなおはちはるたちの様子を確認できなくなりました

「ちゃる、静香!」

一方、ちはるがドッペルへ指示を出すと静香のドッペルを囲うように鉤爪が出現して一斉に静香のドッペルを地面へ引き摺り込もうとします

これに対して静香のドッペルは鉤爪の数だけ腕を出現させてドッペルの台座へ触れさせないように鉤爪を掴みました。

そこからはドッペルの力合わせでした。

「シズカチャンヲヒキズリコムマデハ!」

「アナタタチヲワカラセルンダカラ!」

理性を失いかけている2人はドッペルのぶつかり合いをやめさせようとはしません。

鉤爪でボロボロになった腕の代わりに別の腕が押さえ込んだり、握りつぶされてボロボロになった鉤爪が消えたら新たな一本が現れてと拮抗状態でした。

そんな中、ちはるにはかすかにテレパシーが届きました。

「タス、ケテ…」

ちはるはそのテレパシーでハッと我に返りますがドッペルが力負けして静香のドッペルに吹っ飛ばされてしまいます。

地面を転がったちはるがテレパシーを送ってきた方向を見ると、そこには花吹雪で傷付き続けている神浜側の時女一族が目に映りました。
花吹雪によって身が切り裂かれ、巻き込まれている皆が血を流していました。

ちはるは絶望したような表情をして、おさまったはずのドッペルを再度出現させました。

「みんな!間に合って!」

そう言って花吹雪の中、7本の鉤爪が地面から出現して次々と神浜側の時女一族を花吹雪の射程から外して行きました。

一人一人と射程外へ連れ出されますが皆肌にはたくさんの切り傷がついていて中には目が花びらによって抉られた子もいました。

ちはるが必死に仲間の救出を行っている中、遠くからは旭が花吹雪を発生させているドッペル達へ銃撃を行っていました。

ソウルジェムを避けて胴体や四肢、果てには頭を撃ち抜き続けていますが誰もドッペルをおさめる様子がありません。

「これでは過去に起きた暴走する魔法少女と同じでありますよ。

最後の手段となるではありますが…」

旭が花吹雪を発生させているドッペルのうち1人のソウルジェムへ狙いをつけようとしていると、何者かが近づいているところを目撃します。

「あれは?」

一方、静香はドッペルを出したままちはるの背後へ近づきます。

「アナタタチヘオシエコンデアゲル」

ドッペルは腕を出現させてちはるめがけて振り下ろしました。

振り下ろそうとする瞬間に背後に気がついたため、ちはるは避けることが出来ません。

しかし、振り下ろされようとする腕はなぜか動きを止めました。

潰されなかったことに疑問を持ったちはるは静香を見るとドッペルが糸のような物に縛られて身動きが取れなくなっていました。

花吹雪を発生させているドッペル達にも糸が縛り付けられ、遠くへと次々に投げ飛ばされます。

これで神浜側の時女一族で花吹雪にさらされるものはいなくなりましたが、皆切り傷と血だらけで動ける状態ではありませんでした。

「みんな…」

ちはるのドッペルはおさまり、ドッペルが投げ飛ばされた方向で唸り声が聞こえたのでみてみるといまだにドッペルを出したままの時女一族とみたことがある背中を見せる魔法少女がいました。

「あれって」

その見慣れた魔法少女は糸状の剣を出現させます。

「まさか普通にドッペルがおさまらない現象が起こるなんてね」

そう言って糸を使う魔法少女はドッペルを出す時女一族を静香を残して全員ソウルジェムを砕いてしまいました。

もちろんドッペルはおさまり、魔法少女だった肉体が転がりました。

その糸を使う魔法少女は糸の剣をおさめてちはるに近づきました。

「あなたは無事でしたか、ちはるさん」

「日継、カレン」

「まあ、今の体だとそう思われても仕方がないですね。

さて」

ちはるの頭に疑問符が残ったまま、ピリカは縛られてもがく静香に近づきました。

「まさか貴方がこんな状態になってしまうなんて。

何をやっても、貴方は人間を諦めきれなかったのですね。

カンナ、貫け!」

ピリカが雷の槍を生成させるとそれを静香のドッペルへと突き刺しました。

突き刺されたドッペルには電撃が走り、静香は叫び声を上げます。

そして静香がおとなしくなった頃にはドッペルは消えて静香はその場に倒れ込みます。

「静香ちゃん!」

そう言って静香に近寄ろうとするちはるをピリカは遮りました。

「まだだめです。正気に戻ったかわかりません」

そう言われてそのまま静香の様子を伺っていると、静香は苦しそうに起き上がりました。

そして顔を上げると驚いた顔でカレンを見ました。

「あなた、なんでここにいるの」

「正気には戻ったようですね、静香さん」

静香はそのまま戦いに移ろうとしたのか武器を取り出しますが、腕に力が入らないのかそのまま武器を落としてしまいました。

「静香ちゃん、もうやめようよ!

もう戦える子なんていないよ」

ちはるにそう言われてはじめて静香は周囲の状況を把握しました。

ソウルジェムを割られた仲間、切り傷だらけでボロボロな時女一族。

そんな周りの様子を見て静香は泣き出してしまいました。

「こんなこと望んでなかった。

ここまで傷つけあってまで戦おうだなんて、そんなことは最初は思ってもいなかったのに。

こんなはずじゃ、なかった」

そんな静香をちはるは頭を撫でながら慰めることしかできませんでした。

「私は、どうすればよかったの?」

そんな様子を眺めるだけだったカレンの近くには旭が近づいてきました。

「カレン殿、礼は言っておくであります。

あのままだと共倒れしたのは確かでありますから」

カレンは少し困った後、旭に向き直って伝えました。

早めに手当てをしないと体の維持で傷ついた子達がいたずらに穢れを溜めるだけです。

ここら辺りで治療を行う場所は決まっていますか」

「今は栄区に魔法少女が集まっているはずであります。

そこへ伝えれば助けは来てくれるはずでありますよ」

「ならば呼びに行ってもらえますか?

ほら、私たちが行ったら別の混乱が起こるでしょうし」

「それは、そうでありますな」

旭はちはるの方を向いて尋ねました。

「今の話は聞いてたでありますな、ちはる殿」

ちはるは小さく頷きました。

「我は助けを呼んでくるであります。

何かあればカレン殿に伝えるであります。

今ここで動けるのは、彼女だけでありますから」

「うん、お願い」

旭は栄区に向けて走って行きました。

カレンには仲間からテレパシーが飛んできていました。

[二木市だっけ、一応大丈夫だったよ。

そっちはどうだい、カレン]

[こっちは酷い有様だ。

まともに動ける魔法少女がほとんどいなかった。

サピエンスも自衛隊もいないのにこんなことになるなんて]

[そうか。

私たちは気にせず逃げたサピエンスを追うが、予定通りでいいんだな?]

[構わないさ。

神浜の後処理は神浜の魔法少女へ任せればいい]

テレパシーのやり取りが終わっても、静香はそれからしばらく泣き続けていました。

 

 

back:2-3-9

レコードを撒き戻す:top page

Next:2-3-11

【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-3-9 神浜鎮圧作戦・その5

ポンベツカムイが姿を現した時、その姿を見ていろは達は驚きました。

「あれって、ピリカさんが呼び出せる首長竜じゃ」

「そうであればおかしいですよ。

だってあの人たちは」

そう話している間にひなのと衣美里が梨花とれんを背負ったまま急いでもどってきました。

「お前ら高台へ急げ!」

急にそう言われてなんのことかすぐには判断できなかったいろは達ですが、海でポンベツカムイが大波を発生させているのを見て何が起きるのかを察しました。

いろは達は近くにあった倉庫の屋根へと登って波をやり過ごすことにしました。

ひなの達も無事に屋根へと移動し終わった頃に波は海岸を飲み込んで行きました。

いろは達がいる倉庫付近には地上にいたとしてもくるぶしくらいの高さ程度しか波がやってきませんでした。

波がやってきた頃、海では試験艦が爆散し、陸地には数発の対地ミサイルが飛んできていました。

「一体何が起きているの?」

 

アリナ達の奇襲を受けて状況確認を行っていた自衛隊は、さらに謎の船が現れたことでさらに混乱していました。

そんな中でも魔法少女の居場所を監視するドローンは機能していて燦の裏切り行動や二木市の魔法少女が自由に行動できていることは筒抜けでした。

「高田1佐、この状況って」

「そうだな、本来ならばここで警告して聞かないようであれば、これを使わなければならない」

高田一佐が手に持った起動装置を見ていると、司令部にはそんな魔法少女達の動向で新たな報告が入ってきていました。

「空から複数の魔法少女が現れたと言う報告があります。
ミサイルから飛び出してきた存在と同一と思われます」

「被害状況は」

「ミサイルによるものと飛び出した魔法少女によるものと2種類ありますがどちらでしょうか」

「ミサイルによる被害は把握できている。後者だ」

「では…。

主に被害を受けているのはサピエンス直属の部隊のようです。
対魔法少女に慣れていない我々では参戦は困難だと部隊長達から声が上がっています。

いかが致しますか」

「要である船隊は壊滅して地上は混乱。

残存兵の救助を優先して神浜からは撤退するように各隊へ伝えろ」

「よろしいのですか?!」

「これ以上命のやり取りは無駄だ。早く伝えろ!」

「りょ、了解」

「それよりも日本海側の様子は」

「はい、間違いなく日本海域ギリギリで中華民国の艦隊が待機していることを確認しました」

「防衛大臣からは何もないのか」

「それが、防衛大臣からは何もないのですがこちらへ向かっているという話を聞いています」

「大臣自らだと、一体どういうことだ」

 

戦場ではミサイルから飛び出してきた魔法少女達が活動を開始していました。

「いやぁ、案外なんとかなるものだね」

そう言った魔法少女は工匠区付近で青白く輝くナイフを取り出して特殊部隊が隠れている瓦礫へ投げ込みます。

そのナイフは瓦礫へ突き刺さった途端に爆発し、爆散した瓦礫の一部が特殊部隊達を襲います。

「なぜここがバレている!」

「内部情報が筒抜けだって噂、本当かもしれないな」

「いいからあの化け物を止めるぞ!」

特殊部隊はナイフを持った魔法少女以外に1人他の魔法少女が迫ってきていることを察知し、アンチマギアを周囲に散布しながら魔法少女がいると思われる場所へ迎撃を行います。

しかし手応えはなく、魔法製だと思われたナイフはアンチマギアを貫通して地面に刺さったナイフは接続されていた起爆装置が作動してどのみち爆散してしまいました。

その爆風でアンチマギアが離散し、その隙間を縫うようにもう1人の魔法少女がマグナムを数発撃ち込み、これにより兵士が1人即死、複数人が怪我を負ってしまいました。

そんな様子を見てマグナムを撃ったカウボーイ風の魔法少女は嘆きました。

「どうした?ヨーロッパから出張してきたにしては情けないじゃねぇか。
これじゃあ一方的にこっちがぶっ殺すだけになるじゃねぇか。

ほら、どうした!」

カウボーイ風の魔法少女は現物のマグナムを交えることでアンチマギアをモノとはしない戦いを繰り広げます。

そんなカウボーイ風の魔法少女は目の前の兵士を殺すことに夢中になっていたのか、回り込んだ特殊部隊員には気付いていませんでした。

その兵士に対してはナイフを持った魔法少女が気付き、ナイフを投げるとそれは首を貫いて兵士は首と口から血を出しながら倒れました。

「回り込まれるとは油断してるんじゃないか?」

「なに、やり用はあったさ」

工匠区 栄区寄りの地域ではサピエンス側の魔法少女達をどこに待機させようかと話し合っているところにミサイルから飛び出した魔法少女の1人が飛来してきました。

その魔法少女は修道女のような服装で、廃墟に対して魔法で生成した岩を投げつけると、そこからサピエンスの特殊部隊が飛び出してきました。

特殊部隊員達は岩を生成する魔法少女に対してアンチマギアとアサルトライフルで応戦しますが、それらをすり抜けた岩石が反応しきれなかった1人の隊員の顔面に直撃して即死してしまいました。

岩を生成する魔法少女は岩の壁を生成させながら十七夜達がいる場所まで後退してきて話しかけました。

「what are you doing here!」

「ここで何をやっているだと、まずお前は誰だ」

十七夜は岩を生成する魔法少女に対してそう聞き返すと、相手が困った顔を少しした後に何か閃いたように十七夜を見ます。

[ごめんごめん、これの方が通じるか。

少なくとも私たちは味方だよ]

[そうか、考えたな。

だがお前達が何者かはっきりしない以上、信用するわけにはいかない]

[信用なんて今はいい。あの兵士たちは私たちが相手する。

神浜のあんた達は避難にでも専念しな。信用するかどうかは任せるけど、ここに棒立ちしてると間違いなく死ぬよ]

岩を生成する魔法少女は十七夜へそう言って岩の壁の向こう側へ行ってしまいました。

壁の向こう側では既存の岩を操って特殊部隊を蹂躙し始めています。

壁の向こう側で特殊部隊員の悲鳴しか聞こえない中、十七夜へ令が話しかけます。

「あいつのテレパシーは観鳥さん達にも聞こえました。

ここはあいつを放っておいて避難を優先させませんか。

別地域の魔法少女と戦ってみんなクタクタですよ」

十七夜が一度保護した魔法少女、一緒に戦った魔法少女達を見ると疲れた顔をしているものが大半でした。

「そうだな。

我々はいまできることに専念しよう」

「工匠区に該当する他の場所でも特殊部隊が紛れていたなら、中央寄りに避難した方がいいと思うけど」

「栄区のキャンプは健在らしいですよ。そっちに行きましょうよ!」

「そうか、では移動だ。

動ける者は動けない者の手助けをしろ」

東側の魔法少女達はこうして栄区への移動を開始しました。

 

南側には2人の魔法少女が飛来し、その2人は真っ直ぐマッケンジーたちの部隊へ向かって行きました。

[おいおい、予定より数が多いよ]

[数が多かろうがぶっ飛ばせばいいだけだ]

マッケンジー達は迫ってきていた大波を携帯式緊急救命ボートでやり過ごしていて、倉庫の陰で情報集めをしていました。

上空から魔法少女がやってくると知るとマッケンジー含んだ3人の特殊部隊員がグラップリングフックで倉庫の屋根へ登ってやってくる魔法少女を迎え入れる態勢をとります。

1人の魔法少女は銀製の翼を広げて鋭い銀の羽を地面へ向かって五月雨に放ちはじめました。

マッケンジー達は移動しながら銀の羽へアサルトライフルで弾幕を張って屋根へほとんど羽を寄せ付けません。

流れ弾は降下中の魔法少女が拡げる傘にも当たりはしたものの、予定通り傘が空中分解すると、もう1人の魔法少女は魔法性の青白く輝く鞭を4本倉庫の屋根に放ち、その鞭より前方へ飛び込むことで屋根から抜けようとする鞭でブレーキがかけられて荒々しく着地しました。

