【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-6 眼鏡をはずしてみる世界は

沢山の魔法少女が集まった会議。

そこで行われたのはたった3人の魔法少女へ対抗するための情報交換でした。
集まったのは様々な目的を持った100人に近くなる程多くの魔法少女たち。
私たち見滝原の魔法少女も参加して、多くのことを知ることができました。

一番驚いたのはピリカさんもあの人たちの仲間である事でした。

実は情報交換が行われた中でもピリカさんの強さはカレンさん達同様かそれ以上という曖昧な話で終わりました。

10人近く集まってかつそれぞれの得意分野を織り混ぜてやっと追い込む程度の強さを誇る3人の強さはどこにあるのか。

神浜の魔法少女に関しては調整という神浜の外からきた魔法少女とは違った強くなる方法をとっているにもかかわらず、彼女達は調整という行為を受けていなくてもそれ以上の強さを持っています。

そんな別次元の彼女達のうちの1人を追いやったななかさんたちの情報をもとに会議では翌日の学校終わり、つまりは夕方に拠点と思われる3カ所に総攻撃を仕掛けることとなりました。

私たちには学校生活がある中、敵となる3人はいつでも行動できるという差ができてしまうことはみんなが理解していました。

それでも私達は人として生きる道を外れないよう行動することに決めました。

一部のグループはこの指針に賛同せず、みんなの邪魔をしない程度に独自の行動をとることとなりました。

私達はもちろん人としての生活を優先するために見滝原へ戻ることになり、戦いには参加することはできません。

何故なら、鹿目さんと美樹さんはワルプルギスの夜を倒したあの日からご両親に厳しい門限を設けられてしまっているからです。

この考えによって私たちの中でも意見のすれ違いが起こり始めます

「日継カレンたちだっけか。あいつらの目的を聞いていると悪くはないが一般人へ害を出したり黒いオーラの魔法少女の元凶かも知れねぇってのはわかる。
だがあの悠長な作戦実施時間はなんだ。
マギウスの時もそうだったが、学校なんて行ってる場合かよ」

「杏子の言うこともわかるけど、あたしらにとっては家族も学校生活も大事なんだよ」

「それにやちよさんは言っていたわ。自由行動するのは構わないけど、数人で勝てる相手ではないってことは理解しなさいって」

「んなことわかってるさ。まあ今回は収穫があったしよしとするよ」

そう言うと佐倉さんは駅へ向かわず風見野の方へ歩いて行ってしまいました。

美樹さんは佐倉さんへ何か伝えることがあるらしく、佐倉さんを追いかけていきました。

私と鹿目さん、巴さんはそのまま電車で見滝原へ戻りました。

見滝原についた頃には夕方となっていて、帰路についている最中で鹿目さんがいきなり立ち止まってしまいました。

「どうしたの、鹿目さん」

「えっと、ピリカさんたちのことをずっと考えてて。
魔法少女を助けたいって考えてくれているのに、どうして人も助けようって考えてくれなかったのかなって。
本当に争わずに話し合いだけで済ませられないのかな」

鹿目さんの優しさは底なしです。

いつもみんなが楽しく、幸せになることを願ってしまう方なのです。

そんな鹿目さんにとって、今回の件はとても辛いことなのかもしれません。

「あの状況では言い出しにくかったわよね。みんな普通に話していたけど、中には殺意を持っている子たちもいたわ。

マギウスの時もそうだったけど、事態が治ればいくらでも話し合えるはずよ」

「そう、ですよね」

「私達は参加できないわけだし、私達は他の子たちの報告を待ちましょう」

巴さんの話を聞いて少し笑顔を見せた鹿目さんでしたが、どこか納得していない表情が隠れている気がしました。

ふと一瞬強い風が吹きました。

すると鹿目さんは近くにおらず、目の前には気絶した鹿目さんを抱える魔法少女がいました。

「鹿目さん!」

「慈悲深い魔法少女 鹿目まどかを少し借りて行くよ」

「待ちなさい!」

私は魔法少女に変身して時間停止を行いましたが、驚くことに目の前の魔法少女は平気に動いていました。

どうして

「時間をとめるなんてこと、本当にできる魔法少女がいたんだな。世界は広いねぇ」

片側にだけお下げがあり、手袋部分にオレンジ色のソウルジェムと思われる宝石がついている魔法少女。

まさか、日継カレンさんなのですか。

「鹿目さんをどうする気ですか」

この子が背負っている未知数の因果律が自動浄化システムを広げることに必要でね、協力してもらうんだよ」

「それなら話し合いで済むはずです」

「本当か?なら、ヒトとして生きる事を止めろ言っても協力してくれるのかな?」

そう言ってカレンさんは神浜の方へ素早く移動を開始しました。

「待って!」

時間停止の影響を受けない理由がわからない。巴さんのようにリボンで繋がっていなければ。

繋がり?

私は会議で出てきた話題を思い出しました。

“黒いオーラの魔法少女となった私たちに共通しているのは、日継カレンと会っている事だ”

“あいつと繋がりがある奴らがなっているんだから元凶は日継カレンだよ”

日継カレンと会った時点で何か繋げられてしまっている?

だとすると日継カレンを経由して巴さんも動けるはず。

なのにあの場から時間は止まったまま。

わからない。あの人はどんな方法で時間停止の影響を受けていないの?

そう考えながら日継カレンを追いかけていると横から炎の剣でいきなり斬りつけられました。

咄嗟に盾でガードしましたが、地面に叩きつけられてしまい、時間停止も中断されてしまいました。

また落ちた場所も悪く、一般人が多くいる道でした。

周りの人たちはいきなり地面に叩きつけられた私と、炎の剣を握りながら私の方へ迫ってくる魔法少女を見て騒ぎになっていました。

「おいあの子空から落ちて来なかったか?」

「炎の剣?!ドラマの撮影か?随分とリアルだな」

一般人に見られながらも目の前にいたのは、ピリカさんでした。

私は改めて時間停止を使いましたが、ピリカさんも時間停止の影響を受けていませんでした。

「何で、なんで貴女も立ちはだかるんですか!どうして人へ危害を加えようとするのですか!」

私はピリカさんを振り切ろうとしますが、炎の剣で軽くあしらわれてしまい、カレンが向かった方向へ進ませてくれません。

「魔法少女が人間社会に溶け込めると考えているなら、それは間違いです。

ヒトは時間に縛られ、他人の欲を満たすために、金に支配されながらシステムのように生きて行くこととなります。

しかし私たちは穢れを解消しなければいけない。

そんな事情も知らずにヒトは私たちを縛り付けて無意識に魔女となる事を強要してくるでしょう。

そんな社会を生み出すヒトは、魔法少女にとっては害でしかないのですよ」

「そんな主張、勝手ですよ!

魔法少女だって人と一緒に生きて行くことはできます。社会人になっても、学校生活のように両立ができるはずです」

「私たちにとってはその主張も勝手なのですよ。今の人間社会が、まともだと言えるのですか」

時間停止できる限界が来ても私はその場から一歩も進めずにいました。

そして時間停止が解除されても、一般人に見られていようともピリカさんは炎の剣を私に振ってきました。

私は林に逃げ込もうとしますがピリカさんは私を一般人の方へ押し戻し、そのふるう剣は一般人も斬り付けていました。

一般人に被害が出ていることよりも、魔法少女として戦っている姿を一般人に見られていることが私には一番のストレスとなっていました。

何で一般人に見られているだけで苦痛となっているんだろう。

わたしはその場に膝をついてしまい、今までのように振る舞うことができていませんでした。

貴女の大事な人を守りたいという考えは人目につくというだけで諦めてしまうことなのですか」

周りの人は警察を呼んだり面白そうにスマホで写真を撮っていました。きっとSNSで拡散されるのでしょう。

わたしは今、魔法少女が人間社会で生き辛い縮図を体感しているのかもしれません。

「その程度の覚悟で大切な人は守れないですよ。守りたいのであれば、まずはその価値観から見直す事をお勧めしますよ」

そう言ってピリカさんはカレンとは違った方向へ姿を消しました。

わたしはこの一瞬で人として大事なものが既に失われている気がしました。

きっと学校へ行ったところで苦痛になるであろうことは目に見えていました。

ならばもう、躊躇する必要もない。

私は、鹿目さんを助けるために手段を選ばない!

一度家に戻って爆弾以外に銃器を揃えることにしました。時間停止が通用しない以上、銃器で応戦するしかありません。

とはいえ周辺の反社会的組織から調達できる銃器は底をついていて、近くの軍事基地に手を出すしかありませんでした。

しかしもう、迷う必要はありません。

夜のうちに軍事施設へ入り込み、扱いやすいサブマシンガンやハンドガンを調達してそのまま神浜へ向かいました。

夜明けごろに神浜へ到着し、私は会議の中で報告されていた一カ所のアジトと思われる場所へ向かいました。

そこへ近づくとピリカさんとシオリさんが出てきました。

「ピリカにかまかけられるなんて、あんた何怒らせるようなことしたんだ?」

「私も理解に苦しんでいるところです」

そう言いながら私は彼女たちへ銃口を向けました。

「鹿目さんはどこですか」

「自動浄化システムが世界に広がるまでは教えられないね」

「ならば、力ずくで教えてもらいます」

私は時間停止を使ったうえでピリカさん達へ弾丸を放ちます。

思っていた通り2人は時間停止の影響を受けていませんでしたが、飛び道具はその場で時が止まるので2人は手に持つ武器のみで応戦してきました。

2対1という不利な状況で勝つためには敵の攻撃を避けながら時間停止を解除した際に大打撃を与えること。

しかしそんなことはお見通しと言わんばかりに2人は弾丸の進行方向とは逆側に、爆弾が起爆する地点とは逆側に私を追い込みます。

攻撃は6割ほど受ける状態となり、その過程で眼鏡が割れて視界不良の状態に陥ります。

地面へ叩きつけられた際に時間停止が解除されてしまい、アジトと思われる建物方向は爆弾等の爆発が起こりましたが電気のシールドが貼られていて無傷の状態でした。

私は地面へ叩きつけられたと同時にシオリさんの攻撃の影響か体が動かなくなっていました。

「時間停止に頼った戦い方だから敵わないんだよ。
まあ実銃を使うスタイルは面白いと思うよ」

シオリさんが私に手を出そうとした時、何かが私に絡まり付き、ものすごい勢いで後ろ側に引き寄せられました。

視界がぼやけていてはっきりとはしませんでしたが、赤い服とポニーテールという見た目から佐倉さんであることがわかりました。

私は少し離れたビルの上で下され、佐倉さんは私の目の前に立ちました。

「考えなしに突っ込むとからしくないぞ、ほむら。
眼鏡、壊れたのか」

視界がぼやけたままでは何もできないので、私は試しに魔力で視力を矯正できるか試してみました。

すると、思ったよりも簡単に眼鏡をつけていたときくらいの視力にすることができました。

「ふーん、そんなことできたのか」

そう言うと佐倉さんはブラックな板チョコを包み紙を一部破った状態で私に差し出してきました。

「ほら、これ食ってちょっと冷静になりな」

私はビターなチョコを食べた後、ここに来るまでの出来事を佐倉さんに話しました。

「そうかい、あいつらは人前でも平気に魔法を使うほどやばいやつだってことはわかったよ。

強さもばかにならねぇのに戦えるフィールドを選ばねぇってのも厄介だな」

「私だけでは敵わないってわかったから、あとは巴さん達が来るまで情報集めをしようと思います」

それならこの街の中央区にやたらと魔法少女の反応が多かったからそこへ見にいったほうがいいかもな。

あそこでヤバいことが起こりそうだぞ」

中央区はシオリさんの目撃情報が多かった場所です。

もし昼間に彼女達とぶつかってしまったら、きっと中央区は阿鼻叫喚な光景となるでしょう。

わたしは鹿目さんの居場所の手がかりがないか探るために、神浜の中央区へと向かいました。

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-3 絶望よりも深いその先へ

昨晩行われた紗良シオリさんの捕獲作戦。

結果は成功とはなりましたが、望んだ最善の結果とはなりませんでした。

シオリさんの残した魔力を頼りに今日中にななかさん、美雨さんで潜伏先を探すと伺っています。

そして明日行われる神浜マギアユニオンの集会で報告し、多人数でシオリさん達を抑える。

その後のことは終わった後考えるとのことですが、私は知りたいのです。

なぜ彼女達が、魔法少女のためにすごいことをしようとしているのに、今回のような悲しい結果を生むような行為に至ったのか。

私はそんなことを考えながら店番をしていました。

今日はお父さんとお母さん揃ってお出かけしています。日々何かと忙しくて揃って休日を取れる日が少ない中、今日は私が店番をする代わりに、二人に息抜きしてもらうことにしたのです。

まあ、親孝行というやつですね。

2人とも照れ臭そうな表情をしていましたが、手を繋いで出かけて行きました。

楽しい日になってほししいなぁ。

私の家では夏目書房という古本屋さんをやっているのですが、本を集めてくるお父さんのこだわりもあってか、珍しい本があるとそれなりに名前は知られています。

いまは電子書籍の時代となってきてはいますが、紙とインクの匂い、そして何よりも手にとってページをめくっていき、物語を読み進めていくというのが本の良いところです。

お客さんもそれなりに来て、時々近所のおばさんと会話したりと、ゆっくり時間が流れて行きました。

近所のおばさんと話していると、気になる話を聞きました。

「そういえばかこちゃん、同じ学校に通っている子で急に不登校になった子とかいないかい?」

「急に不登校ですか。そういえば最近、増えてますね」

「やっぱりそう?私の迎えに住んでいる奥さんの子がね、最近家族の前に姿を見せない上に、学校にも行かない不良娘になっちゃったみたいなのよ。
前から帰りが遅かったりしたことはあったんだけどねぇ。何か相談できないような悩み事でもあったのかしらねぇ」

「そうかも、しれないですね」

不登校になった女の子。

ご存命ではあるらしいので、魔女に襲われてってことではないかもしれません。でもその子が魔法少女だった場合、ももこさんたちのように黒いオーラを纏ってしまい、考え方が変わってしまった結果なのかもしれません。

かえでちゃんも学校へ来なくなり、他のクラス、学年でも不登校となる子が増えていました。

マギウスの翼の時よりもその数は多く、いま起きている事態はマギウスの翼が起こした騒動よりも大きな影響を与えているのだなと実感しました。

お店の中が静かになったころ、少し気になったのは、午後になってもななかさん達から続報が来ないということです。

魔力の痕跡を追えなかったのか、それとも何か騒ぎに巻き込まれてしまったのか。

お父さん達が帰ってきたら電話でもしてみようかな。

「かこ、帰ったぞー」

「あ、お帰りなさい。二人とも楽しめた?」

「もちろんさ。新婚の頃の新鮮さを思い出せるいい機会だったよ」

「もう、お店に入ってすぐに書店に籠ろうとしたのは誰なんだか。
かこちゃん、今日はありがとね。お父さんと選んで買ったお菓子とかあるから、夕ご飯の後に食べましょう」

「わあ、ありがとう!」

楽しく会話している中、お父さんとお母さんの後ろに虚な顔をした男の人が近づいてきました。

そして、その男の人は刃物を取り出し、走ってきて。

「ダメ!」

私はとっさにお父さんとお母さんの間を通って仁王立ちするように男の人の前に出ました。

凄く、痛い。いや、普通なら痛いじゃ済まない。

男の人が取り出した刃物は、確かに私の心臓を捉えていました。

血が滲み出る中、私は襲ってきた男の人の腕を掴み、刃物から手を離させ、そのまま地面へ叩きつけて気絶させました。

その男の首元には、魔女の口づけが。

「いやあああああ!」

お母さんはとても怯えた顔をしていました。

お父さんは驚いた顔をしていて。

「かこ、どういうことだ、これは」

そう、魔法少女であれば心臓を貫かれても、血が幾ら流れようとも、ソウルジェムが無事であれば生きていられる。

しかしそんなこと、普通の人なら理解されない。

私は、お父さん達の目の前で、人ではなくなっていることを証明してしまったのです。

私は刺さった包丁を抜いて、回復魔法で傷口を塞ぎました。

そして包丁を地面に落とし。

「お父さん、お母さん。ごめんなさい」

「かこ!」

私はそう言ってその場から走って去りました。

見られてしまった、知られてしまった!

私が人ではない体になってしまったところを!

涙で滲んだ風景の中、魔女の口づけから感じた魔力反応を頼りに走り続けました。
私はただただ怖かったのです。見たこともない、二人の怯えた顔が。

魔女の結界に入ると、手をパチパチと叩きながらケラケラと笑う使い魔達がいました。

貴方達が、あの男の人を操らなければ、あのタイミングじゃなければ!

魔力反応を感知できなかった私のミスかもしれない。平和な時間の中で油断していたのかも知れない。

でも許せない、今回だけは、許せない!

