【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 1-3 触れるは代償ありきこと

二木市という場所は神浜から遠い場所にある町で、到着には時間がかかるらしい。しかし、キュゥべぇの奴が最短ルートを教えたらしく、地図で予測するよりは早めに到着する可能性があるという。

それなりの大所帯で動いているらしく、足並みをそろえるとなると案外地図から割り出した通りの期間で到達するのかもしれない。

なんて考えるならば、最短ルートで通らざるを得ないルートを張るのが手っ取り早い。

そのルートとなる場所へ到達した頃、淫靡な姿をした魔法少女に会った。黒肌の魔法少女と話すと妙な力を使えるという。

「魔力を調整できる調整屋、か」

「せや、うちは戦うことができんくても魔法少女たちの魔力を調整するっちゅう力を使ってサポートしてるんや」

「その調整っていうのをやるとどうなるの?」

「普段は使えていない魔力を効率よく使えるようになるんや。動きも良くなるし、おまけに感も鋭くなるっちゅういいことだらけや」

「その対価ってものも、勿論あるんだろ?」

「勿論や。報酬として、グリーフシードを要求させてもらうわ。言ったやろ?うちは戦えんって」

「なら、試しにシオリのソウルジェムを調整してよ。ちょっと興味あるからさ」

「ええよ、んじゃ、建物の中に入りいや」

調整屋という魔法少女に建物の中とは言われても、辺りにあった空き家のうちの一か所であり、つい昨日まで誰かが住んでいた痕跡があった。

「あの、この建物って家主がいるんじゃ」

「心配せんでええよ、なんせここの家族は昨日魔女に喰われたんやから」

ここら一帯を暴れ回った魔女がいるらしく、運悪く見つける魔法少女がいなかったため、みんな犠牲になってしまったという。

「だとすると、警察が動かないのは結構な怠慢ね」

「さ、そこのソファーに寝転がって。勿論、上半身裸になってな」

「裸に!?」

周りが少し静かになった。

「ピリカ、ジョークだよ」

「んんん」

「あらあら、茹で蛸みたいになってかわええな。でも、ジョークを真に受けてはあかんで。ま、うちとしては脱いでもらってもええけど」

「いいからはじめて頂戴」

「そしたら、落ち着いて深呼吸や」

そう言いながら調整屋はゆっくりとシオリのソウルジェムを触った

触った瞬間、シオリのソウルジェムから紫色の閃光が走り、調整屋は頭を抱えて苦しんでいた。

「なんや、頭に流れ込むこの情報量は」

あんたに流れるはずの記憶とやらに大量の情報を載せてやったんだよ。調整するとか言いながらシオリの記憶へ土足で踏み込むとはいい度胸ね!」

「シオリ!落ち着いて」

「す、すまんかったな記憶を見てしまうってとこを説明し忘れて」

「そうだな、人の記憶を見てしまうってのは私たちにとってはよろしくない。
でも、それ以上に、魔法少女の潜在能力を出すために魔力を掻き回すっていうのは、もっとよろしくない!」

カレンは糸で調整屋を外へ叩き出し、足を思いっきり貫いた。悶え苦しむ調整屋を前にピリカが止めに入った。

「ちょっと2人ともなにやってるの!そこまでやる必要ないじゃない」

「いや、こいつの能力は神浜へ大きな禍をもたらす種だ。こいつの調整が二木市の魔法少女や、血の気の多い奴らへ渡ったら神浜は混乱して計画どころじゃなくなる」

「なに、するんや」

「選ばせてやる。ソウルジェムだけ残されるのと、ソウルジェムだけ砕かれるのどちらがいい」

「どちらもゴメンや。あんたらみたいな超過激な魔法少女を見るのは初めてや」

「そうか、ならば第三の選択肢にするしかないな」

苦しそうな調整屋のソウルジェムを探し、その魂の結晶に対してシオリは指を伸ばした。

「お前がやっている調整とやらを試させてもらうよ」

調整屋のソウルジェムに触れるとソウルジェムの内部は火花が散るように光の粒子が激しく走り始めた。それと同時に調整屋は獣のように叫び声を上げながらのけぞっていたが、シオリは調整の方法を探るのに夢中だった。

なかなか相手のソウルジェムに溶け込むっていうのは難しいねぇ。しかし手元の魔力を変えて相手の魔力パターンに合わせてみたらどうなるかな」

溶け込むというのは願いによって得られる性質によるものだと予想はしていた。溶け込むという表現をどのように再現するのか試行錯誤し、自分の魔力を少しだけ相手も魔力に馴染ませてみるとノイズだらけではあるが、記憶のようなものが映し出され始めた。

