村の空気は村を出る前の頃と変わらず、
村の人達は私たちを笑顔で迎えてくれて、そんなにぎやかな雰囲気を聞きつけたのかお母さんと、静香ちゃんのお母さんが出迎えに来ました。
「みんなお帰りなさい」
私達はお母さん達と顔を合わせ、
「みんな、ちょっと様子がおかしい気がするんだが。
神浜市に行って何があったか聞かせてくれないか」
静香ちゃんのお母さんがそう切り出してしまったため、
「わかりました。落ち着ける場所で話します」
私たちは神浜へと行って何が起こったのかを話しました。
神浜にいる巫達はとても優しくしてくれた。
でも、日継カレン達の行動によって私たちは平気で人を殺してしまえるほど、人を信じれなくなってしまったことも。
そして何よりも、しずかちゃんの大事な剣が奪われてしまったこと。
お母さん達はその話を聞いてとても悩ましい顔をしていました。
「人間を殺めてしまう経験もそうだけど、
「
ここのみんなが優しいのは、3人も知ってることでしょ?」
「でも、でも。
この村にいる人たちが実は悪いことを考える人たちで、
私は涙を滲ませながら回答をしました。
そんな私にすぐに返事を返したのは静香ちゃんのお母さんでした。
「そりゃ人なんだから悪いことの一つや二つは考えてしまうさ。
何でもかんでも善行でできている人間なんていないと言ってもいい
「お母様達も、悪いことを考えてしまうの?」
「そうだね。
娘達を親の同伴なしで都会に送り出すことだって、
でも、私は娘との合意の上で送り出しているつもりだ。
何が言いたいかというと、
「お母様、もっとわかりやすく教えてもらえますか」
「こういうのは人生経験で学ぶ物だと思うけどね。口だけの説明では理解しきれないだろうさ」
「…私たちが悩んでいるのは、
国民にはまともな人がいるかもしれない。
だとしても、人はお金や権力が絡むと非道なことができる。
それは、子ども思いの親も同じ」
「ちはる…」
その後の夕食はできるだけ今まで通りの楽しい雰囲気で過ごそうと
私はどこか演じきったという感覚が拭えず、
夕食後、私はひとり夜風にあたりながら考えていました。
私たちに見せられたあの光景の数々が事実だとしたら、
でも、お母さん達のような、
「わからない、わからないよ」
「ちはる」
声がした方を向くと、
「お母さん…」
お母さんは私の横に立ち、優しく私の手を握りました。
「ちはる、
できれば信じていてほしいけど、
その疑う気持ちは大事なことよ」
お母さんは真っ直ぐに私の目を見ました。
「周りの大人達は受け入れてくれないかもしれない。
それでも、あなたの信じる道に進んでちょうだい。
だとしても、人の道を外れるようなことをしてはいけなわよ。
ちはるがそんなことに慣れてしまったら、お母さん悲しんじゃうから」
やはり、会うべきではなかったかもしれない。
こうして面と向かって自分の心に従えなんて言われたら、
でも、それはもう今更なこと。
「うん、ありがとう」
これがきっと、お母さんにいう最後のありがとうになるだろう。
翌日、私達は神浜市へと戻りました。
お母さん達には笑顔で行って来ますとは言ったけど、
すなおちゃんはというと、
静香ちゃんは改めて人を信じてみたいという決意を固めたようです
結局今回の帰省は、
そんな結果を聞いて分家の子達は複雑な気持ちになっていました。
どうにかして静香ちゃんが人との共存を目指そうと説得を行うもの
なかなか一族が今まで通りに戻らない中、
そこには魔法少女がたくさんいて、
「おや、あなた達は確か時女一族の方達ですよね」
しかし私たちには覚えがありませんでした。
覚えている方達といえば、
「ほら、あの顔合わせの会議の時ですよ。
まああの時はピリカさんが突然倒れてそれどころではなかったです
でも今まで外に姿を見せなかったのに、
「まあ、そんなところですね」
すなおちゃんがそう答え、
いたか覚えがないなんて、言えない。
テレビでは他愛もない番組が流れている中、
「なに、故障?」
みんなが故障を疑っている中、
アンチマギアプログラム
その内容は人間が魔法少女の発生を抑制し、
周囲の魔法少女達は怯えた顔をするばかりで、
「ちかちゃんに、旭ちゃん?!」
「涼子殿もいるでありますよ」
「わざわざ報告しなくてもいいだろ」
「…みんな戻るわよ。
これは、いい加減決断しないといけないことよ」
真面目な顔をした静香ちゃんがそう言うと、
そして、みんなを集めた静香ちゃんは、
「私たちは巫、魔法少女であると、日の本に明かしましょう」
みんなはざわつき始めます。そんな中、涼子ちゃんが切り出します。
「大将、自分が何を言っているのかわかってるのか」
「
日の本のために戦う存在が巫であると言えば、
「それで人の前に姿をあらわにすると。
静香さんも知っているはずです。
ちかちゃんがそう言っても、
「明日、政府へと申告しに向かいます。
一族のみんな、ついてきてもらえるかな」
みんな静まり返り、最初に発言したのは、私でした。
「嫌だ」
「ちゃる…冗談はやめて」
「冗談ではないよ。
あの放送の内容しっかり見たでしょ?
