【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-4-13 奇跡が創る世界

日継カレンはアメリカ大統領であるケーネスがいるシェルターの場所をカルラから聞き出した。

その後、カレンはイザベラの遺体を持ってケーネスがいるシェルターの場所へと向かった。
シェルターの扉は開いていて、外にはケーネス本人も出ていた。

カレンはそんなケーネスの前までたどり着き、イザベラの遺体を見せた。

「魔法少女か。そしてイザベラ・・・腕が!」

「あなたがアメリカ大統領、そしてイザベラの叔父であるケーネスさんですね」

カレンがそう言うと、ケーネスの護衛をしていたボディガードが銃をカレンへ向けた。その瞬間にボディガードの1人はカレンが出した魔法の糸によって簡単に切り刻まれてしまった。

周囲からは一般人の悲鳴が聞こえた。

「銃を下ろせ。攻撃の意思がある者は気にせず殺す」

「何を偉そうに!」

歯向かおうとするボディガードへケーネスは制止を促した。

そしてケーネスはカレンへ話しかけた。

「私は魔法少女のことをよく知っている。そしてイザベラが生きて帰ってこなかった、核がこの世界から消えたということがどういうことを意味しているのか、私はよく理解している」

「話の理解が早くて助かります。

では、人類の敗北宣言を実施いただけますよね」

「人類の敗北だと?!」

状況を理解できない一般人はざわついていたが、ケーネスは静かに首を縦に振った。

「だが人類の代表が私でよいのか?」

「アメリカという国以外が人間を主導したことがありますか?
人類への影響力でいえば、あなた以外適任がいません」

「わかった。君たち魔法少女は人類へ何を望むのだ?」

カレンはケーネスへ事前にヨーロッパの魔法少女達で用意していた原稿を渡した。ケーネスはその内容を見て少し渋い顔をしたが、敗北宣言を行うことを受け入れた。

「いいだろう。イザベラの後始末、私が担わせてもらう」

その後はケーネスからマギアネットワークを通じて世界へ人類の敗北宣言が行われた。

世界の人間はこの宣言の意味をほとんど理解できていなかった。

ケーネスは人類敗北宣言を行った後に、この後人間がどうなってしまうのかを原稿の中身を理解した上で読み上げた。

地球上から人間を追い出す。

そのために人類には月へ移り住むことを今後の目標としてもらう。
世界中の残った人間は人種関係なく北アメリカ大陸のNASA宇宙局周辺へ全員詰め込ませてもらう。

魔法少女へ反抗する、危害を加えようとするものは容赦なく殺す。
人間の法律や権威はすべて意味を成さない。
魔法少女への抵抗は死を意味すると思ってほしい。

人類の敗北宣言が行われた後、カレンはペンタゴン跡地へと向かった。

 

ペンタゴンの地下ではディアがいるはずの場所へカルラが向かった

しかしそこに残っていたのは、耳や口から血を出して心肺停止したディアだったものが横たわっているだけだった。

ディアのクローンによる延命技術は、本体が壊れる前に乗り換えを行う仕組みであるため本体が壊れてしまうと意味を成さない。
クローン培養装置内には眠ったままの個体一体が眠ったままだった。

クローンが培養器から出てくる前に本体との脳内データリンクが途切れてしまうと、クローンは本体とは違う人格が入ってしまうと過去の実験で実証済であった。そのためディアの脳内データが正常に引き継がれている確率は絶望的だった

ディアは脳内データの引き継ぎがうまくいかず、死んでしまった。

本体が壊れてしまった理由としてはデータが残っていて、高熱の魔法に晒された状況で大量のドッペルによる攻撃や魔法による攻撃を受け、一度に複数体のクローンが絶命した。このことによる脳内にもたらされたデータストームに耐えられなかったことが原因であった。

カルラは残ったクローン培養装置を開いてクローンを起こしたが、残念ながらクローン体は周囲を見渡した後に赤子のように泣き出してしまった。

「また私は錬金術師を潰しただけか」

カルラは悔しい感情を抱きながら槍を出現させ、その場でクローンを殺した。

「ディア、すまない。
私はお前を引き留めるべきではなかったのか。

私はあと何人の死を見届けなければいけないんだ」

カルラはその場で自分を刺そうとした。
そこへカレンが居合わせた。

「おかしいですね。
師匠からあなたは強い人だと聞いていましたが」

「・・・キミアは私への過大評価が過ぎる」

カルラは出現させた槍を地面へ力強く突き刺した。

「私は結局なにも生み出せなかった。今回で思い知らされたよ。
キミアへ大口叩いておきながら、魔法少女を高みへ導けたキミアに比べ、私は人を新たなステージへ導くために犠牲しか出してこなかった。

