【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-1-6 イザベラなら大丈夫だよね?

私の記憶の中に、母親の姿はほとんどない。

小学校にも通っていないくらいの歳の時に頭を撫でられて。

“イザベラなら大丈夫だよね?”

この質問に対して私はなんて返事したのかは覚えていないし、どんな顔をして母親が出かけて行ったのかも覚えていない。

母親との記憶はこれが最後。政治家の父親と使用人に育てられた記憶しかない。

過去に小学校の同級生に母親がいないことについてからかわれて家へ帰った時、父親は母親についてこう話してくれた。

“お母さんはイザベラを愛していた。イザベラを嫌いになってどこかへ行ってしまったわけではないよ”

“じゃあ、マムはどこへ行っちゃったの?”

“お母さんはこの世界の悪い存在と戦い続けている。今イザベラと会ってしまうと、悪い存在にイザベラが狙われて、怖い思いをさせてしまうかもしれない。

だからお母さんは帰ってこれないんだよ”

“私は強いよ!悪い存在なんてやっつけられるわ”

“イザベラ、この世界にはイザベラの知らない怖いことがたくさんある。
今はお母さんが安心して帰ってこられるように、たくさん知識をつけることに専念しなさい。
私も教えられる範囲内で知識をあげるから”

私が世界を知って、賢く、強くなればお母さんが帰ってくるかもしれない。

そんな無邪気な願いを持って、私は知識をつけること、そして父親の背中を追い続けた。

そんな無邪気な願いを持っていた頃、私は魔女と呼ばれる存在に捕まったことがあった。その時に私はキュゥべえという白い生き物に魔法少女にならないかと勧誘を受けた。
しかしその時、私は魔法少女という存在じゃないのに魔女と呼ばれる存在の攻撃を防げる障壁を発動できた。なぜかは知らないが魔法というものを使用できたらしく、そのまま魔女を倒してしまった。その場に駆け付けた魔法少女と呼ばれる存在はとても驚いていた。

私が魔法少女ではないことを魔法少女と呼ばれる女の人へ話すと、こう忠告してきた。

“絶対に魔法少女にはなるんじゃない”

私はそのあと魔法少女になってはいけない理由を知るためにキュゥべえと父親へいろいろ聞いた。
魔法少女は魔女になる、魔法少女になると魂はソウルジェムというものに変換される。

ここまでほとんどはキュゥべえから聞いた話だが、なぜか父親は魔法少女について知っていた。なぜかというと、母親が魔法少女だったから。

そして私が魔法を使える理由は、魔法少女である母親から生まれたからではないかとキュゥべえから聞いた。結構イレギュラーな例らしい。

魔法少女になってはいけない理由も理解したし、母親がどこかへ行ってしまった理由も何となく察した。

魔法少女について父親へ聞いた時、同時に父親の過去も聞くことができた。

実は父親はもともとミュージシャンで政治家などではなかった。

でもミュージシャンの頃から世界を変えたいという思想はあったらしく、その考えが歌詞に現れていた。

父親の政治活動をサポートしてくれていた、今では叔父と呼んでいる人が父親と母親について私に聞かせてくれたことがあった。

“イザベラのお父さん「チャールズ」はね、路上ライブ中に君のお母さんと出会ったんだよ。

あれはチャールズが高校上がりたてで本格的にミュージシャンとして食っていこうと考えていた頃だ。

道ゆく人たちが足を止めずに少量のチップしか落とさない中、君のお母さんはチャールズの曲に聞き入ってその場に足を止めたんだ。

偶然かと思ったらしいのだが、場所を変えても彼女はチャールズの曲を聞きに来てくれたという。

そしてある日、彼女がチャールズへ話しかけてそこから交流が始まった”

“叔父様はいつお父さんと知り合ったの?”

“彼女と同様、路上ライブが行われていた時さ。

彼と話してみると面白い発想をしていてね、是非とも味方としてほしいと思ったのさ”

“お父さんを利用しようとしたの“

”聞こえは悪いと思うけどね。でも逆に私は呑まれてしまったんだよ。君のお父さんは恐ろしいほどの策略家だった“

父親の成り上がりは政治家たちの中では誰も知らないほど有名だった。

大抵の政治家はコネや金の力、権力者への便乗で名声を高めていったが、父親は政治活動を叔父に任せてひたすらミュージシャンとして活動した。

そしてテレビ局にピックアップされて、着実に名声を得ていった。

父親が作る曲は人を魅了させるために人の真理を研究して意図的に作られたものではない。ただ父親が思うがままに作った曲が多くの人の共感を得ただけだ。
私も物心がついてから父親の曲を聞いたが、何とも言えない感動が胸の奥から込み上げてくることだけはわかった。

その結果、父親の歌詞に込められた想いは米国の国民の意思を変えていった。

父親は叔父に黙って叔父の選挙区へ出馬した。結果は当然父親が勝利し、父親は純粋な名声を持って政治の世界へ入っていった。

その後は政治家とは思えないほど自分が損をし、国民を喜ばせるような政策を続けた。

だから父親の資産は米国のどの政治家の中でもワーストだった。

衣食住、全てが一般レベルでガードマンも叔父の雇ってる人がついででいるくらい。

しかも、政治家になってもミュージシャンを続けていた。

政治家になってからはテレビで曲を披露せず、普通の道端でゲリラライブを行っていた。

そう、父は一般人からしたら頭がおかしい。

でもその異常さが人気の一つだった。

そんな父親の有様を見て、貧乏政治家、政治家もどきと罵る人もいたが、若者の支持は圧倒的に得ていた。

”お父さんは結局何をしたいの?“

”イザベラ、人をダメにするのはお金と常識だ。どちらも持ったまま大人になると、心が狭くなって、平気に酷いこともしてしまうんだ。

だから、私はどちらも否定したいんだ“

“でも、お父さんは叔父様を騙したよね?お父さんもひどい人じゃない?”

“イザベラは賢いね。

ケーネスは私の側近として政治家らしいことをやってもらってる。お父さんは政治に詳しくないからね。

ケーネスは騙されたと思っているかもしれないけど、お父さんはケーネスに利用されていると思っている”

“どうして?”

“政治家たちのヘイトは私に向いている。私はケーネスの隠れ蓑になっているのさ”

“お父さん、変なこと考えないでよね”

“大丈夫、イザベラを不幸にはさせない。
そうじゃないと、嫁に顔向けできないからね”

父親が政治家になって、初めての大統領選挙が近づいていた。

結果なんて見えていた。

あらゆる政治家が汚い手を使っても、父親の大統領となる確率は99%に近かった。

そんな中、たった1%の奇跡が私の運命を変えた。

私は父親の付き添いで一緒に仕事場へと向かっている途中だった。外は雨が降っていて、見通しが悪かった。

そんな中、周りの風景がおかしくなっていった。

「なんだ、この空間は」

「道がない、どうすれば」

車に乗っている私は直感的に危険を感じて車を降りながら叫んだ。

「みんな車から離れて!」

父親は逃げ出せたものの、運転手の人は地面から出てきたワニのような化け物に車ごと食べられてしまった。

「チャールズ氏だな?まあ、違うと言われても本人だというのはわかっているんだけど」

話しかけてきたのは、ワニのような怪物の頭に立つ少女だった。

「その化け物、まさか魔女か。ということは君は魔法少女なのか!」

「ほう、理解が早いね。奥さんが魔法少女だったという話は本当だったのか」

父親は魔法少女をずっと見つめていたが、眉間にしわを寄せるという何か危ないことを考えているときの癖が出ていた。

「お父さん!」

「イザベラ、これを持っていなさい」

そう言って父親は私に銀色の星の真ん中に黄緑色の球体が輝くネックレスを渡してきた。

「これは」

「お母さんからもらったお守りだよ。さあ、それを持って結界の外へ!」

「でも」

魔法少女は待ってはくれず、魔女へ攻撃指示を出してこちらへ突進してきた。

私は魔女の通った跡を境に父親と分断されてしまった。

「行きなさい!」

私は父親の言われるがままになぜかわかる出口へ向けて走り出した

走り出すと後ろから動物の骨を被った数体の骸骨が槍を持って私を追いかけてきた。

「なんなの。まさか使い魔ってやつ」

警戒して後ろを振り向くと、魔女が父親を喰い殺す様子が目に入ってしまった。

「お父さん!」

私は足を止めてしまい、骸骨たちに追いつかれてしまった。

骸骨たちは槍で突いてきたがいくつかは回避できた。しかし父親が死んでしまった動揺もあってか、太ももに一撃を受けてしまった。

もうダメかと思って死を覚悟した時、誰かが私の前に出て持っていた竹刀で骸骨たちを蹴散らした。

「怪我をしているのか」

私に声をかけたのは竹刀を右手に握った少女だった。

「なんなんだここはと思ったけど、これは考えている余裕がなさそうだね」

蹴散らされた骸骨たちはその場で起き上がった。

「逃げるよ」

そう言って少女は私をお姫様抱っこした。

「とは言っても、どこが出口だ」

「あっちに走り続けて」

私は結界から出られる場所を指さした。

「わかるの?」

「急いで!あなたも消されるよ!」

少女は私を抱えながら必死に走り続けた。

もう少しで結界の端というところで少女はつまづいてしまい、私と少女は地面につくと同時に結界の外にいた。

場所は橋の下で、衣服はすぐに雨で濡れてしまった。

「君は、いったい」

「あなたも何者なの、魔女の結界にすんなり入ってきて」

「魔女?結界?あの空間へは家へ帰る途中に偶然遭遇してしまっただけだよ。

君も偶然あの結界に?」

「違うわ。

私と、お父さんは魔法少女のせいであの結界に閉じ込められたのよ。

そして、お父さんは魔法少女に殺された!」

「そうか、ごめん。無神経なこと言って」

「お父さんが、魔法少女へ何をしたっていうのよ」

少女は立ち上がって私に手を伸ばした。

「私はキアラっていうの。あなたは?」

「…イザベラ・ジャクソンよ」

私はキアラの手を取り、雨の中を叔父の家へ向かって走り続けた。

「ちょっと、イザベラさんどこに連れていくの!」

「あなたあの魔法少女に目をつけられたかもしれないでしょ。私の叔父の家でしばらく隠れていなさい」

「え、叔父さんの家?」

叔父の家へ着いた頃には2人ともびしょ濡れだった。

「どうなさったのですかイザベラさん!」

「着替えの用意をお願いできますか?彼女の分も」

「か、かしこまりました」

私とキアラは敷居を一枚挟んで着替えながらあの状況について話していた。

「まさかイザベラさんがお嬢様だったなんて」

「私のことは呼び捨てでいいわ。あとここは叔父様がお金持ちなだけ。

ねえ、どうして私を助けてくれたの?」

「殺されそうな人がいたら助けるのは当たり前でしょう?

まさか私の太刀が一切ダメージを与えられなかったのは想定外だけど」

「あなた死んだかもしれないのよ。なんで自分のことを大事にしないのよ」

「生きて後悔を残すよりも、後悔なく死んだほうがいいのよ」

「ふん、悪くない生き様ね。

でも」

トントントンッ

話の途中で扉がノックされた。そして扉の向こうから叔父の声が聞こえた。

「着替え中失礼。イザベラ、着替えが終わったら一緒にいた子を連れて私の部屋へ来てくれ。

状況を説明してもらいたい」

私たちは着替えが終わると叔父の部屋へと移動した。

部屋の中では叔父が窓から外を見ながら待っていた。

「イザベラ、一緒にいる子の名前は?」

「キアラよ。私たちが魔女の結界に閉じ込められた時、助けてくれたのよ」

「そうだったか。

キアラさん、イザベラを助けてくれてありがとう」

「いえ、当然のことをしたまでです」

イザベラが私は違いますよという感じに両手で手を振った。

キアラの両手を見て、叔父は顔が険しくなった。

「君、魔法少女ではないね?一体何者だ」

「あの、イザベラさ・・イザベラも言っていましたが、魔法少女ってなんのことでしょう」

「イザベラ、キアラさんに魔法少女のことを話してもいいかね?」

「・・・いいですよ。キアラは聞き流す程度でもいいわ。

それで、話というのは」

「落ち着いて聞いてくれ。イザベラのお父さん、チャールズの存在がこの世界から消えた」

急に何を言い出すのかと思ったら、あり得ないことが叔父の口から出てきた。

「そんなはずないじゃない。お父さんを忘れるなんてそうそうできることじゃないわ」

「では、屋敷内の使用人たちに確かめに行ってみるといい。一番わかりやすいのは、新聞の内容だと思うが」

言われるがままに私は新聞に記載されている大統領選候補者の名前一覧を見た。

そこに、父親の名前はなかった。

「何よこれ。こんな、これじゃあ、お父さんがいないことになったかのようじゃないの!」

「イザベラ、君たちを襲ったのは魔法少女だったのだろう?

君のお父さんがこの世界でいない存在にされたのは、襲った魔法少女のせいだろう」

「そもそもなんで叔父様は魔法少女の仕業だって考えているの?

