【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-10 一族の信念はカムイに響かず

今日の夕方に魔女にならないシステムを世界中に広げられる魔法少女たちのアジトへ攻め入る戦いが行われる。

もちろん世界へ広げるという行為を妨害するわけではなく、その実施方法に問題があるからその方法を見直させるために捕らえる。

人を犠牲にしてまで私は、私達は生き延びたいとは思わない。

でも集まってくれている一族のメンバーの中には神浜マギアユニオンへ協力して彼女たちを止めるという行為自体に疑問を持つ子たちもいる。

だからわたしは魔法少女会議から戻ってきた後、みんなに今日のことを話し、一緒に来てくれる少人数だけで神浜マギアユニオンへ協力することにした。

魔法少女会議に参加してから気になっているのは、ピリカさんが彼女たちのメンバーだったということ。

あの時見た傷痕と、売られた経験があるという話。そして人へ呪いを押し付けるという彼女たちの考え方。

最近までの巫も売られていたというのは事実。

でも人を憎むほどの感情を抱いたことはない。

いったいどこで意識の違いが出てしまったのだろう。まずはそこを分からなければ彼女たちも考えを改めてくれない。

私は売られるという気持ちを経験してしまったちゃるに心情を聞いてみた。

「それってピリカさんが言っていたっていう話に関係するやつ?

うーん、私の願いが無理やりかなえさせられたってところは神子柴を許せないってなるけど、だからと言って人が嫌いになるってことはないかな。

人の悪意を感じたときは気分が悪くなっちゃうけど、みんながみんなってわけじゃないからさ。

悪を討って普通に暮らせてる人を助ける。そんなヒーローになれてる現状に私は満足しているよ」

ちゃるは隠し事をできないことを知っているから、あそこまではっきり喋ってくれたってことは全然後悔をしていないみたい。

じゃあ、売られたという境遇の中でピリカさんと何が違うのだろう。

そう考えていると外が慌ただしくなっていることに気づき、私のところへ涼子さんが走ってきた。

「おい!ピリカってやつが寺の門にいるからきてくれ!静香さんを呼んでるんだ」

私はちゃる、すなおと一緒に外へ出るとみんなが魔法少女姿になったピリカさんを囲んでいた。

「ピリカさん、ここへ何しにきたんですか」

「最後の意思表示を確認しにきたんですよ」

「確認?」

「わたし達は明日、自動浄化システムを世界に広げます。明日が過ぎればあなた達が求めている魔女かしない世界になるのです。

その上で、周りから聞いた情報をもとに私たちを妨害するのかどうか。

その答えを聞きたいのです」

「でもそれは、人に呪いを押し付ける方法でなんだよね」

「はい」

妨害したいわけじゃない。

でも考えを改めさせるというこちらの考え自体が彼女達にとっては妨害行為に該当してしまうのだろう。

ならば、最後に確認するべきことはこれだけ。

「人へ呪いを押し付けるというのは仕方がないことですか、それともあなた達の故意ですか。

故意だというのであれば、私達は妨害せざるを得ません」

「問いへ問いで返してくるのですね。

呪いが生じるのは仕方がないことであり、押し付けるのは故意でもあります」

「そうですか。

みんな、ピリカさんを捕らえなさい!」

「「はい!」」

みんなが動き出すよりも早くピリカさんは地を蹴って瞬間移動したかのような早さでわたしの目の前にいました。

「ワッカ、障壁と化せ!」

ピリカさんがそう呟くとわたしを中心にして水の障壁が円形に形成されました。

そして近くにいたちゃるは回し蹴りで、すなおは巴投げで水壁の外へ追い出されてしまいました。

その後ピリカさんは何かを呟き、水壁には電気が走り、外には首長竜のような生き物が現れました。

外のみんなはその首長竜と障壁に邪魔されて中に入ってこれない状況となりました。

わたしも魔法少女姿となって剣を構えました。

「なるほど、変に強い魔力を感じると思ったらその剣が原因でしたか。

あなたが心を折らずに立っていられるのはその聖遺物のおかげかもしれませんね」

「聖遺物?なんのこと。これは時女の家で代々巫の力で鍛えられた剣よ」

「そうですか。

聖遺物とは魔法で生成されたもの、または物質へ魔法少女の魔力が込められて特殊な力が付与されたもののことです。

あなたの持っている時女の剣も十分聖遺物に該当します。

そうなればなおさらここであなたを無力化しておく必要がありますね」

「ねえ、どうしてあなた達はこうしてまで人を不幸にする方向を押し進めようとするの?

貴方達も人にひどいことをされたかもしれないけど、みんながそんなわけないでしょ。
罪なき人も見境なく不幸にしてしまうことは良くないことよ」

「その罪の基準は誰基準ですか、自身ですか、それともヒト基準ですか。ヒト基準の罪など人間社会を維持するための歪んだ思想でしかないです。

ヒトを信じているあなたも、それに染まっているのでしょう」

「ヒトの考え方そのものが良くないというの」

「人間社会は意識の違いによるすれ違い、権力者の支配力を高めるために洗脳に近い教育を幼い頃から行います。

神を信じなさい、国のために働きなさい、いやでも働け、女は男に尽くせ、お金がないと生きていけない。

これらの考えはなぜ常識と呼ばれるようになったのでしょう、これらの考えから離れるとなぜ悪者となるのでしょう」

「それがこの世を乱さない最適な考えだからよ」

「そうですか?お金を巡っていったいどれほどの不幸が発生してきたと思っているのですか。

通貨があれば物々交換よりもものの価値は分かりやすくなるでしょう。

しかしものの価値など人によって違う、それに通貨がなくてもお互いの利害が一致すればものの交換で済む

お金という世を乱す物が最適な考えだと本当に思ってるのですか?

「どうやら話しても無駄なようね。どう話されようとも、わたしの考えは変わらないわ」

「あなたも思考を停止してしまうのですか。

ならば、ここで無力化させてもらいます。

アペ、刃と化せ!」

ピリカさんは炎の剣を手に持って私に切り掛かってきました。

村での修行でしか人と戦ったことがない中で相手を無力化する方法に少し悩んでいた。

相手の攻撃を受け止めながら行き着いた答えは四股を動かない状態にすること。

斬り落すまで行かず、骨を折るくらいならば命を奪うこともなく無力化できるでしょう。

私は相手の斬撃を受け止めるようにし、隙をついて足を無力化することに専念した。

斬撃を飛ばしてきて所々火傷をしているうちに私はあることに気がついた。

剣を持つ手の損傷が激しい。魔力で痛みを和らげているけど、普通なら剣を握ることも出来ないくらいダメージを負っていると思う。

もしかして、相手の狙いは私が剣を離すこと?

だとしたら長期戦は不利にしかならない。

でも相手の攻撃を受け止めるのがやっとの状況でわたしのペースへ持っていくことができない。

水壁の外ではみんなが中に入ろうとしているみたいだけど首長竜に妨害されて進展がない様子。

私を抑えながら首長竜のような生き物も操るなんて、ピリカさんは何者なの?

もう水壁の外に出るしかないと考えて思い切って飛び込むと水壁に走る電撃によって体が痺れてそのまま水流で内側にはじき返されてしまった。

「無駄です。ここから出るのは私が果てるかあなたが折れた時だけです」

そう言いながらピリカさんは私の方へゆっくりと歩いてきました。

こんなところで私は折れるわけには行かない。

日の本の国を守れずに、仲間を守れずに倒れるわけには行かない!

私は痺れた体でありながらも無意識にお母様から教わった技を出すために体を動かしていた。

体を回して円を描くように斬りあげる。

そして目標目掛けて力を込めて振り下ろす。

この技を使用すると間違いなく相手の体の一部は吹き飛び、剣に纏った風圧によって斬り下ろした先も斬撃によって地がえぐられ、木々もなぎ倒す。

強敵の魔女以外には使ったことがない技を使用し、やってしまったと思いながらピリカさんの吹き飛んでしまった右腕を見ていた。

しかし、斬り落とされた右腕の根本から禍々しい色をした炎のようなものが溢れ、腕の形になったら手には剣が握られていた。

これは一瞬のうちに起こったことであり、私は思考が追いつかない間に仰向けになって倒れていた。

視界がぼやけていき、どんどん体が冷たくなっていく感じがした。水壁が消えるところまではわかったものの、そのあとは意識を保てず、気を失ってしまった。

ピリカさんが出した首長竜に妨害されて水壁の中に入れない状態の中、水壁が消えます。

そこには右腕が炎のような状態になっているピリカさんと上半身に大きな切り傷がつい手倒れている静香ちゃんがいました。

「静香ちゃん!」

私達は静香ちゃんのところへ駆け寄り、血溜まりになっていることも関係なくその場に膝をつきました。

「静香、しっかりしてください!癒して傷口を塞がないと」

みんなが静香ちゃんに夢中になっている中、ピリカさんは時女の集落で大事にされてきた剣を手に取り、それを光の球に変えて拳で握ると消えてしまいました。

「時女の剣は預かりました。すべてことが済んだらお返ししにきます」

そう言ってピリカさんが寺の門へ歩き出すと時女のみんながピリカさんを取り囲みました。

「待ちな、本家をここまで傷みつけられてただで返す気はない。元々あんた達を捕らえる話になっていたからね、おとなしく捕まってもらうよ」

涼子さんが門の前へ仁王立ちになり、そう話しました。

私とすなおちゃんは静香ちゃんのそばにいました。

「無駄に血を流すことになりますよ。ここで抑えようなんてことは堅実な考えとは思えませんね」

「だとしてもよ。覚悟しなさい!」

そう言ってみんながピリカさんに飛びかかるとピリカさんの足元からは知らぬ間にいなくなっていた首長竜が現れ、みんなは水圧で飛ばされていきました。

ピリカさんの右腕は炎のような形にはなっておらず元どおりとなっていて、手元には強い悪意を感じる禍々しいオーラを放つ刀を持っていました。

カムイを超えられなかったあなた達が手を出せるとでも思いましたか。

事が終わるまで静香さんを見守っていればいいんですよ。

気づいた頃には、すべてが終わっているでしょうから」

吹き飛ばされた時女の子が諦めず襲い掛かろうとしていました。

私はとっさに声を出してしまいました。

「やめて!ピリカさんを行かせてあげて」

「何故ですか!彼女達を捕らえるのが元々の目的。1人しかいない中ならこの人数でかかれば」

「だからやめて、敵わないとわかっているのに命を無駄にするのは。静香ちゃんだって、みんなが命を落としてまで戦ったことを喜んでなんかくれないはずだよ!」

ほとんどの子は武器をおろしてくれましたが、涼子ちゃんと遠くで構えている旭ちゃんはまだ戦う気でいました。

旭ちゃんは私たちに背を向けているピリカさんに対して発砲してしまいました。

しかしピリカさんは銃弾を持っている刀で斬り落としてしまい、分断された弾丸は地面と寺の門をえぐりました。

「カンナ、貫いて!」

そう言ってピリカさんは左手に形成された雷を纏った槍を旭ちゃんが待機している場所へ投げました。

周囲には風圧が広がり、旭ちゃんがいたであろう場所は槍の着弾と同時にその地面をえぐりました。

[旭ちゃん!]

[生きては、いるであります。でも左半身は動かせない状態です。申し訳ないであります]

「あなたもあきらめないのですか」

涼子ちゃんは変わらず門の前に立ちはだかっていました。

「私は時女一族の一人としてではなく、私自身が許せないからどかねぇんだ。通りたきゃ力づくで通りな」

首長竜が姿を消した後、ピリカさんは涼子ちゃんへ斬りかかり、涼子ちゃんは負けじと警策で立ち向かいます。

最初は互角のように思えた戦いでしたが、涼子ちゃんはダルそうに膝をついてしまいました。

「何でだ、こんなに穢れるのが速いだなんて」

涼子ちゃんはピリカさんの回し蹴りに対応できず、半壊した門の壁に叩きつけられて動けなくなってしまいました。

「それでは失礼します」

そう言ってピリカさんは姿を消しました。

出会った時は魔法少女ということしか知らず、優しい人という印象でしたが、今日この一時で全く別の印象となってしまいました。

紗良シオリさんや日継カレンさんの話で2人は強いと聞いていましたが、私からしてみると、ピリカさんこそ最も戦ってはいけない相手だと確信しました。

あそこまでの激戦の中、ピリカさんのソウルジェムと思われる宝石は輝いていました。

立ち向かうことなんて、元々できっこなかったんだよ。

私はその場で1人で心が折れてしまった気がしました。

 

 

3-9:BACK
レコードを巻き戻す:top page
NEXT: coming soon…

【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-9 天才はその結果をまだ知らない

ういは顔を上げて目にたまった涙を袖で拭き取り、そのまま立ち上がった。

「わたし、みかづき荘に戻るね。そろそろやちよさん達が集まってそうだから」

|うん、気をつけてね|

わたしはそう言って送り出すことしかできなかった。

元々結界の中で4人が集まるのをずっと待っていた。それに苦はなかった。

でもどうして?

