グチャリ
カチッ ピッチュチュクリ
消えようとする意識の中でかろうじて聞こえてしまった謎の音。
その正体は第三者視点でしか確かめようはないが、きっと何かを貪る音なのだろうというのは、生前直前に起きた様子から想像は出来た。
私の直前の死因は、化物に頭がい骨を砕かれたからだ。
突然の出来事だった。
逃げ場もない部屋に、いきなりあんなものが入ってくるなんて…
薄暗い部屋
ここは少し埃っぽく、日の光はほとんど入ってこない場所のようだ。
私はこの部屋で目覚めた時、少々汚れたベッドに寝ていた。
ここはどこなのだろう
なぜこんな場所で寝ているのか、私にはわからなかった。
でもこの部屋でこれから起こるであろうことはなぜか察していた。
体を起こすとしっかりと手足はあり、
無意識に頭を触り、頭がい骨が割られて既に脳みそが見えてしまっているような状態ではないかを確認してしまった。
しっかり頭がい骨は脳みそを保護している。髪の上からしっかり確認できた。
夢…だったのか?
既に靴を履いている足を床に下ろし、ベッドに座る形でドアの方を見た。
ミシッ
この部屋で聞こえた環境音。
外では何か重々しい人ではない足音が聞こえた。
隠れなきゃ
私はその場で立ち上がり、
「ロッカー」と「ベッドの下」
私はベッドの下へ隠れた。
なるべく壁側まで体を寄せようとモゾモゾしていると、
足の形状は見ることはでき、爬虫類のように鱗状で爪は鋭い。
そんな化物はロッカーを乱暴に開けた。
その瞬間に私の脳内には、
化物はトカゲのような顔をしていて、私の首へ掴み掛かる。
その後私を持ち上げてもう片方の手で頭をつかみ、人外な腕力で頭がい骨を割られてしまった。
なんてなっていたんだろうな。
化け物は力強くロッカーを閉じ、ゆっくりと部屋を出ていった。
物音がしなくなるまで私はベットの下にいて、
「あれはなんなの」
私は部屋を出て廊下と思われる場所に出た。
廊下は窓が並べられており、
それとともに赤黒い液体だった跡も床には残っていた。
窓の外には明るいにもかかわらず、
見える町からは煙が数本伸びており、中には崩れた家も見えた。屋根の上にはさっきの化物みたいなやつが登っている場所もあっ
どうすればいいんだろう
そんな考えは浮かばず、
すぐに見えた階段をどんどん登っていき、
屋上は風がなく、
一体何なのかと近づくと、白く光る球の方から私に近づいてきた。
近づいてきたと気づいた頃には白く光る球は私の体に吸い込まれて
脳内にはいきなりどこかの光景が浮かび上がった。
今登ってきた階段を2階まで降り、
ここまで見えて脳内の光景は消えてしまった。
「行くあてもないし、そこまで行ってみるか」
次は見えた光景の場所まで行くべきだ。私の頭はすっとそうすべきだと理解していた。それに疑問を抱くことはなかった。
私は2階まで階段を降りた。
道中であの化物を見ることはなかった。
そんなものを顧みずにバリケードの前までたどり着いた。
バリケードは何者かに引っ搔き回された跡があったものの、
バリケードの奥からは人の声が聞こえた。
「ここからどうしようか」
「あれ?誰かいるのか?」
右の部屋からそう聞こえた。
そこには同じ背丈ほどの男の子がいた。
左手には包帯が巻かれていて、
「もしかして街から逃げてきたのか!」
「いや、気づいたらこの建物にいた」
「え?そんなことあるか?
まあいいや、外部の人間なんて久々だよ!」
喜んでいる男の子に対してバリケードの奥から低い男の声が聞こえ
「タクヤ、外で騒ぐな!
あいつらが寄ってくるから中入れ!」
「わかったよ!
ほら、お前も来いよ」
そう言ってタクヤは私の手を引いて部屋の中へ連れて行った。
部屋の中にある本棚は引き摺った跡があり、
本棚の後ろには人が通れるほどの穴が空いていた。
「ここを通っていくんだ」
そう言ってタクヤは穴の奥へ入って行った。
私もそのあとを追ってバリケードの奥へ入ることができた。
バリケード側の壁にはハンドルがあり、それをタクヤが回すと、
そうしている間に1人の見たことがないものを持った男が近づいて
しかし先は鋭くなく、なぜか細い筒が付いている。よく見ると引き金が付いている。この世界特有の武器なのだろうか。
そう考えていると男がタクヤへ話しかけていた。
「タクヤ、生存者がいたのか!」
「そうなんだけどさ、こいつ気づいたらこの学校にいただってさ」
「そうか…」
男は私の目線へ合わせるようにしゃがんで話しかけてきた。
「ここへ辿り着くまで辛い思いをしただろう。
思い起こさなくていい、今はここで落ち着いて行ってほしい。
私たちは君を歓迎するよ」
「はい…」
「俺がここ案内してやるよ!
