【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-1-1 もうおしまいだ、何もかも

人類史って、どんな道のりであったかご存知だろうか?

人類が知恵を持ち、組織で活動するようになってから同種同士の争いは今に至るまで終幕を迎えない。

そんな歴史の中で滅びもせず、種の存続が絶えず行えているのは争うのはいつも一部の人間だけだからだ。

争う理由はいくらでもあろう。

そんな争いも時代が進むごとに殺傷速度も、範囲も拡大していき、今となっては地球規模の破壊を行える兵器まで存在している。

それが抑止力となることで大規模な戦争は起きていない。

しかしそれはただの口上でしかなく、やろうと思えば指先一つで地球は滅びる。

 

これは人類の進化した結果として正解なのだろうか?

 

間違いであるならば修正するしかない。

たとえ歴史を覆す力が、魔法少女という化け物由来の力であったとしても。

 

ヨーロッパ 某所

 

「集団の魔力反応を確認。3日前に武器庫を襲撃した魔法少女たちだと考えられます」

「大人しく管理下に入ればよかったものを。何が彼女たちを反抗させるのやら」

「アンチマギア、準備が完了しました」

「よし、鎮圧マニュアルを実行しろ。いいか、できるだけ殺すんじゃないぞ」

森林の廃墟を取り囲むように軍人たちが侵攻を開始する。

その手には特殊な銃と特殊な粉末が含まれたRPGがある。

歩くたびに出てしまう草を踏んだ音、枝を擦る音を魔法少女たちが聞き逃すはずもなく、一瞬のうちに周囲の音が消えてしまった。

消えた音は空気の振動による音だけでなく、電波を伝ってくる音と呼べるもの全てがその場から失ってしまった

異常事態にもかかわらず軍人たちは慌てることなくハンドサインでこの後の行動を共有していく。

1人のRPGを持った軍人が廃墟の上空目掛けてRPGの引き金を引く。

音が無いまま上空で爆散した弾頭は周囲に特殊な粉を撒き散らす。

すると、消えていたはずの音が元に戻った。

”なにgaza tあの、みんp、裏!-て!“

「ノイズがひどい。だが奴らは裏口から逃げるつもりだ。S班、洞窟を張れ」

現地にいる部隊長の指示に従ってS班は獣道が残る洞窟の前で待機した

「N班、E班は引き続き鎮圧マニュアルに従って進軍せよ。N班は作った穴の監視も怠るな」

廃墟を取り囲む軍人たちは廃墟へ取り付き、内部にいる魔法少女の捕獲を開始する。

内部にいた1人の魔法少女は侵入してきた軍人へ小さな錨のアンカーを投げつけてきて軍人は脇腹を貫かれた。

「ここから先は通すものか!」

軍人たちは魔法少女へ銃口を向け、部隊長は魔法少女の前に出た。

「武器を下ろせ、下手な行動を起こせば後の扱いが酷くなるだけだ」

「ふん、あたしたちにとっちゃ保護された時点で死ぬと一緒なのさ」

部隊長がアンカーを持つ魔法少女へ一歩近づく。

「もう一度言おう。武器をおろして降伏しろ」

「…断る」

「そうか、残念だ」

部隊長は建物の中へグレネードを投げ入れた。

内部に残っていた魔法少女たちはグレネードを目にして建物の奥へと逃げ始める。

グレネードが破裂すると破片と共にRPGにも含まれていた謎の粉塵が周囲に拡散された。

粉塵に触れた魔法少女は皆動きが鈍くなり、アンカーを持っていた魔法少女も立っているのがやっとの状態だった。

「なんだこれ、意識が遠く」

軍人たちは内部へ一気に突入し、動きが鈍くなった魔法少女たちのソウルジェムへ銃を押し付けていく。

「まさかアンチマギアか!
なぜだ、武器倉庫は破壊したはず」

そして部隊長がアンカーを持つ魔法少女のソウルジェムへ銃を押し付けながら話し始めた。

我々がサピエンスから与えられた、人ならざる君達へ対抗するために用意してくれたものの一部さ。君たちも知らない一部だよ」

「サピエンス…そうか、あいつが言っていた人間を敵たらしめる存在か」

「裏口から逃げようとした魔法少女、素質のある少女たちを裏口で捉えた。
悪いが仲間揃って身柄を拘束させてもらう。あとは君の言うアイツについて詳しく聞かせてもらおう」

アンカーを持つ魔法少女は驚いた顔をした後、部隊長の足を掴んだ。

「お願いだ、裏口から逃げようとしたやつの中に、グリーフシードが必要な奴がいるんだ。
そいつだけは、見逃してくれないか」

「身の程をわきまえろ。警告を無視したんだ、要求には答えられない」

アンカーを持つ魔法少女は部隊長の足を離し、何も話さずにうなだれていた。

部隊長は状況確認のために各部隊へ連絡を取っていると周囲が禍々しい空間へと変わっていった。

「隊長!S班から拘束した魔法少女が魔女になったという報告が」

「各位、鎮圧マニュアルから対魔女マニュアルに変更。
S班、E班は魔女討伐を実施せよ。N班は私とここで待機だ。
なお、くれぐれも逃亡者が出ないよう見張りも並行して実施すること」

指示を出した部隊長はその場で銃のカートリッジを変更した。

「無駄なことを。人間が魔女に敵うわけがないだろう」

「少し前までではな。人間を甘く見るんじゃない」

そう言った後、部隊長はカートリッジを変え終わった拳銃を一発発砲し、目の前に現れた使い魔を倒してしまった。

「普通の銃弾が使い魔を」

「我々にはすでに争う力がある。お前たち魔法少女に頼らずとも、戦う力がな」

話をしているうちに、禍々しい結界は消えて周囲は元の廃墟へと風景が戻った。

「現状報告。
…あー。わかった。全員を拠点へ搬送しろ」

無線を切って部隊長はアンカーを持つ魔法少女を抱え上げた。

「こちら実行部隊、これから本部へターゲットを搬送する。受け入れ準備を頼む」

「もうおしまいだ、何もかも。
すまないなカレン、あんたの目指す世界に、私は入れそうになさそうだ」

ヨーロッパのかつては中立国を主張していた国だが、今は対魔法少女用の拠点が構えられている。

これは国連が魔法少女は人類の敵であると宣言したためである。

その拠点へターゲットである魔法少女を捕獲したという情報が入った。

「レディ、例の武器倉庫襲撃犯たちを捕らえたとのことです」

「そう、輸送を完了させるまで気を緩ませないでね」

「了解」

携帯での会話が終わったところを見計らい、一緒に歩いているボディーガードの少女がレディと呼ばれている少女へ話しかけた。

「武器庫破壊がわかったから彼女たちの存在に気づけたものの、知らぬ間にかなりの損害が出ていたようね」

「ヨーロッパ地域とアフリカ地域、さらにはロシア領の半分に及ぶ地域に存在した裏組織の対魔法少女兵器が跡形もなく破壊されていた。

そして、武器庫破壊時点で戦車や戦闘機といった大型兵器への転用実験がデータごと吹き飛んだ。

秘密裏に破壊工作や情報収集を行っていたにしても手際が良すぎる」

「魔法少女にも頭がキレる奴がいるってことよ。そう考えると随分と呆気なく終わったなぁ。ちょっと期待はずれ」

2人の少女は建物内へ入り、エレベーターを使って3階の司令室へと移動していた。

そして、エレベーターの中で会話を続けた。

「残ってるのが軍艦への搭載実験だけど、作戦にすぐ使えそうなのは1隻だけなのよね」

「相手は魔法少女。海上からの援護砲撃ができれば十分じゃないの?」

「キアラ、魔法少女にも船乗りがいるかもしれないじゃない。
予備がないっていうのは怖いことよ」

「しばらくは白兵戦しかできないのね」

エレベーターの扉が開き、司令室ですれ違った兵士たちはほとんどがイザベラへ敬礼を行っていた。

敬礼を行わなかった兵士は、近くにいた友人の兵士へ話しかけた。

「あの人たち誰だ?」

「サピエンス責任者のイザベラ様とそのパートナーのキアラ様だぞ。お前こんなことも知らなかったのか」

「俺はアンチマギアとは無縁の部隊だからね。あの二人とサピエンスってそんなにすごいのか?」

「サピエンスは魔法少女と魔女へ特攻を持った成分であるアンチマギアを生み出した、魔法少女を狩るスペシャリストが集まる組織だ。

イザベラ様とキアラ様はその中でもトップクラスに魔法少女と魔女を狩ってきた数が多い方たちだ。もちろん、俺達一般兵が束になって挑んでもかなわないさ」

「ふーん、今の世界情勢だからこそ敬われてるってわけか」

「言葉を慎んどけ。聞かれたら殺されるぞ」

 

イザベラは指令室へ入ると周囲の兵士へ敬礼を返し、ヨーロッパ地域の司令官へ話しかけた。

「提供した武器で事足りたかしら?」

「レディ、武器の供給は感謝する。しかし前回のような大掛かりな実験は魔法少女の標的になると考えるとリスクしかない」

「あら?そんなことを言うならロシアか中華民国へ実験場を移すけどいいのかしら」

「我々が求めているのは人類の安全だ。
レディたちのように魔法少女キラーとして名をあげることに連合のトップたちは賛同していないのだ」

実験場として使っても良いと真っ先に名乗りをあげたのはあなたたちじゃないの。何を今更」

司令官は返事をすることはなかった。

「まあいいわ。国連の宣言に従える最低限のものは提供したから、あとは好きにしなさい」

イザベラは司令室を出ようとしたら足を止めて司令官へ向き直った

「そうそう、もし魔法少女の取り締まりを怠ってヨーロッパが魔法少女の巣窟になりでもしたら、その時はヨーロッパが赤く燃えてしまうということはお忘れなく」

「わかっているさ」

イザベラとキアラが司令室から出ていくのを確認したあと、司令官は愚痴をこぼした。

「少女たちを拘束、殺害する狂った方針をなぜ国連が宣言してしまったんだ。
私は、あの演説を見聞きした後でも理解に苦しむよ」

「魔法少女は願いによって人類史を捻じ曲げてきたとありましたが、それが事実だとするとそこまで必死になるのも致し方ないのでは」

「だから芽が出る前に掘りつくし、出た花は手折るというのか。
監視だけでいいのではないか」

「しかし、今回のように明確に人類へ反抗する者達もいます。
躊躇していたらこちらがやられますよ。
司令官殿には、娘さんがいるのは知っていますが今は耐えるときですよ」

「ふぅ、そうだな。この躊躇は娘が魔法少女だったから、かもしれんな」

 

イザベラとキアラは司令部近くに停められているごく一般的な乗用車のもとへと向かった。

4人乗りの乗用車には1人の運転手が待機していて、2人の姿を見ると車のエンジンを起動した。

イザベラとキアラは後部座席に座り、ドアが閉められたのを確認すると運転手は何も言わずにアクセルを踏んで車は前進を始めた。

「はぁ、司令部で話し込むと思って遅めの飛行機を予約したのにこれじゃあ結構時間が余っちゃうわね」

「それなら折角だ。この国の日常が変わったか見てまわるのも良いんじゃないか?」

アポなしで行けるところなんて広場くらいしか思いつかないんだけど」

「広場で何の問題がある?
どんな身分の人でも立ち寄れる場所が一番欲しい情報を得られると思うが」

「ま、別にいいわ。運転手さん、シャンドマルス公園へ向かって頂戴」

「はいわかりました」

車内から街並みを眺めているけど特に何か変わったこともないいつも通りの日常が広がっていた。

時間帯で言えばお昼過ぎ。

広場には親子連れの姿がたくさんあった。

イザベラとキアラは車を降りて広場から見えるエッフェル塔を見ていた。

あれだけの発表があったのに世の中ってそれほど変わらないものなのね」

「そういうものさ。人って簡単には変われないっていうじゃない?