今の私は自由に外を動き回りたくて仕方がない。

・・・

これがワガママという感情なのだろうか。

そう考えていると灯花が病室の空間にやってきた。

「あら、万年桜のウワサいたんだ〜。この時間にいるってことはまた学校を抜け出してたんだね」

灯花は知らない。いろはがどうなっているのか、日継カレンという魔法少女達がやろうとしている事を。

教えると興味を持って危ない場所に行きかねないと伝えられているから。

「ういもねむもそろそろ学校が終わる頃だし、ニュースとかでは分からないこと話したいなぁ」

|えっと灯花、ういは|

「みかづき荘にいるんでしょ?」

|えっ!|

「だってー、今日の夕方に神浜を騒がせている日継カレン、紗良シオリ、保別ピリカを捕まえに行くんでしょ」

|・・・SNSに出てた話?|

「そうそう!私達を呼ばずに話を進めちゃうなんてひどい話だと思わない?!
中央区でかなーり危険なことになっているし、今頃敵のアジトだと思われる場所を攻撃しても意味ないと思うんだよね。

マギウスの時もやったけど、こういう時って穴になっているところで罠があるんだよ。

ぜったいわたくしを呼んでおけばもっといい提案をしていたとおもうにゃぁ」

|例えば何する?|

「魔法少女達も立ち入ることが困難になった中央区を見張るね。そしたら案外近くにいたりするんだよねー。

ちょっと考えればすぐだよー」

「そうやってみんなが行動している間、ボク達はなんの成果を出せていないじゃないか」

灯花が話すのに夢中になっている中、ねむはこの空間にやってきていた。

|灯花達に与えられていたのは、自動浄化システムを広げる方法。掴みようがないから広げ方もわからない、だったよね|

「概念への干渉なんて例のワルプルギスの夜を倒した時の羽同様、観測できるものがなければ敵わない。

クレメルもういも認識できない以上、やりようがないのは重々承知」

「ドッペルを発動したときに何処かへエネルギーが集中しているわけでもないし、現代科学の力では解決できっこないんだよ。

魔法少女の願い以外は別だけどね」

「だから因果量を測る装置を考えるんだって躍起になっていて今に至るわけだが、進展はあったのかい?」

「くふふっ、それについてはもう完成しててね、今日見てもらおうと思ったんだよ」

そう言って灯花が取り出したのは両掌に乗っかるくらいのアタッシュケースみたいな箱が一つ。

そして二つの留め金を外して出てきたのは魔法のステッキのように棒の先に丸い円盤がついたものだった。

「・・・見た目の時点では頼りないものが出てきたけどこれはなんだい?」

「これは魔法少女の素質を測る道具でね、決して魔法のステッキとかじゃないよ」

「可愛らしい装飾がされているから余計そう見えるよ」

「もう、普通に作ってって言ったんだけどにゃぁ」

「それで、その道具でどうやって魔法少女の素質を測るっていうんだい?」

「魔法少女の素質がある場合ってさ、キュゥべえが見えるものでしょ?それに魔女も認識できる。

魔法少女にしか見えないものが見えれば、その女の子は魔法少女の素質がわかるってこと。

この道具は魔法少女にしか見えない周波数を使用して数字をこの円盤の空間に映し出すことができるんだよ。

ただ見えればいいってわけではなくてね、映し出された数字が鮮明に見えるか、ぼやけて見えるかで素質の大きさを測ることができるんだよ」

「魔法少女にしか感知できない周波数、マギウスとして活動していたときの経験が生きたね。

それで、既に魔法少女であるボク達には当然見えるんだよね」

「もちろんだよ!見ててよ、今数字を表示するからね」

灯花は道具の根本にあるダイヤルを回しては押下、回しては押下を3回繰り返し、もう一つのボタンを押して私たちの方に向けてきた。

「さあ、ここにはなんの数字が見えるでしょうか?」

円形の中心に魔力のような反応があるというのはわかるけど、数字としては認識できなかった。

「きっと万年桜のウワサには見えないかもしれないけど、ねむならそれなりに見えるんじゃないかな?」

「見ただけで数字が3つあるのはわかる。でも全部重なっていて綺麗に見えるとは言えないね」

「じゃあ、どの数字が重なってるかはわかる?」

「2、8、7かな。全部違った形だからどの数字があるのかってとこまではわかる」

「そうかー、ねむでも綺麗に見えないってことは概ね成功って感じかな」

なんだか仲間はずれにされてるようでちょっとムッとしてしまった。

「もう、むすっとしないで。この装置が映し出す数字は、魔法少女の素質がある子が見ると数字は鮮明に、さらには並び順まではっきり判断できるってものなんだよ。

わたくしでもねむみたいに数字は見えても並び順までは把握できないから、ねむとわたくしの魔法少女の素質は同等程度ってことだね。

万年桜のウワサはもちろん魔法少女とは違った存在から見えないよ」

|魔力を感知するとは違うってこと?周波数の関係であれば私にも感知できそうだけど|

「万年桜のウワサは、わたくし達のテレパシーに参加できないよね」

|・・・そういうこと|

私はしなしなになった草のようにしょんぼりとしてしまった。

でも灯花は魔法少女の素質を測る道具で何をしようというのだろう。

|それを使って、どうやって自動浄化システムを広げようと考えているの?|

「もちろん、この地球上にいる強い魔法少女の素質を持つ子を探すためだよ。

そして、自動浄化システムを世界に広げてって願ってもらうの。概念に干渉できるのは、わたくしたちが魔法少女になる際の願いだけ。

だったら、その願いで広げるのが手っ取り早いでしょ!」

少し沈黙が続き、ねむがため息をついた。

「理論上は近道かもしれないが、人の道徳というものが決裂しているよ。

灯花はその考えをお姉さんに聞かせて、喜んでもらえると思っているのかい?」

「願いを強要しちゃうのはよくないけど、それなら心から願いたいって思ってくれるまで待てばいいと思うよ。それなら、相手に不利益はないよね」

「答えになってないよ」

「もう!じゃあこれ以外にいい考えがあったら教えてよね!」

|伝えるだけ伝えてみたらいいと思うよ。もしかしたらみんな許してくれるかも|

「でしょう?ねむより万年桜のウワサがわかってるね」

「むっ!」

|喧嘩はよくないよ|

ねむはそのまま自分が寝ていたベッドへ位置エネルギーに任せて座り、呼吸を整えた。

「それにしてもそんな装置、どこで作ってもらったんだい?」

「パパ様に周波数の実験装置が欲しいって言ってね、そしたら西の大国がその手の技術に詳しいらしくてね、設計図を渡したら1週間で完成品が届いたんだ。
優秀だよねー」

「そんな一般人にはおもちゃにしか見えないものを大きな国がね。改めて里見グループの凄さを実感するよ」

「くふふ、パパ様はすごいんだから!」

話している中、突然黄緑色の粒子が周囲に飛び交い、傷だらけのういが病室内に倒れ込んでいた。

「うい!どうしたの?!」

「お姉ちゃんが、お姉ちゃんがおかしくなっちゃった!うわぁぁぁぁぁぁ!」

ういはそう言ってその場に伏せて泣き出してしまった。

何があったのか、外で何が起きているのか。

ただ一つわかることは、いろはに大変なことが起きているということだけ。

 

わたしは、どうすればいい?

 

 

3-8:BACK
レコードを巻き戻す:top page
NEXT: 3-10

【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-8 自己犠牲のキモチ

「愛する人のため。

この作品に出てくる北斗という少年は愛する彼女のために自身の財産を全て委ねると遺書を残してこの世を旅立ちました。

彼女の難病を治すためのお金を全財産で賄おうとした北斗の行いは、果たして彼女の幸せに繋がるといえるのか。

ここに至るまでの内容を整理して、皆さんの感想を原稿用紙1枚分にまとめること、それが次回までの宿題です。

しっかり熟読しておくように!」

私は学校に行かずとも、灯花が登録してくれたデータでこの世界のことを覚えることができる。

人と違って、忘れることもない。

でも、国語や古文といった作者の気持ち、登場人物の考えを述べるよう問われると登録されているデータだけでは正しい答えを導くのが難しい。

ひなのからは人と接する以外にも読み物から人や物の考えを習得できると聞いている。

だから私は言語の授業には顔を出すようにしているのだけれど、今回の授業は今後の私のことを考えてしまうような内容だった。

あの時、うい達を謎の空間へ縛り付けたつづりという人物からある言葉を囁かれていた。

“今起きている事態を終息させるためには柊ねむが魔法少女となれるのが必須。
魔法少女になれないという呪縛を解くための最短の方法を、しっかり考えておいてくださいね。
全てはあなたの行動次第です”

灯花とねむの変身を妨害する腕輪の制御を掌握しているのは私。決められたルールに従って腕輪を外す、壊された場合はルールのレールに戻るよう再び腕輪を彼女達に装着することになるだろう。

私には逃れられないルール。

灯花とねむが魔法少女に変身できるようになるためには。

お昼時間になって私は気になることがあったので新聞部の部室に来ている。そこには窓から外を見ている令がいた。

「桜子さんか、昼にここへくるなんて珍しいじゃないか。いつものように中庭に行かないのかい?」

|今はそれができない。それに令に聞きたいことがあってきた|

「観鳥さんに聞きたいこと?いいよ、言ってみな」

|令は大切な人が、自分が死なないと助けられないと分かった時、どう立ち回る|

「難しい問いかけだね。もしかして黒いオーラの魔法少女の件について関わるのかな?」

|いや、今日の言語の授業で出た問いかけ|

「そっか、言語の授業には出るようにしてるんだっけ。

人間に限る考えなら思うように考えたらって言いたいところだけど、桜子さんはウワサだからねぇ。慎重に回答しないといけないね」

|どういうこと?|

この問いに答えることはなく、令は話し始めた。

「観鳥さんにとって命を投げ打ってまで助けたい存在はいない。だから観鳥さんは桜子さんの力にはなれなさそうだ、ごめんよ」

|そんなに難しい問題?|

「答えるのは簡単だろうさ。でも真剣に考えるととてもデリケートで、ある意味難題とも言える」

|答えるのが簡単なのに難題なの?どちらなの?|

「ヒトによって考え方が違うからね、もし桜子さんが間違いのない正解を求めているのであれば、難題と言って間違い無いね。

詳しく知りたいなら都先輩のところに行ったらどう?

あの人は観鳥さんが知っているあたり一番の人格者だからね、求めている答えがもらえると思うよ」

令からは欲しい答えをもらえなかったので言われた通りにひなののところへ行ってみた。

令は化学部の部室にいると言っていたけれど、魔力反応を辿るとひなのは屋上にいた。

いつもとは違った、黒い眼帯を付けているひなのは中央区の方向を見ていた。

「ん?桜子か、こんなところに何の用だ?」

私は令に問いかけたことと同じことを話した。するとひなのも難しそうな顔をした。

ひなのは顔をあげると再び中央区の方を見ながら話をはじめた。

「参考程度にひとつ話をしてやろう。

あたしは自分を犠牲にして後輩達を守ろうとした。

大怪我したのはあたしだけで済んだが、助けた後輩達はあたしのためと言って危険な行動を取るという結果が出た。

あのバカどもららしい考えだが、正直あたしは嬉しいとは思わなかった。傷つけたくないと考えた行いが、結局は心も体も傷つけさせる結果になってしまったからな」

ひなのは退院後、衣美里、梨花、れんがひなのの敵討ちのために紗良シオリの討伐作戦に参加したと聞いて3人へ説教したと話を聞いている。

他人のための行いはみんなが幸せにならないということ?

「あたしが桜子に出せる回答としては、“他人のための”と思って命を投げ出すなってことだ。

魔法少女に契約する際と同じような忠告だが、もし命を投げ出すようなことがあれば“自分のために”を優先したほうがいい。

相手のためを考えても、決して思った通りの結果にはならない。

お前のやりたいように考えればいいと思うぞ」

|なるほど、令が言った通り難しい|

「・・・それより、何でそこから出てこないんだ?」

|私は外に出ることができないから。でも何となく分かった。ありがとう|

そう言うと私は青空の下へ踏み出して全身に空の明かりがかかった途端に黄緑色の光に包まれてあの病室の空間に飛ばされていた。

病室には何故かういがいて私は驚いた。

|うい、どうしたの?学校で嫌なことでもあった?|

「ううん、中央区が大変なことになっちゃったなって」

令も、ひなのも中央区の方向を気にしていた。

それもそのはずでお昼時間に入ってすぐに中央区が謎の現象によって死傷者が出たとして立入封鎖となった場所が出たと言う緊急ニュースが出ていた。

立入封鎖となった場所は、紗良シオリの討伐作戦が行われた場所。

やちよ達は廃墟を襲撃すると言っていたけど、電波塔も怪しいと睨んでいた。

その電波塔へ近づくことができなくなった。

彼女達の居場所はほぼ明確だと言うのにやちよからは廃墟への襲撃は予定通り行われると魔法少女のSNSへ書き込みがあった。

ういも何故か廃墟への襲撃に参加したいと自分から言い出している

|最近、やちよからの連絡が多いけど、いろははどうしたの?|

「お姉ちゃん忙しいから、しばらくやちよさんに連絡係をお願いしている、みたいでね」

私たちの中で唯一自由に外へ出られるのはういだけ。

私達は建物の中でしか行動できず、詳しい外の状況はよく知らない。

ういの事を信じないわけではないけど、さっきの発言は嘘だとすぐ分かった。

|うい、私たちに話せない事があるんじゃない?隠し事はういに似合わない。

嘘をつくことが苦しいなら、私にだけでも話してみて|

そう言うとういは涙目になって私へ抱きついてきた。そして力強く私の着ている制服を握っていた。

「お姉ちゃん、連れ去られちゃって。

2日目になるんだけど戻ってきていなくて。

もし日継カレンさん達に捕まっているなら、黒いオーラに包まれて、私の前に出てきたら、どうしようって。不安で、不安で」

ういはそのまま床に膝をつけて涙を流していた。

ねむが魔法少女になれていればそんな不安もなかっただろう。

私はういを包容して頭を撫でてあげることしかできなかった。

いつもの私ならいろはを助けるために日継カレン達のアジトをしらみつぶしに探していただろう。

でも今の私は行ったことのある場所の室内にしか行くことができない。それに何故かみかづき荘へは行くことができないという制限付き。

この制限がついたのはつい最近。それまでは普通に行き来できていた。

これもつづりという人物の采配なのだろうか。

4人を守りたいのに守れない私にはどこか胸に苦しいと感じるものがあった。

今、私にできることは何なのだろう。

 

