【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 1-12 突然の別れはいきなり

神浜の街を巡り、私の意思は固まった。

あとはシオリとピリカが戻ってくるのを待つだけだが、それぞれ違った日に違ったタイミングで探索に向かったためみんなが集まるというのは夜のほんの一瞬だけ。

シオリには宣戦布告役として駆り出されたりと面倒なことをやらされはしたが、この緑髪の魔法少女の事について情報を得られたのはありがたい。

マギウスについて聞いていたシオリは、マギウスの一人であるアリナ・グレイが今だに行方不明であるという情報を手に入れていた。

アリナという魔法少女はこの街を破壊しようとした前科持ちらしく、探し回っている魔法少女もいるという。

そのアリナという魔法少女の特徴と、いま目の前で眠り続けている魔法少女の特徴が合致しているため、こいつがアリナ・グレイで間違いないだろう。

彼女を話題に出さなかったのは正解だったようだ。

と、シオリからの情報はここで時々聞かされていたから分かるのだが、ピリカは見滝原とその周辺を見に行っているためしばらくは戻ってきていない。

出発して1週間は経つ。

グリーフシードを持っているとはいえ、寝る事にこだわる彼女はどう夜を過ごしたのやら。

「戻ったよー」

そう考えていたらピリカが戻ってきたようだ。

「おかえり。随分な長旅だったじゃないか」

「本当はもう少し早く戻ってくるはずだったんだけどね。道に迷ってしまったので」

「そういえばなぜか都会の方が迷うよなピリカは」

「目印にしていた建物が何軒もあるとか、通れると思った道が通れなかったりとか、自動歩道に巻き込まれたりとか」

「何やってるんだか」

でもキュゥべぇとも会ってきて貴重な情報は手に入れてきたんだから」

見滝原の魔法少女については、ワルプルギスの夜と戦う運命にあったということもあってその強さと能力については入念に調べる必要があった。

ピリカはカムイにお願いし、力の強い魔法少女に当たりをつけてもらっていたらしいのだが、二人の魔法少女に注目したという。

「鹿目まどかと暁美ほむら。その二人が特に力が強かったってことか」

「キュゥべぇに確認をとると、ほむらさんは魔法少女なんだけど、契約した記憶がないんだって。理由はわからないけど、時間を止めることができるらしいよ」

時間を止めるだけなら過去に戦ったことがある魔法少女にいた。

しかし、契約した覚えがないというのは妙だ。記憶操作という事もあるが、大それた理由として思いつくことはあるが私と同じ境遇が他にいるとは思えない。

「あと、アペにまどかさんを見てもらったんだけどワルプルギスの夜を倒す可能性を秘めているみたいだよ」

「ほう、それは随分と因果量が高そうと考えられる情報だね」

「候補の一人には十分なるんじゃないかな」

また、ピリカから神浜には私たちが出会った以外の調整屋がいるという情報を手に入れていた。

神浜とその周辺の地域にはすでに知れ渡っているらしく、多くの魔法少女が調整を施されているのだろう。

調整屋については私が尋ねてみる事にした。

ピリカからは安易に殺さないよう釘を打たれたが、調整屋という存在自体は今はいてはいけない存在だ。少なくとも、神浜にしか自動浄化システムがある間は。

「あら、二人とも戻ってきていたんだ」

シオリも戻ってきたようで、私たちは各々が集めた情報の整理を始めた。

全員一致で自動浄化システムが何物なのかを神浜の魔法少女から聞き出すことはできなかった。それは同時にこのままでは自動浄化システムが世界に広がることなど叶うはずがないことを意味していた。

神浜の魔法少女は外へ目を向けようという考えがほとんどないらしく、一部の者しか気にしていない有様なので外から来た魔法少女はそれはそれは居心地が悪い思いをするだろうという印象も受けていた

神浜の外にいる魔法少女は用がなければ神浜へはいかないらしく、それを彼女たちは何も気にしていない様子だったという。

不安を抱えつつも神浜には留まらない、というよりは留まれないのだろう。

人間関係や学校やバイトなど、理由は様々だがその理由のほとんどは魔法少女の世界から見ればこの先役立つとは思えないことばかり。
人間社会というものはそんなものだ。

神浜の魔法少女へ宣戦布告した話をピリカにするとそれはもう怒りどころか呆れられてしまった。

「何で敵増やすようなことするのよ。折角初対面で何の思い込みもなく情報交換できるチャンスをなくすようなものでしょ」

「あてになる情報なんてなさそうだって判断したからさ。人間社会に精一杯な奴らと話したところでいい情報なんて手に入らないだろうからさ。
あぁあ、この町のすごいがわからなくなっちゃったよ」

ピリカはムッとした顔でシオリを見続けていた。

「ま、それでもカレンへ宣戦布告してもらったグループのメンバーは洞察力と分析に長けていたよ」

「それって、過去に計画を妨害されたグループと同じ特徴」

私たちのやろうとしている事は受け入れてもらえるような方法ではない。協力関係になれたところで、あの時みたいに邪魔をされて無駄になるか遠回りする結果となる。
だから関係を険悪にしておいたのさ」

「変に注目されちゃうかもしれないよ」

「それはその時だ。忠告はもう伝えてあるからね」

「忠告を律儀に守ってくれればいいんだけど」

「なに、関わりすぎるなら潰されるくらいあの魔法少女たちなら理解できてるだろうさ」

「やめてよね」

一通り話を終えたあと、今後の行動についての話を始めた。

「さて、しばらくは神浜の状況観察を行いたいと思う。魔女化しない代わりに出るドッペルという存在をよく知る必要があるからね」

「ドッペルは出した後に疲労感しか感じないらしいけど、中には体の一部が動かなくなったりと体に不都合が出る子もいたらしいの」

「ドッペルってやつの代償をよく知らないといけないよね。でも、この街でそう頻繁にドッペルって出るものなの?見滝原や宝崎ではみんな神浜でもドッペルは出さないようにしてるって聞いたよ」

ドッペルを出す機会に出会える確率も、ドッペルを何十回と出し続ける現場も何十年とかけて観察したところでわかるはずがないだろう。

それでも、ドッペルの代償については知っておかないといけない。

そのためならば。

「ピリカ、突然なんだが、伝えたい事があるんだ」

「なに?」

「お前との関係はここまでだ」

「…え?」

 

第一章:スゴィガ ワカ ラナイ 完

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 1-11 睡蓮はまた悩む

またこの展開となりました。協力関係となりたい相手に対して、ななかさん達は必ずというほど相手と一度は一戦を交えてしまうのです。

私はななかさんと戦ってチームに入ったわけではありませんが、あきらさんも、美雨さんも一度戦ってななかさんについてきた人たちです。

そういえば私、ななかさんと面と向かって戦ったことがないことに気がつきました。

魔法少女になる前も、後も守られてばかりな場面が多いような。

私たちはお店へ支払いを行った後、人気のない路地裏まで来ました。

「さて、手合わせ願おうじゃない。まとめてかかってきても構わないよ」

「随分な自信ネ」

「いいでしょう、皆さん始めてください」

「先手はぼくが!」

「続けるヨ」

いつもの通り、先にあきらさんと美雨さんが前へと出ます。

二人は格闘を得意としているため前へ出るのは必然ですが、スピードがあるため撃って下がるという切り替えも早いです。

二人は力強い拳を繰り出しますが、シオリさんが操る帯には傷一つついていませんでした。

その帯は巧みに角度を変えていて、四方八方から来る攻撃に対応していました。

二人が一歩下がった後、私は武器を構えて矛先に貯めた力を地面へと叩きつけました。この時、大まかな相手の弱点を掴んでいたからか、シオリさんはワンテンポ対応に遅れたかのようですが、しっかりと回避されてしまいました。

そこへななかさんが間髪入れず切り込みましたが、今度は腕にある宝石から光る盾のようなものを形成してシオリさんは身を守りました。

「こっちを使わないといけなくなるとは思わなかったよ」

ななかさんも下がり、私たちは防衛体制へと入っていました。

シオリさんはあきらさんの方へ向かい、帯を素早く、しなやかに叩きつけて行きました。

あきらさんは防御姿勢で耐えていましたが、どんどん動きが鈍くなっていきました。

「まずいですね。あきらさんそこまでです。戦線離脱してください」

「わ、わかったよ」

あきらさんは後ろに下がってはこれましたが、座り込んだ後に動けなくなってしまいました。

「いい判断だね。あのまま戦っていたら何もできずに終わっていただろうね」

[あきらさん、体の様子は]

[完全に痺れたみたい。ごめん、動きそうにない]

[なら、私が]

私があきらさんを回復させようとすると何か素早い気配を感じました。

「かこさん!そこから離れてください!」

気づいた時には手遅れでした。足元には鉄釘が刺さっていてそこから電気が流れて私はダメージを受けたと同時に体が動かなくなってしまいました。

「遠距離できるヒーラーとは優秀だね。ただ、反射神経はまだまだだね」

「あんたも遅いヨ」

気づいた頃にはシオリさんの真後ろに美雨さんがいて、勝負ありかと思われました。

「したっけ勝てるかい!」

美雨さんは寸止めで終わる気だったのでしょう。しかし自らシオリさんは両手を美雨さんの爪へ突き刺し、帯でそのままみぞおちを突きました。

「両者そこまで!」

ななかさんは戦いをやめさせました。

さらなる追撃を用意していたのか構えていたシオリさんは魔法少女姿を解きました。

腕の傷を治すために痺れた体を何とか動かしてシオリさんの傷を癒しました。

「ありがと、かこさん」

シオリさんはすぐ元どおりに自由に動かせる腕へと戻っていました。

「お強いですね。私たちの完敗です」

「シオリに傷をつけておいて完敗だって言われると私の方が情けなくなるんだけど」

「いいえ、あそこで止めていなければ美雨さんは危ない状況になっていたでしょう。私も手のだしようがありませんでした」

「何言ってるのさ。十分強いよ、あなた達」

そう言った後、シオリさんはななかさんへグリーフシードを渡しました。

「これはガサツな誘いに乗ってくれたお礼だよ。協力するかどうかは仲間と話し合ってから報告するね。今日の夜、私とあなた達があった場所に来れるかしら」

「わかりました。前向きな返事をお待ちしています」

シオリさんはそのままどこかへと行ってしまいました。

「ななかさん、シオリさんは」

「あの強さは間違いありません。この神浜では、誰も対抗できないでしょう」

話は戻ってみんなで集まっているななかさんの家。ここまでの話でこのはさん達はいろいろ時になることがあったようです。

「そのシオリって子、危なっかしくて怖いんだけど」

「そうね、ななかさんからも怖い発言がよく出るけど、シオリさんもなかなかね」

「あら、私は普通に話をしただけですよ」

「ななかのいう普通は普通じゃないと思うヨ」

「そうでしょうか」

「んでんで、そのあとの返事ってどうだったのさ!」

実はその結果を私とあきらさんは知らされていませんでした。

結果を聞きに行ったのはななかさんと美雨さんだけでした。私とあきらさんはこ来ないよう釘を刺されていたもので。

「ではお話ししましょう。結末と、今後の活動について」

夜に会うという時間が曖昧な中、ななかさんは18時の暗くなり掛けの頃に指定の場所へ行き、少し待った頃に声をかけてきた少女がきたとのことです。

「あなたが、常盤ななかさんですね」

「どこかでお会いしたでしょうか」

「私はシオリの仲間、日継カレンだ。あなた達からの協力関係についての話は聞かせてもらったよ」

「そうでしたか。シオリさんはご一緒ではないようですね」

「シオリにも都合があるからね。仕方がないさ。それで、協力関係について何だが」

そう話したあと、カレンさんは魔法少女姿になったあと話を続けました。

「協力関係は断らせてもらう。実力が釣り合わないとか、目的が違うというわけではない。あなた達は少々相手を探りすぎる癖があるとシオリから聞いてね」

「探られるとまずいことをしている、そういう意味ですか」

「ななかさんには伝えておくが、私たちは既に魔女化しないシステムを世界に広げる方法を知っている。そして実現も可能だ。
だがこの方法は、絶対あなた達神浜の魔法少女と争ってしまうような方法だ。だから協力できないというわけだ」