「君のお母さんからもらった、このペンダントのせいだよ」

そう言って叔父は見覚えのあるペンダントを私に見せてきた。

「それって、お父さんから渡されたものと同じ」

「そうか、彼は最期に娘へ手渡したか。

このペンダントはね、君のお母さんが魔女や悪い魔法少女から守ってくれるようにって私と君のお父さんへ渡したものなんだ。

彼の記憶が消えないのは、これのおかげかもしれないな」

「母親の、カタミ」

「君たちは彼を消すために動いた魔法少女に目をつけられただろう。
今後は、常に狙われているであろうという気持ちで過ごしてもらいたい」

「そんな、毎日気を張っていないといけないなんて生きてる心地がしませんよ

誰かに命を狙われていると常に警戒するのは肉体的にも、精神的にも疲労が激しい。

そんな毎日を過ごすくらいなら。

「イザベラ、顔に出てるよ。

まったく、親子そろってあまり物騒なことは考えるんじゃない。ガードマンは常に周囲に配置しておくから」

魔女に通常の武器は効かない。キアラの戦闘を見てそんな気がした。

「すみません、気をつけます」

「キアラさん、君の親御さんに事情は説明するから今日は泊まって行きなさい」

「え、いいんですか?」

「私が許すよ」

「ちょっと叔父様!」

そういうことで、キアラは叔父の家へ泊まることになった。

私は世間では叔父の養子ということになってしまっているらしく、家のものが叔父の家へ既にある状況となっていた。

魔法少女の力は過去を作り替えてしまうほど強力な力だという事実に、私は恐怖を覚えた。

その日の夜、キアラが私の部屋へと訪れた。

「あの、昼頃にしていた魔法少女について聞きたいことが」

不意打ちだった。

不覚にも、キアラに外出しようと準備している私の姿を見られてしまった。

夜なのにコートを着ていたこと、腰に刺した拳銃を見てキアラは驚いた顔をしていた。

「何やってるんだ、イザベラ」

「キアラ、このことは内緒だ。黙って部屋に戻っててくれないか」

「イザベラの叔父さんが言っていた危ないこと、魔女とやらと戦う気なのか」

私は何も言わずに窓から飛び出そうと思ったが、このままでは騒がれてしまうだろう。

私は開いたままの部屋の扉を閉じてから話し始めた。

「眠れないんだ、父親を殺したあの魔法少女に一矢報いるまでは、ゆっくり眠れる気がしない」

「無茶だ、イザベラだって死んでしまう」

「そうだね。もしかすると、奥底の自殺願望が後押ししてるのかもしれない。
今日おとなしくしたところで、いずれ精神が病んで死ぬのは、なぜかわかる」

私は窓を思いっきり開けた。

雨上がりの湿ったい空気が入ってきて、少し気持ち悪かった。

「キアラ、助けてくれたこと、嬉しかった」

そう言って私はキアラに背を向けたまま窓から飛び出した。

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-1-4 魔法少女狩り、進捗は良くなく

世界中で魔法少女狩りが開始されたが、世界全ての魔法少女が狩れたわけではなかった。

魔法少女狩りが行われた後の世界情勢はこんな感じである。

まず順調に作戦を完了させたのはアフリカ大陸、中央アジア、西アジア、南アジアに中央アジア。
捕らえた魔法少女達には宝石へ細工を行い、ボタン一つで宝石が爆散するようにしている。そんな彼女たちは隔離地域と呼ばれる場所で暮らすように指示している。
隔離地域は小さな町となっていて衣食住が十分に行える程度の設備は整っている。
隔離地域へと収容する理由としては対処済かそうではないかを見分ける方法がいまだにないからだ。

それに、直ぐに実験用として呼び出しやすい。

東南アジアの魔法少女は一部オーストラリア大陸へ逃げ延び、オーストラリア大陸には捕獲漏れの疑いがある。
オーストラリア大陸は無駄に面積があり、捕獲漏れがあるかどうかの結果が出るには時間がかかるだろう。

次は北中南米全域。

サピエンスの本拠地がある米国であるにもかかわらず、いまだに魔法少女反応が残っていて全員の捕獲に至っていない。

原因としては魔法少女を追っても、不特定な場所で突然反応が消えてしまうため。

神浜市と繋がったようなゲートがあるのではと探したが、見つけるには至っていない。

実は中華民国もロシアも同じような理由で全ての魔法少女を捕獲できていない。

他にもヨーロッパ地域と日本も完全制圧できていないのだが、この2国は抵抗が激しかったため特殊部隊の敗北で終わっている。

ヨーロッパ地域ではなぜか最初から魔法少女達によるアンチマギア対策が徹底されていて初期生産型の武器や兵器では太刀打ちすることができなかった。

そんなヨーロッパ地域で優位に立つためにサピエンスは多くの試作品をヨーロッパ地域へ提供したが、魔法少女達による武器庫襲撃によって全てが吹き飛んでしまった。
そのため、ヨーロッパ地域は劣勢である。

日本はというと、神浜市へとつながるゲートからの奇襲とアンチマギアの使用で優位に立つことができた。

しかし、ゲートのことを知っていた彼女達はゲートを封鎖し、アンチマギアが届かないところから抵抗されて特殊部隊は全滅した

あの後、ゲートを再度開こうと試みたものの、米国に潜んでいた魔法少女によってゲートが破壊されてしまった。

ちなみに神浜市襲撃時に使用されたゲートは鏡が大量に存在している迷路のような場所で、探索時に多くの行方不明者を出している。新しいゲートを見つけるためにあの鏡の空間へ入るのはいたずらに戦力を削るだけだろう。

魔法少女狩りの進捗がよくない原因として、人間側の状況に詳しい一部の魔法少女が世界中の魔法少女へ事前に注意喚起を行っていたことが考えられる。

特にヨーロッパ地域はアンチマギアが生まれる前から警戒していたのではないかというくらいアンチマギア対策が徹底していた。

とはいえ裏組織のアンチマギア実用実験時に軽くあしらった魔法少女がいたという報告を受けていたので、おそらくその魔法少女が起点だろう。
そういうわけで魔法少女が使用している情報網の集結先を探っているのだが、どの魔法少女も口を割ろうとしない。

有象無象の集団かと思った魔法少女だが、組織的な動きをする脳くらいはあったようだ。

各国のアンチマギアへの対抗姿勢を分析して、日本はアンチマギアの存在を知らなかったのではないかという結果となった。おそらく十分な対策もまだできていないだろう。

侵攻作戦を再度仕掛けるべきは日本だろう。

 

イザベラは日本へ再度侵攻するために軍関係者のメンバーを作戦室に集めていた。

「レディ、あなたの気になっていた情報ですが、どうやら日本は魔法少女を若干擁護する動きを見せているようです
降伏してきた魔法少女へ未だに宝石への細工も行っていないとのこと」

「それはいけないね。国連で決まったことに反するとはいい度胸だ」

しかし大統領から人間同士の大戦にはしないようにとのお達しが出ている。仮にそうでもなったら、あなたの首は無事ではないですよ」

「そんなのわかっているわ。あの国は経済制裁を加えたらぽっくり行く国よ。戦う力なんて、はなからないわ」

イザベラが資料へ指さすと、作戦室にいるメンバーが皆揃って資料へ目を落とした。

「それでこの作戦ですか。主力は我が軍ですが、経済制裁を武器に日本軍を強制参加とはいささか権力の暴力ではないですかな」

「私たちは負けられない戦いをしているんだ。容赦なんてしたらこちらがやられるだけだ」

「しかし、降伏した魔法少女達はうまく動いてくれるんですかね」

「戦力に不安があるなら、私を入れてくれないか?」

急に作戦室へ入ってきたディアに全員が驚いた。

「何しにきた?今は作戦会議中だ」

「作戦も何も、いつもの意見の押し付けだろう?よければ私を作戦へ参加させてくれないか?
参加したらついでに作戦責任者へ宝石への細工を強要するよう仕向けることも可能だ」

私は腰に差した刀に手をつけながらディアに話しかける。

「その自信、実験がうまくいったようだな」

「ああそうさ。日本くらいの距離でも通用する仕上がりだ。どうだ?」

イザベラは深くため息をついた。

「デュラン大佐、試作艦が日本領海に到着するまでの時間は」

「まだハワイ港にいますので、10日以上はかかります」

「そう。ディア、8日以内に日本へ入国しなさい。それが可能なら作戦へ参加しなさい」

「お安い御用さ。感謝するよ、イザベラ」

そう言うとディアは優しく扉を閉めて出ていった。

「全く、狙ったように作戦会議中にきて」

「抑えなさいキアラ。
さて、特に反対意見がないようであれば作戦行動へと移ろうと思うのですが、他に意見はありますか?」

「では最後に一つだけ。
レディは世界を巻き込んでまで、なぜ魔法少女を支配下に置きたいのですか」

「奴らは最終的に人類の敵になると既に予見しているからさ。こうしている今も、奴らは人類の上に立つ準備を進めている。
わかりあうなんて生易しい理想は、人間社会には通用しないでしょう?」

「それは、別の機会にじっくり聞きたいものですな」

「ふんっ、反対意見がないようであれば作戦に移ってちょうだい。試験艦の移動は速やかに」

「イェッサー」

軍関係者が会議室から皆出て、部屋にはイザベラと私だけが残った。

「神浜を標的にしたのはキュウベェの助言が気っ掛けだろう?」

「魔法少女が魔女化せず、理性を持って魔女のように振る舞える魔法少女が力尽きないシステム。

そんなものがあって、なおかつそれが世界中に広がる可能性があるなんて言われたら後回しにはできない」

魔法少女狩り時の奇襲では事前情報がないような振る舞いがありつつ、特殊部隊は敗退した。

アンチマギアを知った彼女たちの実力は未知数だ。試験艦と魔法少女の盾で勝ちへと運ぶものか?」

「魔法少女同士での潰し合いは効果があるとキアラも知ってるでしょ?
それに試験艦は魔法少女対策を万全にさせたものだ。随伴艦がいる中で簡単に沈んでは困る」

「まだ詰めが甘い気がする」

降伏した魔法少女の中には国に忠実な人物がたくさんいるらしい。華々しく散ってもらおうじゃないか、お国のためにね」

私はため息をついた。

「イザベラもディアとあまり変わらないな」

「なっ!一緒にするな!」

私たちは一緒に会議室を出てそのまま拠点の玄関まで移動を始めた。

次の予定は魔法少女ではない異なった魔力を纏った少女との面会です」

「あの魔力が解明できないと彼女に予防注射もできないのよね。
あの謎の魔力、彼女を守るように注射器等の機器を破壊して来るけど脱走させようとしないのが謎よ」

「本人が望んでいないからじゃないか?」

ならば神浜と魔法少女について知っていることを素直に話してほしいのに」

あんな演説を見てしまったらこちらに不信感を抱くに決まってる。辛抱強く相手と向き合うのが交渉のコツだろう?」

「わかってるわ。

“サトリカゴメ“、今日は話してくれるかしら」

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-1-5 同じでは、ないです

2人は車に乗ってホワイトハウスへと向かった。ホワイトハウスの一室には神浜で保護された少女がいる。

その少女はどうやら魔法少女について調査していた人物と面識があるらしく、私たちの知らない魔法少女事情を知っているかもしれない。

本来であれば自白剤等の強引な方法をとっているが彼女に付き纏う謎の力によって一切手出しが行えない。

謎の力は魔力を帯びているというのは確かだが、魔法少女とは違った性質で未だに対策が行えていない。

そう、彼女が口を開いてくれるのを待つだけしかないのが現状だ。

ホワイトハウスへ到着したイザベラは少女がいる部屋の扉をノックした。

中にはホワイトハウスから提供された服に身を包んでお気に入りの人形を持っている少女が窓から外を眺めていた。

「かごめさん、調子はどうですか?」

「体調は、問題ないです」

「それは良かった。
それで、今回来たのはですね」

「…すみません、ひとつお願いがあるのです」

「私の言うことは聞かずにそちらがお願いして来るとは、随分と勝負に出たことをしますね」

イザベラは意識していないがイザベラの発言は他人から見たら不思議と威圧が含まれていて心を強く持つものでなければすぐに怯んでしまう。

かごめさんはイザベラの言葉を聞いて強張った顔をして壁際まで逃げてしまった。

「イザベラ、逆効果だ」

「ふんっ、つまらないお願いじゃなければ聞いてあげましょう」

”かごめちゃん、ほら勇気を出して“

「う、うん」

腹話術なのか知らないが、あの人形はよく喋る。どういう仕組みなのだろうか。

「キアラさんと、お話しさせてください」

「私とですか?」

「はい」

私はイザベラの方を見た。

イザベラは私とかごめさんを二回ほど交互に見てそのあと。

「立ち話で済む程度ならどうぞ」

「ありがとうございます」

「それで、私に話したいこととは?」

「キアラさんは、日本が好きですか?」

そういえば初対面の時、何も考えず同じ日本出身だと話していたか。

この質問は軽く答えてはいけない。ただ疑問に思ったからということだけなのかもしれないが、回答次第ではイザベラの機嫌を損ねる。

だからと言ってイザベラに配慮した回答をしてしまえばかごめさんはさらに心を閉ざしてしまうかもしれない。

意図を確認しよう。

「どうして、そのような質問を私に?」

「キアラさんは日本の人だから。出身の国がひどいことになっているのに、どうして平気なんだろうって思ったからです」

「私は人間側の存在です。魔法少女関連の問題が解決したら日本だっていつも通りです」

「同じ女の子が何もしていないのに、ひどいことをされているのに」

かごめさんはどんどん声が小さくなっていきました。

「同じでは、ないです」

しばらく部屋の中が静かになった後、イザベラが話し始めた。

「はいおしまい。キアラに同情してもらおうって思っても無駄よ。さて、今度はこちらのお願いを聞いてもらおうかしら」

かごめさんが身構えた時、持っている魔力センサーが反応して音が部屋中に鳴り響いた。

「こんなところに、どこから!」

かごめさんが何故かその場にしゃがむと窓の外から勢いのついた鉄塊が飛んできて窓際には大きな穴が空き、部屋の壁は貫通はしなかったものの大きく破壊されてしまった。

衝撃からイザベラを守るためにイザベラの上に覆い被さっていた私の腕には破片が刺さっていた。

「キアラ!」

「大丈夫です、これくらい」

土埃が晴れた先には窓際でかごめさんを抱える謎の人物がいた。

私は謎の人物を見ながら立ち上がった。

「魔法少女がよくここまで潜入できたな」

「お初にお目にかかります、真の大統領。いや、サピエンスの責任者様」

「何のことかしらね。それよりも、ここからタダで逃げられると思っているの?」

「アペ、刃となって!」

そう言って魔法少女はかごめさんを抱えながら炎の剣で切りかかってきた。

私が刀で応戦すると、触れた炎の剣は形を保てなくなって消えてしまった。
魔法少女はすぐに一歩引いた。

「なるほど、アンチマギアと同じか」

「あなた、魂を3つとは変わった体をしてるわね。そのうち誰かしら」

「イザベラ?」

「人間なのに、それとも、もうやめているのかねぇ」

「今すぐここで投降し、仲間と共に人類側へ膝をついて平和的に争いを終わらせようとは思わない?」

「残念だが話し合いで解決すると思うほど我々の考えは甘くない。人間と魔法少女。価値観、倫理観、社会体制すら相容れない存在同士が和解できる可能性など、とっくにこの世界では死んでいる」

「知ってたさ。一応紳士的態度を取ったまでのこと。私もこれっぽっちも和解できるなんて思ってないさ!」

少女は腕から糸を出すと勢いをつけて窓の外へと逃げ出した。

「逃がすな!」

外に待機していた警備隊が魔法少女へ発砲するも、謎の力で持ち上げられた車が警備隊を襲った。

魔法少女は魔力反応を感知させることなく近くの川へと向かっていたが、イザベラが放った一射が魔法少女の足を止めさせた。

「動くんじゃないよ、私はそこら辺の一般人と比べてお前たちを捕えやすい。魔法の反応だってすぐに感知できるから小細工しようとしたらすぐわかるわ。
無駄に動かずこちらにソウルジェムを渡しなさい」

「知ったことか!」

魔法少女は魔力で鉄塊をこちらに飛ばしてきた。

イザベラは鉄塊を避けて魔法少女に向けて発砲した。

「バカ、やめろ!」

かごめさんに当たるリスクを考えろ!

