1-6 機転

再び本棚がある部屋へ辿り着き、気づかれるの覚悟でペン状のライトを点けて室内を調べた。

しかし倒れてくるであろう本棚に近づかず調べても、隠れられそうなのはかろうじて本棚の下にある隙間だった。

本棚の下にある隙間へ隠れる覚悟で先ほど倒れた本棚へ近づくと、再度倒れてきた。

外から化物が駆け寄ってくる音が聞こえる中、倒れた本棚に隠れていた壁に灯りが当たった。

するとその壁に隙間が少し見え、その隙間から見える壁の厚さは突き破れそうなくらい薄かった。

まさかの逃げ道が見つかり、私はその壁へ飛び込んだ。

その先はバグった廊下によって入れなかった部屋だった。

すぐに入れそうな戸棚があり、そこへ私は身を潜めて灯りを消した。

化物は薄い壁を破ってこちらの部屋の様子を伺う仕草を見せていた

しかし目が悪い化物は部屋の中まで入ってはこないで本棚がある部屋からも出ていったようで周囲は静かになった。

私は戸棚から出て一呼吸した。

部屋の中はほのかに木材の匂いがした。

周囲が静かになっているので再度ライトを点けて周囲を確認することにした。

部屋の中にある机は切り傷やドリルで開けたような穴がいくつかあった。
机の所々には何かを挟む器具が取り付けられている。
そして窓際にはドリルがついた台、円盤状のヤイバがついた台が並んでいた。

私はここが拷問室に使われていたのかと思った。どこか危機感を感じながら目的地へつながる道を探した。

入ってきた場所とは反対側に扉をみつけたが、鍵がかかっていて入ることができない。

鍵がかかっていると知って私は職員室の鍵箱が一瞬頭をよぎったが、私はそこへ向かうことを強く拒絶した。
鍵箱に関わると再びあの危機を体験しないといけなくなるのではと。