そこへマッケンジー達がアサルトライフルを撃とうとしましたが、空を漂う銀の羽を放つ魔法少女によって妨害されてしまいます。

マッケンジーは鞭の方、残り2人は銀翼の魔法少女を相手にすることにしました。

その判断は一瞬のアイサインで済んだようです。

2人が銀翼の魔法少女を牽制している中、マッケンジーは鞭の魔法少女へ突っ込みながら背中に背負っていた直剣を引き抜き、柄頭を引っ張ると直剣の先が割れてさらに長い大剣サイズと変化します

飛び出た刃は紫色に輝いていてそれはアンチマギアが練り込まれていることがすぐにわかりました。

鞭の魔法少女はマッケンジーへ鞭を放ったものの大剣によってあっさりと切り落とされてしまいました。

鞭はそのまま消滅していき、マッケンジーが大剣を振り下ろし、それを避けるように鞭の魔法少女は後ろに下がります。

マッケンジーは振り下ろした勢いで前転し、1回転する頃には腰のサブマシンガンを鞭の魔法少女へ向けていました。

焦った顔をしながら鞭の魔法少女は袖から実体のある鞭を伸ばして、器用にしならせてサブマシンガンを防ぎます。

そのままサブマシンガンが放たれることはなく、その場からマッケンジーが移動したと同時にマッケンジーがいた場所には銀の羽が突き刺さっていました。

「この強さ、こいつらサピエンスの本命か」

マッケンジーのインカムへ通信が一つ入りました。

「魔法少女の反応がない場所まで撤退完了。

よってSとN班についてはクリアです。

EとWは応答なし」

「OK。我々の役目は終わりだ」

マッケンジー達はその場で数個のアンチマギアグレネードを放って煙幕のようにアンチマギアが散布されました。

その隙に3人はグラップリングフックを活用してあっという間に戦線を離脱してしまいました。

「ちくしょう、なんだあいつら」

ここまでの一部始終をいろは達はただ見ることしかできませんでした。

「なんだあれ、あいつらの動き目で追えなかったぞ。

魔法少女と戦ってたの、人間だよな?」

「違いないわ。人間にも魔法少女を簡単にあしらえる存在がいるってことよ。
他では好き放題できてるって話もあるし、質はバラバラなのかしら」

みんなが唖然としている中、マッケンジー達と戦っていた2人がいろは達のところへ近づいていきます。

[あんた達は何が目的でここにいる?]

この問いに回答したのはやちよさんです。

[私達は救助が必要な魔法少女がいないか探しているところよ。

あなた達はなんなの?]

[大事な安全地帯を守りにきた。

占領しようだなんてわけではないからそこは勘違いするな]

テレパシーのやり取りに銀翼の魔法少女が飛んだまま割り込んできます。

[私たちが知りたいのは、お前達は生きることに専念しているのか、兵士達を殺すことに専念しているのか。

どっちなのかだ]

その問いかけにはいろはが答えました。

[生きるため、です。

この後私達は、救助活動に戻ります]

「ダメよ、まずはいろはを安全な場所に連れて行かないと」

銀翼の魔法少女と鞭の魔法少女は少し顔を合わせた後、銀翼の魔法少女がテレパシーで話しかけてきます。

[とりあえずあいつらを殺すのは我々だけでいいということはわかった。

後で詳しいことはミアラから聞くことになるだろう。しっかり生きろよ]

そう言って銀翼の魔法少女は鞭を持つ魔法少女に向けて手を伸ばし、鞭の魔法少女はその手をつかんだ後、銀翼の魔法少女に抱えられる状態で特殊部隊が逃げた方向へ飛び去ってしまいました。

いろは達が少し思考を止めてしまっていると、さやかと杏子がやってきました。

「ここにきてって言うから来たんだけど、

もしかして終わっちゃった後?」

「えっと、そうなっちゃうわね」

「なんだよ、やっぱ急ぐ必要なかったじゃねぇか」

「いや助け求められたら急ぐでしょ」

見滝原組が話している間、ひなのはやちよへ話しかけました。

「あたしらは怪我人を抱えているから栄区へ行く。

お前達はどうする」

やちよはいろはの動かなくなった左手を見た後。

「私たちも栄区へ一度行きましょう。

これ以上いろはを連れ歩くわけにはいかないわ」

「じゃあ、目的地は栄区だね!」

この後いろは達は栄区へ、見滝原組は引き続きなぎさの捜索を行うことにしました。

 

北養区では一度落ち着いたので別の地域へ応援に向かおうとしていました。

そのためにみふゆ達が森を抜けた瞬間、正面から銃弾の雨が襲い掛かります。

その銃弾を避けられたのはみふゆと燦だけでついてきていた天音姉妹とミユリは銃弾の雨にさらされてその場に倒れてしまいました。

「そんな!教官これはどういうことですか」

「私も紛れていたなんて知らない」

銃を向けている特殊部隊員はみふゆ達へ忠告を行いました。

「そのまま身動きをとるな。

今は大人しくしていろ」

みふゆは幻覚の魔法を使うタイミングを見計いますが、森の方から悲鳴と銃声が聞こえてきます。

W班が囮魔法少女、自衛隊が共に機能しなくなったと判断したためです。

撃たれた魔法少女の中にはSGボムを仕掛けられた魔法少女も含まれていました。

森の中の悲鳴が聞こえてみふゆはその場から動こうとしますが燦に止められてしまいます。

そしてテレパシーで話しかけます。

[みふゆさん、動いちゃダメだ]

[でもこのままでは]

[大丈夫だ、宮尾と安積を信じるんだ]

全くみふゆが安心できていない状況の中、銃声がした森の方から爆発音が聞こえてきました。

また特殊部隊が何か仕掛けたのかと思ったら特殊部隊員も何か驚いている様子で、彼らが想定していない爆発であることがわかります。

そんな状況の中、林の中から見慣れない魔法少女が走り込んできて、特殊部隊員が魔法少女の反応に気づいた頃には1人の隊員が湾曲したナイフを銃で防いでいました。

その魔法少女を遠ざけようと必死になっている隙に、みふゆと燦は特殊部隊員へ攻撃を行って特殊部隊員たちと距離を開けることができました。

隊員の中の1人がマッケンジーへ通信を行うと爆発音があった森の中からパチンコによって放たれた魔法の球が隊員の頭を捉えて、隊員の頭には穴が空いた状態で倒れてしまいました。

さらにもう1人には太い針のもののようなものが飛んできましたが間一髪で避けました。
しかし背後からナイフを持った魔法少女に刺されて殺されてしまいます。

「皆、離脱してマッケンジーと」

そう指示をしていた隊員に対してナイフを持った魔法少女が瞬時に迫り、その隊員はその場でアンチマギアを撒いたものの意識外から飛んできたニードルガンに貫かれて殺されてしまいます。

「フーン、良い反応だったじゃん」

みふゆ達が森の中を見ると時雨にはぐむ、そして灯花に見慣れない魔法少女が1人いました。

そして灯花がこう話し始めます。

「まったく、敵が尾行してくるような状況で私達を呼びに行かせるってどう言うこと?

頭ワルワルじゃないの?」

「灯花、それってどういう・・・

それよりもたくさんの魔法少女が撃たれてしまって」

[ソウルジェムが割れた者もいるが、徹底的に銃弾を撃ち込まれているだけの者もいる。

治療施設があれば良いのだがここにはあるのか]

そうテレパシーで話しかけてきたのは自然と灯花の横にいるニードルガンという太い針を銃のような者で打ち出す武器を持った魔法少女でした。

みふゆはどう返事をしようか少し迷ている中、みふゆ達に銃を向けていた隊員たちはナイフを持った魔法少女と戦う二人の隊員しか生きていない状況でした。

[な、なんなんですかあなた達。あの兵士たちを簡単にあしらうなんて]

ナイフを持った魔法少女が苦戦している様子を見ていたニードルガンを持つ魔法少女は、一発兵士に向けて撃ち込むとそれは隊員の脇腹に命中し、怯んだ隙にナイフで首を貫かれてしまいます。

残り1人が銃をこちらに向けますが灯花が傘を兵士に向けると炎の火の玉が弾丸のように上空から降り注ぎ、兵士はアンチマギアを展開させるものの爆風でまき散らされて無惨に燃やされて死んでしまいました。

「爆風だけでどうにかできちゃうんだから楽なものだね」

「え、ええと」

[そろそろ質問に答えてくれないか]

みふゆは頭の整理ができない中一呼吸して答えられることだけ答えました。

[以前はあったのですが、攻撃を受けてからはここらあたりでキャンプを構えようとしていました]

[それでこのザマか。

森林に潜む敵は殲滅したはずだから急いで撃たれた奴らの体から銃弾を取り出したほうがいい。

弾丸に含まれたアンチマギアが体に浸透して魔力で回復できず体が腐敗するだけになってしまう]

「そんな、銃弾を体から取り出すなんて」

「流石に私でもそんなことできないよ」

「ぼ、僕たちもそういうの専門外だし」

その場でやろうとする魔法少女は誰1人いませんでした。

「けっ、めんどくさいな。

アバ、弾丸取り出して行くから手伝え」

「わかったよー」

そう言ってアバと呼ばれる湾曲したナイフを持った魔法少女がニードルガンを持つ魔法少女へついていきました。

こうしてしばらくの間、北養区ではミサイルから飛び出してきた魔法少女を中心に銃弾で倒れた魔法少女の治療が行われました。

 

 

back:2-3-8

レコードを撒き戻す:top page

Next:2-3-10

【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-3-8 神浜鎮圧作戦・その4

南側ではマッケンジー達の舞台と直面したいろは達。

マッケンジー達を見つけた瞬間にほむらは弓を構えて隊員の1人を撃ち抜こうとしました。

しかしその隊員は迷わずほむらが放った弓矢を避けて特殊部隊メンバーは皆遮蔽物へ身を隠した後、いろは達のいる場所へアンチマギアのグレネードを投げ入れました。

いろは達はすぐにアンチマギアの煙が至らないような場所にある瓦礫に隠れました。

「こんな時に魔法少女達に遭遇するとは」

「どうしますか、対応完了後に音の出所を破壊しますか」

「いや、構わずロケットランチャーを持つ者は自衛隊が送ってきた推定位置まで移動してくれ。

ディア経由で送られてくる情報の通りであれば沿岸の公園に設置されたスピーカーを壊せば我々の目的は達成だ。

気にせず向かえ!」

「イェッサー!」

瓦礫から姿を見せて南側へ向かった隊員に対してやちよは槍を放ち、いろはは瓦礫に身を晒しながらクロスボウを放ちます。

それに対してマッケンジーがアサルトライフルで飛んできた槍へ銃弾を撃ち込むと飛んできた槍すべてに命中させて、弾が当たった瞬間に魔法で生成された槍は次々と消え去ってしまいました。

そのままマッケンジーは身をさらしたままのいろはを見逃さず、いろはに対してアサルトライフルを撃ち込みます。

その中の一発がいろはの左肩を貫きます。
銃弾を受けた勢いに任せていろはは瓦礫に隠れるように倒れ込みます。

「いろはちゃん!」

まどかがすぐにいろはへ駆け寄って銃弾でできた傷口を塞ごうと回復を試みます。

しかし傷口が塞がることはなく、いろはは不思議な顔をしていました。

「左腕が、動かない・・・」

そのいろはの反応を見てその場にいた皆が絶句しました。

「まさか、アンチマギアの影響を受けて」

そうやちよが分析している間に瓦礫に隠れていた隊員がやちよたちを銃で牽制していました。

「まずは布で傷口を塞いで!」

やちよ達がいろはに夢中になっている間にロケットランチャーを持った兵士たちは南へ抜けてしまいました。
その様子はひなの達の目にも映っていました。

「うまく連携が取れているようだな。あいつらロケットランチャーを持って南側へ行ったよな?」

「ここから南側って、りかっぺたちが気絶しちゃったところじゃん。
もしかして、その原因の対処が目的だったり」

少し考えた後、ひなのはいろは達のもとへとむかいました。

「まさかこんなところで敵にあってるとはな」

「ひなのさん、コンテナターミナルに居たのでは」

「お前らならあそこで起こったことくらい知ってるだろ?
あの船団はどうしようもないうえに、周知されていない罠まで作動しやがった。
踏んだり蹴ったりだよ」

「灯花ちゃんが妨害装置を起動してしまったんですよね」

「あれのせいで仲間が動けなくなったんだよ」

「ええ!?でも灯花ちゃん止めてくれるとは思えないし」

「あいつには期待していない。だがあの兵士たちの目的はスピーカーの破壊だろう。
奴らはこちらで目をつけとく。それだけを伝えにきた」

「そうですか、わかりました」

ひなのはその場を影から見守っていた衣美里ちゃんと一緒に離れました。

「大尉、魔法少女の一部も海岸へ向かって行きました」

「あれは音の出所を破壊するまでは放っておけ」

「・・・よろしいのですか」

「我々の第一目標は動けないS班の救助だ。
ここでこうして構えているのも救助を妨害されないための牽制だ」

そう言いながらマッケンジーはアンチマギアが含まれたグレネードをいろはたちがいる場所へ撃ち込みます。

そのグレネードに対してマミがマスケット銃を放って銃弾がグレネードへ接触した途端に空中でアンチマギアを撒き散らしながら爆発しました。

こうして牽制し合っている中、まどか達へさやかからテレパシーで連絡が入りました。

[ねえ、そっちはなぎさ見つかった?]

[それどころじゃないよさやかちゃん。兵士さん達に見つかっちゃって]

[なんですと]

[そんなもんさっさと蹴散らしてこいよ]

さやかと行動を共にしていた杏子もテレパシーに混ざってきました

そんな2人に対してマミが2人に確認を行います。

[あなた達確か中央区あたりに行っていたわよね]

[え、そうですけど]

[ならばそのまま南下してきてちょうだい。きっと兵士たちの背後を取れるはずよ]

[なんだそれ。あたしら参加する必要あるか?]

