【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 4-1 軌跡を壊す序曲

黄昏時が過ぎた頃、日継カレン、紗良シオリ、保別ピリカの3人を捕まえる作戦が行われたが、これは失敗に終わった。
拠点にしてると思われる廃墟には鏡の魔女の結界が広がり、ほとんどの魔法少女が神浜に散り散りとなり、皆が私たちの行方を見失った。

それから間も無く中央区では強力な電撃が走り、電線を伝って過大な電気が流れたことで神浜市全体とその周辺地域が停電状態となった。

騒ぎ出した人間達の中には神浜市から出ようとするものがいたが、神浜全体を覆うように電気の結界が展開され、神浜中は大騒ぎとなった。

無理矢理越えようとしてもコンクリートの壁のように通り抜けることができず、電気柵のように触れると痺れるだけではなく火傷もしてしまう。

人間、魔法少女問わず慌てふためいている頃、中央区の電波塔では儀式が進められていた。

儀式の魔法陣に操られている環いろは、鹿目まどか、夏目かこはそれぞれの持つ力を目の前にある遺骸へ注ぎ、遺骸は光を放ちながら宙に浮き始めた。

その遺骸へ私は神浜を回って集めた因果の束を遺骸へ繋げた。

「これでワルプルガへ因果が収束した。
次はピリカの番だ」

「うん。

いくよ、イペタム。私たちに希望を!」

そう言ってピリカが魔法少女になったことから手にしている聖遺物イペタムを取り出して地面に突き刺した。

それと同時に縁の線を辿って今までに出会った魔法少女達から希望の力が吸い上げられた。

イペタムは対象から希望の力を吸い取ってピリカのソウルジェムを浄化してくれる。

でも欠点もある。

イペタムは妖刀と呼ばれるだけあり、持っている間は急激に穢れが溜まっていく。

今回は希望をワルプルガへ流れるようにしているため、ピリカはすぐにドッペルを出す状態となった。

しかしピリカのドッペルはイペタムが本体であるため見た目は服が赤みがかった色に変わっただけしかわからない。

蘇生、慈悲、再現、膨大な因果と希望の力がワルプルガの以外へ収束し、ワルプルガの遺骸は眩しいほどの輝きを放ち、強力な結界に囲まれた少女が魔法陣の真上に現れた。

少女の姿となったワルプルガは頭を地面の方向に向けて結界の中で眠っていた。

「やった!成功だ!」

「後はこの世の知識を与えればすべて完了する。
シオリ、余計な情報は流すんじゃないぞ」

「心配しないで、快く契約してくれるよう知識を与えるから」

いくら蘇ったといえ、記憶が残っている保証はない。

知識のない赤子として復活されても困るのでシオリの電気の力を使用して頭脳へ知識を流し込む必要がある。

しかし受肉させた時点で9割は目的を達成している。

その結果が今眼下に広がる光景だ。

ワルプルガのために希望を奪われ続ける魔法少女達は苦しそうにドッペルを出し続けて黒いオーラを纏っている。

我を忘れて人を襲ったり、貪ったり、地獄のような光景が広がっていた。
ヒトの身で抗うことなど叶わず、道端であろうと、避難所であろうとかまわずヒトは次々と肉塊へと変わっていった。

まさに逸話にあるワルプルギスの夜そのものだ。

中にはヒトを愛する魔法少女もいただろう。しかしその愛する者も、呪いに飲まれた魔法少女は躊躇なく貪る。
上げる雄たけびは快楽による副産物なのか、それとも後悔の悲鳴なのか誰にも聞き分けることはできない。

普通ならば魔女となるはずだがこの街の特殊な条件のおかげで魔法少女が犠牲になることはない。

犠牲になるのは、ヒトだけだ。

暴れる魔法少女達に電波塔が壊されないよう、ピリカはポンベツカムイを呼び出し、塔の周りを防衛させた。

これでワルプルガが完全体になるまで邪魔が入ることはないだろう

ワルプルガの肉体が復活すると魔法陣は消え、反動を受けた3人はその場に倒れてしまった。

呪いを受けた3人はいずれ眼下の魔法少女達と同じようにドッペルを出し続けて暴れることだろう。
しかしシオリはそれだは飽き足らないようだ。

「その3人は過剰な穢れを持つのが十分だろう」

そう言ってシオリは穢れを凝縮させたグリーフシードのようなアイテム「カオスシード」を3人の首元に投げつけた。

環いろは、鹿目まどかには深く突き刺さったものの、一人だけカオスシードを弾いた。

驚いた、儀式の呪いと希望を奪われてまだ立ち上がる力があるとは。

「夏目かこ、なぜ動ける」

「本当にあなた達は神浜の魔法少女を知らなさすぎる。あなた達の思い通りにいくと思わないほうがいいですよ」

「こいつ、縁を切ったのか。切られた感覚はなかったぞ」

[偽装の力を使ったから当たり前ヨ]

なぜ、死んだ者の声が聞こえる?

[僕たちが一番厄介な存在だと思ったみたいだけど、タダで倒れたりしないよ]

あの時確かに屠ったはず。

[さあ、聞かせてもらいましょうか。あなた達の真意を]

「常盤ななかたち、なぜそこに立っている。ソウルジェムは確かに砕いたはずだ」

[ええ、私たち3人は確かに死にました。

あくまで私たちは一時の記録の再現に過ぎません。かこさんがいるからこそ、ここに立っているのです]

よく見ると夏目かこの頭にある飾りのうち三つの栞が光を放っていた。

「そうか、再現の力ってのは便利なものだな」

「邪魔をする気はないです。教えてください、ここまでしてやり遂げたい本当の目的を」

「それは僕も興味があるね、日継カレン」

足元を見ると久々に見たキュゥべぇの姿があった。

「久しいねキュゥべぇ。これが前に言ったあんたに帰ってくる見返りだよ」

「かつてワルプルガは魔法少女になったが、その時以上に大きな因果を感じる。

もし契約してくれたら、僕たちのエネルギー回収ノルマは目標を達成するだろう。

お手柄だよ、日継カレン」

「キュゥべぇさんと手を組んでいたのですね」

「契約してくれないと自動浄化システムを広げられないからね。

でもそれで終わりじゃない。

見ればわかるだろう、魔女とならずに躊躇なくヒトを殺戮できるこのシステム。

自動浄化システムが世界に広がれば魔女とならずに人間社会を」

「倫理観を」

「価値観を」

破壊することで魔法少女が中心となった新たな組織システムを構築できるようになるだろう。

そこには歯車のように奴隷となる決まりも生きるために働かなきゃいけない呪いも、信じる神のために他者を殺すディストピアは存在しない。

魔法少女のための新たな社会システムを構築して皆が曇りなく生きる世界とするのが私たちの本当の目的だ」

「そうですか、だから私のように今までの固定概念を殺すほどの穢れを皆に流したのですね」

「いずれ魔法少女とヒトは敵対する。

躊躇していたら魔法少女が奴隷にされてしまうぞ。今まで行われた戦争のように」

[敵わないわけですね]

予想外ではあったが結果的に邪魔が入らないのに代わりはなかった

もうすぐ、終わりが始まる。

「なるほどね、まあここでワルプルガが契約してくれれば君たちだけの問題だ。それまでは見届けさせてもらうよ」

「ま、今はそう思ってくれていいよ」

「…!来る!」

いきなりピリカが反応して何事かと思うと太い蔓が地面から伸びてきて私たちの前に3人の魔法少女が現れた。

「十咎ももこ、大きく想像を超えてきたな。
そこまでして私たちの前へ何故立ちはだかろうとする」

生えていた蔓はすぐに燃えて跡形もなく消えてしまった。

「もうあんた達のやり方が正しかろうがどうだっていい。

あたしらの日常を壊したこと、それを悔い改めさせるまであんた達を許せないんだよ」

「へぇ、悔い改めさせるって、どうやるのさ」

「そりゃもちろん、ぶっ殺すに決まってるだろ!」

十咎ももこが私に斬り掛かってくると、間にピリカが割って入って十咎ももこを突き飛ばした。

「相手なら私がします。シオリとカレンには触れさせませんよ」

「舐めんじゃないわよ!」

3対1で戦いが始まった。

ただ倒すだけならここから突き落とせばいいだけだろう。

だが私たちの目的は魔法少女を殺すことではない。

少々好戦的になっているピリカが不安ではあるが、あの3人相手であれば問題はないだろう。

「夏目かこ、あなたは加勢しなくていいのかい?」

「あれはももこさん達の問題です。私たちが手を出すほどではありません。

しかし、別の用ならあります」

そう言うと夏目かこはドッペルを身にまとい、私たちに目掛けて栞を飛ばしてきた。

私は弾き飛ばすことができたが、シオリとピリカには突き刺さってしまい、魔力を採取されてしまった。

「夏目かこ、何をした!」

「過去を教えてもらえないのであれば見るまでです」

夏目かこはピリカとシオリの魔力が篭った栞を掌に乗せ、二人の記憶を覗き始めた。

 

3-13:BACK
レコードを巻き戻す:top page
NEXT:4-2

【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-13 ワルプルガを讃える夜

「律儀に学校生活送ってからくるなんて、本気かどうかわからないねぇ」

シオリ達の使っていた廃墟の場所がワれているのは憶測でしかなかったけど、念のためということで捨てることにした。

どの道、用意は出来ていたからいいけど余計な手間が増えたのは確か。

それにしてもピリカは持ち場を離れてどっか行っちゃうし、中央区ではすでにカレンが一戦交えたっていうし、暁美ほむらの襲撃から退屈で仕方がない。

とはいえ、始まってしまえば準備が整うまで一番負担があるのはシオリ。

分かってはいるけど、始まるまではお預けだね。

と、考えていたらたくさんの魔法少女反応が近づいてきていた。

「見つけたぞ、紗良シオリ!」

廃墟になだれ込んできたのは港で戦った都ひなのとその仲間、後は街中で見かけた魔法少女達か。

廃墟を丸々囲われて、普通ならば逃げ場はない状況。

「丈夫そうで安心したよ、都ひなの。一部の欠損だけで済んだだけマシじゃないか」

「ふんっ、戯言を言っている場合か。身の安全なんて保証できる状況ではないことがわかってるはずだ」

「悪いけど、今はまともに戦う気はない」

シオリはポケットから穢れのたまりそうなグリーフシードを5つ取り出し、シオリのソウルジェムに少し当て床へ突き刺した。

すると周囲に魔女の結界が広がっていき、廃墟を取り囲んでいた魔法少女達がみんな結界に閉じ込められた。

「これは、魔女の結界を暴発させたのか」

「鏡の魔女って相当やばいやつなんでしょう?魔女を倒していないのに、なーんでこいつらの結界が出てくるんだろうねぇ」

「バカを言え、マギウスみたいに使い魔を育てない限りは。
お前まさか!」

「グリーフシード調達は生きる知恵、使い魔が育ったら魔女になるって、知ってるでしょう?」

話を聞いていないかのように魔法少女達はシオリに飛びかかってきた。

でも、シオリは結界内の鏡を合わせ鏡にしてその場から飛び上がった。

するとどうだろう、合わせあった鏡の中から光がこぼれ、動いた魔法少女達はみんな何処かへ消えてしまったではないか。

「別の場所へ飛ばされたっていうの?」

「それじゃあ、こいつらの始末は任せたから。

追いかけたいなら追ってきてもいいよ。

その代わり、新たな鏡の魔女が誕生しちゃうかもしれないね。

一体どれほどの人間が犠牲になるか考えたら、あんた達のやることは一つだよね」

そう言ってシオリは結界の外に出た。

案の定、結界の中にいた魔法少女達は使い魔の討伐に勤しんでいた。

「ほんっと、どこまで本気なのやら」

シオリが結界を誘発させたタイミングで他の使用していた廃墟でも鏡の魔女の結界が広がって、集まった魔法少女みんなが神浜に散り散りの状態となった。

全く、穢れを送るって行為はあまりしたくないっていうカレンだけど、こうやって役立つんだから積極的に使ってほしいところだけどね。

撹乱に成功したし、シオリは中央区に行こうかな。

鹿目まどかもいい感じに仕上がってる頃だし。

アリナっていう結界を操る魔法少女の魔法を真似て結界を作った場所に鹿目まどかとカレンがいる。

特性は魔女の結界と同じだから普通は目に見えない。

其の場凌ぎの隠れ家としては十分すぎる。

そう言えばピリカは戻ってきてるだろうか。

ピリカ、約束の時間までに戻ってきたらいいけど。

結界内に入ると、予想していた二人ともう一人がいた。

「夏目かこ、早い到着だったじゃないか」

「シオリさん」

目つきもオーラもかわっちゃってるね。まあ、いい変化ではあるけど。

「素直に参加してくれるなんて思わなかったよ」

「あなた達の考えに賛同したから参加しているまでです。自動浄化システムが世界に広がった後は、好きにさせてもらいますからね」

「構わないさ。私たちを殺しにかかってもかまわない、それだけのことをやってきたからね」

シオリは二人の間を通り、環いろはのように結界内で穢れを蓄積させている鹿目まどかの前に立った。

ちょっと穢れの量が多くないか?