「魔法少女に対する認識が変わっていればいいのさ、私はね」

そう話していると、広場で遊んでいた男の子がキアラにぶつかってきた。

男の子はぶつかった後尻餅をついてしまい、手に持っていた飛行機の模型は男の子の体重によって壊れてしまった。

「ルイくん大丈夫?」

「ちょっと、よその人に迷惑かけちゃダメでしょ」

男の子が走ってきた方向からは女の子と母親と思われる人物が近づいてきた。

男の子は壊れた模型を見ると泣き出してしまった。

そんな男の子を見てキアラは男の子の前に正座をして男の子の頭を撫でた。

「男子たるもの、すぐに泣き出したらカッコ悪いぞ。
それ、大切なもの?」

男の子はキアラの顔を見て「うん」とうなづいた。

「それじゃあお姉さんに任せてもらえるかな?すぐに直してあげる」

「…本当?」

そんなキアラを見てイザベラが母親と思われる女性に話しかけた。

「いいですかね、彼女が治しても」

「え、ええ」

イザベラ達はベンチのある場所へ移動し、キアラは男の子と女の子が両サイドで見守っている中でバッグから包帯に割り箸、サジカルテープと化粧セットを取り出した。

割り箸は適度な長さで割り、包帯と合わせて折れた翼を補強した。

サジカルテープでは包帯の端を止めるだけではなく、細々とした部品の接着、割り箸のささくれ立った部分を覆うのに使われた。

補強が完了すると、化粧セットを開いてキアラはブラシを男の子に渡した。

「好きな色に塗ってあげて」

男の子は塗り絵をするように包帯やテープの白い部分へ色をつけていった。

そんな様子を見ていたイザベラは女の子の首元へバーコードが付いているのを目にした。

「奥さん、あの2人は奥さんのお子様?」

「そうよ。すみませんね、勝手にぶつかったのにここまでしていただいて」

「いえいえ。それよりもお嬢さんの首元にあるバーコードはいったい?」

「あれですか。最近国連から発表された魔法少女検査を受けた痕です。

バーコードリーダーのようなものを首元に当てて検査を行ったのですが、魔法少女の資格有りと判断されてそのまま注射のようなものも刺されていましたね」

「すげー!前よりかっこよくなった!」

「君がデザインしたんだから当然じゃないか」

「お姉さんすごーい!」

「お姉さん、むこうで一緒に遊ぼう!」

「いいよ。広げた道具を片付けてからね」

キアラはおもちゃを治してすっかり子どもたちに懐かれてしまったようだ。

「あらあら」

「あの子、魔法少女の資格があったんですね」

「私も驚きました。普通に育てたはずのあの子が、まさか魔法少女になれる可能性があったなんて。
でも、予防注射を受けると魔法少女にはなれなくなると伺いました」

「奥さんとしてはどう感じました?」

あのアメリカ大統領の演説時の画像にあった化け物にならなくて良かったと考えると、検査に行ってよかったと思っています」

「そうですか」

イザベラは遊んでいる子どもたちの方へと向かい、女の子へ話しかけた。

「お嬢ちゃん、最近検査を受けたみたいだね。首元のやつ、痛くなかった?」

「最初は怖かったけど、少しチクってした後は何もなかったよ。それに泣かなかった!」

「そうか、強いね。お嬢ちゃん」

「ぼ、ぼくだって強いんだから!」

「模型壊した時に泣いてたじゃない」

「う、うるさい!」

「こら、喧嘩しちゃダメだぞ」

子どもたちの世話はキアラに任せてイザベラは母親と再び会話を始めた。

「検査を受けにきていた人は多かったですか?」

「多かったですよ。なにせ必ず受診してくださいって言われていますからね。
ご近所の方たちも検査に行っていましたね」

「多くの人が、国連からの発表の影響を受けているんですね」

「世の中もっと物騒になった気がします。こうして安全に外で遊べているのは、国連の兵士さんたちが脅威を排除してくれたからなんです」

「おや、発表があっても何気ない日常を送っていたのかとつい思ってしまいましたが」

「いえいえ、危ないので外になんて出る人はいませんでしたよ。でも国連の兵士さんたちが外を見回って脅威を排除してくれたんです。
こうしてたくさんの人が外にいるのは、そういった経緯があったからなんです」

「そうでしたか」

アメリカ同様、あの演説が行われた後はどの国も外出禁止になっていたようだ。

そして、国連の兵士というのはおそらく。

「あなたたちは海外から?」

「はい、父親の仕事にくっついてきてちょっとした旅行気分でいました。
アメリカから来たんですが、実は今日帰国するんです」

「そうでしたか。飛行機の時間、大丈夫ですか?」

時計を見たら1時間半ほど前だった。

「1時間半前か…」

「なんだって?!
ごめん君たち。お姉さんは飛行機に乗って帰らないといけないんだ。ここら辺で失礼するよ」

キアラは急いで私の腕を掴み、奥さんたちへ一言挨拶した後車へと急いだ。

「なんで早く伝えなかったんだ!」

「子どもたちと楽しそうにしていたからさ、45分前までいいかなって」

「入場受付に時間かかるの忘れてない?!これだからファーストクラスに慣れたお嬢様は!」

「そこまで言わなくてもいいでしょ」

私たちは急いで車に乗り、そのまま空港へ向かって無事に飛行機へ乗ることができた。

私は車の中で、キアラにこう伝えた。

「あんた、将来いい母親になるよ」

「おちょくってるのかイザベラは」

アメリカ以外の街並みに触れて分かったが、どの国も最初は慎重に動くようになっていつもの日常なんてなかった。

そんな中、表では脅威排除と呼んでいる「魔女狩り」が行われたおかげで今回のような、なんの変哲もない日常が訪れたのだと思うと迅速な魔女狩り実施は成功だったのだろう。

残念なことは、野良魔法少女は大方捕らえられたものの、組織的な魔法少女のリーダー格を捉えられていないこと。

例の神浜の守りも強固だし、人類の平和が訪れるのはまだ先になりそうだ。

 

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 下の録

「軌跡を壊し、奇跡を創る そんな私たちが奇跡を創る」

 

願いを叶え、奇跡を得た少女は「魔法少女」と呼ばれる。

そんな魔法少女が生き続けた先に待ち受けるものは何なのか。

マギアレコードのパラレルディスク、ここから聞こえてくるのは人類史を守ろうと足掻く人類と魔法少女の世界を求める少女達との衝突による炸裂音であった。
人類史へ疑いを抱く魔法少女達と人類史の危機に気付いた人類が動き出した時、世界は一つの終わりを迎える。

 

この作品は「マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝」の二次創作です。

マギアレコードのパラレルワールドで展開される話であるため、実際のストーリーとは大きな違いが生じます。
人間の否定、キャラの扱い等で過激な表現が出る箇所がたくさん出てきます。耐性のない方は閲覧にご注意ください。

 

 

このページは魔叙事詩カグラ・マギカ 下の録 のトップページです。

上の録はこちらをどうぞ。

1章

1-1 もうおしましだ、何もかも

 

 

【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 4-  エピローグ

死んでしまったら真っ暗な中を彷徨うだけだと思っていた。

何も見えない、触れない、聞こえない、見えない、感じない無のような空間を意識だけ持ちながら永遠に彷徨うだけだと思っていた。

しかし私の目の前には田舎で見るような綺麗な夜空が映っている。

それに身体中が痛い。

そして風は冷たい。

もしかして、まだ生きている?!

私は急に上半身を起き上がらせて生きていることを再確認した。

両手のグローブにはまった宝石は輝いていて、胸元のソウルジェムも健在。

おかしい

あれほどの穢れの塊を受けて生きていられるはずがない。

「お目覚めですか」

聞き慣れない声の方向を向くと、白い服を身にまとった紫髪の女が立っていた。

しかし因果の線を見てすぐに理解した。

「あんた、私と同じく、別世界の人間なのか」

「どうやら因果を目視できるというのは本当のようですね。
潜在的に持っていたとは聞いていないので、契約で手に入れましたか」

何かを知っているようだが、まず聞かないといけないことがあった。

「なぜ私は生きている?あんたは知っているのか?」

「大変だったんですよ、肉体がボロボロになる前に救出するのは。

でも穢れを受けたのは事実で、腐りかけだった体が綺麗に自己修復されたようでよかったです」

「・・・何故助けた」

「あなたは次元改変に巻き込まれたんです」

「答えになっていないぞ」

「巻き込まれたままであればあなたは被害者だった。でも、あなたはこの世界の次元を改変させるようなことを行う加害者になってしまった」

「・・・」

「あなたを放っておけば、この世界はいずれ、次元改変に飲み込まれて世界ごと消滅してしまうでしょう」

「それと私に何が関係ある」

「次元改変を止める方法として、加害者に元に戻してもらう方法があります。

狂わせた分を帳消ししてもらうということです。

もう一つの方法は」

女は槍をどこからともなく呼び出し、抵抗する隙もないまま私の喉元へ刃を突き立てた。

「加害者を殺すことです」

「今の私を殺したところでこの後の軌跡に変わりは出ない。殺すことは無意味だ」

「誰が“この時間のあなた”を殺すと言いましたか?

はじまる前に終わらせるだけです」

どうやらこの女はとんでもない存在なのかもしれない。

過去へ行ける、下手したら未来へも干渉するようなやばい存在なのかもしれない。

「ならばその次元改変とやらに巻き込まれる前に私と、妹を助けることもできるのか」

女は目を閉じて、静かに首を横に振った。

「そうかい。私がここまでやってきたのは、妹と元いた世界と再び出会えないと知って自暴自棄になった結果だ

「では、この後はどうしますか?」

「自暴自棄で爆発した熱意も、勢いももはや残ってなどいない。
根本から刈り取ってもらっても構わないさ」

「あら、見知らぬ世界に飛ばされた後、魔女化という制約がありながら何十年も生き続けた魔法少女とは思えない言葉ですね。

師匠という方に触発されて生きてきたのでは?」

「どうして師匠とのことを知っているのかは気になるが、もうこの後の計画を進める原動力がない。

シオリも、ピリカも死んでしまった。

私が殺したんだ。

人間社会を滅ぼすなんて考えも師匠の受け売りで私自身には何もなかったんだ。
だから、もういいんだよ」

「穢れにでも負けましたか。

あなたが弱気に出るのは想定外ですが、死ぬべきかどうかはこれを見てから考えてください」

紫髪の女は古そうな絵巻を私に渡してきた。

「何だこの古い紙は」

「あら、あの世界では上質な紙なんですよ。慎重に取り扱ってくださいね」

絵巻を結んでいた紐をほどき、中身を見た瞬間、私は目を疑った。

そこに書かれていたのは、見覚えのある文字だった。

”お姉ちゃんへ

私はお姉ちゃんとはぐれた後、見覚えのない世界で目覚めたの。

その世界には怖い化け物がいて、最初は逃げて回っていたんだけど、助けてもらったお姉さんがきっかけで、私、化け物と戦うことになっただよ。

最初は怖かったけど、戦いの中でお姉ちゃんと練習していたカグラが使えるってわかって、どんどん色んな人を助けられるようになったんだよ!

最終的には悪い邪神を私の踊りでやっつけちゃった。

カグラってすごかったんだね!

今はこの世界を安定させるために、一緒に戦ったお姫様のお城に滞在しているの。

そしたら突然つづりさんと出会ってね、お姉ちゃんが生きているって教えてもらったの!

私はお姉ちゃんに会いたいって伝えたんだけど、今はできないって断られちゃった。

でも、この世界が安定したらいつかお姉ちゃんと会わせてくれるって言ってたよ!

私頑張って、お姉ちゃんに会いに行くから!

この手紙はつづりさんに無理を言って渡してもらう予定なんだ。

お姉ちゃんも別世界で頑張って生きてるって聞いてるよ。世界を変えちゃうくらいすごいことだって聞いてるよ!

私も頑張って追いつくから、お姉ちゃんも頑張ってね!