「話してみないとわからないこともあるかと思いますが」

「忠告しよう。これ以上私たちを探るんじゃない。私たちに触れすぎるとあなたも、仲間も傷がつくところじゃ済まないよ。
なに、話す機会はいずれ来るだろうさ」

ななかさんは隙を見て変身しようとしましたが、周囲に鋭利な糸のようなものが張られて変身することを躊躇していました。

「いい判断だ」

カレンさんはななかさんへ背中を向けて、ななかさんへこう伝えたとのことです。

「神浜マギアユニオンへ伝えておいてくれ。外から来た魔法少女を失望させ続けることしかできないのなら、私たちは動くと」

美雨さんへアジトを探らせる予定だったようですが、ななかさんは追跡をやめさせます。

結果は残念なところか、神浜に危険が訪れてしまう予告まで受け取ってしまったのです。

「シオリさんとカレンさん。彼女たちは神浜の魔法少女では魔女化しないシステムを世界に広げるのは不可能だと踏んでいるようです」

「相手はハッタリで知っていると言ってきた可能性はあるけれど」

「彼女たちの実力は計り知れません。探ってみるしか方法はありませんが」

「ななかさ、一人で探ろうなんて思うんじゃないよ」

ななかさんは少しの間黙ってしまいました。

「私は今度の神浜マギアユニオンの集会へ参加し、今回のことを皆さんへ周知しようと思います。彼女たちへ出会ってしまっても、目撃したとしても関わることはないように」

事態は絶望的でした。

シオリさんとカレンさん。

彼女たちとまともに話し合いをできる日はくるのか。そして、魔女化しないシステムを世界に広げる方法とはどんな方法なのか。

この状況の中、私はあまりにも無力で情けない気持ちでいたのでした。

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 1-10 ユリとアザミが咲く中で

ななかさんと出会って魔法少女となり、いまではたくさんの経験をしてきたなと感じてしまいます。

私たちはいろはさん達が提示した自動浄化システムの広げ方を探すこと、そしてキュゥべぇと共存するという考えに対し、協力だけはするという立場にいます。

そのため、神浜の魔法少女が集まった神浜マギアユニオンという組織にも参加していません。

これはチームとしての方針であり、この考えにはこのはさん、葉月さん、あやめちゃんも乗っかり、私たちと共に行動しています。

そんな私たちはある日、ななかさんの家に集まっていました。

「みなさん集まりましたね。では、話を始めさせていただきます。
今日皆さんに集まってもらったのは、先日私たちが遭遇した魔法少女について伝えなければいけないからです」

「その魔法少女っていうのは、神浜の子ではないの」

「違います。彼女は神浜の外から来たとのことです。そんな彼女について、私たちが体感したことを共有するのが今回の目的です」

そうして私たちが体験した、神浜の外から来た魔法少女、紗良シオリさんについての話が始まりました。

私とあきらさん、美雨さん、そしてななかさんと一緒に魔女討伐のために結界へ入ったのですが、その結界の中には使い魔の姿がなく、一戦も交えずに最深部へと向かうことができました。

道中はすでに誰かが戦った後があり、最深部では魔法少女の反応がありました。

魔法少女の反応へ違和感を感じている中、ななかさんからはその場で待機し、様子見をする指示が出ました。

魔女と戦っていた魔法少女は、小さな魔法少女でした。

服から伸びた帯で魔女へ攻撃している様子でしたが、攻撃はすべて回避されていました。

「もう!スズランテープみたいにピロピロ動いて。足元狙ってもな」

そう言って小さな魔法少女はバルーンを周囲に浮かべた魔女の足元の釘を壊しました。

しかし、どこからともなく現れた使い魔によって魔女は再び地面へ固定されてしまいます。

寄ってきた使い魔を帯で軽く遠くへはたき飛ばしてしまった小さな魔法少女は別のアクションを起こします。

小さな魔法少女は魔女の結界内に散乱していたビニール袋を集め、そこに何かを詰めてはそのひとつひとつを魔女へ向かって投げて行きました。

すると、投げたビニール袋が次々と魔女へとまとわりついて行きました。

「静電気で逃げちゃうなら、その静電気でお返しよ」

そう言って小さな魔法少女が周囲に電気を発生させるとその電気はビニール袋を通して魔女へとダメージを与えていました。

ビニール袋の中には小さな金属体のような黒いものが入っていました。

見たことない戦い方を目にして私はすごく感激していました。

魔女は電気を浴び続け、身体中が焦げてしまったあとはバルーンごと粉々に砕け散っていきました。

「全く、シオリを少し考えさせた点は褒めてあげるんだから」

シオリと呼ぶ魔法少女がススの中からグリーフシードを拾い上げると、なぜか私たちの方向を向きました。

「さっきから隠れて見て、出てきなさい。少なくとも4人はいるはずよ」

なんと私たちがいることは完全にバレていました。

ななかさんからの姿を見せる指示もあり、魔女の結界が消えると同時に私は姿を表しました。

「すみません、変わった戦い方をしていたもので思わず見物させてもらいました」

シオリさんは魔法少女姿を解かないまま私たちの方を向いたままでした。

「あら、失礼しました。私たちはあなたと話をしたいと考えているのですが警戒させてしまったようですね」

そう言うとななかさんは変身を解き、私たちも変身を解きました。

シオリさんも変身を解きました。

シオリさんはひざ下あたりまでの長さがあるスカートに薄い上着を羽織った私服の姿でした。そして変身を解くと眼鏡をかけていたのです。

そういえばななかさんも変身を解くと視力が戻ってしまうと話を聞きました。

シオリさんもそうなのでしょうか。

「ごめんなさいね、警戒しちゃって。で、話って何さ」

「率直に言いますと、神浜の外から見た神浜とはどんなものか教えて欲しいのです。生憎、私たちは神浜の外の情報に疎いもので」

「できれば、協力していけたらって思うんだよね」

(うん、うん!)

「なるほどね、ちょうどシオリもこの町のことは知りたか、ちょっと待って、いつシオリが神浜の外から来たって知ったの」

「神浜の中で知らない魔力パターンでしたので、憶測で話していましたが、違いましたか」

シオリさんは少し驚いた後、面白そうに笑顔で話しました。

「面白いねあなた。間違いはないわ、シオリは神浜の外から来た魔法少女よ。是非とも情報交換させてもらいたいわ」

「よろしくお願いします、シオリさん」

「よろしくねって、なんでシオリの名前知ってるのさ」

「すでに口に出してるネ」

「…あら」

なんだか面白い人だなというのが第一印象でした。

私たちは近くのファミリーレストランへ入り、みんなはそれぞれ好きな飲み物を頼んでいきます。ななかさん達はシオリさんのとなりには座らないだろうと思い、私がとなりへ座りました。みんなが席へ着席したことを合図に情報交換が始まりました。

「今回は協力していただき、ありがとうございます。私は常盤ななかといいます」

「ぼくは志伸あきら。よろしくね」

「純美雨ネ」

「夏目かこです。よろしくお願いします」

「シオリの名前は紗良シオリ。突然聞くけれど、この街「神浜」では一般人を気にしたりしないの?」

「まあ、あまり気にすることはありませんね。もちろん、何も考えていないわけではありません」

私たちが今座っている席はななかさんが決めた場所です。

窓がなく、お店の端っこであるこの場所は一番人気がない場所です。

隣の席にいる人にしか話が聞こえないので魔法少女の話が普通の人たちに聞こえないよう気をつけた結果です。

ななかさんは、さらっとこんなことを考えてしまう人なのです。

「なるほどね。気を遣ってはいるようだけど、警戒は緩めってことはわかったよ」

「さて、早速ですが神浜に魔女化しない仕組みがあるという話は、誰に聞いたのでしょうか」

「キュゥべぇよ。あいつから魔女化しない街があるって話を聞いて食いついたわけ。自分で魔女化する仕組みを放置してるくせに、魔女にならない仕組みが手に入るぞ、なんて伝えて回ってたよ」

「それは、本当ですか」

「情報交換なのに嘘を伝える必要がある?」

ななかさんは冷静に話していましたが、私は驚いていました。そもそもキュゥべぇが魔女化しないシステムの事を知っていることそして魔女化しないシステムが手に取れるものであるかのような話で伝えて回っていることが。

「そうですか、キュゥべぇさんがそう伝えて回っているのですね」

「あら、キュゥべぇへ神浜の魔法少女がそう伝えたんじゃないの」

「少なくとも私たちは伝えていません。もし誰かが伝えていたところで魔女化しない仕組みは決して手に取れるようなものではないと伝えているはずです」

神浜にある魔女化しないシステムというのは、マギウスという3人の魔法少女が暗躍し始めた頃から存在するシステムです。つい最近はいろはさんの妹であるういさんが戻ってきたあの日を境に元マギウスである灯花さん、ねむさんでも魔女化しないシステムについて全くわからない状態となってしまっています。

いろはさん達はもっと詳細なことを知っているようですが、なかなか情報をみんなに共有してくれません。

きっと何か理由はあると思うのですが。

「きっとそうだとして、この神浜はもう手遅れな状態なのかもね」

「手遅れっていうと」

「手に取れるものだとしたら奪おうとする奴らがいる。もし手に取れないのならこの場所ごと自らのテリトリーとしようとする奴もいるだろうさ。
ま、私はどっちでもないけどね」

「持ち出せないなら自分のシマにする。考えつくことではあるネ」

「でも、外から来た子達にちゃんと説明すれば分かってくれるはずだよ」

「なんて説明するつもりなのさ。個々人の判断で見解を伝えていくつもり?そんな危険なことはしないでしょうね」

まるで神浜の魔法少女同士で情報共有ができていないような言い方ですね」

「事実、だと思うんだけど」

神浜の魔法少女は情報交換できるよう、専用のSNSグループが作られています。

そこで情報交換はされているのですが、今回の件は一度も話題に上がったことがありませんでした。

つまり、誰も今まで外から来た魔法少女へ現状をしっかりと説明しようという考えすらなかったのです。

「情報共有をする方法はあります。しかし今回の話題は挙がったことがありませんね」

イチゴミルクを少し飲んだ後、シオリさんが話し始めました。

「状況は把握したわ。その情報共有ってどうやっているの」

「主に専用のSNSで行っています。しかし、メンバーへ加わるには神浜マギアユニオンのまとめ役である方々に一度会う必要がありますね」

「神浜マギアユニオン?何なのこの街って組織化されているわけ」

「たいていの方達は参加されていますね。ただ、私たちは参加せずに協力の立場でいます」

「どういうこと?」

「私たちは組織に留まらず、独自の行動を行っていきたいためです。神浜の魔法少女同士で仲が悪いわけではありませんよ」

その後も会話が進んでいきましたが、情報を伝える量は私たちが7割という状況でした。1対4という状況なので当然かなという感じはしていました。

ななかさんが席を外した後、私たちはどんどんシオリさんへ質問をしていきました。

「あの、魔女と戦っているときのあのビニール袋を使った方法、あれってどこで知ったんですか」

「知ったも何も、持ってる知識を使っただけだよ。あの戦い方なら物理の中盤あたりまで学んでいれば思いつくんじゃないかしら」

「わ、私はまだ序盤しか触れていないからわからないかもです」

そう私がいうと、シオリさんはストローのビニール袋を手に取りました。

「冬場にドアへ手をかけるとバチってくるじゃない?あれって何でだと思う?」

「それは静電気が体に溜まって。あ!」

「気がつくのが早いね。そう、こんな感じに磁石でも何でもないのに皮膚へビニール袋がくっついてくる。この仕組みを使っただけよ」

考えなくても、日々日常で感じる現象でした。それでも、そんな些細なことを戦いの中で思いつくのはかなり冷静かそれ以上の何かがなければ使おうとも考えつきません。

この瞬間でシオリさんは強い方だと察することができました。

「魔法少女って、それぞれ得意不得意があるじゃない?それって最初からもらった力だけではどうにもならないから、こうやって身の回りを見て戦い方に取り込んでいっているのよ」

「なるほど、勉強になります」

「シオリさんって誰かとチームを組んでいたりするの」

「チームっていうのかね。2人でやってるからコンビって言ったほうがいいかもね」

「出来れば、そのもう一人ともあってみたいな」

「変わり者だからお勧めはしないよ。ま、協力することになったら会うことになるかもね」

「それはどういう事か」

「すぐに分かるさ」

そう、シオリさんが話すとななかさんが戻ってきました。

「みなさんで盛り上がっていたようですね」

私たちと協力関係になりたいっていう思いが十分に伝わるほどにね

「では、ご協力いただけますでしょうか」

「この場ですぐに応えることはできないね。あんた達が、他人に頼りっきりな存在にならないか確かめるまではね」

一気に空気が重くなりました。ななかさんは椅子へと座らず、そのまま出入り口の方を向いていました。

「では、参りましょうか。手合わせするために」

「分かるじゃないの、ななかさん」

 

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 1-9 神様?を連れた女の子

今回私たちが集まったきっかけは、神浜で聞いた話について整理をしようとほむらちゃんが呼び掛けた事です。

これまでに神浜のことについて整理できなかったことには理由がありました。

私たちが神浜で災害が発生していたにもかかわらず神浜に向かっていたこと、無事を確認したかと思ったらまた神浜へ向かってしまったことでパパとママはすごく心配していました。

ついにわたしとさやかちゃんの親同士で話し合いが行われ、1週間ほど厳しい門限を設けてそれまでには絶対帰ってくるようにと伝えられてしまったのです。

両親を心配させてしまった私にも非はあります。

なので、この期間はマミさんやほむらちゃんからグリーフシードを少し渡してもらい、この1週間はマミさんとほむらちゃんに魔女退治を任せるしかありませんでした。

親を心配させないように早く帰宅しなければと思うと同時に、魔女を倒して人を守ることができないというなんともいえない複雑な気持ちが続いた1週間でした。

学校ではもちろんさやかちゃんやほむらちゃんと会話することはありましたがちゃんと整理ができたというほどの話し合いにはなっていませんでした。

そんな中、やっと昨日の時点で厳しい門限から解放されました。

パパには先輩の家に行くから少し帰りが遅れるかもって伝えてきているので、少し暗くなってから帰っても心配はされないと思います。

そんなことがあり、私たち5人が集まって話し合うのは今が初めてとなります。

マミさんの部屋にお邪魔したことは何度もありますが、部屋の中には見覚えのない光景が広がっていました。

「マミ、やっと帰ってきたのですね。なぎさに留守番を頼んだということは、何かご褒美があると思っていいんですよね?」

「・・・なんだ、こいつ」

「ええっと、まずは上がって。話は、チーズケーキを食べながらしましょう」

マミさんは一人暮らしのはずでしたが、部屋の中には白髪気味の小さな女の子と、少しピンクがかったキュゥべぇがいたのです。

その光景に驚いたのは私とさやかちゃん、杏子ちゃんだけでした。

ほむらちゃんはどうやら小さな女の子のことを知っていたようです。

みんなに切り分けられたチーズケーキ、ダージリンの紅茶が渡った後、マミさんが話し始めました。

「さて、神浜のことについて話し合おうって集まったんだけど、まずはこの子達を紹介させて。
この子は百江なぎさちゃん。暁美さんと一緒に魔女の結界内で見つけたのよ。
で、そこに寝てるピンク色のキュゥべぇはなぎさちゃんと一緒について回っている特別な子で、いつも見かけるキュゥべぇとは別個体らしいの」