3-7:BACK
レコードを巻き戻す:top page
NEXT: 3-9

 

【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-7 たとえ間違った道だとしても

「いくら情報収集のためとはいえ、私たちこんなことしてていいのかな」

「仕方ないっすよ。二木市へ日帰りなんて結菜さんに負担をかけてしまいますから」

「まあ今更気にするのも野暮ってものかな」

私達は二木市へ魔女化しないシステムを持ち帰るために長期間神浜へ滞在しています。

二木市は学校が休みの日だけ、夕方だけ神浜へ来ると言えるほど近くにはありません。

マギウスの翼を調査していた魔法少女のように学校を休みながら長期滞在しなければいけません。

それが社会的に許されるのかといえば当然そんなことはないわけで、私達は人間社会を捨てる覚悟で神浜へ来ているのですが、罪悪感は抜けません。

それにしても私達以外に日中から活動する反社会的な子達がいたなんてね」

「あのミリタリーな見た目をした3人組のこと?まあ姉ちゃん達が大丈夫って言ってたし大丈夫だよ。

それよりもらんかが学校サボってこっちに参加したことに驚いてるよ」

「らんかって学校嫌いそうだから全然意外性は感じなかったなぁ」

「そうそう、学校サボってゲーセン行ってるイメージだよね」

「ふふっ、そんなこと言ってると次女にチクっちゃうぞ」

「アオ、ちょっとそれは勘弁かな・・・」

らんかだって人の道を外れるようなことはしない。じゃなきゃ口が悪くても周りに配慮した行動なんてできない。

私がらんかを襲った時だって、私の気持ちのこと考えてくれていたし。

そういえばらんかは次女と一緒に行動してるんだっけ。

なんかうるさく言われてめんどくさそうな顔をしているのが目に浮かぶなぁ。

 

樹里達は中央区の路地裏を中心に監視を行なっていた。そこで目立ったのは、らんかと樹里の間で行われた問答だった。

「らんか。あの場では何も言わなかったが、親に無理言って転校させてもらってんだろ?今回ぐらいは学校生活を優先してもよかったんじゃないか?」

「しっつこいぞ樹里!1日サボったくらいで関係ないって」

「いや理由なしに休むとすぐに親へ連絡がいくものだぞ。お前、親とうまくやれてないらしいじゃないか。
下手したら親に呼び戻されるぞ」

「樹里には言われたくないね」

「心配して言ってやってんのに。人間社会でまともに生きれなくなってもしらねぇぞ」

「だから!しつこい!」

「おいおい、路地裏でギャンギャン騒ぐとおもての人間に気付かれるぞ」

樹里達の背後には日継カレンがいた。

「チッ、魔力を感知できねぇってのはホント面倒だな」

「一応警告しておく、中央区から出て行け。
これから大事なことを行わないといけないからね、変に嗅ぎ回れると困るんだ」

「そこまで言われて引くわけないだろ。なんならお前を倒してその計画とやらの主導権を私たちに譲ってもらおうか」

「相変わらずだな戦闘狂どもめ。不尽な御託を並べる癖は治っていないようだな」

樹里と日継カレンが話している間、二木市の魔法少女達には日継カレンの居場所が共有され、メンバーが集結しつつある。

結菜が現場に到着した頃、中央区にある電波塔前に糸でぐるぐる巻きにされたらんかが日継カレンの足元に倒れていた。

「人質を取ったってわけ?」

「分からず屋達の覚悟を確認したいだけさ。
周りを見てみろ。昼時で路地には多くの一般人が歩き回っている。
お前達はこの一般人達を巻き込んでまでその不尽な理を貫きたいものなのか」

「まさか、一般人を巻き込むほど私達は非道ではないわ」

「ほんとわけがわからない集団だよ、あんた達は。復讐心ぶつけて自分たちが満足した後どうなるかまで全く考えていない。
殺して殺されてを繰り返す魔法少女の世界になって満足か?」

「そうならないよう私たちが抑え込むのよ。私たちについて行けば苦しまなくて良いとわからせていけばいいだけよ」

「人間らしい思考だ。
改めて言う、中央区から出て行け。出て行かないなら一般人の被害が出るぞ」

「…私達は、引かないわ」

「そうか」

そう言うと日継カレンは人混みの多い場所へ動けないらんかを叩きつけた。

数人の一般人が押しつぶされた後、信号で止まっていた人の乗っている車を糸でからめとり、樹里達へ投げつけた。

あたりでは悲鳴が聞こえ始め、ビルからも多くの人が注目している。

「やめなさい!一般人を巻き込むのは正気じゃないわ!」

「正気じゃないお前らが言えることか!

支離滅裂なことばかり外部の魔法少女へぶつけてばかり。内側に向けるだけの優しさを外に向けたらどうだ!」

魔法少女姿になるのを拒む魔法少女達が次々と投げつけられる看板や車で突き飛ばされ、人混みやビルの壁に打ち付けられていく。

魔法少女に変身した子が出ても、日継カレンは必ず人がいる場所が背面に来るようにしていて攻撃を行うことができない。

結菜のことしか考えていない馬も今回に限っては攻撃することを躊躇して、そして過去のトラウマもあってかひかる軍団を出そうとしない。

完全に私達はアウェーな状況だった。

「おい長女、流石にこれは取り返しがつかなくなるぞ。素直に中央区から離れた方がいいぞ」

「もう手遅れな気もするけどね」

結菜が答える暇もなく、糸の剣で日継カレンが結菜に襲いかかります。

結菜は魔法少女へと変身し、攻撃を受け止めるが、周囲の人が注目している。当然のように、中には写メをとっている奴もいた。

「お前達よりもまともな悪者は沢山いた。

中途半端な想いで、私たちの前に立ちはだかるな!」

結菜は何もいえず、日継カレンの斬撃で体勢を崩すと糸によってその場に掬い上げられてしまう。

「まずい!」

「スクってやるよ。ソウルジェムだけ残る形で!」

肉体が切り刻まれて終わるはずの場所で爆発が発生し、ソウルジェムと肉塊だけが残るはずの現場は爆発による火の粉しか残らなかった。

「あのゲーム好きのお節介か。仲間内だけ見るといい奴らなんだけどね。
お前達はどうする、三重崎の魔法少女達」

電波塔前にはミリタリーな見た目をした魔法少女2人が立っていた。

「あたしらはパスだ。中央区付近にいたら面白いのが見られそうってことがわかっただけでも収穫さ」

「そうかい。じゃあ別の区からスナイプしようとしてるもう1人にはよく聞かせておいてくれないか。前みたいなことになったら利き腕落とすだけじゃ済ませないぞってね」

「わかってるって。

魔法少女が魔女にならないシステム、ちゃんと広げてよね。じゃないとあんた達を

“ぶっ殺せないんだから”」

「そこは気にするな。楽しみにしてるといい」

「頼んだよ」

間も無く神浜市には臨時ニュースが流れ、電波塔付近には救急車や警察、報道陣が集まり、許可された者以外は電波塔付近へ近づくことが禁止となった。

神浜マギアユニオンは目的の場所と離れているからとこの日の夕方に行われる襲撃は、予定通り実施することに変わりはないらしい。

二木市の魔法少女はと言うと、ほとんどが中央区の外に出ていた。

結菜が目を覚ました後、2人のメンバーが建物の瓦礫の下敷きになったり、車に押しつぶされたりでソウルジェムが砕けてしまっていたことが告げられた。

結菜はすぐに中央区へ行きたい衝動を抑え、人気がなくなったことを見計らって再び中央区へ向かうと仲間に告げた。

「神浜マギアユニオンには今回の件を伝えるの?」

「伝えるわけないでしょう?神浜の魔法少女と共闘なんてゴメンよ。

彼女達を制するのは、私達プロミスドブラッドなんだから」

樹里は何も言わずその場を去り、建物の屋上で体育座りで座る1人の魔法少女の元へ向かった。

「結構夕日が綺麗だな、ここ」

「樹里・・・」

「結菜を助けてくれたのらんかだろ。武器で防いでくれたから、樹里様と馬で結菜を助けることができた。

ありがとよ」

「当然のことをしたまでよ」

樹里がらんかの隣に座り、いつから持っていたかわからないポッキーをらんかに差し出した。

一本手にとって食べた後、樹里に問いかけた。

「ねえ、あんたいつまで結菜についていくつもりなの」

「あん?」

「ついて行くにも限度ってものがあるでしょ。日継カレンだって言っていたが、あたしらのやってる事って中途半端なんじゃないかな。

目的も、やり方も」

「んなもん最初からわかってるさ。

樹里様は考えを無理やりにでも貫きながらみんなを引っ張ろうとしているアイツだからアイツのものとして付いて行ってんだ。

たとえ行き先が中途半端だとしてもね」

樹里は中央区を見ながらその場に立ち上がった。

「神浜から魔女にならないシステムを奪う。

そうアイツが言い出して、みんながついて行くってなったから二木市の魔法少女同士が争うことはなくなった。だからこの脆い均衡を崩さないために付き合ってるのさ。

少しでも崩れてみろ。樹里様が結菜をぶっ飛ばして、お前達を連れてってやるつもりさ」

「それ聞いたらひかるが黙っちゃいないね」

「そうやってまた過去に戻っちまうから付き合ってやってんだ。

アイツの言う通り、樹里様達は悪役にもなりきれない中途半端な連中さ」

そうだな、過去のように顔見知り同士で殺し合うのはゴメンだね。

でもあたしがついて行くのは、樹里、あんたにだけだ。

 

3-6:BACK
レコードを巻き戻す:top page
NEXT: 3-8

【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-6 眼鏡をはずしてみる世界は

沢山の魔法少女が集まった会議。

そこで行われたのはたった3人の魔法少女へ対抗するための情報交換でした。
集まったのは様々な目的を持った100人に近くなる程多くの魔法少女たち。
私たち見滝原の魔法少女も参加して、多くのことを知ることができました。

一番驚いたのはピリカさんもあの人たちの仲間である事でした。

実は情報交換が行われた中でもピリカさんの強さはカレンさん達同様かそれ以上という曖昧な話で終わりました。

10人近く集まってかつそれぞれの得意分野を織り混ぜてやっと追い込む程度の強さを誇る3人の強さはどこにあるのか。

神浜の魔法少女に関しては調整という神浜の外からきた魔法少女とは違った強くなる方法をとっているにもかかわらず、彼女達は調整という行為を受けていなくてもそれ以上の強さを持っています。

そんな別次元の彼女達のうちの1人を追いやったななかさんたちの情報をもとに会議では翌日の学校終わり、つまりは夕方に拠点と思われる3カ所に総攻撃を仕掛けることとなりました。

私たちには学校生活がある中、敵となる3人はいつでも行動できるという差ができてしまうことはみんなが理解していました。

それでも私達は人として生きる道を外れないよう行動することに決めました。

一部のグループはこの指針に賛同せず、みんなの邪魔をしない程度に独自の行動をとることとなりました。

私達はもちろん人としての生活を優先するために見滝原へ戻ることになり、戦いには参加することはできません。

何故なら、鹿目さんと美樹さんはワルプルギスの夜を倒したあの日からご両親に厳しい門限を設けられてしまっているからです。

この考えによって私たちの中でも意見のすれ違いが起こり始めます

「日継カレンたちだっけか。あいつらの目的を聞いていると悪くはないが一般人へ害を出したり黒いオーラの魔法少女の元凶かも知れねぇってのはわかる。
だがあの悠長な作戦実施時間はなんだ。
マギウスの時もそうだったが、学校なんて行ってる場合かよ」

「杏子の言うこともわかるけど、あたしらにとっては家族も学校生活も大事なんだよ」

「それにやちよさんは言っていたわ。自由行動するのは構わないけど、数人で勝てる相手ではないってことは理解しなさいって」

「んなことわかってるさ。まあ今回は収穫があったしよしとするよ」

そう言うと佐倉さんは駅へ向かわず風見野の方へ歩いて行ってしまいました。

美樹さんは佐倉さんへ何か伝えることがあるらしく、佐倉さんを追いかけていきました。

私と鹿目さん、巴さんはそのまま電車で見滝原へ戻りました。

見滝原についた頃には夕方となっていて、帰路についている最中で鹿目さんがいきなり立ち止まってしまいました。

「どうしたの、鹿目さん」

「えっと、ピリカさんたちのことをずっと考えてて。
魔法少女を助けたいって考えてくれているのに、どうして人も助けようって考えてくれなかったのかなって。
本当に争わずに話し合いだけで済ませられないのかな」

鹿目さんの優しさは底なしです。

いつもみんなが楽しく、幸せになることを願ってしまう方なのです。

そんな鹿目さんにとって、今回の件はとても辛いことなのかもしれません。

「あの状況では言い出しにくかったわよね。みんな普通に話していたけど、中には殺意を持っている子たちもいたわ。

マギウスの時もそうだったけど、事態が治ればいくらでも話し合えるはずよ」

「そう、ですよね」

「私達は参加できないわけだし、私達は他の子たちの報告を待ちましょう」

巴さんの話を聞いて少し笑顔を見せた鹿目さんでしたが、どこか納得していない表情が隠れている気がしました。

ふと一瞬強い風が吹きました。

すると鹿目さんは近くにおらず、目の前には気絶した鹿目さんを抱える魔法少女がいました。

「鹿目さん!」

「慈悲深い魔法少女 鹿目まどかを少し借りて行くよ」

「待ちなさい!」

私は魔法少女に変身して時間停止を行いましたが、驚くことに目の前の魔法少女は平気に動いていました。

どうして

「時間をとめるなんてこと、本当にできる魔法少女がいたんだな。世界は広いねぇ」

片側にだけお下げがあり、手袋部分にオレンジ色のソウルジェムと思われる宝石がついている魔法少女。

まさか、日継カレンさんなのですか。

「鹿目さんをどうする気ですか」

この子が背負っている未知数の因果律が自動浄化システムを広げることに必要でね、協力してもらうんだよ」

「それなら話し合いで済むはずです」

「本当か?なら、ヒトとして生きる事を止めろ言っても協力してくれるのかな?」

そう言ってカレンさんは神浜の方へ素早く移動を開始しました。

「待って!」

時間停止の影響を受けない理由がわからない。巴さんのようにリボンで繋がっていなければ。

繋がり?

