【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 4-5 イライケレン

環いろはと鹿目まどかを助けたのは、私との接触を避けた魔法少女達がきっかけだった。

たった一つの街でも、縁がなければ出会えなかった魔法少女なんてたくさんいるだろう。

とはいえ、たまたま出会えなかった魔法少女がピンポイントにここまで大役揃いだという偶然があるだろうか。

予想もできないような奇跡を目の前で二つも目撃できたのは、その偶然のおかげかもしれないが。

目の前で起きた一つ目の奇跡は、3人の魔法少女によって行われた全魔法少女の縁を切っていくという壮大な光景。
夏目かこも、あの三人も縁を認識できるような能力は元々持っていなかったはず。知らないだけで、私以外に縁を視認できる存在が彼女たちへ縁を切る方法を伝えたとしか思えない。

とはいえ、魔法少女達の暴走が解かれようが悪夢を刻み込んだ時点ですでに目標は達成している。

もう一つの奇跡は、縁を切らなくとも黒いオーラが解除されて目の前に現れた見滝原の魔法少女達。

あの結界の中で何が起きたのかは知らないが、私たちの計画に狂いはない。

「驚いたよ、この一時で神浜にいる魔法少女が皆正気に戻るなんて誰が予想できたか。

さて、このまま待てば自動浄化システムが世界へと広がるのは必然だ」

「でも、黙ってる気はないんでしょう、あんたたち」

「まあ目的のことだけ考えると、あなたたちの邪魔をする必要はないよね。
でも確認しないといけないことがあるんだよー」

「いいよ、答えられることなら返事をしよう」

「大昔の人物、聖女ワルプルガを蘇らせたとして、そこにいるワルプルガってただの少女だよね。気になるのは記憶をどこまで持った状態で蘇るかだよね。そこらへんはちゃんと計算してるかにゃぁ」

「里見灯花が指摘した通り、故人を蘇らせると所持している記憶が一体いつからいつまでのものが残っているかなんて保証はされていない。
もしかしたら、空っぽの赤子同然で蘇るかもしれない」

「でも、シオリがこれまでの歴史をワルプルガへインプットするから少なくとも言葉が理解できる状態で復活するから安心しなさい」

「それは、誰目線の歴史と記憶をインプットするのですか」

「かこさん、それは勿論、”魔法少女”の目線でだよ」

「あなたたちの魔法少女目線というのは偏った思考です。ヒトは愚かであると、そんな歴史と記憶を教え込むということですよね」

「間違いではないでしょう?」

「それは違うよ!」

否定的な声をあげたのは環ういだった。

そういえば彼女へは悪夢を共有していなかったか。

「うい・・・」

「だって、おかしいよ。

みんなの生活を守るために、私達は魔女と戦っていたんだよね。人の中にはひどいことをする人もいるかもだけど、でも、全員ではないから。
私は、それはダメだと思う」

「と、妹は言っているが姉としての意見はどうかな?」

環姉妹は目を合わせ、何かが通じ合ったかのように姉の方はうなづいた。

「ういがそう考えるなら、私もカレンさんたちのやり方に抵抗します」

「そうか、妹を優先したか」

「お姉さまとういがそういうことなら、私も抵抗しちゃおうかな?
願いを叶えさせるならばワルプルガが誰の手元にいてもおかしくないでしょ?」

「私はまどかを苦しめたあなたたちを許さない。だからあなたたちには抗うわ」

各々の意思表示が行われた後、ピリカが一歩前に出てイペタムを振り下ろした。

「余計な争いはお勧めしません。
抵抗するようであれば、四肢を十分に動かせなくなることを覚悟しておいてください」

皆が攻撃態勢になっている中、夏目かこ達は武器を構えていなかった。

「夏目かこ、あなた達はどうする?」

「私たちにとっては争う理由がありません。遠くから静観させてもらいます」

「そうか、でもお前への仕置きが後で待っていると覚えておくんだな」

私は糸状の扇を取り出し、環いろは達にその先を向けた。

[シオリ、ピリカ。深追いも無理もするんじゃないよ。全てを見届けるまでは死ねないからね]

