【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-6 眼鏡をはずしてみる世界は

沢山の魔法少女が集まった会議。

そこで行われたのはたった3人の魔法少女へ対抗するための情報交換でした。
集まったのは様々な目的を持った100人に近くなる程多くの魔法少女たち。
私たち見滝原の魔法少女も参加して、多くのことを知ることができました。

一番驚いたのはピリカさんもあの人たちの仲間である事でした。

実は情報交換が行われた中でもピリカさんの強さはカレンさん達同様かそれ以上という曖昧な話で終わりました。

10人近く集まってかつそれぞれの得意分野を織り混ぜてやっと追い込む程度の強さを誇る3人の強さはどこにあるのか。

神浜の魔法少女に関しては調整という神浜の外からきた魔法少女とは違った強くなる方法をとっているにもかかわらず、彼女達は調整という行為を受けていなくてもそれ以上の強さを持っています。

そんな別次元の彼女達のうちの1人を追いやったななかさんたちの情報をもとに会議では翌日の学校終わり、つまりは夕方に拠点と思われる3カ所に総攻撃を仕掛けることとなりました。

私たちには学校生活がある中、敵となる3人はいつでも行動できるという差ができてしまうことはみんなが理解していました。

それでも私達は人として生きる道を外れないよう行動することに決めました。

一部のグループはこの指針に賛同せず、みんなの邪魔をしない程度に独自の行動をとることとなりました。

私達はもちろん人としての生活を優先するために見滝原へ戻ることになり、戦いには参加することはできません。

何故なら、鹿目さんと美樹さんはワルプルギスの夜を倒したあの日からご両親に厳しい門限を設けられてしまっているからです。

この考えによって私たちの中でも意見のすれ違いが起こり始めます

「日継カレンたちだっけか。あいつらの目的を聞いていると悪くはないが一般人へ害を出したり黒いオーラの魔法少女の元凶かも知れねぇってのはわかる。
だがあの悠長な作戦実施時間はなんだ。
マギウスの時もそうだったが、学校なんて行ってる場合かよ」

「杏子の言うこともわかるけど、あたしらにとっては家族も学校生活も大事なんだよ」

「それにやちよさんは言っていたわ。自由行動するのは構わないけど、数人で勝てる相手ではないってことは理解しなさいって」

「んなことわかってるさ。まあ今回は収穫があったしよしとするよ」

そう言うと佐倉さんは駅へ向かわず風見野の方へ歩いて行ってしまいました。

美樹さんは佐倉さんへ何か伝えることがあるらしく、佐倉さんを追いかけていきました。

私と鹿目さん、巴さんはそのまま電車で見滝原へ戻りました。

見滝原についた頃には夕方となっていて、帰路についている最中で鹿目さんがいきなり立ち止まってしまいました。

「どうしたの、鹿目さん」

「えっと、ピリカさんたちのことをずっと考えてて。
魔法少女を助けたいって考えてくれているのに、どうして人も助けようって考えてくれなかったのかなって。
本当に争わずに話し合いだけで済ませられないのかな」

鹿目さんの優しさは底なしです。

いつもみんなが楽しく、幸せになることを願ってしまう方なのです。

そんな鹿目さんにとって、今回の件はとても辛いことなのかもしれません。

「あの状況では言い出しにくかったわよね。みんな普通に話していたけど、中には殺意を持っている子たちもいたわ。

マギウスの時もそうだったけど、事態が治ればいくらでも話し合えるはずよ」

「そう、ですよね」

「私達は参加できないわけだし、私達は他の子たちの報告を待ちましょう」

巴さんの話を聞いて少し笑顔を見せた鹿目さんでしたが、どこか納得していない表情が隠れている気がしました。

ふと一瞬強い風が吹きました。

すると鹿目さんは近くにおらず、目の前には気絶した鹿目さんを抱える魔法少女がいました。

「鹿目さん!」

「慈悲深い魔法少女 鹿目まどかを少し借りて行くよ」

「待ちなさい!」

私は魔法少女に変身して時間停止を行いましたが、驚くことに目の前の魔法少女は平気に動いていました。

どうして

「時間をとめるなんてこと、本当にできる魔法少女がいたんだな。世界は広いねぇ」

片側にだけお下げがあり、手袋部分にオレンジ色のソウルジェムと思われる宝石がついている魔法少女。

まさか、日継カレンさんなのですか。

「鹿目さんをどうする気ですか」

この子が背負っている未知数の因果律が自動浄化システムを広げることに必要でね、協力してもらうんだよ」

「それなら話し合いで済むはずです」

「本当か?なら、ヒトとして生きる事を止めろ言っても協力してくれるのかな?」

そう言ってカレンさんは神浜の方へ素早く移動を開始しました。

「待って!」

時間停止の影響を受けない理由がわからない。巴さんのようにリボンで繋がっていなければ。

繋がり?

私は会議で出てきた話題を思い出しました。

“黒いオーラの魔法少女となった私たちに共通しているのは、日継カレンと会っている事だ”

“あいつと繋がりがある奴らがなっているんだから元凶は日継カレンだよ”

日継カレンと会った時点で何か繋げられてしまっている?

だとすると日継カレンを経由して巴さんも動けるはず。

なのにあの場から時間は止まったまま。

わからない。あの人はどんな方法で時間停止の影響を受けていないの?

そう考えながら日継カレンを追いかけていると横から炎の剣でいきなり斬りつけられました。

咄嗟に盾でガードしましたが、地面に叩きつけられてしまい、時間停止も中断されてしまいました。

また落ちた場所も悪く、一般人が多くいる道でした。

周りの人たちはいきなり地面に叩きつけられた私と、炎の剣を握りながら私の方へ迫ってくる魔法少女を見て騒ぎになっていました。

「おいあの子空から落ちて来なかったか?」

「炎の剣?!ドラマの撮影か?随分とリアルだな」

一般人に見られながらも目の前にいたのは、ピリカさんでした。

私は改めて時間停止を使いましたが、ピリカさんも時間停止の影響を受けていませんでした。

「何で、なんで貴女も立ちはだかるんですか!どうして人へ危害を加えようとするのですか!」

私はピリカさんを振り切ろうとしますが、炎の剣で軽くあしらわれてしまい、カレンが向かった方向へ進ませてくれません。

「魔法少女が人間社会に溶け込めると考えているなら、それは間違いです。

ヒトは時間に縛られ、他人の欲を満たすために、金に支配されながらシステムのように生きて行くこととなります。

しかし私たちは穢れを解消しなければいけない。

そんな事情も知らずにヒトは私たちを縛り付けて無意識に魔女となる事を強要してくるでしょう。

そんな社会を生み出すヒトは、魔法少女にとっては害でしかないのですよ」

「そんな主張、勝手ですよ!

魔法少女だって人と一緒に生きて行くことはできます。社会人になっても、学校生活のように両立ができるはずです」

「私たちにとってはその主張も勝手なのですよ。今の人間社会が、まともだと言えるのですか」

時間停止できる限界が来ても私はその場から一歩も進めずにいました。

そして時間停止が解除されても、一般人に見られていようともピリカさんは炎の剣を私に振ってきました。

私は林に逃げ込もうとしますがピリカさんは私を一般人の方へ押し戻し、そのふるう剣は一般人も斬り付けていました。

一般人に被害が出ていることよりも、魔法少女として戦っている姿を一般人に見られていることが私には一番のストレスとなっていました。

何で一般人に見られているだけで苦痛となっているんだろう。

わたしはその場に膝をついてしまい、今までのように振る舞うことができていませんでした。

貴女の大事な人を守りたいという考えは人目につくというだけで諦めてしまうことなのですか」

周りの人は警察を呼んだり面白そうにスマホで写真を撮っていました。きっとSNSで拡散されるのでしょう。

わたしは今、魔法少女が人間社会で生き辛い縮図を体感しているのかもしれません。

「その程度の覚悟で大切な人は守れないですよ。守りたいのであれば、まずはその価値観から見直す事をお勧めしますよ」

そう言ってピリカさんはカレンとは違った方向へ姿を消しました。

わたしはこの一瞬で人として大事なものが既に失われている気がしました。

きっと学校へ行ったところで苦痛になるであろうことは目に見えていました。

ならばもう、躊躇する必要もない。

私は、鹿目さんを助けるために手段を選ばない!

一度家に戻って爆弾以外に銃器を揃えることにしました。時間停止が通用しない以上、銃器で応戦するしかありません。

とはいえ周辺の反社会的組織から調達できる銃器は底をついていて、近くの軍事基地に手を出すしかありませんでした。

しかしもう、迷う必要はありません。

夜のうちに軍事施設へ入り込み、扱いやすいサブマシンガンやハンドガンを調達してそのまま神浜へ向かいました。

夜明けごろに神浜へ到着し、私は会議の中で報告されていた一カ所のアジトと思われる場所へ向かいました。

そこへ近づくとピリカさんとシオリさんが出てきました。

「ピリカにかまかけられるなんて、あんた何怒らせるようなことしたんだ?」

「私も理解に苦しんでいるところです」

そう言いながら私は彼女たちへ銃口を向けました。

「鹿目さんはどこですか」

「自動浄化システムが世界に広がるまでは教えられないね」

「ならば、力ずくで教えてもらいます」

私は時間停止を使ったうえでピリカさん達へ弾丸を放ちます。

思っていた通り2人は時間停止の影響を受けていませんでしたが、飛び道具はその場で時が止まるので2人は手に持つ武器のみで応戦してきました。

2対1という不利な状況で勝つためには敵の攻撃を避けながら時間停止を解除した際に大打撃を与えること。

しかしそんなことはお見通しと言わんばかりに2人は弾丸の進行方向とは逆側に、爆弾が起爆する地点とは逆側に私を追い込みます。

攻撃は6割ほど受ける状態となり、その過程で眼鏡が割れて視界不良の状態に陥ります。

地面へ叩きつけられた際に時間停止が解除されてしまい、アジトと思われる建物方向は爆弾等の爆発が起こりましたが電気のシールドが貼られていて無傷の状態でした。

私は地面へ叩きつけられたと同時にシオリさんの攻撃の影響か体が動かなくなっていました。

「時間停止に頼った戦い方だから敵わないんだよ。
まあ実銃を使うスタイルは面白いと思うよ」

シオリさんが私に手を出そうとした時、何かが私に絡まり付き、ものすごい勢いで後ろ側に引き寄せられました。

視界がぼやけていてはっきりとはしませんでしたが、赤い服とポニーテールという見た目から佐倉さんであることがわかりました。

私は少し離れたビルの上で下され、佐倉さんは私の目の前に立ちました。

「考えなしに突っ込むとからしくないぞ、ほむら。
眼鏡、壊れたのか」

視界がぼやけたままでは何もできないので、私は試しに魔力で視力を矯正できるか試してみました。

すると、思ったよりも簡単に眼鏡をつけていたときくらいの視力にすることができました。

「ふーん、そんなことできたのか」

そう言うと佐倉さんはブラックな板チョコを包み紙を一部破った状態で私に差し出してきました。

「ほら、これ食ってちょっと冷静になりな」

私はビターなチョコを食べた後、ここに来るまでの出来事を佐倉さんに話しました。

「そうかい、あいつらは人前でも平気に魔法を使うほどやばいやつだってことはわかったよ。

強さもばかにならねぇのに戦えるフィールドを選ばねぇってのも厄介だな」

「私だけでは敵わないってわかったから、あとは巴さん達が来るまで情報集めをしようと思います」

それならこの街の中央区にやたらと魔法少女の反応が多かったからそこへ見にいったほうがいいかもな。

あそこでヤバいことが起こりそうだぞ」

中央区はシオリさんの目撃情報が多かった場所です。

もし昼間に彼女達とぶつかってしまったら、きっと中央区は阿鼻叫喚な光景となるでしょう。

わたしは鹿目さんの居場所の手がかりがないか探るために、神浜の中央区へと向かいました。

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-5 塗りつぶされないその心に従って

音が届かない、夕日もほとんど差し込まない路地裏には4人の魔法少女と1人のヒトがいました。

「そこの倒れているのはチヒロじゃないか。かこ、これはどういうことヨ」

「ちひろさん、路地裏でこのヒト達に暴行を受けていたんですよ。蒼海幤に恨みを持っていて一方的に殴りかかってましたよ」

誰がどんな顔をしていたのか判断ができないほど肉塊が広がるだけの酷い光景でした。

これを、貴女がやったというのですか。

「どういうことですか、ヒトに手を下すなど、貴女らしくありませんよ」

「かこちゃん!何があったのか教えてよ!」

「私はもうななかさんたちの元へ戻れません。どうしてもというなら、もっと奥で話しましょう」

ちひろさんを血溜まりから離れた場所へ寝かせた後、私たちはかこさんの後を追って路地裏の奥へと進んで行きました。

「どうしてついてくるんですか」

「私達は貴女の仲間です。当然のことですよ。

まずは何があったのか話していただけますか」

「話したところで面白い話ではないですよ。ヒトと魔法少女は決してともに暮らせないと、そしてヒトは呪いの源、害だと気付いてしまったんですよ」

私は何か言い出そうとしたあきらさんを止め、かこさんの話を聞き続けます。

「お父さんとお母さんに見られちゃったんですよ、心臓に穴が開いても平気でいられる魔法少女の体を。

そして使い魔を倒して帰ったら、いつも名前で呼んでくれていた2人が私の事を人ではない、普通じゃないとしか言わなくなって。

それで私の前に私がもう1人現れたんですけど、うるさいから切っちゃったんですよ。

そして真っ暗な中を進んで扉があったので開いたら、目の前にはヒトだった肉があるだけでした。

それからたくさんのヒトを見て、呪いの源を断って、断って、断って。

そうしていると、もうヒトなんて救う必要ないんだって」

語るかこさんの目はももこさん達のように光のない目になっていました。

いえ、それよりももっと目の奥に闇が見えました。

そしてその顔は不気味な笑みを浮かべていて、なぜか涙を流していました。

ソウルジェムは、黒く濁るだけでなく七色が見え隠れしていました。

“あたしはあんたの反対側にいるんだよ。

でもね・・・いずれこっちに来る”

予言だったというのですか、貴女が私の中に幻影として現れたのは。

“あんたの反対側にいるんだ いずれこっちに“

私は魔法少女姿となって抜刀し、刃をかこさんへ向けます。

「ななか?!」

「かこさん、あなたを反対側に、“あちら側”に行かせるわけにはいきません!
必ず呼び戻します」

「ななか」

「あきらさん、美雨さん。今すぐここから立ち去ってください。これは私のケジメの問題です」

そう言ったにもかかわらず、あきらさんと美雨さんは魔法少女姿となり、私の横に並びました。

「何をしているのですか。生きて帰れる保証はないですよ!」

「何言ってるんだななか。ボクたちは仲間のためにここにいるんだよ。それに、人数がいれば止められる可能性だってあるんだから
それに、今のかこちゃんの姿をみんなに見せるわけにはいかないでしょ」

