ペンタゴンの中庭で願いを唱えた後、どうなったのか。
記憶がぷつんと途切れていた。
閉じた覚えがない目を開けると、
周囲には蝶と見覚えがある希望の光が浮かぶ中、
私がトカゲの後を追っていると、
「お前が円環の理か」
そう尋ねると見覚えがある存在は黄色い目を向けてきた。
「まさかここまできちゃうなんて。私と繋がりを持ちすぎちゃうから・・・」
その見た目は鹿目まどかで間違いなかった。
「私にはお前が知っている人物にしか見えない。概念っていうのは好きに姿を変えられるのか」
「いいえ、円環の理は鹿目まどかの一部よ」
そう言って黒いトカゲが円環の理の横まで移動すると今度は黒いこ
「暁美ほむら、
「あの世界の私がそう望んだから手助けしただけよ。
あの世界の私と私をつなげる要因を作ったのはあなたでしょ?」
「ただの結果だ。お前は円環の理のなんだ」
「かつて鹿目まどかという円環の理の核を奪い去ろうとした存在。
ゴスロリと言える格好をした暁美ほむらは赤い目で見つめながらそ
「まあいい。
私が概念と対峙できているのはつながりすぎたのが原因だろう?
元の世界には戻れないのか?」
「戻れるかどうかはここで決まっちゃうの。
あなたはこっち側に来るか、戻れるようになるかの境目にいるの」
「そうか。できれば戻りたいんだが何をすればいい?」
「「そのまま帰って問題ないよ」」
声が聞こえた後ろ方向を見ると、
「お前ら、なんで」
「カレンが繋がっているならば」
「シオリ達が繋がっていると同じでしょ」
カレンは円環の理というものがなんなのか繋がったことで知識は持
別世界での因果律が途方もない量で願った鹿目まどかの結果、それが円環の理。
ほとんどの次元では円環の理によって魔法少女達は魔女化する前に魂
そのため円環の理に集まる魔法少女の情報はさまざまな次元での情
だからあえてカレンは2人へ尋ねた。
「お前達はどの世界の存在だ」
「私はカレンに助けてもらう前の世界の記憶を持っている。
絶望はしても両親やコタンの仲間の無事な姿を見せられてわずかな
でも今目の前にいるのはカレンと共に過ごした私」
「
シオリにとってはカレンに救われた世界が一番さ。
ということで目の前にいるのはカレンをよく知るシオリだよ」
「そうか。
下手に延命させてしまっただけで申し訳なさまであったが」
「何言ってるのさ。
シオリの魔女は円環の理に回収されるまではインターネットに張り
「
それだけでも嬉しいことだよ」
「そうか、余計なお世話ではなかった時点で良かった」
カレンは円環の理へ振り返った。
「3人で戻るということは叶わないのか」
「
普通とは違うソウルジェムみたいだけど、
私もしっかりサポートしたんだけど、ごめんね」
「だからそのまま帰れと言ったのか」
「あの世界にカレンは必要だ。
次元改変とやらにカレンは関わっているのだろう?