[困っているんだし助太刀するしかないっしょ]

[ちょ、おいさやか]

ここでテレパシーのやり取りは終わり、マミ達はその場にとどまることにしました。

そうしている間にロケットランチャーを持った特殊部隊は音の出所であるスピーカーを射程に収められる場所へ到達しました。

ロケットランチャーを構えても妨害が入らない中、その一発は発射されて海岸に発せられていた音はスピーカーの爆散と共に消え去りました。

「大尉、成功です!救出作業開始できます!」

「よし、みな海岸へ移動だ!」

マッケンジー達はいろは達がいる方向へ銃を向けながらその場を後にしました。

「どういうこと、私たちを捉えるのが目的ではなかったと言うこと?」

「ならひなのの応援に行く?あの特殊部隊達が向かった方向と同じだよね?」

鶴乃の提案に乗ったいろは達はひなの達の元へと向かいました。

いろは達は動き出そうとしますがまどか達はその場から動こうとしませんでした。

「私たちはここでさやかちゃん達を待ちます。

ここから動いちゃったら入れ違いでどこに行ったのか分からなくなっちゃいそうだし」

なのでひなの達の方向にはいろは達5人だけが向かいました。

 

試験艦の方ではドローンで観測された戦況を確認できていました。ディラン大佐はイラついた状況で戦況を見ていました。

「マッケンジーのやつめ、魔法少女の集団を目の前にして救助を優先したのか」

結果として海岸へ上陸できる場所を確保できるのだから良いではないか」

「作戦はスムーズに行われるべきだと言いたいのだよ。

神浜をアンチマギアで覆ってしまえば誰も立ち入れずに済むと言うのに」

「航空部隊も控えています。だからこそ空への脅威は我々で消しておくべきです」

「それはそうだな」

ディラン大佐と副官が話し合っているとレーダー担当が話しかけてきました。

「自衛隊から情報あり。

次の魔法少女の集合地点は栄区、工匠区、北養区です」

「コウショウとホクヨウはマッケンジーの部隊が控えている。我々はサカエの鎮圧を行う。

各艦、主砲照準合わせろ!」

試験艦の周囲にいる巡洋艦は栄区を目標に砲塔を一斉に動かせます

微調整を行っている間に試験艦は突然アラートをあげます。

「何者かに照準が当てられています!」

「方向の割り出しを急げ!」

「もう算出はされているのですが、艦影が目視できません!」

魚雷の発射音をソナーはしっかり捉えます。

「魚雷来ます!」

「バリア緊急展開!」

バリアが即時展開され、試験艦は無傷で済んだものの、随伴していた巡洋艦が魚雷を受けてその一撃だけで一隻撃沈しました。

「一撃だと。本当にただの魚雷か?」

この様子はサピエンス本部でも確認できていました。

「魚雷発射源の予想地点割り出されました!
しかし衛星映像ではやはり何も映し出されていません」

イザベラはディラン大佐へ回線を繋げて指示を行います。

「ディラン大佐、魚雷発射源の予想地点を送る。流れ弾の行方を考えず構わず攻撃を加えろ。

魚雷を撃てるほどだ、潜水艦や巡洋艦クラスだと思え」

「いいだろう。

随伴A-Eは主砲を送られてきた座標に合わせて随時発射。

この艦からは爆撃ドローンを出せ」

試験艦に随伴していた護衛艦は五月雨にサピエンス本部から送られてきた座標へ主砲を向けます。

そうしている間に海中からは首長竜 ポンベツカムイが50メートルほどの大きさとなって艦隊に姿をあらわにしました。

「く、首長竜です!とてつもなく大きな!」

「あの首長竜、確か…

そうか、あいつがあそこにいるのか」

イザベラが何か企んでいる顔をしていることをキアラは見逃さず、嫌な予感がしていました。

イザベラから何か指示が出ることはなく、ポンベツカムイは稲妻の槍を形成して試験艦へと放ちます。

しかし試験艦はバリアを展開させていたため稲妻の槍はバリアに当たった途端に艦隊へ傷をつけることなく消え去ってしまいました。。

効かないことが分かるとポンベツカムイはその場で大きな波を形成させます。

発生した波は海面へ強く打ち付けられ、それは自然が発生させたかのような大波へと変化していきます。

魔法製ではなく自然の大波となり、艦隊は波に囚われてバランスを取れなくなり、各艦が注水などで転覆を防ごうと必死です。
そんな中、巡洋艦の一つが主砲を目標へと放ちました。

その主砲は間違いなく目標への直撃コースでしたが、バリアのようなものに直撃して空中で爆散してしまいました。

その後、バリアを発したと思われる存在は姿を現しました。

それは確かに巡洋艦の見た目であり、波の影響を受けていないかのように微動だにしていませんでした。

サピエンスの本部では魚雷を放った正体が船であると認識するとすぐにイザベラは不機嫌になりました。

「なぜここまでの観察で船一つ見つけられなかった。船ならば衛星映像ではで確認できたはずだ。
衛星画像班、妙な白波がここ数日発生していないか改めてしらみ潰しに確認しろ!」

「りょ、了解!」

サピエンス側で調査が行われている中、ポンベツカムイは動けない巡洋艦の一つを後ろから押して試験艦へと押し付ける。

試験艦はバリアを展開できるものの、巡洋艦はバリアを貫通して試験艦の横腹へと激突した。

その後ポンベツカムイは巡洋艦から離れて追突させた巡洋艦向けて稲妻の槍を3発撃ち込んだ。

それによって巡洋艦は爆破を起こし、それに誘爆するかのように試験艦も爆散してしまった。

その様子を見ていたカルラはその場でつぶやいた。

「物理的なバリアは形成できなかったからな、ああなる可能性はあった」

「だからと言って呆気なさすぎだ。やはり物理的にも弾けるようにするしか」

「電力不足で無理だという結果が出ている。

原子力船2隻でやっとペンタゴンを囲える範囲での物理的バリアを2分張れるレベルだ。

電力充電も必須なんて欠陥品よりも魔力を防げればいいという結論はすでに出されていた。

相手のバリアは物理的飛来物も防いでいたし、アンチマギアよりもマギア由来のバリアの方が上だったということだろう」

艦隊はポンベツカムイによって混乱状態となり、残った巡洋艦の下側へポンベツカムイが入り込んだ。

そこから掬い上げるようにポンベツカムイは体を持ち上げる。

巡洋艦内部は天地が逆転し、船内の人々はなすすべもなく海中へと投げ出された。

ポンベツカムイが海で蹂躙を行っている中、謎の船からは対地ミサイルが10発ほど発射され、自衛隊はそれらのミサイルへ対空迎撃を行った。

しかし、対地ミサイルは対空攻撃を避けるような挙動をし、ミサイルは先端だけが勢いを止めないまま空中分解した。

それぞれのミサイルからは人影のようなものが飛び出し、何かを展開しながら降下してきていた。

ミサイルを止められないと悟った戦車指揮官は各メンバーへすぐにその場から離れるよう指示を出した。

「総員退避!」

ミサイルの先端は自衛隊の戦車めがけて飛んでいき、戦線に配置していた戦車の多くが大破した。

降下してくる人影に向かって発砲がされるが、地面へ向けて展開している傘状のものが通常の硬い金属製なのかアンチマギアの銃弾を弾いていた。

人影は減速を行うと各々が違った魔法で地上への攻撃を始めた。

「魔法少女か、あんな奇天烈な方法で」

[各自、無事に地上に降りたら自由に暴れろ。

現地の魔法少女には迷惑かけるなよ]

[わかってるさ!]

ミサイルから飛び出してきた魔法少女達は自衛隊と隠密していたはずの特殊部隊に対して容赦なく攻撃を開始した。

サピエンス本部では新たな情報が入ってきた。

「イザベラさん、北海道と沖縄の航空基地が魔法少女による攻撃を受けていると報告が入っています」

「あそこにはアンチマギア散布用の輸送機が配備されていたはず。
そんなところまで奴らには情報が筒抜けだったか」

「ヨーロッパではなくてもこんな組織的な動きをできたなんてな。

まったく、ことごとく用意していた手を潰してくれる」

沖縄では沖縄に隠れていた魔法少女に協力してもらいながら欄達がアンチマギアの倉庫、滑走路、ヘリの破壊を行っていた。

「よーし、漏れなく破壊しろよ。残すと面倒だからな。

それにしても暑いな」

「どの程度破壊したらいいんでしょう。もうある程度破壊は行いましたが」

「まあなんだ、この基地から一つも航空機が飛び立たなければいいんだ。

目的は神浜へアンチマギアの輸送を行わせないことだし」

沖縄の航空基地では防衛に出動した兵士たちは皆殺されてしまい、垂直離着陸機は全てが破壊され、滑走路は使い物になっていませんでした。

「まあもういいだろう。

現地の奴らに協力してもらって神浜に戻るぞ。

神浜では面倒なことは終わっていればいいが」

北海道では千歳と呼ばれる場所にアンチマギアが保管されており、そこは夏目かこと静海このは達、そして氷室ラビに里見那由多、現地の魔法少女達が協力して航空基地の破壊を実施していました。

こちらでもアンチマギアの貯蔵庫の破壊、滑走路と垂直離着陸機の破壊が目的でした。

しかしここは通常の航空便で使用される滑走路も隣接しているためそちらにも被害が出ていました。

「自衛隊が動くと思ったのですが、そこまで派手に動かないですか」

「そりゃここでは米軍は本格的な活動はしていないし。

サピエンスだっけ?

あいつらも何故か北海道では活動していないみたいだし」

北海道では地元の魔法少女が言うようにアンチマギアは貯蔵したものの、サピエンスの特殊部隊は訪れていない様子でした。

「しかし持ち出す準備はしていました。破壊活動を行う意味はありました」

「この後神浜に行くんだよね?

したっけ苫小牧の港がちょうど軍港だしそこの船をもらって行こうよ。

使えるやついるしさ」

「苫小牧、再開発で軍港が用意された場所でしたか。

良いのですか、あなた達は人を殺すことに躊躇する者もいるようですが」

「あいつらはあいつらだ。

あたしらは覚悟がある。だから提案してんだ」

「かこ!あらからぶっ壊したよ!」

あやめがかこにそう伝えてきたことを合図にかこは魔法少女達に次の目的地を伝えました。

「次は苫小牧へ行きます。

みなさん、移動の準備を」

こうして神浜に対するサピエンスの航空支援は叶わない状態となっていました。

 

back:2-3-7

レコードを撒き戻す:top page

Next:2-3-9

 

【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-3-7 神浜鎮圧作戦・その3

特殊部隊か何か知らないけれど、魔法少女をキャッチするために、人間が魔法少女へ襲いかかった。

もっとハードでアメイジングな結果になると思っていたら、あっさりウィンしてつまらない日々が続いてしまった。

でも今目の前では、再び命の削り合いが起きている。

創作意欲が湧き出てきて、今目の前に起きているものをアートとして残してしまいたい!

「もう、アリナ先輩、ただ見ているだけでいいの?」

「ワッツ?

今でもいい感じなのにフールガールは何を求めるわけ?」

「だってほら、魔法少女同士が戦っているのに、人間はそれを見ているだけなの。

あの人たちも、アリナ先輩が望む芸術に参加させてあげたほうがいいと思うの」

「へぇ。

まあ確かに傍観だけさせておくのは癪だよね。

いいよいいよ!あいつらの命の輝きもこの神浜というキャンパスに添えてあげる。

言い出したんだから、フールガールも協力してよね!」

「わかったの!

いっしょに…

“人間を殺しに行くの!”」

そう、フールガールも、この街の魔法少女もみんな変わった。

みんなが殺し合いを躊躇しなくなっただけ、カレンには感謝だよね。

 

 

今目の前にはずっと一緒だと思った親友がいる。

刃を交えたのも、戦いの練習をする時くらいだった。

なのに、どうしてなの、静香ちゃん。

私が静香ちゃんへ命令した人の元へ向かおうとすると静香ちゃんが止めてくる。
逆らったらソウルジェムを破壊されると、静香ちゃんからそう聞いた。
その恐怖だけで、静香ちゃんは私たちの前に立ちはだかっているわけではない。

「あなた達に本当に守るべきものを、思い出させてあげる」

そう言って静香ちゃん達は私たちへ襲いかかってきた。

[旭ちゃん、あの人を追って!
旭ちゃんなら狙えるかもしれないから!]

[残念ながらそうはいかないであります]

[どういうこと?!]

[静香殿の後方には軍人達が控えているのを発見したであります。

我がここで見張っていなければ、奴らが参戦してきた時に我らは敗色が濃くなるでありますよ]

[そんな簡単に私たちは!]

[落ち着いてくださいちゃる]

[すなおちゃん]

[その兵士達がみんなアンチマギアを使ったらどうなると思いますか

静香も、巻き込むかもしれませんよ]

「さっきから動きが鈍いわよ!」

静香ちゃんの攻撃で私はテレパシーに集中できなくなりました。

静香ちゃんの攻撃をやり過ごすのがやっとで、動きをとらえきれない。

水徳寺で訓練をしていた時から、私は静香ちゃんより優位に立てたことはない。

このままでは倒されるだけだと思った時に、頭の中をよぎった言葉があった。

“人というものは常識にとらわれがちだ。

解決の道を見出せない場合は、時に非常識な行いで切り開かれることだってあるのさ“

等々力耕一が苦労した犯人がそう言っていたことを思い出した。

そう、非常識、静香ちゃんにとって非常識になること。

ならば!

私は静香ちゃんが突き攻撃をよく出してくる正面から突撃した。

「訓練から学べてないのかしら。そんなのじゃダメよ!」

そう言って静香ちゃんは予定通り突き攻撃をしてきた。

その剣はそのまま私の左腕の付け根を貫いた。

私は痛みよ消えろ!と心の中で唱え続けて本来来るであろう激痛を無視し続けた。

静香ちゃんが驚いた顔を見せる中、私はそのままの勢いで静香ちゃんの首元に齧り付いた。

いやぁああああ!

静香ちゃんが叫ぶ中、私は十手を空高く掲げて私ごと静香ちゃんを縛り上げた。

[ちゃる!何やってるんですか!]

すなおちゃんのテレパシーを聞くことなく私は静香ちゃんへテレパシーを飛ばした。

[諦めてくれないとこのまま首を噛みちぎるから!]

[やめて、ちゃる…人間を辞めるどころか獣に成り下がるあなたなんて、見たくなかった…]

[ほら、どうするの!]

静香ちゃんは涙を流すもののテレパシーには答えなかった。

そんな中、静香ちゃんを助けにこようとする子達を牽制しながらすなおちゃんが私の十手の紐を魔法で切ってしまった。

驚いて私が静香ちゃんの首から口を話した隙にすなおちゃんに抱え上げられ、そのあと私にすなおちゃんは私の頬を一発叩いた。

「冷静になってください。
人はやめていてもケモノになってしまうなんて許しませんよ!」

「でも、静香ちゃんに勝つにはこうした常識はずれなことじゃないと」

「勝ちにこだわって理性を失っては意味がありません!

