【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-3 素直に、そして真っ直ぐに

「八雲!無事か」

「無事では、ないわね」

「ちょっと、これはどういうことよ」

調整屋さんは壁に二箇所大きな穴が開いて中は荒れた状況でした。

私はももこさん達に状況を聞きました。

「糸を使う魔法少女がみたまさんを襲った?!」

「ああ、最初は神浜を乗っ取ることを考えて襲いかかってきたかと警戒していたんだけど、話を聞いていると何も言い返せなかった」

「その魔法少女がね。みたまさんが調整する事は魔法少女を魔女化しやすくしているだけだって言っていたよ」

「ったく。神浜にいれば関係ないって言っているのに、その魔法少女全然聞かなかったのよ」

糸の魔法少女というのはおそらくカレンさんのことでしょう。

初対面した際も正論を聞かされましたが、今回襲った理由も実はまともな理由だったのです。

「確かに普段は使えない魔力を使用するのだから、魔力の消費は激しくなるわね」

「それは魔力の使い方の問題だ。消費を控えればいいだけのことだろう」

「えと、私魔力を控えるとか全然できなくて。むしろ控えちゃうと全然戦えなくて」

「かえでが魔法使うの下手なだけでしょ」

「レナちゃんだってアクセル全開でいつも武器を投げて回ってるでしょ」

「そのほうが早く終わるからに決まってるでしょ!」

「でもいつもグリーフシードの消費が多いの知ってるもん」

「それは、そうだけど」

「いろはちゃん、やちよさん。相手の言葉が正論に聞こえて何も言い返せなかった。守ろうとしてる側なのに何やってるんだか。ごめん」

ももこさん、レナちゃん、かえでちゃんはカレンさんの言葉に対して反論できなかったようです。

みたまさんはソファーの上に寝ていて、十七夜さんと話していましたが、とても暗い顔をしていました。

「十七夜、私はやっぱり、だれかを呪うことを願ってしまったからこうなってしまったのかしら」

「考え込むな八雲。神浜の魔法少女は救いになっている。それだけで十分だ」

「でも、でも!」

泣きそうなみたまさんへももこさんが後ろから抱きつきました。

「ちょっとももこ!」

「大丈夫だ調整屋。私たちだって、いろはちゃんだって、やちよさんだって、十七夜さんだって、レナやかえで、みんなみんなお前がいなければこの街の魔女と十分に戦えるようにはなっていなかったかもしれないんだ。
調整屋がいたから今の私たちがいるんだ。それが呪いだろうがなんだろうが、良かれと思ってやっていたんだろ。

だから胸張れよ。泣きたいなら、その間ずっとここにいてやるよ」

「ももこ…」

そのままみたまさんは、ももこさんの腕の中で小さな子どものように泣いていました。

そんなみたまさんを、ももこさんは真剣に受け止めていました。

「環くん、七海、少しいいか」

そう言うと、十七夜さんは外へと私たちを連れ出しました。

「今回の件、いくら手を出すなと言われても擁護しきれん。私は糸の魔法少女を探し、本心を聞き出す」

「それは危険すぎるわ。ななかさん達でも歯が立たなかった相手よ。それにその強さは十七夜も目の前で目撃しているはず」

「だから黙って行いを見過ごせと言うのか。神浜へ害を加えるようなら、私はただみるのではなく行動へ移すぞ」

「行動すると言うのであれば約束してください。まずは話し合おうとしてみてください。そのあと襲われたら、身を守るために戦ってください。相手に襲いかかると言う考えだけはしないようにお願いします」