普段はやらないような力頼りの攻撃を行うばかりだった気がします
使い魔に攻撃されて傷口がたくさんできても、痛みを感じることはなく、ただひたすら感情に流されるように使い魔を倒していきました。

そして倒しても倒しても、私の気が晴れることはありませんでした。

気づけば日は落ちかけていて、グリーフシードもありませんでした。

もしかしたらしっかりと向き合ってくれるかもしれないという淡い期待をもって私は帰路へつきました。

いつも普通に帰れていた家も、入るのが怖かったです。

2人の反応が怖い。

そう思いながら二階に上がると、お母さんは泣いていて、お父さんはお母さんを慰めているところでした。

「ただいま」

「かこ、帰っていたのか」

しばらくの沈黙の後、お父さんが話し始めます。

「どういうことか説明してもらえるか。あの状況、普通なら動けず死んでいてもおかしくない。

でもお前は人並み以上の力で男を気絶させ、そして、平気にそこで立っている」

私はソウルジェムを手に乗せ、2人の前で変身して見せます。

「おい、その姿」

そしてその場で私は手首に切り傷をつけます。

「や、やめなさい!」

血は少し流れましたが、魔法ですぐに傷口は塞がりました。

「ごめんなさい、もう、普通じゃなくなっちゃったの、私」

私の声は震えていました。そして足元から凍えるような冷たさが登ってくるようになりました

ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい

そう、心の中で呟き続けました。

「どうしてこうなっちゃったの、これじゃあかこちゃん、人じゃないじゃない!

普通じゃないわこんなの、ありえないわああどうして、どうしてウチの娘が!」

「落ち着け!」

人じゃない。普通じゃない。

拒絶された。きっと、人じゃないから化け物と思われるのかな。

おかしいな、2人を助けたはずなのに。拒絶されちゃった。

ああ、嫌だったなぁ。こんなピリオドは。

冷え切ってしまい、何かが切れてしまった。

手をあげるとそこにはきらりと光るモノ。

”抑える必要なんてないんだよ。気の向くままに刻んでしまえば、すっきりするし清々しくなるよ”

そんな私の声が頭にこだまし、そして胸につっかえていたようなものが洪水のように押し寄せて頭をいっぱいにした。

身に降りかかる温かな液体。手は止まらない。
音も聞こえない。
私は目の前に浮かんだもう一人の私も含めて切り刻むかのように、手には大きな裁断機についているような鋏で激しく斬りつけていきました。

気づけば私は謎の空間の階段を下りていて、最下層には鎖でがんじがらめにされた門が立ちはだかっていました。

私は無意識に、鎖を切りきざみ、閉じられていた門を開けていました。

真っ暗な門の先へ進み、門が閉じた音と共に目の前には血だまりと肉塊が広がる光景が広がっていました。

その結果を見ても、不思議と浮かんだのは達成感。しかしすぐに体は冷たくなってしまいました。

「穢くなっちゃったなぁ。着替えないと」

私は着替えてその場を後にしました。

思いのまま、呪いの素を断つために。

 

 

「どういうことだ、シオリ。

朝からいないと思えばこの結果。まだこの街をかちゃ混ぜたりないのか!」

そこにはシオリを張り倒すカレンの姿があった。相変わらず手加減なく殴るんだから、血が出たじゃないか。

「誤解だよ、私は観察していただけ。あいつらに魔力パターン知られちゃったし、拠点にいないほうがいいでしょ」

「大事なピースをあの様にして、あの夫婦にヘイトを誘導させたのはお前だろ!」

「だから誤解だって。シオリが手を出さなくても結末は変わらなかった。それにこの流れはシオリ達を妨害するあいつらが退場するチャンスだ」

「いい加減にしろ」

しばらくの間沈黙が続いた。

「いいか、もう成就は目前なんだ。これ以上ヘイトを買うような余計なことはするんじゃない」

「でもいい感じに仕上がっただろう、争いの矛先は私たちに集中した。そのおかげで無謀な争いが軽減されている。

あの実験状態を野放しにし続けたのもそれが目的だろう?」

生温い風が2人の間を流れた。

「あの結末は私が処理する」

「そう、まあここまで最小限の犠牲だろうさ。変なイレギュラーのおかげで予想より助かってる奴らは多いし。そのおかげであの子も見つかったんだしさ」

「ああそうだな。予定なら私にだけヘイトが溜まればよかっただけなのに、余計なことしやがって」

「いらないよ、そんな気遣い。お師匠を殺す前も、そのあとも運命共同体だったじゃないか、水臭いよ。

なーに大丈夫さ、すべて終われば自然と天罰が落ちるさ。それが世の常だからね」

そう、解放のツケは、シオリ達だけに集中すればいい。それが全て最小限で、最適解さ。

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-2 魔法少女会議

今日は神浜の魔法少女にとっても、外からきた魔法少女にとっても重要な日。

自動浄化システムを広げる方法を知っている魔法少女達についての情報交換、そしてその魔法少女達を捕まえる作戦会議の日です。

とても大きな会議で、多くの魔法少女が集まります。

これがただ緊張するだけの場ならよかったのですが、神浜マギアユニオンとしては悲しく、そして辛い知らせが波のように打ち寄せています。
そんな中でも私にとって一番つらいこと。

お姉ちゃんがいない。

そんな状況の中、会議が中止とならなかった理由としては、ななかさんからシオリさんが隠れたとされる場所を特定したこと、そして

「私たちに構わず会議を行ってください。機は明日しかありません」

と伝言を受け取っていたからです。

ななかさん達は昨晩、紗良シオリさんを撃退してその後魔力反応を辿ります。

シオリさんがどこに行ったのか特定はできなかったものの、シオリさんの魔力が発せられている廃墟が3箇所あることを特定したと情報がありました。

シオリさんが隠れてから時間が経つ前に大人数で奇襲をかければ高確率でシオリさん達を捕まえることができる。そしてお姉ちゃんを助け出すことができる。

だから私たちは会議の中止よりも開催を優先したのです。

 

こんな大事な会議に灯花ちゃん達は参加できません。

何故ならあの謎の転移魔法では果てなしのミラーズへ行くことができなかったからです。

また、神浜マギアユニオンのみなさんからは、灯花ちゃんとねむちゃん、そして桜子ちゃんへシオリさん達の計画について話さない方が良いと言われています。

灯花ちゃん達がその考えに乗って協力しかねないからとのことです

昔は昔、今は今と言いたいですが、果てなしのミラーズで行った実験の方法と結果を見るとこのような意見が出ても仕方がない気はします。本当は信じてほしいけど。

本当に危ない事態になったら、教えようと思います。

お姉ちゃんが連れ去られたことについても、三人には内緒にしています。きっと無理しちゃうと思うから。

私は今回の会議に出られることになっていて、さなさんはお姉ちゃんが帰ってくるかもしれないということでお留守番、フェリシアさんはもう一つの不幸の調査のために飛び出してそれっきりです。

なので、みかづき荘からはわたしとやちよさん、鶴乃さんが参加です。

道中は静かでした。

何かと話を切り出す鶴乃さんも口を閉じたままでみかづき荘で生活を始めてからここまで静かなのは夜に寝るときくらいです。

果てなしのミラーズがある鏡屋敷の入り口にはたくさんの人がいました。

見た感じの年齢は小学生から高校生まで様々。知ってる人から知らない人までぐちゃぐちゃな状態です。

そんな中、声をかけてきたのは十七夜さんとみたまさんでした。2人はお姉ちゃんがいない状態のやちよさんを見て心配している様子でした。

「神浜マギアユニオンの中心人物だからというのはわかる。だが、環くんの居ない状態の七海は少々不安が残る」

「どういうこと?」

「大事なものが抜けた後というのは冷静な判断ができなくなる。今の七海が進行を行うと何処か早まった判断をしないか心配だ」

「大丈夫よ。至って冷静よ」

本来ならお姉ちゃんが進行するはずの会議ですが、今は連れ去られてしまって行方不明な状態なので代わりにやちよさんが進行します。

大丈夫、見渡した限り、神浜の魔法少女以外にもたくさんいるから絶対成功する。

そう期待をしている間に会議が始まりました。

まず行われたのは神浜に集まった神浜の外からきた魔法少女達の目的を聞くことから始まりました。

特に多かった理由は自動浄化システムを求めてきたからという理由でした。

次に多かったのは紗良シオリさん達を追ってきたという理由が多かったのが驚きでした。むしろここに集まった魔法少女がみんな2人の魔法少女のことを知っているくらいでした。

私たちが黒いオーラの魔法少女に苦労している中、シオリさん達は神浜の外に足を運んでいたのかもしれません。

そしてこの会議に参加した魔法少女は直接話を聞いた場合と口伝えに聞いた場合の2種類でした。

この会議の周知を行ったのは元マギウスの翼メンバーに広く知られている欄さんという方でした。

会議へ参加させるための口実として黒いオーラを取ることができた魔法少女の話を持ち出したとのことです。

神浜にいる間に黒いオーラの魔法少女による被害を受けた人たちも多かったらしく、今回の会議では黒いオーラを取る話も議題になります。

次に会議の議題に上がったのは紗良シオリさん達の目的についての話です。

この話は病院から退院したひなのさんから伝えられました。
ひなのさんはシオリさんとの戦闘の際に右目を失ってしまい、現在は黒い眼帯をしています。
シオリさん達の目的は、その戦闘が行われる前に聞いた話とのことです。
ひなのさんが話した内容のほかに、神浜の外から来た魔法少女たちが聞いたという話をまとめるとこのようになります。

・紗良シオリ・日継カレンの目的

ある物質を使用して因果量が多い魔法少女の素質を持つ少女を誕生させる。その少女へ自動浄化システムが世界に広がるよう願わせる。
願った後に急激に溜まる穢れはドッペルとして消化されるから願った本人も救われる。

しかしその過程で使用する物質へはrたくさんの「希望」を注ぎ込む必要があり、そのために沢山の穢れが発生する。その穢れをヒトへ押し付ける。

おそらくたくさんの人が死ぬ結果になるだろう。

 

「これが奴らから聞いた内容、そしてこれまでに奴らが開示してきた目的の内容をまとめた結果だ。

みんなが求める自動浄化システムを世界に広げようという考えはいいのだが、その過程で発生する願いを無理やりねがわせるという行為、そしてヒトへ呪いを押し付けるという考えは擁護できない。

私達は自動浄化システムを世界に広げる際の代償を最小限にさせるよう奴らを捕まえる。

ここに集まった魔法少女の中で、正直に奴らの考えが正しいと思う奴は静かにこの場を去って構わない。

私らの考えに縛り付ける気はないからな」

ひなのさんの発言に反応したのはミリタリーな見た目をした3人の魔法少女達でした。

「私らは別に奴らの計画はそのまま進んでもらって構わない。だが奴らにメッタメタにやられた過去があるからね。奴らを負かせるためにここにいるんだ。

悪いが残らせてもらうよ」

次に声を出したのは統一感のあるマスクをつけた魔法少女達がいる人達でした。

「私たちは貴方達神浜の魔法少女の指示を聞く必要はないわぁ。でも私たちの中から黒いオーラの魔法少女になって殺すしかない事態があったからここにいるのよ。

彼女達の対策について話すのもいいけど、まずは黒いオーラの取り方や纏ってしまう原因について聞かせて欲しいわね」

確かに日継カレンさん達と戦っている間に誰かが黒いオーラの魔法少女になったりしたらせっかく考えた作戦も破綻しちゃうかもしれないわね」

黒いオーラの魔法少女についての話題が大きくなって行きますが、実はこの話をする重要人物のななかさんがいない状態です。

誰が詳細を話せば良いか悩んでいる中、説明できると前へ出てくれたのがももこさんでした。

ももこさん、以前とは雰囲気が変わってしまいましたが、魔法少女に対してはいつものように優しく接してくれます。

そんなももこさんは、みんなの前でカレンさんを目の前にして私たちに話した内容と同じような内容を話し始めました。

聞いてたみんなはななかさんに聞かなければわからない内容だったので少々消化不良だったようです。

こうして神浜マギアユニオンからの報告が終わった後、鬼のようなツノが生えた魔法少女が話し始めます。

「二木市の魔法少女、紅晴結菜だけど、貴方達の主張には不足する点が存在するわ」

「何かしら」

「日継カレンにはシオリという魔法少女の他に、ピリカという魔法少女が居るはずよ」

「ピリカさんって」

結菜さんの発言に反応したのは私たちと静香さん、そして見滝原から来た魔法少女達でした。

「ピリカさんって、確か神浜マギアユニオンに入ってる子だよね」

「おいおい、何もしらねぇってのは怖いことだな。それ完全にスパイ活動されてたってことじゃないか。
つまりここ数日のお前らの動きは奴らに筒抜けだったってことだ」

「樹里、この場での言い過ぎは厳禁よぉ」

ピリカさん、他の2人よりも優しい雰囲気だったのに、あの人たちの仲間だったなんて。

じゃああの時かりんちゃんを追いかけたのって仲間と合流する口実を作るため?

「まあいいじゃないか、情報網が相手にダダ漏れだったとはいえ、紗良シオリを瀕死に追い込んだって実績は私らの中では一番大きな功績だ。

それにこれほどの人数だ。

黒いオーラの魔法少女があいつらが原因ってなら一時休戦であいつらをぶっ飛ばすのが最優先じゃないか?」

ミリタリーな見た目をした魔法少女が話を切り出していました。

「あなたは」

「西から来た博 三崎(はく みさき)だ。他に2人ダチがいるだけだが、戦いに関しては実力がある方だ。私らは神浜のあんたらに乗るよ」

「霧峰村の時女一族の代表、時女静香です。私たちも神浜マギアユニオンに協力します」

「見滝原の魔法少女も、神浜の魔法少女に協力するわ」

次々と協力する声が上がっていく中、二木市の魔法少女を含めた数グループは協力すると声を上げませんでした。

「協力しないからと言って何かあるわけではないわ。これはあくまで共通の敵を倒す共同戦線だから。でも、変に妨害するような真似は相手に隙を作る行為になるってことは理解してちょうだい」

これで大勢の魔法少女が参加した会議は終わり、協力してくれる魔法少女が集まった結果、明日の夕方に3カ所のポイントを攻めることになりました。
夕方に攻めるのは、明日は普通に学校がある日だからです。

1カ所ごとに合計20人以上魔法少女が集まる計算となり、ワルプルギスの夜を倒した時くらいの魔法少女が集まることとなります。

あの人達を倒すことができれば、お姉ちゃんを助けられるんだよね。

戦わないと解決できない結果は悲しいことだけど、今が戦わなくちゃいけない時、なんだよね。

 

 

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魔法少女まどか☆マギカ外伝マギアレコード 2年間の総評とその後についての考察

みなさんマギアレコードは楽しくプレイできていますでしょうか。

第二部がスタートしてストーリーが不定期公開されるようになりましたが、評価はよいものといえず、Twitter上ではマギアレコードへの不満を吐き出すプレイヤーが増えてきています。

第二部へ入らずともそのようなプレイヤーがいましたが、第二部に入ってからは目立つようになってきたと感じています。

 

 

各プレイヤーの意見の統計を取り、そこから総評を練り上げるのが正しい方法ではありますが、生憎、多くのプレイヤーが使用しているコミュニケーションサイト、公式の運営が用意した意見交換所のような掲示板が存在しないことから、すべてのプレイヤーの意見を汲み取るのは不可能に近いでしょう。

今回はマギアレコード2年間の総評と今後について考察していきたいと思います。
考察とは言え、何かを数値的に導き出したり統計を取るというわけではなく、あくまでネット上に出てくる情報を収集してそれらについて分析を行った結果について述べるだけです。

このページの内容を通して、見ていただいた方のマギアレコードの見方を見返す機会になれたら幸いです。

 

※ここから記載していくのは管理人の私見が含まれていきます。あくまで一個人の意見として見ていってください。

 

0.あらすじ

魔法少女まどか☆マギカ外伝 マギアレコードは2017年8月22日に正式リリースされたスマホRPGで、原作となる魔法少女まどか☆マギカとは違った時間軸の物語としてストーリーが展開されていきました。
物語りは無事に第一部が完結し、第二部が進んでいる最中です。
ちなみにシナリオはf4シナリオチームが担当しているようで、外注を行っているという様子は見られません。
(外伝シリーズイベントの際は各外伝の作者が監修として携わっています)

魔法少女まどか☆マギカを題材としたうえでスマホRPGとして長期運営するうえでネックとなるのが魔女化の問題。
グリーフシードが入手できなければ魔女化確定というハードコアな設定の中、魔女化によるキャラの退場を回避するために「ドッペル」というオリジナルの仕組みが導入されています。

ドッペルは神浜市にいる限り、魔女とはならずドッペルを発動することでソウルジェムが浄化されるというものですが、ドッペルを使用した際のリスクがあるとされているため物語内ではグリーフシードは引き続き使用されています。

これによってキャラは戦闘でソウルジェムが砕かれない限りは生き続けられるという設定を獲得し、クリスマスや夏祭りといった季節イベントを気軽に展開できる理由づけもされています。

自由度の高い物語を展開できるようになったマギアレコードでは軽く2周年を迎え、かつて存在したまどか☆マギカオンラインの運営期間を超え、3周年を迎えようとしています。

 

1.マギアレコードに対する不満

リリースしてからの運営を行う期間が長くなるほどゲームへの不満が募るのは必然です。その不満への対処として正しい方法というのは、統計をとってゲームバランスを考慮したうえで修正し、アップデートを行うというのが最低限失敗しない対応方法だと思われます。

ここからはマギアレコードの各システムに対する不満とこれまでに運営が行ってきた対応内容について振り返っていきます。

1.1 ガチャシステムに対する不満

スマホRPGにとって必ず発生するのがガチャシステムに対する不満です。
物語中に発生するバトルでは初期配布の環いろは以外の魔法少女は限定配布以外はガチャをまわさない限りバトルで使用することができません。また、ガチャでは魔法少女を強化できる「メモリア」というものも入手できます。

もちろんガチャをまわすための通貨が必要であり、マギアレコードでは「マギアストーン」がガチャをまわすための通貨として存在しています。
マギアストーンはストーリーを進めることと、ストーリークリアの報酬としてもらえるチケットで引くことが可能ですが、リアルマネーをつぎ込むことでマギアストーンを増やしてガチャを引くことも可能です。

マギアストーンの価格については1個につき11~13円で大量購入するほどお得となっています。
・1085個 ¥11,500 1個につき約10.60円
・37個  ¥490          1個につき約13.24円
まとめ買いしたほうがお得!