「カレン、このままだと下手したら廃人になるよ」

「彼女は心が強いようだからね、半壊する程度が丁度いいんだよ。それに、少しの間だけ心ここに在らずって状態になってくれればいいだけだからね」

「ひどいことするねぇ」

「どの口がいうか、時間があればこんなことしないさ」

「はいはい、シオリが悪かったよ」

そう話していると、結界内にピリカと環いろはが入ってきた。

環いろはは想像通りいい顔しているじゃないか。
でもピリカは、片腕の袖がない状態だった。

「ピリカ、その袖はどうした」

「ごめんね、時女のリーダーが持つ聖遺物を回収したくて」

「時女の?回収しないとまずいものだったか」

「心が折れない力がこもった剣だった。放置しておくと間違いなく殺されていたと思う」

「まあピリカが生きているだけでもよかった。全部終わったら返してやれよ」

「うん、わかってる」

まさかここに来て聖遺物を嗅ぎ取るとはねぇ。聖遺物の倉庫を持ち歩いているのはピリカだし、丁度いいか。

「ねぇ、やるなら早くやりましょうよ。

自動浄化システムを広げる儀式」

「あなたがそう言い出すとは思いませんでしたよ、いろはさん」

「だって、こんなにも、ういを求めるようになっちゃったのはカレンさん達のせいなんですからね。
早く終わらせて、邪魔な人間をたくさん殺さないといけないんですから」

「いろはさん…」

「怖いこというようになったねぇ。
ま、メンツが揃ったし始めようか」

「なら、結界は破壊しておこう」

そう言ってカレンは糸で周囲を囲んでいる結界と鹿目まどかを囲う結界を破壊してシオリ達は電波塔の上に降りた。

結界から出てきた鹿目まどかの目は虚ろで、心ここにあらずな状態ではあったものの、魂は壊れていない様子だった。
でもその場に膝をつき、動く気配はなかった。

外は黄昏時が過ぎようとしていて暗くなり始めていた。

「じゃあピリカ、出してくれ」

ピリカは頷き、掌の上に輝く光の玉が現れ、それが床につくとそこには遺骸が出現した。

「これは」

「聖女ワルプルガの遺骸だよ。魂は魔女になっても、魔力が残って聖遺物として残り続けていたんだ。
蘇らせるには丁度良い触媒だろう?」

「あなた達は、いったい」

そう夏目かこが問いかけてきた時、シオリは大事に持っていた錬金符を取り出した。

「錬金術師の大事な弟子であり、人間社会を破壊する存在さ」

錬金符をハラリと落として、地面についたら魔法陣が起動した。

錬金符は師匠がシオリに教えてくれた錬金術で、普通は扱えない種類の魔法を行使できるものだ。

魔法さえ使えば生成できるのだが、効果は知っているものしか付与させることができない。

この錬金符には師匠が使用した再臨の魔法が籠もっている。

それに3人の固有魔法を使わせる操作の魔法、因果を束ねるカレンの魔法を混ぜたオリジナルの錬金符だ。

こうするおかげで、かつての師匠の失敗を再現しないはず。

しかし、錬金符を使用した際のデメリットは取り除くことができなかった。

錬金符が地面について発動すると、シオリには急激に穢れが流れ込み、その勢いでドッペルを出すと同時に電波塔周囲へ激しい電撃が走った。

金属が埋め込まれた地面や建物が地を離れて宙に浮き、小さな足場しかない電波塔の周りをゆっくり回り出した。

魔法陣が発動すると夏目かこ、環いろは、鹿目まどかは操られるかのようにワルプルガの遺骸を囲むように配置についた。

そして、カレンがこう言い放ち、シオリ達の計画は成功が約束された。

「さあ始めようか。ワルプルガの復活を讃える、ワルプルギスの夜を!」

 

第三章:ソノキジュンハ ダレヌォ メセン? 完

 

3-12:BACK
レコードを巻き戻す:top page
NEXT:4-1

【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-12 悪魔法少女

私たちはみかづき荘の玄関前に降りて、アリナ先輩がいきなり魔法少女の姿になって呼び鈴を鳴らした。

するとすぐに家の扉が開かれ、5人の姿が見えたの。

「はぁーい、みかづき荘のみんな。環いろはの場所、知りたくない?」

アリナ先輩が陽気に話し出した!

新鮮だけど、どうしてそうなったかわからない!

覚えの魔力を感じたから玄関へ急いだら、思いもよらない言葉が飛んできて正直驚いた。

「アリナ・グレイに、御園かりん」

「お姉ちゃんの居場所、わかるの?お姉ちゃんの居場所を教えて!」

「どういう風の吹き回しか聞かせてもらえるかしら」

「ここで立ち話してていいワケ?

アリナ達が逃げ出したってあいつらは知っているはずだから、早くしないと環いろはを別の場所にムーブされると思うんですケド」

「おい、こいつらのこと信じていいのか」

紗良シオリ達の潜伏先は割れている。

アリナ達の話を聞く必要はないかもしれないわね。

でも、一応聞いてみようかしら。

「紗良シオリ達の居場所はすでに突き止めているわ。あなた達の誘いに乗る気はないわ」

「待って欲しいの!SNSに記載されている場所とは違った場所にいろはさんは捕らえられているの!

私たちが案内しないと絶対わかるはずがないの!」

「そう、だったら私だけ行くわ」

「やちよさん、私はアリナさん達についていきたいです!」

「ういちゃん?!」

「オーケー。じゃあ、さっさとついてきてヨネ」

「おいちょっと待てよ!」

アリナは待たずに御園かりんと西の方角に飛んでいってしまった。

「やちよ、どうする」

「私は追うわ。鶴乃は予定していた場所へ向かってここで起きたことを伝えて頂戴」

ピッ

「仲間外れなんていや。みんなにはここで起きたこと伝えておいたから。

さ、2人を見失わないうちに追いかけようよ!」

こんなときに余計に頭が回るんだから。

「私も追った方がいいと思います。みんなで行けば、いろはさんを助けることだけはできるかも」

「なんだよさなまで、ぜってー罠だろ」

私たちが話していると、ういちゃんは魔法少女姿に返信して、凧に乗ってアリナ達が向かった方向に飛んでいってしまった。

「ういちゃん?!」

「いけない!追うわよ!」

「わかったよ、行きゃあいいんだろ!」

ほぼ強制的に私たちはアリナ達を追うことになった。

まさかういちゃんが自分から動くとは思わなかったけど、いろはも頑固なところがあるし、さすが姉妹って思ってしまった。

罠であることを警戒して私たちで動くことにした。

アリナ達の後を追っていると彼女の言った通り私たちの把握している場所とは違った方角に進んでいた。

神浜マギアユニオンの他のメンバーには鶴乃のメッセージが届いているみたいで、それぞれが目的の場所に向かい始めていた。

アリナ達は廃墟の前で立ち止まり、私たちがついてきていることを確認すると中へと入っていった。

私たちも急いで廃墟の中へ進んでいくと、そこには禍々しい色に染まったキューブの中に、確かにいろはの姿があった。

「アハッ、一回外に出たから認識できたけど、かなりいいカラーに仕上がってるんじゃない?」

「ふざけたこと言わないで。これはあなた達がやったことなの?」

「行動を起こしたのはアリナ、でも指図したのは別の奴なワケ。

ま、アリナがこうして目を覚ましたのはフールガールが拐ってきた環いろはのおかげなんだけどね」

「いろはさんが、アリナを?」

「いろはさんと2人きりになってお願いしないと、他の人がアリナ先輩にひどいことしちゃうと思ったから。それを日継カレンって魔法少女に助けてもらったの」

「そう、経緯については把握したわ」

いろは、見捨てることはできなかったのね。

その結果捕われてしまったなんて。

私は武器を構えてキューブを破壊しようとしたとき、いろはを捕らえているキューブに亀裂が入り始めた。

「アメイジング、結界を内側から破るなんて想定外!

結界で収まりきらないなんて、イブ以来なんですケド!」

亀裂からはドリドロとした液体が溢れ出てきて、結界が破壊されると禍々しい色の液体を被ったいろはが出てきてその場に現れた。

「お姉ちゃん!」

わたしは近寄ろうとしたういちゃんの前に手を出して行く手を阻み、その場に身構えた。

「うい、そこにいるの?うい、うい!」

いろはが顔を上げると穢れが満ちたソウルジェムからピンク色の布ができていろはをぐるぐる巻に包んでしまった。

その後、魔法少女でありながら倒すべき敵の反応を示し始め、布を破るように変わり果てたいろはが姿を現した。

「お姉ちゃん?でもその姿、それにこの反応ってまるで」

「魔女の、反応」

いろはの色が変わったマントの裏からは包帯が伸びてういちゃんの手足に巻きついて力強く引き始めた。

いけない!

わたしは手にした武器で包帯を絡めとり、地面へ突き刺した。それでもういちゃんに巻きついた包帯は解ける様子がなかった。

「うい、この世界は、人間は危ないからね、waタしがしkkari守ってあゲr!」

いろはがそう声を荒げると周りが廃墟だった景色はみるみるうちにお城の中にいるような風景に変わっていき、窓から見える夜空には機関車がチラチラと見え隠れしていた。

そして周りには穢れが充満し始めた。

「魔女の結界?!ウソだろ、神浜じゃ魔女にならないはずだぞ!」

「やちよさん、そこどいてくださいよ。

ういを抱きしめられないじゃないですか」

「今のいろはにういちゃんを渡すわけにはいかないわ。何をしだすかわからない」

「何って、ういを抱きしめてわたしなしでは生きていけないようにしてあげるんですよ。そうすれば、ういはヒトの穢れに触れず、苦しい思いをしないで済みますからね」

「いろはちゃん、紗良シオリ達に何されたの!」

「シオリさん達は真実を教えてくれただけだよ、つるのちゃん。

もしかして、みんな邪魔をするの?」

「目を覚ましなさいいろは!紗良シオリさん達のやってることは人に被害をもたらすのよ」

「だからいいじゃないですか、世の中不幸にするヒトを減らせるんですよ?」

今のいろはの状態に思考が追いつかない。

いろはの魔力は黒いオーラの魔法少女みたいに混ざった反応だし、でも自我があって魔女の結界まで生成してる。

こんな状況、長い間神浜にいても経験した覚えがない。

でもまずは大人しくさせるしかない。

「ねえ、そろそろウイをhanあしてあげて」

「離すのはあなたよ、いろは」

「ジャmAをすruNお化!」

いろははついに私たちに包帯で攻撃をしてきた。

「やちよ、いろはちゃんの姿をよく見たらドッペルの姿に似ているよ」

「気がするで済むものじゃないわ、ドッペルと融合してるのと同じよ」

誰もいろはに攻撃を加えず、さなさんは動けないわたしとういちゃんを庇ってくれた。

「訳わかんねぇけど、今すぐぶん殴って正気に戻してやる!」

そう言ってフェリシアは襲いかかってくる包帯を避けながらいろはの懐まで近づいた。

「近くは苦手だもんなぁ!」

そう言ってフェリシアがハンマーを振り上げるとそのままいつものように振り下ろさずに動きが止まってしまった。

「フェリシア?」

「いつものわたしとは違うんだよ、フェリシアちゃん」

いろははどこから取り出したのかわからないナイフをフェリシアの心臓部分に突き立てていて、そのまま予想外の痛みで動けなくなったフェリシアを蹴り飛ばした。

そして形状が変化した鳥のような足でしっかりと地面へ押さえ込み、そのまま獲物を啄むように血を辺りに散らしながらフェリシアへ何度もナイフを突き立てた。

ンヴァアアアアアアア!
アハハハハハハアッハハハハハハッ!!!!