少しは加減を考えてください。あのままでは静香もちゃるも死んでいたかもしれませんよ」

そう言いながら血が垂れ続けている左腕の付け根をすなおちゃんは癒してくた。

「あ、ありがとう…」

ドーン!

自衛隊達が待機しているという方向から爆発音が聞こえてきた

みんなが戦いの手を止めて爆発のあった方向を向くと、上空を飛ぶ魔法少女に向けて自衛隊達が発砲している様子を見て取れた。

「何が起きているの?」

状況を飲み込みきれずにいると、テレパシーで旭ちゃんが話しかけてきた。

[自衛隊は上空のものに注目しているであります。

今の隙であればに向こうに行った皆をこちらに連れ戻すチャンスであります!]

「そうか。

静香ちゃん、一緒に!」

静香ちゃんの方を見ると静香ちゃんはフラフラと立ちあがろうとしていた。

「どうして…」

静香ちゃんがそう呟きながら立ち上った。私が噛み付いた方とは逆側に首を傾げながら静香ちゃんはこちらを見ていた。

「どうして、そんなになってしまったの、ちゃる…」

「どうしたの静香ちゃん、私の声が聞こえていないの?」

「みんながちゃるのようになる前に、私が正さなければ!」

そういうと静香ちゃんからドッペルが出現して静香ちゃんのドッペルはこちらに殴りかかってきた。

「静香!」

すなおちゃんは叫ぶことしかせず、私は静香ちゃんの攻撃をわざと受けて穢れを満たしてドッペルを出現させた。

ドッペルの鉤爪が一つ一つ静香ちゃんのドッペルの腕を止めていき、7つ全ての鉤爪が静香ちゃんのドッペルの動きを止めた。

そして私は再び静香ちゃんへ襲い掛かる。

「このわからずや!」

「それはこっちのセリフよ!」

互いの武器が鍔迫り合い、互いに睨み合う中、静香ちゃん側のドッペルは腕が一つ自由に動かせるはずなのに動かない。

ドッペルが躊躇している?

もしそうだとしたら、私と本気で戦う気がないの?

「本気じゃないでしょ、静香ちゃん!」

「私たちの目的は殺し合いじゃない、そうでしょ!」

「だったらどうしたら私たちは元に戻れるの。

人に管理されながら一緒なんて、嫌なんだから!」

「そんなの私も知りたいよ!

わからないよ。みんながこっちにきてくれたら済む話。

それだけ。なのに」

「お願いだから…」

「わからないって言ってるでしょ!」

噛み合わない主張。いや、噛み合うことを拒んでいる。

互いの主張がぶつかり合い、その中で妥協点なんて優しいものは生まれない。

きっと、どちらかが折れなければ終わらない。

だから、止められないんだよ。

 

立ちはだかっている蛇の宮を中心とした二木市の魔法少女達は本気で私たちを殺そうとしている。

そうしなければ殺される、そう彼女達は言っていた。

その手は震えつつも、かつて争いあった時のように。

しかしその力量はたかが知れていた。

次々と蛇の宮の魔法少女達は神浜側についた二木市の魔法少女に膝をついていった。

ひかるの呼び出した軍団に拘束されて跪いたまま動けないアオに対して私は見下ろしながら問いかけた。

「あなた達の命が誰かに握られているのはわかったわ。

そいつらを叩き潰せばあなた達は安心できるのでしょう?」

「やめて!

その人達に歯向かった時点で、私たちはボタンひとつで殺されちゃうの!」

「ならば教えず死ぬか、教えた後私たちがミスをして殺されるか。

アオ、あなたが生きられる可能性はどっちだと思う?」

アオは震えて泣き出してしまった。

「分からないよ。

わからないけど生きたい、私はそれだけだよ!」

「だったら早くそのボタンを持った奴のことを!」

「あらあら、ここはもうギブアップなの?」

聞きなれない声の方を見ると重武装の少女がそこにはいた。

「そのまま殺されちゃうと実験の意味がないからさ、ほら、この町で出るっていう魔女みたいなやつだしてから死んでくれない?」

「あんた、こんなところに来て平気でいられると思ってんのか!」

そう言って樹里が少女めがけて火炎放射を大火力で放ってしまった。

その炎は少女と同じ姿をしたもう1人の少女の盾の目の前で打ち消されてしまった。

「な、もう1人同じやつだって」

「それに、次女さんの炎全然届いてないっすよ」

「魔法製のものが効くわけないじゃないか」

そう言いながら盾を持たない少女はスイッチのようなものを取り出した。

「まさかそれって!」

アオが言っていたスイッチという言葉を思い出して、アオ達に爆弾をつけた犯人であることにはすぐに結びついた。

しかし思考を巡らせている間に少女は数字を打ち込んでスイッチを押してしまった。

すると蛇の宮の魔法少女の1人のソウルジェムが赤くひかりだした。

「い、嫌だ!死にたくない、死にたくないいいいい!」

そう言って少女の方へソウルジェムが赤く光った魔法少女が走り出した。

その魔法少女を少女は掴んで、その体をらんかの方へと放り投げた。

そしてらんかの頭上でソウルジェムは爆発した。

爆発は人の体を包む程度の威力で、至近距離だと爆発に巻き込まれて体が吹き飛ぶかもしれないほどの威力だった。

らんかは自分の武器で爆発を防いでいたが、同時に血飛沫と魔法少女だった肉がらんかの目の前へ落ちてきた。

「な、なんだよ、これ」

「いやぁぁっぁぁ!」

皆が動揺して動けない中、私はすぐに少女へ殴りかかった。

するとすぐに盾を持った少女が前に出てきた。

「邪魔だ!」

盾ごと殴り潰そうと思って振り下ろした棍棒は盾に当たった途端に形を失っていき、持ち手部分まで砂のように崩れ去ってしまった。

「魔法が効かないって、武器まで分解してしまうの?」

盾を持たない少女はアオの方を見て話し出した。

「ほら、死ぬ気で殺し合ってよね、じゃないとあの子みたいになっちゃうよ?」

「貴様!」

樹里が怒りをあらわにしているとアオが何かを呟きながら起き上がった。

「…にたくない。死にたくない。死にたくない」

そう呟くアオのソウルジェムは真っ黒だった。

「じゃあ、あとは楽しんでね」

そう言って少女達はその場から離れていった。

「お前!待ちやがれ!」

追いかけようとする樹里の前にドッペルを出す魔法少女達が立ちはだかった。

「お前ら。

邪魔するってんならウェルダン通り越して炭にしてやる!

あんなもので消される前にさ」

樹里が放った炎をドッペルを出した魔法少女達は受け入れ、次々と焼かれていった。

「ふざけるなフザケルナふざけるなふざけるなふざけるな!!!!

樹里は涙を浮かべながら魔法少女達を燃やしていった。

「死ぬってわかってるなら少しは協力しろっつうの」

結奈はドッペルを出したアオに行く手を阻まれていた。

「わかってる。こうやって姉ちゃん達を邪魔することが間違ってるって」

「ならどうして」

「ワンチャンがないかって思っちゃったからだよ。

もし勝てたら、もし成功したら、今より長く生きられるんじゃないかって」

「今を耐えられてもまた次の戦場でいいように使われるだけよ!

ワンチャンスなんて都合のいいものは」

「もう嫌だよ、早く解放してよ。

お姉ちゃん…」

アオのドッペルのギロチンがアオの首目掛けて自由落下した。

そして飛び出た黄色の液体が人型になって結奈へと襲いかかった。

黄色い人形が襲い掛かろうとするとそこにひかるが現れて人型の動きを抑えていた。

「結奈さん、こいつはひかるが引き受けるっす。

今のうちにアオさんのところへ!」

「助かるわ」

結奈はドッペルを出したままうなだれているアオの顔をあげ、目を見ながら言いつけた。

「私はあなた達を助ける方法を知らない。

でもあなた達を殺すスイッチを持っているあいつを殺せばそのスイッチが押されることは無くなるかもしれない」

話しかけてもアオは何も反応を示さなかった。

「あいつを殺すことに協力しなさい。

人間にいいように使われるのと、私たちに協力するの、どちらかを選びなさい!」

アオは返事をすることなくドッペルは消えてしまいました。

「結奈さん、アオさんは」

アオはその場で顔を上げることなく動こうとしませんでした。

結奈は周囲がどうなっているのかを確認した。
蛇の宮の魔法少女は皆樹里によって消し炭にされたわけではなく、中には神浜側の二木市の魔法少女に拘束されたままになった無事な子もいた。

蛇の宮の魔法少女との戦いが落ち着いたことを確認すると、結奈はテレパシーで皆に伝えた。

[動けるものはついてきなさい。

あの重武装の女を殺しに行くわ]

 

神浜の魔法少女が避難場所にしようとしていた北養区には、マギウスの翼にいた時に教官と呼ばれていた神楽燦が率いる宝崎の魔法少女を中心としたグループが待ち受けていました。

神楽燦が率いる魔法少女グループは神浜側の魔法少女へ攻撃を開始しますが、攻撃を行う魔法少女達は戦いを始める前に、相手へ必ずテレパシーでこう伝えました。

[戦うフリをしてください]

戦いをするフリという言葉にみふゆは困惑しました。

「燦さん、一体どういうつもりですか」

神浜側の魔法少女は困惑する者が多く現れました。

[みふゆさん、どうするんですか]

[きっと本気では来ないはずです。信じて訓練の要領で挑んでください]

そう言われて各々は神楽側の魔法少女達と刃を交え始めます。

言っていたことは本当のようで、どこか本気ではない様子でした。

そんな中、みふゆは燦と対面していました。

[これはどういうことか説明してください。どうして戦うマネなんていうことを]

[仕方がないんです。こうでもしていないと私たちは殺されてしまいますから]

[殺される?どういうことですか]

テレパシーでみふゆは燦から訳を聞き出します。

私はアンチマギアプロジェクトの話が世界に広まったあと、宝崎市を中心とした魔法少女達へ神浜へ行くことをやめるよう言って回っていたのです。

あそこは最も狙われやすい場所であるため、神浜以外で匿ってもらう必要があると考えていました。

その当てが青年会のメンバーでした。

しかし親しかったメンバーは庇ってはくれず、わたし達は特殊部隊に捕まっていたのです。

私は青年会のメンバーへ訳を聞かずにはいられませんでした。
聞いた結果は残酷なものでした。

「どうして、私はみんなと一緒にまつりの存続を願っていたのに」

「悪いな、俺たちじゃ何もできない。世界の決まりになってしまったからな」

「そんな、そんなことって!」

「殺されるわけじゃないんだろ。

落ち着いたら、またやり直せるかもな」

私は裏切られたとは思いたくなかった。

きっとまた戻ってきて元に戻れるとそう思い込み続けました。

でも捕まった後にSGボムというボタンひとつでソウルジェムを破壊されてしまうという状態にされてしまった時、私はひどく後悔したのです。

宝崎の魔法少女には私を責める者もいました。

「あなたが止めさえしていなければ!」

「燦様はみんなのことを思って行動したのですよ。助けられておいてそんなことを言うなんて」

「だって、じゃあこの憤りはどこにぶつければいいのよ!」

「スイッチさえ押されなければ生き延びられる可能性はある。

あの女さえどうにかすれば」

そんな皆が落ち込んでいる中で皆に合意してもらえたのが、戦うフリをしながら助けを求めることだったのです。

[教官らしくないですね。

それで、倒さないといけない相手というのは誰なのですか]

[サピエンスという組織に所属している科学者です。

名前は知らない、銀髪の小さい女で戦場に来ているのは確か。

そいつが殺されたと判明するまではそちらに寝返ることはできません]

[そうですか。

私は教官を信じますよ、いいですね?]

[みふゆさん、ありがとう]

みふゆは銀髪の小さい女がSGボムの起爆装置を握っているとテレパシーで周囲の魔法少女へ伝えていきました。

「灯花へ今のことを伝えてください!

探すくらいはしてくれるはずです」

その話を聞いて反応したのは宮尾とはぐむでした。

[私たちが伝えてきます!]

[場所はわかりますか?]

[手伝いに、何度か行っていたから多分]

[わかりました。

わからなければやっちゃん達に伝えてください。そうすれば確実に伝わります]

[[はい!]]

宮尾達はその場を離れましたが二人をを追おうとする魔法少女はいませんでした。

自衛隊も追うことはありません。

「自衛隊は追おうとはしないのですね」

「彼らは私たちの監視をしているだけです。

もしかしたら、彼らに見られていなければもしかしたら」

戦いながら器用にテレパシーと会話を織り交ぜながら情報交換をしていると、自衛隊が空を見上げて東側へ発砲を始めました。

その方向を見るとそこには鎌に乗った二人組がいて、そのうちの1人はみふゆ達が見慣れた存在でした。

「あれは、アリナ?!」

アリナ達は自衛隊の頭上で手榴弾などの爆発物を放り投げ、自衛隊は逃げ惑って混乱していました。

[皆いまだ、身を隠せ!]

