【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 3-13 ワルプルガを讃える夜

「律儀に学校生活送ってからくるなんて、本気かどうかわからないねぇ」

シオリ達の使っていた廃墟の場所がワれているのは憶測でしかなかったけど、念のためということで捨てることにした。

どの道、用意は出来ていたからいいけど余計な手間が増えたのは確か。

それにしてもピリカは持ち場を離れてどっか行っちゃうし、中央区ではすでにカレンが一戦交えたっていうし、暁美ほむらの襲撃から退屈で仕方がない。

とはいえ、始まってしまえば準備が整うまで一番負担があるのはシオリ。

分かってはいるけど、始まるまではお預けだね。

と、考えていたらたくさんの魔法少女反応が近づいてきていた。

「見つけたぞ、紗良シオリ!」

廃墟になだれ込んできたのは港で戦った都ひなのとその仲間、後は街中で見かけた魔法少女達か。

廃墟を丸々囲われて、普通ならば逃げ場はない状況。

「丈夫そうで安心したよ、都ひなの。一部の欠損だけで済んだだけマシじゃないか」

「ふんっ、戯言を言っている場合か。身の安全なんて保証できる状況ではないことがわかってるはずだ」

「悪いけど、今はまともに戦う気はない」

シオリはポケットから穢れのたまりそうなグリーフシードを5つ取り出し、シオリのソウルジェムに少し当て床へ突き刺した。

すると周囲に魔女の結界が広がっていき、廃墟を取り囲んでいた魔法少女達がみんな結界に閉じ込められた。

「これは、魔女の結界を暴発させたのか」

「鏡の魔女って相当やばいやつなんでしょう?魔女を倒していないのに、なーんでこいつらの結界が出てくるんだろうねぇ」

「バカを言え、マギウスみたいに使い魔を育てない限りは。
お前まさか!」

「グリーフシード調達は生きる知恵、使い魔が育ったら魔女になるって、知ってるでしょう?」

話を聞いていないかのように魔法少女達はシオリに飛びかかってきた。

でも、シオリは結界内の鏡を合わせ鏡にしてその場から飛び上がった。

するとどうだろう、合わせあった鏡の中から光がこぼれ、動いた魔法少女達はみんな何処かへ消えてしまったではないか。

「別の場所へ飛ばされたっていうの?」

「それじゃあ、こいつらの始末は任せたから。

追いかけたいなら追ってきてもいいよ。

その代わり、新たな鏡の魔女が誕生しちゃうかもしれないね。

一体どれほどの人間が犠牲になるか考えたら、あんた達のやることは一つだよね」

そう言ってシオリは結界の外に出た。

案の定、結界の中にいた魔法少女達は使い魔の討伐に勤しんでいた。

「ほんっと、どこまで本気なのやら」

シオリが結界を誘発させたタイミングで他の使用していた廃墟でも鏡の魔女の結界が広がって、集まった魔法少女みんなが神浜に散り散りの状態となった。

全く、穢れを送るって行為はあまりしたくないっていうカレンだけど、こうやって役立つんだから積極的に使ってほしいところだけどね。

撹乱に成功したし、シオリは中央区に行こうかな。

鹿目まどかもいい感じに仕上がってる頃だし。

アリナっていう結界を操る魔法少女の魔法を真似て結界を作った場所に鹿目まどかとカレンがいる。

特性は魔女の結界と同じだから普通は目に見えない。

其の場凌ぎの隠れ家としては十分すぎる。

そう言えばピリカは戻ってきてるだろうか。

ピリカ、約束の時間までに戻ってきたらいいけど。

結界内に入ると、予想していた二人ともう一人がいた。

「夏目かこ、早い到着だったじゃないか」

「シオリさん」

目つきもオーラもかわっちゃってるね。まあ、いい変化ではあるけど。

「素直に参加してくれるなんて思わなかったよ」

「あなた達の考えに賛同したから参加しているまでです。自動浄化システムが世界に広がった後は、好きにさせてもらいますからね」

「構わないさ。私たちを殺しにかかってもかまわない、それだけのことをやってきたからね」

シオリは二人の間を通り、環いろはのように結界内で穢れを蓄積させている鹿目まどかの前に立った。

ちょっと穢れの量が多くないか?

