3日前の話になりますが、
目を開けたときには見知らぬ場所にいて、
「あ、目覚ましたよ!」
「よかった、意識が戻ったんですね」
急に景色が変わっていたので私はゆっくりとあたりを見渡していま
「えっと、頭大丈夫?」
「へ?」
「ちょっとちゃる!聞き方が失礼過ぎます」
「いやあのえっとね、悪気がある言い方じゃなくてね。
「もう、落ち着いてください」
まあ大体聞きたいことは分かったので。
「大丈夫ですよ。別に記憶が飛んだりとか、
「それならよかったです。ちゃるが変な聞き方をしてすみません」
「いえ、気にしてないですから」
「中が騒がしいと思ったらピリカさん、
「はい。えっと、時女静香さんでしたよね」
「そうよ。2人もあの場で自己紹介していたし、
「土岐すなおさんに広江ちはるさんですよね」
「正解!」
「記憶に問題はなさそうですね」
「しかし驚きました。
原因は大方見当がつきます。
それにしてもいつの間に仕込まれていたのか。
この後必死に皆さんから記憶を覗こうとした十七夜さんに悪気はな
どちらかというと、
話を聞いている間に気になったのは、
「調整屋って中立地帯だって聞いていたんですがこの荒れ様、
「実は数日前に調整屋が襲われたんです。
「確か、
「でもあの人、悪意で行動しているわけじゃなさそうなんだよね」
「そう、ですか」
カレン、
でも調整屋は無事だったし、消すなら苦労もしないはず。
[カレン、この建物やばい気配がするよ。
[本当?]
みんなには見えませんが、
中立地帯で呪いが溢れているってどういうこと?
私は1人でに呪いが強い場所へ進んでいくと調整夜の奥にある個室
「急にどうしたんですか」
「呪いが濃い場所があるんです。ここに」
「え、でも魔女の気配は感じられないよ」
呪いを発するのは魔女だけとは限りません。
部屋にあった大きめの扉を開けると、
「何これ、グリーフシードがこんなにたくさん」
「
「だとしても多すぎる」
それに管理が杜撰すぎて放置しているだけで周りから呪いを集めて
過去にグリーフシードをため込むという事例は見てきましたが、
私は中にしまわれている呪いを半分以上吸い込んでいるグリーフシ
「ピリカさん?!勝手に持ち出すのは良くないですよ」
「
「
「グリーフシードは魔女の卵です。
「そんな」
「手伝ってもらえないでしょうか」
時女一族の方達に協力してもらい、穢れが溜まっているグリーフシードを神浜の外へ持ち出すことにし
調整屋のグリーフシードが入っていた扉は閉めておき、
神浜の外でキュゥべぇを呼ぶとすぐに姿を現しました。
「見た感じ十数個はあるようだね。
「これらの処分、お願いできますか」
「神浜の外から来た君たちは知らないかもしれないけど、
その間どう処理していたのかわからないんだけど、
「そういえば、
「教えてもらった魔法少女のSNSで早速聞いてみようよ」
「そうね」
キュゥべぇが全て回収し終わるのを見届けると私たちはその場を去
「ピリカさん、夜も深まってきましたし、
「え、いいんですか」
「色々お話ししたいこともあるんだよね。
「迷惑にならなければですけどね」
まあ、断っても野宿だしいいか。
「では、お言葉に甘えてお願いできますか」
「やったあ!」
三人に連れられて着いた場所は水徳寺というお寺でした。
時女一族の関係者が提供してくれた場所らしく、
水徳寺でご馳走になったのは、
そんな中、和尚さんは1人で精進料理を食べていてなんだか申し訳
そんな和尚さんから聞いた話は。
「
煩悩の刺激から遠ざけるとはいったいなんなのか、
するといきなり、お寺の玄関を力強く開ける音がしました。
「腹減ったー!お、今日も肉か!」
「これ!お客様がみえとるんじゃぞ。行儀の悪い」
「おっと、これは失礼した。で、この方はどちら様?」
「魔法少女のピリカさんよ。