発砲すると予想したのか、魔法少女はかごめさんを前に出した。
すると不思議な力によって銃弾はかごめさんの前で勢いを失ってそのまま地面へと落ちた。

「悪いねイザベラさん、決着がつくときにまた会おう」

そう言って魔法少女はかごめさんを抱えながら川に飛び込んだ。

「魔力反応が検知しずらい。でも河口付近で待てばいい。
各自河口付近で張りなさい。偵察ヘリは川底で動く影を追い続けるように」

「再度魔力反応を検知できました。でもこれは」

上空のヘリから映された映像には川の奥深くを泳ぐ首長竜の影が見えた。

「魔法少女の能力は一つから派生したものしか扱えないと聞くが、体感した限りだと4つでもすまないぞ。何だあいつ」

しばらく川を下っている様子を見ていると、急に眩い光が周囲を包んで、消えた頃には首長竜も、魔力反応も跡形もなく消えていた。

「そんな、どこにもいない!」

「思い出したわ、あいつはヨーロッパで報告があった魔力を感知されない魔法少女だろう」

「それって、聖女ワルプルガの遺体を持ち去ったという」

「突然消えた原理はわからないけど。

う、少し気分が悪くなったわ」

「私も少し、気分が悪い」

私とイザベラは駆けつけた救護班の手を借りながら被害の受けていないホワイトハウスの部屋へ移動した。

何故いきなり具合が悪くなったのかわからないが、心の中に黒い何かが流し込まれたかのような感覚だったのは確かだ
後から知らされたが、川周辺にいた人たちは私たち同様に急に気分が悪くなるという症状があったらしい。

部屋で横になっているイザベラは、ホワイトハウスへ襲撃してきた魔法少女の言葉を振り返っていた。

“人間と魔法少女。価値観、倫理観、社会体制すら相容れない存在同士が和解できる可能性など、とっくにこの世界では死んでいる”

「ふっ、そうだな。大昔から、とっくに和解関係なんて死んでいたさ。

面白い奴がいるじゃないか、魔法少女にもさ」

イザベラは自分の過去を振り返りながら悲しみを含めた笑みを浮かべていた。

 

 

私を連れた魔法少女はヨーロッパのある場所へとワープしていた。
魔法少女は慌ててグリーフシードを取り出し、ソウルジェムを浄化した。

「いやぁよかった、ポンベツカムイと一緒に拠点に現れるかと思っていたよ」

「お望みならすぐここをぶっ壊してもいいよ」

「怖いこというなよカレン。でもすごいね、地球を一周するような距離をフィラデルフィアのコイルで移動できちゃうなんて」

「この聖遺物の燃費が悪いのは知っていたからな、穢れを周囲の人間に流し込めたからこそ無事だった。普通の魔法少女が使うとフィラデルフィア事件の二の舞だ」

私は何を言っているのかわからなかった。でもカレンと呼ばれる人のことは知っていた。
自動浄化システムを世界に広めるために動いていた三人組のうち一人。

「その子が魔法少女について調査していたという少女かい?」

もう1人私たちがいる部屋へ入ってきた。

「そうさ、案外あっさり連れ出せたよ」

「この子が抱えるウワサにこちらの状況を実況されたらたまったものじゃない。助かったよカレン」

「いいってことさ。私はこの後予定通りオーストラリアに行くよ」

「悪いね、でもあれはカレンたちがいないと動かせないものだから」

「わかってるさ。移動のためにフィラデルフィアのコイルはこのまま借りていくよ」

「ええ、全部終わったら返してね」

「はいよ」

そう言ってカレンさんはその場から姿を消してしまった。
この空間にいる2人はグリーフシードを取り出してソウルジェムを浄化していた。
もしかしてここにいる人たちみんな、魔法少女なの?

先ほど部屋に入ってきた魔法少女は私の前に膝をついて目線を合わせてきた。

「あなたがかごめさんだね、カレンから話は聞いているよ。
私はここを取りまとめるミアラという者よ。安心して、ここには魔法少女しかいないから」

「えっと、どうも」

「あなたをしばらく保護させてもらうわ。最終的にどう扱うかは、あなたが魔法少女になるかどうかで決めさせてもらうわ」

魔法少女にならなかったら、何をされるの?

「あなたたちは、一体」

「私たちは人間の軌跡を破壊し、魔法少女が中心の軌跡を産もうと考えている者たちの集まり。
簡単にいうと、人間が生み出したものをすべて終わらせる存在よ」

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-1-3 ほんと、おぞましいものだ

米国 大統領による演説当日

 

米国内は新たな大統領選が始まるのかというくらいの認識で大勢が演説会場へ集まっていた。

テロリスト対策に配置された数十人の兵士に囲まれながらも、民衆は演説台に上がった大統領を見て歓声を上げた。

大統領は歓声を止める合図とも言える右手をあげて民衆を見渡した

歓声が鳴り止むと、演説が始まった。

そして演説が始まると同時に世界各国、あらゆる放送電波が何者かにジャックされ、全てが米国大統領の演説に切り替わった。

”私は、世界を揺るがす事実を伝えると同時に、国連へ新たな提案を行うために今皆様へお話ししています。

皆さん、この世に魔法と呼ぶものがあると思いますか?

アニメや漫画といったフィクションにしかないと思う方も、オカルトだと思う方、そもそも存在しないと思う方もいるでしょう。

私は断言します。

この世に魔法は存在すると!“

演説台を取り囲む民衆は突然魔法という言葉を使い始めた大統領を目の前にしてざわつきを抑えきれなかった。

そんな中演説会場に用意されたモニター、そして世界中のあらゆるテレビやモニターには神浜で起きた惨劇の映像が流れた。

”実は我々の身近には既に魔法が存在していたのです!

これは私の気が狂ったわけではありません。

今みなさんにご覧いただいている映像は日本 カミハマシティにて発生した化け物の大量発生した様子を我が国の兵士が持ち帰ったものです。

見れば見るほど現実とは思わず、作り物だと思い込んでしまうでしょう。

否!これはフィクションではなくノンフィクション!

私自身もこの化け物と対峙し、その存在を認識しました。

その存在は、身近ところに潜んでいるというのが事実なのです!“

ざわつく演説会場で突然二つの叫び声が聞こえ、その叫び声を上げた少女達からは化け物が飛び出し、演説会場は二つの魔女の空間が混ざった状態で包まれた。

民衆達が逃げ惑っている中、大統領は演説を続けた。

“なんてことだ!こんな大事な時に目の前で発生してしまうなんて!

実はこの化け物に対して魔法少女と呼ばれる存在が日々、排除活動を行なっているのですが、果たして助けに来てくれるのだろうか。

護衛にいた兵士たちの銃弾では歯が立たない!

どうすればいい?!”

そう話した後、魔女の結界へアンチマギアを武装した集団が侵入し、使い魔と魔女へ攻撃をはじめた。

その攻撃は勿論効果があり、兵士たちは民衆の保護を始めた。

“あれは我が国の兵士。私がこの事態を予想して準備してきた武装を彼らは用意してくれたのです。”

2体の魔女はあっさりと倒され、周囲は普通の風景へ戻った。

“急な出来事で民衆へ被害が出てしまいましたが、もう安心してください。

このような事態へならないよう、私は化け物へ対抗するための案を用意しています。

それは、「アンチマギアプログラム」です。

アンチマギアプログラムでは先程の化物へ対抗できる武装の開発と量産を行う許可を下す法案と、その量産体制を整える権利を各国へ与えるものです。

もう一つは、化け物の発生原因である魔法少女という存在の捕獲、そしてその魔法少女という存在をこれ以上増やさない計画の実行許可です。

みなさんの身近に、非現実だと思われた存在が現実に存在したということは認識してもらえたでしょうか。

もし、アンチマギアプログラムが世界で実施されるようになりましたら、世界中の皆様も、どうか協力をお願いします。“

 

米国大統領の演説を、サピエンスのメンバーは4人揃って眺めていた。

テレビに映る様子を見ていた中の1人が話し始めた。

「とんだ茶番劇だね、こりゃ」

「ディア、あれは国連の頭が固い連中を説得する上で最適な方法なんだよ。
人には被害が出たが、かえって現実味が伝わったでしょ」

「頭の固いやつは見るだけじゃ意見変えないって。そんなことより私は実験に使えたはずの二名が魔女化して普通に処理されたことが気に食わないの」

「あら、あの時は渋々OKを出したじゃない」

「まあ、そうなんだけどさ。やられ方が普通過ぎる。
なんかこう、新たな倒すための手段がひらめくような状況になればと思ってたけど。普通過ぎる」

「あなたにとっては普通でも、このパフォーマンスによって世界は魔女を脅威と錯覚してくれるはずよ。魔法少女については、少し印象が薄いかしら」

「カルラ、キチンと魔法少女を魔女にしたじゃないの」

「あれが魔法少女だって認識がみんなできていたらの話よ。

まあいいわ。魔法少女は歴史を改変するって点はおいおい印象付けるとしましょう」

「ええ、電波ジャックの件は助かったわ」

 

世界には強引にも魔法少女の存在が知れ渡り、わたしの理想が叶うところまできた。

米国大統領の演説が終わった後、国連ではアンチマギアプログラムの議案が提出され、あっさりと可決された。

世界は魔法という概念が実在するという認識が半信半疑で広がっていき、女の子、と呼ぶくらいの女性達は化け物へと変わってしまう魔法少女ではないかという疑心暗鬼も広まっていった。

見た目で魔法少女かどうかなんて判断できない。

そんな中でアンチマギアプログラムには魔法についての予防接種を受ける義務を与える内容も含まれている。

予防接種を受けると首元にバーコードが刻まれ、予防接種を受けた者はキュゥべえや魔法少女が使用しているテレパシーを受信できなくなる。

魔法少女かどうかの疑心暗鬼はこの予防接種を受けたというバーコードで解消されていくだろう。

では、既に魔法少女となっている者達はどのような処置が行われるのか。

アンチマギアプログラムが国連にて可決されてから3日後、各地に散った工作員達へ指示を与えるために私はペンタゴンの地下にあるサピエンス用の施設へ来ていた。

そこで無線を使用して工作員達へ指示を出した。

「もうじき作戦時間だ。これより、魔法少女掃討作戦、作戦名「魔法少女狩り」を開始する。

いいか、これは虐殺するための作戦ではない。

担当区画の魔法少女達を拘束し、決められた保護施設へ収容するのが目的である。相手から降伏を申し出てきた場合は丁重にもてなして拘束せよ。

また、ヨーロッパにはアンチマギアをかいくぐる存在がいると確認されている。

見た目は少女だと油断せず、魔法少女を逃さず拘束せよ。

以上!作戦開始!」

私の合図で世界各地で魔法少女狩りが実施された。

工作員達は手渡された魔力探知機を使用して魔法少女の居場所を突き止め、家族が一緒にいた場合は国連命令として拘束した。

抵抗する者には武器の使用が許可されており、無理やり拘束を行った。

拘束された魔法少女達はソウルジェムへ細工が施され、ボタン一つでソウルジェムが破壊されるようになってしまう。

しかし、下手に抵抗しなければ管理区画内に限って人並みの生活を送ることができる。

拘束される際に抵抗が激しかったり、かつて国へ大損害を与えた魔法少女については…。

こうして魔法少女狩りが実施されて3カ月が経過した今、魔法少女狩りの進捗は芳しくなかった。
演説が行われたころから国内のほとんどの魔法少女が国外へ逃げ、ヨーロッパの一部とカミハマシティは予想外に魔法少女の捕獲が失敗という結果になった。潜入した工作員が誰一人帰ってこなかったのである。

他の国でも魔法少女の捕獲は成功したものの全員ではなくどこに潜伏したのか行方知らずの魔法少女が多い。

そんな中、魔法少女によるヨーロッパの武器庫破壊が発生した。

 

計画がうまくいかない中、サピエンスの実験施設には武器庫破壊のリーダー格である魔法少女が放り出されていた。
放り出されている空間は真っ白な鉄壁に囲われていて、高いところには内部をモニタリングするための部屋が用意されている。
見た目は真っ白な部屋だが、ここでは何人もの魔法少女が実験のために殺されてきた。

「あんた達の中心人物について教えてくれれば、あんたの部下の命が犠牲にならずに済んだのにさ。
部下よりも自分の命が大事かい?」

「捕まった時点で死んだも同然さ。それにしったところであんた達がドウコウできる問題じゃない!」

尋問していた研究員が銃弾を一発、魔法少女の左足へ撃ち込んだ。

魔法少女は痛む様子がなく、血が流れ続ける左足を見て困惑していた。

「アンチマギアの濃度を上げた弾薬だ。

肉体の感覚と魔力が遮断されるまでの間隔が短すぎて痛覚も機能しなかっただろう?

気づかずに死んでいたっていうのは、ちょっと優しすぎるかな?」

尋問する研究員は魔法少女の周りを歩き出した。

「武器庫破壊が行われた際、他各所でもアンチマギアが納められている施設が襲撃されて大打撃を受けたって聞いてるんだけどさ。

それって、世界に顔がきく魔法少女界のドンが存在して、みんなに指示を出してるってことだよね。

そいつらのせいか、魔法少女狩りも進行度的によろしくないのよね。

仮に教えてくれなくても、少しは抵抗してくれないかな?

これ一応実験中なんだけど」

「何度聞いても同じだ。わたしは知らないし、一思いに殺してくれても構わない。

抵抗するのがお前の望み通りになるのであれば、わたしは抵抗もしない」

「つまらないねぇ」

研究員は躊躇なく魔法少女の頭を一発撃ち抜いた。

撃たれた魔法少女は糸が切れた人形のように力なく横たわり、ソウルジェムに穢れが溜まっていった。

研究員が魔法少女のソウルジェムを回収するために魔法少女の手首へ手を伸ばした。

するといきなりソウルジェムからアンカーが飛び出してきた。

ソウルジェムから伸びる鎖に繋がったアンカーは研究員の腕輪が光った後に出た赤紫色の結界を破壊し、そのまま真っ白な実験部屋の壁へ研究員を叩きつけた。

研究員の腹部はえぐられ、周囲には血が飛び散っていた。

アンカーを持った魔法少女はソウルジェムを濁らせながら糸で操られた人形のように壁を破壊し出した。

実験部屋の外では研究責任者が殺されたと慌てふためく研究員達がいた。

そんな中、実験部屋で暴れる魔法少女を見ても、殺された研究責任者を見ても落ち着いて様子を観察していたもう1人の研究員がいた。

「毎度のように慌てるんじゃありません。わたしが対処するのでみなさんはデータ整理をお願いします」

「わ、わかりましたカルラさん」

カルラと呼ばれる研究員は実験部屋の扉へパスワードを入力して扉を開いた。

カルラはすぐに砲身が細長い銃をアンカーを持つ魔法少女へ撃ち込んだ。

物理的な弾ではなく、レーザーのような単発銃はアンカーを持つ魔法少女へ弾を秒間1発の間隔で命中させた。

銃撃を受けたアンカーを持つ魔法少女は再び動かなくなった。

カルラは針が4本内側についた球体を取り出し、アンカーを持つ魔法少女のソウルジェムを球体の中に入れて閉じた

4本の針はソウルジェムへピッタリとくっつき、微弱な電波のようなものを発していた。

ソウルジェムが球体に入れられた後、アンカーを持つ魔法少女は完全に動かなくなった。

「実験中断。研究員各位はクローン体を介した遠隔操作、痛覚麻痺弾薬、及びシールド技術の実験データの整理と解析を行ってください。

ソウルジェム隔離実験はディアの代わりにわたしが引き受けます。

掃除班への連絡も忘れないように。

以上。各位次のステップへ移ってください」

指示を出し終えたカルラは実験室を出てある部屋へと向かった。

部屋へと向かう道中、カルラはそこらへんで売っていそうなタバコに火をつけて少しだけ気分を落ち着かせた。

カルラが向かった部屋にはガラスケースのような蓋がついたベッドに横たわる実験室で死んだはずの研究責任者が眠っていた。

カルラはベッドの装置へパスワードを入力するとガラスケースが上方向に開き、内部の冷気が周りに溢れた。

中にいた研究責任者は少ししてから目を開いてむくりと起き上がった。

「視覚的観測だが、魔法少女が魔力を放出してからシールドが発動するまでにラグがあった。

シールドの強度以前に発動が遅れてシールドが発生し切る前に殺されていた。

とはいえ、クローン体も労ったらどうだ、ディア」

「何をいってるのさカルラ。クローンを遠隔操作できただけで十分な実績じゃないの。死んだ時の感覚は若干残ってるけど、まあ想定よりも痛くなかったし」

「相変わらず倫理観皆無な考えで安心したよ。そのクレイジーはあまり周りに醸し出すんじゃないよ、クローン体だって知っていても慣れない研究員は大勢いる。
それに、私個人としてはディアは死んでも大丈夫な存在だとあまり思われてほしくない」