映し出されたものはなにがどうなっているか全く分からなかったがかろうじて声はなにを伝えようとしているのかわかるくらいだった

「これは何人か使って試すしかないね」

「シオリ!」

ピリカの大声で我に帰ったシオリは調整屋のソウルジェムから指を離した。その一瞬でカレンは調整屋のソウルジェムを糸で貫いていた。

「シオリ、そこまでだ」

調整屋は糸が切れた人形のように横たわっていたが、見た目は口から泡を吹き出していたりとひどい見た目だった。

ピリカの方を見ると、手元で魔法を発動しそうなところを抑えていた。

そして魔力を治めるとその場に座り込んで泣き出してしまった。

「ピリカ、よく我慢したな」

「なにがあったの」

「話は後だ。わたしはピリカを空家で休めてくる。シオリはその死体の処理をお願い」

なにがあったのか分からないままシオリは死体へ雷をいくつも当てて燃やした。人っ気がない住宅街だ。死体が一つ燃えようとこの異臭に気づく人間はいないだろう。

「それにしても人気がなさすぎるね」

ゴーストタウンとなった住宅街から少し離れて大通りへ出てみると2台ほどのパトカーとバイクが止まっていた。どちらもパトランプが消えていてエンジンも止まっていた。

妙だな。

ゴーストタウンへ戻るとカレンが空き家の前に立っていた。

「ピリカになにがあったのさ」

「シオリ、用量ってのは少しわきまえて行った方がいい。何かに夢中になるとやりすぎるのは既に知っているが、今回は酷かったぞ」

「あれぐらいのこと今までもやってきたでしょ。聖遺物を体内に潜めているやつから抜き出そうとしたときだってあれぐらいの叫びはあげていた。ピリカだって何度も立ち会ったはずだ」

「違うんだ、そうじゃない。今回やばかったのは調整を受けていた調整屋の見た目がピリカのトラウマに引っ掛かったんだよ」

少しピリカの過去を思い起こしてみるが、そもそも調整屋の状態がどんな感じだったのか全く記憶になかった

「調整を受けていた調整屋は絶頂を繰り返すかのように仰け反り、喘ぎ続けていた。ここまで伝えればもういいだろ」

ピリカは過去に凌辱され、何人も同じ目にあってきた子たちに囲まれていた時期があった。本人の中で最も人間嫌いを加速させた時期であり、ソウルジェムの奥底まで刻まれた光景であり、それゆえにトラウマになっているという。

「そう、そんな感じだったの」

「ソウルジェムが穢れるスピードも急激に早まった。普段は実験を邪魔にしないように手を出さないつもりだったが、ピリカの辛そうな顔を見ていると耐えられなかった」

「悪かったよ。ピリカが起きたら謝っとく」

「そうしてくれると助かるよ」

しばらくの沈黙が訪れて、なんの音も聞こえやしなかった。

「それにしても、調整とやらを一瞬で物にするのは流石だね」

「当たり前でしょ、シオリは一度干渉できれば利用できるまで一直線なんだから。ただ、何人か試さないと記憶を覗くってのは難しいかもね」

「記憶を探ることができれば、神浜のことを理解するスピードも早まる。ピリカには隠して、何人か被検体を集めることは協力するよ」

「でもやっぱいいや。こんな気色悪い技、使う気にもなれないよ」

「そうか、それは残念だ」

この夜の間にシオリとピリカは神浜にある魔女化しないシステムの広げ方を話し合った。

得体のしれない力を行使するためには観測、解析、干渉という三段階を経る必要がある。この考えはキュゥべぇたちの思考から学んだことであり、観測というのはとても大事なことになる。