ガチャをまわす際には25個のマギアストーンが必要となるため、
ガチャ一回は約300円使用することとなります。

このガチャシステム、実装当初はいくら回してもめったにお目にかかれない☆4魔法少女が手に入らないという天井なしの沼ガチャ状態でした。

これによってピックアップされている☆4魔法少女を手に入れたくても200回、300回とガチャをまわしても手に入る様子が見られないという不安が募り、マギアストーンをお金で購入するいわゆる「課金」を躊躇する、または後悔するプレイヤーが多く誕生することとなりました。

この状況に対して運営が行った対応というのは天井の実装です。
他のガチャシステムにはあまり見られないという天井は当時多くのプレイヤーが喜びの声を上げました。
マギアレコードの場合の天井というのは、どのガチャ(恒常、限定ピックアップ)でも100回引いたら確定で☆4魔法少女が手に入るというものです。
さらには各魔法少女の排出率の数字が公開され、驚きの排出率の低さに驚きを隠せませんが、引く側の負担を減らそうという試みは見え隠れしています。

とはいえ☆4魔法少女の排出率はガチャを引く際の演出によって誤差があるようですが、実はこれ無いに等しいようなもの。
演出を引くのも実際に☆4魔法少女を引く際と同じくらいお目にかかれず、通常演出では驚異の0.00975%、たとえ☆4確定演出が出た場合でも0.9756%という100回引いて1体出ればいい方という値です。

さらには☆4魔法少女の母数も大きくなっているため、狙った魔法少女はピックアップが行われない限り30000円払って天井まで回すというのはかなりハードルが高いものとなります。

この渋いガチャシステムに対してさらに運営が行った施しというのが、デスティニークリスタルの実装です。
これは、☆4魔法少女と4回出会う(完凸した)あとにまた同じ魔法少女と出会った場合に交換できるものなのですが、デスティニークリスタルが5個たまると好きな魔法少女と1回出会う権利がもらえます。

☆4魔法少女の排出率が低い割に魔法少女がかぶることが多いマギアレコードではデスティニークリスタルの存在は地味にうれしいものです。
仮に500回やってすべてすり抜けて完凸魔法少女のかぶりが発生したとしても確定で狙った魔法少女と出会えると言葉で言われればお得ですが、500回までに支払う金額は150000円。
あなたは手取り給料をすべてつぎ込む覚悟があるか?

第二部がスタートしたころにはピックアップガチャを引くと調整やコインというものが1回につき1枚もらえ、300枚たまると好きな魔法少女と交換できるようになっているのですが、これでも90000円コースとなるためよっぽどねらい目な魔法少女でなければ身を滅ぼすことになりかねないです。

ちなみに限定☆4メモリアは☆4魔法少女のような救済処置がないので頑張って当てましょうという状況です。

 

ここまでマギアレコードのガチャシステムとこれまでに行われてきた改善事項を上げてきました。
ほかのガチャ要素があるゲームはあまり知りませんが、いずれは臨んだ☆4魔法少女が手に入るというのは少しは希望が持てる仕様ではないでしょうか。

さて、このガチャシステムですがちゃんとバックストーリーが存在します。
ガチャシステムによって排出される魔法少女は調整屋で紹介された、または出会った魔法少女という設定があります。
そんなの誰が言っていた、というのはメインストーリー第一部 第一章でみたまがさらっと言っています。魔法少女が排出される確率は、リアルに見知らぬ人と出会う確率に等しいというわけです。

そんな設定いらない、さっさとほしい魔法少女を完凸させろというプレイヤーの声は少々傲慢が過ぎます。

ガチャシステムが課金前提の渋さとなっている原因は、基本プレイ無料としているため運営へ入るお金を集めるタイミングがガチャシステムにしかないことが原因です。
これはどのガチャシステムを採用しているゲームにも言えますが、ガチャでしかお金を集められない場合はプレイヤーがガチャをまわさないような魔法少女を実装しようとはしません。
キャラクター性能のぶっ壊れが蔓延るようになるのはこのような原因が起因していると思われます。

プレイヤーがガチャをまわしてくれないと運営を行うことができない、ガチャを回るためにはプレイヤーの求めるようなキャラクターを用意して実装するしかない。

単純な運営であればこの思考へと陥って、最終的にはゲームのコンセプトを見失ってそのままサービス終了に陥るだけです。

ぶっ壊れ性能のキャラがどんどん出てくる、物語を無視するような、まどか☆マギカというコンセプトを見失うようなミラーズで使えることだけ重視された魔法少女だけになっていくようになれば、
私は正直、プレイヤーの思考がゲーム性を悪くしたといってもよいと考えています。

 

プレイヤーがガチャをまわす動機としては昨今では”ミラーズで優位に立てるから回す”が目立ちます。

キャラクターがかわいいから、物語で気に入ったからという動機でガチャに手を出す人、3割もいないのではないでしょうか?

それに加えてガチャに多い不満では”キャラクターが出ないからクソゲーム”という傲慢しかない不満です。

お金がかかわるガチャをまわすのはプレイヤーの責任です。
今ではピックアップされている☆4魔法少女は前にも触れている通り、天井が実装された上にデスティニークリスタルで交換するチャンスがあり、さらには調整やコインで入手するチャンスがあるという大盤振る舞いにもかかわらず、それでも不満を漏らします。

確かに有り金をつぎ込んでどうしても欲しい魔法少女が出なければ誰でもへこみます。しかしこれは確率が絡むものなので、縁がなかったとしか言えません。

プレイヤーへのおもてなし精神で排出率を増やしてくれ、マギアストーンの価格を安くしろというのであれば、そうまでしてくれるほどマギアレコードを支援する必要があるのです。

ゲームの運営はプレイヤーがお金を落としてくれなければ行えません。

もしこのゲームが好きだというならば、少しでもプレイヤーが運営へ支援する姿勢を見せていく必要があるのです。
自己責任でガチャをまわした結果に対してそれだけでクソゲー呼ばわりするのは”お客様精神”が過ぎる傲慢な態度であることを認識してください。

 

1.2 バトルシステムに対する不満

バトルシステムに対する不満はストーリー等で行われるバトルと、ミラーズバトルの2種類があります。

 

1.2.1 ストーリー中に行われるバトルシステムについて

マギアレコードのバトルシステムを簡単に説明します。

マギアレコードのバトルは自分と相手のターンが切り替わりながら進んでいくターン性バトルとなっていて、次の一手をどうするか考える時間を設けることができます。
戦闘に参加している魔法少女それぞれに5枚の攻撃ディスクが割り振られていて、自分のターンでは参加している魔法少女のディスクの中から5枚ランダムで選択できるディスクが確立で選出されます。そのディスクをさらに3枚選択し、相手へ攻撃を行います。

他にも魔法少女の潜在スキル、メモリアというものをつけることで使用できるスキルを使用できるほか、MPを使用して発動できる必殺技枠に該当する「マギア」、そして超必殺技の位置にある「ドッペル」が使用できます。マギアとドッペルはディスク1枚分として使用することとなり、スキルはターン酔いがない限り自分のターン内で使用することができます。

 

各魔法少女が使用できるディスクには以下の3種類があります。

・アクセル:攻撃時にMPの獲得量が他のディスクに比べて多く、1枚目に選択すると2枚目、3枚目のディスクはMPを獲得できるようになる、または獲得量が増えます。敵1マス分にしか攻撃できません。
アクセルディスクを3枚使用した場合:アクセルコンボとなってすべての魔法少女へMPが20与えられます。

・ブラスト:縦、横どちらかへ3マス分すべてに攻撃できる唯一の手段です。しかしMPを獲得することはできません。
ブラストディスクを3枚使用した場合:ブラストコンボとなって攻撃時のダメージが増加します。

・チャージ:チャージディスクの攻撃を行うためにチャージが溜まり、たまったチャージ数に応じてアクセル、ブラストを使用した際のダメージ値が増加し、アクセルに関しては獲得MP量も増加します。敵1マス分にしか攻撃できません。
チャージディスクを3枚使用した場合:チャージコンボとなってチャージ数が+2されます。

また、同じ魔法少女のディスクを3枚選択した場合はピュエラコンボとなって全ディスクの与えるダメージ量が増加します。

コネクトという仕組みもあり、コネクトはある魔法少女のディスクが合計3回使用されたことをトリガーとして他の魔法少女へ固有の能力を分け与えることができる戦術の一つです。

ここまで戦闘要素の基礎部分を簡単に記載しましたが、これらの情報以外にも敵と味方の属性有利、スキル効果、アビリティ効果の把握、ターン数管理と考えるほどきりがない戦術がたくさん存在します。

このバトル要素は慣れるまで時間がかかり、ストーリー中のボスでもしっかり魔法少女を育てなければ勝ってないような難易度の場所も存在します。
ストーリーを進める上では魔法少女の育成も大事になっていくということです。

このバトルシステムについての最初の不満が、周回効率の悪さです。
プレイヤーはずっとスマホに張り付いてできる人がいればちょっとした時間内でササっと終わらせたい人と考え方はそれぞれです。

そんなプレイヤーの声に対して運営が対応したのは「オート機能」と「倍速設定」の実装です。

オート機能はそのままの意味であり、プレイヤーが操作しなくてもAIが自動で戦闘を行ってくれます。
最初の頃はマギア、スキル、コネクトの使用タイミングを指定することはできませんでしたが、最近になって詳細に設定できるようになってさらにスピーディに周回を行うことが可能となっています。
さらには初回オートとされる機会も増えていて、基本的にバトルは勝手に行ってくれる流れが出てきています。ちなみにオート機能は任意にON、OFFができます。

倍速設定は2倍まで設定することができ、最近は3倍速の試験的運用が行われました。実は戦闘中モーションは通常スピードではかなりゆっくり進むため、正直等倍速でバトルを行うとバトル終了までかなり時間がかかります。
等倍速は凝ったモーションを見るため、マギアやドッペル演出をじっくり見たい人向けとなっています。

さて、周回効率をよくするために様々な改善が行われていますが、周回の効率化はストーリー進行をスピーディにするため、魔法少女強化のための素材集めを効率的に行いやすくするためというプレイヤーにとってストレスフリーになる改善ばかりです。

ここまでやるならいっそのこと、バトルの途中経過自体バッサリとカットして結果だけ表示という形にすればよいのではないかと考えるプレイヤーもいるようですが、それはもうバトルシステムがいらないという暴言に等しいです。

気持ちはわかりますが、オート機能でも負けるバトルは負けてしまうので、負ける原因を分析するためにも時々オートバトルの様子は見守るようにしましょう。

 

次に出ている不満が、特定ディスクコンボだけでごり押しできるゲームシステムはよくないという不満です。

ごり押しできるディスクというのはアクセルとブラストです。

アクセルの場合はアクセルディスクコンボばかり狙ってMPを溜め、全体マギアで敵を蹂躙するという流れで高難易度クエストが終わるという問題です。

ブラストの場合はブラストディスクコンボでダメージ量がアップするだけでなく、ピュエラコンボによるダメージ量アップも上乗せされた状態でほぼすべてのマスを蹂躙して高難易度クエストを終わらせるという問題です。

これらに共通するのは「最短クリア」であり、敵の攻撃が痛いならば攻撃させる前に終わらせればいいというプレイができてしまうことによって起こる問題が出てきています。

それは、チャージディスクがいらない子となる状態となっていたことです。
チャージディスクは1、2回使用した後に別ディスクで攻撃してもそれほどダメージ量、MP獲得量が上乗せされません。
また、チャージという名前がついている通り、真価を発揮するにはターン数がかかります。
「最短クリア」を重視するプレイヤーが多い中でチャージディスクが不憫な扱いをされれば、チャージ特化した魔法少女も不憫な扱いをされることとなり、バトルへの使用率に格差が生まれる結果となり、それは今後実装される魔法少女にも響きます。

このバトルシステムの状況に対して対策が行われた結果、チャージ後ダメージアップというスキルが実装されただけです。

これはどのプレイヤーもすぐに実感できる改善ではなく、どのみち真価を発揮するためにはターン数を要するディスクに変わりはありません。

しかし、チャージ後ダメージアップというスキルが登場したことにより、チャージコンボ後のブラストコンボで恐ろしいほどのダメージを相手に与えるという戦術が行えるようになってチャージディスクの存在意義は一応あります。

実はチャージディスクは精神強化でチャージディスクのダメージアップに使用されている名前の通り、テクニカル要素が絡むディスクです。

使うプレイヤーによって有用になったり、腐ったりするディスクということです。
バトルの回数を重ねればだいぶ把握できるようになっていきますが、相手が防御を高めてきてダメージが通りにくいターン中はチャージを溜めて、相手の防御上昇効果が切れた際に大ダメージを与えるという使い方ができるとわかってきます。

攻撃を与えても無駄なターンを有効活用できるのがチャージディスクの良い点なのです。

チャージディスクをうまく活用できないプレイヤーが多いのか、いまだに不憫さはぬぐえきれず、よっぽどとがった特徴がない限りチャージタイプの魔法少女は不憫な扱いをされています。
運営側でできることは、もう十分にできているのではないでしょうか。

 

 

次にバトル要素に不満があるのは、バトルモーション、演出に対する不満です。
可愛さ重視のためか、戦闘中は2.5頭身のキャラが動きます。戦闘モーションも単純ではなく、凝った演出がかなり多いです。これはたくさんの魔法少女をバトルに参加させれば実感できます。

しかしそんな中でもバトルモーション、演出へ不満が出ています。
中にはみんな似たようなモーションだと不満を出すプレイヤーがいますが、それはおそらく特定の魔法少女しか使用していないからそう思うだけの的外れな不満です。

中には攻撃モーションが遅い魔法少女もいますが、最近になって高速化されたり、☆5覚醒によってモーションが改善されるという修正が行われています。
☆5覚醒することでモーションが速くなるという変化は、経験を積んで戦いの立ち回りがうまくなったという経緯も感じられて魔法少女の成長を実感できます。

正直言ってマギアレコードのバトルモーション、演出は文句の出しようがないです。
これでも不満があるという人は、格闘ゲームだけやってればいいんじゃないでしょうか。

 

 

1.2.2 ミラーズバトルシステムについて

ミラーズのバトルシステムは特にプレイヤーの不満が集中します。

ミラーズバトルは他プレイヤーが用意した魔法少女チームと戦うモードです。
リアルタイムに戦い合うわけではなく、あくまで相手はAIです。

ミラーズのバトルはストーリー中のバトルとは違って「最速クリア」に重点が置かれた特殊な仕組みに入れ替わっています。

まず違うのが、スキルは初手から使用できずターン酔いが発生している状態からスタートします。4-6ターンのクールタイムがあるスキルは3ターン目から、7-8ターンのクールタイムがあるスキルは4ターン目から使用できるなど、スキルの使用できるタイミングが特殊です。

そんな中で2-4ターンで勝負が決まるミラーズバトルにとって4ターン以降にしか使用できないスキルは「役立たず」とプレイヤーに認識されています。

また、ブラストコンボが猛威を振るいやすいバトルシステム上、縦横マスに全員並ぶようなT字や十字の陣形も「役立たず」とプレイヤーに認識されています。

さらには精神強化による潜在能力、アタック値やマギアの扱いやすさがキルタイムの速さに直結しない魔法少女は「役立たず」とプレイヤーに認識されています。

このように、魔法少女やメモリア、陣形はミラーズバトルを中心とした考え方で「役立たず」とプレイヤーに認識されているのが現状です。
このようなプレイヤーの認識はガチャシステムにも影響していて、「ミラーズで使えそうにないからパスで、ミラーズでぶっ壊れだから完凸させる」という思考が今後実装される魔法少女に追い風となってしまうのです。