「あの世界ではカレンを求めている人がたくさんいる。
だったら尚更だよ」
そして私には死ねない理由がある。
妹といつか会えることを。
「悪いな。
したっけ失礼させてもらうよ」
「うん、いつでも待っているからね」
ピリカのその言葉が引っかかったが、
その後は別のページにある通り、元の世界へ戻ったのは私だけだった。
それからしばらくはサピエンスの後始末と人間移住のためにカ
そして人間の追い出しが完了するまでの間に私はつづりと再会した。
「この世界最大の歪み『イザベラ・ジャクソン』
「あれは一体なんだったんだ。この世界が生み出したものなのか」
「
本来であればイザベラの母 シャルロッテがその役割を担うはずでしたが、彼女はあなたを追うのではなく私情を優先してその役割が娘へ引き継がれた。
あなたがこの世界に来なければ、アンチマギアや彼女たち二人も生まれはしませんでした」
「
神様が用意したのか?」
「神様なんてどの世界にも存在しません。
この世界で生み出されているものは、防衛機構 『シナリオライター』と呼ばれるもので作りだされたものに過ぎません。
円環の理というものでさえ、シナリオライターに用意されただけのもの。この世界で生まれた存在は絶対にシナリオライターにかないません。この世界では「意思」ともよばれていたそうですね」
「そんなものに、私は抗えたのか」
「お手柄です。
あなたのおかげで、シナリオライターに抗える可能性が示されました。
次元改変の拡大防止と阻止を他の世界でも促してみるとします。
ありがとう」
「私は褒められたことなんてやっていない。
つづりが時々ちょっかいを出しに来ていたからこそできた結果だ。つづりがいないと抗えなかったさ」
「私はあなたの補助をしただけですよ。あなたがこの世界を救ったのが事実・・・。
そうだ」
つづりは一つだけというジェスチャーをとった。
「
あなたがこの世界で発生させた改変が別次元の鹿目まどかに関わる
この世界の導き手となるために円環の理から事情を聞いてください
カガリさんと会わせるのはそのあとです」
「その歪みとやらも、シナリオライターのせいなのか」
「そうです。シナリオライターの意地でも自分の筋書き通りに戻そうとする強硬手段が、次元改変に繋がります」
「厄介なものだな、防衛機構というくせにめちゃくちゃにするなんて。
まて、円環の理に簡単に行けるのか、私が?」
「繋がったあなたならよく知っているはずです」
繋がり方にはなぜか覚えがある。
円環の理との縁に意識を集中させるだけで、すぐに見覚えのある中庭
「嘘だろ…」
「やっぱり、すぐに戻ってきた」
ピリカにそう言われても私は唖然とした顔を変えられなかった。
「もう、
円環の理は困った顔を見せていた。
「容易に繋がっちゃうからだよ、概念になっても甘いんだから」
そう言うのは円環の理の隣に立っていた美樹さやかだった。
「円環の理には随分と多彩な姿があるのだな」
「
ほむらやなぎさみたいにあっちこっちに好きに行き来できるんだか
「シオリとピリカも、自由に生き気ができるのか?」
「そう、その2人も自由に行き来できちゃう。
ソウルジェムと肉体がなくなっているから円環の理に用意してもら
「そうかい。
円環の理っていうのはなんでもありだな」
「レコードを壊さない程度にしないといけないっていう制約はあるよ」
「そのレコードに関する話だが、
「聞いたって誰からさ」
「私のスポンサーからさ」
「さやかちゃん、協力してもらおうよ。私たちじゃ手に負えないものだったし」
円環の理の掌の上には6つのヒビが入り始めているレコードが出現
そこへピリカとシオリも寄ってきた。
「あまり近づかないでね、すぐにでも壊れちゃいそうだから」
「このレコードが一つの世界ってこと?」
「そう、
変化の発生源は、カレンさんのいるマギアレコード。
それが分かっても対処の方法がわからないの」
「それは次元改変というやつだろう。
私たちの世界で無理やり次元改変を止めたから他のレコードに飛び
で、対処できないとはどういうことだ」
「
その世界に干渉した痕跡を残しちゃうと、レコードの歪みをかえって
「歪みの原因までは調べがついているの?」
シオリがそう聞くと円環の理は首を横に振った。
「円環の理って無能か?」
「ふざけた事言うんじゃないよ」
「事実を言っただけでしょ?」
シオリとさやかが睨み合っている中、
覗き見たレコードでは神浜でワルプルギスの夜の討伐に失敗してい
失敗原因を辿ると由比鶴乃を救えなかったことが大きな原因となっ
救えない理由もさらに遡ることができた。
私は円環の理を見て思わず言ってしまった。
「なぜこの程度もできない?」
「できるあんたがおかしいんだよ!」
さやかが怒りっぱなしだが、
「元は私が世界を乱したのが原因だ。
しっかり修正はさせてもらうよ」
「原因がわかったところで痕跡はどうするのさ。
あんた達も円環の理の一部って言ったでしょ?」
「スポンサーの技に痕跡を消せるものがある。
当てはあるってことさ」
円環の理とさやかが驚いて黙ってしまったあと、
「わかった。カレンさんに一度任せてみるよ」
「したっけ行動に移らせてもらうよ」
私は元の世界へ戻ってからつづりへ縁切りを教えるよう伝えたが答
「無理。」
「そんな言い捨てるように言わないでくれるか」
「縁切りは私たちの世界で扱える能力で、
夏目かこは再現の力のおかげで取得でき、
あなたは繋げるだけ。だから素質がないということです」
「柊ねむか。そういえばあいつも使えたか。
夏目かこを別世界へ連れ回すわけにもいかないし、ウワサとやらで複製できるか試してもらうのもありかもしれない」
「むしろウワサを活用する方法しか許しませんよ。
「わかっているさ」
私は神浜で柊ねむがいるシェルターを訪れた。
シェルターには都合よく柊ねむしかいなかった。
「珍しい客人だね。何か用かい?」
「1人だけなのか」
「ここ最近は特にね。
それで、世間話を持ち込んできたわけではないのだろう?
