【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 4-4 叛逆の先にある物語

神浜の様子がおかしいから来てみたら、街が黒いオーラの魔法少女で埋め尽くされていたのです。

マミ達はまどかを助けるために神浜へ向かったようですが、お前の言う通りならみんなあの百禍に紛れているのですね。

なぎさの近くにいるピンク色のキュゥべえ。

なぎさにしか聞こえない声で色々話しかけて来て鬱陶しかったのですが、今回はちゃんと役立ったのです。

「なぎさは知ってるのです。

まどかが魔女のような振る舞いをすると、この世界がどれほど大変なことになるのかを。

だからやってやるのです。

かつてはさやかがいたけど、1人でもできるのです!」

作戦はこうなのです。

黒いオーラの魔法少女となったマミ達をなぎさへ注目させて、あの眩しい塔の場所まで連れて行くのです。

連れて行けばそこからはコイツが何とかしてくれるのです。

「全部終わったらちゃんとチーズをご馳走してもらわないとです。

カマンベールくらいでは満足しないのです!」

なぎさはビルの上から飛び降り、作り出したシャボン玉を足場にして4人の捜索に入ったのです。

幸いにも4人の魔力パターンは把握しているので、問題はちゃんとついてくるかなのです。

飛び跳ねているとまず見つけたのは狂喜乱舞な杏子。

魔女じゃなくて魔法少女としての意思があるなら、食べ物を無駄にしてやれば絶対ついてくるのです。

勿体無いですが、コレもこの世界を壊さないためなのです。

なぎさは八百屋に並んでいたリンゴを杏子の前で全て地面に叩きつけたのです。

するとどうでしょう。

怒り狂った獣のような雄叫びを上げてなぎさについて来たじゃないですか。

よしよし、このままさやかのところへ行くのです。

なぎさはさやかの前を横切り、杏子にさやかの邪魔をさせたのです。

するとどうだ、さやかは邪魔をした杏子を追いかけてくるじゃないですか。

ちょろいのです!

そしてこの世界の身振りを気にしなくても良くなったなぎさは黒いオーラの魔法少女なんて障害でもなんともないのです。

余計な魔法少女達が襲いかかってくるのですが、呼び出した使い魔をデコイにして目的地へ一直線なのです。

次に見つけたマミとほむらは同じ場所で仲良く人を殺していたのです。

なかなか仲良くできなかった2人だけあって珍しい光景なのです。

ここが少し難しいところでどうやって2人のヘイトをこちらへ向けようか。

そう考えながら2人の近くへ向かっているとピンク色のキュゥべえがいきなり背中を光らせて一枚の禍々しい羽根を呼び出したのです

それを今出すのですか!

ひらひらと落ちて行く羽根を拾うまでになぎさにはほむらの構えるガトリングから弾が飛び出してきてエメンタールになるかと思ったのです。

しかしこの羽根があれば2人は有無を言わずついてくるのです。

何故ならこの羽根が発する声に2人は反応せざるを得ないからなのです。

さあ、難なく4人をかき集めて眩しい塔の近くまで来たのです。

でも塔の麓には魔女とは違った首長竜が魔法少女達を蹴散らしていたのです。

あれがヤツラの使役する生物なのですか。

まともに戦うと勝てそうもないのでなぎさはシャボンの階段で駆け登るのです。

塔の上には見知らぬ魔法少女と謎の結界がありましたが、目指すは倒れているまどかなのです!

なぎさは4人を引き連れてまどかのもとへ飛び込みます。

するとピンク色のキュゥべえはなぎさの持っていた黒い羽根を奪って重力に任せてまどかへ触れたのです。

すると紫色のガラス破片のような結晶がまどかから広がり、なぎさ達を包み込むと虹色の結界で囲んだのです。

あの事件を思い出してしまいますが、この緊急事態、力を借りるしかないのです!

 

________________________

目を開けると見滝原によく似た景色の結界の中にいました。

さっきまでは鹿目さんを苦しめるヒトの光景に苦しんでいたはずなのに。

周囲を見ると黒いオーラを纏っていないマミさん、さやかさん、杏子さん、そしてなぎさちゃんがいました。

「あれ、私たちって」

「なんか知らんけど、なんともないみたいだな」

知らぬ間に知らない空間にいて混乱していると、頭に声が聞こえて来ました。

[みんな、まどかのためにあの山の頂上まで来て。みんなが来たら、まどかを救えるから]

「暁美さん、今わたしに話しかけた?」

「いえ、わたしではないです」

「でもさっきの声はほむらだったじゃんかよ」

「でも、わたしではないです」

なんで私ではないワタシの声が聞こえたんだろう。

「ほら何しているのですか。さっき聞こえた声の通り、あの山を登るのですよ!」

「山ったって、あの街中にある黒いところか?」

この空間の中央には天へ届きそうな山のような何かがそびえ立っていました。

しかし不思議と、あの上へ行けばまどかに出会える気がしました。

「すっごい高いけど、あそこ頂上とかあるの?」

「みなさん、行きましょう。あの山の上へ。あそこの頂上へ登れば、鹿目さんを助けられる気がするんです。」

一瞬沈黙が訪れました。

「ま、ただ彷徨っても出口は見つからなさそうだし、当てのある方へ向かおうや」

「それはそう、だよね」

「ではみんなで行きましょう。鹿目さんを助けるために」

「そうこなくっちゃなのです!」

私達がそう意思を固めると、宙から黒い羽根が降って来て私たちの前へ山の頂上へ向かう長い道が現れました。

「なんだよ、道ができるなら早く教えろよ」

「さ、駆け上がるわよ!」

出現した石畳のような魔力でできた道を登っていると山の方角から羽根の生えた弓矢のような生き物が矢を飛ばしながら襲いかかって来ました。

「コイツら、もしかして使い魔?!」

「じゃあここは魔女の結界か何かってか?」

私は軍事基地から拝借していたマシンガンを取り出し、飛ぶ使い魔達を薙ぎ払うように撃ち落としていきました。

「あんたどこからそんなもん!」

「でも弾幕を貼るのは良い手よ。私と暁美さんで使い魔の相手をするから2人は駆け上がって!」

「それならお構いなく」

「ちょっと待ちなって!」

佐倉さんと美樹さんが山の頂上へ駆け出し始め、頂上近くになると使い魔達は私達には目もくれず、頂上への道を密集して防ぎました。

「チクショウ、どうやっても近づかれたくないようだな。

それに結構やばいぞこれ」

密集した使い魔達は一斉に矢を打ち出す準備をしていました。

「みんな、私の後ろに下がって!」

「美樹さん?!」

美樹さんが前に出たと同時に使い魔達は一斉に攻撃を仕掛けて来て、美樹さんの前には人魚姫のドッペルが出現しました。

矢の攻撃は貫通することなく、後ろにいた私達は無傷だったものの、ボロボロになった美樹さんのドッペルは泡となって消えてしまいました。

「美樹さんありがとう。

突破口を開くわ。みんな私の近くへ」

言われるがままにみんなが巴さんの近くに集まるとリボンで包まれて周りが真っ暗となりました。

「いくわよ!」

巴さんの掛け声とともに急激なGが体にかかり、何かが前方で砕ける音がすると私たちを囲っていた何かが砕けると私達は山の頂上へ向かって飛んでいたのです。

「マミ!流石にこれはめちゃくちゃだぞ!」

「このままじゃぺしゃんこなのです!」

こんなところで死ぬのは嫌だったので私は時間停止を使用しました

するといつのまにか巴さんのリボンが繋がっていて、みんなも時間が止まらない状態でした。

加速が止まらない中、なぎさちゃんがシャボン玉を出し、その弾ける衝撃で私たちの加速が止まったのです。

「いたた、首が変な方向向くかと思った」

「でも、頂上にはたどり着けたみたいよ」

山の壁部分にはトカゲのような模様がついた結界の入り口がありました。

「ここに入れば、鹿目さんがいる」

「そのようね。

さ、行きましょう」

時間が止まっていても結界の中へ入ることができ、みんなが結界に入ると結界の入り口は閉じてしまいました。

そして山の頂上には5色の球体が現れたのです。

結界の中は緑豊かな丘が広がっていて、丘の上には桜の木が1本と1人の少女がいました。

「っ!鹿目さん!」

私は急いで駆け寄るとあと一歩で手が届くというところで見えない壁に阻まれてしまいました。

そして、鹿目さんのいる向こう側は炎に包まれ始めたのです。

「鹿目さん!」

「ほむらちゃんにみんなどうしたの?」

「どうしたのって、あなたを助けに来たのよ。さあ、元の世界へ戻りましょう」

「どうして?

みんなの帰る場所はここですよ。

生きてても苦しみや後悔しかないヒトの世界よりも、こっちがミンナ幸せにナレルンデスヨ」

「まどか、アンタどうしたの?」

「大丈夫、みんなもすぐに幸せな場所へ来れるから」

鹿目さんは魔法少女姿になるとソウルジェム部分がポッカリと穴が開き、宙に浮いたソウルジェムからは穢れの泥が溢れ出して来ました。

その泥は見えない壁お構いなくこちら側にも溢れて来ました。

「何だよ、これ」

「触れちゃダメなのです!

流れてくるのが遅いあの泥は穢れの塊。触れただけですぐにドッペルが出てしまうやばいヤツなのです!」

「なぎさちゃん、どうすれば鹿目さんを助けられるの?」

[5色の球体を同時に破壊しなさい。その後は私が何とかするわ]

再び知らない私の声が頭に響きました。

「気になることは山ほどだが、あの宙に浮かぶ球体のことを言っているようだな」

「同時に壊せばいいんだよね」

「時間がないわ。みんな私の合図で球体を破壊して。

いくわよ、せーの!」

私達は一斉に球体を攻撃しますが、球体は壊れる様子がありませんでした。

「そんな」

「くそっ、特大ぶち込むったって魔力がもたないぞ!」

「…ドッペル」

「え、ほむら今なんて」

「みんなでドッペルを撃てば良いだけだと思います」

「ドッペルか。

外で体感したみたいにずっと悪夢を見続けるようにならないだろうな」

「何言ってんのさ、私がついさっき出したじゃん。大丈夫だって」

「んじゃ、ドッペルを出すのに手っ取り早いのは、まどかが出してる泥に触れるくらいか。

気が進まないな」

「仕方がないのです。いいですか、触れるのはちょっとだけですからね」

「分かってるって」

私達は恐る恐る穢れの泥に触れ、すぐに浮かぶ球体の方を向きました。

5人は一斉にドッペルを出し、ドッペルの攻撃で5つの球体を同時に破壊することに成功しました。

球体が破壊されると宙には見覚えのない羽の生えた紋章が現れてそこから紫色の閃光が見えない壁に放たれました。

見えない壁には瞬く間にヒビが入っていき、粉々に砕けたのです。

「今!」

私はダルい身体に鞭打って動き出し、穢れの泥を顧みずに鹿目さんへ手を伸ばそうとします。

しかし燃える境界線に手を触れると肉が爛れてしまい、思わず手を引き戻してしまいました。

目の前に鹿目さんがいるのに、手が届かないなんて。

他のみんなはドッペルを出した影響ですぐに身体を動かせない状態でした。

そして崩れ去ったはずの壁が再生し出したのです。

一体どうすれば、鹿目さんを救い出せるの?

動きを止めた私の目の前がライトが落とされたように真っ暗となります。

[あなたの覚悟はその程度かしら]

声が聞こえる方を向くと、紫色のピアスをしたワタシがいました。

「あなたは、一体」

[貴方が至るはずだった末路、とでも言っておきましょうか。

貴方達が障壁を破壊してくれたおかげで、こうして貴方と対面することができたわ。礼を言うわ]

「私の、末路?」

[ええ。まどかのためならばどんな犠牲も厭わない。例え女神を汚した悪魔になろうとも。

それがワタシよ。

本当は隙をついてこの世界を乗っ取ろうかと思ったけど、幸せそうな貴方達を見ていて気が失せちゃったわ]

「…鹿目さんを助けたいんです。手を貸してくれませんか」

[その気持ちは山々よ。でも力を貸すにしても貴方には覚悟が足りないわ]

「覚悟?」

[まどかを助けたいという考えだけではダメよ。貴方の目の前にいるまどかは、人間社会に愛想を尽かしてしまって、自ら楽園を作り出そうとしている。

助けるという概念が及ぶ存在ではなくなっているのよ]

「そんな、ではどうすれば」

[あら、まどかを求めるのであればすぐに出る答えだと思うけれど]

私にはすでに答えが出ていた。でもそれはあまりにも無責任で、ワガママな回答。

でも。

「まどかを、奪う」

[ふふ、分かっているじゃない。

でも貴方に残っている良心がその回答を邪魔してしまっているわ。

これを使いなさい]

そう言ってワタシは拳銃を差し出して来ました。

「これでどうすれと」

[自決しなさい。そうすれば貴方の代わりにまどかを奪ってあげる]

私は耳を疑いました。

目の前のワタシは私に成り代わろうとしているのです。

「そんなことできるわけないでしょ!まどかを救えずに死ぬことなんてできないわ!」

[ではどう助ける?手を伸ばすことすら叶わない貴方はどうやってまどかを救い出すと言うの?]

答えることができない。

今の私には、まどかを助けるほどの力を備えていない。

[貴方の生きたいと言う執念があるのは確認できたわ。

でも数多の感情を捨ててこなかった貴方はこの境地へとたどり着くことは叶わないわ。

そうね、貴方。私と契約しなさい」

「契約?!私はもう魔法少女よ。二度目の契約なんてできないわ」

[誰がインキュベーターと契約しなさいって言ったの?目の前にいるワタシと契約しなさいって言ってるのよ]

「…できるとして、その代償は」

[まあ教えてあげると、貴方は今持っている願いを手放すことになるわ。

まどかを救いたいという願いをね。

それ即ち、何が起こってもまどかを救うためにやり直すことができなくなるってことよ。

貴方に願いを捨てる覚悟があるかしら?]

私の中に迷いなんて無かった。

「悪いわね。その答えならすぐに出るわ。

私は貴方と契約するわ。

この時間軸ほど、まどかを魔女化させない条件が揃っている時間へ巡り合うことなんてほぼ不可能。

時間を操る力なんてもう不要。

だから、貴方の力を頂戴。そして、まどかを奪い取る!」

[いい覚悟になったじゃない。では契約しましょう。

精々愛の力を振るうといいわ]

周囲がライトアップされると私のソウルジェムは見たことがない禍々しい虹色に輝いていました。

私は穢れの泥に足をつけつつも、ドッペルを出すことなくまどかへ手を伸ばします。

ソウルジェムがある左手は爛れることなく炎の中へ伸びていきます

「ほむらちゃん、どうして?