「こいつはなぎさに付きまとってるだけなのです」

「えと、魔女の結界で保護されたはいいけど、なんでマミさんの家にいるの。両親とか心配してない?」

「なぎさは1人なのです。両親はもういないのです」

少し悲しそうな顔をしたなぎさちゃんを見て、思わず私も悲しい気分になってしまいました。

「なんかデリケートなこと言ってごめんね」

「別に気にしてないですよ」

なぎさちゃんに対していろんな質問が出されてそれになぎさちゃんが答えるというやりとりを行った後、マミさんから今後はなぎさちゃんも一緒に魔女退治に参加させたいという提案がありました。

もちろん私たちはその意見を歓迎し、魔法少女の仲間としてなぎさちゃんが新たに参加したのです。

人数が多くなってさらに賑やかになる予感がしました。

そんな中、ピンク色のキュゥべぇはずっと寝たままで何を話すわけでもありませんでした。

神浜にいた小さなキュゥべぇとも違った雰囲気です。しかしどこか、ピンク色のキュゥべぇからは温かな力のようなものを感じました。この感じ、どこかで。

「それにしてもやけにマミは元気だな。神浜の件でなんか吹っ切れたか?」

「マミは初めて会った時、ずっと悩みっぱなしだったのです。そんなマミになぎさが喝を入れてやったのです」

「もう、なぎさちゃんったら。
でも事実よ。なぎさちゃんに言われた言葉で、私は本当の意味であの呪縛から解放されたんだから」

「マミさん…」

マミさんはウワサに取り込まれてから多くの人へ迷惑をかけてしまった。私たちには思いを打ち明けてくれても、神浜へいろはちゃん達の話を聞きに行ったときも、そんな表情を見せていました。

でも、今日の言動ではっきりとわかります。本当に、いつものマミさんが戻ってきたんだって。

「ふーん、小さいくせにやるな」

「ちっちゃくないよ!なのです!」

みんなの笑い声が広がった後、マミさんが話を切り出しました。

「はい、ひとつ目の話題はおしまい。ここからは、神浜でいろはさんから伝えられた今後の活動内容について整理しましょ」

ワルプルギスの夜を倒した後、いろはちゃんたちから伝えられたのは今後の神浜の行動方針です。

ひとつ目は、神浜にある魔女化しない仕組みを世界に広げること。

そしてふたつ目は、キュゥべぇと共存できるようにすることです。

ひとつ目の目的については進んで協力して行きたいとは思ったものの、ふたつ目の事で少し考えてしまったのです。

「そういや、神浜の子からなにも連絡はないんだっけ。神浜でなにが起きてるかわからないんだけど」

「そう、それなんだけどね。神浜の魔法少女と連絡を始める前に私たちの意見はちゃんと持っておきたいと思ったのよ」

「というと?」

いろはちゃんに連絡をすれば、私たちはどうして行くのかは必ず聞かれます。

その時に、いろはちゃんが作る予定だと言っていた魔法少女の集まりに加わって全面的に協力していくのか、そうではないのかを伝える必要があります。

もう私たちはチームのようなものです。誰かが参加して、誰かは参加しないだとチームとして行動しづらくなると、さやかちゃんやほむらちゃんと話しているときからそんな意見が出ていました。

「私はいつも通り自由に振る舞うつもりだったけど、まさかチームの一員とか考えてるんじゃないだろうな」

「あら、佐倉さんも私たちのチームの一員よ」

「ったく、勝手に決めやがって」

「なに、嫌なの?」

「嫌じゃねぇよ。まあいいや、そういうことにしといてくれていいよ」

「全く、素直じゃないんだから」

「2人で夫婦漫才やらないで早く進めるのです」

さやかちゃんと杏子ちゃんで話を広げてしまった後、本題に戻りました。

実はみんなでキュゥべぇとの共存という点で全面協力しづらいという意見になっていました。それならば、と切り出せないのが今の状況です。

「何も考える必要はないんじゃないか。知らねぇもんは知らないんだから、何か頼まれてから動くでいいだろ」

「でも言われるまで動かないというのは良くないわ。何か私たちでも動いてみないと」

「動き方がわからない以上、神浜の皆さんに任せるしかないと思いますよ」

そう、私たちのチームで自発的に動きたいと考えているのはマミさんだけだったのです。他のみんなは、神浜の子から協力して欲しいとお願いされたことを手伝う程度でいいという考えです。

マミさんがもし1人でまた神浜に出向いてしまったら、あの時と同じことになってしまうかもしれない。

それが怖かったのです。

「マミさんは、どうして自ら動きたいっていう考えなんですか」

マミさんは紅茶を飲もうとしていましたが、そのままティーカップをソーサーの上に置きました。

「そうね、私が不安になっちゃうからかな」

一呼吸おいて、マミさんは話し始めました。

「私、なにもしていない状況だと嫌なことばかり考えちゃってね。このまま魔女化しない仕組みが神浜だけのものだったらどうしようかとか。
そうなったら、今ここにいる誰かが神浜へ行くのに間に合わず、魔女化してしまうのではないかとか」

「マミさん…」

「だからね、何か動いたり考え続けたいのよ。そんな不安な考えを思い起こさないように」

みんなはどう声をかけて良いかわからないのか、言葉が出てきませんでした。

そんな沈黙を、なぎさちゃんが破ります。

「またマミは1人で抱え込もうという思考になっているのです。マミへガツンとなぎさが話した時に伝えたはずなのです。
元々マミは弱虫だから、みんなに不安を吐き出せばいいのです。あの時はほむらがちゃんと受け止めていたのです」

「そうですよマミさん。私たち、相談に乗りますよってしか伝えていませんが、不安に感じていることとか全部話してくれていいんですよ」

「鹿目さん…」

「そうですよマミさん。私たち仲間なんだから、なんでも話してください!」

マミさんは少しうれしそうでしたが、目には涙がたまっている様子でした。

「あの、もし何か行動するなら私たちにしかできないことを神浜の子達に伝えませんか」

「というと?」

「多分、神浜の子達は神浜の中のことだけで精一杯だと思うんです。なので、神浜の外の情報を伝えてあげたらいいんじゃないかなって思うんです。恐らくキュゥべぇと接触するのも私たちが確実に多いでしょうし」

「外のことってなにを伝えるんだよ。ここ最近ではなんも変わらんじゃんか」

「変わらなければ変わってないことを伝えればいいんです。もしかしたら、外からしか見えない変化もあるかもしれない」

「うん、私はいいと思う」

「ほむらの意見、私もいいと思うよ」

「私はどうでもいいけど、マミ、あんたはどうなんだ」

「その考えでいいと思うわ。でもみんな無理しないようにね」

「それはこっちのセリフですよ、マミさん」

「全くなのです」

こうして、私たちは神浜の外のことについて調べてその情報を神浜の子へ伝えるという活動目標ができました。

ちょうど、私がいろはちゃんへの連絡先を知っていたので活動方針について伝えた後、神浜の状況も教えてもらおうと思っています。

家へ帰った後、早速私はいろはちゃんへメールしました。

いつになるかはわからないけど、魔女化しない仕組みが世界中に広がって、みんな幸せになれたらなって考えていました。

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 1-7 有為な夜道今日越えて

「あ、おねえちゃん、やちよさんお帰りなさい」

「お帰りなさい」

みかづき荘にはういとさなちゃんが戻ってきていました。

まなかさんのところへ行っていたさなちゃんはウォールナッツのお店の中で水名女学園の魔法少女達と交流していたとの事です。

雰囲気はいつも通りで、楽しい時間を過ごせたと嬉しそうに話してくれました。

ういは灯花ちゃんとねむちゃんのところに行ってお話をしていたみたいなんだけど、自動浄化システムについて少し話が進んだという話をしていたのです。

「この世に観測できない物があるなんてあり得ない!って灯花ちゃんが悩んでいたんだけど、そこからねむちゃんや桜子さんと一緒に観測できないものって何だろうなって考えてたの。みんなは何だと思う?」

「そうね、概念とかかしら。人は呼吸しないといけないとか、寝なきゃいけないとか」

「すごいやちよさん!すぐに思いついちゃうんだ!」

「それ以外って言われると難しいわね」

「概念なら仕方がないよねーって話になった後、じゃあ概念はどう観測できるかとか難しい話になっちゃって、聞いてる私は疲れちゃった」

「結局わからなかったって事ですね」

「概念だって片付けられちゃうと、どうしようもないわね」

灯花ちゃんはまだ諦めていないみたいだけど、私たちにはこれ以上自動浄化システムについて調べることは無理だという結論になってしまいました。

「神浜にしかないっていうのが何かヒントにならないかな」

「神浜のみんなに聞いてみてはどうでしょうか。何かいい答えが出るかも」

「そうだね、みんなに意見を求めてみるね」

神浜の魔法少女の間ではワルプルギスの夜を倒した後に専用のSNSを用意して情報交換を行うようになりました。

そこへ私はういから聞いた話を書き込み、さなちゃんからの提案通り、神浜にしかないものを募集しました。

その結果、今度の集まりで意見をまとめることになりました。

ちょっとは活動方針を示せたのはいいことかな。

太陽が夕日に変わる頃、ふとやちよさんが話し始めます。

「そういえば夕ご飯の買い出しがまだだったわね」

「あ、それなら私が行ってきますよ。ここからそんなに遠くないですし」

「おねえちゃん、私も行く」

「私もご一緒しますよ」

「それなら私は留守番しておくわ。フェリシアが帰ってきた時に誰もいなかったら何があるかわからないし」

「あはは」

私とうい、さなちゃんで夕ご飯の買い出しへ行くことになりました。今日は新西区の西側にあるスーパーで安売りが行われているとやちよさんが言っていたのでそこへ向かうことにしました。

「えっと、今日の料理担当は」

「私とういちゃんです」

「ああ、だから」

「もうおねえちゃんったら、昨日の夜に話したのに」

「へ!そうだったけ、ごめんね」

昨日の夜のこと、普通ならば覚えているはずなのに、今日は衝撃な出来事が多くて頭から抜けてしまっていたようです。

魔法少女のこと、考えすぎたらいけないなと実感した瞬間でした。

「おねえちゃん、何か食べたいものある?」

「そうだなぁ、今日は揚げ物が食べた気分だなぁ」

「あ、それならお野菜とかの天ぷらにするね!私天ぷら作ってみたかったんだ」

「でも、作るときは跳ねる油に気をつけなきゃダメだよ」

「大丈夫ですよいろはさん、私も手伝いますから」

「うん、お願いね、さなちゃん」

ういと、さなちゃんと話していると自然にいつもの日々に戻ってきた気がしました。

何気ない会話を交わして、みんなで楽しい時間を過ごせる。

やっぱりみかづき荘のメンバーが集まるほどに、楽しい気分になっていく気がする。

楽しい気分だと、自然と行き先が近く感じてしまいます。

スーパーに着いた後は、出かける前に書いて持ってきたメモに沿って買うものをカゴに入れていく、といういつもの流れです。

そういえば、最近のスーパーではお客さん自らがバーコードをかざして袋に入れ、そのまま支払いをするというセルフレジが増えています。

私も使用したことはありましたが、バーコードをなぜか読み込んでくれなかったり、バーコードがない商品はどうすればいいのかなど、わからないことだらけだったことを覚えています。

