【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-3-1 人になった者と人でなし

容器から出てきたキュウべぇをディアがクローン体の調整を実施する部屋へと連れて行った。

そこで私はキュウべぇへ薄着のシャツを着せ、髪を乾かし始めた。

キュウべぇの体の色に合わせて髪は白髪にしていて、ディアのDNAを流用しているせいか、長髪でありながら触り心地はディアそっくりだった。

髪を乾かしている間、キュウべぇは表情を変えようとしなかった。
感情がない生き物だったし、感情一つ見せないのは想定内のことだ。

乾かし終わった髪を、私はツインテールになるよう整えた。

「どうだ、元の姿に似せてみたが」

「ボクは見た目なんて気にしないよ」

「そうかい」

私はキュウべぇをそのままの姿で私の部屋へと連れて行った。
裸足のまま歩かせたがそれでも特に表情は変えず、私の部屋へたどり着くまでは私の靴音とキュウべぇの足音しか聞こえなかった。

扉の鍵をかけて私が椅子へと座ってもキュウべぇは何も話し出そうとせず、その場にじっと立ったままだった。

「座ればいいじゃないか。いつもの体でも話すときくらい座っていただろう」

キュウべぇはしばらく足元を見て考え込み、最終的に座りはしたのだがあぐらの姿勢だった。
ディアはあぐらで座る癖はあるが、あいつのデータは根こそぎ抜いておいたはずだ。
動物が人間になったらあぐらの姿勢をとりやすいとでもいうのだろうか。
無駄に観察項目が増えてしまった。

あぐらの件についてメモを取り終えると、私はキュウべぇへと質問をしていくことにした。

「気になっているんじゃないか、どうしてその体に入れることができたとか、何が目的なのかとか」

「ボクは現状確認に忙しいんだ。

元の体に戻れないし、個体数だってここにいるボク1体以外に確認できない」

私はしばらくキュウべぇを見つめていると、何かに気づくようにハッとしてこちらをみた。

「書き換えたというのか、ボク達が使う体の情報を」

「最初に見せる表情にしてはいい感じだな。

お前達の中枢へ直接アクセスはできていないが、お前達の個体をいくつか捕まえて体への情報の出入りを観測しているうちに体へ情報を入り込む仕組みは解析が完了した。

まあ、全ては魔法少女が使用する波形観測の副産物ではあるが」

「だからと言って入れ物を変えることができるなんて」

「それは私が驚くことだ。

一個体の意識だけ人の体へ入れられればいいと思っていたが、まさか制御権丸ごと移行されていたなんてね。

他者に観測されることは想定できなかったのか」

「人類が僕たちに干渉できるだなんて想像もしていなかった。

ボクにだってわからない、こんなことになるだなんて」

キュウべぇが困ったような動きをするのは新鮮であった

「どこかで自分たちは人類よりも上位の存在であるとおごっていたのだろうな」

「ボクたちにそんなものはない」

「だが人類はここまで到達することができた。
こんな可能性もろくに予見できないならば、お前たちは十二分に無意識な傲りを持っていたのだろうよ」

キュウべぇは無表情のまま真っ赤な目でこちらを見つめていた。
きっと今までの流れが煽りなのだろうとこいつは理解していないのだろう。これは理解できなきゃ人間も同じ反応をするか。

「それに、お前をその体に入れた目的はしっかりある」

「その目的というのは?」

「お前、利用する前に感情について調査を行ったんだろう?本当に人類に頼るしかなかったのか」

「ボクたちに感情というものが出るのは稀な精神疾患でしかない。
意図的に発生させられるものでもなかった。だが、宇宙を探し回り、生まれた生命誰もが感情を持つ君たちを見つけたんだ。
協力してもらう以外に方法がないだろう」

人の感情についての不思議はいまだに解決されていない。
感情を持つ人自身でさえ、感情というものを何故持つのかをはっきりと理解できていない。

「そんな不確かなものによく手を出したな」

「宇宙の寿命を延ばす必要があったんだ」

こいつらは本当に徹底的に探究を行ったのだろうか。ならば、なぜこれを試さなかったのかが気になる。

「それで目的なのだが、人の体へ入れば感情が生まれるのではないかと思ってね」

「人の体にだって?」

「感情というものを自由自在に操れるのは全ての生物の中で人間だけだ。
人間以外の動物も感情というものは存在するらしいが、人間ほど多彩には持ち合わせていない。

魂と体で分離して考え、魂が感情を生み出していると仮定すれば他の動物に感情があってもおかしくない。
だが、なぜ人の魂にだけ多彩な感情が与えられていると言えるのだろうか。魂は皆等しい存在ではないだろうか。
魂の時点で優劣が存在するならば、それはこの世界を作りだした存在の欠陥だといえよう。

魂は皆等しいと仮定し直そう。感情を生み出せるのはその魂が入る器に影響されてではないかと。

ならば、多彩な感情を生み出すであろう人の体に、感情を持たない魂を移せば多彩な感情を手に入れるのではないか。

これはその実験だ」

「なんてことを思いつくんだ。

そんなことだと証明されればボク達は」

私は腰につけていた拳銃を取り出して、躊躇なくキュウべぇの左腕を撃った。

腕を銃弾が貫通し、キュウべぇの左腕からは血が出てきた。

キュウべぇは苦しそうな表情を見せ、痛みに耐えようと体を震わせていた。

「なんだこれ、君たちが言う、痛覚ってやつなのか」

「今は私と対等だと思ってくれるな。」

私はもう一発キュウべぇの左腕へと撃ち込んだ。

今度はキュウべぇは悲鳴をあげて左腕を押さえていた。

キュウべぇの悲鳴、新鮮で少し嬉しくなってしまった。

私がキュウべぇの額に銃口を当てると、キュウべぇは恐怖を覚えたような表情をしていた。

「今お前は恐怖の感情を覚えた、違うか?」

「そんなの、知らない。

この逃げたいと思うこと、それが恐怖だというのか」

私は拳銃をしまい、救急箱を取り出した。

「もっといろんな感情を覚えるといい。

これを使え。止血と鎮痛を一度に行える救急キットだ」

その救急キットを使用したことで、キュウべぇの体の震えはやっと止まった

「人の体というのは欠陥だらけで不便すぎる」

「知恵を得た代償だ。100年生きられるだけまだ十分だろう」

私はここまでの表情変化についての経緯を記録した後、私的なことをキュウべぇへ聞いた。

「お前はヨーロッパで活躍した錬金術師のことを知っているか」

「錬金術師と呼ばれた魔法少女はたくさんいたが、それがどうしたんだい」

部屋の監視装置は停止してあり、盗み聞きされる隙はない。

今なら聞いても問題ないだろう。

「聖遺物争奪戦に参加していたという”キミア“という女に覚えがないか」

「キミアか。魔法少女になることを拒み続けた多くの錬金術の祖となった人物だね。

確か君も近くにいたね、カルラ」

「あいつは今どうしている」

「死んだよ。

世界を変えるために聖遺物を大量に行使して、呪いに耐えきれなくなって暴走してね」

「そうか。あいつはもうこの世にいないのか」

 

キミアとの付き合いは昔の出来事になる。

錬金術というものが周知されるよりも前の時代、元素という存在が一部の哲学者からもたらされ数百年したころ。
あの時代にはあり得ないと思えることを実現させようと試みる者が増えていた。
私もその1人だった。

すぐに火をつけられる道具があると便利だろうと考えた私は、火が付くものについて調べるようになった。
そんな中、酒を飲んでいる男がろうそく周辺に酒をばらまくと、その酒を伝ってその酒場が一気に燃え盛ってしまったという事件を聞きつけた。
そこからヒントを得て、私は火をつける液体を見つけ出し、その町では一目置かれる存在となった。

そんな私の話を聞きつけて、ある人物が私を訪ねてきた。
その人物の名は忘れてしまったが、彼は錬金術師だと名乗っていた。

私はその錬金術師に連れられて、学院と呼ばれている場所で知恵をつけていくこととなった。

あらたな実験を行うために、私は素材をとりにある錬金術師の元へと訪れていた。

そこにはその錬金術師へ何かを教えている少女がいた。

「あの、頼んでいたものを取りに来たのですが」

「なに、今が肝心なところなんだから静かにしていてちょうだい」

見知らぬ少女にそう言われて何をしているのか気になった私はそっと何をしているのか観察した。

どうやら毒性を取り除いて良質な回復薬品を作る術の最中だったようだ。

その少女が教えていたのは複雑ながらも最適な方法だった。

とはいえ、そんな方法であれば生成結果は想定よりも少なくなってしまうことが私には理解できた。

中継させているアレンビックの行き先をよく冷やした容器にして結露させる量を増やしたほうがいい。

気化して逃げていく分が勿体無い」

横槍を受けてかその少女はムッとしてしまった。

「なに、私のやり方にケチをつける気?」

「最適な方法を助言したまでだ」

「なんなの、ここの創設者にケチをつける気?」

「創設者?」

「まあまあやってみようじゃないか」

教えられていた錬金術師は私の助言を取り入れて時間をかけてのぞみの回復薬ができていた。

その結果を見て少女は不機嫌そうな顔をして私に迫ってきた。

「この屈辱忘れないから。

あんたの住んでいる場所教えなさい!」

「私はここに触媒をとりにきただけだ。

来たいならついてくるといいよ。

で、あんたの名前は?」

「ここに通っていて私の名前も知らないの?

キミアよ」

これがキミアとの出会いだった。

後で知った話だが、ここらあたりで錬金術師という存在を生み出したのはキミアらしく、その豊富な知恵を前にして多くの術師はキミアとの会話を怖がったらしい。

確かにキミアの知識はすさまじく、世界を変えられる規模のものだってあった。
だが、そんな天才にも知識の穴はある。
彼女の知らない小技を口出ししているうちに、彼女は私の負け顔を拝みたかったのか私に付きまとうようになった。

負けず嫌いのキミアは私にいつも付き纏ってきて、わたしはいよいよめんどくさくなってきた。

「今日は魔法石の研究を行うんじゃなかったのか。
あれを扱えるのは一部のものにしか扱えないってのが不思議だがな」

「そうよ・・・だから、あんたに会わせたいやつがいるのよ」

「キミア?」

そう言われてキミアに連れられた私は、白い生き物の目の前へと連れられた。

「こいつは、なんだ?」

「ボクはキューブと呼ばれているものだ。
君たちには魔法少女の素質がある。とはいえ、君たちは特殊な生い立ちをしているようだね」

魔法石を扱える存在、それは魔法を扱える魔法少女のみが扱えるものだった。
魔法少女ではない私たちが扱えたのには、私たちに魔法少女の魔力が受け継がれているからだという。

「魔法少女は短命な子が多いが、その中で子を残すものは少なくない。
君たちに魔力が備わっているのはそのせいだろう」

私の父と母は普通の人間だった。母親は魔法少女なんてたいそうな存在でもなかった。
私はいったい何者なんだ。

その時は後にキュウべぇと呼ばれる存在の誘いを私たちは断った。
もちろんそれは魔法少女になるとどうなってしまうのかを徹底的に聞いたというのもあるが、願いひとつで何もかも変わってしまうことが気にくわなかった。

あれからしばらく、私たちは魔法少女のことは考えないようにした。

のんきに研究の日々を過ごしている間に、キミアは錬金術師の祖としていつも以上に崇められるようになった。

キミアと記した錬金術の書物は多くの錬金術師が重宝するものとなり、錬金術師ならば持っているのが当たり前だと言えるくらいの書物も含まれていた。

私達はしばらく探究を共に歩んでいたが、ヨーロッパでの出来事をきっかけにキミアは変わって行った。

賢者の石の完成

万能の秘宝と呼ばれる賢者の石を最初に完成させたのはキミアだった。

しかしその作成方法は、人の命を使うものだった。

私も教えられた通り山間の集落へ魔法陣を施して実行すると人々の命が合わさって真っ赤な賢者の石が完成した。

キミアは得意げな顔をしていたが私は一発分殴った。

「人の命をなんだと思っている。

こんなやり方、禁術になるのは明らかだ!」

「ふん、人の扱いなんてこんなものでいいさ」

「何を、言っているんだ」

「人なんて魔法少女を前にして何もできない。そのくせこの世界を支配しようだなんてさ。

カルラ、私は人に可能性を見出せなくなった。私は魔法少女に可能性を見出してみるよ」

「お前、まだ魔法少女の存在を気にかけていたのか」

「お前も魔法石を扱えるならば、魔法少女の末裔だということだ。
ここまで他の人と比べて肉体の劣化がお互いに遅いのもおかしいと思わないか」

「それはいろんな延命のための薬品を自分たちの体で実験した代償であって、血に混じった魔力の影響だなんて」

「人が学ぶには寿命というものは邪魔過ぎる。
カルラもどうだ、寿命なんて存在しない魔法少女についてもっと調べてみないか」

「そうかい。私はまだ人間を見限る気はない」

 

そしてジャンヌという存在がヨーロッパを救ったという頃、私はキミアと別れる日がやってきた。

キミアが勝手に私の体へ賢者の石を埋め込み、不死の存在へとしてしまった。

お揃いだと言っていたからあいつも自身に施したのだろう。

私は怒りのあまりキミアの胸ぐらを掴んでしまった。

「お前は、そこまで外道に成り下がったか!

不死になることがどれほど恐ろしいことか、錬金術師ならば理解しているはずだ!」

「そうさ。悠久の時を生きて見定めようじゃないさ。

魔法少女と人、誰がこの星の主導権を握るに相応しいかさ」

「そうか。

私は人の可能性を諦めたわけではない。そう伝えたはずだ!」

私はその場を去る準備を始めたが、キミアは優しそうな表情を見せるだけだった。

「ここからは別々の探究を進めるとしよう。

さよならだ、キミア」

「ああ。道は違えど、親友であることは変わらないでくれるか」

「そうだな、お前と親友という関係は、変えないさ」

それから私は身を潜めながら人間が持つ障害の一つである言葉の壁を解決する方法を探し、脳波の研究を行うに至った。

世界の技術力が上がり、私は錬金術師ではなく研究者として身を潜めるようになった。

そんなある日、久しくキミアから手紙が届いた。

どうやって居場所を突き止めたのか。

”私は悲願を成し遂げる準備ができた。

これが成功したら、お前よりも先に、私の考えが正しかったという証明になるだろう。

聖遺物

これがあれば、世界中の人々を断罪できる。

全てが解決した世界でまた会おう“

聖遺物

そう、あの頃は魔法少女の間では聖遺物を争奪する動きが強くなっていた。

魔法少女の魔力が籠ったそれを使えば呪いが降りかかる。

そんな危険なものに可能性を見出したというのか。

あれからキミアとの接点はなかった。

だが死んだとわかった今、聖遺物の使用は失敗だったのだろうと悟った。

「まったく。ろくでなしの最後を遂げたか」

「でも彼女は魔法少女の弟子を取っていたね」

「あいつが弟子を取るとは、少しは心境の変化があったのか。

それで、その弟子というのは、生きているのか」

「今生きているのは日継カレン、紗良シオリ、ピリカだね」

その3人、今も生きているというならどこかで会ってみたいものだ。

まあ今はいい。キュウべぇの観察を優先しよう。

「さて、どこまで表情を変えられるか試しに行こうか」

私はキュウべぇを部屋から連れ出し、喜びの感情を教えようと思った。

どう覚えさせるかは、これから考えるさ。

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-2-19 手を伸ばした先にある結果は

さつきさんが開いた扉の先には3本の糸しかつながっていない魔法少女姿のういと、たくさんの糸が絡まっている長身の魔女がいました。

魔女は細身で銀色の肌、頭部と思われる部分はピンク色のパールが一つ埋め込まれていました。

体は細く、爪部分は鎌のように鋭くなっていました。

「これじゃ魔女の結界と代わりないわね」

「あれの動きを止め続ければいいんだよね」

「そうよ。あれに奪われた主導権を妹さん自らが奪い返すまであいつの注意をこちらに向け続ける必要がある。変に邪魔が入ってしまうと、仮に妹さんへ主導権が戻ったところで魂とのつながりがほとんどないままとなってしまうかもしれない。