[何を今更。ワルプルガが願いを叶えた時点で袋叩きに会う覚悟くらいできてるってるの。神浜の外へでたがるやつもほとんどいないし、戦う分には問題ないよ]

[大丈夫、抑える]

[いいだろう]

そう、死ぬにはまだ早い。

せめて自動浄化システムが広がるまでは。

「さあ、お前達の希望を輝かせてみせろ!」

 

最初に仕掛けてきたのは見滝原の魔法少女達だった。

美樹さやかと佐倉杏子は真っ先に矢先をシオリへ向けていた。

シオリは周囲に浮かぶ鉄塊を雷の力を使って2人の進撃を遮ろうとするが、軽やかにかわしてスピードが落ちる気配がない。

こちらも行く手を妨害しようとしたが、こちらはこちらで環姉妹と元マギウスの2人が襲いかかってきていた。

[シオリの援護に集中して!]

そう言ってピリカは環ういへ斬りかかった。

「ならば容易い」

私は糸を放って美樹さやかと佐倉杏子の足と武器を持つ手を貫いた

「2人とも!」

巴マミは複数のマスケット銃を召喚して私たちに向けて一斉発射してきた。

糸の壁を3重に形成し、2層までは貫かれたものの、一発たりとも3層目は突き破れずに銃弾は速度を失ってその場に転がった。

その後追撃で鹿目まどかと暁美ほむらが弓で壁を攻撃し、糸の壁が目の前から消えた。

シオリが電車のレールを2本宙に浮かせて、電気を帯びたまま2本のレールは美樹さやかと佐倉杏子に向けて飛んでいった。

しかし間一髪で銀髪の魔法少女がドッペルと思われる者で駆け抜けて2人を救出したため血飛沫が広がることはなかった。

間髪入れず、巴マミは巨大なマスケット銃を生成し、こちらへ銃口を向けた。

「ティロ・フィナーレ!」

「したっけ勝てるかい!」

放たれたときの風圧は凄まじいものだった。

シオリは銃弾が放たれる直前に何か聖遺物を発動したらしく、突き刺さったレール2本には冷気が纏われ、銃弾に向けて傾斜を向けるとレールは円形に歪みながらも銃弾はレールを添うように空中へ打ち上がり、花火のように光が空中に広がった。

「ティロ・フィナーレが防がれた?!」

「超電導ってわかるかな?接触起爆式にすることをお勧めするよ」

そう言ってシオリはガードレールを二枚ごとにぶつけ合い、合計四門のお手製レールガンを作り出した。

「防げるか?防げるほどの奇跡が、あんた達にはあるか!」

そう言ってシオリは一斉にレールの間にある鉄塊を冷気を纏ったことで速度を増して放たれた。

いつ放たれたかわからないスピードで4発だけではなく、すぐに鉄塊が装填されて4門から合計5回も斉射が行われた。

しかし足場が崩れることはなく、土煙が晴れると暁美ほむらが見たこともない時空の裂け目のようなものを展開させて鉄塊を別の空間に移動させてしまったようだ。

「魔力の力が会ったときよりも強い。時間を止める魔法はどうした?」

「あなたたちには関係ない!」

そう言って一矢放ったもの、シオリは帯で軽くあしらった。

「まああの中で何があったかは知らないけど、ドキドキさせてくれるじゃないの!