「ワタシは仲間を見捨てない。残るのは当然ネ」

2人ともに3対1という状況ができるにもかかわらず覚悟を決めたような顔をしています。

なぜでしょう、わたしも今のかこさんを前にして優位に立てると確信することができません。

戦わずとも既に知っていますが、“あちら側”のまま放っておくわけにはいきません。

「暖簾の先に進む覚悟がお有りなら、ひたすら付き合ってもらいますよ」

「当然!」

「わたしの前から消えてって言ってるのに!」

かこさんも魔法少女姿となり、いつもとは違った殺意の勢いで襲いかかってきました。

長柄の武器は突きよりもなぎ払う行動が多く、こちらが繰り出す攻撃は受け止めるよりも受け流してカウンターを取ろうとする動きが目立ちました。

そう、この行動原理は美雨さんのもの。

あきらさんと美雨さんの間髪ない攻撃の中、わずかに生じる隙を見逃さない回避経路を的確に見抜いています。

これはあきらさんの固有能力の応用。

かこさんは2人に構わずわたしにばかり積極的に攻撃を仕掛けてきます。

あきらさんと美雨さんがカバーに入ってくださるので猛攻を耐えてはいますが、これはわたしが司令塔であることを把握しての行動でしょう。

そう、かこさんは私たちの行動を後ろから今まで観察し、置いてかれないようについて行こうとしていました。

つまり、私たちの行動原理はお見通しなのです。

しかし一緒にいた私たちも同じ条件。

そのはずなのですが。

わたしはかこさんに飛び上がりを強要させるよう一閃を加え、飛び上がったかこさんをあきらさんが回し蹴りで地面に打ち付けようとします。

どんな身体能力を持っていようとこの世界の原理、重力に逆らう行動を取れる魔法少女はそう多くはありません。

その隙が生まれる着地の瞬間を狩るのが美雨さん。

しかし、かこさんは石突きを地面に打ち付け、その場にクレーターができたかと思うと黄緑色の光線ができたクレーターを囲うように放たれました。

「やはり、容赦はないようですね」

受けるはずの重力が右手に集中するその行動によってかこさんの右手は糸が切れた人形のようにだらんとしていましたが、即座に回復して地面に突き刺さった武器をその右手で抜き取りました。

やれると思ってもやらない戦法。

それはヒトとしての行動理念に反すること、ヒトとして大事なものを失う行動。

これらに該当する戦い方は勝てる場面でも使わないことが当然でした。

ヒトデハナイ

そう吹っ切れた方が相手だと、立ち回りにくいものですね。

戦況はお互い譲らずと言った状況でした。

私たちは擦り傷程度の損害に対してかこさんは切り傷や殴打による内出血ができる度に回復魔法で元に戻ります。

ここまで戦って不思議なのは、私たちのソウルジェムがそれほど濁っていないことに対し、かこさんのソウルジェムは真っ黒のままだということ。

「まだ構うんですか」

「当たり前です。あなたをこちら側に呼び戻すまでは引きません。あなたがまともに話を聞いてくれるようにならない限り、どこまでも」

「それにそろそろドッペルを抑えるのも限界なはずだよ」

「ドッペル、ですか。

そうですね、そんなに殺されたいナラ、切りキザマreちゃえばいIんですヨ!」

かこさんの足元から周囲に赤いリボンが巻きついた鉄柵、毒々しい植物が生茂る結界が展開され、空はほのかに夕日がこぼれていた時よりも紫がかった色へと変わっていきました。

「まさかこれ、魔女の結界」

「だめ、引き返せなくなります!」

わたしはかこさんのソウルジェム目掛けて駆け寄ろうとしますが、結界の茂みからは腹部分が本、頭部分が様々な花となっているモモンガな見た目をした使い魔まで現れました。

「ちょっとこれどういうこと?!神浜じゃ魔女にならないはずだよ!」

かこさんのソウルジェムから出てきた呪いの色をしたリボンがかこさんを包み、かこさんの見た目はかつて見たことがあるドッペルに似た姿へと変わっていきます。

スカート部分は本に何本もの栞が刺さった見た目をしていて上着部分は三原色が完全に混ざり切っていないパレットのような彩りに変わっていました。

そしてかこさんの目には光がない代わりに、赤い光が揺らめいていました。

そしてソウルジェムの中から取り出したのは身の丈ほどあるオオバサミ。

「ドッペルを着込んだというのですか」

かこさんはオオバサミを持ったまま素早くあきらさんへ詰め寄り、オオバサミで真っ二つにしようとします。

「いきなりか!」

しなやかにあきらさんは避け、美雨さんが詰め寄るとオオバサミは分離して二本の大剣となって攻撃を受け止めます。

「もうなんでもありカ」

使い魔たちの数が増え始め、私たちの行動を妨害するようになっていきました。

使い魔を振り払っているとかこさんのスカートにある栞が飛び出し、私たちの体に突き刺さりました。

そしてきっと魔力を吸い出したのでしょう、色が変わってそのままかこさんの元へ戻っていきました。

私たち3人は少々意識が朦朧としてしまい、その隙を突かれてあきらさんは壁に叩きつけられてしまいました。

そしてかこさんはあきらさんのソウルジェムがある側の腕を、オオバサミで切り落としてしまいました。

「アアアアアアアッ」

「あきらさん!」

かこさんはその後いつも使っている武器を生成してあきらさんの右足に突き刺してその場から動けないようにしてしまいました。

「かこ!」

美雨さんの突き出した拳はかこさんの左腕に突き刺さり、食い込んで抜けない中使い魔たちが美雨さんの視界を遮ります。

視界が開けた頃にはかこさんはオオバサミの片方を大剣のように振り払い、美雨さんは両足を失ってしまいます。

聞くことがないと思っていた美雨さんの叫び声が響き、右腕も斬り付けられて動けない状態となりました。

かこさんはわたしに振り返り、オオバサミを閉じて鋭利な先端を向けて急速に向かってきました。

そうです、そのままくるのです。

貴方にはまだ、ソウルジェムを壊さない優しさが残っているのですから。

わたしは無抵抗のまま心臓部分をオオバサミに貫かれました。

痛みに耐えながらわたしはかこさんを掴み、グリーフシードをかこさんのソウルジェムに当てました。

薄い意識の中、伝えるべきことを伝えるために声を絞り出します。

「かこさん、聞こえますか」

「ななか、さん」

「手短に話します。
貴女のヒトを嫌いになってしまう思考は、自動浄化システムが広がった際にいずれどの魔法少女にも、訪れることです。なので、否定はしません」

「わたし、わたしは」

かこさんの手は震えていて、元の魔法少女姿に戻ったかこさんの瞳には涙がたまっていました。

「しかし、闇に呑まれて全てを否定してはいけません。いつもの貴女らしさ、大事にしてください」

「わからない、わからないですよ私らしさなんて!ヒトを助ける気がなくなった私に何ができるんですか!」

「何を、おっしゃっていますか。もう貴女は既に貴女らしさを闇の中でも見せているじゃないですか

「え?」

人嫌いならば、あの場面でちひろさんも無差別に殺していたでしょう。

しかし殺そうとしなかったことで確信したのです。まだかこさんから良心は消えていないと。

呪いが満ちた状態を途切れさせるためにはグリーフシードで呪いを取り除けば言葉を伝える間が生まれる。

うまくいって良かったです。

8割呪いを吸い取ったグリーフシードを投げ捨て、もう一つ取り出して話を続けます。

「ここからは貴女の心に従ってください。大丈夫です、私たちは信じています」

「ななかさん」

ぼやける視界には路地の片隅に立つ見慣れたシルエット。左側だけ髪を結っている魔法少女。

「あのとき巻き込んでしまったことを後悔しそうでしたが、私は正しかった。

このどうしようもない状況を、打破出来る。

だから、わたしはかこさんを!」

最後の力を振り絞ってかこさんを横に突き飛ばし、わたしの意識はそこで途切れたのです。

 

 

ただの路地裏となった場所に3つの宝石が砕ける音が響きました。

ソウルジェムがあった場所まで伸びている糸の根本を見ると、そこにはカレンさんがいました。

ななかさんたちはヒトだった姿になっていました。

わたしの頭にはある場所の映像が流れてきました。
ここは、中央区の電波塔?

「自動浄化システム、広げたいと思うならそこに来い。夏目かこ、お前の再現の力が必要だ。

協力的であることを祈っているよ」

そう言ってカレンさんは去りました。

死んじゃった。わたしのせいで、ななかさん、あきらさん、美雨さん。

わたしはこれからどうすれば。

そう思っていると、わたしの中である確信が芽生えます。

倒すべき存在は、日継カレン。

いえ、復讐すべき存在。

私の肩には、ななかさんの手があったような気がしました。

やるべきことが見えました。

わたしは、いえ、“私たち”は自動浄化システムを世界に広めた後、あの三人に復讐し、償ってもらいます。

もちろん、生きてもらいながら。

路地裏には、1人しかいないはずの魔法少女の気配が、なぜか4つあったのでした。

 

 

この日の夜になる頃には、各地で大きな動きがありました。

どれも日継カレンたちの思惑通り。

ニュースに流れたことも含めて魔法少女たちの衝撃だけには止まらず、人間社会にも大きな影響が出ていました。

神浜市にいると化け物に襲われて殺される。

もはやウワサの域を出て、ノンフィクションだという認識が広まって行くこととなったのです

わからない。

日継カレン、紗良シオリ、保別ピリカという魔法少女の情報がふーちゃんからも入ってこない

全ての魔法少女の怒りと嫌悪の矛先は3人の魔法少女に集中している。

負の感情だけが漂う神浜市ではもっと大きな災厄が訪れそうで、胸が痛くなってしまいます。

「アルちゃん、この事を記録しても意味があるのかな」

“あるんじゃないかな。何が起きたか知ってもらって、理解する。そこからじゃないかな、なにもかも”

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-4 自責の権化を前にして

いつからでしょうか。

私はよく、夢を見るようになっていました。

あの時の、私が初めて心の底から許せないと思ってしまった方が夢に出るたびに、あの言葉が頭に木霊するようになったのです。

「あたしはあんたの反対側にいるんだよ。
でもね・・・いずれこっちに来る」

サラサハンナ

マギウスの翼の一件で忘れたかと思いましたが、黒いオーラの魔法少女を見てきたせいなのか再び記憶が蘇ってきたのです。

「ホント、面白いことが絶えないね、この街は」

「失せなさい。今頃何をしにきたのですか」

「なーんか魔法少女って成仏できないみたいでさ、あの後ずーっとあんた達を見ていたよ。

ワルプルギスの夜ってやつが倒された時はくっそつまらねって思ってたけどさ。

黒いオーラの魔法少女!

人間ぶっ殺したくなるとか超楽しいことになってるじゃない!」

「・・・」

「まああんた達に協力する気はないんだけどさ。あんた達が探してる子、生きてはいるよ」

「なぜそうと言えるのですか」

「でももしかしたら“こっち側”になっちゃってるかもねぇ、真っ黒になっちゃってさ!
アハハハハハッ!」

私は頭にまとわりつくような声を振り払いました。

それと同時に目を覚ましたのですが、目覚めの気分は最悪でした。

今日は沢山の魔法少女が集まる大きな会議が行われる日でしたが、かこさんを探すことを優先し、私たちは欠席することにしました。

探す当てがあるからです。

私は1日をかこさんの探索に当てることとしました。

忘れもしない朝のニュース。

かこさんのご両親が殺されたこと、そしてかこさん本人は行方不明という内容を。

しかしかこさんは魔法少女で魔女の仕業だとしてもあのような結果で終わるはずがありません。

あり得ることとしては、シオリさん達が手を出すこと。

私はその可能性を考えながら町中を回りました。その中でよく耳に入るようになったのは、路地裏で刃物によって殺されている人が増えているという情報でした。

この情報を集めているうちにやちよさんからは会議が無事に終わったと通知が来ました。

感触は良好。しかし目的地への潜入は明日の夕方になるという内容がありました

明日は平日で普通ならば皆さん学校へ行く日となるため致し方ありません。この生活サイクルの違いでシオリさん達と差がついてしまったと言っても言い逃れできないでしょうね。

もちろん我々の捜索も明日の夕方から再開することとなりました。

しかし一度各々が集めた情報を整理するために再び集まりました。

「かこさんの足取りは掴めなかったようですが、気になることがあるそうですね、あきらさん」

「うん、実は情報収集中にパトカーや救急車の音が普段より多く聞こえた気がするんだよ。試しに現場に行ってみたら、どうやら路地裏で殺された人がいたとか」

「きっとそれ、南や東も同じ。蒼海幤に付き纏っていたゴロツキ、強硬手段を使うことで恐れられていた暴力団の一味が刃物で殺されていた現場を見たと聞いてるヨ」

「急に増えたとなると同一の要因であることを疑いますが、何時ごろ起こったかまでは把握できませんでしたか」

「流石にわからないよ。わかるのは死体が見つかるまで2、3日の間は空いていないってことくらいかな。教えてくれた人、昨日は何もなかったって言ってたし」

いつもであれば魔女の仕業と考えることはできますが。

「ななかはどうだた」

「かこさんの古本屋周辺で話を聞いたのですが、どうやら昨日の昼過ぎから夕方の間には既に古本屋の前に血痕と気絶した刃物を持った男がいたそうです。

近所の人が何事かとかこさんのご両親に聞くと、かこさんは通りすがりの男に刺された後、何処かに行ってしまったようなのです。

男はその後警察に捕まったそうですが、何も覚えていないそうです」

「じゃあ、かこちゃんは魔女の仕業だと思って飛び出してそのまま帰っていないってこと」

「まさか1人で挑んで」

「かこさんはそこまでやわじゃありません。何かトラブルに巻き込まれた可能性があります。明日は学校の用事が終わった後に再び捜索を再開するとしましょう

解散した後も私はあらゆる可能性を模索しました。

かこさんのご両親が殺されたことと神浜中で起こっている殺人事件が同一犯だとしたら。

残念ながら現在は魔女以外に黒いオーラの魔法少女が該当します。

魔女であれば魔力の痕跡が残るはずですが、2人ともにそれはないと言っていました。

黒いオーラの魔法少女であれば忍ぶことを知らないうえに無差別に殺戮行為を働くため、今回のようにピンポイントに、そして密かに殺人を行うことは考えにくいでしょう。

だとすると、犯行を行なったのは複数の人間、または魔法少女による犯行となるでしょう。

そういえば人を殺すことを躊躇しない方達に心当たりがありますね

憶測で疑うのは良くありません。

明日は路地裏や人目のつかない場所を捜索することにしましょう。

彼女達のアジトへの襲撃は、やちよさん達に任せることとしました。

「如何して1人に固執するんだい?常盤ななかっていうのは目的のためにあらゆるものや人を手段として扱うやつじゃなかったかい?」

手段として利用してきたことは認めましょう。しかしそれは思い違いです。

仲間を助けるために行動しているのです。

「らしくないねぇ。紗良シオリとかいう魔法少女達を抑えるチャンスを逃してまで仲間を助けるだなんて」

あなたには関係ありません。今回の件はかこさんを見つけなければあとあと取り返しのつかないことになるという予感がしているからです。

「焦ったいね。素直に言えばいいじゃないか、あの魔法少女をこっちの世界へ誘導してしまったという自責の念から来てるとね」

死してなお私に固執するあなたに対して理解に苦しみます。

「アハハハハハッ

私はあんたが作り出した幻影だよ。むしろ固執してるのはあんたの方だよ。

楽しみだねぇ、あの子、もうこっち側になっちゃってるかもねぇ。

アハハハハハッ!!」

私は今回の件に対して冷静な判断よりも直感で行動していたのかもしれません。

更紗帆奈の幻影が、直感で行動することに拍車をかけていたのかもしれません。

なぜ今になって、彼女が。

放課後になった頃には刃物のようなもので殺される変事件は報道に取り上げられるほど話が発展していました。警察も動いているようですが、中央区ではお昼ごろに死傷者が出たと騒ぎになっていました。