つまり、ほぼ植物人間状態になってしまうかもってことよ」

「じゃあぼくたちは待つしかないんだね。

ういが元に戻るまで」

「そうよ。いろはさん、頼んだわ」

「わかりました」

私はういに向かって走り出しました。

その後ろにワルプルガさんもついてきました。

「え、危ないですよ!」

「最初に声をかけるのは私のほうがいい。お母さんに声が届くのは、今は私の声だけだから」

そういえばういはずっとワルプルガさんに対してはずっと接する態度が変わっていなかった。

なんでだろう。

なぜかはわからないけど、話を少しでも聞いてもらうために最初からいてもらったほうがいいかも。

でも危ないし、私が抱えていけばいいか。

「それじゃあ」

私はワルプルガさんを抱えてういがとらわれている場所へと向かいました。

ういのもとへたどり着くと、急に周りが闇に包まれました。

外部から見ると私たちは暗闇に包まれてから消えていたようで、私とワルプルガさんが消えたことにやちよさんは驚いていました。

「2人が消えた?!」

「妹さんの魂への接触を開始したんですよ。
こちらではやるべきことをやりましょう」

さつきさんは無数の札を呼び出し、ういと魔女との間に札の壁を生成しました。

「今あなたを妹さんへ触らせるわけにはいかないのよ」

魔女は爪でその壁を破壊しようとします。

そんな腕に対してやちよさんたちは攻撃をしかけて魔女を壁から離そうとします。

「あなたに邪魔はさせないから!」

 

外でみんなが戦っている中、どうやら私たちは別の空間へと飛ばされてしまったようです。

その空間の中心と思われる場所にういはうずくまっていました。

私が声をかけようとすると、ワルプルガさんは私を止め、ゆっくりとういのところへと歩いて行きました。

「お母さん、こんなところにいたんだ。

探したんだよ?」

「ワルプルガ、ちゃん…」

ういの声は弱々しく、なかなかに聞き取りにくいものでした。

「まだこんなところに居続けるの?」

「外の世界は嫌だ。

変わるのは仕方がないけれど、今の変わり方は嫌だ。変わったいまを見たくないから私はここに居たい」

「私は困るよ」

「放っておいてよ」

ワルプルガさんは少し困った顔をしたあと、再び話しかけ始めました。

「お母さん、実は会わせたい人がいるんだ」

「会わせたい人?」

そう言われた時、私は我慢できずういの名前を声に出してしまいました。

うい

その声を聞いた瞬間にういの顔は怯えた顔となり、恐る恐る私の方を見て私の存在を認識すると悲鳴をあげて頭を抱えてしまいました。

「いやだいやだいやだ、あんなのお姉ちゃんじゃない、優しいあのお姉ちゃんじゃない」

想像もできない反応をされて私は深く傷つきました。それでも、私はういへ言葉を届けようとしました。

「う、うい、お姉ちゃんの話を」

「そうだよ、本当のお姉ちゃんは私の記憶の中にいるお姉ちゃんだ。

あれはお姉ちゃんじゃない。違う違う違う!」

壊れたように何かを唱え、涙を流しながら笑みを浮かべるういの姿がそこにはありました。

見たことがない酷い顔。

私は今すぐにでも抱きしめて幸せにしてあげないといけないという込み上げる思いを抑えながら、どうすれば声を聞いてくれるか考えました。

そうしているうちに何かを打つ音が聞こえました。

そこには、ういの頬を叩いたワルプルガさんの姿がありました。

「ワルプルガちゃん?」

「過去にばっかり逃げて今を見ないお母さんなんて嫌いだよ!」

「私が悪いの?
人を平気で殺す魔法少女だけになった今の世界で、どうやっていままで通り過ごせるっていうの?」

「いろはさんはその答えを見つけ出してきた。

だから聞いてあげて。お母さんの考えている“今のいろはさん”とは印象が違うはずだから」

ういの発作のような何かは収まり、やっと私はういに伝えたいことを伝えられるようになりました。

「うい、まずは世界がどうなっちゃったのかを教えるね」

私はアンチマギアプログラムの告知がされた時の映像をういの脳内へテレパシーで送りました。

「これは、想像のお話?」

「ううん、事実の話だよ。

世界中で魔法少女が囚われる世の中になっちゃって、私たちは人へどう立ち向かおうか考えている最中なの」

「そんな、人と魔法少女は一緒に生活することができなくなっちゃったの?」

「そんなことないよ」

私は今度は竜真館でのさつきさんとキクさん、連れてきた3人の人の子どもがひなのさん達と楽しく過ごしている様子をういに見せました。

「この子達は、魔法少女じゃ、ない?」

「そうだよ。

この子達は他の魔法少女達と一緒に暮らしている魔法少女ではない子達でね、あの放送を見た後でも魔法少女達と笑って過ごせているよ。
魔法少女のみんなも3人を受け入れていて、みんなが幸せになれていたよ。

世界中のみんなってことにはならないかもしれないけど、人間社会に染まりきっていない子達とは一緒に暮らしていくことができるかもしれない。

人と一緒に生活する将来は、ありえないことはないってことだよ」

「お姉ちゃんも、そんな将来を目指しているの?」

「そうだね。そうなったほうが最適だなって思って行動してるよ」

「そうか。まだ、頑張ろうって思える光景があったんだ」

ういの目は輝きを取り戻していきました。

わたしはそんなういに手を差し出しました。

「だからさ、うい。希望溢れる世界に戻ろう!」

ういがこちらに手を伸ばそうとすると目の前にいるういとは違うういの声が聞こえてきました。

「本当にいいの?そんな簡単に信じちゃっていいの?

みんながみんな人との共存なんて望んでいるはずないのに

お姉ちゃんの嘘や妄言かもしれないのに」

別の方向から聞こえてきたういの声の方向を向くと、ういの記憶を見たときに出てきたういになり替わろうとする魔女がいました。

「あなたは、私に変わった私」

「あなた、あの魔女の!」

その子が代わりになってっていうから変わってあげているだけだよ

人殺しの姉もどきさん」

私は魔女とういの間に入って魔女に向けて武器を構えました。

「どうやって入ってきたの。外ではやちよさんたちが対応しているはず」

「ここは私の空間だよ?

“環うい”のほとんどを手に入れた私がここにいるのは当たり前でしょ?」

「そんな」

まさか、ういの主導権を奪っているってことはわかっていたけど、魂の中に入り込んでいただなんて。

「外の光景を見て耐えられるかな?

どうせ神浜の魔法少女達は、人なんて簡単に殺せちゃうんだから!」

そう言って魔女は何処で手に入れたかわからない神浜を奇襲してきた特殊部隊の兵士たちを魔法少女達が殺していく様子をういに見せました。

ういの目からは再び光が消えていきました。

「あなたは!」

ういがするはずがないような悪い顔をしてあの魔女はういの心を潰そうとしてきます。

ういは心が揺らいでしまったようで、私に伸ばそうとした手を引っ込めてしまいました。

そんなういの手をワルプルガさんが握ります。

「ワルプルガちゃん…」

「誰かを信じてあげないと、お母さんのことを誰も信じてくれないよ。

それに、動き出さないと何も始まらないんだから」

「ワルプルガさん」

ほんと、初対面した子どもっぽい様子とは大違いの態度をワルプルガさんは見せてくれます。

「へんなことを吹き込むな!

動いたって変わらない、変えられない!誰も聞き入れてくれない!

何をしたって無駄なんだよ!」

魔女は怒鳴り始めてしまいました。

「だとしても」

うい?

そこには目に光が戻ったういがいました。いったい何があったの?
ワルプルガさんが何かやったの?

「聞き入れてくれる人が少ないとしても、

動かないよりは、動いたほうが成功する可能性は大きいはずだから。

だから!」

ういのソウルジェムは輝き出し、真っ暗だった空間は花畑が広がる光景へと変わっていきました。

そして気がつくと魔女がいる空間にいて、わたしとういはワルプルガさんと手を繋いだ状態で立っていました

「お姉さま、うい!」

「無事なようで何よりだ」

灯花ちゃんとねむちゃんの安堵する声を聞いて、戻ってきたことを実感した後に私はういに話しかけました。

「さあ、この一件に決着をつけないと」

「うん!」

私はういと手を繋ぎ、魔力を共有して白く輝くボウガンがわたしとういの間に現れました

そして魔女を取り囲むように出されたういの凧へボウガンが装着されていきました。

その凧達は次々と魔女につながる魂の糸を切っていき、切られた糸は次々とういに繋がっていきました。

「へぇ、そうやって戻っていくこともあるんだ」

さつきさんのそんな呟きが聞こえた頃には魂の糸はういに全て繋がっていました。
そのあと、ういが私に話しかけてきました。

「私は人と魔法少女が争う今の世の中を受け入れられない。
でも、そんな世の中を変えようと動いている魔法少女達がいる。
それなら、私も少しは頑張らないとって思ったの」

「じゃあ、ワルプルガさんが何かやったわけではなく」

「わたしが、自分の意志で現実を受け入れた。ただそれだけ」

ういは糸が一本も繋がっていない魔女にボウガンを向けます。

「私の代わりをしてくれて、ありがとう」

ういがそう言うとボウガンが放たれ、魔女に命中したところから花びらに変わっていき、魔女は消えてしまいました。

魔女の結界内は眩しい光に包まれていき、気がつくと元いた部屋に戻っていました。

「…戻ってきたのね」

「うい、元に戻れたんだよね?」

灯花ちゃんの問いに対してういは笑顔で答えました。

「うん、もう元通りだよ!」

「よかった〜」

嬉しさのあまりに灯花ちゃんはういへ抱きついていました。

わたしはさつきさんへ感謝を伝えないとと思ってさつきさんのところへと行きました。

「さつきさん、やっと目的を果たせました。

ありがとうございました」

「いいのよ。

こちらだって助けてもらっちゃったし、やっとお返しできてよかったって思っているくらいです。

妹さん、戻ってよかったですね」

「はい!」

「それじゃあ、やっと目的を果たせるんだよね?」

灯花ちゃんのそんな話を聞いて、私は無意識にワルプルガさんの方を向いてしまいました。

そう、ういを元へ戻したのもワルプルガさんに自動浄化システムを広げるよう願わせるため。

「うい、あのね、ワルプルガさんのことなんだけど」

「わかっているよ」

「ワルプルガさん?」

「私が願えば、世界中の魔法少女が魔女化の恐怖から解放されるんだよね?」

「理解はしているのね。

あなたは願ってしまってもいいの?魔法少女がどういう存在なのか、世界でどんな立場になろうとしているのかも理解しているはずよ」

やちよさんの問いかけに対してワルプルガさんは顔を縦に振りました。

「いろはさんがお母さんに見せてくれたあの明るい光景、そんな光景が当たり前になるように、私もお手伝いできないかなって。

だから、願ってもいいよ。

お母さん、いいよね」

ういはワルプルガさんへ笑顔で答えました。

「ワルプルガちゃんが覚悟できているなら、いいよ」

やっと、一番解決しないといけないことが解決する。

そんなワクワクで胸いっぱいにしながら私はキュウべぇを呼びました。

「キュウべぇ、いるんでしょ?」

でも、キュウべぇは姿を現してくれません。

「おかしいなぁ。いつもひょっこり出てくるのに」

「外へ出てみましょう」

やちよさんの提案に乗って外でキュウべぇを呼んでも姿を現してくれません。

「どうして、どうして姿を現してくれないの?」

「あら、どうしたのぉ?」

結菜さんが私たちに声をかけてきました。

「もしかして環ういを元に戻せた感じっすか?」

「うん、そうなんだけどキュウべぇが出てきてくれなくて」

「あの白いの、倒しても湧き出るくせに出てこないなんてどういうことかしら」

「エネルギー回収のノルマだって達成していないだろうし、一体どこに行ってしまったの?」

その日は神浜中でキュウべぇを探し回りましたが、ついにキュウべぇは姿を見せてくれませんでした。

「どこに行っちゃったの、キュウべぇ」

 

 

ペンタゴンの地下にあるサピエンスの研究施設。

その廊下をカルラは今まで通りタバコを咥えながら歩いていた。

その足を向ける先は、ディアが使用しているクローン体製造部屋。そこには成長したディアの体が並ぶ中、耳と大きな尻尾を身につけた周りとは異質な見た目をしているクローン体が眠っていた。

カルラはそのクローン体が入る容器に触れて笑みを浮かべた。

「ディアより上手くはできていないと思うが、なかなか思い通りに仕上がっているじゃないか」

そんな声が聞こえたのか、クローン体は容器の中で目を開け、カルラをしばらく見つめた後に何かに驚いたように容器のガラスへ両手をつけた。

「わかったわかった、いま開けるから待っていろ」

カルラが装置を操作して、容器内の液体が抜かれた後に容器が開き、クローン体がぺたりと床に座り込んだ。
ディアのクローン体は通常はディアの意思を流し込み、その体を直接操作するという流れだが、そのクローン体はひとりでにカルラに話しはじめる。

「なんだこの体は、君がやったというのか」

「人の体に入った気分はどうだ、

“キュウべぇ“ 」

 

 

第二章:神浜にて紡ぎ出され始める交響曲(シンフォニー) 完

 

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-2-18 人と同じ道を歩まぬためには

翌日、さつきさんの札が整ったためみんなはういがいる部屋の前に集まりました。

さつきさんが持つ3つの札を見て灯花ちゃんがさつきさんへ質問をしました。

「その札だけで本当にういの魂に入り込めるの?」

「ええ、何も問題が発生しなければこれで済むはずよ。

では、妹さんの押さえつけはお願いしますよ」

「分かったわ」

私たちは部屋へと突入し、やちよさん、キクさん、ねむちゃんはすぐにういを動けないよう抑え込みました。

「痛い、やめて!私が何をしたっていうの!離して、離してよ!」

ういは苦しそうな声をあげます。

でも、今は耐える時。

「では、失礼します」

さつきさんが取り出した3つの札はさつきさんの手を離れ、ういを取り囲みました。

それぞれの札が青く光ったかと思うとういを中心に淡く青い円形の結界が発生し、抵抗していたういは動かなくなりました。

「うまくいったか。ならば次」

そう言ってさつきさんはもう1枚の札を取り出して結界に押しつけました。時間がかかったものの、札を押し付けた場所には大きな次元の裂け目のようなものが現れました。

札の効果が発動する様子にねむちゃんは興味を示したようでさつきさんへ質問をしました。

「これは、どういう仕組みなのかな」

「最初のうち1枚は妹さんのソウルジェムから体へ送られる魔力を遮断し、一定時間体の鮮度を保つ効果があります。これで魂へ侵入している間に変に暴れられる心配はなくなります。
そのあとに使用した札で妹さんの魂につながる道を開きました。

無事に開いたということは、やはりみなさんが見たという悪夢と人が大量に死んだ光景がトラウマとなっていたようですね」

「なぜそんなことがわかるの」

「対象の悩みを知るのが魂へ潜入するための必須条件なのです。わかっているのは当然でなければいけないのです。
とはいえ、魂へ侵入するための扉を開くのが最も難関なポイントだったので安心しました。

さて、これらの札は長くはもちません。いろはさん、この後の結果はあなた次第です」

「はい、分かっています」

私はワルプルガさんに手を差し伸べました。

「いまのういには、あなたの存在も必要なの。ついてきてくれる?