私は会議で出てきた話題を思い出しました。

“黒いオーラの魔法少女となった私たちに共通しているのは、日継カレンと会っている事だ”

“あいつと繋がりがある奴らがなっているんだから元凶は日継カレンだよ”

日継カレンと会った時点で何か繋げられてしまっている?

だとすると日継カレンを経由して巴さんも動けるはず。

なのにあの場から時間は止まったまま。

わからない。あの人はどんな方法で時間停止の影響を受けていないの?

そう考えながら日継カレンを追いかけていると横から炎の剣でいきなり斬りつけられました。

咄嗟に盾でガードしましたが、地面に叩きつけられてしまい、時間停止も中断されてしまいました。

また落ちた場所も悪く、一般人が多くいる道でした。

周りの人たちはいきなり地面に叩きつけられた私と、炎の剣を握りながら私の方へ迫ってくる魔法少女を見て騒ぎになっていました。

「おいあの子空から落ちて来なかったか?」

「炎の剣?!ドラマの撮影か?随分とリアルだな」

一般人に見られながらも目の前にいたのは、ピリカさんでした。

私は改めて時間停止を使いましたが、ピリカさんも時間停止の影響を受けていませんでした。

「何で、なんで貴女も立ちはだかるんですか!どうして人へ危害を加えようとするのですか!」

私はピリカさんを振り切ろうとしますが、炎の剣で軽くあしらわれてしまい、カレンが向かった方向へ進ませてくれません。

「魔法少女が人間社会に溶け込めると考えているなら、それは間違いです。

ヒトは時間に縛られ、他人の欲を満たすために、金に支配されながらシステムのように生きて行くこととなります。

しかし私たちは穢れを解消しなければいけない。

そんな事情も知らずにヒトは私たちを縛り付けて無意識に魔女となる事を強要してくるでしょう。

そんな社会を生み出すヒトは、魔法少女にとっては害でしかないのですよ」

「そんな主張、勝手ですよ!

魔法少女だって人と一緒に生きて行くことはできます。社会人になっても、学校生活のように両立ができるはずです」

「私たちにとってはその主張も勝手なのですよ。今の人間社会が、まともだと言えるのですか」

時間停止できる限界が来ても私はその場から一歩も進めずにいました。

そして時間停止が解除されても、一般人に見られていようともピリカさんは炎の剣を私に振ってきました。

私は林に逃げ込もうとしますがピリカさんは私を一般人の方へ押し戻し、そのふるう剣は一般人も斬り付けていました。

一般人に被害が出ていることよりも、魔法少女として戦っている姿を一般人に見られていることが私には一番のストレスとなっていました。

何で一般人に見られているだけで苦痛となっているんだろう。

わたしはその場に膝をついてしまい、今までのように振る舞うことができていませんでした。

貴女の大事な人を守りたいという考えは人目につくというだけで諦めてしまうことなのですか」

周りの人は警察を呼んだり面白そうにスマホで写真を撮っていました。きっとSNSで拡散されるのでしょう。

わたしは今、魔法少女が人間社会で生き辛い縮図を体感しているのかもしれません。

「その程度の覚悟で大切な人は守れないですよ。守りたいのであれば、まずはその価値観から見直す事をお勧めしますよ」

そう言ってピリカさんはカレンとは違った方向へ姿を消しました。

わたしはこの一瞬で人として大事なものが既に失われている気がしました。

きっと学校へ行ったところで苦痛になるであろうことは目に見えていました。

ならばもう、躊躇する必要もない。

私は、鹿目さんを助けるために手段を選ばない!

一度家に戻って爆弾以外に銃器を揃えることにしました。時間停止が通用しない以上、銃器で応戦するしかありません。

とはいえ周辺の反社会的組織から調達できる銃器は底をついていて、近くの軍事基地に手を出すしかありませんでした。

しかしもう、迷う必要はありません。

夜のうちに軍事施設へ入り込み、扱いやすいサブマシンガンやハンドガンを調達してそのまま神浜へ向かいました。

夜明けごろに神浜へ到着し、私は会議の中で報告されていた一カ所のアジトと思われる場所へ向かいました。

そこへ近づくとピリカさんとシオリさんが出てきました。

「ピリカにかまかけられるなんて、あんた何怒らせるようなことしたんだ?」

「私も理解に苦しんでいるところです」

そう言いながら私は彼女たちへ銃口を向けました。

「鹿目さんはどこですか」

「自動浄化システムが世界に広がるまでは教えられないね」

「ならば、力ずくで教えてもらいます」

私は時間停止を使ったうえでピリカさん達へ弾丸を放ちます。

思っていた通り2人は時間停止の影響を受けていませんでしたが、飛び道具はその場で時が止まるので2人は手に持つ武器のみで応戦してきました。

2対1という不利な状況で勝つためには敵の攻撃を避けながら時間停止を解除した際に大打撃を与えること。

しかしそんなことはお見通しと言わんばかりに2人は弾丸の進行方向とは逆側に、爆弾が起爆する地点とは逆側に私を追い込みます。

攻撃は6割ほど受ける状態となり、その過程で眼鏡が割れて視界不良の状態に陥ります。

地面へ叩きつけられた際に時間停止が解除されてしまい、アジトと思われる建物方向は爆弾等の爆発が起こりましたが電気のシールドが貼られていて無傷の状態でした。

私は地面へ叩きつけられたと同時にシオリさんの攻撃の影響か体が動かなくなっていました。

「時間停止に頼った戦い方だから敵わないんだよ。
まあ実銃を使うスタイルは面白いと思うよ」

シオリさんが私に手を出そうとした時、何かが私に絡まり付き、ものすごい勢いで後ろ側に引き寄せられました。

視界がぼやけていてはっきりとはしませんでしたが、赤い服とポニーテールという見た目から佐倉さんであることがわかりました。

私は少し離れたビルの上で下され、佐倉さんは私の目の前に立ちました。

「考えなしに突っ込むとからしくないぞ、ほむら。
眼鏡、壊れたのか」

視界がぼやけたままでは何もできないので、私は試しに魔力で視力を矯正できるか試してみました。

すると、思ったよりも簡単に眼鏡をつけていたときくらいの視力にすることができました。

「ふーん、そんなことできたのか」

そう言うと佐倉さんはブラックな板チョコを包み紙を一部破った状態で私に差し出してきました。

「ほら、これ食ってちょっと冷静になりな」

私はビターなチョコを食べた後、ここに来るまでの出来事を佐倉さんに話しました。

「そうかい、あいつらは人前でも平気に魔法を使うほどやばいやつだってことはわかったよ。

強さもばかにならねぇのに戦えるフィールドを選ばねぇってのも厄介だな」

「私だけでは敵わないってわかったから、あとは巴さん達が来るまで情報集めをしようと思います」

それならこの街の中央区にやたらと魔法少女の反応が多かったからそこへ見にいったほうがいいかもな。

あそこでヤバいことが起こりそうだぞ」

中央区はシオリさんの目撃情報が多かった場所です。

もし昼間に彼女達とぶつかってしまったら、きっと中央区は阿鼻叫喚な光景となるでしょう。

わたしは鹿目さんの居場所の手がかりがないか探るために、神浜の中央区へと向かいました。

 

3-5:BACK
レコードを巻き戻す:top page
NEXT: 3-7

【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-5 塗りつぶされないその心に従って

音が届かない、夕日もほとんど差し込まない路地裏には4人の魔法少女と1人のヒトがいました。

「そこの倒れているのはチヒロじゃないか。かこ、これはどういうことヨ」

「ちひろさん、路地裏でこのヒト達に暴行を受けていたんですよ。蒼海幤に恨みを持っていて一方的に殴りかかってましたよ」

誰がどんな顔をしていたのか判断ができないほど肉塊が広がるだけの酷い光景でした。

これを、貴女がやったというのですか。

「どういうことですか、ヒトに手を下すなど、貴女らしくありませんよ」

「かこちゃん!何があったのか教えてよ!」

「私はもうななかさんたちの元へ戻れません。どうしてもというなら、もっと奥で話しましょう」

ちひろさんを血溜まりから離れた場所へ寝かせた後、私たちはかこさんの後を追って路地裏の奥へと進んで行きました。

「どうしてついてくるんですか」

「私達は貴女の仲間です。当然のことですよ。

まずは何があったのか話していただけますか」

「話したところで面白い話ではないですよ。ヒトと魔法少女は決してともに暮らせないと、そしてヒトは呪いの源、害だと気付いてしまったんですよ」

私は何か言い出そうとしたあきらさんを止め、かこさんの話を聞き続けます。

「お父さんとお母さんに見られちゃったんですよ、心臓に穴が開いても平気でいられる魔法少女の体を。

そして使い魔を倒して帰ったら、いつも名前で呼んでくれていた2人が私の事を人ではない、普通じゃないとしか言わなくなって。

それで私の前に私がもう1人現れたんですけど、うるさいから切っちゃったんですよ。

そして真っ暗な中を進んで扉があったので開いたら、目の前にはヒトだった肉があるだけでした。

それからたくさんのヒトを見て、呪いの源を断って、断って、断って。

そうしていると、もうヒトなんて救う必要ないんだって」

語るかこさんの目はももこさん達のように光のない目になっていました。

いえ、それよりももっと目の奥に闇が見えました。

そしてその顔は不気味な笑みを浮かべていて、なぜか涙を流していました。

ソウルジェムは、黒く濁るだけでなく七色が見え隠れしていました。

“あたしはあんたの反対側にいるんだよ。

でもね・・・いずれこっちに来る”

予言だったというのですか、貴女が私の中に幻影として現れたのは。

“あんたの反対側にいるんだ いずれこっちに“

私は魔法少女姿となって抜刀し、刃をかこさんへ向けます。

「ななか?!」

「かこさん、あなたを反対側に、“あちら側”に行かせるわけにはいきません!
必ず呼び戻します」

「ななか」

「あきらさん、美雨さん。今すぐここから立ち去ってください。これは私のケジメの問題です」

そう言ったにもかかわらず、あきらさんと美雨さんは魔法少女姿となり、私の横に並びました。

「何をしているのですか。生きて帰れる保証はないですよ!」

「何言ってるんだななか。ボクたちは仲間のためにここにいるんだよ。それに、人数がいれば止められる可能性だってあるんだから
それに、今のかこちゃんの姿をみんなに見せるわけにはいかないでしょ」

「ワタシは仲間を見捨てない。残るのは当然ネ」

2人ともに3対1という状況ができるにもかかわらず覚悟を決めたような顔をしています。

なぜでしょう、わたしも今のかこさんを前にして優位に立てると確信することができません。

戦わずとも既に知っていますが、“あちら側”のまま放っておくわけにはいきません。

「暖簾の先に進む覚悟がお有りなら、ひたすら付き合ってもらいますよ」

「当然!」

「わたしの前から消えてって言ってるのに!」

かこさんも魔法少女姿となり、いつもとは違った殺意の勢いで襲いかかってきました。

長柄の武器は突きよりもなぎ払う行動が多く、こちらが繰り出す攻撃は受け止めるよりも受け流してカウンターを取ろうとする動きが目立ちました。

そう、この行動原理は美雨さんのもの。

あきらさんと美雨さんの間髪ない攻撃の中、わずかに生じる隙を見逃さない回避経路を的確に見抜いています。

これはあきらさんの固有能力の応用。

かこさんは2人に構わずわたしにばかり積極的に攻撃を仕掛けてきます。

あきらさんと美雨さんがカバーに入ってくださるので猛攻を耐えてはいますが、これはわたしが司令塔であることを把握しての行動でしょう。

そう、かこさんは私たちの行動を後ろから今まで観察し、置いてかれないようについて行こうとしていました。

つまり、私たちの行動原理はお見通しなのです。

しかし一緒にいた私たちも同じ条件。

そのはずなのですが。

わたしはかこさんに飛び上がりを強要させるよう一閃を加え、飛び上がったかこさんをあきらさんが回し蹴りで地面に打ち付けようとします。

どんな身体能力を持っていようとこの世界の原理、重力に逆らう行動を取れる魔法少女はそう多くはありません。

その隙が生まれる着地の瞬間を狩るのが美雨さん。

しかし、かこさんは石突きを地面に打ち付け、その場にクレーターができたかと思うと黄緑色の光線ができたクレーターを囲うように放たれました。

「やはり、容赦はないようですね」

受けるはずの重力が右手に集中するその行動によってかこさんの右手は糸が切れた人形のようにだらんとしていましたが、即座に回復して地面に突き刺さった武器をその右手で抜き取りました。