ミラーズで使われなければガチャをまわしてくれないという思考を運営へ刷り込んでしまった場合、せっかく個々人に設定があるにもかかわらず設定を無視したぶっ壊れキャラだけになるという結果を招きます。

ガチャを回す、回さないの判断は個々人の自由ですが、「ミラーズで使えなければガチャは回さない」という考えが如実に出てしまうとこのゲームを滅ぼす結果を招いてしまうことは心のどこかに留めておく必要があります。

ミラーズバトルがクソといわれる大きな原因は、ミラーズランキングというものがあることです。
ミラーズランキングでもらえるものは称号だけですが、何よりもまず勝てないというのがクソクソ言われる原因です。

ミラーズバトルの性質上、純☆4魔法少女、限定魔法少女、限定メモリアが完凸前提という廃課金と豪運のプレイヤーが勝ちやすい傾向にあります。また、ランキング上位に行くためには「最速勝利かつ、最多コネクト数」が必要となってくるのもまたミラーズバトルに嫌悪感を抱く要因となっています。

2~3人の魔法少女で「最速勝利かつ、最多コネクト数」で勝利するという理論値まで導き出されてしまい、タスクキルに近い状況でした。
しかもそれができるのは、限定ガチャの魔法少女やメモリア、純☆4魔法少女が完凸していることが前提です。
そのため使用される魔法少女も特定の魔法少女だけになるという現象が発生し、自由度がなくなっていました。

運営へたくさんお布施をしたプレイヤーが報われるという思考は間違っていません。大金をつぎ込んだ見返りとなっているわけですから。
しかし、微課金や無課金プレイヤーへ逆転のチャンスがない点がないため格差が生じてしまっているのが事実です。

純☆4魔法少女、限定魔法少女やメモリアなしでミラーズに挑んでもAランク帯が限界です。Sランク帯は現状不可能に近いでしょう。

 

そんな格差が大きすぎるミラーズランキングへは大幅に評価ポイントの見直しが行われ、「最速勝利かつ、最多コネクト数」だけでは上位に食い込めないよう修正が行われました。

この修正が行われると、次はアクセルコンボが火を噴き、「最多コネクトかつ、最多マギア・ドッペル数」が上位になるというどのみち格差が縮まる結果とはなりませんでした。

この格差が埋まらない理由は、「ターン数ボーナス」が存在しているためです。
純☆4魔法少女と☆5昇格魔法少女とではステータスに差があり、バトル勝利までのターン数”キルタイム”にどうしても差が出てしまいます。

ターン数ボーナスがなければ永遠とダラダラバトルを続けて最多コネクト数、最多マギア数に到達した途端にHP回復できる全体マギアで〆ればだれでも理論値というものへは到達するでしょう。

しかしこれでは競技性が失われるのでターン数ボーナスが設けられているのでしょう。

こうして格差が埋まらずに今日までのミラーズランキングが開催されてきました。
使用魔法少女のレアリティが低いごとに勝利ボーナスが上乗せされるという仕組みを設けない限り、廃課金者へ微課金、無課金者との格差は埋まらないでしょう。

 

ごもっともなことを言うとミラーズバトルを熱心にやる理由はガチャチケット入手意外にほとんどないため微課金者や無課金者はこだわらない限りミラーズバトルに関わらないのが無難でしょう。

ミラーズバトルに勝てないからクソゲーという人は、ミラーズバトルに関わらず他の要素で楽しむことをオススメします。
それが嫌ならば廃課金者になるか、バトルロワイヤルゲームだけやってればいいのではないでしょうか。

 

1.3 シナリオに対する不満

マギアレコードのシナリオ全般はf4samuraiのシナリオチームが担当しています。
外伝物のコラボの際には外伝作者の監修を受けますが、外注でシナリオライターを雇っているわけではないようです。

物語には魔法少女まどか☆マギカの本編の時間軸から外れた世界で展開されていく円環の理の影響を受けていません。

実はこの時点でシナリオに対する不満が発生しています。

それは、魔法少女まどか☆マギカの続編物として期待していたがそのようなわけでもないというところです。
眼鏡をかけた状態の暁美ほむらが出てきて何週目の時間軸なのか、円環の理が作用していないのはおかしい、叛逆の物語の後はどうなったなど続編に思いを寄せるプレイヤーが望んだものではないということで不満が出ているのです。

そこから発展して悪魔ほむらが出ることのみ期待してストーリーに興味を示さないプレイヤーも多いです。

実は円環の理とのつながりはアルティメットまどかの魔法少女ストーリーを見るか、アルティメットまどかが実装された当時に流れたスペシャルのイベントを読まない限り誤解したままマギアレコードの物語を読み進めていくこととなります。読んでも理解できない、受け入れられないのであれば今後も誤解をしながら不満を募らせるだけです。

少し物語を理解する姿勢がなければ、少し物語を飛ばしただけでなにをやっている物語かわからなくなります。
また、イベントストーリーをメインストーリーとつなげて考えようとすると絶対繋がらない箇所が出てきます。これも各ストーリーを熟読して人間関係を理解しなければ誤解したまま進みます。
中には”あったかもしれない”の考えであるイベントストーリーが存在します。
神浜市年表のように、”あったかもしれない”のイベントストーリーを切り捨てない限り間違いなく矛盾だらけでまとまることがないでしょう。

この、ただ見るだけではストーリーを把握しにくいのが単純な理由でストーリーに不満を持つプレイヤーが多い理由なのでしょう。

残念ながら魔法少女まどか☆マギカ同様、少し考えながら見ないと何をやっているのかわからない物語構成です。物語を見て苦にしか感じなかったプレイヤーは、おそらく今後のストーリーも肌に合わないと思うので文句を言わずに退くことをオススメします。

 

 

さて、そんなストーリーですが第二部に入ってからの不満が特に強くなっています。それは、原作組が出なくなったことと、理由の分からない妬みで神浜マギアユニオンへつっかかってくるプロミスドブラッドの存在が影響しています。

まず原作組がメインストーリーへ参加してきたのは第3章あたりからです。
それまではアナザーストーリーで顔出しさせていたので最初からメインストーリーに登場しているかのような錯覚を起こしていましたが、実際は物語が三分の一進んでから登場しているので、今後出てくる見込みはあります。

この原作組が何をしているのかわからないという不安は、いろはがメインストーリーの中でまどかへ連絡を行う描写を少し入れるだけで今後メインストーリーに関わってきそうという期待をもたせることができます。
第3章が終わるまでは辛抱強く見守りましょう。

 

さて、第二部の物語ですが、キモチのブレスレットを集めるという、第一部のウワサ調査のように淡々と何かを探すことが初期の目的となっています。
第二部から違うのは外部の勢力が”理解しがたい理由”で邪魔をしてくることが問題なのです。
プロミスドブラッドはマギウスが行った周囲の町にいる魔女を集める行為の影響を受けたメンバーであり、そのせいで自分たちのテリトリー二木市で魔法少女同士の殺し合いを行っています。

仲間同士で殺し合わせた苦しみを神浜へも思い知らせるというのがプロミスドブラッドの大きな目的であり、神浜にある魔女にならないシステムを手に入れるのは二の次となっています。
さらには知略のある振る舞いをするにもかかわらず、魔女にならないシステムを奪った後にも争いが生まれ、仲間が死ぬリスクを高めているという予想をしようとしないこともプレイヤーの理解を苦しめる要因を作っています。

 

理由も話さず、一方的に恨んで殺しにかかるだけでなく相手を理解しようとしないというのは人間らしい思考ではありますが少なくとも感情移入はできません。どんな凶悪な敵を作り上げても、アリナのような”すがすがしいほどの邪悪”か”信念を理解できる悪役”でない限りストーリーの害としかなりません。

 

本来であればバックストーリーとなるもので”信念を理解できる悪役”へ持っていけるはずが、二木市の内部紛争が治まった理由は神浜へヘイトを変えただけのその場しのぎにしか見えないことも悪影響となっています。

この第二部の展開に対するプレイヤー不満はごもっともであり、この路線があるからこそ結末で劇的に良作といえるような展開が行われなければ駄作と判断されてプレイヤーが離れていくことでしょう。
しかしまだ第二部は始まったばかりなので今後の展開を温かい目で見守りましょう。

プレイヤーの不満を少しでも和らげるため、メインストーリーの進行は定期更新にしたほうがプレイヤーも期待できるので良いと思います。

 

1.4 他機能に対する不満

他の機能面について不満が多いのはアプリの容量です。
2020年の6月時点でマギアレコードのアプリ容量は8GBほどあります。もはやこれは並のスマホではまともに扱える容量ではなくなっていて、この容量が大きすぎることを理由にマギアレコードをやめてしまうプレイヤーが多いです。
しかし、幸いマギアレコードはPCでも操作できるようになっているためスマホでできないならばPCでプレイするという道があります。
PCがなければ、やめざるを得ないでしょう。
ここまでアプリの容量が大きくなっている理由として、約3年間のデータが蓄積されているだけでなく、LIVE2Dのデータ、ボイスデータといったクオリティを上げるためのデータが多いのも理由です。
ボイスデータの読み込みを拒否すれば5GB程度まで抑えられるかと思いますがそれでも多いというのが正直な感想です。

この容量が大きい問題はマギアレコードではなくFGOも同等程度の容量を食うのでマギアレコードに限った問題ではありません。

今後も容量が増え続けるのは必至なので、スマホにこだわらない限りはPCでのプレイを視野に入れたほうが良いと思います。

 

育成関係の不満としては、原点の器が課金者限定の品となっていることが不満として挙がっています。
原点の器は、精神強化をリセットできるというものであり、これが気軽に使えるようになれば戦術に応じて精神強化のラインを工夫するという戦術も生まれてきます。スキルポイントを使用するゲームの中にはこのリセットを気軽に行えるようにして、バトルの環境変化へ対応しやすいよう配慮されることがあります。

マギアレコードのこのリセットできる品が課金前提というのは悪手であり、プレイヤーへの不満が募るのもごもっともです。
今後は精神強化のできる数が拡張されるという話もあるので、精神強化項目をリセットしやすい環境づくりは大事だと思います。
課金しなくても入手できる方法として、ミラーズコインの報酬にしておけばバトル重視のプレイヤーは喜んでミラーズに挑むことでしょう。

 

2.総評

マギアレコードに対する約2年間の総評としては、第一部完結までは良作といって間違いないでしょう。

魔法少女まどか☆マギカというバケモノタイトルへの期待をあまり裏切ることなくプレイヤーを満足させて完結させたことはとても良い成果です。
また、少しでもプレイヤーの不満、負担を軽減させるような取り組みが熱心に行われていたことも高評価できるポイントです。

プレイヤー側の質としてはあまり良いものではないと感じました。
「お知らせを読まないモキュ」と言われるまでは優しいものですが、何かと因縁づけてクソゲー呼ばわりするプレイヤーが一定数いるのは残念だと思いました。

大抵それらの発言は少し考えれば、工夫すれば終わるだけの話が多いためプレイヤー側の努力が足りないのは残念なことです。

細かいところを見れば運営の努力不足な点もありますが、アニメ化もされて第二期の予定があるあたり、マギアレコードは今後も安泰でしょう。

 

3.今後のマギアレコードについての見解

第二部に入ったマギアレコードですが、公開できるストックがなくなったかのように評価が下がるような行いが目立ってきています。

ストーリーの内容、新要素の内容や新鮮なものが展開される間隔など荒い部分が出てきています。4月頃から始まった新型コロナウィルスによる影響も考えられますが、復刻が目立ったりと新鮮さに欠ける期間が長いと感じることが多いです。
新OPが公開されたことで多くのプレイヤーのモチベーションが高まった点は大成功ですがそのモチベーションが維持されることはありませんでした。

外伝コラボのストックも無くなってきている中、かずみマギカは作者との折り合いができずにコラボイベントを開けない(実際、かずみマギカの絵師が担当したオリジナル魔法少女だけが存在しない)、おりこマギカのイベント自体がないなど、外伝に頼ったイベント展開が難しくなってくる頃です。

まどか☆マギカらしくない要素を毛嫌いするプレイヤーが多い中(アザレアイベントの際に如実にその傾向がみられた)、今後どのように外伝コラボに変わるイベントを展開するのか、制作側に期待です。

少なくとも、メインストーリーにこびりついた不満は早めに拭えるような展開を用意すべきです。そうでなければ、メインストーリーのせいでやめるプレイヤーが増えます。

 

今後の課題としては、メインストーリーの展開、外伝コラボがなくなったときの新しい立ち回りが重要となってくるでしょう。

 

運営もそうですが、プレイヤー側からもマギアレコードが好きならばフォローする立ち回りを行うことも重要です。
プレイヤーが良い内容で盛り上がれば運営もやる気が出ます。

お互いに気持ちを高めあい、マギアレコードが長く続いていくことを祈ります。

 

 

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-1 結んで、ひらいて

黒いオーラの魔法少女というドッペルに続く出会ったことのない魔法少女の形。

少なくとも神浜に近づかなければ出会うことはないとのことですが神浜にいけなければれば鹿目さんがいつ魔女化するかわからない日々が続くだけで心が休まる隙がない。

私たちはあの日以来、巴さんから神浜には近づかないようキツく言われています。

命の危険があるのもそうですが、いちばんの理由は人殺しをさせたくないからという理由。

黒いオーラの魔法少女を止めるためには殺す以外に方法がありません。

神浜にいれば安全かと思われたこの世界線に現れた新たなる危険分子。

私は二度と巡り会えないであろうこの時間を守るためにも、黒いオーラの魔法少女になった場合の安全な対処法を探しに時々神浜へ訪れていました。

神浜へ通うことで知ることができたのは、黒いオーラの魔法少女を助けることができる人は確かにいるということ、そして日継カレン、紗良シオリという魔法少女が何か知っているのではないかという情報が手に入りました。

魔法少女のSNSでも情報は流れてくるのですが、現場で聞くほうが信憑性がありました。

しかし神浜にいる魔法少女に揃って言われるのが、紗良シオリ達には手を出さないほうがいいという話。

噂によれば、彼女達と会ってしまうと黒いオーラの魔法少女にされてしまうとのこと。

黒さんとも情報交換を行っていたのですが、どうやら元マギウスの翼のメンバーで黒いオーラを纏った状態から助けられた魔法少女が多くいるという情報を入手しています。

今日はこの情報をある魔法少女へ伝えるために神浜へきています。

神浜へ調査に来ているうちに神浜では会ったことがない魔法少女によく出会うようになりました。

初めて会った時は神浜の魔法少女なのかと注意深く聞かれましたが、違うとわかってもらえると気軽に話すようになりました。

名前は大庭樹里さん。

お姉さんと妹さんがいる三姉妹らしく、神浜から遠く離れた場所からきたとのことです。

樹里さん達は紗良シオリさん達を探しているようで、シオリさん達を見つけたら教えるという約束をしてよく情報交換するようになりました。

今日は樹里さんと出会う約束をしているのですが、指定の場所へ行くと少し騒がしい雰囲気でした。

「おい!いい加減正気に戻れよ!」

「聞く耳持たずって感じねぇ。それに体とつながっている魔女みたいな生物、さくやが言っていたドッペルという現象ね」

「冷静に分析してる場合じゃないぞ長女さんさ!」

樹里さんと他大勢の魔法少女達は黒いオーラの魔法少女と対峙していました。

話を聞いている限り、どうやら黒いオーラの魔法少女は仲間の魔法少女のようです。

黒いオーラの魔法少女は背中からカカシのようなドッペルを出していて、カラスの姿をした使い魔を飛ばして攻撃していました。

加勢しようにも、わたしにはこの状況を穏便に治める方法を持ち合わせていません。

誰かが殺されそうな状態になったら、その時は最悪の手段を取ることにします。

いつでも動けるよう構えていると樹里さん達に動きがありました。

「わたしが殺すわ。このままでは救いようがない」

「・・・いいのか、あいつは虎屋町の、長女さんとこの仲間じゃないか」

「だからこそよ。貴方達に仲間殺しは、もうさせたくないのよ」

長女と呼ばれる魔法少女はその場から動こうとしない黒いオーラの魔法少女へ瞬時に近づき、大きな金棒でソウルジェムを砕きました。

周囲を飛んでた使い魔は次々に灰へ変わっていき、魔法少女だったものが倒れていました。

樹里さんはその場に膝をついて地面を殴りました。

「畜生、ドッペルってやつを出せば魔女化しないって聞いていたのになんだこれは」

黒いオーラの魔法少女が神浜に最近現れるようになったって話は聞いていたけど、こういうことだったのね。これは早急にことを済ませないといけないわね」

一旦戦いは終わったようなので私は樹里さん達の前に姿を見せました。

「ん、誰っすか」

「ああほむらか。さっきの戦い、見ていたのか」

「・・・ええ」

「貴方が次女に協力してくれてる暁美ほむらさんね。私はプロミスドブラッドの長女、紅晴結菜よぉ。さっきの状況を静観していたということは、貴方もあの状況を打破する方法を知らないのね」

「はい、すみません」

「なんだよ、収穫なしってことかよ」

「でも、黒いオーラを纏った後に助けられた人の居場所を掴むことはできています」

「え、それってあの状態になっても助かる見込みがあるってこと?

