神浜の様子がおかしいから来てみたら、街が黒いオーラの魔法少女で埋め尽くされていたのです。
マミ達はまどかを助けるために神浜へ向かったようですが、お前の言う通りならみんなあの百禍に紛れているのですね。
なぎさの近くにいるピンク色のキュゥべえ。
なぎさにしか聞こえない声で色々話しかけて来て鬱陶しかったのですが、今回はちゃんと役立ったのです。
「なぎさは知ってるのです。
まどかが魔女のような振る舞いをすると、この世界がどれほど大変なことになるのかを。
だからやってやるのです。
かつてはさやかがいたけど、1人でもできるのです!」
作戦はこうなのです。
黒いオーラの魔法少女となったマミ達をなぎさへ注目させて、あの眩しい塔の場所まで連れて行くのです。
連れて行けばそこからはコイツが何とかしてくれるのです。
「全部終わったらちゃんとチーズをご馳走してもらわないとです。
カマンベールくらいでは満足しないのです!」
なぎさはビルの上から飛び降り、作り出したシャボン玉を足場にして4人の捜索に入ったのです。
幸いにも4人の魔力パターンは把握しているので、問題はちゃんとついてくるかなのです。
飛び跳ねているとまず見つけたのは狂喜乱舞な杏子。
魔女じゃなくて魔法少女としての意思があるなら、食べ物を無駄にしてやれば絶対ついてくるのです。
勿体無いですが、コレもこの世界を壊さないためなのです。
なぎさは八百屋に並んでいたリンゴを杏子の前で全て地面に叩きつけたのです。
するとどうでしょう。
怒り狂った獣のような雄叫びを上げてなぎさについて来たじゃないですか。
よしよし、このままさやかのところへ行くのです。
なぎさはさやかの前を横切り、杏子にさやかの邪魔をさせたのです。
するとどうだ、さやかは邪魔をした杏子を追いかけてくるじゃないですか。
ちょろいのです!
そしてこの世界の身振りを気にしなくても良くなったなぎさは黒いオーラの魔法少女なんて障害でもなんともないのです。
余計な魔法少女達が襲いかかってくるのですが、呼び出した使い魔をデコイにして目的地へ一直線なのです。
次に見つけたマミとほむらは同じ場所で仲良く人を殺していたのです。
なかなか仲良くできなかった2人だけあって珍しい光景なのです。
ここが少し難しいところでどうやって2人のヘイトをこちらへ向けようか。
そう考えながら2人の近くへ向かっているとピンク色のキュゥべえがいきなり背中を光らせて一枚の禍々しい羽根を呼び出したのです。
それを今出すのですか!
ひらひらと落ちて行く羽根を拾うまでになぎさにはほむらの構えるガトリングから弾が飛び出してきてエメンタールになるかと思ったのです。
しかしこの羽根があれば2人は有無を言わずついてくるのです。
何故ならこの羽根が発する声に2人は反応せざるを得ないからなのです。
さあ、難なく4人をかき集めて眩しい塔の近くまで来たのです。
でも塔の麓には魔女とは違った首長竜が魔法少女達を蹴散らしていたのです。
あれがヤツラの使役する生物なのですか。
まともに戦うと勝てそうもないのでなぎさはシャボンの階段で駆け登るのです。
塔の上には見知らぬ魔法少女と謎の結界がありましたが、目指すは倒れているまどかなのです!
なぎさは4人を引き連れてまどかのもとへ飛び込みます。
するとピンク色のキュゥべえはなぎさの持っていた黒い羽根を奪って重力に任せてまどかへ触れたのです。
すると紫色のガラス破片のような結晶がまどかから広がり、なぎさ達を包み込むと虹色の結界で囲んだのです。
あの事件を思い出してしまいますが、この緊急事態、力を借りるしかないのです!