やれると思ってもやらない戦法。

それはヒトとしての行動理念に反すること、ヒトとして大事なものを失う行動。

これらに該当する戦い方は勝てる場面でも使わないことが当然でした。

ヒトデハナイ

そう吹っ切れた方が相手だと、立ち回りにくいものですね。

戦況はお互い譲らずと言った状況でした。

私たちは擦り傷程度の損害に対してかこさんは切り傷や殴打による内出血ができる度に回復魔法で元に戻ります。

ここまで戦って不思議なのは、私たちのソウルジェムがそれほど濁っていないことに対し、かこさんのソウルジェムは真っ黒のままだということ。

「まだ構うんですか」

「当たり前です。あなたをこちら側に呼び戻すまでは引きません。あなたがまともに話を聞いてくれるようにならない限り、どこまでも」

「それにそろそろドッペルを抑えるのも限界なはずだよ」

「ドッペル、ですか。

そうですね、そんなに殺されたいナラ、切りキザマreちゃえばいIんですヨ!」

かこさんの足元から周囲に赤いリボンが巻きついた鉄柵、毒々しい植物が生茂る結界が展開され、空はほのかに夕日がこぼれていた時よりも紫がかった色へと変わっていきました。

「まさかこれ、魔女の結界」

「だめ、引き返せなくなります!」

わたしはかこさんのソウルジェム目掛けて駆け寄ろうとしますが、結界の茂みからは腹部分が本、頭部分が様々な花となっているモモンガな見た目をした使い魔まで現れました。

「ちょっとこれどういうこと?!神浜じゃ魔女にならないはずだよ!」

かこさんのソウルジェムから出てきた呪いの色をしたリボンがかこさんを包み、かこさんの見た目はかつて見たことがあるドッペルに似た姿へと変わっていきます。

スカート部分は本に何本もの栞が刺さった見た目をしていて上着部分は三原色が完全に混ざり切っていないパレットのような彩りに変わっていました。

そしてかこさんの目には光がない代わりに、赤い光が揺らめいていました。

そしてソウルジェムの中から取り出したのは身の丈ほどあるオオバサミ。

「ドッペルを着込んだというのですか」

かこさんはオオバサミを持ったまま素早くあきらさんへ詰め寄り、オオバサミで真っ二つにしようとします。

「いきなりか!」

しなやかにあきらさんは避け、美雨さんが詰め寄るとオオバサミは分離して二本の大剣となって攻撃を受け止めます。

「もうなんでもありカ」

使い魔たちの数が増え始め、私たちの行動を妨害するようになっていきました。

使い魔を振り払っているとかこさんのスカートにある栞が飛び出し、私たちの体に突き刺さりました。

そしてきっと魔力を吸い出したのでしょう、色が変わってそのままかこさんの元へ戻っていきました。

私たち3人は少々意識が朦朧としてしまい、その隙を突かれてあきらさんは壁に叩きつけられてしまいました。

そしてかこさんはあきらさんのソウルジェムがある側の腕を、オオバサミで切り落としてしまいました。

「アアアアアアアッ」

「あきらさん!」

かこさんはその後いつも使っている武器を生成してあきらさんの右足に突き刺してその場から動けないようにしてしまいました。

「かこ!」

美雨さんの突き出した拳はかこさんの左腕に突き刺さり、食い込んで抜けない中使い魔たちが美雨さんの視界を遮ります。

視界が開けた頃にはかこさんはオオバサミの片方を大剣のように振り払い、美雨さんは両足を失ってしまいます。

聞くことがないと思っていた美雨さんの叫び声が響き、右腕も斬り付けられて動けない状態となりました。

かこさんはわたしに振り返り、オオバサミを閉じて鋭利な先端を向けて急速に向かってきました。

そうです、そのままくるのです。

貴方にはまだ、ソウルジェムを壊さない優しさが残っているのですから。

わたしは無抵抗のまま心臓部分をオオバサミに貫かれました。

痛みに耐えながらわたしはかこさんを掴み、グリーフシードをかこさんのソウルジェムに当てました。

薄い意識の中、伝えるべきことを伝えるために声を絞り出します。

「かこさん、聞こえますか」

「ななか、さん」

「手短に話します。
貴女のヒトを嫌いになってしまう思考は、自動浄化システムが広がった際にいずれどの魔法少女にも、訪れることです。なので、否定はしません」

「わたし、わたしは」

かこさんの手は震えていて、元の魔法少女姿に戻ったかこさんの瞳には涙がたまっていました。

「しかし、闇に呑まれて全てを否定してはいけません。いつもの貴女らしさ、大事にしてください」

「わからない、わからないですよ私らしさなんて!ヒトを助ける気がなくなった私に何ができるんですか!」

「何を、おっしゃっていますか。もう貴女は既に貴女らしさを闇の中でも見せているじゃないですか

「え?」

人嫌いならば、あの場面でちひろさんも無差別に殺していたでしょう。

しかし殺そうとしなかったことで確信したのです。まだかこさんから良心は消えていないと。

呪いが満ちた状態を途切れさせるためにはグリーフシードで呪いを取り除けば言葉を伝える間が生まれる。

うまくいって良かったです。

8割呪いを吸い取ったグリーフシードを投げ捨て、もう一つ取り出して話を続けます。

「ここからは貴女の心に従ってください。大丈夫です、私たちは信じています」

「ななかさん」

ぼやける視界には路地の片隅に立つ見慣れたシルエット。左側だけ髪を結っている魔法少女。

「あのとき巻き込んでしまったことを後悔しそうでしたが、私は正しかった。

このどうしようもない状況を、打破出来る。

だから、わたしはかこさんを!」

最後の力を振り絞ってかこさんを横に突き飛ばし、わたしの意識はそこで途切れたのです。

 

 

ただの路地裏となった場所に3つの宝石が砕ける音が響きました。

ソウルジェムがあった場所まで伸びている糸の根本を見ると、そこにはカレンさんがいました。

ななかさんたちはヒトだった姿になっていました。

わたしの頭にはある場所の映像が流れてきました。
ここは、中央区の電波塔?

「自動浄化システム、広げたいと思うならそこに来い。夏目かこ、お前の再現の力が必要だ。

協力的であることを祈っているよ」

そう言ってカレンさんは去りました。

死んじゃった。わたしのせいで、ななかさん、あきらさん、美雨さん。

わたしはこれからどうすれば。

そう思っていると、わたしの中である確信が芽生えます。

倒すべき存在は、日継カレン。

いえ、復讐すべき存在。

私の肩には、ななかさんの手があったような気がしました。

やるべきことが見えました。

わたしは、いえ、“私たち”は自動浄化システムを世界に広めた後、あの三人に復讐し、償ってもらいます。

もちろん、生きてもらいながら。

路地裏には、1人しかいないはずの魔法少女の気配が、なぜか4つあったのでした。

 

 

この日の夜になる頃には、各地で大きな動きがありました。

どれも日継カレンたちの思惑通り。

ニュースに流れたことも含めて魔法少女たちの衝撃だけには止まらず、人間社会にも大きな影響が出ていました。

神浜市にいると化け物に襲われて殺される。

もはやウワサの域を出て、ノンフィクションだという認識が広まって行くこととなったのです

わからない。

日継カレン、紗良シオリ、保別ピリカという魔法少女の情報がふーちゃんからも入ってこない

全ての魔法少女の怒りと嫌悪の矛先は3人の魔法少女に集中している。

負の感情だけが漂う神浜市ではもっと大きな災厄が訪れそうで、胸が痛くなってしまいます。

「アルちゃん、この事を記録しても意味があるのかな」

“あるんじゃないかな。何が起きたか知ってもらって、理解する。そこからじゃないかな、なにもかも”

 

3-4:BACK
レコードを巻き戻す:top page
NEXT: 3-6

【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-4 自責の権化を前にして

いつからでしょうか。

私はよく、夢を見るようになっていました。

あの時の、私が初めて心の底から許せないと思ってしまった方が夢に出るたびに、あの言葉が頭に木霊するようになったのです。

「あたしはあんたの反対側にいるんだよ。
でもね・・・いずれこっちに来る」

サラサハンナ

マギウスの翼の一件で忘れたかと思いましたが、黒いオーラの魔法少女を見てきたせいなのか再び記憶が蘇ってきたのです。

「ホント、面白いことが絶えないね、この街は」

「失せなさい。今頃何をしにきたのですか」

「なーんか魔法少女って成仏できないみたいでさ、あの後ずーっとあんた達を見ていたよ。

ワルプルギスの夜ってやつが倒された時はくっそつまらねって思ってたけどさ。

黒いオーラの魔法少女!

人間ぶっ殺したくなるとか超楽しいことになってるじゃない!」

「・・・」

「まああんた達に協力する気はないんだけどさ。あんた達が探してる子、生きてはいるよ」

「なぜそうと言えるのですか」

「でももしかしたら“こっち側”になっちゃってるかもねぇ、真っ黒になっちゃってさ!
アハハハハハッ!」

私は頭にまとわりつくような声を振り払いました。

それと同時に目を覚ましたのですが、目覚めの気分は最悪でした。

今日は沢山の魔法少女が集まる大きな会議が行われる日でしたが、かこさんを探すことを優先し、私たちは欠席することにしました。

探す当てがあるからです。

私は1日をかこさんの探索に当てることとしました。

忘れもしない朝のニュース。

かこさんのご両親が殺されたこと、そしてかこさん本人は行方不明という内容を。

しかしかこさんは魔法少女で魔女の仕業だとしてもあのような結果で終わるはずがありません。

あり得ることとしては、シオリさん達が手を出すこと。

私はその可能性を考えながら町中を回りました。その中でよく耳に入るようになったのは、路地裏で刃物によって殺されている人が増えているという情報でした。

この情報を集めているうちにやちよさんからは会議が無事に終わったと通知が来ました。

感触は良好。しかし目的地への潜入は明日の夕方になるという内容がありました

明日は平日で普通ならば皆さん学校へ行く日となるため致し方ありません。この生活サイクルの違いでシオリさん達と差がついてしまったと言っても言い逃れできないでしょうね。

もちろん我々の捜索も明日の夕方から再開することとなりました。

しかし一度各々が集めた情報を整理するために再び集まりました。

「かこさんの足取りは掴めなかったようですが、気になることがあるそうですね、あきらさん」

「うん、実は情報収集中にパトカーや救急車の音が普段より多く聞こえた気がするんだよ。試しに現場に行ってみたら、どうやら路地裏で殺された人がいたとか」

「きっとそれ、南や東も同じ。蒼海幤に付き纏っていたゴロツキ、強硬手段を使うことで恐れられていた暴力団の一味が刃物で殺されていた現場を見たと聞いてるヨ」

「急に増えたとなると同一の要因であることを疑いますが、何時ごろ起こったかまでは把握できませんでしたか」

「流石にわからないよ。わかるのは死体が見つかるまで2、3日の間は空いていないってことくらいかな。教えてくれた人、昨日は何もなかったって言ってたし」

いつもであれば魔女の仕業と考えることはできますが。

「ななかはどうだた」

「かこさんの古本屋周辺で話を聞いたのですが、どうやら昨日の昼過ぎから夕方の間には既に古本屋の前に血痕と気絶した刃物を持った男がいたそうです。

近所の人が何事かとかこさんのご両親に聞くと、かこさんは通りすがりの男に刺された後、何処かに行ってしまったようなのです。

男はその後警察に捕まったそうですが、何も覚えていないそうです」

「じゃあ、かこちゃんは魔女の仕業だと思って飛び出してそのまま帰っていないってこと」

「まさか1人で挑んで」

「かこさんはそこまでやわじゃありません。何かトラブルに巻き込まれた可能性があります。明日は学校の用事が終わった後に再び捜索を再開するとしましょう

解散した後も私はあらゆる可能性を模索しました。

かこさんのご両親が殺されたことと神浜中で起こっている殺人事件が同一犯だとしたら。

残念ながら現在は魔女以外に黒いオーラの魔法少女が該当します。

魔女であれば魔力の痕跡が残るはずですが、2人ともにそれはないと言っていました。

黒いオーラの魔法少女であれば忍ぶことを知らないうえに無差別に殺戮行為を働くため、今回のようにピンポイントに、そして密かに殺人を行うことは考えにくいでしょう。

だとすると、犯行を行なったのは複数の人間、または魔法少女による犯行となるでしょう。

そういえば人を殺すことを躊躇しない方達に心当たりがありますね

憶測で疑うのは良くありません。

明日は路地裏や人目のつかない場所を捜索することにしましょう。

彼女達のアジトへの襲撃は、やちよさん達に任せることとしました。

「如何して1人に固執するんだい?常盤ななかっていうのは目的のためにあらゆるものや人を手段として扱うやつじゃなかったかい?」

手段として利用してきたことは認めましょう。しかしそれは思い違いです。

仲間を助けるために行動しているのです。

「らしくないねぇ。紗良シオリとかいう魔法少女達を抑えるチャンスを逃してまで仲間を助けるだなんて」

あなたには関係ありません。今回の件はかこさんを見つけなければあとあと取り返しのつかないことになるという予感がしているからです。

「焦ったいね。素直に言えばいいじゃないか、あの魔法少女をこっちの世界へ誘導してしまったという自責の念から来てるとね」

死してなお私に固執するあなたに対して理解に苦しみます。

「アハハハハハッ

私はあんたが作り出した幻影だよ。むしろ固執してるのはあんたの方だよ。

楽しみだねぇ、あの子、もうこっち側になっちゃってるかもねぇ。

アハハハハハッ!!」

私は今回の件に対して冷静な判断よりも直感で行動していたのかもしれません。

更紗帆奈の幻影が、直感で行動することに拍車をかけていたのかもしれません。

なぜ今になって、彼女が。

放課後になった頃には刃物のようなもので殺される変事件は報道に取り上げられるほど話が発展していました。警察も動いているようですが、中央区ではお昼ごろに死傷者が出たと騒ぎになっていました。