「どうやって助けてもらったかは、話を聞いてみないとわからないです」

「ならさっさと行こうぜ。絶対に助ける方法を聞き出してやる」

「でも少し確認させてください。みなさん、マギウスの翼という言葉に聞き覚えはありますか」

「マギウスの翼だと、二木市から魔女を奪った奴らじゃないか。まさか今回の件も奴らの仕業なのか」

変に深読みされてしまうのは予想の範囲内でした。

マギウスの翼を話題に出したのは、樹里さん達が妙に神浜の魔法少女へ妬みを持っているからです。神浜の魔法少女が他の街から妬まれる理由は魔女を集めていたこと魔女にならないシステムを独占している事くらいしか思いつきません。

私は樹里さん達へ場所を案内するためにはマギウスの翼のメンバーへ危害を加えない、脅迫しないという条件を出しました。

これも黒さん達へ迷惑をかけないためです。

しかし結菜さんと樹里さんは条件を守れないと断ってきました。

憎むべき相手と争うなというのは無理な話だとのこと。

いまはそう言っている場合ではないというのに。

しかし一人だけ条件を守っても良いという魔法少女がいました。

名前は笠音アオさん。

他のメンバーも首を横にしか振らなかったため、アオさんと一緒に黒さんの元へ向かうことにしました。

しかしこのまま別れても跡をついてくるのは容易に思いつきます。

「アオさん、少し手を繋いでいてもらえますか」

「え、いいけど」

私はアオさんの手を掴み、一定時間の間、時間を止めました。

「うそ、周りの時間が止まってる」

「手を離さないでついてきてください。離してしまうとアオさんの時間も止まってしまうので」

そう言って樹里さん達がいた場所から離れた後、歩きながら私はアオさんへプロミスドブラッドの目的を聞きました

プロミスドブラッドの目的は神浜市にいるという自動浄化システムの広げ方を知っている日継カレンと戦い、勝った暁には広がった自動浄化システムの所有権を譲ってもらうということ。

そして神浜の魔法少女へ利用料を支払わせるという目論見があると教えてもらいました。

なぜ、と問いかけると私たちと同じ苦しみを味合わせるためと言う回答が返ってきました。

二木市がどんな状況であったのかは分かりません。なので、否定するのもおかしなことでしょう。

しかし、考え方が間違っているというのは確かです。

黒いオーラの魔法少女もそうですが、二木市の魔法少女にも注意した方が良さそうです。

口を開かず移動する時間が長い中、私たちは黒さんが待っている大東区の廃墟へとやってきました。

「黒さん、欄さんお待たせしました」

「やあ、ほむらさんと、どちら様かな?」

「ちょっとそこで知り合った者でーす」

欄さんにはアオさんのことを神浜の外からきた魔法少女とだけ説明し、本題について早速話してもらいました。

今日呼んだのは黒いオーラの魔法少女について私たちなりに調べがついたからなんだ」

「え、でも神浜マギアユニオンのSNSでそんな話はなかったですよ」

私たちには元マギウスの翼で繋がった別の情報ルートがあるんだけど、そこでやりとりをしていたんだ。

そんな中で被害者となった彼女達が黒いオーラの呪縛から解かれたって話を聞いて、調べがついたってわけ」

「彼女達っていったい」

「私たちのことなの」

物陰からいきなり現れたのは、マギウスの翼のローブに似た服装をした魔法少女数人と緑と赤色の魔法少女でした。

緑色の魔法少女は宮尾時雨さん、赤色の魔法少女は安積はぐむさんです。

彼女達はマギウスの再興と魔法少女主義を謳うネオマギウスという組織を作る予定の魔法少女達でした。

しかしその勧誘中、糸を使う魔法少女の機嫌を損ねてしまい、痛手を追ってしまったとのこと。

その後日、数人のメンバーが黒いオーラに包まれて暴走したものの、ある騒動の中で黒いオーラが取れたというのです。

「ボクたちは暴れていた時の記憶は微かにある。でも、どうやって助けられたかはわからない」

「ただ一つ言えるのは、助けてくれた人はドッペル5体の攻撃を防げるくらい凄い人ってだけなの」

「他に特徴はなかったわけ?姿とか、魔力反応とか」

「実は助けられた時のパターンが2種類あるんだ。ひとつはなんの痕跡も残さず助けられているパターン。

もう一つは、助けられた時に集団の魔法少女が目の前にいるパターンだ」

欄さんがいうには、はぐむさん達が遭遇した助けられたパターンよりも、集団の魔法少女が目の前にいるパターンの方が痕跡を辿りやすいとのことです。

なんでも、突然現れて突然助かっていたパターンは、魔力反応が一切なかったとのことです。

神浜には既に助ける方法が2パターン存在する。でもその方法が広く知れ渡っていないのはなぜ?

「複数人に助けられた場合には、決まって南凪区の施設で目を覚ましたって話を聞いているよ。でも看病してくれたのは名も知れない一般人みたいでね、誰がどう助けたまでは私たちでは知ることができなかったよ」

「でもね、助けられた人の中に神浜マギアユニオンのリーダーと親しい人がいたみたいでね、近々やる大きな会議の中でいろいろ報告してくれるみたいなんだ。

何でも、一部の人達が紗良シオリっていう日継カレンの仲間を瀕死に追い込んだ結果報告もされるとか」

「あの魔法少女を、瀕死に?!」

アオさんはポーカーフェイスで話を聞いている中、紗良シオリという魔法少女の話が出た瞬間、表情を変えました。

「やっと違う表情をしてくれましたね。アオさん、知ってることを教えてもらえないでしょうか」

欄さんが問いかけますが、アオさんは黙ったままでした。

「貴方の都合は聞きませんが、今は手を取り合うべきです。紗良シオリと日継カレン、彼女達を野放しにしておくと、誰のためにもならないと思うんです。

もちろん、貴方の仲間も」

「どうして彼女達ばかりを敵視するの?」

「黒いオーラの魔法少女になったメンバーと時期、その中心にある事象、それは

“日継カレン達と接触していること”

今私たちの見解としては、彼女達によって黒いオーラの魔法少女が誕生してしまったと考えています。

これで理解できましたか」

「…少しね」

「協力してもらえるのであれば、会議の開催場所を伝えます。ほむらさんには後で送っておきますね」

「はい、ありがとうございます」

欄さんは冷静に話を進めてくれました。

マギウスの翼の白羽根として活動していた彼女は、元から戦う素質があって、影ながら多くの人に慕われていたのです。

そんな彼女がマギウスの翼に参加していた理由は、魔女化しない世界にするためにでした。
あそこまで冷静に行動ができるなら、神浜マギアユニオンでも活躍できそうなのに。

私は建物を出た後、アオさんに問いかけました。

「会議に参加すれば多くの情報が手に入るかもしれません。それなのに、まだ納得できないんですか」

「私の中では納得してる。でも姉さん達を納得させることはできない。欲しいと思う情報も不確かで、参加すれば必ず私たちの目的を果たせるとも限らない。
そんな賭け、誰も乗らないよ」

「伝えてみたらどうですか、自分の意思を」

「無理だよ。私は三女、末っ子で一番弱い。姉さん達に押し切られて終わりだよ」

年上や実力が上の人に意見を言うのはかなりの勇気が必要。私も巴さんへ何か意見を言うのは躊躇していた。

でも、実際は巴さんも求めていた。遠慮のない私たちの意見を。

そのおかげで巴さんは立ち直れて、今ではみんなで魔法少女の宿命に立ち向かえている。

偶然かもしれないけれど、過去に繰り返した世界に比べたら、少しわがままに立ち回ったからここまで来れたのかもしれない。

アオさんも、伝えなきゃ間違った方向に。

「少しはわがままな態度を見せてもいいかもしれませんよ」

アオさんは何も話してくれませんでした。

「私、近くの駅で待っていますね。1時間くらい待つので、その気があれば、駅まで聞きにきてもらえますか」

アオさんはしばらく私の目を見た後、話しはじめました。

「来てよ、次女と対等に話せたんでしょ。うちの場合、長女さんよりも次女さんの圧で押し切られるんだよね。
フォローしてよ」

「アオさんが、参加を心から望んでいるならフォローしますよ」

そう言って結局私は二木市の魔法少女達のアジトまでついて行きました。

入り口の扉を開くと、そこには樹里さん達が立って待っていました。

「ったく、遅いぞ」

「でも驚いたわ、ここまで暁美さんを連れてくるとは思わなかったわ」

「アオさん、これはどういうことですか」

少し周りがざわついた後、アオさんが一歩踏み出して話を聞きに行った結果を話しはじめます

神浜の魔法少女は紗良シオリ達を討伐することに専念していること。彼女達の行いが他の魔法少女にどのように影響していくのか。

そして、情報共有を行う会議に参加しないことがどのような意味を持つのか

アオさんは聞いた結果をねじ曲げることなく素直に話しました。そして。

「私は会議に参加した方がいいと思う。神浜の魔法少女の方が彼女達のことをよく知っているみたいだし、それに他の地域からきた魔法少女も招待しているみたいなの。

神浜に協力するかは別として、情報収集って意味で参加した方がいいんじゃないかな」

「ほう、それが実際に見聞きしてきた答えか。神浜の奴らに何か吹き込まれたんじゃないよな」

「そんな事はないよ」

「本当か?ドッペルってのは奴らが考えたシステムから生まれるやつだ。それを利用して混乱させてるだけじゃないのか」

「アオさんがしっかり説明したはずです。神浜の魔法少女にも被害が出ているって事、そして被害にあった人は揃って日継カレンと出会っていると」

「お前に言われなくてもわかってるっての!」

「ならば!」

「やめなさい、次女が癇癪起こす理由は大体わかるわ。それが本当ならば私たちはいつでもああなってしまう可能性を孕んでいることになるからね」

樹里さんと調査をしている時に聞いた日継カレンと戦った事。

大勢で挑んでも歯が立たず、今回はそのリベンジに来たという話も。

「そんな状況下で神浜の魔法少女と争うのは、タイミングが違うと思うんです。そうじゃないと、日継カレンを倒す前に貴方達が折れちゃいます」

樹里さんはその場にいじけて座り込んでしまいました。

「貴方に言われなくても私たちは理解しているわ。日継カレン達を倒すのが最優先事項だという事はね」

「じゃあ!」

「私たちプロミスドブラッドもその会議に参加するわぁ。異論がある子はいるかしら」

「奴らの下につくってわけじゃ、ないんですよね」

「もちろんよぉ。神浜の魔法少女が持っている情報を根こそぎ聞いて私たちは独自の行動をとる予定よ。
次女もいいわね」

「・・・いいさ。なんか余計なことしてきたら我慢はできないがな」

「次女さんは我慢をもう少し覚えた方がいいんじゃない?」

「うるせーよ、らんかは」

「はいはい」

二木市の魔法少女も参加してくれるとのことなので会議の開催場所をスマホの画面で教えました。

場所は鏡屋敷の大広間。
果てなしのミラーズがある場所で、日継カレン達が近づかない場所だとされているからです。

開催は明日。
とても急ですが、それでも鏡屋敷に入りきらないくらいの魔法少女が集まると予想されているらしく、まともに進行できるのか不安なところもあります。

情報を伝え終わると結菜さんに話しかけられました。

「暁美さん、次女と対等と話せるなんて、強い心を持ってるのね」

「最初は怖い人かと思ったんですけど、接しているうちにお話ししやすい方だと感じてきましたので」

「次女さんからは暁美さんは強いって聞いたんすけど、本当っすか?」

「えっと」

一気に周りから問いかけが飛んできました。話してみると神浜の方達と何も変わらない同じ魔法少女だと感じました。

少々戦いを好む方もいますが、ただ魔法少女を殺すことが目的ではないのだなと分かりました。

しかし、神浜の魔法少女は許せないという意思は貫いていて、今後仲良くして行くには難しそうだと思いました。

私は皆さんと別れて見滝原の帰路についていました。

もう夕方近くだけど、会議の話はみんなにしておかないといけない。

どうやってみんなに伝えようかと悩みながら改札を出ると、腕を組んで待っている巴さんがいました。

「用事があるって言っていたけど、この時間に着いた電車は確か神浜から来る電車よね」

完全に待ち伏せされていました。

「神浜へいま行くのは危ないって伝えているのに、ホント暁美さんは話を聞いてくれないんだから」

「すみません、でもどうしてもみんなに伝えたい話があるんです」

「私は反省してくださいって話をしてるの」

「はい、ごめんなさい」

「全く。それで、言いつけを破ってまで欲しかった情報はなんだったのかしら」

この後、巴さんに神浜で行われる会議の話をすると、みんなで行くことを条件に参加することとなりました。

鹿目さんや美樹さん、佐倉さんも参加することとなり、私たちは揃って神浜へ行くことになりました。

私たちがあまり拘らなくなってから大きく変わってしまった神浜の事情。

この時間軸を守るためにも、私は彼女達を止めないといけない。

それが、鹿目さんを守ることになるから。

 

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-20 堕ちはじまりし魔法少女

気がついて目を開けたときに感じたのは、冷たいコンクリートの床の感触と吹き抜ける風の冷たさ。

そして周りを見渡してみると腕を組んで壁に寄りかかっているカレンさんと体育座りで顔をうずめているかりんちゃん、そしてかりんちゃんを見つめるピリカさんがいました。

「ここは」

私がそう呟くとかりんちゃんが顔を上げて私に近づいて来て目の前に座りました。

「いろはさん、お願いなの。先輩を、アリナ先輩を助けて!」

いきなり行方不明のアリナさんの話が出てきて話に追いつきませんでした。

「こら、事情も説明しないで頼んだって困るだけでしょ。まずは事情を説明させてくれるかい、いろはさん、あとはピリカも」

ピリカさんはどうやらカレンさん達の仲間らしく、別行動をしていたのは神浜市を見極めるためだったとのこと。

見極めた結果を聞きたいのは山々ですが、今はアリナさんを助ける事情を教えてもらっている最中です。

「元マギウスの一人、アリナ・グレイを助けたい理由はマギウスの経緯を知りたいという理由と、彼女が張っている被膜を解除してもらうためだ」

「張っている皮膜を?でも、アリナさんのソウルジェム、ヒビが入っているのでそんな膨大な魔力は行使できないと思うんですが」

「現にキュゥべえは今だに神浜へ入ることができない状態だ。この状態は私たちの計画にも支障をきたすんだよ」

「キュゥべえと契約させるために、ですか」

「そうさ。一人の願いでみんなが救われる。しかもすぐに魔女化してしまうような結果もドッペルを出すだけで終わるんだ。これ以上に簡潔な方法はないはずだよ」

願いを叶えるはずの少女の意思、そしてその結果生じてしまうという人へ降りかかる呪い。

この人たちはそんな結果が待っていようと最善策を考えようとしてくれません。

きっと、アリナさんの意識を取り戻してしまうとカレンさん達の計画は加速するでしょう。

でも、それがアリナさんを助けない理由にもならない。

かりんちゃん、この人たちの目的を知った上で協力してるんだろうか。

「かりんちゃん、カレンさん達が何をしようとしているのかわかってるの?アリナさんを助けたら、キュゥべえが神浜に入れるようになってたくさんの人が、また不幸になるかもしれないんだよ」

この人たちがやろうとしていることは怖いことなんだってことはわかるの。でも、一番怖いのは助けたい人を助けられなかったって後悔するときなの
みんなに普通に伝えたらアリナ先輩は間違いなくひどいことをされるの。
それに、シオリさん達はアリナ先輩を守ってくれるって約束してくれたから」

「それは楽観的すぎるよ。アリナさんだって、あの時と同じままだったら」

「アリナ先輩は私が説得するの!だからお願い、アリナ先輩を目覚めさせてあげてほしいの。みふゆさんの時のように」

アリナさんのソウルジェムはヒビが入っていて、みふゆさんの時くらい損傷していました。

「補足しておくと、この状態でも魔力は消費していてね、実は何度かドッペルが出ているんだ」

「ソウルジェムが、こんな状態なのにですか?!」

「正直私も驚いているよ。ソウルジェムへ負荷がかかっているはずなのに砕けずに耐えているのが奇跡なくらいだ。でも確実にヒビは深くなっている。もうそんなに長くは保たないだろう」

「お願いいろはさん、時間がないの!」

アリナさんを助けるべきか否か。

いつも選択が迫ると近くにいるはずのクレメルの姿はなく、相談できる人もいない。

助ける理由も、断る理由も実はない。

この人はねむちゃんによって偽りの記憶を植え付けられた結果、あんなひどいことをしてしまっただけでかりんちゃんの言う通り優しい人なのかもしれない。

でも、やちよさんによるとアリナさんは元々価値観は特殊で、ウワサに操られていない状況でも同じことを繰り返しかねないともいっていた。

確かに、アリナさんが作った死者蘇生シリーズの作品を見たときは、初めて会った時のアリナさんそのままの印象と一致してしまった。

でもそれはあくまでアリナさんの一面。かりんちゃんが言う、優しいアリナさんも別の一面。

どちらも不確定な要素でどの選択を行ってもみんなは納得できない

最善の、最善の方法は。

 

私は大きく深呼吸をします。

「わかった。アリナさんを助けるね」

「はあ!本当!?」

「でもかりんちゃん、約束して。
かつて灯花ちゃんやねむちゃんが受けたように、アリナさんも裁判を受けてもらうから。そこでかりんちゃんの知っている優しいアリナさんをみんなに教えてほしいの。そして、みんなが納得する結果になるよう、アリナさんを説得してほしい。
もちろん、かりんちゃんも納得するようにね」

「わかってるの」

私はアリナさんの指にはめられたソウルジェムへ魔力を注ぎます。

助けたいという、ただそれだけの想いで使用することができたソウルジェムを修復する魔法。

助けなくてもいいという雑念がこもらないよう、ただ助けることだけに集中しました。

かりんちゃんを、これ以上悲しませたくないから。

少しだけ時間が経過し、アリナさんのソウルジェムは修復されましたが、アリナさんは眠ったままでした。

「これで、あとは気がつくのを待てばいいはず」

きゃあっ!