私たちのやめなさいという声を打ち消してしまうほどのフェリシアの叫びと聞いたことがないいろはの狂気な笑い声が結界内に響き渡った。

それと同時に周りの結界は血が通ったように血管を血が通るような蔦が現れ始めた。

鶴乃がフェリシアを助けようとして近づこうとすると、大きな魔力の塊がいろはに直撃した。

後ろに下がったいろはの隙をついて腹部分が穴だらけになったフェリシアを鶴乃が助け出した。

「今の魔力、ういちゃん?!」

ういちゃんの隣には四つの凧が円形に回っていて、その中心から魔力が放たれたようだ。

ういちゃん自身は涙を流しながら噛み締めた表情をしていた。

「もうやめて!そんなお姉ちゃんなんて嫌いになっちゃうんだから!」

そう言ってもう一度ういちゃんはいろはへ魔法弾を放った。

魔法弾はいろはに直撃しても全くダメージを与えている様子はなかった。

「ういがわたしを嫌っても、わたしは大好きだから好きにさせてあげる!」

そう言っていろはは包帯をういちゃんに向けて突き立てできたけど、さなさんがしっかりと盾で受け止めてくれた。

しかしいろはの攻撃はただただ暴れるだけのように四方八方へ飛び、一切干渉しようとしていないアリナやかりんさんへも矛先が向いた。

「アハハハハハッ!!!」

結界が攻撃に耐えられずに倒壊し始めた頃、いろはの後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「そこまでですいろはさん。戯れは後にしてください」

そう言っていろはの行動を止めたのはピリカさんだった。

「ピリカさん、あなた!」

「ピリカさん邪魔しないでくださいよ、ういがいなくなっちゃったじゃないですか」

その言葉を聞いてはっと後ろを振り向くとういちゃんの姿はなかった。

まさか、例の別の空間へ飛ぶ力を使ったの?

「時間が迫っています。わたしについてきてください」

「あら、そうでしたか。でも、そのあとは自由にさせてもらいますからね」

「もちろんですよ」

そう言っていろはは手を差し出しているピリカさんの手をなんの疑いもなく握りしめた。

「待ちなさい!」

「ワッカ、濁流と化せ!」

私たちは濁流に呑まれて結界から、廃墟から押し出されてしまった。

廃墟は濁流の衝撃で崩れてしまい、中央区へ向かういろは達の姿だけは確認できた。

「チクショウ、なんだよ。かこだけじゃなくいろはまでいなくなっちまうなんてオレは、オレは!」

「フェリシア落ち着いて、血が止まらないよ!」

「鶴乃、さなさん、フェリシアを調整屋へ連れて行ってあげて。私はいろはを追うわ」

「うん、わかった」

わたしは一人でいろはが向かったと思われる中央区へ急いだ。

いろはをあんな状態にした日継カレン、許すことなんてできない。

 

 

「さて、アリナ達はどうするか」

「遠くから見ることしかできないの、あんな戦い、命がいくつあっても足りないの」

「ま、このあと面白そうなことが起こりそうだし、遠くから眺めて、サイッコーの瞬間を脳裏に焼き付けようか」

「遠くから眺めるくらいならいいと思うの」

今の神浜はひどい状況かもしれない。

でも、アリナ先輩と一緒にいるこの場所は、この瞬間は最高な状況だと思って、わたしは思わず微笑んでしまったのでした。

 

 

3-11:BACK
レコードを巻き戻す:top page
NEXT: 3-13

 

【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-10 一族の信念はカムイに響かず

今日の夕方に魔女にならないシステムを世界中に広げられる魔法少女たちのアジトへ攻め入る戦いが行われる。

もちろん世界へ広げるという行為を妨害するわけではなく、その実施方法に問題があるからその方法を見直させるために捕らえる。

人を犠牲にしてまで私は、私達は生き延びたいとは思わない。

でも集まってくれている一族のメンバーの中には神浜マギアユニオンへ協力して彼女たちを止めるという行為自体に疑問を持つ子たちもいる。

だからわたしは魔法少女会議から戻ってきた後、みんなに今日のことを話し、一緒に来てくれる少人数だけで神浜マギアユニオンへ協力することにした。

魔法少女会議に参加してから気になっているのは、ピリカさんが彼女たちのメンバーだったということ。

あの時見た傷痕と、売られた経験があるという話。そして人へ呪いを押し付けるという彼女たちの考え方。

最近までの巫も売られていたというのは事実。

でも人を憎むほどの感情を抱いたことはない。

いったいどこで意識の違いが出てしまったのだろう。まずはそこを分からなければ彼女たちも考えを改めてくれない。

私は売られるという気持ちを経験してしまったちゃるに心情を聞いてみた。

「それってピリカさんが言っていたっていう話に関係するやつ?

うーん、私の願いが無理やりかなえさせられたってところは神子柴を許せないってなるけど、だからと言って人が嫌いになるってことはないかな。

人の悪意を感じたときは気分が悪くなっちゃうけど、みんながみんなってわけじゃないからさ。

悪を討って普通に暮らせてる人を助ける。そんなヒーローになれてる現状に私は満足しているよ」

ちゃるは隠し事をできないことを知っているから、あそこまではっきり喋ってくれたってことは全然後悔をしていないみたい。

じゃあ、売られたという境遇の中でピリカさんと何が違うのだろう。

そう考えていると外が慌ただしくなっていることに気づき、私のところへ涼子さんが走ってきた。

「おい!ピリカってやつが寺の門にいるからきてくれ!静香さんを呼んでるんだ」

私はちゃる、すなおと一緒に外へ出るとみんなが魔法少女姿になったピリカさんを囲んでいた。

「ピリカさん、ここへ何しにきたんですか」

「最後の意思表示を確認しにきたんですよ」

「確認?」

「わたし達は明日、自動浄化システムを世界に広げます。明日が過ぎればあなた達が求めている魔女かしない世界になるのです。

その上で、周りから聞いた情報をもとに私たちを妨害するのかどうか。

その答えを聞きたいのです」

「でもそれは、人に呪いを押し付ける方法でなんだよね」

「はい」

妨害したいわけじゃない。

でも考えを改めさせるというこちらの考え自体が彼女達にとっては妨害行為に該当してしまうのだろう。

ならば、最後に確認するべきことはこれだけ。

「人へ呪いを押し付けるというのは仕方がないことですか、それともあなた達の故意ですか。

故意だというのであれば、私達は妨害せざるを得ません」

「問いへ問いで返してくるのですね。

呪いが生じるのは仕方がないことであり、押し付けるのは故意でもあります」

「そうですか。

みんな、ピリカさんを捕らえなさい!」

「「はい!」」

みんなが動き出すよりも早くピリカさんは地を蹴って瞬間移動したかのような早さでわたしの目の前にいました。

「ワッカ、障壁と化せ!」

ピリカさんがそう呟くとわたしを中心にして水の障壁が円形に形成されました。

そして近くにいたちゃるは回し蹴りで、すなおは巴投げで水壁の外へ追い出されてしまいました。

その後ピリカさんは何かを呟き、水壁には電気が走り、外には首長竜のような生き物が現れました。

外のみんなはその首長竜と障壁に邪魔されて中に入ってこれない状況となりました。

わたしも魔法少女姿となって剣を構えました。

「なるほど、変に強い魔力を感じると思ったらその剣が原因でしたか。

あなたが心を折らずに立っていられるのはその聖遺物のおかげかもしれませんね」

「聖遺物?なんのこと。これは時女の家で代々巫の力で鍛えられた剣よ」

「そうですか。

聖遺物とは魔法で生成されたもの、または物質へ魔法少女の魔力が込められて特殊な力が付与されたもののことです。

あなたの持っている時女の剣も十分聖遺物に該当します。

そうなればなおさらここであなたを無力化しておく必要がありますね」

「ねえ、どうしてあなた達はこうしてまで人を不幸にする方向を押し進めようとするの?

貴方達も人にひどいことをされたかもしれないけど、みんながそんなわけないでしょ。
罪なき人も見境なく不幸にしてしまうことは良くないことよ」

「その罪の基準は誰基準ですか、自身ですか、それともヒト基準ですか。ヒト基準の罪など人間社会を維持するための歪んだ思想でしかないです。

ヒトを信じているあなたも、それに染まっているのでしょう」

「ヒトの考え方そのものが良くないというの」

「人間社会は意識の違いによるすれ違い、権力者の支配力を高めるために洗脳に近い教育を幼い頃から行います。

神を信じなさい、国のために働きなさい、いやでも働け、女は男に尽くせ、お金がないと生きていけない。

これらの考えはなぜ常識と呼ばれるようになったのでしょう、これらの考えから離れるとなぜ悪者となるのでしょう」

「それがこの世を乱さない最適な考えだからよ」

「そうですか?お金を巡っていったいどれほどの不幸が発生してきたと思っているのですか。

通貨があれば物々交換よりもものの価値は分かりやすくなるでしょう。

しかしものの価値など人によって違う、それに通貨がなくてもお互いの利害が一致すればものの交換で済む

お金という世を乱す物が最適な考えだと本当に思ってるのですか?

「どうやら話しても無駄なようね。どう話されようとも、わたしの考えは変わらないわ」

「あなたも思考を停止してしまうのですか。

ならば、ここで無力化させてもらいます。

アペ、刃と化せ!」

ピリカさんは炎の剣を手に持って私に切り掛かってきました。

村での修行でしか人と戦ったことがない中で相手を無力化する方法に少し悩んでいた。

相手の攻撃を受け止めながら行き着いた答えは四股を動かない状態にすること。

斬り落すまで行かず、骨を折るくらいならば命を奪うこともなく無力化できるでしょう。

私は相手の斬撃を受け止めるようにし、隙をついて足を無力化することに専念した。

斬撃を飛ばしてきて所々火傷をしているうちに私はあることに気がついた。

剣を持つ手の損傷が激しい。魔力で痛みを和らげているけど、普通なら剣を握ることも出来ないくらいダメージを負っていると思う。

もしかして、相手の狙いは私が剣を離すこと?

だとしたら長期戦は不利にしかならない。

でも相手の攻撃を受け止めるのがやっとの状況でわたしのペースへ持っていくことができない。

水壁の外ではみんなが中に入ろうとしているみたいだけど首長竜に妨害されて進展がない様子。

私を抑えながら首長竜のような生き物も操るなんて、ピリカさんは何者なの?

もう水壁の外に出るしかないと考えて思い切って飛び込むと水壁に走る電撃によって体が痺れてそのまま水流で内側にはじき返されてしまった。

「無駄です。ここから出るのは私が果てるかあなたが折れた時だけです」

そう言いながらピリカさんは私の方へゆっくりと歩いてきました。

こんなところで私は折れるわけには行かない。

日の本の国を守れずに、仲間を守れずに倒れるわけには行かない!