もし観測対象が概念だった場合、ほぼ不可能に近い。

しかし、概念のあり方を変える方法を私たちは知っている。それを叶える環境が神浜にはある。

「カレンはピリカに対して甘々だよね。ちょっと過保護に近いんじゃない?」

「ピリカは強いんだよ。どれだけ人や魔法少女がモノや液体状になろうと、心を捨てずにあり続けている。私たちはとっくに捨ててるけどね」

「まあ、ピリカの考えは尊重するよ。ピリカの優しさには助けられたことが何度もあるからね」

カレンとの話し声しか聞こえなかったゴーストタウンへ手を叩くような音が聞こえ始めた。

「ピリカを起こしてきて。ゴーストタウンの主が現れそうだ」

ピリカが起きてきてシオリたちは魔女の襲来に備えていた。

「魔女が近くにいるって。でも、ソウルジェムに反応はなかったよ」

反応を隠す魔女なんてこれまでにいくらでも出会ってきたじゃないか。まあ、向こうが行動を起こしてくれないとこの手の魔女を倒すのは難しいけどね」

「魔女がいるっていつから」

「ちょっと外側を見てまわったらさ、放置されたパトカーが数台あったんだ。警察はこの事態に駆けつけてはいた。でもその消息が途絶えて援軍も来なくなってしまった」

魔女へ一般人が争うことができないのは世の常。よほど戦闘慣れした人間でなければあっという間に餌食になってしまう。弱いったらありゃしないね。

「魔女達に動きがあったのはあれが原因だろうね」

燃やした死体へ台座に乗っかった球体が針を通して死体の体液を吸い上げるために群がっていた。

「あれって」

「さあ、親玉の場所まで連れて行ってもらおうじゃないか」

しばらく使い魔の様子を見つめていると死体を持って何処かへ向かい始めた。

後を追っているとゴーストタウンの中心地で魔女の結界の入り口を発見することができた。

「巣に持ち帰ってじっくり味わうのはアリとそっくりね」

「大抵の使い魔に当てはまるからわかりやすいさ」

結界に入ると珍しく階層が存在せず、そのまま魔女がいる最深部にたどり着いていた。

最深部の光景を目にし、ピリカはひどく怯えていた。

宙からは布のようなモノで縛り上げられた数十体の人だったものへ使い魔が群がり、地面には体液を吸われ尽くされた干からびたミイラが何体も横たわっていた。

使い魔の中にはミイラの頭をもぎ取って石を蹴るように遊んでいるものもいた。

「まさかこれ、全員この住宅街にいた人たち」

「案の定警官っぽいのもいくつか見受けられるね」

「いい趣味してるよ、ここの魔女は」

いくつもの魔女空間の中でもドン引きするくらいの光景を見ている中、使い魔達はシオリ達を見つけると群がってきた。

「ピリカ、動けるか」

「大丈夫、わたしだっていつまでも足手まといは嫌だもの」

使い魔達はシオリ達を取り囲むと台座の部品を打ち出しては対面の使い魔が打ち返すというテニスをしているかのような攻撃を繰り出してきた。

もちろんこんな攻撃をまともに回避し続けると体力を浪費するだけ

「賢しい騒がしさだね」

シオリは背中から伸びる二本のリボンを地面に打ちつけ、三人を中心とした周囲は衝撃波で吹っ飛ばされてしまった。

同時に使い魔達は衝撃波で倒されたようだ。

「さ、親玉の場所まで一直線だ」

階層がなく、直で最深部にきたかと思えたが結界は広く展開されていて奥行きがどこまであるのかも分からない。その為、魔女本体の反応はあってもなかなか姿を確認できなかった。

道中、何度か使い魔が襲いかかってきたが、吸い付いてきた蚊をはたき落とすかのようにあっさりとあしらっていた。

暗闇が濃くなってきた頃、闇の中から二つの帯が伸びてきてシオリを絞め殺そうとしてきた。

雷の結界を周囲に張って肌に触れさせないようにはしているものの、結界ごと絞め殺されるのは時間の問題だった。

「シオリ!」

「シオリのことはいいから魔女をやっつけて」

帯を伸ばしたまま現れたのは白子をボール状にまとめたような姿に紫色の羽織りを纏ったような姿をした魔女だった。

体を形成する白子のようなものはボロボロと体からこぼれ落ちては消えるを繰り返している。

また、魔女が見えてから周囲からは赤子の声が聞こえてくるようになった

「姿が見えりゃ、倒したも同然」

カレンが左右から糸をクロスさせて魔女を切り刻もうと試みたものの、体の中心部分まで糸が入り込まなかった。

「硬すぎだろこいつ」

魔女は他の帯を使ってカレン達も絞め殺そうとしてきた。

そんな中ピリカは炎の剣を使用してシオリを縛ろうとしている帯を焼き切った。

「大丈夫、シオリ」

「問題ないに決まってるでしょ。特大のをお見舞いするから2人で魔女の気を引いて」

カレンとピリカが魔女の気を引いている間、シオリは周囲に器用に積まれていた石を集め、手の中で圧縮し始めた。

雷の小さな結界を掌サイズの大きさで生成し、そこへ石を投入していくことで、結界にある空気を圧縮する。石の数が増えるほど圧力が溜まっていき、結界内は高温となってただの石も熱を帯び始める。