現在一番新しい死亡者情報は新西区に集中していることもあり、私たちは新西区の路地裏を重点的に調べることになりました。

曲がりくねっている路地裏の一角、そこには2人の女子高生がいました。

そのうちの1人は友人の写真を持って訪ねていました。

「知ってるよ、その子。あたしらの仲間が昼間に見かけたらしいんだ」

「その話、詳しく教えて!」

「いやいやいや、あんた蒼海幤のメンバーだろう?あたしらの仲間をシマを守るためとか言って結構痛みつけてくれたみたいじゃないか」

「それは、貴方たちが昔のようにヤクザ業で一般人も危険に晒そうとしたから美雨さんが止めに入っただけでしょ!」

「そうそう!その中華っぽい名前のすごい強い子。あいつにはあたしらに詫びを入れてもらわないといけないんだよねぇ」

1人の少女が指を鳴らすとどこに隠れていたのかわからない柄の悪そうな男が5人出てきました。

「やめて、そんなことをしている場合じゃないの!」

変に暴れるとこいつらが粗相をしちゃうかもしれないから大人しくしておいたほうがいいと思うよ」

男たちは写真を持っていた少女を壁に打ち付け、腹に対して2、3発拳を振ります。

殴られた少女はその場に跪いてしまい、そのままもう1人の男が顔に蹴りを入れました。

「ハンゴロシで済ましとけよ、交渉する前に死なれちゃ困るからな」

「生きてないと俺らも楽しめないしな!」

ゲラゲラと笑う少女と男たち。

しかしここは表通りまでは声もほとんど届かない場所で、誰もここの出来事を知ることができません。

「そこの女の子が何をしたというのですか」

誰も来ないはずの路地裏へ黒いフードつきのパーカーを着た少女が現れました。

「お嬢ちゃん、タイミング悪いとこだったな。来ちゃいけないとこに来ちゃうとか、悪い子だね。悪いけど、お兄さんたちについてきてもらうよ」

そう言って手を出してきた男は長柄の槍のようなもので貫かれ、血を吹き出しながらその場に倒れました。

「ヒトは誰も彼も希望を与えるほどじゃない人ばかりですね」

「なんだてメェ!お前らチャカ使っちまえ!」

「お、おう!」

男たちは忍ばせていた銃器を手に取りますが、黒いフードの少女は銃弾が放たれる前に手や首を素早く切り落としてしまい、路地裏に響いたのは男女の悲鳴だけでした。

「貴女は」

「私にはもう、構わないでください」

暴行を受けていた少女は黒いフードの少女に気絶させられ、その場に生きているヒトは気絶した少女だけでした。

鉄の匂いが充満するその場には3人の魔法少女が現れます。

「やっと見つけましたよ、かこさん」

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-3 絶望よりも深いその先へ

昨晩行われた紗良シオリさんの捕獲作戦。

結果は成功とはなりましたが、望んだ最善の結果とはなりませんでした。

シオリさんの残した魔力を頼りに今日中にななかさん、美雨さんで潜伏先を探すと伺っています。

そして明日行われる神浜マギアユニオンの集会で報告し、多人数でシオリさん達を抑える。

その後のことは終わった後考えるとのことですが、私は知りたいのです。

なぜ彼女達が、魔法少女のためにすごいことをしようとしているのに、今回のような悲しい結果を生むような行為に至ったのか。

私はそんなことを考えながら店番をしていました。

今日はお父さんとお母さん揃ってお出かけしています。日々何かと忙しくて揃って休日を取れる日が少ない中、今日は私が店番をする代わりに、二人に息抜きしてもらうことにしたのです。

まあ、親孝行というやつですね。

2人とも照れ臭そうな表情をしていましたが、手を繋いで出かけて行きました。

楽しい日になってほししいなぁ。

私の家では夏目書房という古本屋さんをやっているのですが、本を集めてくるお父さんのこだわりもあってか、珍しい本があるとそれなりに名前は知られています。

いまは電子書籍の時代となってきてはいますが、紙とインクの匂い、そして何よりも手にとってページをめくっていき、物語を読み進めていくというのが本の良いところです。

お客さんもそれなりに来て、時々近所のおばさんと会話したりと、ゆっくり時間が流れて行きました。

近所のおばさんと話していると、気になる話を聞きました。

「そういえばかこちゃん、同じ学校に通っている子で急に不登校になった子とかいないかい?」

「急に不登校ですか。そういえば最近、増えてますね」

「やっぱりそう?私の迎えに住んでいる奥さんの子がね、最近家族の前に姿を見せない上に、学校にも行かない不良娘になっちゃったみたいなのよ。
前から帰りが遅かったりしたことはあったんだけどねぇ。何か相談できないような悩み事でもあったのかしらねぇ」

「そうかも、しれないですね」

不登校になった女の子。

ご存命ではあるらしいので、魔女に襲われてってことではないかもしれません。でもその子が魔法少女だった場合、ももこさんたちのように黒いオーラを纏ってしまい、考え方が変わってしまった結果なのかもしれません。

かえでちゃんも学校へ来なくなり、他のクラス、学年でも不登校となる子が増えていました。

マギウスの翼の時よりもその数は多く、いま起きている事態はマギウスの翼が起こした騒動よりも大きな影響を与えているのだなと実感しました。

お店の中が静かになったころ、少し気になったのは、午後になってもななかさん達から続報が来ないということです。

魔力の痕跡を追えなかったのか、それとも何か騒ぎに巻き込まれてしまったのか。

お父さん達が帰ってきたら電話でもしてみようかな。

「かこ、帰ったぞー」

「あ、お帰りなさい。二人とも楽しめた?」

「もちろんさ。新婚の頃の新鮮さを思い出せるいい機会だったよ」

「もう、お店に入ってすぐに書店に籠ろうとしたのは誰なんだか。
かこちゃん、今日はありがとね。お父さんと選んで買ったお菓子とかあるから、夕ご飯の後に食べましょう」

「わあ、ありがとう!」

楽しく会話している中、お父さんとお母さんの後ろに虚な顔をした男の人が近づいてきました。

そして、その男の人は刃物を取り出し、走ってきて。

「ダメ!」

私はとっさにお父さんとお母さんの間を通って仁王立ちするように男の人の前に出ました。

凄く、痛い。いや、普通なら痛いじゃ済まない。

男の人が取り出した刃物は、確かに私の心臓を捉えていました。

血が滲み出る中、私は襲ってきた男の人の腕を掴み、刃物から手を離させ、そのまま地面へ叩きつけて気絶させました。

その男の首元には、魔女の口づけが。

「いやあああああ!」

お母さんはとても怯えた顔をしていました。

お父さんは驚いた顔をしていて。

「かこ、どういうことだ、これは」

そう、魔法少女であれば心臓を貫かれても、血が幾ら流れようとも、ソウルジェムが無事であれば生きていられる。

しかしそんなこと、普通の人なら理解されない。

私は、お父さん達の目の前で、人ではなくなっていることを証明してしまったのです。

私は刺さった包丁を抜いて、回復魔法で傷口を塞ぎました。

そして包丁を地面に落とし。

「お父さん、お母さん。ごめんなさい」

「かこ!」

私はそう言ってその場から走って去りました。

見られてしまった、知られてしまった!

私が人ではない体になってしまったところを!

涙で滲んだ風景の中、魔女の口づけから感じた魔力反応を頼りに走り続けました。
私はただただ怖かったのです。見たこともない、二人の怯えた顔が。

魔女の結界に入ると、手をパチパチと叩きながらケラケラと笑う使い魔達がいました。

貴方達が、あの男の人を操らなければ、あのタイミングじゃなければ!

魔力反応を感知できなかった私のミスかもしれない。平和な時間の中で油断していたのかも知れない。

でも許せない、今回だけは、許せない!

普段はやらないような力頼りの攻撃を行うばかりだった気がします
使い魔に攻撃されて傷口がたくさんできても、痛みを感じることはなく、ただひたすら感情に流されるように使い魔を倒していきました。

そして倒しても倒しても、私の気が晴れることはありませんでした。

気づけば日は落ちかけていて、グリーフシードもありませんでした。

もしかしたらしっかりと向き合ってくれるかもしれないという淡い期待をもって私は帰路へつきました。

いつも普通に帰れていた家も、入るのが怖かったです。

2人の反応が怖い。

そう思いながら二階に上がると、お母さんは泣いていて、お父さんはお母さんを慰めているところでした。

「ただいま」

「かこ、帰っていたのか」

しばらくの沈黙の後、お父さんが話し始めます。

「どういうことか説明してもらえるか。あの状況、普通なら動けず死んでいてもおかしくない。

でもお前は人並み以上の力で男を気絶させ、そして、平気にそこで立っている」

私はソウルジェムを手に乗せ、2人の前で変身して見せます。

「おい、その姿」

そしてその場で私は手首に切り傷をつけます。

「や、やめなさい!」

血は少し流れましたが、魔法ですぐに傷口は塞がりました。

「ごめんなさい、もう、普通じゃなくなっちゃったの、私」

私の声は震えていました。そして足元から凍えるような冷たさが登ってくるようになりました

ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい

そう、心の中で呟き続けました。

「どうしてこうなっちゃったの、これじゃあかこちゃん、人じゃないじゃない!

普通じゃないわこんなの、ありえないわああどうして、どうしてウチの娘が!」

「落ち着け!」

人じゃない。普通じゃない。

拒絶された。きっと、人じゃないから化け物と思われるのかな。

おかしいな、2人を助けたはずなのに。拒絶されちゃった。

ああ、嫌だったなぁ。こんなピリオドは。

冷え切ってしまい、何かが切れてしまった。

手をあげるとそこにはきらりと光るモノ。

”抑える必要なんてないんだよ。気の向くままに刻んでしまえば、すっきりするし清々しくなるよ”

そんな私の声が頭にこだまし、そして胸につっかえていたようなものが洪水のように押し寄せて頭をいっぱいにした。

身に降りかかる温かな液体。手は止まらない。
音も聞こえない。
私は目の前に浮かんだもう一人の私も含めて切り刻むかのように、手には大きな裁断機についているような鋏で激しく斬りつけていきました。

気づけば私は謎の空間の階段を下りていて、最下層には鎖でがんじがらめにされた門が立ちはだかっていました。

私は無意識に、鎖を切りきざみ、閉じられていた門を開けていました。

真っ暗な門の先へ進み、門が閉じた音と共に目の前には血だまりと肉塊が広がる光景が広がっていました。

その結果を見ても、不思議と浮かんだのは達成感。しかしすぐに体は冷たくなってしまいました。

「穢くなっちゃったなぁ。着替えないと」

私は着替えてその場を後にしました。

思いのまま、呪いの素を断つために。

 

 

「どういうことだ、シオリ。

朝からいないと思えばこの結果。まだこの街をかちゃ混ぜたりないのか!」

そこにはシオリを張り倒すカレンの姿があった。相変わらず手加減なく殴るんだから、血が出たじゃないか。

「誤解だよ、私は観察していただけ。あいつらに魔力パターン知られちゃったし、拠点にいないほうがいいでしょ」

「大事なピースをあの様にして、あの夫婦にヘイトを誘導させたのはお前だろ!」

「だから誤解だって。シオリが手を出さなくても結末は変わらなかった。それにこの流れはシオリ達を妨害するあいつらが退場するチャンスだ」

「いい加減にしろ」

しばらくの間沈黙が続いた。

「いいか、もう成就は目前なんだ。これ以上ヘイトを買うような余計なことはするんじゃない」

「でもいい感じに仕上がっただろう、争いの矛先は私たちに集中した。そのおかげで無謀な争いが軽減されている。

あの実験状態を野放しにし続けたのもそれが目的だろう?」

生温い風が2人の間を流れた。

「あの結末は私が処理する」

「そう、まあここまで最小限の犠牲だろうさ。変なイレギュラーのおかげで予想より助かってる奴らは多いし。そのおかげであの子も見つかったんだしさ」

「ああそうだな。予定なら私にだけヘイトが溜まればよかっただけなのに、余計なことしやがって」

「いらないよ、そんな気遣い。お師匠を殺す前も、そのあとも運命共同体だったじゃないか、水臭いよ。

なーに大丈夫さ、すべて終われば自然と天罰が落ちるさ。それが世の常だからね」

そう、解放のツケは、シオリ達だけに集中すればいい。それが全て最小限で、最適解さ。

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-2 魔法少女会議

今日は神浜の魔法少女にとっても、外からきた魔法少女にとっても重要な日。

自動浄化システムを広げる方法を知っている魔法少女達についての情報交換、そしてその魔法少女達を捕まえる作戦会議の日です。

とても大きな会議で、多くの魔法少女が集まります。

これがただ緊張するだけの場ならよかったのですが、神浜マギアユニオンとしては悲しく、そして辛い知らせが波のように打ち寄せています。
そんな中でも私にとって一番つらいこと。

お姉ちゃんがいない。

そんな状況の中、会議が中止とならなかった理由としては、ななかさんからシオリさんが隠れたとされる場所を特定したこと、そして

「私たちに構わず会議を行ってください。機は明日しかありません」

と伝言を受け取っていたからです。

ななかさん達は昨晩、紗良シオリさんを撃退してその後魔力反応を辿ります。

シオリさんがどこに行ったのか特定はできなかったものの、シオリさんの魔力が発せられている廃墟が3箇所あることを特定したと情報がありました。

シオリさんが隠れてから時間が経つ前に大人数で奇襲をかければ高確率でシオリさん達を捕まえることができる。そしてお姉ちゃんを助け出すことができる。

だから私たちは会議の中止よりも開催を優先したのです。

 

こんな大事な会議に灯花ちゃん達は参加できません。

何故ならあの謎の転移魔法では果てなしのミラーズへ行くことができなかったからです。

また、神浜マギアユニオンのみなさんからは、灯花ちゃんとねむちゃん、そして桜子ちゃんへシオリさん達の計画について話さない方が良いと言われています。

灯花ちゃん達がその考えに乗って協力しかねないからとのことです

昔は昔、今は今と言いたいですが、果てなしのミラーズで行った実験の方法と結果を見るとこのような意見が出ても仕方がない気はします。本当は信じてほしいけど。

本当に危ない事態になったら、教えようと思います。

お姉ちゃんが連れ去られたことについても、三人には内緒にしています。きっと無理しちゃうと思うから。

私は今回の会議に出られることになっていて、さなさんはお姉ちゃんが帰ってくるかもしれないということでお留守番、フェリシアさんはもう一つの不幸の調査のために飛び出してそれっきりです。

なので、みかづき荘からはわたしとやちよさん、鶴乃さんが参加です。

道中は静かでした。

何かと話を切り出す鶴乃さんも口を閉じたままでみかづき荘で生活を始めてからここまで静かなのは夜に寝るときくらいです。

果てなしのミラーズがある鏡屋敷の入り口にはたくさんの人がいました。

見た感じの年齢は小学生から高校生まで様々。知ってる人から知らない人までぐちゃぐちゃな状態です。

そんな中、声をかけてきたのは十七夜さんとみたまさんでした。2人はお姉ちゃんがいない状態のやちよさんを見て心配している様子でした。

「神浜マギアユニオンの中心人物だからというのはわかる。だが、環くんの居ない状態の七海は少々不安が残る」

「どういうこと?」

「大事なものが抜けた後というのは冷静な判断ができなくなる。今の七海が進行を行うと何処か早まった判断をしないか心配だ」

「大丈夫よ。至って冷静よ」

本来ならお姉ちゃんが進行するはずの会議ですが、今は連れ去られてしまって行方不明な状態なので代わりにやちよさんが進行します。

大丈夫、見渡した限り、神浜の魔法少女以外にもたくさんいるから絶対成功する。

そう期待をしている間に会議が始まりました。

まず行われたのは神浜に集まった神浜の外からきた魔法少女達の目的を聞くことから始まりました。

特に多かった理由は自動浄化システムを求めてきたからという理由でした。

次に多かったのは紗良シオリさん達を追ってきたという理由が多かったのが驚きでした。むしろここに集まった魔法少女がみんな2人の魔法少女のことを知っているくらいでした。