そしてこの結果だ。

感情を殺していたはずなのに、どうしてこんなに悔しさがこみあげてくるんだ」

そう語ったカルラは無意識に涙を流していた。

そんなカルラへカレンは近づき、カルラの横にあぐらをかいて話しはじめた。

「師匠もあんたと同じことに悩んでいたよ。

愚痴を聞いてくれと切り出された後、師匠はこの世界の人について絶望しているといっていた。


人は私が錬金術を教えた時から技術は進んでも、人の本質は全く変化しようとしていなかった。

死なない程度の食糧を蓄えて同じ土地の人々と助け合い、侵略者から土地を守るために「集団とリーダー」という概念ができた。

そこまでならよかったものの、技術が進んでやれること、やるべきことが増えるとリーダーはその土地を便利にするために、別の地域とのやり取りが欠かせなくなっていった。

初めての他国とのやり取りはそんなための事だったはず。

いつしか人は「自分のために」と考える輩が増えて、そこで人の本質の進化は止まった。

「自分のために」を重視する輩が集まった結果、「人間社会」が作られてそれが人のスタンダードになってしまった。

進化を促す芽を持った者もいたが、そのほとんどは「自分のために」を重視する「人間社会」の標的となって消されていった。「自分のために」には「現状維持」が必須だからだ。

魔女裁判や人種差別、常識という固定概念はいい例だ。

それが変わらず今まで続いている。

変えようとしたら何十億人という人々が「人間社会」と「金」を駆使して潰しにかかってくるこの世界で、人間の本質が進化すると思ったか?

魔法少女に賭けたが、結局は「人間社会」に消されるだけの運命だと悟っていた。

そんな絶望の中で、カレン、お前のようなこの世界の概念に抗う大きな力を持つ者がいたからこうして希望を抱けているのだよ。

どうがんばっても詰みな世界なことは師匠も承知していた。
アンタが何も生み出せなくても、攻める必要はない」

「そうか、カレン、お前がいたからこそだったか。

お前はいったい何者なんだ?」

「それはもっと親しくなってから話すことだ。

そのためにもまずは手伝ってくれないか。地下にあるアンチマギア施設の今後について協力してほしい」

「そうか。ならばもう少し長生きしてもよいかもしれない」

そう言ってカルラは槍を消し、目の前のディアの入れ物になるはずだった死体へ手をかざすと死体は青い炎に包まれた。

「火は気にするな。焼き尽くした後自然と消える。
アンチマギアを理解できる魔法少女はいるか?」

カレンは立ち上がってから答えた。

「わかっていると自称しているやつは既に地下にいるよ」

「そうか、まったくわからないよりはいい」

ペンタゴン地下に存在するアンチマギア製造装置は、最終的には聖遺物として扱うこととなって解体し、ヨーロッパへ輸送することとなった。

 