カレンとピリカが気を引いてくれたおかげで雷の結界は破裂寸前のところまで到達していた。

「2人とも十分だ。特大のをおみまいしてあげる」

2人がシオリの後ろまで下がると、破裂寸前の結界を魔女の口の中へ放り込んだ。

そうしたらどうだろう、限界まで圧力を加えられた空気が結界を破り、高温になった石は魔女の体内で四方八方へ飛んだ。

元々分厚い体をしていた魔女だったが、数個の石が体を貫いて飛び出してきた。

魔女は大きな口をこれでもかというくらい大きく開けてそのまま崩れていった。

魔女の結界が消えてわかったことだが、このゴーストタウンそのものが魔女の結界に飲み込まれていたようで、階層がなくとても広い魔女空間であったことも納得がいった。

「いつものバカリョクで助かったよ。ありがとね」

「ほんと、なまら硬かったから普通だと何時間もかかちゃいそうだったよ。流石だね!」

少し前にトラウマをえぐられたというのに、いつもと変わらない笑顔を見せるピリカ。

思わずシオリは顔を曇らせてしまった。

「あ、ごめん。なんか気に触ること言っちゃった?」

「いや、シオリこそ悪かったよ。ピリカに嫌な思いさせちゃってさ。ゴメン」

ピリカはきょとんとした顔を見せた後すぐに笑顔を見せた。

「ありがと。克服できてないわたしも悪いんだけどね」

「あら、そういうことならピリカの前でどんどん非道なことしてやろうか。その方が耐性がつくでしょ?」

「ちょっと!本当に反省してるの?!」

カレンはシオリとピリカのやりとりをただただ笑顔で見つめていた

そんな中、カレンが顔色を変えて遠くを見た。

その反応の正体はシオリとピリカにも察知することができた。

「数十人の集団の魔法少女反応だ。間違いなく二木市の奴らだろう」

風ひとつ吹かなかったゴーストタウンでは少し冷た目の風が舞い込み始めた。

「ここは離れようゴーストタウンの時間が動き出す。折角だからピリカ、無人の家から布団を拝借したらどうだ?欲しがってただろ」

「もう、使う人がいなくなっちゃったんだよね。お借りします」

数分するとゴーストタウンとなっていた住宅地に警察が集まっていた。

布団やら使えそうな場所は廃墟へと隠し、シオリ達は二木市の魔法少女の元へと向かった。

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ

「軌跡を壊し、奇跡を創る そんな私たちが軌跡(人間社会、価値観、倫理観)を壊す」

 

願いを叶え、奇跡を得た少女は「魔法少女」と呼ばれる。

そんな魔法少女が生き続けた先に待ち受けるものは何なのか。

マギアレコードのパラレルディスク、ここから聞こえてくるのは築かれたものを破壊する宴であった。
人を否定する三人の魔法少女が神浜と出会う時、世界の在り方を変えていく物語が加速する。

 

この作品は「マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝」の二次創作です。

マギアレコードのパラレルワールドで展開される話であるため、実際のストーリーとは大きな違いが生じます。
人間の否定、キャラの扱い等で過激な表現が出る箇所がたくさん出てきます。耐性のない方は閲覧にご注意ください。

 

 

このページは魔叙事詩カグラ・マギカのトップページです。

1章 スゴィガ ワカ ラナイ

1-1 彫りなおされる溝
1-2 頼れる白い情報屋
1-3 触れるは代償ありきこと
1-4 血の理に添える不尽
1-5 血の理の不尽にピリオドを
1-6 憂い心から来る焦り
1-7 有為な夜道今日越えて
1-8 神様を連れている女の子
1-9 神様?を連れてる女の子
1-10  ユリとアザミが咲く中で
1-11   睡蓮はまた悩む
1-12  突然の別れはいきなり

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2章 アツァ リマ エノキゲン ハ センノウ

2-1 開幕を示す悲劇の狼煙
2-2 度を越すということは
2-3 素直に、そして真っ直ぐに
2-4 たった一敵から始まる波紋
2-5 広がる波紋は朱に染めゆく
2-6 匿名希望のお菓子屋探し
2-7 黒いオーラの魔法少女
2-8 協調できると信じて
2-9 お近づきはお食事の席から
2-10  五十歩百歩で蓄積難題
2-11   煌道は縁切りから始まる
2-12  ウワサは怖さを運んでくるサ
2-13  足かせとなる断罪の証
2-14  売られる側の気持ち
2-15  小さな三人の証言者
2-16  スクエル者、スクワレナイモノ
2-17  感知されないその理由
2-18  選択肢の行き先はただ一つ
2-19  選択肢を開拓する者
2-20  堕ちはじめし魔法少女