ワルプルガさんは迷わず私の手を取りました。

「元からそのつもりだよ」

いまのういが最も心を許しているのはワルプルガさんだけ。

私の声が届かなかった場合、ワルプルガさんに頼らないといけなくなる。そうならないのが一番だけど。

そうして私たちは、ういの魂へと潜入したのです。

 

魂の中は、どこか魔女の結界に似た様子でした。この光景にやちよさんは驚いていました。

「これって魔女の結界じゃ。まさか、魂に潜むという魔女の仕業じゃ」

「いや、魔女の結界のように仕立てたのは私です」

「仕立てた?」

私たちは結界を進みながらさつきさんの説明を聞くことにしました。

「魂へと潜入して悩みを解決する方法には様々な方法があります。その中でも私は感覚を掴みやすく魔女の結界を模倣してあえて結界を形成し、その結界に悩みを反映させて最深部で救うという方法をとっています。
結界化は普通であれば札1枚で行えることなのですが、まあ、今回は本当に魔女がいるので介入されないように防護の札も織り交ぜたので少々大掛かりとなりました」

「あなた、思ったよりもすごい人だったんだ」

灯花ちゃんの呟きにさつきさんは敏感に反応しました。

「確かあなたは科学の天才でしたっけ。

いくら科学が発展しようと、人の心に潜入して悩みを解決するなんてことは呪法には敵わないですよ」

「むっ!時間はかかってもできちゃうかもしれないよ!人は科学を進歩させて絵空事のようなことを現実にしてきている。

イメージの投影技術なんかはできてきているんだから」

「でも、確かな心に秘めた悩みを探り出すのは厳しいでしょう。

そんな絵空事を容易く実現できてしまうのが魔法少女。

科学の発展なしに高度なことは魔法少女だけでも可能だとは思いますが、果たして皆が幸せに暮らせる世界にはなれるのか」

私はそこに口を挟んでしまいました。

「できますよ。私たちがやってみせるんです」

「そうだね。マギウスの時も一応魔法少女だけでやっていけていたし、しかもお姉さまがトップになるなら間違いなくみんな幸せになるんじゃないかな」

「ふふ、信用が厚いんですね」

「私は何も。みんなが協力してくれるからこそですよ」

「それだけみんなを笑顔にできるというなら、妹さんも大丈夫でしょうかね」

話していると目の前に見慣れたツバメの使い魔が現れました。

「使い魔?!」

「魔女の結界を模倣するんです。使い魔のようなものも現れますよ」

「でもあれは、見慣れた使い魔のような」

私たちの反応にさつきさん達は少し違和感を覚える様子でした。

何を気にしているのかを聞かずに、私たちは奥へと進んでいきました。

奥へ進むと、壁にはさまざまなういの姿が映し出されていました。

「なんなの、ここ」

おそらく魂の持ち主である妹さんの記憶が映し出されている空間でしょう。

このエリアがあったのは好都合です」

「好都合って、何にですか」

ここで妹さんについて聞きたいことを思いながら壁に触れてみてください。

きっと、いろはさんが疑問に思っていることが解決すると思いますよ」

そんなことができるのかな。

私は疑問に思いつつ、一番ういに聞きたいことを思いながら壁に触れました。

ういは一体何に絶望したの?

すると周囲は一気に暗闇に包まれ、私の頭の中へいきなり多くの情報が流れ込むと同時に目の前は光に包まれていきました。

目を開けると高校生になったういが友達と思える人物と会話していました。
私はその様子をまるで同じ空間にいるかのような感覚で見届けていました。

「あの子は退学確定だろうってさ」

「でも勉強を頑張ってたのに、東側の出身だからって」

「仕方がないよ。

西側よりも東出身の人が優秀なんてなったら大人達が黙っていないだろうからね」

「でも、おかしいよ」

「ういはそういう考えと無縁だから良いよね。

でも気をつけたほうがいいよ。東側の子をかばった子がいじめられたってことが過去にあったみたいだし」

「う、うん・・・」

様子を見ているといきなりういの考えが頭の中へ流れ込んできました。

“なんで、東側の人は西側の人と一緒に扱われないのだろう。

でも私には、どうにも。”

そのあともういが見たであろう悪夢が次々と映し出されていきました。

「なんなの、これ」

「お母さんが絶望するに至ったビジョンだよ」

声がした方を見るとそこにはワルプルガさんがいました。

「ワルプルガさん、なんでここに」

「あなたが壁に触れてからピクリとも動かなくなったから、さつきという人物に助けに行くよう伝えられたから来たんだよ」

「そう、なんだ。

でも、なんでワルプルガさんにはここがどういう場所なのかわかるの?」

「お母さんが絶望に巻き込まれる瞬間に立ち会ったからだよ」

「それ、だけで?」

「テレパシーに乗せられて全てが筒抜けだった。

あの光景だけは、流石に私にもこたえた。

とはいえ、今のはあなた達が見たという悪夢の一部。

とどめになったのはもっと別の要因だよ」

「あなたって、いったい」

ワルプルガさんの話に夢中になっていると再び別の光景が映し出されました。

映し出された光景は、私たちが怒りに任せてカレンさんを撃った時でした。

その一撃はカレンさん達を巻き込み、そして里見メディカルセンターに直撃しました。

その途端に里見メディカルセンターにいた人々の断末魔が私たちの頭の中で鳴り響いたことで正気を取り戻したことは覚えています。

しかし、ういの感じたものは違いました。

 

お姉ちゃん、みんな、怖いよ。

どうしてそんなにカレンさんを殺そうとすることしか考えていないの!

そして里見メディカルセンターに直撃した瞬間は。

悲鳴が聞こえる。脳の容量を軽く越える量の人々の悲鳴が入り込んでくる。

いやだ、こんなの嘘だ。

よく部屋に訪れて話してくれた看護婦さん、灯花ちゃんのお父さん、そして商店街のよく知る人たち。

みんないい人なのに、どうして死なないといけないの!

お姉ちゃん達が、撃たなければ。

いやだ、いやだよ。

みんな、こんなの嫌だよ。

 

見ているだけで苦しかった。私たちが聞いた悲鳴以上にういにはたくさんの声を聞き入れていました。
見ているだけで私のソウルジェムは黒くなっていき、半分ほど穢れが溜まったかと思う頃に別の様子が映し出されました。

それは電波塔の上でカレンさんたちと戦っていた時の様子でした。
シオリさんが撃ちだした何かがういに命中したところが映し出されました。
その撃ち込まれたものからは魔女に似た魔力が感じられ、里見メディカルセンターに私たちの直撃した瞬間にその魔女の魔力を放つものはういの中で弾けたのでした。

ういがこんなことになってしまったのは、シオリさんが撃ちこんだものが原因だったというの?

そんな様子が映し出された後、声が聞こえてきました。

“だったら捨てちゃいなよ”

誰かわからない声がういに問いかけました。

「あなたは?」

“ういの代わりをしてあげるための存在。

あなたの代わりに、私がういになってあげる。

嫌なんでしょ。こんな世界も、あんなお姉ちゃんも”

「それも、いいかもしれない」

だめ、自分を捨てないで、うい!

私がういに向かって手を伸ばそうとすると、その腕を誰かが掴みました。

私が正気に戻って掴んだ手の方を見ると、無表情に私を見つめるワルプルガさんがいました。

「これで分かったでしょ。

お母さんをこんなことにしたのは、あなた達のせいなんだから」

「あ、あれはカレンは倒さないといけないと思ったから」

「なんで魔法少女同士が争わないといけないの」

「あの時は、そうするしか」

「お母さんはそんな答えじゃ納得しないよ。

そんな考えが当たり前になるなら、感情を持って生まれた存在自体がいちゃいけないんだ」

「私にだってわからない!
みんなを傷つけたカレンさん達を、許せるわけがないよ!
許せないのに、怒りの感情を抑えるなんて」

「魔法少女も、人間と同じ道を歩むの?
なぜ怒るの?なぜ妬むの?なぜそれらの感情から暴力へと繋がるの」

私はどこかで、ワルプルガさんは何も知らない子どもだとばかり思い込んでいました。

でも、今目の前にいるワルプルガさんはどこか大人びていて、カレンさん達を相手にしているような感じがします。
分かっているくせに、試してくるかのような感じ。

「なぜ怒るのかって言われても」

周囲ではういに見せられた悪夢が映し出される中、私は怒りについて考え始めました。

私は過去に怒りを感じた瞬間を思い起こそうとしました。
でもなぜか怒りをおぼえる場面を想像できません。生きている間に怒りを感じることは何度でもあっただろうに。

そんな中ういの悪夢の中に、ある一場面が映し出されていました。

ショッピングモールで、ねだったものが買ってもらえなかったのか駄々をこねる子ども。
お母さんをポコポコと弱弱しく叩いているあの行動も一種の怒りから来る行動の表れなのでしょう。

欲しかったものを買ってもらわなかっただけでなぜそんなに怒ってしまものでしょうか。

私の場合はどうしても欲しいものが買えなかった場合、がっかりする、つまりは悲しい気持ちになるだけで終わるでしょう。
望んだ結果に、ならなかったから。

望んだ結果に、ならなかったから?

負の感情をいだいてしまうのは、望んでしまうからなの?
何かを求めてしまうから、その結果によって感情が動いてしまうのかも。

では、なにも望まなければいいとなってしまう。

なにも望まない世の中というのは、楽しいのだろうか。

そう思っているときに、私はみかづき荘でみんなが笑顔で過ごしている様子が思い浮かびました。
みんなで過ごしているときは何を望んでいるわけでもない。ただそこにいるだけで温かい気持ちになれた。

ただただ散歩しているときだってそう、見知った人と会話をしているときだってそう、私は何の望みを思い浮かべなくても楽しいという気持ちを抱けていた。

きっと過去のように、
私の会話はみんなを楽しませているだろうかという、どこか私は他人と話すときはその会話で他人を楽しませないといけないという使命感のような望みを抱えていた。
だからか、会話を楽しめてはいなかった。

だとしたら、怒りをいだいてしまう答えは。

「怒りは、何かを望んでしまうから。
望んでしまうからその結果通りにならなければ悲しみや怒りといった感情に繋がってしまう。
望みを抱かなければ、怒りなんて感情は抱かなくても済むはずなんじゃないかな」

ずっと私の方を見ているワルプルガさんは、ちょっとだけ間を開けてから再び真顔で話しかけてきます。

「それが、私念を抑え込む答え?
それさえできれば、誰も争わなくて済むの?」

「わからない。
他人を困らせることで喜びを感じてしまう人もいる。そういった人たちを止めるために争いはなくならない。
でもそれは必要な争いだと思っているよ。ういだって、それはわかってくれるはず」

「そうか。じゃあその答えも含めて今後も大丈夫っていう安心感をお母さんへ与えてあげて。お母さんの中にある希望を大きくしないと」

「希望を、大きく。でも望んでしまったら負の感情をいだくきっかけになっちゃう」

無表情だったワルプルガさんが、笑顔を見せながら私の手を握りました。

「希望はそんな単純なものではないはずだよ。
だって希望は、生きるための源なんだから」

希望に感じること

ういはあんな悪夢を見せられても人への希望を失わなかった。

そんなういにとって希望となる光景は・・・

不思議と心当たりはあった。人と魔法少女が共に生きれるかもしれないという希望が。

そうか、あれがういとの向き合うための希望になるのか・・・

「答えを見つけ出せたみたいだね。じゃあ、みんなのところへ戻ろうか」

 

はっと気づくと壁にいろんな記憶が映し出されている部屋に戻っていました。

「いろは!」

声がした方向を向くと、真っ直ぐにやちよさんが抱きついてきました。

「気がついたのね。心配させないでよ」

「やちよさん?」

「お姉さまが壁に触れてから10分近くずっと動かないままになっていたんだよ」

この部屋に意識が持っていかれてしまったのではないかとヒヤヒヤしたよ。

でもよかった」

灯花ちゃんとねむちゃんの話を聞くに、どうやら私は壁に触れたままびくとも動かなくなっていたらしいです。

さつきさん達は落ち着いた様子だったので、こうなることはわかっていたかも?

「収穫はしっかりあったかい?」

キクさんがそう問いかけてきて、私は自信を持って答えました。

「はい、大丈夫です!」

「いいことだ。

じゃあ、妹さんに直接会いに行こうか」

さつきさんが向かった方向には扉があり、その扉の中からは魔女の気配が感じられました。

きっと大丈夫、あの時気付いた答えでういに再び希望が与えられるはず。

待っててね、うい!

 

back:2-2-17

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-2-17 憂いの思いは過去の私念から

二木市から私たちを乗せていた貨物列車は無事に神浜の車両基地へと到着しました

そこにはミリタリーな格好をした1人の魔法少女がすでにいました。
その人は博さんというようで、いつもは列車を運転してくれた方、銃をもって応戦してくれた方と一緒の3人グループで行動しているようです。
2人プラスアルファのメンバーで協力してくれたのは、神浜に来てから仲間が増えたからだそうです。

私が列車から降りると博さんが話しかけてきました。

「環いろはさんだよね?
咲たちが迷惑かけなかったか」

「いえ迷惑だなんて。とても助かりましたよ」

「三崎~、私たちがへまするように見えたのかい?」

「火炎放射器のやつと戦うチャンスだって駆け込んだこと忘れていないぞ」

「なーに、これでいつでも戦えるチャンスができたんだから同じ結果だって」

博さんたちの会話を聞いている間に、車両基地に入る列車を見たのか十七夜さんを含めた東側に住む魔法少女達が集まってきました。

その人達が二木市の魔法少女を見て、神浜に迎え入れてもいいのかと少し口論にはなりました。

しかしその場で争いを起こした理由を結奈さんが説明し、皆が納得したわけではありませんがその場は一旦治りました。

この件は少しずつでいいからみんなで協力しあえる環境を作っていけばいい。

気がかりだった出来事が片付き、いよいよういを正気に戻す行動に移らなければいけません。

私はやちよさんにまかせてしまっていたさつきさん達のもとへと向かいました。

やちよさん達がいたのは竜真館で、そこでは3人の子ども達が魔法少女達と遊んでいて、その様子をやちよさん、さつきさん、キクさんの3人が見守っていました。

そんな中、やちよさんがこちらにきづきました。

「いろは、戻ってきたのね」

「はい、お待たせしました」

「おかえりなさい、いろはさん。

あの3人、みんなに受け入れてもらえたようで楽しく過ごしているわ」

「それは良かったです。

えっと、大事な本題の話になっても大丈夫そうですかね」

「ええ。早く妹さんを助けに行きましょう」

さつきさん達が滞在することになった部屋へといくと、そこには何か札が用意されていました。

「あの札って」

「妹さんの心の中へと複数人で侵入するのでしょう?
私一人はともかく、複数人の侵入となると札にも準備が必要なのよ」

「え、私複数人で侵入するって言いましたっけ?」

「あら、経路を作る私とあなたの時点で十分複数人扱いよ。

1人以上であれば複数人扱いで対処するのは当たり前でしょ」

「それは、そうでした」

「ともあれ、相手の魂を傷つけないためにも侵入先をよく分析する必要があるわ

妹さんのところへ連れて行ってもらえるかしら」

そういえばういは今どこにいるのだろう。

神浜で何があったのかをよくわかっているひなのさんにういがどこにいるのか聞いてみました。

「ういちゃんの居場所は、里見灯花と柊ねむがよく知っているはずだ。

あいつらが強引に連れて行ったからな。

どこで匿っているかまでは知らん」

「そうでしたか。ありがとうございます」

私が灯花ちゃんとねむちゃんに会うために行動していると、2人の方から私たちの前へと姿を表しました。

「もう、帰ってきているならすぐ知らせに来てよね!」

「待ちくたびれていたところだよ」

「ごめんね。

さっそくだけど、ういの居場所に案内してもらえるかな」

付けてきている者がいないかを確認しながら、私たちは巧妙に隠されたシェルターへと案内されました。

「壊れていないシェルターなんてまだあったのね」

「里見グループ限定の隠されたシェルターだからね。ここなら誰にも邪魔されずに過ごせるんだよ」

シェルターの奥へと進んでいくと、その中の一室にういとワルプルガさんがいました。

部屋の中は綺麗で、見慣れたういの部屋と似た状態でした。

そんな部屋の中で、ういは編み物をしていました。

「…何か用?」

「えっとね、今日はういに会わせたい子がいて」

「社交辞令はいいわ。ちょっと失礼するわよ、妹さん」

そう言ってさつきさんは右手を前に出してういの魔力を探り出しました。

その間、ういは警戒して怖い顔をこちらに向けてきました。

さつきさんは魔力を探っていると、いきなり何かに弾かれたかのようにその場へと倒れ込んでしまいました。

「さつき!」

キクさんが慌てて駆け寄り、さつきさんは大丈夫だと言うジェスチャーを向けました。

「これは思った以上に重労働ね」

そう言ってさつきさんは一枚の札を取り出しました。

「失礼するわよ」

そう言ってさつきさんは一瞬で札をういの指輪へと当て、反撃される間も無く札へとういの魔力を込めました。

「ちょっと、何をしたの!」

ういの問いかけに耳を傾けることもなく、さつきさんは失礼しますという一言を言い残して部屋を出てしまいました。

私たちもそのまま部屋を出てしまいました。

「さつきさん、下見はもう十分なのでしょうか」

「ええ。でも思った以上に大物を相手にしないといけないようね。

神社で戦ったあいつよりは弱いけど」

「それって、どういうことですか」

さつきさんは神妙な顔つきでこちらを見てきました。

「ういちゃんのソウルジェムの中には、魔女がいる状態よ」

さつきさんの発言に私は驚かずにはいられませんでした。

「ソウルジェムの中に魔女がいるだなんて。そんなことあるんですか?!」

「そんなことあり得るの?」

「魔女は結界さえあればどこにでも潜める、と言うことを前提とすればあり得ない話ではない。

なんでソウルジェムの中へ入り込んでしまったのかというのは私も知りたいくらいだわ」

「あなた、ソウルジェムの中にいる魔女を倒す方法を知ってるんでしょ?」

「ソウルジェムの中へ入り込んで討伐するのは造作もないこと。

でもあの妹さんの言動はいつもの言動ではないのだろう?