やちよさんから使用方法を教えてもらったことで人が少ない状態であれば時々使うくらいまで使いこなせるようにはなりました。

今回もセルフレジの方で会計を行おうと向かったところ、1人の女の子がセルフレジを見つめながら何か悩んでいました。

「ねえ、おねえちゃん」

「なに、うい」

「あの女の人、初めてセルフレジに触れたおねえちゃんみたいになってない?」

「えっと、ちょっとお手伝いしてくる」

何気ない話し方で図星しちゃうことを言っちゃうういの言葉を聞いて、灯花ちゃんに似た考えにならないかなと不安になってしまいました。

「あの、よかったら」

「うわわごめんなさい店員さん!バーコードが無いからどうするかわからなかっただけなんです!」

「わ、私店員さんじゃないですよ」

「え、じゃああなたは?」

「困ってそうなので声をかけてしまいました。よかったら使い方を教えましょうか」

「えと、すみません、お願いします」

セルフレジの使い方について教えている間、さなちゃんとういは無難に店員さんのいるレジに並んで会計を行ったようです。

セルフレジに悩んでいた女の子が買い物袋を持っていなかったのでどうしようか悩んでいたところ、女の子の友達が駆けつけてきました。

「静香、普通のレジにいないと思ったら難易度の高いセルフレジにチャレンジしていたんですか」

「そうだよ静香ちゃん、普通にレジに並ぼうよ」

「いや、今後はセルフレジが主流になっていくらしいじゃない?なら、少しは使えるようになっておこうと思って」

「最近ICカードへチャージできることを覚えたばかりなのに、急ぎすぎですよ。人様にも迷惑をかけてしまっていますよ」

「えっと、今回はありがとうございます。助かりました」

「いえ、突然声をかけてご迷惑になっていなければよかったです」

「はあ、村から出た時にレジを触ったことがあるから大丈夫だと思ったんだけどなぁ」

「え、今、村からって」

「えと、私たちは最近神浜に来たばかりで、あまり都会に慣れていないんです」

神浜に来たばかりの女の子達は、時女静香さん、広江ちはるさん、土岐すなおさんと言い、今は急いで都会の生活に慣れようと頑張っているところでした。

「なんでそんなに慣れようと急いでいるんでしょう」

「理由は話せないんですけど、どうしても慣れる必要があるんです」

あれ、今さなちゃんの問いかけに答えたのかな。

「もしかして、3人は魔法少女ですか」

「「え!」」

「それなら、私が見えてるってことですか」

「もちろん見えているよ」

「魔法少女のことを知っているってことはあなた達も?!ちょっとお店を出てから話しましょう」

まさかのさなちゃんを認識できるというそれだけで3人が魔法少女であるということがわかってしまいました。

やちよさんは魔力反応を検知できるとのことですが、私たちはさなちゃんがいなければ静香さん達が魔法少女だなんて知ることもできませんでした。

「静香さん達が神浜に来た理由って、もしかして自動浄化システムについて話を聞いたからですか」

「自動浄化システムって、魔法少女が魔女にならない力のことですか」

「そうですよ」

「それならば、答えはその通りです。私たちは九兵衛様から神浜のことを聞いて、その力を手に入れるために神浜へ来ました」

「手に入れるって言っても、別に奪っちゃうとかそういうわけじゃないよ。分けてもらおうと思っているだけ」

やはり静香さん達にも自動浄化システムは手に取れるものだと伝えられて、ここまで来ていたのです。

午前中にカレンさんに言われた通りに伝わってしまっている。ならば、わかってもらうために話し合わないと。

「実は私たち、神浜の魔法少女達で自動浄化システムを広げることを目標として組織みたいなものを作ったんです。今は広げ方を話し合っている最中で、よかったら話し合いに参加してもらえないでしょうか」

唐突なお願いで、静香さん達はお互いに顔を合わせて何かを話し合っていました。これが誤解を解いていくための初めての試みとなってしまって不安でいっぱいでした。

「いろはさん、その話、喜んで参加させてもらいます。いや、むしろ参加させてください」

「本当ですか」

「ただ、私たちも他の魔法少女を束ねる立場にいます。なので神浜の組織には参加しないで、協力の立場とさせてください」

「大丈夫ですよ、宜しくお願いします」

「神浜に滞在するなら調整屋さんを教えたほうがいいね」

「調整屋さん?」

私たちは情報交換を行うためにお互いの連絡先を交換しました。

魔法少女のSNSについては3人とも使い方がわからないということもあり、情報交換はメールや電話でのやりとりで行うことになりました。

調整屋さんの場所については後日訪れたいとのことだったので場所だけは地図も合わせて教えておきました。

「今回は本当にありがとうございました。今度行われる話し合い、楽しみにしています」

「はい、こちらこそお待ちしています」

「ういちゃん、さなちゃん、またね!」

「またねー」

私が静香さん、すなおさんと話をしている中、ちはるさんとうい、さなちゃんはお互いの夕ご飯についての話で盛り上がっていたようで、すっかり仲良くなってしまったようです。

「遅くなっちゃいましたね。真っ暗になる前に帰りましょう」

「そうだね、さなちゃん」

詳細なことは話せていないけれど、話し合いの場に参加してくれるということになりホッとしました。

話せばわかってくれる。

もっと外から来た魔法少女と話し合って、そして。

そういえばまどかちゃん達との情報交換をしばらく行っていないことを思い出しました。

帰ったら一言メッセージを送っておかないと。

「「ただいまー」」

悩むことはたくさんあるけれど、みかづき荘のみんなといると、とてもリラックスした気分になります。

今晩は、妹が作った料理を食べられて、とても幸せな気分になっちゃいました。

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 1-6 憂い心から来る焦り

私が神浜に来てからたくさんの出来事がありました。

最初は小さなキュゥべぇを探すことから始まり、ういを探す為に神浜に滞在するようになって、最終的にはワルプルギスの夜を倒してしまいました。

ういは戻ってきたけれど、マギウスが成し遂げようとしていた自動浄化システムを世界に広げて魔法少女の解放を目指すという新たな目的ができました。

自動浄化システムを広げること、そしてキュゥべぇとの共存を目指すという目的を掲げて、神浜マギアユニオンという組織まで誕生してしまいました。

神浜マギアユニオン結成後はマギウスの翼残党と戦ったり、灯花ちゃんの考えた果てなしのミラーズを通して不思議な力と接触しようとしてトラブルが起きちゃったりといろいろありました。

いろいろあっただけに、私の頭の中は物事の整理ができていない状態です。

そんな休日なのに頭を抱えている私を見たからなのか、やちよさんから一緒に外を見て回ろうって提案されたので、今は被害が大きかった中央区へと歩いています。

他のみかづき荘のメンバーはというと、

鶴乃ちゃんはお店を再開できるようにするための手伝い、

フェリシアちゃんは友達のところへ、

さなちゃんはまなかさんのところへ、

そしてういは灯花ちゃんとねむちゃんのところにいます。

やちよさんと2人きりというのは久々のことでした。

中央区へ着くと、電波塔の周囲は瓦礫撤去で忙しそうな雰囲気でした。

しかし、そこから少し離れるとほとんどのお店が営業を再開していて多くの人で賑わっていました。

「すごいですね、大災害があったあと少ししか時間が経っていないのに、もういつも通りな感じになってます」

「そうね。お店自体にも打撃はあったでしょうけど、活気があるのはいいことよ」

「そうですね。わたしも前に進めるよう早く考えないとなぁ」

「いろは、せっかく気分をリフレッシュしにきたのに考え込みすぎわいけないわ。ちょっと近くのカフェによって気持ちを楽にしましょ」

「すみませんやちよさん、そうさせてもらいます」

神浜マギアユニオンを結成すると宣言した私たちは、今後の神浜の魔法少女達のことを考える立場になりました。

何かトラブルがあったり悩み事があれば解決するために動く。

そしていまだに謎な自動浄化システムについても進展がなく、わたしは少し焦っていたのかもしれません。

魔法少女のことについて考えるのもそうですが、学校生活についても考えていかないといけないことが多くなります

今までも学校生活と魔法少女活動の両立をやってきましたが、最近は魔法少女活動に偏っていて学校生活が疎かになっている気がしてなりません。

これもきっと、焦ってしまう理由なのかもしれません。

どこか休める場所を探していると、妙に人気が少ない広場に出ました。

「あれ、周りはお店の準備がされている状態なのに人がいない」

「鍵も開いた状態ね。カバンが置きっぱなしのお店もあるし、もしかしたら」

その時、わたしのソウルジェムに反応がありました。

魔法少女になってから戦い続けないといけない存在の反応です。

「こんなところに魔女がいるなんて」

私たちは魔女の結界に飲み込まれ、周囲の風景は見慣れた異様な空間へと変わっていきました。

私とやちよさんは魔法少女へと変身し、結界の奥へと進んで行きました。

入り口付近は使い魔の数が少なく、2、3階層ほど進んだ頃に魔法少女の反応を検知しました。

「他の魔法少女がいる?」

「苦戦しているのかもしれないわ、いくわよ、いろは」

「はい!」

最深部へ行く道のりから少し離れたところに魔法少女はいました。
見た様子は苦戦している様子ではないようでしたが。

「あら、この街の魔法少女ですか?」

「そうだけど、なんですか、この状態は」

結界の中で出会った魔法少女の後ろには保護された人たちが眠っていました。

しかし周囲には鋭利なもので何度も刺された状態の死体が沢山あったのです。

「使い魔の仕業ですよ。私が来た頃には見ての通り数人は手遅れだった。だがここで保護している人たちで全員のはずです」

「神浜でここまでする使い魔は久々かも」

魔女のほとんどは人々を捕らえ、魔女の口づけを付けてどんどん被害を広げていく場合がほとんどです。

今回のように、結界の中で直接手を下す魔女というのは滅多に見たことがありません。

「私はこの人たちを守っています。あなた達でここの魔女を倒してもらえますか」

「ありがとう、助かるわ」

「お願いします」

私たちは再び最深層へ進みますが、使い魔の数はこれまた少なめでした。

最深層へ行くと、柵のような壁の中で震える羊のような魔女を発見しました。

「厄介な相手ね。相手が反撃態勢に入ったらあまり攻撃を加えないようにね」

「はい」

神浜にいる魔女は、マギウスによって増やされた魔女の残りがたくさんいる状態であり、目の前にいる羊の魔女も何度も見かけた魔女のうちの一体です。

強さは時によっては違いますが、羊の魔女は高確率で攻撃を加えた相手へカウンターを行ってきます

倒せると確信できる時以外は、無理に攻撃しないほうが良いです。

羊の魔女は紫色の球体をいくつも私たちの方へ飛ばしてきました。

私はかわすことしかできませんが、やちよさんはいくつかを払い落としながら進んでいました。

そのおかげか、魔女はやちよさんの方へ夢中になり、私はその間に柵へとダメージを与えます。

5、6撃ほど弓矢を当てると魔女の周囲に貼ってあった柵は崩れていきました。

突然柵が壊れたことで魔女は動揺していました。

「やちよさん、おまたせしました!お願いします!」

私は魔力を込めた弓をやちよさんの頭上へ放ち、上空ではじけた矢はやちよさんを癒し、槍へ魔力をまとわせました。

「ありがとう、このまま終わらせる」

やちよさんは周囲へ槍を複製し、魔女へ向けて放ちました。

動かないタイプの魔女だと知っているため、放たれた槍はすべて魔女へと刺さりました。

「出し惜しみしないわ」

魔女の側へと近づいたやちよさんは上空に再び槍をいくつも複製し、魔女へ向けて降り注がせます。

槍だらけとなった魔女は最後の反撃と言わんばかりに紫色の球体をやちよさんへ向けて放ってきました。

「当たって!」

私が放った矢で怯んだ魔女へやちよさんがとどめをさします。

「終わりよ」

やちよさんの攻撃で魔女は貫かれ、糸がほつれるように形が崩れていくと同時に結界も崩れていきました。

「やちよさん、やりましたね」

「ちょっと手強かったけど、ありがとう、助かったわ」

いつも通りに魔女を倒した私たちは、巻き込まれた人たちを保護してくれた子のもとへと行きました。

「お疲れ様です。魔女は倒せたようですね」

「あなたがこの人たちを保護してくれていたおかげよ」

結界の中で会った魔法少女は変身を解いた状態でした。パーカーに短パンというどこか杏子さんに似た服装をしていましたが、帽子をかぶっていたのでまた別の雰囲気に感じました。

「そうだ、これも何かの縁だから神浜のことについて教えて欲しいな。どこか落ち着いた場所で話したいし、カフェに行きませんか?お金は私が出しますよ」

「いろは、どうする?」

「ちょうど私たちもリラックスしたかったところなんです。なので、お言葉に甘えてもいいですか?」

「ありがとう、助かるよ」

近くのお店へ入り、改めてお名前を聞いた彼女は日継カレンさんといい、自動浄化システムに興味を持って仲間と一緒に神浜へきたとのことです。

私たちも自己紹介をして、神浜で最近まであったことを簡単に話しました。

「それにしても、魔法少女の話を一般人が多い中するっていうのも不思議な感じです

「そうですか、私たちはあまり気にしないではなしことが多いですけど」

「いやほら、キュゥべぇと話する時とか不思議ちゃんに見られそうで気にしないですか」

「キュゥべぇは神浜には現れないわ」

「うん?キュゥべぇならそこに小さいのがいるじゃない」

小さなキュゥべぇについては話せば長くなってしまうので軽く説明して終わりました。流石にういの記憶を持っていたとか、この子のおかげで自動浄化システムが維持されたとかは話していませんが。