どんな厄介ごとを聞きにきたんだい?」
「お前は縁切りという力を使えるらしいな。つづりから聞いた。
その縁切りをウワサで私にも扱えるようにしてほしい」
「驚いたね、まさかつづりとの関係者だったとは。
ならば尚更知っているはずだ。
君たちを律するために与えられた力を求めるというのであれば、
そうは思わないかい?」
「素直に進む話ではないか」
「当然だ」
私は少し悩んだが、
そして知ったからには全てに協力してもらうことも伝えた。
話を聞く間、柊ねむは終始表情を変えなかった。
「円環の理か。
ボク達を見守り続ける概念があるということは興味深い上に、
灯花が一緒にいなくてよかったよ」
「ことの重大さは理解してもらえたか」
「君が今どのような状況に置かれているのかはね。
だが君が今までにボク達へどのような振る舞いをしてきたのかを踏
「…何を求めている」
「
魔法少女達の間では通貨というものを使用しない代わりに、
ケーキの素材は揃えるからケーキを作って欲しい。
農作業の手伝いを頼まれ、
こんな感じのやり取りだ。
一方的に物をよこすような要求はあるにはあるが、
ただし理不尽な要求が行われる場合もあるため、
「内容次第だが言ってみろ」
「最近はお姉さんやうい、
君には1日中4人が揃ってゆっくり過ごせる機会を作ってもらいた
この依頼をこなせたら、
「その3人へここで話したことを漏らさないだろうな?」
「ここでのやり取りの秘匿は保証しよう。
そうだね、この発言を信じてくれることも追加の依頼としよう」
「言ってくれるじゃないか」
「それで、君はどう対応してくれるんだい?」
「依頼は受け入れよう。
4人集まれる機会というのは、場所と時間に指定はあるか」
「そうだね…」
柊ねむは最近のやりとりを記録していたのか、
そうしている間に覚えのある魔力反応が迫ってきた。
「ねむちゃん、今いいかな」
部屋に入ってきた環ういは私の姿を見て固まってしまった。
「おやおや、タイミングがよろしくなかったね」
「えっと、なんでカレンさんがここに」
「柊ねむへ頼み事に来ていたんだ。
用があるなら先にどうぞ」
「いえ、
環ういがそう話す後ろにはワルプルガが隠れていた。
そんなワルプルガへ私は話しかけた。
「時が経っても環ういについてまわっているのか」
「お母さんの手伝いをするのがちょうどいいからね。
1人だけでいるのは不安だし」
「そうかい、それでワルプルガが幸せなら私は何も言わないよ」
「まあ今回の依頼はういにも関わることだ。2人も混ざるといいよ」
「え、いったい何をやるの?」
柊ねむはういとワルプルガへ私の頼み事と円環の理についての話は
環ういは快く話を受け入れ、
私は話を聞くだけであったが、
「そういうわけだ。カレン、お姉さんと灯花が安心して集まれるようよろしくね」
「わかったよ」
環いろはが忙しい理由は、
里見灯花が忙しいのは人間移住に参加して人類を月に送るため
里見灯花に関しては説得一つで解決したが、
人間でも大勢を動員して行っていた掃除や水道管理、
悩み事相談は都ひなのたちが受け持つようになったようだが、
その為、環いろは側から首を突っ込むことが多い。
予定を空けることを相談しても。
「どうしよう、指示とかそういうのやっちゃいけないんですよね?