そんなに苦しまなくてもすぐ会えるのに」

「私が求めるのはそんなまどかじゃない。

何もかもを諦めたまどかではなく、誰かを守りたいと考えるまどかじゃないとダメなのよ!」

左半身が炎の中へ入ると、指先が燃え始め、骨が見え始めました。

「ほむらちゃんダメ、燃えて死んじゃうよ」

「構わないわ。貴方に手が届き、奪い取ることができれば私はどうなろうと構わない!」

私はソウルジェムへ求めているまどかを映し出すよう念じると、まどかの足元から空間のひび割れが発生し出しました。

ひび割れの中には何人ものまどかが映し出されますが、私の琴線には触れません。

「違う、もっと見せて!私の愛するまどかを見せて!」

体が爛れ始めていることも知らず、私はただひたすらまどかを求めていました。

ひび割れがいくつも増えていき、もはや目の前にいたまどかの原型がどこに行ったのかわからないくらいヒビが広がっていました。

そして私はついに、求めていたまどかを見つけて思いっきり手を伸ばし、腕がちぎれるのではないかと言う勢いで掴んだ手を引き上げました

私が地面へ倒れると、そこには穢れの泥は存在せず、私の体は元どおりとなっていました。

そして目の前には魔法少女姿のまどかがいました。

[求めるまどかを奪うことができたようね。

それじゃあ残ったまどかは私がもらっていくわね]

焼け野原に居たのは、ソウルジェム部分がポッカリと開いたまどかを抱える、黒い翼を広げ、黒い衣を纏ったワタシでした。

「ありがとう、悪魔なワタシ」

[礼は無用よ。残念ながら彼女達の試行が巧みだったからなのか、まどかの常識感は塗り替えられてしまっているわ。

でもそれ以外は貴方の求めたまどかのはずよ。

さあ、元の世界へ戻る時間よ。

まどかと、幸せにね。暁美ほむら]

結界が消える寸前、悪魔なワタシは涙を流している気がしました。

私達は結界が消えると同時に高いところにいて、目の前には日継カレン達と、いろはさん達がいたのでした。

 

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 4-3 この神浜にしかいられない私たち

お姉ちゃんがおかしくなってしまいました。

黒いオーラを纏ってはいなかったけどいつものお姉ちゃんとは違い、とても楽しそうに戦っていました。

私は無意識にその場を離れてしまいたいと思ったのかいつもの病室に戻ってきてしまったようです。

灯花ちゃん、ねむちゃん、桜子さんがそこにはいて、傷だらけで泣いている私を宥めるように近くにいます。

ただただ悲しい気持ちしかなくて何も考えていない状態で泣き続けていましたが、ある声が聞こえたことをきっかけに我へと帰りました。

「お姉さんを救いたいですか?」

顔を上げて声が聞こえる右側を見るとつづりさんがいました。

ここでドッペルを出されても困るのでまずはグリーフシードを使ってください」

そう言ってつづりさんは私の前にグリーフシードを手渡してきました。

「つづりは魔女を倒せちゃうんだ」

「結構前のものですけどね」

わたしは穢れを取り除いたことで少しだけ気分が楽になった気がしました。

「さて、気持ちが落ち着いたところで今の神浜を見てもらいましょう」

そう言ってつづりさんは槍を呼び出して石突きを地面へつけます。

そこから今いる空間に波紋が広がり、結界が砕けて消えていきました。

そして私たちは穢れが風に乗って流れてくる高い場所にいました。

「ここは、お父さまの病院?」

灯花ちゃんが周りを見渡してそう呟きました。

そして神浜の方角を見ると黒いものが蠢きながら街を破壊していました。

「あれは一体。そして神浜の穢れが尋常じゃない量で満たされている」

今神浜では本来この時間軸に存在しない魔法少女が行った儀式でほとんどの魔法少女が黒いオーラを纏い、人々を殺戮しています」

「え?」

あの黒い物体が全部魔法少女?

このまま放置してもいずれ自動浄化システムが世界に広がる夢は成就されるでしょう。しかし同時に魔法少女は人を滅ぼし、この世界は終末へと向かいます」

「何を言っているのか分からない。こんな状態にしたのは誰?」

「日継カレン、紗良シオリ、保別ピリカの3人が自動浄化システムを世界に広げる準備を完了させたのです。
その結果がこの有様です」

「その3人の名前は聞いたことがある。

だがぼくたちよりも自動浄化システムを広げる方法を確立させていたなんて」

「ごめん、わたしは知ってたの。カレンさん達が自動浄化システムを広げる方法が知ってるって。
でも人に被害が出るって聞いていたから2人に言うのはダメって言われていたの」

「そう、わたくしたちは信用されていなかったんだね」

灯花ちゃんが落ち込んでいる中、つづりさんが話を続けます。

この状況を良い方向へ持っていくためには、この神浜にしか存在できない貴方達が環いろはを助ける必要があります。

もちろん、それは自動浄化システムが広がるまでの時間を延長させる結果となるでしょう」

「最初の言葉が引っかかるね。どういうことだい?」

「ご想像にお任せします」

お姉ちゃんを助ければみんなも助けられるの?

「お姉ちゃんを助けられるの?!元に戻ってくれるの?」

「そうですね。貴方達がその気になれば」

自動浄化システムが広がるチャンスを先延ばしにするのは惜しいが、お姉さんを見捨ててまで手に入れたい未来ではないね」

「わたくしも、お姉さんを助けたい!」

|3人が行くなら、私もついていく|

4人揃ってお姉ちゃんを助ける意思が固まりました。

「では助ける方法を教えます。

環いろははまだ黒いオーラに飲み込まれていませんが正気ではありません。

正気に戻すために穢れがない隔離された空間へ閉じ込めてそこで4人揃って説得を試みてください。

もちろん、説得の際はグリーフシードを忘れずに。

これだけです」

隔離された空間って魔女の結界しか思い浮かばない。でも魔女の結界を呼び出すことはできないし、穢れもすごいよね。

|わたしの、ウワサの結界を使えばできるよ|

「でも、結界を出すってことはねむちゃんに負担がかかるんだよね」

「一次的ならそこまで負担にならないよ。それにボクは戦えないからね。魔力供給のサポートくらいは役に立たないと」

じゃあお姉ちゃんを止めるのは、私と桜子さんしかできないんだ。

「環いろはがいるのはあの輝きが強い中央区 電波塔の上です。

地上は黒いオーラの魔法少女が蔓延っているので飛んでいくことをお勧めしますよ」

「それならみんな私の出すツバメさんに乗って。ちゃんと連れていくから!」

「ありがとう、うい」

わたしは大きめのツバメさんを5体呼び出し、3人を乗せました。

しかし、つづりさんは乗ってきませんでした。

「つづりは来てくれないの?」

「4人でって伝えたじゃないですか。
部外者は関わりませんよ」

「ふーん、行こうようい」

「う、うん」

わたしはつづりさんへ一礼して中央区へ向かいました。

 

 

 

ツバメさんに乗って空を飛んでいると黒いオーラの魔法少女が飛んでこちらに襲いかかってきました。

|みんなはわたしが守る|

そう言って桜子さんはバトルフォームへと変わって黒いオーラの魔法少女達を追い払って行きました。

わたしはツバメさんを操ることに集中し、4人で無事に電波塔へ着くことに専念しました。

後ろに黒いオーラの魔法少女が付きまとって攻撃されても、桜子さんが剣で防いでくれて、飛ぶ斬撃で黒いオーラの魔法少女へ攻撃していました。

殺しては、いないよね?

地上からも攻撃が飛んできたりしましたが、無事に中央区へ入ることができました。

地上は人を襲う魔法少女達しか姿が見えず、生きた人は1人も見当たりませんでした。

「これはひどい光景だね。近くで見ると尚更だ」

「いたよ!お姉さまが倒れてる!」

灯花ちゃんが指差す方向には確かにお姉ちゃんがいました。

「まっすぐ向かうよ!」

わたしはツバメさんに角度をつけて真っ直ぐお姉ちゃんの元へと向かうようにしました。

「お姉ちゃーーーん!」

わたしがそう叫ぶと電波塔にくっついている瓦礫の上で戦っていた7人の魔法少女がこちらを向きました。

「なんだ?!」

|いくよ|

「「ええ!!」」

桜子さんに引っ張られ、私達はツバメさんから下されました。

地面へぶつかろうというところで桜子さんが結界を作り出し、私達と、そしてお姉ちゃんが桜子さんの結界の中にいました。

「さっきのは環ういたちか。どこに隠れていたんだ」

「でもまぁ、あの結界を壊しちゃえばみんな飛び出してくるよね?

「やらせませんよ」

「わかってるよ夏目かこさん。彼女達の邪魔をしなくても私たちの目的は達成できるからね」

 

 

「お姉ちゃん、お姉ちゃん!」

わたしは結界の中でお姉ちゃんの体を揺さぶり、目を覚まさせようとします。

みんな心配そうな顔をして見守っています。

ピクッとお姉ちゃんの指が動いたと同時にお姉ちゃんからは黒いオーラの魔法少女と同じ魔力を感じました。

「いや、いやだよ。お姉ちゃn」

「ヴァアアアアアアアアアアア!!!!!」

お姉ちゃんは再びドッペルに似た姿となってわたしへ包帯を伸ばしてきました。

お姉ちゃんとわたしには間へ桜子さんが素早く入り、剣でお姉ちゃんが飛ばしてきた包帯を切り落としました。

「桜子さん?!」

|ういは灯花とねむを守るのに専念して。わたしはういを守っていろはを元に戻す|

そう話している間もお姉ちゃんは攻撃を仕掛けてきて、クロスボウで私達へ扇状に矢を撃ち込んできました。

わたしはツバメさんを呼び出して灯花ちゃんとねむちゃん、桜子さんを守ります。

見境もなく襲うお姉ちゃんは目が真っ赤で、何かに苦しむように叫び声しか上げていません。

どう止めればいいの?

桜子さんはお姉ちゃんとの距離を詰めようとしますが、包帯とクロスボウの波状攻撃によってなかなか近づくことができません。

わたしは攻撃して動きを止めようとしますが、ねむちゃんに止められてしまいました。

「うい、だめだ。桜子はぼくたちもそうだけどお姉さんにも危害を加えないよう振る舞うウワサだ。ういが攻撃してしまうと、桜子はそれを止めてしまう」

「それじゃあわたし守ることしかできない!」

「助けることは傷つけることだけじゃない。でも今は、ぼく達の声さえ届かないだろうね」

「そんな」

桜子さんはお姉ちゃんの攻撃を受けているもののダメージは確かに受けていて擦り傷や切り傷、アザが増えていました。

わたしは話し合いさえできれば争わずに仲良くなれると思っていました。

でも目の前で起きていることを目にしてしまうと、話し合いだけでは解決できない非情な現実を突きつけられた気がしました。

|きゃあっ!|

桜子さんは珍しい声を出して地面へ倒れ、お姉ちゃんの攻撃を回避できない状況でした。

わたしは2人の間に入って桜子さんをツバメさんで守りますが、包帯で振り払われて逆にわたしが動けない状態になってしまいました。

そんなわたしにお姉ちゃんはナイフを手にしてわたしの方へ飛び込んできました。

わたしは恐怖のあまり目を閉じてしまいましたがお姉ちゃんの攻撃を受けることはありませんでした。

「「桜子!」」

灯花ちゃん達の桜子さんを呼ぶ声が聞こえて目を開けるとわたしの目の前に桜子さんが手を左右に広げて仁王立ちしていました。

「桜子、さん?」

桜子さんは何も言わず両手を下ろし、グリーフシードを取り出します。

わたしは桜子さんの様子を見るために桜子さんの横に立って衝撃を受けました。

お姉ちゃんの持つナイフが、桜子さんの電源ボタンマークに深く突き刺さっていたのです。

桜子さんは取り出したグリーフシードをお姉ちゃんのソウルジェムに当てながらお姉ちゃんを抱擁しました。

|いろは。うい達を悲しませないで。3人を悲しませるのはいろはの望むことではないでしょ|

「mannnえン桜のウwaさ?」

「お姉ちゃん!」

「うい、ソkoにいるノ?」

「わたくしたちもいるよ!」

「みんな、ワタシハ」

「お姉ちゃん、大丈夫だから。私は何処にも、もう何処にも行かないから安心して!」

「ほん、とう?」

|ういは嘘をつけない。だから事実だよ|

「そう。でも、私はみんなにひどいことをしただけではなく、万年桜のウワサも」

|大丈夫。わたしはウワサ。姿形は無くなっても、ねむの本の中から見守っていルcあLa|

桜子さんの体にノイズが走り始めます。

「嫌だ、桜子さんとお話しできないなんて」

|泣かないでうい。

ねえみんな、わたしが消えちゃったらみんなわたしのkおト忘れちゃう?|

「忘れない。忘れるはずがないよ!」

「わたくしも!」

「ぼくが忘れるわけがないじゃないか!」

「わたしも、忘れない」

お姉ちゃんはそう言いながらナイフから手を離して元の魔法少女姿に戻りながら後退りしました。

「そう、それなら良かった。ミnNあ覚えていたら生きている。みんなが教えてくれた事」

桜子さんが今までに見せたことのない笑顔でお姉ちゃんへ向き直ります。

「いろは、wあTaシを生み出してくれて、アリガトウ」

そう言って桜子さんは虹色の粒子となって姿を消してしまいました

お姉ちゃんのナイフはそのまま地面へ落ちてしまいます。

それと同時に灯花ちゃんとねむちゃんについていた魔法少女になると痛みを与える腕輪も消失しました。

「わたし、桜子さんを、殺しちゃった…」

お姉ちゃんはその場に膝をついて泣き出してしまいました。

わたしは涙を堪えて、お姉ちゃんの前へ膝をつきました。

「お姉ちゃん、今神浜が大変なことになっているの。神浜のみんなを助けるために、カレンさん達に立ち向かおう?