「なるほど、ワルプルギスの夜を倒した後は神浜マギアユニオンという組織を作ってこの街の魔法少女達で自動浄化システムを広げようとしてるのですね」

「そうなんです。まだまだ発足したばかりですけど、よかったら参加しませんか。自動浄化システムを広げようとしているなら、協力しあったほうがいいと思うんです」

「協力ね。でも、あまり進展がないんでしょう?」

「そう言われると、何も言えないです」

「おっと!気を落とさないで、まさか悩んでいるっていうのはその件で?」

「そうなんです。考えることも多い上に何も進んでいないのが何だかリーダーとして情けないなって」

「いろは」

思わず本音を出してしまいました。初対面の、しかも神浜の外から来た魔法少女へと。

カレンさんはその後相談に乗ってくれました。

思い起こせば、ただ一方的に私とやちよさんで今後のことについて話していましたが、カレンさんは真剣に話を聞いて、助言等をくれました。

その助言の中でも、特別驚いたのが。

「キュゥべぇへ自動浄化システムについての情報を共有?」

「でもリスクが高いわ。万が一、彼らに何か手を加えられるようなことがあれば」

「ちょっと待って、キュゥべぇとの共存も掲げているんでしょ?いずれ共有するだろうに」

「実は、何度か会話しているんですけど、考え方が一致しない状態で。だから、今のところは自動浄化システムのことに集中しようってことにしてるんです」

「そういう方針ならいいけど。それじゃあ、そのキュゥべぇから神浜についてなんて伝えられたか教えてあげる

カレンさんによると、神浜の外の魔法少女へは自動浄化システムは手に入れられるものであり、中には奪おうとしてる人たちもいるということも知りました。

「現状と違った情報が広がっている。私たちが、しっかりとキュゥべぇへ伝えなかったから」

「魔法少女にとって、キュゥべぇっていうのは貴重な情報源。キュゥべぇは嘘をつかないけど、意識の違いがあれば彼らなりの推測で話が進んでしまう。それをみんなは真実だと思って行動しちゃうんです」

「迂闊だったわ。キュゥべぇが外部へどう伝えて回るのかまで考えていなかった。これは外から来た子たちに会ってしっかり説明しないと」

ガムシャラに解決方法を探して回っていた日々から、今回の話し合いで何処をどう探せばいいのか、どう対処すればいいのかが整理されていきました。おかげで、みんなにお願いしたいことも明確になっていきました。

しかし肝心の自動浄化システムの正体が掴めていないのは今後に響く気がします。その件については、私から仲間へも伝えておきます。組織に加わっても、そうじゃなかったとしても協力はしますよ」

私の心の中は少しだけスッキリしていました。きっと本音を気にせず話してしまったからかもしれません。

お金を出そうとしましたがカレンさんに止められてしまい、私たちはお店の外へと出ました。

「ちょっとは悩み事が解消されましたか?」

「はい、おかげさまで少し楽になりました」

カレンさんはその場を去り、私とやちよさんだけになりました。

「そう言えばやちよさん、さっきから静かでしたけど何かありました?」

「いえ、カレンさんなんだけど実はお店の中にいる間、一度も彼女から魔力反応を感じられなかったのよ」

「え、それってどういうことですか。さなちゃんみたいに気配を消せるってことですか」

「その可能性はあるかもしれないわ。でも一番の問題は、彼女の魔力パターンが分からなかったことよ。初対面で警戒していたかもしれないけれど、終始魔力を隠し続けたということは何か裏を感じるわ」

「考えすぎだとは、思いますけど」

みかづき荘へ帰る道中、私は自動浄化システムのことについて考えていました。

自動浄化システムはイヴへういの記憶を持っていた小さなキュゥべぇ”クレメル”が合わさったことで完成したことまでは知っています。

でもういはあの後自動浄化システムについては何も感じ取れなくなったといっていました。その代わり、神浜の雰囲気が温かい感じになったというようになったのです。

例えると、コタツの中にずっといるような、との事です。

つまり、今のところは自動浄化システムについてのつかみどころが全くない状態なのです。

いつかは実現できるからと言い続けるしかできないのがとても辛いのです。

もし神浜の外から来た魔法少女が納得してくれなかったら。

悩み事解決のために出かけたはずが、もっと考え込む結果となってしまいました。

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 1-5 血の理の不尽へピリオドを

中心部分ではアオの方かららんかが降ってきて人数が増えた状況となっていた。

「あんた、樹里さまの炎が弱いとか言ったな。ならば出し惜しみなしの最大火力をお見舞いしてやるよ。ウェルダン通り越して消炭になっても後悔するなよ!」

そう言って次女は火炎放射器へ魔力を溜めて最大火力で糸の魔法少女へ放った。炎は一次的に出るのではなく、数十秒出続けた。

周囲の鉄骨の表面は熱されて形を歪ませるほどの熱量だった。

撃ち切った次女の顔には驚きと恐れが混じったような表情が浮かんでいた。

「なんでだよ、なんで服が少し燃えるくらいで済んでるんだよ。おかしいだろ!」

「炎耐性なんて魔力でどうにだってできるさ。まあもちろん特性を知った上での話だけどね。ちょっとだけネタバラシすると消防隊員が来ている服を参考にしているよ」

「そうかい、ならば最大火力を何度も浴びせ続ければいいだけさ!」

「少し頭を冷やしてもらおうか。ここで魔女化されても困るだけなんだ」

そう言うと糸の魔法少女は次女の周囲を素早く動いては糸を何本も打ち出してきた。次女は躱すことしかできず、打ち出された糸が周囲の地面へ食い込んでいる様子を見逃していた。

そして糸の魔法少女が後ろに下がると周囲に打ち込まれた糸が次女を中心として収束し、次女を縛り上げてしまった。

「次女さん!」

「くそ、動きを止めるためにわざと外したってか。だがこんな糸、すぐに引きちぎって」

次女が力ずくで糸を切ろうともがくと、皮膚へ食い込んだ糸がそのまま肉を切り始めた。

次女は動きを止めるしかなかった。

「動いても構わないぞ。ただ、もがくたびに苦しむのは自分だけだ。長女さんの戦いが終わるまで静かにしていてもらうよ」

「次女さんを離せ!」

割って入ったのはアオの方から中心へ飛ばされたらんかだった。

らんかが糸の魔法少女へ武器で殴り掛かったが、あっさりと糸状の剣で受け止められてしまった。

「ピリカの方から降ってきたやつか。まあ数が増えても変わらない、まともに動けるのはお前だけだからね」

そう、一番人数がいたはずの中心地は今となってはらんかだけしか動けない状態となっていた。この時点で力量ははっきりしていた。それでも、私は引こうとはしなかった。

「あんた、ソウルジェムのあたりがゲームのコントローラーみたいな形してるね。さてはゲーム好きだな」

「っ!それがどうした!」

糸の魔法少女に払い飛ばされ、らんかがさらなる攻撃を加えようとするとらんかの目の前に脆めの糸の壁が出現した。

「ゲーム好きなら選択肢を選ぶこともあるだろう。いま形成した糸の壁は破ろうと思えば容易に破れる。しかしその糸のどれかはあなたの仲間の次女をさらに縛り上げる。これ以上縛られたら骨にまで食い込むだろうね。
さあ選べ、壁を破ってくるか、黙って長女の決着を待つか」

選択の余地なんてなかった。感情に流されて仲間のことを気にしないほどらんかは非情じゃない。らんかはもともと優しい心は持ち合わせていると次女からは聞いている。

らんかはその場で踏みとどまり、武器を下ろしてしまった。

「私だって、敵わないなんてわかってるよ。仲間を痛みつけて前に進むなんて、もう嫌なんだ」

「ならば私も攻撃は加えない。あとはあっちの決着がつくかだけだ」

ガツン、ガツンと確かに何かをつぶす感覚は伝わる。しかし目の前で認識できる様子とは異なっていた。

何度殴りつけようと、何度蹴り飛ばそうとも、小さな魔法少女には傷一つなかった。

彼女の周りにある結界を取り除かなければ、そもそも攻撃なんて通らないとそう考えるのは容易なはず。

それでも私は武器を振り回し続けていた。

頭の中でこだまするかつて聞いた叫び声、そして内側から湧き出る感情に流されるがままに私の体は動き続けていた。

小さな魔法少女が何かを語りかけてこようと、私には関係ない。

ただひたすら怒りに、怒りに、怒りに。

混濁した思考の中、突然今までにない感覚が私を襲った。

手元に伝わったのは、柔らかい何かに食い込む武器の感覚。

目の前を見ると、私の一撃が小さな魔法少女の脇腹に食い込んでいた。

「無茶しやがって」

中心地からそんな言葉が聞こえたあと、小さな魔法少女は私に生えたツノを握りしめた。

「やっと正気に戻ったか、修羅の門でも開いて戻ってこないかと思ったよ」

そう語る小さな魔法少女は、体と口から血を垂らしながら手の中に何かを持っていた。

「私のソウルジェム!」

「そんな憎しみの象徴みたいな場所にぶら下げるから制御できなくなるんだ、どうだ、周りの状況が見えるようになったか」

私以外のみんなはすでに戦意を喪失していた。それどころか私の狂乱っぷりに怯えを感じているものもいた。

そして私の頭の中には突然、周囲を気にせず、ただ相手を殺そうと暴れる私の様子が第三者視点でフラッシュバックした。

「全く、シオリが体で受け止めてなかったらあんた完全に帰ってこれなくなってたよ。それに、あんたが、ここまで正常じゃないことも、うっ」

シオリと呼ぶ小さな魔法少女は膝をついて吐血してしまった。

彼女の脇には私の武器と同じくらいのくぼみができていた。きっと骨も何本か砕けてしまっただろう。そんな様子を見せる彼女の前で私は追撃を加える気にはならなかった。

「これ以上攻撃しないのは懸命だ。ここで感情のまま動けば、あんたはいよいよ居場所を失う。感情のまま動き、皆の首を絞め、破滅へ進み続けた原因はいままさにあんたが体現させた」

シオリという魔法少女は重傷にも関わらずよく喋った。彼女が発する言葉が重なるごとに私には別の感情が襲いかかってきた。

「怒りに任せてキュゥべぇを追い出し、怒りに任せてその代償を神浜という街に押しつけに来た。そして怒りに任せて魔法少女が救われる可能性を潰そうとしている。だからシオリは止めたのさ、あんた達を!
正気に戻りなよ、な」

シオリはすでにまともに立っていた。血も止まっていた。

しかし私の中では後悔と自負の念がグルグル回っていた。なにもかも、私のせいなのかと。

今まで怒りを原動力としていた私は、この一瞬で原動力を全て奪われたかのように抜け殻だった。本当に、一瞬で何かが消えてしまったかのようだった。それは大事だと思っていた、何か。

その隙間に入り込んできたのは、死にたいという感情だった。
平穏を求めていたのに、求めれば求めるほど破滅へと導いてしまうのなら、私は。

「私を殺しなさい。私がここまでの悲劇を招いたというのであれば、早く殺しなさい!じゃなければ私は、同じことを繰り返してしまう」

「なに、言ってるんだ長女さんよ」

中心地から聞こえてきた声は糸から解放された次女だった。

「私はあんたのものになったはずだ。死ぬのが責任逃れって言うならば、私だっていまここで死ぬよ」

「ひかるも同じっす。長女さんがいなきゃ、ひかるは生きてる意味がないっす」

「みんなに残されたら私もどうしようもなくなっちゃうからね、みんなが消えちゃうなら私もともに行かないとね」

私の死は、みんなの死であることを思い知った。こんなにも、みんなは私を中心として動いてくれていた。

「そう、そう言われると死に辛くなるわねぇ」

シオリという魔法少女は座り込んだ私と目線を合わせるように目の前へしゃがみ込んだ。

「呪縛から解放されたわけではないだろうが、あんたは生き続けるんだろ」

そして彼女は私の前に私のソウルジェムを差し出してきた。

「受け取りな。あんたがまだ生きたいと思うならね」

「当たり前よ」

私は静かに私のソウルジェムを手にとった。

そして私は立ち上がってみんなに伝えた。

「一旦引くわぁ。今後のことは、仮の拠点に戻ってから考えましょう」

二木市の魔法少女たちは笑顔でうなづいた。

傷だらけの次女の肩を持ち、その場を去ろうとすると、三女の方で戦っていた魔法少女が私たちに話しかけてきた。

「あの、これ持っていってください」

手の中にあったのは5つのグリーフシードだった。

「こんなにたくさん、襲い掛かったのはこっちっす。そんな大事なもの受け取れないっす」

「好意は受け取るものよ、貰っておきなさい」

「なら、いただくっす」

私は次女の肩を持ちながら立ちはだかった三人の魔法少女の方を向いた。

「今回の件である程度頭は冷えたわぁ。それでも神浜には目的があるから引かない。そしていずれは、あなたたちと決着をつけるわぁ」

「そうか、ならば名前を伝えておこうか。私は日継カレンだ。楽しみに待っているよ」

「シオリのことはシオリって覚えてくれればいいよ」

「私はピリカって言います」

「私は紅晴結菜。私のことだけ覚えておけばいいわぁ」

「そうか、では結菜達、またいずれ会う日まで」

「イライライケレ。お大事に」

こうして私たちの目的は神浜の魔法少女へ苦しみを与えるという目的から、魔女化しないシステムを手に入れるという目的が最優先順位となった。

あのシオリという魔法少女が言っていた通り、私は怒りに飲まれて抜け出せなくなっていたのかもしれない。

そして私の威圧に流されるがままだったみんなのまともな声も聞くことができた。

あのまま進んでいたら私たちはどうなっていたのだろう。

そう考えを巡らせている中、三女からは対面していたピリカという魔法少女と情報交換を行っていたという。

まず魔女化しないシステムというのは決して手に取れるものではないと伝えられた。

しかし彼女たちは神浜にある魔女化しないシステムを世界に広げる算段が整いつつあるという。

そして彼女たちの本当の目的は、人間の考え方を崩壊させること。

魔法少女による魔法少女らしい魔法少女のための世界を目指しているという。

いずれは、私たちも必要になるとそうも言っていたらしい。

「いいじゃない、皆の傷が癒えたら向かうわよ、神浜へ」

私の中にこだましていた魔法少女の悲鳴は日に日に小さくなっていた。何故だろうか、今まで治る様子なんてなかったのに。

もしかすると、ソウルジェムを奪われた時に何かされたのかもしれない。

だとしても、聞こえなくなったとしても、悲劇が繰り返されたことは忘れない。

忘れずに生きていくことが、きっと私にとっての償いなのかもしれないから。

 

