【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 4-3 この神浜にしかいられない私たち

お姉ちゃんがおかしくなってしまいました。

黒いオーラを纏ってはいなかったけどいつものお姉ちゃんとは違い、とても楽しそうに戦っていました。

私は無意識にその場を離れてしまいたいと思ったのかいつもの病室に戻ってきてしまったようです。

灯花ちゃん、ねむちゃん、桜子さんがそこにはいて、傷だらけで泣いている私を宥めるように近くにいます。

ただただ悲しい気持ちしかなくて何も考えていない状態で泣き続けていましたが、ある声が聞こえたことをきっかけに我へと帰りました。

「お姉さんを救いたいですか?」

顔を上げて声が聞こえる右側を見るとつづりさんがいました。

ここでドッペルを出されても困るのでまずはグリーフシードを使ってください」

そう言ってつづりさんは私の前にグリーフシードを手渡してきました。

「つづりは魔女を倒せちゃうんだ」

「結構前のものですけどね」

わたしは穢れを取り除いたことで少しだけ気分が楽になった気がしました。

「さて、気持ちが落ち着いたところで今の神浜を見てもらいましょう」

そう言ってつづりさんは槍を呼び出して石突きを地面へつけます。

そこから今いる空間に波紋が広がり、結界が砕けて消えていきました。

そして私たちは穢れが風に乗って流れてくる高い場所にいました。

「ここは、お父さまの病院?」

灯花ちゃんが周りを見渡してそう呟きました。

そして神浜の方角を見ると黒いものが蠢きながら街を破壊していました。

「あれは一体。そして神浜の穢れが尋常じゃない量で満たされている」

今神浜では本来この時間軸に存在しない魔法少女が行った儀式でほとんどの魔法少女が黒いオーラを纏い、人々を殺戮しています」

「え?」

あの黒い物体が全部魔法少女?

このまま放置してもいずれ自動浄化システムが世界に広がる夢は成就されるでしょう。しかし同時に魔法少女は人を滅ぼし、この世界は終末へと向かいます」

「何を言っているのか分からない。こんな状態にしたのは誰?」

「日継カレン、紗良シオリ、保別ピリカの3人が自動浄化システムを世界に広げる準備を完了させたのです。
その結果がこの有様です」

「その3人の名前は聞いたことがある。

だがぼくたちよりも自動浄化システムを広げる方法を確立させていたなんて」

「ごめん、わたしは知ってたの。カレンさん達が自動浄化システムを広げる方法が知ってるって。
でも人に被害が出るって聞いていたから2人に言うのはダメって言われていたの」

「そう、わたくしたちは信用されていなかったんだね」

灯花ちゃんが落ち込んでいる中、つづりさんが話を続けます。

この状況を良い方向へ持っていくためには、この神浜にしか存在できない貴方達が環いろはを助ける必要があります。

もちろん、それは自動浄化システムが広がるまでの時間を延長させる結果となるでしょう」

「最初の言葉が引っかかるね。どういうことだい?」

「ご想像にお任せします」

お姉ちゃんを助ければみんなも助けられるの?