_________________________________

3章

3-1   結んで、ひらいて
3-2  魔法少女会議
3-3  絶望よりも深いその先へ
3-4  自責の権化を前にして
3-5  塗りつぶされないその心に従って
3-6  眼鏡をはずして見る世界は
3-7  たとえ間違った道だとしても
3-8  自己犠牲のキモチ
3-9  天才はその結果をまだ知らない
3-10 一族の信念はカムイに響かず
3-11 欲望に、忠実に、手を伸ばす

 

 

登場人物

:日継カレン:

身元不明の本来は存在しないはずの魔法少女。
契約の際にキュゥべえと繋がったことをきっかけに魔法少女の待遇を模索し、人間文化崩壊を目論む。
ピリカ、シオリを見守る姉のような存在であり、不器用ではあるものの他者への面倒見は良い。
身のこなしが素早く、踊りを得意とするが滅多に表へ披露しようとしない。
魔力反応を完全に消すことができるが、それは師匠と呼ばれる人物から受け継いだフィロソファ・ストーンがかかわっている。

 

:紗良シオリ:

飛行機事故で絶命するはずだった魔法少女。
家族を死に追いやったとある宗教の信者による事件をきっかけに人の倫理観を模索し、人間の倫理観崩壊を目論む。
願いのおかげで見聞きしたことを二度と忘れない代わりに眠ることができない。
カレンとピリカに助けられてからは師匠から錬金術を学んで聖遺物の力を発揮することができる。
好奇心旺盛な分、いつもトラブルを持ち込んでくる。

 

:保別ピリカ:

人身売買で身投げするはずだった魔法少女。
金のために家族の土地を奪われ、金のためにヒトに穢されたことをきっかけに人の価値観を模索し、金銭文化の排除を目論む。
願いと共にカムイの加護が具現化し、いつも周囲には三種類の使徒と聖遺物イペタムの思念が近くにいる。
普段は優しく接してくれるが、カレンとシオリ、師匠にも言われているが怒らせると一番手の付けようがないくらい怖いという。

 

 

【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 1-1 彫りなおされる溝

この此岸では奇跡に出会わなければ生きることができない。

人間のまま奇跡を手に入れられる成功者は小匙の程度。

ほとんどの人間は人間として扱われない人間社会。

 

こんな世界に、果たして此岸と彼岸の境目はあるのだろうか。

 

そんな世界で奇跡に出会えた私たちは、決して人間に受け入れられない。

小匙の奇跡を、願いと共に手に入れられるのだから。

奇跡を得るとともに人間の軌跡は失う。そんな私たちと人間が平等な関係になれるはずがなく、同じ舞台で共演など夢のまた夢。

そんな舞台を人間社会が邪魔をするならば、破壊して一からやり直そう。

私たち、魔法少女のために。

 

 

アイヒシュテット某所

 