世界中では人類の敗北宣言の通り、人間の大移動が開始された。

魔法少女とのみ生活を共にしていた人間は対象から外されたが、人間社会の中で一定期間生活した人間はすべて移動対象となった。

これは人間社会という概念を破壊するためである。

主に陸路と海路が使用された。人間輸送を担当したのはヨーロッパの魔法少女と、戦いを好む魔法少女達によって実施された。

指示に従う人間は大人しく車両や船へ乗り込んでいったが、納得できないもの達は魔法少女達へ自分たちの立場と人間の常識を持ち出して反抗した。

しかし魔法少女に人間内の常識や階級は関係ない。

大手会社の社長であっても一国の議員であっても問答無用で船へ押し込んだ。

言うことを聞かない人類は多く、この時点で多くの人間が魔法少女に殺された。

魔法少女への対抗手段がない人間は次第に抵抗する者が減っていった。

人間を船に詰め込んだ後もトラブルは発生した。

移動中は人間用に用意された水と非常食しか載せられておらず、摂取量を守れないものがいた船は目的地に着く前に餓死者が出始め、内部で暴動が起きた。

魔法少女に危機が及んだ時は、エンジン室を破壊した後に魔法少女は船へ持ち込んでいたミラーズの鏡で避難した。

船に乗っていた人間は船の爆発に巻き込まれてそのまま海底へ沈んでいった。

地上では魔法少女から隠れてゲリラ化する人間が現れ、輸送が落ち着いた後はしばらくゲリラ化した人間の掃討が行われた

北アメリカ大陸へ固められた人類は外部へ逃げ出さないよう南北アメリカの魔法少女達に監視されることとなり、脱走者はすぐに殺された。

今の状況に納得しない人間がいる中、NASAを中心に月へ移住する計画が進められた。

その計画には錬金術師と魔法少女も協力し、科学や化学では解決できない問題を魔法で補い、期間短縮を図っていた。

北アメリカ大陸へ密集した人間は人間社会という仕組みを捨て切れず、人種ごとにコロニーを形成していた。

外部から食料や水が提供されないため北アメリカ大陸内での自給自足を余儀なくされた。

植物や家畜を育てやすい場所とそうではない場所があることで、コロニーの領地争いが当たり前のように起きた。

平和解決しようと話し合いで収まったコロニーはあったが、なぜか資源の優先権についての話が持ち出されて結局は揉めてしまった。

金についても種類がバラバラで金の価値を決める市場が無くなってしまったため、何で価値を測ればいいのか混乱が起きた。

アメリカ合衆国のコロニーがドルを基準にしようと言い出すと、ユーロ使用国が対抗してユーロを基準と言い出してどんどんと本来の金のあり方から遠ざかる議論が展開されてもいた。

そういった今までの生活様式から脱却できない人間はリーダーは、ルールは、誰がどこに住むのかという最低限の衣食住を全員が確保できるようにするという話に行き着くまでは時間がかかる状態であった。

 

魔法少女達はどう生きていくべきか試行錯誤を開始していた。

ヨーロッパや神浜での過ごし方を基準として考えられ、

・リーダーはつくらない

・金のような価値を代理するものは作りださない

まずはこれが最重要事項として、まずは最低限の暮らしができるよう衣食住を中心に皆が動いていった。

国という煩わしいものがなくなった今、国境というものを気にせず農業から始まり、畜産や漁業とできることから始めていった。

怠惰な魔法少女達も衣食住を整える重要性をテレパシーで共有され、いやいや協力してくれていた。

もちろんトラブルがないわけではない。

「おいおい、チョコを残すべきだからここはカカオ農園にしたほうがいいだろ」

「いやいやチョコなんて加工が難しいし、挽けばいいだけのコーヒー豆がいいだろ」

テレパシーでも譲れない状態になることは多々あった。
そんな状態になったときに、血気盛んなヨーロッパの魔法少女達が意見を出した。

「そういうことなら喧嘩で決着をつけようじゃないか。
場所は用意してやるから準備しておけよ」

ということが引き金となり、戦う力を鍛える場にちょうど良いとしてコロッセオを再利用した闘技場が用意された。

闘技場はかつての見世物や賭けの場となってはいけないということから、管理者を置くべきではないといわれていた。
だが結局は仲裁や死者を出さないようにということから、争いごとに慣れた二木市の魔法少女やヨーロッパや中東の血の気が濃い連中が闘技場を見守るようになっていった。

二木市の魔法少女と言えば、結奈は存命だ。

戦いが終わってソウルジェムにヒビが入ったまま神浜に戻ったのだが、その様子を見たいろはが結奈のソウルジェム修復を実行したらしい。

そのおかげで結奈のソウルジェムは元に戻り、変身後の姿は角が生える前の本来の姿に戻ったらしい。
結奈は心からいろはに感謝したという。

「ありがとう。神浜にいるあなた達との向き合い方、しっかり見直さないといけないわね」

これをきっかけに神浜の魔法少女と二木市の魔法少女との間で和解が完全に成立したらしい。今は仲良くやっているという。

丁度良いので現在の神浜についても話ておこう。

神浜は魔法少女だけでどう生きていけばよいのか迷う魔法少女達がまず行く場所となっていた。

テレポートの実験が成功していたこともあり、ヨーロッパだけではなくオーストラリアや南北アメリカ大陸、ロシアやアフリカにもテレポートが設置された。

神浜で衣食住の確立方法を学んだあと、学んだ魔法少女達は地元へ散っていくらしい。

その学びの中で、物々交換では限界があったようだ。
ゲームの中にあるようなクエスト形式で物のやり取りがされるようになった。
依頼を受け、報酬としてモノを受け取る。
主に食料や材料は依頼の品として納める必要があり、その見返りとして料理やモノを提供するといった感じだ。
中には材料を報酬として、材料を手に入れるための手伝いを依頼ということもある。
労力が物の価値と割に合うかなどは今も試行錯誤中らしい。

