私達はあの日、
だれもがどうしてここにいるのか分からず、特に何かがあったら集まるようルールも決めていないのに、みんなは水徳寺に行けば誰かいるのではと自然と集まっていきました。
静香ちゃんは大怪我を負ったまま旭ちゃんに保護されて、
私は静香ちゃんが目を覚ますまでの間、他の時女一族の子達の様子を
やはりみんな変わってしまっていました。
でもその変化を受け入れる者、抗いたい者がいて、
今日も静香ちゃんが眠る寝室へと来ていました。
寝室ではすなおちゃんが静香ちゃんの看病をおこなっていました。
「ソウルジェムは無事でよかったけど、
「そうだと思います。
ここへ運び込まれた時は本当に血の気がない真っ白な状態でしたが、
輸血もしないのにここまで回復できたのは、
「そうだよね。なかなか目覚めないのも、
いつか目が覚めるよね」
「もちろんですよ。そう思いながら、今は待つしかないです」
私は静かに寝室を後にしました。
寝室を出ると、廊下で涼子ちゃんが声をかけてきました。
「大将、まだ目を覚ます様子はないか」
「私には分からないかな。
今は静香ちゃんが目覚めても安心できるように時女一族のみんなを
「・・・旭から聞いたんだが、
「今はそんなことをしているときじゃないと思うけど」
私達は話しながらお寺の縁側へと向かっていました。
縁側から見える月は変わらず綺麗でしたが、
「今日ケンカしてた子達はどう?」
「ちはるのおかげで3人は落ち着いてはいたよ。
だがお互いに顔を合わせられるような状況ではないな」
「仕方がないよ、考え方の違いをわかりあうのは時間がかかるし」
立ったままだった涼子ちゃんは私の隣へと座りました。
「ちはる、
「この国を守っていくって考え方は変わらない。
「
仮に人間を悪として成敗していったら、
「国の考え方が違うよ。私が国として守りたいのは文化。
ここのお寺みたいなこの国ならでわの建築方法とか、
季節ごとのイベントとかそういったものは人間が作り上げてきたと
この国ならでわのものを守っていくって考えに、私は変わったの」
「国の考え方ねぇ」
今日ケンカしたという3人の子も、
人間あっての国
文化があっての国
前者の考えであれば、
後者の考えであれば、
国の捉え方で今は二つに分かれていて、
「人間あっての国というのは否定しないよ。
そう考えちゃうと、
「みんな同じ経験をしたんだ。
奴らの行いを暴いたらみんな構わずこの国のお偉いさんの命を奪う
それがこの国を守ろうとする行為なのか、
ちはる、
「やめてよ涼子ちゃん、わかってるよ。
でもこうして考えた方が、
どの意見が正しいかなんて分からない。
本当は、どっちが正しいと決めつけるのが悪いことだと思うけど。
次の日の夜、すなおちゃんが私の元へと走ってきました。
「ど、どうしたの?!」
「静香が目を覚ましました!」
私はすなおちゃんと一緒に静香ちゃんがいる寝室へと急ぎました。
襖を開くと、そこには体を起こした静香ちゃんがいました。
「ちゃる…」
私は思わず静香ちゃんに抱きつきました。
「よかった、目を覚ましてくれて!
今は、それだけでもとっても嬉しいよ」
「うん…心配かけちゃってごめんね」
みんなが静香ちゃんが目覚めたと聞いて寝室まで集まってきて、この時ばかりは時女一族のみんなが明るい顔をしていました。
昨日まで喧嘩をしていた子同士が顔を合わせて笑顔を見せるほどで
状況が落ち着いてからわたしとすなおちゃん、
「そう、私達は人を殺めてしまっていたのね。
そして、人は守るほどの存在と認識するようになってしまったと」
私は思わず聞いてしまいました。
「静香ちゃんは、まだ人間のために巫を続けようと思う?」
「わからないわ。
人なんか守るほどのものではないっていうのはみんなと同じものを
でも、信じたくないのよ。
お母様までもが、あの人たちと同じであってほしくないって。
だから、わからないわ。すなおとちゃるは?」
すなおちゃんが申し訳なさそうに話を始めました。
「ごめんなさい。
私はもう、人のために悪鬼とは戦えません。
でも、この国は守りたいと思っています」
「でも、この国の人を守りたくないのなら」
「確かに国は人が作り上げた結果できたものです。
なのでかろうじて、
それを聞いた静香ちゃんは難しい顔をしてしまいました。
「文化と人って、切り離せるものかしら」
「人間ではなく、私たちが引き継いでも残ります。
文化のために人にこだわる必要はないと思います」
「そう…私にはよくわからないわ。
ごめんなさい」
「大丈夫ですよ。すぐにわかってもらう必要はないですから」
「ちゃるは、どうなの?」
私は答えにくかった。
回答したのはすなおちゃんと同じ意見。
少し違うことを言ったと言えば。
「私、お母さんに会うのが怖いんだ」
「どうして?
何か助言してくれるかもしれないじゃない?」
「お母さんに相談したら、それが最後の会話になりそうで、
静香ちゃんと同じく、お母さん達は違うって信じたい。
それで、
嫌なんだ、嫌なんだよ、決まっちゃうのが」
私は思わず泣いてしまいました。
信じていたい。
でも出会ったらそうではないと確定してしまうという予感が優って
きっともう私達は人を信じれない。
だから、そうであってほしいでとどめていたいのです。
私達はみんな暗い顔をしたままそれぞれの寝床へ戻りました。
静香ちゃんはきっとお母さん達に会いに行こうというでしょう。
でもそれは、とても危険な気がします。
この時女一族という集まりが、
一緒に行こうと言われたら・・・。
次の日、
静香ちゃんの意見に賛同する者、そうではない者
それぞれの意見を聞いて回ったようですが、静香ちゃんへの賛成派は3分の1程度
静香ちゃんは内部のこともそうですが外部のことも気になっていました。
外部のことについては自ら偵察に出ていた旭ちゃんがよく知っていました。
「環さん、今はいないのね」
「はいであります。
一応皆は人間をこの神浜に寄せ付けず、
「それがもう、3日前…」
「いろは殿が神浜を出た後、
他の魔法少女は動き始めている。
でもそれは、人間を否定する考えの上で。
それに、魔法少女同士で争い始めてしまっている。
今の神浜の事実を知って、
次の日、静香ちゃんは分家もいる前で宣言しました。
「私達本家は、一度霧峰村へと戻ります」
「静香?!」
「静香ちゃん?!」
「人を守る気を本当に無くしてしまっていいのか。
それが私達時女一族として正しい選択なのかを、
分家の方達には、神浜で待っていてもらいます」
そう説明している中、分家の1人が静香たんに尋ねました。
「しかしよろしいのですか、もし親と対面してしまったら」
「だからこそ。
親子の関係はそうそう切れない物。
そして時女一族の人間が皆良心が確かにあるとわかれば、
それを確かめに行きます」
みんなへの宣言が終わった後、
back:2-2-13
レコードを撒き戻す:top page
Next:2-2-15