「…心得た。無理はしない」

そう言って十七夜さんは調整屋の中へと戻って行きました。

「十七夜、ちゃんと理解してくれたかしら」

「大丈夫だと思いますよ。十七夜さんは無鉄砲な人ではないと知っていますから」

「いろはがそう言うなら、信じてみるわ」

やちよさんと話していると電話が震え、手に取ると画面には「ちゃるちゃん」と言う文字がありました。

ちはるちゃんからかかってきた電話は、今神浜に居るから確認したいことがあると言う内容でした。

ちはるちゃん達は以前スーパーで会った後に移動した広場にいました。会った時と同じように3人揃っていました。

「おまたせしました」

「お久しぶりです。えと、隣にいるのは誰でしょう」

「私の仲間の七海やちよさんです」

「よろしくね。静香さん、でよかったかしら」

「はい、よろしくお願いします。それで話なのですが調整屋についてです」

静香さん達は調整屋さんがカレンさんに襲われた際、ちょうどその場に居合わせていたそうです。その時にカレンさんから調整を受けすぎないようにと忠告を受けたそうです。

「カレンさんがそんなことを」

「そうなんです。だから真意を聞かせてください。調整屋を勧めたのは私たちの穢れを早くするためだったのですか」

「ちょっと静香。いきなりすぎます」

「答え方と内容によっては、関係を改めないといけません」

どうやら静香さん達は調整屋さんへ誘う行いが悪意のあることかどうか気になってしまったようです。ここで変に調整屋のことを擁護する言い方をすると、真実を伝えることができないかもしれない。

ならば。

「調整を受ければこの街で魔女と戦いやすくなるというのは事実です。でも、調整を受けることで穢れが溜まりやすくなるというのは私たちも知りませんでした。真実も知らずに安易に勧めてしまってごめんなさい。

だから、改めて伝えさせてください。調整を受けるのは自己責任でお願いします。穢れは早くなっちゃうかもしれませんが、神浜の魔女を倒すのが厳しいと思ったら調整を受けることを考えてみてください。

あと、調整を受けると静香さん達の記憶を覗かれてしまうのでそれも嫌なら調整は受けないことをお勧めします」

「嘘偽りは無いのですね」

「はい」

静香さんの目は力強く、会った時は平気だったのに今は怯んでしまいそうでした。しかしここで目を逸らしてしまうと嘘だと思われしまうかもしれないと思い、目を見続けていました。