現在一番新しい死亡者情報は新西区に集中していることもあり、私たちは新西区の路地裏を重点的に調べることになりました。

曲がりくねっている路地裏の一角、そこには2人の女子高生がいました。

そのうちの1人は友人の写真を持って訪ねていました。

「知ってるよ、その子。あたしらの仲間が昼間に見かけたらしいんだ」

「その話、詳しく教えて!」

「いやいやいや、あんた蒼海幤のメンバーだろう?あたしらの仲間をシマを守るためとか言って結構痛みつけてくれたみたいじゃないか」

「それは、貴方たちが昔のようにヤクザ業で一般人も危険に晒そうとしたから美雨さんが止めに入っただけでしょ!」

「そうそう!その中華っぽい名前のすごい強い子。あいつにはあたしらに詫びを入れてもらわないといけないんだよねぇ」

1人の少女が指を鳴らすとどこに隠れていたのかわからない柄の悪そうな男が5人出てきました。

「やめて、そんなことをしている場合じゃないの!」

変に暴れるとこいつらが粗相をしちゃうかもしれないから大人しくしておいたほうがいいと思うよ」

男たちは写真を持っていた少女を壁に打ち付け、腹に対して2、3発拳を振ります。

殴られた少女はその場に跪いてしまい、そのままもう1人の男が顔に蹴りを入れました。

「ハンゴロシで済ましとけよ、交渉する前に死なれちゃ困るからな」

「生きてないと俺らも楽しめないしな!」

ゲラゲラと笑う少女と男たち。

しかしここは表通りまでは声もほとんど届かない場所で、誰もここの出来事を知ることができません。

「そこの女の子が何をしたというのですか」

誰も来ないはずの路地裏へ黒いフードつきのパーカーを着た少女が現れました。

「お嬢ちゃん、タイミング悪いとこだったな。来ちゃいけないとこに来ちゃうとか、悪い子だね。悪いけど、お兄さんたちについてきてもらうよ」

そう言って手を出してきた男は長柄の槍のようなもので貫かれ、血を吹き出しながらその場に倒れました。

「ヒトは誰も彼も希望を与えるほどじゃない人ばかりですね」

「なんだてメェ!お前らチャカ使っちまえ!」

「お、おう!」

男たちは忍ばせていた銃器を手に取りますが、黒いフードの少女は銃弾が放たれる前に手や首を素早く切り落としてしまい、路地裏に響いたのは男女の悲鳴だけでした。

「貴女は」

「私にはもう、構わないでください」

暴行を受けていた少女は黒いフードの少女に気絶させられ、その場に生きているヒトは気絶した少女だけでした。

鉄の匂いが充満するその場には3人の魔法少女が現れます。

「やっと見つけましたよ、かこさん」

 

3-3:BACK
レコードを巻き戻す:top page
NEXT: 3-5

 

【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-3 絶望よりも深いその先へ

昨晩行われた紗良シオリさんの捕獲作戦。

結果は成功とはなりましたが、望んだ最善の結果とはなりませんでした。

シオリさんの残した魔力を頼りに今日中にななかさん、美雨さんで潜伏先を探すと伺っています。

そして明日行われる神浜マギアユニオンの集会で報告し、多人数でシオリさん達を抑える。

その後のことは終わった後考えるとのことですが、私は知りたいのです。

なぜ彼女達が、魔法少女のためにすごいことをしようとしているのに、今回のような悲しい結果を生むような行為に至ったのか。

私はそんなことを考えながら店番をしていました。

今日はお父さんとお母さん揃ってお出かけしています。日々何かと忙しくて揃って休日を取れる日が少ない中、今日は私が店番をする代わりに、二人に息抜きしてもらうことにしたのです。

まあ、親孝行というやつですね。

2人とも照れ臭そうな表情をしていましたが、手を繋いで出かけて行きました。

楽しい日になってほししいなぁ。

私の家では夏目書房という古本屋さんをやっているのですが、本を集めてくるお父さんのこだわりもあってか、珍しい本があるとそれなりに名前は知られています。

いまは電子書籍の時代となってきてはいますが、紙とインクの匂い、そして何よりも手にとってページをめくっていき、物語を読み進めていくというのが本の良いところです。

お客さんもそれなりに来て、時々近所のおばさんと会話したりと、ゆっくり時間が流れて行きました。

近所のおばさんと話していると、気になる話を聞きました。

「そういえばかこちゃん、同じ学校に通っている子で急に不登校になった子とかいないかい?」

「急に不登校ですか。そういえば最近、増えてますね」

「やっぱりそう?私の迎えに住んでいる奥さんの子がね、最近家族の前に姿を見せない上に、学校にも行かない不良娘になっちゃったみたいなのよ。
前から帰りが遅かったりしたことはあったんだけどねぇ。何か相談できないような悩み事でもあったのかしらねぇ」

「そうかも、しれないですね」

不登校になった女の子。

ご存命ではあるらしいので、魔女に襲われてってことではないかもしれません。でもその子が魔法少女だった場合、ももこさんたちのように黒いオーラを纏ってしまい、考え方が変わってしまった結果なのかもしれません。

かえでちゃんも学校へ来なくなり、他のクラス、学年でも不登校となる子が増えていました。

マギウスの翼の時よりもその数は多く、いま起きている事態はマギウスの翼が起こした騒動よりも大きな影響を与えているのだなと実感しました。

お店の中が静かになったころ、少し気になったのは、午後になってもななかさん達から続報が来ないということです。

魔力の痕跡を追えなかったのか、それとも何か騒ぎに巻き込まれてしまったのか。

お父さん達が帰ってきたら電話でもしてみようかな。

「かこ、帰ったぞー」

「あ、お帰りなさい。二人とも楽しめた?」

「もちろんさ。新婚の頃の新鮮さを思い出せるいい機会だったよ」

「もう、お店に入ってすぐに書店に籠ろうとしたのは誰なんだか。
かこちゃん、今日はありがとね。お父さんと選んで買ったお菓子とかあるから、夕ご飯の後に食べましょう」

「わあ、ありがとう!」

楽しく会話している中、お父さんとお母さんの後ろに虚な顔をした男の人が近づいてきました。

そして、その男の人は刃物を取り出し、走ってきて。

「ダメ!」

私はとっさにお父さんとお母さんの間を通って仁王立ちするように男の人の前に出ました。

凄く、痛い。いや、普通なら痛いじゃ済まない。

男の人が取り出した刃物は、確かに私の心臓を捉えていました。

血が滲み出る中、私は襲ってきた男の人の腕を掴み、刃物から手を離させ、そのまま地面へ叩きつけて気絶させました。

その男の首元には、魔女の口づけが。

「いやあああああ!」

お母さんはとても怯えた顔をしていました。

お父さんは驚いた顔をしていて。

「かこ、どういうことだ、これは」

そう、魔法少女であれば心臓を貫かれても、血が幾ら流れようとも、ソウルジェムが無事であれば生きていられる。

しかしそんなこと、普通の人なら理解されない。

私は、お父さん達の目の前で、人ではなくなっていることを証明してしまったのです。

私は刺さった包丁を抜いて、回復魔法で傷口を塞ぎました。

そして包丁を地面に落とし。

「お父さん、お母さん。ごめんなさい」

「かこ!」

私はそう言ってその場から走って去りました。

見られてしまった、知られてしまった!

私が人ではない体になってしまったところを!

涙で滲んだ風景の中、魔女の口づけから感じた魔力反応を頼りに走り続けました。
私はただただ怖かったのです。見たこともない、二人の怯えた顔が。

魔女の結界に入ると、手をパチパチと叩きながらケラケラと笑う使い魔達がいました。

貴方達が、あの男の人を操らなければ、あのタイミングじゃなければ!

魔力反応を感知できなかった私のミスかもしれない。平和な時間の中で油断していたのかも知れない。

でも許せない、今回だけは、許せない!

普段はやらないような力頼りの攻撃を行うばかりだった気がします
使い魔に攻撃されて傷口がたくさんできても、痛みを感じることはなく、ただひたすら感情に流されるように使い魔を倒していきました。

そして倒しても倒しても、私の気が晴れることはありませんでした。

気づけば日は落ちかけていて、グリーフシードもありませんでした。

もしかしたらしっかりと向き合ってくれるかもしれないという淡い期待をもって私は帰路へつきました。

いつも普通に帰れていた家も、入るのが怖かったです。

2人の反応が怖い。

そう思いながら二階に上がると、お母さんは泣いていて、お父さんはお母さんを慰めているところでした。

「ただいま」

「かこ、帰っていたのか」

しばらくの沈黙の後、お父さんが話し始めます。

「どういうことか説明してもらえるか。あの状況、普通なら動けず死んでいてもおかしくない。

でもお前は人並み以上の力で男を気絶させ、そして、平気にそこで立っている」

私はソウルジェムを手に乗せ、2人の前で変身して見せます。

「おい、その姿」

そしてその場で私は手首に切り傷をつけます。

「や、やめなさい!」

血は少し流れましたが、魔法ですぐに傷口は塞がりました。

「ごめんなさい、もう、普通じゃなくなっちゃったの、私」

私の声は震えていました。そして足元から凍えるような冷たさが登ってくるようになりました

ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい

そう、心の中で呟き続けました。

「どうしてこうなっちゃったの、これじゃあかこちゃん、人じゃないじゃない!

普通じゃないわこんなの、ありえないわああどうして、どうしてウチの娘が!」

「落ち着け!」

人じゃない。普通じゃない。

拒絶された。きっと、人じゃないから化け物と思われるのかな。

おかしいな、2人を助けたはずなのに。拒絶されちゃった。

ああ、嫌だったなぁ。こんなピリオドは。

冷え切ってしまい、何かが切れてしまった。

手をあげるとそこにはきらりと光るモノ。

”抑える必要なんてないんだよ。気の向くままに刻んでしまえば、すっきりするし清々しくなるよ”

そんな私の声が頭にこだまし、そして胸につっかえていたようなものが洪水のように押し寄せて頭をいっぱいにした。

身に降りかかる温かな液体。手は止まらない。
音も聞こえない。
私は目の前に浮かんだもう一人の私も含めて切り刻むかのように、手には大きな裁断機についているような鋏で激しく斬りつけていきました。

気づけば私は謎の空間の階段を下りていて、最下層には鎖でがんじがらめにされた門が立ちはだかっていました。

私は無意識に、鎖を切りきざみ、閉じられていた門を開けていました。

真っ暗な門の先へ進み、門が閉じた音と共に目の前には血だまりと肉塊が広がる光景が広がっていました。

その結果を見ても、不思議と浮かんだのは達成感。しかしすぐに体は冷たくなってしまいました。

「穢くなっちゃったなぁ。着替えないと」

私は着替えてその場を後にしました。

思いのまま、呪いの素を断つために。

 

 

「どういうことだ、シオリ。

朝からいないと思えばこの結果。まだこの街をかちゃ混ぜたりないのか!」

そこにはシオリを張り倒すカレンの姿があった。相変わらず手加減なく殴るんだから、血が出たじゃないか。

「誤解だよ、私は観察していただけ。あいつらに魔力パターン知られちゃったし、拠点にいないほうがいいでしょ」

「大事なピースをあの様にして、あの夫婦にヘイトを誘導させたのはお前だろ!」

「だから誤解だって。シオリが手を出さなくても結末は変わらなかった。それにこの流れはシオリ達を妨害するあいつらが退場するチャンスだ」

「いい加減にしろ」

しばらくの間沈黙が続いた。

「いいか、もう成就は目前なんだ。これ以上ヘイトを買うような余計なことはするんじゃない」

「でもいい感じに仕上がっただろう、争いの矛先は私たちに集中した。そのおかげで無謀な争いが軽減されている。

あの実験状態を野放しにし続けたのもそれが目的だろう?」

生温い風が2人の間を流れた。

「あの結末は私が処理する」

「そう、まあここまで最小限の犠牲だろうさ。変なイレギュラーのおかげで予想より助かってる奴らは多いし。そのおかげであの子も見つかったんだしさ」

「ああそうだな。予定なら私にだけヘイトが溜まればよかっただけなのに、余計なことしやがって」

「いらないよ、そんな気遣い。お師匠を殺す前も、そのあとも運命共同体だったじゃないか、水臭いよ。

なーに大丈夫さ、すべて終われば自然と天罰が落ちるさ。それが世の常だからね」

そう、解放のツケは、シオリ達だけに集中すればいい。それが全て最小限で、最適解さ。

 

3-2:BACK
レコードを巻き戻す:top page
NEXT:3-4

 

【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-2 魔法少女会議

今日は神浜の魔法少女にとっても、外からきた魔法少女にとっても重要な日。

自動浄化システムを広げる方法を知っている魔法少女達についての情報交換、そしてその魔法少女達を捕まえる作戦会議の日です。

とても大きな会議で、多くの魔法少女が集まります。

これがただ緊張するだけの場ならよかったのですが、神浜マギアユニオンとしては悲しく、そして辛い知らせが波のように打ち寄せています。
そんな中でも私にとって一番つらいこと。