燦達は一斉に森の中へ隠れて自衛隊の目が届かない場所へ姿を隠しました。

「みふゆさん、動くのは私だけでいい。

戦えない魔法少女と一緒にみんなをここに置いてくれませんか。

もちろん、最悪の事態を考えて離れておいた方がいい」

「良いのですか?見つかったらすぐに起爆されてしまうかもしれませんよ」

「SGボムをつけられた時点で、もう死んでいるようなものですよ」

 

back:2-3-6

レコードを撒き戻す:top page

Next:2-3-8

 

【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-3-6 神浜鎮圧作戦・その2

水名区北部で偵察を行っていた時女一族のメンバーの前には、時女静香の部隊が遭遇していました。

「静香ちゃん…」

「ちゃる、迎えにきたわよ」

双方見つめ合って動かない中、その場に武装したディアが通りかかります。

「何やってるんだ、早く殺し合いなさいよ」

そんなディアを見て涼子がディアへ話しかけます。

「何だあんたは」

「あんたらを保護する存在だ。

投降してくれてもいいが、私としては殺し合いをしてもらったほうがありがたいんだけどね」

パンッ

ディアに向けて1発のライフル弾が放たれます。

その弾は少し遠い距離から撃たれたにも関わらずディアの頭部を撃ち抜く軌道でした。

しかし、その軌道の間に人が1人割り込みます。
その見た目はディアと同じ見た目で体と同じ大きさほどある盾を持っていました。

その盾をライフル弾が貫くことはできず、少しの凹み傷を付けただけでした。

「何?!」

「うーん、反応はいい感じかな」

「同じ人が、2人?」

「時女の、分かってるでしょう?」

そう言いながらディアはボタンのようなものをちらつかせます。

「はい、もちろんです」

静香はいつもとは違った刀を抜き、刃をちはるたちへと向けます。

「かかれ!」

そう静香が号令をかけると静香側についた時女一族がちはるたちへと襲い掛かります。
思いもよらない襲撃に神浜側の時女一族は皆戸惑いながらも襲い掛かってきた魔法少女達へ対応していきます。

ちはるへは静香が斬りかかってきたため、ちはるは咄嗟に武器を構えて静香の攻撃を受け止めます。

「静香ちゃん、どうして!」

神浜に残った時女一族は応戦しはじめ、だんだんと誰がどっち側の時女一族なのかが分からないほど混ざっていきました。

「何で私たちが戦わないといけないの!」

「そうしないと、あたし達は殺されるからよ!」

「どういうこと」

 

他の場所でも魔法少女同士の戦いは始まっていました。

二木市の魔法少女達は蛇の宮の魔法少女達と対峙して既に刃を交えていました。

「まさか臆病なテメェらがこの樹里様に噛み付くとはな」

「私たちだって、でも、死にたくないから!」

樹里とアオの間にひかるの呼び出した軍団が割り込んで2人を引き離します。

「邪魔するな馬!」

その場へ結奈が到着し、持っている金槌を地面へ振りかざした後にアオ達へ問いかけました
アオ達は金槌が地面にたたきつけられた衝撃に一瞬動きを止めて結奈を見てしまいました。

「いいからなぜ殺されるか話しなさい。

周りにいる自衛隊を始末したら殺されないの?

それとも別の何かに狙われているの?」

「違うよ、命令を無視したら、ソウルジェムが爆破されるんだよ」

「はぁ?なに言ってるんだ」

樹里の反応の後に蛇の宮の魔法少女が1人話に割り込みます。

「わたしら、あいつらにソウルジェムへ細工されたんだ。

それが、命令に反したら爆発させるものだって」

「どこにそれがついてる、直ぐに外してやる」

「無理だよ、ソウルジェムに溶け込む装置だから。

どうしようもないんだよ」

アオは泣き顔になりながらそう答えた。

神浜市側の二木市の魔法少女達が絶句する中、アオ達のインカムにディアが語りかけます。

「真剣に殺し合えよ、じゃないと直ぐに起爆させちゃうよ〜?」

蛇の宮の魔法少女達は一斉に結奈達へ切り掛かります。

「貴様ら!」

「お願いだから私たちに負けてよ!そうしたらみんな一緒だから」

「うるせぇ!

焼き尽くして大人しくしてやる!」

「みんな!全員の動きを止めなさい!

最悪四肢を粉砕しても構わないわ。ソウルジェムだけは外しなさい!」

「そんなのじゃダメだよ、どうせやるなら一思いにやってよ!」

泣きながらも笑みを浮かべて攻撃してきたアオへ攻撃を受け止めながら結奈は悲しげな顔をするしかありませんでした。

 

北養区でも再会の挨拶から始まっていました。

「お久しぶりです、みふゆさん」

「教官、あなた程の方がどうして」

「他の子達を守るために、そして地元の人たちを守るためにです」

「あなたは、こんな世界でも諦めきれずにいるのですか。あなたの守りたいものを」

「私だって諦めたくないと思っています。でも、いまとなってはそれも」

そう話しているとインラインスケートを装備した魔法少女がみふゆへ攻撃を仕掛けてきます。

「ミユリさん?!」

「さあ、大人しく私たちにつき合ってください。しっかり説明はしますよ」

そう言って教官こと燦が武器を構え、後続の魔法少女たちがみふゆが連れていた魔法少女たちへ襲いかかります。

 

囚われた魔法少女の4グループと名付けられた寄せ集めの魔法少女集団は大東区へ攻撃を仕掛けており、十七夜を中心とした東側の魔法少女達が対応していた。

「まさか戦う相手が魔法少女になるなんて」

十七夜は躊躇なく襲ってくる魔法少女達を気絶させていき、4グループ目の魔法少女達は順調に戦える数が減っていった。

「この程度何の障害にもならんな。

観鳥、他に怪しい集団はいないか」

そう言いながらテレパシーで聞くと、偵察を行っていた観鳥は報告を行った。

[建物に隠れるように自衛隊が待機しています。

魔法少女と戦わせて疲弊した私たちに仕掛ける気でしょうね]

「ふむ、あまり良くないな。

私が魔法少女達の相手をするから皆は隠れている自衛隊へ対処しろ

「1人でやる気ですか?!」

「これくらいの相手、造作もない」

「あら、もしかしてまた1人で抱え込もうとしていませんか?」

十七夜の顔を覗き込むように郁美が話しかけた。

「なに?」

[そうだね。

十七夜さんはもっとみんなに頼ったほうがいい。

あなたが思っている以上に、覚悟が決まっているメンバーは多いんだよ]

テレパシーで観鳥がそう十七夜に話しかけると、十七夜の周りにいる魔法少女達が笑顔でうなづいた。

「お前達、本当に覚悟はできているのだな」

「くどいですよ、ちゃんと信じてください!」

周囲の魔法少女達は十七夜へ笑顔を見せた後に人間側の魔法少女達を止めようと戦いへ向かっていきました。

「ふむ、そうだったな。
だが、死なせはしないからな」

 

南側はひなのを中心に迫り来る艦隊に対応しようとしていたが特殊部隊の存在を知ってしまって身動きが取れない状態になっていた。

奴らに気づかれないように一撃で艦隊に打撃を与えられないものか

「みゃーこ先輩、そんな簡単にできたら苦労しないよ」

「だが奴らに睨みをきかされているようじゃ、どこも安全だなんていえない。

梨花、一発でいい。

中央にある空母に一発撃ち込めないか」

「と、届くかな。

やってはみるけど、絶対位置はバレるっからね」

「分かってるさ、命中を確認できたらさっさと北養区へ逃げるぞ」

「それじゃあやるかんね!」

梨花は武器であるコンパクトをコンテナの裏で巨大化させ、試験艦へ向けて渾身の一撃を放った。

その一撃は試験艦を捉えていて確かに命中するコースであった。

しかしその一撃は試験艦手前でバリアのようなものに防がれ、弾かれた魔法の破片が海水を蒸発させて試験艦周囲は蒸気で包まれた。

バリアを展開したときの試験艦では

「バリア、正常に稼働しました!

動力炉不安定化、しばらくこの場から動けません」

「護衛艦に被害は」

「ありません。全て防げたようです」

「いいだろう。

動力炉安定化後、前進を開始する」

 

試験艦を破壊できなかったことに梨花は驚いていた。

「そんな、直撃したはず」

「いいから逃げるぞ!」

攻撃が効かないということか。
だとすると、あたしらにうつ手はないぞ。

[海岸にいる魔法少女達聞こえるかにゃ?]

[灯花、何のようだ]

[しっかり耳を塞いでよね。
じゃないと、そこから動けなくなっちゃうから]

[おい、何なんだいきなり]

[3、2]

こちらの問いかけを聞き入れず淡々とカウントを始めた。

[全員耳を塞げ!]

カウントがゼロになると近くにある非常放送用のスピーカーから音が発せられ、私らを発見した特殊部隊達は頭を抱えて倒れていった。

「なんだ、これは」

ひなのと衣美里が耳を塞いでいる中、梨花とれんは耳を塞ぎ損ねたのかその場に気絶して倒れてしまった。

「おい、二人とも!」

二人からはテレパシーでも返事はなかった。

 

南側で発生したことについてはマッケンジーにも報告が入っていた

「音だと?」

「はい。S班の最終報告によると頭が割れるような音が発生したとのことです」

「他の場所では」

「そのような報告はありません」

「魔法の影響を受けない装備を身につけているのだから、その音とやらは科学的に解決すべきものだろうな。

魔法少女達が扱ったのか」

「どうします?発生源を吹き飛ばせば済む話ですが」

「俺たちにできるのはそれだけか」

マッケンジーはディラン大佐へ回線を繋げた。

「ディラン大佐、港付近で発生した音の出所を自衛隊へ共有できるか」

「何を考えているマッケンジー」

「港を使えないと上陸作戦自体が敵わないだろう。

何のために港を標的に入れなかったと思っている」

「爆撃無人機の発進準備はできている。日本に頼らずとも」

「港で動けないS班ごと吹き飛ばす気か!」

「目標の近くで倒れる奴が悪いのではないか」

マッケンジーはディラン大佐との回線を強制的に切断した。

「ふざけたことをしてくれる」

マッケンジーは待機命令を出していたN班と共に南へと向かった。
そんなマッケンジーに対して隊員は困惑していた。

「大尉、何をする気ですか?!」

「爆撃機が任務を無事に完遂できるとは限らん。

ロケットランチャーを持って音の出所を破壊しに行くぞ」

「大尉が言うなら従いますが、知りませんよ」

想定外の事態へ対応するためのマッケンジー率いるN班が動き始めたことを知り、ディアはマッケンジーへ回線を繋いで問いかけた。

「何やってんだ、まだ何も起きていないだろ」

「港の出来事を共有されていないのか」

「もちろん知ってるさ。

何も急ぐ必要はないだろうさ。今行ったってどのみち間に合わない」

「仲間が吹き飛ばされると知って動かない奴があるか!」

「マッケンジー、少し感情的すぎるぞ。

軍隊にそんなものは不要じゃないか?」

「サピエンスの特殊部隊は軍隊ではない。そんなルールに則る必要はない。

お前も、ディラン大佐達も固く考えすぎだ。埋め合わせはするさ」

咄嗟にマッケンジーはディアとのプライベート回線に切り替えた。

「この本気じゃない戦いで命を落とすほど無駄なことはない。そうではないか?」

そう言ってマッケンジーは一方的に回線を切った。

ディアは目の前で戦う魔法少女達を眺めながら呟いた。

「ものは言いようだねぇ。

まあ、港がどうなろうがどうでもいいが。

それにしても行動不能にさせる音か。

動けなくなる原因の症状を聴かないと明言できないが、体に異常をきたすならば音圧の仕組みを利用したものだろう。

だとしたらそれは音として認知できるのか?

ヘクトパスカル台のものでなければそんな症状は起きないはずだ。

どうであれ、下手に近づかないのが賢明だろうね」

試験艦から発進した無人機は魔法少女達の目にも留まることになった。

南凪区近くで逃げ遅れた魔法少女達の救助を行っていたいろは達には、灯花から港には近づかないよう伝えられていた。

[そんなことを言われても、港の方には都さん達がいたはずだよ]

[彼女達にも伝えたよー?ちゃんとそこから離れられたかは別だけどね]

[灯花ちゃん、一体何をしたの]

[教えないよー]

「ちょ、ちょっと!」

灯花へさらに話を聞こうとしていると、遠くからまどか達がいろはたちに声をかけていました。

「まどかちゃん、避難していないの?!」

「えっと、私たち人探しをしていて」

まどかちゃんと一緒にいたのはほむらちゃんと巴さんでした。

巴さんが探している人について話し始めます。

「実は小さい子を探していて。

なぎさちゃんって言うんだけど、どこかに行ってしまってここまで探しに来たのよ」

「なぎさちゃん。

すみません、どういう見た目の子かわからないと」

「ケータイに画像があるはずなんだけど、今は手元になくて」

でも小さいこと言っても見覚えのある子達にしか会っていないわ。

多分見かけてはいないわね」

「そう、ですか」

やちよさんの回答に、少し巴さんは悲しそうな表情を見せます。

そんな中、まどかちゃんは南の方角に指を指します。

「あれ、何だろう」

船が見える方角からは鳥の群れとも言える黒い塊が向かってきていました。

「絶対良くないものだよあれ」

そう考えを巡らせていると三重崎の魔法少女から報告がされます。

[船団から来る物体、形状が無人機で、下にミサイルみたいなものがついている。

もしかしたら特攻型の無人機ミサイルの可能性があるから南側の奴らは特に注意しろ!]

あれが全部、ミサイル?!

それを聞いてまどかちゃんが弓を無人機の集団に向けますがほむらちゃんが止めに入ります。

「無理よ、ここから届きにくいし全部落とせなんてしない。

逃げたほうがいいわ」

「でも、放っておけないよ」

そう言うまどかちゃんに対して私は手を差し出しました。

「2人で力を合わせれば、できるかもしれない」

私と目を合わせて聞いていたまどかちゃんはうなづいて私の手を握ります。

コネクトが発動し、私のクロスボウとまどかちゃんの弓が合体したような武器は、ミサイル達を捕らえた上空に紋章を生み出し、その中央目掛けて私たちは矢を放ちました。

紋章にかろうじて矢は届き、紋章はその矢に反応して真下へ無数の矢が放たれました。

ミサイルは逃げようとする動きは見せたものの、逃げきれずに全てが撃ち落とされてしまいました。

私たちは達成感でその場で笑顔になりながら動けずにいました。

「これほどの力、攻め込んできた奴らを一掃できるんじゃない?」

ほむらちゃんの問いかけに対して私はこう答えます。

「魔法少女が敵に混ざっていなかったらやっていたかも。

でも、相手が魔法少女ならやりにくいよ」

その答えにほむらちゃんは表情を変えず何の反応も見せてくれませんでした。

そんななか、さなちゃんが話しはじめます。

「その、なぎさちゃんを探しませんか?