「なんと言われようとわたしは変わらないよ。
さて、私はイザベラに会ってくるよ」

「なんだ?殴られにでも行くのか」

「んなわけあるか!」

ディアが部屋を出て行った後、私は部屋を見渡した。

ここにくる前からディアはクローン技術について優秀ではあったが、行き過ぎたクローン技術は恐ろしさしか感じない」

ディアが寝ていた部屋の壁には培養槽が敷き詰められていた。

培養槽には成長しきったディアのクローンからまだ胚のクローンの姿があった。18個あるうちの17体が生体となっていて目を閉じて水の中であるにもかかわらず呼吸している。

「ほんと、おぞましいものだ」

カルラはポケットにしまっていたソウルジェムを閉じ込めた球体に異常がないか確認した後、クローン部屋を後にした。

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-1-2 さあ、これがあなたたちがフィクションだと嘲笑ったものですよ

神浜にて魔法少女が魔女のような姿になって街の人間を全て殺戮するという事件が起きた。

この出来事は日本からSNSにて世界に発信された。

世界では何が起きたのか分からずに面白がる人間しか出なかったが、これを機会に動き出そうとしている組織がいた。

神浜での異変が起きるまでに魔法少女について様々な報告を国連へ密かに行っていた組織の名前はサピエンス。

サピエンスは魔法少女を人間が管理し、その力を人間の未来に役立てるという名目のもとで動いている組織である。

そんなサピエンスの中心人物であるイザベラは国連の秘密部屋で国のトップたちを集めてある提案を行っていた。

「レディ、君たちには今までに起きた不可解な事件のレポートをもらっているが、こんな非科学的な事に付き合わせる我々の身にもなってくれないか

「あら?日本の神浜市という場所で起きた異変について世界中で騒がれているにもかかわらず、ロシアのお偉い様はあれもフィクションだと思っているのですか」

魔法などというアニメや漫画でしか存在しないものを現実に持ち出されてもねぇ。神浜という場所で起きた事件は、里見という人物が密かに行っていた実験が原因だとも噂されている。
神浜にあった実験室が原因で起きたバイオハザードが原因だと言った方が民衆は納得いく」

「では、我々の兵士たちが命懸けで持ち帰った現場の映像を見ても、神浜にて起きた異変がフィクションだと言えるでしょうか」

イザベラはモニターの電源を入れて用意していた映像を再生した。

その内容は、異変が起きている最中に生存者を保護するために立ち入った兵士が残した映像だった。

映像は激しく揺れながらも、人のような人物から出ている大きな化け物が人々を喰らっている様子が映っていた。

中にはアニメのような魔法によって燃やされる兵士もいて、撃った銃弾は化け物を傷つけてもあまり効果がない様子が目にとれた。

しかし。

「よくできたCG映像ですが、これのどこがノンフィクションだと?」

イザベラはため息をついた後、集まっている5ケ国の代表者たちの顔色を伺いました。

米国大統領以外、イザベラの目を見るものはいませんでした。

「そうですか。

まあ、聞くより見る方が早いとも言いますし、実際に体験してもらいましょうか」

そうイザベラが言うと、イザベラはポケットから穢れが満ちそうなグリーフシードを取り出します。

「なんだねそれは」

「これはグリーフシードという、先ほど映像で見てもらった化け物が生まれる卵です」

「そんなものがあるはずが」

イザベラはロシア代表の声を聞くことなくグリーフシードを卓に力強く突き刺した。

その途端に、周囲には魔女空間が広がっていき、5カ国の代表者もそこに巻き込まれます。

「何が起きているの?」

「それに、何か動くものがいないか?」

それは勿論、魔女の使い魔です。

「イザベラ!危険な場所に連れてくるとはどういう気だ!」

「安心してくださいジェームズさん、彼らが認識してくれればすぐ対処しますよ」

「何かあってからじゃ遅いんだよ!」

「まあまあ、誰も死なせる気はありませんよ。四股が十分に残っているかは別ですが」

そう言ってイザベラは困惑している4カ国の代表者たちに話しかけます。

「さあ、これがあなたたちがフィクションだと嘲笑ったものですよ。フィクションだとしたら、なんの害もないはずですよね?」

「何を企んでいるんだレディ!早く私たちを解放しろ!これ以上の愚弄は国際会議に」

そう言いかけた中華民国の代表者の目の前には小さなタコのような生物が現れます。
その生物は可愛い目を中華民国の代表者へ向けて口を大きく開き、中華民国の代表者の親指を食べてしまったのです。

周囲には叫び声が響きわたります。

「おかしいですね?フィクションなら怪我をするはずがないのに。

これがフィクションではなく、ノンフィクションだとお気づきになりましたか?

もし理解してくれたのであれば、私に泣いて懇願してください。助けてあげますから」

「なんて奴だ」

「どうやら私たちの認識が甘かったようですね」

「ふざけた真似を!私は認めないぞ、こんなこと!」

「キアラ、彼らに銃を渡してあげて」

私はバッグに入っていた4つの拳銃を4カ国の代表者へ地面を滑らすように渡した。

「状況を理解して私側につくという方は銃を取らずに私の方へ、私をこの行いを機に死刑にしたいと思っている方はその拳銃を握って自力で脱出してください」

フランス、英国、米国の代表者はイザベラの方へ向かい、中華民国とロシアの代表者は拳銃を手に取ります。

「ふん、お前たちの力がなくたって」

2人の代表者は使い魔へ向かって発砲しながら出口を探し始めます。
しかし銃弾では使い魔を怯ませることしかできていませんでした。

我々が普段使用している薬莢に火薬を含んだだけの弾丸では化物へ有効打を与えることができません」

イザベラの方へ向かってきた使い魔たちへ私はバッグの中にあるm16a1を出して使い魔たちに弾丸を放ちます。

その銃弾を受けた使い魔達は生き絶えて消えていきました。

「でも、我々サピエンスは化け物に対する特攻兵器の開発に成功しています

私はイザベラへ銃とカートリッジを渡し、リュックを背負った後に対魔女用の剣を抜刀します。

「さて、わからずや達を助けてさっさと脱出しましょう」

3カ国の代表者はイザベラへついていくしかありませんでした。

自分で抵抗しようとしていた2カ国の代表者は弾薬が切れて、使い魔から逃げるという手段しか取れていませんでした。所々かじられて血が出てもいます。

使い魔達は群がって2人の代表者を捕食しようとしていたところ、イザベラの銃弾が使い魔達を貫きます。

「な、なぜ奴らに攻撃が効いている?!」

「サピエンスが開発した対化物兵器ですよ」

私は近づいてくる使い魔を剣で斬りつけながら代表者達を守っていました。
イザベラは、最初は付いてこなかった代表者二人に手を伸ばします。

「さあ立ってください。さっさとここから出ますよ」

座り込んでいた2人の代表者は渋々イザベラの手を取って立ち上がります。

イザベラ達はセンサーを元に魔女へと続く扉を探していき、2階層ほど進んだ先で雰囲気が変わりました。

そこにいたのはマンタのような姿をした魔女でした。

「レディ、あれを倒せばここから出ることができるのですか?」

「そうですよ。まあ私たちに任せておいてください。
キアラ、彼らの護衛はよろしく」

「了解」

イザベラは魔女の方へ走っていき、魔女の周りを走りながら閃光弾を撃つための銃へ特殊な弾丸を込めて魔女へ向かって放っていきました。

特殊な弾丸は魔女へ当たる前に爆発して、周囲には赤紫色の粉が撒き散らされます。

イザベラは手に持った銃で使い魔を追い払いながら合計4発の特殊な弾を放っていました。

4発撃ち終わった頃には魔女の動きが鈍くなって、使い魔ともに地面へ降りた状態となっていました。

「化物の動きが鈍くなっている?」

「あれはアンチマギアという成分を周囲へ振り撒いた結果です。サピエンスが発見した対化物兵器の一つで、化物の動きを鈍らせることができます」

そう話しながら私は剣で元気な使い魔達の相手をしていました。

「では、その剣も?」

「ええ。アンチマギアが練り込まれた金属で鍛えられた剣です。イザベラがあれを倒すまで、私が必ずあなた達をお守りします」

イザベラの方はというと、魔女へ銃弾を浴びせながら致命傷となる場所を探していました。

粉を浴びた使い魔はついに動かなくなったものの、魔女はマンタの目となる場所から伸びた触手へエネルギーを溜めてイザベラへビームを放ちます。

イザベラは素早くかわし、魔女の背後まで円を描くように走り抜けました。

イザベラがビームを放った触手へ銃弾を当てると魔女は苦しみ出します。

「なるほどね」

イザベラはカートリッジを入れ替えて魔女の腹部分で無数に垂れている触手へ銃弾を浴びせました。

「your only place is hell!(お前の居場所は地獄だけだ)」

触手が破裂するほど魔女は苦しんでいき、全ての触手が破裂した頃には魔女が粒子となって消えていき、魔女空間は空間を歪ませながら消えていきました。

私たちが戻ってきたのは、机が真っ二つに割れた状態の今までいた会議室でした。

「キアラ、応急処置を」

私がバッグを下ろして2人の代表者へ応急処置を行う時間は、各代表者達の思考を整理する時間でもありました。

応急処置が終わった頃にイザベラが話し出します。

「今みなさんに体験してもらったのは、私が資料で報告していた化物がノンフィクションだという事実、そして対抗手段はサピエンスしか持っていないというもう一つの事実です。

ここまで見聞きしたことを踏まえて、まだ我々が虚言や戯言を言っていると思う方はいますか?」

5人の代表者は皆揃って首を横に振りました。

「ではやっと本題です」

イザベラはバッグ内に潜めていた小さなアタッシュケースを開くと、そこには小さな試験管に赤紫色の液体が入ったもの4本と分厚い4冊の書類が入っていました。

「ここには化物へ有効打を与える成分「アンチマギア」のサンプルとアンチマギアについての説明、加工方法を記した資料があります。

これらを無償で提供します」

「でもそれは、あくまでサンプル。量産のためにはそのサンプルを、もしくはその原料を手に入れる必要があるかと思いますが」

「そこで取引です。実は量産のための培養槽を既に用意していて、培養方法はお渡しする資料へ記載してあります。

培養槽とある程度の素材をお渡しするのは、我々が兼ねてから計画している「魔法少女狩り」の全国実施許可と民衆への魔法少女予防薬の摂取義務化の議決を可決させることが条件です」

「それで常任理事国である我々を呼んだわけか。それで、そのアンチマギアとやらはビジネスになる話なのか?」

「それは勿論。魔法少女狩りの実施が可能となったら、我々はアンチマギアが含まれた武器を常任理事国ではない各国へ一式をおよそ50万ドルで提供しようと思っています」

「少々良心的ではありますな」

「各国に渡ってほしいという考えも少しはありますから。

その基準価値を参考に、各国は素材量、培養槽増産や研究費といったものを見積もって経済を動かしてもらえればと。

それに、少し大ごとになれば武器生産も回りますから」

「それもそうだな」

「魔法少女は先程の化物と違って知恵があります。
早めに議決に向けた動きをとっていただければ、魔法少女狩りに向けた準備期間もふんだんにとれるでしょう」

「して、君たちの行いたい魔法少女狩りと予防薬摂取にはなんの狙いが?」

「魔法少女は将来、あの化物となります。

今のうちに化物となる前の魔法少女を全員確保し、化物となった際の被害を最小限にするため。

そして、そんな魔法少女になる前に、魔法少女にさせない対策を行うことでこれ以上の化物の発生を防ぐという狙いがあります

それに、人類史をなかったことにされる可能性も減らせます」

「では、そのアンチマギアという物質のビジネス効果は一時的だな」

「案外長引いてしまうかもしれないですよ。

世界からテロリストを完全殲滅できないくらいくらいにね」

この後、中華民国とロシアの代表者が傷を負って会議室から出てきたことが国連内で少し騒動になったが、2カ国の代表者が騒ぎ立てないでほしいと説明したことで表沙汰になることはなかった。

こうして魔法少女狩り、魔法少女予防薬摂取の義務化という話は裏で各国へ糸が引かれていき、2ヶ月後に行われる米国大統領の演説が行われるとともに議会に提案、そのまま議決までのシナリオが決定した。

この2ヶ月の間に4カ国へアンチマギアの培養槽が提供され、専用の兵器ラインの開拓と戦車や戦艦といった大型兵器の転用実験が裏で行われるようになった。

これが世界が変わる引き金となる、魔法少女狩りがおこなわれるまでに起きていた裏の出来事である。

 

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魔法少女まどか☆マギカ外伝マギアレコード 2年間の総評とその後についての考察

みなさんマギアレコードは楽しくプレイできていますでしょうか。

第二部がスタートしてストーリーが不定期公開されるようになりましたが、評価はよいものといえず、Twitter上ではマギアレコードへの不満を吐き出すプレイヤーが増えてきています。

第二部へ入らずともそのようなプレイヤーがいましたが、第二部に入ってからは目立つようになってきたと感じています。

 

 

各プレイヤーの意見の統計を取り、そこから総評を練り上げるのが正しい方法ではありますが、生憎、多くのプレイヤーが使用しているコミュニケーションサイト、公式の運営が用意した意見交換所のような掲示板が存在しないことから、すべてのプレイヤーの意見を汲み取るのは不可能に近いでしょう。

今回はマギアレコード2年間の総評と今後について考察していきたいと思います。
考察とは言え、何かを数値的に導き出したり統計を取るというわけではなく、あくまでネット上に出てくる情報を収集してそれらについて分析を行った結果について述べるだけです。

このページの内容を通して、見ていただいた方のマギアレコードの見方を見返す機会になれたら幸いです。

 

※ここから記載していくのは管理人の私見が含まれていきます。あくまで一個人の意見として見ていってください。

 

0.あらすじ

魔法少女まどか☆マギカ外伝 マギアレコードは2017年8月22日に正式リリースされたスマホRPGで、原作となる魔法少女まどか☆マギカとは違った時間軸の物語としてストーリーが展開されていきました。
物語りは無事に第一部が完結し、第二部が進んでいる最中です。
ちなみにシナリオはf4シナリオチームが担当しているようで、外注を行っているという様子は見られません。
(外伝シリーズイベントの際は各外伝の作者が監修として携わっています)

