【マギレコ二次創作】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-4-11 軌跡と奇跡の破壊方法

キアラは背筋を伸ばし、カレンを見ながら大声で伝えた。

「ここの扉は私の生体反応が消えると同時に開く。

ここから先に行きたければ私を殺して行け!」

カレンはキアラへ問いかけた。

「真っ当な人間であるお前に聞く。

魔法少女なしの人類に、全ての人々が笑い合える未来はあると思えるか」

そんなカレンにジーナがテレパシーで伝えた。

[何やってるんだ。さっさと殺してイザベラへ止めを]

ジーナにはシオリが答えた。

[イザベラが何しようとしてるか聞き出すんだよ。

イザベラが素直に殺されるわけがないからね]

[手短にしろよ]

キアラはカレンへと答えた。

「人類すべてが幸せになるなんて無理だ。

誰かが笑っている中、その代わりに泣く者が現れる。

幸せを感じる者と同じ量で不幸を感じる者がいる。

逆に聞かせてもらいたい。

魔法少女は全員が幸せな世界を実現させることができるのか」

「魔法少女のみであれば可能だ。

相互理解はテレパシーで叶えられ、指導者やリーダーを作らず個の協力ができる。

残念だが、それができない人類は仲間はずれにさせてもらう」

「イザベラも賛同しそうな選民思想だ」

「イザベラが目指す未来と魔法少女が目指す未来、どちらに希望を見出せる。

教えろ人間」

キアラは少しだけ黙った後に答えた。

「人類の過ち 核をどうにかできる奇跡を、魔法少女が見せてくれるならば」

「ふんっ、人類が行き着くのはいつもそれだな」

ジーナがそう言った後にカレンは答えた。

「安心しろ人間。

魔法少女達が奇跡を輝かせて人類の過ちを祓ってみせよう」

「そうか。それなら安心して死ねる」

そうはいってもキアラはその場から動こうとはしなかった。

「どうあってもあなたを殺さないといけないのですか」

かこがそう尋ねるとキアラはかこを見ながら回答した。

「言っただろう、この扉は私が死ぬと共に開かれる。だからと言って自殺もできない。

私は従者だからね、義は通させてもらう」

「日本人特有の矛盾とした考えだね」

ジーナがそう言って鞭を出現させるとカレンはイペタムを構え、周囲には鉄パイプと鉄塊が浮かび上がってキアラへカレンは伝えた。

「日本人はそういうものさ」

キアラはカレンへと素早く走り込んだ。

体をくねらせて動かない左手を慣性に任せてアンチマギア製の刀を振るった。

アンチマギアの刀はカレンの足を狙い、右手の対ドッペル用の刀はカレンの左手を狙った。

真後ろに下がっても刀に触れてしまう状況でアンチマギア製の刀にはイペタムが、対ドッペル用の刀には鉄パイプが反応してそれらを受け止めた。

受け止められた後にキアラは素早く後ろへ下がってカレンへ向けて一回転した。

その勢いで両手の刀はカレンへ振りかぶられた。

それはカレンが後ろに下がることで回避し、カレンはイペタムをキアラへ振り下ろしたがキアラは刀を振り上げて鍔ぜり合わせることでやり過ごした。

その状況へジーナが乱入しようとしたが、それをかこが止めた。

「なんだよお前!」

「あれはカレンさん達に任せましょう。

私達は扉が開いた後のために待機しておきましょう。

苦戦するなら、その時に」

ジーナはカレン達の戦いを見た後にかこを見て答えた。

「わかったよ、手は出さないでやるよ。

勝手にカレンを分かった気でいるんじゃないぞ」

「今だけは仲良くやりましょうね」

キアラはカレンの攻撃を受け流すのではなく受け止めるようになっていて、最初と比べて右腕も自ら動かせなくなっており、左腕については付け根が骨まで見えはじめていつちぎれてもおかしくなかった。