自慢のお姉ちゃんへ

カガリより“

目頭が熱い。

50年近く前に諦めていた、妹のカガリとの繋がりが今手元にある。

間違いない。この字は間違いなくカガリの癖字だ。

私は久しぶりに涙を流しながらしばらくすすり泣いた。大声で泣くことなんてしない。

私はそうやって育てられたんだから。

私は心が落ち着いた頃、目に溜まった涙を拭いて前を向いた。

「あんたは一体何者なんだ?」

「私のことはつづりと呼んでください。多次元を渡り、次元改変を未然に防ぐ者です」

「カガリは、生きているんだな?」

「はい。彼女もあなたほどではないですが世界を変えるほどのことをやらかしていますからね。いまは帳消しの為に世界の監視役をお願いしています」

「監視?」

「自分で作り替えてしまった世界を、責任を持って見守る。

何者かに導かれるはずだった世界を変えてしまった分、代わりに導いてもらっているんです」

「なるほど、カガリと同じことを私にもやれと言いたいんだな」

「察しが早いですね。やってくれますか」

「こんな希望を手渡してくれたんだ。死ぬにも死にきれなくなった」

変に頭に取り憑いていた弱気にさせる何かはとうに消え失せていた

今の私には、生きる以外の選択肢がない。

「それは良かった。それでは、まずはこちらをお渡しします」

そう言ってつづりが手渡してきたものを見て驚いた。

「これは、ピリカのソウルジェム?!」

「体は手遅れでしたが、ソウルジェムは無事だったのでお返しします」

ソウルジェムを受け取ると、聞き慣れた声が頭に聞こえてきた。

[ふふっ、カレンが泣く姿なんて、あの人と別れる時以来かしら]

[見ていたのか。

・・・守ってやれなくて、すまなかった]

[ううん、あれは私のミスだもの。
もう自分で動くことはできないけど、魔力で守ってあげられるよ]

「まったく」

思わず口に出してしまった。

「実はシオリさんもソウルジェムだけは助けているのですが、こちらの都合であなたの活動に進展があったらそのご褒美としてお渡しに行きます」

「シオリも助かっているのか。ほんと、私らの覚悟が馬鹿みたいじゃないか」

「自殺めいた覚悟で誇ろうとしないでください」

「やれやれ、あの状況下で生きているとはね。日継カレン」

声の方向を向くとそこにはキュゥべぇの姿があった。

「何だ?ワルプルガと契約してとっくに姿を消していたと思ったが」

「残念ながら今はワルプルガと契約できるような状況ではない」

「環ういの“異変”のせいでだろ?」

「そこまで理解しているなら、何でこんな回りくどい方法をとったんだい?

君たちにとってはすぐにでも魔女化しない世界を手に入れたいはずじゃないか」

「さぁてね。あんたには理解できないことさ」

キュゥべぇの方を見ながら話した後に顔を上げると、知らぬ間に彼女の姿はなかった。

眼下に広がる街を見ているが、人気は全くなかった。

私達という神浜に集まった多くの魔法少女にとっての共通の敵がいなくなった後、魔法少女だけで生きていく目標は見出せるのか。

今回の騒動は、私たちが残した魔法少女にとっての最後の課題を提起した。

本当はこの世界の存在だけで好きにやってくれという感覚だったが、彼女の話を聞く限り放置するのはまずいらしい。

カガリと再開する為だ。

魔法少女の本当の敵を消して、この世界を安定させる手助けをしようじゃないか。

この世界に起きている異変はすでに顔を出している。

しばらくはその異変を消していく活動になりそうだ。

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 4-10 魔法少女狩り前夜

「さて、これは誰の物語なのだろうね」

「急にどうしたんですかキュゥべぇさん」

北陽区にある高い丘の上から神浜の外を見つめていると、となりへいきなりキュゥべえさんが現れました。

これまでに起きた出来事は明らかに日継カレン達を中心に動いていた。これから起こる出来事は彼女達がいない中、誰が主役となるのだろうね」

「仮に誰かの物語だとして、キュゥべえさんは最後まで見守っていてくれるんですか」

「それは無理だ。ぼくはワルプルガが契約さえしてくれればこの星から離れてしまうからね」

「まあ、予想していた答え通りでした」

「しかし思わぬ延長戦だよ。まさか環ういがワルプルガを誰にも渡さないなんて言い出すなんて。
ぼくがワルプルガへ話しかけたとき、攻撃してきたことはこれまでの環ういの行動パターンからは想像できないことだったよ」

希望の光線と穢れの塊がぶつかったあの後、日継カレンさん、紗良シオリさんが行方不明となりました。

保和ピリカさん含めて死体が残っておらず、死んでしまったという確証がない状態です。

穢れの塊が里見メディカルセンターを葬った瞬間に、神浜の魔法少女達は里見メディカルセンターにいた人たちの叫び声が頭に響いて正気を取り戻しました。
日継カレン達を倒したという喜びとヒトを無意識に殺してしまったという後悔が心の中に広がりました。

中には何とも思わない方もいたようですが、日継カレンさん達を殺したいという私念は自動浄化システムを広げるタイミングを延期させるきっかけとなったのです。

自動浄化システムを広げられない原因は、ういちゃんが凶変し、鋭い目つきでワルプルガさんを渡さないと言いはじめたからです。

ワルプルガさん自身もなぜかういちゃんを母親だと思い込んでいるようで、第三者の意見を受け入れてくれません。

力づくでういちゃんからワルプルガさんを奪おうとする魔法少女も現れはじめたため、現在神浜ではういちゃんを守る派とワルプルガを奪う派で勢力が分かれている状況です。

一難去ってまた一難

魔法少女同士の争いが落ち着かない状態が続きますが、現状は魔法少女同士で争っている場合ではないのです。

「ーーーーーーー」

「そう、ありがとう」

いろはさんの行動を偵察していた使い魔から探していた魔法少女を見つけたという知らせが入りました。

もうじき神浜での不毛な争いは終わるでしょう。

しかし、まだ戦わなければいけない相手がいるのです。

「かこちゃん、果てなしのミラーズからまた数人の侵入者が確認されたよ。また土地の主導権を奪おうとする連中で、みんな苦戦しているよ」

「わかりました。私も向かいます」

私に状況を教えてくれたのは欄さんでした。海外から逃げこんできた魔法少女グループが、再び神浜の主導権を主張しているようです。

「キュゥべぇさん、この世界の物語はヒトの数だけ存在すると考えています。

そんなこの世界に、今は魔法少女の数だけ物語が紡がれていっています。

この世界が誰の物語かと問われれば、魔法少女みんなの物語と答えましょう」

私はキュゥべぇさんの答えを聞かず、欄さんと共に丘を降りていきました。

「…日継カレン、これは君が望んだ結果なのかい?」

 

 

神浜から海を越えて大きな大陸にある暗い部屋。

ガラス張りにされている壁へ手をつけている少女へ女兵士が話しかけます。

「レディ、日の本で起きた出来事の証拠映像を押さえました。

あと、ご依頼にありました魔法少女を調査している男の確保ですが、失敗に終わりました。

しかし」

「しかし何?殺されたというの?あなた達には魔女を倒せるほどの兵装をさせたはずよ?
そんな失態をして魔法少女と戦っていけると思っているの?」

「も、申し訳ありません!」

「イザベラ、話は最後まで聞かないと」

「…悪かったわ。続けなさい」

「はい…。男と共に魔法少女について調べていた少女を確保しました」

「魔法少女ではないのよね」

「はい、確認済です」

「十分な戦果よ。焦ってしまって申し訳なかったわ。今後の活躍を期待するわ」

「ありがとうございます!」

女兵士が部屋を出た後、刀を持った少女がイザベラと呼ばれる少女へ話しかけました。

「他人に当たるのは良くないよイザベラ。
ヨーロッパの兵器格納庫を襲撃されてすべて使い物にならなくなったことでイラついているのはよくわかるけどね」

「わかってるわよ、悪かったわね」

イザベラは机の上に置かれたタッチパネルを操作し、女兵士が集めてきた情報を閲覧します。

その情報を一緒に見ていた刀を持った女性が話し出しました。

「なるほどね。魔法少女が魔女とならない現象、魔女とならずに寿命を持たない彼女達が牙を剥く時期は間違いなく来る確証となるでしょうね」

「これくらい予想していたじゃないのキアラ。何のために調査と実験を繰り返してきたと思っているの」

「大国を背負う人間がやるようなことではないけどね」

「これも人間存続のための大切な贄よ」

イザベラは再びガラス張りの部屋を見つめました。

「人の道を外れた化け物どもめ、あなた達の思い通りにはさせないわ。
この星の支配者は、人間様なのだから」

ガラス張りの壁のその先には、銃弾やら刃物によって肉塊にされた、宝石が割れた後の魔法少女だったものが広い部屋にたくさん広がっていたのでした。

 

4章 シネントァ リシェ イデハ アラガエヌァイ ヨクボウ テキホンンォウ

 

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To be continue

【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 4-9 その一矢に私念を込めて

このはさんに助けられて地へ足をつけた頃、目の前には葉月さんとあやめちゃんがいました。

その2人の体には、返り血が目立つように付着していました。

「その姿は」

「ヒトがいたから斬っただけだよ。かこちゃんはかなり変わったね」

「変わってない魔法少女なんて、神浜にはもういないですよ」

「かこ、あの塔の上で何があったのか説明してくれない?」

「わかりました。でも、行きたい場所があるのでそこへ向かいながら話しましょう」

私はあやめちゃん達にワルプルガが復活したこと、紗良シオリさん達の過去と彼女達が人間嫌いとなった理由について話しました。

「争いが絶えないのは過去から積もった私念が原因。ヒトは過去を尊ぶため私念からは逃れられない。だから人間社会を滅ぼす、か」

「はっきりと口では言いませんでしたが、彼女達の過去に出てきた師匠が今の彼女達を大きく突き動かしているようです」

自動浄化システムを広げた後は人間社会崩壊のための活動が待っているのね。
話を聞く限り、彼女達の仲間になる気はないけど、対立する理由もないわね」

「かこはどうするの?」

「私は彼女達を償わせるだけです。いやでも生き続けてもらい、こんな世界にしたことを償ってもらいます」

「それは、ななかを殺されたからこその覚悟?」

「私はななかさん達が死んでしまう原因を作ってしまった。

カレンさん達を償わせることが、私の償いでもあるんです」

「そう…」

私たちが向かった場所は、ももこさん達が塔の上から落下した場所でした。

3人は魔法少女であることが幸いしたのか体の形は保たれていましたが、体内の血が全て飛び出てしまったくらいの量の血が周囲に飛び散っていました。

「酷い有り様ね」

「3人ともにソウルジェムは無事のようですが、助けても心身ともに長くは保たなさそうです」

「魔力反応が極端に薄い。それに、体とのリンクも不安定になっている感じがする。

ももこさん、あんたをそうさせるほどのものはなんだったんだ」

葉月さんがももこさんへそう囁くと、ももこさんの指がピクッと動きました。

私は驚きました。もう目を開かないと思っていたので。

私が少しだけ回復魔法を使用すると、ももこさんは半目だけ開けた状態で葉月さんを見ました。

「よう、こんなザマのあたしに何の様だ」

「…さっき話したこと、聞いてたかい?」

ももこさんは苦しそうに一呼吸置いて話し始めました。

私は少しでも長く会話できるよう、ささやかな回復をももこさんへ行いました。

「あたしが黒いオーラを纏って暴れてる時にさ、初恋のアイツをぶっ殺しちまったんだよ。あの時はヒトとしての考えが残っていたのか、深く後悔したよ。

あれが最初に、あいつらをぶっ倒そうと思ったキッカケだった。

でもその次に調整屋の調子を狂わせにきたと聞いて、あたしはヒトよりもあいつらを殺さないといけないって思ったのさ

その後何度挑んでも勝てない。

でももう引けなかったんだよ。時々見に行った調整屋の様子を見るたびに殺意を抑えられなくなっていた。

もうあいつらを殺す以外、元に戻る方法が思いつかなくなっていた。

それで、今に至るのさ」

中央塔の近くで大きな爆発音が聞こえてきました。

歩いている途中でも聞こえていたので、中央塔付近でカレンさん達が戦い続けているのでしょう。

「ねえ、まだ殺すために戦いたいの?」

あやめちゃんがももこさんへそう尋ねました。

「疲れたよ。お願いだから、放っておいてくれ」

私は回復の手を止め、立ち上がりました。

「では、失礼します」

私がその場を去ると、何も言わずにこのはさんたちも私の後をついて来ました。

「かこ、これからどうするの?」

「カレンさん達の様子を見守ります。

殺されることはないと思いますが、殺されそうになった時は加勢します」

「仇を守るって、変わっているね」

「死ぬよりも生きるほうが辛いからこそですよ」

・・・!

いきなり頭が割れるように痛くなり、負の感情が増大していきました。

そしてソウルジェムが急激に濁ってドッペルが発動しそうになりました。

私はドッペルが発動する前に身に纏って意識を保ちましたが、あやめちゃん達はドッペルを出してその場で頭を抱えたままでした

ドッペルは中央塔を向いたまま動かず、ドッペルから伸びる穢れの煙が周囲からどんどん中央区へ集まっていました。

一体何が起こったの?