逃げ遅れているのかもしれないですし」

「そうね。

私たちも協力しましょう」

そう話していると、急に鶴乃が大きな声を出します。

「危ない!」

そう言って鶴乃ちゃんは私とまどかちゃんを突き飛ばしました。もともと私たちがいた場所へは二発の弾丸が飛んできました。

「良い感を持っている奴がいたか」

その声の方角には、マッケンジー率いるN班の姿があった。

「見つけたからには対処させてもらうぞ、魔法少女共」

 

 

高いビルの上から、小さな魔法少女が戦場となった神浜を眺めていました。

「この世界はここだけな出来事が多すぎるのです。

マミ達まで人間に好戦的になってしまって、これでもお前はこの世界も救いたいと言うのですか?」

話しかけられているピンク色のキュゥべえは何も答えません。

大昔にこの世界の何者かに声をかけられて、円環の理はこの世界にちょっかいを出したのです。

確かに円環の理に声をかけられる存在なんて前代未聞なのです。

そいつを見つけ出せれば満足ですか」

ピンク色のキュゥべえは何も答えません。

「まあいいのです。

なぎさはここから見守るだけなのです。

なぎさは人と殺し合いなんて、したくないのです」

手元にいるお菓子の魔女の手下をこちょこちょといじくり回しながら、彼女はただ神浜を見つめるだけでした。

 

back:2-3-5

レコードを撒き戻す:top page

Next:2-3-7

 

【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-3-5 神浜鎮圧作戦・その1

夜に襲撃があった際、私たちには全く被害が出ませんでした。

しかし昨夜の戦いはどうやらテレビでリアルタイムに流れた様で、日本政府は神浜の奪還を支持しているようでした。

ドローンによる索敵が行われていたことも考慮し、中央区に設置されていたキャンプは放棄して栄区と大東区に生活場所を移動することになりました。

今朝はその移動作業で大忙しです。

「何で移動しないといけないのさ」

「ドローンでどこに生活拠点があるか見られてたんだとさ。

居続けてもいいけど攻撃の的になるのは確かだよって言われて動かないわけにはいかないでしょ」

「また戦いになるの?嫌だなぁ」

移動作業中にドローンに覗き見されていないか偵察を行う魔法少女はもちろんいて、今のところは発見されていないようです。

さつきさんたちが滞在している竜真館も魔法少女が集まる場所として別の場所へ移動するよう推奨される場所に指定されていました。
この推奨される場所の指定というのは三重崎の魔法少女や灯花ちゃんたちが勝手に言っているだけで話し合いで決めたというものではありません。
みんなは多少疑問に思いつつも、危ないというならばということで半信半疑で別の場所へ移動を行っているところです。

「せっかく畑の準備ができてきたっていうのに、ここが戦場になる可能性があるだなんて」

「安全に暮らせる場所、まあここは他の場所よりましなんだろうけど全然落ち着かないな」

さつきさんとキクさんがそう話していると魔法少女になっていない子たちが2人に話しかけてきました。

「ねえ、ここ壊されちゃうの?なんで?」

「私たちを弱いものとしていじめてくるからだよ」

「また私たちの居場所を奪おうとするの?
それなら・・・」

「変ことを考えようとするんじゃない。
いまはキュゥべえがどこかへ行ってしまったし、変なことなんてできやしないと思うけどね」

「でも、本当に襲ってくるのかしら」

いつ襲ってくるか気を抜けないままお昼過ぎ。

中央区から魔法少女達がほとんどいなくなった頃、南側を偵察していた都さんから連絡がありました。

[軍艦と思われる集団が迫ってる。目視できても2隻や3隻じゃないぞ]

「船だなんて、そんな」

都さんのテレパシーは灯花ちゃんにも届いて、南側で生きている監視カメラを使ってその様子を確認しました
同じ部屋にいた私たちも、たくさんの軍艦が迫ってきていることを確認できました。

「空母級に巡洋艦複数…

もう国を奪う程度の戦力じゃん」

「砲撃どころかミサイルの嵐、上陸されたら多くの兵士が傾れ込んでくるだろうね」

「これだと地上にいることが危険かもしれないわ」

「迫ってきているのは軍艦だけじゃないはずだよ。

陸に空、あらゆる侵攻ルート、方法で迫ってくるとみていいだろう」

「それやりようあんのか?」

やらないとこちらがやられる状況、でもみんなには死んでほしくない。

「昨夜同様に好戦的なメンバーにだけ前に出てもらいましょう。
他のみんなは自分を守ること優先で」

「それじゃダメだよ」

やちよさんの意見に灯花ちゃんが反対します。

「まずは艦隊をどうにかしないと何も解決しない。

一方的にミサイルと砲撃で蹂躙されるだけ。

自分の身を守るのはやるべきことをやってからだよ」

「海上戦なんてできる子いたかしら」

これからどうしようか考えている時に偵察を行っていた時女一族の子から連絡がありました。

[武装した集団がこっちに近づいてくるよ!]

今は私たちにできることをやるだけ。

「私たちは動けない子達の救助に専念したいんだけど、みんなはどうかな」

「それでいいと思います」

「私もそのほうが良いと思うわ」

「何だよ、倒しに行かないのかよ」

フェリシアちゃんは少し不満そうでした。そこへ鶴乃ちゃんがフェリシアちゃんに話しかけます。

「フェリシアは人を躊躇なく殺せる?」

「そりゃできるぜ」

「じゃあ、当たったら終わりな弾が当たって二度と動けなくなる覚悟もある?

「それは、二度と動けなくなるのは嫌だけど」

「それは覚悟が決まっていないって言うのよ。無理をする必要はないわ」

「フェリシアちゃんが私たちを守ってくれたら、ありがたいなって思うんだけど」

「2人がそこまで言うなら、仕方がねぇな」

「ちょっと、私もでしょ!」

私たちが部屋から出て行こうとすると私は灯花ちゃんに呼び止められました。

「お姉さま、海岸と北の境界には近づかないでね、絶対だからね」

「う、うん、わかったよ。みんなにも伝えておくね」

私は”なぜか”を聞かずに外へと向かいました。

私たちが部屋から出ていったタイミングで2人は話を始めました。

「そうやって詳しく伝えない」

「だって、教えたら絶対反対されるだろうし」

「人体に悪影響な波長を設置した拡声器から発して、気絶に追い込む。

敵を無力化できるかもしれないが魔法少女にも影響がある。

ある意味前線に出る子達を餌にすることになるだろうが、お姉さんには反対されていただろうね」

「さっきも話していたけど、覚悟ができた子達が前に出ているんだから、少しくらいいいじゃない?」

「まったく。うまく行かなかった時の次は準備できているかい?」

「もちろん。

火薬があまりなかったから、地味なことしかできないけどね」

「あったら何をする気だったのか」

「2人とも、会話が怖いよ・・・」

部屋に一緒に残っているういとワルプルガさんはただただ二人の会話を聞くことしかできませんでした。

 

 

武装した集団が迫っていることはテレパシーで伝えられ、魔法少女達は個々人で判断して行動し始めました。

十七夜さん達は

「我々がありのままでいられるのはここだけだ。

精一杯争わせてもらう。

君たちは戦えない魔法少女たちの避難を優先してくれ」

「何言ってるんですか十七夜さん」

「私たちも一緒に行きますよ」

「…無事に帰れると思うなよ」

「わかってますよ、1人で抱える必要はないですって。それだけですよ」

 

みふゆさんたちは

私たちは戦えない魔法少女たちの救助と避難を支援する動きをとりましょう。

ひとまずは北養区のフェントホープ跡地周辺に避難しましょう」

「わかりました!」

「やっちゃん、どうか無事で」

 

結奈達は

「ここで踏ん張らなければ二木市に戻ることさえ叶わないわ。

昔の因縁は一度胸にしまって目の前の脅威を排除するわよ」

「アオさん達を助けに行かないといけないっすからね」

「何だっていい、思いっきり暴れさせてもらうぜ」

 

ちはる達は

「静香ちゃんが出てくるかもしれないから、私は前に出て戦うよ。

でもみんな揃っている必要はないよ、ちゃんと逃げてよ」

「大将を呼び戻すチャンスだ。

他の血の気の多い奴らに倒されるなんて事態は避けたいだろ」

「私たちは精一杯生き残ります。だから、ちゃるも無理はしないで」

 

三重崎の子達は

「まさかサバゲーじゃなくて実戦をやることになるなんてね」

「実際に生身の人間を撃ち抜く、私たちにちょうどいいじゃないか」

「当たったら終わりはこちらも変わらない。

自衛隊だってアンチマギアを使ってくるだろうからな」

「まずは他の魔法少女への支援を優先しよう。あいつらに索敵の脳はないだろうからな」

「積極的に動いていた夏目の奴らがこんな時にいないなんて。

あいつら今は何をしているんだ」

 

魔法少女が動き出したことは自衛隊側は把握していました。

「魔法少女に動きあり。

我々の前進行為を察知して行動を開始したようです」

「我々はサピエンスの部隊とは完全に別行動だ。

行動不能になった敵味方の魔法少女達の救助、及び神浜外へ流れ弾が出ないかの監視、魔法少女達の行動監視が優先だ」

高田一佐は自衛隊への指示を終えた後にディアにつながる回線へ切り替えます。

「サピエンスの科学者、会議中にも言ったが作戦範囲外に被害が出ることは厳禁だ。

それは気をつけてくれ」

「わかっているさ。そっちこそ、SGボムの使用は渋るんじゃないよ。

場合によっては敗因に繋がるんだからね」

「…承知している」

「それじゃあよろしく」

ディアは回線を切り替え、試験艦のディラン大佐に繋ぎます。

「大佐、データは昨日送った通りよ。

昨晩魔法少女達が溜まっていたと思われる場所へ対地ミサイルの発射をお願い」

「信用して良いのだな」

「日本はデータ収集だけは優秀よ。

仮に魔法少女へ直撃したとしても、そいつらの運が悪いだけだから」

「いいだろう」

ディラン大佐は回線を切り替え、艦隊全体に指示を出した。この回線はマッケンジー達の部隊へも繋がっていました。

「これよりカミハマシティ鎮圧プログラムを実行する。

第一フェーズの実行を開始する。

各艦は事前通知していた地点へAM -2ミサイルを発射せよ」

試験艦及び巡洋艦の対地ミサイル用のハッチが開き、上空に向けてミサイルが発射されました。

魔法少女達にミサイルを迎撃する手段などなく、着弾すると思われる場所から離れることしかできませんでした。

ミサイルは大東区、中央区電波塔跡地、竜真館周辺へと着弾し、爆発と同時に周囲へアンチマギアが拡散されました。

またAM -2ミサイルには液状化されたアンチマギアが試験的に採用されており、爆発と同時に周囲へ散布されました。

しかしその散布範囲は狭く、着弾した地点から半径50m程度しか液状化したアンチマギアがばら撒かれず、粉末状のアンチマギアは予想値よりも周囲に離散してしまい、濃度が薄い状態になっていました。

「AM -2ミサイル、予定距離も250m狭い範囲にしか散布されていません!」

「サピエンスにクレームを入れとけ!

不良品を出すんじゃないとな」

ペンタゴンで観測を行っているイザベラの元へ直ぐにディラン大佐のクレームは届けられました。

「見てたから分かってるって。

カルラ、AM -2ミサイルを担当した技術者に繋げなさい」

「イザベラ、あれはヨーロッパでの最終テストを行う前の規格で作ったものだ。

搭載する前に伝えたはずだ」

「だからって散布範囲が半分以下ってどう言うことよ」

イザベラの隣で座っているカルラはだるそうに持っていたタブレットからAM -2ミサイルの設計図を見つけ出してイザベラに見せつけるように画面を押し付けました。

「液状、粉末ともにミサイル着弾後に上空へ飛び出し半径250m散布予定だったがそれぞれの射出容器の強度が足らず着弾と同時にミサイルの火薬と共にその場で爆発してしまう欠点はすでに洗い出されている。

データの再度洗い出しを行わせず容器強度をおおまかな数値でGOを出したのはお前だ。

クレームを入れられるのも当然だ」

「ヨーロッパの武器庫が破壊された影響がここまでとは」

イザベラはディラン大佐へ回線を繋ぎます。

「ディラン大佐、AM -2は試験艦へ搭載できる想定積載量よりも倍の数を搭載させています。

それで制圧を続けてください」

せっかく撒いた粉末状のアンチマギアが離散しすぎて使い物にならんぞ」

「ちっ、言わないとわからんか」

「レディ、立場をわきまえろ!」

怒るディラン大佐の言葉に耳を貸さず、AM -2ミサイルの設計図を少し見た後に軽くタブレットで計算した後にイザベラは試験艦へ向かってデータを送ります。

「設置起爆ではなく時限起爆に変更しなさい。

変更コードは送ったわ。

それを適用させたところで多少の誤差は出るからそこはそっちで調整しなさい」

「この数分でコードを書き換えたのか」

「文句を言う前にさっさと対処しなさい」

隣で一連のやりとりを見ていてキアラはディラン大佐を気の毒に思っていました。

天才だからかその場で修正を当たり前だと思っていたのか何なのか不良品を少しでも使えるよう数分でミサイル起爆のシステムにコードを埋め込もうだなんて、誰が思いつくか。

試験艦からはコードが書き換えられたAM -2ミサイルが3発神浜市へ飛んでいき、上空500mで爆散していきます。

液状化したアンチマギアは隙間が生まれたもののほぼ半径250mに撒き散らされ、粉末状アンチマギアは想定以上の範囲へ濃度を保ったまま散布されました。

これらのミサイルに直撃する魔法少女はいなかったものの、親しみのあった場所が爆撃されたことに悲しみを感じる魔法少女達は多い様子でした。

「目標値達成。次のフェーズに向けて索敵ドローン、散布ドローン発進」

「第ニフェーズに移行。

ドローンにて魔法少女がいると思われる場所へアンチマギアの散布を開始する。

地上部隊は鎮圧マニュアルの実行を行え」

マッケンジー達は待機状態から変わらず、動き出したのは人間側についた魔法少女達でした。

「ドタバタはあったがなんとかマニュアル通りの運びになったか」

ドローンは予定通り中央区中心に外側へ魔法少女が逃げるよう誘導開始。

魔法少女反応もカミハマシティの外側へ広がっていきます」

「北部の押さえ込みは囮に任せろ。

我々は海岸の安全確保を優先する。

S班は索敵に専念し、沿岸部分にいる魔法少女を洗い出せ。
E班、W班は囮と自衛隊が完全に機能しなくなってから動き出せ。

的になるのは自衛隊だけでいい」

マッケンジーが指示を出し終わったあと、近くにいた兵士がマッケンジーに話しかけます。

「我々の出る幕はあるでしょうか」

「常に最悪のケースを想定して動かなければ簡単に死ぬものだ。

それに相手は非常識な連中だ、今こうしている間にも地面が割れて奈落に落とされるかもしれない

「さ、流石にそれは」

「可能性はゼロではないと思う程度でいい。

我々が動くのは艦砲射撃が一通り完了してからだ。その時にどうなっているか」

 

一方、神浜市の様子を観察しているペンタゴンでは不審な影を捉えていました

「レディ、中華民国から軍艦が数隻発進しているようです」

そういえばあいつらこのタイミングで軍事演習とかほざいていたわね。

しっかり監視しておきなさい。

あとは予定通り中華民国以外に対魔法少女条例違反時の対応連絡を出しなさい」

「ロシアにも伝えるのですか?!」

「あそこはすでにサピエンスの犬よ。

構わず伝えなさい。こんなところで裏切るほど奴らに度胸はないわ」

「了解!」

キアラはイザベラに話しかけます。

「本当にこの機会に日本をものにしようとするだなんてあるのか」

「うちの国に工作員を散々潜り込ませていて、さらにはあの脳内のデータよ。確信よ」

「人間に対してもあれを使ったのか?!」

「誰が魔法少女用と言った?