と言って誰かに任せようとしない。
普段ならば勝手にしろと言いたいが、
七海やちよへ依頼形式を使わないのか伝えたが。
「
掃除をやってくれたら何を与えられるか。
何かやったら必ずリターンがあるという仕組みは良くないわ」
「
「呼びかける方法がないのよ。マギアネットワークも整備中でしょ?」
「遠慮が過ぎるのか頭が硬いのか…」
私はこれから何をするのか環いろはと七海やちよへテレパシーを送
[神浜にいる全員へ。
環いろはにフリーな日を作りたい。
環いろはが無計画に受け持ったあれやこれやの解決に協力できる奴
次の日、
「いろはさん、協力して欲しい時はいつでも言ってくださいよ!みんな結構暇なんですから」
「れいら、他の人に失礼でしょ」
伊吹れいらの言葉で環いろはは少し救われたのか笑顔を見せた。
これで依頼が完遂できるようになり、
環いろは以外の4人は年月が経ったことで18歳くらいの見た目ま
「いやぁ、白衣以外を着るのは久々だよ」
「私も混ざってよかったの?」
「ワルプルガちゃんも歓迎だよ!」
「なんか私だけ地味で恥ずかしい…」
「お姉さん、今日はボク達で楽しむ日だ。お姉さんはお姉さんらしい格好で良いと思うよ」
「そう、かな?」
「ほらほら、今日はたくさん楽しもう!」
環いろは達が動き始めた後、
環いろは達が見滝原の魔法少女達が営む喫茶店で楽しくおしゃべり
ここに来るまでに次々とついてきた結果だ。
「なんで着いてくるんだよ…」
七海やちよは
「いろはが楽しめているか見守るためよ」
夏目かこは
「あなた(カレン)
佐鳥かごめは
「この素晴らしい時間を記録に残すためです」
私は呆れてしまった。
「お願いだから全員どっか行ってくれ」
環いろは達は喫茶店を出た後、神浜周辺を巡った。
その間について回っていた3人は各々の都合で私から離れていった
日も落ちる頃、
[カレンさん、聞こえていたら私たちのところに来てくれますか?
私は嫌な予感がしていた。
柊ねむの依頼を利用してあの5人は私に何かを仕掛けようとしてい
私はテレパシーを返した。
[どういう事だ。柊ねむの依頼は既に達成されたはずだ]
[君にその報酬を渡すために必要な事だ]
[・・・柊ねむ、貴様は口が固かったのではないのか]
そう言うと、
柊ねむと接触したつづりは柊ねむだけが秘密を所持していた世界は
環姉妹、里見灯花、
私は事情を理解して5人の前に姿を現した。
そして環ういへ尋ねた。
「これから知らされること、ワルプルガも巻き込む気か?」
環ういではなくワルプルガが答えた。
「私のことは気にしなくていいよ。
巻き込まれたことについてはしっかり言うことを聞くよ」
話していると私たちを取り囲むように黄緑色の円が光り出した。
その後すぐに目の前は真っ白になり、
そして前方にはつづりが待っていた。
周囲にはさっきのメンバーからワルプルガだけが消えていた。
「ワルプルガちゃん?!」
「ご心配なく、ここは元の世界とは繋がっていません。
ワルプルガさんを待たせることがない時間へお返しできるので、
「そ、そうなんだ」
つづりを初めて見る環いろはは何が起きているのかがわからず口を
私は状況を整理するためにつづりへ尋ねた。
「さて、柊ねむ以外も巻き込んだ理由をしっかり教えてくれ」
「いいですよ。
あなた達5人はマギアレコードの世界を存続させるために欠かせな
誰かが欠けただけで、または
柊ねむだけではなく他3人を呼んだ理由はそういうことです」
「まあ私は事前に話を聞いていたからいいけどさ、
里見灯花がそう言っている後ろで環いろはは蚊帳の外だった。