お前、名前は?」
名前
そう聞かれて思い当たる単語は思い浮かばなかった。
まず自分が何者であるのかも知らない。
私は思わず尋ねてしまった。
「ナマエって、なに?」
「は?普通父ちゃん母ちゃんにつけてもらうだろ」
「そうなの?全然思い当たらない」
「んじゃなんて呼べばいいんだよ」
「さっき『お前』って言ってたでしょ?
「ええ…いいならそうするぞ」
そう言ってタクヤは階段を登って行ってしまった。
近くにいた男は、再びバリケード近くの監視に戻ったようだ。
バリケードの内側を見渡すと人がそれなりにいた。
上下階段近くで座って俯いている老人
廊下で立ち話する女性2人
近くの部屋で食料を管理している男3人
そして周りと雰囲気が違う2人
ここに来たところで私はどうしたら良いかわからない。
そんな中で私は周りと雰囲気が違う2人へ近づいて行った。
紫髪の女の前で、私には白く光る球と似た何かを感じた。
女の隣で男の子?
しかし紫髪の女は特に反応を示さなかった。
何か言いたげな男の子?はこっちを困った顔で見ていた。
こんな状況、気になって仕方がない。
私は紫髪の女へ話しかけた。
「あなた、光る玉を持ってる?」
「今回は少しもたつきましたね」
そう言って紫髪の女は槍を出現させて石突を床についた。
その後、周囲の時間が止まった。
これに似たものになぜか覚えがあった。
「いったい何をしたの」
「怪しまれないよう細工をしました。
手短に話しましょう。
私はあなたが言う光の玉を持っています」
紫髪の女は袖から黄色に光る玉を取り出した。
その光の球は浮かび上がり、私の体に吸い込まれて行った。
その後、知らない光景が脳に浮かび上がった。
====
城の中にいるようで、目線の先には玉座があった。
紫色の装飾が多い中、青白い光が部屋を照らしている。
玉座に座った存在についての情報が、脳内に流れてくる。
-私は生まれた時からここにいた。
-通常の生物学でいう成長の過程を経た記憶がなく、
-しかし生まれたての赤子と違って自分が何者かということはわかっ
-何者かに作られ、設置された存在。
-そんな違和感に、この世界の者は誰も追及しようとしない。
「—様、いかがなさいましたか」
玉座の存在の前には、自分より背が低い青肌の男が立っていた。
あれ…なぜ今話しかけられた存在が『自分』だと認識した?
この光景が、自分の見ている、または見た光景だとなぜ思えた?
見える光景は自分の意思に関わらず進んでいく。
「
「魔族にとってあなたは希望です。
そう簡単に前線へ出られて傷を負うものなら皆が心配してしまいま
「人間の神でさえ玉座に座らないと言うのに。
まああいつは上から見ているだけの臆病者だからなおのこと鬱陶し
「象徴という役割も大事ですよ。
強そうなものはしっかりここへ誘導差し上げますから」
「それだけでは足りないな。
しっかり黒魔法に染まって白魔法を裏切ってもらわないと。
私はそのためにいるのだから」
====
この後、元の世界の光景に戻り、
気がつくと紫髪の女が目の前にいる状況に戻っていた。
「なんなの、見えた情報が多すぎる」
「まずは見つけるべきと思うものを探してみては?
見た光景の続きが見えるかもしれませんよ?」
紫髪の女は何を知っている?
「あなたは何を知っているの?」
「
早く教えても無意味になりますし」
「なんなの…」
紫髪の女が持っている槍の石突を床につけたことで再度周囲の時間
時間が動き始めたと同時に、
「時間が戻ったの?」
そうとしか思えなかったので、紫髪の女にそう聞いてしまった。
「どうでしょうね」
…
とりあえず動こう。
動かず時間が過ぎるだけでは朽ちる以外に未来が無い。動いて私が何者か、何をすべきなのかを見つけないと。
とりあえずあの青い光を探すことにしよう。
list:
Next page→ coming soon…