「なるほど、魔法少女だったか」
「でも涼子さん、昨日からどこに行っていたんですか。
「それがねぇ、
「え、もしかしてセルフ絶食?」
「そんなわけないでしょ」
「そんで、目覚めたら口にパンが突っ込まれていたんだよ」
「いやいや危ないでしょそれ」
そしてポケットにはこんな紙が入っていたんだ。
「えっと、
“パン食って帰って寝ろ”
なにこれ?」
「というわけで肉は惜しいがシャワー浴びて寝る。それじゃあね」
そう言って涼子という方はお寺の奥に消えて行きました。
「全く、騒がしい奴じゃ」
「えっと、和尚さんの前で魔法少女の話をして大丈夫なんですか」
「わしら時女の関係者は古くから巫の存在は知っていたからな。
「あ、巫って私たちの村で言う魔法少女の別名みたいなものね」
「はあ」
食べ終わった食器などを片付けながら、
「代々日の本に助力してきた一族ですか」
「たくさんの魔法少女が村から誕生したのも、
しかし最近までは、
「そんな、たった一つの願いが売られるだなんて」
「しかしもうその心配は無くなりました。私たちは、
「そうだったんですね」
一族のため。
私も民族のために願った身なのでその一生懸命さはよくわかります
しかし、願いが売られてしまっていたなんて、
「私は、大切な民族のために願ったんです」
「民族?」
「北の方を中心とする民族で、
そんな民族の存続のために、私は願ったのです」
「では、遠くからこの街にきた理由は、
「そう、ですね」
「お互い、大切なものを守るために、頑張りましょうね」
「はい、そうですね」
時女一族という方々は、
でも、私たちの目的の前で、
「静香ちゃんそこでなにやってるの?」
「え、いや別に」
「ふーん、そうだ!ピリカさん、お風呂空いたよ!」
流れでシャワーを借りてしまいました。
魔法少女になって、
久々に、体に刻まれた記憶を目にしました。
私が脱衣所で体の水を払っていると、偶然、
「…見られてしまいましたね。迂闊でした」
「あの、その痛々しい傷の数々は一体」
「時女の魔法少女って、
「すなおが話していましたね。その通りです」
「実は私も売られたことがあるんです。人に。
鞭で撃たれ、殴られ、弄ばれ、
「もういいです。すみません、
わたしは、この人たちには本心を打ち明けてもいい、
「実はゆっくりお話ししたいことがあります。
静香さんの返事を聞くことなく、
月が映る庭にある池を見ながら私は待っていました。
この人たちは、人の黒い部分を体験している。
そう、
しかし時が経てば立つほど疑いは核心に変わる。
そう、知らないだけなのです。
後ろを振り向くと、そこには静香さんの姿がありました。
「きてくれてありがとうございます」
「話したいことって、なんですか」
「たったひとつの願いを、
「あれはごく一部の人物が行った結果です。
「では、買う側について考えたことはありますか」
「日の本の偉い人たちですか。
「お国のためとはいえ、たった一度しか叶えられない願いを無理やり使
「それは」
「その願いで得した人は国ではなく自身の保身である可能性や、
「なにを、言いたいんですか」
「わたしは、人の価値観を変えるために活動しています。
「ピリカさん、あなたは一体」
「時女一族のみなさん、今一度考え直してください。
現状を理解して、懸命な判断をするようにしてください」
静香さんは何か言いたげな顔をしていましたが、
説得できたとは思っていません。
しかしくさびは打ち込めたはずです。
きっと純粋すぎるこの人たちが事実に直面すると、
「わたしは失礼します。優しくしていただき、
わたしはそのまま水徳寺を後にしました。
きっと次に出会う頃には、全てを理解した後でしょう。
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