わたしも頑張るから!」

「うい」

「わたくしたちも戦えるようになったから、ちゃんとフォローするよ」

ぼくは魔法少女に慣れたからにはやらないといけないことができた。お姉さんが一緒にいると心強いな」

「灯花ちゃん、ねむちゃん」

「お姉ちゃん、また私たちと一緒に頑張ろう!」

「…うん」

お姉ちゃんがわたしの手を掴むと同時に結界内の桜は全て散ってしまい、結界内は光に包まれました。

私たちは気づくと瓦礫の上に立っていて目の前にはカレンさんとピリカさん、かこさんとシオリさんと思われる人が目の前にいました。

「何が起こったんだ」

「あなた達が日継カレン達?

自動浄化システムを広げるために頑張ってくれたみたいだけど、みんなを黒いオーラの魔法少女にしちゃうのはよろしくないにゃあ

「だからぼく達が一手間加えさせてもらうよ」

「何をしようというんだ」

「うい、前に病院の前でやろうとしたことをやるよ。大丈夫、もう魔女化はしないから」

「うん、わかったよ!」

わたしは穢れをありったけ集め始めます。

わたしの集めた穢れを灯花ちゃんがエネルギー変換してねむちゃんへ魔力を供給します。

そしてねむちゃんは。

「さあ、みんな待たせたね。

かつて呪いを、負の感情を集めようと生み出された創造の子どもたちよ。

今こそ罪滅ぼしのために羽を伸ばす時がきた。

君たちに新たな役割を与えよう。

異世界よりもたらされた縁切りの力を携え、魔法少女を解放せよ。

今こそ新たな翼で飛び立ち、皆へ希望を与えて」

ねむちゃんの本からたくさんのウワサが飛び立ち、神浜中へ散って行きました。

「縁切りの技、他に教えられていたのはねむさんでしたか。

魔法少女になれて力を行使できるようになったということは。

犠牲が出ないと解決できないというのは皮肉ですね」

神浜へ散って行ったウワサ達は黒いオーラの魔法少女へ近づいてはチョキン、チョキンと何かを切って去っていきます。

その途端に何かを切られた黒いオーラの魔法少女は黒いオーラが取れて元の姿へと戻って行きました。

「うい、ねむ、大丈夫?」

「わたしは大丈夫だよ」

「ぼくの魔力も安定している。何の問題もないよ」

ウワサによってたくさんの魔法少女が黒いオーラから解放されて動きを止めていきます。

不思議と、神浜に漂っていた穢れも少なくなった気がします。

私たち、みんなを守ることができたんだよね?

「これが、自動浄化システムを作り出すきっかけとなった魔法少女達の力か」

「凄まじいねぇ、こんな光景二度とみれないよ」

神浜中に散ったウワサ達がみんな消えて、神浜から黒いオーラの魔法少女は誰1人もいなくなったのでした。

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目の前で叔父さんが殺されて、私はひたすら逃げ続けた。
何かあったら逃げ込むはずのシュエルターは、扉の隙間から血が流れだしていて内部がどうなっていたのかすぐに想像できてしまった。

そんな逃げ場所がない中ワタシはひたすら逃げ続けた。

頭が痛い。たくさんの負の感情が聞こえてきて、心が壊れそう。

「やめて、フーちゃん。わたしが耐えられない」

フーちゃんが黒いオーラを纏っている魔法少女の声を運んできてしまってわたしは送られてきた言葉に押しつぶされそう。

わかってるよ。

フーちゃんは魔法少女の言葉を届けるのが役割なんだよね。

でも、これ以上は。

地に伏せている目の前に、ドッペルを出しながらこちらを見る黒いオーラの魔法少女がいました。

あっ、わたし殺されちゃうのかな。

魔法少女のことをみんなに知ってもらいたいって、頑張ってきたのにこんな結果なんて。叔父さんの分も、頑張らなきゃいけないのに。

地面を見ながら涙を流していると後ろから銃声がたくさん聞こえて、わたしを見ていた魔法少女は何処かへ逃げて行きました。

「------!」

銃声の中でわたしに声をかけてくれた軍服を着た人は聴き慣れない言語で、わたしは聞き取ることができませんでした。

わたしは訳もわからずその場から動けないでいると数体の黒いオーラの魔法少女が襲いかかってきて、わたしに声をかけてくれた軍人さんは銃で応戦するものの、魔法少女の攻撃で首が吹き飛んでしまいました。

わたしには吹き出る血が降りかかり、恐怖のあまり悲鳴を上げ、過呼吸になってしまって目の前が真っ白になりました。

意識が遠のく中、少しだけ日本語が聞こえた気がしましたが誰かに抱えられて何処かへ連れていかれました。

これが、変わってしまった神浜になる前の最後の記憶でした。

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 4-2 私たちが今いる理由(ワケ)

保別ピリカの記憶

私がまだ一桁の年だった頃、アイヌの村で生活していました。

この村には、村を脅かす存在を夜な夜な切って回ったという言い伝えがある刀が奉納されていて、村の長からは決して奉納櫓に近づくなと強く言われていました。

なんでも村の長が使える術によって封じ込まれた刀らしく、変に刺激を与えると術が溶けて人を襲い始めるらしい。

その刀は、人によっては「人喰い刀」と呼ばれていたそうです。

でも私たち子どもが好奇心で奉納櫓に侵入して、奉納されている刀を目にすることとなったのです。

その刀を目にした時、私は声を聞きました。

[足りない、足りない!私たちにひどいことをしたあいつらの血が!]

その言葉を聞いてから私は意識を失い、気がつくと村は荒れ、家が燃え、地面には多くの死体が倒れていたのです。

そして左手には血だらけの刀を手にしていて、皆が恐れた顔をしていました。

私は目の前に広がる光景に絶望し、膝をついて涙していると、目の前にキュゥべぇが現れたのです。

願い事を教えてくれれば君たちの民族を救うことができるかもしれないよ」

私は藁にもすがる思いで願いました。

「わたしは、みんなに希望を与える存在になりたい!」

私がそう願うと私の周囲には三つの光が現れました。そしてその光はこう語ったのです。

[この娘が殺したのはアイヌを脅かす存在達だ。どれだけ親しい間柄であっただろうが、いずれお前達には不幸が及んでいただろう。

強く生き、外界からの襲撃に備えなさい]

私には何を言っているのかわからなかったけど、年配の村の人たちがその光を目にして涙を流していました。

「カムイが、カムイが我らに直接語りかけてくださっている!

ワシらは今後も生きて行けるぞ!」

よくわからないまま村の人たちはやる気を出して村を再興して行ったのですが、その間に世界では大きな大戦が起き、村にはある話が入ってきました。

隣の島から追い出されたアイヌ達が人攫いの餌食にあったと言う。どうやらアイヌをターゲットにしている賊がいるらしいから注意するように」

人攫いの魔の手は私たちの村にも襲いかかってきました。
きっかけは私が人食い刀を手にした際に殺した人間の中に人攫いの仲間がいたことです。
その人が生きていようと、この村が標的になるのは変わらなかったでしょう。

私は魔法少女として手に入れた力で抵抗しようとしましたが、村の人が人質となってしまったので皆そろって人攫いにとらわれてしまいました。

人攫いはいわゆる奴隷商人を生業としていて、奴隷という考えがなかったこの国でも大戦で歪んでしまったのか表では話題にならない程度に奴隷が出回っていたのです。労働力としての奴隷ではなく、主に欲求の吐き捨て先として使用されていたようです。
そんな奴隷として使える人材をさらっては求める人物へ金と交換していたのです。

私たちが牢獄に囚われている中、私は隙をついて牢を食い破り、皆を外へ脱出させることに成功します。

願いと共に降臨したカムイ達に村人、囚われていた他の人たちの護衛を頼んで私も脱出しようとしたところ、人攫いが雇っていた魔法少女が現れて私だけがそのまま囚われることとなりました。

そこからはひどい記憶しかありません。

私は商品として処女を奪われ、調教という名の拷問を何度も行われました。

時には偽名で売春婦として働かせられ、私の体は汚れていきました。

人攫い達はいくら客と交えても妊娠しない、鮮度が落ちないことで私を重宝し出し、折れない私の心を折ろうと何度も拷問にかけましたが私の心は折れることがありませんでした。

そんな間も多くの人がとらわれ、調教される場面を目にしてきました。

快楽に溺れ、戻ってこない子もたくさんいました。

この頃、戦争に負けてこの国は快楽を求めていたと言う話を雇われた魔法少女から聞いたことがありました。

だからお金がたくさん貯まるこの仕事がやめられないと言っていました。

この頃から、私の人嫌いが加速していったのです。

私はある日、新たに囚われたアイヌの子を目にしました。見覚えがない子だったので別の集落の逃げ遅れなのだろうと思いました。

しかしアイヌの子を拷問しようとする姿に耐えることができず、私は鎖を外そうと暴れました。

「そう暴れんなよ。あんたのソウルジェムは私が持ってんだ。下手に暴れるとソウルジェム割っちゃうよ?」

そう、私が抵抗できなかったのはソウルジェムを奪われてしまっていたから。

ソウルジェムは私の魂だとカムイから聞かされていたので抵抗することができなかったのです。

しかし、私は目の前で行われているアイヌの子への拷問とその叫び声に耐えることができず、私は眠っていた人喰い刀を呼び出したのです。

[もう私はあんたのものだ。思うがままに存分に暴れるといいよ]

ソウルジェムから人食い刀 イペタムが飛び出し、そのまま人攫いの魔法少女の腕を切り落としました。

イペタムはソウルジェムと共に私の元へ戻ってきて魔法少女姿となった私はそのアイヌの子以外の人を無差別に殺していったのです。

建物が炎に包まれた中、生きている子がアイヌの子だけとなったのですがその子は既に弄ばれた後だったのです。そして少女は涙を流しながらこう言ってきたのです。

「殺して…もう…生きていたくない」

私は強い悲しみに包まれ、叫びながら少女の心臓を貫いたのです。

朦朧とした意識の中後ろを振り向くと、そこには見知らぬ魔法少女がいましたが私はその場で気を失ってしまったのです。

私が目を覚ますと目の前にはお父さんとお母さんがいて、起き上がった私を抱きしめました。

「生きててよかった!もうそれだけでお父さん達は幸せだよ!」

建物の入り口には腕を組んでこっちを見る人攫いのアジトで最後に見た魔法少女がいました。

これがカレンとの出会いでした。

カレンは放浪の旅の中、路頭に迷うアイヌ達を先導して村の再建、護衛に手を貸してくれていたのです。

そして信用に値すると判断したカムイが、カレンに私の居場所を教えてくれたのです。

私はカレンの元へ向かってカレンの両手を強く握り締めました。

「私がいない中、みんなを守ってくれてありがとうございます!」

「お、おう」

その後人攫い騒動は何もなかったかのように終息し、皆は現代社会でアイヌが生き抜くための準備を進めていました。

私はそんな中、カレンから提案されたのです。

「外の世界を見てみないか?きっとヒトの汚い部分しか見てきていないと思うけど、表の一面も見て欲しいんだ。その上でヒトに対して判断を下して欲しい」

アイヌ以外の人嫌いになっていた私でしたが、カレンと一緒ならという思いで私は外の世界を見たくなりました。

わたしはお父さんとお母さんに相談し、わたしは外の世界へ旅立つ許可をもらえました。

「私たちはもう大丈夫だ。都会の人たちと共に生きながらもアイヌの文化を守っていくよ。

だからピリカは好きな生き方を選びなさい。カレンさんは信用できる人だから、お父さん達はあの人についていくことを否定しないよ」

こうしてわたしは決心し、人を見定める旅にカレンと共に出たのです。

結局人を否定する結果とはなったけれど。

ヒトはお金のためなら手段を選ばない。どんなにひどいことをしてもお金のある人が幸せなことになるというこの世界の価値観が大っ嫌いなのです。

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紗良シオリの記憶

シオリは小学生の頃、周りの子よりも物覚えが悪かった。

周りの子よりもたくさん勉強しても、テストをするといつも50点以下ばかり。

両親は教師でありながら海外で授業をまともに受けられない子ども達のために学ぶ場を設けてあげたいという夢を持っていたのですが、シオリは両親のそんな夢を邪魔していたのでした。

シオリちゃんは周りの子と比べてものを覚えるスピードが遅いんです。
もしかしたら、ADHDなのかもしれません」

「わたしの子を勝手に病気呼ばわりしないでください!」

そうお母さんが怒る場面を転校した学校でよく目にしました。

「シオリのためだ。海外へ研修に行くことは諦めてシオリのために生きていくことにしよう」

「そうよね、それが第一よね」

シオリは両親の優しさが辛かった。物覚えが悪いというだけでシオリは両親の夢を奪ってしまうのだから。

シオリは悔しくて勉強しながらノートに涙を流していました。

そんなある日、深夜の部屋にキュゥべぇが現れたのです。

「紗良シオリ。僕なら君の願いを叶えてあげられるよ。
君は何を願うんだい?」

アニメに出てきそうな動物を目にしても、なんでも願いを叶えられるという言葉に踊らされてシオリは願ったのです。

「見たもの、聞いたものを絶対に忘れないようになりたい!