静香さんはちはるちゃんを一度見て、そのあとちはるちゃんは笑顔で頷きました。

「ありがとういろはさん。ちゃんと真実を伝えてくれて。ちゃるが悪意を感じることもなかったし、今後も仲良くしていけます」

「良かったです。心臓がはち切れちゃうかと思いました」

「ごめんなさいいろはさん。静香がどうしてもっていうので」

「いえ、誤解が続くよりは全然いいです」

誤解が解けた中、やちよさんがちはるちゃんへ質問をしました。

「ちはるさん、もしかしてあなた相手に悪意があるかどうか見破ることができるの」

「見破るというか、嗅ぎ取るというか」

「ちゃるは魔法少女になってから人の悪意を嗅ぎとれるようになって、悪さを考えているとすぐに気づいてしまうんです」

「静香ちゃんが私が大事にとっていたプリンを隠れて食べようとした時も、ちゃんと嗅ぎ取ったくらいだからね」

「あれはちゃんと謝ったでしょ〜」

「ああ、思い出したらイライラしてきた!」

「もう、ちゃるも静香もやめなさい」

「完全に私は巻き添いよ」

話はそれてしまっている気がしましたが、3人の仲が良い事はよく伝わりました。

「話に戻っていいかしら。悪意を嗅ぎとれるって事は、カレンさんと会った時も嗅ぎとれたはずよね。どうだったか教えてもらえないかしら」

「その事なんですけど、実はそこから静香ちゃんの疑いが膨らんじゃったの」

「それってもしかして」

「そのカレンさんから悪意は全く感じなかったんだ。襲うようなことをしたのに悪意がないって、それはもう正義がある行いってことだよね。だから」

カレンさんがやったことに悪意はなかった。ちはるちゃんの能力が確かであれば、カレンさんの行いはどう見届ければいいのだろうか。

十七夜さんもなぜか雑念が多くて真実を読み取れなかったと言っていたし、話してみないとわからないことには変わりないようです。

「時間をとってしまってごめんなさい。そうだ、魔法少女の集会というのは近々行われるでしょうか」

「実は今日あったんですけど、次回がいつになるかはちょっとわからないですね」

「では今度空いてる日を教えますので、タイミングがあえば参加させてください」

「わかりました」

静香さん達と別れた後、わたしたちもみかづき荘へ向かって歩き出しました。

「あの子達が前言っていた協力してくれるって言っていた子達かしら」

「そうです。今回も話してわかってくれてよかったです」

「せっかくの外部からの協力者、ちゃんとみんなに紹介しないといけないわね」

「はい」

みかづき荘へ戻ると、なんだか雰囲気が重くなっていました。

「鶴乃、それにみんなどうしたの」

「ししょー、いろはちゃん、魔法少女のSNSを見ていなかったの?!ひなのさんが大変なんだよ!」

一難去ってまた一難。

私たちのわからないところで事件が起きてしまったようです。

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-2 度を越すということは

神浜市西側の廃墟へ店を構える調整屋には1人の魔法少女がいる。

その魔法少女は八雲みたまといい、魔法少女のソウルジェムをいじって普段は使えない魔力の領域を広げ、能力を強化するという調整の力を使用できるという。

神浜の魔法少女、および周囲の街の魔法少女は調整を受けているらしく、遠くから来た魔法少女へは強気に立ち振る舞える状況だという。

うまい話には裏がある。

調整のデメリットを聞くと神浜の魔法少女は恥ずかしい記憶を調整屋に見られてしまうと声を揃えて言っていた。

しかし私は調整を受けた魔法少女達に会って確信したデメリットがある。

果たしてこのデメリットは、ここまで放置され続けて来たことに疑問を隠しきれない。

確かめに行くしかないだろう。

調整屋のある廃墟を見ると、周囲の新しい建築物とは違ってレトロな雰囲気を醸し出していた。

建築途中の場所が多く放置されている現状を見ると、これも成長による代償の一部なのだろうと考えてしまう。

「すみません、誰かいますか」

薄暗い広い空間の壁一面に貼られたガラス細工の円形模様を背に、1人がこちらを向いていた。

「あら、見たことない子ね。もしかして神浜の外から来たのかしら」

「はい、神浜の魔法少女に来るといいって勧められて来ました」

「あら、遠いところ来てくれてありがとうね」

白髪の女性の髪飾りには見慣れた魔力を込めた宝石が見えていた。まさか、ここにいる間はずっと変身し続けているというのか。なかなかに不思議な考え方をしている。

「調整屋さんに来たって事は、ここで何ができるかはすでに知っている感じかしら」

「はい。魔力を強化してくれるけど、グリーフシードはちゃんと持っていくようにと伝えられました。代金として請求されるからって」

「丁寧に教えてもらったようね。調整屋さんの説明が省けて助かるわ。さ、調整を始めるからそこの寝台に寝転がって」

どうやら調整のデメリットは自分から話さないらしい。誰だって不利な事は口に出したくないだろう。

「すみません、調整って痛みを伴うのでしょうか。魔力を強化ってなにかしら副作用がありそうなのですが」

「あら、ごめんなさい。調整する時はね、あなたのソウルジェムに触れさせてもらうわ。
初めての子は最初に痛みが伴うかもしれないけれど、一瞬だから気にしなくてもいいくらいよ。あと、調整を受けた後は魔力が馴染むまで体が熱くなっちゃって具合が悪くなる子もいたわね。でもそれで今後の活動に支障は出ないから安心してね」