________________________
目を開けると見滝原によく似た景色の結界の中にいました。
さっきまでは鹿目さんを苦しめるヒトの光景に苦しんでいたはずなのに。
周囲を見ると黒いオーラを纏っていないマミさん、さやかさん、杏子さん、そしてなぎさちゃんがいました。
「あれ、私たちって」
「なんか知らんけど、なんともないみたいだな」
知らぬ間に知らない空間にいて混乱していると、頭に声が聞こえて来ました。
[みんな、まどかのためにあの山の頂上まで来て。みんなが来たら、まどかを救えるから]
「暁美さん、今わたしに話しかけた?」
「いえ、わたしではないです」
「でもさっきの声はほむらだったじゃんかよ」
「でも、わたしではないです」
なんで私ではないワタシの声が聞こえたんだろう。
「ほら何しているのですか。さっき聞こえた声の通り、あの山を登るのですよ!」
「山ったって、あの街中にある黒いところか?」
この空間の中央には天へ届きそうな山のような何かがそびえ立っていました。
しかし不思議と、あの上へ行けばまどかに出会える気がしました。
「すっごい高いけど、あそこ頂上とかあるの?」
「みなさん、行きましょう。あの山の上へ。あそこの頂上へ登れば、鹿目さんを助けられる気がするんです。」
一瞬沈黙が訪れました。
「ま、ただ彷徨っても出口は見つからなさそうだし、当てのある方へ向かおうや」
「それはそう、だよね」
「ではみんなで行きましょう。鹿目さんを助けるために」
「そうこなくっちゃなのです!」
私達がそう意思を固めると、宙から黒い羽根が降って来て私たちの前へ山の頂上へ向かう長い道が現れました。
「なんだよ、道ができるなら早く教えろよ」
「さ、駆け上がるわよ!」
出現した石畳のような魔力でできた道を登っていると山の方角から羽根の生えた弓矢のような生き物が矢を飛ばしながら襲いかかって来ました。
「コイツら、もしかして使い魔?!」
「じゃあここは魔女の結界か何かってか?」
私は軍事基地から拝借していたマシンガンを取り出し、飛ぶ使い魔達を薙ぎ払うように撃ち落としていきました。
「あんたどこからそんなもん!」
「でも弾幕を貼るのは良い手よ。私と暁美さんで使い魔の相手をするから2人は駆け上がって!」
「それならお構いなく」
「ちょっと待ちなって!」
佐倉さんと美樹さんが山の頂上へ駆け出し始め、頂上近くになると使い魔達は私達には目もくれず、頂上への道を密集して防ぎました。
「チクショウ、どうやっても近づかれたくないようだな。
それに結構やばいぞこれ」
密集した使い魔達は一斉に矢を打ち出す準備をしていました。
「みんな、私の後ろに下がって!」
「美樹さん?!」
美樹さんが前に出たと同時に使い魔達は一斉に攻撃を仕掛けて来て、美樹さんの前には人魚姫のドッペルが出現しました。
矢の攻撃は貫通することなく、後ろにいた私達は無傷だったものの、ボロボロになった美樹さんのドッペルは泡となって消えてしまいました。
「美樹さんありがとう。
突破口を開くわ。みんな私の近くへ」
言われるがままにみんなが巴さんの近くに集まるとリボンで包まれて周りが真っ暗となりました。
「いくわよ!」
巴さんの掛け声とともに急激なGが体にかかり、何かが前方で砕ける音がすると私たちを囲っていた何かが砕けると私達は山の頂上へ向かって飛んでいたのです。
「マミ!流石にこれはめちゃくちゃだぞ!」
「このままじゃぺしゃんこなのです!」
こんなところで死ぬのは嫌だったので私は時間停止を使用しました。
するといつのまにか巴さんのリボンが繋がっていて、みんなも時間が止まらない状態でした。
加速が止まらない中、なぎさちゃんがシャボン玉を出し、その弾ける衝撃で私たちの加速が止まったのです。
「いたた、首が変な方向向くかと思った」
「でも、頂上にはたどり着けたみたいよ」
山の壁部分にはトカゲのような模様がついた結界の入り口がありました。
「ここに入れば、鹿目さんがいる」
「そのようね。
さ、行きましょう」
時間が止まっていても結界の中へ入ることができ、みんなが結界に入ると結界の入り口は閉じてしまいました。
そして山の頂上には5色の球体が現れたのです。
結界の中は緑豊かな丘が広がっていて、丘の上には桜の木が1本と1人の少女がいました。
「っ!鹿目さん!」
私は急いで駆け寄るとあと一歩で手が届くというところで見えない壁に阻まれてしまいました。
そして、鹿目さんのいる向こう側は炎に包まれ始めたのです。
「鹿目さん!」
「ほむらちゃんにみんなどうしたの?」
「どうしたのって、あなたを助けに来たのよ。さあ、元の世界へ戻りましょう」
「どうして?