お父さん、お母さんのためにも!」

そう願ってから授業を受けると教わったことが頭から離れなくなったのです。それどころか目に入ったもの、聞いたことすべてを覚えていられるようになったのです。

おかげで6年生の頃には中学校の授業を専攻して受けられるほど私の学力が跳ね上がったのです。

英語も理解できるようになり、そんなシオリを見た両親は海外で授業を教えるための資格を取るために海外研修を受ける決心をしました。

シオリは中学校から海外の学校で学ぶこととなり、一緒に戦っていた魔法少女達からはすごい、頑張ってねという言葉をもらって、海外へ旅立ちました。

世界の時間の基準となる場所近くの海外の学校へ通うようになったシオリですが、日本で習った時のイントネーションとは違った現地独特のなまりに苦戦しました。

でもみんなは優しく教えてくれたし、覚えるのも早かったのですぐに溶け込むことに成功しました。

中学2年生となった頃は飛び級という制度があったので高校に通ってみないかと勧められました。

シオリは両親へ相談して学びたいことはどんどん吸収しなさいと促されて高校へ飛び級することとなったのです。

もちろんそんなシオリを羨ましがっていじめようとする学生もいましたがブラックジョークなんかをぶつけて周りを味方にしながら難なく学業に励むことができたのです。

そんな激変した生活でしたが、日常生活に支障が出ていました。

それは、魔法少女になってから一睡もできなくなったのです。どれだけ寝ようと布団に入っても寝ることができず、次第に寝るという行為すら行わなくなったのです。

夜は魔法少女として魔女狩りに勤しんでいましたが、雷を放つか帯で打撃攻撃しかできないしおりに対して先輩魔法少女から闘いを工夫しなさいと怒られてしまいました。

人間社会では飛び級できても、魔法少女としては初心者。

シオリは魔法少女には得意不得意があると察し、不得意を補うために現代技術を応用した戦い方を考えたのです。

チームのみんなが苦戦している中で鉄塊を高速で飛ばして魔女を蜂の巣にしたり、砂鉄を集めて刃を作ってプラズマカッターのように扱ったりと戦い方を変えただけで自由度が増していったのです。

そんな先輩魔法少女達と戦っている中、ソウルジェムがシオリ達の魂であること、ソウルジェムが濁れば魔女になってしまうことを知りました。

でもシオリは後悔はしていません。

お父さんとお母さんが安心して夢へと向かうことができたんだから

中学3年の年齢となる頃には大学編入の相談をされましたが先行して学びたい分野が定まっていないので悩んでいました。

そんなシオリをメディアはADHDと思われた中学3年生は天才となっていたと紹介し、世の中は物覚えが悪いとすぐに病気だと決めつけることをやめて行きました。

少し恥ずかしかったけど、それで物覚えに苦労している子達の立場が救われるのならいいかなって思いました。

シオリの両親は海外研修を終えて、見事に海外で勉強を教える資格を取得することに成功しました。

シオリは両親が海外で働くために一度母国へ戻ることとなりました

海外の生活も悪くはなかったけど、今後はたくさんの国を回ることになるし、シオリも頑張らないと。

魔法少女チームのみんなに別れを告げて、シオリと両親は飛行機に乗って母国へと戻ろうとしました。

しかし、その飛行機がシオリの生き方を変える転換期となったのです。

飛行機はある宗教に心酔したテロリスト達に占拠され、そのテロリストたちは西の大国へ飛行機を落とそうとしたのです。

シオリは客にもテロリストが潜伏していると思うとなかなか手を出せずにいました。

そんな中、なかなか言うことを聞かない操縦士を脅すためにテロリスト達は人質を選定し出しました。

「5分経過する度に乗員を一人ずつ殺す。乗員を殺されたくなければ言う通りにするんだ」

そんな人質にシオリのお母さんが選ばれてしまったのです。

シオリは思わずテロリストに手を出してしまい、潜伏していたテロリストに脇腹を撃たれましたが魔法少女姿となって母親の手を離しませんでした。

お前達の倫理観にシオリ達を巻き込むんじゃない!

必死に抵抗していると、操縦席で銃声が聞こえた後に飛行機は急降下を始めたのです。

飛行機内には悲鳴が響き、瞬く間に飛行機は地面に打ち付けられてシオリは身にかかったGと衝撃で気を失ったのです。

気がつくと目の前にはぐちゃぐちゃとなった飛行機の残骸と吹き飛ばされた肉塊が広がっていました。

シオリの体には飛行機の部品が刺さっていて心臓を貫いていましたが魔法少女だったので生きていました。

そんなシオリが目線を下に下ろすと血が大量に吹き出し、四股や頭が散り散りとなった両親を目にしてしまったのです。

「お父さん、お母さん?」

シオリは心臓から部品を抜き取り、血を垂らしながら両親の元へ歩み寄りましたが、生きているはずがありませんでした。

シオリの目からは涙が溢れ出し、全てを奪ったテロリストに対する強い怒りが込み上げました。

「ヴァアアアアアアアアアアア!!!!!」

シオリは空を見上げて強く叫び、何かに塗りつぶされるかのように目の前が真っ暗となったのです。

目覚めることがないかと思ったけど、ある二人の声を聞いて久々に目を覚ますという感覚を体験しました

シオリを助けたお人好しはカレンとピリカという二人の魔法少女。

シオリはなぜ助けたと二人に向かって怒鳴りましたが、二人はシオリが必要だと言い張るばかりでした。

シオリは一人になりたいとその場を離れますが、カレンが後をついてきたのです。

「ついてくんなよ!」

「たまたま行きたい方向が同じだっただけさ。そうかっかするんじゃないよ」

そう言ってシオリが座り込んだ木の隣の木へカレンが座った。

「シオリ、この世が憎いか」

「何を言い出すの、シオリが憎いのは倫理観が狂った奴らよ」

「もし、世界の在り方を変える力を持つ者がいると知ったら、シオリは興味を持つか」

「そんな奴が本当にいるなら、出会ってみたいに決まっているでしょ」

「じゃあ一緒にそいつへ会いに行かないか?どうせこのまま生きながらえても暇だろ?」

世界の在り方を変える奴なんて聞いたことがない。嘘に決まっている。

「嘘じゃないよ、紗良シオリ」

声を聞いて振り向くとピリカとキュゥべぇがいました。

「嘘だとぶっ飛ばすよ」

「嘘ではない。西側の国に昔に栄えた錬金術を扱える魔法少女の素質を持つ少女がいるんだ。

彼女は世界を変えるほどの素質を持つ。もし彼女に関われば、君たちのやりたいことも達成できるんじゃないかな」

錬金術

姿形は化学へと変えて現代にも残り続けているけど、本場の錬金術は異端だと罵られて姿を消したと聞いている。

でも極めたものは神に近い力を奮ったとも聞いている。

「それが本当なら、シオリはこんなところで腐ってるわけには行かないね」

「それじゃあシオリ、共に来ないか。

一緒にこの世界の在り方を変えるために」

「いいよ。でも、シオリをしっかり満足させてよね」

「刺激たっぷりの余生となることを約束するよ」

こうしてシオリはカレン、ピリカと共に行動することとなり、噂の錬金術師と出会って聖遺物を集める活動を開始しました。

そんな中でシオリは師匠から錬金術を学び、今でも活用しています。

師匠が死んでからは貰った力を使い、師匠と目指した世界を作るために活動してきたのです。

人類史を壊し、魔法少女の時代を始めるという夢を。

 

========================

私は現実に戻り、2人の激動の歴史を一気に見て体がふらつきました。

だから、ここまでしてヒトを殺そうと。

私は攻撃の気配がしてすぐに避けましたが、糸が脇腹を切りつけて行きました。

顔を上げると怒った顔のカレンさんが手を伸ばしていました。

「見たのか、シオリとピリカの記憶を!」

「見られたら仕方がないね」

「私たちと行動を共にするか、ここで死ぬか選びなさい!」

ピリカさんが刃を向けてきたのでももこさん達の方を見るとソウルジェムを残されたままボロボロになって気絶していました。

「協力はしますが傘下に加わる気はありません」

「そうか、じゃあ一緒にずっとついてきてもらうよう協力してもらわないといけないね」

「なぜ、記憶を覗かれることを嫌うのですか」

「嫌に決まっているだろう!知られたくないこと、掘り返されたくないこと。

それを見られて怒らない奴がどこにいる!」

場の殺気が強まったので私と出現しているななかさん達は攻撃態勢に入りました。

「届けー!」

そう声が聞こえた方向を向くとういちゃんと桜子さん、灯花ちゃん、ねむちゃんが凧に乗ってこちらへ突っ込んできました。

 

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-12 悪魔法少女

私たちはみかづき荘の玄関前に降りて、アリナ先輩がいきなり魔法少女の姿になって呼び鈴を鳴らした。

するとすぐに家の扉が開かれ、5人の姿が見えたの。

「はぁーい、みかづき荘のみんな。環いろはの場所、知りたくない?」

アリナ先輩が陽気に話し出した!

新鮮だけど、どうしてそうなったかわからない!

覚えの魔力を感じたから玄関へ急いだら、思いもよらない言葉が飛んできて正直驚いた。

「アリナ・グレイに、御園かりん」

「お姉ちゃんの居場所、わかるの?お姉ちゃんの居場所を教えて!」

「どういう風の吹き回しか聞かせてもらえるかしら」

「ここで立ち話してていいワケ?

アリナ達が逃げ出したってあいつらは知っているはずだから、早くしないと環いろはを別の場所にムーブされると思うんですケド」

「おい、こいつらのこと信じていいのか」

紗良シオリ達の潜伏先は割れている。

アリナ達の話を聞く必要はないかもしれないわね。

でも、一応聞いてみようかしら。

「紗良シオリ達の居場所はすでに突き止めているわ。あなた達の誘いに乗る気はないわ」

「待って欲しいの!SNSに記載されている場所とは違った場所にいろはさんは捕らえられているの!

私たちが案内しないと絶対わかるはずがないの!」

「そう、だったら私だけ行くわ」

「やちよさん、私はアリナさん達についていきたいです!」

「ういちゃん?!」

「オーケー。じゃあ、さっさとついてきてヨネ」

「おいちょっと待てよ!」

アリナは待たずに御園かりんと西の方角に飛んでいってしまった。

「やちよ、どうする」

「私は追うわ。鶴乃は予定していた場所へ向かってここで起きたことを伝えて頂戴」

ピッ

「仲間外れなんていや。みんなにはここで起きたこと伝えておいたから。

さ、2人を見失わないうちに追いかけようよ!」

こんなときに余計に頭が回るんだから。

「私も追った方がいいと思います。みんなで行けば、いろはさんを助けることだけはできるかも」

「なんだよさなまで、ぜってー罠だろ」

私たちが話していると、ういちゃんは魔法少女姿に返信して、凧に乗ってアリナ達が向かった方向に飛んでいってしまった。

「ういちゃん?!」

「いけない!追うわよ!」

「わかったよ、行きゃあいいんだろ!」

ほぼ強制的に私たちはアリナ達を追うことになった。

まさかういちゃんが自分から動くとは思わなかったけど、いろはも頑固なところがあるし、さすが姉妹って思ってしまった。

罠であることを警戒して私たちで動くことにした。

アリナ達の後を追っていると彼女の言った通り私たちの把握している場所とは違った方角に進んでいた。

神浜マギアユニオンの他のメンバーには鶴乃のメッセージが届いているみたいで、それぞれが目的の場所に向かい始めていた。

アリナ達は廃墟の前で立ち止まり、私たちがついてきていることを確認すると中へと入っていった。

私たちも急いで廃墟の中へ進んでいくと、そこには禍々しい色に染まったキューブの中に、確かにいろはの姿があった。

「アハッ、一回外に出たから認識できたけど、かなりいいカラーに仕上がってるんじゃない?」

「ふざけたこと言わないで。これはあなた達がやったことなの?」

「行動を起こしたのはアリナ、でも指図したのは別の奴なワケ。

ま、アリナがこうして目を覚ましたのはフールガールが拐ってきた環いろはのおかげなんだけどね」

「いろはさんが、アリナを?」

「いろはさんと2人きりになってお願いしないと、他の人がアリナ先輩にひどいことしちゃうと思ったから。それを日継カレンって魔法少女に助けてもらったの」

「そう、経緯については把握したわ」

いろは、見捨てることはできなかったのね。

その結果捕われてしまったなんて。

私は武器を構えてキューブを破壊しようとしたとき、いろはを捕らえているキューブに亀裂が入り始めた。

「アメイジング、結界を内側から破るなんて想定外!

結界で収まりきらないなんて、イブ以来なんですケド!」

亀裂からはドリドロとした液体が溢れ出てきて、結界が破壊されると禍々しい色の液体を被ったいろはが出てきてその場に現れた。

「お姉ちゃん!」

わたしは近寄ろうとしたういちゃんの前に手を出して行く手を阻み、その場に身構えた。

「うい、そこにいるの?うい、うい!」

いろはが顔を上げると穢れが満ちたソウルジェムからピンク色の布ができていろはをぐるぐる巻に包んでしまった。

その後、魔法少女でありながら倒すべき敵の反応を示し始め、布を破るように変わり果てたいろはが姿を現した。

「お姉ちゃん?でもその姿、それにこの反応ってまるで」

「魔女の、反応」

いろはの色が変わったマントの裏からは包帯が伸びてういちゃんの手足に巻きついて力強く引き始めた。

いけない!

わたしは手にした武器で包帯を絡めとり、地面へ突き刺した。それでもういちゃんに巻きついた包帯は解ける様子がなかった。

「うい、この世界は、人間は危ないからね、waタしがしkkari守ってあゲr!」

いろはがそう声を荒げると周りが廃墟だった景色はみるみるうちにお城の中にいるような風景に変わっていき、窓から見える夜空には機関車がチラチラと見え隠れしていた。

そして周りには穢れが充満し始めた。

「魔女の結界?!ウソだろ、神浜じゃ魔女にならないはずだぞ!」

「やちよさん、そこどいてくださいよ。

ういを抱きしめられないじゃないですか」

「今のいろはにういちゃんを渡すわけにはいかないわ。何をしだすかわからない」

「何って、ういを抱きしめてわたしなしでは生きていけないようにしてあげるんですよ。そうすれば、ういはヒトの穢れに触れず、苦しい思いをしないで済みますからね」

「いろはちゃん、紗良シオリ達に何されたの!」

「シオリさん達は真実を教えてくれただけだよ、つるのちゃん。

もしかして、みんな邪魔をするの?」

「目を覚ましなさいいろは!紗良シオリさん達のやってることは人に被害をもたらすのよ」

「だからいいじゃないですか、世の中不幸にするヒトを減らせるんですよ?」

今のいろはの状態に思考が追いつかない。

いろはの魔力は黒いオーラの魔法少女みたいに混ざった反応だし、でも自我があって魔女の結界まで生成してる。

こんな状況、長い間神浜にいても経験した覚えがない。

でもまずは大人しくさせるしかない。

「ねえ、そろそろウイをhanあしてあげて」

「離すのはあなたよ、いろは」

「ジャmAをすruNお化!」

いろははついに私たちに包帯で攻撃をしてきた。

「やちよ、いろはちゃんの姿をよく見たらドッペルの姿に似ているよ」

「気がするで済むものじゃないわ、ドッペルと融合してるのと同じよ」

誰もいろはに攻撃を加えず、さなさんは動けないわたしとういちゃんを庇ってくれた。

「訳わかんねぇけど、今すぐぶん殴って正気に戻してやる!」

そう言ってフェリシアは襲いかかってくる包帯を避けながらいろはの懐まで近づいた。

「近くは苦手だもんなぁ!」

そう言ってフェリシアがハンマーを振り上げるとそのままいつものように振り下ろさずに動きが止まってしまった。

「フェリシア?」

「いつものわたしとは違うんだよ、フェリシアちゃん」

いろははどこから取り出したのかわからないナイフをフェリシアの心臓部分に突き立てていて、そのまま予想外の痛みで動けなくなったフェリシアを蹴り飛ばした。

そして形状が変化した鳥のような足でしっかりと地面へ押さえ込み、そのまま獲物を啄むように血を辺りに散らしながらフェリシアへ何度もナイフを突き立てた。

ンヴァアアアアアアア!
アハハハハハハアッハハハハハハッ!!!!