「そうですか、それくらいですか」

「ええ、それくらいよ」

調整の結果どうなるのか、理解しているかが疑わしい。しかしそんなことは関係ない。
調整屋は、いちゃいけないんだから。

「いけませんよ八雲みたまさん、デメリットを隠し続けるというのは」

「え」

私は糸で調整屋のソウルジェムを狙ったが、思った以上に素早い動きで避けられてしまった。

放たれた糸は周囲に散らばるガラクタの一つに当たってガラガラと音を立てて土煙が上がった。

「あなた、なんのつもり!」

「調整されて相手がどうなるか一部話した事は評価しよう。だが、記憶を覗くとなぜ説明しないか!」

次は調整屋の足元へ放射状に糸を放ったため調整屋の片足に当たってその場から動けない状態となっていた。

「そこまで知っていて、なんで襲うの。なにが目的なの、私を殺したってみんなに不利益を与えるだけよ」

「利益しか与えていないとそういいたいのか!」

「そうよ調整はみんなの利益にしかならないわ」

「そうか、そこまで自信があるならいいだろう。善人だと認識したまま逝くといい」

ドゴォン!

とどめを刺そうとすると近づいてきた魔力反応が私と調整屋の間に割って入った。

ガラクタが宙を舞う中にいたのは黄色の服装をした魔法少女だった

「ももこ!」

「悪い調整屋、緊急だから壁を壊させてもらったよ」

「別にいいわよ、それよりも」

ももこという魔法少女は武器を構えたまま私に問いかけてきた。

「調整屋を襲うってどういう事だ。事と次第によっては容赦しないぞ」

お前は神浜の外の魔法少女へ調整屋に行ったほうがいいと勧める口か」

「そうだが、それがどうした」

「ちょっとももこ!壁ぶち抜いていきなりどうしたって、これどういう状況よ」

「調整屋さん、もしかして襲われたの」

本来の出入り口に仲間と思われる魔法少女2人が到着し、状況は挟み込まれている。退路は作る以外方法はない。

「お前達は魔力強化を受けた結果どうなるか考えたことがあるか」

「魔力が強化されたら、そりゃ魔女を倒しやすくなるでしょ」

「普段使えなかった魔力を使うんだ。魔力消費が増えるとなぜ考えないんだ」

「この街には魔女がたくさんいるし、この街にいれば魔女にはならないから気にする事はないじゃないか

やはりその回答か。この街の魔法少女は「この街」を中心にして物事を考えているようだ。予想通りで残念だ。

「そうやって神浜の外から来た魔法少女へ説明する気か。調整を受けたら神浜に居続けろとそういいたいのか」

「そこまでは言っていないだろ。戻りたいなら自分の街に戻るのは自由だろ」

「魔力消費を激しくしておいて、お前達は神浜の外の魔法少女を魔女化させたいのか!」

「そうとも言っていないだろう!」

「なんで考えないんだ、この調整屋は、魔力をいじって魔女化しやすくしているだけだということを」

「な!」

三人は何を言っているのか分からない顔をしていたが、調整屋だけは何か気づいたかのような顔をしていた。

「言いがかりも大概にしろ!調整屋はみんなを魔女にしたくてやっている事じゃない!」

「本心はそうかもしれない。だが、調整は使えないはずの力を無理やり行使できるようにしてしまい、穢れを加速させる結果となる。無闇に神浜の魔法少女へ勧めるんじゃない。この街ではドッペルがでても、外では魔女になるだけだ。その罪の重さを自覚したほうがいい」

ついに黄色の魔法少女は何も言わなくなった。

「今回は捨て置く。生きて行いを見直し続け、呪い続けるといい」

私は壁を打ち抜き、調整屋の外へとでた。

「ちょっと何!ここって中立地帯って聞いたけど」

外に出た先には三人の魔法少女がいた。

「お前達は神浜の魔法少女か」

「いいえ、私は霧峰村ってところから来た魔法少女よ」

「そうか。調整を安易に受け続けるな。調整されると魔力消費が増えて穢れやすくなるだけだ。よく考えてから調整を受けるといい」

「えと、はい」

調整屋の排除には失敗したが、あの調整屋の反応は期待できる結果だ。

ただでさえ自動浄化システムを広げることができない段階だ。

今調整を受けて外へ戻ってしまったら、外の魔法少女が消えていくだけだ。

 