いろはを含めたみかづき荘のメンバーは衣食住を学びたい魔法少女達のサポートを行っている。
主に思いやりといった心について教えて回っていて、他の魔法少女がやりたがらない作業も進んで実施している。
いろはは相も変わらず自分のことが後回しになっているようで、疲れている様子に声をかけても「大丈夫」と言うだけで不安になっている者は多い。

神浜では歴史収集にも積極的だという。
魔法少女の歴史を残すうえでは旧時代の人類がやってきたことも後世に残すべきだとし、本好きの魔法少女達が世界に残っている書物を神浜に持ち込んでいる。
マギアネットワークに取り込まれたネット情報だけではなく、現物として残っている書物は大変貴重らしい。
そんな集まった書物たちを管理するために、かこもこの取り組みに参加しているらしい。
時には古本を当時の新品に能力で変えてしまう魔法少女もいるようで、読み解くには助かるが少し残念がる魔法少女も出たという。

歴史でいうならば、各土地に残る文化を残そうと活動する魔法少女達もいる。
時女一族は自分たちの持つ文化と共に日本の文化を守る活動を開始していた。
そこに賛同する日本の魔法少女達が集まり、日本の文化にあこがれていた魔法少女達はその活動に注目した。
部族出身の魔法少女達も文化を守りたいと時女一族を参考に、文化を守る動きをはじめていた。
主に無形文化財と人間が指定していたものは、このように魔法少女達が守っていくようになった。

見滝原の魔法少女達は相談した結果、マミを中心にして茶菓子の店を始めたらしい。
茶菓子店を魔法少女だけで確立させたのは初めてらしく、多くの魔法少女が詰め寄って初日は大変だったという。
今では世界中に菓子店などが増えたが、今でも味の評判は変わらず見滝原の魔法少女達が営む店には来客が絶えないという。

 

魔法少女だけで生きる道を開拓し始めたはじまりの地と言えるヨーロッパの隠れ家は、その役割を神浜に移して今はテレポートやマギアネットワーク、人類の排除状況、クエスト管理といった管理面の拠点となっている。
クエスト管理はマギアネットワークを利用して発行と完了状況が管理できるようになっている。
この拠点にはミアラの姿がなくなっている。
それはなぜか・・・。

この世界を救い、変えるきっかけとなったカレンは過去に多くの悪業もしているため、多くの魔法少女達の目の敵となっていた。
そんなカレンは魔法少女達の嫌われ者を続けており、各地の困りごとを解決しながら魔法少女達のガス抜きを行っている。
追いかけられては打ちのめして追い返す。そんなことを繰り返しているが、カレンは今でも元気にしている。

カレンがいつまでも元気そうな姿のため、協力者がいるのではと魔法少女達は考えを巡らせている。
協力者がいるのは事実で、ミアラがヨーロッパから姿を消したのはそのためだった。
新たな隠れ場をオーストラリアに用意し、カレンをサポートし続けている。
そこにはジーナやヨーロッパの魔法少女達も関わっており、かこも監視役として参加している。
カレンをサポートしている彼女たちだが、時にカレンが本当にどこに行ったのかわからなくなる時があるらしい。
この世界から消えてしまったのかというくらい姿を見せない期間が少しあり、しばらくすると何もなかったかのように姿を見せるらしい。
カレンとよく会っているカルラは「別世界も救いに行っているのではないか」と冗談交じりに言う。近くにいるキュゥべえも「カルラの言う通りかもよ?」と最近は冗談も覚えて笑って言って来るだけであった。

カレンは本当に別世界も救いに行っているのではないか、そんな噂が飛び交っている。

 