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 1-4 血の理に添える不尽

とても長い長い悪夢が続いたかのようだった。

先輩がいなくなり、二木市をまとめようと動いたものの魔女は減り、多くの魔法少女が命を落とした血の惨劇が起きてしまった。

そんな中わかった神浜という存在。

私たちが命がけで生き残ろうという中、魔女をあっちこっちから集めては魔女化しないシステムを持っているということも知っている。

しかし、神浜の魔法少女は知らないだろう。二木市という場所を、そして、PROMISED BLOODという存在を。

私たちは数人の他の魔法少女を連れて計10人でキュゥべぇから神浜への最短ルートを聞き、二木市で待つ仲間達のために神浜への到着を急いだ。

本来ならば20人を超える大所帯となるはずだったのだけれども、今回の件は長期にわたって神浜に滞在することとなる。中には家族に心配させたくない、学業不振で今後のことを考えてと個々人の意思を尊重して無理な同行は避けるよう伝えた。

その結果、半数近くの子たちが二木市へ残ることとなった。グリーフシードの蓄えはあるし、少ないけれども魔女を定期的に狩っていれば3か月以上は大丈夫でしょう。

だからこそ、私たちは二木市で待っている彼女たちのためにも結果を持ち帰らないといけない。

早く神浜へ着くことを考え、夜間でも移動することが多かった。もちろん、皆の体調を考えながらだけれども、皆は了承してくれた。

そして今夜も夜間の移動を行っていた。

いつもと変わりなく、テレパシーで会話を展開しながら。

だからあのゲームは不意打ちが多くて樹里さまに合わないんだよ]

[そりゃそうだよ。あのゲームは死にながら不意打ちポイントを覚えていくスタイルなんだから]

[なんだよ白黒わかりやすいゲームじゃなくて真っ黒じゃないか!]

[でもやってる時はスカッとしたでしょ]

[後がもやるから嫌だね]

[次女さんはこだわりが強いね]

[全く、今夜も賑やかねぇ]

[そうっすね]

工場のような廃墟に差し掛かった頃、いつもの夜を壊すかのように、1人の少女が話しかけてきた。

「やあ、団体さんでどこへいくっていうんだい?」

少女の呼びかけに一度動きを止めはしたけれど聞かなかったことにして先を進もうとした。

しかし、いきなり魔力反応が強くなって進もうとした先に糸の壁が出現して行く手を阻んでしまった。

「無視とはひどいじゃないの。少しは話に付き合ってくれてもいいんじゃないの」

「どういうつもりなのぉ」

「そうだぞ、樹里さまの前に無断で立ちはだかるとはどういう肝を据えてんだ」

「そうだな、神浜の魔法少女、と言ったら少しはまともに聞いてくれるか」

この魔法少女は神浜のことを知っている。そして、神浜の魔法少女と言った。

私は彼女の話を聞かざるを得なくなった。

「あなた、神浜の魔法少女?」

「いや、あんたらと同じ神浜に向かう魔法少女だ」

「なら私たちは用はないわぁ」

「私にはあるんだ。神浜の魔法少女をぶっ飛ばそうとしているお前達、二木市の魔法少女を止めるためにね」

私は思わず驚いてしまった。二木市のことを知っていて、しかも私たちの行動目的の一部を知っている。どこから情報が漏れたというの。

「おい、その話誰から聞きやがった」

二木市の子たちがソワソワし始めていた。そう、私たちはかつてこのような状況を何度も味わった。誰が情報を漏らしたという探り合いを。

「そう内部でざわつくんじゃないよ。キュゥべぇから聞いたんだよ。血の気の多い魔法少女達だから気を付けろってね」

「あの白いの」

「でも、キュゥべぇが私たちのことをそんな風に思っているなんて」

「でもあなたはそれしか知らない。私たちの本当のことを知らずに、上辺だけの情報だけで判断して欲しくないわぁ」

私が話し終わるかの間際に私たちを中心として稲妻が走る広い結界が当たりを覆い尽くした。

「な、なに!」

「二木市。昔からテリトリー争いが絶えないごく普通の街だが、ある日を境にキュゥべぇが街中から追い出され、魔女を求める血の惨劇が発生した。次々と魔法少女と魔女の数が減っていく中、ある情報をきっかけに竜ヶ崎、虎屋町、蛇の宮のリーダー達と1人の従者が契を交わした。
その行動目的は神浜の魔法少女へ同じ苦しみを味合わせると同時に魔女化しないシステムを奪って二木市に持ち帰ること」

そう語りながら私の行方を阻んだ魔法少女の後ろから2人の魔法少女が現れた。

二木市のことを詳しく話した小さな魔法少女からは大きな魔力を感じられた。

「よく知ってるわねぇ。それならわかるはずよ。私たちがどれほど苦しんできたかも、神浜の魔法少女へ抱く感情も」

「確かに縄張りの魔女が減った原因は神浜の出来事かもしれない。だがそこまでの軌跡にはお前達が招いた結果という事実がある」

「なにを言っている」

二木市からキュゥべぇを追い出すなんて愚行を犯した時点でお前達の惨劇は決まったものだと言っているんだ。魔女の元となる魔法少女を生み出す存在を追い出せば自然と魔法少女の数が減る。そんな中で魔法少女を殺し合っていたら魔女が減るデフレスパイラルになるに決まってる」

「自業自得だと、そう言いたいのねぇ、あなたは」

「そうさ。それに律儀にグリーフシードは孵化させていなかったとみる。孵化させときゃ少しは飢えもしのげただろうにさ」

「二木市の人たちを餌にしろっていうの!」

「ふ、神浜の魔法少女をぶっ飛ばそうとしているのにその発想が出るとは思わなかったよ。これじゃ邪悪しかない侵略者だね」

ずっと黙って聞いていたけど我慢ならなかった。私たちの歩みを、痛みを自業自得と言う言葉で片付けたことを。

「私たちのことを愚弄したわねぇ。それだけのことを言われてしまったら、神浜の魔法少女ではなくても容赦しないわ」

「あら、怒っちゃったか。話だけで済めばいいと思ったんだけど」

「ただ煽ってるようにしか聞こえなかったんだけど」

「事実を伝えただけさ」

三人の魔法少女達に見覚えのある火力の高い炎が広がった。相手はかわしたけれど、彼女達がいた場所は火の海となっていた。

「やろうってんなら早く始めようぜ。樹里さま達を怒らせたからにはベリーウェルダンじゃ済まないぞ」

「そうか、なら始めようか」

1人の魔法少女が両手を振り上げると私たちの集団は3カ所に分断されてしまった。しかしその分断は偏っていて、私と三女が孤立して他のみんなは中心に残った状態となっていた。

「さあ、一本角の魔法少女さん、シオリが相手してあげる」

小柄の魔法少女が私の前に立っていた。周囲に展開された結界を形成したのは間違いなく目の前の魔法少女

行使する魔力の強さは間違いなく相手が上。それでも、仲間達のためなら。

「いいわぁ。私たちの歩みを妨げたこと、後悔しなさい」

他の場所でもそれぞれ戦いが始まろうとしていた。

「戦力を分断するかと思ったが、長女と三女、らんかが外にはじき出されたくらいか。分断は失敗したようだな」

「なに、想像通りの思惑さ。まとめてかかってこい」

「次女さん、私たちが先駆けます」

二木市の魔法少女達が1人、また1人と糸を使う魔法少女へ攻撃を加えるが、あっさりと防がれ、躱されている。

「ひかるは長女のもとへ迎え!その方がお前も戦いやすいだろ」

「恩にきるっす!」

ひかるは糸の壁を切り裂いて私の元へ向かおうとしたみたいだけど猛攻を受けているにもかかわらず糸を使う魔法少女はいとも簡単に遮ってしまった。

「そっちは場外だ。大人しく中心地で闘ってもらうよ」

中心地は激しい戦いが行われている中、三女の方は静かだった。やられたというわけではないけど、戦っているという様子もなかった。

「あなたはあまり戦いたくないという表情をしていますね」

「できれば戦うことなく先に進みたかったんだよねぇ。次女さんが仕掛けちゃったから仕方がないけど」

「実は私もあなた達とは話し合いで終わればなと思っていました。このままわたしの話に付き合っていただければ、刃を抜くことはしません」

「それでも、私はPROMISED BLOODの三女。ただ黙って見ているわけにはいかないんだよ」

三女は武器を手に取り、攻撃姿勢に入った。

「そうですか。したっけ、足止めさせてもらいます。アペ、刃となって!」

それぞれ三カ所で戦いが始まり、動きが激しいのはやはり中心地だった。

「お前達下がれ!」

次女の呼びかけを聞き、二木市の魔法少女達は下り、糸の魔法少女がいる場所は火の海となった。

そんな火の海の中、立ち続ける魔法少女の姿があった。

「おかしいな、加減はしなかったはずなんだがな」

「いい炎ではある。だけど世界は広い。お前以上に燃え盛る炎はいくらでもあるさ」

そう言って糸を束ねて辺りをなぎ払うと一瞬で炎は消えてしまった

「なんてやつだ」

「こうなったらひかるが切り開くっす」

ひかるはサーベルを持った手を高々と挙げるとどこからともなくサーベルを持った無数の集団が現れた。

「さあひかる軍団!目の前の敵を倒すっすよ!ゆけ!」

ひかるの号令を合図にひかる軍団と呼ばれる集団は糸の魔法少女へ襲いかかった。

しかし、糸の魔法少女を取り囲んだところでひかる軍団の歩みが止まってしまった。

他の二木市の魔法少女達は戸惑っていた。

「どうしたんすかみんな!早く攻撃するっすよ」

「面白い攻撃だ、魔力で生成する軍勢というのは。だが所詮は魔力で動く人形だ」

ひかる軍団は向きを変え、刃をひかる達へと向けた。

そして悪そうな顔でにやけている糸の魔法少女は手を前に出して攻撃の合図を出すとひかる軍団は二木市の魔法少女達を襲い始めた。

二木市の魔法少女の悲鳴が響く中、ひかるが必死に指示を出すものの、召喚者へ反応する軍勢はいなかった。

そしてついに軍勢は私にも襲いかかってきた。その瞬間のひかるの顔には煌めきなどなかった。

そんな暴走した軍勢にはチラチラと糸のようなものが見えた。

軍勢に襲われた二木市の魔法少女達はほとんどが切り傷をつけて倒れていたものの、ソウルジェムは無事だった。立っていたのは三姉妹とひかる、そして三女の方にいたらんかくらいだった。

そして軍勢は召喚主へ一斉に襲いかかり、召喚主が気絶すると同時に消えて行った。

「なんでこっちにだけ来なかったの」

「それはカレンのお節介ですよ。こちらはこちらで、お話ししているだけでしたからね」

「なにやってんだよ三女さんは!」

「らんか」

三女の方にいたらんかは三女に加勢はしていたものの、全く歯が立っていなかった。

「あなたも静かにしていただければ、変に傷つくこともないのに」

「はっぱかけたのはそっちだろ!」

らんかは炎の剣を持つ魔法少女へ立ち向かって入るものの、攻撃の数々を弾かれてしまっていた。

「あなたは血の気が多い方へ行った方がいいですね。カンナ!貫くよ」

炎の剣を持つ魔法少女は雷で形成された槍を呼び出すとらんかへ何度も突き攻撃を行い、薙ぎ払った勢いでらんかは中心の戦闘区画へ飛ばされてしまった。

らんかが攻撃を加えてから目の前の魔法少女がらんかを吹き飛ばしてしまったのは一瞬の出来事だった。

三女と戦っていた彼女は決して本気ではなかった。

「さあ、お話を続けましょう」

三女の方では戦闘は行うもののお互いに何かを話し合っていた。その会話内容は私たちの戦闘音で聞こえなどしなかった。

小さな魔法少女は私の一撃一撃を受け止めては平気な顔をしていた

「随分と固いわねぇ」

「固くはないよ。衝撃を吸収してるだけだよ」

小さな魔法少女が私に向かって周囲の瓦礫を浮かばせてぶつけてきたけれど、そのぶつける対象は彼女の味方である糸の魔法少女へと変わった。

「おーい、こっちに巻き込みかけるんじゃないよ」

「奪った軍団ぶつけてきたくせによく言えるわね」

相手のやりとりは楽しそうに行われていた。私たちは必死だというのに、戦いの場だというのに平気に笑顔を見せられる余裕は戦い慣れていないと行えないこと。

「さて、対象変換とは使いづらい能力を持っているようだね。そういうのは対応しやすい」

そう言うと、小さな魔法少女を再び周囲の瓦礫やスクラップを浮かばせるとどこを狙うでもなく私の周囲へ投げ飛ばしてきた。私は武器で振り払ったものの、スクラップの破片などが体の各部へ切り傷をつけていった。