何かの力で穢れを増大させられながら中央塔付近へ来ると、穢れの集結先はいろはさん、まどかさん、そして黒い羽を広げたほむらさんへ集まっていました。

頭が痛む中、私はカレンさんへ話しかけました。

「これはどういうことですか!」

「おっと、シオリのドッペルが放つ洗脳波形を受けても正気でいられるとは思わなかったよ」

「洗脳波形?これ以上何をしようと」

「人間性からの卒業をさせるのさ。

夏目かこ、あんたは既に卒業しているから見逃してあげるよ」

カチャリと音が左から聞こえたので振り向くと、いろはさんとまどかさんが合体させた大きな弓をこちらに向けていました。

「いろはさん、まどかさん!武器をおろしてください!」

「聞かないさ。彼女達には暁美ほむらの外界からもたらされた力を通して私念に支配されている」

「洗脳で私念を呼び起こしているとでもいうのですか」

「みんなまだまだ魔法少女とヒトの中間にいるような状態だ。私念があれば怒り、悲しみ、憎しみの感情が嫌でも溢れ出てくる。

ちょっと脳みそいじって煽っただけでこれだけシオリ達に殺意が向くくらいだ。

私念を根こそぎ潰さないとねぇ!」

シオリさんの周りに砂鉄が漂い始め、大量の砂鉄が上空に飛び上がったかと思うと一本の棒状になって塔へ一閃を放ちます。

塔の一番上部分が落ちて来て、シオリさんの頭の上すぐのところで浮遊し始めました。

円錐形の部品はゆっくりと回転を始め、回転が加速するほど電気を帯びていきました。

その反対側にいるまどかさん達は弓矢へ負の感情を集めるようにチャージをはじめていました。

カレンさんは電波塔の方を振り向き、塔の後ろ側へ走って移動しました。

移動した先には穢れが溢れ出て動けない魔法少女が数人いました。

そんな魔法少女達へカレンさんは糸を放ち、絡め取るとまどかさん達の斜線上から離すように放り投げていきました。

射線上に他の魔法少女がいないことを確認すると、カレンさんがテレパシーで私に語りかけて来ました。

この時、私は既に頭痛から解放されていたことを知りました。

[ここから離れろ。お前も巻き込まれるぞ]

[死のうとしているあなた達を放っておくわけないじゃないですか!
お二人こそそこから離れてください]

[ここまでの段取りでわかるだろう?人間性からの卒業、私念の排除には憎き私たちを殺した悦びと共に後悔の意識を知らしめる必要がある。

喜びと同時に後悔の思いが襲った時、はじめて私念を捨てる選択肢が生まれる]

[そんな不確定な方法のために、死ぬ必要は]

[私たちが死ななければ彼女達はこれから戦うべき存在に集中できない。これは必要なことだ]

[でも、それでも!]

シオリさんが操る電柱は電気エネルギーが高速で回転し、魔力ではないレーザーを形成しようとしていました。

対面のまどかさん達にはほむらさんが加わり、禍々しい弓矢には紫色の翼が大きく広がりました。

「実験は成功だ。疑似的に一つの思念体となったこの事例は貴重!

私念の塊となったあんたたちにはわかるだろう?!」

双方のエネルギー量は凄まじく、周囲には音を消し去りそうな暴風が発生していました。

立ち続けることは可能な程度ですが、油断すると倒れてしまいそうです。

「憎いだろう、殺したいだろう!

さああんた達、私念を吐き捨てて見せな!

だが、その先には後悔があることを知るが良いさ!

その矢を射るのは洗脳されたからじゃない。統合私念によって露わになった、ヒトが誕生から抗えない本能の叫びだ!」

洗脳が解かれているはずなのに穢れが晴れる様子はありません。

そんな中でシオリさんは死ぬかもしれないのに、笑っていました。

[夏目かこ、離れろ!]

[離れません!]

私はカレンさんを連れ去るために手を伸ばしますが、手が届く前に糸で絡め取られてしまいました。

[私たちの分も、魔法少女達を見守ってくれよ]

その言葉を聞いた頃、私は遠くまで飛ばされていました。

「ダメェェエエエエエエエ!!」

カレンさん達がいた左右には糸の壁が張られ、まどかさん達の矢とシオリさんのレーザー砲が同時に放たれました

 

 

 

「うい、起きて、うい!」

私は聞いたことがある声に反応して目を開けました。

目の前には灯花ちゃんとねむちゃんが見下ろしていました。

「よかった、目を覚ました!」

体を起こそうとすると何かが乗っかっている感じがしてお腹の部分を見ると白いローブを着た女の子が寝ていました。

「聖女ワルプルガを奪おうという行いには驚いたよ。自動浄化システムを広げる鍵を手に入れたことは功績だけど、ういらしくない無茶だったね」

あの混乱した中で、私は何故かワルプルガさんを手に入れないといけないと考えていたのです

何故かは、私にも分かりません。

「うん、わたしもあんな無茶ができちゃったことに驚いてる」

「まあ、ういが無事でよかったよ。何か撃ち込まれた時が一番びっくりしたんだから」

「うん、心配させちゃってごめんね」

話していると電波塔あたりから沢山の穢れが感じられました。

「なに、あれ」

しばらくしないうちに私達には頭に激痛が走り、穢れが溢れて来ました。

「だめ、意識が保てない」

私は再び気を失ってしまいました。

どれほど時間が経ったか分からない頃、誰かに服を引っ張られる感触がしたことで意識を取り戻しました。

目を開けると正座をしたワルプルガさんが目を開けてこちらを見ていました。

「ワルプルガ、さん?」

「お母さん、起きたの?」

え、もしかして私に言っているの?

試しに私に指を差しって問いかけてみました。

「私が?」

ワルプルガさんはペコリとうなづきました。

どうしよう、とても大変な誤解をされている。

灯花ちゃんとねむちゃんに意見を求めようと周りを見ると2人はドッペルを出し、穢れが溢れたまま動いていませんでした。

「2人とも、どうしちゃったの」

ゴォオン!!

いきなり中央塔あたりから轟音と共に太陽くらいに明るい光が溢れて来ました。

塔から放たれた眩しい光は穢れが固められたような塊を押し返そうとしていましたが、穢れの塊から翼が生えて不気味な笑い声が響きました。

穢れの塊は眩しい光線をどんどん飲み込んでいき、ついに中央塔を貫きました。

穢れの塊は矢の形を保ったまま直進していき、ある場所に直撃すると大きな爆発を引き起こしました。

そのある場所というのは、私達には馴染み深い里見メディカルセンターでした。

神浜の人たちが魔法少女に殺されている中、里見メディカルセンターは唯一残された避難所として多くの人が避難していました。

そこへ穢れの塊が直撃したのです。

私には漂っていた穢れにのって里見メディカルセンターにいた人たちの悲鳴が聞こえて来ました。

みんなを守っていた兵士さんからお医者さん、子どもからおじいちゃんおばあちゃんまで、多くの人たちが穢れに飲まれて骨まで溶かされていく様子が頭の中に投影されました。

私はその光景を見ていると胸の辺りで何かが弾けた感覚を覚えた後、出したこともない大きな叫び声をあげて再び意識が途切れたのです

 

 

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 4-8 良い人って、なんだろう

私は日継カレンさん達に捕まってから生まれ変わったように、別人のように考え方が変わってしまった。

ヒトは守るほどの存在じゃない

むしろ殺してしまった方が良い

そんな考えに至らせたものは、眠っている間にあったかもしれない未来を見せられ続けたから。

 

お父さんとお母さん

 

海外出張に出ている2人は、出張先で楽しいことばかりではなく悩んだり、苦しいことを経験する。

その原因はいつだってヒト。

お父さんやお母さん自身も「仕事のため」と言って他のヒトを悲しませている。2人にそんな気がなくても、結果は悲しませている。

それは人間社会で“しょうがないこと”として容認されてる。

ヒトを傷つけてはいけないと、小学校の道徳の時間にそう教わった覚えがある。

この矛盾はなんなのだろう?

お父さんもお母さんも、他人の「その気がない」行為で心が傷ついている。

人間社会って、他人を傷つけないと維持できないものだったのかな?

わたしは、お父さんとお母さんがその気がない非道を行った先にいるヒトたちの末路を目にして、涙した。

 

学校の友達

 

転校前もその後も、表面上の友達はいた。

でも、いつも一緒にいたいと思える友達なんていなかった。

わたしの知らない話で盛り上がっていて、ついていけないっていうのもあったけど、わたし自身、仲良くなろうって思う気がなかったのかもしれない。

魔法少女の子達とは積極的に接しようと思えるのに、この差はなんなのだろう。

いじめや先生との意見の食い違い、そんな場面はたくさん見てきたけれども、そのどれもが魔女の仕業ではなく、そのヒト達自身が原因で生まれた負の感情だった。

悪意は魔女がいるから芽生えるものではない、ヒトが生み出していたんだ。

どうしてヒトは、負の感情を生み出して、他人へぶつけてしまうのだろう。

負の感情を他人へぶつけて楽しむ学校の子達を見続けて、わたしは胸が苦しくなった。

 

ういについて

 

ういは自分が死んでしまうかもしれない状況でも、諦めずに笑顔で生きてきた。

生きる未来を手に入れたういは中学校に上がると、いじめられている子を目にして止めに入るんだけど、逆に標的にされていじめられる未来を見た。

どうしていじめをするの?

大抵の理由はなく、行き場のない負の感情をぶつけて、優越感に浸るのが目的だった。

そんないじめっ子も説得させようとするうい。

見かねた先生がいじめっ子へ注意していじめがなくなったとしても、ういといじめっ子の溝が埋まることはなかった。

どうしたらみんなと仲良くできるのか、そんなことを考えてしまうういが陰で泣いている未来を見て、わたしも泣きそうになった。

そしてういが大人の世界に入った時、他人を傷つけなければ生きていけない世の中を目にして毎日悩むういの姿があった。

わたしが間違いなの?みんなが幸せにならないのが普通なの?

大人にういは「考えが甘い」と言われ続けた。

次第にういの目から光は消えていった。

ういはそんな未来に生きて幸せ?

私はういが大人に近づくに連れて傷つけられていく未来を見て、ヒトが嫌いになった。

「いいヒトだっているかもしれないよ?」

そんな言葉が頭に過った。

いいヒトって、誰だろう?

人間社会でのいいヒトは思いつくけど、みんなを幸せにできるいいヒトなんて思いつかなかった。

じゃあ、もういいよね?

ういを傷つけるヒトという存在は、いなくてもいいよね?

 

 

ういを追いかけようと思ったけど、タイミングを失ってそのまま降りちゃった。

灯花ちゃんとねむちゃんが向かったし、無事だと思うけど。

「いろは!」

後ろを振り向くとやちよさん達がいましたが、すぐに近くには寄って来ませんでした。

「私たちのことがわかる?いろは」

「はい、わかります。ご心配おかけしました」

「よかったよぉいろはちゃん!ちゃんと正気に戻ったんだね!」

そう言って鶴乃ちゃんが私に抱きついてきました。

「正気かは謎だけど、もう無闇に暴れたりしないよ」

「それで、あいつらはどうしたんだよ」

「カレンさんは」

「やっと降りてきたわね日継カレン!」

怒鳴り声に驚いて後ろの方を向くと電波塔を背にして立っているカレンさんとシオリさんの姿がありました。

あとは見覚えのない魔法少女の姿が。怒鳴ったのは大きな棍棒を持った魔法少女でした。

「どうした、二木市と三重崎の魔法少女。まだやるべきことは終わっていないぞ」

ワルプルガという少女を神浜の魔法少女が奪って行ったというのは既に知っているのよ。

あとは自動浄化システムが世界に広がるよう願わせればあなた達の役目も終わりでしょう?

ならば、ここで処しても変わらないわよね!」

棍棒を振り下ろしながら口調を強めに魔法少女は話した。

カレンさんは服についた埃を払いながら気だるそうに答えた。

「フライング気味だよ、紅晴結菜。

種は確かに飛んだ。でも花を開くまでの水と肥料が私たちなしでは間違いなく粗悪品で終わり、結果は悲惨となるだろう。

ここで私たちになり変われるほどの思考があるっていうなら、かかってきても構わないさ」

「うるせぇ!さっさとくたばれ!」

そう言って銃を持った魔法少女3人がカレンさん目掛けて発砲しました。

「長女さんさ、樹里さまも我慢できねぇんだわ。

ヤッていいか?」

「…許可するわ」

「待ってました!」

そう言ってカレンさんには火炎放射も降りかかりました。

悲惨な状況の中、炎と銃弾の雨の中から鉄塊がいくつか飛び出してきて、銃を持っている魔法少女と火炎放射器を持っている魔法少女の右腕に直撃しました。

カレンさん達に降り掛かる攻撃は止み、無傷のカレンさん達がその場にいました。

「私念たっぷりだねぇ。そんなんじゃ、極上なタネも腐っちゃうよ」

「この前のようにはいかないぞ!」

そう言って二木市の魔法少女と思われる集団がシオリさんへ襲いかかりました。

「したっけ倒せるかい!」

シオリさんは周囲に電気を走らせ、地面に足をつけた魔法少女は痺れていました。しかし足を止めることはなく、そのまま刃物を手にして前へ進みました。

「ふっ、感覚が鈍くなったからむしろ戦いやすいまであるね」

シオリさんは背中の帯を操り、襲いかかる魔法少女に応戦していました。

帯はしなやかに動きながらも先端は鋭利な刃物のようであり、ソウルジェムがある場所以外は容赦なく叩き、突き刺していきました。

カレンさんの方を向くと既に戦っているようであり、その相手は五十鈴れんさんでした。

「悪意の根源を絶てる。それは五十鈴れんにとって望ましいことではないのか?」

「あなた達は梨花ちゃんを悲しませた。だから私は、戦います…!