私たちが黒いオーラの魔法少女に苦労している中、シオリさん達は神浜の外に足を運んでいたのかもしれません。

そしてこの会議に参加した魔法少女は直接話を聞いた場合と口伝えに聞いた場合の2種類でした。

この会議の周知を行ったのは元マギウスの翼メンバーに広く知られている欄さんという方でした。

会議へ参加させるための口実として黒いオーラを取ることができた魔法少女の話を持ち出したとのことです。

神浜にいる間に黒いオーラの魔法少女による被害を受けた人たちも多かったらしく、今回の会議では黒いオーラを取る話も議題になります。

次に会議の議題に上がったのは紗良シオリさん達の目的についての話です。

この話は病院から退院したひなのさんから伝えられました。
ひなのさんはシオリさんとの戦闘の際に右目を失ってしまい、現在は黒い眼帯をしています。
シオリさん達の目的は、その戦闘が行われる前に聞いた話とのことです。
ひなのさんが話した内容のほかに、神浜の外から来た魔法少女たちが聞いたという話をまとめるとこのようになります。

・紗良シオリ・日継カレンの目的

ある物質を使用して因果量が多い魔法少女の素質を持つ少女を誕生させる。その少女へ自動浄化システムが世界に広がるよう願わせる。
願った後に急激に溜まる穢れはドッペルとして消化されるから願った本人も救われる。

しかしその過程で使用する物質へはrたくさんの「希望」を注ぎ込む必要があり、そのために沢山の穢れが発生する。その穢れをヒトへ押し付ける。

おそらくたくさんの人が死ぬ結果になるだろう。

 

「これが奴らから聞いた内容、そしてこれまでに奴らが開示してきた目的の内容をまとめた結果だ。

みんなが求める自動浄化システムを世界に広げようという考えはいいのだが、その過程で発生する願いを無理やりねがわせるという行為、そしてヒトへ呪いを押し付けるという考えは擁護できない。

私達は自動浄化システムを世界に広げる際の代償を最小限にさせるよう奴らを捕まえる。

ここに集まった魔法少女の中で、正直に奴らの考えが正しいと思う奴は静かにこの場を去って構わない。

私らの考えに縛り付ける気はないからな」

ひなのさんの発言に反応したのはミリタリーな見た目をした3人の魔法少女達でした。

「私らは別に奴らの計画はそのまま進んでもらって構わない。だが奴らにメッタメタにやられた過去があるからね。奴らを負かせるためにここにいるんだ。

悪いが残らせてもらうよ」

次に声を出したのは統一感のあるマスクをつけた魔法少女達がいる人達でした。

「私たちは貴方達神浜の魔法少女の指示を聞く必要はないわぁ。でも私たちの中から黒いオーラの魔法少女になって殺すしかない事態があったからここにいるのよ。

彼女達の対策について話すのもいいけど、まずは黒いオーラの取り方や纏ってしまう原因について聞かせて欲しいわね」

確かに日継カレンさん達と戦っている間に誰かが黒いオーラの魔法少女になったりしたらせっかく考えた作戦も破綻しちゃうかもしれないわね」

黒いオーラの魔法少女についての話題が大きくなって行きますが、実はこの話をする重要人物のななかさんがいない状態です。

誰が詳細を話せば良いか悩んでいる中、説明できると前へ出てくれたのがももこさんでした。

ももこさん、以前とは雰囲気が変わってしまいましたが、魔法少女に対してはいつものように優しく接してくれます。

そんなももこさんは、みんなの前でカレンさんを目の前にして私たちに話した内容と同じような内容を話し始めました。

聞いてたみんなはななかさんに聞かなければわからない内容だったので少々消化不良だったようです。

こうして神浜マギアユニオンからの報告が終わった後、鬼のようなツノが生えた魔法少女が話し始めます。

「二木市の魔法少女、紅晴結菜だけど、貴方達の主張には不足する点が存在するわ」

「何かしら」

「日継カレンにはシオリという魔法少女の他に、ピリカという魔法少女が居るはずよ」

「ピリカさんって」

結菜さんの発言に反応したのは私たちと静香さん、そして見滝原から来た魔法少女達でした。

「ピリカさんって、確か神浜マギアユニオンに入ってる子だよね」

「おいおい、何もしらねぇってのは怖いことだな。それ完全にスパイ活動されてたってことじゃないか。
つまりここ数日のお前らの動きは奴らに筒抜けだったってことだ」

「樹里、この場での言い過ぎは厳禁よぉ」

ピリカさん、他の2人よりも優しい雰囲気だったのに、あの人たちの仲間だったなんて。

じゃああの時かりんちゃんを追いかけたのって仲間と合流する口実を作るため?

「まあいいじゃないか、情報網が相手にダダ漏れだったとはいえ、紗良シオリを瀕死に追い込んだって実績は私らの中では一番大きな功績だ。

それにこれほどの人数だ。

黒いオーラの魔法少女があいつらが原因ってなら一時休戦であいつらをぶっ飛ばすのが最優先じゃないか?」

ミリタリーな見た目をした魔法少女が話を切り出していました。

「あなたは」

「西から来た博 三崎(はく みさき)だ。他に2人ダチがいるだけだが、戦いに関しては実力がある方だ。私らは神浜のあんたらに乗るよ」

「霧峰村の時女一族の代表、時女静香です。私たちも神浜マギアユニオンに協力します」

「見滝原の魔法少女も、神浜の魔法少女に協力するわ」

次々と協力する声が上がっていく中、二木市の魔法少女を含めた数グループは協力すると声を上げませんでした。

「協力しないからと言って何かあるわけではないわ。これはあくまで共通の敵を倒す共同戦線だから。でも、変に妨害するような真似は相手に隙を作る行為になるってことは理解してちょうだい」

これで大勢の魔法少女が参加した会議は終わり、協力してくれる魔法少女が集まった結果、明日の夕方に3カ所のポイントを攻めることになりました。
夕方に攻めるのは、明日は普通に学校がある日だからです。

1カ所ごとに合計20人以上魔法少女が集まる計算となり、ワルプルギスの夜を倒した時くらいの魔法少女が集まることとなります。

あの人達を倒すことができれば、お姉ちゃんを助けられるんだよね。

戦わないと解決できない結果は悲しいことだけど、今が戦わなくちゃいけない時、なんだよね。

 

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-1 結んで、ひらいて

黒いオーラの魔法少女というドッペルに続く出会ったことのない魔法少女の形。

少なくとも神浜に近づかなければ出会うことはないとのことですが神浜にいけなければれば鹿目さんがいつ魔女化するかわからない日々が続くだけで心が休まる隙がない。

私たちはあの日以来、巴さんから神浜には近づかないようキツく言われています。

命の危険があるのもそうですが、いちばんの理由は人殺しをさせたくないからという理由。

黒いオーラの魔法少女を止めるためには殺す以外に方法がありません。

神浜にいれば安全かと思われたこの世界線に現れた新たなる危険分子。

私は二度と巡り会えないであろうこの時間を守るためにも、黒いオーラの魔法少女になった場合の安全な対処法を探しに時々神浜へ訪れていました。

神浜へ通うことで知ることができたのは、黒いオーラの魔法少女を助けることができる人は確かにいるということ、そして日継カレン、紗良シオリという魔法少女が何か知っているのではないかという情報が手に入りました。

魔法少女のSNSでも情報は流れてくるのですが、現場で聞くほうが信憑性がありました。

しかし神浜にいる魔法少女に揃って言われるのが、紗良シオリ達には手を出さないほうがいいという話。

噂によれば、彼女達と会ってしまうと黒いオーラの魔法少女にされてしまうとのこと。

黒さんとも情報交換を行っていたのですが、どうやら元マギウスの翼のメンバーで黒いオーラを纏った状態から助けられた魔法少女が多くいるという情報を入手しています。

今日はこの情報をある魔法少女へ伝えるために神浜へきています。

神浜へ調査に来ているうちに神浜では会ったことがない魔法少女によく出会うようになりました。

初めて会った時は神浜の魔法少女なのかと注意深く聞かれましたが、違うとわかってもらえると気軽に話すようになりました。

名前は大庭樹里さん。

お姉さんと妹さんがいる三姉妹らしく、神浜から遠く離れた場所からきたとのことです。

樹里さん達は紗良シオリさん達を探しているようで、シオリさん達を見つけたら教えるという約束をしてよく情報交換するようになりました。

今日は樹里さんと出会う約束をしているのですが、指定の場所へ行くと少し騒がしい雰囲気でした。

「おい!いい加減正気に戻れよ!」

「聞く耳持たずって感じねぇ。それに体とつながっている魔女みたいな生物、さくやが言っていたドッペルという現象ね」

「冷静に分析してる場合じゃないぞ長女さんさ!」

樹里さんと他大勢の魔法少女達は黒いオーラの魔法少女と対峙していました。

話を聞いている限り、どうやら黒いオーラの魔法少女は仲間の魔法少女のようです。

黒いオーラの魔法少女は背中からカカシのようなドッペルを出していて、カラスの姿をした使い魔を飛ばして攻撃していました。

加勢しようにも、わたしにはこの状況を穏便に治める方法を持ち合わせていません。

誰かが殺されそうな状態になったら、その時は最悪の手段を取ることにします。

いつでも動けるよう構えていると樹里さん達に動きがありました。

「わたしが殺すわ。このままでは救いようがない」

「・・・いいのか、あいつは虎屋町の、長女さんとこの仲間じゃないか」

「だからこそよ。貴方達に仲間殺しは、もうさせたくないのよ」

長女と呼ばれる魔法少女はその場から動こうとしない黒いオーラの魔法少女へ瞬時に近づき、大きな金棒でソウルジェムを砕きました。

周囲を飛んでた使い魔は次々に灰へ変わっていき、魔法少女だったものが倒れていました。

樹里さんはその場に膝をついて地面を殴りました。

「畜生、ドッペルってやつを出せば魔女化しないって聞いていたのになんだこれは」

黒いオーラの魔法少女が神浜に最近現れるようになったって話は聞いていたけど、こういうことだったのね。これは早急にことを済ませないといけないわね」

一旦戦いは終わったようなので私は樹里さん達の前に姿を見せました。

「ん、誰っすか」

「ああほむらか。さっきの戦い、見ていたのか」

「・・・ええ」

「貴方が次女に協力してくれてる暁美ほむらさんね。私はプロミスドブラッドの長女、紅晴結菜よぉ。さっきの状況を静観していたということは、貴方もあの状況を打破する方法を知らないのね」

「はい、すみません」

「なんだよ、収穫なしってことかよ」

「でも、黒いオーラを纏った後に助けられた人の居場所を掴むことはできています」

「え、それってあの状態になっても助かる見込みがあるってこと?

「どうやって助けてもらったかは、話を聞いてみないとわからないです」

「ならさっさと行こうぜ。絶対に助ける方法を聞き出してやる」

「でも少し確認させてください。みなさん、マギウスの翼という言葉に聞き覚えはありますか」

「マギウスの翼だと、二木市から魔女を奪った奴らじゃないか。まさか今回の件も奴らの仕業なのか」

変に深読みされてしまうのは予想の範囲内でした。

マギウスの翼を話題に出したのは、樹里さん達が妙に神浜の魔法少女へ妬みを持っているからです。神浜の魔法少女が他の街から妬まれる理由は魔女を集めていたこと魔女にならないシステムを独占している事くらいしか思いつきません。

私は樹里さん達へ場所を案内するためにはマギウスの翼のメンバーへ危害を加えない、脅迫しないという条件を出しました。

これも黒さん達へ迷惑をかけないためです。

しかし結菜さんと樹里さんは条件を守れないと断ってきました。

憎むべき相手と争うなというのは無理な話だとのこと。

いまはそう言っている場合ではないというのに。

しかし一人だけ条件を守っても良いという魔法少女がいました。

名前は笠音アオさん。

他のメンバーも首を横にしか振らなかったため、アオさんと一緒に黒さんの元へ向かうことにしました。

しかしこのまま別れても跡をついてくるのは容易に思いつきます。

「アオさん、少し手を繋いでいてもらえますか」

「え、いいけど」

私はアオさんの手を掴み、一定時間の間、時間を止めました。

「うそ、周りの時間が止まってる」

「手を離さないでついてきてください。離してしまうとアオさんの時間も止まってしまうので」

そう言って樹里さん達がいた場所から離れた後、歩きながら私はアオさんへプロミスドブラッドの目的を聞きました

プロミスドブラッドの目的は神浜市にいるという自動浄化システムの広げ方を知っている日継カレンと戦い、勝った暁には広がった自動浄化システムの所有権を譲ってもらうということ。

そして神浜の魔法少女へ利用料を支払わせるという目論見があると教えてもらいました。

なぜ、と問いかけると私たちと同じ苦しみを味合わせるためと言う回答が返ってきました。

二木市がどんな状況であったのかは分かりません。なので、否定するのもおかしなことでしょう。

しかし、考え方が間違っているというのは確かです。

黒いオーラの魔法少女もそうですが、二木市の魔法少女にも注意した方が良さそうです。

口を開かず移動する時間が長い中、私たちは黒さんが待っている大東区の廃墟へとやってきました。

「黒さん、欄さんお待たせしました」

「やあ、ほむらさんと、どちら様かな?」

「ちょっとそこで知り合った者でーす」

欄さんにはアオさんのことを神浜の外からきた魔法少女とだけ説明し、本題について早速話してもらいました。

今日呼んだのは黒いオーラの魔法少女について私たちなりに調べがついたからなんだ」

「え、でも神浜マギアユニオンのSNSでそんな話はなかったですよ」

私たちには元マギウスの翼で繋がった別の情報ルートがあるんだけど、そこでやりとりをしていたんだ。

そんな中で被害者となった彼女達が黒いオーラの呪縛から解かれたって話を聞いて、調べがついたってわけ」

「彼女達っていったい」

「私たちのことなの」

物陰からいきなり現れたのは、マギウスの翼のローブに似た服装をした魔法少女数人と緑と赤色の魔法少女でした。

緑色の魔法少女は宮尾時雨さん、赤色の魔法少女は安積はぐむさんです。

彼女達はマギウスの再興と魔法少女主義を謳うネオマギウスという組織を作る予定の魔法少女達でした。

しかしその勧誘中、糸を使う魔法少女の機嫌を損ねてしまい、痛手を追ってしまったとのこと。

その後日、数人のメンバーが黒いオーラに包まれて暴走したものの、ある騒動の中で黒いオーラが取れたというのです。

「ボクたちは暴れていた時の記憶は微かにある。でも、どうやって助けられたかはわからない」

「ただ一つ言えるのは、助けてくれた人はドッペル5体の攻撃を防げるくらい凄い人ってだけなの」

「他に特徴はなかったわけ?姿とか、魔力反応とか」

「実は助けられた時のパターンが2種類あるんだ。ひとつはなんの痕跡も残さず助けられているパターン。

もう一つは、助けられた時に集団の魔法少女が目の前にいるパターンだ」

欄さんがいうには、はぐむさん達が遭遇した助けられたパターンよりも、集団の魔法少女が目の前にいるパターンの方が痕跡を辿りやすいとのことです。

なんでも、突然現れて突然助かっていたパターンは、魔力反応が一切なかったとのことです。

神浜には既に助ける方法が2パターン存在する。でもその方法が広く知れ渡っていないのはなぜ?