みんなの帰る場所はここですよ。
生きてても苦しみや後悔しかないヒトの世界よりも、こっちがミンナ幸せにナレルンデスヨ」
「まどか、アンタどうしたの?」
「大丈夫、みんなもすぐに幸せな場所へ来れるから」
鹿目さんは魔法少女姿になるとソウルジェム部分がポッカリと穴が開き、宙に浮いたソウルジェムからは穢れの泥が溢れ出して来ました。
その泥は見えない壁お構いなくこちら側にも溢れて来ました。
「何だよ、これ」
「触れちゃダメなのです!
流れてくるのが遅いあの泥は穢れの塊。触れただけですぐにドッペルが出てしまうやばいヤツなのです!」
「なぎさちゃん、どうすれば鹿目さんを助けられるの?」
[5色の球体を同時に破壊しなさい。その後は私が何とかするわ]
再び知らない私の声が頭に響きました。
「気になることは山ほどだが、あの宙に浮かぶ球体のことを言っているようだな」
「同時に壊せばいいんだよね」
「時間がないわ。みんな私の合図で球体を破壊して。
いくわよ、せーの!」
私達は一斉に球体を攻撃しますが、球体は壊れる様子がありませんでした。
「そんな」
「くそっ、特大ぶち込むったって魔力がもたないぞ!」
「…ドッペル」
「え、ほむら今なんて」
「みんなでドッペルを撃てば良いだけだと思います」
「ドッペルか。
外で体感したみたいにずっと悪夢を見続けるようにならないだろうな」
「何言ってんのさ、私がついさっき出したじゃん。大丈夫だって」
「んじゃ、ドッペルを出すのに手っ取り早いのは、まどかが出してる泥に触れるくらいか。
気が進まないな」
「仕方がないのです。いいですか、触れるのはちょっとだけですからね」
「分かってるって」
私達は恐る恐る穢れの泥に触れ、すぐに浮かぶ球体の方を向きました。
5人は一斉にドッペルを出し、ドッペルの攻撃で5つの球体を同時に破壊することに成功しました。
球体が破壊されると宙には見覚えのない羽の生えた紋章が現れてそこから紫色の閃光が見えない壁に放たれました。
見えない壁には瞬く間にヒビが入っていき、粉々に砕けたのです。
「今!」
私はダルい身体に鞭打って動き出し、穢れの泥を顧みずに鹿目さんへ手を伸ばそうとします。
しかし燃える境界線に手を触れると肉が爛れてしまい、思わず手を引き戻してしまいました。
目の前に鹿目さんがいるのに、手が届かないなんて。
他のみんなはドッペルを出した影響ですぐに身体を動かせない状態でした。
そして崩れ去ったはずの壁が再生し出したのです。
一体どうすれば、鹿目さんを救い出せるの?
動きを止めた私の目の前がライトが落とされたように真っ暗となります。
[あなたの覚悟はその程度かしら]
声が聞こえる方を向くと、紫色のピアスをしたワタシがいました。
「あなたは、一体」
[貴方が至るはずだった末路、とでも言っておきましょうか。
貴方達が障壁を破壊してくれたおかげで、こうして貴方と対面することができたわ。礼を言うわ]
「私の、末路?」
[ええ。まどかのためならばどんな犠牲も厭わない。例え女神を汚した悪魔になろうとも。
それがワタシよ。
本当は隙をついてこの世界を乗っ取ろうかと思ったけど、幸せそうな貴方達を見ていて気が失せちゃったわ]
「…鹿目さんを助けたいんです。手を貸してくれませんか」
[その気持ちは山々よ。でも力を貸すにしても貴方には覚悟が足りないわ]
「覚悟?」
[まどかを助けたいという考えだけではダメよ。貴方の目の前にいるまどかは、人間社会に愛想を尽かしてしまって、自ら楽園を作り出そうとしている。
助けるという概念が及ぶ存在ではなくなっているのよ]
「そんな、ではどうすれば」
[あら、まどかを求めるのであればすぐに出る答えだと思うけれど]
私にはすでに答えが出ていた。でもそれはあまりにも無責任で、ワガママな回答。
でも。
「まどかを、奪う」
[ふふ、分かっているじゃない。
でも貴方に残っている良心がその回答を邪魔してしまっているわ。
これを使いなさい]
そう言ってワタシは拳銃を差し出して来ました。
「これでどうすれと」
[自決しなさい。そうすれば貴方の代わりにまどかを奪ってあげる]
私は耳を疑いました。
目の前のワタシは私に成り代わろうとしているのです。
「そんなことできるわけないでしょ!まどかを救えずに死ぬことなんてできないわ!」
[ではどう助ける?手を伸ばすことすら叶わない貴方はどうやってまどかを救い出すと言うの?]