私は痺れた体でありながらも無意識にお母様から教わった技を出すために体を動かしていた。

体を回して円を描くように斬りあげる。

そして目標目掛けて力を込めて振り下ろす。

この技を使用すると間違いなく相手の体の一部は吹き飛び、剣に纏った風圧によって斬り下ろした先も斬撃によって地がえぐられ、木々もなぎ倒す。

強敵の魔女以外には使ったことがない技を使用し、やってしまったと思いながらピリカさんの吹き飛んでしまった右腕を見ていた。

しかし、斬り落とされた右腕の根本から禍々しい色をした炎のようなものが溢れ、腕の形になったら手には剣が握られていた。

これは一瞬のうちに起こったことであり、私は思考が追いつかない間に仰向けになって倒れていた。

視界がぼやけていき、どんどん体が冷たくなっていく感じがした。水壁が消えるところまではわかったものの、そのあとは意識を保てず、気を失ってしまった。

ピリカさんが出した首長竜に妨害されて水壁の中に入れない状態の中、水壁が消えます。

そこには右腕が炎のような状態になっているピリカさんと上半身に大きな切り傷がつい手倒れている静香ちゃんがいました。

「静香ちゃん!」

私達は静香ちゃんのところへ駆け寄り、血溜まりになっていることも関係なくその場に膝をつきました。

「静香、しっかりしてください!癒して傷口を塞がないと」

みんなが静香ちゃんに夢中になっている中、ピリカさんは時女の集落で大事にされてきた剣を手に取り、それを光の球に変えて拳で握ると消えてしまいました。

「時女の剣は預かりました。すべてことが済んだらお返ししにきます」

そう言ってピリカさんが寺の門へ歩き出すと時女のみんながピリカさんを取り囲みました。

「待ちな、本家をここまで傷みつけられてただで返す気はない。元々あんた達を捕らえる話になっていたからね、おとなしく捕まってもらうよ」

涼子さんが門の前へ仁王立ちになり、そう話しました。

私とすなおちゃんは静香ちゃんのそばにいました。

「無駄に血を流すことになりますよ。ここで抑えようなんてことは堅実な考えとは思えませんね」

「だとしてもよ。覚悟しなさい!」

そう言ってみんながピリカさんに飛びかかるとピリカさんの足元からは知らぬ間にいなくなっていた首長竜が現れ、みんなは水圧で飛ばされていきました。

ピリカさんの右腕は炎のような形にはなっておらず元どおりとなっていて、手元には強い悪意を感じる禍々しいオーラを放つ刀を持っていました。

カムイを超えられなかったあなた達が手を出せるとでも思いましたか。

事が終わるまで静香さんを見守っていればいいんですよ。

気づいた頃には、すべてが終わっているでしょうから」

吹き飛ばされた時女の子が諦めず襲い掛かろうとしていました。

私はとっさに声を出してしまいました。

「やめて!ピリカさんを行かせてあげて」

「何故ですか!彼女達を捕らえるのが元々の目的。1人しかいない中ならこの人数でかかれば」

「だからやめて、敵わないとわかっているのに命を無駄にするのは。静香ちゃんだって、みんなが命を落としてまで戦ったことを喜んでなんかくれないはずだよ!」

ほとんどの子は武器をおろしてくれましたが、涼子ちゃんと遠くで構えている旭ちゃんはまだ戦う気でいました。

旭ちゃんは私たちに背を向けているピリカさんに対して発砲してしまいました。

しかしピリカさんは銃弾を持っている刀で斬り落としてしまい、分断された弾丸は地面と寺の門をえぐりました。

「カンナ、貫いて!」

そう言ってピリカさんは左手に形成された雷を纏った槍を旭ちゃんが待機している場所へ投げました。

周囲には風圧が広がり、旭ちゃんがいたであろう場所は槍の着弾と同時にその地面をえぐりました。

[旭ちゃん!]

[生きては、いるであります。でも左半身は動かせない状態です。申し訳ないであります]

「あなたもあきらめないのですか」

涼子ちゃんは変わらず門の前に立ちはだかっていました。

「私は時女一族の一人としてではなく、私自身が許せないからどかねぇんだ。通りたきゃ力づくで通りな」

首長竜が姿を消した後、ピリカさんは涼子ちゃんへ斬りかかり、涼子ちゃんは負けじと警策で立ち向かいます。

最初は互角のように思えた戦いでしたが、涼子ちゃんはダルそうに膝をついてしまいました。

「何でだ、こんなに穢れるのが速いだなんて」

涼子ちゃんはピリカさんの回し蹴りに対応できず、半壊した門の壁に叩きつけられて動けなくなってしまいました。

「それでは失礼します」

そう言ってピリカさんは姿を消しました。

出会った時は魔法少女ということしか知らず、優しい人という印象でしたが、今日この一時で全く別の印象となってしまいました。

紗良シオリさんや日継カレンさんの話で2人は強いと聞いていましたが、私からしてみると、ピリカさんこそ最も戦ってはいけない相手だと確信しました。

あそこまでの激戦の中、ピリカさんのソウルジェムと思われる宝石は輝いていました。

立ち向かうことなんて、元々できっこなかったんだよ。

私はその場で1人で心が折れてしまった気がしました。

 

 

3-9:BACK
レコードを巻き戻す:top page
NEXT: 3-11

【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-9 天才はその結果をまだ知らない

ういは顔を上げて目にたまった涙を袖で拭き取り、そのまま立ち上がった。

「わたし、みかづき荘に戻るね。そろそろやちよさん達が集まってそうだから」

|うん、気をつけてね|

わたしはそう言って送り出すことしかできなかった。

元々結界の中で4人が集まるのをずっと待っていた。それに苦はなかった。

でもどうして?

今の私は自由に外を動き回りたくて仕方がない。

・・・

これがワガママという感情なのだろうか。

そう考えていると灯花が病室の空間にやってきた。

「あら、万年桜のウワサいたんだ〜。この時間にいるってことはまた学校を抜け出してたんだね」

灯花は知らない。いろはがどうなっているのか、日継カレンという魔法少女達がやろうとしている事を。

教えると興味を持って危ない場所に行きかねないと伝えられているから。

「ういもねむもそろそろ学校が終わる頃だし、ニュースとかでは分からないこと話したいなぁ」

|えっと灯花、ういは|

「みかづき荘にいるんでしょ?」

|えっ!|

「だってー、今日の夕方に神浜を騒がせている日継カレン、紗良シオリ、保別ピリカを捕まえに行くんでしょ」

|・・・SNSに出てた話?|

「そうそう!私達を呼ばずに話を進めちゃうなんてひどい話だと思わない?!
中央区でかなーり危険なことになっているし、今頃敵のアジトだと思われる場所を攻撃しても意味ないと思うんだよね。

マギウスの時もやったけど、こういう時って穴になっているところで罠があるんだよ。

ぜったいわたくしを呼んでおけばもっといい提案をしていたとおもうにゃぁ」

|例えば何する?|

「魔法少女達も立ち入ることが困難になった中央区を見張るね。そしたら案外近くにいたりするんだよねー。

ちょっと考えればすぐだよー」

「そうやってみんなが行動している間、ボク達はなんの成果を出せていないじゃないか」

灯花が話すのに夢中になっている中、ねむはこの空間にやってきていた。

|灯花達に与えられていたのは、自動浄化システムを広げる方法。掴みようがないから広げ方もわからない、だったよね|

「概念への干渉なんて例のワルプルギスの夜を倒した時の羽同様、観測できるものがなければ敵わない。

クレメルもういも認識できない以上、やりようがないのは重々承知」

「ドッペルを発動したときに何処かへエネルギーが集中しているわけでもないし、現代科学の力では解決できっこないんだよ。

魔法少女の願い以外は別だけどね」

「だから因果量を測る装置を考えるんだって躍起になっていて今に至るわけだが、進展はあったのかい?」

「くふふっ、それについてはもう完成しててね、今日見てもらおうと思ったんだよ」

そう言って灯花が取り出したのは両掌に乗っかるくらいのアタッシュケースみたいな箱が一つ。

そして二つの留め金を外して出てきたのは魔法のステッキのように棒の先に丸い円盤がついたものだった。

「・・・見た目の時点では頼りないものが出てきたけどこれはなんだい?」

「これは魔法少女の素質を測る道具でね、決して魔法のステッキとかじゃないよ」

「可愛らしい装飾がされているから余計そう見えるよ」

「もう、普通に作ってって言ったんだけどにゃぁ」

「それで、その道具でどうやって魔法少女の素質を測るっていうんだい?」

「魔法少女の素質がある場合ってさ、キュゥべえが見えるものでしょ?それに魔女も認識できる。

魔法少女にしか見えないものが見えれば、その女の子は魔法少女の素質がわかるってこと。

この道具は魔法少女にしか見えない周波数を使用して数字をこの円盤の空間に映し出すことができるんだよ。

ただ見えればいいってわけではなくてね、映し出された数字が鮮明に見えるか、ぼやけて見えるかで素質の大きさを測ることができるんだよ」

「魔法少女にしか感知できない周波数、マギウスとして活動していたときの経験が生きたね。

それで、既に魔法少女であるボク達には当然見えるんだよね」

「もちろんだよ!見ててよ、今数字を表示するからね」

灯花は道具の根本にあるダイヤルを回しては押下、回しては押下を3回繰り返し、もう一つのボタンを押して私たちの方に向けてきた。

「さあ、ここにはなんの数字が見えるでしょうか?」

円形の中心に魔力のような反応があるというのはわかるけど、数字としては認識できなかった。

「きっと万年桜のウワサには見えないかもしれないけど、ねむならそれなりに見えるんじゃないかな?」

「見ただけで数字が3つあるのはわかる。でも全部重なっていて綺麗に見えるとは言えないね」

「じゃあ、どの数字が重なってるかはわかる?」

「2、8、7かな。全部違った形だからどの数字があるのかってとこまではわかる」

「そうかー、ねむでも綺麗に見えないってことは概ね成功って感じかな」

なんだか仲間はずれにされてるようでちょっとムッとしてしまった。

「もう、むすっとしないで。この装置が映し出す数字は、魔法少女の素質がある子が見ると数字は鮮明に、さらには並び順まではっきり判断できるってものなんだよ。

わたくしでもねむみたいに数字は見えても並び順までは把握できないから、ねむとわたくしの魔法少女の素質は同等程度ってことだね。

万年桜のウワサはもちろん魔法少女とは違った存在から見えないよ」

|魔力を感知するとは違うってこと?周波数の関係であれば私にも感知できそうだけど|

「万年桜のウワサは、わたくし達のテレパシーに参加できないよね」

|・・・そういうこと|

私はしなしなになった草のようにしょんぼりとしてしまった。

でも灯花は魔法少女の素質を測る道具で何をしようというのだろう。

|それを使って、どうやって自動浄化システムを広げようと考えているの?|

「もちろん、この地球上にいる強い魔法少女の素質を持つ子を探すためだよ。

そして、自動浄化システムを世界に広げてって願ってもらうの。概念に干渉できるのは、わたくしたちが魔法少女になる際の願いだけ。

だったら、その願いで広げるのが手っ取り早いでしょ!」

少し沈黙が続き、ねむがため息をついた。

「理論上は近道かもしれないが、人の道徳というものが決裂しているよ。

灯花はその考えをお姉さんに聞かせて、喜んでもらえると思っているのかい?」

「願いを強要しちゃうのはよくないけど、それなら心から願いたいって思ってくれるまで待てばいいと思うよ。それなら、相手に不利益はないよね」

「答えになってないよ」

「もう!じゃあこれ以外にいい考えがあったら教えてよね!」

|伝えるだけ伝えてみたらいいと思うよ。もしかしたらみんな許してくれるかも|

「でしょう?ねむより万年桜のウワサがわかってるね」

「むっ!」

|喧嘩はよくないよ|

ねむはそのまま自分が寝ていたベッドへ位置エネルギーに任せて座り、呼吸を整えた。

「それにしてもそんな装置、どこで作ってもらったんだい?」

「パパ様に周波数の実験装置が欲しいって言ってね、そしたら西の大国がその手の技術に詳しいらしくてね、設計図を渡したら1週間で完成品が届いたんだ。
優秀だよねー」

「そんな一般人にはおもちゃにしか見えないものを大きな国がね。改めて里見グループの凄さを実感するよ」

「くふふ、パパ様はすごいんだから!」

話している中、突然黄緑色の粒子が周囲に飛び交い、傷だらけのういが病室内に倒れ込んでいた。

「うい!どうしたの?!」

「お姉ちゃんが、お姉ちゃんがおかしくなっちゃった!うわぁぁぁぁぁぁ!」

ういはそう言ってその場に伏せて泣き出してしまった。

何があったのか、外で何が起きているのか。

ただ一つわかることは、いろはに大変なことが起きているということだけ。

 

わたしは、どうすればいい?