私たちのやめなさいという声を打ち消してしまうほどのフェリシアの叫びと聞いたことがないいろはの狂気な笑い声が結界内に響き渡った。

それと同時に周りの結界は血が通ったように血管を血が通るような蔦が現れ始めた。

鶴乃がフェリシアを助けようとして近づこうとすると、大きな魔力の塊がいろはに直撃した。

後ろに下がったいろはの隙をついて腹部分が穴だらけになったフェリシアを鶴乃が助け出した。

「今の魔力、ういちゃん?!」

ういちゃんの隣には四つの凧が円形に回っていて、その中心から魔力が放たれたようだ。

ういちゃん自身は涙を流しながら噛み締めた表情をしていた。

「もうやめて!そんなお姉ちゃんなんて嫌いになっちゃうんだから!」

そう言ってもう一度ういちゃんはいろはへ魔法弾を放った。

魔法弾はいろはに直撃しても全くダメージを与えている様子はなかった。

「ういがわたしを嫌っても、わたしは大好きだから好きにさせてあげる!」

そう言っていろはは包帯をういちゃんに向けて突き立てできたけど、さなさんがしっかりと盾で受け止めてくれた。

しかしいろはの攻撃はただただ暴れるだけのように四方八方へ飛び、一切干渉しようとしていないアリナやかりんさんへも矛先が向いた。

「アハハハハハッ!!!」

結界が攻撃に耐えられずに倒壊し始めた頃、いろはの後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「そこまでですいろはさん。戯れは後にしてください」

そう言っていろはの行動を止めたのはピリカさんだった。

「ピリカさん、あなた!」

「ピリカさん邪魔しないでくださいよ、ういがいなくなっちゃったじゃないですか」

その言葉を聞いてはっと後ろを振り向くとういちゃんの姿はなかった。

まさか、例の別の空間へ飛ぶ力を使ったの?

「時間が迫っています。わたしについてきてください」

「あら、そうでしたか。でも、そのあとは自由にさせてもらいますからね」

「もちろんですよ」

そう言っていろはは手を差し出しているピリカさんの手をなんの疑いもなく握りしめた。

「待ちなさい!」

「ワッカ、濁流と化せ!」

私たちは濁流に呑まれて結界から、廃墟から押し出されてしまった。

廃墟は濁流の衝撃で崩れてしまい、中央区へ向かういろは達の姿だけは確認できた。

「チクショウ、なんだよ。かこだけじゃなくいろはまでいなくなっちまうなんてオレは、オレは!」

「フェリシア落ち着いて、血が止まらないよ!」

「鶴乃、さなさん、フェリシアを調整屋へ連れて行ってあげて。私はいろはを追うわ」

「うん、わかった」

わたしは一人でいろはが向かったと思われる中央区へ急いだ。

いろはをあんな状態にした日継カレン、許すことなんてできない。

 

 

「さて、アリナ達はどうするか」

「遠くから見ることしかできないの、あんな戦い、命がいくつあっても足りないの」

「ま、このあと面白そうなことが起こりそうだし、遠くから眺めて、サイッコーの瞬間を脳裏に焼き付けようか」

「遠くから眺めるくらいならいいと思うの」

今の神浜はひどい状況かもしれない。

でも、アリナ先輩と一緒にいるこの場所は、この瞬間は最高な状況だと思って、わたしは思わず微笑んでしまったのでした。

 

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-10 一族の信念はカムイに響かず

今日の夕方に魔女にならないシステムを世界中に広げられる魔法少女たちのアジトへ攻め入る戦いが行われる。

もちろん世界へ広げるという行為を妨害するわけではなく、その実施方法に問題があるからその方法を見直させるために捕らえる。

人を犠牲にしてまで私は、私達は生き延びたいとは思わない。

でも集まってくれている一族のメンバーの中には神浜マギアユニオンへ協力して彼女たちを止めるという行為自体に疑問を持つ子たちもいる。

だからわたしは魔法少女会議から戻ってきた後、みんなに今日のことを話し、一緒に来てくれる少人数だけで神浜マギアユニオンへ協力することにした。

魔法少女会議に参加してから気になっているのは、ピリカさんが彼女たちのメンバーだったということ。

あの時見た傷痕と、売られた経験があるという話。そして人へ呪いを押し付けるという彼女たちの考え方。

最近までの巫も売られていたというのは事実。

でも人を憎むほどの感情を抱いたことはない。

いったいどこで意識の違いが出てしまったのだろう。まずはそこを分からなければ彼女たちも考えを改めてくれない。

私は売られるという気持ちを経験してしまったちゃるに心情を聞いてみた。

「それってピリカさんが言っていたっていう話に関係するやつ?

うーん、私の願いが無理やりかなえさせられたってところは神子柴を許せないってなるけど、だからと言って人が嫌いになるってことはないかな。

人の悪意を感じたときは気分が悪くなっちゃうけど、みんながみんなってわけじゃないからさ。

悪を討って普通に暮らせてる人を助ける。そんなヒーローになれてる現状に私は満足しているよ」

ちゃるは隠し事をできないことを知っているから、あそこまではっきり喋ってくれたってことは全然後悔をしていないみたい。

じゃあ、売られたという境遇の中でピリカさんと何が違うのだろう。

そう考えていると外が慌ただしくなっていることに気づき、私のところへ涼子さんが走ってきた。

「おい!ピリカってやつが寺の門にいるからきてくれ!静香さんを呼んでるんだ」

私はちゃる、すなおと一緒に外へ出るとみんなが魔法少女姿になったピリカさんを囲んでいた。

「ピリカさん、ここへ何しにきたんですか」

「最後の意思表示を確認しにきたんですよ」

「確認?」

「わたし達は明日、自動浄化システムを世界に広げます。明日が過ぎればあなた達が求めている魔女かしない世界になるのです。

その上で、周りから聞いた情報をもとに私たちを妨害するのかどうか。

その答えを聞きたいのです」

「でもそれは、人に呪いを押し付ける方法でなんだよね」

「はい」

妨害したいわけじゃない。

でも考えを改めさせるというこちらの考え自体が彼女達にとっては妨害行為に該当してしまうのだろう。

ならば、最後に確認するべきことはこれだけ。

「人へ呪いを押し付けるというのは仕方がないことですか、それともあなた達の故意ですか。

故意だというのであれば、私達は妨害せざるを得ません」

「問いへ問いで返してくるのですね。

呪いが生じるのは仕方がないことであり、押し付けるのは故意でもあります」

「そうですか。

みんな、ピリカさんを捕らえなさい!」

「「はい!」」

みんなが動き出すよりも早くピリカさんは地を蹴って瞬間移動したかのような早さでわたしの目の前にいました。

「ワッカ、障壁と化せ!」

ピリカさんがそう呟くとわたしを中心にして水の障壁が円形に形成されました。

そして近くにいたちゃるは回し蹴りで、すなおは巴投げで水壁の外へ追い出されてしまいました。

その後ピリカさんは何かを呟き、水壁には電気が走り、外には首長竜のような生き物が現れました。

外のみんなはその首長竜と障壁に邪魔されて中に入ってこれない状況となりました。

わたしも魔法少女姿となって剣を構えました。

「なるほど、変に強い魔力を感じると思ったらその剣が原因でしたか。

あなたが心を折らずに立っていられるのはその聖遺物のおかげかもしれませんね」

「聖遺物?なんのこと。これは時女の家で代々巫の力で鍛えられた剣よ」

「そうですか。

聖遺物とは魔法で生成されたもの、または物質へ魔法少女の魔力が込められて特殊な力が付与されたもののことです。

あなたの持っている時女の剣も十分聖遺物に該当します。

そうなればなおさらここであなたを無力化しておく必要がありますね」

「ねえ、どうしてあなた達はこうしてまで人を不幸にする方向を押し進めようとするの?

貴方達も人にひどいことをされたかもしれないけど、みんながそんなわけないでしょ。
罪なき人も見境なく不幸にしてしまうことは良くないことよ」

「その罪の基準は誰基準ですか、自身ですか、それともヒト基準ですか。ヒト基準の罪など人間社会を維持するための歪んだ思想でしかないです。

ヒトを信じているあなたも、それに染まっているのでしょう」

「ヒトの考え方そのものが良くないというの」

「人間社会は意識の違いによるすれ違い、権力者の支配力を高めるために洗脳に近い教育を幼い頃から行います。

神を信じなさい、国のために働きなさい、いやでも働け、女は男に尽くせ、お金がないと生きていけない。

これらの考えはなぜ常識と呼ばれるようになったのでしょう、これらの考えから離れるとなぜ悪者となるのでしょう」

「それがこの世を乱さない最適な考えだからよ」

「そうですか?お金を巡っていったいどれほどの不幸が発生してきたと思っているのですか。

通貨があれば物々交換よりもものの価値は分かりやすくなるでしょう。

しかしものの価値など人によって違う、それに通貨がなくてもお互いの利害が一致すればものの交換で済む

お金という世を乱す物が最適な考えだと本当に思ってるのですか?

「どうやら話しても無駄なようね。どう話されようとも、わたしの考えは変わらないわ」

「あなたも思考を停止してしまうのですか。

ならば、ここで無力化させてもらいます。

アペ、刃と化せ!」

ピリカさんは炎の剣を手に持って私に切り掛かってきました。

村での修行でしか人と戦ったことがない中で相手を無力化する方法に少し悩んでいた。

相手の攻撃を受け止めながら行き着いた答えは四股を動かない状態にすること。

斬り落すまで行かず、骨を折るくらいならば命を奪うこともなく無力化できるでしょう。

私は相手の斬撃を受け止めるようにし、隙をついて足を無力化することに専念した。

斬撃を飛ばしてきて所々火傷をしているうちに私はあることに気がついた。

剣を持つ手の損傷が激しい。魔力で痛みを和らげているけど、普通なら剣を握ることも出来ないくらいダメージを負っていると思う。

もしかして、相手の狙いは私が剣を離すこと?

だとしたら長期戦は不利にしかならない。

でも相手の攻撃を受け止めるのがやっとの状況でわたしのペースへ持っていくことができない。

水壁の外ではみんなが中に入ろうとしているみたいだけど首長竜に妨害されて進展がない様子。

私を抑えながら首長竜のような生き物も操るなんて、ピリカさんは何者なの?

もう水壁の外に出るしかないと考えて思い切って飛び込むと水壁に走る電撃によって体が痺れてそのまま水流で内側にはじき返されてしまった。

「無駄です。ここから出るのは私が果てるかあなたが折れた時だけです」

そう言いながらピリカさんは私の方へゆっくりと歩いてきました。

こんなところで私は折れるわけには行かない。

日の本の国を守れずに、仲間を守れずに倒れるわけには行かない!

私は痺れた体でありながらも無意識にお母様から教わった技を出すために体を動かしていた。

体を回して円を描くように斬りあげる。

そして目標目掛けて力を込めて振り下ろす。

この技を使用すると間違いなく相手の体の一部は吹き飛び、剣に纏った風圧によって斬り下ろした先も斬撃によって地がえぐられ、木々もなぎ倒す。

強敵の魔女以外には使ったことがない技を使用し、やってしまったと思いながらピリカさんの吹き飛んでしまった右腕を見ていた。

しかし、斬り落とされた右腕の根本から禍々しい色をした炎のようなものが溢れ、腕の形になったら手には剣が握られていた。

これは一瞬のうちに起こったことであり、私は思考が追いつかない間に仰向けになって倒れていた。

視界がぼやけていき、どんどん体が冷たくなっていく感じがした。水壁が消えるところまではわかったものの、そのあとは意識を保てず、気を失ってしまった。

ピリカさんが出した首長竜に妨害されて水壁の中に入れない状態の中、水壁が消えます。

そこには右腕が炎のような状態になっているピリカさんと上半身に大きな切り傷がつい手倒れている静香ちゃんがいました。

「静香ちゃん!」

私達は静香ちゃんのところへ駆け寄り、血溜まりになっていることも関係なくその場に膝をつきました。

「静香、しっかりしてください!癒して傷口を塞がないと」

みんなが静香ちゃんに夢中になっている中、ピリカさんは時女の集落で大事にされてきた剣を手に取り、それを光の球に変えて拳で握ると消えてしまいました。

「時女の剣は預かりました。すべてことが済んだらお返ししにきます」

そう言ってピリカさんが寺の門へ歩き出すと時女のみんながピリカさんを取り囲みました。

「待ちな、本家をここまで傷みつけられてただで返す気はない。元々あんた達を捕らえる話になっていたからね、おとなしく捕まってもらうよ」

涼子さんが門の前へ仁王立ちになり、そう話しました。

私とすなおちゃんは静香ちゃんのそばにいました。

「無駄に血を流すことになりますよ。ここで抑えようなんてことは堅実な考えとは思えませんね」

「だとしてもよ。覚悟しなさい!」

そう言ってみんながピリカさんに飛びかかるとピリカさんの足元からは知らぬ間にいなくなっていた首長竜が現れ、みんなは水圧で飛ばされていきました。

ピリカさんの右腕は炎のような形にはなっておらず元どおりとなっていて、手元には強い悪意を感じる禍々しいオーラを放つ刀を持っていました。

カムイを超えられなかったあなた達が手を出せるとでも思いましたか。

事が終わるまで静香さんを見守っていればいいんですよ。

気づいた頃には、すべてが終わっているでしょうから」

吹き飛ばされた時女の子が諦めず襲い掛かろうとしていました。

私はとっさに声を出してしまいました。

「やめて!ピリカさんを行かせてあげて」

「何故ですか!彼女達を捕らえるのが元々の目的。1人しかいない中ならこの人数でかかれば」

「だからやめて、敵わないとわかっているのに命を無駄にするのは。静香ちゃんだって、みんなが命を落としてまで戦ったことを喜んでなんかくれないはずだよ!」

ほとんどの子は武器をおろしてくれましたが、涼子ちゃんと遠くで構えている旭ちゃんはまだ戦う気でいました。

旭ちゃんは私たちに背を向けているピリカさんに対して発砲してしまいました。

しかしピリカさんは銃弾を持っている刀で斬り落としてしまい、分断された弾丸は地面と寺の門をえぐりました。

「カンナ、貫いて!」

そう言ってピリカさんは左手に形成された雷を纏った槍を旭ちゃんが待機している場所へ投げました。

周囲には風圧が広がり、旭ちゃんがいたであろう場所は槍の着弾と同時にその地面をえぐりました。

[旭ちゃん!]