れんさんがカレンさんから離れると、後ろからビーム光線と薬品が飛んできてカレンさんは爆発に包まれました。

カレンさんの周囲は繭のように包まれていて花が開くように繭が消えていきました。

「察しが良いあなたならば理解できるはずだ。これは無意味な争いであると」

「そうだな。でも確認しなければいけないことがある」

ひなのさんの周りには梨花さん、れんさん、エミリーさんだけではなく令さんもいました。

「どうしてお前達はヒトの殲滅にこだわるんだ。中には良いヒトもいるかもしれないじゃないか。

そんな奴らも殺してしまうのか?」

シオリさんの方から飛んできた銃弾を扇で弾いたカレンさんが話し始めます。

「良いヒトとは、誰にとっての良いヒトなんだ?

ヒトか?お前にとってか?それとも魔法少女にとってか?

あるヒトにとっては良いヒトかもしれないが、第三者にとっては害を成す存在となっている場合がある。

その基準は誰の基準なのだろうな」

「お前にとって良いヒトはいなかったのか」

「1人だけいた。私たちにとっては師匠のような存在で、師匠は私にとって最初で最後の良いヒトであった。

そして師匠は一般人からは悪人として扱われていた。

まだ納得できないことはあるか?」

「そうか。価値観の違いは誰しも起こりうるものだろう。

だが価値観の違いは魔法少女同士でも存在する。それでもヒトよりも良い世界を作れると本気で思っているのか」

「できるさ。少なくともヒトよりまともなね」

ひなのさんとカレンさんの会話を聞いていると後ろからフェリシアちゃんにつつかれました。

「なあいろは、オレ達参加しなくて良いのかよ。あいつらに酷いことされたんだろ?

ぶっ飛ばさねーのかよ」

「確かに酷いことはたくさんされた。でも戦う理由が見つからなくなっちゃったの」

「なんだよそれ」

「そういえば、ういちゃんはどうしたんですか?」

「ういはワルプルガさんを捕まえて、今は灯花ちゃん、ねむちゃんと一緒にいるよ」

「ワルプルガ、その子が彼女たちの言っていた自動浄化システムを世界に広げる鍵なのね。

それならば、今までやられたことの仕返し以外に戦う理由はないわね」

「やちよも戦わないって意見なの?」

やちよさんが周囲を見渡し始めたので私も周りを見てみると、神浜の魔法少女達がカレンさん達を囲うように集まってきていました。

「みんな、カレンさん達を恨んでいるんだ。ヒト嫌いにさせられて、大切なヒトを殺してしまった元凶だから」

「彼女達を擁護する気はないわ。神浜の子達が危ない状態になったら私は動くわ。

あなた達が戦いたいのであれば止めはしないわ」

冷静になればなるほど、私たちにはカレンさん達と戦う理由はすでになくなっていた。

神浜のヒトへ酷いことをしたから

今までの私たちであればそんな理由で戦っていたのかもしれない。

でも今の私たちは、守るべきものがヒトではなくなってしまっている。

自動浄化システムを広げる手筈をとってくれたカレンさん達を倒さないといけない理由はどこにもない。

それでもカレンさん達へ襲いかかる魔法少女がいる。

そんなみんなは、ボロボロになって倒れたり、膝をついたりしていた。

「どうした、軽く30人は同時に襲いかかってきたはずだ。

それでもシオリ達を倒せないなんて、まだまだ戦い方の鍛錬が足りないんじゃないの?」

シオリさんの言葉に応える魔法少女はいなかった。

まあそんな中途半端な覚悟じゃ今後もやっていくの難しそうだし、

卒業式を行おうか。ヒトからの卒業式をさ」

 

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 4-7 イレギュラーリジェネイト

「下でいくら騒ごうが、ここへ至る術は見出せないようだね。
ま、シオリ達の立場でもお手上げな状態だから仕方がないよね」

塔の麓の騒ぎはどんどん静かになりつつある。

しかし同時に気になっているのはピリカが魔力の使いすぎによる疲れを覚え始めているからだ。

本来であれば何度も魔女化するほどの魔力を無制限に使用しているのだから無理もない。

ワルプルガの復活は近いが、その前にやっておくことが残っている。

「夏目かこ、お前が2人の過去を覗き見たことを許したわけではない。潔いなら前へ出ろ、争うなら武器を構えろ。

さあ、アクションを起こせ!」

「どうしてもあなた達から手を出そうとはしないのですね。お二人の過去を見たことが気に食わないのであれば私念を込めて攻撃してきたら良いものの」

「目的なしに感情のまま力を振るうのはヒトのやることだ。

獣から進化してもなお本能から消えなかった負の遺産。

そんなものを持っているから行き違いや無意味な殺生が横行して、戦いが目的なんて世の中になるのさ」

「あなた達の人類史を終わらせるという考えは、私念からきているのではないですか?!」

「暁美ほむら、私たちがやろうとしているのはヒトを殺したいという私念が集まってできた結果ではない。

世界の魔法少女を見てきて、やらなければいけないと見出した目的だ。

今目の前で起きている出来事も手段に過ぎない。目的の結果はまだ目に見えてなどいない。

だが私念というのは今すぐ目の前で結果を得たいがために行われる愚かな行為ではないか。違うか?」

「私にはただの言葉遊びにしか聞こえないけど、あなた達はこのあと何をしようとしているの?」

「答えが知りたければ目的の軌跡を辿ればいい」

「あなた達が私念で動かないというのであれば、わたしはエゴで動かせてもらいます」

夏目かこは武器を取り出し、魔力を込めて石突きを地面へ力強くつけた。

すると周囲に強いリジェネ効果が発動し、塔上の瓦礫上にいる全ての魔法少女が動けるほど回復した。

「ういさん、行ってください!

あなたにはやりたいことがあるのでしょう!」

「は、はい!」

環ういは凧を呼び出してその場から飛び上がった。

「上空、まさかワルプルガをそのまま連れ去る気か!」

「無邪気ってのは怖いな!」

シオリがレールガンで環ういの行手を阻もうとすると、回復した見滝原組がシオリへ襲いかかってきた。

暁美ほむらに関しては不気味な黒い羽を広げていた。

わたしの前には環いろは、里見灯花、柊ねむが立ちはだかっていた。

「これ以上ピリカに負担をかけるわけには」

左側から数本の槍が飛んできた。

十咎ももこ達も回復の対象に入っていたか。

「こっちはわたしが止める」

「ピリカ!無茶だ!」

シオリの方からは爆風が伝わってきて、超電導で振動するシールドで見滝原の魔法少女の行手を阻んでいた

「飛べばいいってもんじゃないぞ」

シオリは一門のレールガンの弾丸を鉄塊からカースシードへと変えて鉄塊のレールガンと共に環ういへ放った。

環ういは先行して放たれた鉄塊の弾丸を2発避けたものの、3発目に放たれたカースシードを避けることはできなかった。

カースシードは環ういのソウルジェムには命中しなかったものの比較的近い場所へ当たり、肉体を貫通することなく体内へ止まった。

命中した際の衝撃で環ういは大きく背後にのけぞった。

「うい!」

環いろはがそう叫んだ後、環ういは器用に凧の上で踏み止まり、胸元を押さえながらワルプルガ目掛けて突撃した。

「負けるものかぁあああ!」

ワルプルガを囲う結界へぶつかる前に環ういは正面に4体の凧を呼び出して4体の凧は結界へ穴を開けるように合わさって回転し始めた。

結界には容易にヒビが広がっていき、環ういが結界へ接触して5秒後には結界が砕けた。

白衣のローブに包まれて髪も結われていないワルプルガは環ういが抱き抱え、そのまま意識がなくなったのか凧が粒子となって消えながら地面へ落下していった。

「みんな、ういの元へ連れて行って」

「うい!!」

柊ねむはウワサと共に、里見灯花は器用に傘をロケット状にして環ういの元へと急いだ。

ワルプルガが奪われたのは大事件だ。

しかし同時に起きた悲劇がわたしにとっては大きな衝撃だった。

 

 

十咎ももこ達の対応にあたったピリカは最初に秋野かえでを標的にした。

秋野かえでは魔法の力で蔦を召喚してピリカを縛り上げようとしてくる。

イペタムはピリカの拘束を許さず、蔦を薙ぎ払ってピリカは秋野かえでを斬り上げようとした。

そこへ水波レナが間へ入り、槍でピリカの攻撃を受け止めた。

ピリカがイペタムから手を離すとイペタムはそのまま水波レナと鍔迫り合いの状態となり、フリーハンドなピリカは秋野かえでの溝落ちを殴った後回し蹴りを喰らわせた。

反応できなかった秋野は武器を地面に落とし、地面を滑るように吹き飛ばされて動かなくなった。

イペタムは元々1人でに動き出す妖刀であり、必ず誰かが持っていなくてはいけないものではない。

しかし魔力または生命力を供給しなければイペタムは1人で行動できない。

今回のように少しだけ手放す場合はピリカと分かれて行動することができる。

そんな1人でに動く刀を目にして驚いた水波レナの隙をついてイペタムは鍔迫り合いをやめて柄の頭を水波レナに打ちつけた。

それは格闘家に殴られたほどの衝撃であり、水波レナは怯んだ。

そして再びピリカがイペタムを手を取り、力のこもった斬撃を繰り出した。

よろけた水波レナは槍で斬撃を防いだものの、衝撃に身を任せるかのように吹き飛ばされて瓦礫に打ち付けられて動かなくなってしまった。

「オラァ!」

十咎ももこが高く飛び上がって大剣をピリカへ振り下ろしたがピリカは受け止めることなく避けた。

「出鱈目が過ぎるぞ、あんた!」

本来の目的を見失って戦いが目的となったあなた達の行いが理解に苦しみます」

「全部、おまえたちのせいだろうがああ!」

そう言って十咎ももこは大剣をピリカへ投げた。。

しかしその大剣はピリカにあたることはなかった。ピリカはそのまま十咎ももこの動きを止めにかかる。

イペタムは剣先を十咎ももこに向けてそのまま前進し、それは十咎ももこの腹部へ深く突き刺さった。

これは丁度環ういへカースシードが撃ち込まれたタイミングと同じ

避けようとしなかった十咎ももこに驚き、ピリカは剣を引き抜こうとするが既に遅かった。

十咎ももこは力強くピリカを押さえ込み、さらにはドッペルを出してそのドッペルでもピリカを抑えた。

「構わずやれ、かえでぇ!!!」

ピリカは後ろを向き、背後に近づいてきていたのは十咎ももこが投げた大剣を地面に引きずりながら走ってくる秋野かえでの姿だった。

「ウワァアァアアア!!」

秋野かえでは大きく大剣を振り上げ、重力に任せるがままにピリカの背中を斬りつけた。

必死にピリカはもがいたが、いよいよ振りほどくことは叶わなかった。

十咎ももこの大剣は先端が出っ張っている鉈のような形をしていてそんな形状のためか秋野かえでの一撃はピリカの背中を大きく抉った。

脊髄にまでダメージが入ったであろう一撃を受けたにも関わらず、ピリカはその場で踏ん張り、突き刺さったイペタムをそのまま一回転させて十咎ももこの体を真っ二つにするように斬り上げた。