とりあえず調整屋は無力化させた。これでしばらくは「記憶をたどった捜索」は滞ることだろう。

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-1 開幕を示す悲劇の狼煙

掴みどころがないというのは、複雑な気分となってしまいます。

あるのはわかる。
でも、それをどうすればいいのかがわからない。

この街の魔法少女にはともかく、静香さんやカレンさんのような遠い場所から来た魔法少女へ何もわかりませんというのは、とても申し訳ない気持ちになります。

一番関係がありそうなういも、クレメルも自動浄化システムがどこにあるのかが分からない状態です。

今日は神浜マギアユニオンとしての集まりがあり、みんなの事情を考慮して午後に集まることとなりました。

明日香さんにお願いして、午後に道場を開けてもらうことができたので明日香さんの実家が運営している道場で会議を行う予定となっています。

今回の会議にはななかさんも参加するとのことなので、情報交換が捗りそうです。

前もってSNSでみんなから神浜にしかないものについて情報交換がされていたのでその整理からですね。

あとは、数日前に久々にまどかちゃんとメールをやり取りして、見滝原のみんなは神浜マギアユニオンには参加せず、神浜の外だからこそわかる情報を伝えるという方針になったと伝えられました。

私も神浜で起こった事はまどかちゃんに伝えるようにすると返信しました。

SNSに参加できるかはサーバー管理している灯花ちゃんの返事待ちとなっています。

ようやく前に進め出せそうな気がしていました。

会議にはやちよさんとさなちゃんとういが参加して、鶴乃ちゃんとフェリシアちゃんは万々歳のお手伝いに行っています

東側からは十七夜さんが、南と中央区の代表としてひなのさんが参加してくれます。

道場へ着くと明日香さんがお出迎えしてくれて、中にはすでにひなのさんとエミリーさん、れんさんに梨花さんもいました。

「人数が多くてすまないな。道中でバッタリと会ってしまってな」

「まあまあ、そもそもうちらを呼んだのあすきゅんだし。折角だからってみゃこ先輩についてきた感じよ」

「そうなんですか、明日香さん」

「はい、エミリーさんの何気ない発想で今までに何度も窮地を脱した事がありますからね。行き詰まりが生じた場合は、是非エミリーさんから何かご教授いただけたらと思ったのです」

エミリーさんはお悩み相談所でいろんな人と話してはアドバイスを与えてくれると神浜の魔法少女の間では人気となっています。

「それじゃあ、何か悩んだらお願いしちゃおうかな」

「おう!ろっはー任せなさいって」

「あたしらも、それなりに情報持ってるからちゃんと共有するね」

「ありがとうございます」

「ふむ、今日は随分と賑やかだな」

十七夜さんと一緒にななかさんも道場へ到着しました。

「あらためまして、組織に組していないのに参加させていただき、ありがとうございます」

「いえ、わたしもななかさんたちから見た考えを知りたいなと思っていたので」

「そこでだ環くん、今日の話す内容についてなのだが、まずは神浜の外から来た魔法少女について情報交換したいと思う」

「神浜の外から来た魔法少女、ですか」

「はい、わたしがこの会議へ参加したいと考えたのもお伝えしなければいけない事があるからです。できるのならば、早急に」

当初の予定とは変わりましたが、神浜マギアユニオンとしての会議は神浜の外から来た魔法少女についての話し合いから始まりました。

「私達はすでに神浜の外から来た魔法少女に会っていますね。会った人たちは、みんなはそろってキュゥべぇからこの街に自動浄化システムがある事を聞いて訪れたと言っていました」