やらかしそうな国なんて調べがついているのよ。

邪魔なんてさせないわ」

 

back:2-3-4

レコードを撒き戻す:top page

Next:2-3-6

【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-3-4 神浜鎮圧作戦・下ごしらえ

キュウべえが姿を消したと知ってから数日が経過

日が沈み、夜と呼べる頃になった時間帯の出来事でした。

北の方角から以前に神浜を奇襲した武装集団とは別の集団が迫ってきていました。

灯花ちゃん達がいるコンピュータ室でその武装集団の姿を捉えた時、兵士と随伴する車両に記載されていた文字は。

「自衛隊?!」

神浜の境に入るあたりで自衛隊は歩みを止め、スピーカー越しにこちらへ語りかけてきました。

「神浜市に籠城する魔法少女達に伝える。

無駄な抵抗はせず、投降しなさい。

そうすれば、互いに辛く、痛い思いもせず穏便に事が済む。

君たちと殺し合いは行いたくない。

どうか、人と共に歩むという選択をしてくれないだろうか」

神浜にいる魔法少女達は自衛隊の呼びかけを聞いて直ぐには動き出せずにいました。

それは、私たちも同じです。

「投降って、でも、今捕らわれるなんてことになったら」

間違いなくアンチマギアプログラムに従って人としては扱われない

「投降したからって、過去と同じ生活には戻れないってのはみんなわかっているはず」

「とは言え判断するのは個々人の自由だと思います」

「いろは?」

私は知りたかった。

ただ周りに合わせているだけで、実は人間と一緒にいたいと思う子達がこの神浜にいるのではないか。

神浜中を歩いて分かったけど、決してここでの生活は快適なものではない。

ここでの生活を望まない子がいるなら、これはいい機会かもしれない。

そう思いを巡らせていると、灯花ちゃんが何かをしようとキーボードに手を伸ばそうとしていました。

「待って!」

「…お姉さま?」

「もうちょっとだけ、様子を見させて」

灯花ちゃんは呆れた顔でキーボードから手を離します。

「しょうがないにゃぁ」

他の魔法少女達がどう出るか伺っていると、誰も自衛隊の方へ行こうとする子は出てきませんでした。

15分近くは状況が変わらずにいました。

しかしついに自衛隊が動き出しました。

「回答がないならば、保護を目的に立ち入らせてもらう」

自衛隊が用意した照明が神浜を照らし、自衛隊はゆっくりと中央区に向けて進軍を開始しました。

「あいつら入ってくるよ!」

「抵抗していいのか、どうなんだ!」

神浜の魔法少女は誰かの指示がないと動き出せないのか次の行動に出れずにいました。

「自衛隊が動き出したのに、みんな動こうとしない?」

「人間社会のあり方が刻まれていれば、指導者の指示を待つのは当然だろう」

ねむちゃんがそう言い出すと、マイクがある方向に指を刺しました。

神浜マギアユニオンという組織を作ってしまったのはおねえさんだ
お姉さんの言葉ひとつでみんなは動き出してくれるだろう」

「でも、私はみんなに戦ってなんて言えない。戦いたくない子だって、いるだろうに」

みんなが何も言わない中、声をかけてきたのはワルプルガさんでした。

「ならば思いを伝えるだけでいいんじゃないかな」

「思いを?」

「スピーカーなんて使わなくても、あなた達にはもっと便利な情報伝達手段があるでしょう?」

テレパシー

確かに思いは届けやすいけど、そんなに遠くまで、しかも複数人に届ける方法なんて。

「でも、どうやって複数の子達に」

「くふふ、あの人たちはすごいにゃぁ、こうなることを予期していたんだから」

そう言って灯花ちゃんは引き出しから小さな機械がついたインカムを取り出しました。

「これをつけてテレパシーを使うと、余裕で神浜中の魔法少女に思いを届けられるよ」

「あなたそんなものまで作れたの?!」

やちよさんの驚きはもっともです。

いつの間にこんなものを。

「天才を侮らないでほしいな。

ほら、みんなを指示待ち人間から解放してあげて」

私はインカムを受け取り、装着してみんなにテレパシーで伝えました。

「それじゃあ、やってみるね」

私は神浜にいる魔法少女全員に伝えることを意識しながら想いを伝えます。

“みなさん、これからどう行動に出るかは個々人にお任せします。

戦おうと、逃げようと、投降しようと。

抗いたいという人は、私に力を貸してください!”

そう思いを伝えると、自衛隊の1人が何者かに頭を撃ち抜かれていました。

自衛隊は一斉に抗戦する体制に入り、戦車が前へと出ます。

銃弾を放ったのは、三重崎の魔法少女でした。

「勝手にしろっていうんだ、好きにやらせてもらう」

「久々に殺し合いができるんだ、楽しまないとなぁ!」

その後次々と射撃が得意な魔法少女が戦車に対して発砲を行い、前線を作っていきました。

「やれやれ、血気盛んな奴が随分といるじゃないか」

「勝手にしろというのだもの、私たちも勝手にさせてもらうわよぉ。

紫色の霧には警戒して戦車に近づくわよ。

目眩し用の照明弾は持ってきているわね?」

「もちろんっす!」

「じゃあ、敵の目を潰してとっとと片付けるわ」

「はい!!」

二木市の魔法少女達も動き出し、戦いが次々に始まっていきました。

「私達は戦わない子達の保護にまわりましょう」

「そうですね!」

私たちが部屋から出ようとする時、わたしはういのほうを見ましたが、特に動き出そうとはしていませんでした。

「私はここに残るよ、ワルプルガちゃんもいるし」

「うん、わかったよ、うい」

部屋にはうい、灯花ちゃん、ねむちゃん、ワルプルガさんが残って他のみんなは戦わない子達の保護に出ました。

自衛隊と交戦を始めた魔法少女たちは自衛隊をどんどん押し込みます。

しかしその戦いの様子を見て灯花ちゃんは疑問を抱いていました。

「なんでアンチマギアが使われていないのだろう」

「確かに、夜闇では視認が難しいのにわざわざアンチマギアを持ち出さないなんて」

「彼ら、本気で制圧する気ないんじゃないの」

「だったら何で」

ただ追い返すことだけを考えている前線の魔法少女たちは自衛隊への攻撃をやめません。

「神浜の範囲外へ追い出すだけでいいから。

無茶はしないでよ!」

「神浜から出ていって!」

魔力による遠距離攻撃に対応できるはずがなく、非常識に遮蔽物をえぐる攻撃に自衛隊は対応できていませんでした

非常識な結果に怯えて逃げる者、負傷した兵士を引き摺り、牽制しながら後退する者。

戦車も兵士たちの盾になるだけで主砲を撃ってこようとしません。

その様子に三重崎の魔法少女達は疑問に思っていました。

「主砲を使わないなんてナメてるとしか言えない」

「魔法少女を撃つことを躊躇しているというの?

国防の要のくせして!」

「…なんだあれ」

狙撃手であるツバキさんが真っ暗闇の空を見て何かに気づきます。

ツバキさんが狙撃銃のスコープで目にとらえた物体を観察すると、そこには滞空するドローンがありました。

「あんなの気付けるはずがない。

でも、これはまずい!」

何かに気づいたツバキさんはテレパシーで博さんへ報告します。

博さんは驚き、すぐにテレパシーで魔法少女達に伝えました。

[奴らの目標は偵察だ!

上空のドローンを落とさないと何もかも把握されるぞ!]

みんなが一斉に上空を見る様になり、射撃系の武器を持つ魔法少女達はドローンを見つけると次々と落としていきました。

しかしこの行動も自衛隊の思う壺だったのです。

 

 

自衛隊から出された前日奇襲の提案。

「魔法少女が危険な存在だと認識させるだって」

この国には魔法少女が危険な存在ではないはずと信じるものが多い
本土上空で航空機の使用許可が出されないのもそのためです」

「イザベラとの交渉でも航空機の使用は禁じていたわね」

「確実性を持たせたいというならば、今からいう作戦を本作戦前日の夜に実行させてください」

私はマッケンジーに目を向け、マッケンジーはこちらの目を見た後に首を縦に振った。

「で、その作戦というのは?」

「魔法少女達の攻撃を誘い、彼女達に撮影ドローンを撃ち落としてもらいます」

「ほう、それが恐怖心を煽ることになると?」

「国防の要である自衛隊が容赦なく追い込まれる、そんな様子を撮影ドローンで中継します。

魔法少女達がそのドローンをどう捉えるかまでは予想できませんが、戦況がのぞき見られていると勘付いて破壊してくるでしょう。

その破壊してくる様子も実況すれば、国のお偉いさん達も恐怖を感じて航空機の使用許可を出してくれるでしょう」

「なるほど、いいんじゃないかしら。

でも自衛隊には被害が出るわよ」

「…苦肉の判断ですよ」

そんなわけで前日の夜に実行された作戦は見事成功し、実況するキャスターは絶句している様子だった。

さすがと言わざるを得ないのは現地での自衛隊の対応だ。

死者は出ているが動きが早い日本の戦車らしく兵士への射線を車体で塞ぎ、後退の手助けをしている。

やられた車両は乗り捨て、そのまま盾にして撤退。

信号弾も出さずにドローンがやられたとわかれば素早く全員後退。元から撤退する前提だとしてもよく指示が行き届いている。

それに、撮影用に偵察用ドローンを紛れ込ませてこちらが試験艦で撃ち込むミサイルの標的はどこが最適かまで調べてくれた。

気が引けた状態とはいえここまでお膳立てしてくれたのは感謝しかない。

それに、現に航空機の使用許可が降りている。

条約違反だと罵られる覚悟で持ってきたヘリ達が気兼ねなく飛ぶことができるんだ。

本当に感謝しかない。

携帯端末で中継が行われている映像を流しながら、私はSGボムが装着された魔法少女達の様子を見てまわっていた。

A,B,C,Dの4班に分けていて、D班には最近神浜市から亡命してきた魔法少女が集まっている。

そこまで戦果は期待していないが、面白いデータがとれたらいいな程度には思っている。

こちらを睨む魔法少女達に対して、私は忠告の意味で話しかけた。

「変に戦場で逃げようとか、説得されて寝返ろうなんて思うんじゃないよ。

ソウルジェムにつけたやつが爆発しちゃうからさ、死ぬ気で同胞と殺し合えよ?」

その後誰も声を出そうとせず、面白くないと思ったところで1人の魔法少女が話しかけてきた。

「魔法少女が捕まったら、みんなこうなるんですか」

「動物園の猛獣の様に檻で管理するのも難しいからね。

思考力が高い相手には、命の危険で脅すしか方法がないのさ。

だって、人間って弱いし」

「だからって、爆弾をつけられるだなんて、酷すぎです」

「あんたの母親もそう言ってたねぇ。危うく叩き切られかけたけど」

私は話しかけてきた時女とかいう魔法少女のところまで近づいた。

「口で襲わないって言ったところでよ、守れないのが人間なんだ。
せいぜい口だけになるんじゃないよ。

しっかり神浜市にいる仲間とやらにもわからせてやれ。
そうすれば、少しは人間らしい生活に戻れるだろうさ。

私は保証しないがな!」

時女の殺意は感じられた。

背中を向けた瞬間切ってくると思い、去りながらSGボムのスイッチをちらつかせると、こちらには殺気を送る目線しか感じられなくなった。

ああいうのがある間は、SGボムの装着は必須だろうな。

さて、もう1人の私を起こしに行かないと。

そう思って控え室に行こうとするとマッケンジーが壁に寄りかかって考え事をしているのを目撃した。

そんなマッケンジーへ声をかけた。

「よう、あんた漫画やアニメは見るか?」

「…どうした急に。そんな暇はない」

「そうか。だが、今回はいつも以上に非常識なことが降り注ぐ戦場になる。
少しは見といたほうがいいぞ?

あれらにはたくさんの非常識がつまっていてためになる」

「もうすぐに配置につく時間だ。

そんなことできるか。

だが、常識を捨てる覚悟はできている」

「ほう?それはいい心がけだ。それではまた戦場で」

そう言ってその場を立ち去ろうとすると、マッケンジーは話しかけてきた。

「あんたは知ってるのか。

この戦いが本気じゃないってこと」

「そんなわけあるか。ここを手に入れないと後々困るってのはイザベラだって知ってることだ」

「ならばなぜ本人達が来ない。

イザベラとキアラが居るだけで俺たちの何十倍も戦力になる。

誰だってわかることだ」

私はマッケンジーへ振り返って指をさしながらこう言った。

「だったら死ぬんじゃねぇぞ〜。

ただ言えることは、この戦いはただのデコイだ。あたしらは捨て駒なのさ」

「お前、それって!」

「せいぜい背中には気をつけろよ。下手に言いふらしたら殺すから」

マッケンジーは何も言わなくなった。

そう、ここまで大規模に作戦をこしらえておきながらイザベラの本命は別にある。

ここにいる私も、あいつにとっちゃ捨て駒ってことだ。

全貌を知ったこっちにとっちゃ、イザベラはマジで頭がおかしい。

だってこのままじゃ・・・。

ほんとやべーよ、あいつ。
このままじゃ世界は魔法少女ではなくて、イザベラに滅ぼされるんじゃないかね。

 

back:2-3-3

レコードを撒き戻す:top page

Next:2-3-5

【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-3-1 人になった者と人でなし

容器から出てきたキュウべぇをディアがクローン体の調整を実施する部屋へと連れて行った。

そこで私はキュウべぇへ薄着のシャツを着せ、髪を乾かし始めた。

キュウべぇの体の色に合わせて髪は白髪にしていて、ディアのDNAを流用しているせいか、長髪でありながら触り心地はディアそっくりだった。

髪を乾かしている間、キュウべぇは表情を変えようとしなかった。
感情がない生き物だったし、感情一つ見せないのは想定内のことだ。

乾かし終わった髪を、私はツインテールになるよう整えた。

「どうだ、元の姿に似せてみたが」

「ボクは見た目なんて気にしないよ」

「そうかい」

私はキュウべぇをそのままの姿で私の部屋へと連れて行った。
裸足のまま歩かせたがそれでも特に表情は変えず、私の部屋へたどり着くまでは私の靴音とキュウべぇの足音しか聞こえなかった。

