昨晩行われた紗良シオリさんの捕獲作戦。
結果は成功とはなりましたが、
シオリさんの残した魔力を頼りに今日中にななかさん、
そして明日行われる神浜マギアユニオンの集会で報告し、
その後のことは終わった後考えるとのことですが、
なぜ彼女達が、
私はそんなことを考えながら店番をしていました。
今日はお父さんとお母さん揃ってお出かけしています。
まあ、親孝行というやつですね。
2人とも照れ臭そうな表情をしていましたが、
楽しい日になってほししいなぁ。
私の家では夏目書房という古本屋さんをやっているのですが、
いまは電子書籍の時代となってきてはいますが、
お客さんもそれなりに来て、時々近所のおばさんと会話したりと、
近所のおばさんと話していると、気になる話を聞きました。
「そういえばかこちゃん、同じ学校に通っている子で急に不登校になった子とかいないかい?」
「急に不登校ですか。そういえば最近、増えてますね」
「やっぱりそう?私の迎えに住んでいる奥さんの子がね、最近家族の前に姿を見せない上に、学校にも行かない不良娘になっちゃったみたいなのよ。
前から帰りが遅かったりしたことはあったんだけどねぇ。何か相談できないような悩み事でもあったのかしらねぇ」
「そうかも、しれないですね」
不登校になった女の子。
ご存命ではあるらしいので、魔女に襲われてってことではないかもしれません。でもその子が魔法少女だった場合、ももこさんたちのように黒いオーラを纏ってしまい、考え方が変わってしまった結果なのかもしれません。
かえでちゃんも学校へ来なくなり、他のクラス、学年でも不登校となる子が増えていました。
マギウスの翼の時よりもその数は多く、いま起きている事態はマギウスの翼が起こした騒動よりも大きな影響を与えているのだなと実感しました。
お店の中が静かになったころ、少し気になったのは、
魔力の痕跡を追えなかったのか、
お父さん達が帰ってきたら電話でもしてみようかな。
「かこ、帰ったぞー」
「あ、お帰りなさい。二人とも楽しめた?」
「もちろんさ。新婚の頃の新鮮さを思い出せるいい機会だったよ」
「もう、お店に入ってすぐに書店に籠ろうとしたのは誰なんだか。
かこちゃん、今日はありがとね。
「わあ、ありがとう!」
楽しく会話している中、
そして、その男の人は刃物を取り出し、走ってきて。
「ダメ!」
私はとっさにお父さんとお母さんの間を通って仁王立ちするように男の人の前に出まし
凄く、痛い。いや、普通なら痛いじゃ済まない。
男の人が取り出した刃物は、確かに私の心臓を捉えていました。
血が滲み出る中、私は襲ってきた男の人の腕を掴み、
その男の首元には、魔女の口づけが。
「いやあああああ!」
お母さんはとても怯えた顔をしていました。
お父さんは驚いた顔をしていて。
「かこ、どういうことだ、これは」
そう、魔法少女であれば心臓を貫かれても、
しかしそんなこと、普通の人なら理解されない。
私は、お父さん達の目の前で、
私は刺さった包丁を抜いて、回復魔法で傷口を塞ぎました。
そして包丁を地面に落とし。
「お父さん、お母さん。ごめんなさい」
「かこ!」
私はそう言ってその場から走って去りました。
見られてしまった、知られてしまった!
私が人ではない体になってしまったところを!
涙で滲んだ風景の中、
私はただただ怖かったのです。見たこともない、二人の怯えた顔が。
魔女の結界に入ると、
貴方達が、あの男の人を操らなければ、
魔力反応を感知できなかった私のミスかもしれない。
でも許せない、今回だけは、許せない!
普段はやらないような力頼りの攻撃を行うばかりだった気がします
使い魔に攻撃されて傷口がたくさんできても、痛みを感じることはなく、ただひたすら感情に流されるように使い魔を倒していきました。
そして倒しても倒しても、
気づけば日は落ちかけていて、
もしかしたらしっかりと向き合ってくれるかもしれないという淡い期待をもって私は帰路へつきました。
いつも普通に帰れていた家も、入るのが怖かったです。
2人の反応が怖い。
そう思いながら二階に上がると、お母さんは泣いていて、
「ただいま」
「かこ、帰っていたのか」
しばらくの沈黙の後、お父さんが話し始めます。
「どういうことか説明してもらえるか。あの状況、
でもお前は人並み以上の力で男を気絶させ、そして、
私はソウルジェムを手に乗せ、2人の前で変身して見せます。
「おい、その姿」
そしてその場で私は手首に切り傷をつけます。
「や、やめなさい!」
血は少し流れましたが、魔法ですぐに傷口は塞がりました。
「ごめんなさい、もう、普通じゃなくなっちゃったの、私」
私の声は震えていました。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい
そう、心の中で呟き続けました。
「どうしてこうなっちゃったの、これじゃあかこちゃん、
普通じゃないわこんなの、ありえないわああどうして、
「落ち着け!」
人じゃない。普通じゃない。
拒絶された。きっと、人じゃないから化け物と思われるのかな。
おかしいな、2人を助けたはずなのに。拒絶されちゃった。
ああ、嫌だったなぁ。こんなピリオドは。
冷え切ってしまい、何かが切れてしまった。
手をあげるとそこにはきらりと光るモノ。
”抑える必要なんてないんだよ。気の向くままに刻んでしまえば、すっきりするし清々しくなるよ”
そんな私の声が頭にこだまし、そして胸につっかえていたようなものが洪水のように押し寄せて頭
身に降りかかる温かな液体。手は止まらない。
音も聞こえない。
私は目の前に浮かんだもう一人の私も含めて切り刻むかのように、手には大きな裁断機についているような鋏で激しく斬りつけていきました。
気づけば私は謎の空間の階段を下りていて、最下層には鎖でがんじがらめにされた門が立ちはだかっていました。
私は無意識に、鎖を切りきざみ、閉じられていた門を開けていました。
真っ暗な門の先へ進み、門が閉じた音と共に目の前には血だまりと肉塊が広がる光景が広がっていました。
その結果を見ても、不思議と浮かんだのは達成感。しかしすぐに体は冷たくなってしまいました。
「穢くなっちゃったなぁ。着替えないと」
私は着替えてその場を後にしました。
思いのまま、呪いの素を断つために。
「どういうことだ、シオリ。
朝からいないと思えばこの結果。
そこにはシオリを張り倒すカレンの姿があった。
「誤解だよ、私は観察していただけ。
「大事なピースをあの様にして、
「だから誤解だって。
「いい加減にしろ」
しばらくの間沈黙が続いた。
「いいか、もう成就は目前なんだ。
「でもいい感じに仕上がっただろう、
あの実験状態を野放しにし続けたのもそれが目的だろう?」
生温い風が2人の間を流れた。
「あの結末は私が処理する」
「そう、まあここまで最小限の犠牲だろうさ。
「ああそうだな。
「いらないよ、そんな気遣い。お師匠を殺す前も、
なーに大丈夫さ、すべて終われば自然と天罰が落ちるさ。
そう、解放のツケは、シオリ達だけに集中すればいい。
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