この部屋だけで解決する方法はないか。

今の自分の体の大きさ、筋力を考えて力尽くという選択肢はまず消えた。

次に思い浮かんだ選択肢はピッキング。

とはいえピッキングに関しては全く知識がなくてやりようがない。

やってみないとわからないこともある。

チャレンジしようと思い、鍵穴の奥が見えるかライトを鍵穴へ近づけた。

その鍵穴、なんと何者かにすでにいじられた後なのかボロボロになっていていた。正規の鍵を刺そうとしても刺さらないほどの状態に。

前にチャレンジした者がやったのだろうか。

殺意と共にため息が出てしまった。

こんな救いようもない扉、どう開くことができるのか。

何か使えるものがないか拷問器具だらけの部屋を歩き回った。

とはいえ使い方がわからない道具だらけ。

ドリルのような道具は台に固定されていて持ち出せない。

見慣れたノコギリがあったものの、扉へ刃の入れようがない。

ノミとハンマーが使えそうではあったものの、それは扉の素材次第。

扉と周囲の壁を観察すると、扉は木材でできているようだった。

ノミを蝶番近くに当てて、ノミのかつら部分をハンマーで叩いた。

部屋に響く金属音は弱々しく、扉にはごくわずかしかノミが食い込まなかった。

その後何度か叩いたが、扉に穴が開くには途方もない時間がかかると察した。

私は自分の非力さに呆れて思わずフフっと笑ってしまった。

もうどうにでもなれだ。

私に力がないなら、力がある奴を利用するまでだ。

私はわずかに食い込んだノミを引き抜いて地面に投げつけた。

私は顔を上げた先にある廊下に繋がる扉を見て少し考えた。

無駄に死ぬよりは次のために、少しは試してみるのもありか。

ハンマーを持ったまま私はバグが発生している廊下側の扉を開いた

廊下のほとんどはバグに侵食されていて、人が隣の部屋まで通れる隙間はなかった。

そんなバグの中へハンマーの先端をつけた。

そしてバグから引き抜くと、ハンマーの先端部分がバグに巻き込まれ始めていたものの、ハンマーへの侵食はほぼ進んではいなかった。

やけになった私はバグった側を扉へ叩きつけるようにハンマーを振った。

部屋には大きな音が響いた。

その反動が腕に来て、私はハンマーを持ったままその場で腕を押さえてしまった。

ハンマーを叩きつけた部分は少しバグり始めていたものの、穴は開いていなかった。

その後狂ったように何度も扉へハンマーを叩きつけた。

そんなことをしていると化物が気づいて部屋へ駆け込んできた。

私は感覚が無くなりそうな左腕を振り上げながら、扉を背にして化物へ怒鳴りつけた。

「ほら!来てみろよ!」

化物は奇声を上げて突進してきた。

私は化物が目の前に来た頃に廊下側へ素早く避けた。

化物は勢いのまま閉ざされた扉を突き破った。

私は急いで行けなかった部屋の中へ入った。

ライトを照らしながら部屋の中を見渡すと、目的だった通信機と思われるものと、赤く光る玉を見つけた。

「やっと辿り着けた」

そう呟いた横では化物が起き上がっていた。

そして再度奇声を上げながらこちらへ飛びかかってきた。

私は右手に持ったライトを落とし、左手に持っていたハンマーを両手で持つ形で大きく振り上げ、化物の頭へ振り下ろした。
バグった側が化物の頭に叩きつけられると、物理法則を無視するように化物の動きがその場で止まった。

私が恐る恐るハンマーから手を離すと、化物の頭に食い込んだのかハンマーは化物の頭から離れなかった。

その後は糸が切れた人形のように化物はその場へ倒れ込んだ。

私は死んだか確認するためにライトを拾い、何度も化物の顔部分へ蹴りを入れた。

・・・びくともしない。

流石に死んだだろうと判断した。

それにしてもこうも簡単に殺せる相手だっただろうか。

そう疑問に思っている中、バグが徐々に化物の頭を侵食している様子が見てとれた。
バグが化物の頭を侵食してくれたおかげだったかもしれない、そう思った。

バグは化物の武器になるというのは良い収穫だった。

今度は勝ち誇ったようにフフっと笑ってしまった。

私は赤く光る玉へ近付いた。
赤く光る玉は私に惹かれるように近付いてきて私の中へ吸収された
その後はいつものように頭の中へ回想が流れた。

 

=========

洞窟内で生きて向かい合っている人物が2人いる。

2人の周りには戦闘が行われた痕跡があり、男女が1人ずつ血を流して倒れている。

生きている2人は共に女性で、片方は魔法陣によって手足が固定されている。

その魔法陣は黒魔法で生成されたもので、人間が扱える魔法ではない。

捉えられた女性はもがいて魔法陣から逃れようとしているものの、魔法陣はびくともしない。

「なんで他の仲間は殺して、私だけ生かしてるんだ。裏切り者のアドシア!」

話しかけられている側の女性は捉えられた女性へ語りかけた。

「私の偽装に気付けないあなた達が情けないのよ。

そしてアドシアなんて名も偽り。

※※※※というのが本名よ」

肝心の名前部分が聞き取れない中、捉えられた女性は驚いた顔をしている。

「何言っているんだ。それは邪神の名だ。馬鹿にしているのか?」

「私の名を語る奴が他にいるならば始末しているわ。

※※※※という名は唯一無二。

神本人があなたを認めたのよ。感謝しなさい」

「嘘だ。神というのはもっと神々しいオーラがあるはず。

なのにお前は、オーラもなく魔物の雰囲気もない人間と同じじゃないか!」

捉えられた女性が混乱する中、邪神は人間の姿のまま語り続けた。

「あなた、白魔法を使うのに魔法戦士をやっているじゃない?