だとしたら魂の主導権はほぼ魔女になってしまっている可能性がある」

「そんな」

「だからただ倒すだけではいけない。

妹さんが魂の主導権を取り戻さなければいけない。

そのためには、いろはさん。

彼女をよく知る存在の協力と、説得までに魔女を倒さず押さえ込む人員が必須よ」

「魔女を倒すだけではダメなの?」

やちよさんの問いかけに対して、灯花ちゃんが答えます。

「体の主導権を魔女が持った状態で倒してしまうと、その大部分の主導権が魔女と一緒に失うかもしれないんだよ。
ういは助けられても二度と目を覚ましてくれないかもしれないよ。

あなたが言いたいのは、ういが魔女から主導権を奪わないと意味がないってことでしょ」

灯花ちゃんの問いかけにさつきさんは頷きませんでした。

「ことはそれ以上に深刻かもしれない。

説得が長時間に及べば、争う魔女を押さえ込むのに激しい戦いを強いられるだろう。それによって魂が傷つけられ、主導権を取り戻せたとして元の妹さんに戻れない可能性がある。

なぜ主導権が魔女に奪われつつあるか、それを知った上で説得をスムーズに進められるようにしたほうがいいだろう」

そう言った後、さつきさんは私の方へと向きました。

「いろはさん、あたなたは妹さんに、何をしたの?」

「え?」

「あの魂の状態は、よっぽど深いトラウマを受けなければならない状態だった。

考えたくはないのだが、虐待とかしたのではないか」

「お姉さまがそんなことするわけがないでしょ!」

「ならば教えて。

何があれば、妹さんはあんなに心を閉ざすの。

これは妹さんを元に戻すためにも重要な案件だ」

「それは、話が長くなるので落ち着いて話せる場所へと移動しましょうか」

私たちはシェルターの一室でお茶を飲みながらさつきさん達へこの町で起きたことを話しました。

「そうか。この街に来てからずっと違和感を持っていたが、そのようなことが」

「でもあの子達にみんな仲良くしてくれていた。根っからに人間嫌いになったわけではないのね」

「だとしたらおかしい。あの子達と同じぐらいの歳の子も人間嫌いになる悪夢を見ていたはずだ。

ならばなぜういちゃんだけが心を閉ざさなければいけない」

「私にも、そこがわからないのです」

みんながなぜなのか悩んでいるところ、ねむちゃんが提案をしてきました。

今のういが唯一心を許しているワルプルガに話を聞いたほうがいいだろう」

「ねむちゃん?」

「近くにいる存在にしか気づかないこともある。ういから何か聞かされている可能性もあるからね」

「なら、ういちゃんが寝ている間にワルプルガさんに話を聞いたほうがよさそうね。

ういちゃんが起きている間はまともに話してもらえなさそうだし」

「じゃあ、もう少しここで待ってみようか」

「ならば私は札の作成道具をここに持ってくるわ」

「私も行こう」

「ちょっと、では一利するなら他の子に気付かれないようにしてよね。
ここは大事な場所なんだから!」

そうして、私たちはういが眠りにつくのを待ちました。

ういが眠ったかどうかは灯花ちゃんが監視カメラで確認してくれて、私は静かに部屋の扉を開けました。

私はテレパシーでワルプルガさんにだけ呼びかけ、気がついたワルプルガさんは静かに部屋を出てきてくれました。

「あなたは、いろはさんですよね」

「そうです。ういから聞いていましたか」

「いや、私が目覚めたときにされた入れ知恵のせいだよ」

「入れ知恵って、まさか」

ワルプルガさんはリビングがある方向へと歩き始めます。

入れ知恵といえば、確かワルプルガさんを復活させる際にシオリさんがやっていたこと

もしかしたら、私たちのことについても既に学習させていたのかもしれない。

私たちが知らないことも、知っていたり。

リビングにはみんなが集まって、ういがどんな状況であるのかをワルプルガさんに聞いていきました

「さて、ワルプルガさん。ういちゃんから何か辛い記憶とか苦しい記憶のことについて聞いていないかしら」

「私に聞くってことは、お母さんが私以外に絶対話さないようなことですよね」

「察しが良いわね」

「話すわけないですよ。

今のお母さんは、別の何かに塗りつぶされようとしているんですから」

「そこまで知ってるの?!」

「全て入れ知恵がいずれそうなるとなっていたので」

「入れ知恵?」

「それに」

ワルプルガさんは私の方を向きました。

「お母さんが塗りつぶされ始めた原因は、お母さんが見ている前で人殺しをした、いろはさん達が原因というのも」

全員その言葉で驚きました。

ういの目の前で人を殺す?!

私がやった人殺しといえば、カレンさん達を吹き飛ばそうという思考に塗りつぶされた結果放った一撃が、避難所になっていた里見メディカルセンターを破壊した時くらい。

あの光景が、ういにも共有されてそれが原因ということなの?

「いろはさん。それはどういうことですか。

内容によっては協力できるかも怪しくなりますよ」

「さつき…」

「わかりました。

おそらくういがトラウマになったである出来事のことを説明します」

私は包み隠さずカレンさんたちを殺すに至った経緯をさつきさん達に説明しました。

2人は終始驚いた顔つきでした。

全てを説明し終わり、最初に話し出したのはキクさんでした。

「恨みや妬みは盲目にさせるとは言うが、その件は飲み込まれた側も悪いだろうな」

「それに、この町の魔法少女は平気で人を殺せるのか」

わたしはさつきさんが協力をしてくれなくなるのではないかと怖くなっていました。

「でもそこまでの覚悟がないと、わたくし達は既に捕まっていたんだよ?

「捕まったらどうなるのかいまだにわからないが、嫌な思いをするのは明白だ。

投降なんてことも得策ではない」

「そのカレンという方は、こうなることを見越してあなた達の常識を塗り替えたと、それが正しかったのだというのですか」

「この街のみんなは、そうは思っていないけどね」

「幸いしたのは確かだけどねー。

私達がここに魔法少女の安全地帯を作っていなければ、あなた達だってとっくに捕まっていたのかもしれないよ?

むしろ感謝してほしいくらいだよ」

「灯花、言葉が過ぎる」

さつきさんは少しだけ難しい顔をした後に話し始めます。

「受け入れ難い事実ではある。

しかし、今無事であるのもこの環境があるからこそ。

それに、魔女に塗り潰されようとしている被害者を見過ごす理由にはなりません」

「では」

「妹さんを助けることには協力しましょう。

その後は、好きにさせてもらいますよ」

「はい。協力してもらえるだけで嬉しいです」

「そういうことであれば、妹さんの心を開く鍵はおそらく人がたくさん死んだ光景を見たことに対してのケアでしょう」

「少し難しいことになったわね」

「純粋な子どもが人の死を、それも大量に目の当たりにしてしまった時は大抵トラウマとなるでしょう。

それを克服しようとしたところで膨大な時間をかけての自然治癒くらいで、すぐに解決するものかは」

「では、どうしたら」

みんなが少し黙ってしまった中、ねむちゃんが提案してきました。

「トラウマの克服は種類や状況で変わるが、やりやすい方法として認知処理療法というものがある」

「認知処理療法?」

「何がトラウマの原因となったのか、今は何で心を苦しくしてしまうのか。

つまりはトラウマを抱えた人の悩みを真摯に聞き、心の内を全て開示させてその内容に理解を示すんだ。

それだけで心が安らかになり、トラウマ克服の糸口になったりするらしい」

「それならいろはが適任ね」

いきなりやちよさんに名指しされました。

「私が?!」

「あなたは聞く能力と、相手を安心させる能力があるわ。

きっとういちゃんの悩みも、いろはにはなせば解消されるはずよ」

「ならば気をつけてください。

人殺しを躊躇しないあなた達とは違って、妹さんは人の一般的な常識を持ったままだと思います。

いろはさん、人殺しはもうしないでほしいと聞かれて、正直に答えられますか。

街のみんなも、もうそんなことしないでほしいと言われて、心から妹さんの考えを肯定できますか」

「それは。

嘘でもそうするしか」

「その場で嘘がバレたら手遅れなんです。

妹さんがどれほど心を読む術に長けているかは謎だが、嘘を使うなら失敗する覚悟で望んでください。

彼女の魂は塗りつぶされかけているのですから、嘘をつかれていると気づいた瞬間に」

「はい…分かってます」

いつものように正直に向き合うことは、本当にできないのだろうか。

嘘が下手なのは分かっている。

ういの悩みが、正直に答えられるものなら良いけど。

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-2-16 のちに響く計略

アンチマギアプログラムが全世界へ認知されてから数日経過したころ。

米国の魔法少女狩りが行われている中、イザベラもお世話になっていたテロリストのメンバーの中にマーニャという魔法少女がいたのだが、その人も標的にされてしまった。

裏路地でマーニャさんが見つかったという話を聞き、私はその場所まで急いだ。

そこには特殊部隊に囲まれて動けないマーニャさんの姿があった。

テロリスト達と関わっている間何度か話したことがある人だが、魔法少女である以上逃すわけにはいかない。

私は特殊部隊のメンバーよりも前へ出てマーニャさんへ話しかけた。

「悪く思わないでください。
今の世界の常識では、あなたを見逃すわけにはいかない」

「キアラ、いまはイザベラはいない。考え直して!」

「私たちが使用していた魔法の鏡をことごとく割って回ったこと、米国の魔法少女の確保状況が良くないこと。

あなたが全て手回ししていたことは既に知っています」

「なんでそんなことを知っている。

まさかとらえた子の脳みそでもいじったか。
外道め!」

実際事実であるから言い返せない。

魔法少女の脳波をいじくり回し、ついには記憶さえも観測できてしまうというとんでもないものをディア達は作り上げている。

もちろんだがいじられた子達は負荷に耐えきれず魔女化してしまい、皆始末された。

あなたを捉えれば世界を脅かそうとする存在達の情報も聞き出せるでしょう。

それに、今あなたを逃せば私たちの負けは確定する。そんな気がする」

「…そうか~

なら、私たちのアジトの場所を教えると言ったら逃してくれるのかな」

兵士たちから銃を向けられていてもいつも通りの態度を崩さないマーニャさん。
こういった状況に慣れているからなのか、緊張感自体を感じないからなのか正直分からない。
マーニャさんとの付き合いはそれなりにはあるが、いつもいま目の前で見せているような余裕を持った態度しか見たことがない。

私は念のためマーニャさんへ確認をとった。

「嘘ではないんでしょうね」

「嘘はつかないよ。嘘だった時の報復が怖いからね。
イザベラならヨーロッパをまるごと吹き飛ばすとか言い出しそうだし」

「それは、あり得るから困る」

できればマーニャさんには苦しんでほしくない。

アジトがわかれば、イザベラは考えをあらためてくれるだろうか。

「キアラさん、もうよろしいのではないでしょうか」

特殊部隊の1人が私へ声をかけてきた。

「そうだな、もういい頃だろう」

私がそう言葉を発すると夜闇から音をたてず人々が現れて次々と特殊部隊たちを気絶させていった。
突然現れた人物たちの危険を察して逃れた兵士に対しては私がひそかに気絶させた。

マーニャさんが困惑する中、火が付いていないたばこを咥えた一人の男が言葉を発した。

「なんだよ、サピエンス直属の特殊部隊と聞いていたがこの程度か」

「ロバート、なんでここにいるんだ。

それに、みんなまで」

夜闇から出てきたのはロバートが率いるテロリストたち。彼らとは手を組んでいるため現れたことについて私は少しも驚きはしなかった。

「え、なんで?もしかして、キアラもグル?」

「じゃなきゃ俺たちもこんな堂々とやらねぇって。俺たちだってキアラにはかなわねぇってことぐらいわかってるさ」

「そ、そうだよね。よかった」

「よかったじゃねぇ!」

いきなりロバートさんが怒鳴りだしてこれにはさすがに私も驚いた。

「さっさと消えろ。じゃねぇと他のやつらに気付かれちまう」

「ロバート・・・」

ロバートは悲しそうなマーニャさんの顔を見ると、ぎこちない笑顔を見せた。

「達者でな」

そんなぎこちない笑顔を見てもマーニャさんは笑顔を見せた。

「うん。
みんな、キアラ、ありがとう!」

そう言ってマーニャさんはその場から姿を消しました。

私はマーニャさんが姿を消したことを確認した後、ポケットにしまっていた魔法少女の探査端末を取り出した。その端末にはマーニャさんであろう反応がしっかりと映っていた。
感知できていることを確認した後、私はカルラへと通信を繋げた。

「取り巻きは対処したよ。
あとはそっちで好きなようにして」

「感謝する。前にも言ったがこれはイザベラ達には内密に。あんたにも響くことだろうからね」

「わかってるよ。こちらで呼んでおいた応援もそちらに向かわせる。
助力なだけだからあまり信用はしないでくれ」

「わかった」

通信が切れた後、わたしは探査端末をロバートに渡した。

「どういうことだ」

「あなたたちに声をかけたのはマーニャさんを逃がすため意外にも目的があります。
それは、マーニャさんが逃げた後彼女たちが使用している転送の鏡を確保することです」

「てめぇ!マーニャをはめたのか!」

「マーニャさんが無事であればいいのです。
それに、ここであなたたちが魔法少女狩りに貢献しておけばあなたたちへ矛先が向くことも無くなるでしょう」

「おまえ、俺たちのことまで」

「今は人同士が争っている時ではないのです。
その不安分子を取り除いたくらいに過ぎません。さあ、その探知機が示す場所へ急いでください」

これで段取りはすべて踏んだ。あとはカルラが何かたくらんでいたようだが何をするのかまでは聞いていない。
いったい何をしたのかは、すべてが済んだ後に聞きに行ってみよう。

 

 

ヨーロッパを中心として活動している魔法少女達は、元ベルリンの壁跡地の地下深くの魔力で作られた空間をアジトとしている。
魔力を籠らせた魔法石がトリガーとなって入場審査を行っている

ただその魔法石があるだけでもダメ。ちゃんとその魔力を籠らせた本人じゃなきゃ入場が許可されない。

それに、敵に捕まったと判明すればすぐにその所持者の魔法石では入場不可にしてしまう。
とはいえ、ミラーズという場所で作られた鏡を通ってくるところまではカバーができていない。
なので別の空間と繋がっているその鏡についてはアジトへ侵入できる穴となっている。

そんな鏡の一つを使用してわたしはアジトへと逃げようとしていた。

しかし、なぜかその場所へサピエンスの特殊部隊が姿を現した。
まさかキアラが。いや、だとすると私を逃がした意味が分からない。

「マーニャさん、でしたっけ」

話しかけてきたのは白衣に身を包んだ女性だった。
私の名前を知っているのはキアラから聞いたからなのだろう。

「あなたには少し用があってね。変に攻撃をしてこなければ話だけで済まそうと思う」

他の魔法少女が白衣の女性に対して言葉を放った。

「その言葉を信じれと。サピエンスの言葉を魔法少女が信じるものか」

「まあそれはそうか。
では、サピエンスの本拠地があるペンタゴンの見取り図を渡すと言ったら大人しくしてくれるか」

そう言って白衣の女性は手に持っていた地図をこちらに見せてきた。
暗闇ではあるものの、五角形の図形の中へびっしりと複雑な線と文字が書き込まれていたのは確認できた。それが本物だとしても。

「正気なのかお前は。
それを伝えたところでお前たちに何の利益がある」

「これをどう利用するのかはお前たちに任せる。
だが、これを受け取れないというならばお前たちを”捕らえる”という形で保護しなければならない」

「どのみち抵抗しないと捕まるだけだ」

「言ったはずだ。話し合いだけで済ませたいと。
たまには信じるという選択肢を取ってみたらどうだ。争ったとしてもそうじゃないとしても、君たちは保護しないといけないからな」

「マーニャさん、どうします」

あの地図自体が罠だとしても、サピエンスの拠点がどうなっているのかを知ることができれば今後の作成に大いに役立つだろう。
でも、こいつが言っている保護とはどういうことだ。

「保護の意味を教えてくれたらお前の意見を飲もう」

「言葉の通りだ、実験にも拷問にもかけたりしない。他のサピエンスのメンバーに気付かれないよう守るだけだ」

これは、サピエンス内も一枚岩ではないということか。
表情一つ変えず淡々と話す白衣の女性を見ていると信じるのは怖くなってくる。

「・・・いいだろう」

私は見取り図を受け取ってメンバーに見送られながらその場を後にした。

鏡を通って私は拠点へ辿り着き、ミアラの場所へと急いだ。

ミアラのところへと到着するとすぐに手に入れた情報を渡した。

その情報を見て、その場の全員が驚いた。

「これ、ペンタゴンの見取り図じゃないか!