 

 

3-8:BACK
レコードを巻き戻す:top page
NEXT: 3-10

【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-8 自己犠牲のキモチ

「愛する人のため。

この作品に出てくる北斗という少年は愛する彼女のために自身の財産を全て委ねると遺書を残してこの世を旅立ちました。

彼女の難病を治すためのお金を全財産で賄おうとした北斗の行いは、果たして彼女の幸せに繋がるといえるのか。

ここに至るまでの内容を整理して、皆さんの感想を原稿用紙1枚分にまとめること、それが次回までの宿題です。

しっかり熟読しておくように!」

私は学校に行かずとも、灯花が登録してくれたデータでこの世界のことを覚えることができる。

人と違って、忘れることもない。

でも、国語や古文といった作者の気持ち、登場人物の考えを述べるよう問われると登録されているデータだけでは正しい答えを導くのが難しい。

ひなのからは人と接する以外にも読み物から人や物の考えを習得できると聞いている。

だから私は言語の授業には顔を出すようにしているのだけれど、今回の授業は今後の私のことを考えてしまうような内容だった。

あの時、うい達を謎の空間へ縛り付けたつづりという人物からある言葉を囁かれていた。

“今起きている事態を終息させるためには柊ねむが魔法少女となれるのが必須。
魔法少女になれないという呪縛を解くための最短の方法を、しっかり考えておいてくださいね。
全てはあなたの行動次第です”

灯花とねむの変身を妨害する腕輪の制御を掌握しているのは私。決められたルールに従って腕輪を外す、壊された場合はルールのレールに戻るよう再び腕輪を彼女達に装着することになるだろう。

私には逃れられないルール。

灯花とねむが魔法少女に変身できるようになるためには。

お昼時間になって私は気になることがあったので新聞部の部室に来ている。そこには窓から外を見ている令がいた。

「桜子さんか、昼にここへくるなんて珍しいじゃないか。いつものように中庭に行かないのかい?」

|今はそれができない。それに令に聞きたいことがあってきた|

「観鳥さんに聞きたいこと?いいよ、言ってみな」

|令は大切な人が、自分が死なないと助けられないと分かった時、どう立ち回る|

「難しい問いかけだね。もしかして黒いオーラの魔法少女の件について関わるのかな?」

|いや、今日の言語の授業で出た問いかけ|

「そっか、言語の授業には出るようにしてるんだっけ。

人間に限る考えなら思うように考えたらって言いたいところだけど、桜子さんはウワサだからねぇ。慎重に回答しないといけないね」

|どういうこと?|

この問いに答えることはなく、令は話し始めた。

「観鳥さんにとって命を投げ打ってまで助けたい存在はいない。だから観鳥さんは桜子さんの力にはなれなさそうだ、ごめんよ」

|そんなに難しい問題?|

「答えるのは簡単だろうさ。でも真剣に考えるととてもデリケートで、ある意味難題とも言える」

|答えるのが簡単なのに難題なの?どちらなの?|

「ヒトによって考え方が違うからね、もし桜子さんが間違いのない正解を求めているのであれば、難題と言って間違い無いね。

詳しく知りたいなら都先輩のところに行ったらどう?

あの人は観鳥さんが知っているあたり一番の人格者だからね、求めている答えがもらえると思うよ」

令からは欲しい答えをもらえなかったので言われた通りにひなののところへ行ってみた。

令は化学部の部室にいると言っていたけれど、魔力反応を辿るとひなのは屋上にいた。

いつもとは違った、黒い眼帯を付けているひなのは中央区の方向を見ていた。

「ん?桜子か、こんなところに何の用だ?」

私は令に問いかけたことと同じことを話した。するとひなのも難しそうな顔をした。

ひなのは顔をあげると再び中央区の方を見ながら話をはじめた。

「参考程度にひとつ話をしてやろう。

あたしは自分を犠牲にして後輩達を守ろうとした。

大怪我したのはあたしだけで済んだが、助けた後輩達はあたしのためと言って危険な行動を取るという結果が出た。

あのバカどもららしい考えだが、正直あたしは嬉しいとは思わなかった。傷つけたくないと考えた行いが、結局は心も体も傷つけさせる結果になってしまったからな」

ひなのは退院後、衣美里、梨花、れんがひなのの敵討ちのために紗良シオリの討伐作戦に参加したと聞いて3人へ説教したと話を聞いている。

他人のための行いはみんなが幸せにならないということ?

「あたしが桜子に出せる回答としては、“他人のための”と思って命を投げ出すなってことだ。

魔法少女に契約する際と同じような忠告だが、もし命を投げ出すようなことがあれば“自分のために”を優先したほうがいい。

相手のためを考えても、決して思った通りの結果にはならない。

お前のやりたいように考えればいいと思うぞ」

|なるほど、令が言った通り難しい|

「・・・それより、何でそこから出てこないんだ?」

|私は外に出ることができないから。でも何となく分かった。ありがとう|

そう言うと私は青空の下へ踏み出して全身に空の明かりがかかった途端に黄緑色の光に包まれてあの病室の空間に飛ばされていた。

病室には何故かういがいて私は驚いた。

|うい、どうしたの?学校で嫌なことでもあった?|

「ううん、中央区が大変なことになっちゃったなって」

令も、ひなのも中央区の方向を気にしていた。

それもそのはずでお昼時間に入ってすぐに中央区が謎の現象によって死傷者が出たとして立入封鎖となった場所が出たと言う緊急ニュースが出ていた。

立入封鎖となった場所は、紗良シオリの討伐作戦が行われた場所。

やちよ達は廃墟を襲撃すると言っていたけど、電波塔も怪しいと睨んでいた。

その電波塔へ近づくことができなくなった。

彼女達の居場所はほぼ明確だと言うのにやちよからは廃墟への襲撃は予定通り行われると魔法少女のSNSへ書き込みがあった。

ういも何故か廃墟への襲撃に参加したいと自分から言い出している

|最近、やちよからの連絡が多いけど、いろははどうしたの?|

「お姉ちゃん忙しいから、しばらくやちよさんに連絡係をお願いしている、みたいでね」

私たちの中で唯一自由に外へ出られるのはういだけ。

私達は建物の中でしか行動できず、詳しい外の状況はよく知らない。

ういの事を信じないわけではないけど、さっきの発言は嘘だとすぐ分かった。

|うい、私たちに話せない事があるんじゃない?隠し事はういに似合わない。

嘘をつくことが苦しいなら、私にだけでも話してみて|

そう言うとういは涙目になって私へ抱きついてきた。そして力強く私の着ている制服を握っていた。

「お姉ちゃん、連れ去られちゃって。

2日目になるんだけど戻ってきていなくて。

もし日継カレンさん達に捕まっているなら、黒いオーラに包まれて、私の前に出てきたら、どうしようって。不安で、不安で」

ういはそのまま床に膝をつけて涙を流していた。

ねむが魔法少女になれていればそんな不安もなかっただろう。

私はういを包容して頭を撫でてあげることしかできなかった。

いつもの私ならいろはを助けるために日継カレン達のアジトをしらみつぶしに探していただろう。

でも今の私は行ったことのある場所の室内にしか行くことができない。それに何故かみかづき荘へは行くことができないという制限付き。

この制限がついたのはつい最近。それまでは普通に行き来できていた。

これもつづりという人物の采配なのだろうか。

4人を守りたいのに守れない私にはどこか胸に苦しいと感じるものがあった。

今、私にできることは何なのだろう。

 

3-7:BACK
レコードを巻き戻す:top page
NEXT: 3-9

 

【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-7 たとえ間違った道だとしても

「いくら情報収集のためとはいえ、私たちこんなことしてていいのかな」

「仕方ないっすよ。二木市へ日帰りなんて結菜さんに負担をかけてしまいますから」

「まあ今更気にするのも野暮ってものかな」

私達は二木市へ魔女化しないシステムを持ち帰るために長期間神浜へ滞在しています。

二木市は学校が休みの日だけ、夕方だけ神浜へ来ると言えるほど近くにはありません。

マギウスの翼を調査していた魔法少女のように学校を休みながら長期滞在しなければいけません。

それが社会的に許されるのかといえば当然そんなことはないわけで、私達は人間社会を捨てる覚悟で神浜へ来ているのですが、罪悪感は抜けません。

それにしても私達以外に日中から活動する反社会的な子達がいたなんてね」

「あのミリタリーな見た目をした3人組のこと?まあ姉ちゃん達が大丈夫って言ってたし大丈夫だよ。

それよりもらんかが学校サボってこっちに参加したことに驚いてるよ」

「らんかって学校嫌いそうだから全然意外性は感じなかったなぁ」

「そうそう、学校サボってゲーセン行ってるイメージだよね」

「ふふっ、そんなこと言ってると次女にチクっちゃうぞ」

「アオ、ちょっとそれは勘弁かな・・・」

らんかだって人の道を外れるようなことはしない。じゃなきゃ口が悪くても周りに配慮した行動なんてできない。

私がらんかを襲った時だって、私の気持ちのこと考えてくれていたし。

そういえばらんかは次女と一緒に行動してるんだっけ。

なんかうるさく言われてめんどくさそうな顔をしているのが目に浮かぶなぁ。

 

樹里達は中央区の路地裏を中心に監視を行なっていた。そこで目立ったのは、らんかと樹里の間で行われた問答だった。

「らんか。あの場では何も言わなかったが、親に無理言って転校させてもらってんだろ?今回ぐらいは学校生活を優先してもよかったんじゃないか?」

「しっつこいぞ樹里!1日サボったくらいで関係ないって」

「いや理由なしに休むとすぐに親へ連絡がいくものだぞ。お前、親とうまくやれてないらしいじゃないか。
下手したら親に呼び戻されるぞ」

「樹里には言われたくないね」

「心配して言ってやってんのに。人間社会でまともに生きれなくなってもしらねぇぞ」

「だから!しつこい!」

「おいおい、路地裏でギャンギャン騒ぐとおもての人間に気付かれるぞ」

樹里達の背後には日継カレンがいた。

「チッ、魔力を感知できねぇってのはホント面倒だな」

「一応警告しておく、中央区から出て行け。
これから大事なことを行わないといけないからね、変に嗅ぎ回れると困るんだ」

「そこまで言われて引くわけないだろ。なんならお前を倒してその計画とやらの主導権を私たちに譲ってもらおうか」

「相変わらずだな戦闘狂どもめ。不尽な御託を並べる癖は治っていないようだな」

樹里と日継カレンが話している間、二木市の魔法少女達には日継カレンの居場所が共有され、メンバーが集結しつつある。

結菜が現場に到着した頃、中央区にある電波塔前に糸でぐるぐる巻きにされたらんかが日継カレンの足元に倒れていた。

「人質を取ったってわけ?」

「分からず屋達の覚悟を確認したいだけさ。
周りを見てみろ。昼時で路地には多くの一般人が歩き回っている。
お前達はこの一般人達を巻き込んでまでその不尽な理を貫きたいものなのか」

「まさか、一般人を巻き込むほど私達は非道ではないわ」

「ほんとわけがわからない集団だよ、あんた達は。復讐心ぶつけて自分たちが満足した後どうなるかまで全く考えていない。
殺して殺されてを繰り返す魔法少女の世界になって満足か?」

「そうならないよう私たちが抑え込むのよ。私たちについて行けば苦しまなくて良いとわからせていけばいいだけよ」

「人間らしい思考だ。
改めて言う、中央区から出て行け。出て行かないなら一般人の被害が出るぞ」

「…私達は、引かないわ」

「そうか」

そう言うと日継カレンは人混みの多い場所へ動けないらんかを叩きつけた。

数人の一般人が押しつぶされた後、信号で止まっていた人の乗っている車を糸でからめとり、樹里達へ投げつけた。

あたりでは悲鳴が聞こえ始め、ビルからも多くの人が注目している。

「やめなさい!一般人を巻き込むのは正気じゃないわ!」

「正気じゃないお前らが言えることか!