イペタムは十咎ももこの左肩を通って自由の身となった。

地面がピリカと十咎ももこの血で池が形成された状況の中、ピリカはゾンビのようにうなだれたままその場から動いていなかった秋野かえでの右手を斬り落とした。

十咎ももこは声を上げることなくドッペルが消えると同時に背中から血の池へ倒れ、秋野かえでは斬り落とされた腕を見ながら二、三歩後退りしてその場にペタリと座り込んだ。

そんな光景を見て、動けない状態だった水波レナは大きな叫び声をあげた。

この声を聞いて初めて環ういが落下していく様子に夢中となっていた各魔法少女達が悲劇の現場を目にした。

水波レナは7枚ほどの鏡を呼び出してそこから五月雨に槍がピリカへ降りかかった。

ピリカは背中と口から血を流しながらも糸で操られた人形のようにイペタムを振るって降りかかる槍を弾いていた。

1本もピリカへ槍が突き刺さらない中、水波レナはドッペルを出し、鏡から出た大きな足はピリカへ向かってかかと落としをした。

ピリカは踵の下敷きにはならなかったものの、踵落としの衝撃でその場の地面が崩れ、衝撃と共に地面へ落下して行った。

[2人とも、ごめんね]

そう頭にピリカの声が響いた。

「ピリカ!」

わたしがそう叫ぶといきなり空中の足場が不安定となり、電波塔上空の足場は重力に従うがままに地上へ落下して行った。

見滝原のメンバーは鹿目まどかを翼が出現している暁美ほむらが助け、美樹さやか、佐倉杏子は巴マミのリボンで集められ、小さな魔法少女のドッペルにつかまってゆっくりと地面へ落下していた。

環いろはは自分のドッペルでパラシュートを広げたようにゆっくり落下し、夏目かこはどこからともなく現れた他の魔法少女のドッペルに助けられていた。

「このはさん?!」

「来るのが遅れてごめんなさい。下で葉月とあやめが待っているから状況を説明してもらえるかしら

「…はい」

地上ではポンベツカムイが悲しげな雄叫びを挙げながら粒子となって消えて行った。

そして地上の魔法少女達は瓦礫から逃げるのに大忙しだった。

「みんな早く逃げて!」

逃げ遅れた魔法少女が数人いる中、上空に浮いていた瓦礫は全て地上へ落下した。

私とシオリは糸で落下速度を軽減させながら降りたので無事だったが、共有していたピリカの魔力がけは感じ取ることができなかった。

「ポンベツカムイも消えて。ピリカ、まさか本当に」

信じられなかった。

今までに人としては死んでいたであろう場面でも魔力反応が途絶えたなんてことはなかった。

ここで、私はピリカという仲間を失ってしまったんだ。

 

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 4-6 電波塔の麓では

環うい、里見灯花、柊ねむの3人によって黒いオーラを纏っていた神浜の魔法少女達は正気を取り戻した。

しかし、正気に戻ったところで目に光が宿っている魔法少女など、誰1人いなかった。

「いやぁあああああああ!」

「お父さん、お母さん、返事してよ!」

「この子達を、私が、この手で」

正気に戻っても、ドッペルを出しながら人を襲った記憶は残っていた。
多くの魔法少女が嘆き、悲しんでいた。
しかし多くの魔法少女の心の奥まで刻まれたヒトへの負の感情は、ヒトを殺すことへの躊躇を薄め、その変化に違和感を与えていなかった。

 

 

私の持つ槍についた赤い液体。

どうやら私も、人を殺してしまったようね。

やってしまった後悔を抱くことなく、わたしは電波塔の頂上に目を向けた。

いろはやみんなをおかしくしてしまった日継カレン達を、倒さなければいけない。

その考えが真っ先に頭に浮かんだ。

「他のみんなは」

周りを見渡すとダルそうなフェリシアを見つけた。

「やちよ、お、俺」

「フェリシア、大丈夫、ではないわよね」

「やちよ、ここにいた!」

鶴乃は二葉さんと一緒だった。

でも、二葉さんの様子は少しおかしかった。

「さなちゃん、人殺しは後で早くいろはちゃんのところへ行かないと」

「そうですね。いろはさんも人を殺したがってたし、一緒の方が楽しいですよね」

口には出していないけれど、わたしも人殺しを躊躇する気持ちはなくなっていた。
人を殺してはいけない理由が、もう思い浮かばない私は二葉さんの発言に拒否反応を起こすことはなく、むしろ歓迎しようとしている気持ちがあった。

前から黒いオーラを纏った子は人殺しを躊躇しなくなるとは聞いていたけど、本当だったのね。

「さて、みんな揃ったし、いろはを助けるために電波塔へ向かいましょ」

電波塔へ向かう道中には生きている人の姿がなかった。
ヒトであった肉塊自体も少なく、異臭といえば肉が焦げたような匂いしか漂っていなかった。
この騒動が治まった後は、この肉塊の処分方法も考えないといけないわね。

顔を上げると空は曇っていて、光は電波塔の上で輝く球体くらいしか見つけられなかった。
果たして今は昼間になっているのか、それとも夜なのか。今どの時間帯に位置するのかも知ることができなかった。
もはやこの神浜は、魔女の結界と同じ状況なのかもしれない。

中央区へと足を踏み入れると、電波塔の麓では既に誰かが戦っていた。

「もう既に誰かが戦ってる?」

「でもあの首長竜、見たことあるぞ」

「ピリカさんの呼び出してたやつね。しばらく観察してみましょう。あの生物の情報が足りなすぎるわ」

私たちは瓦礫に隠れ、首長竜に立ち向かう魔法少女達を観察した。

大きな金棒を持った魔法少女が首長竜へ武器を叩きつけようとしても液状化して避ける首長竜。

炎をいくら浴びても湯気が上がるばかりで首長竜の形が崩れることもなかった。

魔法少女会議の際に独断行動を取ると言っていた二木市の魔法少女達は、全く歯が立っていなかった。

「負傷した子はいったん下がりなさい!さくや、退避する子の援護をして」

「三女さん、あんた頭がキレるんだからなんか思いつかないのか」
「浮かんでたらとっくにやってるよ。こういうバトルなららんかの方が攻略法見出せるんじゃないの?」
「わかってたらとっくに倒せてるっての!」

「ええい!お前らどけろ!樹里様の超火力で蒸発させてやる」

二木市の魔法少女達が首長竜から離れて、樹里と呼ばれる魔法少女が首長竜を覆い隠すほどの炎を放った。

炎の中で首長竜はうごめき、大きな魔力反応を感じた頃には首長竜がいたところから大波が発生した。

その大波は二木市の魔法少女達を呑み込み、水圧に耐えられる魔法少女がいるわけもなく、みんな瓦礫に打ち付けられて倒れてしまった。

「やちよ、あの首長竜凍らせることはできないのかな」

「氷を扱える子に覚えはないわね。このあたりにも凍らせる方法はなさそうだし」

「じゃあ、あの首長竜は彼女達に任せて、私たちは塔を登っちゃうってのはどう?」

「そうやったらどうなるかも含めて静観しているのよ。あの首長竜の感知能力が普通の生き物と同じと思っちゃいけないわ

「おい、誰か来たぞ」

フェリシアの言葉を聞いて、戦場を再び見ると、首長竜がいる反対側から欄という名前の魔法少女とその仲間達は黒羽根たちが使っていた鎖を駆使して塔へ登ろうとしていた。

そんな彼女たちが塔を登ろうとすると、塔全体に電撃が走った。

そして声が聞こえた。

[視覚外から入ろうという小細工、我らの前では無意味と知れ]

その後欄とその仲間達には落雷が襲い、皆塔から離れていった。

「あら、ダメなのか」

「こうなったら上空から降りる以外方法が浮かばないわね」

「んあ?あの生き物ぶっ倒すって考えはないのかよ」

「倒し方がわかれば苦労しないわ。方法が浮かばないから倒さなくても塔の上へ行く方法を探しているんじゃない」

前方の状況にしか注目していない中、後方の瓦礫の上から大きな魔力の反応を感じた。

振り向くとそこには手鏡を巨大化させて魔力のレーザー砲を撃とうとする綾野梨花の姿があった。

「いっけぇーーーーー!!」

放たれたレーザー砲は中央塔へ命中し、そのまま溶けて崩れ落ちると思われた。

しかしレーザー砲は鉄塊でできた障壁に阻まれて塔本体へは届かなかった。

綾野梨花がいた場所へ首長竜の周りに現れた雷槍が飛んでいき、反応できなかった彼女を五十鈴れんが助ける様子まで確認できた。

中央塔は首長竜だけではなく、紗良シオリのギミックにも守られていた。

「あの生物を倒せても、いくらでも防ぎようがあるってことね」

「打つ手なしかよ!」

そう、私たちにはできることがなかった。

いろは、あなたは塔の上でどういう状態になっているの?

 

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 4-5 イライケレン

環いろはと鹿目まどかを助けたのは、私との接触を避けた魔法少女達がきっかけだった。

たった一つの街でも、縁がなければ出会えなかった魔法少女なんてたくさんいるだろう。

とはいえ、たまたま出会えなかった魔法少女がピンポイントにここまで大役揃いだという偶然があるだろうか。

予想もできないような奇跡を目の前で二つも目撃できたのは、その偶然のおかげかもしれないが。

目の前で起きた一つ目の奇跡は、3人の魔法少女によって行われた全魔法少女の縁を切っていくという壮大な光景。
夏目かこも、あの三人も縁を認識できるような能力は元々持っていなかったはず。知らないだけで、私以外に縁を視認できる存在が彼女たちへ縁を切る方法を伝えたとしか思えない。

とはいえ、魔法少女達の暴走が解かれようが悪夢を刻み込んだ時点ですでに目標は達成している。

もう一つの奇跡は、縁を切らなくとも黒いオーラが解除されて目の前に現れた見滝原の魔法少女達。

あの結界の中で何が起きたのかは知らないが、私たちの計画に狂いはない。

「驚いたよ、この一時で神浜にいる魔法少女が皆正気に戻るなんて誰が予想できたか。

さて、このまま待てば自動浄化システムが世界へと広がるのは必然だ」

「でも、黙ってる気はないんでしょう、あんたたち」

「まあ目的のことだけ考えると、あなたたちの邪魔をする必要はないよね。
でも確認しないといけないことがあるんだよー」

「いいよ、答えられることなら返事をしよう」

「大昔の人物、聖女ワルプルガを蘇らせたとして、そこにいるワルプルガってただの少女だよね。気になるのは記憶をどこまで持った状態で蘇るかだよね。そこらへんはちゃんと計算してるかにゃぁ」

「里見灯花が指摘した通り、故人を蘇らせると所持している記憶が一体いつからいつまでのものが残っているかなんて保証はされていない。
もしかしたら、空っぽの赤子同然で蘇るかもしれない」

「でも、シオリがこれまでの歴史をワルプルガへインプットするから少なくとも言葉が理解できる状態で復活するから安心しなさい」

「それは、誰目線の歴史と記憶をインプットするのですか」

「かこさん、それは勿論、”魔法少女”の目線でだよ」

「あなたたちの魔法少女目線というのは偏った思考です。ヒトは愚かであると、そんな歴史と記憶を教え込むということですよね」

「間違いではないでしょう?」

「それは違うよ!」

否定的な声をあげたのは環ういだった。

そういえば彼女へは悪夢を共有していなかったか。

「うい・・・」

「だって、おかしいよ。

みんなの生活を守るために、私達は魔女と戦っていたんだよね。人の中にはひどいことをする人もいるかもだけど、でも、全員ではないから。
私は、それはダメだと思う」

「と、妹は言っているが姉としての意見はどうかな?」

環姉妹は目を合わせ、何かが通じ合ったかのように姉の方はうなづいた。

「ういがそう考えるなら、私もカレンさんたちのやり方に抵抗します」

「そうか、妹を優先したか」

「お姉さまとういがそういうことなら、私も抵抗しちゃおうかな?
願いを叶えさせるならばワルプルガが誰の手元にいてもおかしくないでしょ?」

「私はまどかを苦しめたあなたたちを許さない。だからあなたたちには抗うわ」

各々の意思表示が行われた後、ピリカが一歩前に出てイペタムを振り下ろした。

「余計な争いはお勧めしません。
抵抗するようであれば、四肢を十分に動かせなくなることを覚悟しておいてください」

皆が攻撃態勢になっている中、夏目かこ達は武器を構えていなかった。

「夏目かこ、あなた達はどうする?」

「私たちにとっては争う理由がありません。遠くから静観させてもらいます」

「そうか、でもお前への仕置きが後で待っていると覚えておくんだな」

私は糸状の扇を取り出し、環いろは達にその先を向けた。

[シオリ、ピリカ。深追いも無理もするんじゃないよ。全てを見届けるまでは死ねないからね]

[何を今更。ワルプルガが願いを叶えた時点で袋叩きに会う覚悟くらいできてるってるの。神浜の外へでたがるやつもほとんどいないし、戦う分には問題ないよ]

[大丈夫、抑える]

[いいだろう]

そう、死ぬにはまだ早い。

せめて自動浄化システムが広がるまでは。

「さあ、お前達の希望を輝かせてみせろ!」

 

最初に仕掛けてきたのは見滝原の魔法少女達だった。

美樹さやかと佐倉杏子は真っ先に矢先をシオリへ向けていた。

シオリは周囲に浮かぶ鉄塊を雷の力を使って2人の進撃を遮ろうとするが、軽やかにかわしてスピードが落ちる気配がない。

こちらも行く手を妨害しようとしたが、こちらはこちらで環姉妹と元マギウスの2人が襲いかかってきていた。

[シオリの援護に集中して!]