白魔法に魔法戦士という概念は今までなかった。白魔法を使いながら前衛を担う場合はパラディンに属されるからだ。

あなたは最初にギルドで魔法戦士判定されて魔物の擬態だと騒がれていたわね。

でも後にあなたはリースウェルの名のもとに最初の白魔法を扱える魔法戦士であると認定された。

白魔法でありながら黒魔法のような攻撃系の魔法を扱える希少な存在が、あなた。

そんな希少な存在、欲しくなっちゃうじゃないの」

「なんで私の経緯を知っている。

リースウェル様は私をいつも見ていただいて、その結果お認めくださった。

そんなことを、なぜ邪神は知っている?邪神は私のことをどこまで知っているんだ」

捉えられた女性は体を震わせ始めた。

「私を、どうするんだ」

「どうするって」

邪神は捉えられた女性の顔を指差した。

「私たちの仲間になりなさい。この私が直々に指名しているのだから待遇は良くするわ」

「断る!殺すなりなんなりしろ!
なんでこの魔方陣びくともしないんだ」

捉えられた女性は即答し、一層魔方陣から逃れようと暴れだした。

「まあ、知ってたけど」

そう言って邪神が指をパチンと鳴らした。

すると捉えられた女性の周囲から紫色の霧と共にドス黒い触手が生えてきた。

「魔瘴気?!いやだ!魔物になりたくはない!」

魔瘴気は体内に取り込みすぎると魔力の要素が変異して白魔法を扱う者は黒魔法に適応してしまう。

その際に肉体の性質も黒魔法に適応できるよう、人間から魔物へ変わってしまう。

触手は先端から捉えられた女性に向けて黒い液体を放った。

黒い液体に触れた衣服や鎧に該当するものは溶けていってしまった

腕と足に少し布が残った状態で捉えられた女性はほぼ全裸になってしまう。

そんな捉えられた女性に触手は絡まっていき、魔瘴気と呼ばれる霧が捉えられた女性を包んだ。

捉えられた女性が魔瘴気を吸わないように息を止める中、触手は乳首とクリトリスをなぶりだした。

捉えられた女性はしばらく耐えたが、酸素不足が限界になったのか、快楽で反応してしまったのか大きく息を吸ってしまった。

それからは早かった。

魔瘴気には淫らな感覚にさせる成分が含まれていたようで、魔瘴気を吸い込んだ瞬間に捉えられた女性は何度も絶頂してしまった。

陰部が潤った頃、触手がそこへ潜り込んで膣内に向けて上下運動を繰り返す。

抗っていた捉えられた女性は素直になって行為を楽しんでいる。

ついに触手が液体を捉えられた女性の体内へ放つと、周囲にいる触手達は液体を捉えられた女性の体へ放った。

紫色の液体が滴る中、捉えられた女性は笑顔になりながらビクンビクンと痙攣していた。

その後も触手は捉えられた女性の口内にも侵入し、何十分もかけて液体を捉えられた女性へ何度も注入していった。

2時間近く経過した頃、捉えられた女性の肌は青白く変異し、腰からは蝙蝠のような羽が生えた姿へと代わっていた。

邪神が様子を見に来ると、触手達が成果を報告するかのように拘束を解きながら変異した女性を差し出した。

「さあ、これからは私のもとで頑張るのよ」

「はい…」

その後、白魔法を使っていた魔法戦士は黒魔法を扱い、白魔法に耐性がある魔物として人間の脅威となったという。

 

私はこうやって白魔法を扱う珍しい人間を魔物側へ堕とすのが大好き。

次のターゲットは、もちろんあの異世界から来た少女。

=========

 

回想はここで終わったようで、次の目的地がすぐに映し出された。

地下へ続く階段を降り、化物達がたくさんいる廊下を進んだ先に赤いランプがついた箱型の機械がある部屋に、次の球がある。

はっとすると現実の風景に戻ってきていた。

あの回想は、本来の私の記憶だと思って良いのだろうか。あんなことを好んでいたのか。

私はなんとも言えない気持ちになったが、魔法の知識は少しだけ思い出した気がした。

残念ながら、この世界は魔法という概念がないのか、使える気がしなかった。

ただ、バグに関しては僅かに魔力を感じられた。

再びバグを使って何かできそうな気はした。

そんなことより、今は老人から頼まれていた通信機とやらを持ち帰らないといけない

通信機はなんとか持ち上げられ、謎のケーブルを束ねて図書室まで運んだ。

廊下には化物が相も変わらず徘徊している。

私は手に持てる瓦礫を拾い、バグ空間の方へ投げた。

バグ空間で瓦礫が床に落ちる音を立てた。

その方向に化物達が我先にと走っていく。

廊下にいた化物達は綺麗にバグ空間へ入っていった。

流石の化物もバグ空間に入ったら二度と出てこないだろう。

私は化物の気配がなくなった廊下を悠々と歩きながら校長室へ戻り、梯子を登った後にケーブルを握って通信機を引っ張り上げた。

その後は板の橋で間違えて落とさないよう慎重に運び、屋上の階段脇に通信機を置いた。

あとはつづりに報告しないと。

そう思って階段を降り、昼間に時間を変えた。

 

 

Back page→ 1-5

list:トップページ

Next page→ coming soon…