人間が月へ居住区を作り出すまでにも様々な出来事があった。

ロケットの打ち上げはもはや人体実験と言って良いレベルで繰り返され、多くの人間が犠牲になった。

重力脱出速度を実現させる方法として、ロケットの切り離しによるその場しのぎな方法は資源の無駄とされ波動砲の原理を使用したソニックロケッターという方法が考案された。

これは波動砲に使用された魔法石が生み出す衝撃波を初速を生み出すエネルギーとして利用し、減速することなく重力圏を脱出させるというものだった。

宇宙に出てからは水素燃料を消費するロケットへ切り替えられる。

発射台は垂直ではなく、地上から66.6度傾けた大型衝撃砲を使用する。

つまり衝撃波を生み出すのは発射台であって操縦席やコンテナは弾丸という扱いになる。

この初速に必要な魔法石の実験や、初速に人間が耐える方法のために多くの犠牲が出た。

そして大きな問題は打ち上げられる機体に地球へ戻ってくる方法が考慮されていないことだった。

人間側の研究者はもちろんそこを指摘したが、主任の魔法少女である灯花はこう答えた。

「追い出すことが前提なのに、戻ってくることなんて普通考えないでしょ?」

その回答を聞いて、カルラをよく知る研究者はカルラに助けを求めた。

「カルラさん、あの子をどうにかしてくださいよ」

「人間が絶滅する前に月へ定住できる方法を見つける方が早いだろうさ。
かかるGの抑制も、着陸後の生命維持施設の確立まで行けているのだからもう一押しさ」

「そんな・・・キュゥべえさんも何とか言ってくださいよ」

白衣を着てカルラの助手となったキュゥべえは表情を変えず答えた。

「ぼくとしても人類・・・いや今は人間と呼称するのが正しいかな。人間が絶滅するのは困るからね。
灯花には遊びもほどほどにとは言っておくよ」

「今まで遊びも含まれていたんですか?!」

キュゥべえは最近覚えた苦笑いを研究員へ見せた。

そんな中、人間は月へ到達することへ成功し、酸素が切れて窒息死する前にコンテナへ積んだ生命維持施設の設置に必死となった。

五月雨式に人間は月へ強制的に打ち上げられ、体の弱い老人などは初速のGで死んでしまったものも出た。

それでも人間の追い出しは強行され、アメリカ大陸から最後の人間が打ち上げられた頃には計画着手から50年が経過していた。

50年が経過すると魔法少女達は生活を安定させて活動しており、ほとんどは寿命を捨てて魔法少女になった頃の姿をとどめていた。

魔法少女でも子どもを求める者たちが現れ始め、ディアのクローン技術を応用した赤子の生成技術について進展も開始していた。

 

そこからさらに20年経過し、ある2人の魔法少女に育てられた子どもは、この魔叙事詩を見ていた。

「お母さん、私は今は人間なの?魔法少女なの?」

「鈴花ちゃんは人間だよ」

「私も魔法少女にならないといけないの?」

「無理になる必要はないよ。

魔法少女になった後に困ることをしっかり理解してから、どうしようか考えようね」

「そっか」

「梨花ちゃん、鈴花!

ちょっと手伝って!」

「わかったよ!

鈴花ちゃん、れんちゃんのとこ行こうか」

「うん!」

魔法少女の間に生まれた子どもは全員女性となるようになっており魔法少女の適齢期に入るまでに魔叙事詩で魔法少女について学ばせる場合が多い。

魔叙事詩にはこの世界でしか起こらなかった出来事が多数記載されている。

佐鳥かごめによってまとめられたマギアレコードと呼ばれる魔法少女の記録とは別に、ヨーロッパの魔法少女たちも関わった裏文書として魔叙事詩が執筆されている。

その魔叙事詩は今の魔法少女中心の世界に導いた存在 日継カレンにちなんで

『魔叙事詩 カグラマギカ』

と名付けられた。

この世界ではマギアレコードよりも魔叙事詩の執筆が進んでいる。

マギアレコードの執筆が途絶えてしまっても、この世界では魔叙事詩のページは増え続けるだろう。

この世界が続く限り、ずっと。

 

月に放り出された人間は、地球を取り戻そうと躍起になっていたが魔法少女達はそれを阻止することはなく放置していた。

そんな月にキュゥべえが訪れ、ひとりの少女と話をしていた。
その少女は、先祖代々受け継がれてきた魔法を打ち消すペンダントを持っていた。

「キュゥべえ、あなたは何でも願いをかなえてくれるんだよね?」

未だにディアとおなじ見た目をしているキュゥべえは少し困った顔をしながら答えた。

「君の因果量は確かにすごいが、願いたい内容によっては少し考えちゃうかな。
それに、ここで願ったらどのような扱いを受けるか、君ならわかるよね?」

「わかっているよ。
だから覚悟のうえで願わせて」

「そうか、君はその命を対価にして何を願うんだい」

「私の願いは・・・・!」

 

 

そう、どうなろうと、この魔叙事詩に次々物語は綴られていく・・・。

いつまでも、恒久に。

 

新時代へ導く神楽舞(カグラマギカ)  完

 

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