そう言ってピリカは環ういへ斬りかかった。

「ならば容易い」

私は糸を放って美樹さやかと佐倉杏子の足と武器を持つ手を貫いた

「2人とも!」

巴マミは複数のマスケット銃を召喚して私たちに向けて一斉発射してきた。

糸の壁を3重に形成し、2層までは貫かれたものの、一発たりとも3層目は突き破れずに銃弾は速度を失ってその場に転がった。

その後追撃で鹿目まどかと暁美ほむらが弓で壁を攻撃し、糸の壁が目の前から消えた。

シオリが電車のレールを2本宙に浮かせて、電気を帯びたまま2本のレールは美樹さやかと佐倉杏子に向けて飛んでいった。

しかし間一髪で銀髪の魔法少女がドッペルと思われる者で駆け抜けて2人を救出したため血飛沫が広がることはなかった。

間髪入れず、巴マミは巨大なマスケット銃を生成し、こちらへ銃口を向けた。

「ティロ・フィナーレ!」

「したっけ勝てるかい!」

放たれたときの風圧は凄まじいものだった。

シオリは銃弾が放たれる直前に何か聖遺物を発動したらしく、突き刺さったレール2本には冷気が纏われ、銃弾に向けて傾斜を向けるとレールは円形に歪みながらも銃弾はレールを添うように空中へ打ち上がり、花火のように光が空中に広がった。

「ティロ・フィナーレが防がれた?!」

「超電導ってわかるかな?接触起爆式にすることをお勧めするよ」

そう言ってシオリはガードレールを二枚ごとにぶつけ合い、合計四門のお手製レールガンを作り出した。

「防げるか?防げるほどの奇跡が、あんた達にはあるか!」

そう言ってシオリは一斉にレールの間にある鉄塊を冷気を纏ったことで速度を増して放たれた。

いつ放たれたかわからないスピードで4発だけではなく、すぐに鉄塊が装填されて4門から合計5回も斉射が行われた。

しかし足場が崩れることはなく、土煙が晴れると暁美ほむらが見たこともない時空の裂け目のようなものを展開させて鉄塊を別の空間に移動させてしまったようだ。

「魔力の力が会ったときよりも強い。時間を止める魔法はどうした?」

「あなたたちには関係ない!」

そう言って一矢放ったもの、シオリは帯で軽くあしらった。

「まああの中で何があったかは知らないけど、ドキドキさせてくれるじゃないの!

環ういへ斬りかかったピリカはなにか話しかけていた。

「あなたの一言がここまで不毛な戦いを生み出した。言葉の重みを知りなさい!」

「ピリカさん、どうして」

環ういは凧のようなものを呼び出してイペタムを押しとどめていた

「自動浄化システムが広がってからでも良かったはず。なのに!」

「ダメだと思ったから、人を不幸にさせちゃいけないから」

「その人は私たちを汚れさせるというのに!」

「うい!」

環いろはがボウガンをピリカへ数発放ち、ピリカは環ういから離れた。

そんなピリカへ里見灯花は炎を放ち、柊ねむは光る紙切れを飛ばしてきた。

いずれもピリカは一振りのなぎ払いで消滅させてしまい、瞬時に環いろはの懐に飛び込んで脇腹から思いっきり斬り上げた。

環いろはの腹からは致死量の血が流れ出し、他の3人は絶望の眼差しだった。

「ここでは、終われない!」

環いろははドッペルを纏って致死量の血は包帯に包まれて血の流出は止まっていた。

「お姉さま、その姿は?!」

「穢れを纏うならば、何人たりとも私を超えることはできません。超えたいならば、輝かしい希望を携えなさい!」

イペタムは穢れに強く、さらには相手の希望を奪う。

魔女だろうと、魔法少女だろうとイペタムを持ったピリカを超えることはできないだろう。

環いろはは包帯を飛ばしてピリカを拘束しようとした。
しかし包帯は金属音と共に切られていき、ピリカは再び環いろはの懐に潜り込んだ。
包帯がピリカの後ろに広がり、抱擁するかのようにその包帯はピリカと環いろはを包もうとした。

包帯に囲まれた空間の中で環いろははナイフを取り出してピリカの心臓を一突きしようとしたものの、リーチはイペタムの方が長かった。

再び斬り付けられた環いろははその場に膝をつき、ピリカは再び環ういへ襲い掛かった。

しかし次は元マギウスの2人が環ういの前に出てピリカの斬撃を喰らった。

するとすぐに2人はドッペルを発動し、ピリカへドッペルの目が付いた腕と流星群が襲い掛かった。

柊ねむのドッペルは退けたものの、里見灯花が放った流星群は一振りで対処できる規模ではなかった。

そこへシオリは鉄板を壁とし、私がそれを糸でつなぎ合わせて大きな盾がピリカの前へ形成された

流星群はピリカへも、復活を待つワルプルガへも届かなかった。

ドッペルを放った2人は疲労が襲ってきたのかその場に倒れこんでしまった。

その時、私たちに襲いかかってきていた魔法少女皆が体が重たくなったかのように動きが鈍くなっていた。

それもそのはず。

 

シオリの一撃が不発に終わった後、私は糸で扇を形作り、鹿目まどかと暁美ほむらへ襲い掛かっていた。

「その力、別世界とのつながりが見える。一体どんなカラクリを使った」

「あなたに答える必要はない!」

至近距離で撃たれる矢を避けながら私はステップを刻んだ。美樹さやか達3人からも追撃を受けたものの、避けるのは容易い。

仕上げのステップを踏むと同時に、わたしはピリカの方へ応戦した。

舞が完結すると周囲の魔法少女には疲労感が訪れ、私たちには高揚感がもたらされた。

ピリカはたった1人立っていた環ういへ斬撃を飛ばし、それを受けた環ういは倒れ込んでしまった。

私は膝をつく見滝原の魔法少女達へ糸を飛ばし、四肢を突き刺して使えないようにした。

「気は済んだか?まだ足りないなら、ワルプルガが目覚めるまで付き合ってやるぞ」

「強さが、違いすぎる・・・」

「調整も受けていないのに、どうしてこうもあしらわれるの。わからない」

戦おうとする魔法少女は現れなかった。

「それじゃあ、大人しくそこで倒れててもらおうk」

急に遠方の方から一発の銃弾が飛んできた。

糸の剣で弾けたものの、崩れていないビルからスナイピングできる魔法少女は1人くらいしか心当たりがない。

「三重崎のやつか」

銃弾が飛んできた方向には確かに崩れていないビルがあり、そこには確かにスコープの光が見えた。

「コロス、殺す殺すこrosう!

日継カレン、お前だけは!」

遠くからでも分かる殺意を感じていると、塔の麓が騒がしくなってきた。

「カレン、下の魔法少女達が動き出したみたい」

「次から次へと、もう少しだけおとなしくしてくれないかね。ピリカは大丈夫か」

「大丈夫、カムイだけで抑えられる」

「そうか。でも、思ったより復帰が早いな」

街を襲った疲労感から解かれた魔法少女達が動き始めていた。

己の行った行為に嘆き悲しむ者

狂って人を殺す快感に目覚めた者

そして、私たちに殺意を剥き出す者

やがて神浜市にいる魔法少女達は、種類の違う”穢れ”を携えて中央区へ注目を集めていくのであった。

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 4-4 叛逆の先にある物語

神浜の様子がおかしいから来てみたら、街が黒いオーラの魔法少女で埋め尽くされていたのです。

マミ達はまどかを助けるために神浜へ向かったようですが、お前の言う通りならみんなあの百禍に紛れているのですね。

なぎさの近くにいるピンク色のキュゥべえ。

なぎさにしか聞こえない声で色々話しかけて来て鬱陶しかったのですが、今回はちゃんと役立ったのです。

「なぎさは知ってるのです。

まどかが魔女のような振る舞いをすると、この世界がどれほど大変なことになるのかを。

だからやってやるのです。

かつてはさやかがいたけど、1人でもできるのです!」

作戦はこうなのです。

黒いオーラの魔法少女となったマミ達をなぎさへ注目させて、あの眩しい塔の場所まで連れて行くのです。

連れて行けばそこからはコイツが何とかしてくれるのです。

「全部終わったらちゃんとチーズをご馳走してもらわないとです。

カマンベールくらいでは満足しないのです!」

なぎさはビルの上から飛び降り、作り出したシャボン玉を足場にして4人の捜索に入ったのです。

幸いにも4人の魔力パターンは把握しているので、問題はちゃんとついてくるかなのです。

飛び跳ねているとまず見つけたのは狂喜乱舞な杏子。

魔女じゃなくて魔法少女としての意思があるなら、食べ物を無駄にしてやれば絶対ついてくるのです。

勿体無いですが、コレもこの世界を壊さないためなのです。

なぎさは八百屋に並んでいたリンゴを杏子の前で全て地面に叩きつけたのです。

するとどうでしょう。

怒り狂った獣のような雄叫びを上げてなぎさについて来たじゃないですか。

よしよし、このままさやかのところへ行くのです。

なぎさはさやかの前を横切り、杏子にさやかの邪魔をさせたのです。

するとどうだ、さやかは邪魔をした杏子を追いかけてくるじゃないですか。

ちょろいのです!

そしてこの世界の身振りを気にしなくても良くなったなぎさは黒いオーラの魔法少女なんて障害でもなんともないのです。

余計な魔法少女達が襲いかかってくるのですが、呼び出した使い魔をデコイにして目的地へ一直線なのです。

次に見つけたマミとほむらは同じ場所で仲良く人を殺していたのです。

なかなか仲良くできなかった2人だけあって珍しい光景なのです。

ここが少し難しいところでどうやって2人のヘイトをこちらへ向けようか。

そう考えながら2人の近くへ向かっているとピンク色のキュゥべえがいきなり背中を光らせて一枚の禍々しい羽根を呼び出したのです

それを今出すのですか!

ひらひらと落ちて行く羽根を拾うまでになぎさにはほむらの構えるガトリングから弾が飛び出してきてエメンタールになるかと思ったのです。

しかしこの羽根があれば2人は有無を言わずついてくるのです。

何故ならこの羽根が発する声に2人は反応せざるを得ないからなのです。

さあ、難なく4人をかき集めて眩しい塔の近くまで来たのです。

でも塔の麓には魔女とは違った首長竜が魔法少女達を蹴散らしていたのです。

あれがヤツラの使役する生物なのですか。

まともに戦うと勝てそうもないのでなぎさはシャボンの階段で駆け登るのです。

塔の上には見知らぬ魔法少女と謎の結界がありましたが、目指すは倒れているまどかなのです!

なぎさは4人を引き連れてまどかのもとへ飛び込みます。

するとピンク色のキュゥべえはなぎさの持っていた黒い羽根を奪って重力に任せてまどかへ触れたのです。

すると紫色のガラス破片のような結晶がまどかから広がり、なぎさ達を包み込むと虹色の結界で囲んだのです。

あの事件を思い出してしまいますが、この緊急事態、力を借りるしかないのです!