答えることができない。
今の私には、まどかを助けるほどの力を備えていない。
[貴方の生きたいと言う執念があるのは確認できたわ。
でも数多の感情を捨ててこなかった貴方はこの境地へとたどり着くことは叶わないわ。
そうね、貴方。私と契約しなさい」
「契約?!私はもう魔法少女よ。二度目の契約なんてできないわ」
[誰がインキュベーターと契約しなさいって言ったの?目の前にいるワタシと契約しなさいって言ってるのよ]
「…できるとして、その代償は」
[まあ教えてあげると、貴方は今持っている願いを手放すことになるわ。
まどかを救いたいという願いをね。
それ即ち、何が起こってもまどかを救うためにやり直すことができなくなるってことよ。
貴方に願いを捨てる覚悟があるかしら?]
私の中に迷いなんて無かった。
「悪いわね。その答えならすぐに出るわ。
私は貴方と契約するわ。
この時間軸ほど、まどかを魔女化させない条件が揃っている時間へ巡り合うことなんてほぼ不可能。
時間を操る力なんてもう不要。
だから、貴方の力を頂戴。そして、まどかを奪い取る!」
[いい覚悟になったじゃない。では契約しましょう。
精々愛の力を振るうといいわ]
周囲がライトアップされると私のソウルジェムは見たことがない禍々しい虹色に輝いていました。
私は穢れの泥に足をつけつつも、ドッペルを出すことなくまどかへ手を伸ばします。
ソウルジェムがある左手は爛れることなく炎の中へ伸びていきます。
「ほむらちゃん、どうして?
そんなに苦しまなくてもすぐ会えるのに」
「私が求めるのはそんなまどかじゃない。
何もかもを諦めたまどかではなく、誰かを守りたいと考えるまどかじゃないとダメなのよ!」
左半身が炎の中へ入ると、指先が燃え始め、骨が見え始めました。
「ほむらちゃんダメ、燃えて死んじゃうよ」
「構わないわ。貴方に手が届き、奪い取ることができれば私はどうなろうと構わない!」
私はソウルジェムへ求めているまどかを映し出すよう念じると、まどかの足元から空間のひび割れが発生し出しました。
ひび割れの中には何人ものまどかが映し出されますが、私の琴線には触れません。
「違う、もっと見せて!私の愛するまどかを見せて!」
体が爛れ始めていることも知らず、私はただひたすらまどかを求めていました。
ひび割れがいくつも増えていき、もはや目の前にいたまどかの原型がどこに行ったのかわからないくらいヒビが広がっていました。
そして私はついに、求めていたまどかを見つけて思いっきり手を伸ばし、腕がちぎれるのではないかと言う勢いで掴んだ手を引き上げました。
私が地面へ倒れると、そこには穢れの泥は存在せず、私の体は元どおりとなっていました。
そして目の前には魔法少女姿のまどかがいました。
[求めるまどかを奪うことができたようね。
それじゃあ残ったまどかは私がもらっていくわね]
焼け野原に居たのは、ソウルジェム部分がポッカリと開いたまどかを抱える、黒い翼を広げ、黒い衣を纏ったワタシでした。
「ありがとう、悪魔なワタシ」
[礼は無用よ。残念ながら彼女達の試行が巧みだったからなのか、まどかの常識感は塗り替えられてしまっているわ。
でもそれ以外は貴方の求めたまどかのはずよ。
さあ、元の世界へ戻る時間よ。
まどかと、幸せにね。暁美ほむら]
結界が消える寸前、悪魔なワタシは涙を流している気がしました。
私達は結界が消えると同時に高いところにいて、目の前には日継カレン達と、いろはさん達がいたのでした。
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