キアラの呼吸は荒くなっていた。

「まだやるのか、腕が千切れて落ちるよ」

「まだ刀は握れている。心臓も動いている。

それだけで十分だ!」

今度はカレンからキアラへ迫って左腕を切り落とそうとした。

キアラは左腕をイペタムに貫かれることを躊躇せず左腕を前に出した。

左腕にイペタムが刺さるとキアラは勢いをつけて右腕の刀を振り下ろそうとした。

しかしその腕はカレンに掴まれてしまい、キアラは腕を動かせなくなってしまった。

「わかりやすく動くとこうなるだろうに」

そう言った後、カレンはキアラの腕を勢いよく上に投げた。イペタムも一緒に上へ振り上げられた。

宙に浮いた状態のキアラの前には今まで斬られて床に落ちていた鉄パイプや鉄塊がキアラの方を向いて浮いていた。

「スクワレた気分はどうだい?」

その言葉を合図にキアラの心臓や脳、足や胃へ鉄パイプなどが突き刺さり、その勢いでキアラの体は扉の横の壁へ打ち付けられた。

鉄パイプなどはそのまま壁へ突き刺さったためキアラの体は壁に固定されてしまった。

キアラは動くことなく血を滴らせる中、扉からロックが外れる音がして扉が開いた。

カレンの服は元の色へ戻り、キアラの前へ立ち止まろうとしたが、ジーナが右側から声をかけてきた。

「右腕大丈夫なのか。

さっさと奥へ引いて行こうとしたのにちぎれそうで怖ーぞ」

カレンの右腕は魔法の糸で雑に縫い合わされたようになっていて、止血が甘いのか血も少量垂れていた。

「イペタムを握って振り回せたから大丈夫だろうさ。

言われなくても奥に急ぐよ」

カレン側は最初は15人いたメンバーも後から2人増えたにも関わらず本部へ通じる通路を通ったのは4人だけだった。

4人が通路を急いで進んだ先には別の通路を通ってきた爆弾を扱う魔法少女達へ銃を向けるイザベラが見えた。

本部に人気はほとんどなく、ダリウス将軍含めた数体の死体が床に転がっているだけだった。

「キアラじゃなくてお前達か」

そう言ってイザベラは右手に持っている端末をタップした。

その後すぐに本部正面の画面へ大きく文字が表示された。

『人類の尊厳を守りきれない事態が発生しました。

地上はもはや人類が生きれない状態となりました。

侵略者達と終末に備えましょう。

人類存続を最優先とし、核シェルターへと避難してください。

世界中の核ミサイルがすべて発射されます。

人類の尊厳維持のため、地上は人類の正義の炎によって焼き尽くされます。

選択肢は存在しません。

人類存続を最優先とし、核シェルターへと避難してください。

45:00:00.00』

この後すぐに世界地図が表示されて世界各地に照準が当てられていった。

神浜市

ベルリンの壁跡地

消失コード:バチカン

消失コード:チェルノブエリ

中華民国首都

ニューヨーク

シドニー

スイス

イギリス

ブラジル

インド

フィリピン

ハワイ

南極基地

他にも世界各地満遍なく一瞬で照準が当てられた。

そして世界中へアナウンスが開始された。

「人類の尊厳を守りきれない事態が発生しました。

地上はもはや人類が生きれない状態となりました。

侵略者達と終末に備えましょう。

人類存続を最優先とし、核シェルターへと避難してください。

世界中の核ミサイルがすべて発射されます。

人類の尊厳維持のため、地上は人類の正義の炎によって焼き尽くされます。

選択肢は存在しません。

人類存続を最優先とし、核シェルターへと避難してください。

人類の尊厳を守りきれない事態が発生しました。

地上はもはや人類が生きれない状態となりました。

侵略者達と終末に備えましょう。

世界中の核ミサイルがすべて発射されます。

人類存続を最優先とし、核シェルターへと避難してください。

人類の尊厳維持のため、地上は人類の正義の炎によって焼き…」

瀕死寸前のマッケンジーへ止めを刺そうとしていた翼が生えた魔法少女は、アナウンスが聞こえて手を止めてしまった。

「核だと?!