かりんちゃんの叫び声の方を向くと、かりんちゃんは糸でぐるぐる巻きにされていました。

「環いろはさん。蘇生の力、確かに拝見させてもらった。その命を救済する力は、私たちには必要だ」

「シオリさん、カレンさん、何をしてるんですか。かりんちゃんを離してください!」

「なに、アリナ・グレイの意識を取り戻すという目的もあったけど、一番の目的は貴方だ。蘇生できるというウワサ程度の話を目の前で観測できたんだからね。感謝しているよ」

私は急いで逃げようとしますが、素早くピリカさんに首を掴まれ、壁に打ち付けられてしまいました。

ピリカさんの手には、禍々しいオーラを放つ剣が握られていました。

私は首を掴まれたまま足が浮いた状態だったのでだんだんと意識が朦朧となっていきました。

「ピリカさん、なんで」

「私が神浜を見定めた結果を伝えていませんでしたね。

環いろはさん。

私は、貴方達の行動理念、そして、人と共存しようとする貴方達の考えを容認できません。

西と東の不毛な考えは人から魔法少女へ伝染し、魔女化の恐怖から逃れられても文化とお金によってさらなる絶望を生むでしょう。

なので貴方には見直してもらいます。

本当に人は、助けるに値するのかを!」

私のお腹を、ピリカさんの剣が貫きます。

かりんちゃんが泣きながら何か話しかけてきますが、呼吸できなくて変に頭に熱がこもっていた筈ですが、どんどん血が抜けるように、どこかに沈んでいくように寒く感じてきました。

この感覚はそう、初めてドッペルを出した時と同じ感覚でした。

 

 

 

 

長いドリームの中にいた。

ホスピタルの上から飛び降りようとした日から、アリナはナイトメアのようなアメイジングな夢を見ていたのかもしれない。

でもそれはリアルで、ノンフィクションだとフールガールの声が語りかけてきていた。

記憶も鮮明だし、嘘ではないと思うんだけど、今目の前で起きていることは、何のおふざけだと疑ったワケ。

捕まったフールガールに、血を流しながらドッペルを出す見覚えのあるピンク髪の少女。

そして、見覚えのない三人。

そのうちの一人が、アリナにこう話しかけてきた。

「おはよう、アリナ・グレイ。悪いが、あの化け物を閉じ込める檻を用意してもらえないか?」

「…ワッツ?」

 

第二章:アツァ リマ エノキゲン ハ センノウ 完

 

 

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【マギアレコード】 神浜市年表(ストーリーまとめ) 下巻

時間遡行のその先
誰もが予想しなかった繰り返しの連鎖から外れた特異なレコード
それが”マギアレコード”
レールを外れたその内容は日に日に不安定さを増し、いつ壊れてもおかしくないほど不安定な溝が刻まれてゆく

マギアレコードには

・主人公「環(たまき)いろは」を中心にしたストーリー「メインストーリー」
・アニメ「魔法少女まどか☆マギカ」5人に焦点を当てた「アナザーストーリー」
・各魔法少女に焦点を当てた短編ストーリー
・鏡の魔女の用意した結界で起きるストーリー
など数多くのストーリーが交差しています。そのため、どの話がどうつながっているのか、また、まったくつながりがないのかわかりにくくなっています。

ここでは、このわかりにくくなっているストーリーを年表としてまとめていきます。

☆4キャラのストーリーは、入手後に魔法少女ストーリーで確認を行うという調査方法のため、かなり後になってから明らかになるかと思いますが、ご了承ください。

※ネタバレについては気にしないという方のみ閲覧してください。

 

*caution*

この年表作成にあたり、マギレコ内で開催された季節イベント、コラボイベントはメインストーリーで触れられたもの以外記載しないことにします。

理由としては、メインストーリーの季節が不明であること(特にホーリーマミの「突然失礼」冬イベント)。季節イベントのストーリーは、IFの扱いとします。 下巻ではメインストーリースタート時点からの内容を扱っていきます。

 

  上巻(メインストーリーがはじまる前の過去)     

集結の百禍篇

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-19 選択肢を開拓する者

事の発端は私がつづりさんから縁切りを教えてもらってから数日後のこと。

学校である方に話しかけられたことから始まります。

「夏目さん、今日放課後空いてる?」

「ちひろさん、特に予定はないですが」

「じゃあラーメン食べに行こ!私美味しい新店見つけちゃったんだ」

「ぜ、ぜひ行きます!」

「うん、じゃあ放課後に校門前ね!」

話し相手はちひろさんと言って、実は蒼海幇のメンバーです。

美雨さんとラーメン屋巡りをしている際に知り合い、美雨さんと親しげに話せる珍しい人だってことから興味を持たれてしまい、仲良くなっていました。

彼女もかなりのラーメン通であり、美味しさだけでなく面白さからラーメンを楽しんだりとかなり気の合う人です。

今回は参京区に出来た新しいラーメン屋に来たのですが、ここの目玉は甲殻類をダシのベースとした塩ラーメン。

しかしちひろさんはこってりした味噌のスープにスパゲティみたいな太い麺が入った変わったラーメンが目的だったようです。

出て来たラーメンを見てみると、ちょっとミートが多めな味噌味スパゲティにしか見えませんでした

学校のたわいもない会話を展開したあと、ちひろさんが話を切り出しました。

今日夏目さんを呼んだのはラーメンを食べる以外にも目的があってね」

そう言ってちひろさんは茶封筒を私に渡して来ました。

「これは?」

「最近美雨さんが誰かを探しているらしくてね、美雨さんがいない間にこっそり机の上にあった写真を見たのさ。

そこには帽子をかぶってメガネをかけた小さな幼女!

まさかそんな趣味がって思ったけどそんな事ないからきっと別の事情があるんじゃないかなって」

最近写真で誰かを探してるといえば、シオリさんくらいだと思うけど。

そこには私たちがお忍びでターゲットを探し回った結果が入ってるんだ。うまいことごまかして渡してもらえないかな」

「どうして私が。直接渡せばいいんじゃないですか?」

「いやね、美雨さんは私たちが余計なことに首を突っ込むと必ずと言っていいほど粛清を喰らわせてくるんだよね」

「ええ?!」

「ガチな怖いやつじゃないよ。力仕事の互助活動に強制参加とかそんな感じだから。
でもそのお仕置きのせいで美雨さんの目が届く中央区の学校に強制転校させられた子もいたらしくてね。私はそれが一番嫌なんだ」

「ちひろさん」

「何かといじめも多いけどさ、新西区のマンモス校のみんなといると楽しくてさ。できれば離れたくないんだよね。
だから、夏目さんから渡して欲しいなって」

私は茶封筒を鞄にしまいました。

「わかりました。渡しておきますね」

「ありがと!」

茶封筒についてはななかさん達と中身を見たのですが、そこにはピンポイントにシオリさんの目撃履歴が紙やら写真で入っていました。

「随分と詳細な調査情報ですね。かこさん、探偵でも雇いましたか?」

「え、私そんなお金ありませんよ」

「冗談です。しかし、私たちの行動できない昼間の目撃情報が多いですね。自由に行動できる彼女達とはここで差がついてしまっているようですね」

学校が終わってから会うことがないってことは相手もリスクを理解して行動してるって事だよね」

なんとかちひろさん達が集めた情報だと感づかれる事なく渡すことができ、ある行動原理が見えて来ました。

「どうやら中央区だけは遅い時間でも姿を表しているようですね。
場所は電波塔近くのようです」

「なら電波塔で張るか?」

「いえ、葉月さん達によればシオリさん以外にカレンさんも付き添って行動しているようなので一人になる瞬間を見極める必要があります。

ここはあえて中央区の監視を薄くし、シオリさんが一人になる瞬間を待ちましょう。

既に策はありますから」

「一応みんなにも伝えておくね」

「お願いします」

この頃から私達は黒いオーラの魔法少女を解放しながらシオリさんの動向を探るようにしていました。

一応まどかさん達にも連絡をとってみるとどうやらシオリさんの姿は見滝原でも発見されていたようです。

まどかさんの友達であるほむらさんが何やらシオリさんの動向を知っているようで色々聞いてくれました。

見滝原の魔法少女には特に被害なし。でも最近は神浜にはあまり近づかないようにする方針をとっているようです。

黒いオーラの魔法少女の件があるから。

そしてある日、私はピリカさんという魔法少女に出会い、一緒に黒いオーラの魔法少女と戦いました。

その魔法少女と別れたあと、ななかさんから情報が入って来ました。

「今日はシオリさんが一人になる機会です。例の計画を実施します」

私達は中央区にある廃墟へ集まりました。

この話を聞いて集まったのはチームの方達とと中央区、ひなのさん達と一緒にいる魔法少女達でした。

「まずはお集まりいただきありがとうございます。

今回の作戦で皆さんに行ってもらいたいのはシオリさんの気を引くだけです。

決して倒そうと思わず、命を投げるような行動は避けてください。

何か質問がある方はいらっしゃいますか」

「一つ確認。給水ポンプの位置は把握しているわ。私たちが給水ポンプを壊す役割を持ってもいいと思うけど」

「まさらさん、シオリさんも自分の弱点は把握しているはずです。悪戯に使える給水ポンプのポイントを潰すわけにはいきません。
美雨さんに任せて注意を引く行為に注力してください。
おそらくそれだけで精一杯でしょう」

「動きを止めた後の話は聞いていないんだけど、どうするの」

「ソウルジェムを取り、知っていることを聞き出します。その後はシオリさんの言動次第ですね」

皆さんは一度はシオリさんから被害を受けています。

よくない方向に動かないか不安になってしまいます。

「ほかにはないようですね。

では、参りましょうか」

中央区の電波塔付近へ各自配置につき、電波塔を見上げているシオリさんへななかさんが話しかけます。

「お目にかかる機会が少なかったですが、今までどこにいらしたのですか、紗良シオリさん」

「久しいね、ななかさん。こんな夜番に大勢連れて電波塔観光とは、変わったことをしていらしますね」

「あなた達の企みはひなのさんから聞いています。実施方法を見直す気はありませんか」

「最適案を崩す気はないですよ。それとも、あなた達だけで最適案を見出してくれるとでも?」

「改善していただく気はないようですね。方法さえ詳細に教えていただければ別の方法が見出せるかもしれません」

「くどいぞ策士。シオリはいつ始めても構わない」

「そうですか、残念です。では、お覚悟を」

開戦の合図とともに控えていたあいみさんが数発発砲しました。

シオリさんは瞬時に魔法少女姿となり、マグナムの弾丸を避けました。

そして周囲に強力な電気を発したかと思うと、周囲にはドーム状の電磁シールドが貼られました。

「皆さん中へ!」

路地裏で控えていた衣美里さん達は強制的にシオリさんの目の前へ姿を晒すこととなりました。

「神浜では一般人をあまり巻き込みたくないんだろう?戦いやすいように人払いをさせてもらったよ」

「その余裕はいつまで続くかしら」

まさらさんとこころさん、あいみさんが交戦していました。

私は美雨さんと合図があるまで待機です。

おそらくチャンスは一度。外してしまったら、皆さんの頑張りも無駄に。

慎重に、深呼吸して待とう。

衣美里さん、れんさん、梨花さんも加勢していますがシオリさんは雷や周囲の金属を利用して全く傷をつけられていませんでした。

追撃も、必中の攻撃も、死角からの攻撃も、三次元的に動く帯や金属片で弾き返し、クロスカウンターのように攻撃し返すシオリさんは楽しそうな表情をしています。

戦いは電波塔を中心としてグルグルと場所を移動しながら繰り広げられています。

シオリさんは大勢の攻撃に対処しながら決まって給水ポンプからは遠くの場所へ着地していました。

やはり弱点となるポイントというのは把握しているようです。

「やはり弱点は水。こころさん、押し切ってください」

「OK!あいみ!」

「よし来た!狙いはバッチリだよ!」

あいみさんのコネクトを受けたこころさんは一つの給水ポンプ目掛けてシオリさんを押し込みます。

シオリさんはこころさんのマギアの勢いで給水ポンプ近くまで寄せられていきます。

「そんなことだろうと思ったさ!」

シオリさんは近くにあった鉄パイプを4本頭上に浮かせ、四方向にある給水ポンプ目掛けて鉄パイプを撃ち込みます。

近くで待機していたあきらさん、ななかさんは急いで避けましたが、4方向から噴水のように水が飛び出しました。

「これで奥の手は無くなっただろう」

「まだまだ!」

衣美里さんからコネクトを受けた梨花さんがシオリさん目掛けてコンパクトから発するビームを何度も撃ち込みます。

こころさんがシオリさんから離れたのを合図に梨花さんはコンパクトを巨大化させてシオリさん目掛けて撃ち込みます。

当然のようにシオリさんは雷で形成されたシールドで防ぎますがどうにも苦しそうな表情を浮かべていました。

「今です!かこさん!」

掛け声を合図に私は給水ポンプを切り、シオリさんへ噴出した水が届くように武器で噴射口を緩く抑えます

シオリさんは反応できなかったのか水をもろに浴びてそれと同時に梨花さんのビームに飲み込まれて建物の壁に打ちつけられました。

「やった!」

周囲に貼られていた雷のドームは消えていき、私達はシオリさんの元へ集まりました。

「給水ポンプ、四つじゃなかったのか」

「いいや四つが正解ヨ。ただ、四つ壊せたかは別ネ」

「そんなわけ、四つ壊した手応えは確かにあった」

「神浜の魔法少女を十分に理解しきれなかった結果です。この町の魔法少女を敵に回すとどうなるか、おわかりいただけましたか」

給水ポンプを破壊させるようこころさん達が誘導。付近にある四つのうち一箇所を美雨さんの魔法で壊したと錯覚させる。

そして衣美里さんの幻惑魔法をかけるために梨花さんが攻撃する。

思い込みと正常な判断ができなくなれば、いくら情報処理能力に長けていても破壊したはずの一箇所から飛んでくる水鉄砲を避けることができない。

衣美里さんの魔法が効くと知ったときにななかさんが思いついた作戦です。

シオリさんは魔法を使おうとしないあたり、使うとどうなるかは把握している様子です。

「シオリを捕らえてどうする気?先輩をいたぶった分拷問にでもかけるのかい?」

「そのような非道なことはしません。然るべき方法で裁き、償いをこめて自動浄化システムを広げる方法を教えてもらいます」

「そうかい」

会話を聞いている中、後ろから急激に近づく魔力反応に驚いて振り向くと雷の攻撃を受ける二体の黒いオーラを纏った魔法少女がいました。

「シオリさん?!」

左手を前に出してシオリさんは魔法を使っていました。しかし漏電して自身にもダメージは入っていて苦しそうに呼吸しながら体からは煙が上がっていました。

黒いオーラの魔法少女は距離を置いてこちらを見ていました。

「なんて無茶なことを」

「無茶なんてあるか、手出さなきゃ、緑髪の子の頭吹っ飛んでたんだぞ」

「皆さん、黒い魔法少女へ対処を」

私達は人数を半分に割いて二体の黒いオーラの魔法少女へ対抗しました。

きっと、人払いのあのバリアが無くなったから襲いかかって来たのでしょう

そして襲いかかって来た二体は、どうやら弱っているシオリさんへ一直線に向かおうとしている様子でした。

出しているドッペルは狼とチーターのような見た目をした生き物を影から出していました。

月明かりが出ているので影を無くするというのは困難です。

 