「やはりそうですか」

「東側で会った魔法少女も同じことを言っていた。その内容については少々複雑なこととなっているがな」

「わたしも、会いました。自動浄化システムが、手に入るって、聞きました。はい」

神浜の東西南北、どの場所でも神浜の外から来た魔法少女は自動浄化システムが手に取れるものだと伝えられて来ていると再確認できました。

「この事態、わたしは非常によろしくない事態だと考えています。外から来た魔法少女と争いごとのきっかけになってしまうのではないかと考えています」

「しかし事実だ。手に取れるようなものではないと伝えるしかあるまい」

「その伝え方について、考えの共有が必要だと思います。それぞれの見解で伝えてしまうと、誤解を招く結果となります」

「実はすでに外から来た子に説明をしたのですが、わたしは説明するときにちょっと回答を濁らせてしまいました」

「それで相手は納得してくれたのか」

「はい、調査中なら協力もするって言ってくれました」

今回のわたしのように曖昧な回答だったら納得してくれない子が出てくるかもしれない。でも、どう伝えればいいんだろう。

「そんな難しく考えないでさ、ガツンと事実伝えてあとは相手に任せればいいっしょ」

「私も、嘘を伝えられるのは嫌かな。わからないならわからないって言って欲しいな」

「そうですね、素直に事実を伝えることにしましょう」

「伝えたうえで襲われたりした場合は1人で相手しないようにする、という決まりも必要そうね。みたまの調整を受けているからそう簡単にやられる子はいないと思うけど」

「うむ、わかった」

「これで一つの議題は解決ですね。引き続き私から一つよろしいでしょうか」

ななかさんが主催のようになっていますが、特に気にしていませんでした。ななかさんが来てくれる機会は多くはないので、聞けるうちに聞いておこうと思っていたのです。

やちよさんから、ななかさんは頼れる人だ、というのは十分に聞いて言いたので。

「みなさんは電気を操る、または糸を操る外から来た魔法少女をご存知でしょうか」

私たちが会っているのは静香さん達とカレンさんだけです。戦っている姿はカレンさんしか見ていませんが、どういう力を使うかまでは知りませんでした。

「すみません、私達は話をしただけだったのでどういう力を使うかまではわからないです」

「私は外から来た魔法少女の集団に会ってはいるが、ツノがあったり暑苦しかったりと特徴に合う魔法少女はいなかったな」

「わたしは糸を使う魔法少女については知っている。しつこく勧誘してくるマギウスの残党へきつくお灸を添えたらしくてな、ちょうどその現場に居合わせていた」

「その話、詳しく聞かせてもらえますか」

十七夜さんによると、東側ではマギウスの残党が集まって何かを企てている動きがあったようです。そこへ糸を使う魔法少女が勧誘されたらしいのですが、怒った勢いでそのまま解散させてしまうくらいの迫力で襲いかかっていたとのことです。

ケガ人はたくさん出ましたが、みんなソウルジェムは無事だったとのことです。

ちなみにそのマギウスの残党の数というのが。

「30人いたのに1人で倒しちゃったの!?」

「この目で見ていたから間違いない。それに彼女は傷一つつかずにその場を収めていたからな。外から来た魔法少女にしてはあまりにも強すぎると思っていた」

「巴さんでもかなり強かったのに、巴さん以上の魔法少女がいるなんて」

しかし過去を遡ればななかくんたちを振り回したという魔法少女もいたからな。この国だけでも強い魔法少女はまだまだいるだろう」

「ちなみに名前は聞いたんですか」

「うむ。彼女は日継カレンという名前だったな」

「「カレンさん」ですか」

あ・・・。

ななかさんと被ってしまいましたが、カレンさんの名前を聞いて思わず声に出てしまいました。

「ソウルジェムの反応を検知できないと思ったら、そんな実力者だったようね」

どうやらわたしが訪ねた人物とひなのさんたち以外は面識があるようですね」

「中央と南で見かけなかったという事は、わざわざ外側を見て回っているのかそいつは」

ななかさんはしばらく考えたあと、十七夜さんへ訪ねました。

「十七夜さん、確認ですがカレンさんの心は読みましたか」

「その事なのだが、彼女の心をのぞかせてもらったがなぜか数十人の思考が右往左往している奇妙な状況だった。あれは魔女の心を読むとは別の意味で気分が悪くなってしまった」