「お姉ちゃんを助けられるの?!元に戻ってくれるの?」

「そうですね。貴方達がその気になれば」

自動浄化システムが広がるチャンスを先延ばしにするのは惜しいが、お姉さんを見捨ててまで手に入れたい未来ではないね」

「わたくしも、お姉さんを助けたい!」

|3人が行くなら、私もついていく|

4人揃ってお姉ちゃんを助ける意思が固まりました。

「では助ける方法を教えます。

環いろははまだ黒いオーラに飲み込まれていませんが正気ではありません。

正気に戻すために穢れがない隔離された空間へ閉じ込めてそこで4人揃って説得を試みてください。

もちろん、説得の際はグリーフシードを忘れずに。

これだけです」

隔離された空間って魔女の結界しか思い浮かばない。でも魔女の結界を呼び出すことはできないし、穢れもすごいよね。

|わたしの、ウワサの結界を使えばできるよ|

「でも、結界を出すってことはねむちゃんに負担がかかるんだよね」

「一次的ならそこまで負担にならないよ。それにボクは戦えないからね。魔力供給のサポートくらいは役に立たないと」

じゃあお姉ちゃんを止めるのは、私と桜子さんしかできないんだ。

「環いろはがいるのはあの輝きが強い中央区 電波塔の上です。

地上は黒いオーラの魔法少女が蔓延っているので飛んでいくことをお勧めしますよ」

「それならみんな私の出すツバメさんに乗って。ちゃんと連れていくから!」

「ありがとう、うい」

わたしは大きめのツバメさんを5体呼び出し、3人を乗せました。

しかし、つづりさんは乗ってきませんでした。

「つづりは来てくれないの?」

「4人でって伝えたじゃないですか。
部外者は関わりませんよ」

「ふーん、行こうようい」

「う、うん」

わたしはつづりさんへ一礼して中央区へ向かいました。

 

 

 

ツバメさんに乗って空を飛んでいると黒いオーラの魔法少女が飛んでこちらに襲いかかってきました。

|みんなはわたしが守る|

そう言って桜子さんはバトルフォームへと変わって黒いオーラの魔法少女達を追い払って行きました。

わたしはツバメさんを操ることに集中し、4人で無事に電波塔へ着くことに専念しました。

後ろに黒いオーラの魔法少女が付きまとって攻撃されても、桜子さんが剣で防いでくれて、飛ぶ斬撃で黒いオーラの魔法少女へ攻撃していました。

殺しては、いないよね?

地上からも攻撃が飛んできたりしましたが、無事に中央区へ入ることができました。

地上は人を襲う魔法少女達しか姿が見えず、生きた人は1人も見当たりませんでした。

「これはひどい光景だね。近くで見ると尚更だ」

「いたよ!お姉さまが倒れてる!」

灯花ちゃんが指差す方向には確かにお姉ちゃんがいました。

「まっすぐ向かうよ!」

わたしはツバメさんに角度をつけて真っ直ぐお姉ちゃんの元へと向かうようにしました。

「お姉ちゃーーーん!」

わたしがそう叫ぶと電波塔にくっついている瓦礫の上で戦っていた7人の魔法少女がこちらを向きました。

「なんだ?!」

|いくよ|

「「ええ!!」」

桜子さんに引っ張られ、私達はツバメさんから下されました。

地面へぶつかろうというところで桜子さんが結界を作り出し、私達と、そしてお姉ちゃんが桜子さんの結界の中にいました。

「さっきのは環ういたちか。どこに隠れていたんだ」

「でもまぁ、あの結界を壊しちゃえばみんな飛び出してくるよね?

「やらせませんよ」

「わかってるよ夏目かこさん。彼女達の邪魔をしなくても私たちの目的は達成できるからね」

 

 

「お姉ちゃん、お姉ちゃん!」

わたしは結界の中でお姉ちゃんの体を揺さぶり、目を覚まさせようとします。

みんな心配そうな顔をして見守っています。

ピクッとお姉ちゃんの指が動いたと同時にお姉ちゃんからは黒いオーラの魔法少女と同じ魔力を感じました。

「いや、いやだよ。お姉ちゃn」

「ヴァアアアアアアアアアアア!!!!!」

お姉ちゃんは再びドッペルに似た姿となってわたしへ包帯を伸ばしてきました。

お姉ちゃんとわたしには間へ桜子さんが素早く入り、剣でお姉ちゃんが飛ばしてきた包帯を切り落としました。

「桜子さん?!」

|ういは灯花とねむを守るのに専念して。わたしはういを守っていろはを元に戻す|

そう話している間もお姉ちゃんは攻撃を仕掛けてきて、クロスボウで私達へ扇状に矢を撃ち込んできました。

わたしはツバメさんを呼び出して灯花ちゃんとねむちゃん、桜子さんを守ります。

見境もなく襲うお姉ちゃんは目が真っ赤で、何かに苦しむように叫び声しか上げていません。

どう止めればいいの?