全員が黒いオーラの魔法少女へ集中し、二人の魔法少女から黒いオーラをとった頃にはシオリさんの姿はありませんでした。

「予想はしていましたが、逃げられてしまいましたか」

「ちょっと!これじゃ計画が台無しじゃない!」

「幸い、魔力パターンはまだ追えますがカレンさんとの合流は避けられないでしょう。
敵のアジトは今晩中に把握しておきます。今日のところはお開きにしましょう」

「理解に苦しむ判断ね。手負いが一人いる状態ならこの人数で押しかけたほうがすぐに事が済むはずよ」

「皆さんにはお伝えしていませんが、彼女達は三人で行動しています。おそらく今拠点へ潜り込めばシオリさん同等の実力者がカレンさんと組んで襲いかかって来ます。
そうなれば勝ち目はありません」

「三人目、聞いたことがないです」

「うまく紛れていますからね。しかし今日の動向を察するに、元の場所へ戻っていることでしょう」

皆さん納得した表情はしていません。でも、ピリカさんがカレンさん達の仲間だとしたら敵わないのは事実です

「それにみんな、集まったのは夕方だったけどもう時間は19時だよ。帰らないと両親を困らせちゃうんじゃないかな」

「うん、そうだね。お父さんとお母さんを心配させちゃうね。悔しいけど、私は帰るね」

「こころが帰るなら、私も」

あきらさんの言葉を起点にみんなはそれぞれの帰路につきました。

「ななか、アジトの把握に少々大げさにやりすぎたんじゃないかな」

「いいえ、ここまでしなければシオリさんは魔力を顕にしてくださりませんからね。今回は十分成功です」

「あとは奴らの潜伏先へ攻めれば終わりヨ」

人数は神浜マギアユニオンへシオリさん達の潜伏場所を共有すればすぐに集まるでしょう。あとは彼女達が殺されないよう見張るだけです」

こうしてシオリさん達を追い詰める形はできました。

しかしいまだに出続ける黒いオーラの魔法少女が再び邪魔をしてこないか、それだけが不安で仕方がありませんでした。

 

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-18 選択肢の行く先はただ一つ

みかづき荘にいたメンバーが揃ってカレンさんへついて行きました

時間は19時を回っていますが、協力関係になりたいと申し出て来たカレンさん。

目的地は調整屋。

何かの罠だったとしてもこの機会を逃すわけにはいきません。

ただ黙ってついて行くのは気まずいので私はカレンさんの横に並んで話しかけました。

「あの、調整屋を襲った理由、あれは魔法少女のことを思ってですか」

「それは勿論ですよ。この街を回ってわかったことですが、魔女の数は減って来ていますよね。なおのこと、穢れのスピードが早まるのはデメリットにしかならないと思うんですよ」

「・・・敬語じゃなくてもいいですよ。堅くてくすぐったくなっちゃいます」

「そう、それはありがたいね。私も堅苦しいのは苦手なんだ」

「調整の話ですが、受けるのは自己責任だと、そう伝えて回るようにしました。
前の神浜ならともかく、今は協力してくれる方も多いので」

「それはどうかな」

「え?」

「簡単に強くなる方法があれば、誰だってイージーモードを求めて調整を受けるだろう。

それに魔女が少なくなればグリーフシードの奪い合いだって嫌でも増えるだろう。

ましてや魔女化しないシステムがあると知った有象無象は強さで差をつけるために調整を受けるだろう」

「それは」

「大元から潰せば終わるんだ。でもまあ、ここの調整屋は儲けを目的としているわけではないし、活動も自粛しているから追い込みはしないさ」

「ここの?」

みたまさんから調整の力は他の人から教えてもらったという話を聞いたことがあります。

その教えてくれた人のことを言っているのか、それとも教わった他の人のことを言っているのか。

他の調整屋はグリーフシード目当の儲けに重みを置いた活動をしていてね。まさか3人もいるとは思わなかったよ」

「3人も!?」

「驚くだろう、魔力を調整できるのが知っている中でも4人もいたなんてさ。
この街の調整屋以外はグルで動いてたらしくてね、1人を殺したらフェロモンを感じ取った蜂のように集まって来たよ。
お得意さんだった魔法少女も連れて来てはいたが、まとめて潰したよ」

言葉も出ませんでした。私の知らない間に、カレンさんは神浜周囲にいる調整できる魔法少女を探して回っていたこと、そして、みんな殺してしまったこと。

敵に回してはいけないんだ、この人は。

それで戻って来てみたら何だか黒いオーラを纏っている魔法少女がドッペル出して襲いかかってくるんだから驚いたよ」

「・・・実は、その黒いオーラの魔法少女について私たちも困っている状況なんです」

「ならば都合がいい。今回の話はそれに関わる」

話している間に調整屋さんへたどり着いていました。

調整屋さんは壁に開いた穴もそのままで、本当の廃墟のような状態でした。

「さて、協力関係になりたいって、どういう風の吹き回しかしら」

「今の神浜を見たらわかるでしょう。どこから現れたのか、どのような過程を経て生まれたのかもわからない黒いオーラの魔法少女が蔓延る現状。
これは自動浄化システムを世界へ広げる活動をしている場合ではない。だからですよ」

「しかし信用に至るまでの行いをあなた達は行っていないわ。調整屋の襲撃から始まり、紗良シオリによる襲撃事件の数々。
そう簡単に協力関係になることはできないわ」

「シオリの件は悪かった。あいつにはきつくお灸を据えておいたが、最近は悪さをしている感じではないだろう?」

「確かに最近はそう言った話は聞かないけど、手を出したことには変わりないよ」

だめ、このままでは協力できないまま話が終わってしまう。

今は一番争わなくていい方法、カレンさん達との協力を優先させないと。

「協力関係となる条件として、まずはあなたの魔力パターンを教えてください。
そして黒いオーラの魔法少女を助ける方法を探して、その情報を共有してください。それが条件です」

「いろはさん?!」

「そうだね、弱点を教えてくれるくらいの覚悟があるなら私たちも少しは信用できるかも」

「いいでしょう、私たちはそこまでしなくちゃいけないほどあなた達の組織に損害を与えていますからね」

そう言うとカレンさんは両手に糸によって形作られた扇を出現させ、何か踊りを始めました。

体をしなやかに動かし、周囲から何かをかき集め、天へ恵むような動きを流れるように行います。

そんな中、私たちにはカレンさんから眩いばかりの強い力を感じ取れるようになりました。

今までに出会ったことがないほどの、大きな魔力の反応でした。

魔力の大きさに驚いていると、カレンさんが鳴らした扇を閉じる音で我に帰ります。

そして右手を胸に当てて私たちへ向けて一礼しました。

これで魔力パターンを感じることができるようになりましたかね」

「はい、すごく大きな魔力反応で驚いています。あの、今の踊りは一体」

「開示の舞です。これでも舞で戦うのが本来のスタイルでね、この開示の舞では魔力を多く周囲に展開するんで魔力パターンを曝け出すと言う欠点があるんです。

どうですか、これでもまだ私を疑いますか」

「魔力パターンは覚えたわ。これで何か変な動きをしたら追跡できるし、少しは見直したわ。でもこれだけでみんなは納得しないわ。
いろはの言うとおり、まずは黒いオーラの魔法少女を救う方法を提供して頂戴。それからよ」

ここにちはるちゃんがいれば、と思ってしまいましたが、カレンさんは協力姿勢であることをアピールしてくれています。このまま上手くいけばいいけど。

「それならばこちらも気になることがあるんだ。自動浄化システムの生みの親、マギウスの見解が知りたい」

灯花ちゃんとねむちゃんは自動浄化システムに問題は起きていないって言ってるよ。2人とも真剣に考えている最中、です」

ういが進んで報告してくれました。

そういえば最近灯花ちゃん達と会っていないけど、望遠鏡の施設が壊された後以来会えていないことを思い起こします

自動浄化システムはドッペルを出した後ソウルジェムを浄化してくれると聞いています。ドッペルで穢れが消費されたにもかかわらず、またドッペルが出るということは、浄化システムが働いていないのでは、と考えていましたが考えすぎでしたか」

あなた達はよく知らないはずの自動浄化システムを広げる方法を突き止めるほどの知恵があるはずよ。別の要因がないかという考えには至らないのかしら」

「ええ、ある程度要因であろうものは目星がついています。

だが、教える前にやるべきことがあるようだ!」

そう言うと同時にカレンさんは調整屋にあった廃棄された機械を糸で絡め取り、カレンさんの背後に投げ込みます。

すると何かが機械を斬って爆発を起こします。

爆風によって舞い上がったホコリによって周囲の様子を把握できない状況でしたが、カレンさんがいた場所からは赤い斬撃の軌道が見えました。

視界が良くなると、カレンさんがももこさんの大剣を受け止めている状態でした。

「ももこさん!?」

「今頃何をしに来た死に損ない。お前の輝きでは叶わないと知っておきながらまだ争うか!」

「当たり前だ。お前達の思い通りにはさせないぞ」

カレンさんの足元には見慣れた植物の蔓が現れてカレンさんを締め上げようとしますが、フリーハンドな右手で右足に絡み付いた蔓を切り落とし、左手で形作った剣を滑らせるように動かし、ももこさんの力が籠った大剣で左足の蔓を切り落とします。

すると素早く飛んできた水色の複数の槍を避けるように調整屋の奥へ移動しました。

「ももこにレナにかえで!今までどこにいたのさ」

ももこさん達は今まで行方不明者として捜索している最中でした。まさかこんなところで、こんな形で再会するなんて。

「鶴乃、それにいろはちゃん、こいつの話なんて真に受けるな。全ての元凶はこいつらだ!」

「いいだろう、主張してみろ」

「いろはちゃん達は知っていると思うが、私たちは調整屋を襲ったことを後悔させるためにこいつらを追っていた。

見つけることができたものの、私たちでは歯が立たなかった」

「肝心なのはここからでね、私たちはカレンに何かされた後、人の嫌なことが頭の中でぐるぐる回るようになったんだ。おかげで私はお父さんとお母さんを含めて人が嫌いになっちゃったんだ」

「そうなったのもこいつに負けてからよ。そしてレナ達が正気に戻った頃に目の前にいたのはななかさんよ。

ななかさんが言うには、私たちには呪いを運ぶ縁が結ばれていたらしいの」

「呪いを運ぶ、縁?」

「他の襲われた子達もななかさんに救われたって言っていた。その救われた子達に共通しているのが、最後に目の前にいたのがこいつってわけだ」

ななかさんがももこさん達を助けた?それに呪いを運ぶ縁が原因ってどうやって知ったの?

それが本当なら、その人達と出会っている、カレンさんが原因。

「真実かどうかはわからないぞ。

さあ、神浜マギアユニオンのリーダー、信用に至らない私を信じるか、不確かな情報で揺さぶる仲間を信じるか、あなた次第だ」

「全て知ってるくせによくそんなことを言えるな!」

口調が荒いももこさん、レナちゃん、かえでちゃんの目に光はありませんでした。

しかし嘘をついているようには見えません。

カレンさん達とは敵対するしかないの?

「いろはちゃん、ももこ達を信じるべきだよ!」

「俺もそう思うぞ」

「いろは、今は懸命な判断をすべきよ」

「・・・お姉ちゃん」

みんなの顔を見た後、カレンさんの方を向きます。

「ご采配を、環いろはさん」

私個人としてはカレンさんと協力したいというわがままを通したい。でも、今背負っているのは神浜の魔法少女達の総意。

なら、ならばみんなの意見を汲み取るしかない。

「現時点をもって日継カレンさん、紗良シオリさんを危険人物とします。危険行為を働いた彼女達を、拘束してください」

そう言うとみんなは一斉に魔法少女へ変身しました。

カレンさんは素早く調整屋の奥へ行き、グリーフシードが収められている棚を開きました。

「カレンさん、何をする気?!」

杜撰な管理をする神浜マギアユニオンへグリーフシードの大量放置で何が起こるのかわからせるためさ。
それに、一般人を巻き込みたくないのだろう!」

そう言うとカレンさんは調整屋の地面へ計10個のグリーフシードを投げつけます。

投げつけられて地面へ突き刺さったグリーフシードのどれもがなぜか半分近く穢れを貯めている状態でした。

調整屋内は魔女の結界に包まれ、神殿のような景色に変わっていきました。

魔女の結界はグリーフシードを何かの展覧会のように個別のガラスケースで囲い、全てに創作中のタイトルがついていました。

そして周囲には様々な種類の使い魔が現れ、結界の外へ散っていきます。

「何をする気だ」

「グリーフシードっていうのはね、ただのモノではなく、生きている品なんだ。何の処置もしなければ周囲からどんどん呪いを収集して知らぬ間に使い魔が卵を孵化させるためにせっせと動き始めるのさ。

それが一箇所で一気に起きて、一箇所に呪いが集まるとどうなってしまうだろうね」

「みんな!孵化する前にグリーフシードを壊してください!」

そう言ってみんなが各グリーフシードの前へ移動しますが使い魔達が行手を阻みます。

「悪いが私達は日継カレンを倒す!」

「できるのか?あれから学んだか?それともwikiにでも書かれていたか?」

「余裕こいてられるのもいまのうちよ!」

「いいだろう、お前達の希望を輝かせてみせろ!」

私達はひとつひとつグリーフシードを潰していくことに専念していました。ももこさん達の方を見る余裕はあまりありませんでしたが劣勢であることはわかりました。

「全く、ももこったらどうしたのかしら」

「らしくないよね」

「理由なんか後でいいだろ、今はこいつをぶっ潰せばいいんだろ!

フェリシアちゃんの強い一撃ですぐにグリーフシードが壊れてくれるのでとても頼もしいです。

「ももこさん達、まさかドッペルを使おうとしてるの?」

ピリカさんがそう呟いたのでももこさん達の方を向くとももこさん達には薄らと黒いオーラが見えていました。

「ダメよももこ、ドッペルを安易に使うのは!」

「何言ってんだやちよさん、こいつらを倒すにはドッペルを使っても足りないくらいだ!」

そう言うとももこさん達の体からはドッペルが現れてカレンさんへ集中攻撃を行います。

カレンさんはと言うと両手に鉄パイプを持って襲い掛かる攻撃を受け流すかのように動き回ります。

「く、何で当たらないのよ!」

4人の様子を見ている隙を与えないかのように結界内の使い魔達は私たちに襲いかかります。

使い魔達の動向を見ているとツアーガイドのような見た目をした使い魔が外からうつろな目をした人たちを連れてきていました。

「もう人を襲って連れて来てる」

「止めなきゃ!」

その列へカレンさんが降り立つとそこに構わずドッペルの攻撃が放たれます。

「だめ、そこには襲われた人たちが!」

しかし時すでに遅く、結界に入った人たちはドッペルが放った苔に包まれてその場で爆散して跡形も無くなってしまいました。

「そんな、人を構わず攻撃しちゃうなんて」

「ももこ達、正気じゃないわ」

その頃には7つほどグリーフシードが壊されている状態でした。

私は目の前の出来事にショックを受けてしまったのか、体が少し重く感じました。

周りを見渡してみるとみんな揃って動きが鈍くなっていました。

「何でだ、知らないうちに体に力が入らなく」

ももこさん達の方を向くと、手足が殴打されて潰れた状態にされていました。

「ドッペルなんてものを使おうが、中身が変わらないんじゃそんなものだ」

カレンさんはそう言うと私たちの手足へ地面へ擦り付けたせいか尖った鉄パイプで攻撃を加えて行きました。

私はクロスボウをつけている左手と右足を貫かれて思わず悲鳴を上げてしまいました。

「悪いね、ここで拘束されるわけにはいかないんだ。それにすでに弱点を伝えたはずだ、私は舞で戦うと」

「攻撃を避けながら、舞を踊っていたと言うの」

ダメです。こんな全てが器用な人にかなうはずがない。

そう諦めかけた頃、カレンさんがういの目の前にいました。そんな中でもういは立ち続けていました。

「里見灯花と柊ねむに最も近いのは環うい、君だけのはずだ。大人しく2人の居場所を教えてくれれば痛い思いをしないで済むぞ

「ういに、手を出さないで」

「姉が妹を助けられないという心情は、辛いよな、環いろは」

その言葉は皮肉には聞こえず、真っ直ぐなカレンさんの正直な思いである感じがしました。

「教えないよ!悪い人には、2人の居場所は教えません!」

「そうか、残念だな」

そう言うとカレンさんは鉄パイプをういに、向けて。

「ダメ!!!!!」

叫ぶのと同時に目を閉じてしまいました。それはそうです、目の前で見たくもない結果になろうとしていたのですから。

恐る恐る目を開けるとういは無傷でした。

カレンさんはというと、ういの反対側を向いてピリカさんの攻撃を受け止めていました。

「ピリカさん!」

「へぇ、足は射抜いていたはずだけどね」

「痛みなんてどうとでも」

魔女の結界内にいる私達はみんな揃って手、足の片方は筋部分をピンポイントで射抜かれていました。

そう、回復魔法がなければ立ち上がることもできないはず。

この人は一体。

「立ちなさい神浜のリーダー!それでも数十人をまとめる魔法少女ですか!」

少々怒り気味のトーンでそう語りかけて来たピリカさんはカレンさんと引き続き戦っていました。

回復魔法を使えるとは言え、アキレス腱を修復するには時間がかかります。その間はピリカさんの戦っている様子を見ているしかありませんでした。

炎の剣から出る斬撃はカレンさんに振り払われ、カレンさんが片方の鉄パイプを回転させながら投げつけますが、剣や槍を踏み台にしてピリカさんが避けてと武器で時々つばぜりあってはお互いの攻撃を交わすという繰り返しでした。

そんな二人の覇気に押されてか使い魔達は近づこうとしません。

「ういちゃん、孵化しそうなグリーフシードはまだ三つも残ってる。今のうちに壊しちゃおう!とはいっても私は動けないんだけどね」

「わかりました!」

私も早く動けるようにならないと。でも、痛みも相まってなかなか集中できない。

私たちに立ち塞がるあの人達とは、次元が違いすぎることを思い知らされます。

ピリカさんは魔法を使っているのに、カレンさんは鉄パイプしか使っていない。

踊りで魔力は使ったとはいえ、鉄パイプしか使っていない魔法少女に負けてしまうなんて。

でもおかしい、ここまで戦えば穢れも溜まってドッペルが使えるはずなのに、私のソウルジェムには半分しか穢れが溜まっていません。

「ここまで平気に立っていられるなんて大したものだね」

「生憎、命を奪うのは避けてるモノで。でも、もう命の保証はできませんよ。

ワッカ!濁流とか化せ!