[生きては、いるであります。でも左半身は動かせない状態です。申し訳ないであります]

「あなたもあきらめないのですか」

涼子ちゃんは変わらず門の前に立ちはだかっていました。

「私は時女一族の一人としてではなく、私自身が許せないからどかねぇんだ。通りたきゃ力づくで通りな」

首長竜が姿を消した後、ピリカさんは涼子ちゃんへ斬りかかり、涼子ちゃんは負けじと警策で立ち向かいます。

最初は互角のように思えた戦いでしたが、涼子ちゃんはダルそうに膝をついてしまいました。

「何でだ、こんなに穢れるのが速いだなんて」

涼子ちゃんはピリカさんの回し蹴りに対応できず、半壊した門の壁に叩きつけられて動けなくなってしまいました。

「それでは失礼します」

そう言ってピリカさんは姿を消しました。

出会った時は魔法少女ということしか知らず、優しい人という印象でしたが、今日この一時で全く別の印象となってしまいました。

紗良シオリさんや日継カレンさんの話で2人は強いと聞いていましたが、私からしてみると、ピリカさんこそ最も戦ってはいけない相手だと確信しました。

あそこまでの激戦の中、ピリカさんのソウルジェムと思われる宝石は輝いていました。

立ち向かうことなんて、元々できっこなかったんだよ。

私はその場で1人で心が折れてしまった気がしました。

 

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-9 天才はその結果をまだ知らない

ういは顔を上げて目にたまった涙を袖で拭き取り、そのまま立ち上がった。

「わたし、みかづき荘に戻るね。そろそろやちよさん達が集まってそうだから」

|うん、気をつけてね|

わたしはそう言って送り出すことしかできなかった。

元々結界の中で4人が集まるのをずっと待っていた。それに苦はなかった。

でもどうして?

今の私は自由に外を動き回りたくて仕方がない。

・・・

これがワガママという感情なのだろうか。

そう考えていると灯花が病室の空間にやってきた。

「あら、万年桜のウワサいたんだ〜。この時間にいるってことはまた学校を抜け出してたんだね」

灯花は知らない。いろはがどうなっているのか、日継カレンという魔法少女達がやろうとしている事を。

教えると興味を持って危ない場所に行きかねないと伝えられているから。

「ういもねむもそろそろ学校が終わる頃だし、ニュースとかでは分からないこと話したいなぁ」

|えっと灯花、ういは|

「みかづき荘にいるんでしょ?」

|えっ!|

「だってー、今日の夕方に神浜を騒がせている日継カレン、紗良シオリ、保別ピリカを捕まえに行くんでしょ」

|・・・SNSに出てた話?|

「そうそう!私達を呼ばずに話を進めちゃうなんてひどい話だと思わない?!
中央区でかなーり危険なことになっているし、今頃敵のアジトだと思われる場所を攻撃しても意味ないと思うんだよね。

マギウスの時もやったけど、こういう時って穴になっているところで罠があるんだよ。

ぜったいわたくしを呼んでおけばもっといい提案をしていたとおもうにゃぁ」

|例えば何する?|

「魔法少女達も立ち入ることが困難になった中央区を見張るね。そしたら案外近くにいたりするんだよねー。

ちょっと考えればすぐだよー」

「そうやってみんなが行動している間、ボク達はなんの成果を出せていないじゃないか」

灯花が話すのに夢中になっている中、ねむはこの空間にやってきていた。

|灯花達に与えられていたのは、自動浄化システムを広げる方法。掴みようがないから広げ方もわからない、だったよね|

「概念への干渉なんて例のワルプルギスの夜を倒した時の羽同様、観測できるものがなければ敵わない。

クレメルもういも認識できない以上、やりようがないのは重々承知」

「ドッペルを発動したときに何処かへエネルギーが集中しているわけでもないし、現代科学の力では解決できっこないんだよ。

魔法少女の願い以外は別だけどね」

「だから因果量を測る装置を考えるんだって躍起になっていて今に至るわけだが、進展はあったのかい?」

「くふふっ、それについてはもう完成しててね、今日見てもらおうと思ったんだよ」

そう言って灯花が取り出したのは両掌に乗っかるくらいのアタッシュケースみたいな箱が一つ。

そして二つの留め金を外して出てきたのは魔法のステッキのように棒の先に丸い円盤がついたものだった。

「・・・見た目の時点では頼りないものが出てきたけどこれはなんだい?」

「これは魔法少女の素質を測る道具でね、決して魔法のステッキとかじゃないよ」

「可愛らしい装飾がされているから余計そう見えるよ」

「もう、普通に作ってって言ったんだけどにゃぁ」

「それで、その道具でどうやって魔法少女の素質を測るっていうんだい?」

「魔法少女の素質がある場合ってさ、キュゥべえが見えるものでしょ?それに魔女も認識できる。

魔法少女にしか見えないものが見えれば、その女の子は魔法少女の素質がわかるってこと。

この道具は魔法少女にしか見えない周波数を使用して数字をこの円盤の空間に映し出すことができるんだよ。

ただ見えればいいってわけではなくてね、映し出された数字が鮮明に見えるか、ぼやけて見えるかで素質の大きさを測ることができるんだよ」

「魔法少女にしか感知できない周波数、マギウスとして活動していたときの経験が生きたね。

それで、既に魔法少女であるボク達には当然見えるんだよね」

「もちろんだよ!見ててよ、今数字を表示するからね」

灯花は道具の根本にあるダイヤルを回しては押下、回しては押下を3回繰り返し、もう一つのボタンを押して私たちの方に向けてきた。

「さあ、ここにはなんの数字が見えるでしょうか?」

円形の中心に魔力のような反応があるというのはわかるけど、数字としては認識できなかった。

「きっと万年桜のウワサには見えないかもしれないけど、ねむならそれなりに見えるんじゃないかな?」

「見ただけで数字が3つあるのはわかる。でも全部重なっていて綺麗に見えるとは言えないね」

「じゃあ、どの数字が重なってるかはわかる?」

「2、8、7かな。全部違った形だからどの数字があるのかってとこまではわかる」

「そうかー、ねむでも綺麗に見えないってことは概ね成功って感じかな」

なんだか仲間はずれにされてるようでちょっとムッとしてしまった。

「もう、むすっとしないで。この装置が映し出す数字は、魔法少女の素質がある子が見ると数字は鮮明に、さらには並び順まではっきり判断できるってものなんだよ。

わたくしでもねむみたいに数字は見えても並び順までは把握できないから、ねむとわたくしの魔法少女の素質は同等程度ってことだね。

万年桜のウワサはもちろん魔法少女とは違った存在から見えないよ」

|魔力を感知するとは違うってこと?周波数の関係であれば私にも感知できそうだけど|

「万年桜のウワサは、わたくし達のテレパシーに参加できないよね」

|・・・そういうこと|

私はしなしなになった草のようにしょんぼりとしてしまった。

でも灯花は魔法少女の素質を測る道具で何をしようというのだろう。

|それを使って、どうやって自動浄化システムを広げようと考えているの?|

「もちろん、この地球上にいる強い魔法少女の素質を持つ子を探すためだよ。

そして、自動浄化システムを世界に広げてって願ってもらうの。概念に干渉できるのは、わたくしたちが魔法少女になる際の願いだけ。

だったら、その願いで広げるのが手っ取り早いでしょ!」

少し沈黙が続き、ねむがため息をついた。

「理論上は近道かもしれないが、人の道徳というものが決裂しているよ。

灯花はその考えをお姉さんに聞かせて、喜んでもらえると思っているのかい?」

「願いを強要しちゃうのはよくないけど、それなら心から願いたいって思ってくれるまで待てばいいと思うよ。それなら、相手に不利益はないよね」

「答えになってないよ」

「もう!じゃあこれ以外にいい考えがあったら教えてよね!」

|伝えるだけ伝えてみたらいいと思うよ。もしかしたらみんな許してくれるかも|

「でしょう?ねむより万年桜のウワサがわかってるね」

「むっ!」

|喧嘩はよくないよ|

ねむはそのまま自分が寝ていたベッドへ位置エネルギーに任せて座り、呼吸を整えた。

「それにしてもそんな装置、どこで作ってもらったんだい?」

「パパ様に周波数の実験装置が欲しいって言ってね、そしたら西の大国がその手の技術に詳しいらしくてね、設計図を渡したら1週間で完成品が届いたんだ。
優秀だよねー」

「そんな一般人にはおもちゃにしか見えないものを大きな国がね。改めて里見グループの凄さを実感するよ」

「くふふ、パパ様はすごいんだから!」

話している中、突然黄緑色の粒子が周囲に飛び交い、傷だらけのういが病室内に倒れ込んでいた。

「うい!どうしたの?!」

「お姉ちゃんが、お姉ちゃんがおかしくなっちゃった!うわぁぁぁぁぁぁ!」

ういはそう言ってその場に伏せて泣き出してしまった。

何があったのか、外で何が起きているのか。

ただ一つわかることは、いろはに大変なことが起きているということだけ。

 

わたしは、どうすればいい?

 

 

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【マギアレコード】ストーリー考察 マギレコ第二部の泥沼化する展開を終結させるカギは世界の終末

マギアレコード第二部で登場してきた新要素「キモチ」

このキモチをめぐって神浜だけではなく、多方面の魔法少女が集まってきてキモチを集めれば手に入るという自動浄化システムを求めて争うのが第二部の大筋です。

キモチを狙うグループはそれぞれの想いがあり、一歩も譲ろうとはしません。それ故、終わりの見えない泥沼化した状況へ陥っています。

今回は第二部第三章までに出てきたキーワードをもとに、収集のつかないこの物語がどのような展開になれば丸く収まるのかを考察していきます。
ご都合主義のない、理にかなった結末となるでしょう。

1.キモチ

まずは重要な要素であるキモチから見ていきます。
キモチは自動浄化システムの根幹であるイヴと小さなキュウべぇが合わさった結果、穢れと共に散らばったイヴのエネルギーです。

キモチはかつて呪いを集めた、集めようとしたウワサに隠れ、膨大な感情エネルギーが表へ出ないように隠れています。

キモチを探す際はウワサの特徴、キモチの象徴する感情を持ち合わせることで発見と撃破を行うことができます。
キモチの象徴する感情は、主に8つ存在します。

・嫌悪
他者を強く嫌い、近づくこともよしとしない相手を拒絶する気持ちです。
この感情を抱いた相手との和解は困難であり、お互いの関係に溝を作ることとなります。

・悲嘆
ただ悲しむのではなく、とても大切なものを失ってしまったときに抱く気持ちです。
この感情を抱いた人は大事なものを同時に失うことで人が変わったように別人へと変わってしまうこともあるそうです。

・激怒
激しく怒る、それすなわち相手を絶対許さないという気持ちです。
感情のままに行動するため、周りが見えなくなってしまって結果的に大事なものも失うこととなります。

・恐怖
他者、物へ恐れてしまって思うように行動できない気持ちです。
恐怖しているばかりでは、前へ進めないどころかあとずさりばかりでいずれは行き場を失ってしまうでしょう。

・驚嘆
物事に驚き、感心してしまう気持ちのことです。
この感情の虜となってしまったら、平凡な日常は退屈でつまらないものへと変貌してしまうでしょう。

・期待
何かに思いを寄せ、安心感を与えてくれる気持ちです。
しかしこの感情に頼りきってしまうと、その当てが外れたときに大きな損害を被ることでしょう。

・恍惚
物事に心を奪われて心地よくなってしまう気持ちです。
この感情に溺れてしまったら、その快楽を得るために何も考えたくなくなってしまうでしょう。

・敬愛
他者を尊敬し、親しみをもてる気持ちです。
この感情が過ぎると、親しみをもつ人物が悪人だとしてもひたすらその人物を評価し続ける傀儡となり果てるでしょう。

 

さて、8つの感情は負の感情から正の感情と種類は様々です。

これらのキモチは独自の結界をもちながらも一部の例外を除くウワサの結界に隠れています。
ただし、ウワサの本質はねむの所有している本の中で眠っているため、キモチを守るウワサはただの抜け殻です。

キモチを倒すことに成功すると討伐者へキモチはブレスレットとして憑依します。
そのほとんどが、所有者が命を懸けてもよいという相手にしか譲渡できず、命を落とさない限り外れることはありません。

また、キモチは自動浄化システムの在処へと向かいたい意志があるらしく、それが叶うまでは所有者を生き永らえさせる場面もありました。

キモチを集めれば自動浄化システムを手に入れられるというのはキュウべぇの憶測でしかありませんが、8つのキモチがそろえば何かが起こるのは確かです。

 

2.キモチが集まることは世界の終末へとつながる

第二部に入ってから中立の立場として静観しているラビは、常に終末時計を身につけていて、キモチの捜索が進むごとに終末時計の針が進むことを示唆するセリフを放ちます。

終末時計とは世の中の出来事を加味して世界が終末へと進む時間を示した時計のことです。しかしそれはごく一部の有識者の判断で行っている曖昧なものであって正直言えば役に立たないものです。

そんな終末時計の針がキモチが集まるたびに零へと進んでしまうということは、キモチを集めた先に世界を終末に導く結末があるということです。

キモチを集める過程を見るだけでも終末を導きそうな展開ですが、そんな内容もごく一部の出来事。世界の破滅とは程遠い規模です。

ではキモチ集めでなぜ世界が破滅してしまうのかというと、それはキモチの起源であるイヴに由来します。
イヴは魔女化しないシステムを形成できるものの、際限なく穢れも、エネルギーも吸い取り続けて一つの星を滅ぼしてしまう結末を招いてしまうとされています。

そんなイヴでも抱えきれなかったキモチが一か所にただ集結するだけではそれぞれのキモチが衝突し合い、その空間はカオスな状態となります。
まさに百禍が集結したかのような空間へとなり果てるでしょう。そんな空間からは穢れも大量に放出することとなり、いずれはミラーズの結界を通して世界を覆い尽くし、世界は終末を迎えるでしょう。

 