環ういへ斬りかかったピリカはなにか話しかけていた。

「あなたの一言がここまで不毛な戦いを生み出した。言葉の重みを知りなさい!」

「ピリカさん、どうして」

環ういは凧のようなものを呼び出してイペタムを押しとどめていた

「自動浄化システムが広がってからでも良かったはず。なのに!」

「ダメだと思ったから、人を不幸にさせちゃいけないから」

「その人は私たちを汚れさせるというのに!」

「うい!」

環いろはがボウガンをピリカへ数発放ち、ピリカは環ういから離れた。

そんなピリカへ里見灯花は炎を放ち、柊ねむは光る紙切れを飛ばしてきた。

いずれもピリカは一振りのなぎ払いで消滅させてしまい、瞬時に環いろはの懐に飛び込んで脇腹から思いっきり斬り上げた。

環いろはの腹からは致死量の血が流れ出し、他の3人は絶望の眼差しだった。

「ここでは、終われない!」

環いろははドッペルを纏って致死量の血は包帯に包まれて血の流出は止まっていた。

「お姉さま、その姿は?!」

「穢れを纏うならば、何人たりとも私を超えることはできません。超えたいならば、輝かしい希望を携えなさい!」

イペタムは穢れに強く、さらには相手の希望を奪う。

魔女だろうと、魔法少女だろうとイペタムを持ったピリカを超えることはできないだろう。

環いろはは包帯を飛ばしてピリカを拘束しようとした。
しかし包帯は金属音と共に切られていき、ピリカは再び環いろはの懐に潜り込んだ。
包帯がピリカの後ろに広がり、抱擁するかのようにその包帯はピリカと環いろはを包もうとした。

包帯に囲まれた空間の中で環いろははナイフを取り出してピリカの心臓を一突きしようとしたものの、リーチはイペタムの方が長かった。

再び斬り付けられた環いろははその場に膝をつき、ピリカは再び環ういへ襲い掛かった。

しかし次は元マギウスの2人が環ういの前に出てピリカの斬撃を喰らった。

するとすぐに2人はドッペルを発動し、ピリカへドッペルの目が付いた腕と流星群が襲い掛かった。

柊ねむのドッペルは退けたものの、里見灯花が放った流星群は一振りで対処できる規模ではなかった。

そこへシオリは鉄板を壁とし、私がそれを糸でつなぎ合わせて大きな盾がピリカの前へ形成された

流星群はピリカへも、復活を待つワルプルガへも届かなかった。

ドッペルを放った2人は疲労が襲ってきたのかその場に倒れこんでしまった。

その時、私たちに襲いかかってきていた魔法少女皆が体が重たくなったかのように動きが鈍くなっていた。

それもそのはず。

 

シオリの一撃が不発に終わった後、私は糸で扇を形作り、鹿目まどかと暁美ほむらへ襲い掛かっていた。

「その力、別世界とのつながりが見える。一体どんなカラクリを使った」

「あなたに答える必要はない!」

至近距離で撃たれる矢を避けながら私はステップを刻んだ。美樹さやか達3人からも追撃を受けたものの、避けるのは容易い。

仕上げのステップを踏むと同時に、わたしはピリカの方へ応戦した。

舞が完結すると周囲の魔法少女には疲労感が訪れ、私たちには高揚感がもたらされた。

ピリカはたった1人立っていた環ういへ斬撃を飛ばし、それを受けた環ういは倒れ込んでしまった。

私は膝をつく見滝原の魔法少女達へ糸を飛ばし、四肢を突き刺して使えないようにした。

「気は済んだか?まだ足りないなら、ワルプルガが目覚めるまで付き合ってやるぞ」

「強さが、違いすぎる・・・」

「調整も受けていないのに、どうしてこうもあしらわれるの。わからない」

戦おうとする魔法少女は現れなかった。

「それじゃあ、大人しくそこで倒れててもらおうk」

急に遠方の方から一発の銃弾が飛んできた。

糸の剣で弾けたものの、崩れていないビルからスナイピングできる魔法少女は1人くらいしか心当たりがない。

「三重崎のやつか」

銃弾が飛んできた方向には確かに崩れていないビルがあり、そこには確かにスコープの光が見えた。

「コロス、殺す殺すこrosう!

日継カレン、お前だけは!」

遠くからでも分かる殺意を感じていると、塔の麓が騒がしくなってきた。

「カレン、下の魔法少女達が動き出したみたい」

「次から次へと、もう少しだけおとなしくしてくれないかね。ピリカは大丈夫か」

「大丈夫、カムイだけで抑えられる」

「そうか。でも、思ったより復帰が早いな」

街を襲った疲労感から解かれた魔法少女達が動き始めていた。

己の行った行為に嘆き悲しむ者

狂って人を殺す快感に目覚めた者

そして、私たちに殺意を剥き出す者

やがて神浜市にいる魔法少女達は、種類の違う”穢れ”を携えて中央区へ注目を集めていくのであった。

 

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