「複数人に助けられた場合には、決まって南凪区の施設で目を覚ましたって話を聞いているよ。でも看病してくれたのは名も知れない一般人みたいでね、誰がどう助けたまでは私たちでは知ることができなかったよ」

「でもね、助けられた人の中に神浜マギアユニオンのリーダーと親しい人がいたみたいでね、近々やる大きな会議の中でいろいろ報告してくれるみたいなんだ。

何でも、一部の人達が紗良シオリっていう日継カレンの仲間を瀕死に追い込んだ結果報告もされるとか」

「あの魔法少女を、瀕死に?!」

アオさんはポーカーフェイスで話を聞いている中、紗良シオリという魔法少女の話が出た瞬間、表情を変えました。

「やっと違う表情をしてくれましたね。アオさん、知ってることを教えてもらえないでしょうか」

欄さんが問いかけますが、アオさんは黙ったままでした。

「貴方の都合は聞きませんが、今は手を取り合うべきです。紗良シオリと日継カレン、彼女達を野放しにしておくと、誰のためにもならないと思うんです。

もちろん、貴方の仲間も」

「どうして彼女達ばかりを敵視するの?」

「黒いオーラの魔法少女になったメンバーと時期、その中心にある事象、それは

“日継カレン達と接触していること”

今私たちの見解としては、彼女達によって黒いオーラの魔法少女が誕生してしまったと考えています。

これで理解できましたか」

「…少しね」

「協力してもらえるのであれば、会議の開催場所を伝えます。ほむらさんには後で送っておきますね」

「はい、ありがとうございます」

欄さんは冷静に話を進めてくれました。

マギウスの翼の白羽根として活動していた彼女は、元から戦う素質があって、影ながら多くの人に慕われていたのです。

そんな彼女がマギウスの翼に参加していた理由は、魔女化しない世界にするためにでした。
あそこまで冷静に行動ができるなら、神浜マギアユニオンでも活躍できそうなのに。

私は建物を出た後、アオさんに問いかけました。

「会議に参加すれば多くの情報が手に入るかもしれません。それなのに、まだ納得できないんですか」

「私の中では納得してる。でも姉さん達を納得させることはできない。欲しいと思う情報も不確かで、参加すれば必ず私たちの目的を果たせるとも限らない。
そんな賭け、誰も乗らないよ」

「伝えてみたらどうですか、自分の意思を」

「無理だよ。私は三女、末っ子で一番弱い。姉さん達に押し切られて終わりだよ」

年上や実力が上の人に意見を言うのはかなりの勇気が必要。私も巴さんへ何か意見を言うのは躊躇していた。

でも、実際は巴さんも求めていた。遠慮のない私たちの意見を。

そのおかげで巴さんは立ち直れて、今ではみんなで魔法少女の宿命に立ち向かえている。

偶然かもしれないけれど、過去に繰り返した世界に比べたら、少しわがままに立ち回ったからここまで来れたのかもしれない。

アオさんも、伝えなきゃ間違った方向に。

「少しはわがままな態度を見せてもいいかもしれませんよ」

アオさんは何も話してくれませんでした。

「私、近くの駅で待っていますね。1時間くらい待つので、その気があれば、駅まで聞きにきてもらえますか」

アオさんはしばらく私の目を見た後、話しはじめました。

「来てよ、次女と対等に話せたんでしょ。うちの場合、長女さんよりも次女さんの圧で押し切られるんだよね。
フォローしてよ」

「アオさんが、参加を心から望んでいるならフォローしますよ」

そう言って結局私は二木市の魔法少女達のアジトまでついて行きました。

入り口の扉を開くと、そこには樹里さん達が立って待っていました。

「ったく、遅いぞ」

「でも驚いたわ、ここまで暁美さんを連れてくるとは思わなかったわ」

「アオさん、これはどういうことですか」

少し周りがざわついた後、アオさんが一歩踏み出して話を聞きに行った結果を話しはじめます

神浜の魔法少女は紗良シオリ達を討伐することに専念していること。彼女達の行いが他の魔法少女にどのように影響していくのか。

そして、情報共有を行う会議に参加しないことがどのような意味を持つのか

アオさんは聞いた結果をねじ曲げることなく素直に話しました。そして。

「私は会議に参加した方がいいと思う。神浜の魔法少女の方が彼女達のことをよく知っているみたいだし、それに他の地域からきた魔法少女も招待しているみたいなの。

神浜に協力するかは別として、情報収集って意味で参加した方がいいんじゃないかな」

「ほう、それが実際に見聞きしてきた答えか。神浜の奴らに何か吹き込まれたんじゃないよな」

「そんな事はないよ」

「本当か?ドッペルってのは奴らが考えたシステムから生まれるやつだ。それを利用して混乱させてるだけじゃないのか」

「アオさんがしっかり説明したはずです。神浜の魔法少女にも被害が出ているって事、そして被害にあった人は揃って日継カレンと出会っていると」

「お前に言われなくてもわかってるっての!」

「ならば!」

「やめなさい、次女が癇癪起こす理由は大体わかるわ。それが本当ならば私たちはいつでもああなってしまう可能性を孕んでいることになるからね」

樹里さんと調査をしている時に聞いた日継カレンと戦った事。

大勢で挑んでも歯が立たず、今回はそのリベンジに来たという話も。

「そんな状況下で神浜の魔法少女と争うのは、タイミングが違うと思うんです。そうじゃないと、日継カレンを倒す前に貴方達が折れちゃいます」

樹里さんはその場にいじけて座り込んでしまいました。

「貴方に言われなくても私たちは理解しているわ。日継カレン達を倒すのが最優先事項だという事はね」

「じゃあ!」

「私たちプロミスドブラッドもその会議に参加するわぁ。異論がある子はいるかしら」

「奴らの下につくってわけじゃ、ないんですよね」

「もちろんよぉ。神浜の魔法少女が持っている情報を根こそぎ聞いて私たちは独自の行動をとる予定よ。
次女もいいわね」

「・・・いいさ。なんか余計なことしてきたら我慢はできないがな」

「次女さんは我慢をもう少し覚えた方がいいんじゃない?」

「うるせーよ、らんかは」

「はいはい」

二木市の魔法少女も参加してくれるとのことなので会議の開催場所をスマホの画面で教えました。

場所は鏡屋敷の大広間。
果てなしのミラーズがある場所で、日継カレン達が近づかない場所だとされているからです。

開催は明日。
とても急ですが、それでも鏡屋敷に入りきらないくらいの魔法少女が集まると予想されているらしく、まともに進行できるのか不安なところもあります。

情報を伝え終わると結菜さんに話しかけられました。

「暁美さん、次女と対等と話せるなんて、強い心を持ってるのね」

「最初は怖い人かと思ったんですけど、接しているうちにお話ししやすい方だと感じてきましたので」

「次女さんからは暁美さんは強いって聞いたんすけど、本当っすか?」

「えっと」

一気に周りから問いかけが飛んできました。話してみると神浜の方達と何も変わらない同じ魔法少女だと感じました。

少々戦いを好む方もいますが、ただ魔法少女を殺すことが目的ではないのだなと分かりました。

しかし、神浜の魔法少女は許せないという意思は貫いていて、今後仲良くして行くには難しそうだと思いました。

私は皆さんと別れて見滝原の帰路についていました。

もう夕方近くだけど、会議の話はみんなにしておかないといけない。

どうやってみんなに伝えようかと悩みながら改札を出ると、腕を組んで待っている巴さんがいました。

「用事があるって言っていたけど、この時間に着いた電車は確か神浜から来る電車よね」

完全に待ち伏せされていました。

「神浜へいま行くのは危ないって伝えているのに、ホント暁美さんは話を聞いてくれないんだから」

「すみません、でもどうしてもみんなに伝えたい話があるんです」

「私は反省してくださいって話をしてるの」

「はい、ごめんなさい」

「全く。それで、言いつけを破ってまで欲しかった情報はなんだったのかしら」

この後、巴さんに神浜で行われる会議の話をすると、みんなで行くことを条件に参加することとなりました。

鹿目さんや美樹さん、佐倉さんも参加することとなり、私たちは揃って神浜へ行くことになりました。

私たちがあまり拘らなくなってから大きく変わってしまった神浜の事情。

この時間軸を守るためにも、私は彼女達を止めないといけない。

それが、鹿目さんを守ることになるから。

 

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-20 堕ちはじまりし魔法少女

気がついて目を開けたときに感じたのは、冷たいコンクリートの床の感触と吹き抜ける風の冷たさ。

そして周りを見渡してみると腕を組んで壁に寄りかかっているカレンさんと体育座りで顔をうずめているかりんちゃん、そしてかりんちゃんを見つめるピリカさんがいました。

「ここは」

私がそう呟くとかりんちゃんが顔を上げて私に近づいて来て目の前に座りました。

「いろはさん、お願いなの。先輩を、アリナ先輩を助けて!」

いきなり行方不明のアリナさんの話が出てきて話に追いつきませんでした。

「こら、事情も説明しないで頼んだって困るだけでしょ。まずは事情を説明させてくれるかい、いろはさん、あとはピリカも」

ピリカさんはどうやらカレンさん達の仲間らしく、別行動をしていたのは神浜市を見極めるためだったとのこと。

見極めた結果を聞きたいのは山々ですが、今はアリナさんを助ける事情を教えてもらっている最中です。

「元マギウスの一人、アリナ・グレイを助けたい理由はマギウスの経緯を知りたいという理由と、彼女が張っている被膜を解除してもらうためだ」

「張っている皮膜を?でも、アリナさんのソウルジェム、ヒビが入っているのでそんな膨大な魔力は行使できないと思うんですが」

「現にキュゥべえは今だに神浜へ入ることができない状態だ。この状態は私たちの計画にも支障をきたすんだよ」

「キュゥべえと契約させるために、ですか」

「そうさ。一人の願いでみんなが救われる。しかもすぐに魔女化してしまうような結果もドッペルを出すだけで終わるんだ。これ以上に簡潔な方法はないはずだよ」

願いを叶えるはずの少女の意思、そしてその結果生じてしまうという人へ降りかかる呪い。

この人たちはそんな結果が待っていようと最善策を考えようとしてくれません。

きっと、アリナさんの意識を取り戻してしまうとカレンさん達の計画は加速するでしょう。

でも、それがアリナさんを助けない理由にもならない。

かりんちゃん、この人たちの目的を知った上で協力してるんだろうか。

「かりんちゃん、カレンさん達が何をしようとしているのかわかってるの?アリナさんを助けたら、キュゥべえが神浜に入れるようになってたくさんの人が、また不幸になるかもしれないんだよ」

この人たちがやろうとしていることは怖いことなんだってことはわかるの。でも、一番怖いのは助けたい人を助けられなかったって後悔するときなの
みんなに普通に伝えたらアリナ先輩は間違いなくひどいことをされるの。
それに、シオリさん達はアリナ先輩を守ってくれるって約束してくれたから」

「それは楽観的すぎるよ。アリナさんだって、あの時と同じままだったら」

「アリナ先輩は私が説得するの!だからお願い、アリナ先輩を目覚めさせてあげてほしいの。みふゆさんの時のように」

アリナさんのソウルジェムはヒビが入っていて、みふゆさんの時くらい損傷していました。

「補足しておくと、この状態でも魔力は消費していてね、実は何度かドッペルが出ているんだ」

「ソウルジェムが、こんな状態なのにですか?!」

「正直私も驚いているよ。ソウルジェムへ負荷がかかっているはずなのに砕けずに耐えているのが奇跡なくらいだ。でも確実にヒビは深くなっている。もうそんなに長くは保たないだろう」

「お願いいろはさん、時間がないの!」

アリナさんを助けるべきか否か。

いつも選択が迫ると近くにいるはずのクレメルの姿はなく、相談できる人もいない。

助ける理由も、断る理由も実はない。

この人はねむちゃんによって偽りの記憶を植え付けられた結果、あんなひどいことをしてしまっただけでかりんちゃんの言う通り優しい人なのかもしれない。

でも、やちよさんによるとアリナさんは元々価値観は特殊で、ウワサに操られていない状況でも同じことを繰り返しかねないともいっていた。

確かに、アリナさんが作った死者蘇生シリーズの作品を見たときは、初めて会った時のアリナさんそのままの印象と一致してしまった。

でもそれはあくまでアリナさんの一面。かりんちゃんが言う、優しいアリナさんも別の一面。

どちらも不確定な要素でどの選択を行ってもみんなは納得できない

最善の、最善の方法は。

 

私は大きく深呼吸をします。

「わかった。アリナさんを助けるね」

「はあ!本当!?」

「でもかりんちゃん、約束して。
かつて灯花ちゃんやねむちゃんが受けたように、アリナさんも裁判を受けてもらうから。そこでかりんちゃんの知っている優しいアリナさんをみんなに教えてほしいの。そして、みんなが納得する結果になるよう、アリナさんを説得してほしい。
もちろん、かりんちゃんも納得するようにね」

「わかってるの」

私はアリナさんの指にはめられたソウルジェムへ魔力を注ぎます。

助けたいという、ただそれだけの想いで使用することができたソウルジェムを修復する魔法。

助けなくてもいいという雑念がこもらないよう、ただ助けることだけに集中しました。

かりんちゃんを、これ以上悲しませたくないから。

少しだけ時間が経過し、アリナさんのソウルジェムは修復されましたが、アリナさんは眠ったままでした。

「これで、あとは気がつくのを待てばいいはず」

きゃあっ!