「点で変えられるなら面でやれば対象もなにもない。相手が悪かったね」

「やられる前に潰すまでよ」

悔しいけれど、私は相手の弱点を見抜けにいた。雷の力というのは確かだけれど、避雷針なんてものが役に立たないような使い方をしていて対処のしようがない。

他と協力できればいいんだけど、みんな目の前の敵で精一杯でそれどころではない。

衝撃吸収とは言っていたけれど、あれは周囲に貼られた結界と同種のもの。ならば最悪は、ソウルジェムが濁りきるよう、負担をかけ続けるしかない。

「二木市の魔法少女のリーダーさん、あなたなんでキュゥべぇを追い出すなんていう暴挙に出たの。魔法少女の真実を知ったらキュゥべぇへ八つ当たりしたって何も生まなかっただろうに」

「それならあなた達の方が不思議だわぁ。人ではない状態にされて、なおかつ戦う魔女がかつて魔法少女だった存在だと知った時、最初から教えてくれなかったあいつを恨まないなんて」

「悪いけど私は知ったところでどうとも思わなかったね。願いが叶ったこと、それで十分だと思っただけ」

「あなたは自分のことしか考えていないのね。大切な仲間が目の前で魔女になった瞬間なんて、目にしたらすぐ考えが変わるわよぉ」

「そう、どうやらあなたには八つ当たり癖があるようね。とりあえず根本だけを見て、そこから丸ごと刈り取ろうとする。根元を刈り取ればその木は朽ちていくしかないと、そう考えないのかしら」

「なにを言われようと変わらない。私たちの街を苦しみに追いやった神浜へ想いをぶつけなければ私たちは仲間達の悲鳴を鎮めることができない。だから、道を開けなさい!」

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 1-2 頼れる白い情報屋

神浜は新興都市というだけあり、高層ビルや奇妙な形状の建物が多い。

また、その代償なのかそれともワルプルギスの夜が到来した影響なのか建設途中であったり、人気がなかったりという場所も多いことがわかった。

私たちは3カ所ほど拠点として利用できそうな廃墟を確保し、そのうちの一カ所に眠り続ける緑髪の少女を保護した。

「さて、早速計画がダメになっちゃったけど今後はどうしようか」

「なに、ワルプルギスの夜なんてやろうと思えば再現することなんていくらでもできるさ。方法は別の話だけどね」

「わたしとしてはあまり気が進まない方法なんだけど」

「なら、少しこの街を知るための調査を行わない?ワルプルギスの夜を倒した魔法少女、興味があるんだよねぇ」

「シオリ、喧嘩を売るとか考えないでよ」

「相手の気分によるさ」

「自分の気分を抑えて欲しいんだけどね」

「私は神浜中を回ってみるけど、シオリとピリカはどうする?」

話し合いの結果、シオリと私は神浜の調査、ピリカは見滝原へ向かうことになった。

一先ずの活動内容は決まったけど、問題は見つけた緑髪の魔法少女についてだった。

「この子どうしようか、せっかくだし知ってる人がいないか聞き込みしてみる?」

「イタズラに探るのはやめておこう。この子のテリトリーで敵対する相手に話しちゃったらそれはそれで面倒だし」

ピリカはしばらく緑髪の魔法少女を見つめていた。

「ねえ、変わりばんこでこの子のそばについててあげようよ。誰もいない時に見つかって死体扱いされたり、魔女化したりしちゃったら保護した意味ないでしょ?」

「シオリが初日は見守っててあげる。2人は情報収集とグリーフシードをよろしくね」

「シオリ、イタズラしちゃダメだよ」

「同性愛の趣味はないんだけど」

「なんでそっち方向に捉えたの?!」

廃墟の中で響く笑い声。いつもなら周囲を警戒して躊躇するところだが、珍しく人気が全くない場所であるため思い切って感情を表に出せる。3人揃って笑い合うのも久々ではないだろうか。

「それより私は布団が欲しい。ふかふかな中で眠りたいよ」

「まだ睡眠なんてことしてたの?魔法少女なんだから必要ないでしょ?」

「わたしは眠りたいの!布団で横になっている時が一番ゆっくりできるんだから」

「こういう街だと、買わなきゃ手に入らないと思うよ」

「む、したっけ災害にあった建物から調達するもん」

ピリカはムッとして廃墟の2階へいってしまった。ピリカは極度に金銭を使いたがらない。というのも、彼女の過去に関係があることが原因なんだけどね。

「全く、ピリカのお人好しはいつまでも治らないね」

「いいじゃない、同じくらい絶望しても私たちが捨てたものを持ち続けている。私たちよりは強い子だよ」

「人間らしい振る舞いが、果たして強いと言えるのかな」

価値観が全く違う私たちがここまでこれたのも、共通の最終目的があるから。そして一緒に人の嫌なところを見てきたから。

成長途中の街というのは格差が生まれがち。この街の人々も大きな闇を生み出している気しかしなかった。

「さて、シオリはちょっと外の見回りでも行ってこようかな」

「休める時くらい休めばいいのに」

「カレンは知ってるでしょ?シオリが寝られないことくらいはさ」

シオリは魔法少女になってから一睡もできなくなったらしい。本人自身、何度か寝ようと試みたものの、結局は寝られずに朝を迎えてしまったという。

そしてシオリは、その頃から人間であるという考えを失い始めたという。

2人ともどこかへ行ってしまったので私は緑髪の魔法少女のそばで休むことにした。

 

シオリたちは神浜という街について知らなさすぎる。

シオリの考えるところではどうもこの街は魔力の濃度が濃すぎる気がする。

まあ、魔力といえばその専門家について聞けばいいよねということでキュゥべぇを探していたんだけど、一向に姿を見せない。

「あいつ何個体もいるくせに姿見せないはずがないんだけどなぁ」

そう呟いていると神浜から少し離れた場所でようやくキュゥべぇと会うことができた。

応答しなかった理由を聞くと、そもそも呼びかけ自体が今いる地点で呼びかけていなければ一度も通じていなかったらしい。

「君には伝えていなかったけど、この神浜にはマギウスが仕掛けた結界のせいでボクたちは神浜に干渉できない状態なんだ」

「マギウス?」

マギウス

神浜に存在した魔法少女組織のトップのことであり、神浜へワルプルギスの夜が現れたのはマギウスの仕業とのこと。

そのマギウスがこの神浜へやらかした重要なことがあった。

「魔法少女が魔女化しないシステム、そんなものをマギウスが作り上げたっていうの?」

「ボクは神浜の魔法少女に聞いただけだけれども、ドッペルという現象を見た際に存在は疑わなくなったよ」

ドッペルというのは、魔女化するはずの魔法少女から出現するものらしく、これを出した魔法少女のソウルジェムは浄化された状態になるという。こんなデタラメがこの街にあるとは。

「そんな魔法少女なら誰でも飛びつきそうな情報、もちろん、持ち前の営業力を使っていろんな魔法少女に言いふらしてるんでしょ」

「営業という例え方はよく分からないけど、確かにこの国の魔法少女たちへ伝えてはいるよ。その方が、魔女化しないシステムについて知るいい手段になるだろうからね」

「ところで、魔女化しないシステムについてどう伝えて回ったの?

ボクは魔女化しないシステムについては手に取れる存在だと思っている。干渉し、観測が可能であれば制御ができる。この考えについては聖遺物を扱ってきた君たちの方がよく理解しているんじゃないかな?」

「なかなか誤解を生む伝え方をしてくれるじゃないの。持ち出せるかも定かではないのに」

「ボクは考えと事実を伝えただけさ。それをどう解釈するかは君たち人間次第だよ」

「シオリたちは、魔法少女だよ」

キュゥべぇと会話して神浜について大方理解ができた。

そして、外部から大勢の魔法少女たちが移動してきているということもわかった。

神浜での不毛な混乱は避けるために、まずは外へ目を向ける必要がある。

中には血の気の多い集団もいるらしく、そいつらの来る方向はキュゥべぇから聞き出しているのでまずはその対応が必要だろう。

そしてもう一つ気になることをキュゥべぇに聞いていた。

「神浜にあふれる魔力?ボクが干渉できたのは数日だから正確な回答は返せないんだけど、その魔力とやらは魔女化しないシステムとか神浜に貼られている結界が影響しているんじゃないかな」

キュゥべぇによると、キュゥべぇを出禁状態にしている結界は魔力を閉じ込める性質もあると考えているらしく、その結界がある限り神浜には濃度の高い魔力が漂い続けるだろうとの見解。

この情報は好機だった。既に存在している魔女化しないシステム。そしてそれを世界中に広げればいいという単純な考え。

これを実現するためにはもっと神浜を、神浜の魔法少女を知らないといけないと分かった。

「ありがとう、キュゥべぇ。おかげで今後の方針が明確になったよ」

「本当かい?ならばボクからもお願いがあるんだ」

「お願い?」

「魔女化しないシステムについて何かわかったら、ボクたちにも教えて欲しい。きっと君たちのためにもなるはずだよ」

「いいよ、すべてがわかったら教えてあげる」

キュゥべぇとの情報交換を終え、特になにもなく拠点へ戻るころには朝日が登っていた。

緑髪の魔法少女を見守っていたカレンには大雑把に夜にあったことを伝え、ピリカが降りてきた後、具体的にキュゥべぇと会話した内容を伝えた。

「もう既に魔女化しない仕組みが出来上がっているなんて」

「しかしそうなると血の気が多い集団とやらが気になるね」

血の気の多い集団というのは2グループに分かれるという。

まずはかつてこの都市で大暴れしたマギウスにつき従えていたマギウスの翼の残党である集団。なにやら最近は何処かに集まって何かを企てているらしく、行動動機によっては無力化する必要がある。

もう一つのグループは二木市という街から来る神浜絶対許さないを掲げる魔法少女たち。なにやら神浜に魔女をとられたせいで魔女不足になってひどい目にあったというが、その経緯を聞くとかなり無理がある考え方だった。

「ならばその血の気の多い奴らを鎮めに行こう。そのまま放っておくと今後の私たちの障害になるかもしれないし」

「二木市の魔法少女たち、テリトリー争いが激しかったらしいから、一番被害をもたらしそう」

「神浜の魔法少女を殺す勢いらしいからね。マギウスの翼とやらよりはよっぽど危険だろうね」

「んじゃ、決まりね」

神浜の魔法少女について調べる予定だったが、二木市から来る魔法少女の対策を行うことから始まった。

しばらく拠点を離れることになるため、緑髪の魔法少女がいる場所にだけは無意識化の結界を張っておいた。この結界はシオリが意識の遮断について調べた結果、人払いの魔法に拡散する魔力を上乗せすることで魔力反応を検知できないようにできたことから生み出した結界。

なんか神浜にいれば魔女化はしないらしいので放っておくことにした。ドッペルとやらで拠点が壊れていなければいいんだけど。

 

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 1-3 触れるは代償ありきこと

二木市という場所は神浜から遠い場所にある町で、到着には時間がかかるらしい。しかし、キュゥべぇの奴が最短ルートを教えたらしく、地図で予測するよりは早めに到着する可能性があるという。

それなりの大所帯で動いているらしく、足並みをそろえるとなると案外地図から割り出した通りの期間で到達するのかもしれない。

なんて考えるならば、最短ルートで通らざるを得ないルートを張るのが手っ取り早い。

そのルートとなる場所へ到達した頃、淫靡な姿をした魔法少女に会った。黒肌の魔法少女と話すと妙な力を使えるという。

「魔力を調整できる調整屋、か」

「せや、うちは戦うことができんくても魔法少女たちの魔力を調整するっちゅう力を使ってサポートしてるんや」

「その調整っていうのをやるとどうなるの?」

「普段は使えていない魔力を効率よく使えるようになるんや。動きも良くなるし、おまけに感も鋭くなるっちゅういいことだらけや」

「その対価ってものも、勿論あるんだろ?」

「勿論や。報酬として、グリーフシードを要求させてもらうわ。言ったやろ?うちは戦えんって」

「なら、試しにシオリのソウルジェムを調整してよ。ちょっと興味あるからさ」

「ええよ、んじゃ、建物の中に入りいや」

調整屋という魔法少女に建物の中とは言われても、辺りにあった空き家のうちの一か所であり、つい昨日まで誰かが住んでいた痕跡があった。

「あの、この建物って家主がいるんじゃ」

「心配せんでええよ、なんせここの家族は昨日魔女に喰われたんやから」

ここら一帯を暴れ回った魔女がいるらしく、運悪く見つける魔法少女がいなかったため、みんな犠牲になってしまったという。

「だとすると、警察が動かないのは結構な怠慢ね」

「さ、そこのソファーに寝転がって。勿論、上半身裸になってな」

「裸に!?」

周りが少し静かになった。

「ピリカ、ジョークだよ」

「んんん」

「あらあら、茹で蛸みたいになってかわええな。でも、ジョークを真に受けてはあかんで。ま、うちとしては脱いでもらってもええけど」

「いいからはじめて頂戴」

「そしたら、落ち着いて深呼吸や」

そう言いながら調整屋はゆっくりとシオリのソウルジェムを触った

触った瞬間、シオリのソウルジェムから紫色の閃光が走り、調整屋は頭を抱えて苦しんでいた。

「なんや、頭に流れ込むこの情報量は」

あんたに流れるはずの記憶とやらに大量の情報を載せてやったんだよ。調整するとか言いながらシオリの記憶へ土足で踏み込むとはいい度胸ね!」

「シオリ!落ち着いて」

「す、すまんかったな記憶を見てしまうってとこを説明し忘れて」

「そうだな、人の記憶を見てしまうってのは私たちにとってはよろしくない。
でも、それ以上に、魔法少女の潜在能力を出すために魔力を掻き回すっていうのは、もっとよろしくない!」