桜子さんはお姉ちゃんとの距離を詰めようとしますが、包帯とクロスボウの波状攻撃によってなかなか近づくことができません。

わたしは攻撃して動きを止めようとしますが、ねむちゃんに止められてしまいました。

「うい、だめだ。桜子はぼくたちもそうだけどお姉さんにも危害を加えないよう振る舞うウワサだ。ういが攻撃してしまうと、桜子はそれを止めてしまう」

「それじゃあわたし守ることしかできない!」

「助けることは傷つけることだけじゃない。でも今は、ぼく達の声さえ届かないだろうね」

「そんな」

桜子さんはお姉ちゃんの攻撃を受けているもののダメージは確かに受けていて擦り傷や切り傷、アザが増えていました。

わたしは話し合いさえできれば争わずに仲良くなれると思っていました。

でも目の前で起きていることを目にしてしまうと、話し合いだけでは解決できない非情な現実を突きつけられた気がしました。

|きゃあっ!|

桜子さんは珍しい声を出して地面へ倒れ、お姉ちゃんの攻撃を回避できない状況でした。

わたしは2人の間に入って桜子さんをツバメさんで守りますが、包帯で振り払われて逆にわたしが動けない状態になってしまいました。

そんなわたしにお姉ちゃんはナイフを手にしてわたしの方へ飛び込んできました。

わたしは恐怖のあまり目を閉じてしまいましたがお姉ちゃんの攻撃を受けることはありませんでした。

「「桜子!」」

灯花ちゃん達の桜子さんを呼ぶ声が聞こえて目を開けるとわたしの目の前に桜子さんが手を左右に広げて仁王立ちしていました。

「桜子、さん?」

桜子さんは何も言わず両手を下ろし、グリーフシードを取り出します。

わたしは桜子さんの様子を見るために桜子さんの横に立って衝撃を受けました。

お姉ちゃんの持つナイフが、桜子さんの電源ボタンマークに深く突き刺さっていたのです。

桜子さんは取り出したグリーフシードをお姉ちゃんのソウルジェムに当てながらお姉ちゃんを抱擁しました。

|いろは。うい達を悲しませないで。3人を悲しませるのはいろはの望むことではないでしょ|

「mannnえン桜のウwaさ?」

「お姉ちゃん!」

「うい、ソkoにいるノ?」

「わたくしたちもいるよ!」

「みんな、ワタシハ」

「お姉ちゃん、大丈夫だから。私は何処にも、もう何処にも行かないから安心して!」

「ほん、とう?」

|ういは嘘をつけない。だから事実だよ|

「そう。でも、私はみんなにひどいことをしただけではなく、万年桜のウワサも」

|大丈夫。わたしはウワサ。姿形は無くなっても、ねむの本の中から見守っていルcあLa|

桜子さんの体にノイズが走り始めます。

「嫌だ、桜子さんとお話しできないなんて」

|泣かないでうい。

ねえみんな、わたしが消えちゃったらみんなわたしのkおト忘れちゃう?|

「忘れない。忘れるはずがないよ!」

「わたくしも!」

「ぼくが忘れるわけがないじゃないか!」

「わたしも、忘れない」

お姉ちゃんはそう言いながらナイフから手を離して元の魔法少女姿に戻りながら後退りしました。

「そう、それなら良かった。ミnNあ覚えていたら生きている。みんなが教えてくれた事」

桜子さんが今までに見せたことのない笑顔でお姉ちゃんへ向き直ります。

「いろは、wあTaシを生み出してくれて、アリガトウ」

そう言って桜子さんは虹色の粒子となって姿を消してしまいました

お姉ちゃんのナイフはそのまま地面へ落ちてしまいます。

それと同時に灯花ちゃんとねむちゃんについていた魔法少女になると痛みを与える腕輪も消失しました。

「わたし、桜子さんを、殺しちゃった…」

お姉ちゃんはその場に膝をついて泣き出してしまいました。

わたしは涙を堪えて、お姉ちゃんの前へ膝をつきました。

「お姉ちゃん、今神浜が大変なことになっているの。神浜のみんなを助けるために、カレンさん達に立ち向かおう?

わたしも頑張るから!」

「うい」

「わたくしたちも戦えるようになったから、ちゃんとフォローするよ」

ぼくは魔法少女に慣れたからにはやらないといけないことができた。お姉さんが一緒にいると心強いな」

「灯花ちゃん、ねむちゃん」

「お姉ちゃん、また私たちと一緒に頑張ろう!」

「…うん」

お姉ちゃんがわたしの手を掴むと同時に結界内の桜は全て散ってしまい、結界内は光に包まれました。

私たちは気づくと瓦礫の上に立っていて目の前にはカレンさんとピリカさん、かこさんとシオリさんと思われる人が目の前にいました。

「何が起こったんだ」

「あなた達が日継カレン達?