かりんちゃんの叫び声の方を向くと、かりんちゃんは糸でぐるぐる巻きにされていました。

「環いろはさん。蘇生の力、確かに拝見させてもらった。その命を救済する力は、私たちには必要だ」

「シオリさん、カレンさん、何をしてるんですか。かりんちゃんを離してください!」

「なに、アリナ・グレイの意識を取り戻すという目的もあったけど、一番の目的は貴方だ。蘇生できるというウワサ程度の話を目の前で観測できたんだからね。感謝しているよ」

私は急いで逃げようとしますが、素早くピリカさんに首を掴まれ、壁に打ち付けられてしまいました。

ピリカさんの手には、禍々しいオーラを放つ剣が握られていました。

私は首を掴まれたまま足が浮いた状態だったのでだんだんと意識が朦朧となっていきました。

「ピリカさん、なんで」

「私が神浜を見定めた結果を伝えていませんでしたね。

環いろはさん。

私は、貴方達の行動理念、そして、人と共存しようとする貴方達の考えを容認できません。

西と東の不毛な考えは人から魔法少女へ伝染し、魔女化の恐怖から逃れられても文化とお金によってさらなる絶望を生むでしょう。

なので貴方には見直してもらいます。

本当に人は、助けるに値するのかを!」

私のお腹を、ピリカさんの剣が貫きます。

かりんちゃんが泣きながら何か話しかけてきますが、呼吸できなくて変に頭に熱がこもっていた筈ですが、どんどん血が抜けるように、どこかに沈んでいくように寒く感じてきました。

この感覚はそう、初めてドッペルを出した時と同じ感覚でした。

 

 

 

 

長いドリームの中にいた。

ホスピタルの上から飛び降りようとした日から、アリナはナイトメアのようなアメイジングな夢を見ていたのかもしれない。

でもそれはリアルで、ノンフィクションだとフールガールの声が語りかけてきていた。

記憶も鮮明だし、嘘ではないと思うんだけど、今目の前で起きていることは、何のおふざけだと疑ったワケ。

捕まったフールガールに、血を流しながらドッペルを出す見覚えのあるピンク髪の少女。

そして、見覚えのない三人。

そのうちの一人が、アリナにこう話しかけてきた。

「おはよう、アリナ・グレイ。悪いが、あの化け物を閉じ込める檻を用意してもらえないか?」

「…ワッツ?」

 

第二章:アツァ リマ エノキゲン ハ センノウ 完

 

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-19 選択肢を開拓する者

事の発端は私がつづりさんから縁切りを教えてもらってから数日後のこと。

学校である方に話しかけられたことから始まります。

「夏目さん、今日放課後空いてる?」

「ちひろさん、特に予定はないですが」

「じゃあラーメン食べに行こ!私美味しい新店見つけちゃったんだ」

「ぜ、ぜひ行きます!」

「うん、じゃあ放課後に校門前ね!」

話し相手はちひろさんと言って、実は蒼海幇のメンバーです。

美雨さんとラーメン屋巡りをしている際に知り合い、美雨さんと親しげに話せる珍しい人だってことから興味を持たれてしまい、仲良くなっていました。

彼女もかなりのラーメン通であり、美味しさだけでなく面白さからラーメンを楽しんだりとかなり気の合う人です。

今回は参京区に出来た新しいラーメン屋に来たのですが、ここの目玉は甲殻類をダシのベースとした塩ラーメン。

しかしちひろさんはこってりした味噌のスープにスパゲティみたいな太い麺が入った変わったラーメンが目的だったようです。

出て来たラーメンを見てみると、ちょっとミートが多めな味噌味スパゲティにしか見えませんでした

学校のたわいもない会話を展開したあと、ちひろさんが話を切り出しました。

今日夏目さんを呼んだのはラーメンを食べる以外にも目的があってね」

そう言ってちひろさんは茶封筒を私に渡して来ました。

「これは?」

「最近美雨さんが誰かを探しているらしくてね、美雨さんがいない間にこっそり机の上にあった写真を見たのさ。

そこには帽子をかぶってメガネをかけた小さな幼女!

まさかそんな趣味がって思ったけどそんな事ないからきっと別の事情があるんじゃないかなって」

最近写真で誰かを探してるといえば、シオリさんくらいだと思うけど。

そこには私たちがお忍びでターゲットを探し回った結果が入ってるんだ。うまいことごまかして渡してもらえないかな」

「どうして私が。直接渡せばいいんじゃないですか?」

「いやね、美雨さんは私たちが余計なことに首を突っ込むと必ずと言っていいほど粛清を喰らわせてくるんだよね」

「ええ?!」

「ガチな怖いやつじゃないよ。力仕事の互助活動に強制参加とかそんな感じだから。
でもそのお仕置きのせいで美雨さんの目が届く中央区の学校に強制転校させられた子もいたらしくてね。私はそれが一番嫌なんだ」

「ちひろさん」

「何かといじめも多いけどさ、新西区のマンモス校のみんなといると楽しくてさ。できれば離れたくないんだよね。
だから、夏目さんから渡して欲しいなって」

私は茶封筒を鞄にしまいました。

「わかりました。渡しておきますね」

「ありがと!」

茶封筒についてはななかさん達と中身を見たのですが、そこにはピンポイントにシオリさんの目撃履歴が紙やら写真で入っていました。

「随分と詳細な調査情報ですね。かこさん、探偵でも雇いましたか?」

「え、私そんなお金ありませんよ」

「冗談です。しかし、私たちの行動できない昼間の目撃情報が多いですね。自由に行動できる彼女達とはここで差がついてしまっているようですね」

学校が終わってから会うことがないってことは相手もリスクを理解して行動してるって事だよね」

なんとかちひろさん達が集めた情報だと感づかれる事なく渡すことができ、ある行動原理が見えて来ました。

「どうやら中央区だけは遅い時間でも姿を表しているようですね。
場所は電波塔近くのようです」

「なら電波塔で張るか?」

「いえ、葉月さん達によればシオリさん以外にカレンさんも付き添って行動しているようなので一人になる瞬間を見極める必要があります。

ここはあえて中央区の監視を薄くし、シオリさんが一人になる瞬間を待ちましょう。

既に策はありますから」

「一応みんなにも伝えておくね」

「お願いします」

この頃から私達は黒いオーラの魔法少女を解放しながらシオリさんの動向を探るようにしていました。

一応まどかさん達にも連絡をとってみるとどうやらシオリさんの姿は見滝原でも発見されていたようです。

まどかさんの友達であるほむらさんが何やらシオリさんの動向を知っているようで色々聞いてくれました。

見滝原の魔法少女には特に被害なし。でも最近は神浜にはあまり近づかないようにする方針をとっているようです。

黒いオーラの魔法少女の件があるから。

そしてある日、私はピリカさんという魔法少女に出会い、一緒に黒いオーラの魔法少女と戦いました。

その魔法少女と別れたあと、ななかさんから情報が入って来ました。

「今日はシオリさんが一人になる機会です。例の計画を実施します」

私達は中央区にある廃墟へ集まりました。

この話を聞いて集まったのはチームの方達とと中央区、ひなのさん達と一緒にいる魔法少女達でした。

「まずはお集まりいただきありがとうございます。

今回の作戦で皆さんに行ってもらいたいのはシオリさんの気を引くだけです。

決して倒そうと思わず、命を投げるような行動は避けてください。

何か質問がある方はいらっしゃいますか」

「一つ確認。給水ポンプの位置は把握しているわ。私たちが給水ポンプを壊す役割を持ってもいいと思うけど」

「まさらさん、シオリさんも自分の弱点は把握しているはずです。悪戯に使える給水ポンプのポイントを潰すわけにはいきません。
美雨さんに任せて注意を引く行為に注力してください。
おそらくそれだけで精一杯でしょう」

「動きを止めた後の話は聞いていないんだけど、どうするの」

「ソウルジェムを取り、知っていることを聞き出します。その後はシオリさんの言動次第ですね」

皆さんは一度はシオリさんから被害を受けています。

よくない方向に動かないか不安になってしまいます。

「ほかにはないようですね。

では、参りましょうか」

中央区の電波塔付近へ各自配置につき、電波塔を見上げているシオリさんへななかさんが話しかけます。

「お目にかかる機会が少なかったですが、今までどこにいらしたのですか、紗良シオリさん」

「久しいね、ななかさん。こんな夜番に大勢連れて電波塔観光とは、変わったことをしていらしますね」

「あなた達の企みはひなのさんから聞いています。実施方法を見直す気はありませんか」

「最適案を崩す気はないですよ。それとも、あなた達だけで最適案を見出してくれるとでも?」

「改善していただく気はないようですね。方法さえ詳細に教えていただければ別の方法が見出せるかもしれません」

「くどいぞ策士。シオリはいつ始めても構わない」

「そうですか、残念です。では、お覚悟を」

開戦の合図とともに控えていたあいみさんが数発発砲しました。

シオリさんは瞬時に魔法少女姿となり、マグナムの弾丸を避けました。

そして周囲に強力な電気を発したかと思うと、周囲にはドーム状の電磁シールドが貼られました。

「皆さん中へ!」

路地裏で控えていた衣美里さん達は強制的にシオリさんの目の前へ姿を晒すこととなりました。

「神浜では一般人をあまり巻き込みたくないんだろう?戦いやすいように人払いをさせてもらったよ」

「その余裕はいつまで続くかしら」

まさらさんとこころさん、あいみさんが交戦していました。

私は美雨さんと合図があるまで待機です。

おそらくチャンスは一度。外してしまったら、皆さんの頑張りも無駄に。

慎重に、深呼吸して待とう。

衣美里さん、れんさん、梨花さんも加勢していますがシオリさんは雷や周囲の金属を利用して全く傷をつけられていませんでした。

追撃も、必中の攻撃も、死角からの攻撃も、三次元的に動く帯や金属片で弾き返し、クロスカウンターのように攻撃し返すシオリさんは楽しそうな表情をしています。

戦いは電波塔を中心としてグルグルと場所を移動しながら繰り広げられています。

シオリさんは大勢の攻撃に対処しながら決まって給水ポンプからは遠くの場所へ着地していました。

やはり弱点となるポイントというのは把握しているようです。

「やはり弱点は水。こころさん、押し切ってください」

「OK!あいみ!」

「よし来た!狙いはバッチリだよ!」

あいみさんのコネクトを受けたこころさんは一つの給水ポンプ目掛けてシオリさんを押し込みます。

シオリさんはこころさんのマギアの勢いで給水ポンプ近くまで寄せられていきます。

「そんなことだろうと思ったさ!」

シオリさんは近くにあった鉄パイプを4本頭上に浮かせ、四方向にある給水ポンプ目掛けて鉄パイプを撃ち込みます。

近くで待機していたあきらさん、ななかさんは急いで避けましたが、4方向から噴水のように水が飛び出しました。

「これで奥の手は無くなっただろう」

「まだまだ!」

衣美里さんからコネクトを受けた梨花さんがシオリさん目掛けてコンパクトから発するビームを何度も撃ち込みます。

こころさんがシオリさんから離れたのを合図に梨花さんはコンパクトを巨大化させてシオリさん目掛けて撃ち込みます。

当然のようにシオリさんは雷で形成されたシールドで防ぎますがどうにも苦しそうな表情を浮かべていました。

「今です!かこさん!」

掛け声を合図に私は給水ポンプを切り、シオリさんへ噴出した水が届くように武器で噴射口を緩く抑えます

シオリさんは反応できなかったのか水をもろに浴びてそれと同時に梨花さんのビームに飲み込まれて建物の壁に打ちつけられました。

「やった!」

周囲に貼られていた雷のドームは消えていき、私達はシオリさんの元へ集まりました。

「給水ポンプ、四つじゃなかったのか」

「いいや四つが正解ヨ。ただ、四つ壊せたかは別ネ」

「そんなわけ、四つ壊した手応えは確かにあった」

「神浜の魔法少女を十分に理解しきれなかった結果です。この町の魔法少女を敵に回すとどうなるか、おわかりいただけましたか」

給水ポンプを破壊させるようこころさん達が誘導。付近にある四つのうち一箇所を美雨さんの魔法で壊したと錯覚させる。

そして衣美里さんの幻惑魔法をかけるために梨花さんが攻撃する。

思い込みと正常な判断ができなくなれば、いくら情報処理能力に長けていても破壊したはずの一箇所から飛んでくる水鉄砲を避けることができない。

衣美里さんの魔法が効くと知ったときにななかさんが思いついた作戦です。

シオリさんは魔法を使おうとしないあたり、使うとどうなるかは把握している様子です。

「シオリを捕らえてどうする気?先輩をいたぶった分拷問にでもかけるのかい?」

「そのような非道なことはしません。然るべき方法で裁き、償いをこめて自動浄化システムを広げる方法を教えてもらいます」

「そうかい」

会話を聞いている中、後ろから急激に近づく魔力反応に驚いて振り向くと雷の攻撃を受ける二体の黒いオーラを纏った魔法少女がいました。

「シオリさん?!」

左手を前に出してシオリさんは魔法を使っていました。しかし漏電して自身にもダメージは入っていて苦しそうに呼吸しながら体からは煙が上がっていました。

黒いオーラの魔法少女は距離を置いてこちらを見ていました。

「なんて無茶なことを」

「無茶なんてあるか、手出さなきゃ、緑髪の子の頭吹っ飛んでたんだぞ」

「皆さん、黒い魔法少女へ対処を」

私達は人数を半分に割いて二体の黒いオーラの魔法少女へ対抗しました。

きっと、人払いのあのバリアが無くなったから襲いかかって来たのでしょう

そして襲いかかって来た二体は、どうやら弱っているシオリさんへ一直線に向かおうとしている様子でした。

出しているドッペルは狼とチーターのような見た目をした生き物を影から出していました。

月明かりが出ているので影を無くするというのは困難です。

 

全員が黒いオーラの魔法少女へ集中し、二人の魔法少女から黒いオーラをとった頃にはシオリさんの姿はありませんでした。

「予想はしていましたが、逃げられてしまいましたか」

「ちょっと!これじゃ計画が台無しじゃない!」

「幸い、魔力パターンはまだ追えますがカレンさんとの合流は避けられないでしょう。
敵のアジトは今晩中に把握しておきます。今日のところはお開きにしましょう」

「理解に苦しむ判断ね。手負いが一人いる状態ならこの人数で押しかけたほうがすぐに事が済むはずよ」

「皆さんにはお伝えしていませんが、彼女達は三人で行動しています。おそらく今拠点へ潜り込めばシオリさん同等の実力者がカレンさんと組んで襲いかかって来ます。
そうなれば勝ち目はありません」

「三人目、聞いたことがないです」

「うまく紛れていますからね。しかし今日の動向を察するに、元の場所へ戻っていることでしょう」

皆さん納得した表情はしていません。でも、ピリカさんがカレンさん達の仲間だとしたら敵わないのは事実です

「それにみんな、集まったのは夕方だったけどもう時間は19時だよ。帰らないと両親を困らせちゃうんじゃないかな」

「うん、そうだね。お父さんとお母さんを心配させちゃうね。悔しいけど、私は帰るね」

「こころが帰るなら、私も」

あきらさんの言葉を起点にみんなはそれぞれの帰路につきました。

「ななか、アジトの把握に少々大げさにやりすぎたんじゃないかな」

「いいえ、ここまでしなければシオリさんは魔力を顕にしてくださりませんからね。今回は十分成功です」

「あとは奴らの潜伏先へ攻めれば終わりヨ」

人数は神浜マギアユニオンへシオリさん達の潜伏場所を共有すればすぐに集まるでしょう。あとは彼女達が殺されないよう見張るだけです」

こうしてシオリさん達を追い詰める形はできました。

しかしいまだに出続ける黒いオーラの魔法少女が再び邪魔をしてこないか、それだけが不安で仕方がありませんでした。

 

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-18 選択肢の行く先はただ一つ

みかづき荘にいたメンバーが揃ってカレンさんへついて行きました

時間は19時を回っていますが、協力関係になりたいと申し出て来たカレンさん。

目的地は調整屋。

何かの罠だったとしてもこの機会を逃すわけにはいきません。

ただ黙ってついて行くのは気まずいので私はカレンさんの横に並んで話しかけました。

「あの、調整屋を襲った理由、あれは魔法少女のことを思ってですか」

「それは勿論ですよ。この街を回ってわかったことですが、魔女の数は減って来ていますよね。なおのこと、穢れのスピードが早まるのはデメリットにしかならないと思うんですよ」