カレンは糸で調整屋を外へ叩き出し、足を思いっきり貫いた。悶え苦しむ調整屋を前にピリカが止めに入った。

「ちょっと2人ともなにやってるの!そこまでやる必要ないじゃない」

「いや、こいつの能力は神浜へ大きな禍をもたらす種だ。こいつの調整が二木市の魔法少女や、血の気の多い奴らへ渡ったら神浜は混乱して計画どころじゃなくなる」

「なに、するんや」

「選ばせてやる。ソウルジェムだけ残されるのと、ソウルジェムだけ砕かれるのどちらがいい」

「どちらもゴメンや。あんたらみたいな超過激な魔法少女を見るのは初めてや」

「そうか、ならば第三の選択肢にするしかないな」

苦しそうな調整屋のソウルジェムを探し、その魂の結晶に対してシオリは指を伸ばした。

「お前がやっている調整とやらを試させてもらうよ」

調整屋のソウルジェムに触れるとソウルジェムの内部は火花が散るように光の粒子が激しく走り始めた。それと同時に調整屋は獣のように叫び声を上げながらのけぞっていたが、シオリは調整の方法を探るのに夢中だった。

なかなか相手のソウルジェムに溶け込むっていうのは難しいねぇ。しかし手元の魔力を変えて相手の魔力パターンに合わせてみたらどうなるかな」

溶け込むというのは願いによって得られる性質によるものだと予想はしていた。溶け込むという表現をどのように再現するのか試行錯誤し、自分の魔力を少しだけ相手も魔力に馴染ませてみるとノイズだらけではあるが、記憶のようなものが映し出され始めた。

映し出されたものはなにがどうなっているか全く分からなかったがかろうじて声はなにを伝えようとしているのかわかるくらいだった

「これは何人か使って試すしかないね」

「シオリ!」

ピリカの大声で我に帰ったシオリは調整屋のソウルジェムから指を離した。その一瞬でカレンは調整屋のソウルジェムを糸で貫いていた。

「シオリ、そこまでだ」

調整屋は糸が切れた人形のように横たわっていたが、見た目は口から泡を吹き出していたりとひどい見た目だった。

ピリカの方を見ると、手元で魔法を発動しそうなところを抑えていた。

そして魔力を治めるとその場に座り込んで泣き出してしまった。

「ピリカ、よく我慢したな」

「なにがあったの」

「話は後だ。わたしはピリカを空家で休めてくる。シオリはその死体の処理をお願い」

なにがあったのか分からないままシオリは死体へ雷をいくつも当てて燃やした。人っ気がない住宅街だ。死体が一つ燃えようとこの異臭に気づく人間はいないだろう。

「それにしても人気がなさすぎるね」

ゴーストタウンとなった住宅街から少し離れて大通りへ出てみると2台ほどのパトカーとバイクが止まっていた。どちらもパトランプが消えていてエンジンも止まっていた。

妙だな。

ゴーストタウンへ戻るとカレンが空き家の前に立っていた。

「ピリカになにがあったのさ」

「シオリ、用量ってのは少しわきまえて行った方がいい。何かに夢中になるとやりすぎるのは既に知っているが、今回は酷かったぞ」

「あれぐらいのこと今までもやってきたでしょ。聖遺物を体内に潜めているやつから抜き出そうとしたときだってあれぐらいの叫びはあげていた。ピリカだって何度も立ち会ったはずだ」

「違うんだ、そうじゃない。今回やばかったのは調整を受けていた調整屋の見た目がピリカのトラウマに引っ掛かったんだよ」

少しピリカの過去を思い起こしてみるが、そもそも調整屋の状態がどんな感じだったのか全く記憶になかった

「調整を受けていた調整屋は絶頂を繰り返すかのように仰け反り、喘ぎ続けていた。ここまで伝えればもういいだろ」

ピリカは過去に凌辱され、何人も同じ目にあってきた子たちに囲まれていた時期があった。本人の中で最も人間嫌いを加速させた時期であり、ソウルジェムの奥底まで刻まれた光景であり、それゆえにトラウマになっているという。

「そう、そんな感じだったの」

「ソウルジェムが穢れるスピードも急激に早まった。普段は実験を邪魔にしないように手を出さないつもりだったが、ピリカの辛そうな顔を見ていると耐えられなかった」

「悪かったよ。ピリカが起きたら謝っとく」

「そうしてくれると助かるよ」

しばらくの沈黙が訪れて、なんの音も聞こえやしなかった。

「それにしても、調整とやらを一瞬で物にするのは流石だね」

「当たり前でしょ、シオリは一度干渉できれば利用できるまで一直線なんだから。ただ、何人か試さないと記憶を覗くってのは難しいかもね」

「記憶を探ることができれば、神浜のことを理解するスピードも早まる。ピリカには隠して、何人か被検体を集めることは協力するよ」

「でもやっぱいいや。こんな気色悪い技、使う気にもなれないよ」

「そうか、それは残念だ」

この夜の間にシオリとピリカは神浜にある魔女化しないシステムの広げ方を話し合った。

得体のしれない力を行使するためには観測、解析、干渉という三段階を経る必要がある。この考えはキュゥべぇたちの思考から学んだことであり、観測というのはとても大事なことになる。

もし観測対象が概念だった場合、ほぼ不可能に近い。

しかし、概念のあり方を変える方法を私たちは知っている。それを叶える環境が神浜にはある。

「カレンはピリカに対して甘々だよね。ちょっと過保護に近いんじゃない?」

「ピリカは強いんだよ。どれだけ人や魔法少女がモノや液体状になろうと、心を捨てずにあり続けている。私たちはとっくに捨ててるけどね」

「まあ、ピリカの考えは尊重するよ。ピリカの優しさには助けられたことが何度もあるからね」

カレンとの話し声しか聞こえなかったゴーストタウンへ手を叩くような音が聞こえ始めた。

「ピリカを起こしてきて。ゴーストタウンの主が現れそうだ」

ピリカが起きてきてシオリたちは魔女の襲来に備えていた。

「魔女が近くにいるって。でも、ソウルジェムに反応はなかったよ」

反応を隠す魔女なんてこれまでにいくらでも出会ってきたじゃないか。まあ、向こうが行動を起こしてくれないとこの手の魔女を倒すのは難しいけどね」

「魔女がいるっていつから」

「ちょっと外側を見てまわったらさ、放置されたパトカーが数台あったんだ。警察はこの事態に駆けつけてはいた。でもその消息が途絶えて援軍も来なくなってしまった」

魔女へ一般人が争うことができないのは世の常。よほど戦闘慣れした人間でなければあっという間に餌食になってしまう。弱いったらありゃしないね。

「魔女達に動きがあったのはあれが原因だろうね」

燃やした死体へ台座に乗っかった球体が針を通して死体の体液を吸い上げるために群がっていた。

「あれって」

「さあ、親玉の場所まで連れて行ってもらおうじゃないか」

しばらく使い魔の様子を見つめていると死体を持って何処かへ向かい始めた。

後を追っているとゴーストタウンの中心地で魔女の結界の入り口を発見することができた。

「巣に持ち帰ってじっくり味わうのはアリとそっくりね」

「大抵の使い魔に当てはまるからわかりやすいさ」

結界に入ると珍しく階層が存在せず、そのまま魔女がいる最深部にたどり着いていた。

最深部の光景を目にし、ピリカはひどく怯えていた。

宙からは布のようなモノで縛り上げられた数十体の人だったものへ使い魔が群がり、地面には体液を吸われ尽くされた干からびたミイラが何体も横たわっていた。

使い魔の中にはミイラの頭をもぎ取って石を蹴るように遊んでいるものもいた。

「まさかこれ、全員この住宅街にいた人たち」

「案の定警官っぽいのもいくつか見受けられるね」

「いい趣味してるよ、ここの魔女は」

いくつもの魔女空間の中でもドン引きするくらいの光景を見ている中、使い魔達はシオリ達を見つけると群がってきた。

「ピリカ、動けるか」

「大丈夫、わたしだっていつまでも足手まといは嫌だもの」

使い魔達はシオリ達を取り囲むと台座の部品を打ち出しては対面の使い魔が打ち返すというテニスをしているかのような攻撃を繰り出してきた。

もちろんこんな攻撃をまともに回避し続けると体力を浪費するだけ

「賢しい騒がしさだね」

シオリは背中から伸びる二本のリボンを地面に打ちつけ、三人を中心とした周囲は衝撃波で吹っ飛ばされてしまった。

同時に使い魔達は衝撃波で倒されたようだ。

「さ、親玉の場所まで一直線だ」

階層がなく、直で最深部にきたかと思えたが結界は広く展開されていて奥行きがどこまであるのかも分からない。その為、魔女本体の反応はあってもなかなか姿を確認できなかった。

道中、何度か使い魔が襲いかかってきたが、吸い付いてきた蚊をはたき落とすかのようにあっさりとあしらっていた。

暗闇が濃くなってきた頃、闇の中から二つの帯が伸びてきてシオリを絞め殺そうとしてきた。

雷の結界を周囲に張って肌に触れさせないようにはしているものの、結界ごと絞め殺されるのは時間の問題だった。

「シオリ!」

「シオリのことはいいから魔女をやっつけて」

帯を伸ばしたまま現れたのは白子をボール状にまとめたような姿に紫色の羽織りを纏ったような姿をした魔女だった。

体を形成する白子のようなものはボロボロと体からこぼれ落ちては消えるを繰り返している。

また、魔女が見えてから周囲からは赤子の声が聞こえてくるようになった

「姿が見えりゃ、倒したも同然」

カレンが左右から糸をクロスさせて魔女を切り刻もうと試みたものの、体の中心部分まで糸が入り込まなかった。

「硬すぎだろこいつ」

魔女は他の帯を使ってカレン達も絞め殺そうとしてきた。

そんな中ピリカは炎の剣を使用してシオリを縛ろうとしている帯を焼き切った。

「大丈夫、シオリ」

「問題ないに決まってるでしょ。特大のをお見舞いするから2人で魔女の気を引いて」

カレンとピリカが魔女の気を引いている間、シオリは周囲に器用に積まれていた石を集め、手の中で圧縮し始めた。

雷の小さな結界を掌サイズの大きさで生成し、そこへ石を投入していくことで、結界にある空気を圧縮する。石の数が増えるほど圧力が溜まっていき、結界内は高温となってただの石も熱を帯び始める。

カレンとピリカが気を引いてくれたおかげで雷の結界は破裂寸前のところまで到達していた。

「2人とも十分だ。特大のをおみまいしてあげる」

2人がシオリの後ろまで下がると、破裂寸前の結界を魔女の口の中へ放り込んだ。

そうしたらどうだろう、限界まで圧力を加えられた空気が結界を破り、高温になった石は魔女の体内で四方八方へ飛んだ。

元々分厚い体をしていた魔女だったが、数個の石が体を貫いて飛び出してきた。

魔女は大きな口をこれでもかというくらい大きく開けてそのまま崩れていった。

魔女の結界が消えてわかったことだが、このゴーストタウンそのものが魔女の結界に飲み込まれていたようで、階層がなくとても広い魔女空間であったことも納得がいった。

「いつものバカリョクで助かったよ。ありがとね」

「ほんと、なまら硬かったから普通だと何時間もかかちゃいそうだったよ。流石だね!」

少し前にトラウマをえぐられたというのに、いつもと変わらない笑顔を見せるピリカ。

思わずシオリは顔を曇らせてしまった。

「あ、ごめん。なんか気に触ること言っちゃった?」

「いや、シオリこそ悪かったよ。ピリカに嫌な思いさせちゃってさ。ゴメン」

ピリカはきょとんとした顔を見せた後すぐに笑顔を見せた。

「ありがと。克服できてないわたしも悪いんだけどね」

「あら、そういうことならピリカの前でどんどん非道なことしてやろうか。その方が耐性がつくでしょ?」

「ちょっと!本当に反省してるの?!」

カレンはシオリとピリカのやりとりをただただ笑顔で見つめていた

そんな中、カレンが顔色を変えて遠くを見た。

その反応の正体はシオリとピリカにも察知することができた。

「数十人の集団の魔法少女反応だ。間違いなく二木市の奴らだろう」

風ひとつ吹かなかったゴーストタウンでは少し冷た目の風が舞い込み始めた。

「ここは離れようゴーストタウンの時間が動き出す。折角だからピリカ、無人の家から布団を拝借したらどうだ?欲しがってただろ」

「もう、使う人がいなくなっちゃったんだよね。お借りします」

数分するとゴーストタウンとなっていた住宅地に警察が集まっていた。

布団やら使えそうな場所は廃墟へと隠し、シオリ達は二木市の魔法少女の元へと向かった。

 

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