「数十人の思考が1人の中でなんてそんな事があるのか」

「いや、あり得ん事だな。人1人に一つの心と考えたらなおさらだ

私たちが出会ったカレンさんは色々悩みを聞いてくれた上に助言をしてくれたいい人だと思っていましたが、実態は奇妙なとても強い人だったようです。

「では、その魔法少女について知っていることをお話しします。
わたしはつい数日前、カレンさんに宣戦布告を受けました」

「え!」

「不穏な流れだな。何かしたのか」

「私達は直接何かをしたわけではありません。しかし彼女たちには危険な存在だと認識されてしまったようで、今後は神浜に対しても敵対する意思でいるようです」

「カレンさん、なんでそんなことを考えているんでしょう」

「実はカレンさんは知っているらしいのです。自動浄化システムを世界に広げる方法を」

「そんな、灯花ちゃん達でも苦労して探っている最中なのに」

「事実かはわかりません。しかしあの揺るぎない自信と実力を考えると本当なのかもしれないですね」

手詰まりかと思われた状況の中、まさかの解決方法を知っているという魔法少女がいるという衝撃の事実にどう対応していいかわからなくなっていました。

ななかさんによれば、変に探ろうとしてしまうと敵対していると判断されてしまうらしく、話し合いは慎重に行わなければいけない事がわかりました。

それにしても、カレンさんと会ったのは数日前でその時は神浜に来たばかりと言っていました。

まさかあの時から全てわかっていたのかもしれない。

そう考えると、カレンさんがだんだんと怖い人に思えてきました。

自動浄化システムの広げ方を知っているというのであれば近いうちに何か動きはあるだろう。今は様子を見て、神浜へ被害が出るようであれば対抗するしかあるまい」

「でも、30人の魔法少女と平気に渡り合う相手にどう対抗するんだ。下手したら最盛期のマギウスよりも厄介だぞ。ちなみにだが、電気を使う魔法少女というのはどうだったんだ」

「少なくとも、私たちのチームでは歯が立ちませんでした。あの方は電気とはいえ知識を利用して応用力で勝負を仕掛けて来ました。
戦闘能力はカレンさんと同じ程度と思った方が良いでしょう」

「それ、どうしようもないんじゃ」

「おガキ様のように過激な方向へ進まないことを祈るばかりだな。
む、十咎くんから電話か。少し失礼する」

「なんかあたし達、今結構やばい状況にいるんじゃないの」

「今はこれ以上敵対的な魔法少女が増えないよう、事実を伝えていくしかないようね」

「なに!八雲が襲われただと!」

ももこさんから来た電話は、みたまさんが見知らぬ魔法少女に襲われたという電話でした。

十七夜さんは急いでみたまさんの元へ向かい、私たちも状況把握のために調整屋さんへ向かうことにしました。

そのまま会議は中断となり、残った議題は引き続きSNSの方で会話していくことにしました。

「おねえちゃん、私も行くよ」

「ういはみかづき荘に戻ってて。もしかしたら襲った人がまだ居るかもしれないし」

「私だって、力になりたいんだもの。お願い、連れて行って!」

「今回はダメ。さなちゃんと一緒に先に戻って待ってて。お願い」

「…うん」

返事をしたういは、どこか悲しげな表情をして、そのままみかづき荘へと戻って行きました。

「えっと、ごめんねさなちゃん。ういをお願い」

「はい、わかりました。ういちゃんと一緒にみかづき荘で待ってますね」

私はさなちゃんへ頷いた後、やちよさんと一緒に調整屋へと向かいました。

 

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