「カレン、このままだと下手したら廃人になるよ」

「彼女は心が強いようだからね、半壊する程度が丁度いいんだよ。それに、少しの間だけ心ここに在らずって状態になってくれればいいだけだからね」

「ひどいことするねぇ」

「どの口がいうか、時間があればこんなことしないさ」

「はいはい、シオリが悪かったよ」

そう話していると、結界内にピリカと環いろはが入ってきた。

環いろはは想像通りいい顔しているじゃないか。
でもピリカは、片腕の袖がない状態だった。

「ピリカ、その袖はどうした」

「ごめんね、時女のリーダーが持つ聖遺物を回収したくて」

「時女の?回収しないとまずいものだったか」

「心が折れない力がこもった剣だった。放置しておくと間違いなく殺されていたと思う」

「まあピリカが生きているだけでもよかった。全部終わったら返してやれよ」

「うん、わかってる」

まさかここに来て聖遺物を嗅ぎ取るとはねぇ。聖遺物の倉庫を持ち歩いているのはピリカだし、丁度いいか。

「ねぇ、やるなら早くやりましょうよ。

自動浄化システムを広げる儀式」

「あなたがそう言い出すとは思いませんでしたよ、いろはさん」

「だって、こんなにも、ういを求めるようになっちゃったのはカレンさん達のせいなんですからね。
早く終わらせて、邪魔な人間をたくさん殺さないといけないんですから」

「いろはさん…」

「怖いこというようになったねぇ。
ま、メンツが揃ったし始めようか」

「なら、結界は破壊しておこう」

そう言ってカレンは糸で周囲を囲んでいる結界と鹿目まどかを囲う結界を破壊してシオリ達は電波塔の上に降りた。

結界から出てきた鹿目まどかの目は虚ろで、心ここにあらずな状態ではあったものの、魂は壊れていない様子だった。
でもその場に膝をつき、動く気配はなかった。

外は黄昏時が過ぎようとしていて暗くなり始めていた。

「じゃあピリカ、出してくれ」

ピリカは頷き、掌の上に輝く光の玉が現れ、それが床につくとそこには遺骸が出現した。

「これは」

「聖女ワルプルガの遺骸だよ。魂は魔女になっても、魔力が残って聖遺物として残り続けていたんだ。
蘇らせるには丁度良い触媒だろう?」

「あなた達は、いったい」

そう夏目かこが問いかけてきた時、シオリは大事に持っていた錬金符を取り出した。

「錬金術師の大事な弟子であり、人間社会を破壊する存在さ」

錬金符をハラリと落として、地面についたら魔法陣が起動した。

錬金符は師匠がシオリに教えてくれた錬金術で、普通は扱えない種類の魔法を行使できるものだ。

魔法さえ使えば生成できるのだが、効果は知っているものしか付与させることができない。

この錬金符には師匠が使用した再臨の魔法が籠もっている。

それに3人の固有魔法を使わせる操作の魔法、因果を束ねるカレンの魔法を混ぜたオリジナルの錬金符だ。

こうするおかげで、かつての師匠の失敗を再現しないはず。

しかし、錬金符を使用した際のデメリットは取り除くことができなかった。

錬金符が地面について発動すると、シオリには急激に穢れが流れ込み、その勢いでドッペルを出すと同時に電波塔周囲へ激しい電撃が走った。

金属が埋め込まれた地面や建物が地を離れて宙に浮き、小さな足場しかない電波塔の周りをゆっくり回り出した。

魔法陣が発動すると夏目かこ、環いろは、鹿目まどかは操られるかのようにワルプルガの遺骸を囲むように配置についた。

そして、カレンがこう言い放ち、シオリ達の計画は成功が約束された。

「さあ始めようか。ワルプルガの復活を讃える、ワルプルギスの夜を!」

 

第三章:ソノキジュンハ ダレヌォ メセン? 完

 

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