カンナ!ターゲットへ招来せよ!」

「律儀に詠唱するから遅れるんだ!」

カレンさんは詠唱のために立ち止まっていたピリカさんの脇腹を狙いますが、絶妙に体をずらしたおかげでピリカさんはかすり傷で済みました。

その後、カレンさんの周りは水の壁で囲まれてその周囲へ幾つも落雷しました。

そんな中ピリカさんは何かを唱えていました。

私はようやく立ち上がる程度まで回復すると、ういが戦っているおかげで無防備になっていた二つのグリーフシードを射抜いて破壊しました。

「お姉ちゃん!」

「遅れてごめん。あと一つは」

「カレンさんの後ろです」

さなちゃんの声の通りカレンさんの方を向くと、ピリカさんが首長竜のような生き物に乗った状態でした。

カレンさんはというと、落雷を受けたのか服が所々焦げていました。

「ここまで追い詰めたのは褒めてやるよ」

「すみませんが、痛い思いをしてもらいます。

ポンベツカムイ、目の前の魔法少女を」

「だが時間切れだ」

カレンさんがそういうと、後ろの方にあったグリーフシードから見慣れたウサギの見た目をした魔女が生まれて来ました。

魔女はカレンさんを無視して動けない鶴乃ちゃん達に襲いかかりました。

「仲間と殺意どちらを選ぶ!」

「くっ、ポンベツカムイ、魔女を葬りなさい!」

そういうと首長竜はヒレで魔女を結界の壁へ叩きつけ、その場でジャンプすると着地と同時に強力な水の衝撃波が魔女を襲い、それを受けた魔女は水でも消えない炎に包まれてしまいました。

魔女はしばらくその場でもがきましたが、やがて動かなくなってチリとなってしまいました。

すると魔女の結界は消えて、入って来た時よりも荒れた調整屋にいました。

「そう、一度魔力パターンが分かっても直ぐに魔力を感知されないようにされると追うこともできないってことね」

「そういうことです」

「ピリカさん」

「みなさん無事のようですね。それだけでもよかったです」

笑顔で返されてしまいましたが、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

「グリーフシードの保管方法、カレンさんも言っていましたが改める必要はあるかと思います。

時女一族の人も驚いていましたよ」

「え、静香さん達も」

どうやらピリカさんが調整屋に運ばれて来たときにグリーフシードの場所を知ったそうです。

いくつか穢れが満ちそうなグリーフシードをキュゥべえの場所まで持っていってくれたそうです。

グリーフシードの保管方法については後日考えることにしましょ。まずはももこ達に話を聞かないと」

ももこさん達の手足はすでに元に戻っていましたが、すごくダルそうにソファへ座っていました。

みんなは足を負傷しているため床に座ったまま話が進みました。

「あなた達、いったい誰に助けられたか教えてもらえないかしら」

「ななかさんに聞いたんだけど教えてくれなかったんだ。試しに聞いてみるといいよ、結果は同じだろうけどさ」

「かえで、構わず人をドッペルで殺したよね。あれってどういうこと」

「どういうことって、邪魔だったし、別に気遣う必要もないし」

「はあ?」

「鶴乃、私達はもう人なんてどうでも良くなっちゃったのさ。黒いオーラに包まれた魔法少女はみんなそうさ。ドッペルを出し続けている間に、人が嫌いになっちゃったのさ」

「何よそれ、そうなっても考えを改めようとしないの」

「ないさ。人が変わらない限りね」

レナちゃんはいきなり重そうな体を起こし、私の前まで来て手を差し出しました。

「あんた達動けないんでしょ。肩貸すわよ」

どうやら魔法少女への思いやりは今までのようです。

満足に動けない私達はももこさん達におんぶられてみかづき荘への帰路についていました。

切れたアキレス腱を修復する際に激痛が伴ってしまうということもあり、何があっても安心できるみかづき荘に着いてから直そうという話になりました。

「そういえば、ももこさん達も重症だったはずですが、私たちよりも回復が早いのはどうして」

「魔法少女って魔力を使えば人よりも怪我の治りって早いだろ、直す際にも修復の過程で痛みも伴うけどさ、痛みを遮断しちゃえば結構治るのが早くてさ」

「痛みを、遮断」

「危機感が鈍るからあまりお勧めしないわよ」

痛みを遮断だなんて、そんなことをしちゃったら本当に私達は人をやめたことになってしまう。

私はまだ、人でありたい。

じゃないと、対等に向き合えないから。

「いろは!」

やちよさんの叫び声を最後に、私は気を失ってしまったようです。

 

 

いろはさんに魔力の篭った石が投げつけられ、いろはさんは気を失ってしまいました。

そのあと間髪入れず、レナさんが何者かに襲われるといろはさんの姿が見えなくなりました。

周囲を見渡すと、月を背に家の屋根の上でいろはさんを抱える魔法少女の姿がありました。

「蘇生の力を持つ環いろは、貰い受ける」

「御園かりん、あなた!」

かりんという魔法少女はそのまま何も言わず何処かへ姿を眩まそうと逃げ出します。

「レナさん鶴乃さんを頼みます」

「ちょっとあんた!」

私はおんぶっていた鶴乃さんをレナさんに渡し、かりんさんを追いかけました。

いろはさんを助ける目的で行動していましたが、嫌な予感がしたのでかりんさんを追いかけていました。

かりんさんから、魔力の反応がしないからです。

魔力を感知させない力はそう簡単に身につけられるモノではありません。付け焼き刃でも擬似的に魔力反応を消すことができるのは一人しか知りません。

かりんさんが辿り着いたのは見覚えがある廃墟でした。

私が廃墟の中に入るとそこには。

「数分ぶりだね、ピリカ」

「カレン、あなたどういうつもり?いろはさん達にちょっかい出したり調整屋を襲ったり。
調整屋はともかく、いろはさん達は」

「環いろはは計画に必要不可欠な存在だ。今回はその先駆けさ」

「先駆けって」

「いろはさんには先輩を助けてもらいたからさらったの!他の人が一緒だと絶対話を聞いてくれないと思って。
だからこの人たちに協力してもらったの!」

「かりんさん、そうですか。あなたがアリナ・グレイさんを唯一助けたいと思っているという方でしたか」

「もう時期シオリは視察から戻ってくるだろう。それから詳細な話を」

ドサッ

突然裏口から何かが倒れる音がしたので恐る恐る見に行きました。

そこにはびしょ濡れで傷だらけのシオリが倒れていました。

「シオリ!」

「どういうことだ、お前がここまでボロボロなのは久々だぞ。何があった」

「してやられたさ、あいつらが、常盤ななかたちが!」

 

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-17 感知されないその理由

私は流れるままにフェリシアさんの後へついていっていました。

明日香さんの時や時女一族の方達とは違った、急な流れでここまできてしまったことに少し違和感を持っています

陽気に歩くフェリシアさんの背中を見ながら私は尋ねてみました。

「あの、フェリシアさん、どうして私をフェリシアさんの居場所へ連れていってくれるのですか」

「なんだ、まだ気にしてたんか。普通はメシと寝床を貸してやるってだけで喜ぶもんじゃね?」

「いえ、そこまで苦労はしていなかったので」

「金を持っているからか」

「お金なんて使わないですよ」

しばらくの沈黙が訪れました。

赤信号で並んで待っているときにフェリシアさんがいきなり話始めます。

「オレ、前までは傭兵やってたんだ。その間ろくに食いもんにありつけなくてさ、公園で朝まで寝てるってのもしょっちゅうだった」

「…ご家族は」

「死んだよ。魔女に殺されたんだ」

親なし子。魔法少女になってから両親がいなくなった子達は身寄りがなければ仲間の魔法少女について回るか、傭兵や窃盗業など普通の人の生活を送ることはできません。

この世界がお金を中心に成り立っているのが主な原因です。

「すげー辛くってさ。日によっては食うものなくてぶっ倒れそうなときもあったさ。助けを求めようとしても、求める先がなくてさ、余裕なんてなかったよ。

でもよ、いろはが声をかけてくれたんだ。それからずっとみかづき荘に住んでんだよ。

マギウスの翼の時にちょっと出ていったけど、もうそれからはずっとさ」

「そうですか」

長く話していたフェリシアさんはとても楽しそうに話していました。自慢話とは違った、どこか説得させるような感じで。

「だからさ、お前が人前で我慢してるっていうのわかるんだ。言いづらいよな、金ないけど食いもん食わせてくれって」

「でもいろはさん達は何て言うでしょう。もしかしたら断られてしまうかも」

「いろは達はそんなこと言わねーよ。まあ、家事の手伝いくらいは頼まれるかもしれないけどな!」

そう話しているうちにフェリシアさんはある家の前で立ち止まりました。

「ここがみかづき荘だ」

フェリシアさんは我が家に帰ったかのように勢いよく扉を開いて帰るべき居場所へ向けて生存確認の言葉を放ちます。

ただいま

そして迎えるおかえりという十人十色な音色の数々。

そう言葉を交わせるだけでも、この国は、この町は平和なんだなと実感してしまいます。

「おいやちよ、今日あいつ泊めてやることできないか」

「あら、ピリカさんどうしたの。フェリシアを家まで送ってくれたのかしら」

「んな訳ないだろ!ちゃんと門限守っただろう!」

「それよりも、泊めて欲しいってどういうことかしら」

「ピリカって普段野宿なんだってよ。なんかそれ聞いてオレいてもたってもいられなくなってさ」

私はあえて誰とも目を合わせないように黙って待っていました。

今回に限ってはお邪魔するほどの理由を持ち合わせていません。話を振られたら断りの一言でもかけてここから立ち去れば。

「ピリカさん、上がって頂戴」

「…え?」

「実は私たちから聞きたいことがたくさんあるのよ。ちょっとは家事を手伝ってもらうことになるかもしれないけど、情報交換料の代わりだと思ってもらって構わないわ」

どうやら一方的にこちらから情報を与える構図が出来上がってしまったようです。

そのまま回れ右をして逃げ出したい気分でしたが元気な声を出しながらどこか力強く手を引っ張る方がいたためやや強引にみかづき荘へ入ってしまいました。

どうやら料理の最中であり、リビングになる場所には大人しそうな緑髪の子と、そして。

「あれ、たしか公園で会った」

「ういさん?!」

ういさんとフェリシアさんはそれぞれ私と会った経緯は話してくれたものの、黒いオーラの魔法少女の話は魔女の話へ、出会いは公園でバッタリ会ったと事実とは異なった情報ばかり。

かこさんが黒いオーラの魔法少女を助けることができること、ういさんが瞬間移動できることはどうやら身内にも秘事な内容のようです。

随分と私は信用されてしまっているようですね。

元気な方、鶴乃さんという魔法少女からは色々聞かれてしまいました。

「ししょーといろはちゃんから聞いたよ、調整を受けなくても戦えるくらい強いって!」

「やっぱり珍しいんですかね」

「勿論だよ!数は少なくなってきているとはいえ、神浜の魔女は調整を受けている子でも手強いのが多いからね!

ねえねえ!ピリカちゃんはどこからきたの?神浜の出来事を詳しく知らないってことは遠い場所からきてるんだよね!」

北の方から来たと話しているうちにグルメの話、そしてなぜか中華の話となっていつのまにか万々歳というお店へ来ないかという宣伝じみた内容に変わっていきました。

じっとしている中、話を振られたさなさんという魔法少女が言うには可もなく不可もない美味しさとのこと。

ウォールナッツの話をするとさなさんも積極的に話に加わってきて神浜という町はなんだかんだどこかで繋がりがあるんだなって感じました。

因果が集まるという話も、納得できます。

「さ、準備ができたからそろそろご飯にしましょう。ピリカさんの分もちゃんと用意しているから」

「すみません、話に夢中になっちゃって」

「大丈夫ですよ」

食事が終わった後、皿洗いなどの後片付けは全てやらせてもらいました。片付けが済むと、お茶を用意してもらった後に本命の情報交換が始まりました。

「さて、まず気になることなのだけどソウルジェムの反応ってどう隠しているのか教えてもらえるかしら。

カレンさんとシオリさんのように貴方からもソウルジェムの反応が感じられないのよ。

タネがわかれば、彼女達の居場所が割り出せるようになるの」

タネ自体は話しても影響はないのでいいでしょう。

「ソウルジェムで感知できる魔力って、無意識に力を放出しているのが原因なんです。さなさんのように魔法少女だけに見えるという現象も、姿を認識させないという魔力を無意識に使用しているがために魔力を感じ取って効果が無意味になっているんです。

魔法少女となったからには体を動かすだけでも魔力を消費するので普通ならば反応を消すというのは特別願わない限りできないことです。

でも、電気という存在を認識できる瞬間よりも認識できない瞬間が多い理由を考えてください。

電気を認識できる瞬間ってどんな時だと思います?」

「スイッチを押したり、電気がついているときとかかな」

「静電気っていうくらいだし、ドアノブをいきなり触った時もだよね。

ってこは、プラスとマイナスのバランスが崩れた時だね!」

「電気の現象を魔法少女に置き換えると、希望と絶望?」

絶望を纏うって何だか黒いオーラの魔法少女を連想してしまいます

なんか勝手に話が進んでありがたいんですが、単純ではない話をしなければいけません。

「呪いを纏うとは近いかもしれませんが、魔力を認識させない種明かしとしては、

魔力の性質の逆の魔力を同時に発しているが正解です」

「魔力の性質を理解すること自体が難しいというのに、その上で正反対の性質をぶつけて中和させるだなんて。魔力を使った時点でそのバランスは崩れるわ。

でも闘っている最中も、後も魔力を感じられないと聞いているわ」

「人が動くたびに地球の重力によって形が歪まないのと同じです。内から出すものと外から取り込むものを差し引きゼロにしているんです。それは穢れではなく、あくまで魔力の性質上の話です。

実はこれ、一度認識されないポイントを抑えると後は自然とそのゼロポイントを基準に魔力のやり取りが行われるので意識せずに認識されないようになります」

「じゃあ結局どうすれば認識できるようになるんだろう」

「魔力の性質を観測し、解析するしかないですね。

実は私はあることをしてしまうと魔力を感知されてしまうという瞬間があります。

でもそれは見知らぬ人と再び出会う確率と同じくらい低いと思いますね」

「出会う機会を増やして気を伺う、が近道と言いたいのかしら」

「これを教えてくれた方も、方法までは知らない状態だったのでこれくらいしか思いつかないですね」

「あの、もし良ければ魔力が感知される瞬間というのを教えてもらえないでしょうか」

「流石にそれは」

「ですよね」

一度魔力パターンを知られたところで魔力バランスが整えば追跡は愚か感知もできなくなるので知られたから終わりというわけではありません。

しかし、やちよさんのようなベテラン達は弱点がわかればそこを突いて追い込む作戦なんて容易に思いつくでしょう。

ワルプルギスの夜を倒すような人たちです。隙を見せれば手遅れと思うくらいが良いでしょう。

そう思いを巡らせていると長い間聞き続けた声がテレパシーで聞こえてきました。

[環姉妹がいるのはみかづき荘で間違いなかったかな?]

周りのみんなが一斉に動揺し出したので全員へ向けて発していることがわかります。

玄関の扉が開けられると、道路へ通じる階段の前に私服で立っているカレンの姿がありました

「カレンさん、あなた!」

「久しぶりですね、やちよさん、いろはさん。

協力関係になるための交渉をしに来たんですよ。ついて来てもらえますか」

調整屋を襲って以来目撃情報がなかったカレン。協力関係を結ぶための材料は恐らく、黒いオーラの魔法少女でしょう。

 

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