魔法少女まどか☆マギカを題材としたうえでスマホRPGとして長期運営するうえでネックとなるのが魔女化の問題。
グリーフシードが入手できなければ魔女化確定というハードコアな設定の中、魔女化によるキャラの退場を回避するために「ドッペル」というオリジナルの仕組みが導入されています。

ドッペルは神浜市にいる限り、魔女とはならずドッペルを発動することでソウルジェムが浄化されるというものですが、ドッペルを使用した際のリスクがあるとされているため物語内ではグリーフシードは引き続き使用されています。

これによってキャラは戦闘でソウルジェムが砕かれない限りは生き続けられるという設定を獲得し、クリスマスや夏祭りといった季節イベントを気軽に展開できる理由づけもされています。

自由度の高い物語を展開できるようになったマギアレコードでは軽く2周年を迎え、かつて存在したまどか☆マギカオンラインの運営期間を超え、3周年を迎えようとしています。

 

1.マギアレコードに対する不満

リリースしてからの運営を行う期間が長くなるほどゲームへの不満が募るのは必然です。その不満への対処として正しい方法というのは、統計をとってゲームバランスを考慮したうえで修正し、アップデートを行うというのが最低限失敗しない対応方法だと思われます。

ここからはマギアレコードの各システムに対する不満とこれまでに運営が行ってきた対応内容について振り返っていきます。

1.1 ガチャシステムに対する不満

スマホRPGにとって必ず発生するのがガチャシステムに対する不満です。
物語中に発生するバトルでは初期配布の環いろは以外の魔法少女は限定配布以外はガチャをまわさない限りバトルで使用することができません。また、ガチャでは魔法少女を強化できる「メモリア」というものも入手できます。

もちろんガチャをまわすための通貨が必要であり、マギアレコードでは「マギアストーン」がガチャをまわすための通貨として存在しています。
マギアストーンはストーリーを進めることと、ストーリークリアの報酬としてもらえるチケットで引くことが可能ですが、リアルマネーをつぎ込むことでマギアストーンを増やしてガチャを引くことも可能です。

マギアストーンの価格については1個につき11~13円で大量購入するほどお得となっています。
・1085個 ¥11,500 1個につき約10.60円
・37個  ¥490          1個につき約13.24円
まとめ買いしたほうがお得!

ガチャをまわす際には25個のマギアストーンが必要となるため、
ガチャ一回は約300円使用することとなります。

このガチャシステム、実装当初はいくら回してもめったにお目にかかれない☆4魔法少女が手に入らないという天井なしの沼ガチャ状態でした。

これによってピックアップされている☆4魔法少女を手に入れたくても200回、300回とガチャをまわしても手に入る様子が見られないという不安が募り、マギアストーンをお金で購入するいわゆる「課金」を躊躇する、または後悔するプレイヤーが多く誕生することとなりました。

この状況に対して運営が行った対応というのは天井の実装です。
他のガチャシステムにはあまり見られないという天井は当時多くのプレイヤーが喜びの声を上げました。
マギアレコードの場合の天井というのは、どのガチャ(恒常、限定ピックアップ)でも100回引いたら確定で☆4魔法少女が手に入るというものです。
さらには各魔法少女の排出率の数字が公開され、驚きの排出率の低さに驚きを隠せませんが、引く側の負担を減らそうという試みは見え隠れしています。

とはいえ☆4魔法少女の排出率はガチャを引く際の演出によって誤差があるようですが、実はこれ無いに等しいようなもの。
演出を引くのも実際に☆4魔法少女を引く際と同じくらいお目にかかれず、通常演出では驚異の0.00975%、たとえ☆4確定演出が出た場合でも0.9756%という100回引いて1体出ればいい方という値です。

さらには☆4魔法少女の母数も大きくなっているため、狙った魔法少女はピックアップが行われない限り30000円払って天井まで回すというのはかなりハードルが高いものとなります。

この渋いガチャシステムに対してさらに運営が行った施しというのが、デスティニークリスタルの実装です。
これは、☆4魔法少女と4回出会う(完凸した)あとにまた同じ魔法少女と出会った場合に交換できるものなのですが、デスティニークリスタルが5個たまると好きな魔法少女と1回出会う権利がもらえます。

☆4魔法少女の排出率が低い割に魔法少女がかぶることが多いマギアレコードではデスティニークリスタルの存在は地味にうれしいものです。
仮に500回やってすべてすり抜けて完凸魔法少女のかぶりが発生したとしても確定で狙った魔法少女と出会えると言葉で言われればお得ですが、500回までに支払う金額は150000円。
あなたは手取り給料をすべてつぎ込む覚悟があるか?

第二部がスタートしたころにはピックアップガチャを引くと調整やコインというものが1回につき1枚もらえ、300枚たまると好きな魔法少女と交換できるようになっているのですが、これでも90000円コースとなるためよっぽどねらい目な魔法少女でなければ身を滅ぼすことになりかねないです。

ちなみに限定☆4メモリアは☆4魔法少女のような救済処置がないので頑張って当てましょうという状況です。

 

ここまでマギアレコードのガチャシステムとこれまでに行われてきた改善事項を上げてきました。
ほかのガチャ要素があるゲームはあまり知りませんが、いずれは臨んだ☆4魔法少女が手に入るというのは少しは希望が持てる仕様ではないでしょうか。

さて、このガチャシステムですがちゃんとバックストーリーが存在します。
ガチャシステムによって排出される魔法少女は調整屋で紹介された、または出会った魔法少女という設定があります。
そんなの誰が言っていた、というのはメインストーリー第一部 第一章でみたまがさらっと言っています。魔法少女が排出される確率は、リアルに見知らぬ人と出会う確率に等しいというわけです。

そんな設定いらない、さっさとほしい魔法少女を完凸させろというプレイヤーの声は少々傲慢が過ぎます。

ガチャシステムが課金前提の渋さとなっている原因は、基本プレイ無料としているため運営へ入るお金を集めるタイミングがガチャシステムにしかないことが原因です。
これはどのガチャシステムを採用しているゲームにも言えますが、ガチャでしかお金を集められない場合はプレイヤーがガチャをまわさないような魔法少女を実装しようとはしません。
キャラクター性能のぶっ壊れが蔓延るようになるのはこのような原因が起因していると思われます。

プレイヤーがガチャをまわしてくれないと運営を行うことができない、ガチャを回るためにはプレイヤーの求めるようなキャラクターを用意して実装するしかない。

単純な運営であればこの思考へと陥って、最終的にはゲームのコンセプトを見失ってそのままサービス終了に陥るだけです。

ぶっ壊れ性能のキャラがどんどん出てくる、物語を無視するような、まどか☆マギカというコンセプトを見失うようなミラーズで使えることだけ重視された魔法少女だけになっていくようになれば、
私は正直、プレイヤーの思考がゲーム性を悪くしたといってもよいと考えています。

 

プレイヤーがガチャをまわす動機としては昨今では”ミラーズで優位に立てるから回す”が目立ちます。

キャラクターがかわいいから、物語で気に入ったからという動機でガチャに手を出す人、3割もいないのではないでしょうか?

それに加えてガチャに多い不満では”キャラクターが出ないからクソゲーム”という傲慢しかない不満です。

お金がかかわるガチャをまわすのはプレイヤーの責任です。
今ではピックアップされている☆4魔法少女は前にも触れている通り、天井が実装された上にデスティニークリスタルで交換するチャンスがあり、さらには調整やコインで入手するチャンスがあるという大盤振る舞いにもかかわらず、それでも不満を漏らします。

確かに有り金をつぎ込んでどうしても欲しい魔法少女が出なければ誰でもへこみます。しかしこれは確率が絡むものなので、縁がなかったとしか言えません。

プレイヤーへのおもてなし精神で排出率を増やしてくれ、マギアストーンの価格を安くしろというのであれば、そうまでしてくれるほどマギアレコードを支援する必要があるのです。

ゲームの運営はプレイヤーがお金を落としてくれなければ行えません。

もしこのゲームが好きだというならば、少しでもプレイヤーが運営へ支援する姿勢を見せていく必要があるのです。
自己責任でガチャをまわした結果に対してそれだけでクソゲー呼ばわりするのは”お客様精神”が過ぎる傲慢な態度であることを認識してください。

 

1.2 バトルシステムに対する不満

バトルシステムに対する不満はストーリー等で行われるバトルと、ミラーズバトルの2種類があります。

 

1.2.1 ストーリー中に行われるバトルシステムについて

マギアレコードのバトルシステムを簡単に説明します。

マギアレコードのバトルは自分と相手のターンが切り替わりながら進んでいくターン性バトルとなっていて、次の一手をどうするか考える時間を設けることができます。
戦闘に参加している魔法少女それぞれに5枚の攻撃ディスクが割り振られていて、自分のターンでは参加している魔法少女のディスクの中から5枚ランダムで選択できるディスクが確立で選出されます。そのディスクをさらに3枚選択し、相手へ攻撃を行います。

他にも魔法少女の潜在スキル、メモリアというものをつけることで使用できるスキルを使用できるほか、MPを使用して発動できる必殺技枠に該当する「マギア」、そして超必殺技の位置にある「ドッペル」が使用できます。マギアとドッペルはディスク1枚分として使用することとなり、スキルはターン酔いがない限り自分のターン内で使用することができます。

 

各魔法少女が使用できるディスクには以下の3種類があります。

・アクセル:攻撃時にMPの獲得量が他のディスクに比べて多く、1枚目に選択すると2枚目、3枚目のディスクはMPを獲得できるようになる、または獲得量が増えます。敵1マス分にしか攻撃できません。
アクセルディスクを3枚使用した場合:アクセルコンボとなってすべての魔法少女へMPが20与えられます。

・ブラスト:縦、横どちらかへ3マス分すべてに攻撃できる唯一の手段です。しかしMPを獲得することはできません。
ブラストディスクを3枚使用した場合:ブラストコンボとなって攻撃時のダメージが増加します。

・チャージ:チャージディスクの攻撃を行うためにチャージが溜まり、たまったチャージ数に応じてアクセル、ブラストを使用した際のダメージ値が増加し、アクセルに関しては獲得MP量も増加します。敵1マス分にしか攻撃できません。
チャージディスクを3枚使用した場合:チャージコンボとなってチャージ数が+2されます。

また、同じ魔法少女のディスクを3枚選択した場合はピュエラコンボとなって全ディスクの与えるダメージ量が増加します。

コネクトという仕組みもあり、コネクトはある魔法少女のディスクが合計3回使用されたことをトリガーとして他の魔法少女へ固有の能力を分け与えることができる戦術の一つです。

ここまで戦闘要素の基礎部分を簡単に記載しましたが、これらの情報以外にも敵と味方の属性有利、スキル効果、アビリティ効果の把握、ターン数管理と考えるほどきりがない戦術がたくさん存在します。

このバトル要素は慣れるまで時間がかかり、ストーリー中のボスでもしっかり魔法少女を育てなければ勝ってないような難易度の場所も存在します。
ストーリーを進める上では魔法少女の育成も大事になっていくということです。

このバトルシステムについての最初の不満が、周回効率の悪さです。
プレイヤーはずっとスマホに張り付いてできる人がいればちょっとした時間内でササっと終わらせたい人と考え方はそれぞれです。

そんなプレイヤーの声に対して運営が対応したのは「オート機能」と「倍速設定」の実装です。

オート機能はそのままの意味であり、プレイヤーが操作しなくてもAIが自動で戦闘を行ってくれます。
最初の頃はマギア、スキル、コネクトの使用タイミングを指定することはできませんでしたが、最近になって詳細に設定できるようになってさらにスピーディに周回を行うことが可能となっています。
さらには初回オートとされる機会も増えていて、基本的にバトルは勝手に行ってくれる流れが出てきています。ちなみにオート機能は任意にON、OFFができます。

倍速設定は2倍まで設定することができ、最近は3倍速の試験的運用が行われました。実は戦闘中モーションは通常スピードではかなりゆっくり進むため、正直等倍速でバトルを行うとバトル終了までかなり時間がかかります。
等倍速は凝ったモーションを見るため、マギアやドッペル演出をじっくり見たい人向けとなっています。

さて、周回効率をよくするために様々な改善が行われていますが、周回の効率化はストーリー進行をスピーディにするため、魔法少女強化のための素材集めを効率的に行いやすくするためというプレイヤーにとってストレスフリーになる改善ばかりです。

ここまでやるならいっそのこと、バトルの途中経過自体バッサリとカットして結果だけ表示という形にすればよいのではないかと考えるプレイヤーもいるようですが、それはもうバトルシステムがいらないという暴言に等しいです。

気持ちはわかりますが、オート機能でも負けるバトルは負けてしまうので、負ける原因を分析するためにも時々オートバトルの様子は見守るようにしましょう。

 

次に出ている不満が、特定ディスクコンボだけでごり押しできるゲームシステムはよくないという不満です。

ごり押しできるディスクというのはアクセルとブラストです。

アクセルの場合はアクセルディスクコンボばかり狙ってMPを溜め、全体マギアで敵を蹂躙するという流れで高難易度クエストが終わるという問題です。

ブラストの場合はブラストディスクコンボでダメージ量がアップするだけでなく、ピュエラコンボによるダメージ量アップも上乗せされた状態でほぼすべてのマスを蹂躙して高難易度クエストを終わらせるという問題です。

これらに共通するのは「最短クリア」であり、敵の攻撃が痛いならば攻撃させる前に終わらせればいいというプレイができてしまうことによって起こる問題が出てきています。

それは、チャージディスクがいらない子となる状態となっていたことです。
チャージディスクは1、2回使用した後に別ディスクで攻撃してもそれほどダメージ量、MP獲得量が上乗せされません。
また、チャージという名前がついている通り、真価を発揮するにはターン数がかかります。
「最短クリア」を重視するプレイヤーが多い中でチャージディスクが不憫な扱いをされれば、チャージ特化した魔法少女も不憫な扱いをされることとなり、バトルへの使用率に格差が生まれる結果となり、それは今後実装される魔法少女にも響きます。

このバトルシステムの状況に対して対策が行われた結果、チャージ後ダメージアップというスキルが実装されただけです。

これはどのプレイヤーもすぐに実感できる改善ではなく、どのみち真価を発揮するためにはターン数を要するディスクに変わりはありません。

しかし、チャージ後ダメージアップというスキルが登場したことにより、チャージコンボ後のブラストコンボで恐ろしいほどのダメージを相手に与えるという戦術が行えるようになってチャージディスクの存在意義は一応あります。

実はチャージディスクは精神強化でチャージディスクのダメージアップに使用されている名前の通り、テクニカル要素が絡むディスクです。

使うプレイヤーによって有用になったり、腐ったりするディスクということです。
バトルの回数を重ねればだいぶ把握できるようになっていきますが、相手が防御を高めてきてダメージが通りにくいターン中はチャージを溜めて、相手の防御上昇効果が切れた際に大ダメージを与えるという使い方ができるとわかってきます。

