【マギレコ二次創作小説】魔叙事詩カグラ・マギカ 2-17 感知されないその理由

私は流れるままにフェリシアさんの後へついていっていました。

明日香さんの時や時女一族の方達とは違った、急な流れでここまできてしまったことに少し違和感を持っています

陽気に歩くフェリシアさんの背中を見ながら私は尋ねてみました。

「あの、フェリシアさん、どうして私をフェリシアさんの居場所へ連れていってくれるのですか」

「なんだ、まだ気にしてたんか。普通はメシと寝床を貸してやるってだけで喜ぶもんじゃね?」

「いえ、そこまで苦労はしていなかったので」

「金を持っているからか」

「お金なんて使わないですよ」

しばらくの沈黙が訪れました。

赤信号で並んで待っているときにフェリシアさんがいきなり話始めます。

「オレ、前までは傭兵やってたんだ。その間ろくに食いもんにありつけなくてさ、公園で朝まで寝てるってのもしょっちゅうだった」

「…ご家族は」

「死んだよ。魔女に殺されたんだ」

親なし子。魔法少女になってから両親がいなくなった子達は身寄りがなければ仲間の魔法少女について回るか、傭兵や窃盗業など普通の人の生活を送ることはできません。

この世界がお金を中心に成り立っているのが主な原因です。

「すげー辛くってさ。日によっては食うものなくてぶっ倒れそうなときもあったさ。助けを求めようとしても、求める先がなくてさ、余裕なんてなかったよ。

でもよ、いろはが声をかけてくれたんだ。それからずっとみかづき荘に住んでんだよ。

マギウスの翼の時にちょっと出ていったけど、もうそれからはずっとさ」

「そうですか」

長く話していたフェリシアさんはとても楽しそうに話していました。自慢話とは違った、どこか説得させるような感じで。

「だからさ、お前が人前で我慢してるっていうのわかるんだ。言いづらいよな、金ないけど食いもん食わせてくれって」

「でもいろはさん達は何て言うでしょう。もしかしたら断られてしまうかも」

「いろは達はそんなこと言わねーよ。まあ、家事の手伝いくらいは頼まれるかもしれないけどな!」

そう話しているうちにフェリシアさんはある家の前で立ち止まりました。

「ここがみかづき荘だ」

フェリシアさんは我が家に帰ったかのように勢いよく扉を開いて帰るべき居場所へ向けて生存確認の言葉を放ちます。

ただいま

そして迎えるおかえりという十人十色な音色の数々。

そう言葉を交わせるだけでも、この国は、この町は平和なんだなと実感してしまいます。

「おいやちよ、今日あいつ泊めてやることできないか」

「あら、ピリカさんどうしたの。フェリシアを家まで送ってくれたのかしら」

「んな訳ないだろ!ちゃんと門限守っただろう!」

「それよりも、泊めて欲しいってどういうことかしら」

「ピリカって普段野宿なんだってよ。なんかそれ聞いてオレいてもたってもいられなくなってさ」

私はあえて誰とも目を合わせないように黙って待っていました。

今回に限ってはお邪魔するほどの理由を持ち合わせていません。話を振られたら断りの一言でもかけてここから立ち去れば。

「ピリカさん、上がって頂戴」

「…え?」

「実は私たちから聞きたいことがたくさんあるのよ。ちょっとは家事を手伝ってもらうことになるかもしれないけど、情報交換料の代わりだと思ってもらって構わないわ」

どうやら一方的にこちらから情報を与える構図が出来上がってしまったようです。

そのまま回れ右をして逃げ出したい気分でしたが元気な声を出しながらどこか力強く手を引っ張る方がいたためやや強引にみかづき荘へ入ってしまいました。

どうやら料理の最中であり、リビングになる場所には大人しそうな緑髪の子と、そして。

「あれ、たしか公園で会った」

「ういさん?!」

ういさんとフェリシアさんはそれぞれ私と会った経緯は話してくれたものの、黒いオーラの魔法少女の話は魔女の話へ、出会いは公園でバッタリ会ったと事実とは異なった情報ばかり。

かこさんが黒いオーラの魔法少女を助けることができること、ういさんが瞬間移動できることはどうやら身内にも秘事な内容のようです。

随分と私は信用されてしまっているようですね。

元気な方、鶴乃さんという魔法少女からは色々聞かれてしまいました。

「ししょーといろはちゃんから聞いたよ、調整を受けなくても戦えるくらい強いって!」

「やっぱり珍しいんですかね」

「勿論だよ!数は少なくなってきているとはいえ、神浜の魔女は調整を受けている子でも手強いのが多いからね!