これ本物なのか?!」

「渡してくれた人は本物と言っていたよ。
でも引き換えに私たちが使用しようとしていた鏡一枚とその場にいたメンバーたちが保護された」

「バカかお前!早く鏡を割らないと奴ら直接入ってくるぞ」

「いや、まて」

ミアラさんは見取り図を見ながら何か考え込んでいた。

私たちはペンタゴンにサピエンスの人員や物品が頻繁に出入りしていることからサピエンスの拠点になっているのではないかということはわかっていた。
そのうえでペンタゴンの攻め方を模索していた。

ただでさえ難攻不落と呼ばれているペンタゴン。

この見取り図が信用できるならば、サピエンスの拠点はペンタゴンの地下に存在する。

「協力者がいたのか」

そうミアラさんから質問された。

「協力者、でいいのかな。あの人は確かにサピエンスの一員みたいでしたが、鏡を手渡すことを条件にこのデータをくれたんです」

「それで鏡とメンバーは保護されたと。何に使用するのかまでは聞かなかったのか」

「えっと、争わずに話し合いで済ませてくれれば捕まえるではなく保護するって言われたから」

「はぁ?!

やっぱ馬鹿だろお前!」

「私だってそうするしかなかったんだよ!

あいつら私らの脳みそを覗き見る装置を作ったみたいなんだ。

捕まったほうが何倍もマイナスだったよ!」

「まあみんなそんなに責めるな。

マーニャ、生きて帰ってきてくれただけ嬉しいよ」

「ミアラさん…」

「やつらが鏡を確保したのであれば、こちらに攻め込まれる可能性があり、逆にこちらから攻め込めることにもなる。
とはいえ、すべて負担がかかるのは神浜だ」

「神浜、カレン達がうまく追い払ってくれるといいですね」

「そうだな。こちらは鏡の間の警戒を怠らないようにしよう」

 

あの白衣の女性は何を考えて保護などという言葉を使ったのか。
私の選択は、正しかったのだろうか。

 

 

わたしはマーニャさんに関する一件が落ち着いた頃、なにが目的であのような段取りを用意したのかカルラへ聞きに向かっていた。

イザベラへは鏡を確保したことまでは報告されておらず、その場にいた魔法少女達をロバート達テロリストの協力のもと確保に成功したという報告がされていたようだ。
ロバート達の扱いはしばらく保留されることとなり、気絶させられた特殊部隊のメンバーについては申し訳ないが魔法少女達にやられたという扱いになってしまったようだ。

研究室にいたカルラへ話しかけると、カルラの個室へと案内された。

部屋のドアが閉じられてからようやくカルラは話しはじめた。

「わるいな、あの一件はほんの一部のものにしか聞かせていないことだったからな。盗み聞きされないここまで来てもらった」

「・・・あれはいったい何が目的だったんだ。マーニャさんは逃げたようだがまさかイザベラには秘密で鏡も調達するとは思わなかった。
カルラ、あなたは一体何をする気なんだ」

カルラはタバコへ火をつけてそれを口にくわえると話しはじめた。

「キアラ、あんた今のイザベラのやり方をどう思う」

「やり過ぎだとは思っているさ。
でも、神浜にやろうとしている作戦の準備中である今制止を促すのは中途半端な気がしている」

「まあ懐刀であるあんたの前で言うことではないと思うが、信用しているからこそ言わせてもらう。
あの鏡は魔法少女達を脱出させるために使う」

「そんなことをしたらカルラは殺されてしまう!」

「だろうな。だが時期を間違えなければあれは魔法少女側へ勝利をもたらすキーに変わる」

「カルラ、あなたは人類側を敗北させようとしているのか」

「別に人類を敗北へ導こうなんてわけじゃない。魔法少女と人類、どちらがこの星の主導権を握ればまともになるのかを見定めた後にあの鏡を使用するさ。
今あの鏡は保護した魔法少女達に守ってもらっている。
時が来るまで彼女たちも鏡もイザベラは気づかないだろうさ」

カルラは人類が負ける不安分子を用意していた。それがこれまでの段取りの意味だったのか。
私は人類が勝利で終わることを望んでいる。
とはいえ、魔法少女へ酷な未来が来てほしくないとも思っている。

なんとも中途半端な考えであると我ながら思ってしまった。

「まあ、キアラは今まで通り過ごせばいい。
私たちをどうにかするかは、まあ、この世の情勢を見て判断すればいいさ」

 

果たして私は、カルラは、この世界の主導権を握るのはどちらがふさわしいと判断することになるのだろうか。

いまはまだ、わからない。

 

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-2-15 決意の朝

村の空気は村を出る前の頃と変わらず、都会よりも居心地が良いものに変わりはありませんでした。

村の人達は私たちを笑顔で迎えてくれて、そんなにぎやかな雰囲気を聞きつけたのかお母さんと、静香ちゃんのお母さんが出迎えに来ました。

「みんなお帰りなさい」

私達はお母さん達と顔を合わせ、いつも通り平静を装おうとしましたが、その態度はすぐにお母さん達にバレてしまいました。

「みんな、ちょっと様子がおかしい気がするんだが。
神浜市に行って何があったか聞かせてくれないか」

静香ちゃんのお母さんがそう切り出してしまったため、私達は正直に神浜で起こった出来事を話さないといけなくなりました。

「わかりました。落ち着ける場所で話します」

私たちは神浜へと行って何が起こったのかを話しました。

神浜にいる巫達はとても優しくしてくれた。

でも、日継カレン達の行動によって私たちは平気で人を殺してしまえるほど、人を信じれなくなってしまったことも。

そして何よりも、しずかちゃんの大事な剣が奪われてしまったこと。

お母さん達はその話を聞いてとても悩ましい顔をしていました。

「人間を殺めてしまう経験もそうだけど、人間を信じれなくなったってのも問題だね」

一体どんなイメージを見せられてそう言った考えに至ったのかはわからないけど、この村の人たちのことは信じて欲しいわ。
ここのみんなが優しいのは、3人も知ってることでしょ?」

「でも、でも。

この村にいる人たちが実は悪いことを考える人たちで、魔法少女を対等な関係で見てくれていなかったり、悪いことに利用しようとしているんじゃないかって思って」

私は涙を滲ませながら回答をしました。

そんな私にすぐに返事を返したのは静香ちゃんのお母さんでした。

「そりゃ人なんだから悪いことの一つや二つは考えてしまうさ。
何でもかんでも善行でできている人間なんていないと言ってもいい

「お母様達も、悪いことを考えてしまうの?」

「そうだね。

娘達を親の同伴なしで都会に送り出すことだって、人によっては私達は悪いことをしてると捉えるだろうさ。

でも、私は娘との合意の上で送り出しているつもりだ。

何が言いたいかというと、悪ってのは見る角度によってそうかそうでないか変わるってことだ

「お母様、もっとわかりやすく教えてもらえますか」

「こういうのは人生経験で学ぶ物だと思うけどね。口だけの説明では理解しきれないだろうさ」

「…私たちが悩んでいるのは、守ろうとしていたこの国が悪いことを考える大人の考えでできているってことを知ってしまったから。

国民にはまともな人がいるかもしれない。

だとしても、人はお金や権力が絡むと非道なことができる。

それは、子ども思いの親も同じ」

「ちはる…」

その後の夕食はできるだけ今まで通りの楽しい雰囲気で過ごそうとしました。

私はどこか演じきったという感覚が拭えず、お母さん達に申し訳なさしかありませんでした。

夕食後、私はひとり夜風にあたりながら考えていました。

私たちに見せられたあの光景の数々が事実だとしたら、人間は許せるような存在ではない。

でも、お母さん達のような、お金や権力に引っ張られずに優しさを忘れない人がたくさんいるならば、まだこの国は守っていきたいと思える。

「わからない、わからないよ」

「ちはる」

声がした方を向くと、悲しげな顔をしたお母さんが立っていました。

「お母さん…」

お母さんは私の横に立ち、優しく私の手を握りました。

「ちはる、お母さんはあなたに無理して人を信じて欲しいとは思っていないわ

できれば信じていてほしいけど、きっと人に対する不信感は都会に長く滞在したからこそ感じたこと

その疑う気持ちは大事なことよ」

お母さんは真っ直ぐに私の目を見ました。

「周りの大人達は受け入れてくれないかもしれない。

それでも、あなたの信じる道に進んでちょうだい。

だとしても、人の道を外れるようなことをしてはいけなわよ。
ちはるがそんなことに慣れてしまったら、お母さん悲しんじゃうから」

やはり、会うべきではなかったかもしれない。

こうして面と向かって自分の心に従えなんて言われたら、もうお母さんに会うことは無くなっちゃうだろうから。

でも、それはもう今更なこと。

「うん、ありがとう」

これがきっと、お母さんにいう最後のありがとうになるだろう。

 

翌日、私達は神浜市へと戻りました。

お母さん達には笑顔で行って来ますとは言ったけど、もう帰ってくることはない。

すなおちゃんはというと、両親に結局顔を一度も合わせることなく静香ちゃんのお母さんに相談を行っただけでした。

静香ちゃんは改めて人を信じてみたいという決意を固めたようです

結局今回の帰省は、時女一族をさらに二つの勢力に分けてしまうような要因を作ってしまっただけかもしれません。

そんな結果を聞いて分家の子達は複雑な気持ちになっていました。

どうにかして静香ちゃんが人との共存を目指そうと説得を行うものの、みんなが賛同することはありませんでした。

なかなか一族が今まで通りに戻らない中、神浜でテレビが復旧したという話を受けて、珍しいものを見ようと静香ちゃん、すなおちゃんと一緒にテレビが設置されたという竜真館へ行きました。

そこには魔法少女がたくさんいて、一部の魔法少女は私たちに声をかけてきました。

「おや、あなた達は確か時女一族の方達ですよね」

しかし私たちには覚えがありませんでした。

覚えている方達といえば、いろはさんとあとはピリカさんに怪我を負わせた魔法少女くらい。

「ほら、あの顔合わせの会議の時ですよ。

まああの時はピリカさんが突然倒れてそれどころではなかったですが。

でも今まで外に姿を見せなかったのに、テレビの噂でも聞いて飛び出してきましたか」

「まあ、そんなところですね」

すなおちゃんがそう答え、私と静香ちゃんは苦笑いするしかできませんでした。

いたか覚えがないなんて、言えない。

テレビでは他愛もない番組が流れている中、画面が急に荒くなっていきました。

「なに、故障?」

みんなが故障を疑っている中、画面が復活したかと思うと世界を大きく変えることになる演説が映し出されました。

アンチマギアプログラム

その内容は人間が魔法少女の発生を抑制し、現存の魔法少女達を支配するような内容でした。

周囲の魔法少女達は怯えた顔をするばかりで、その中にはひっそりとついてきていた分家の子達もいました。

「ちかちゃんに、旭ちゃん?!」

「涼子殿もいるでありますよ」

「わざわざ報告しなくてもいいだろ」

「…みんな戻るわよ。

これは、いい加減決断しないといけないことよ」

真面目な顔をした静香ちゃんがそう言うと、みんなはうなづいて時女一族のみんなはお寺に戻りました。

そして、みんなを集めた静香ちゃんは、私たちに相談もせずこんなことを言い出しました。

「私たちは巫、魔法少女であると、日の本に明かしましょう」

みんなはざわつき始めます。そんな中、涼子ちゃんが切り出します。

「大将、自分が何を言っているのかわかってるのか」

彼らは私たちを確保するとは言ったけど始末するなんて言っていません。

日の本のために戦う存在が巫であると言えば、きっとわかってくれます。だから!」

「それで人の前に姿をあらわにすると。
静香さんも知っているはずです。この世の中には悪い人間がたくさんいると」

ちかちゃんがそう言っても、静香ちゃんは引き下がろうとしません。

「明日、政府へと申告しに向かいます。
一族のみんな、ついてきてもらえるかな」

みんな静まり返り、最初に発言したのは、私でした。

「嫌だ」

「ちゃる…冗談はやめて」

「冗談ではないよ。

あの放送の内容しっかり見たでしょ?

魔女になった魔法少女が人を襲った映像、そしてドッペルを出した神浜にいた魔法少女が人間を虐殺する様子

あれを見て魔法少女が危険な存在だって思わない人なんていないよ

私たちがいくら危害を加えないからって、普通の人間としては扱ってくれない。

きっと、危険な存在として監禁されるだけだよ」

「そんなこと!」

「そんなことあります」

次に声をあげたのはちかちゃんでした。

「私の魔法少女になった経緯は知っていますよね。

危険な存在だと認識された上で、まともな扱いがされないことは目に見えています。

きっと利用されるだけです。

考え直してください!」

「…私は、一族の長について行きます」

「お前、本気か!」

分家の一人が静香ちゃんに賛同したのです。

その声を筆頭にポツポツと静香ちゃんについて行きたいと言う声が出てきました。

「本気なのか、お前たち!」

「人にも優しい人は、お父さんとお母さんのように優しい人はきっといるはず。

そう信じたいのです!」

「私もです!」

「わ、わたしも」

「みんな…」

結局人を信じたいと思っていたみんなが静香ちゃんについて行くと言いました。

「すなお、あなたの意見も聞かせて」

すなおちゃんはとても悩んだ顔でなかなか話そうとしませんでした。

「すなおちゃん、はっきり言ったほうがいい時もあるよ」

私がそう言うとすなおちゃんは深呼吸をして、静香ちゃんの顔を見ながら言いました。

「私は、行くべきではないと思います。

きっと、酷い目に遭うだけです」

静香ちゃんは少し泣きそうな顔になってしまいました。

「どうして…わかってくれないの」

その後は静香ちゃんが個室にこもってしまったため、私は個別に今後どうするのか聞いて回りました。

最初は一緒に外で月を見ていたちかちゃんと旭ちゃんに意見を聞いてみることにしました。

「静香殿の気持ちはわからなくもないでありますが、アンチマギアプログラムなんてものが実施された世の中で魔法少女が生きていけるとは思えないでありますよ」

「人はいくらでも騙そうとしてきます。静香さんが信頼している人もきっと偉い人の命令となればいくらでも裏切ってくるでしょうに」

二人は静香ちゃんの意見に否定的なようです。それぞれがいう理由は、自分の経験から言っていることなのかなと少し気にはなりました。

あまり二人のことは深くは知らないけど。

「どうしたら静香ちゃんは考え直してくれると思う?」

「結構意志が硬めの表情でしたからね。諦めさせる方法がないくらい、説得は難しいと思います」

説得が無理なことはわかってる。

でも、行かせちゃいけないと思うんだ。

いろんな子に意見を聞いても意見がまとまらず、布団で寝転がりながら考えていると知らないうちに眠ってしまいました。

そして目覚めたのは、外が騒がしい中すなおちゃんに声をかけられた時でした。

「外が騒がしいけどどうしたの?」

「静香がここを発つっていうんです。

日本政府に姿を見せるんだって」

私は急いで騒がしい玄関へと急ぎました。

外では引き止めている涼子ちゃんと毅然と立っている静香ちゃんがいました。

「大将、あんな放送があった後だ。

人間が普通に接してくれるわけがない。

考え直してくれ」

「私たちの考えは変わらないわ。

涼子ちゃん、道をあけて」

両者が睨み合っているところに私は飛び込みました。

「ちょっと何やってるの静香ちゃん!