攻撃を与えても無駄なターンを有効活用できるのがチャージディスクの良い点なのです。

チャージディスクをうまく活用できないプレイヤーが多いのか、いまだに不憫さはぬぐえきれず、よっぽどとがった特徴がない限りチャージタイプの魔法少女は不憫な扱いをされています。
運営側でできることは、もう十分にできているのではないでしょうか。

 

 

次にバトル要素に不満があるのは、バトルモーション、演出に対する不満です。
可愛さ重視のためか、戦闘中は2.5頭身のキャラが動きます。戦闘モーションも単純ではなく、凝った演出がかなり多いです。これはたくさんの魔法少女をバトルに参加させれば実感できます。

しかしそんな中でもバトルモーション、演出へ不満が出ています。
中にはみんな似たようなモーションだと不満を出すプレイヤーがいますが、それはおそらく特定の魔法少女しか使用していないからそう思うだけの的外れな不満です。

中には攻撃モーションが遅い魔法少女もいますが、最近になって高速化されたり、☆5覚醒によってモーションが改善されるという修正が行われています。
☆5覚醒することでモーションが速くなるという変化は、経験を積んで戦いの立ち回りがうまくなったという経緯も感じられて魔法少女の成長を実感できます。

正直言ってマギアレコードのバトルモーション、演出は文句の出しようがないです。
これでも不満があるという人は、格闘ゲームだけやってればいいんじゃないでしょうか。

 

 

1.2.2 ミラーズバトルシステムについて

ミラーズのバトルシステムは特にプレイヤーの不満が集中します。

ミラーズバトルは他プレイヤーが用意した魔法少女チームと戦うモードです。
リアルタイムに戦い合うわけではなく、あくまで相手はAIです。

ミラーズのバトルはストーリー中のバトルとは違って「最速クリア」に重点が置かれた特殊な仕組みに入れ替わっています。

まず違うのが、スキルは初手から使用できずターン酔いが発生している状態からスタートします。4-6ターンのクールタイムがあるスキルは3ターン目から、7-8ターンのクールタイムがあるスキルは4ターン目から使用できるなど、スキルの使用できるタイミングが特殊です。

そんな中で2-4ターンで勝負が決まるミラーズバトルにとって4ターン以降にしか使用できないスキルは「役立たず」とプレイヤーに認識されています。

また、ブラストコンボが猛威を振るいやすいバトルシステム上、縦横マスに全員並ぶようなT字や十字の陣形も「役立たず」とプレイヤーに認識されています。

さらには精神強化による潜在能力、アタック値やマギアの扱いやすさがキルタイムの速さに直結しない魔法少女は「役立たず」とプレイヤーに認識されています。

このように、魔法少女やメモリア、陣形はミラーズバトルを中心とした考え方で「役立たず」とプレイヤーに認識されているのが現状です。
このようなプレイヤーの認識はガチャシステムにも影響していて、「ミラーズで使えそうにないからパスで、ミラーズでぶっ壊れだから完凸させる」という思考が今後実装される魔法少女に追い風となってしまうのです。

ミラーズで使われなければガチャをまわしてくれないという思考を運営へ刷り込んでしまった場合、せっかく個々人に設定があるにもかかわらず設定を無視したぶっ壊れキャラだけになるという結果を招きます。

ガチャを回す、回さないの判断は個々人の自由ですが、「ミラーズで使えなければガチャは回さない」という考えが如実に出てしまうとこのゲームを滅ぼす結果を招いてしまうことは心のどこかに留めておく必要があります。

ミラーズバトルがクソといわれる大きな原因は、ミラーズランキングというものがあることです。
ミラーズランキングでもらえるものは称号だけですが、何よりもまず勝てないというのがクソクソ言われる原因です。

ミラーズバトルの性質上、純☆4魔法少女、限定魔法少女、限定メモリアが完凸前提という廃課金と豪運のプレイヤーが勝ちやすい傾向にあります。また、ランキング上位に行くためには「最速勝利かつ、最多コネクト数」が必要となってくるのもまたミラーズバトルに嫌悪感を抱く要因となっています。

2~3人の魔法少女で「最速勝利かつ、最多コネクト数」で勝利するという理論値まで導き出されてしまい、タスクキルに近い状況でした。
しかもそれができるのは、限定ガチャの魔法少女やメモリア、純☆4魔法少女が完凸していることが前提です。
そのため使用される魔法少女も特定の魔法少女だけになるという現象が発生し、自由度がなくなっていました。

運営へたくさんお布施をしたプレイヤーが報われるという思考は間違っていません。大金をつぎ込んだ見返りとなっているわけですから。
しかし、微課金や無課金プレイヤーへ逆転のチャンスがない点がないため格差が生じてしまっているのが事実です。

純☆4魔法少女、限定魔法少女やメモリアなしでミラーズに挑んでもAランク帯が限界です。Sランク帯は現状不可能に近いでしょう。

 

そんな格差が大きすぎるミラーズランキングへは大幅に評価ポイントの見直しが行われ、「最速勝利かつ、最多コネクト数」だけでは上位に食い込めないよう修正が行われました。

この修正が行われると、次はアクセルコンボが火を噴き、「最多コネクトかつ、最多マギア・ドッペル数」が上位になるというどのみち格差が縮まる結果とはなりませんでした。

この格差が埋まらない理由は、「ターン数ボーナス」が存在しているためです。
純☆4魔法少女と☆5昇格魔法少女とではステータスに差があり、バトル勝利までのターン数”キルタイム”にどうしても差が出てしまいます。

ターン数ボーナスがなければ永遠とダラダラバトルを続けて最多コネクト数、最多マギア数に到達した途端にHP回復できる全体マギアで〆ればだれでも理論値というものへは到達するでしょう。

しかしこれでは競技性が失われるのでターン数ボーナスが設けられているのでしょう。

こうして格差が埋まらずに今日までのミラーズランキングが開催されてきました。
使用魔法少女のレアリティが低いごとに勝利ボーナスが上乗せされるという仕組みを設けない限り、廃課金者へ微課金、無課金者との格差は埋まらないでしょう。

 

ごもっともなことを言うとミラーズバトルを熱心にやる理由はガチャチケット入手意外にほとんどないため微課金者や無課金者はこだわらない限りミラーズバトルに関わらないのが無難でしょう。

ミラーズバトルに勝てないからクソゲーという人は、ミラーズバトルに関わらず他の要素で楽しむことをオススメします。
それが嫌ならば廃課金者になるか、バトルロワイヤルゲームだけやってればいいのではないでしょうか。

 

1.3 シナリオに対する不満

マギアレコードのシナリオ全般はf4samuraiのシナリオチームが担当しています。
外伝物のコラボの際には外伝作者の監修を受けますが、外注でシナリオライターを雇っているわけではないようです。

物語には魔法少女まどか☆マギカの本編の時間軸から外れた世界で展開されていく円環の理の影響を受けていません。

実はこの時点でシナリオに対する不満が発生しています。

それは、魔法少女まどか☆マギカの続編物として期待していたがそのようなわけでもないというところです。
眼鏡をかけた状態の暁美ほむらが出てきて何週目の時間軸なのか、円環の理が作用していないのはおかしい、叛逆の物語の後はどうなったなど続編に思いを寄せるプレイヤーが望んだものではないということで不満が出ているのです。

そこから発展して悪魔ほむらが出ることのみ期待してストーリーに興味を示さないプレイヤーも多いです。

実は円環の理とのつながりはアルティメットまどかの魔法少女ストーリーを見るか、アルティメットまどかが実装された当時に流れたスペシャルのイベントを読まない限り誤解したままマギアレコードの物語を読み進めていくこととなります。読んでも理解できない、受け入れられないのであれば今後も誤解をしながら不満を募らせるだけです。

少し物語を理解する姿勢がなければ、少し物語を飛ばしただけでなにをやっている物語かわからなくなります。
また、イベントストーリーをメインストーリーとつなげて考えようとすると絶対繋がらない箇所が出てきます。これも各ストーリーを熟読して人間関係を理解しなければ誤解したまま進みます。
中には”あったかもしれない”の考えであるイベントストーリーが存在します。
神浜市年表のように、”あったかもしれない”のイベントストーリーを切り捨てない限り間違いなく矛盾だらけでまとまることがないでしょう。

この、ただ見るだけではストーリーを把握しにくいのが単純な理由でストーリーに不満を持つプレイヤーが多い理由なのでしょう。

残念ながら魔法少女まどか☆マギカ同様、少し考えながら見ないと何をやっているのかわからない物語構成です。物語を見て苦にしか感じなかったプレイヤーは、おそらく今後のストーリーも肌に合わないと思うので文句を言わずに退くことをオススメします。

 

 

さて、そんなストーリーですが第二部に入ってからの不満が特に強くなっています。それは、原作組が出なくなったことと、理由の分からない妬みで神浜マギアユニオンへつっかかってくるプロミスドブラッドの存在が影響しています。

まず原作組がメインストーリーへ参加してきたのは第3章あたりからです。
それまではアナザーストーリーで顔出しさせていたので最初からメインストーリーに登場しているかのような錯覚を起こしていましたが、実際は物語が三分の一進んでから登場しているので、今後出てくる見込みはあります。

この原作組が何をしているのかわからないという不安は、いろはがメインストーリーの中でまどかへ連絡を行う描写を少し入れるだけで今後メインストーリーに関わってきそうという期待をもたせることができます。
第3章が終わるまでは辛抱強く見守りましょう。

 

さて、第二部の物語ですが、キモチのブレスレットを集めるという、第一部のウワサ調査のように淡々と何かを探すことが初期の目的となっています。
第二部から違うのは外部の勢力が”理解しがたい理由”で邪魔をしてくることが問題なのです。
プロミスドブラッドはマギウスが行った周囲の町にいる魔女を集める行為の影響を受けたメンバーであり、そのせいで自分たちのテリトリー二木市で魔法少女同士の殺し合いを行っています。

仲間同士で殺し合わせた苦しみを神浜へも思い知らせるというのがプロミスドブラッドの大きな目的であり、神浜にある魔女にならないシステムを手に入れるのは二の次となっています。
さらには知略のある振る舞いをするにもかかわらず、魔女にならないシステムを奪った後にも争いが生まれ、仲間が死ぬリスクを高めているという予想をしようとしないこともプレイヤーの理解を苦しめる要因を作っています。

 

理由も話さず、一方的に恨んで殺しにかかるだけでなく相手を理解しようとしないというのは人間らしい思考ではありますが少なくとも感情移入はできません。どんな凶悪な敵を作り上げても、アリナのような”すがすがしいほどの邪悪”か”信念を理解できる悪役”でない限りストーリーの害としかなりません。

 

本来であればバックストーリーとなるもので”信念を理解できる悪役”へ持っていけるはずが、二木市の内部紛争が治まった理由は神浜へヘイトを変えただけのその場しのぎにしか見えないことも悪影響となっています。

この第二部の展開に対するプレイヤー不満はごもっともであり、この路線があるからこそ結末で劇的に良作といえるような展開が行われなければ駄作と判断されてプレイヤーが離れていくことでしょう。
しかしまだ第二部は始まったばかりなので今後の展開を温かい目で見守りましょう。

プレイヤーの不満を少しでも和らげるため、メインストーリーの進行は定期更新にしたほうがプレイヤーも期待できるので良いと思います。

 

1.4 他機能に対する不満

他の機能面について不満が多いのはアプリの容量です。
2020年の6月時点でマギアレコードのアプリ容量は8GBほどあります。もはやこれは並のスマホではまともに扱える容量ではなくなっていて、この容量が大きすぎることを理由にマギアレコードをやめてしまうプレイヤーが多いです。
しかし、幸いマギアレコードはPCでも操作できるようになっているためスマホでできないならばPCでプレイするという道があります。
PCがなければ、やめざるを得ないでしょう。
ここまでアプリの容量が大きくなっている理由として、約3年間のデータが蓄積されているだけでなく、LIVE2Dのデータ、ボイスデータといったクオリティを上げるためのデータが多いのも理由です。
ボイスデータの読み込みを拒否すれば5GB程度まで抑えられるかと思いますがそれでも多いというのが正直な感想です。

この容量が大きい問題はマギアレコードではなくFGOも同等程度の容量を食うのでマギアレコードに限った問題ではありません。

今後も容量が増え続けるのは必至なので、スマホにこだわらない限りはPCでのプレイを視野に入れたほうが良いと思います。

 

育成関係の不満としては、原点の器が課金者限定の品となっていることが不満として挙がっています。
原点の器は、精神強化をリセットできるというものであり、これが気軽に使えるようになれば戦術に応じて精神強化のラインを工夫するという戦術も生まれてきます。スキルポイントを使用するゲームの中にはこのリセットを気軽に行えるようにして、バトルの環境変化へ対応しやすいよう配慮されることがあります。

マギアレコードのこのリセットできる品が課金前提というのは悪手であり、プレイヤーへの不満が募るのもごもっともです。
今後は精神強化のできる数が拡張されるという話もあるので、精神強化項目をリセットしやすい環境づくりは大事だと思います。
課金しなくても入手できる方法として、ミラーズコインの報酬にしておけばバトル重視のプレイヤーは喜んでミラーズに挑むことでしょう。

 

2.総評

マギアレコードに対する約2年間の総評としては、第一部完結までは良作といって間違いないでしょう。

魔法少女まどか☆マギカというバケモノタイトルへの期待をあまり裏切ることなくプレイヤーを満足させて完結させたことはとても良い成果です。
また、少しでもプレイヤーの不満、負担を軽減させるような取り組みが熱心に行われていたことも高評価できるポイントです。

プレイヤー側の質としてはあまり良いものではないと感じました。
「お知らせを読まないモキュ」と言われるまでは優しいものですが、何かと因縁づけてクソゲー呼ばわりするプレイヤーが一定数いるのは残念だと思いました。

大抵それらの発言は少し考えれば、工夫すれば終わるだけの話が多いためプレイヤー側の努力が足りないのは残念なことです。

細かいところを見れば運営の努力不足な点もありますが、アニメ化もされて第二期の予定があるあたり、マギアレコードは今後も安泰でしょう。

 

3.今後のマギアレコードについての見解

第二部に入ったマギアレコードですが、公開できるストックがなくなったかのように評価が下がるような行いが目立ってきています。

ストーリーの内容、新要素の内容や新鮮なものが展開される間隔など荒い部分が出てきています。4月頃から始まった新型コロナウィルスによる影響も考えられますが、復刻が目立ったりと新鮮さに欠ける期間が長いと感じることが多いです。
新OPが公開されたことで多くのプレイヤーのモチベーションが高まった点は大成功ですがそのモチベーションが維持されることはありませんでした。

外伝コラボのストックも無くなってきている中、かずみマギカは作者との折り合いができずにコラボイベントを開けない(実際、かずみマギカの絵師が担当したオリジナル魔法少女だけが存在しない)、おりこマギカのイベント自体がないなど、外伝に頼ったイベント展開が難しくなってくる頃です。

まどか☆マギカらしくない要素を毛嫌いするプレイヤーが多い中(アザレアイベントの際に如実にその傾向がみられた)、今後どのように外伝コラボに変わるイベントを展開するのか、制作側に期待です。

少なくとも、メインストーリーにこびりついた不満は早めに拭えるような展開を用意すべきです。そうでなければ、メインストーリーのせいでやめるプレイヤーが増えます。

 

今後の課題としては、メインストーリーの展開、外伝コラボがなくなったときの新しい立ち回りが重要となってくるでしょう。

 

運営もそうですが、プレイヤー側からもマギアレコードが好きならばフォローする立ち回りを行うことも重要です。
プレイヤーが良い内容で盛り上がれば運営もやる気が出ます。

お互いに気持ちを高めあい、マギアレコードが長く続いていくことを祈ります。

 

 

 

あなたはマギアレコードが好きですか?