「環いろはさん、
4人でここで起きたことを知ってもらうことが大事なので」
「えっと、はい…」
「柊ねむ、依頼の報酬を頼む」
「…つづり、
「大丈夫ですよ」
「その言葉を信じるよ」
柊ねむは魔法少女姿となって、
本が1人でに開くと中から光る紙が飛び出してきて、
「
君はそんな時空達との縁を断ち切る」
縁断ちバサミのウワサ
柊ねむによって生み出されたそのウワサの魔力は私へまとわりつき
柊ねむはウワサを作ると必ずドッペルを出すほどの魔力を消費して
柊ねむがドッペルを出さないことに他の3人は驚いていた。
「あれ、ドッペルが出ない」
「私が全て受け止めたからな。フィラデルフィアのコイルを使うよりは少ないのだな」
「カレンはそんな気遣いできたんだ」
「さて、依頼も完了して報酬も受け取った。
だが4人には言っておくが、円環の理について触れさせたり私がやろうとしていることにはかかわらせる気はない。
特に里見灯花、お前には円環の理に触れようとした前科があるらしいな。
絶対に触れようとするなよ」
「そんなこと言われても困るんだにゃー」
「土産話だけは聞かせてやる。
だからこの件を外部に漏らさないことも関わらないことも約束してくれ。
そういうことが起きている、あるという事実だけを知るで留めて欲しい」
「いいよ、わたくしも大人になったししっかり報告してくれるなら手を出さないよ」
「大人ねぇ・・・」
「何よねむ」
「要件は終わりですかね、では元の世界に戻しますね」
そういった後つづりは持っていた槍の石突で床をたたいた。
その後、私たちは元々いた場所へ戻っていた。
あれから私は一つのレコードを修正した。
その結果を見て私は今後も円環の理を通して別世界の歪を修正して回ることになった。
その報告をつづりへ行うと、ついにカガリと会えるようになった。
どの世界とも切り離された空間で、私は下に見える世界を座って見ていた。
そうしていると、背中の方で黄緑色の光が見え、その瞬間に懐かしい声が聞こえた。
「お姉ちゃん!」
声がしたほうを向くと、つづりの隣に記憶の中にあったよりも大きくなった妹の姿があった。
私より低かった身長は私を超し、髪は束ねているものの全体的な見た目はピリカに似ていた。
やっとだといううれし涙がをこらえて、私は妹へ声をかけた。
「久しぶりだね、カガリ」
カガリはそのまま走ってきて私へ抱き着いた。
それはカガリが実体ある存在だと気づかせてくれていて、昔のようにカガリの頭を撫でた。
「すっかり私よりも大きくなって。顔の面影以外別人みたいじゃないか」
「お姉ちゃんの見た目が変わらなさすぎるんだよ。
記憶の中にある姿とほぼ一緒だからびっくりしたよ。でも、その右手は別の意味でびっくりしたよ」
私の右手はアンチマギア製の刀で切られてからまだ再生できるほどアンチマギアが抜け切れていなかった。
そのせいがあって糸でつなぎ合わせながら糸で腕と指を動かしている状態だった。
「この世界で苦労した結果だよ。
ここには邪魔をするものもないし、山ほど積もったお互いの話をしようじゃないか」
「うん!」
切り離された空間にはつづりによって椅子が2つ用意され、そこで私はカガリが得意げに語り掛けてくる話を聞いた。
カガリは別世界に飛ばされた後、魔物を主導する邪神へ対抗するためにその世界の人間と一緒に戦っていたという。
その世界にはなぜか私たちが元々いた世界の神様までついてきていたらしく、神楽舞で魔物に対抗していたという。
「神も巻き込まれたって次元改変はとんでもないな」