馬鹿な真似はやめて!」

「私は冷静よ、ちゃる。

おかしいのはあなたたちよ。

少しは人を信じようとしてみてよ」

「私たちはもう信じれないよ!

受け入れられたって、人間社会自体が」

「悪いものは私たちが正せばいい。

それで人間社会だって健全になるわ」

「いつの間にそんな傲慢な考え方を…」

「話しても無駄でしょ」

そう言うと静香ちゃんは見慣れない刀を取り出しました。

「その武器、一体どこから」

「魔法で生成するって方法を教えてもらったの。

我が一族の刀はどこかいっちゃったし」

静香ちゃんは鋭い目つきでこちらをみながら刀の先をこちらに向けてきました。

「構えなさい、ちゃる。

私を行かせたくないと言うなら」

私は仕方なく十手を構えましたが、そこにすなおちゃんが割って入りました。

「やめてください!

時女一族同士が争うなんておかしいです!」

「すなお、あなたはどっちなの!」

すなおちゃんは悩んだ顔をしながら静香ちゃんから目をそらし、少ししてから涼子ちゃんの方を見てこう言いました。

「涼子さん、静香を行かせてあげてください。

その後の結果は全て私の責任にして構いません!」

「だが」

「行かせてあげてください!」

涼子ちゃんはどこか不満げな顔をしながら道をあけました。

静香ちゃんは武器を下ろし、すなおちゃんに話しかけます。

「すなお、あなたは来てくれるの?」

すなおちゃんはうなだれたまま、ただ首を横に振るだけでした。

「…必ず、あなたたちを迎えにくるから」

そう言って静香と人間を信じたいと思う子たちは水徳寺を後にしました。

私たちはしばらく気持ちを切り替えずに過ごしていましたが、切り替えざるを得ない出来事が起きます。

静香ちゃん達が出て行ってから次の日の夜があけた頃、紫色の霧が水徳寺を覆いました。

私たちは急いで外に出ましたが、中で逃げ遅れた子達はだんだん動かなくなり、テレパシーを送ることも受け取ることもできなくなりました。

そして、私たちが飛び出した先にいたのは、テレビで見たことがある特殊部隊と言える服装をした兵士たちが銃をこちらに向けて包囲していました。

「おとなしく言うことを聞けば痛い思いをしなくて済む。

素直についてきてもらおう」

抵抗しようという子が感じ取れたので、全員に対して抵抗しないようテレパシーで伝えました。

私たちにはこの場をどうしようもできない。

そんな中、知らない魔力反応を示す魔法少女の集団が近づいてきました。

その場に突風が発生して、紫色の霧が周囲から消えたかと思ったら、見慣れない魔法少女達は鎖やら鎌で兵士たちが銃声を鳴らす間も無く首や引き金を弾く方の腕を切り落としていきました。

あっという間の出来事でした。

生きている兵士がいなくなった頃、鎌を持った魔法少女が話しかけてきました。

「随分と大所帯だが、どこに避難するかは決めているか?」

「いや、今は何が起きているんだかさっぱりで」

「特に決めていないならば中央区の電波塔跡を目指せ。

あそこに怪我人や避難したものが集まっている。

あそこにいれば少なくとも安全だろう」

そう言って鎌を持った集団は去っていきました。

「さてどうするでありますかね」

「旭ちゃん?」

なぜか旭ちゃんとちかちゃんは武器を手に持っていました。

「神浜中にあの妙な兵士さん達が現れているんですよね。

道中出会うかもしれませんし」

「それに、お世話になった皆さんを助けた方がいいとも思いましてね」

「二人とも」

「でもどうするよ、ちはる」

声をかけてきた涼子ちゃんも武器を構えた状態でした。

「涼子ちゃんまで」

私はみんなの向けてくる目を見ずに思いを伝えました。

「私の意見を待たなくてもいいよ。それに、もう一族が集まって動く必要も」

「そうは言ってもね。

私らは他に行き場所はないし、こうやって分家同士が集まってる方が心地良くなってるんだよ。

だからそんなこと言うなよ。

今まで通りやっていこうや」

周りの様子を伺ってみると、みんな涼子ちゃんの意見に賛成しているようでした。

みんなを率いていくなんて気は全然ないけど、意見を求められたら答えるくらいの心持ちでいようかな。

「じゃあ、私は神浜から変な兵士さん達を撃退しようと思うけど、ついてくるかどうかはみんなに任せるよ」

「ま、そんなノリでいいさ」

こうしてあの日、私たちは神浜の魔法少女達と協力して謎の兵士たちを追い出しました。

あんなことがあった後、静香ちゃん達が無事なのかは不安ですが、きっと無事だと信じています。

 

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-2-14 国を守る 国の何を守る?

私達はあの日、神浜市から人が誰もいなくなった日に気がつくと皆散り散りとなっていました。

だれもがどうしてここにいるのか分からず、特に何かがあったら集まるようルールも決めていないのに、みんなは水徳寺に行けば誰かいるのではと自然と集まっていきました。

静香ちゃんは大怪我を負ったまま旭ちゃんに保護されて、今は寝室で寝たままとなっています。

私は静香ちゃんが目を覚ますまでの間、他の時女一族の子達の様子を見て聞いて回りました。

やはりみんな変わってしまっていました。

でもその変化を受け入れる者、抗いたい者がいて、時々喧嘩が起きては私たちが仲裁するの日々でした。

今日も静香ちゃんが眠る寝室へと来ていました。

寝室ではすなおちゃんが静香ちゃんの看病をおこなっていました。

「ソウルジェムは無事でよかったけど、傷が塞がらない前にきっとドッペルを出し続けたんだよね」

「そうだと思います。

ここへ運び込まれた時は本当に血の気がない真っ白な状態でしたが、今ではこうして元の顔色に戻っています。

輸血もしないのにここまで回復できたのは、魔法少女だからとしか言いようがないですね」

「そうだよね。なかなか目覚めないのも、体の回復がまだだからなんだよね。

いつか目が覚めるよね」

「もちろんですよ。そう思いながら、今は待つしかないです」

私は静かに寝室を後にしました。

寝室を出ると、廊下で涼子ちゃんが声をかけてきました。

「大将、まだ目を覚ます様子はないか」

「私には分からないかな。

今は静香ちゃんが目覚めても安心できるように時女一族のみんなを見守ることしかできないし」

「・・・旭から聞いたんだが、どうやら神浜にいる他の魔法少女は二木市ってところから来た魔法少女達と争いをはじめているらしい」

「今はそんなことをしているときじゃないと思うけど」

私達は話しながらお寺の縁側へと向かっていました。
縁側から見える月は変わらず綺麗でしたが、私の心には雲がかかりっきりです。

「今日ケンカしてた子達はどう?」

「ちはるのおかげで3人は落ち着いてはいたよ。
だがお互いに顔を合わせられるような状況ではないな」

「仕方がないよ、考え方の違いをわかりあうのは時間がかかるし」

立ったままだった涼子ちゃんは私の隣へと座りました。

「ちはる、あんたはもう時女一族の考え方にはついていけないのか」

「この国を守っていくって考え方は変わらない。守る対象は国であって、人間ではないだけ」

だが国ってもんは人間のお偉いさん達と国民から成り立ってるもんだ。
仮に人間を悪として成敗していったら、国がなくなると思わないか」

「国の考え方が違うよ。私が国として守りたいのは文化。

ここのお寺みたいなこの国ならでわの建築方法とか、昔話とか遊びとか。

季節ごとのイベントとかそういったものは人間が作り上げてきたと同時に、魔法少女も守ってきたものだから。

この国ならでわのものを守っていくって考えに、私は変わったの」

「国の考え方ねぇ」

今日ケンカしたという3人の子も、時女一族の理念について議論した結果生まれた衝突でした。

人間あっての国

文化があっての国

前者の考えであれば、人間を否定するとこの国を守ることを否定することになる。

後者の考えであれば、人間はいくら否定しちゃってもいいけど文化で国というものは成り立つのか。

国の捉え方で今は二つに分かれていて、今は若干文化があっての国という子達が多い状態です。

「人間あっての国というのは否定しないよ。

そう考えちゃうと、悪いことしか考えない国の偉い人たちをどうするのかって話になっちゃうのが怖いだけ」

「みんな同じ経験をしたんだ。
奴らの行いを暴いたらみんな構わずこの国のお偉いさんの命を奪うだろうだろうな。
それがこの国を守ろうとする行為なのか、それをしっかり考えなくちゃいけねぇ。

ちはる、あんたらの考えはこの悩みから逃げてるだけにしか聞こえないんだ

「やめてよ涼子ちゃん、わかってるよ。
でもこうして考えた方が、今後理念を守っていくにはちょうどいいと思う」

どの意見が正しいかなんて分からない。

本当は、どっちが正しいと決めつけるのが悪いことだと思うけど。

 

次の日の夜、すなおちゃんが私の元へと走ってきました。

「ど、どうしたの?!」

「静香が目を覚ましました!」

私はすなおちゃんと一緒に静香ちゃんがいる寝室へと急ぎました。

襖を開くと、そこには体を起こした静香ちゃんがいました。

「ちゃる…」

私は思わず静香ちゃんに抱きつきました。

「よかった、目を覚ましてくれて!
今は、それだけでもとっても嬉しいよ」

「うん…心配かけちゃってごめんね」

みんなが静香ちゃんが目覚めたと聞いて寝室まで集まってきて、この時ばかりは時女一族のみんなが明るい顔をしていました。

昨日まで喧嘩をしていた子同士が顔を合わせて笑顔を見せるほどでした。

状況が落ち着いてからわたしとすなおちゃん、静香ちゃんだけが寝室に残ってこれまでに何が起きたのかを話しました。

「そう、私達は人を殺めてしまっていたのね。

そして、人は守るほどの存在と認識するようになってしまったと」

私は思わず聞いてしまいました。

「静香ちゃんは、まだ人間のために巫を続けようと思う?」

「わからないわ。

人なんか守るほどのものではないっていうのはみんなと同じものを見たからわからなくはない。

でも、信じたくないのよ。
お母様までもが、あの人たちと同じであってほしくないって。
だから、わからないわ。すなおとちゃるは?」

すなおちゃんが申し訳なさそうに話を始めました。

「ごめんなさい。
私はもう、人のために悪鬼とは戦えません。
でも、この国は守りたいと思っています」

「でも、この国の人を守りたくないのなら」

「確かに国は人が作り上げた結果できたものです。そんな人が作り上げたものは嫌ってしまう。でも、その国で生まれた文化はなぜか嫌うことができませんでした。

なのでかろうじて、私はこの国を守ろうという意思自体はあります」

それを聞いた静香ちゃんは難しい顔をしてしまいました。

「文化と人って、切り離せるものかしら」

「人間ではなく、私たちが引き継いでも残ります。

文化のために人にこだわる必要はないと思います」

「そう…私にはよくわからないわ。

ごめんなさい」

「大丈夫ですよ。すぐにわかってもらう必要はないですから」

「ちゃるは、どうなの?」

私は答えにくかった。

回答したのはすなおちゃんと同じ意見。

少し違うことを言ったと言えば。

「私、お母さんに会うのが怖いんだ」

「どうして?

何か助言してくれるかもしれないじゃない?」

「お母さんに相談したら、それが最後の会話になりそうで、怖いんだよ。

静香ちゃんと同じく、お母さん達は違うって信じたい。

それで、あの見てきた光景と同じ考えを持つ人だと断定されてしまったらって思って。

嫌なんだ、嫌なんだよ、決まっちゃうのが」

私は思わず泣いてしまいました。

信じていたい。
でも出会ったらそうではないと確定してしまうという予感が優ってしまう。

きっともう私達は人を信じれない。

だから、そうであってほしいでとどめていたいのです。

私達はみんな暗い顔をしたままそれぞれの寝床へ戻りました。

静香ちゃんはきっとお母さん達に会いに行こうというでしょう。

でもそれは、とても危険な気がします。

この時女一族という集まりが、離散してしまう決定打になりそうと私の勘が告げてくるのです。

一緒に行こうと言われたら・・・。

次の日、静香ちゃんは今の時女一族がどんな状況なのかを見て回りました。

静香ちゃんの意見に賛同する者、そうではない者
それぞれの意見を聞いて回ったようですが、静香ちゃんへの賛成派は3分の1程度でした。

静香ちゃんは内部のこともそうですが外部のことも気になっていました。

外部のことについては自ら偵察に出ていた旭ちゃんがよく知っていました。

「環さん、今はいないのね」

「はいであります。

一応皆は人間をこの神浜に寄せ付けず、環ういを正気に戻す方法をいろは殿が持ち帰るのを待っているという状況のようであります」

「それがもう、3日前…」

「いろは殿が神浜を出た後、うい殿とワルプルガを奪おうと動く勢力が現れて神浜はまだ安心できる状況ではないであります」

他の魔法少女は動き始めている。

でもそれは、人間を否定する考えの上で。

それに、魔法少女同士で争い始めてしまっている。

今の神浜の事実を知って、静香ちゃんはいつまでも納得できない顔でいました。

次の日、静香ちゃんは分家もいる前で宣言しました。

「私達本家は、一度霧峰村へと戻ります」

「静香?!」

「静香ちゃん?!」

「人を守る気を本当に無くしてしまっていいのか。
それが私達時女一族として正しい選択なのかを、原点に帰って考え直す必要があると思うのよ。

分家の方達には、神浜で待っていてもらいます」

そう説明している中、分家の1人が静香たんに尋ねました。

「しかしよろしいのですか、もし親と対面してしまったら」

「だからこそ。

親子の関係はそうそう切れない物。

そして時女一族の人間が皆良心が確かにあるとわかれば、私達は人などどうでもいいと言えなくなります。

それを確かめに行きます」

みんなへの宣言が終わった後、私は特に反論することなく静香ちゃん、すなおちゃんと一緒に霧峰村へと戻りました。

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-2-13 過去と未来、大事なものは?