【マギアレコード】 神浜市年表(ストーリーまとめ) 下巻

時間遡行のその先
誰もが予想しなかった繰り返しの連鎖から外れた特異なレコード
それが”マギアレコード”
レールを外れたその内容は日に日に不安定さを増し、いつ壊れてもおかしくないほど不安定な溝が刻まれてゆく

マギアレコードには

・主人公「環(たまき)いろは」を中心にしたストーリー「メインストーリー」
・アニメ「魔法少女まどか☆マギカ」5人に焦点を当てた「アナザーストーリー」
・各魔法少女に焦点を当てた短編ストーリー
・鏡の魔女の用意した結界で起きるストーリー
など数多くのストーリーが交差しています。そのため、どの話がどうつながっているのか、また、まったくつながりがないのかわかりにくくなっています。

ここでは、このわかりにくくなっているストーリーを年表としてまとめていきます。

☆4キャラのストーリーは、入手後に魔法少女ストーリーで確認を行うという調査方法のため、かなり後になってから明らかになるかと思いますが、ご了承ください。

※ネタバレについては気にしないという方のみ閲覧してください。

 

*caution*

この年表作成にあたり、マギレコ内で開催された季節イベント、コラボイベントはメインストーリーで触れられたもの以外記載しないことにします。

理由としては、メインストーリーの季節が不明であること(特にホーリーマミの「突然失礼」冬イベント)。季節イベントのストーリーは、IFの扱いとします。 下巻ではメインストーリースタート時点からの内容を扱っていきます。

 

  上巻(メインストーリーがはじまる前の過去)     

集結の百禍篇

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-7 黒いオーラの魔法少女

見滝原で出会った元黒羽根の子 黒さんに連れられて私と巴さん、なぎさちゃんは神浜への電車に乗っていました。

「なぎさちゃん、魔法少女だったんですね」

「この指輪に気づかないなんて、黒は魔法少女なりたてなのですか?」

「うぐっ」

「黒さん、緊急事態の詳細を教えてくれるかしら」

黒さんから伝えられたのは、シェアハウスしている友達が、黒い何者かに襲われてしまったとのことです。その友達を今はこれまた一緒にシェアハウスしている元白羽根の人が守りながら逃げている状況で、電話をかけてきた時も逃げている最中だったとのことです。

とっさに電話できたのが黒さんだけだったらしく、応援を呼んでほしいと伝えられ、今に至ります。

「電話が通じてるってことは、少なくとも使い魔や魔女ではないようね」

「なんでですか?」

「魔女の結界の中では電波が通じないのよ。結界を持たない魔女なんてワルプルギスの夜以外あり得ないでしょうし」

「じゃあ、襲ってくる黒い存在って」

「神浜の外から来た魔法少女、かもしれないわね」

「あのSNSで話題に上がった、外から来た魔法少女、なのかな」

鹿目さんがいろはさんへ連絡したときには特にそんな話題はなかったはずだけど。

やっぱり、今のままじゃ神浜の最新状況を知ることが出来ない。

急ぎたい気持ちとは違い、決まったレールを決まった時間で走り続ける電車に揺られ、神浜の西側にある駅で私たちは降りました。

駅のホームを出て10分ほど北側に進んだ裏路地に黒さんのお友達と思われる魔法少女が2人いました。

「欄さん!大丈夫ですか!」

「黒、来てくれたんだね。それに、巴マミと暁美ほむら!?」

「事情は後で話すわ。状況を教えてもらえるかしら」

欄と呼ばれている魔法少女の腕の中には、傷だらけになった1人の魔法少女がいました。呼吸はしていましたが、苦しそうに不規則なリズムで空気を吸ったり吐いたりしています。

もっと奥の路地裏でカオリが真っ黒な存在にサンドバックにされているのを目撃したのよ。ソウルジェムが壊されていないのが奇跡だった」

「その黒い存在って、何」

話していると急激に魔力の反応が二つ迫ってきました。二つの反応は私たちの前を横切り、私たちが入ってきた路地裏の入り口側に立ちはだかりました。

その魔力の反応は、まさしく

「出た。右側のやつが襲ってきたやつだよ。まさかもう一体連れてくるなんて」

「でもこの反応って」

「魔法少女」

見た目は黒いオーラを纏った感じで、オーラの端に行くほど赤色が目立っていました。

顔はとても苦しそうで、ソウルジェムと思われる宝石部分は真っ黒でした。

左側の1人が左手を高々と上げると腕はみるみるうちに大きくなり、泥のような見た目となった後、掌には一つの目玉が見開きました。

目を開くと同時に周囲には大きな衝撃が走りました。

「何よあれ」

「この魔力の迫力、まさかドッペル」

腕が伸びてきて、その腕は変身した黒さんを叩き潰してしまいます。

「黒さん!」

黒さんは苦しそうにしていましたが、再び立ち上がりました。

「この、返してよ!」

そういきなり黒さんが言うと、見覚えのある黒羽根が使用していた鎖を手のドッペルへと放ちました。

その先にあったのは黒さんがアラカル亭で買ったお菓子の袋でした

「黒さん迂闊よ!」

手のドッペルはそのまま鎖を掴んで黒さんを放り投げようとしました。

「黒!鎖を切れ!」

黒さんは欄さんの指示通りに鎖を手放したことで地面に叩きつけられることはありませんでした。

隣のもう1人の黒い魔法少女はと言うと頭を抱えながら苦しみ、その後はライオンのような外見になって襲いかかってきました。

私はとっさに時間停止を行いましたが、二体ともにドッペルを出しているだけでただの魔法少女。

足止めを考慮して足を不自由にさせるよう拳銃を撃ち込み、時間が動き出しました。

狙い通りに2発の弾丸は2人それぞれの太ももを貫通しました。2人はその場でもがき続けていました。

その瞬間に巴さんがリボンで拘束しようとしますが、手のドッペルを出している魔法少女が腕だけで前進してきてリボンの拘束を避け、欄さん目掛けて腕を伸ばしていきました。

「欄さん!」

「見つけたぞ食い物泥棒!」

見慣れた赤い鎖連なる矢先が手のドッペルを貫きました。

声のする方向を見ると、そこには佐倉さんがいてその後ろから美樹さんと、鹿目さんが追いかけてきました。

「マミさんにほむら?!こんなとこで何を。それにこの状況は一体」

「私だって聞きたいわよ。こっちは拘束するのに手一杯だけど、そっちの子はドッペルが治まったかしら」

「気をつけて!こいつらは何度もドッペルを出すよ!」

そう欄さんが言っていると、苦しそうに傷ついた左手を掴んでいた黒い魔法少女が再びドッペルを出しました。

「そういうことか。どうりで攻撃加えてもきりがねぇわけだ」

「鹿目さん、いったい何があったの」

「私たちは、神浜で買い物をしていただけなんだけど、いきなりあの黒い魔法少女が杏子ちゃんが買ったお菓子を奪っちゃってね。その後追いかけてきたの」

人様の食いもん奪っといてドッペルのせいだろうが容赦しねぇぞ」

「人のこと言えないと思うんですけど」

「うるさい!とにかく大人しくしやがれ!」

杏子さんは激しく槍で突き刺したり、多節棍の仕組みを駆使して打撃を与えていきますが、その攻撃のどれもがドッペルにしか当たらないようにしていました

激しく攻撃はしているものの、魔法少女自体への攻撃は避けているようでした。

相手が再びドッペルを引っ込める頃には二つの足で立ち上がっていました。

両腿にはしっかりと銃弾の跡が残っているのに、立ち上がっていたのです。

そして再び、ドッペルを出します。

「きりがない。もう、ソウルジェム自体を壊すしか」

「だめよ!殺してしまうのは一番だめよ!」

「んじゃどうすればいいんですか!こいつ、道中で一般人にも被害出してるんですよ。私やまどかで足や腕を不自由にするくらい攻撃してきましたけど、こうやって痛みを感じないみたいに何度も立ち上がってくるんですよ!」

ドッペルを出し続ける上に傷による痛みを顧みずに襲いかかってくる黒い魔法少女。

そんな正常じゃない状態を目前にして、私たちはどうしようもありませんでした。

「ならば私が動きを止めます」

そう言って黒さんは白羽根が使用していた光る長剣を手のドッペルを出している魔法少女の足へ突き刺し、その勢いで本体を鎖でグルグル巻きにして身動きを取れないようにしました。

「よし!」

しかし左手がフリーになっていた黒い魔法少女はドッペルを出して黒さんの目の前で目を血走らせながら大きく手を開いていました。

「黒!」

「黒さん!」

黒さんはとっさの出来事で身動きができていませんでした。

「ばっっかやっっろう!!!!」

赤い槍は伸びてドッペルを貫くと同時に胸元で黒く輝いていたソウルジェムも砕いてしまいました。

そのまま黒い魔法少女の変身は解け、口や目やらいたるところから血を流した少女だったものへと変わりました。

「なによ、これ」

巴さんが怯むとリボンの拘束が緩んで拘束していた獣の姿をした魔法少女が巴さんを引き裂こうとしました。

「マミさん!」

すると、遠くから緑色の光線が飛んできて黒い魔法少女は壁へ打ち付けられました。

「巴さん!すぐ拘束を行ってください!」

声の通りに巴さんは再び黒い魔法少女を拘束しました。

声の主人はかつて巴さんを調整屋へ運ぶ際に一緒だった魔法少女と、1人、2人、そして会ったことがある美雨さんがいました。

「まどかさん?!こんなとこで会うなんて」

「かこちゃん!?どうしてここに」

「私、チームで行動していただけですよ」

「ほむら、久しいナ。元気にしてたカ?」

「はい、美雨さんも元気そうで何よりです」

「あら、面識のある方が多いようですね。それよりも」

拘束された黒い魔法少女はなおも暴れていて、リボンがちぎれないのが不思議なくらいでした。

「常盤さん、これはどういうことですか。魔法少女がドッペルを出し続けるなんて。明らかにおかしいですよ」

「ええ、おかしいことです。私たちもついさっき目撃しましたから」

常盤さんが振り向いた先には魔法少女だったものがいました。

「あなたが、彼女を?」

「だったらなんだ、ああしなきゃこのちっこい黒いのが握りつぶされてた」

黒さんは腰を抜かして座り込んでいました。

「いいえ、正しい判断だったと思います。むしろ決断できたことに驚いています」

「ふんっ」

「ななか、この暴れてる子はどうする」

「気絶も苦痛も、説得も聞かないのであればソウルジェムを引き離すしか」

そう言って常盤さんが黒い魔法少女のソウルジェムへ手を伸ばしますが、触れた瞬間にソウルジェムが強い光を発しました。

常盤さんは慌てて手を引っ込めてしまいました。

「ななかさん!」

「大丈夫です。少し激痛が走っただけです」

常盤さんは一息つくと刀を抜きました。

「ななかさん?!」

「お覚悟を」

そう言うと、常盤さんは黒い魔法少女のソウルジェムを砕いてしまいました。

魔法少女姿が解けた後の少女の姿に、私たちはさらなる衝撃を受けます。

「このローブって、マギウスの翼」

「どういうこと、まさかまたマギウスが何かやり始めたんじゃ」

「あのガキどもが何かやり出したってか」

「杏子ちゃん、マミさん、決めつけは良くないよ」

「その通りです。現在マギウスの翼も、その残党も解散状態となっています。それに灯花さんとねむさんは定期的に環さん達と会っているので何かを企てるといったことはできないでしょう」

「それじゃあ、この黒い魔法少女はいったい」

「なにも分からずです。皆さんは黒い魔法少女を見かけたら関わらずに逃げてください」

「こいつらみたいのが、人を襲っていたらどうするのさ」

「その時は、人気のない場所へ誘導して逃げるのが無難です」

「それが無理なら」

「無理でもやってください。それとも、魔法少女を殺す覚悟でもお有りですか?」

美樹さんは黙ってしまいました。

黒い魔法少女を止めることは、ソウルジェムを壊すことだけ。

原因も、誰の仕業なのかもはっきりしません。

「私はこの件を神浜マギアユニオンへ持ち帰ります。私たちだけでは手に負えません。
私が魔法少女を殺したことについてはどうとも伝えていいですが、杏子さんについてはこの場だけの秘密としておきます」

「別に気にしちゃいねぇよ」

「では私たちは行きます。死体はそのままで構いません」

「まどかさん、また」

「うん…」

常盤さんたちはこの場を去っていきました。

私たちは場所を移動して、黒さんたちは家へと戻るとのことです。

私は黒さんへ自分の分のチョコレートを手渡しました。

「ほむら、これはあなたのでしょ」

「黒さんのお菓子取られちゃったし、友達に食べさせたかったんでしょ。受け取って欲しいな」

恐る恐る、黒さんは私の手からチョコレートを受け取りました。

「ありがとう、ほむら。またどこかで会おうね!」

そう挨拶を交わすと黒さんは欄さんと一緒に傷ついた仲間を抱えて家へと戻っていきました。

「さて、私は気分を晴らすために食い物屋にでも行こうかな」

「ならなぎさも一緒するのです」

「なんだ、お前もついてきてたのか」

「最初からいたのです」

「それじゃあ、佐倉さんおすすめの美味しいラーメン屋さんにみんなで行かない?