お前達サピエンスは負けそうなら無理心中を選ぶのか!」

「俺が知るか」

「核シェルターの場所を教えろ」

「誰が教えるか。

見つけたとしてもお前たちは入れやしないさ」

翼が生えた魔法少女はマッケンジーの喉を羽で貫いて止めを刺した

「つまらない男だ」

「どうすんだよこれから!」

魔法少女達はどうすればいいか分からずあたふたしていた。

そんな中、翼が生えた魔法少女は冷静に他の魔法少女達へ声をかけた。

「できることなんてないさ。

錬金術師の弟子をやってたカレン達なら、あの軌跡で何かできるかもな」

「でもあいつらはペンタゴンに」

「こんな事態にさせた当事者があそこにいるだろうからとっくにあいつらだって動いているだろうさ。
私たちは無事に明日を迎えることを願うしかない。

希望を失わなければなんとかなる」

 

サピエンス本部の画面では45分からカウントダウンがはじまった

「イザベラ貴様やりやがったな!」

そう言ってジーナはイザベラの右腕の付け根を魔法製の鞭で貫いた

イザベラは避けようともせず鞭に貫かれ、持っていた端末を落とした。

さらに何かしようとするジーナをカレンが止めた。

「やめろ、殺したって何にもならない」

「こいつの心臓を止めたらカウントも止まるかもしれないだろ」

死なば諸共のタイミングでそんなギミックを仕組むバカがいるかよ

そう言ってカレンは落ちた端末を操作しようとしても端末は操作を受け入れなかった。

カレンは端末を投げてイザベラの胸ぐらを掴んだ。

「どういうつもりだ。人類を守ろうと動いていたんじゃないのか」

瀕死のイザベラは抵抗するそぶりなくカレンの問いに答えた。

「頑張ったさ。だがどうさ。

アンチマギアなんていう対抗手段まで用意したのにこの結果さ。

神浜を潰していればこうはならなかっただろうに、あの時に各国はどうだったよ。

隙をついて侵略しようとしていたっていうね。

今の人類は自分の目先の利益にしか興味がない畜生だらけだ。

負けて当然だったかもな」

「絶望しても人類側に居続けたのか。なぜだ」

「両親が守ろうとしたものだったからさ。

そんな両親を奪ったのは魔法少女。

貴様らを助ける気になんて誰がなるか」

「だからと言って核を持ち出す奴があるか」

核を武器として使用できるようにしたことは人類史最大の汚点だ。

人類史を破壊したいならばその最大の汚点もどうにかしてみろよ。

無理だろうがな」

カレンはイザベラから手を離し、カウントが進む画面を見ながら最後の手段を使うか考えていた。

何をやろうとしているのか察知したジーナはカレンに話しかけた。

「やめろよカレン。

一発はともかく世界中なら3桁近い数になるはずだ。

ソウルジェムが砕けても止められない」

「やってみなきゃわからないだろ。

何もできないで終わるよりは」

「やれやれ、結局この結論とは心底ガッカリだよ」

そう言いながらカルラは地下に通じる入り口から本部へ入り、画面を見ていた。

カルラを見て銃を持つ魔法少女達が一斉に照準をカルラに向けた。

「裏切り者め、今更何をしにきた」

イザベラの問いに答えることなくカルラは魔法少女のような衣装へ変更した。

その様子に本部にいた全員が驚いた。

「お前、魔法少女なのか」

咲の問いに対してはカルラは反応した。

「これは魔法少女を真似た戦闘衣装だ。

それに、この方がこの後の話を円滑に進められる」

カルラは階段を登り始める。

「魔法少女達、私がイザベラのもとへ辿り着く前に答えろ。

人類と魔法少女の存亡に関わるから余計な会話は無用だ。

まず一つ、キミアの弟子はどこにいる」

カルラからの問いにカレンが答えた。

「師匠の真名は確かにキミアだ。

だが名前が一致しているだけでは信用に至らない。師匠との繋がりを示せ」

「この法衣が証拠だ。

あいつは魔力外装と言ってはいたが、これの生成方法はキミアと私しか知らない。

奴は白を基調とした青色のチョッキを上着としていたか。

武器はインチキに伸びるシャムシールだったはずだ。

あいつからは何か聞いていないのか?」

そう言いながらカルラは刃が青白く輝く槍を出現させた。

「十分だ。