神浜の自動浄化システムは、ワルプルガという少女が願えば世界に広げることができるらしい。
ワルプルガの所持権を奪って神浜の魔法少女へ復讐しようなんて言う意見が内部で出たものの、私はワルプルガに願いを叶えさせる策があるという環いろはに任せてみることにした。

私は日継カレンとの出会いをきっかけに修羅の道を突き進もうという気はとっくに失せていた。

とはいえ虎屋町はともかく竜ヶ崎のメンバーを納得させるには強硬手段を演じるしかなかった。

だからああやって神浜の魔法少女へ、環いろはへの挑発行為をおこなった。

あれらの行為が今後のためになるなんて思っていない。

でも私は、演じ続けなければいけなかった。
再び二木市の魔法少女同士が争わないためにも。

私たちが一度二木市へ戻った後、アンチマギアプログラムという魔法少女を排除する動きが世界中で活発になり始めた。

この影響は二木市でも起きていた。

父親には魔法少女であることがばれて、魔法少女を取り締まるところにすぐにでも届けだそうとしてきた。

私は酷く失望した。この人は、私を守ってはくれないのだと。

私は家を飛び出す前にみんなへ注意を促したものの取り締まる者たちの質は予想以上で、次々と魔法少女達が謎の兵士たちに捕らえられていった。

その兵士たちは、魔法が効かない物質を使用していて下手にその物質に触れると体が動かなくなって簡単にとらえられてしまう。

兵士たちから逃れたものを集めて、私たちは捕らわれた仲間の奪還作戦を実施した。

しかしその作戦では、公共で使用されている建物を容赦なく破壊し、動けなくなった敵を殺していくという人間を殺すことに慣れなくては実施できないような作戦を実施した。神浜へ行ったメンバーがみんな人間を躊躇なく殺す様子を見て、二木市に残っていたメンバーは絶句していた。

「ゆ、結菜さん、何も殺してしまわなくても」

「彼らは本気よ。

やれる時にやっておかないと、明日は我が身よ」

救出作戦自体は成功して捕らえられた仲間は救えた。

でも、救えたのはまだ二木市にいた子達だけ。最初に狙われた蛇の宮にいた子達を中心に既に外部へ運び出されてしまった子達は助けることができなかった。

その中にはアオもいる。

助け出した子達はソウルジェムが紫色の液体につけられた状態になっていて、そのソウルジェムを体の上においても目覚める様子がなかった。

彼女達の目覚めを待つために私達は身を隠せる場所を探した。

その末辿り着いたのは仲間達が眠る、この場所だった。

「結菜さんこれからどうするんですか。いつかここも敵に見つかってしまいますよ」

「すでに見つかっているわ。
敵は隠密作戦に慣れているのか、上手く隠れているわ」

「そんな、いつの間に。
なら早くここから離れないと」

「離れて、どこに行くというの?
元からここを離れる気はないわ」

「え、それってどういう…」

アンチマギアプログラムと呼ばれる取り組みはあらゆる魔法少女を取り締まるもの。

魔法少女自身もそうだけど、魔法少女に関わるものや場所も念入りに調べられる場合がある。

それはもちろん、ここに眠る魔法少女だった子達も例外ではないはず。

ここが部外者に荒らされるなんてことは避けたい。

だからここから逃げ出すなんて選択肢はない。

ここは私たちにとって最後の砦でもあり、なんとしても死守しなければいけない場所よ。

逃げ出すなんて考えはないわ。

それに、まだ動けない子達だっている」

そう言った私に対して睨みつけている樹里が話しかけてきた。

「だが姉さん、食料にも限度がある。

ここを取り囲む奴らをどのみち蹴散らさなきゃならねえ時が来る。

なら、さっさとぶっ倒しちまった方が早いだろ」

「救出作戦の時に確かに敵の数は減らしている。

でも、想像よりも手加減をされている感じがするのよ。

変に奢って飛び出せば思いがけないしっぺ返しを受ける可能性があるわ」

「でもよ」

みんなはともかく、私はここを捨ててはいけない。
ここを捨てるなんて、命を散らした皆に申し訳が立たない。

どうすれば、ここを捨てずに皆を守れるのか。

悩んでいると外が突然慌ただしくなった。

「何事?!」

外に出てみると兵士を刺し殺す魔法少女達がいた。その中には神浜へ待機させていた子達もいた。

「あなた達、どうして」

「ひかる軍団!風を巻き起こすっす!」

迫ってきていた紫色の霧はどこから取り出したか分からない団扇を持ったひかるの軍団によって吹き飛ばされていた。

「ひかる!なんで戻ってきたの!」

「私も一緒さ」

ひかるの側にはさくやもいた。

「さくやまで」

「結菜達を助けにきたのさ。もちろん、私たちだけじゃない」

さくやが目を向けている方向を見ると、そこには環いろはの姿があった。

「なんで彼女と一緒なの」

「話は後だ。早く二木市から逃げ出そう!」

「それはできないわ」

「なんでよ!ここにとどまるよりは神浜で体制を整えた方が安全でしょ」

「さくや、私に二木市を捨てろというの!」

「奴らの目的は侵略じゃない!魔法少女を捕らえることよ。

町が奪われるわけじゃないでしょ」

私は再びカタコンベの中へと戻った。

「奴らが調査としてここを漁るかもしれない。そんなことは許されない。

許されることじゃないわ!」

そんな私たちの会話へ環いろはが割り込んできた。

「皆さん!早くこちらにきてください!

逃げる準備はできていますから」

「何も知らないで、お前は!」

私は武器を環いろはに向けて振り下ろした。

当然ではあるけど、その攻撃は彼女に当たることはなかった。

「どうして攻撃するんですか!私は助けに来ただけで。

今は魔法少女同士で戦っている場合ではないはずです!」

近づいてくる兵士たちに対し、穴の中にいた樹里達が外へ出て応戦を開始した。

「まったく、でも、姉さんがここを譲れねぇってんなら樹里様も引くわけにはいかねぇな」

皆この場所から逃げようとしない。

しかし兵士の銃に当たって動けなくなる子が出てきた。

「結菜!」

さくやの声で驚き、さくやの方を向いた。

「もういいだろ。

ここにいるみんなだって、いま生きている二木市のみんなに生きてもらいたいと思っているはずだ。」

「でも、私は、ここを譲れない!

私だけ置いてみんなは早く逃げなさい」

「結菜さん!」

また環いろはが会話に割り込んできた。

「さくやさんからここがどんなに大事な場所か聞きました。

この町で死んでしまった子達が眠る場所なんですよね。

人間に譲れない気持ちは十分にわかります」

さくや、余計なことを。

「だからあえて言わせてもらいます。

過去に生きていた仲間と今生きている仲間、どっちが大事なんですか!」

「何ですって…?」

環いろはは目を逸らすことなくこちらを見続けている。

この子は私を怒らせに来たの?

「何やってるんだ!増援が来ちまうぞ!」

外からそんな声が聞こえても環いろはは顔を逸らそうとしない。

私の意見を聞きたいというの?

「・・・どちらも大事なものよ。だから」

「だからこそ、今生きてる人が大事じゃないのですか?」

環いろはは握手を求めるかのように右手を出してきた。

いなくなってしまった人たちは今生きている人が覚えていてくれるからこそ残り続けられる。

眠っているみんなのためにも、結菜は生き続けないといけないんじゃない?」

環いろはの隣にいるさくやはそう言った。

そんなことはわかっている。

でもここにいる子達が、そんなことを許してくれるだろうか。

「私が生き続けていいのかしら。

この街で散っていった子達は、先輩は、わたしがここから離れることを許してくれるの?!」

「結菜さん…」

環いろはは右手を下ろし、内部へと入ってきた。

「ちょっとあなた」

空間の中央にいくと、環いろはは深く礼をした。

そして顔を上げてこう宣言した。

「ここに眠るみなさん。この町にとって結菜さんは大事な存在だというのは知っています。

だからこそ、彼女を私が連れ出します。

そのせいでみなさんの静かな眠りが脅かされたり、結菜さんに何かがあれば、私を呪っても構いません。

どうか、よろしくお願いします」

そう言って彼女は再び頭を深く下げた。

そして彼女は顔を上げてこちらへ向き直った。

「言質は取りました。

ここに眠る方たちも、きっとわかってくれると思います。

みんなで神浜に行きましょう!」

私は環いろはの横に先輩が立っている気がした。

その顔は穏やかで環いろはの提案に乗ることを促すかのような感じだった。

「あなたって、案外強引なのね」

「結菜さん?」

私はテレパシーで全員に伝えた。

[さくや達が手配した脱出ポイントへの移動を開始してちょうだい]

[結菜さん、それでは]

「これは敗走ではないわ。

この町を安全に住めるようにするための準備をしにいくだけよ。

さあ、急いで」

皆が一斉に神浜の方向へと流れていくことが外の様子からわかった

「結菜さん、ありがとうございます」

「しっかり最後まで責任を取ってもらうわよ、環さん」

「はい、もちろんです」

「結菜さーん!急ぐっす!」

動けない子を連れ出している中、環さんが運び出そうとしている子たちのもとへと向かった。

「手伝いますよ」

「でも」

[手伝わせていいんですか]

外に連れ出そうとする子が私にテレパシーで確認を求めてきた。

[構わないわ。手伝わせなさい]

[わかりました]

「わかった、助かる」

動けない子たちが外へ連れ出されたことを確認すると、私はカタコンベへの入り口を入り口を破壊した。気休めではあるものの、これでカタコンベが調査される時期を遅らせることに繋がればいいと思った。

外に出るとほとんどの子達は神浜から来た他の魔法少女に誘導されて移動していた。

彼女達の移動が完了するまで、樹里をはじめた竜ヶ崎の子たちが兵士たちを足止めしていた。

「もう十分よ。あなた達も急いで」

「わかったよ。

お前ら行くぞ!」

「はい!」

一人が煙幕を巻いて兵士達からの視界を遮ったあと、樹里達は撤退を開始した。

そんな中、煙幕の向こうから銃が乱射されてきた。

それらの銃弾のうち一発が樹里の左足を貫いた。

「樹里!」

「構うな!行け!」

そう言われて竜ヶ崎の子達は動こうとはしなかった。

「行けってんだよ!」

そんな様子を見かねた樹里は竜ヶ崎の子達へ火炎放射を放ち、竜ヶ崎の子達はやむを得ず脱出先へと急いだ。

兵士の足音が近づいてきて、樹里が諦めたかのような顔をしていると、らんかが樹里を抱え上げた。

「お前?!」

「勝手に死んでもらっちゃ困るんだよね」

らんかは樹里を抱えながら脱出場所へと急いだ。

それでも兵士たちの足は速く、捕縛用のアームが飛び出してきた。
間違いなく捕まるというところを見慣れない魔法少女達が銃でそのアームを撃ち落とした。その後は兵士たちの足を止めるようにどこから持ち出したかわからないRPGを撃ち込んだ。

神浜から来た他の魔法少女達が兵士たちを牽制している中、私たちがたどり着いたのは貨物列車だった。

「あんなものを持ち出すなんて」

ほとんどの子達は貨物列車のコンテナに乗り込んでいて、樹里とらんかを待つだけだった。

私は貨物車へ乗り込み、らんかから樹里を受け取った。

最後にらんかが乗り込み、そのタイミングで神浜の魔法少女達も貨物車へ乗り込んだ。

そのうち一人が貨物車の上に乗り、操作席がある最前列の車両を連結から切った。その最前列の車両の周りにはなぜかドラム缶がたくさん置かれていた。

その後に貨物車は神浜へ向けて動き出し、しばらく動くと切り離された最前列の車両が爆発した。

「これで、奴らはすぐに列車で追いかけてなんて来ないだろう。

RPG抱えてる奴はいないだろうな!」

そう一人が聞くともう一人からの返事が聞こえてきた。

「視認はできない!

道中いるかもしれないから索敵はしておくよ!」

貨物列車に何か起こることもなく、私達は神浜の魔法少女と神浜に待機していた仲間達の手当てを受けていた。

「樹里さん、これはしばらく左足は使えないかも」

「マジかよ。あいつらの銃弾そんなにやばかったのかよ」

「魔力供給を断ち切る効果があるらしい。あの紫色の霧と同じ成分だろう」

そう樹里へ話しかけたのは銃を携えた見慣れない魔法少女だった。

「やけに詳しいな。あんた」

「神浜でも同じものを見かけたからね。

でも強いあんたと手合わせするのが先延ばしになったのは、残念なことだ」

「…へぇ。あんたもそういうやつか」

「強い奴を求めるのは、悪いことか?」

「いいや、悪くねえ」

何だか二人は気が合うようだ。

そんな二人の様子を眺めていると、環さんが私と視線が同じになるよう座って話しかけてきた。

「ごめんなさい。無理やり連れ出すようなことをして。

でも、放っておけなくて」

「いいえ。意固地になっていた私が悪かったのよ。

あなたに言った話、覚えているかしら」

「それなら既に準備が整っていますよ。

その方達に、少し神浜へ慣れてもらう時間が必要ですが」

「そう。なら、あなたに突っかかる必要もないわね」

「今は魔法少女同士で争っている時ではありません。

一緒に戦ってください。そして、いずれは二木市も魔法少女が普通に住める場所へ戻すために」

「ええ。その時まで協力してあげるわ」

環さんと話しているとさくやとひかるが近づいてきた。

「やっと強がりを止めるのか」

「みんなもわかってくれると思ったからよ」

「何はともあれ、結菜さんが無事でよかったっす!」

かつてバラバラだった二木市の魔法少女達は神浜という共通の敵があることでかろうじて協力できる状態になった。

その標的が、人間に置き換わっただけ。

自動浄化システムが世界に広がり、わたしたちを襲う脅威さえなくなれば、私達は無駄に争わずに済む。

これまでの戦いで死んでしまったみんなも、きっとわかってくれるだろう。

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-2-12 慈悲が過ぎる行為

私達は神浜への移動中にアンチマギアプログラムのことを街頭のテレビで知りました。

「やちよさん、この内容って」

「世界が魔法少女を見る目を変えてしまう。しかも最悪な方向へ」

神浜へ向かう足取りは早くなり、翌日からは街の近くへ行くと武装した兵士を目撃するようになり、時には攻撃を受けることもありました。

魔法少女ではない子達を庇いながら戦うのは困難であり、逃げるという選択肢しかなくまともに戦いはしませんでした。

とはいえ、逃げようと放った攻撃が彼らに効かないことだけはわかっていました。

魔法が効かない相手が神浜にもきているのだということを思うと、みんなが無事か気になって仕方がありませんでした。

神浜へ到着すると神浜は兵士に囲まれてはおらず、魔法少女達がいつも通り歩き回っていました。

私達が最初に顔を合わせた魔法少女は眞尾ひみかさんでした。

「いろはさんにやちよさん!いやぁ無事でよかった!

ん?後ろにいるのは?」

「あの、神浜ではなにかなかった?」

「ええ、いろはさんがいなくなってから色々ありましたよ。

でも大丈夫です!少なくとも今は安全です!」

ひみかさんの話を聞いている最中、遠くから目線を感じたのでその方向を見ると、神浜の魔法少女ではないですが見慣れた顔がありました。

しかしその見慣れた顔が少ないような。

「ひみかさん、あの魔法少女達って」

「ああ、いろはさんも知ってると思いますがプロミスドブラッドって名乗ってるグループですよ。

いろはさんがいなくなった後にういちゃんをさらおうとしてきたんですよ」

「ういを?!」

「でも安心してください。

ういちゃん達は里見さん達が匿ってるようなので無事です」

「よかった」

私は少しプロミスドブラッドに状況を聞きたいと思いました。

でも今はさつきさん達を案内しないといけないし。

私はやちよさんの方へ向き直りました。

「やちよさん、みんなを休める場所まで連れていってもらえますか?

私はプロミスドブラッドの子達に聞きたいことがあるんです」

「出発する前にあれだけ煽ってきたグループよ。

いろは一人を行かせるわけには」

「大丈夫ですよ。

あれ以来この街の見張り能力は向上していますから。

安心してください」

目から光がなくなったひみかさんからそうつたえられました。確かに周りにたくさんの魔法少女の気配が多いような。

「わかったわ。
いろは、無理をしちゃダメよ」

「はい」

さつきさん達のことはやちよさんにまかせ、私はプロミスドブラッドのメンバーに接触しました。

「ちょっといいでしょうか」

「環いろは!戻ってきていたのか」

「ついさっきですけどね。

結菜さん達の姿がないようですが」

「お前に教える必要はn」

「結菜達なら二木市に戻ったよ。仲間がまだ二木市にいるからね」

「それって、あの全国放送が行われる前に、ですか」

「ええ、そうよ」

「ちょっとさくや、何普通に教えちゃってるの」

「私たちじゃ今以上にどうしようもできないでしょ」

きっとあの兵士達が神浜へ来たと同様に二木市にも現れていたのだろう。

あの兵士達が現れてからしばらく経つのに神浜に避難してきていないとなると、苦戦している可能性がある。

それとも。

「プロミスドブラッドのみなさんは二木市に思い入れはありますか。
なければすぐに神浜へ避難してもいいと思いますが」

「地元に思い入れがないわけがないだろ!