 

________________________

目を開けると見滝原によく似た景色の結界の中にいました。

さっきまでは鹿目さんを苦しめるヒトの光景に苦しんでいたはずなのに。

周囲を見ると黒いオーラを纏っていないマミさん、さやかさん、杏子さん、そしてなぎさちゃんがいました。

「あれ、私たちって」

「なんか知らんけど、なんともないみたいだな」

知らぬ間に知らない空間にいて混乱していると、頭に声が聞こえて来ました。

[みんな、まどかのためにあの山の頂上まで来て。みんなが来たら、まどかを救えるから]

「暁美さん、今わたしに話しかけた?」

「いえ、わたしではないです」

「でもさっきの声はほむらだったじゃんかよ」

「でも、わたしではないです」

なんで私ではないワタシの声が聞こえたんだろう。

「ほら何しているのですか。さっき聞こえた声の通り、あの山を登るのですよ!」

「山ったって、あの街中にある黒いところか?」

この空間の中央には天へ届きそうな山のような何かがそびえ立っていました。

しかし不思議と、あの上へ行けばまどかに出会える気がしました。

「すっごい高いけど、あそこ頂上とかあるの?」

「みなさん、行きましょう。あの山の上へ。あそこの頂上へ登れば、鹿目さんを助けられる気がするんです。」

一瞬沈黙が訪れました。

「ま、ただ彷徨っても出口は見つからなさそうだし、当てのある方へ向かおうや」

「それはそう、だよね」

「ではみんなで行きましょう。鹿目さんを助けるために」

「そうこなくっちゃなのです!」

私達がそう意思を固めると、宙から黒い羽根が降って来て私たちの前へ山の頂上へ向かう長い道が現れました。

「なんだよ、道ができるなら早く教えろよ」

「さ、駆け上がるわよ!」

出現した石畳のような魔力でできた道を登っていると山の方角から羽根の生えた弓矢のような生き物が矢を飛ばしながら襲いかかって来ました。

「コイツら、もしかして使い魔?!」

「じゃあここは魔女の結界か何かってか?」

私は軍事基地から拝借していたマシンガンを取り出し、飛ぶ使い魔達を薙ぎ払うように撃ち落としていきました。

「あんたどこからそんなもん!」

「でも弾幕を貼るのは良い手よ。私と暁美さんで使い魔の相手をするから2人は駆け上がって!」

「それならお構いなく」

「ちょっと待ちなって!」

佐倉さんと美樹さんが山の頂上へ駆け出し始め、頂上近くになると使い魔達は私達には目もくれず、頂上への道を密集して防ぎました。

「チクショウ、どうやっても近づかれたくないようだな。

それに結構やばいぞこれ」

密集した使い魔達は一斉に矢を打ち出す準備をしていました。

「みんな、私の後ろに下がって!」

「美樹さん?!」

美樹さんが前に出たと同時に使い魔達は一斉に攻撃を仕掛けて来て、美樹さんの前には人魚姫のドッペルが出現しました。

矢の攻撃は貫通することなく、後ろにいた私達は無傷だったものの、ボロボロになった美樹さんのドッペルは泡となって消えてしまいました。

「美樹さんありがとう。

突破口を開くわ。みんな私の近くへ」

言われるがままにみんなが巴さんの近くに集まるとリボンで包まれて周りが真っ暗となりました。

「いくわよ!」

巴さんの掛け声とともに急激なGが体にかかり、何かが前方で砕ける音がすると私たちを囲っていた何かが砕けると私達は山の頂上へ向かって飛んでいたのです。

「マミ!流石にこれはめちゃくちゃだぞ!」

「このままじゃぺしゃんこなのです!」

こんなところで死ぬのは嫌だったので私は時間停止を使用しました

するといつのまにか巴さんのリボンが繋がっていて、みんなも時間が止まらない状態でした。

加速が止まらない中、なぎさちゃんがシャボン玉を出し、その弾ける衝撃で私たちの加速が止まったのです。

「いたた、首が変な方向向くかと思った」

「でも、頂上にはたどり着けたみたいよ」

山の壁部分にはトカゲのような模様がついた結界の入り口がありました。

「ここに入れば、鹿目さんがいる」

「そのようね。

さ、行きましょう」

時間が止まっていても結界の中へ入ることができ、みんなが結界に入ると結界の入り口は閉じてしまいました。

そして山の頂上には5色の球体が現れたのです。

結界の中は緑豊かな丘が広がっていて、丘の上には桜の木が1本と1人の少女がいました。

「っ!鹿目さん!」

私は急いで駆け寄るとあと一歩で手が届くというところで見えない壁に阻まれてしまいました。

そして、鹿目さんのいる向こう側は炎に包まれ始めたのです。

「鹿目さん!」

「ほむらちゃんにみんなどうしたの?」

「どうしたのって、あなたを助けに来たのよ。さあ、元の世界へ戻りましょう」

「どうして?

みんなの帰る場所はここですよ。

生きてても苦しみや後悔しかないヒトの世界よりも、こっちがミンナ幸せにナレルンデスヨ」

「まどか、アンタどうしたの?」

「大丈夫、みんなもすぐに幸せな場所へ来れるから」

鹿目さんは魔法少女姿になるとソウルジェム部分がポッカリと穴が開き、宙に浮いたソウルジェムからは穢れの泥が溢れ出して来ました。

その泥は見えない壁お構いなくこちら側にも溢れて来ました。

「何だよ、これ」

「触れちゃダメなのです!

流れてくるのが遅いあの泥は穢れの塊。触れただけですぐにドッペルが出てしまうやばいヤツなのです!」

「なぎさちゃん、どうすれば鹿目さんを助けられるの?」

[5色の球体を同時に破壊しなさい。その後は私が何とかするわ]

再び知らない私の声が頭に響きました。

「気になることは山ほどだが、あの宙に浮かぶ球体のことを言っているようだな」

「同時に壊せばいいんだよね」

「時間がないわ。みんな私の合図で球体を破壊して。

いくわよ、せーの!」

私達は一斉に球体を攻撃しますが、球体は壊れる様子がありませんでした。

「そんな」

「くそっ、特大ぶち込むったって魔力がもたないぞ!」

「…ドッペル」

「え、ほむら今なんて」

「みんなでドッペルを撃てば良いだけだと思います」

「ドッペルか。

外で体感したみたいにずっと悪夢を見続けるようにならないだろうな」

「何言ってんのさ、私がついさっき出したじゃん。大丈夫だって」

「んじゃ、ドッペルを出すのに手っ取り早いのは、まどかが出してる泥に触れるくらいか。

気が進まないな」

「仕方がないのです。いいですか、触れるのはちょっとだけですからね」

「分かってるって」

私達は恐る恐る穢れの泥に触れ、すぐに浮かぶ球体の方を向きました。

5人は一斉にドッペルを出し、ドッペルの攻撃で5つの球体を同時に破壊することに成功しました。

球体が破壊されると宙には見覚えのない羽の生えた紋章が現れてそこから紫色の閃光が見えない壁に放たれました。

見えない壁には瞬く間にヒビが入っていき、粉々に砕けたのです。

「今!」

私はダルい身体に鞭打って動き出し、穢れの泥を顧みずに鹿目さんへ手を伸ばそうとします。

しかし燃える境界線に手を触れると肉が爛れてしまい、思わず手を引き戻してしまいました。

目の前に鹿目さんがいるのに、手が届かないなんて。

他のみんなはドッペルを出した影響ですぐに身体を動かせない状態でした。

そして崩れ去ったはずの壁が再生し出したのです。

一体どうすれば、鹿目さんを救い出せるの?

動きを止めた私の目の前がライトが落とされたように真っ暗となります。

[あなたの覚悟はその程度かしら]

声が聞こえる方を向くと、紫色のピアスをしたワタシがいました。

「あなたは、一体」

[貴方が至るはずだった末路、とでも言っておきましょうか。

貴方達が障壁を破壊してくれたおかげで、こうして貴方と対面することができたわ。礼を言うわ]

「私の、末路?」

[ええ。まどかのためならばどんな犠牲も厭わない。例え女神を汚した悪魔になろうとも。

それがワタシよ。

本当は隙をついてこの世界を乗っ取ろうかと思ったけど、幸せそうな貴方達を見ていて気が失せちゃったわ]

「…鹿目さんを助けたいんです。手を貸してくれませんか」

[その気持ちは山々よ。でも力を貸すにしても貴方には覚悟が足りないわ]

「覚悟?」

[まどかを助けたいという考えだけではダメよ。貴方の目の前にいるまどかは、人間社会に愛想を尽かしてしまって、自ら楽園を作り出そうとしている。

助けるという概念が及ぶ存在ではなくなっているのよ]

「そんな、ではどうすれば」

[あら、まどかを求めるのであればすぐに出る答えだと思うけれど]

私にはすでに答えが出ていた。でもそれはあまりにも無責任で、ワガママな回答。

でも。

「まどかを、奪う」

[ふふ、分かっているじゃない。

でも貴方に残っている良心がその回答を邪魔してしまっているわ。

これを使いなさい]

そう言ってワタシは拳銃を差し出して来ました。

「これでどうすれと」

[自決しなさい。そうすれば貴方の代わりにまどかを奪ってあげる]

私は耳を疑いました。

目の前のワタシは私に成り代わろうとしているのです。

「そんなことできるわけないでしょ!まどかを救えずに死ぬことなんてできないわ!」

[ではどう助ける?手を伸ばすことすら叶わない貴方はどうやってまどかを救い出すと言うの?]

答えることができない。

今の私には、まどかを助けるほどの力を備えていない。

[貴方の生きたいと言う執念があるのは確認できたわ。

でも数多の感情を捨ててこなかった貴方はこの境地へとたどり着くことは叶わないわ。

そうね、貴方。私と契約しなさい」

「契約?!私はもう魔法少女よ。二度目の契約なんてできないわ」

[誰がインキュベーターと契約しなさいって言ったの?目の前にいるワタシと契約しなさいって言ってるのよ]

「…できるとして、その代償は」

[まあ教えてあげると、貴方は今持っている願いを手放すことになるわ。

まどかを救いたいという願いをね。

それ即ち、何が起こってもまどかを救うためにやり直すことができなくなるってことよ。

貴方に願いを捨てる覚悟があるかしら?]

私の中に迷いなんて無かった。

「悪いわね。その答えならすぐに出るわ。

私は貴方と契約するわ。

この時間軸ほど、まどかを魔女化させない条件が揃っている時間へ巡り合うことなんてほぼ不可能。

時間を操る力なんてもう不要。

だから、貴方の力を頂戴。そして、まどかを奪い取る!」

[いい覚悟になったじゃない。では契約しましょう。

精々愛の力を振るうといいわ]

周囲がライトアップされると私のソウルジェムは見たことがない禍々しい虹色に輝いていました。

私は穢れの泥に足をつけつつも、ドッペルを出すことなくまどかへ手を伸ばします。

ソウルジェムがある左手は爛れることなく炎の中へ伸びていきます

「ほむらちゃん、どうして?

そんなに苦しまなくてもすぐ会えるのに」

「私が求めるのはそんなまどかじゃない。

何もかもを諦めたまどかではなく、誰かを守りたいと考えるまどかじゃないとダメなのよ!」

左半身が炎の中へ入ると、指先が燃え始め、骨が見え始めました。

「ほむらちゃんダメ、燃えて死んじゃうよ」

「構わないわ。貴方に手が届き、奪い取ることができれば私はどうなろうと構わない!」

私はソウルジェムへ求めているまどかを映し出すよう念じると、まどかの足元から空間のひび割れが発生し出しました。

ひび割れの中には何人ものまどかが映し出されますが、私の琴線には触れません。

「違う、もっと見せて!私の愛するまどかを見せて!」

体が爛れ始めていることも知らず、私はただひたすらまどかを求めていました。

ひび割れがいくつも増えていき、もはや目の前にいたまどかの原型がどこに行ったのかわからないくらいヒビが広がっていました。

そして私はついに、求めていたまどかを見つけて思いっきり手を伸ばし、腕がちぎれるのではないかと言う勢いで掴んだ手を引き上げました

私が地面へ倒れると、そこには穢れの泥は存在せず、私の体は元どおりとなっていました。

そして目の前には魔法少女姿のまどかがいました。

[求めるまどかを奪うことができたようね。

それじゃあ残ったまどかは私がもらっていくわね]

焼け野原に居たのは、ソウルジェム部分がポッカリと開いたまどかを抱える、黒い翼を広げ、黒い衣を纏ったワタシでした。

「ありがとう、悪魔なワタシ」

[礼は無用よ。残念ながら彼女達の試行が巧みだったからなのか、まどかの常識感は塗り替えられてしまっているわ。

でもそれ以外は貴方の求めたまどかのはずよ。

さあ、元の世界へ戻る時間よ。

まどかと、幸せにね。暁美ほむら]

結界が消える寸前、悪魔なワタシは涙を流している気がしました。

私達は結界が消えると同時に高いところにいて、目の前には日継カレン達と、いろはさん達がいたのでした。

 

 

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