お姉ちゃんがいない。

そんな状況の中、会議が中止とならなかった理由としては、ななかさんからシオリさんが隠れたとされる場所を特定したこと、そして

「私たちに構わず会議を行ってください。機は明日しかありません」

と伝言を受け取っていたからです。

ななかさん達は昨晩、紗良シオリさんを撃退してその後魔力反応を辿ります。

シオリさんがどこに行ったのか特定はできなかったものの、シオリさんの魔力が発せられている廃墟が3箇所あることを特定したと情報がありました。

シオリさんが隠れてから時間が経つ前に大人数で奇襲をかければ高確率でシオリさん達を捕まえることができる。そしてお姉ちゃんを助け出すことができる。

だから私たちは会議の中止よりも開催を優先したのです。

 

こんな大事な会議に灯花ちゃん達は参加できません。

何故ならあの謎の転移魔法では果てなしのミラーズへ行くことができなかったからです。

また、神浜マギアユニオンのみなさんからは、灯花ちゃんとねむちゃん、そして桜子ちゃんへシオリさん達の計画について話さない方が良いと言われています。

灯花ちゃん達がその考えに乗って協力しかねないからとのことです

昔は昔、今は今と言いたいですが、果てなしのミラーズで行った実験の方法と結果を見るとこのような意見が出ても仕方がない気はします。本当は信じてほしいけど。

本当に危ない事態になったら、教えようと思います。

お姉ちゃんが連れ去られたことについても、三人には内緒にしています。きっと無理しちゃうと思うから。

私は今回の会議に出られることになっていて、さなさんはお姉ちゃんが帰ってくるかもしれないということでお留守番、フェリシアさんはもう一つの不幸の調査のために飛び出してそれっきりです。

なので、みかづき荘からはわたしとやちよさん、鶴乃さんが参加です。

道中は静かでした。

何かと話を切り出す鶴乃さんも口を閉じたままでみかづき荘で生活を始めてからここまで静かなのは夜に寝るときくらいです。

果てなしのミラーズがある鏡屋敷の入り口にはたくさんの人がいました。

見た感じの年齢は小学生から高校生まで様々。知ってる人から知らない人までぐちゃぐちゃな状態です。

そんな中、声をかけてきたのは十七夜さんとみたまさんでした。2人はお姉ちゃんがいない状態のやちよさんを見て心配している様子でした。

「神浜マギアユニオンの中心人物だからというのはわかる。だが、環くんの居ない状態の七海は少々不安が残る」

「どういうこと?」

「大事なものが抜けた後というのは冷静な判断ができなくなる。今の七海が進行を行うと何処か早まった判断をしないか心配だ」

「大丈夫よ。至って冷静よ」

本来ならお姉ちゃんが進行するはずの会議ですが、今は連れ去られてしまって行方不明な状態なので代わりにやちよさんが進行します。

大丈夫、見渡した限り、神浜の魔法少女以外にもたくさんいるから絶対成功する。

そう期待をしている間に会議が始まりました。

まず行われたのは神浜に集まった神浜の外からきた魔法少女達の目的を聞くことから始まりました。

特に多かった理由は自動浄化システムを求めてきたからという理由でした。

次に多かったのは紗良シオリさん達を追ってきたという理由が多かったのが驚きでした。むしろここに集まった魔法少女がみんな2人の魔法少女のことを知っているくらいでした。

私たちが黒いオーラの魔法少女に苦労している中、シオリさん達は神浜の外に足を運んでいたのかもしれません。

そしてこの会議に参加した魔法少女は直接話を聞いた場合と口伝えに聞いた場合の2種類でした。

この会議の周知を行ったのは元マギウスの翼メンバーに広く知られている欄さんという方でした。

会議へ参加させるための口実として黒いオーラを取ることができた魔法少女の話を持ち出したとのことです。

神浜にいる間に黒いオーラの魔法少女による被害を受けた人たちも多かったらしく、今回の会議では黒いオーラを取る話も議題になります。

次に会議の議題に上がったのは紗良シオリさん達の目的についての話です。

この話は病院から退院したひなのさんから伝えられました。
ひなのさんはシオリさんとの戦闘の際に右目を失ってしまい、現在は黒い眼帯をしています。
シオリさん達の目的は、その戦闘が行われる前に聞いた話とのことです。
ひなのさんが話した内容のほかに、神浜の外から来た魔法少女たちが聞いたという話をまとめるとこのようになります。

・紗良シオリ・日継カレンの目的

ある物質を使用して因果量が多い魔法少女の素質を持つ少女を誕生させる。その少女へ自動浄化システムが世界に広がるよう願わせる。
願った後に急激に溜まる穢れはドッペルとして消化されるから願った本人も救われる。

しかしその過程で使用する物質へはrたくさんの「希望」を注ぎ込む必要があり、そのために沢山の穢れが発生する。その穢れをヒトへ押し付ける。

おそらくたくさんの人が死ぬ結果になるだろう。

 

「これが奴らから聞いた内容、そしてこれまでに奴らが開示してきた目的の内容をまとめた結果だ。

みんなが求める自動浄化システムを世界に広げようという考えはいいのだが、その過程で発生する願いを無理やりねがわせるという行為、そしてヒトへ呪いを押し付けるという考えは擁護できない。

私達は自動浄化システムを世界に広げる際の代償を最小限にさせるよう奴らを捕まえる。

ここに集まった魔法少女の中で、正直に奴らの考えが正しいと思う奴は静かにこの場を去って構わない。

私らの考えに縛り付ける気はないからな」

ひなのさんの発言に反応したのはミリタリーな見た目をした3人の魔法少女達でした。

「私らは別に奴らの計画はそのまま進んでもらって構わない。だが奴らにメッタメタにやられた過去があるからね。奴らを負かせるためにここにいるんだ。

悪いが残らせてもらうよ」

次に声を出したのは統一感のあるマスクをつけた魔法少女達がいる人達でした。

「私たちは貴方達神浜の魔法少女の指示を聞く必要はないわぁ。でも私たちの中から黒いオーラの魔法少女になって殺すしかない事態があったからここにいるのよ。

彼女達の対策について話すのもいいけど、まずは黒いオーラの取り方や纏ってしまう原因について聞かせて欲しいわね」

確かに日継カレンさん達と戦っている間に誰かが黒いオーラの魔法少女になったりしたらせっかく考えた作戦も破綻しちゃうかもしれないわね」

黒いオーラの魔法少女についての話題が大きくなって行きますが、実はこの話をする重要人物のななかさんがいない状態です。

誰が詳細を話せば良いか悩んでいる中、説明できると前へ出てくれたのがももこさんでした。

ももこさん、以前とは雰囲気が変わってしまいましたが、魔法少女に対してはいつものように優しく接してくれます。

そんなももこさんは、みんなの前でカレンさんを目の前にして私たちに話した内容と同じような内容を話し始めました。

聞いてたみんなはななかさんに聞かなければわからない内容だったので少々消化不良だったようです。

こうして神浜マギアユニオンからの報告が終わった後、鬼のようなツノが生えた魔法少女が話し始めます。

「二木市の魔法少女、紅晴結菜だけど、貴方達の主張には不足する点が存在するわ」

「何かしら」

「日継カレンにはシオリという魔法少女の他に、ピリカという魔法少女が居るはずよ」

「ピリカさんって」

結菜さんの発言に反応したのは私たちと静香さん、そして見滝原から来た魔法少女達でした。

「ピリカさんって、確か神浜マギアユニオンに入ってる子だよね」

「おいおい、何もしらねぇってのは怖いことだな。それ完全にスパイ活動されてたってことじゃないか。
つまりここ数日のお前らの動きは奴らに筒抜けだったってことだ」

「樹里、この場での言い過ぎは厳禁よぉ」

ピリカさん、他の2人よりも優しい雰囲気だったのに、あの人たちの仲間だったなんて。

じゃああの時かりんちゃんを追いかけたのって仲間と合流する口実を作るため?

「まあいいじゃないか、情報網が相手にダダ漏れだったとはいえ、紗良シオリを瀕死に追い込んだって実績は私らの中では一番大きな功績だ。

それにこれほどの人数だ。

黒いオーラの魔法少女があいつらが原因ってなら一時休戦であいつらをぶっ飛ばすのが最優先じゃないか?」

ミリタリーな見た目をした魔法少女が話を切り出していました。

「あなたは」

「西から来た博 三崎(はく みさき)だ。他に2人ダチがいるだけだが、戦いに関しては実力がある方だ。私らは神浜のあんたらに乗るよ」

「霧峰村の時女一族の代表、時女静香です。私たちも神浜マギアユニオンに協力します」

「見滝原の魔法少女も、神浜の魔法少女に協力するわ」

次々と協力する声が上がっていく中、二木市の魔法少女を含めた数グループは協力すると声を上げませんでした。

「協力しないからと言って何かあるわけではないわ。これはあくまで共通の敵を倒す共同戦線だから。でも、変に妨害するような真似は相手に隙を作る行為になるってことは理解してちょうだい」

これで大勢の魔法少女が参加した会議は終わり、協力してくれる魔法少女が集まった結果、明日の夕方に3カ所のポイントを攻めることになりました。
夕方に攻めるのは、明日は普通に学校がある日だからです。

1カ所ごとに合計20人以上魔法少女が集まる計算となり、ワルプルギスの夜を倒した時くらいの魔法少女が集まることとなります。

あの人達を倒すことができれば、お姉ちゃんを助けられるんだよね。

戦わないと解決できない結果は悲しいことだけど、今が戦わなくちゃいけない時、なんだよね。

 

 

3-1:BACK
レコードを巻き戻す:top page
NEXT: 3-3

【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-1 結んで、ひらいて

黒いオーラの魔法少女というドッペルに続く出会ったことのない魔法少女の形。

少なくとも神浜に近づかなければ出会うことはないとのことですが神浜にいけなければれば鹿目さんがいつ魔女化するかわからない日々が続くだけで心が休まる隙がない。

私たちはあの日以来、巴さんから神浜には近づかないようキツく言われています。

命の危険があるのもそうですが、いちばんの理由は人殺しをさせたくないからという理由。

黒いオーラの魔法少女を止めるためには殺す以外に方法がありません。

神浜にいれば安全かと思われたこの世界線に現れた新たなる危険分子。

私は二度と巡り会えないであろうこの時間を守るためにも、黒いオーラの魔法少女になった場合の安全な対処法を探しに時々神浜へ訪れていました。

神浜へ通うことで知ることができたのは、黒いオーラの魔法少女を助けることができる人は確かにいるということ、そして日継カレン、紗良シオリという魔法少女が何か知っているのではないかという情報が手に入りました。

魔法少女のSNSでも情報は流れてくるのですが、現場で聞くほうが信憑性がありました。

しかし神浜にいる魔法少女に揃って言われるのが、紗良シオリ達には手を出さないほうがいいという話。

噂によれば、彼女達と会ってしまうと黒いオーラの魔法少女にされてしまうとのこと。

黒さんとも情報交換を行っていたのですが、どうやら元マギウスの翼のメンバーで黒いオーラを纏った状態から助けられた魔法少女が多くいるという情報を入手しています。

今日はこの情報をある魔法少女へ伝えるために神浜へきています。

神浜へ調査に来ているうちに神浜では会ったことがない魔法少女によく出会うようになりました。

初めて会った時は神浜の魔法少女なのかと注意深く聞かれましたが、違うとわかってもらえると気軽に話すようになりました。

名前は大庭樹里さん。

お姉さんと妹さんがいる三姉妹らしく、神浜から遠く離れた場所からきたとのことです。

樹里さん達は紗良シオリさん達を探しているようで、シオリさん達を見つけたら教えるという約束をしてよく情報交換するようになりました。

今日は樹里さんと出会う約束をしているのですが、指定の場所へ行くと少し騒がしい雰囲気でした。

「おい!いい加減正気に戻れよ!」

「聞く耳持たずって感じねぇ。それに体とつながっている魔女みたいな生物、さくやが言っていたドッペルという現象ね」

「冷静に分析してる場合じゃないぞ長女さんさ!」

樹里さんと他大勢の魔法少女達は黒いオーラの魔法少女と対峙していました。

話を聞いている限り、どうやら黒いオーラの魔法少女は仲間の魔法少女のようです。

黒いオーラの魔法少女は背中からカカシのようなドッペルを出していて、カラスの姿をした使い魔を飛ばして攻撃していました。

加勢しようにも、わたしにはこの状況を穏便に治める方法を持ち合わせていません。

誰かが殺されそうな状態になったら、その時は最悪の手段を取ることにします。

いつでも動けるよう構えていると樹里さん達に動きがありました。

「わたしが殺すわ。このままでは救いようがない」

「・・・いいのか、あいつは虎屋町の、長女さんとこの仲間じゃないか」

「だからこそよ。貴方達に仲間殺しは、もうさせたくないのよ」

長女と呼ばれる魔法少女はその場から動こうとしない黒いオーラの魔法少女へ瞬時に近づき、大きな金棒でソウルジェムを砕きました。

周囲を飛んでた使い魔は次々に灰へ変わっていき、魔法少女だったものが倒れていました。

樹里さんはその場に膝をついて地面を殴りました。

「畜生、ドッペルってやつを出せば魔女化しないって聞いていたのになんだこれは」

黒いオーラの魔法少女が神浜に最近現れるようになったって話は聞いていたけど、こういうことだったのね。これは早急にことを済ませないといけないわね」

一旦戦いは終わったようなので私は樹里さん達の前に姿を見せました。

「ん、誰っすか」

「ああほむらか。さっきの戦い、見ていたのか」

「・・・ええ」

「貴方が次女に協力してくれてる暁美ほむらさんね。私はプロミスドブラッドの長女、紅晴結菜よぉ。さっきの状況を静観していたということは、貴方もあの状況を打破する方法を知らないのね」

「はい、すみません」

「なんだよ、収穫なしってことかよ」

「でも、黒いオーラを纏った後に助けられた人の居場所を掴むことはできています」

「え、それってあの状態になっても助かる見込みがあるってこと?