3.泥沼化する展開を終結させるカギは、キモチを一つにすること

さて、キモチを集めると自動浄化システムを手に入れることができるというのは憶測であってキモチ自身も自動浄化システムの在処を知りません。

そんな中で各グループが争うのは、それぞれの想いと野望があるためです。
例えどのグループがキモチをすべて集めたとしても、キモチの衝突が起こって最終的には世界が終末を迎えることに変わりはありません。

なぜかというと、ひとつのグループに偏ると私欲が前に出て特定のキモチが強くなり、バランスが取れなくなるためです。
キモチのバランスが取れていないからこそ神浜内の争いが絶えず、気持ちの衝突が起きるのです。
各グループは特定のグループの思想に妥協することがなく、バランスをとろうとしないのが現状であり、今後も埋まらない溝となるでしょう。

そんなグループ同士の争いが終結することに必要なことが、世界の終末です。

神浜マギアユニオン、PROMISED BLOOD、時女一族、ネオマギウス

それぞれは各々の思想を掲げてはいるものの、共通するのは一般人に被害を与えたくないという気持ち。
そんな一般人も巻き込む世界の終末を目の前にした時、各グループはそれでも各々の思想を貫くでしょうか。
世界が終末に向かっていてもおのれの思想を貫く人物は、世界の破滅を願う者か、人類が滅亡してもどうと思わない者くらいでしょう。

現状、4グループはそのような考えをもってはおらず、世界が破滅してしまうならば世界の救済を願うでしょう。

この世界の救済を願う際に各グループは初めてキモチが1つとなるのです。

これがキモチが集まるという本当の意味であり、世界の穢れを祓うとともに自動浄化システムが世界に広がることでしょう。

これがご都合主義がなく、今までに出てきた要素をうまく絡めた誰も不幸にならずに気持ちよく終わる結末だと思います。

 

4.マギアレコード第二部の伝えたいことは「争いが絶えない訳」

第二部の結末はおおむね予想できるところまで進んできました。
第二部序盤のシナリオは、PROMISED BLOODがキモチを集めるだけではなく神浜の魔法少女たちへ一方的に報復を行うという内容で見ていて良い気持ちになる人はいないでしょう。

PROMISED BLOODの過去を見れば外部の事情を神浜へ押し付けているようにも見えて、見なければただのテロリストにしか見えません。

完全に悪役という立場になったPROMISED BLOODを神浜の魔法少女はなぜ本腰を上げて殲滅しないのかともどかしい気持ちになるプレイヤーも多いでしょう。

出来れば争わずにその場を収めたい

これが神浜マギアユニオンの考えであり、世界平和を謳う考えに属します。

一方、PROMISED BLOODは過去の行いを決して許さず、強者が弱者を従わせて暴力で統治する

これは弱肉強食の考えに属します。

時女一族、ネオマギウスはそれぞれの思想は抱いていますがそれらは自動浄化システムが世界に広がってから本腰を上げる内容であって、広めるまでの過程では特に争う必要がありません。

しかしこれら二つのグループは思想を否定されたり、貶されたりすれば隠していた爪を見せて全力で襲い掛かってくるでしょう。

この二つのグループには宗教的な考えに属します。

世界平和、弱肉強食、宗教

これらの考えが衝突し合う状況は世界情勢に通ずるものがあります。
きっとこのストーリーにもどかしさを感じるプレイヤーは世界情勢を見ても同じような考えに至るのでしょう。

第二部が持ち出したテーマは「争いが絶えない訳」です。

争いが絶えない理由、それはそれぞれが信じる思想に妥協がないからです。
どの作品でも平和を脅かす敵は悪として正義が悪役を倒す場面が多いのが現状です。
そんな作品を広い視野で見てみると暴力で敵を殲滅することに変わりなく、その戦いによって生じた損害等を考えると世界平和とは程遠いことが分かります。
その争いによって新たな悪が生まれ、その悪を倒すまでにまた多くの争いが生まれてと憎しみの連鎖が絶えないところをよい感じ風に終わらせるのがヒーロー作品でよく見受けられます。

宗教観についても過去の歴史を振り返れば宗教が原因で戦争が起きた例は何度もあります。
おのれの信じるもののためならば、敵とする者をすべて屈服させるか、滅ぼしてしまうことを世界は繰り返してきたのです。

しかしマギアレコードがチャレンジしたのは悪を暴力で殲滅するのではなく、殺し合うことなく場を収めようとすること。現実にあてはめるのであれば自衛力が強くなった日本でしょう。

戦うのは平和な日常を脅かされそうなときに限られ、必要以上な殺生を行おうとしません。
その代わりに好戦的なテロリストの猛攻は止まらず、終わりのない争いにどんどん疲れていく未来が見えます。
そんな中でテロリストが他グループの宗教観を貶し、いまとなっては時女一族も大きな火種を生み出す存在となろうとしています。

そんな思想がかみ合わない世の中で皆の心が一つになって平和にその場が治まるにはどうしたらよいのか。

平和を脅かすものはすべて排除しますか?

否、それでは平和を脅かした勢力の平和を奪ったことに他なりません。

正直言うと宇宙から第三勢力が飛来しない限り世界が1つとなる瞬間は決して訪れることがありません。世界平和の象徴であるオリンピックでさえテロに警戒しなければいけないので世界平和なんていえる状態ではありません。

こんな永久に続きそうな世界の難題を扱ってしまったマギアレコード第二部。

広げた風呂敷をうまくたたむことができず、ご都合主義でストーリーを完結させてしまわないことを祈ります。

 

まとめ

マギアレコード第二部は
キモチが集まって世界が終末を迎えようとしたときに皆の心が一つになることで平和的に自動浄化システムが世界に広がることで完結する

 

あなたはどのような結末を望みますか?

 

【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-8 自己犠牲のキモチ

「愛する人のため。

この作品に出てくる北斗という少年は愛する彼女のために自身の財産を全て委ねると遺書を残してこの世を旅立ちました。

彼女の難病を治すためのお金を全財産で賄おうとした北斗の行いは、果たして彼女の幸せに繋がるといえるのか。

ここに至るまでの内容を整理して、皆さんの感想を原稿用紙1枚分にまとめること、それが次回までの宿題です。

しっかり熟読しておくように!」

私は学校に行かずとも、灯花が登録してくれたデータでこの世界のことを覚えることができる。

人と違って、忘れることもない。

でも、国語や古文といった作者の気持ち、登場人物の考えを述べるよう問われると登録されているデータだけでは正しい答えを導くのが難しい。

ひなのからは人と接する以外にも読み物から人や物の考えを習得できると聞いている。

だから私は言語の授業には顔を出すようにしているのだけれど、今回の授業は今後の私のことを考えてしまうような内容だった。

あの時、うい達を謎の空間へ縛り付けたつづりという人物からある言葉を囁かれていた。

“今起きている事態を終息させるためには柊ねむが魔法少女となれるのが必須。
魔法少女になれないという呪縛を解くための最短の方法を、しっかり考えておいてくださいね。
全てはあなたの行動次第です”

灯花とねむの変身を妨害する腕輪の制御を掌握しているのは私。決められたルールに従って腕輪を外す、壊された場合はルールのレールに戻るよう再び腕輪を彼女達に装着することになるだろう。

私には逃れられないルール。

灯花とねむが魔法少女に変身できるようになるためには。

お昼時間になって私は気になることがあったので新聞部の部室に来ている。そこには窓から外を見ている令がいた。

「桜子さんか、昼にここへくるなんて珍しいじゃないか。いつものように中庭に行かないのかい?」

|今はそれができない。それに令に聞きたいことがあってきた|

「観鳥さんに聞きたいこと?いいよ、言ってみな」

|令は大切な人が、自分が死なないと助けられないと分かった時、どう立ち回る|

「難しい問いかけだね。もしかして黒いオーラの魔法少女の件について関わるのかな?」

|いや、今日の言語の授業で出た問いかけ|

「そっか、言語の授業には出るようにしてるんだっけ。

人間に限る考えなら思うように考えたらって言いたいところだけど、桜子さんはウワサだからねぇ。慎重に回答しないといけないね」

|どういうこと?|

この問いに答えることはなく、令は話し始めた。

「観鳥さんにとって命を投げ打ってまで助けたい存在はいない。だから観鳥さんは桜子さんの力にはなれなさそうだ、ごめんよ」

|そんなに難しい問題?|

「答えるのは簡単だろうさ。でも真剣に考えるととてもデリケートで、ある意味難題とも言える」

|答えるのが簡単なのに難題なの?どちらなの?|

「ヒトによって考え方が違うからね、もし桜子さんが間違いのない正解を求めているのであれば、難題と言って間違い無いね。

詳しく知りたいなら都先輩のところに行ったらどう?

あの人は観鳥さんが知っているあたり一番の人格者だからね、求めている答えがもらえると思うよ」

令からは欲しい答えをもらえなかったので言われた通りにひなののところへ行ってみた。

令は化学部の部室にいると言っていたけれど、魔力反応を辿るとひなのは屋上にいた。

いつもとは違った、黒い眼帯を付けているひなのは中央区の方向を見ていた。

「ん?桜子か、こんなところに何の用だ?」

私は令に問いかけたことと同じことを話した。するとひなのも難しそうな顔をした。

ひなのは顔をあげると再び中央区の方を見ながら話をはじめた。

「参考程度にひとつ話をしてやろう。

あたしは自分を犠牲にして後輩達を守ろうとした。

大怪我したのはあたしだけで済んだが、助けた後輩達はあたしのためと言って危険な行動を取るという結果が出た。

あのバカどもららしい考えだが、正直あたしは嬉しいとは思わなかった。傷つけたくないと考えた行いが、結局は心も体も傷つけさせる結果になってしまったからな」

ひなのは退院後、衣美里、梨花、れんがひなのの敵討ちのために紗良シオリの討伐作戦に参加したと聞いて3人へ説教したと話を聞いている。

他人のための行いはみんなが幸せにならないということ?

「あたしが桜子に出せる回答としては、“他人のための”と思って命を投げ出すなってことだ。

魔法少女に契約する際と同じような忠告だが、もし命を投げ出すようなことがあれば“自分のために”を優先したほうがいい。

相手のためを考えても、決して思った通りの結果にはならない。

お前のやりたいように考えればいいと思うぞ」

|なるほど、令が言った通り難しい|

「・・・それより、何でそこから出てこないんだ?」

|私は外に出ることができないから。でも何となく分かった。ありがとう|

そう言うと私は青空の下へ踏み出して全身に空の明かりがかかった途端に黄緑色の光に包まれてあの病室の空間に飛ばされていた。

病室には何故かういがいて私は驚いた。

|うい、どうしたの?学校で嫌なことでもあった?|

「ううん、中央区が大変なことになっちゃったなって」

令も、ひなのも中央区の方向を気にしていた。

それもそのはずでお昼時間に入ってすぐに中央区が謎の現象によって死傷者が出たとして立入封鎖となった場所が出たと言う緊急ニュースが出ていた。

立入封鎖となった場所は、紗良シオリの討伐作戦が行われた場所。

やちよ達は廃墟を襲撃すると言っていたけど、電波塔も怪しいと睨んでいた。

その電波塔へ近づくことができなくなった。

彼女達の居場所はほぼ明確だと言うのにやちよからは廃墟への襲撃は予定通り行われると魔法少女のSNSへ書き込みがあった。

ういも何故か廃墟への襲撃に参加したいと自分から言い出している

|最近、やちよからの連絡が多いけど、いろははどうしたの?|

「お姉ちゃん忙しいから、しばらくやちよさんに連絡係をお願いしている、みたいでね」

私たちの中で唯一自由に外へ出られるのはういだけ。

私達は建物の中でしか行動できず、詳しい外の状況はよく知らない。

ういの事を信じないわけではないけど、さっきの発言は嘘だとすぐ分かった。

|うい、私たちに話せない事があるんじゃない?隠し事はういに似合わない。

嘘をつくことが苦しいなら、私にだけでも話してみて|

そう言うとういは涙目になって私へ抱きついてきた。そして力強く私の着ている制服を握っていた。

「お姉ちゃん、連れ去られちゃって。

2日目になるんだけど戻ってきていなくて。

もし日継カレンさん達に捕まっているなら、黒いオーラに包まれて、私の前に出てきたら、どうしようって。不安で、不安で」

ういはそのまま床に膝をつけて涙を流していた。

ねむが魔法少女になれていればそんな不安もなかっただろう。

私はういを包容して頭を撫でてあげることしかできなかった。

いつもの私ならいろはを助けるために日継カレン達のアジトをしらみつぶしに探していただろう。

でも今の私は行ったことのある場所の室内にしか行くことができない。それに何故かみかづき荘へは行くことができないという制限付き。

この制限がついたのはつい最近。それまでは普通に行き来できていた。

これもつづりという人物の采配なのだろうか。

4人を守りたいのに守れない私にはどこか胸に苦しいと感じるものがあった。

今、私にできることは何なのだろう。

 

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【マギアレコード】マギレコお客様シリーズ マギレコで完凸は本当に必要?

アラもう聞いた?
誰から聞いた?

お客様プレイヤーのそのウワサ

提供されてる側にもかかわらず
自分の思い通りにいかないだけで
クソゲー!クソゲー!クソゲー!
動物の鳴き声みたいに大騒ぎ!
そこに感謝の気持ちなんてあるわけない

でもでもみんな気を付けて
文句ばかりで感謝されなきゃモチベが下げ下げ
やる気があっても無くなっちゃう
実は素晴らしいものなのに
全てが崩れてなくなっちゃう!
マギレコプレイヤーは知らず知らずに身を滅ぼしてるって
SNSの民の間ではもっぱらのウワサ

オモイドオリジャナイトイーーーーヤ!