街明かりは消え始め、あらゆるものが静まり返る針が重なる頃。

静寂を破る馬の足音があった。

山道を疾走する馬足を聞くのは野生の動物だけではなく、身を潜める者共もいた。

「対象、予想進路を進行中」

「潔く正面突破か。儚いな、我々がアブノーマルだと知らないのだろう」

彼らは修道院の要請で派遣された武装部隊。

それもただの武装部隊ではなく、最近注目を浴びているという対魔法部隊。

こんな世界で魔法などというフィクションな単語を鼻で笑う者も少なくない。

しかし、そんな者共はフィクションが身近にあるとも知らず、さらには救われていることも知らない愚か者。

フィクションと思われる魔法というのは希望の象徴とされている。

そんな希望の象徴を狩る存在、それが対魔法部隊。

今宵も、希望の象徴が消えようとしていた。

「対象、なおも接近」

対魔法部隊が察知しているのは馬足だけではなく装置が感知している魔力反応。

近頃は現代技術で魔法少女の反応を検知する装置が出回っている。

その装置は表では認識できない裏の世界で取引されているものであり、傭兵を寄せ集めた組織などが所有していることが多い。

こんな事は西側の世界の一部にしか知らされていない事実。おそらく東側の世界には装置自体が存在していないだろう。

「ポイントまで3、2、1」

閃光が森に広がる。その明るさは、まともに見ていると失明してしまいそうなくらいであった。

「な、なんの光だ」

想定していたポイントで走った閃光は対魔法部隊にとって想定外。

本来であれば魔力を妨害するガスで待ち受けるはずだった。

閃光が収まった頃、ポイントにいたのは馬と魔力がこもっていたと思われる石3つだった。

「ポイントに対象を確認できません」

「まさか、魔力は捉えていたはずが」

隊員たちが周囲を見渡しながらおどおどとしていると、魔力探知機に大きな反応があると同時に大きなブザーが鳴り響いた

「魔力反応検知!場所は、僧院中心地!」

「魔法少女め、一体いつから」

対魔法部隊が狩る相手、魔法少女の一人は僧院のてっぺんに器用に立ち、片手を高々と挙げた。

「ワッカ!濁流と化せ!」

僧院を中心に水が発生し、僧院内を駆け巡っては僧院外へいろんなものを流していく。もちろんその中には隊員の姿もあった。

大方のものが濁流に呑まれ、水の流れが収まると雷の壁がドーム状に貼られた。

しかしそんな中に僧院を守るようにドーム状の結界が展開されていた。

「驚いたね、ピリカの濁流を凌ぐか」

水音を鳴らしながら一人の少女が結界を見ながら驚いた。

先ほど発生した濁流は、僧院へ襲いかかっている魔法少女の一人が放った魔法。

現代社会に魔法へ抗える存在は魔女と呼ばれる化物か、それと同等の存在のみである。

「僧院の傭兵魔法少女か」

「あの隊員とやらの集団、全く役に立たなかったね」

「そんなの初めから知ってたさ。ここから先は聖域よ。希望を奪う魔法少女は入れやしないよ」

「傭兵魔法少女が何を言う」

「問答など無用…」

「それはこちらの言葉だ!」

面と向かうのは武器を持たない僧院を襲おうとしている魔法少女1人に対し、拳銃を一丁持つ魔法少女、レイピアを構える長髪の軽装な魔法少女という2人がいる。

武器を持たない魔法少女は糸を出したかと思えば収束させて銃持ちの魔法少女へ襲いかかった。

銃持ちの魔法少女が構える拳銃は収束された糸を受け止め、振り払った後に銃弾を放った。

放たれた銃弾は収束された糸を撃ち抜き、鋭利さを失わせた。

「なかなかやばい魔力弾じゃないか」

追い討ちでレイピアの魔法少女が糸を使う魔法少女へ襲いかかるも、すぐさま糸の刃で応戦した。

「其の場凌ぎで集められた割には結構合わせられるんだね」

「私たちだって、場数は踏んでるんだから!」

「なら、これを凌げるかな?」

鍔迫り合いが起きる中、糸を使う魔法少女の遠く背後から幼稚な声が聞こえてくる。

小さな魔法少女は近くにあった車のボンネットを2台分剥がしたかと思えば2枚をぶつけ合ってレールを作り上げた。

レールを作り上げる際に発生した稲妻はレールの間でなおも走り続け、レールの間には宙に浮かぶ鉄塊が1つ存在した。

「まさか、エル、下がって!」

僧院を守る魔法少女たちが下がると同時に、レールガンは放たれた。空を切る放たれた鉄塊を結界は弾き、周囲の外壁にはヒビが走った。

結界内に逃げた2人の魔法少女は無傷で、結界に入っていた亀裂はすぐに元に戻ってしまった。

「あら、これは雲行きが怪しいね」

「悪いけど、時間稼ぎをさせてもらうよ」

そう、時間がかかればかかるほど奇襲の効果も人払いを行った効果も薄れ、対魔法部隊が集まってくる。

僧院の魔法少女たちが狙っているのは時間稼ぎ。

「数分すれば君たちはバッドエンドだ」

「だとしても!」