支離滅裂なことばかり外部の魔法少女へぶつけてばかり。内側に向けるだけの優しさを外に向けたらどうだ!」

魔法少女姿になるのを拒む魔法少女達が次々と投げつけられる看板や車で突き飛ばされ、人混みやビルの壁に打ち付けられていく。

魔法少女に変身した子が出ても、日継カレンは必ず人がいる場所が背面に来るようにしていて攻撃を行うことができない。

結菜のことしか考えていない馬も今回に限っては攻撃することを躊躇して、そして過去のトラウマもあってかひかる軍団を出そうとしない。

完全に私達はアウェーな状況だった。

「おい長女、流石にこれは取り返しがつかなくなるぞ。素直に中央区から離れた方がいいぞ」

「もう手遅れな気もするけどね」

結菜が答える暇もなく、糸の剣で日継カレンが結菜に襲いかかります。

結菜は魔法少女へと変身し、攻撃を受け止めるが、周囲の人が注目している。当然のように、中には写メをとっている奴もいた。

「お前達よりもまともな悪者は沢山いた。

中途半端な想いで、私たちの前に立ちはだかるな!」

結菜は何もいえず、日継カレンの斬撃で体勢を崩すと糸によってその場に掬い上げられてしまう。

「まずい!」

「スクってやるよ。ソウルジェムだけ残る形で!」

肉体が切り刻まれて終わるはずの場所で爆発が発生し、ソウルジェムと肉塊だけが残るはずの現場は爆発による火の粉しか残らなかった。

「あのゲーム好きのお節介か。仲間内だけ見るといい奴らなんだけどね。
お前達はどうする、三重崎の魔法少女達」

電波塔前にはミリタリーな見た目をした魔法少女2人が立っていた。

「あたしらはパスだ。中央区付近にいたら面白いのが見られそうってことがわかっただけでも収穫さ」

「そうかい。じゃあ別の区からスナイプしようとしてるもう1人にはよく聞かせておいてくれないか。前みたいなことになったら利き腕落とすだけじゃ済ませないぞってね」

「わかってるって。

魔法少女が魔女にならないシステム、ちゃんと広げてよね。じゃないとあんた達を

“ぶっ殺せないんだから”」

「そこは気にするな。楽しみにしてるといい」

「頼んだよ」

間も無く神浜市には臨時ニュースが流れ、電波塔付近には救急車や警察、報道陣が集まり、許可された者以外は電波塔付近へ近づくことが禁止となった。

神浜マギアユニオンは目的の場所と離れているからとこの日の夕方に行われる襲撃は、予定通り実施することに変わりはないらしい。

二木市の魔法少女はと言うと、ほとんどが中央区の外に出ていた。

結菜が目を覚ました後、2人のメンバーが建物の瓦礫の下敷きになったり、車に押しつぶされたりでソウルジェムが砕けてしまっていたことが告げられた。

結菜はすぐに中央区へ行きたい衝動を抑え、人気がなくなったことを見計らって再び中央区へ向かうと仲間に告げた。

「神浜マギアユニオンには今回の件を伝えるの?」

「伝えるわけないでしょう?神浜の魔法少女と共闘なんてゴメンよ。

彼女達を制するのは、私達プロミスドブラッドなんだから」

樹里は何も言わずその場を去り、建物の屋上で体育座りで座る1人の魔法少女の元へ向かった。

「結構夕日が綺麗だな、ここ」

「樹里・・・」

「結菜を助けてくれたのらんかだろ。武器で防いでくれたから、樹里様と馬で結菜を助けることができた。

ありがとよ」

「当然のことをしたまでよ」

樹里がらんかの隣に座り、いつから持っていたかわからないポッキーをらんかに差し出した。

一本手にとって食べた後、樹里に問いかけた。

「ねえ、あんたいつまで結菜についていくつもりなの」

「あん?」

「ついて行くにも限度ってものがあるでしょ。日継カレンだって言っていたが、あたしらのやってる事って中途半端なんじゃないかな。

目的も、やり方も」

「んなもん最初からわかってるさ。

樹里様は考えを無理やりにでも貫きながらみんなを引っ張ろうとしているアイツだからアイツのものとして付いて行ってんだ。

たとえ行き先が中途半端だとしてもね」

樹里は中央区を見ながらその場に立ち上がった。

「神浜から魔女にならないシステムを奪う。

そうアイツが言い出して、みんながついて行くってなったから二木市の魔法少女同士が争うことはなくなった。だからこの脆い均衡を崩さないために付き合ってるのさ。

少しでも崩れてみろ。樹里様が結菜をぶっ飛ばして、お前達を連れてってやるつもりさ」

「それ聞いたらひかるが黙っちゃいないね」

「そうやってまた過去に戻っちまうから付き合ってやってんだ。

アイツの言う通り、樹里様達は悪役にもなりきれない中途半端な連中さ」

そうだな、過去のように顔見知り同士で殺し合うのはゴメンだね。

でもあたしがついて行くのは、樹里、あんたにだけだ。

 

3-6:BACK
レコードを巻き戻す:top page
NEXT: 3-8

【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-6 眼鏡をはずしてみる世界は

沢山の魔法少女が集まった会議。

そこで行われたのはたった3人の魔法少女へ対抗するための情報交換でした。
集まったのは様々な目的を持った100人に近くなる程多くの魔法少女たち。
私たち見滝原の魔法少女も参加して、多くのことを知ることができました。

一番驚いたのはピリカさんもあの人たちの仲間である事でした。

実は情報交換が行われた中でもピリカさんの強さはカレンさん達同様かそれ以上という曖昧な話で終わりました。

10人近く集まってかつそれぞれの得意分野を織り混ぜてやっと追い込む程度の強さを誇る3人の強さはどこにあるのか。

神浜の魔法少女に関しては調整という神浜の外からきた魔法少女とは違った強くなる方法をとっているにもかかわらず、彼女達は調整という行為を受けていなくてもそれ以上の強さを持っています。

そんな別次元の彼女達のうちの1人を追いやったななかさんたちの情報をもとに会議では翌日の学校終わり、つまりは夕方に拠点と思われる3カ所に総攻撃を仕掛けることとなりました。

私たちには学校生活がある中、敵となる3人はいつでも行動できるという差ができてしまうことはみんなが理解していました。

それでも私達は人として生きる道を外れないよう行動することに決めました。

一部のグループはこの指針に賛同せず、みんなの邪魔をしない程度に独自の行動をとることとなりました。

私達はもちろん人としての生活を優先するために見滝原へ戻ることになり、戦いには参加することはできません。

何故なら、鹿目さんと美樹さんはワルプルギスの夜を倒したあの日からご両親に厳しい門限を設けられてしまっているからです。

この考えによって私たちの中でも意見のすれ違いが起こり始めます

「日継カレンたちだっけか。あいつらの目的を聞いていると悪くはないが一般人へ害を出したり黒いオーラの魔法少女の元凶かも知れねぇってのはわかる。
だがあの悠長な作戦実施時間はなんだ。
マギウスの時もそうだったが、学校なんて行ってる場合かよ」

「杏子の言うこともわかるけど、あたしらにとっては家族も学校生活も大事なんだよ」

「それにやちよさんは言っていたわ。自由行動するのは構わないけど、数人で勝てる相手ではないってことは理解しなさいって」

「んなことわかってるさ。まあ今回は収穫があったしよしとするよ」

そう言うと佐倉さんは駅へ向かわず風見野の方へ歩いて行ってしまいました。

美樹さんは佐倉さんへ何か伝えることがあるらしく、佐倉さんを追いかけていきました。

私と鹿目さん、巴さんはそのまま電車で見滝原へ戻りました。

見滝原についた頃には夕方となっていて、帰路についている最中で鹿目さんがいきなり立ち止まってしまいました。

「どうしたの、鹿目さん」

「えっと、ピリカさんたちのことをずっと考えてて。
魔法少女を助けたいって考えてくれているのに、どうして人も助けようって考えてくれなかったのかなって。
本当に争わずに話し合いだけで済ませられないのかな」

鹿目さんの優しさは底なしです。

いつもみんなが楽しく、幸せになることを願ってしまう方なのです。

そんな鹿目さんにとって、今回の件はとても辛いことなのかもしれません。

「あの状況では言い出しにくかったわよね。みんな普通に話していたけど、中には殺意を持っている子たちもいたわ。

マギウスの時もそうだったけど、事態が治ればいくらでも話し合えるはずよ」

「そう、ですよね」

「私達は参加できないわけだし、私達は他の子たちの報告を待ちましょう」

巴さんの話を聞いて少し笑顔を見せた鹿目さんでしたが、どこか納得していない表情が隠れている気がしました。

ふと一瞬強い風が吹きました。

すると鹿目さんは近くにおらず、目の前には気絶した鹿目さんを抱える魔法少女がいました。

「鹿目さん!」

「慈悲深い魔法少女 鹿目まどかを少し借りて行くよ」

「待ちなさい!」

私は魔法少女に変身して時間停止を行いましたが、驚くことに目の前の魔法少女は平気に動いていました。

どうして

「時間をとめるなんてこと、本当にできる魔法少女がいたんだな。世界は広いねぇ」

片側にだけお下げがあり、手袋部分にオレンジ色のソウルジェムと思われる宝石がついている魔法少女。

まさか、日継カレンさんなのですか。

「鹿目さんをどうする気ですか」

この子が背負っている未知数の因果律が自動浄化システムを広げることに必要でね、協力してもらうんだよ」

「それなら話し合いで済むはずです」

「本当か?なら、ヒトとして生きる事を止めろ言っても協力してくれるのかな?」

そう言ってカレンさんは神浜の方へ素早く移動を開始しました。

「待って!」

時間停止の影響を受けない理由がわからない。巴さんのようにリボンで繋がっていなければ。

繋がり?

私は会議で出てきた話題を思い出しました。

“黒いオーラの魔法少女となった私たちに共通しているのは、日継カレンと会っている事だ”

“あいつと繋がりがある奴らがなっているんだから元凶は日継カレンだよ”

日継カレンと会った時点で何か繋げられてしまっている?

だとすると日継カレンを経由して巴さんも動けるはず。

なのにあの場から時間は止まったまま。

わからない。あの人はどんな方法で時間停止の影響を受けていないの?

そう考えながら日継カレンを追いかけていると横から炎の剣でいきなり斬りつけられました。

咄嗟に盾でガードしましたが、地面に叩きつけられてしまい、時間停止も中断されてしまいました。

また落ちた場所も悪く、一般人が多くいる道でした。

周りの人たちはいきなり地面に叩きつけられた私と、炎の剣を握りながら私の方へ迫ってくる魔法少女を見て騒ぎになっていました。

「おいあの子空から落ちて来なかったか?」

「炎の剣?!ドラマの撮影か?随分とリアルだな」

一般人に見られながらも目の前にいたのは、ピリカさんでした。

私は改めて時間停止を使いましたが、ピリカさんも時間停止の影響を受けていませんでした。

「何で、なんで貴女も立ちはだかるんですか!どうして人へ危害を加えようとするのですか!」

私はピリカさんを振り切ろうとしますが、炎の剣で軽くあしらわれてしまい、カレンが向かった方向へ進ませてくれません。

「魔法少女が人間社会に溶け込めると考えているなら、それは間違いです。

ヒトは時間に縛られ、他人の欲を満たすために、金に支配されながらシステムのように生きて行くこととなります。

しかし私たちは穢れを解消しなければいけない。

そんな事情も知らずにヒトは私たちを縛り付けて無意識に魔女となる事を強要してくるでしょう。

そんな社会を生み出すヒトは、魔法少女にとっては害でしかないのですよ」

「そんな主張、勝手ですよ!

魔法少女だって人と一緒に生きて行くことはできます。社会人になっても、学校生活のように両立ができるはずです」

「私たちにとってはその主張も勝手なのですよ。今の人間社会が、まともだと言えるのですか」

時間停止できる限界が来ても私はその場から一歩も進めずにいました。

そして時間停止が解除されても、一般人に見られていようともピリカさんは炎の剣を私に振ってきました。

私は林に逃げ込もうとしますがピリカさんは私を一般人の方へ押し戻し、そのふるう剣は一般人も斬り付けていました。

一般人に被害が出ていることよりも、魔法少女として戦っている姿を一般人に見られていることが私には一番のストレスとなっていました。

何で一般人に見られているだけで苦痛となっているんだろう。

わたしはその場に膝をついてしまい、今までのように振る舞うことができていませんでした。

貴女の大事な人を守りたいという考えは人目につくというだけで諦めてしまうことなのですか」

周りの人は警察を呼んだり面白そうにスマホで写真を撮っていました。きっとSNSで拡散されるのでしょう。

わたしは今、魔法少女が人間社会で生き辛い縮図を体感しているのかもしれません。

「その程度の覚悟で大切な人は守れないですよ。守りたいのであれば、まずはその価値観から見直す事をお勧めしますよ」

そう言ってピリカさんはカレンとは違った方向へ姿を消しました。

わたしはこの一瞬で人として大事なものが既に失われている気がしました。

きっと学校へ行ったところで苦痛になるであろうことは目に見えていました。

ならばもう、躊躇する必要もない。

私は、鹿目さんを助けるために手段を選ばない!