扉の鍵をかけて私が椅子へと座ってもキュウべぇは何も話し出そうとせず、その場にじっと立ったままだった。

「座ればいいじゃないか。いつもの体でも話すときくらい座っていただろう」

キュウべぇはしばらく足元を見て考え込み、最終的に座りはしたのだがあぐらの姿勢だった。
ディアはあぐらで座る癖はあるが、あいつのデータは根こそぎ抜いておいたはずだ。
動物が人間になったらあぐらの姿勢をとりやすいとでもいうのだろうか。
無駄に観察項目が増えてしまった。

あぐらの件についてメモを取り終えると、私はキュウべぇへと質問をしていくことにした。

「気になっているんじゃないか、どうしてその体に入れることができたとか、何が目的なのかとか」

「ボクは現状確認に忙しいんだ。

元の体に戻れないし、個体数だってここにいるボク1体以外に確認できない」

私はしばらくキュウべぇを見つめていると、何かに気づくようにハッとしてこちらをみた。

「書き換えたというのか、ボク達が使う体の情報を」

「最初に見せる表情にしてはいい感じだな。

お前達の中枢へ直接アクセスはできていないが、お前達の個体をいくつか捕まえて体への情報の出入りを観測しているうちに体へ情報を入り込む仕組みは解析が完了した。

まあ、全ては魔法少女が使用する波形観測の副産物ではあるが」

「だからと言って入れ物を変えることができるなんて」

「それは私が驚くことだ。

一個体の意識だけ人の体へ入れられればいいと思っていたが、まさか制御権丸ごと移行されていたなんてね。

他者に観測されることは想定できなかったのか」

「人類が僕たちに干渉できるだなんて想像もしていなかった。

ボクにだってわからない、こんなことになるだなんて」

キュウべぇが困ったような動きをするのは新鮮であった

「どこかで自分たちは人類よりも上位の存在であるとおごっていたのだろうな」

「ボクたちにそんなものはない」

「だが人類はここまで到達することができた。
こんな可能性もろくに予見できないならば、お前たちは十二分に無意識な傲りを持っていたのだろうよ」

キュウべぇは無表情のまま真っ赤な目でこちらを見つめていた。
きっと今までの流れが煽りなのだろうとこいつは理解していないのだろう。これは理解できなきゃ人間も同じ反応をするか。

「それに、お前をその体に入れた目的はしっかりある」

「その目的というのは?」

「お前、利用する前に感情について調査を行ったんだろう?本当に人類に頼るしかなかったのか」

「ボクたちに感情というものが出るのは稀な精神疾患でしかない。
意図的に発生させられるものでもなかった。だが、宇宙を探し回り、生まれた生命誰もが感情を持つ君たちを見つけたんだ。
協力してもらう以外に方法がないだろう」

人の感情についての不思議はいまだに解決されていない。
感情を持つ人自身でさえ、感情というものを何故持つのかをはっきりと理解できていない。

「そんな不確かなものによく手を出したな」

「宇宙の寿命を延ばす必要があったんだ」

こいつらは本当に徹底的に探究を行ったのだろうか。ならば、なぜこれを試さなかったのかが気になる。

「それで目的なのだが、人の体へ入れば感情が生まれるのではないかと思ってね」

「人の体にだって?」

「感情というものを自由自在に操れるのは全ての生物の中で人間だけだ。
人間以外の動物も感情というものは存在するらしいが、人間ほど多彩には持ち合わせていない。

魂と体で分離して考え、魂が感情を生み出していると仮定すれば他の動物に感情があってもおかしくない。
だが、なぜ人の魂にだけ多彩な感情が与えられていると言えるのだろうか。魂は皆等しい存在ではないだろうか。
魂の時点で優劣が存在するならば、それはこの世界を作りだした存在の欠陥だといえよう。

魂は皆等しいと仮定し直そう。感情を生み出せるのはその魂が入る器に影響されてではないかと。

ならば、多彩な感情を生み出すであろう人の体に、感情を持たない魂を移せば多彩な感情を手に入れるのではないか。

これはその実験だ」

「なんてことを思いつくんだ。

そんなことだと証明されればボク達は」

私は腰につけていた拳銃を取り出して、躊躇なくキュウべぇの左腕を撃った。

腕を銃弾が貫通し、キュウべぇの左腕からは血が出てきた。

キュウべぇは苦しそうな表情を見せ、痛みに耐えようと体を震わせていた。

「なんだこれ、君たちが言う、痛覚ってやつなのか」

「今は私と対等だと思ってくれるな。」

私はもう一発キュウべぇの左腕へと撃ち込んだ。

今度はキュウべぇは悲鳴をあげて左腕を押さえていた。

キュウべぇの悲鳴、新鮮で少し嬉しくなってしまった。

私がキュウべぇの額に銃口を当てると、キュウべぇは恐怖を覚えたような表情をしていた。

「今お前は恐怖の感情を覚えた、違うか?」

「そんなの、知らない。

この逃げたいと思うこと、それが恐怖だというのか」

私は拳銃をしまい、救急箱を取り出した。

「もっといろんな感情を覚えるといい。

これを使え。止血と鎮痛を一度に行える救急キットだ」

その救急キットを使用したことで、キュウべぇの体の震えはやっと止まった

「人の体というのは欠陥だらけで不便すぎる」

「知恵を得た代償だ。100年生きられるだけまだ十分だろう」

私はここまでの表情変化についての経緯を記録した後、私的なことをキュウべぇへ聞いた。

「お前はヨーロッパで活躍した錬金術師のことを知っているか」

「錬金術師と呼ばれた魔法少女はたくさんいたが、それがどうしたんだい」

部屋の監視装置は停止してあり、盗み聞きされる隙はない。

今なら聞いても問題ないだろう。

「聖遺物争奪戦に参加していたという”キミア“という女に覚えがないか」

「キミアか。魔法少女になることを拒み続けた多くの錬金術の祖となった人物だね。

確か君も近くにいたね、カルラ」

「あいつは今どうしている」

「死んだよ。

世界を変えるために聖遺物を大量に行使して、呪いに耐えきれなくなって暴走してね」

「そうか。あいつはもうこの世にいないのか」

 

キミアとの付き合いは昔の出来事になる。

錬金術というものが周知されるよりも前の時代、元素という存在が一部の哲学者からもたらされ数百年したころ。
あの時代にはあり得ないと思えることを実現させようと試みる者が増えていた。
私もその1人だった。

すぐに火をつけられる道具があると便利だろうと考えた私は、火が付くものについて調べるようになった。
そんな中、酒を飲んでいる男がろうそく周辺に酒をばらまくと、その酒を伝ってその酒場が一気に燃え盛ってしまったという事件を聞きつけた。
そこからヒントを得て、私は火をつける液体を見つけ出し、その町では一目置かれる存在となった。

そんな私の話を聞きつけて、ある人物が私を訪ねてきた。
その人物の名は忘れてしまったが、彼は錬金術師だと名乗っていた。

私はその錬金術師に連れられて、学院と呼ばれている場所で知恵をつけていくこととなった。

あらたな実験を行うために、私は素材をとりにある錬金術師の元へと訪れていた。

そこにはその錬金術師へ何かを教えている少女がいた。

「あの、頼んでいたものを取りに来たのですが」

「なに、今が肝心なところなんだから静かにしていてちょうだい」

見知らぬ少女にそう言われて何をしているのか気になった私はそっと何をしているのか観察した。

どうやら毒性を取り除いて良質な回復薬品を作る術の最中だったようだ。

その少女が教えていたのは複雑ながらも最適な方法だった。

とはいえ、そんな方法であれば生成結果は想定よりも少なくなってしまうことが私には理解できた。

中継させているアレンビックの行き先をよく冷やした容器にして結露させる量を増やしたほうがいい。

気化して逃げていく分が勿体無い」

横槍を受けてかその少女はムッとしてしまった。

「なに、私のやり方にケチをつける気?」

「最適な方法を助言したまでだ」

「なんなの、ここの創設者にケチをつける気?」

「創設者?」

「まあまあやってみようじゃないか」

教えられていた錬金術師は私の助言を取り入れて時間をかけてのぞみの回復薬ができていた。

その結果を見て少女は不機嫌そうな顔をして私に迫ってきた。

「この屈辱忘れないから。

あんたの住んでいる場所教えなさい!」

「私はここに触媒をとりにきただけだ。

来たいならついてくるといいよ。

で、あんたの名前は?」

「ここに通っていて私の名前も知らないの?

キミアよ」

これがキミアとの出会いだった。

後で知った話だが、ここらあたりで錬金術師という存在を生み出したのはキミアらしく、その豊富な知恵を前にして多くの術師はキミアとの会話を怖がったらしい。

確かにキミアの知識はすさまじく、世界を変えられる規模のものだってあった。
だが、そんな天才にも知識の穴はある。
彼女の知らない小技を口出ししているうちに、彼女は私の負け顔を拝みたかったのか私に付きまとうようになった。

負けず嫌いのキミアは私にいつも付き纏ってきて、わたしはいよいよめんどくさくなってきた。

「今日は魔法石の研究を行うんじゃなかったのか。
あれを扱えるのは一部のものにしか扱えないってのが不思議だがな」

「そうよ・・・だから、あんたに会わせたいやつがいるのよ」

「キミア?」

そう言われてキミアに連れられた私は、白い生き物の目の前へと連れられた。

「こいつは、なんだ?」

「ボクはキューブと呼ばれているものだ。
君たちには魔法少女の素質がある。とはいえ、君たちは特殊な生い立ちをしているようだね」

魔法石を扱える存在、それは魔法を扱える魔法少女のみが扱えるものだった。
魔法少女ではない私たちが扱えたのには、私たちに魔法少女の魔力が受け継がれているからだという。

「魔法少女は短命な子が多いが、その中で子を残すものは少なくない。
君たちに魔力が備わっているのはそのせいだろう」

私の父と母は普通の人間だった。母親は魔法少女なんてたいそうな存在でもなかった。
私はいったい何者なんだ。

その時は後にキュウべぇと呼ばれる存在の誘いを私たちは断った。
もちろんそれは魔法少女になるとどうなってしまうのかを徹底的に聞いたというのもあるが、願いひとつで何もかも変わってしまうことが気にくわなかった。

あれからしばらく、私たちは魔法少女のことは考えないようにした。

のんきに研究の日々を過ごしている間に、キミアは錬金術師の祖としていつも以上に崇められるようになった。

キミアと記した錬金術の書物は多くの錬金術師が重宝するものとなり、錬金術師ならば持っているのが当たり前だと言えるくらいの書物も含まれていた。

私達はしばらく探究を共に歩んでいたが、ヨーロッパでの出来事をきっかけにキミアは変わって行った。

賢者の石の完成

万能の秘宝と呼ばれる賢者の石を最初に完成させたのはキミアだった。

しかしその作成方法は、人の命を使うものだった。

私も教えられた通り山間の集落へ魔法陣を施して実行すると人々の命が合わさって真っ赤な賢者の石が完成した。

キミアは得意げな顔をしていたが私は一発分殴った。

「人の命をなんだと思っている。

こんなやり方、禁術になるのは明らかだ!」

「ふん、人の扱いなんてこんなものでいいさ」

「何を、言っているんだ」

「人なんて魔法少女を前にして何もできない。そのくせこの世界を支配しようだなんてさ。

カルラ、私は人に可能性を見出せなくなった。私は魔法少女に可能性を見出してみるよ」

「お前、まだ魔法少女の存在を気にかけていたのか」

「お前も魔法石を扱えるならば、魔法少女の末裔だということだ。
ここまで他の人と比べて肉体の劣化がお互いに遅いのもおかしいと思わないか」

「それはいろんな延命のための薬品を自分たちの体で実験した代償であって、血に混じった魔力の影響だなんて」

「人が学ぶには寿命というものは邪魔過ぎる。
カルラもどうだ、寿命なんて存在しない魔法少女についてもっと調べてみないか」

「そうかい。私はまだ人間を見限る気はない」

 

そしてジャンヌという存在がヨーロッパを救ったという頃、私はキミアと別れる日がやってきた。

キミアが勝手に私の体へ賢者の石を埋め込み、不死の存在へとしてしまった。

お揃いだと言っていたからあいつも自身に施したのだろう。

私は怒りのあまりキミアの胸ぐらを掴んでしまった。

「お前は、そこまで外道に成り下がったか!

不死になることがどれほど恐ろしいことか、錬金術師ならば理解しているはずだ!」

「そうさ。悠久の時を生きて見定めようじゃないさ。

魔法少女と人、誰がこの星の主導権を握るに相応しいかさ」

「そうか。

私は人の可能性を諦めたわけではない。そう伝えたはずだ!」

私はその場を去る準備を始めたが、キミアは優しそうな表情を見せるだけだった。

「ここからは別々の探究を進めるとしよう。

さよならだ、キミア」

「ああ。道は違えど、親友であることは変わらないでくれるか」

「そうだな、お前と親友という関係は、変えないさ」

それから私は身を潜めながら人間が持つ障害の一つである言葉の壁を解決する方法を探し、脳波の研究を行うに至った。

世界の技術力が上がり、私は錬金術師ではなく研究者として身を潜めるようになった。

そんなある日、久しくキミアから手紙が届いた。

どうやって居場所を突き止めたのか。

”私は悲願を成し遂げる準備ができた。

これが成功したら、お前よりも先に、私の考えが正しかったという証明になるだろう。

聖遺物

これがあれば、世界中の人々を断罪できる。

全てが解決した世界でまた会おう“

聖遺物

そう、あの頃は魔法少女の間では聖遺物を争奪する動きが強くなっていた。

魔法少女の魔力が籠ったそれを使えば呪いが降りかかる。

そんな危険なものに可能性を見出したというのか。

あれからキミアとの接点はなかった。

だが死んだとわかった今、聖遺物の使用は失敗だったのだろうと悟った。

「まったく。ろくでなしの最後を遂げたか」

「でも彼女は魔法少女の弟子を取っていたね」

「あいつが弟子を取るとは、少しは心境の変化があったのか。

それで、その弟子というのは、生きているのか」

「今生きているのは日継カレン、紗良シオリ、ピリカだね」

その3人、今も生きているというならどこかで会ってみたいものだ。

まあ今はいい。キュウべぇの観察を優先しよう。

「さて、どこまで表情を変えられるか試しに行こうか」

私はキュウべぇを部屋から連れ出し、喜びの感情を教えようと思った。

どう覚えさせるかは、これから考えるさ。

 

back:2-2-19

レコードを撒き戻す:top page

Next:2-3-2