「・・・敬語じゃなくてもいいですよ。堅くてくすぐったくなっちゃいます」

「そう、それはありがたいね。私も堅苦しいのは苦手なんだ」

「調整の話ですが、受けるのは自己責任だと、そう伝えて回るようにしました。
前の神浜ならともかく、今は協力してくれる方も多いので」

「それはどうかな」

「え?」

「簡単に強くなる方法があれば、誰だってイージーモードを求めて調整を受けるだろう。

それに魔女が少なくなればグリーフシードの奪い合いだって嫌でも増えるだろう。

ましてや魔女化しないシステムがあると知った有象無象は強さで差をつけるために調整を受けるだろう」

「それは」

「大元から潰せば終わるんだ。でもまあ、ここの調整屋は儲けを目的としているわけではないし、活動も自粛しているから追い込みはしないさ」

「ここの?」

みたまさんから調整の力は他の人から教えてもらったという話を聞いたことがあります。

その教えてくれた人のことを言っているのか、それとも教わった他の人のことを言っているのか。

他の調整屋はグリーフシード目当の儲けに重みを置いた活動をしていてね。まさか3人もいるとは思わなかったよ」

「3人も!?」

「驚くだろう、魔力を調整できるのが知っている中でも4人もいたなんてさ。
この街の調整屋以外はグルで動いてたらしくてね、1人を殺したらフェロモンを感じ取った蜂のように集まって来たよ。
お得意さんだった魔法少女も連れて来てはいたが、まとめて潰したよ」

言葉も出ませんでした。私の知らない間に、カレンさんは神浜周囲にいる調整できる魔法少女を探して回っていたこと、そして、みんな殺してしまったこと。

敵に回してはいけないんだ、この人は。

それで戻って来てみたら何だか黒いオーラを纏っている魔法少女がドッペル出して襲いかかってくるんだから驚いたよ」

「・・・実は、その黒いオーラの魔法少女について私たちも困っている状況なんです」

「ならば都合がいい。今回の話はそれに関わる」

話している間に調整屋さんへたどり着いていました。

調整屋さんは壁に開いた穴もそのままで、本当の廃墟のような状態でした。

「さて、協力関係になりたいって、どういう風の吹き回しかしら」

「今の神浜を見たらわかるでしょう。どこから現れたのか、どのような過程を経て生まれたのかもわからない黒いオーラの魔法少女が蔓延る現状。
これは自動浄化システムを世界へ広げる活動をしている場合ではない。だからですよ」

「しかし信用に至るまでの行いをあなた達は行っていないわ。調整屋の襲撃から始まり、紗良シオリによる襲撃事件の数々。
そう簡単に協力関係になることはできないわ」

「シオリの件は悪かった。あいつにはきつくお灸を据えておいたが、最近は悪さをしている感じではないだろう?」

「確かに最近はそう言った話は聞かないけど、手を出したことには変わりないよ」

だめ、このままでは協力できないまま話が終わってしまう。

今は一番争わなくていい方法、カレンさん達との協力を優先させないと。

「協力関係となる条件として、まずはあなたの魔力パターンを教えてください。
そして黒いオーラの魔法少女を助ける方法を探して、その情報を共有してください。それが条件です」

「いろはさん?!」

「そうだね、弱点を教えてくれるくらいの覚悟があるなら私たちも少しは信用できるかも」

「いいでしょう、私たちはそこまでしなくちゃいけないほどあなた達の組織に損害を与えていますからね」

そう言うとカレンさんは両手に糸によって形作られた扇を出現させ、何か踊りを始めました。

体をしなやかに動かし、周囲から何かをかき集め、天へ恵むような動きを流れるように行います。

そんな中、私たちにはカレンさんから眩いばかりの強い力を感じ取れるようになりました。

今までに出会ったことがないほどの、大きな魔力の反応でした。

魔力の大きさに驚いていると、カレンさんが鳴らした扇を閉じる音で我に帰ります。

そして右手を胸に当てて私たちへ向けて一礼しました。

これで魔力パターンを感じることができるようになりましたかね」

「はい、すごく大きな魔力反応で驚いています。あの、今の踊りは一体」

「開示の舞です。これでも舞で戦うのが本来のスタイルでね、この開示の舞では魔力を多く周囲に展開するんで魔力パターンを曝け出すと言う欠点があるんです。

どうですか、これでもまだ私を疑いますか」

「魔力パターンは覚えたわ。これで何か変な動きをしたら追跡できるし、少しは見直したわ。でもこれだけでみんなは納得しないわ。
いろはの言うとおり、まずは黒いオーラの魔法少女を救う方法を提供して頂戴。それからよ」

ここにちはるちゃんがいれば、と思ってしまいましたが、カレンさんは協力姿勢であることをアピールしてくれています。このまま上手くいけばいいけど。

「それならばこちらも気になることがあるんだ。自動浄化システムの生みの親、マギウスの見解が知りたい」

灯花ちゃんとねむちゃんは自動浄化システムに問題は起きていないって言ってるよ。2人とも真剣に考えている最中、です」

ういが進んで報告してくれました。

そういえば最近灯花ちゃん達と会っていないけど、望遠鏡の施設が壊された後以来会えていないことを思い起こします

自動浄化システムはドッペルを出した後ソウルジェムを浄化してくれると聞いています。ドッペルで穢れが消費されたにもかかわらず、またドッペルが出るということは、浄化システムが働いていないのでは、と考えていましたが考えすぎでしたか」

あなた達はよく知らないはずの自動浄化システムを広げる方法を突き止めるほどの知恵があるはずよ。別の要因がないかという考えには至らないのかしら」

「ええ、ある程度要因であろうものは目星がついています。

だが、教える前にやるべきことがあるようだ!」

そう言うと同時にカレンさんは調整屋にあった廃棄された機械を糸で絡め取り、カレンさんの背後に投げ込みます。

すると何かが機械を斬って爆発を起こします。

爆風によって舞い上がったホコリによって周囲の様子を把握できない状況でしたが、カレンさんがいた場所からは赤い斬撃の軌道が見えました。

視界が良くなると、カレンさんがももこさんの大剣を受け止めている状態でした。

「ももこさん!?」

「今頃何をしに来た死に損ない。お前の輝きでは叶わないと知っておきながらまだ争うか!」

「当たり前だ。お前達の思い通りにはさせないぞ」

カレンさんの足元には見慣れた植物の蔓が現れてカレンさんを締め上げようとしますが、フリーハンドな右手で右足に絡み付いた蔓を切り落とし、左手で形作った剣を滑らせるように動かし、ももこさんの力が籠った大剣で左足の蔓を切り落とします。

すると素早く飛んできた水色の複数の槍を避けるように調整屋の奥へ移動しました。

「ももこにレナにかえで!今までどこにいたのさ」

ももこさん達は今まで行方不明者として捜索している最中でした。まさかこんなところで、こんな形で再会するなんて。

「鶴乃、それにいろはちゃん、こいつの話なんて真に受けるな。全ての元凶はこいつらだ!」

「いいだろう、主張してみろ」

「いろはちゃん達は知っていると思うが、私たちは調整屋を襲ったことを後悔させるためにこいつらを追っていた。

見つけることができたものの、私たちでは歯が立たなかった」

「肝心なのはここからでね、私たちはカレンに何かされた後、人の嫌なことが頭の中でぐるぐる回るようになったんだ。おかげで私はお父さんとお母さんを含めて人が嫌いになっちゃったんだ」

「そうなったのもこいつに負けてからよ。そしてレナ達が正気に戻った頃に目の前にいたのはななかさんよ。

ななかさんが言うには、私たちには呪いを運ぶ縁が結ばれていたらしいの」

「呪いを運ぶ、縁?」

「他の襲われた子達もななかさんに救われたって言っていた。その救われた子達に共通しているのが、最後に目の前にいたのがこいつってわけだ」

ななかさんがももこさん達を助けた?それに呪いを運ぶ縁が原因ってどうやって知ったの?

それが本当なら、その人達と出会っている、カレンさんが原因。

「真実かどうかはわからないぞ。

さあ、神浜マギアユニオンのリーダー、信用に至らない私を信じるか、不確かな情報で揺さぶる仲間を信じるか、あなた次第だ」

「全て知ってるくせによくそんなことを言えるな!」

口調が荒いももこさん、レナちゃん、かえでちゃんの目に光はありませんでした。

しかし嘘をついているようには見えません。

カレンさん達とは敵対するしかないの?

「いろはちゃん、ももこ達を信じるべきだよ!」

「俺もそう思うぞ」

「いろは、今は懸命な判断をすべきよ」

「・・・お姉ちゃん」

みんなの顔を見た後、カレンさんの方を向きます。

「ご采配を、環いろはさん」

私個人としてはカレンさんと協力したいというわがままを通したい。でも、今背負っているのは神浜の魔法少女達の総意。

なら、ならばみんなの意見を汲み取るしかない。

「現時点をもって日継カレンさん、紗良シオリさんを危険人物とします。危険行為を働いた彼女達を、拘束してください」

そう言うとみんなは一斉に魔法少女へ変身しました。

カレンさんは素早く調整屋の奥へ行き、グリーフシードが収められている棚を開きました。

「カレンさん、何をする気?!」

杜撰な管理をする神浜マギアユニオンへグリーフシードの大量放置で何が起こるのかわからせるためさ。
それに、一般人を巻き込みたくないのだろう!」

そう言うとカレンさんは調整屋の地面へ計10個のグリーフシードを投げつけます。

投げつけられて地面へ突き刺さったグリーフシードのどれもがなぜか半分近く穢れを貯めている状態でした。

調整屋内は魔女の結界に包まれ、神殿のような景色に変わっていきました。

魔女の結界はグリーフシードを何かの展覧会のように個別のガラスケースで囲い、全てに創作中のタイトルがついていました。

そして周囲には様々な種類の使い魔が現れ、結界の外へ散っていきます。

「何をする気だ」

「グリーフシードっていうのはね、ただのモノではなく、生きている品なんだ。何の処置もしなければ周囲からどんどん呪いを収集して知らぬ間に使い魔が卵を孵化させるためにせっせと動き始めるのさ。

それが一箇所で一気に起きて、一箇所に呪いが集まるとどうなってしまうだろうね」

「みんな!孵化する前にグリーフシードを壊してください!」

そう言ってみんなが各グリーフシードの前へ移動しますが使い魔達が行手を阻みます。

「悪いが私達は日継カレンを倒す!」

「できるのか?あれから学んだか?それともwikiにでも書かれていたか?」

「余裕こいてられるのもいまのうちよ!」

「いいだろう、お前達の希望を輝かせてみせろ!」

私達はひとつひとつグリーフシードを潰していくことに専念していました。ももこさん達の方を見る余裕はあまりありませんでしたが劣勢であることはわかりました。

「全く、ももこったらどうしたのかしら」

「らしくないよね」

「理由なんか後でいいだろ、今はこいつをぶっ潰せばいいんだろ!

フェリシアちゃんの強い一撃ですぐにグリーフシードが壊れてくれるのでとても頼もしいです。

「ももこさん達、まさかドッペルを使おうとしてるの?」

ピリカさんがそう呟いたのでももこさん達の方を向くとももこさん達には薄らと黒いオーラが見えていました。

「ダメよももこ、ドッペルを安易に使うのは!」

「何言ってんだやちよさん、こいつらを倒すにはドッペルを使っても足りないくらいだ!」

そう言うとももこさん達の体からはドッペルが現れてカレンさんへ集中攻撃を行います。

カレンさんはと言うと両手に鉄パイプを持って襲い掛かる攻撃を受け流すかのように動き回ります。

「く、何で当たらないのよ!」

4人の様子を見ている隙を与えないかのように結界内の使い魔達は私たちに襲いかかります。

使い魔達の動向を見ているとツアーガイドのような見た目をした使い魔が外からうつろな目をした人たちを連れてきていました。

「もう人を襲って連れて来てる」

「止めなきゃ!」

その列へカレンさんが降り立つとそこに構わずドッペルの攻撃が放たれます。

「だめ、そこには襲われた人たちが!」

しかし時すでに遅く、結界に入った人たちはドッペルが放った苔に包まれてその場で爆散して跡形も無くなってしまいました。

「そんな、人を構わず攻撃しちゃうなんて」

「ももこ達、正気じゃないわ」

その頃には7つほどグリーフシードが壊されている状態でした。

私は目の前の出来事にショックを受けてしまったのか、体が少し重く感じました。

周りを見渡してみるとみんな揃って動きが鈍くなっていました。

「何でだ、知らないうちに体に力が入らなく」

ももこさん達の方を向くと、手足が殴打されて潰れた状態にされていました。

「ドッペルなんてものを使おうが、中身が変わらないんじゃそんなものだ」

カレンさんはそう言うと私たちの手足へ地面へ擦り付けたせいか尖った鉄パイプで攻撃を加えて行きました。

私はクロスボウをつけている左手と右足を貫かれて思わず悲鳴を上げてしまいました。

「悪いね、ここで拘束されるわけにはいかないんだ。それにすでに弱点を伝えたはずだ、私は舞で戦うと」

「攻撃を避けながら、舞を踊っていたと言うの」

ダメです。こんな全てが器用な人にかなうはずがない。

そう諦めかけた頃、カレンさんがういの目の前にいました。そんな中でもういは立ち続けていました。

「里見灯花と柊ねむに最も近いのは環うい、君だけのはずだ。大人しく2人の居場所を教えてくれれば痛い思いをしないで済むぞ

「ういに、手を出さないで」

「姉が妹を助けられないという心情は、辛いよな、環いろは」

その言葉は皮肉には聞こえず、真っ直ぐなカレンさんの正直な思いである感じがしました。

「教えないよ!悪い人には、2人の居場所は教えません!」

「そうか、残念だな」

そう言うとカレンさんは鉄パイプをういに、向けて。

「ダメ!!!!!」

叫ぶのと同時に目を閉じてしまいました。それはそうです、目の前で見たくもない結果になろうとしていたのですから。

恐る恐る目を開けるとういは無傷でした。

カレンさんはというと、ういの反対側を向いてピリカさんの攻撃を受け止めていました。

「ピリカさん!」

「へぇ、足は射抜いていたはずだけどね」

「痛みなんてどうとでも」

魔女の結界内にいる私達はみんな揃って手、足の片方は筋部分をピンポイントで射抜かれていました。

そう、回復魔法がなければ立ち上がることもできないはず。

この人は一体。

「立ちなさい神浜のリーダー!それでも数十人をまとめる魔法少女ですか!」

少々怒り気味のトーンでそう語りかけて来たピリカさんはカレンさんと引き続き戦っていました。

回復魔法を使えるとは言え、アキレス腱を修復するには時間がかかります。その間はピリカさんの戦っている様子を見ているしかありませんでした。

炎の剣から出る斬撃はカレンさんに振り払われ、カレンさんが片方の鉄パイプを回転させながら投げつけますが、剣や槍を踏み台にしてピリカさんが避けてと武器で時々つばぜりあってはお互いの攻撃を交わすという繰り返しでした。

そんな二人の覇気に押されてか使い魔達は近づこうとしません。

「ういちゃん、孵化しそうなグリーフシードはまだ三つも残ってる。今のうちに壊しちゃおう!とはいっても私は動けないんだけどね」

「わかりました!」

私も早く動けるようにならないと。でも、痛みも相まってなかなか集中できない。

私たちに立ち塞がるあの人達とは、次元が違いすぎることを思い知らされます。

ピリカさんは魔法を使っているのに、カレンさんは鉄パイプしか使っていない。

踊りで魔力は使ったとはいえ、鉄パイプしか使っていない魔法少女に負けてしまうなんて。

でもおかしい、ここまで戦えば穢れも溜まってドッペルが使えるはずなのに、私のソウルジェムには半分しか穢れが溜まっていません。

「ここまで平気に立っていられるなんて大したものだね」

「生憎、命を奪うのは避けてるモノで。でも、もう命の保証はできませんよ。

ワッカ!濁流とか化せ!