ソーシャルゲームに限らず、お客様()という言葉はサービス業で「お客様は神様です」という言葉をはき違えて自分の思い通りにいかなければ文句を言って改善を押し付ける人たちのことを指す言葉です。

特に日本ではサービス業につく人はお客さんを満足させるよう立ち振る舞うのが当たり前という考えが常識化されています。

しかしこれは異常なことです。

みなさんは見たことないでしょうか、店員さんへ文句を言っているお客様を。

そのワンシーンだけ切り取ると店員さんに何か不手際があったのだと誰もが思うでしょう。
しかし実は自分の髪の毛が入っただけにもかかわらず、「この商品に髪の毛が入っていたんだけど、新しいのに交換しろ」という理不尽な内容だったという場面が決して少なくはありません。

こんな事態が日常化しているのが悲しいことではありますが実は事実です。

そんな光景が、マギアレコードでも見受けられます。

 

これはマギレコのお客様()な態度を分析してマギレコプレイヤーの民度は異常であることをいじっていくシリーズです。
今回は魔法少女の完凸は必要かを見ていきます。

 

 

・マギレコは完凸が前提だからクソゲー

さて、マギアレコードのガチャは他のソシャゲと比べて確率がひどすぎるという話をよく聞きますがおそらくそう声を上げている人は分析が足りていません。

例としてFGOとガチャ一回にかかる金額を比較するとこのようになります。

FGO:490円(聖晶5個)
マギレコ:300円(マギアストーン25個)

金額だけ見ると明らかにマギアレコードの方が金額的には良心的です。

では高レアのキャラクターが出る確率はどうかというと、どちらも確定演出が出ない限り1%程度でこちらにも違いがありません。

さらにマギレコは100回ガチャしたら必ず☆4魔法少女が出るという天井と呼ばれるシステムが採用されています。

これだけ見ればマギレコのガチャシステムは良心的な方なのです。

なのにマギレコプレイヤーはマギレコのガチャは他のソシャゲと比べてひどいと酷評します。
その根底には、マギレコではキャラクターやキャラを強化するメモリアというものを4回当てて初めてまともに扱えるようになるという独特のシステムがあるためです。

マギレコではキャラクターがかぶるたびにデスティニージェムというものに変換されていき、デスティニージェムが特定の数揃うとメモリアを装備できる枠を増やせるという仕組みがあります。

バトロワゲームでいうと、装備品をつけられるスロットが増えるという認識で違いはないと思います。
無凸と呼ばれる状態では装備品スロットが1しかなく、メイン武器しか持てない状態だとお考え下さい。
完凸はいわゆる装備品スロットが4になっている状態であり、メイン武器、サブ武器、バリア回復薬と体力回復薬を持てる状態となります。

こう見てみると完凸しなければ話にならないというのがマギレコの現状だとわかると思います。

1%の確率で4回当てないといけないというのははっきり言って正気の沙汰ではありません。
この話は現在の高レアリティな星4魔法少女に限る話であって、星3、星2魔法少女は当たりやすい分多くのデスティニージェムを要求してきます。

しかし幸いなことにマギアレコードのバトルでは最大5人の編成で挑むことができます。
無凸は厳しいかもしれませんが、1凸であれば5人の魔法少女を役割分担をして難易度が高いバトルに勝つことが可能です。

マギレコにはタイプ、属性という概念があってそれぞれの得意とすることは把握できるでしょう。
メモリア、陣形について把握できればメインストーリーは十分に進められます。ストーリーでは他プレイヤーの魔法少女をサポートとして使用できる仕組みもあるのでうまく活用していきましょう。

ストーリーの終盤では異常状態やおかしい火力で殴りかかってくるボスキャラも存在しますが、手持ちの魔法少女、メモリアと相談してレベル上げ、精神強化を進めれば必ず勝てるので頑張りましょう。

例 10章3話 バトル5のイヴ戦

イヴは毎ターン呪い状態にしてくるので呪い無効、状態異常耐性アップのメモリアを用意しましょう。
※アルティメットまどかをサポートで借りていますが、イヴには呪いが利かず、EXスキルはイヴに消されるので呪い無効のメモリアをつけているサポートを選べばよいと思います
また、全員精神強化しているのでそこはご了承を

ささらのゲージがなくなっているように見えますが、クエスト中に発生する「耐える」のアビリティで生きています。

 

ストーリーを進める上では1凸でも十分ですが残念ながらマギアレコードにはミラーズ、キモチ戦という他人と競うコンテンツが存在します。
これだけは特定の魔法少女、特定のメモリアが完凸ということが前提な猛者ばかりがさまよう魔境なので彼らと対等に戦うためには完凸が前提となってしまいます。

とはいえ、そこまでガチガチな編成のプレイヤーはごく一部でメインストーリーのラスボスに勝てる程度の編成ができるのであれば消化することは可能でしょう。

ミラーズのおいしい報酬はガチャチケット、キモチ戦のおいしい報酬はマギアストーンと精神強化に必要な素材であってただ参加してバトルを消化するだけでも十分という程度のコンテンツです。

よって、魔法少女を完凸させなければバトルを行えないわけではありません。
完凸させるかはプレイヤーの自由であって義務ではありません。

マギレコ攻略法で魔法少女を完凸することが前提で解説するマギレコガチプレイヤーが多いですが、完凸前提の時点ですでに廃プレイヤー向けの攻略方法なので参考にしないことをオススメします。
凸数は長い時間とイベントをこなす以外はガチャを回さなければ解決できない問題です。

あまりマギレコガチプレイヤーの意見を鵜呑みにせず、1凸でも戦い抜ける知恵を身につけることを努力したほうがバトルセンスが伸びます。

 

さて、完凸が前提だからクソゲーというのはプレイヤーのワガママだということは理解できたでしょうか。

長い間マギレコをプレイしてきたプレイヤーは完凸が前提という常識から離れるのは苦労を強いられるでしょう。
それは人間社会と同じく常識を覆して考えるのは困難なのが人間の性です。
今からでもそのワガママな常識から逃れるようにしていきましょう。

 

【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-7 たとえ間違った道だとしても

「いくら情報収集のためとはいえ、私たちこんなことしてていいのかな」

「仕方ないっすよ。二木市へ日帰りなんて結菜さんに負担をかけてしまいますから」

「まあ今更気にするのも野暮ってものかな」

私達は二木市へ魔女化しないシステムを持ち帰るために長期間神浜へ滞在しています。

二木市は学校が休みの日だけ、夕方だけ神浜へ来ると言えるほど近くにはありません。

マギウスの翼を調査していた魔法少女のように学校を休みながら長期滞在しなければいけません。

それが社会的に許されるのかといえば当然そんなことはないわけで、私達は人間社会を捨てる覚悟で神浜へ来ているのですが、罪悪感は抜けません。

それにしても私達以外に日中から活動する反社会的な子達がいたなんてね」

「あのミリタリーな見た目をした3人組のこと?まあ姉ちゃん達が大丈夫って言ってたし大丈夫だよ。

それよりもらんかが学校サボってこっちに参加したことに驚いてるよ」

「らんかって学校嫌いそうだから全然意外性は感じなかったなぁ」

「そうそう、学校サボってゲーセン行ってるイメージだよね」

「ふふっ、そんなこと言ってると次女にチクっちゃうぞ」

「アオ、ちょっとそれは勘弁かな・・・」

らんかだって人の道を外れるようなことはしない。じゃなきゃ口が悪くても周りに配慮した行動なんてできない。

私がらんかを襲った時だって、私の気持ちのこと考えてくれていたし。

そういえばらんかは次女と一緒に行動してるんだっけ。

なんかうるさく言われてめんどくさそうな顔をしているのが目に浮かぶなぁ。

 

樹里達は中央区の路地裏を中心に監視を行なっていた。そこで目立ったのは、らんかと樹里の間で行われた問答だった。

「らんか。あの場では何も言わなかったが、親に無理言って転校させてもらってんだろ?今回ぐらいは学校生活を優先してもよかったんじゃないか?」

「しっつこいぞ樹里!1日サボったくらいで関係ないって」

「いや理由なしに休むとすぐに親へ連絡がいくものだぞ。お前、親とうまくやれてないらしいじゃないか。
下手したら親に呼び戻されるぞ」

「樹里には言われたくないね」

「心配して言ってやってんのに。人間社会でまともに生きれなくなってもしらねぇぞ」

「だから!しつこい!」

「おいおい、路地裏でギャンギャン騒ぐとおもての人間に気付かれるぞ」

樹里達の背後には日継カレンがいた。

「チッ、魔力を感知できねぇってのはホント面倒だな」

「一応警告しておく、中央区から出て行け。
これから大事なことを行わないといけないからね、変に嗅ぎ回れると困るんだ」

「そこまで言われて引くわけないだろ。なんならお前を倒してその計画とやらの主導権を私たちに譲ってもらおうか」

「相変わらずだな戦闘狂どもめ。不尽な御託を並べる癖は治っていないようだな」

樹里と日継カレンが話している間、二木市の魔法少女達には日継カレンの居場所が共有され、メンバーが集結しつつある。

結菜が現場に到着した頃、中央区にある電波塔前に糸でぐるぐる巻きにされたらんかが日継カレンの足元に倒れていた。

「人質を取ったってわけ?」

「分からず屋達の覚悟を確認したいだけさ。
周りを見てみろ。昼時で路地には多くの一般人が歩き回っている。
お前達はこの一般人達を巻き込んでまでその不尽な理を貫きたいものなのか」

「まさか、一般人を巻き込むほど私達は非道ではないわ」

「ほんとわけがわからない集団だよ、あんた達は。復讐心ぶつけて自分たちが満足した後どうなるかまで全く考えていない。
殺して殺されてを繰り返す魔法少女の世界になって満足か?」

「そうならないよう私たちが抑え込むのよ。私たちについて行けば苦しまなくて良いとわからせていけばいいだけよ」

「人間らしい思考だ。
改めて言う、中央区から出て行け。出て行かないなら一般人の被害が出るぞ」

「…私達は、引かないわ」

「そうか」

そう言うと日継カレンは人混みの多い場所へ動けないらんかを叩きつけた。

数人の一般人が押しつぶされた後、信号で止まっていた人の乗っている車を糸でからめとり、樹里達へ投げつけた。

あたりでは悲鳴が聞こえ始め、ビルからも多くの人が注目している。

「やめなさい!一般人を巻き込むのは正気じゃないわ!」

「正気じゃないお前らが言えることか!

支離滅裂なことばかり外部の魔法少女へぶつけてばかり。内側に向けるだけの優しさを外に向けたらどうだ!」

魔法少女姿になるのを拒む魔法少女達が次々と投げつけられる看板や車で突き飛ばされ、人混みやビルの壁に打ち付けられていく。

魔法少女に変身した子が出ても、日継カレンは必ず人がいる場所が背面に来るようにしていて攻撃を行うことができない。

結菜のことしか考えていない馬も今回に限っては攻撃することを躊躇して、そして過去のトラウマもあってかひかる軍団を出そうとしない。

完全に私達はアウェーな状況だった。

「おい長女、流石にこれは取り返しがつかなくなるぞ。素直に中央区から離れた方がいいぞ」

「もう手遅れな気もするけどね」

結菜が答える暇もなく、糸の剣で日継カレンが結菜に襲いかかります。

結菜は魔法少女へと変身し、攻撃を受け止めるが、周囲の人が注目している。当然のように、中には写メをとっている奴もいた。

「お前達よりもまともな悪者は沢山いた。

中途半端な想いで、私たちの前に立ちはだかるな!」

結菜は何もいえず、日継カレンの斬撃で体勢を崩すと糸によってその場に掬い上げられてしまう。

「まずい!」

「スクってやるよ。ソウルジェムだけ残る形で!」

肉体が切り刻まれて終わるはずの場所で爆発が発生し、ソウルジェムと肉塊だけが残るはずの現場は爆発による火の粉しか残らなかった。

「あのゲーム好きのお節介か。仲間内だけ見るといい奴らなんだけどね。
お前達はどうする、三重崎の魔法少女達」

電波塔前にはミリタリーな見た目をした魔法少女2人が立っていた。

「あたしらはパスだ。中央区付近にいたら面白いのが見られそうってことがわかっただけでも収穫さ」

「そうかい。じゃあ別の区からスナイプしようとしてるもう1人にはよく聞かせておいてくれないか。前みたいなことになったら利き腕落とすだけじゃ済ませないぞってね」

「わかってるって。

魔法少女が魔女にならないシステム、ちゃんと広げてよね。じゃないとあんた達を

“ぶっ殺せないんだから”」

「そこは気にするな。楽しみにしてるといい」

「頼んだよ」

間も無く神浜市には臨時ニュースが流れ、電波塔付近には救急車や警察、報道陣が集まり、許可された者以外は電波塔付近へ近づくことが禁止となった。

神浜マギアユニオンは目的の場所と離れているからとこの日の夕方に行われる襲撃は、予定通り実施することに変わりはないらしい。

二木市の魔法少女はと言うと、ほとんどが中央区の外に出ていた。

結菜が目を覚ました後、2人のメンバーが建物の瓦礫の下敷きになったり、車に押しつぶされたりでソウルジェムが砕けてしまっていたことが告げられた。

結菜はすぐに中央区へ行きたい衝動を抑え、人気がなくなったことを見計らって再び中央区へ向かうと仲間に告げた。

「神浜マギアユニオンには今回の件を伝えるの?」

「伝えるわけないでしょう?神浜の魔法少女と共闘なんてゴメンよ。

彼女達を制するのは、私達プロミスドブラッドなんだから」

樹里は何も言わずその場を去り、建物の屋上で体育座りで座る1人の魔法少女の元へ向かった。

「結構夕日が綺麗だな、ここ」

「樹里・・・」

「結菜を助けてくれたのらんかだろ。武器で防いでくれたから、樹里様と馬で結菜を助けることができた。

ありがとよ」

「当然のことをしたまでよ」

樹里がらんかの隣に座り、いつから持っていたかわからないポッキーをらんかに差し出した。

一本手にとって食べた後、樹里に問いかけた。

「ねえ、あんたいつまで結菜についていくつもりなの」

「あん?」

「ついて行くにも限度ってものがあるでしょ。日継カレンだって言っていたが、あたしらのやってる事って中途半端なんじゃないかな。

目的も、やり方も」

「んなもん最初からわかってるさ。

樹里様は考えを無理やりにでも貫きながらみんなを引っ張ろうとしているアイツだからアイツのものとして付いて行ってんだ。

たとえ行き先が中途半端だとしてもね」

樹里は中央区を見ながらその場に立ち上がった。

「神浜から魔女にならないシステムを奪う。

そうアイツが言い出して、みんながついて行くってなったから二木市の魔法少女同士が争うことはなくなった。だからこの脆い均衡を崩さないために付き合ってるのさ。

少しでも崩れてみろ。樹里様が結菜をぶっ飛ばして、お前達を連れてってやるつもりさ」

「それ聞いたらひかるが黙っちゃいないね」

「そうやってまた過去に戻っちまうから付き合ってやってんだ。

アイツの言う通り、樹里様達は悪役にもなりきれない中途半端な連中さ」

そうだな、過去のように顔見知り同士で殺し合うのはゴメンだね。

でもあたしがついて行くのは、樹里、あんたにだけだ。

 

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