したっけ弟子である証拠をお見せします。

イペタム、私達に希望を!」

そう言ってピリカは手を上に伸ばしてイペタムを出現させた。

カレンからはフィロソファストーンの輝きが放たれた。

その光を見てカルラは少しだけ足を止めた後に再び歩き出した。

「高純度なラピスの輝き、お前は、いや、お前達もあいつの被害者だったか。可哀想に」

そう言ってカルラは手のひらへ筒のようなものを出現させた。

「いいだろう。お前達にデコーダを託す。

こいつはあらゆるネットワークを掌握できるもので、お前達が使っていたマギアネットワークを使い物にできないようにしたのもこれだ」

「な、お前のせいだったのか」

「やめろジーナ!」

カレンが声をかけた頃にはジーナの顔の右側を見えないスピードで槍が通り抜け、壁に深く刺さっていた。

風圧でジーナの右耳は吹き飛んでいた。

「余計な口を挟むな。消すぞ」

そう言ったカルラの周りにはいつの間にか4本の槍が浮いていた。

ジーナは怯えた顔のままその場に立つしかできなかった。

カルラは呆れて変身を解き、その後にピリカはイペタムを戻した。

「話を戻すがデコーダは壊すこともできればその逆もできる。

マギアネットワークはおそらく機器が使い物になっていないだろうから、人間が使うインターネットを経由して世界中の魔法少女と繋がるといい。

これを持ってペンタゴン中央にある電波塔の扉にかざせ。そうするだけで中に入れる。

その後はデコーダのガイドに従え」

そう説明終わる頃にはカルラはカレンの目の前にいた。

カルラはカレンへデコーダを差し出してきた。

カレンがデコーダを受け取ると脳内にはアナウンスが流れてきた。

「デコーダの使い方を教えるよ。

こいつ単体では何もできないがこれを設置できる場所がペンタゴンの地下研究所と地上に新設された電波塔にある。

地下研究施設のものはプロトタイプだから品質が悪い。

どうしても性能を引き出したいならば地上に新設された電波塔で使うといいよ」

その後は現在位置から地上の電波塔への最短ルートが地図が目の前にあるかのようにイメージで出現した。

「扉にかざせば持ち主が誰であろうと扉は開くよ。

その中にデコーダの差し込み口がある。その後は接続先の設定画面が開くから好きなように選ぶといいよ。

カルラはインターネットをお勧めしていたからそっちに繋げるといいかもね。

君たちの拠点もまだインターネットが繋がっているみたいだし、中核になっていた魔法少女は生きているみたいだね。よかったね。

そいつに頼んで魔法少女達との繋がりを急速に増やすといいよ。

そして私たちの過ちを止めてくれ」

その後はインターネットの接続ルートについての情報が流れ込み、シオリだけが理解していたようだった。

気がつくとデコーダを受け取った瞬間に戻っていたようで、どうやら数秒の間にさっきまでの説明が脳内にされていたようだった。

本部の画面には残り30分のカウントになっていた。

「お前、私が何をしようとしているのか既に知っているのか」

「早く行け。無事に終わればいくらでも話す時間はある」

カルラはカレンを指差して言った。

「魔法少女達、お前達の希望を輝かせてみせろ」

カレンは何も言わず、表情も変えることなく地上へ走り出した。

「おい、何があったんだよ!」

カレンにはジーナとかこが後をついて行って他のメンバーはその場に立っていることしかできなかった。

「さて」

そう言ってカルラはイザベラのところまで行った。

イザベラは怒り混じりの声でカルラへ話しかけた。

お前がデコーダを止めたり、キュゥべぇを解き放ちさえしなければこんな結果にはならなかったと言うのに」

「私をがっかりさせることばかりを実行に移したイザベラのミスだよ。

人間の在り方を変えず、錬金術に頼って復讐をするだけに力を注ぐとはね、期待外れだよ」

「お前は人間がどうなってもよかったのか」

「むしろどうにかなってほしいと思っていた。

だが、人間はもう新たな軌跡を作りだせないのだと、イザベラの側にいて実感したよ。
結局は破壊と再生の繰り返し。
そこから人間の本質は進展せず、技術だけが先を行くという悲しい事実が証明されてしまったのさ。