自動浄化システムを広げるために頑張ってくれたみたいだけど、みんなを黒いオーラの魔法少女にしちゃうのはよろしくないにゃあ

「だからぼく達が一手間加えさせてもらうよ」

「何をしようというんだ」

「うい、前に病院の前でやろうとしたことをやるよ。大丈夫、もう魔女化はしないから」

「うん、わかったよ!」

わたしは穢れをありったけ集め始めます。

わたしの集めた穢れを灯花ちゃんがエネルギー変換してねむちゃんへ魔力を供給します。

そしてねむちゃんは。

「さあ、みんな待たせたね。

かつて呪いを、負の感情を集めようと生み出された創造の子どもたちよ。

今こそ罪滅ぼしのために羽を伸ばす時がきた。

君たちに新たな役割を与えよう。

異世界よりもたらされた縁切りの力を携え、魔法少女を解放せよ。

今こそ新たな翼で飛び立ち、皆へ希望を与えて」

ねむちゃんの本からたくさんのウワサが飛び立ち、神浜中へ散って行きました。

「縁切りの技、他に教えられていたのはねむさんでしたか。

魔法少女になれて力を行使できるようになったということは。

犠牲が出ないと解決できないというのは皮肉ですね」

神浜へ散って行ったウワサ達は黒いオーラの魔法少女へ近づいてはチョキン、チョキンと何かを切って去っていきます。

その途端に何かを切られた黒いオーラの魔法少女は黒いオーラが取れて元の姿へと戻って行きました。

「うい、ねむ、大丈夫?」

「わたしは大丈夫だよ」

「ぼくの魔力も安定している。何の問題もないよ」

ウワサによってたくさんの魔法少女が黒いオーラから解放されて動きを止めていきます。

不思議と、神浜に漂っていた穢れも少なくなった気がします。

私たち、みんなを守ることができたんだよね?

「これが、自動浄化システムを作り出すきっかけとなった魔法少女達の力か」

「凄まじいねぇ、こんな光景二度とみれないよ」

神浜中に散ったウワサ達がみんな消えて、神浜から黒いオーラの魔法少女は誰1人もいなくなったのでした。

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目の前で叔父さんが殺されて、私はひたすら逃げ続けた。
何かあったら逃げ込むはずのシュエルターは、扉の隙間から血が流れだしていて内部がどうなっていたのかすぐに想像できてしまった。

そんな逃げ場所がない中ワタシはひたすら逃げ続けた。

頭が痛い。たくさんの負の感情が聞こえてきて、心が壊れそう。

「やめて、フーちゃん。わたしが耐えられない」

フーちゃんが黒いオーラを纏っている魔法少女の声を運んできてしまってわたしは送られてきた言葉に押しつぶされそう。

わかってるよ。

フーちゃんは魔法少女の言葉を届けるのが役割なんだよね。

でも、これ以上は。

地に伏せている目の前に、ドッペルを出しながらこちらを見る黒いオーラの魔法少女がいました。

あっ、わたし殺されちゃうのかな。

魔法少女のことをみんなに知ってもらいたいって、頑張ってきたのにこんな結果なんて。叔父さんの分も、頑張らなきゃいけないのに。

地面を見ながら涙を流していると後ろから銃声がたくさん聞こえて、わたしを見ていた魔法少女は何処かへ逃げて行きました。

「------!」

銃声の中でわたしに声をかけてくれた軍服を着た人は聴き慣れない言語で、わたしは聞き取ることができませんでした。

わたしは訳もわからずその場から動けないでいると数体の黒いオーラの魔法少女が襲いかかってきて、わたしに声をかけてくれた軍人さんは銃で応戦するものの、魔法少女の攻撃で首が吹き飛んでしまいました。

わたしには吹き出る血が降りかかり、恐怖のあまり悲鳴を上げ、過呼吸になってしまって目の前が真っ白になりました。

意識が遠のく中、少しだけ日本語が聞こえた気がしましたが誰かに抱えられて何処かへ連れていかれました。

これが、変わってしまった神浜になる前の最後の記憶でした。

 

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