あそこには楽しい記憶も、辛い記憶もあるんだ。そう簡単に手放せるわけがない」

「それで、今の生存よりも地元愛を優先して捕まるのを待つのが、結奈さん達の考えなのですか」

「あんた、言わせておけば、
ふざけんじゃないわよ!」

「私は多くの魔法少女を助けたい。

でも、死にたいと思ってる子を無理やり生かそうとは思いません。

教えてください。今結菜さん達は生きようとしてるのですか!」

そういうと一人の魔法少女が近づいてきました。

「確かに結菜さんなら二木市で命を落とそうとか考えかねないっす」

その魔法少女は二木市があるであろう方向へ向いて話を続けました

「でも、少なくともひかるは結菜さん達を死なせたくないっす。
こんな時に、死ぬ必要なんてないっすからね」

「助けに行きませんか。私達で」

私がそういうとプロミスドブラッドの魔法少女達は驚いてこっちを見ました。

「いいの?私達はあなたへ恐喝したり妹さんを攫おうとしたし殺そうともした

そんな私たちを助けようっていうの?」

「もちろんですよ。あれも本意ではなく理由があってのことだと信じていますから」

「お人好しすぎるんじゃないか、環いろはさん。

でも気持ちはありがたいよ」

「では早く向かいましょう!早いだけいいですから」

「ちょっと待て、今の流れで行くことになったのか、しかもこの人数で?!

さくや、私達が命じられたのは神浜の偵察だ。戻ったら何言われるか分からないよ」

「だから危険だとわかっている結奈達を助けに行かないって?

それは違うでしょ」

「それは、そうだけど」

プロミスドブラッドのメンバーが話し合っている間、私は近くにいる魔法少女へ伝言しました。

[聞こえますか]

[いろはさん?!プロミスドブラッドと接触して平気ですか!]

[うん、大丈夫。

やちよさん達に伝えてください。

私はプロミスドブラッドと共に二木市へ行って魔法少女を助けに行きます]

[ええ…ええ?!]

[お願いしますね]

[ちょ、いろはさん!]

私は一方的にテレパシーを切りました。

「ついてきてくれるのはあなただけ?

まあ、あれだけのことをやったら当然か」

「必ず力になります。
案内してください、結奈さん達のいる場所へ!」

「なんか楽しそうなことを企んでるじゃないか。あたし達も混ぜてくれよ」

そう言い寄ってきたのは私たちをずっと見ていた魔法少女達の一部魔法少女姿から武装をしていてとても目立っていたので覚えています。

「三重崎の方達、ですよね」

「そうそう!覚えててくれて嬉しいよ。

二木市の奴らを助けに行くんだろ?

だったら手伝わせてくれ」

「三重崎のあなた達とは交流はなかったはずだけど?」

「そんな冷たいことを言うな。魔法少女同士助け合わないといけなくなったご時世だ。

それに、あの火炎放射器使うやつと戦いたいと思っていたんだ。

一戦も交えずにいなくなられるのはちと寂しいと思ってね」

「あんた達なりの思惑はあるってことだね」

「手数は多い方がいい。それに、環さんよりはあたしたちがあの兵士たちへの対処をよく知っているはずだ。

どうだ、連れていってくれないか」

「ありがとうございます。

あの、お名前を伺っても」

「私の名前だけ覚えてくれればいいよ。

咲(さえき)って名前だ。よろしく。

早速だが妙案があるんだ。ついてきてくれるか?」

私達は咲さん達についていき、辿り着いたのは神浜の車両基地でした。

そして咲さん達は一両の貨物車をいじり始めました。

その様子を見ていたプロミスドブラッドの一人が咲さんへ話しかけました。

「あんた達まさか電車使用して助けに行こうとか考えているわけ?

「そうだがどうした。

ただでさえ包囲されているかもしれない二木市だ。

大人数をスピーディに運搬できるのは車両ぐらいだ。

ちょうど線路がつながってるわけだし、使わない手はないだろう」

「いやいやいや、封鎖されてるかもしれないしそもそも誰が運転するのさ」

「イノッチが運転できる。まあ魔力使えば誰だって運転できるんだけどね
ああ、イノッチはあいつのことだよ」

「よろしく~」

機関部をいじっている子が陽気にこちらへ手を振ってきました。彼女がイノッチさんなのでしょう。

「とんでもない奴らだ」

「ほら、出発するまで何やるか思い浮かばないのならその空のコンテナにドラム缶を積み込んでくれないか」

「何に使うんですか」

「魔法が効かない相手への対抗策さ」

電車の準備が進んでいき、コンテナが3両つながった5両編成の貨物車が用意されました。

私達はコンテナ部分へ乗り込み、日が沈もうかという時に貨物車は車両基地を出発しました。

レールの切り替えはイノッチさんが銃で行い、今まで二木市とつながっていた線路へと合流しました。

思わぬ寄り道をすることとなりましたが、魔法少女を助けるのが第一です。

ういには、それまで待ってもらうことにします。

 

 

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【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-2-11 再起の巫女

「キク、本気で言ってるの?」

「ああ。私は環達と一緒に神浜へ行く」

「私を置いて行くの?」

「お前がついてこないっていうなら、置いて行くしかないな」

神社の裏側の本殿と呼ばれる場所にいたさつきさんへ、キクさんには神浜に行くという演技をしてもらうことになりました

心が不安定になったら、さつきさんをおかしくした何かが本性を表すかもしれない。そういうやちよさんからの案です。

さつきさんの顔は曇り、小声で何かを呟き続けました。

そして、わたしたちの方を睨みつけました。

「あなた達ね、環さんと七海さんがたぶらかしたのね!」

「私達は神浜がどんな場所か教えただけです。
その後に自分で決めたのはキクさん自身です」

「さつき、そろそろお前も自分で決めて行動したらどうだ」

「私はいつだって自分で決めているわよ!」

「じゃあここから離れられない理由はなんだ」

「それはお父さんとお母さんに頼ま…」

さつきさんは何かに気付いたかのように言いとどまってしまいました。

「あれ、私は自分の意志でここに残らないとと思った。そうよ、残らないとって思う理由が確かにあった。

でもこれ、自分の意志じゃなく、い、言われたからみたいじゃないの」

綻びが見え始めました。

どうやら本当の目的があったからここから離れられなかったようです。

でもそれがいつの間にか、父親と母親に言われた言葉がきっかけで残っているに変わってしまった。

「行かないで・・・キク・・・行かないで」

さつきさんは肩を震わせながら泣き始めてしまいました。

「だったらなんで動かない事に固執するんだ。ここにはもう何も」

「いえ、ここ封印した」

“カワイソウニ,カワイソウニ“

さつきさんが何か思い出そうとした時、声が聞こえてきました。

”オトウサントオカアサンノイッタコトヲマモッテルダケナノニ“

本殿内は魔女の気配で包まれました。

「この反応、あいつと同じ」

”キクハイイコ、イイコ、ダイジナモノヲウバウワルイヤツハ、ハイジョシナイト“

「排除、しないと」

さつきさんの目から光が消え、何かに操られるかのようにさつきさんは私たちへ襲い掛かってきました。

無数の光る札が私たちへ放たれ、それは避けられるような密度ではありませんでした。
受け止める術がない私のためかやちよさんは前に立って無数の槍を生成して光る札を相殺していきました。
しかしいくつかはすり抜けてきてそれらはやちよさんが槍で弾いたものの、2,3発はじいたところで槍が砕けてしまい、私とやちよさんは2,3カ所に切り傷を負ってしまいました。
その頃には召喚された光る札は消えていました。

「やちよさん!」

「この町で一番強いとは聞いていたけど、想像以上の強さね」

「さつき!しっかりしろ!」

周囲はいつの間にか魔女の空間へと変わっていました。

「いろは、少しだけ彼女の注意を引いてもらえる?」

「わかりました」

わたしはさつきさんへ矢を放ち、私へ注意を引き付けます。やちよさんはその間にキクさんへ何か聞いていました。

「キクさん、あなたの家族はあの魔女にどうやって殺されたの」

キクさんは歯を食いしばって答えていました。

「忘れるものか。あんな感じに家族を洗脳して私と対峙させ、最終的に自殺させたんだ」

「そう、洗脳が得意な魔女なのね」

「ふざけやがって!」

キクさんは普段武器として使用している斧を構えてさつきさんに突っ込みました。

さつきさんは避けようともせず、キクさんの斧を受け止め、柄の部分を容易く折ってしまいました。斧を受け止めた際、さつきさんが足をつけていた地面はえぐれましたが、さつきさんはびくともしません。

キクさんは構わず武器を捨て、何度もさつきさんの顔へ拳を打ち続けました。

「おまえは、そうやって!誰にでも優しく、しようとするから!つけ込まれるんだ!

不器用なくせに!勉強もできないくせに!他人にばっか優しくしようとして!少しは自分も大事にしろ!

バカヤロウが!」

さつきさんは繰り出される拳を何度も受け止めていましたが、最後の一撃だけはなぜか防ごうともせず、キクさんの拳はさつきさんの顔を殴りました。すると間もなくさつきさんの背後から複数の札が出現し、キクさんの動きを止めました。そして逆にさつきさんがキクさんを押し倒したのです。

「キクさん!」

しかしさつきさんは手を出そうとしません。

「さつき?」

「そんなにひどく言わなくていいでしょ!

全く、今のは結構効いたわよ」

さつきさんの目には光が戻っていました。

「正気に戻ったか!」

「ええ、こいつを封印した後、こいつを倒せる魔法少女が現れるまでここから離れられないって思ってたところまで思い出したわよ」

さつきさんは禍々しく光る札の方へ向き直りました。

「ふざけた真似してくれたわね!」

そう言ってさつきさんは禍々しく光る札へ勢いよく別の札を飛ばし、禍々しく光る札は真っ二つに裂かれました。

その中から出てきた魔女は、シルクハットを被り、白い手袋を履いた足のないお化けのような見た目をしていました。

「バカ!なんで解き放った」

魔女は見た目を変えていき、男女の人間へと姿を変えました。

”サツキ、ワタシタチノカワリニ“

さつきさんは膝をつき、頭痛を抑えようとしているかのように頭に手を当てていました。

「さつき!」

「なんでよ、なんで抗えないのよ!
あのふたつは、偽物なのに!」

”ナニモカンガエナクテイイ,イワレタトオリニシテ”

私達は魔女を弱らせるために攻撃しようとしますが、さつきさんから札が飛んできて身動きが取れなくなりました。

札の縛り付ける力は強く、いくら力を入れてもほどける気がしません。

「さつき、やめろ!」

「わたしは、ワタシは」

再びさつきさんの目から光が消えつつありました。

男女の人間はさつきさんに近づきながら包丁を手に構えました。

“ダイジョウブ、ラクニシテアゲルカラ”

そう言って男女の人間が包丁を振り下ろすと、その間へキクさんが割って入りました。

キクさんは背中で包丁を受け、深く体に刺さり込んでいました。

その状況を見てさつきさんの目には再び光が戻ります。それと同時に私たちを縛っていた札が消えました。

それと同時にわたしたちを拘束していた札が消えていきました。

「キク!」

「大丈夫さ。魔法少女の体は頑丈だからな。ソウルジェムが壊されない限り耐えられる」

苦しそうにそう言うキクさんへ、男女の人間は再び包丁を振り下ろします。

キクさんは苦しそうにそれを受け止めます。

「キク!」

「さつき、こんな状態でも、魔女は倒せない存在なのか」

さつきさんは怯えた顔になって、男女の人間を見ました。

「ごめん、私だけじゃ・・・」

震えた声で怯えるさつきさんへ私は手を伸ばしました。

「さつきさん、ひとりでがんばらなくてもいいんです。

私が手伝います」

私の方を見たさつきさんは小さくうなづき、私の手を取りました。

その時にコネクトが発動し、私とさつきさんの手の中には和弓がボウガンのようになった武器が握られていました。

それでも怯えているさつきさんへ私は声をかけました。

「さつきさんはきっと、魔女という存在を誤解しています。

あれは、魔法少女だった子が残した後悔なんです。

あれを倒さないと、魔法少女だった子は快く成仏できないんです。ずっと苦しんだままになっちゃうんです。

魔女退治っていうのは、苦しんでいる子達を、楽にしてあげる役目もあるんです」

「本当?倒しちゃったら、魔法少女だった子を殺すことにならない?!」

「殺したことにはならないですよ。

魔女を倒した方が、魔女になってしまった子も喜んでくれます」

私がさつきさんを説得している間、やちよさんが魔女を抑えてくれていました。
キクさんは血を流しながら魔女から離れていきました。

そんな空間へ、3人の子達が入ってきてしまいました。

「ここ、どうなってるの」

そんな子達へ魔女が手を鋭くして子どもたちへ伸ばしていきました

“カワイソウニ”

「お前ら逃げろ!」

すばやく動けないキクさんを尻目に魔女の手は勢いよく子どもたちの方へ向かっていきました。

誰も止められないと思った時、さつきさんの右手から放たれた札が魔女の手を止めました。

「そうよね。躊躇してちゃ、ダメよね」

札は増殖して魔女の手を締め付けていき、引きちぎってしまいました。

“ドウ、シテ”

さつきさんは大きな魔力の篭った破魔矢を生み出し、ボウガンにセットしました。

「一緒に放ってくれるかしら、環さん」

「はい、あの魔女を倒して楽にしてあげましょう!」

さつきさんは札を呼び出して魔女を縛り上げ、やちよさんの助けがなくても魔女は動けない状態になりました。

魔女は縛られながらも再び男女の人間に変わりました。

“ヤメテ、サツキ”

「私の記憶を好き勝手使って…

もう、迷わないんだから!

消えなさい!マガイモノ!」

破魔矢は放たれ、男女の人間を貫きました。

魔女は元の姿へと戻って破魔矢が貫いた場所から溢れる光に包まれ、魔女は消え去りました。

周囲には温かい光が残り、それはキクさんの傷を癒しました。包丁に刺された傷が元に戻るくらいの治癒力でした。

そして魔女の空間は消え去り、屋根が吹っ飛んだ本殿に戻ってきました。
魔女がいた場所には一つのグリーフシードだけが残っていました。

「何今の、すごい!」

子どもたちは勝手に盛り上がっていて、さつきさんはキクさんへ手を伸ばしました。

「よくもまあ私をぶん殴るなんて乱暴なことしたわね」

「思いっきりぶん殴られたら誰だって少しは正気に戻るだろうと思ってさ。魔法少女だからって思いっきりやらせてもらったよ」

「絶対正気に戻そうって以外の雑念あったでしょ」

「さあ、どうかな」

さつきさんとキクさんは笑い合っていました。

私達は二人の談笑が終わるまで待ち、話が終わったところでさつきさんはこちらに話しかけてきました。

「ありがとう、環さん、七海さん。

私あなたたちに大きな迷惑をかけてしまったわね。ごめんなさい」

「私からは礼を言わせてくれ。やってわかったと思うが、私だけじゃどうすることもできなかった。だから二人がいてくれてよかった。ありがとう」

「気にしないでください。さつきさんが元に戻ったようでよかったです。

えっと、それで神浜に行く話ですが」

「ええ、私も神浜へ行くわ。

もちろん、この子たちを連れて。いいでしょ?」

「まあ、来てくれるのでしたら。

いいですよ。みんなで行きましょう!」

「何何?どこへ行くの?」

「神浜って場所へ旅行よ。さあ、出かける準備して」

「はーい!」

こうしてさつきさんは神浜へ来てくれることになりました。

思った以上に神浜を離れちゃったけど今はどうなっているのだろう

そして、世界中にアンチマギアプログラムという存在が知れ渡ったのは、私達が神浜へ出発したすぐ後でした。

 

 

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