魔女になった魔法少女が人を襲った映像、
あれを見て魔法少女が危険な存在だって思わない人なんていないよ
私たちがいくら危害を加えないからって、
きっと、危険な存在として監禁されるだけだよ」
「そんなこと!」
「そんなことあります」
次に声をあげたのはちかちゃんでした。
「私の魔法少女になった経緯は知っていますよね。
危険な存在だと認識された上で、
きっと利用されるだけです。
考え直してください!」
「…私は、一族の長について行きます」
「お前、本気か!」
分家の一人が静香ちゃんに賛同したのです。
その声を筆頭にポツポツと静香ちゃんについて行きたいと言う声が
「本気なのか、お前たち!」
「人にも優しい人は、
そう信じたいのです!」
「私もです!」
「わ、わたしも」
「みんな…」
結局人を信じたいと思っていたみんなが静香ちゃんについて行くと
「すなお、あなたの意見も聞かせて」
すなおちゃんはとても悩んだ顔でなかなか話そうとしませんでした。
「すなおちゃん、はっきり言ったほうがいい時もあるよ」
私がそう言うとすなおちゃんは深呼吸をして、
「私は、行くべきではないと思います。
きっと、酷い目に遭うだけです」
静香ちゃんは少し泣きそうな顔になってしまいました。
「どうして…わかってくれないの」
その後は静香ちゃんが個室にこもってしまったため、
最初は一緒に外で月を見ていたちかちゃんと旭ちゃんに意見を聞い
「静香殿の気持ちはわからなくもないでありますが、
「人はいくらでも騙そうとしてきます。
二人は静香ちゃんの意見に否定的なようです。
あまり二人のことは深くは知らないけど。
「どうしたら静香ちゃんは考え直してくれると思う?」
「結構意志が硬めの表情でしたからね。諦めさせる方法がないくらい、説得は難しいと思います」
説得が無理なことはわかってる。
でも、行かせちゃいけないと思うんだ。
いろんな子に意見を聞いても意見がまとまらず、
そして目覚めたのは、
「外が騒がしいけどどうしたの?」
「静香がここを発つっていうんです。
日本政府に姿を見せるんだって」
私は急いで騒がしい玄関へと急ぎました。
外では引き止めている涼子ちゃんと毅然と立っている静香ちゃんが
「大将、あんな放送があった後だ。
人間が普通に接してくれるわけがない。
考え直してくれ」
「私たちの考えは変わらないわ。
涼子ちゃん、道をあけて」
両者が睨み合っているところに私は飛び込みました。
「ちょっと何やってるの静香ちゃん!
馬鹿な真似はやめて!」
「私は冷静よ、ちゃる。
おかしいのはあなたたちよ。
少しは人を信じようとしてみてよ」
「私たちはもう信じれないよ!
受け入れられたって、人間社会自体が」
「悪いものは私たちが正せばいい。
それで人間社会だって健全になるわ」
「いつの間にそんな傲慢な考え方を…」
「話しても無駄でしょ」
そう言うと静香ちゃんは見慣れない刀を取り出しました。
「その武器、一体どこから」
「魔法で生成するって方法を教えてもらったの。
我が一族の刀はどこかいっちゃったし」
静香ちゃんは鋭い目つきでこちらをみながら刀の先をこちらに向け
「構えなさい、ちゃる。
私を行かせたくないと言うなら」
私は仕方なく十手を構えましたが、
「やめてください!
時女一族同士が争うなんておかしいです!」
「すなお、あなたはどっちなの!」
すなおちゃんは悩んだ顔をしながら静香ちゃんから目をそらし、少ししてから涼子ちゃんの方を見てこう言いました。
「涼子さん、静香を行かせてあげてください。
その後の結果は全て私の責任にして構いません!」
「だが」
「行かせてあげてください!」
涼子ちゃんはどこか不満げな顔をしながら道をあけました。
静香ちゃんは武器を下ろし、すなおちゃんに話しかけます。
「すなお、あなたは来てくれるの?」
すなおちゃんはうなだれたまま、ただ首を横に振るだけでした。
「…必ず、あなたたちを迎えにくるから」
そう言って静香と人間を信じたいと思う子たちは水徳寺を後にしま
私たちはしばらく気持ちを切り替えずに過ごしていましたが、
静香ちゃん達が出て行ってから次の日の夜があけた頃、
私たちは急いで外に出ましたが、
そして、私たちが飛び出した先にいたのは、
「おとなしく言うことを聞けば痛い思いをしなくて済む。
素直についてきてもらおう」
抵抗しようという子が感じ取れたので、
私たちにはこの場をどうしようもできない。
そんな中、
その場に突風が発生して、
あっという間の出来事でした。
生きている兵士がいなくなった頃、
「随分と大所帯だが、どこに避難するかは決めているか?」
「いや、今は何が起きているんだかさっぱりで」
「特に決めていないならば中央区の電波塔跡を目指せ。
あそこに怪我人や避難したものが集まっている。
あそこにいれば少なくとも安全だろう」
そう言って鎌を持った集団は去っていきました。
「さてどうするでありますかね」
「旭ちゃん?」
なぜか旭ちゃんとちかちゃんは武器を手に持っていました。
「神浜中にあの妙な兵士さん達が現れているんですよね。
道中出会うかもしれませんし」
「それに、
「二人とも」
「でもどうするよ、ちはる」
声をかけてきた涼子ちゃんも武器を構えた状態でした。
「涼子ちゃんまで」
私はみんなの向けてくる目を見ずに思いを伝えました。
「私の意見を待たなくてもいいよ。それに、もう一族が集まって動く必要も」
「そうは言ってもね。
私らは他に行き場所はないし、
だからそんなこと言うなよ。
今まで通りやっていこうや」
周りの様子を伺ってみると、
みんなを率いていくなんて気は全然ないけど、
「じゃあ、私は神浜から変な兵士さん達を撃退しようと思うけど、
「ま、そんなノリでいいさ」
こうしてあの日、
あんなことがあった後、静香ちゃん達が無事なのかは不安ですが、
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