ねえねえ!ピリカちゃんはどこからきたの?神浜の出来事を詳しく知らないってことは遠い場所からきてるんだよね!」

北の方から来たと話しているうちにグルメの話、そしてなぜか中華の話となっていつのまにか万々歳というお店へ来ないかという宣伝じみた内容に変わっていきました。

じっとしている中、話を振られたさなさんという魔法少女が言うには可もなく不可もない美味しさとのこと。

ウォールナッツの話をするとさなさんも積極的に話に加わってきて神浜という町はなんだかんだどこかで繋がりがあるんだなって感じました。

因果が集まるという話も、納得できます。

「さ、準備ができたからそろそろご飯にしましょう。ピリカさんの分もちゃんと用意しているから」

「すみません、話に夢中になっちゃって」

「大丈夫ですよ」

食事が終わった後、皿洗いなどの後片付けは全てやらせてもらいました。片付けが済むと、お茶を用意してもらった後に本命の情報交換が始まりました。

「さて、まず気になることなのだけどソウルジェムの反応ってどう隠しているのか教えてもらえるかしら。

カレンさんとシオリさんのように貴方からもソウルジェムの反応が感じられないのよ。

タネがわかれば、彼女達の居場所が割り出せるようになるの」

タネ自体は話しても影響はないのでいいでしょう。

「ソウルジェムで感知できる魔力って、無意識に力を放出しているのが原因なんです。さなさんのように魔法少女だけに見えるという現象も、姿を認識させないという魔力を無意識に使用しているがために魔力を感じ取って効果が無意味になっているんです。

魔法少女となったからには体を動かすだけでも魔力を消費するので普通ならば反応を消すというのは特別願わない限りできないことです。

でも、電気という存在を認識できる瞬間よりも認識できない瞬間が多い理由を考えてください。

電気を認識できる瞬間ってどんな時だと思います?」

「スイッチを押したり、電気がついているときとかかな」

「静電気っていうくらいだし、ドアノブをいきなり触った時もだよね。

ってこは、プラスとマイナスのバランスが崩れた時だね!」

「電気の現象を魔法少女に置き換えると、希望と絶望?」

絶望を纏うって何だか黒いオーラの魔法少女を連想してしまいます

なんか勝手に話が進んでありがたいんですが、単純ではない話をしなければいけません。

「呪いを纏うとは近いかもしれませんが、魔力を認識させない種明かしとしては、

魔力の性質の逆の魔力を同時に発しているが正解です」

「魔力の性質を理解すること自体が難しいというのに、その上で正反対の性質をぶつけて中和させるだなんて。魔力を使った時点でそのバランスは崩れるわ。

でも闘っている最中も、後も魔力を感じられないと聞いているわ」

「人が動くたびに地球の重力によって形が歪まないのと同じです。内から出すものと外から取り込むものを差し引きゼロにしているんです。それは穢れではなく、あくまで魔力の性質上の話です。

実はこれ、一度認識されないポイントを抑えると後は自然とそのゼロポイントを基準に魔力のやり取りが行われるので意識せずに認識されないようになります」

「じゃあ結局どうすれば認識できるようになるんだろう」

「魔力の性質を観測し、解析するしかないですね。

実は私はあることをしてしまうと魔力を感知されてしまうという瞬間があります。

でもそれは見知らぬ人と再び出会う確率と同じくらい低いと思いますね」

「出会う機会を増やして気を伺う、が近道と言いたいのかしら」

「これを教えてくれた方も、方法までは知らない状態だったのでこれくらいしか思いつかないですね」

「あの、もし良ければ魔力が感知される瞬間というのを教えてもらえないでしょうか」

「流石にそれは」

「ですよね」

一度魔力パターンを知られたところで魔力バランスが整えば追跡は愚か感知もできなくなるので知られたから終わりというわけではありません。

しかし、やちよさんのようなベテラン達は弱点がわかればそこを突いて追い込む作戦なんて容易に思いつくでしょう。

ワルプルギスの夜を倒すような人たちです。隙を見せれば手遅れと思うくらいが良いでしょう。

そう思いを巡らせていると長い間聞き続けた声がテレパシーで聞こえてきました。

[環姉妹がいるのはみかづき荘で間違いなかったかな?]

周りのみんなが一斉に動揺し出したので全員へ向けて発していることがわかります。

玄関の扉が開けられると、道路へ通じる階段の前に私服で立っているカレンの姿がありました

「カレンさん、あなた!」

「久しぶりですね、やちよさん、いろはさん。

協力関係になるための交渉をしに来たんですよ。ついて来てもらえますか」

調整屋を襲って以来目撃情報がなかったカレン。協力関係を結ぶための材料は恐らく、黒いオーラの魔法少女でしょう。

 

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