「どうやって助けてもらったかは、話を聞いてみないとわからないです」

「ならさっさと行こうぜ。絶対に助ける方法を聞き出してやる」

「でも少し確認させてください。みなさん、マギウスの翼という言葉に聞き覚えはありますか」

「マギウスの翼だと、二木市から魔女を奪った奴らじゃないか。まさか今回の件も奴らの仕業なのか」

変に深読みされてしまうのは予想の範囲内でした。

マギウスの翼を話題に出したのは、樹里さん達が妙に神浜の魔法少女へ妬みを持っているからです。神浜の魔法少女が他の街から妬まれる理由は魔女を集めていたこと魔女にならないシステムを独占している事くらいしか思いつきません。

私は樹里さん達へ場所を案内するためにはマギウスの翼のメンバーへ危害を加えない、脅迫しないという条件を出しました。

これも黒さん達へ迷惑をかけないためです。

しかし結菜さんと樹里さんは条件を守れないと断ってきました。

憎むべき相手と争うなというのは無理な話だとのこと。

いまはそう言っている場合ではないというのに。

しかし一人だけ条件を守っても良いという魔法少女がいました。

名前は笠音アオさん。

他のメンバーも首を横にしか振らなかったため、アオさんと一緒に黒さんの元へ向かうことにしました。

しかしこのまま別れても跡をついてくるのは容易に思いつきます。

「アオさん、少し手を繋いでいてもらえますか」

「え、いいけど」

私はアオさんの手を掴み、一定時間の間、時間を止めました。

「うそ、周りの時間が止まってる」

「手を離さないでついてきてください。離してしまうとアオさんの時間も止まってしまうので」

そう言って樹里さん達がいた場所から離れた後、歩きながら私はアオさんへプロミスドブラッドの目的を聞きました

プロミスドブラッドの目的は神浜市にいるという自動浄化システムの広げ方を知っている日継カレンと戦い、勝った暁には広がった自動浄化システムの所有権を譲ってもらうということ。

そして神浜の魔法少女へ利用料を支払わせるという目論見があると教えてもらいました。

なぜ、と問いかけると私たちと同じ苦しみを味合わせるためと言う回答が返ってきました。

二木市がどんな状況であったのかは分かりません。なので、否定するのもおかしなことでしょう。

しかし、考え方が間違っているというのは確かです。

黒いオーラの魔法少女もそうですが、二木市の魔法少女にも注意した方が良さそうです。

口を開かず移動する時間が長い中、私たちは黒さんが待っている大東区の廃墟へとやってきました。

「黒さん、欄さんお待たせしました」

「やあ、ほむらさんと、どちら様かな?」

「ちょっとそこで知り合った者でーす」

欄さんにはアオさんのことを神浜の外からきた魔法少女とだけ説明し、本題について早速話してもらいました。

今日呼んだのは黒いオーラの魔法少女について私たちなりに調べがついたからなんだ」

「え、でも神浜マギアユニオンのSNSでそんな話はなかったですよ」

私たちには元マギウスの翼で繋がった別の情報ルートがあるんだけど、そこでやりとりをしていたんだ。

そんな中で被害者となった彼女達が黒いオーラの呪縛から解かれたって話を聞いて、調べがついたってわけ」

「彼女達っていったい」

「私たちのことなの」

物陰からいきなり現れたのは、マギウスの翼のローブに似た服装をした魔法少女数人と緑と赤色の魔法少女でした。

緑色の魔法少女は宮尾時雨さん、赤色の魔法少女は安積はぐむさんです。

彼女達はマギウスの再興と魔法少女主義を謳うネオマギウスという組織を作る予定の魔法少女達でした。

しかしその勧誘中、糸を使う魔法少女の機嫌を損ねてしまい、痛手を追ってしまったとのこと。

その後日、数人のメンバーが黒いオーラに包まれて暴走したものの、ある騒動の中で黒いオーラが取れたというのです。

「ボクたちは暴れていた時の記憶は微かにある。でも、どうやって助けられたかはわからない」

「ただ一つ言えるのは、助けてくれた人はドッペル5体の攻撃を防げるくらい凄い人ってだけなの」

「他に特徴はなかったわけ?姿とか、魔力反応とか」

「実は助けられた時のパターンが2種類あるんだ。ひとつはなんの痕跡も残さず助けられているパターン。

もう一つは、助けられた時に集団の魔法少女が目の前にいるパターンだ」

欄さんがいうには、はぐむさん達が遭遇した助けられたパターンよりも、集団の魔法少女が目の前にいるパターンの方が痕跡を辿りやすいとのことです。

なんでも、突然現れて突然助かっていたパターンは、魔力反応が一切なかったとのことです。

神浜には既に助ける方法が2パターン存在する。でもその方法が広く知れ渡っていないのはなぜ?

「複数人に助けられた場合には、決まって南凪区の施設で目を覚ましたって話を聞いているよ。でも看病してくれたのは名も知れない一般人みたいでね、誰がどう助けたまでは私たちでは知ることができなかったよ」

「でもね、助けられた人の中に神浜マギアユニオンのリーダーと親しい人がいたみたいでね、近々やる大きな会議の中でいろいろ報告してくれるみたいなんだ。

何でも、一部の人達が紗良シオリっていう日継カレンの仲間を瀕死に追い込んだ結果報告もされるとか」

「あの魔法少女を、瀕死に?!」

アオさんはポーカーフェイスで話を聞いている中、紗良シオリという魔法少女の話が出た瞬間、表情を変えました。

「やっと違う表情をしてくれましたね。アオさん、知ってることを教えてもらえないでしょうか」

欄さんが問いかけますが、アオさんは黙ったままでした。

「貴方の都合は聞きませんが、今は手を取り合うべきです。紗良シオリと日継カレン、彼女達を野放しにしておくと、誰のためにもならないと思うんです。

もちろん、貴方の仲間も」

「どうして彼女達ばかりを敵視するの?」

「黒いオーラの魔法少女になったメンバーと時期、その中心にある事象、それは

“日継カレン達と接触していること”

今私たちの見解としては、彼女達によって黒いオーラの魔法少女が誕生してしまったと考えています。

これで理解できましたか」

「…少しね」

「協力してもらえるのであれば、会議の開催場所を伝えます。ほむらさんには後で送っておきますね」

「はい、ありがとうございます」

欄さんは冷静に話を進めてくれました。

マギウスの翼の白羽根として活動していた彼女は、元から戦う素質があって、影ながら多くの人に慕われていたのです。

そんな彼女がマギウスの翼に参加していた理由は、魔女化しない世界にするためにでした。
あそこまで冷静に行動ができるなら、神浜マギアユニオンでも活躍できそうなのに。

私は建物を出た後、アオさんに問いかけました。

「会議に参加すれば多くの情報が手に入るかもしれません。それなのに、まだ納得できないんですか」

「私の中では納得してる。でも姉さん達を納得させることはできない。欲しいと思う情報も不確かで、参加すれば必ず私たちの目的を果たせるとも限らない。
そんな賭け、誰も乗らないよ」

「伝えてみたらどうですか、自分の意思を」

「無理だよ。私は三女、末っ子で一番弱い。姉さん達に押し切られて終わりだよ」

年上や実力が上の人に意見を言うのはかなりの勇気が必要。私も巴さんへ何か意見を言うのは躊躇していた。

でも、実際は巴さんも求めていた。遠慮のない私たちの意見を。

そのおかげで巴さんは立ち直れて、今ではみんなで魔法少女の宿命に立ち向かえている。

偶然かもしれないけれど、過去に繰り返した世界に比べたら、少しわがままに立ち回ったからここまで来れたのかもしれない。

アオさんも、伝えなきゃ間違った方向に。

「少しはわがままな態度を見せてもいいかもしれませんよ」

アオさんは何も話してくれませんでした。

「私、近くの駅で待っていますね。1時間くらい待つので、その気があれば、駅まで聞きにきてもらえますか」

アオさんはしばらく私の目を見た後、話しはじめました。

「来てよ、次女と対等に話せたんでしょ。うちの場合、長女さんよりも次女さんの圧で押し切られるんだよね。
フォローしてよ」

「アオさんが、参加を心から望んでいるならフォローしますよ」

そう言って結局私は二木市の魔法少女達のアジトまでついて行きました。

入り口の扉を開くと、そこには樹里さん達が立って待っていました。

「ったく、遅いぞ」

「でも驚いたわ、ここまで暁美さんを連れてくるとは思わなかったわ」

「アオさん、これはどういうことですか」

少し周りがざわついた後、アオさんが一歩踏み出して話を聞きに行った結果を話しはじめます

神浜の魔法少女は紗良シオリ達を討伐することに専念していること。彼女達の行いが他の魔法少女にどのように影響していくのか。

そして、情報共有を行う会議に参加しないことがどのような意味を持つのか

アオさんは聞いた結果をねじ曲げることなく素直に話しました。そして。

「私は会議に参加した方がいいと思う。神浜の魔法少女の方が彼女達のことをよく知っているみたいだし、それに他の地域からきた魔法少女も招待しているみたいなの。

神浜に協力するかは別として、情報収集って意味で参加した方がいいんじゃないかな」

「ほう、それが実際に見聞きしてきた答えか。神浜の奴らに何か吹き込まれたんじゃないよな」

「そんな事はないよ」

「本当か?ドッペルってのは奴らが考えたシステムから生まれるやつだ。それを利用して混乱させてるだけじゃないのか」

「アオさんがしっかり説明したはずです。神浜の魔法少女にも被害が出ているって事、そして被害にあった人は揃って日継カレンと出会っていると」

「お前に言われなくてもわかってるっての!」

「ならば!」

「やめなさい、次女が癇癪起こす理由は大体わかるわ。それが本当ならば私たちはいつでもああなってしまう可能性を孕んでいることになるからね」

樹里さんと調査をしている時に聞いた日継カレンと戦った事。

大勢で挑んでも歯が立たず、今回はそのリベンジに来たという話も。

「そんな状況下で神浜の魔法少女と争うのは、タイミングが違うと思うんです。そうじゃないと、日継カレンを倒す前に貴方達が折れちゃいます」

樹里さんはその場にいじけて座り込んでしまいました。

「貴方に言われなくても私たちは理解しているわ。日継カレン達を倒すのが最優先事項だという事はね」

「じゃあ!」

「私たちプロミスドブラッドもその会議に参加するわぁ。異論がある子はいるかしら」

「奴らの下につくってわけじゃ、ないんですよね」

「もちろんよぉ。神浜の魔法少女が持っている情報を根こそぎ聞いて私たちは独自の行動をとる予定よ。
次女もいいわね」

「・・・いいさ。なんか余計なことしてきたら我慢はできないがな」

「次女さんは我慢をもう少し覚えた方がいいんじゃない?」

「うるせーよ、らんかは」

「はいはい」

二木市の魔法少女も参加してくれるとのことなので会議の開催場所をスマホの画面で教えました。

場所は鏡屋敷の大広間。
果てなしのミラーズがある場所で、日継カレン達が近づかない場所だとされているからです。

開催は明日。
とても急ですが、それでも鏡屋敷に入りきらないくらいの魔法少女が集まると予想されているらしく、まともに進行できるのか不安なところもあります。

情報を伝え終わると結菜さんに話しかけられました。

「暁美さん、次女と対等と話せるなんて、強い心を持ってるのね」

「最初は怖い人かと思ったんですけど、接しているうちにお話ししやすい方だと感じてきましたので」

「次女さんからは暁美さんは強いって聞いたんすけど、本当っすか?」

「えっと」

一気に周りから問いかけが飛んできました。話してみると神浜の方達と何も変わらない同じ魔法少女だと感じました。

少々戦いを好む方もいますが、ただ魔法少女を殺すことが目的ではないのだなと分かりました。

しかし、神浜の魔法少女は許せないという意思は貫いていて、今後仲良くして行くには難しそうだと思いました。

私は皆さんと別れて見滝原の帰路についていました。

もう夕方近くだけど、会議の話はみんなにしておかないといけない。

どうやってみんなに伝えようかと悩みながら改札を出ると、腕を組んで待っている巴さんがいました。

「用事があるって言っていたけど、この時間に着いた電車は確か神浜から来る電車よね」

完全に待ち伏せされていました。

「神浜へいま行くのは危ないって伝えているのに、ホント暁美さんは話を聞いてくれないんだから」

「すみません、でもどうしてもみんなに伝えたい話があるんです」

「私は反省してくださいって話をしてるの」

「はい、ごめんなさい」

「全く。それで、言いつけを破ってまで欲しかった情報はなんだったのかしら」

この後、巴さんに神浜で行われる会議の話をすると、みんなで行くことを条件に参加することとなりました。

鹿目さんや美樹さん、佐倉さんも参加することとなり、私たちは揃って神浜へ行くことになりました。

私たちがあまり拘らなくなってから大きく変わってしまった神浜の事情。

この時間軸を守るためにも、私は彼女達を止めないといけない。

それが、鹿目さんを守ることになるから。

 

 

2-20:BACK
レコードを巻き戻す:top page
NEXT: 3-2