身を潜めていた水を放った魔法少女が結界付近にいたエルという魔法少女へ斬りかかる。

「何をするのさ!」

エルは熱が入ったからか結界から身を乗り出し、遠く離れたところまで追いかけに行ってしまった。

「ピリカ、そいつの銃弾には気をつけなよ」

「エル!外に出過ぎ!」

「だってモリンガ、2射目は厳しそうだよ」

前へ出たエルへ小さな魔法少女は雷の力で勢いをつけた鉄塊を放った。

その勢いは魔法少女であっても避けるのが難しい程であったが、小さな結界が張られ、エルの身を守った。

「ミランダ、身を晒すことはなかったのに」

僧院へ結界を張っている魔法少女ミランダは僧院入り口へ姿を表していた。

「本名はお前か」

ミランダへ向けて糸を使う魔法少女が数本の糸を放つが、結界に阻まれてしまった。

「わたしの結界をそんな糸で破れるわけないでしょ」

「そのようだね」

それでも糸を使う魔法少女はひたすら一点を集中して斬り付けていた。

そんな中、ピリカとエルは一対一で戦い続けていた。

「アペ、刃となって!」

炎を剣の形にしてエルへ斬りかかるものの、素早くかわして当たる気配がなかった。

「ならこれで!」

ピリカは炎の剣で斬撃を飛ばした。

エルはこれを撃ち落とすが、銃弾が当たると同時に炎を収束していた魔力が弱まり、拡散する炎でエルの視界を遮った。

怯んだエルへピリカは回し蹴りを喰らわせ、僧院の壁へ撃ち付けられたエルは気を失ってしまった。

「どれだけ引っ掻き回そうが壊れるはずがないよ」

「そうかい、だけど綻びって一点から生じるものさ、シオリ!」

シオリと呼ばれる小さな魔法少女は小さな瓦礫を周囲に浮かばせ、間髪ない瓦礫の雨を糸の魔法少女が引っ掻き回した一点へ集中させた。

そしてついに結界にヒビが入ったかと思えばすぐに穴が広がってしまった。

「そんな、結界が再生していない。
ミランダ、どうしたの!」

モリンガと呼ばれていた魔法少女は、ソウルジェムを苦しそうに握るミランダの姿を見た。

「ミランダ、あんた穢れはは一切なかったはず」

「モリンガ、エル、ここまでかm」

ピリンッ

ソウルジェムを砕く糸をモリンガは見てしまった。

ミランダは糸が切れた人形のように入り口の壁に寄りかかっていた

「ミランダ!」

「聖域に穢れはまずいじゃない?
希望を奪う側になる前に救ってあげたのさ」

「ジョークのつもりか!」

モリンガは怒りに任せて糸の魔法少女へ斬りかかった。

「カレン!」

「どうした、もっとお前の希望とやらを輝かせてみなさいよ」

モリンガの突きは素早かった。不意打ちであれば確実に仕留められるほどのスピードだ。

しかしその突きは糸を何重にも重ねて作られた盾で遮られ、カレンへ届いてなどいなかった。

「儚い希望だな」

カレンは突くために腕を伸ばしたモリンガの懐へ入り込み、勢いよく糸で宙に掬い上げた。

「リズム良く突くのはいいが、ずっと同じだと読まれやすいに決まってるだろ」

宙に浮いたモリンガが目にしたのは笑みを浮かべているシオリだった。

「スクワレた気分はどうだい?」

シオリが放った無数の瓦礫がモリンガを襲い、外壁にぶつかったあとの肉塊は瓦礫の下敷きになってしまった。

「こんなものか」

その場が鎮まりかえって曇っていた空から月明かりが漏れ出してきた。

月が作り出した影からエルが現れてカレンの首を切ろうとする。

「アエヤァム!」

ピリカが割り込み、炎の剣で斬り上げてエルのソウルジェムを砕く。

エルは魔法少女の姿が解かれ、薄着の少女だったものへと変わった。

「悪いね」

「本当よ、対処できたからよかったものの」

「止めてくれるってわかってたからさ」

「カレン、ちょっとは自分でも」

「お話はほどほどにね。人が集まってくるよ」

2人が口論を始めようとするとシオリが仲裁に入った。

「そうだね」

「それではいただくとしようか、魔法少女の間で伝わる伝説の魔女、ワルプルギスの夜を引き起こした人物、ワルプルガの聖遺物をね」

 

世界の西側では一般人へ徐々に魔法少女の存在が知れ渡り、政府の裏で動く魔法少女がいるくらいだ。

そのため、今回のように雇われている魔法少女、通称傭兵魔法少女は多く存在する。

傭兵魔法少女が多い理由としては、長生きした魔法少女であるほど人間社会へ溶け込むことが困難であり、稼ぎ口が傭兵業か人を襲うかのどちらしかないというのが現状だ。

戦争が起きると素質がある孤児へ良い条件を提示しては願いを叶えさせるという事例だってある。

世界の西側にとって、魔法少女の居場所というのはないに等しい。

「その聖遺物とやらを使って何をしようっていうんだい?」

少女から魔法少女へ変える存在、キュゥべぇは魔法少女のことを知ってることだけ知っている。
しかしその行動原理は機械的であり、感情を持っていないというのは魔法少女の間で共通認識となりつつある。