一度家に戻って爆弾以外に銃器を揃えることにしました。時間停止が通用しない以上、銃器で応戦するしかありません。

とはいえ周辺の反社会的組織から調達できる銃器は底をついていて、近くの軍事基地に手を出すしかありませんでした。

しかしもう、迷う必要はありません。

夜のうちに軍事施設へ入り込み、扱いやすいサブマシンガンやハンドガンを調達してそのまま神浜へ向かいました。

夜明けごろに神浜へ到着し、私は会議の中で報告されていた一カ所のアジトと思われる場所へ向かいました。

そこへ近づくとピリカさんとシオリさんが出てきました。

「ピリカにかまかけられるなんて、あんた何怒らせるようなことしたんだ?」

「私も理解に苦しんでいるところです」

そう言いながら私は彼女たちへ銃口を向けました。

「鹿目さんはどこですか」

「自動浄化システムが世界に広がるまでは教えられないね」

「ならば、力ずくで教えてもらいます」

私は時間停止を使ったうえでピリカさん達へ弾丸を放ちます。

思っていた通り2人は時間停止の影響を受けていませんでしたが、飛び道具はその場で時が止まるので2人は手に持つ武器のみで応戦してきました。

2対1という不利な状況で勝つためには敵の攻撃を避けながら時間停止を解除した際に大打撃を与えること。

しかしそんなことはお見通しと言わんばかりに2人は弾丸の進行方向とは逆側に、爆弾が起爆する地点とは逆側に私を追い込みます。

攻撃は6割ほど受ける状態となり、その過程で眼鏡が割れて視界不良の状態に陥ります。

地面へ叩きつけられた際に時間停止が解除されてしまい、アジトと思われる建物方向は爆弾等の爆発が起こりましたが電気のシールドが貼られていて無傷の状態でした。

私は地面へ叩きつけられたと同時にシオリさんの攻撃の影響か体が動かなくなっていました。

「時間停止に頼った戦い方だから敵わないんだよ。
まあ実銃を使うスタイルは面白いと思うよ」

シオリさんが私に手を出そうとした時、何かが私に絡まり付き、ものすごい勢いで後ろ側に引き寄せられました。

視界がぼやけていてはっきりとはしませんでしたが、赤い服とポニーテールという見た目から佐倉さんであることがわかりました。

私は少し離れたビルの上で下され、佐倉さんは私の目の前に立ちました。

「考えなしに突っ込むとからしくないぞ、ほむら。
眼鏡、壊れたのか」

視界がぼやけたままでは何もできないので、私は試しに魔力で視力を矯正できるか試してみました。

すると、思ったよりも簡単に眼鏡をつけていたときくらいの視力にすることができました。

「ふーん、そんなことできたのか」

そう言うと佐倉さんはブラックな板チョコを包み紙を一部破った状態で私に差し出してきました。

「ほら、これ食ってちょっと冷静になりな」

私はビターなチョコを食べた後、ここに来るまでの出来事を佐倉さんに話しました。

「そうかい、あいつらは人前でも平気に魔法を使うほどやばいやつだってことはわかったよ。

強さもばかにならねぇのに戦えるフィールドを選ばねぇってのも厄介だな」

「私だけでは敵わないってわかったから、あとは巴さん達が来るまで情報集めをしようと思います」

それならこの街の中央区にやたらと魔法少女の反応が多かったからそこへ見にいったほうがいいかもな。

あそこでヤバいことが起こりそうだぞ」

中央区はシオリさんの目撃情報が多かった場所です。

もし昼間に彼女達とぶつかってしまったら、きっと中央区は阿鼻叫喚な光景となるでしょう。

わたしは鹿目さんの居場所の手がかりがないか探るために、神浜の中央区へと向かいました。

 

3-5:BACK
レコードを巻き戻す:top page
NEXT: 3-7

【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-5 塗りつぶされないその心に従って

音が届かない、夕日もほとんど差し込まない路地裏には4人の魔法少女と1人のヒトがいました。

「そこの倒れているのはチヒロじゃないか。かこ、これはどういうことヨ」

「ちひろさん、路地裏でこのヒト達に暴行を受けていたんですよ。蒼海幤に恨みを持っていて一方的に殴りかかってましたよ」

誰がどんな顔をしていたのか判断ができないほど肉塊が広がるだけの酷い光景でした。

これを、貴女がやったというのですか。

「どういうことですか、ヒトに手を下すなど、貴女らしくありませんよ」

「かこちゃん!何があったのか教えてよ!」

「私はもうななかさんたちの元へ戻れません。どうしてもというなら、もっと奥で話しましょう」

ちひろさんを血溜まりから離れた場所へ寝かせた後、私たちはかこさんの後を追って路地裏の奥へと進んで行きました。

「どうしてついてくるんですか」

「私達は貴女の仲間です。当然のことですよ。

まずは何があったのか話していただけますか」

「話したところで面白い話ではないですよ。ヒトと魔法少女は決してともに暮らせないと、そしてヒトは呪いの源、害だと気付いてしまったんですよ」

私は何か言い出そうとしたあきらさんを止め、かこさんの話を聞き続けます。

「お父さんとお母さんに見られちゃったんですよ、心臓に穴が開いても平気でいられる魔法少女の体を。

そして使い魔を倒して帰ったら、いつも名前で呼んでくれていた2人が私の事を人ではない、普通じゃないとしか言わなくなって。

それで私の前に私がもう1人現れたんですけど、うるさいから切っちゃったんですよ。

そして真っ暗な中を進んで扉があったので開いたら、目の前にはヒトだった肉があるだけでした。

それからたくさんのヒトを見て、呪いの源を断って、断って、断って。

そうしていると、もうヒトなんて救う必要ないんだって」

語るかこさんの目はももこさん達のように光のない目になっていました。

いえ、それよりももっと目の奥に闇が見えました。

そしてその顔は不気味な笑みを浮かべていて、なぜか涙を流していました。

ソウルジェムは、黒く濁るだけでなく七色が見え隠れしていました。

“あたしはあんたの反対側にいるんだよ。

でもね・・・いずれこっちに来る”

予言だったというのですか、貴女が私の中に幻影として現れたのは。

“あんたの反対側にいるんだ いずれこっちに“

私は魔法少女姿となって抜刀し、刃をかこさんへ向けます。

「ななか?!」

「かこさん、あなたを反対側に、“あちら側”に行かせるわけにはいきません!
必ず呼び戻します」

「ななか」

「あきらさん、美雨さん。今すぐここから立ち去ってください。これは私のケジメの問題です」

そう言ったにもかかわらず、あきらさんと美雨さんは魔法少女姿となり、私の横に並びました。

「何をしているのですか。生きて帰れる保証はないですよ!」

「何言ってるんだななか。ボクたちは仲間のためにここにいるんだよ。それに、人数がいれば止められる可能性だってあるんだから
それに、今のかこちゃんの姿をみんなに見せるわけにはいかないでしょ」

「ワタシは仲間を見捨てない。残るのは当然ネ」

2人ともに3対1という状況ができるにもかかわらず覚悟を決めたような顔をしています。

なぜでしょう、わたしも今のかこさんを前にして優位に立てると確信することができません。

戦わずとも既に知っていますが、“あちら側”のまま放っておくわけにはいきません。

「暖簾の先に進む覚悟がお有りなら、ひたすら付き合ってもらいますよ」

「当然!」

「わたしの前から消えてって言ってるのに!」

かこさんも魔法少女姿となり、いつもとは違った殺意の勢いで襲いかかってきました。

長柄の武器は突きよりもなぎ払う行動が多く、こちらが繰り出す攻撃は受け止めるよりも受け流してカウンターを取ろうとする動きが目立ちました。

そう、この行動原理は美雨さんのもの。

あきらさんと美雨さんの間髪ない攻撃の中、わずかに生じる隙を見逃さない回避経路を的確に見抜いています。

これはあきらさんの固有能力の応用。

かこさんは2人に構わずわたしにばかり積極的に攻撃を仕掛けてきます。

あきらさんと美雨さんがカバーに入ってくださるので猛攻を耐えてはいますが、これはわたしが司令塔であることを把握しての行動でしょう。

そう、かこさんは私たちの行動を後ろから今まで観察し、置いてかれないようについて行こうとしていました。

つまり、私たちの行動原理はお見通しなのです。

しかし一緒にいた私たちも同じ条件。

そのはずなのですが。

わたしはかこさんに飛び上がりを強要させるよう一閃を加え、飛び上がったかこさんをあきらさんが回し蹴りで地面に打ち付けようとします。

どんな身体能力を持っていようとこの世界の原理、重力に逆らう行動を取れる魔法少女はそう多くはありません。

その隙が生まれる着地の瞬間を狩るのが美雨さん。

しかし、かこさんは石突きを地面に打ち付け、その場にクレーターができたかと思うと黄緑色の光線ができたクレーターを囲うように放たれました。

「やはり、容赦はないようですね」

受けるはずの重力が右手に集中するその行動によってかこさんの右手は糸が切れた人形のようにだらんとしていましたが、即座に回復して地面に突き刺さった武器をその右手で抜き取りました。

やれると思ってもやらない戦法。

それはヒトとしての行動理念に反すること、ヒトとして大事なものを失う行動。

これらに該当する戦い方は勝てる場面でも使わないことが当然でした。

ヒトデハナイ

そう吹っ切れた方が相手だと、立ち回りにくいものですね。

戦況はお互い譲らずと言った状況でした。

私たちは擦り傷程度の損害に対してかこさんは切り傷や殴打による内出血ができる度に回復魔法で元に戻ります。

ここまで戦って不思議なのは、私たちのソウルジェムがそれほど濁っていないことに対し、かこさんのソウルジェムは真っ黒のままだということ。

「まだ構うんですか」

「当たり前です。あなたをこちら側に呼び戻すまでは引きません。あなたがまともに話を聞いてくれるようにならない限り、どこまでも」

「それにそろそろドッペルを抑えるのも限界なはずだよ」

「ドッペル、ですか。

そうですね、そんなに殺されたいナラ、切りキザマreちゃえばいIんですヨ!」

かこさんの足元から周囲に赤いリボンが巻きついた鉄柵、毒々しい植物が生茂る結界が展開され、空はほのかに夕日がこぼれていた時よりも紫がかった色へと変わっていきました。

「まさかこれ、魔女の結界」

「だめ、引き返せなくなります!」

わたしはかこさんのソウルジェム目掛けて駆け寄ろうとしますが、結界の茂みからは腹部分が本、頭部分が様々な花となっているモモンガな見た目をした使い魔まで現れました。

「ちょっとこれどういうこと?!神浜じゃ魔女にならないはずだよ!」

かこさんのソウルジェムから出てきた呪いの色をしたリボンがかこさんを包み、かこさんの見た目はかつて見たことがあるドッペルに似た姿へと変わっていきます。

スカート部分は本に何本もの栞が刺さった見た目をしていて上着部分は三原色が完全に混ざり切っていないパレットのような彩りに変わっていました。

そしてかこさんの目には光がない代わりに、赤い光が揺らめいていました。

そしてソウルジェムの中から取り出したのは身の丈ほどあるオオバサミ。

「ドッペルを着込んだというのですか」

かこさんはオオバサミを持ったまま素早くあきらさんへ詰め寄り、オオバサミで真っ二つにしようとします。

「いきなりか!」

しなやかにあきらさんは避け、美雨さんが詰め寄るとオオバサミは分離して二本の大剣となって攻撃を受け止めます。

「もうなんでもありカ」

使い魔たちの数が増え始め、私たちの行動を妨害するようになっていきました。

使い魔を振り払っているとかこさんのスカートにある栞が飛び出し、私たちの体に突き刺さりました。

そしてきっと魔力を吸い出したのでしょう、色が変わってそのままかこさんの元へ戻っていきました。

私たち3人は少々意識が朦朧としてしまい、その隙を突かれてあきらさんは壁に叩きつけられてしまいました。

そしてかこさんはあきらさんのソウルジェムがある側の腕を、オオバサミで切り落としてしまいました。

「アアアアアアアッ」

「あきらさん!」

かこさんはその後いつも使っている武器を生成してあきらさんの右足に突き刺してその場から動けないようにしてしまいました。

「かこ!」

美雨さんの突き出した拳はかこさんの左腕に突き刺さり、食い込んで抜けない中使い魔たちが美雨さんの視界を遮ります。

視界が開けた頃にはかこさんはオオバサミの片方を大剣のように振り払い、美雨さんは両足を失ってしまいます。

聞くことがないと思っていた美雨さんの叫び声が響き、右腕も斬り付けられて動けない状態となりました。

かこさんはわたしに振り返り、オオバサミを閉じて鋭利な先端を向けて急速に向かってきました。

そうです、そのままくるのです。

貴方にはまだ、ソウルジェムを壊さない優しさが残っているのですから。

わたしは無抵抗のまま心臓部分をオオバサミに貫かれました。

痛みに耐えながらわたしはかこさんを掴み、グリーフシードをかこさんのソウルジェムに当てました。

薄い意識の中、伝えるべきことを伝えるために声を絞り出します。

「かこさん、聞こえますか」

「ななか、さん」

「手短に話します。
貴女のヒトを嫌いになってしまう思考は、自動浄化システムが広がった際にいずれどの魔法少女にも、訪れることです。なので、否定はしません」

「わたし、わたしは」

かこさんの手は震えていて、元の魔法少女姿に戻ったかこさんの瞳には涙がたまっていました。

「しかし、闇に呑まれて全てを否定してはいけません。いつもの貴女らしさ、大事にしてください」

「わからない、わからないですよ私らしさなんて!ヒトを助ける気がなくなった私に何ができるんですか!」

「何を、おっしゃっていますか。もう貴女は既に貴女らしさを闇の中でも見せているじゃないですか

「え?」

人嫌いならば、あの場面でちひろさんも無差別に殺していたでしょう。

しかし殺そうとしなかったことで確信したのです。まだかこさんから良心は消えていないと。

呪いが満ちた状態を途切れさせるためにはグリーフシードで呪いを取り除けば言葉を伝える間が生まれる。

うまくいって良かったです。

8割呪いを吸い取ったグリーフシードを投げ捨て、もう一つ取り出して話を続けます。

「ここからは貴女の心に従ってください。大丈夫です、私たちは信じています」

「ななかさん」

ぼやける視界には路地の片隅に立つ見慣れたシルエット。左側だけ髪を結っている魔法少女。

「あのとき巻き込んでしまったことを後悔しそうでしたが、私は正しかった。

このどうしようもない状況を、打破出来る。

だから、わたしはかこさんを!」

最後の力を振り絞ってかこさんを横に突き飛ばし、わたしの意識はそこで途切れたのです。

 

 

ただの路地裏となった場所に3つの宝石が砕ける音が響きました。

ソウルジェムがあった場所まで伸びている糸の根本を見ると、そこにはカレンさんがいました。

ななかさんたちはヒトだった姿になっていました。

わたしの頭にはある場所の映像が流れてきました。
ここは、中央区の電波塔?