カンナ!ターゲットへ招来せよ!」

「律儀に詠唱するから遅れるんだ!」

カレンさんは詠唱のために立ち止まっていたピリカさんの脇腹を狙いますが、絶妙に体をずらしたおかげでピリカさんはかすり傷で済みました。

その後、カレンさんの周りは水の壁で囲まれてその周囲へ幾つも落雷しました。

そんな中ピリカさんは何かを唱えていました。

私はようやく立ち上がる程度まで回復すると、ういが戦っているおかげで無防備になっていた二つのグリーフシードを射抜いて破壊しました。

「お姉ちゃん!」

「遅れてごめん。あと一つは」

「カレンさんの後ろです」

さなちゃんの声の通りカレンさんの方を向くと、ピリカさんが首長竜のような生き物に乗った状態でした。

カレンさんはというと、落雷を受けたのか服が所々焦げていました。

「ここまで追い詰めたのは褒めてやるよ」

「すみませんが、痛い思いをしてもらいます。

ポンベツカムイ、目の前の魔法少女を」

「だが時間切れだ」

カレンさんがそういうと、後ろの方にあったグリーフシードから見慣れたウサギの見た目をした魔女が生まれて来ました。

魔女はカレンさんを無視して動けない鶴乃ちゃん達に襲いかかりました。

「仲間と殺意どちらを選ぶ!」

「くっ、ポンベツカムイ、魔女を葬りなさい!」

そういうと首長竜はヒレで魔女を結界の壁へ叩きつけ、その場でジャンプすると着地と同時に強力な水の衝撃波が魔女を襲い、それを受けた魔女は水でも消えない炎に包まれてしまいました。

魔女はしばらくその場でもがきましたが、やがて動かなくなってチリとなってしまいました。

すると魔女の結界は消えて、入って来た時よりも荒れた調整屋にいました。

「そう、一度魔力パターンが分かっても直ぐに魔力を感知されないようにされると追うこともできないってことね」

「そういうことです」

「ピリカさん」

「みなさん無事のようですね。それだけでもよかったです」

笑顔で返されてしまいましたが、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

「グリーフシードの保管方法、カレンさんも言っていましたが改める必要はあるかと思います。

時女一族の人も驚いていましたよ」

「え、静香さん達も」

どうやらピリカさんが調整屋に運ばれて来たときにグリーフシードの場所を知ったそうです。

いくつか穢れが満ちそうなグリーフシードをキュゥべえの場所まで持っていってくれたそうです。

グリーフシードの保管方法については後日考えることにしましょ。まずはももこ達に話を聞かないと」

ももこさん達の手足はすでに元に戻っていましたが、すごくダルそうにソファへ座っていました。

みんなは足を負傷しているため床に座ったまま話が進みました。

「あなた達、いったい誰に助けられたか教えてもらえないかしら」

「ななかさんに聞いたんだけど教えてくれなかったんだ。試しに聞いてみるといいよ、結果は同じだろうけどさ」

「かえで、構わず人をドッペルで殺したよね。あれってどういうこと」

「どういうことって、邪魔だったし、別に気遣う必要もないし」

「はあ?」

「鶴乃、私達はもう人なんてどうでも良くなっちゃったのさ。黒いオーラに包まれた魔法少女はみんなそうさ。ドッペルを出し続けている間に、人が嫌いになっちゃったのさ」

「何よそれ、そうなっても考えを改めようとしないの」

「ないさ。人が変わらない限りね」

レナちゃんはいきなり重そうな体を起こし、私の前まで来て手を差し出しました。

「あんた達動けないんでしょ。肩貸すわよ」

どうやら魔法少女への思いやりは今までのようです。

満足に動けない私達はももこさん達におんぶられてみかづき荘への帰路についていました。

切れたアキレス腱を修復する際に激痛が伴ってしまうということもあり、何があっても安心できるみかづき荘に着いてから直そうという話になりました。

「そういえば、ももこさん達も重症だったはずですが、私たちよりも回復が早いのはどうして」

「魔法少女って魔力を使えば人よりも怪我の治りって早いだろ、直す際にも修復の過程で痛みも伴うけどさ、痛みを遮断しちゃえば結構治るのが早くてさ」

「痛みを、遮断」

「危機感が鈍るからあまりお勧めしないわよ」

痛みを遮断だなんて、そんなことをしちゃったら本当に私達は人をやめたことになってしまう。

私はまだ、人でありたい。

じゃないと、対等に向き合えないから。

「いろは!」

やちよさんの叫び声を最後に、私は気を失ってしまったようです。

 

 

いろはさんに魔力の篭った石が投げつけられ、いろはさんは気を失ってしまいました。

そのあと間髪入れず、レナさんが何者かに襲われるといろはさんの姿が見えなくなりました。

周囲を見渡すと、月を背に家の屋根の上でいろはさんを抱える魔法少女の姿がありました。

「蘇生の力を持つ環いろは、貰い受ける」

「御園かりん、あなた!」

かりんという魔法少女はそのまま何も言わず何処かへ姿を眩まそうと逃げ出します。

「レナさん鶴乃さんを頼みます」

「ちょっとあんた!」

私はおんぶっていた鶴乃さんをレナさんに渡し、かりんさんを追いかけました。

いろはさんを助ける目的で行動していましたが、嫌な予感がしたのでかりんさんを追いかけていました。

かりんさんから、魔力の反応がしないからです。

魔力を感知させない力はそう簡単に身につけられるモノではありません。付け焼き刃でも擬似的に魔力反応を消すことができるのは一人しか知りません。

かりんさんが辿り着いたのは見覚えがある廃墟でした。

私が廃墟の中に入るとそこには。

「数分ぶりだね、ピリカ」

「カレン、あなたどういうつもり?いろはさん達にちょっかい出したり調整屋を襲ったり。
調整屋はともかく、いろはさん達は」

「環いろはは計画に必要不可欠な存在だ。今回はその先駆けさ」

「先駆けって」

「いろはさんには先輩を助けてもらいたからさらったの!他の人が一緒だと絶対話を聞いてくれないと思って。
だからこの人たちに協力してもらったの!」

「かりんさん、そうですか。あなたがアリナ・グレイさんを唯一助けたいと思っているという方でしたか」

「もう時期シオリは視察から戻ってくるだろう。それから詳細な話を」

ドサッ

突然裏口から何かが倒れる音がしたので恐る恐る見に行きました。

そこにはびしょ濡れで傷だらけのシオリが倒れていました。

「シオリ!」

「どういうことだ、お前がここまでボロボロなのは久々だぞ。何があった」

「してやられたさ、あいつらが、常盤ななかたちが!」

 

 

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【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-17 感知されないその理由

私は流れるままにフェリシアさんの後へついていっていました。

明日香さんの時や時女一族の方達とは違った、急な流れでここまできてしまったことに少し違和感を持っています

陽気に歩くフェリシアさんの背中を見ながら私は尋ねてみました。

「あの、フェリシアさん、どうして私をフェリシアさんの居場所へ連れていってくれるのですか」

「なんだ、まだ気にしてたんか。普通はメシと寝床を貸してやるってだけで喜ぶもんじゃね?」

「いえ、そこまで苦労はしていなかったので」

「金を持っているからか」

「お金なんて使わないですよ」

しばらくの沈黙が訪れました。

赤信号で並んで待っているときにフェリシアさんがいきなり話始めます。

「オレ、前までは傭兵やってたんだ。その間ろくに食いもんにありつけなくてさ、公園で朝まで寝てるってのもしょっちゅうだった」

「…ご家族は」

「死んだよ。魔女に殺されたんだ」

親なし子。魔法少女になってから両親がいなくなった子達は身寄りがなければ仲間の魔法少女について回るか、傭兵や窃盗業など普通の人の生活を送ることはできません。

この世界がお金を中心に成り立っているのが主な原因です。

「すげー辛くってさ。日によっては食うものなくてぶっ倒れそうなときもあったさ。助けを求めようとしても、求める先がなくてさ、余裕なんてなかったよ。

でもよ、いろはが声をかけてくれたんだ。それからずっとみかづき荘に住んでんだよ。

マギウスの翼の時にちょっと出ていったけど、もうそれからはずっとさ」

「そうですか」

長く話していたフェリシアさんはとても楽しそうに話していました。自慢話とは違った、どこか説得させるような感じで。

「だからさ、お前が人前で我慢してるっていうのわかるんだ。言いづらいよな、金ないけど食いもん食わせてくれって」

「でもいろはさん達は何て言うでしょう。もしかしたら断られてしまうかも」

「いろは達はそんなこと言わねーよ。まあ、家事の手伝いくらいは頼まれるかもしれないけどな!」

そう話しているうちにフェリシアさんはある家の前で立ち止まりました。

「ここがみかづき荘だ」

フェリシアさんは我が家に帰ったかのように勢いよく扉を開いて帰るべき居場所へ向けて生存確認の言葉を放ちます。

ただいま

そして迎えるおかえりという十人十色な音色の数々。

そう言葉を交わせるだけでも、この国は、この町は平和なんだなと実感してしまいます。

「おいやちよ、今日あいつ泊めてやることできないか」

「あら、ピリカさんどうしたの。フェリシアを家まで送ってくれたのかしら」

「んな訳ないだろ!ちゃんと門限守っただろう!」

「それよりも、泊めて欲しいってどういうことかしら」

「ピリカって普段野宿なんだってよ。なんかそれ聞いてオレいてもたってもいられなくなってさ」

私はあえて誰とも目を合わせないように黙って待っていました。

今回に限ってはお邪魔するほどの理由を持ち合わせていません。話を振られたら断りの一言でもかけてここから立ち去れば。

「ピリカさん、上がって頂戴」

「…え?」

「実は私たちから聞きたいことがたくさんあるのよ。ちょっとは家事を手伝ってもらうことになるかもしれないけど、情報交換料の代わりだと思ってもらって構わないわ」

どうやら一方的にこちらから情報を与える構図が出来上がってしまったようです。

そのまま回れ右をして逃げ出したい気分でしたが元気な声を出しながらどこか力強く手を引っ張る方がいたためやや強引にみかづき荘へ入ってしまいました。

どうやら料理の最中であり、リビングになる場所には大人しそうな緑髪の子と、そして。

「あれ、たしか公園で会った」

「ういさん?!」

ういさんとフェリシアさんはそれぞれ私と会った経緯は話してくれたものの、黒いオーラの魔法少女の話は魔女の話へ、出会いは公園でバッタリ会ったと事実とは異なった情報ばかり。

かこさんが黒いオーラの魔法少女を助けることができること、ういさんが瞬間移動できることはどうやら身内にも秘事な内容のようです。

随分と私は信用されてしまっているようですね。

元気な方、鶴乃さんという魔法少女からは色々聞かれてしまいました。

「ししょーといろはちゃんから聞いたよ、調整を受けなくても戦えるくらい強いって!」

「やっぱり珍しいんですかね」

「勿論だよ!数は少なくなってきているとはいえ、神浜の魔女は調整を受けている子でも手強いのが多いからね!

ねえねえ!ピリカちゃんはどこからきたの?神浜の出来事を詳しく知らないってことは遠い場所からきてるんだよね!」

北の方から来たと話しているうちにグルメの話、そしてなぜか中華の話となっていつのまにか万々歳というお店へ来ないかという宣伝じみた内容に変わっていきました。

じっとしている中、話を振られたさなさんという魔法少女が言うには可もなく不可もない美味しさとのこと。

ウォールナッツの話をするとさなさんも積極的に話に加わってきて神浜という町はなんだかんだどこかで繋がりがあるんだなって感じました。

因果が集まるという話も、納得できます。

「さ、準備ができたからそろそろご飯にしましょう。ピリカさんの分もちゃんと用意しているから」

「すみません、話に夢中になっちゃって」

「大丈夫ですよ」

食事が終わった後、皿洗いなどの後片付けは全てやらせてもらいました。片付けが済むと、お茶を用意してもらった後に本命の情報交換が始まりました。

「さて、まず気になることなのだけどソウルジェムの反応ってどう隠しているのか教えてもらえるかしら。

カレンさんとシオリさんのように貴方からもソウルジェムの反応が感じられないのよ。

タネがわかれば、彼女達の居場所が割り出せるようになるの」

タネ自体は話しても影響はないのでいいでしょう。

「ソウルジェムで感知できる魔力って、無意識に力を放出しているのが原因なんです。さなさんのように魔法少女だけに見えるという現象も、姿を認識させないという魔力を無意識に使用しているがために魔力を感じ取って効果が無意味になっているんです。

魔法少女となったからには体を動かすだけでも魔力を消費するので普通ならば反応を消すというのは特別願わない限りできないことです。

でも、電気という存在を認識できる瞬間よりも認識できない瞬間が多い理由を考えてください。

電気を認識できる瞬間ってどんな時だと思います?」

「スイッチを押したり、電気がついているときとかかな」

「静電気っていうくらいだし、ドアノブをいきなり触った時もだよね。

ってこは、プラスとマイナスのバランスが崩れた時だね!」

「電気の現象を魔法少女に置き換えると、希望と絶望?」

絶望を纏うって何だか黒いオーラの魔法少女を連想してしまいます

なんか勝手に話が進んでありがたいんですが、単純ではない話をしなければいけません。

「呪いを纏うとは近いかもしれませんが、魔力を認識させない種明かしとしては、

魔力の性質の逆の魔力を同時に発しているが正解です」

「魔力の性質を理解すること自体が難しいというのに、その上で正反対の性質をぶつけて中和させるだなんて。魔力を使った時点でそのバランスは崩れるわ。

でも闘っている最中も、後も魔力を感じられないと聞いているわ」

「人が動くたびに地球の重力によって形が歪まないのと同じです。内から出すものと外から取り込むものを差し引きゼロにしているんです。それは穢れではなく、あくまで魔力の性質上の話です。

実はこれ、一度認識されないポイントを抑えると後は自然とそのゼロポイントを基準に魔力のやり取りが行われるので意識せずに認識されないようになります」

「じゃあ結局どうすれば認識できるようになるんだろう」

「魔力の性質を観測し、解析するしかないですね。

実は私はあることをしてしまうと魔力を感知されてしまうという瞬間があります。

でもそれは見知らぬ人と再び出会う確率と同じくらい低いと思いますね」

「出会う機会を増やして気を伺う、が近道と言いたいのかしら」

「これを教えてくれた方も、方法までは知らない状態だったのでこれくらいしか思いつかないですね」

「あの、もし良ければ魔力が感知される瞬間というのを教えてもらえないでしょうか」

「流石にそれは」

「ですよね」

一度魔力パターンを知られたところで魔力バランスが整えば追跡は愚か感知もできなくなるので知られたから終わりというわけではありません。

しかし、やちよさんのようなベテラン達は弱点がわかればそこを突いて追い込む作戦なんて容易に思いつくでしょう。

ワルプルギスの夜を倒すような人たちです。隙を見せれば手遅れと思うくらいが良いでしょう。

そう思いを巡らせていると長い間聞き続けた声がテレパシーで聞こえてきました。

[環姉妹がいるのはみかづき荘で間違いなかったかな?]

周りのみんなが一斉に動揺し出したので全員へ向けて発していることがわかります。

玄関の扉が開けられると、道路へ通じる階段の前に私服で立っているカレンの姿がありました

「カレンさん、あなた!」

「久しぶりですね、やちよさん、いろはさん。

協力関係になるための交渉をしに来たんですよ。ついて来てもらえますか」

調整屋を襲って以来目撃情報がなかったカレン。協力関係を結ぶための材料は恐らく、黒いオーラの魔法少女でしょう。

 

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