イザベラ、君のおかげでね」

そう言い返した後にカルラはイザベラを抱え上げた。

「どこへ連れて行く気だ」

「地上だよ。

しっかり結末まで見届けてもらわないとな。

それに、勝った気で死なれるのはとても気分が悪いからね」

「とことんふざけた奴だ」

カルラがそのまま本部から出てしまい、その場に残った魔法少女達は高速が解かれたかのように動き出した

「展開が濃すぎるよ」

「んでどうするよ。核なんてどうしようもないだろ」

「無事生き残れた後のことを考えよう。

地下のアンチマギア製造装置は破壊する必要がある。

サバゲー達と黒いのはどうする」

「私は博を見てくるよ」

「同じくね」

そう言って三重崎の魔法少女達は通路を戻って行った。

「黒いのって言うな、セルディって名前があるんだよ。

アンチマギア製造装置のところへ行くよ。

その前に、通路から魔法少女が来るんだけど」

「なんでだ、こっちは地下としか繋がっていないはず」

その地下へと繋がる通路から複数の魔法少女の反応が迫ってきて、本部入り付近で互いに驚いた。

「なんだ?!

まだ本部に残ってたのか」

「お前達こそなんだ、なんで地下から出てこれるんだよ。

アンチマギア製造装置を破壊に行くからそこをどいてって、そっちからくるなら壊しに行ってくれたのか」

「カルラとの約束で地下には手を出せないんだ。その代わりに匿ってもらっていて、今はキュゥべえの護衛だよ」

地下から来た魔法少女達の話を聞いて爆弾を扱う魔法少女は状況を掴めずにいた。

そんな中、地下から来た魔法少女達の列に割って入って本部内部まで入ってきた白髪の少女がいた。

その少女は爆弾を持つ魔法少女へ問いかけた。

「イザベラはどこへ行ったんだい。

魔力を遮断しているのか居場所がわからないんだ」

「…お前誰だよ」

「まあカルラを追えばいいか」

そう言って白髪の少女は上側の通路へぴょんぴょんと飛びながら向かった。

「おい待て!」

爆弾を持つ魔法少女が追いかけようとすると地下から来た魔法少女が話し始めた。

「あいつはキュゥべえだよ」

「なんだって?!だったら尚更止めないといけないじゃないか。

イザベラが願いを叶えたら何が起こるか分かったものではない」

「イザベラが?まさか」

「セルディだっけか。

アンチマギア製造装置の破壊は任せたからな!」

そう言って爆弾を持つ魔法少女はキュゥべえの後を追って行った。

しばらく沈黙した後、セルディが地下から来た魔法少女達へ話しかけた。

「どうしようか」

「地下はシェルターが開かないし行ったって無駄だよ。

まあヨーロッパの拠点に戻ろうか。あそこなら助かりそうだし」

「キュゥべえはいいの?」

「カルラのところへ行ったんでしょ?なら大丈夫でしょ」

 

カルラに抱えられたイザベラは何も話さなかった。

戦いを繰り広げた広間まで来ると、壁側に広がる血溜まりの上にキアラが突き刺されているところを目撃してしまった。

「キアラ…」

そう呟くとイザベラはキアラに向けて右手を伸ばそうとするものの、カルラの腰より高く上げられなかった。

「いずれこうなるとはわかっていた。でもごめん、私からはもう涙さえ出ないんだ・・・送れる物は何もない」

カルラはその場に立ち止まったままイザベラへ話しかけた。

「お前が一番に心を許していた相手だったんじゃないか?

最後までお前に尽くしたんだ。無駄な死だなんて思ってやるなよ」

「勝手に心がない存在にしないでちょうだい。

流石に私でもそんなことを言われると心が潰れてしまう」

「キアラは最後まで人類と魔法少女の共存を夢見ていた。

どうすれば実現できるかの具体案はなくても、とにかくそんな未来に行きたいというサピエンスのメンバーの中でも最も純粋な人間らしいと思ったよ」

「純粋すぎたのよ、彼女は。

共存なんて無理だって言ってるのに最後まで考えが折れないのに、私の活動には協力するし。

どうしようもない奴だったよ。ほんと」

その後2人は言葉を交わすことなく、カルラは地上へ向かった。

 

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