「自動浄化システム、広げたいと思うならそこに来い。夏目かこ、お前の再現の力が必要だ。

協力的であることを祈っているよ」

そう言ってカレンさんは去りました。

死んじゃった。わたしのせいで、ななかさん、あきらさん、美雨さん。

わたしはこれからどうすれば。

そう思っていると、わたしの中である確信が芽生えます。

倒すべき存在は、日継カレン。

いえ、復讐すべき存在。

私の肩には、ななかさんの手があったような気がしました。

やるべきことが見えました。

わたしは、いえ、“私たち”は自動浄化システムを世界に広めた後、あの三人に復讐し、償ってもらいます。

もちろん、生きてもらいながら。

路地裏には、1人しかいないはずの魔法少女の気配が、なぜか4つあったのでした。

 

 

この日の夜になる頃には、各地で大きな動きがありました。

どれも日継カレンたちの思惑通り。

ニュースに流れたことも含めて魔法少女たちの衝撃だけには止まらず、人間社会にも大きな影響が出ていました。

神浜市にいると化け物に襲われて殺される。

もはやウワサの域を出て、ノンフィクションだという認識が広まって行くこととなったのです

わからない。

日継カレン、紗良シオリ、保別ピリカという魔法少女の情報がふーちゃんからも入ってこない

全ての魔法少女の怒りと嫌悪の矛先は3人の魔法少女に集中している。

負の感情だけが漂う神浜市ではもっと大きな災厄が訪れそうで、胸が痛くなってしまいます。

「アルちゃん、この事を記録しても意味があるのかな」

“あるんじゃないかな。何が起きたか知ってもらって、理解する。そこからじゃないかな、なにもかも”

 

3-4:BACK
レコードを巻き戻す:top page
NEXT: 3-6

【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-4 自責の権化を前にして

いつからでしょうか。

私はよく、夢を見るようになっていました。

あの時の、私が初めて心の底から許せないと思ってしまった方が夢に出るたびに、あの言葉が頭に木霊するようになったのです。

「あたしはあんたの反対側にいるんだよ。
でもね・・・いずれこっちに来る」

サラサハンナ

マギウスの翼の一件で忘れたかと思いましたが、黒いオーラの魔法少女を見てきたせいなのか再び記憶が蘇ってきたのです。

「ホント、面白いことが絶えないね、この街は」

「失せなさい。今頃何をしにきたのですか」

「なーんか魔法少女って成仏できないみたいでさ、あの後ずーっとあんた達を見ていたよ。

ワルプルギスの夜ってやつが倒された時はくっそつまらねって思ってたけどさ。

黒いオーラの魔法少女!

人間ぶっ殺したくなるとか超楽しいことになってるじゃない!」

「・・・」

「まああんた達に協力する気はないんだけどさ。あんた達が探してる子、生きてはいるよ」

「なぜそうと言えるのですか」

「でももしかしたら“こっち側”になっちゃってるかもねぇ、真っ黒になっちゃってさ!
アハハハハハッ!」

私は頭にまとわりつくような声を振り払いました。

それと同時に目を覚ましたのですが、目覚めの気分は最悪でした。

今日は沢山の魔法少女が集まる大きな会議が行われる日でしたが、かこさんを探すことを優先し、私たちは欠席することにしました。

探す当てがあるからです。

私は1日をかこさんの探索に当てることとしました。

忘れもしない朝のニュース。

かこさんのご両親が殺されたこと、そしてかこさん本人は行方不明という内容を。

しかしかこさんは魔法少女で魔女の仕業だとしてもあのような結果で終わるはずがありません。

あり得ることとしては、シオリさん達が手を出すこと。

私はその可能性を考えながら町中を回りました。その中でよく耳に入るようになったのは、路地裏で刃物によって殺されている人が増えているという情報でした。

この情報を集めているうちにやちよさんからは会議が無事に終わったと通知が来ました。

感触は良好。しかし目的地への潜入は明日の夕方になるという内容がありました

明日は平日で普通ならば皆さん学校へ行く日となるため致し方ありません。この生活サイクルの違いでシオリさん達と差がついてしまったと言っても言い逃れできないでしょうね。

もちろん我々の捜索も明日の夕方から再開することとなりました。

しかし一度各々が集めた情報を整理するために再び集まりました。

「かこさんの足取りは掴めなかったようですが、気になることがあるそうですね、あきらさん」

「うん、実は情報収集中にパトカーや救急車の音が普段より多く聞こえた気がするんだよ。試しに現場に行ってみたら、どうやら路地裏で殺された人がいたとか」

「きっとそれ、南や東も同じ。蒼海幤に付き纏っていたゴロツキ、強硬手段を使うことで恐れられていた暴力団の一味が刃物で殺されていた現場を見たと聞いてるヨ」

「急に増えたとなると同一の要因であることを疑いますが、何時ごろ起こったかまでは把握できませんでしたか」

「流石にわからないよ。わかるのは死体が見つかるまで2、3日の間は空いていないってことくらいかな。教えてくれた人、昨日は何もなかったって言ってたし」

いつもであれば魔女の仕業と考えることはできますが。

「ななかはどうだた」

「かこさんの古本屋周辺で話を聞いたのですが、どうやら昨日の昼過ぎから夕方の間には既に古本屋の前に血痕と気絶した刃物を持った男がいたそうです。

近所の人が何事かとかこさんのご両親に聞くと、かこさんは通りすがりの男に刺された後、何処かに行ってしまったようなのです。

男はその後警察に捕まったそうですが、何も覚えていないそうです」

「じゃあ、かこちゃんは魔女の仕業だと思って飛び出してそのまま帰っていないってこと」

「まさか1人で挑んで」

「かこさんはそこまでやわじゃありません。何かトラブルに巻き込まれた可能性があります。明日は学校の用事が終わった後に再び捜索を再開するとしましょう

解散した後も私はあらゆる可能性を模索しました。

かこさんのご両親が殺されたことと神浜中で起こっている殺人事件が同一犯だとしたら。

残念ながら現在は魔女以外に黒いオーラの魔法少女が該当します。

魔女であれば魔力の痕跡が残るはずですが、2人ともにそれはないと言っていました。

黒いオーラの魔法少女であれば忍ぶことを知らないうえに無差別に殺戮行為を働くため、今回のようにピンポイントに、そして密かに殺人を行うことは考えにくいでしょう。

だとすると、犯行を行なったのは複数の人間、または魔法少女による犯行となるでしょう。

そういえば人を殺すことを躊躇しない方達に心当たりがありますね

憶測で疑うのは良くありません。

明日は路地裏や人目のつかない場所を捜索することにしましょう。

彼女達のアジトへの襲撃は、やちよさん達に任せることとしました。

「如何して1人に固執するんだい?常盤ななかっていうのは目的のためにあらゆるものや人を手段として扱うやつじゃなかったかい?」

手段として利用してきたことは認めましょう。しかしそれは思い違いです。

仲間を助けるために行動しているのです。

「らしくないねぇ。紗良シオリとかいう魔法少女達を抑えるチャンスを逃してまで仲間を助けるだなんて」

あなたには関係ありません。今回の件はかこさんを見つけなければあとあと取り返しのつかないことになるという予感がしているからです。

「焦ったいね。素直に言えばいいじゃないか、あの魔法少女をこっちの世界へ誘導してしまったという自責の念から来てるとね」

死してなお私に固執するあなたに対して理解に苦しみます。

「アハハハハハッ

私はあんたが作り出した幻影だよ。むしろ固執してるのはあんたの方だよ。

楽しみだねぇ、あの子、もうこっち側になっちゃってるかもねぇ。

アハハハハハッ!!」

私は今回の件に対して冷静な判断よりも直感で行動していたのかもしれません。

更紗帆奈の幻影が、直感で行動することに拍車をかけていたのかもしれません。

なぜ今になって、彼女が。

放課後になった頃には刃物のようなもので殺される変事件は報道に取り上げられるほど話が発展していました。警察も動いているようですが、中央区ではお昼ごろに死傷者が出たと騒ぎになっていました。

現在一番新しい死亡者情報は新西区に集中していることもあり、私たちは新西区の路地裏を重点的に調べることになりました。

曲がりくねっている路地裏の一角、そこには2人の女子高生がいました。

そのうちの1人は友人の写真を持って訪ねていました。

「知ってるよ、その子。あたしらの仲間が昼間に見かけたらしいんだ」

「その話、詳しく教えて!」

「いやいやいや、あんた蒼海幤のメンバーだろう?あたしらの仲間をシマを守るためとか言って結構痛みつけてくれたみたいじゃないか」

「それは、貴方たちが昔のようにヤクザ業で一般人も危険に晒そうとしたから美雨さんが止めに入っただけでしょ!」

「そうそう!その中華っぽい名前のすごい強い子。あいつにはあたしらに詫びを入れてもらわないといけないんだよねぇ」

1人の少女が指を鳴らすとどこに隠れていたのかわからない柄の悪そうな男が5人出てきました。

「やめて、そんなことをしている場合じゃないの!」

変に暴れるとこいつらが粗相をしちゃうかもしれないから大人しくしておいたほうがいいと思うよ」

男たちは写真を持っていた少女を壁に打ち付け、腹に対して2、3発拳を振ります。

殴られた少女はその場に跪いてしまい、そのままもう1人の男が顔に蹴りを入れました。

「ハンゴロシで済ましとけよ、交渉する前に死なれちゃ困るからな」

「生きてないと俺らも楽しめないしな!」

ゲラゲラと笑う少女と男たち。

しかしここは表通りまでは声もほとんど届かない場所で、誰もここの出来事を知ることができません。

「そこの女の子が何をしたというのですか」

誰も来ないはずの路地裏へ黒いフードつきのパーカーを着た少女が現れました。

「お嬢ちゃん、タイミング悪いとこだったな。来ちゃいけないとこに来ちゃうとか、悪い子だね。悪いけど、お兄さんたちについてきてもらうよ」

そう言って手を出してきた男は長柄の槍のようなもので貫かれ、血を吹き出しながらその場に倒れました。

「ヒトは誰も彼も希望を与えるほどじゃない人ばかりですね」

「なんだてメェ!お前らチャカ使っちまえ!」

「お、おう!」

男たちは忍ばせていた銃器を手に取りますが、黒いフードの少女は銃弾が放たれる前に手や首を素早く切り落としてしまい、路地裏に響いたのは男女の悲鳴だけでした。

「貴女は」

「私にはもう、構わないでください」

暴行を受けていた少女は黒いフードの少女に気絶させられ、その場に生きているヒトは気絶した少女だけでした。

鉄の匂いが充満するその場には3人の魔法少女が現れます。

「やっと見つけましたよ、かこさん」

 

3-3:BACK
レコードを巻き戻す:top page
NEXT: 3-5