あたしたちが聖遺物調査に協力していた経験があることくらい知ってるでしょ?」

「確かに覚えているさ。魔法少女が魔力で生成していない物質に対して魔力を注ぎ続けたもの、または魔力が篭ったままの遺骸を人は聖遺物と呼んでいるね」

世界に存在する聖遺物の多くは魔法少女によって生み出されたもの、または遺品が該当している。かつて世界を変えた偉人であっても、その偉人の体液がついた聖槍であったとしてもその背景には魔法少女がいたという。

そう、聖遺物を辿ればかつてその魔法少女が使用していた力を再現できると私たちは聞かされ、目の当たりにしてきた。

「しかしある時、再現は失敗した。それは愚か、その聖遺物を経由して魔女化する魔法少女が現れてしまったじゃないか」

そう、その聖遺物を活性化させたところで願いの対価である呪いが使用者の身にもたらされることを過去の私たちは失念していた。そのせいで聖遺物と魔法少女を知る貴重な存在を失ってしまった。

「君たちがやろうとしている事は、かつて失敗した再現じゃないか。君たちは再び聖遺物を利用して魔女化という連鎖を繰り返すつもりかい?」

「魔法少女の連鎖をどうとも思わないのによくいうわね」

ピリカの言う通り、魔法少女には逃れられない運命が存在する。

その連鎖はキュゥべぇにとっては都合の良い事らしくいまだに解決される事はない。

私達はあんたがよしとしている連鎖を止めるために聖遺物へ関わってきたんだ」

「そして、その成果が実るときがすぐ近くに迫っている」

ワルプルギスの夜

長い間魔法少女たちの間で伝えられ続けた伝説級の魔女のことで、今までに討伐したと言う記録も残っていない。

「まあ、魔法少女は常理を覆す存在だ。君たちを見ていればその可能性があると頷くには十分だ」

「それで、ワルプルギスの夜は予定通りの場所に現れるんだろうね」

「前に伝えた通りだよ。次にワルプルギスの夜が現れるのは」

見滝原市

私達はこのワルプルギスの夜が現れるというチャンスを利用するために行動してきた。

そして今、手元にある聖遺物を使用すれば魔法少女の連鎖は止められる。

シオリが嫌う飛行機を利用しないと西から東へ行くのに数十日かかってしまう。

聖遺物は魔力を使用すれば簡単に検問を抜けられるし、年齢の偽造だってできてしまう。魔法は使い方次第でなんだってできる。

その代償は、もう十分味わってきたはずさ。

世界の東側へ到着した頃、私達は異変に気がついた。

それは、見滝原に近い都市で既に大きな災害が起き始めていること。

災害が起きている都市へたどり着いた頃には、不気味な笑い声が響いていた。

「おかしいよ、予見では見滝原ってとこにワルプルギスの夜が来るって言ってたよね」

「しかも来るのが早すぎる」

「まずは声がする方向に向かうよ」

災害が起きている都市の中間部分へ来た頃、海岸線付近から大きな衝撃波が来たかと思うと空は晴れ渡り、ワルプルギスの夜は光の中で消滅した。

「うそ、ワルプルギスの夜が倒されただなんて」

「あんな化け物を倒せるだなんて、この町の魔法少女はどうなっているんだ」

「なら、その子に聞いた方がいいんじゃない?」

シオリが指差す先には、緑髪で制服と思われる服装に絵具が乗ったパレットを拭ったような手ぬぐいを腰に下げた少女の姿だった。

わたしは少女の首元へ手を出そうとすると魔力を感じ取った。

「この子は魔法少女のようだ」

水たまりのうつ伏せたままの少女の体をピリカは起こした。

「ソウルジェムにヒビが入ってる。死にかけだよこの子」

「その子から大きめの魔力を感じる。見た目は死にかけでも大きな魔力を放ってるって事は相当な実力者だろうね」

魔力というのは放出する量が多ければそれだけ大きな魔力を使用できるという指標でもある。

これだけ消費しててもソウルジェムが濁っていないという事は、魔力の扱い方も長けている可能性が高い。きっと何かしらの情報を得る事はできるだろう。

「一度この街に拠点を構えよう。その子は拠点で保護しようと思う。ピリカ、担いで行ける?」

「助ける事なら、わたしは躊躇わないよ」

こうして私たちの当初の目的は白紙に戻り、あり得ないことが起きた都市について調べることにした。

この都市の名前は、「神浜」という。

 

 

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