「ほんとだよ。最初は神様も力を失っちゃってて、神楽舞を試すまでは人間と同じように一緒に過ごしたり、その世界の神様ともめ事になったりで大変だったんだから」
「それでも生きられているってことは邪神は倒したのか」
「一応ね。でも、お姉ちゃんには見せてもいいかな」
そう言ってカガリが立ち上がり、開示の舞と似た舞を踊ると、カガリの姿は青白いサキュバスのような見た目になった。
私はその場で驚いて立ち上がった。
「ごめんね、冒険している中でただの人間ではなくなっちゃったんだ。
体は魔物にされちゃったけど、心はいつもの私だよ。
こんな私でも、お姉ちゃんは妹だと思ってくれる?」
「大丈夫だ。今までの会話の中で見た目は変わってもカガリは私の妹に変わりない。
別世界でつらい思いをしてきたんだな」
「ありがと」
カガリは持っていた扇を閉じると見た目は人間に戻った。
「は~、一番心配していたことが問題なくてよかったよ。
ごめんね、私ばっかりおしゃべりしちゃって」
「全然かまわないさ。しっかりその世界の味方として動いていたようで何よりだ」
「お姉ちゃんはどう?見た目が昔と同じなのがとても気になってたの」
私はなまら話しにくかった。
まさかその世界にとって悪役となって地球から人間を追い出そうとする主犯になっているだなんて。
カガリに嫌われてもいいと思い、私は今までやってきたことを伝えた。
話を聞いていたカガリは、悲しげな顔をしたままだった。
話を終えるとカガリが一言口にした。
「お姉ちゃんが、人類の敵に・・・」
「嫌ってくれて構わない。人間や魔法少女を平気で殺してきたんだ。カガリの世界では悪魔と言われても当然のことをしてきた」
「受け入れがたいけど、お姉ちゃんを嫌いにはならないよ!
酷いことをしてきちゃったんだなっていうのはわかるけど、いま目の前にいるお姉ちゃんは、ちゃんと優しいお姉ちゃんだもん。
絶対嫌いになんてならない!」
私はほっとしたのかその場でうつむいた。
「そうか、そう言ってもらえると助かるよ」
そんな私にカガリは手を差し伸べてきた。
「気分転換に踊ろうよ!
ここだと躍るなって怒る大人もいないし」
私たちの世界では、私たちの踊りは神に刺激を与えるものとなってしまうため祭事以外に躍ることを禁じられていた。
踊りが好きなカガリにとってはとても苦痛な日々であった。
私はつづりの方を一度見た。
「ここでは気にしなくていいですよ。どこの世界ともつながっていないので、踊りによる効果はどの世界にも及びませんのでご自由にしてください」
「やったぁ!」
カガリが喜んでいる中、私はカガリの手を取った。
その後は二人で気が済むまで自由に踊り続けた。
周囲には黄色の光の粒が現れ、次々と天まで登って行った。
お互いに手をつなぎながら笑顔で、満足するまで踊り続けた。
お互いに元の世界に戻った後も、私にはカガリとの縁が見え続けていた。
そのおかげでなにがあっても心が潰れずに生きていくことができている。
頻繁にカガリと会えるわけではないが、縁のつながりがカガリの無事を伝え続けてくれる。
自暴自棄から始まったこの世界の活動が、いつの間にか別の次元含めた世界を守る側の活動になるなんて、昔の私には予想もできなかったことだ。
まさか今では生きたいと思う気持ちが強いだなんて。
生きようと思えるのは、心から大事にしたいと思える存在がいるが故なのかもしれない。
私はこの世界は好きではない。むしろ嫌いだ。
姉妹のつながりがあり続けている。
ただそれだけの理由で、私は生き続けている。
魔叙事詩カグラ・マギカ 続く・・・