「「サンセー!」」

「うぉい勝手に決めるなよ」

「いいじゃんいいじゃん!杏子の分は私が出してあげるからさ」

「ち、なら仕方ねぇ」

「ちょろいのです」

「んあ??」

そう佐倉さんとなぎさちゃんが口喧嘩をしながら私たちは風見野へと向かいました。

今回体験した黒い魔法少女との遭遇今まで巡ってきたどの時間軸でも体験したことがない対処が難しい自体です。

殺すのは簡単。

でも、本当にそんな方法でいいのかが、私の倫理観が邪魔をしてしまい、どうすればよかったのかと悩み続けることとなります。

しかし、一つだけ確かなことは言えます。

鹿目さんを襲うというのであれば、

容赦はしない。

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-3 素直に、そして真っ直ぐに

「八雲!無事か」

「無事では、ないわね」

「ちょっと、これはどういうことよ」

調整屋さんは壁に二箇所大きな穴が開いて中は荒れた状況でした。

私はももこさん達に状況を聞きました。

「糸を使う魔法少女がみたまさんを襲った?!」

「ああ、最初は神浜を乗っ取ることを考えて襲いかかってきたかと警戒していたんだけど、話を聞いていると何も言い返せなかった」

「その魔法少女がね。みたまさんが調整する事は魔法少女を魔女化しやすくしているだけだって言っていたよ」

「ったく。神浜にいれば関係ないって言っているのに、その魔法少女全然聞かなかったのよ」

糸の魔法少女というのはおそらくカレンさんのことでしょう。

初対面した際も正論を聞かされましたが、今回襲った理由も実はまともな理由だったのです。

「確かに普段は使えない魔力を使用するのだから、魔力の消費は激しくなるわね」

「それは魔力の使い方の問題だ。消費を控えればいいだけのことだろう」

「えと、私魔力を控えるとか全然できなくて。むしろ控えちゃうと全然戦えなくて」

「かえでが魔法使うの下手なだけでしょ」

「レナちゃんだってアクセル全開でいつも武器を投げて回ってるでしょ」

「そのほうが早く終わるからに決まってるでしょ!」

「でもいつもグリーフシードの消費が多いの知ってるもん」

「それは、そうだけど」

「いろはちゃん、やちよさん。相手の言葉が正論に聞こえて何も言い返せなかった。守ろうとしてる側なのに何やってるんだか。ごめん」

ももこさん、レナちゃん、かえでちゃんはカレンさんの言葉に対して反論できなかったようです。

みたまさんはソファーの上に寝ていて、十七夜さんと話していましたが、とても暗い顔をしていました。

「十七夜、私はやっぱり、だれかを呪うことを願ってしまったからこうなってしまったのかしら」

「考え込むな八雲。神浜の魔法少女は救いになっている。それだけで十分だ」

「でも、でも!」

泣きそうなみたまさんへももこさんが後ろから抱きつきました。

「ちょっとももこ!」

「大丈夫だ調整屋。私たちだって、いろはちゃんだって、やちよさんだって、十七夜さんだって、レナやかえで、みんなみんなお前がいなければこの街の魔女と十分に戦えるようにはなっていなかったかもしれないんだ。
調整屋がいたから今の私たちがいるんだ。それが呪いだろうがなんだろうが、良かれと思ってやっていたんだろ。

だから胸張れよ。泣きたいなら、その間ずっとここにいてやるよ」

「ももこ…」

そのままみたまさんは、ももこさんの腕の中で小さな子どものように泣いていました。

そんなみたまさんを、ももこさんは真剣に受け止めていました。

「環くん、七海、少しいいか」

そう言うと、十七夜さんは外へと私たちを連れ出しました。

「今回の件、いくら手を出すなと言われても擁護しきれん。私は糸の魔法少女を探し、本心を聞き出す」

「それは危険すぎるわ。ななかさん達でも歯が立たなかった相手よ。それにその強さは十七夜も目の前で目撃しているはず」

「だから黙って行いを見過ごせと言うのか。神浜へ害を加えるようなら、私はただみるのではなく行動へ移すぞ」

「行動すると言うのであれば約束してください。まずは話し合おうとしてみてください。そのあと襲われたら、身を守るために戦ってください。相手に襲いかかると言う考えだけはしないようにお願いします」

「…心得た。無理はしない」

そう言って十七夜さんは調整屋の中へと戻って行きました。

「十七夜、ちゃんと理解してくれたかしら」

「大丈夫だと思いますよ。十七夜さんは無鉄砲な人ではないと知っていますから」

「いろはがそう言うなら、信じてみるわ」

やちよさんと話していると電話が震え、手に取ると画面には「ちゃるちゃん」と言う文字がありました。

ちはるちゃんからかかってきた電話は、今神浜に居るから確認したいことがあると言う内容でした。

ちはるちゃん達は以前スーパーで会った後に移動した広場にいました。会った時と同じように3人揃っていました。

「おまたせしました」

「お久しぶりです。えと、隣にいるのは誰でしょう」

「私の仲間の七海やちよさんです」

「よろしくね。静香さん、でよかったかしら」

「はい、よろしくお願いします。それで話なのですが調整屋についてです」

静香さん達は調整屋さんがカレンさんに襲われた際、ちょうどその場に居合わせていたそうです。その時にカレンさんから調整を受けすぎないようにと忠告を受けたそうです。

「カレンさんがそんなことを」

「そうなんです。だから真意を聞かせてください。調整屋を勧めたのは私たちの穢れを早くするためだったのですか」

「ちょっと静香。いきなりすぎます」

「答え方と内容によっては、関係を改めないといけません」

どうやら静香さん達は調整屋さんへ誘う行いが悪意のあることかどうか気になってしまったようです。ここで変に調整屋のことを擁護する言い方をすると、真実を伝えることができないかもしれない。

ならば。

「調整を受ければこの街で魔女と戦いやすくなるというのは事実です。でも、調整を受けることで穢れが溜まりやすくなるというのは私たちも知りませんでした。真実も知らずに安易に勧めてしまってごめんなさい。

だから、改めて伝えさせてください。調整を受けるのは自己責任でお願いします。穢れは早くなっちゃうかもしれませんが、神浜の魔女を倒すのが厳しいと思ったら調整を受けることを考えてみてください。

あと、調整を受けると静香さん達の記憶を覗かれてしまうのでそれも嫌なら調整は受けないことをお勧めします」

「嘘偽りは無いのですね」

「はい」

静香さんの目は力強く、会った時は平気だったのに今は怯んでしまいそうでした。しかしここで目を逸らしてしまうと嘘だと思われしまうかもしれないと思い、目を見続けていました。

静香さんはちはるちゃんを一度見て、そのあとちはるちゃんは笑顔で頷きました。

「ありがとういろはさん。ちゃんと真実を伝えてくれて。ちゃるが悪意を感じることもなかったし、今後も仲良くしていけます」

「良かったです。心臓がはち切れちゃうかと思いました」

「ごめんなさいいろはさん。静香がどうしてもっていうので」

「いえ、誤解が続くよりは全然いいです」

誤解が解けた中、やちよさんがちはるちゃんへ質問をしました。

「ちはるさん、もしかしてあなた相手に悪意があるかどうか見破ることができるの」

「見破るというか、嗅ぎ取るというか」

「ちゃるは魔法少女になってから人の悪意を嗅ぎとれるようになって、悪さを考えているとすぐに気づいてしまうんです」

「静香ちゃんが私が大事にとっていたプリンを隠れて食べようとした時も、ちゃんと嗅ぎ取ったくらいだからね」

「あれはちゃんと謝ったでしょ〜」

「ああ、思い出したらイライラしてきた!」

「もう、ちゃるも静香もやめなさい」

「完全に私は巻き添いよ」

話はそれてしまっている気がしましたが、3人の仲が良い事はよく伝わりました。

「話に戻っていいかしら。悪意を嗅ぎとれるって事は、カレンさんと会った時も嗅ぎとれたはずよね。どうだったか教えてもらえないかしら」

「その事なんですけど、実はそこから静香ちゃんの疑いが膨らんじゃったの」

「それってもしかして」

「そのカレンさんから悪意は全く感じなかったんだ。襲うようなことをしたのに悪意がないって、それはもう正義がある行いってことだよね。だから」

カレンさんがやったことに悪意はなかった。ちはるちゃんの能力が確かであれば、カレンさんの行いはどう見届ければいいのだろうか。

十七夜さんもなぜか雑念が多くて真実を読み取れなかったと言っていたし、話してみないとわからないことには変わりないようです。

「時間をとってしまってごめんなさい。そうだ、魔法少女の集会というのは近々行われるでしょうか」

「実は今日あったんですけど、次回がいつになるかはちょっとわからないですね」

「では今度空いてる日を教えますので、タイミングがあえば参加させてください」

「わかりました」

静香さん達と別れた後、わたしたちもみかづき荘へ向かって歩き出しました。

「あの子達が前言っていた協力してくれるって言っていた子達かしら」

「そうです。今回も話してわかってくれてよかったです」

「せっかくの外部からの協力者、ちゃんとみんなに紹介しないといけないわね」

「はい」

みかづき荘へ戻ると、なんだか雰囲気が重くなっていました。

「鶴乃、それにみんなどうしたの」

「ししょー、いろはちゃん、魔法少女のSNSを見ていなかったの?!ひなのさんが大変なんだよ!」

一難去ってまた一難。

私たちのわからないところで事件が起きてしまったようです。

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-2 度を越すということは

神浜市西側の廃墟へ店を構える調整屋には1人の魔法少女がいる。

その魔法少女は八雲みたまといい、魔法少女のソウルジェムをいじって普段は使えない魔力の領域を広げ、能力を強化するという調整の力を使用できるという。

神浜の魔法少女、および周囲の街の魔法少女は調整を受けているらしく、遠くから来た魔法少女へは強気に立ち振る舞える状況だという。

うまい話には裏がある。

調整のデメリットを聞くと神浜の魔法少女は恥ずかしい記憶を調整屋に見られてしまうと声を揃えて言っていた。

しかし私は調整を受けた魔法少女達に会って確信したデメリットがある。

果たしてこのデメリットは、ここまで放置され続けて来たことに疑問を隠しきれない。

確かめに行くしかないだろう。

調整屋のある廃墟を見ると、周囲の新しい建築物とは違ってレトロな雰囲気を醸し出していた。

建築途中の場所が多く放置されている現状を見ると、これも成長による代償の一部なのだろうと考えてしまう。

「すみません、誰かいますか」

薄暗い広い空間の壁一面に貼られたガラス細工の円形模様を背に、1人がこちらを向いていた。

「あら、見たことない子ね。もしかして神浜の外から来たのかしら」

「はい、神浜の魔法少女に来るといいって勧められて来ました」

「あら、遠いところ来てくれてありがとうね」

白髪の女性の髪飾りには見慣れた魔力を込めた宝石が見えていた。まさか、ここにいる間はずっと変身し続けているというのか。なかなかに不思議な考え方をしている。

「調整屋さんに来たって事は、ここで何ができるかはすでに知っている感じかしら」

「はい。魔力を強化してくれるけど、グリーフシードはちゃんと持っていくようにと伝えられました。代金として請求されるからって」

「丁寧に教えてもらったようね。調整屋さんの説明が省けて助かるわ。さ、調整を始めるからそこの寝台に寝転がって」

どうやら調整のデメリットは自分から話さないらしい。誰だって不利な事は口に出したくないだろう。

「すみません、調整って痛みを伴うのでしょうか。魔力を強化ってなにかしら副作用がありそうなのですが」

「あら、ごめんなさい。調整する時はね、あなたのソウルジェムに触れさせてもらうわ。
初めての子は最初に痛みが伴うかもしれないけれど、一瞬だから気にしなくてもいいくらいよ。あと、調整を受けた後は魔力が馴染むまで体が熱くなっちゃって具合が悪くなる子もいたわね。でもそれで今後の活動に支障は出ないから安心してね」

「そうですか、それくらいですか」

「ええ、それくらいよ」

調整の結果どうなるのか、理解しているかが疑わしい。しかしそんなことは関係ない。
調整屋は、いちゃいけないんだから。

「いけませんよ八雲みたまさん、デメリットを隠し続けるというのは」

「え」

私は糸で調整屋のソウルジェムを狙ったが、思った以上に素早い動きで避けられてしまった。

放たれた糸は周囲に散らばるガラクタの一つに当たってガラガラと音を立てて土煙が上がった。

「あなた、なんのつもり!」

「調整されて相手がどうなるか一部話した事は評価しよう。だが、記憶を覗くとなぜ説明しないか!」

次は調整屋の足元へ放射状に糸を放ったため調整屋の片足に当たってその場から動けない状態となっていた。

「そこまで知っていて、なんで襲うの。なにが目的なの、私を殺したってみんなに不利益を与えるだけよ」

「利益しか与えていないとそういいたいのか!」

「そうよ調整はみんなの利益にしかならないわ」

「そうか、そこまで自信があるならいいだろう。善人だと認識したまま逝くといい」

ドゴォン!

とどめを刺そうとすると近づいてきた魔力反応が私と調整屋の間に割って入った。

ガラクタが宙を舞う中にいたのは黄色の服装をした魔法少女だった

「ももこ!」

「悪い調整屋、緊急だから壁を壊させてもらったよ」

「別にいいわよ、それよりも」

ももこという魔法少女は武器を構えたまま私に問いかけてきた。

「調整屋を襲うってどういう事だ。事と次第によっては容赦しないぞ」

お前は神浜の外の魔法少女へ調整屋に行ったほうがいいと勧める口か」

「そうだが、それがどうした」

「ちょっとももこ!壁ぶち抜いていきなりどうしたって、これどういう状況よ」

「調整屋さん、もしかして襲われたの」

本来の出入り口に仲間と思われる魔法少女2人が到着し、状況は挟み込まれている。退路は作る以外方法はない。

「お前達は魔力強化を受けた結果どうなるか考えたことがあるか」

「魔力が強化されたら、そりゃ魔女を倒しやすくなるでしょ」

「普段使えなかった魔力を使うんだ。魔力消費が増えるとなぜ考えないんだ」

「この街には魔女がたくさんいるし、この街にいれば魔女にはならないから気にする事はないじゃないか

やはりその回答か。この街の魔法少女は「この街」を中心にして物事を考えているようだ。予想通りで残念だ。

「そうやって神浜の外から来た魔法少女へ説明する気か。調整を受けたら神浜に居続けろとそういいたいのか」

「そこまでは言っていないだろ。戻りたいなら自分の街に戻るのは自由だろ」

「魔力消費を激しくしておいて、お前達は神浜の外の魔法少女を魔女化させたいのか!」

「そうとも言っていないだろう!」

「なんで考えないんだ、この調整屋は、魔力をいじって魔女化しやすくしているだけだということを」

「な!」

三人は何を言っているのか分からない顔をしていたが、調整屋だけは何か気づいたかのような顔をしていた。

「言いがかりも大概にしろ!調整屋はみんなを魔女にしたくてやっている事じゃない!」

「本心はそうかもしれない。だが、調整は使えないはずの力を無理やり行使できるようにしてしまい、穢れを加速させる結果となる。無闇に神浜の魔法少女へ勧めるんじゃない。この街ではドッペルがでても、外では魔女になるだけだ。その罪の重さを自覚したほうがいい」

ついに黄色の魔法少女は何も言わなくなった。

「今回は捨て置く。生きて行いを見直し続け、呪い続けるといい」

私は壁を打ち抜き、調整屋の外へとでた。

「ちょっと何!ここって中立地帯って聞いたけど」

外に出た先には三人の魔法少女がいた。

「お前達は神浜の魔法少女か」

「いいえ、私は霧峰村ってところから来た魔法少女よ」

「そうか。調整を安易に受け続けるな。調整されると魔力消費が増えて穢れやすくなるだけだ。よく考えてから調整を受けるといい」

「えと、はい」

調整屋の排除には失敗したが、あの調整屋の反応は期待できる結果だ。

ただでさえ自動浄化システムを広げることができない段階だ。

今調整を受けて外へ戻ってしまったら、外の魔法少女が消えていくだけだ。

 

とりあえず調整屋は無力化させた。これでしばらくは「記憶をたどった捜索」は滞ることだろう。

 

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